以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、マルチビームは、荷電粒子ビームに限らずレーザビーム等であっても適用できる。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画機構150(マルチビーム照射機構)と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画機構150は、電子ビームカラム(電子鏡筒)102と描画室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208(第1の偏向器)、及び副偏向器209(第2の偏向器)が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。照明レンズ202、縮小レンズ205、及び対物レンズ207には、電磁レンズが用いられる。各電磁レンズは、マルチビーム(電子ビーム)を屈折させる。
制御系回路160は、描画装置100全体を制御する制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプ(ユニット)132,134、ステージ位置検出器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、ステージ位置検出器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。記憶装置140(記憶部)には、描画データが描画装置100の外部から入力され、格納されている。記憶装置144(記憶部)には、後述する複数の描画シーケンスデータが描画装置100の外部から入力され、格納されている。偏向制御回路130には、DACアンプ(ユニット)132,134及びブランキングアパーチャアレイ機構204が図示しないバスを介して接続されている。レーザ測長システム122は、XYステージ105上のミラー210からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。主偏向器208は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ134を介して偏向制御回路130によって制御される。副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ132を介して偏向制御回路130によって制御される。
制御計算機110内には、欠陥ビーム検出部50、欠陥画素数最大値演算部52、描画シーケンス選択部54、照射時間データ生成部56、データ加工部58、及び描画制御部59が配置されている。欠陥ビーム検出部50、欠陥画素数最大値演算部52、描画シーケンス選択部54、照射時間データ生成部56、データ加工部58、及び描画制御部59といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。欠陥ビーム検出部50、欠陥画素数最大値演算部52、描画シーケンス選択部54、照射時間データ生成部56、データ加工部58、及び描画制御部59に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。図2では、例えば、横縦(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。
ブランキングアパーチャアレイ機構204内には、例えばシリコン等からなる半導体基板が配置される。かかる半導体基板の中央部は、例えば裏面側から薄く削られ、薄い膜厚のメンブレン領域に加工されている。メンブレン領域には、図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビームのそれぞれのビームの通過用の通過孔(開口部)が開口される。言い換えれば、メンブレン領域には、電子線を用いたマルチビームのそれぞれ対応するビームが通過する複数の通過孔がアレイ状に形成される。そして、半導体基板のメンブレン領域上には、かかる複数の通過孔の各通過孔を挟んで対向する位置に制御電極と対向電極との2つの電極の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、半導体基板内部の各通過孔の近傍には、各通過孔用の制御電極に偏向電圧を印加するロジック回路が配置される。各ビーム用の対向電極は、グランド接続される。各ビーム用のロジック回路には、制御信号用のnビット(例えば10ビット)のパラレル配線が接続される。マルチビームを構成するそれぞれのビーム毎に、制御電極と対向電極と制御回路とによる個別ブランキング機構が構成される。
図3は、実施の形態1におけるシフトレジスタの接続構成の一例を示す図である。各ビーム用のロジック回路41は、メンブレン領域にアレイ状に形成される。そして、例えば、同じ行に並ぶ複数のロジック回路41(x方向)毎にグループ化され、同じグループ内のロジック回路41列は、図3に示すように、さらに複数のサブグループにグループ化される。図3の例では、各行のロジック回路41列が例えば8つのサブグループに順に振り分けられ、グループ化される。例えば、512列×512行のマルチビームで構成される場合、各行の1番目~512番目のビーム用のロジック回路41が1,9,17,25,・・・と8ビーム間ピッチ毎に、データ列1(サブグループ)を構成する。同様に、2,10,18,26,・・・と8ビーム間ピッチ毎に、データ列2(サブグループ)を構成する。以下、同様に、データ列3(サブグループ)~データ列8(サブグループ)を構成する。そして、各サブグループ内のロジック回路41群は、直列に接続される。そして、図示しないI/O回路からグループ毎の信号が分割されて、パラレルに各サブグループに伝達される。そして各サブグループの信号がサブグループ内の直列に接続されたロジック回路41に伝達される。具体的には、各ロジック回路41内に、シフトレジスタ11が配置され、同じサブグループのロジック回路41内のシフトレジスタ11が直列に接続される。図3の例では、データ列(サブグループ)毎に64個のシフトレジスタ11が直列に接続される。よって、64回のクロック信号によって、各ビーム用の照射時間データが各ビーム用のシフトレジスタ11に伝送されることになる。図3の例では、同じ行(x方向)毎に1つのグループを構成する場合を示したが、これに限るものではない。例えば、同じ行を左半分と右半分に分け、同じ行を左半分のビーム用のロジック回路41で1つのグループを構成し、同じ行の右半分のビーム用のロジック回路41で別の1つのグループを構成するようにしても好適である。これにより、データ列(サブグループ)毎に32個のシフトレジスタ11が直列に接続されることになる。或いは、同じ列に並ぶ複数のロジック回路41(y方向)毎にグループ化しても構わない。
ブランキングアパーチャアレイ機構204の複数の通過孔を通過するマルチビーム20の各ビームは、それぞれ独立にかかる対となる2つの電極に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、ブランキングアパーチャアレイ機構204をマルチビーム20が通過する際に、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
次に、描画機構150の動作の具体例について説明する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状のマルチビーム(複数の電子ビーム)20a~eが形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器:個別ブランキング機構47)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、少なくとも個別に通過する電子ビーム20を設定された描画時間(照射時間)ビームがON状態になるようにブランキング制御する。言い換えれば、ブランキングアパーチャアレイ機構204(照射時間制御部の一例)は、マルチビームの各ビームの照射時間を制御する。
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。このように、制限アパーチャ基板206は、個別ブランキング機構によってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように主偏向器208によってトラッキング制御が行われる。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
図4は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。図4に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20のショットで照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、-x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。
上述した照射領域34は、x方向のビーム間ピッチPにx方向のビーム数を乗じた値をx方向寸法とし、y方向のビーム間ピッチPにy方向のビーム数を乗じた値をy方向寸法とした矩形領域で定義できる。x方向のビーム間ピッチPとy方向のビーム間ピッチPは同じ値であっても良いし、異なる値であっても構わない。実施の形態1では、x方向のビーム間ピッチPとy方向のビーム間ピッチPは同じ値の場合を示している。
図5は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。図5において、ストライプ領域32は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、描画対象画素36(単位照射領域、或いは描画位置)となる。画素36のサイズは、ビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく任意の大きさで構成されるものでも構わない。例えば、ビームサイズの1/n(nは1以上の整数)のサイズで構成されても構わない。図5の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。なお、ストライプ領域32の幅は、これに限るものではない。照射領域34のn倍(nは1以上の整数)のサイズであると好適である。図5の例では、512×512列のマルチビームの場合を示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間ピッチPとなる。図5の例では、隣り合う4つの画素28で囲まれると共に、4つの画素28のうちの1つの画素28を含む矩形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。図5の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素で構成される場合を示している。
図6は、実施の形態1の比較例におけるマルチビームの描画シーケンスの一例を説明するための図である。図6では、図5で示したストライプ領域32を描画するマルチビームのうち、y方向3行目の座標(1,3),(2,3),(3,3),・・・,(512,3)の各ビームで描画するサブ照射領域29の一部を示している。図6の例では、例えば、XYステージ105が8ビーム間ピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)する場合を示している。かかる4つの画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、主偏向器208によってマルチビーム20全体を一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。図6の例では、8ビーム間ピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)することで1回のトラッキングサイクルを実施する場合を示している。
具体的には、レーザ測長システム122が、ミラー210にレーザを照射して、ミラー210から反射光を受光することでXYステージ105の位置を測長する。測長されたXYステージ105の位置は、制御計算機110に出力される。制御計算機110内では、描画制御部59がかかるXYステージ105の位置情報を偏向制御回路130に出力する。偏向制御回路130内では、XYステージ105の移動に合わせて、XYステージ105の移動に追従するようにビーム偏向するための偏向量データ(トラッキング偏向データ)を演算する。デジタル信号であるトラッキング偏向データは、DACアンプ(ユニット)134に出力され、DACアンプ(ユニット)134は、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して、トラッキング偏向電圧として主偏向器208に印加する。
そして、描画機構150は、当該ショットにおけるマルチビームの各ビームのそれぞれの照射時間のうちの最大描画時間Ttr内のそれぞれの画素36に対応する描画時間(照射時間、或いは露光時間)、各画素36にマルチビーム20のうちONビームのそれぞれ対応するビームを照射する。
図6の例では、座標(1,3)のビーム(1)によって、主偏向セトリング及び副偏向セトリングが終了後の時刻t=0からt=最大描画時間Ttrまでの間に注目サブ照射領域29の例えば最下段右から1番目の画素に1ショット目のビームの照射が行われる。そして、時刻t=0からt=最大描画時間Ttrに副偏向セトリング時間を加えたショットサイクル時間Tまでの間にXYステージ105は例えば2ビーム間ピッチ分だけ-x方向に移動する。その間、トラッキング動作は継続している。
当該ショットのビーム照射開始から当該ショットの最大描画時間Ttrが経過後、主偏向器208によってトラッキング制御のためのビーム偏向を継続しながら、トラッキング制御のためのビーム偏向とは別に、副偏向器209によってマルチビーム20を一括して偏向することによって各ビームの描画位置(前回の描画位置)を次の各ビームの描画位置(今回の描画位置)にシフトする。図6の例では、時刻t=Ttrになった時点で、注目サブ照射領域29の最下段右から次の描画対象画素へのシフトを開始し、時刻t=Tになった時点で、注目サブ照射領域29の最下段右から1番目の画素から下から2段目かつ右から1番目の画素へと描画対象画素がシフトされている。その間にもXYステージ105は定速移動しているのでトラッキング動作は継続している。
そして、トラッキング制御を継続しながら、シフトされた各ビームの描画位置に当該ショットの最大描画時間Ttr内のそれぞれ対応する描画時間、マルチビーム20のうちONビームのそれぞれ対応するビームを照射する。図6の例では、座標(1,3)のビーム(1)によって、時刻t=Tからt=T+Ttrまでの間に注目サブ照射領域29の例えば下から2段目かつ右から1番目の画素に2ショット目のビームの照射が行われる。時刻t=Tからt=2Tまでの間にXYステージ105は例えば2ビーム間ピッチ分だけ-x方向に移動する。その間、トラッキング動作は継続している。
図6の例では、時刻t=T+Ttrになった時点で、注目サブ照射領域29の下から2段目かつ右から1番目の画素から次の描画対象画素へのシフトを開始し、時刻t=2Tになった時点で、注目サブ照射領域29の下から2段目かつ右から1番目の画素から下から3段目かつ右から1番目の画素へと副偏向器209によるマルチビームの一括偏向により描画対象画素がシフトされている。その間にもXYステージ105は移動しているのでトラッキング動作は継続している。そして、座標(1,3)のビーム(1)によって、時刻t=2Tからt=2T+Ttrまでの間に注目サブ照射領域29の例えば下から3段目かつ右から1番目の画素に3ショット目のビームの照射が行われる。時刻t=2Tからt=3Tまでの間にXYステージ105は例えば2ビーム間ピッチ分だけ-x方向に移動する。その間、トラッキング動作は継続している。時刻t=2T+Ttrになった時点で、注目サブ照射領域29の下から次の描画対象画素へのシフトを開始し、時刻t=3Tになった時点で、注目サブ照射領域29の下から3段目かつ右から1番目の画素から下から4段目かつ右から1番目の画素へと副偏向器209によるマルチビームの一括偏向により描画対象画素がシフトされている。その間にもXYステージ105は移動しているのでトラッキング動作は継続している。そして、座標(1,3)のビーム(1)によって、時刻t=3Tからt=3T+Ttrまでの間に注目サブ照射領域29の例えば下から4段目かつ右から1番目の画素に4ショット目のビームの照射が行われる。時刻t=3Tからt=4Tまでの間にXYステージ105は例えば2ビーム間ピッチ分だけ-x方向に移動する。その間、トラッキング動作は継続している。以上により、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画が終了する。
図6の例では初回位置から3回シフトされた後の各ビームの描画位置にそれぞれ対応するビームを照射した後、DACアンプ(ユニット)134は、トラッキング制御用のビーム偏向をリセットすることによって、トラッキング位置をトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置に戻す。言い換えれば、トラッキング位置をステージ移動方向と逆方向に戻す。図6の例では、時刻t=3T+Ttrになった時点で、注目サブ照射領域29のトランキングを解除して、x方向に8ビーム間ピッチ分ずれた注目グリッドにビームを振り戻す。なお、図6の例では、座標(1,3)のビーム(1)について説明したが、その他の座標のビームについてもそれぞれの対応するグリッドに対して同様に描画が行われる。すなわち、座標(n,m)のビームは、t=3T+Ttrの時点で対応するグリッドに対して右から1番目の画素列の描画が終了する。例えば、座標(2,3)のビーム(2)は、図6のビーム(1)用の注目サブ照射領域29の-x方向に隣り合うサブ照射領域に対して右から1番目の画素列の描画が終了する。
なお、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画は終了しているので、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、時刻t=4Tを含む主偏向セトリング時間が経過した時点(t=4T+ΔTs)で各サブ照射領域29の下から1段目かつ右から2番目の画素36にそれぞれ対応するビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。ΔTsは、主偏向セトリング時間-副偏向セトリング時間に相当する。
以上のように同じトラッキングサイクル中は主偏向器208によって照射領域34を試料101に対して相対位置が同じ位置になるように制御された状態で、副偏向器209によって1画素ずつシフトさせながら各ショットを行う。そして、トラッキングサイクルが1サイクル終了後、照射領域34のトラッキング位置を戻してから、図6の下段に示すように、例えば1画素ずれた位置に1回目のショット位置を合わせ、次のトラッキング制御を行いながら副偏向器209によって1画素ずつシフトさせながら各ショットを行う。ストライプ領域32の描画中、かかる動作を繰り返すことで、順次照射領域34の位置が重なり合いながらもトラッキング距離ずつ移動していき、当該ストライプ領域の描画を行っていく。
ここで、マルチビーム20の中には、照射時間を制御不能な複数の欠陥ビームが混在する場合がある。欠陥ビームとして、ビームONにはなっても照射時間を制御不能なビームの他に、常時ONビーム、或いは常時OFFビームが挙げられる。かかる欠陥ビームが混在するマルチビーム20を用いて描画処理を行う場合、例えば、トラッキング動作をリセットする際のビームの振り戻し量(距離)と、複数の欠陥ビーム間の距離とが一致してしまうと、例えば隣接する画素列同士が、かかる複数の欠陥ビームによって照射されてしまうといった問題があった。さらに、複数の欠陥ビームが所定の周期で発生する場合、かかる複数の欠陥ビームの発生周期の整数倍の値とビームの振り戻し量とが一致してしまうと、ビーム間ピッチで囲まれた同じ小領域内の多くの画素がかかる複数の欠陥ビームによって照射されることになってしまう。図3に示したように、サブグループ毎に、シフトレジスタ11が直列に接続されている。そのため、例えば、斜線で示すビーム1用のシフトレジスタ11が故障している場合、下流側のビーム9,17,25,・・・用の照射時間データも所望するデータとは異なってしまう。例えば、ビーム9用のシフトレジスタ11が故障している場合、上流側のビーム1用の照射時間データは正常に用いることができるものの、下流側のビーム17,25,・・・用の照射時間データが所望するデータとは異なってしまう。そのため、図3の例では、例えば、8ビーム間ピッチ毎に周期性を持った複数の欠陥ビームが発生してしまうことになる。
図7は、実施の形態1の比較例におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の一例を説明するための図である。図6に示した描画シーケンスで描画処理を進めていく場合、ビーム1によって注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、右から2番目の画素列がビーム9によって描画される。右から3番目の画素列がビーム17によって描画される。右から4番目の画素列がビーム25によって描画される。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまうと、注目サブ照射領域29内の16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることになってしまう。これでは、かかるサブ照射領域29(小領域)内に描画されるパターンは使用できない。そのため、マルチビーム20内に複数の欠陥ビームが発生する場合でも、各サブ照射領域29(小領域)内で欠陥ビームにより照射される画素数を低減することが求められる。そこで、実施の形態1では、ビーム偏向にビーム間ピッチの整数倍(nP)のオフセットを設ける。以下、具体的に説明する。
図8は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。図8において、実施の形態1における描画方法は、欠陥ビーム検出工程(S102)と、欠陥画素数最大値演算工程(S104)と、描画シーケンス選択工程(S108)と、照射時間データ生成工程(S110)と、データ配列加工工程(S112)と、データ転送工程(S114)と、描画工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。描画工程(S120)内では、トラッキング工程(S122)と、ショット工程(S124)と、シフト工程(S126)と、ショット工程(S128)と、トラッキングリセット工程(S129)と、いう一連の工程を実施する。
欠陥ビーム検出工程(S102)として、欠陥ビーム検出部50は、マルチビーム20の中から欠陥ビームを検出する。例えば、各ビーム用のシフトレジスタ11を用いて、評価用の照射時間データを伝送する。そして、各シフトレジスタ11を経たデータに基づいた各ビームの電流値を測定する。描画制御部59の制御により、マルチビーム20の各ビームを1本ずつ図示しないファラディーカップに照射して、各ビームのビーム電流量を測定する。対象ビームはビームONにその他のビームはビームOFFになるように、ブランキングアパーチャアレイ機構204を動作させればよい。例えば、予め設定された照射時間ずつ各ビームを1本ずつファラディーカップに照射する動作を複数回繰り返す。そして、欠陥ビーム検出部50は、得られた合計電流量を入力し、合計電流量を繰り返し数で割った平均電流量を測定する。そして、設計値と比較して、過剰或いは不足していれば、かかるビームは欠陥ビームとして検出できる。なお、常時ONビームが存在する場合、各ビーム電流を検出する際、常時ONビームの分も合わせて検出されてしまうが、常時ONビーム1本だけの電流を測定した場合の合計電流量が他のビームの合計電流量よりも小さくなるので、常時ONビームを特定できる。常時ONビームが特定できれば、他のビームの測定結果から常時ONビームの測定結果を差し引けば、当該ビームの合計電流量がわかる。
なお、欠陥ビームの検出手法は、これに限るものではない。例えば、マルチビーム20のうち、欠陥ビームがどれなのか識別可能に定義された情報を別途、描画装置100が外部から入力し、記憶装置144に格納しても良い。或いは、ビームを照射せずに、評価データを各ビームのロジック回路41に伝送し、伝送したデータを回収して、このデータを設計値と比較して、異なっていれば欠陥ビームと判定しても良い。
図9は、実施の形態1におけるマルチビームの描画シーケンスの一例を説明するための図である。図9では、4ショット目までの動作は、図6と同様である。図9では、4ショット目が終了し、トラッキングリセットを行う場合に、次回のトラッキング制御が開始される時点でトラッキング位置を前回のトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置にさらにビーム間ピッチサイズの整数倍のオフセット(nP)を付けた位置まで戻す。図9の例では、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ図6の場合よりも余分に振り戻す場合を示している。これにより、k回目のトラッキング動作の際に欠陥ビームであるビーム1により右から1番目の画素列の描画が行われたサブ照射領域29は、k+1回目のトラッキング動作の際には、欠陥ビームであるビーム9ではなく、1つだけずれた正常ビームであるビーム10により右から2番目の画素列が描画されるようにできる。そして、トラッキング制御毎に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に振り戻すことで、k+2回目のトラッキング動作の際には、欠陥ビームであるビーム17ではなく、2つだけずれた正常ビームであるビーム19により右から3番目の画素列が描画されるようにできる。そして、k+3回目のトラッキング動作の際には、欠陥ビームであるビーム25ではなく、3つだけずれた正常ビームであるビーム28により右から4番目の画素列が描画されるようにできる。
図10は、実施の形態1におけるトラッキング制御を説明するための図である。図10において、主偏向器208は、トラッキングが開始される時点での一回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21は、前回の領域からx方向に8ビーム間ピッチ離れた領域に、オフセットとしてビーム間ピッチの整数倍(nP)が加算された合計(8+nP)ビーム間ピッチ離れた領域に移行する。そして、次のトラッキングが開始される。かかる動作を繰り返すことでトラッキングサイクルが実施される。なお、t=3T+Ttrの時点でトラッキングリセットしてから主偏向セトリングを開始し、時刻t=4Tを含む主偏向セトリング時間の経過後(t=4T+ΔTs)が、次のトラッキング制御が開始される時点となる。その間もXYステージ105は等速移動しているため、トラッキングリセットの際に、ΔTsにXYステージ105の移動速度を乗じた距離分、余分に振り戻すことは言うまでもない。
図11は、実施の形態1における偏向電圧を時間との関係の一例を示す図である。図11(a)では、縦軸にトラッキング用のDACアンプ(ユニット)134から出力される偏向電圧Vtrを示し、横軸に時間tを示す。図11(b)では、縦軸にx方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vxを示し、横軸に時間tを示す。図11(c)では、縦軸にy方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vyを示し、横軸に時間tを示す。図1では、副偏向器209用のDACアンプユニットとして、1つのDACアンプ132が示されているが、x,y方向に偏向可能な場合、副偏向器209は4極以上の電極(例えば8極)から構成され、各電極にそれぞれDACアンプが接続される。なお、図1では、主偏向器208用のDACアンプユニットとして、1つのDACアンプ134が示されているが、x,y方向に偏向可能な場合、副偏向器209は4極以上の電極(例えば8極)から構成され、各電極にそれぞれDACアンプが接続される。図11(a)に示すように、k回目のトラッキング制御の後、k+1回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+2回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に2ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+3回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に3ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。これにより、主偏向器208によるトラッキング制御用のビーム偏向により、照射ビームをずらすことができる。
図12は、実施の形態1におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の一例を説明するための図である。図9~図11に示したようにトラッキング制御毎に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分ずつだけ余分に振り戻す描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、ビーム1によって注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、右から2番目の画素列が欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。右から3番目の画素列が欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム19によって描画できる。右から4番目の画素列が欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム28によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した4画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/4に低減できる。
図13は、実施の形態1におけるオフセット量を可変にした場合の複数の描画シーケンスの一例を説明するための図である。図13(a)~図13(d)において、各枠はサブ照射領域29を示し、縦に並ぶ枠は同じサブ照射領域29を示す。また、枠内の各番号はビーム番号を示す。また、斜線の枠は欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29を示し、斜線の枠を照射する欠陥ビーム番号は、隣接枠の続きの番号となる。(A,B)のAは、トラッキング制御の回数を示し、Bは、オフセット量となるビーム間ピッチPサイズの倍数の値を示す。よって、例えば、(k+1,1)とは、k回目のトラッキングリセット時の振り戻し量としてビーム間ピッチPサイズの1倍だけ+x方向にオフセットされた位置からk+1回目のトラッキング制御を行う場合を示す。
図13(a)では、比較例として、オフセットしない図6に示した描画シーケンスを実施した場合を示している。よって、k回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム1,9,17,25のいずれかで照射されたサブ照射領域29は、k+1回目のトラッキング制御でも、欠陥ビームとなるビーム1,9,17,25のいずれかで照射される。同様に、k+2回目のトラッキング制御でも、欠陥ビームとなるビーム1,9,17,25のいずれかで照射される。同様に、k+3回目のトラッキング制御でも、欠陥ビームとなるビーム1,9,17,25のいずれかで照射される。よって、1回のトラッキング制御で4画素ずつ描画する場合、欠陥画素数最大値は16となる。
これに対して、図13(b)では、トラッキング制御毎のトラッキング偏向によるオフセット付きの描画シーケンスの一例を示す。図13(b)では、トラッキング制御毎に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分ずつだけ余分に振り戻す図9に示した描画シーケンスを実施した場合を示している。図13(b)に示すように、トラッキング制御毎に、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29を1つずつ、ずらすことができることがわかる。よって、1回のトラッキング制御で4画素ずつ描画する場合、欠陥画素数最大値を4にできる。
ここで、欠陥ビームが発生する位置は、常に周期性をもつとは限らない。ランダムな位置に欠陥ビームが発生する場合もあり得る。例えばブランキングアパーチャアレイ機構204の複数の通過孔の一部に粒子状のゴミが付着してビーム通過を妨げている場合が考えられる図13(c)では、実施の形態1におけるトラッキング制御毎のトラッキング偏向によるオフセット付きの描画シーケンスの他の一例を示す。図13(c)では、ランダム欠陥として、ビーム7が欠陥ビームとしてさらに追加された場合を示す。図13(c)では、k回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム1,7,9,17,25のいずれかで照射されたサブ照射領域29は、k+1回目のトラッキング制御において、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズだけ+x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より1つずらすことができることがわかる。k+2回目のトラッキング制御において、オフセット量として2ビーム間ピッチPサイズだけ+x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より2つずらすことができることがわかる。k+3回目のトラッキング制御において、オフセット量として4ビーム間ピッチPサイズだけ+x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より4つずらすことができることがわかる。しかし、図13(c)の例では、k回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム7で照射されたサブ照射領域29(A部)が、k+2回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム9で照射されてしまう。同様に、k+2回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム7で照射されたサブ照射領域29(A’部)が、k+3回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム17で照射されてしまう。よって、1回のトラッキング制御で4画素ずつ描画する場合、欠陥画素数最大値を8にできる。
図13(d)では、実施の形態1におけるトラッキング制御毎のトラッキング偏向によるオフセット付きの描画シーケンスの他の一例を示す。図13(d)では、図13(c)とは異なるオフセットを付けた場合を示す。図13(d)では、k回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム1,7,9,17,25のいずれかで照射されたサブ照射領域29は、k+1回目のトラッキング制御において、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズだけ+x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より+x方向に1つずらすことができることがわかる。k+2回目のトラッキング制御において、オフセット量として1ビーム間ピッチPサイズだけ-x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より-x方向に1つずらすことができることがわかる。k+3回目のトラッキング制御において、オフセット量として4ビーム間ピッチPサイズだけ+x方向にオフセットされた位置からトラッキング制御を開始する。そのため、欠陥ビームで照射されるサブ照射領域29をk回目のトラッキング制御の場合より+x方向に4つずらすことができることがわかる。図13(d)では、図13(c)の場合と比べて、k+2回目のトラッキング制御の開始位置が異なることになる。これにより、k回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム7で照射されたサブ照射領域29が再度欠陥ビームで照射されることを無くすことができる。しかし、k+2回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム7で照射されたサブ照射領域29(A”部)は、k+1回目のトラッキング制御において、欠陥ビームとなるビーム1で照射されてしまう。よって、1回のトラッキング制御で4画素ずつ描画する場合、欠陥画素数最大値を8にできる。
以上のように、実施の形態1によれば、トラッキング動作をリセットする際のビームの振り戻し量(距離)と、複数の欠陥ビーム間の距離とが一致してしまう場合に、各小領域内で欠陥ビームにより照射される画素数を低減できる。
なお、実施の形態1では、例えば、図13に示したように、オフセットしない描画シーケンスと、オフセット量(距離)および方向を可変にした複数の描画シーケンスとを予め用意しておくと好適である。オフセット量(距離)および方向を可変にした複数の描画シーケンスは、図13の例に限るものではない。その他のオフセット量(距離)および方向を可変にした描画シーケンスであっても良い。オフセット量(距離)および方向を可変にした複数の描画シーケンスを予め用意しておく場合、オフセットしない描画シーケンスと、オフセット量(距離)および方向を可変にした複数の描画シーケンスを含む複数の描画シーケンス1,2,3,4,・・・の情報は、描画装置100に外部から入力され、記憶装置144に格納しておく。以下、実施の形態1では、複数の描画シーケンスを選択可能な場合の描画方法について説明する。
欠陥画素数最大値演算工程(S104)として、欠陥画素数最大値演算部52は、予め用意された複数の描画シーケンスについて、検出された欠陥ビームを含むマルチビーム20で描画した場合、描画シーケンス毎に欠陥画素数最大値を演算する。欠陥画素数最大値は、試料101の描画領域30或いはストライプ領域32内の全サブ照射領域29の中から欠陥ビームで照射された画素数が最も多くなるサブ照射領域29における欠陥ビームで照射された画素数を示す。上述した図13(a)の例では、欠陥画素数最大値が16となる。図13(b)の例では、欠陥画素数最大値が4となる。図13(c)及び図13(d)の例では、欠陥画素数最大値が8となる。但し、図13(c)及び図13(d)の例では、図13(b)の例とは、欠陥ビームの数が異なるので、そのまま単純に比較することができないことは言うまでもない。
描画シーケンス選択工程(S108)として、描画シーケンス選択部54は、複数の描画シーケンスの中から、欠陥画素数最大値が、より小さくなる描画シーケンスを選択する。言い換えれば、描画シーケンス選択部54は、k回目のトラッキング制御に対して、予め設定されたオフセットの複数の距離の中からk+1回目のトラッキング制御に使用するオフセット距離を選択する。
照射時間データ生成工程(S110)として、照射時間データ生成部56は、画素36毎の照射時間データを生成する。記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を実施して、照射時間データを生成する。照射時間データは、画素36毎に生成され、描画時間(照射時間)が演算される。例えば対象画素36にパターンを形成しない場合、ビーム照射が無となるので、描画時間ゼロ或いはビーム照射無の識別コードが定義される。ここでは、1回のマルチビームのショットにおける最大描画時間Ttr(最大露光時間)が予め設定される。実際に照射される各ビームの照射時間は、算出されたパターンの面積密度に比例して求めると好適である。また、最終的に算出される各ビームの照射時間は、図示しない近接効果、かぶり効果、ローディング効果等の寸法変動を引き起こす現象に対する寸法変動分を照射量によって補正した補正後の照射量に相当する時間にすると好適である。また、その他の要因による位置ずれを周囲の画素を含めた複数の画素の照射量の配分によって補正した補正後の照射量に相当する時間にすると好適である。よって、実際に照射される各ビームの照射時間は、ビーム毎に異なり得る。各ビームの描画時間(照射時間)は、最大描画時間Ttr内の値で演算される。
データ配列加工工程(S112)として、データ加工部58は、選択された描画シーケンスに沿って、画素毎に担当するビームが割り振られ、マルチビーム20のショット順に、及びシフトレジスタ11の配列順に、各ビームの照射時間データが並ぶように照射時間データを加工する。
データ転送工程(S114)として、描画制御部59は、加工された照射時間データを偏向制御回路130にデータ転送する。
描画工程(S120)として、描画機構150は、選択された描画シーケンスに沿って、マルチビーム20を用いて、試料101にパターンを描画する。描画機構150は、マルチビーム20の各ビームの描画位置をまとめて一緒にステージの移動に追従するようにビーム偏向によるk回目(kは自然数)のトラッキング制御を行いながら、1回のトラッキング制御あたりのトラッキング制御期間中に各ビームがビーム間ピッチサイズで囲まれた互いに異なるサブ照射領域29(矩形領域)内を、各ビームの照射位置を一緒にシフトしながら複数回のビームショットを行う。具体的には、以下のように動作する。
トラッキング工程(S122)として、描画機構150は、マルチビーム20の各ビームの描画位置をまとめて一緒にステージの移動に追従するようにビーム偏向によるk回目(kは自然数)のトラッキング制御を行う。具体的には、レーザ測長システム122が、ミラー210にレーザを照射して、ミラー210から反射光を受光することでXYステージ105の位置を測長する。測長されたXYステージ105の位置は、制御計算機110に出力される。制御計算機110内では、描画制御部59がかかるXYステージ105の位置情報を偏向制御回路130に出力する。偏向制御回路130内では、XYステージ105の移動に合わせて、XYステージ105の移動に追従するようにビーム偏向するための主偏向量データ(トラッキング偏向データ)を演算する。デジタル信号であるトラッキング偏向データは、DACアンプ134に出力され、DACアンプ134は、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して、トラッキング偏向電圧として主偏向器208に印加する。
ショット工程(S124)として、描画機構150は、k回目(kは自然数)のトラッキング制御を行いながら、1回のトラッキング制御あたりのトラッキング制御期間中に各ビームで、ビーム間ピッチPサイズで囲まれた互いに異なるサブ照射領域29(矩形領域)内の1つの画素をそれぞれ照射する(1ショット目のビーム照射を行う)。
シフト工程(S126)として、描画機構150は、k回目(kは自然数)のトラッキング制御を行いながら、1回のトラッキング制御あたりのトラッキング制御期間中に各ビームでそれぞれ照射する画素36を、ビーム間ピッチPサイズで囲まれた互いに異なるサブ照射領域29(矩形領域)内の次の画素に副偏向器209によるビーム偏向により一括してシフトする。
ショット工程(S128)として、描画機構150は、k回目(kは自然数)のトラッキング制御を行いながら、1回のトラッキング制御あたりのトラッキング制御期間中に各ビームで、ビーム間ピッチPサイズで囲まれた互いに異なるサブ照射領域29(矩形領域)内でシフトされた画素をそれぞれ照射する(2ショット目のビーム照射を行う)。
そして、1回のトラッキング制御あたりのショット数(例えば、4回)が行われるまで、シフト工程(S126)とショット工程(S128)とを繰り返す。これにより、3ショット目のビーム照射と、4ショット目のビーム照射を行う。
トラッキングリセット工程(S129)として、描画機構150は、k回目のトラッキング制御期間が経過後、k+1回目のトラッキング制御の開始位置として、トラッキング制御用の主偏向器208によるビーム偏向によって、トラッキング位置をk回目のトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置にさらにビーム間ピッチPサイズの整数倍のオフセットを付けた位置まで戻す。図9の例では、+x方向にビーム間ピッチPサイズのオフセットを付けた位置まで戻す。
そして、次のトラッキング制御を行いながら、1回のトラッキング制御あたりのショット数(例えば、4回)が行われるまで、ショットとシフトを繰り返す。以降、同様に、描画工程(S120)内の各内部工程を繰り返す。
そして、1つのストライプ領域32の描画が終了したら、XYステージ105の移動により次のストライプ領域32に照射領域34を移動させて、同様の動作を繰り返す。
ここで、上述した例では、描画開始前に、欠陥ビーム検出工程(S102)を実施することで、以降の描画処理について1つの描画シーケンスを選択する場合を説明したが、これに限るものではない。描画開始前の他に、さらに、例えば、数ストライプ領域32の描画処理が終了する毎に、欠陥ビーム検出工程(S102)を実施しても好適である。描画開始前には、欠陥ビームが検出されず、オフセットを付けない描画シーケンスで描画処理を開始しものの、数ストライプ領域32の描画処理が終了した時点で、欠陥ビームが検出される場合もあり得る。かかる場合、欠陥ビームが検出された以降のストライプ領域32の描画について、欠陥画素数最大値演算工程(S104)と、描画シーケンス選択工程(S108)と、選択された描画シーケンスに基づいたデータ配列加工工程(S112)と、を実施すればよい。言い換えれば、描画機構150は、欠陥ビームが検出された後のk+1回目のトラッキング制御の開始位置として、トラッキング制御用のビーム偏向によって、トラッキング位置を欠陥ビームが検出された後のk回目のトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置にさらにビーム間ピッチサイズの整数倍のオフセットを付けた位置まで戻す。そして、k+1回目のトラッキング制御を開始する。
以上のように、実施の形態1によれば、トラッキング動作をリセットする際のビームの振り戻し量(距離)と、複数の欠陥ビーム間の距離とが一致してしまう場合に、各サブ照射領域29(小領域)内で欠陥ビームにより照射される画素数を低減できる。その結果、描画精度の劣化を低減できる。
実施の形態2.
実施の形態1では、トラッキングリセットによってマルチビーム20のトラッキング位置を振り戻す場合に、トラッキング方向(-x方向)とは逆の振り戻し方向(x方向)或いは同方向(-x方向)にトラッキング制御用の主偏向器208によってオフセットする場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、振り戻し方向(x方向)と直交する方向(y方向)にオフセットする場合について説明する。実施の形態2における描画装置100の構成は、図1と同様である。また、実施の形態2における描画方法のフローチャート図は、図8と同様である。以下、説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
図14は、実施の形態2におけるトラッキング制御を説明するための図である。図14において、主偏向器208は、トラッキング方向(-x方向)或いは振り戻し方向(x方向)以外の方向にもマルチビーム20を一括偏向できる。そこで、実施の形態2では、振り戻し方向(x方向)と直交する方向(y方向)にオフセットする。(A,B,C)のAは、トラッキング制御の回数を示し、Bは、x方向へのオフセット量となるビーム間ピッチPサイズの倍数の値を示す。Cは、y方向へのオフセット量となるビーム間ピッチPサイズの倍数の値を示す。よって、例えば、(k+1,1,1)とは、k回目のトラッキングリセット時の振り戻し量としてビーム間ピッチPサイズの1倍だけ+x方向にオフセットされると共にビーム間ピッチPサイズの1倍だけ+y方向にオフセットされた位置からk+1回目のトラッキング制御を行う場合を示す。
まず、図14(a)に示すように、k回目のトラッキング制御(k,0,0)において、トラッキングが開始される時点での照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、図14(b)に示すように、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21は、前回の領域からx方向に8ビーム間ピッチ離れた領域に、オフセットとして+x方向にビーム間ピッチの整数倍(nP)が加算された合計(8+nP)ビーム間ピッチ離れた領域に主偏向器208によるビーム偏向によって移行する。そして、次のk+1回目のトラッキング制御が開始される。
そして、k+1回目のトラッキング制御(k+1,1,0)において、トラッキングが開始される時点での照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、図14(c)に示すように、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21は、前回の領域から+x方向のオフセット分を除いたx方向に7ビーム間ピッチ離れた領域に振り戻される。その際に、今度は、オフセットとして+y方向にビーム間ピッチの整数倍(nP)離れた領域に主偏向器208によるビーム偏向によって移行する。そして、次のk+2回目のトラッキング制御が開始される。
そして、k+2回目のトラッキング制御(k+2,0,1)では、x方向のトラッキング制御はk回目のトラッキング制御と同じでありながら、+y方向に1ビーム間ピッチ分ずれた領域21のトラッキング制御を行う。k+2回目のトラッキング制御において、トラッキングが開始される時点での照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、図14(d)に示すように、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21は、前回の領域からx方向に8ビーム間ピッチ離れた領域に、オフセットとして+x方向にビーム間ピッチの整数倍(nP)が加算された合計(8+nP)ビーム間ピッチ離れた領域に主偏向器208によるビーム偏向によって移行する。そして、次のk+3回目のトラッキング制御が開始される。
そして、k+3回目のトラッキング制御(k+3,1,1)では、x方向のトラッキング制御はk+1回目のトラッキング制御と同じでありながら、+y方向に1ビーム間ピッチ分ずれた領域21のトラッキング制御を行う。k+3回目のトラッキング制御において、トラッキングが開始される時点での照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、図14(a)に示すように、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21は、前回の領域から+x方向のオフセット分を除いたx方向に7ビーム間ピッチ離れた領域に振り戻される。同時に、+y方向のオフセット分を除いた-y方向に1ビーム間ピッチ離れた領域に主偏向器208によるビーム偏向によって移行する。そして、次のk+4回目のトラッキング制御が開始される。かかる動作を繰り返すことでトラッキングサイクルが実施される。なお、t=3T+Ttrの時点でトラッキングリセットしてから主偏向セトリングを開始し、時刻t=4Tを含む主偏向セトリング時間の経過後(t=4T+ΔTs)が、次のトラッキング制御が開始される時点となる。その間もXYステージ105は等速移動しているため、トラッキングリセットの際に、ΔTsにXYステージ105の移動速度を乗じた距離分、余分に振り戻すことは言うまでもない。
図15は、実施の形態2におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の一例を説明するための図である。図14(a)~図14(d)に示したようにトラッキング制御毎に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分ずつだけ余分に+x方向、+y方向、+x,y方向にそれぞれ振り戻す描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、ビーム1によって注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、右から2番目の画素列が欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。右から3番目の画素列が欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(17)によって描画できる。ビーム番号のかっこは、1行ずれたビームの番号を示す。右から4番目の画素列が欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(26)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した4画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/4に低減できる。
なお、主偏向器208によるビーム偏向によってx方向へのオフセットは行わず、y方向へのオフセットだけを行うことでも、欠陥ビームによって描画されるサブ照射領域29内の画素数を低減できる。例えば、k回目のトラッキング制御では、オフセット(0,0)、k+1回目のトラッキング制御では、オフセット(0,1)、k+2回目のトラッキング制御では、オフセット(0,2)、k+3回目のトラッキング制御では、オフセット(0,3)、でも良い。かっこ内の数値は、トラッキング開始位置でのx,y方向へのオフセット量となるビーム間ピッチPサイズの倍数の値を示す。但し、y方向へのオフセット量(距離)が大きくなると、照射領域34がストライプ領域32から外れてしまう距離が大きくなってしまうので、y方向へのオフセット量(距離)は例えば1倍等の小さい方が望ましい。
以上のように、実施の形態2によれば、トラッキング制御を行う主偏向器208によるビーム偏向によってy方向へのオフセットを行う、或いはx方向へのオフセットとy方向へのオフセットとを組み合わせることで、欠陥ビームによって描画されるサブ照射領域29内の画素数を低減できる。
実施の形態3.
上述した実施の形態では、オフセットのビーム偏向をトラッキング制御に用いる主偏向器208により行う場合について説明したが、オフセットのビーム偏向の仕方はこれに限るものではない。実施の形態3では、サブ照射領域29内でのシフト偏向に用いる副偏向器209により行う場合について説明する。実施の形態3における描画装置100の構成は、図1と同様である。また、実施の形態3における描画方法のフローチャート図は、図8と同様である。以下、説明する点以外の内容は、実施の形態1或いは実施の形態2と同様である。
実施の形態3では、シフト工程(S126)として、トラッキング制御期間中に、トラッキング制御用のビーム偏向に用いる主偏向器208とは別の副偏向器209を用いて、各ビームの描画位置をビーム間ピッチPサイズの整数倍(nP)のオフセットを行った位置にマルチビーム20を一括偏向する。
図16は、実施の形態3におけるトラッキング制御を説明するための図である。図16において、副偏向器209は、サブ照射領域29のサイズよりも大きい偏向幅でマルチビーム20を一括偏向できる。さらに、副偏向器209は、サブ照射領域29内のシフト偏向と共にオフセット偏向を実施できる。
まず、図16(a)に示すように、k回目のトラッキング制御において、トラッキングが開始される時点での照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するように主偏向器208がトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=2Tの時点で-x方向に例えば4ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。一方、その間、副偏向器209は、1ショット目の最大描画時間Ttrが経過後、マルチビーム20を一括して偏向することによって各ビームの描画位置(1ショット目の描画位置)を次の各ビームの描画位置(2ショット目の描画位置)にシフトする。
そして、2ショット目の最大描画時間Ttrが経過後、マルチビーム20を一括して偏向することによって各ビームの描画位置(2ショット目の描画位置)を次の各ビームの描画位置(3ショット目の描画位置)にシフトする。かかる偏向の際に、合わせて、副偏向器209は、オフセットとして+y方向にビーム間ピッチの整数倍(nP)だけ各ビームの描画位置(3ショット目の描画位置)をビーム偏向によって移行する。図16(b)に示すように、時刻t=2Tになった時点で、注目サブ照射領域29の下から2段目かつ右から1番目の画素から、注目サブ照射領域29のy方向に隣接したサブ照射領域29の下から3段目かつ右から1番目の画素へと副偏向器209によるマルチビーム20の一括偏向により描画対象画素がシフトされている。図16(b)に示すように、主偏向器208によるトラッキング制御を行っている描画対象ストライプ領域32内の領域21(実線)は、y方向にオフセットされている訳ではないが、実際にマルチビーム20を照射する照射領域34(点線)は、副偏向器209によるビーム偏向によりy方向にオフセットされていることになる。
そして、副偏向器209は、3ショット目の最大描画時間Ttrが経過後、マルチビーム20を一括して偏向することによって各ビームの描画位置(3ショット目の描画位置)を次の各ビームの描画位置(4ショット目の描画位置)にシフトする。その間、主偏向器208は、領域21の基準位置A0について、XYステージ105の移動に追従するようにトラッキング偏向を行う。トラッキングが開始される時点(時刻t=0)の基準位置A0は、t=4Tの時点で-x方向に例えば8ビーム間ピッチ移動する。その間、主偏向器208は、トラッキングを継続する。そして、図16(c)に示すように、4ショット目の最大描画時間Ttrが経過した時刻t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットする。
時刻t=3T+Ttrの時点でトラッキングをリセットすることで、ビームが振り戻され、図16(d)に示すように、次のトラッキング制御が開始される時点で、照射領域34に対応する描画対象ストライプ領域32内の領域21(実線)は、前回の領域からx方向に8ビーム間ピッチ離れた領域に主偏向器208によるビーム偏向によって移行する。これにより、図16(d)に示すように、主偏向器208によるトラッキング制御を行っている描画対象ストライプ領域32内の領域21(実線)は、k回目のトラッキング制御の開始位置に戻る。そして、次のk+1回目のトラッキング制御が開始される。
図17は、実施の形態3における偏向電圧を時間との関係の一例を示す図である。図17(a)では、縦軸にトラッキング用のDACアンプ(ユニット)134から出力される偏向電圧Vtrを示し、横軸に時間tを示す。図17(b)では、縦軸にx方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vxを示し、横軸に時間tを示す。図17(c)では、縦軸にy方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vyを示し、横軸に時間tを示す。図17(a)に示すように、k回目のトラッキング制御の後、k+1回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧は加算されない。同様に、k+2回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に2ビーム間ピッチのオフセット分の電圧は加算されない。同様に、k+3回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に3ビーム間ピッチのオフセット分の電圧は加算されない。一方、k回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、図17(c)に示すように、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+1回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+2回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+3回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。これにより、副偏向器209によるビーム偏向により、照射ビームをずらすことができる。
図18は、実施の形態3におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の一例を説明するための図である。図17(a)~図17(d)に示したようにトラッキング制御期間中のシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から1番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム1によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から1番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(1)によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から2番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム9によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から2番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(9)によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から3番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム17によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から3番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(17)によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から4番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム25によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から4番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(25)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した8画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/2に低減できる。
図19は、実施の形態3におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の他の一例を説明するための図である。図18の例では、トラッキング制御期間中のシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする描画シーケンスを説明したが、これに限るものではない。図19の例では、トラッキング制御期間中のシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする描画シーケンスで描画処理を進める場合を示している。かかるオフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から1番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム1によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から1番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって正常ビームのビーム2によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から2番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム9によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から2番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から3番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム17によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から3番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム18によって描画できる。同様に、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目と2段目かつ右から4番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム25によって描画されるものの、下から3段目と4段目かつ右から4番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム26によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した8画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/2に低減できる。
図20は、実施の形態3におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の他の一例を説明するための図である。図20の例では、トラッキング制御期間中のシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする場合と、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする場合とを組み合わせた描画シーケンスで描画処理を進める場合を示している。具体的には、各トラッキング制御期間中の1ショット目から2ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする。そして、同じトラッキング制御期間中の2ショット目から3ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする。そして、同じトラッキング制御期間中の3ショット目から4ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向と+y方向との両方にシフトする。
図20の例における描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から1番目の画素が、欠陥ビームのビーム1によって描画されるものの、下から2段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(1)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって正常ビームのビーム2によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(2)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から2番目の画素が、欠陥ビームのビーム9によって描画されるものの、下から2段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(9)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(10)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から3番目の画素が、欠陥ビームのビーム17によって描画されるものの、下から2段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(17)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム18によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(18)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から4番目の画素が、欠陥ビームのビーム25によって描画されるものの、下から2段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(25)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム26によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(26)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した4画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/4に低減できる。
図21は、実施の形態3におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の他の一例を説明するための図である。図21の例では、トラッキング制御期間中のシフト偏向の際に、シフト位置をランダムに変えると共に、さらに、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする場合と、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする場合とを組み合わせた描画シーケンスで描画処理を進める場合を示している。
図21の例では、k-1回目のトラッキングリセットの際、k回目のトラッキング制御期間中の1ショット目へのシフト偏向として、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする。そして、同じk回目のトラッキング制御期間中の1ショット目から2ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする。そして、同じk回目のトラッキング制御期間中の2ショット目から3ショット目へのシフト偏向の際には、オフセットしない。そして、同じk回目のトラッキング制御期間中の3ショット目から4ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向と+y方向との両方にシフトする。
そして、k+1回目のトラッキング制御期間中の1ショット目から2ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする。そして、同じk+1回目のトラッキング制御期間中の2ショット目から3ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする。そして、同じk+1回目のトラッキング制御期間中の3ショット目から4ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向と+y方向との両方にシフトする。
そして、k+1回目のトラッキングリセットの際、k+2回目のトラッキング制御期間中の1ショット目へのシフト偏向として、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする。そして、同じk+2回目のトラッキング制御期間中の1ショット目から2ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする。そして、同じk+2回目のトラッキング制御期間中の2ショット目から3ショット目へのシフト偏向の際には、オフセットしない。そして、同じk+2回目のトラッキング制御期間中の3ショット目から4ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向と+y方向との両方にシフトする。
そして、k+3回目のトラッキング制御期間中の1ショット目から2ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+y方向にシフトする。そして、同じk+3回目のトラッキング制御期間中の2ショット目から3ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向にシフトする。そして、同じk+3回目のトラッキング制御期間中の3ショット目から4ショット目へのシフト偏向の際に、オフセット量としてビーム間ピッチPサイズ分だけ余分に+x方向と+y方向との両方にシフトする。
図21の例における描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって正常ビームのビーム2によって描画できる。下から2段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(1)によって描画できる。下から3段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1によって描画される。そして、下から4段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(2)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から2番目の画素が、欠陥ビームのビーム9によって描画されるものの、下から2段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(9)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(10)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から3番目の画素が、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム18によって描画できる。下から2段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(17)によって描画できる。下から3段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17によって描画される。そして、下から4段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(18)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から4番目の画素が、欠陥ビームのビーム25によって描画されるものの、下から2段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(25)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム26によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(26)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した4画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/4に低減できる。さらに、欠陥ビームによって描画される画素同士を離すことができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、上述した実施の形態1~3の組合せの描画シーケンスについて説明する。実施の形態4における描画装置100の構成は、図1と同様である。また、実施の形態4における描画方法のフローチャート図は、図8と同様である。以下、説明する点以外の内容は、実施の形態1~3のいずれかと同様である。
図22は、実施の形態4における偏向電圧を時間との関係の一例を示す図である。図22(a)では、縦軸にトラッキング用のDACアンプ(ユニット)134から出力される偏向電圧Vtrを示し、横軸に時間tを示す。図22(b)では、縦軸にx方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vxを示し、横軸に時間tを示す。図22(c)では、縦軸にy方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vyを示し、横軸に時間tを示す。図22(a)に示すように、主偏向器208によるk回目のトラッキング制御の後、k+1回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+2回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に2ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+3回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に3ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。これにより、主偏向器208によるトラッキング制御用のビーム偏向により、照射ビームをずらすことができる。さらに、k回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、図22(c)に示すように、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+1回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+2回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。同様に、k+3回目のトラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。これにより、副偏向器209によるビーム偏向により、照射ビームをずらすことができる。このように、実施の形態4では、トラッキング制御毎の切り換えタイミングでの、主偏向器208によるオフセットによるビームずらしと、トラッキング制御期間中のタイミングでの、副偏向器209によるオフセットによるビームずらしとの両方を実施する。
図23は、実施の形態4におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の一例を説明するための図である。図23の例では、図22(a)~図22(c)に示したようにトラッキング制御毎に、主偏向器208によりオフセット量として+x方向にビーム間ピッチPサイズ分ずつだけ余分に振り戻すと共に、各トラッキング制御期間中に、副偏向器209によりオフセット量として+y方向にビーム間ピッチPサイズ分だけ余分にシフトする描画シーケンスで描画処理を進める。
図23の例における描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目及び2段目かつ右から1番目の2つの画素が、欠陥ビームのビーム1によって描画されるものの、下から3段目及び4段目かつ右から1番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(1)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目及び2段目かつ右から2番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。そして、下から3段目及び4段目かつ右から2番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(10)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目及び2段目かつ右から3番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム19によって描画できる。そして、下から3段目及び4段目かつ右から3番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(19)によって描画できる。
同様に、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目及び2段目かつ右から4番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム28によって描画できる。そして、下から3段目及び4段目かつ右から4番目の2つの画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(28)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した2画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/8に低減できる。
図24は、実施の形態4における偏向電圧を時間との関係の一例を示す図である。図24(a)では、縦軸にトラッキング用のDACアンプ(ユニット)134から出力される偏向電圧Vtrを示し、横軸に時間tを示す。図24(b)では、縦軸にx方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vxを示し、横軸に時間tを示す。図24(c)では、縦軸にy方向の副偏向器209用のDACアンプ(ユニット)132から出力される偏向電圧Vyを示し、横軸に時間tを示す。図24(a)に示すように、主偏向器208によるk回目のトラッキング制御の後、k+1回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+2回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に2ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。そして、k+3回目のトラッキング制御の際、主偏向X方向に3ビーム間ピッチのオフセット分の電圧を加算して印加する。これにより、主偏向器208によるトラッキング制御用のビーム偏向により、照射ビームをずらすことができる。さらに、各トラッキング制御期間中において、1ショット目の描画位置から2ショット目の描画位置にシフトする場合に、図22(c)に示すように、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。また、各トラッキング制御期間中において、2ショット目の描画位置から3ショット目の描画位置にシフトする場合に、図22(b)に示すように、副偏向x方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。さらに、各トラッキング制御期間中において、3ショット目の描画位置から4ショット目の描画位置にシフトする場合に、副偏向y方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算されると共に、副偏向x方向に1ビーム間ピッチのオフセット分の電圧が加算される。
図25は、実施の形態4におけるビームの振り戻し量と、複数の欠陥ビームの発生周期とが一致してしまう場合におけるサブ照射領域の描画状況の他の一例を説明するための図である。図25の例では、トラッキング制御毎に、主偏向器208によりオフセット量として+x方向にビーム間ピッチPサイズ分ずつだけ余分に振り戻すと共に、各トラッキング制御期間中に、副偏向器209によりオフセット量として+x方向、或いは/及び+y方向にビーム間ピッチPサイズ分だけ余分にシフトする描画シーケンスで描画処理を進める。
図25の例における描画シーケンスで描画処理を進めていくことで、注目サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から1番目の画素が、欠陥ビームのビーム1によって描画されるものの、下から2段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(1)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって正常ビームのビーム2によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から1番目の画素は、欠陥ビームのビーム1に代わって1行下側の正常ビームのビーム(2)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から2番目の画素が、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム10によって描画できる。そして、下から2段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(10)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって正常ビームのビーム11によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から2番目の画素は、欠陥ビームのビーム9に代わって1行下側の正常ビームのビーム(11)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム19によって描画できる。下から2段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(19)によって描画できる。下から3段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって正常ビームのビーム20によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から3番目の画素は、欠陥ビームのビーム17に代わって1行下側の正常ビームのビーム(20)によって描画できる。
また、注目サブ照射領域29の右から4番目の画素列が描画される場合、かかる注目サブ照射領域29では、下から1段目かつ右から4番目の画素は、が、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム28によって描画できる。下から2段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(28)によって描画できる。そして、下から3段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって正常ビームのビーム29によって描画できる。そして、下から4段目かつ右から4番目の画素は、欠陥ビームのビーム25に代わって1行下側の正常ビームのビーム(29)によって描画できる。このように、ビームの振り戻し量と複数の欠陥ビームの発生周期とが共に、8ビーム間ピッチで一致してしまう場合でも、注目サブ照射領域29内の全16画素が、すべて欠陥ビームによって描画されることなく、欠陥ビームによって描画される画素数を斜線で示した1画素、すなわち注目サブ照射領域29の1/16に低減できる。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、実施の形態2~4のいずれかの描画シーケンスについて、オフセット量(距離)および方向を可変にした複数の描画シーケンスを予め用意しておくと好適である。これらの複数の描画シーケンスを含む複数の描画シーケンス1,2,3,4,・・・の情報は、描画装置100に外部から入力され、記憶装置144に格納しておく。そして、欠陥画素数最大値演算工程(S104)及び描画シーケンス選択工程(S108)を実施し、複数の描画シーケンスの中から、欠陥画素数最大値が、より小さくなる描画シーケンスを選択すればよい。また、上述した例では、主偏向器208と副偏向器209との2段偏向を行う場合について説明したがこれに限るものではない。一段偏向(トラッキング+画素切り替えの両方を行う)の場合であっても構わない。マルチ荷電粒子ビームのブランキング機構はブランキングアパーチャアレイに限らない。たとえば機械的シャッターを用いたアパーチャアレイでブランキング制御をしてもよい。ブランキングアパーチャでブランキング制御する装置でなく、レーザをデジタルミラーデバイス(DMD)等でブランキングするマルチレーザービーム描画装置でもよい。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画方法及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、本発明の範囲に包含される。