JP7313124B2 - 防汚性織編物、及びその製造方法 - Google Patents

防汚性織編物、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステル系繊維を含む防汚性を有する織編物に関するものであり、特に汚染源として、泥、土等の粉体汚れに対する防汚性に優れ、制電性、吸水性を有する衣料に適した織編物に関する。また、本発明は、当該織編物の製造方法に関する。
ポリエステル繊維は、強度、染色堅牢度等に優れ、加工の汎用性が高いため、衣料や産業資材等の幅広い分野で利用されている。しかしながら、油性の汚れ、粉体汚れ等の汚染源に対して汚れやすい欠点があった。
このような要望に対し種々の防汚性を有するポリエステル繊維布帛が検討されている。例えば、特許文献1には、単繊維表面全体がポリエチレングリコール系樹脂で覆われている繊維構造物が、制電性及び防汚性を備え得ることを開示している。
また、特許文献2には、親水性セグメントを有するフッ素系撥水撥油剤、親水性ポリエステル系樹脂、非親水性フッ素系撥水撥油剤および架橋剤を特定比率で配合した防汚性成分を繊維表面に付着させた耐墨汁汚れ性合成繊維が開示されている。特許文献3には、ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤を含有し、ゼータ電位が-15mV以下である防汚性ポリエステル系合成繊維が開示されている。
特開昭62-162079号公報 特許第3800670号公報 特開平3-174068号公報
しかしながら、特許文献1は、繊維表面を親水化させて制電性及び防汚性を得るものであり、汗等に含まれる油性汚れに対しては効果があるものの泥等の粉体汚れには効果がなかった。また、特許文献2はフッ素系撥水撥油剤を含んだSGR(Soil Guard & Relaase)加工であり、泥等の粉体汚れに対してはむしろ悪影響を及ぼすものであった。これに対し特許文献3は、蛍光増白剤を練り込んだ繊維表面のゼータ電位を-15mV以下とした繊維であり、洗濯時の再汚染防止を目的とするもので、泥等の粉体汚れに対しては不十分であった。
本発明は、上記現状に鑑みたポリエステル系繊維を含む防汚性を有する織編物に関するものであり、特に汚染源として、泥、土等の粉体汚れに対する防汚性に優れ、更に、洗濯耐久性に優れた制電性、吸水性を有する織編物を提供することを課題とするものである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記に掲げる(1)~()の態様の発明を提供する。
(1)ポリエステル系繊維を含む織編物であって、
前記ポリエステル系繊維の表面に、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーとメラミン成分とを含有する被膜を含み、前記二官能ビニル系モノマーはフルオロアルキル基を含まないものであり、
かつ、100質量部の前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーに対し前記メラミン成分を133~250質量部含み、下記条件の工業洗濯後において、下記測定法による防汚性が4級以上であり、
KES法によって測定されたB値(剛性)が、織物である場合に0.020~0.2000gf・cm /cmであり、編物である場合に0.0020~0.0200gf・cm /cmであり、かつ
KES法によって測定された2HG5値(せん断角5°ヒステリシス)が、織物である場合に4.5~9.0gf/cmであり、編物である場合に1.5~4.0gf/cmであることを特徴とする防汚性織編物。
(工業洗濯条件)
JIS L 1096:2010に規定のF-2法(中温ワッシャ法)において、洗濯・乾燥操作を「温度60℃、時間300分の条件で1回洗濯した後、湯洗を温度40℃、時間50分と温度40℃、時間100分の条件で2回行った後に、タンブル乾燥機にて温度60℃、30分の条件で乾燥する」条件に変更し、当該洗濯・乾燥操作を合計5サイクル行う。
(防汚性の測定条件)
工業洗濯後の試料から縦10cm×横10cmの試験片を4枚作成し試験片4枚の重量を量る。JIS Z 8901 試験用粉体1(8種関東ローム層)を試験片4枚の総重量の1/10の量で測りとり、規格袋No.16(たて480mm×横340mm、厚み0.03mmのポリエチレン製袋)に試験片と同時に投入し、その後エアポンプにて約8600mLの空気を注入し、口をねじり、ねじった先を粘着テープを使用して止め口を閉じる。
その袋をICI型ピリングテスターの回転箱にセットし、毎分60 回転±2回転速度で60分間操作する。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏面中央部5回指ではじき,余分な汚れを取る。
なお、指ではじくときは二本指で行い、1回はじくごとに試験片を90度回転させ、計5回はじく。
汚れを付着させた試験片をJIS L 0217の付表 1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定する方法によって洗濯を行い、60℃で30分間タンブラー乾燥させる。
汚れを付着させる前の試験片および洗濯後の試験片の間に見える色差と、JIS L 0805に規定する汚染用グレースケールの色差とを比較し、判定する。判定は試験片4枚の平均値で表す。
(2)前記織編物の構成繊維の総量100質量部当たり、前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーが0.5~5質量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載の防汚性織編物。
(3)100質量部の前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーに対し、オキサゾリン化合物が1~20質量部含まれることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の防汚性織編物。
(4)前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率が、織編物の構成繊維の総量に対して1.0~5.0質量%であることを特徴とする、(1)~()の何れか1項に記載の防汚性織編物。
(5)上記条件の工業洗濯後において、摩擦帯電圧が1000V以下であることを特徴とする(1)~()の何れか1項に記載の防汚性織編物。
(摩擦帯電圧の測定条件)
JIS L 1094:2014の「織物及び編物の帯電性試験方法」に規定されているB法(摩擦帯電圧測定法)に準拠し、20℃、40%RH環境下での前記(6)上記条件の工業洗濯後において、吸水性が10秒以下であることを特徴とする、(1)~()の何れか1項に記載の防汚性織編物。
(吸水性の測定条件)
縦20cm×横20cmの試験片を作成し、この試験片に、JIS L-1907:2010の「7.1.1 滴下法」に規定されている方法により測定する。
(7)ポリエステル系繊維を含む織編物を、二官能ビニル系モノマー0.5~5質量%とメラミン成分0.5~10質量%とを含む処理液に接触させて、ラジカル重合する工程を実行した後に、乾燥工程に付することなく高速液流処理による湯洗い工程を実行することを特徴とする、(1)~()の何れか1項に記載の防汚性織編物の製造方法。
(8)前記処理液が、さらにオキサゾリン化合物を0.05~5質量%を含有することを特徴とする、()に記載の防汚性織編物の製造方法。
本発明の織編物は、当該ポリエステル系繊維の表面において、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーとメラミン成分とを含有する被膜を含むものであり、好ましくは、高速液流処理することによって、洗濯耐久性に優れた粉体汚れに対する防汚性と制電性及び吸水性を具備する。それ故、本発明の織編物は、泥等の粉体汚れに対する防汚性が要求されるにおいて着用される衣料の素材(粉体汚れ対策用の織編物)として、特に好適である。
実施例5で得られた防汚性織編物の表面を、分析走査電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製)を用いて撮影した写真である(倍率;100倍)。 比較例1で得られた織編物の表面を、分析走査電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製)を用いて撮影した写真である(倍率;100倍)。
以下、本発明にについて詳述する。
本発明は、ポリエステル系繊維を含む防汚性織編物である。当該ポリエステル系繊維の表面に、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーとメラミン成分とを含有する被膜を含むものであり、後述する測定法による防汚性が4級以上である粉体汚れに対して防汚性を有する。
[構成糸]
本発明の織編物は、構成糸として、ポリエステル系繊維(ポリエステル系単繊維を含むマルチフィラメント糸)を含む。
ポリエステル系繊維を構成するポリエステル樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;カチオン染色可染性ポリエステル、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは芳香族ポリエステル、更に好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
ポリエステル系繊維の単繊維繊度については、特に制限されないが、例えば、0.1~10.0dtex、好ましくは0.3~8.0dtex、更に好ましくは0.5~6.0dtexが挙げられる。単糸繊度が、0.1dtex以上であれば、ハリコシ感が付与され、衣料にした際に着用し易くなる。また、単糸繊度が、10.0dtex以下であれば、硬くなり過ぎず、風合が良好になる。
また、ポリエステル系繊維の総繊度については、特に制限されないが、例えば、30~300dtex、好ましくは50~250dtex、更に好ましくは70~180dtexが挙げられる。総繊度が50dtex以上であれば、織編物に十分な強度を付与することができ、また、総繊度が300dtex以下であれば、硬くなり過ぎず、風合が良好になる。
ポリエステル系繊維の構成フィラメント数については、使用する単繊維の単繊維繊度と総繊度に応じて定まるが、例えば、1~400本、好ましくは10~200本、更に20~100本が挙げられる。
ポリエステル系繊維の単繊維の断面形状については、特に制限されず、円形断面又は異形断面のいずれであってもよい。
また、ポリエステル系繊維には、付与すべき特性等に応じて、二酸化チタン、二酸化ケイ素、顔料等が含まれていてもよい。
ポリエステル系繊維は、仮撚加工が施されていない原糸であってもよく、また仮撚加工糸であってもよい。
本発明の織編物は、本発明の効果を損なわない範囲では、ポリエステル系繊維以外に他の繊維が構成繊維として含まれていてもよい。このような他の繊維としては、例えば、ナイロン、アクリル等の合成繊維;レーヨン等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。
本発明の織編物において、ポリエステル系繊維の混用率としては、所望の防汚性、制電性、吸水性が発現できることを限度として特に制限されないが、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%が挙げられる。
[織編物の組織及び密度]
本発明の織編物が織物である場合、少なくとも経糸及び緯糸の一方、好ましくは双方にポリエステル系繊維を使用し、経糸と緯糸で交差させて組織を形成すればよい。本発明の織編物を織物にする場合、その組織については、特に制限されないが、例えば、平、綾、朱子、及びこれらの変化組織等が挙げられる。
また、本発明の織編物が編物である場合、ポリエステル系繊維を用いて、糸のループの連続的によって組織を形成すればよい。本発明の織編物を編物にする場合、その組織については、特に制限されず、経編物又は緯編物のいずれであってもよい。経編物としては、例えば、デンビー編、コード編、アトラス編等が挙げられ、具体的にはトリコットハーフ、トリコットサテン等が例示される。また、緯編物としては、例えば、平編、ゴム編、パール編、スムース編等が挙げられ、具体的には、天竺、鹿の子、スムース等が例示される。
本発明の織編物が織物である場合、織密度については、当該織物の用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、経糸密度が、30~250本/2.54cm、好ましくは50~200本/2.54cm、更に好ましくは60~150本/2.54cm;且つ緯糸が、30~250本/2.54cm、好ましくは50~200本/2.54cm、更に好ましくは55~150本/2.54cmが挙げられる。
また、本発明の織編物が編物である場合、編密度については、当該編物の用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、40~100コース/2.54cm、好ましくは45~80コース/2.54cm;且つ30~80ウェール/2.54cm、好ましくは40~60ウェール/2.54cmが挙げられる。
ポリエステル系繊維を含む織編物は、ポリエステル系繊維を使用して製織編することにより得ることができる。
[風合い]
本発明にていうところの風合いとは、ハリ、コシ、ふくらみが良好であり、衣料に適したものであることをいう。その風合いの評価方法としては、例えば、KES法(KES-Fシステムによる方法)が挙げられる。
KES法とはカトーテック株式会社製「KESFB」システムを使用するものであり、詳細については、実施例にて後述する。
[防汚性]
本発明の織編物は、土、または泥等の粉体汚れに対する防汚性が顕著に優れるものである。具体的には、下記条件の工業洗濯後において、以下の手法にて測定される防汚性が4級以上である。
(工業洗濯条件)
JIS L 1096:2010に規定のF-2法(中温ワッシャ法)において、洗濯・乾燥操作を「温度60℃、時間300分の条件で1回洗濯した後、湯洗を温度40℃、時間50分と温度40℃、時間100分の条件で2回行った後に、タンブル乾燥機にて温度60℃、30分の条件で乾燥する」条件に変更し、当該洗濯・乾燥操作を合計5サイクル行う。
(防汚性の測定条件)
工業洗濯後の試料から縦10cm×横10cmの試験片を4枚作成し試験片4枚の重量を量る。JIS Z 8901 試験用粉体1(8種関東ローム層)を試験片4枚の総重量の1/10の量で測りとり、規格袋No.16(たて480mm×横340mm、厚み0.03mmのポリエチレン製袋)に試験片と同時に投入し、その後エアポンプにて約8600mLの空気を注入し、口をねじり、ねじった先を粘着テープを使用して止め口を閉じる。
その袋をICI型ピリングテスターの回転箱にセットし、毎分60 回転±2回転速度で60分間操作する。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏面中央部5回指ではじき,余分な汚れを取る。
なお、指ではじくときは二本指で行い、1回はじくごとに試験片を90度回転させ、計5回はじく。
汚れを付着させた試験片をJIS L 0217の付表 1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定する方法によって洗濯を行い、60℃で30分間タンブラー乾燥させる。汚れを付着させる前の試験片および洗濯後の試験片の間に見える色差と、JIS L 0805に規定する汚染用グレースケールの色差とを比較し、判定する。判定は試験片4枚の平均値で表す。
[ビニル系ポリマーによる表面処理]
本発明の織編物において、構成繊維であるポリエステル系繊維の表面には、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーとメラミン成分とを含有する被膜を含む。このように、特定構造のビニル系ポリマーおよびメラミン成分でポリエステル系繊維が被覆され、且つ後述する高速液流処理を経て製造されることによって、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性・吸水性に優れる。さらに好ましくは、加工ムラの抑制、及び良好な風合いを実現することが可能になる。
二官能ビニル系モノマーに含まれるアルキレンオキサイドを構成するアルキレン基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、2~5個、好ましくは2又は3個、更に好ましくは2個が挙げられる。また、当該アルキレン基の炭素数が3以上の場合、当該アルキレン基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
二官能ビニル系モノマーに含まれるアルキレンオキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば3~30個、好ましくは6~26個、更に好ましくは10~25個が挙げられる。このようなアルキレンオキサイドの付加モル数を充足することにより、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性をより一層好適に付与することが可能になる。
ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーとしては、具体的には、ポリオキシアルキレンの両端にアクリル基及び/又はメタクリル基が連結している化合物が挙げられ、より具体的には、ポリオキシアルキレンを含む、ジアクリレート、ジメタクリレート、エポキシジアクリレート、エポキシジメタクリレート等が例示される。
ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーの好適な例として、以下の一般式(1)又は(2)に示す化合物が挙げられる。
一般式(1)において、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である。R及びRとして、好ましくはメチル基が挙げられる。
一般式(1)において、Rは炭素数2~5のアルキレン基である。Rとして、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基(即ち、メチレン基又はプロピレン基)、更に好ましくは炭素数2アルキレン基(即ち、メチレン基)が挙げられる。Rのアルキレン基は、炭素数が3~5の場合には、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
一般式(1)において、nは3~30の整数である。工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性をより一層好適に付与しつつ、加工ムラをより一層効果的に抑制するという観点から、一般式(1)において、nは好ましくは6~26、特に好ましくは10~25が挙げられる。
一般式(2)において、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である。R及びRとして、好ましくはメチル基が挙げられる。
一般式(2)において、Rは炭素数2~5のアルキレン基である。Rとして、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基(即ち、メチレン基又はプロピレン基)が挙げられる。Rのアルキレン基は、炭素数が3~5の場合には、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
一般式(2)において、nは3~30の整数である。工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性をより一層好適に付与しつつ、加工ムラをより一層効果的に抑制するという観点から、一般式(2)において、nは好ましくは6~26、特に好ましくは10~25が挙げられる。
本発明の織編物において、構成繊維であるポリエステル系繊維総量に対する前記ビニル系ポリマーの量については、付与すべき防汚性、制電性、吸水性、加工ムラの抑制の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、構成繊維の総量100質量部当たり、前記ビニル系ポリマーが0.5~5質量部であることが好ましく、好ましくは0.5~4質量部、更に好ましくは1~3質量部が挙げられる。
前記ビニル系ポリマーの量が0.5質量部以上であると、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性がいっそう向上する。一方、5.0質量部以下であると、風合いにいっそう優れる。
本発明において、被膜にはメラミン成分が含有される。それにより、好ましくは、メラミン成分が、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーがラジカル重合したビニル系ポリマーに架橋する。これにより、工業洗濯耐久性に優れた防汚性を向上させ、さらに制電性及び吸水性をより一層向上させることが可能になる。
メラミン成分は、トリアジン環を含有し重合性官能基を少なくとも2個有する化合物が縮合して得られる熱硬化樹脂であればよく、具体的にはトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。当該メラミン成分としては、例えば、「リケンレジンMM-3C」、「リケンレジンMM-35」(以上、三木理研工業株式会社製)、「ベッカミンM-3」(DIC北日本ポリマ株式会社製)等のトリメチロールメラミン;「リケンレジンMM-601」、「リケンレジンMM-630」(以上、三木理研工業株式会社製)(以上、三木理研工業株式会社製)等のヘキサメチロールメラミン等の市販品を使用することができる。
前記ビニル系ポリマーに対するメラミン成分含有量は、使用する二官能ビニル系モノマー100質量部当たり、メラミン成分が1~250質量部が好ましく、より好ましくは5~240質量部、更に好ましくは10~210質量部となる比率で用いればよい。
メラミン成分が1質量部以上であると、粉体に対する防汚性にいっそう優れ、250質量部以下であると、防汚性を有しつつ、最適なハリ、コシのある風合いにいっそう優れる。
本発明において、前記被膜には、オキサゾリン化合物が含まれることが好ましい。オキサゾリン化合物は、前記ビニル系ポリマーに架橋することで、メラミン成分との相乗効果により、洗濯浴中にある汚れを再付着させることを防ぐ効果にいっそう優れ、顕著に優れた繰り返し工業洗濯による再汚染耐久性を付与することが可能になる。
オキサゾリン化合物は、オキサゾリン基含有されている水溶性ポリマーで水系架橋剤であればよい。当該オキサゾリン含有ポリマーとしては、例えば、「エポクロスWS-300」、「エポクロスWS-500」、「エポクロスWS-700」(以上、株式会社日本触媒)等の市販品を使用することができる。
前記ビニル系ポリマーに対するオキサゾリン化合物含有量は、使用する二官能ビニル系モノマー100質量部当たり、オキサゾリン化合物が1~50質量部が好ましく、より好ましくは1~40質量部、更に好ましくは2~30質量部となる比率で用いればよい。1質量部以上であると、繰り返し工業洗濯耐久性にいっそう優れる。一方、50質量部以下であると風合いにいっそう優れる。
本発明の織編物において、好ましくは、後述する高速液流処理にて湯洗いし揉まれることで、構成繊維であるポリエステル系繊維の表面において、前記ビニル系ポリマー、メラミン成分を含む被膜が、各々の構成繊維に均一に形成されている。これにより、風合い、ハリ、コシ、ふくらみがいっそう良好となるとともに、表面に粉体等の汚れが残留し難くなり、防汚性にいっそう優れる。
本発明の織編物において、前記ビニル系ポリマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率が、織編物の構成繊維の総量に対して1.0~5.0質量%であることが好ましく、2.0~4.0質量%であることがより好ましい。1.0質量%以上であることで、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性をいっそう発現することができ、5.0質量%以下であると、加工ムラの抑制、風合いにいっそう優れる。
ポリエステル系繊維の表面への被膜の形成は、例えば後述するように、ポリエステル系繊維を含む織編物に対して、二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分を付着させてラジカル重合させることにより行われる。そのため、本発明の織編物において、ポリエステル系繊維の表面に対する被膜の付着態様としては、(i)ポリエステル系繊維の表面に前記ビニル系ポリマー、およびメラミン成分が化学的に結合している態様、(ii)ポリエステル系繊維の表面で化学的結合を介することなく前記ビニル系ポリマー、およびメラミン成分が付着している態様の内、いずれか一方の態様又は双方の態様の組みあわせが想定される。
本発明の織編物は、例えば、ポリエステル系繊維の表面に二官能ビニル系モノマーを接触させてラジカル重合した後に、高速液流処理によって、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーなどを除去することによって得られる。このように、二官能ビニル系モノマーのラジカル重合後に高速液流処理を施すことによって、二官能ビニル系モノマー、メラミン成分を含む被膜が、構成繊維の各々に均一に形成された状態となり、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性を付与しつつ、加工ムラを抑制し、風合いを良くすることが可能になる。さらに、モノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーが除去されて、表面がいっそう均一な状態となっていることにより、泥等の汚れが付着し難くなり、防汚性にいっそう優れるものとなる。そして、被膜が均一に形成された状態の指標としては、例えば、後述のKES値が本発明の好ましい範囲であることなどが挙げられる。
以下、本発明の織編物において、ポリエステル系繊維の表面に前記ビニル系ポリマー、およびメラミン成分を含む被膜を形成させる方法について詳述する。
まず、ポリエステル系繊維を用いて製織編された織編物を準備する。織編物は、前記ビニル系ポリマー、およびメラミン成分を付着させる前に、必要に応じて、糊抜き精錬、プレセット、染色等の加工に供されていてもよい。
次いで、準備した織編物に、二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分を接触させる。織編物に二官能ビニル系モノマーを接触させるには、織編物に対して二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分を含む処理液を含浸させればよい。
前記処理液としては、二官能ビニル系モノマー、メラミン成分、必要に応じてオキサゾリン化合物を分散又は溶解させた水溶液である。
前記処理液における二官能ビニル系モノマーの濃度については、被膜に含有する前記ビニル系ポリマーの量、ラジカル重合の条件等に応じて適宜設定することができ、本発明においては、0.5~5質量%であり、好ましくは1~5質量%が挙げられる。この範囲であると、加工ムラを抑制し易く、風合いがより良好となるとともに、制電性、吸水性にいっそう優れるものとなる。
前記処理液におけるメラミン成分の濃度は、0.5~10質量%であり、好ましくは1~8質量%があげられる。この範囲であると、加工ムラを抑制し易く、風合いがより良好となるとともに、粉体汚れに対する防汚性にいっそう優れるものとなる。
前記処理液には、二官能ビニル系モノマー、メラミン成分に加え、オキサゾリン化合物が含有されていることが好ましい。前記処理液におけるオキサゾリン化合物の濃度は、0.05~5質量%であることが好ましく、0.07~3質量%であることがより好ましい。この範囲であると、加工ムラを抑制し易く、風合いがより良好となるとともに、工業洗濯耐久性にいっそう優れるものとなる。
また、前記処理液には、二官能ビニル系モノマーのラジカル重合を促進させるために、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、硝酸セリウムアンモニウム、過酸化水素等の無機系重合開始剤;2,2′-アゾビス(2-アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2′-アゾビス(N,N′-ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2-(カルバモイラゾ)イソブチロニトリル等の有機系ラジカル開始剤等のラジカル開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記処理液における重合開始剤の濃度については、特に制限されず、使用する重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、二官能ビニル系モノマー100質量部当たり、重合開始剤が0.1~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、更に好ましくは0.5~10質量部が挙げられる。
また、前記処理液には、必要に応じて、重合抑制剤が含まれていてもよい。重合抑制剤が含まれている場合には、低温域での重合を抑制することができ、所望の重合度を有するビニル系ポリマーを得ることが容易になる。重合抑制剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキシフェノール等のキノン類;第三ブチルカテコール等のポリオキ化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルヒドロキシルアミン等の有機硫黄化合物;ニトロ化合物;ジエチルヒドロキシルアミン、イソプロピルヒドロキシルアミン等のアミノ化合物等が挙げられる。これらの重合抑制剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記処理液における重合抑制剤の濃度については、特に制限されず、使用する重合抑制剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、二官能ビニル系モノマー100質量部当たり、重合抑制剤が0.01~2質量部、好ましくは0.015~1.5質量部、更に好ましくは0.02~1質量部が挙げられる。
また、前記処理液には、重合効率を高めるために、必要に応じて、過酸化物と還元性物質とからなるレドックス系開始剤が含まれていてもよい。レドックス系開始剤に使用される過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられ、レドックス系開始剤に使用される還元性物質として、スルホキシル酸ナトリウムとホルマリンとの反応物、ハイドロサルファイト等が挙げられる。
織編物に対して前記処理液を含浸させる量については前記、処理液中の二官能ビニル系モノマーの濃度、被膜に含有されるビニル系ポリマーの量、ラジカル重合の条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、織編物100質量部当たり、前記処理液が20~150質量部、好ましくは30~120質量部、更に好ましくは50~100質量部が挙げられる。
織編物に対して前記処理液を含浸させる手法については、特に制限されず、パディング法、スプレー法、キスロールコータ法、スリットコータ法等の公知の方法を適宜用いればよい。
織編物に前記処理液を含浸させた後に、二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分をラジカル重合させる。
二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分をラジカル重合させるには、例えば、湿熱処理(飽和蒸気処理)、吸尽処理、電子線処理、紫外線処理、マイクロ波処理等を行えばよい。ラジカル重合の条件については、採用する処理の種類、処理液中の二官能ビニル系モノマー、またはメラミン成分の濃度、ビニル系ポリマー、またはメラミン成分の量等に応じて適宜選定すればよいが、例えば、湿熱処理の場合であれば、80~180℃、好ましくは98~150℃のスチームの存在下で1~30分間、好ましくは3~10分間処理すればよい。
二官能ビニル系モノマー、およびメラミン成分のラジカル重合の後に、得られた織編物(ポリエステル系繊維の表面に被膜が形成された織編物)を、乾燥工程に付することなく、高速液流処理による洗浄に供する。このように高速液流処理に供することによって、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーが適切に除去され、ポリエステル系繊維の表面にビニル系ポリマーを含む被膜が均一に形成された状態になる。被膜が不均一である部分には、粉体等の汚れが残留し易い傾向にあるが、本発明の織編物では、被膜が均一に形成されているために防汚性に優れるとともに、工業洗濯耐久性に優れた制電性及び吸水性を備えつつ、加工ムラを抑制することが可能になる。また、このような高速液流処理によって、織編物が硬い風合いになるのを抑制し、後述するKES値の範囲を好ましい範囲とすることができ、例えば更に残存するモノマーの溶出によって変色が発現したり、染色堅牢度が低下したりするのを抑制することも可能になる。なお、乾燥工程とは水を蒸発させる工程であり、例えば、室温以上の温度で乾燥させる工程である。
本発明において、高速液流処理とは、高速で噴射されている洗浄液に織編物を晒す洗浄処理である。
好適な高速液流処理として、高速で噴射されている洗浄液に織編物を通過させることによって液流洗浄する処理が挙げられる。以下、かかる態様の高速液流処理について詳述する。
高速液流処理は、通過している織編物に対して一方向から洗浄液を噴射してもよいが、液流染色等に使用されているフィラメントノズルやスパンノズル等を使用して、通過している織編物に対して全方向から洗浄液を噴射することが好ましい。このように通過している織編物に対して全方向から洗浄液を噴射することによって、残存するモノマーをより効率的に除去することが可能になる。フィラメントノズルは、ノズルパイプと外輪(ノズルボス)とを組み合わせることによって構成されており、フィラメントノズルの内部空間を通過する織編物に対して、当該ノズルパイプとノズルボスとの間の隙間から洗浄液を噴射できるように構成されている。また、スパンノズルは、中空状の円錐台形の部材を1~3段に組み合わせることによって構成されており、スパンノズルの内部空間を通過する織編物に対して、当該部材の隙間から洗浄液を噴射できるように構成されている。
また、高速液流処理において、織編物に対して洗浄液を噴射する角度については、高速液流処理の時間、洗浄液の温度等に応じて適宜設定すればよいが、通常、通過している織編物の進行方向に対して10°以上の角度で洗浄液を噴射することが重要になる。このような角度で洗浄液を噴射することによって、織編物に十分な押圧を付与し、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーを所望の程度にまで除去して、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性・吸水性、加工ムラの抑制、及び良好な風合いを実現することが可能になる。洗浄液を噴射する角度としては、通過している織編物の進行方向に対して、好ましくは10~40°、更に好ましくは15~40°が挙げられる。
高速液流処理において、高速で噴射されている洗浄液に対して、織編物を通過させる速度については、特に制限されないが、例えば、50~600m/分、好ましくは100~500m/分、更に好ましくは200~400m/分が挙げられる。なお、高速液流処理において、織編物は噴射される洗浄液の押圧によって一方向に移動するので、高速で噴射されている洗浄液に織編物を通過させる手段は特段設けなくてもよい。
高速液流処理において、洗浄液の噴射条件については、特に制限されないが、例えば、フィラメントノズルを使用する場合であれば、ノズル径(フィラメントノズルの内部空間の直径;織編物の通過方向に対する垂直方向の断面の直径)が70~130mm且つ洗浄液を噴射する隙間が2~6mmであるフィラメントノズルを使用し、洗浄液を噴霧する際のノズル圧が0.15~0.5Mpa、好ましくは0.15~0.4Mpa、更に好ましくは0.15~0.3Mpaに設定し、更に洗浄液の噴射時の流量を800~1500l/分、好ましくは900~1400l/分、更に好ましくは1000~1300l/分となるように設定すればよい。
また、高速液流処理において、噴射されている洗浄液に織編物を通過させる回数については、残存するモノマーを所望の程度にまで除去できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば3~60回、好ましくは5~50回、更に好ましくは10~40回が挙げられる。ここで、噴射されている洗浄液に織編物を通過させる回数とは、高速液流処理によって織編物1カ所当たり、噴射されている洗浄液を通過する回数である。
織編物に対する高速液流処理は、織編物の端部同士を繋いだロープ状にして、噴射されている洗浄液に織編物が繰り返し通過するように、ロープ状の織編物を循環させることによって行うことが望ましい。
高速液流処理に使用される洗浄液は、水であればよいが、残存するモノマーの除去効率を高めるために、必要に応じて界面活性剤が添加された水溶液であってもよい。
高速液流処理において、洗浄液の温度については、特に制限されないが、例えば、40~100℃、好ましくは50~90℃、更に好ましくは60~80℃が挙げられる。このような温度の洗浄液を使用することによって、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーを効率的に除去することができる。
高速液流処理を行う装置については、特に制限されないが、布帛の染色に使用されている液流染色機を好適に使用することができる。液流染色機は、布帛を滞留させる染色槽と、当該染色槽の両端部を連結している移送管と、移送管の先端に設けられ、処理液(本発明の場合は洗浄液)を噴射する噴射ノズルとを有し、無端ループ状に連結された布帛が、当該染色槽の出口部から移送管に移動し、当該移送管内を処理液と共に移送され、再び染色槽に戻るように循環するように構成されている装置である。噴射ノズルの角度等の条件を前記範囲に調整した液流染色機を使用することによって、本発明における高速液流処理を効率的に行うことができる。液流染色機に設けられる噴射ノズルは、前述の通り、フィラメントノズルやスパンノズル等を使用すればよいが、好ましくはフィラメントノズルである。
斯くして高速液流処理を行った後に、乾燥処理を行うことにより本発明の織編物が得られる。また、乾燥処理後の本発明の織編物には、必要に応じて、皺伸ばし等の加工を施してもよい。
本発明の織編物の特性について記述する。なお、特性においては工業洗濯耐久性に優れるものであり、工業洗濯の条件においては下記の通りである。
(工業洗濯の条件)
JIS L 1096:2010に規定のF-2法(中温ワッシャ法)において、洗濯・乾燥操作を「温度60℃、時間300分の条件で1回洗濯した後、湯洗を温度40℃、時間50分と温度40℃、時間100分の条件で2回行った後に、タンブル乾燥機にて温度60℃、30分の条件で乾燥する」条件に変更し、当該洗濯・乾燥操作を合計5サイクル行う。
[特性]
(摩擦帯電圧)
本発明の織編物は、工業洗濯耐久性に優れた制電性を有している。本発明の織編物が有する制電性の好適な例として、上記方法での工業洗濯後に、下記試験方法で測定される摩擦帯電圧が、織編物の全ての方向において、1000V以下であることが好ましく、より好ましくは50~900Vである。
<試験方法>
(摩擦帯電圧の測定条件)
JIS L 1094:2014の「織物及び編物の帯電性試験方法」に規定されているB法(摩擦帯電圧測定法)に準拠し、20℃、40%RH環境下での前記工業洗濯後の織編物の摩擦帯電圧を測定する。
(吸水性)
本発明の織編物は、工業洗濯耐久性に優れた吸水性を有している。本発明の織編物が有する吸水性の好適な例として、上記方法での工業洗濯後に、下記試験方法で測定される吸水性が10秒以下であることが好ましく、より好ましくは5秒以下、特に好ましくは3秒以下が挙げられる。
<試験方法>
(吸水性の測定条件)
前記工業洗濯後の織編物から、縦20cm×横20cmの試験片を作成する。試験片に、JIS L-1907:2010の「7.1.1 滴下法」に規定されている方法により測定する。
(防汚性)
本発明においては、下記測定方法における防汚性が4級以上である。
(防汚性の測定条件)
工業洗濯後の試料から縦10cm×横10cmの試験片を4枚作成し試験片4枚の重量を量る。JIS Z 8901 試験用粉体1(8種関東ローム層)を試験片4枚の総重量の1/10の量で測りとり、規格袋No.16(たて480mm×横340mm、厚み0.03mmのポリエチレン製袋)に試験片と同時に投入し、その後エアポンプにて約8600mLの空気を注入し、口をねじり、ねじった先を粘着テープを使用して止め口を閉じる。
その袋をICI型ピリングテスターの回転箱にセットし、毎分60 回転±2回転速度で60分間操作する。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏面中央部5回指ではじき,余分な汚れを取る。
なお、指ではじくときは二本指で行い、1回はじくごとに試験片を90度回転させ、計5回はじく。
汚れを付着させた試験片をJIS L 0217の付表 1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定する方法によって洗濯を行い、60℃で30分間タンブラー乾燥させる。汚れを付着させる前の試験片および洗濯後の試験片の間に見える色差と、JIS L 0805に規定する汚染用グレースケールの色差とを比較し、判定する。判定は試験片4枚の平均値で表す。
(風合い)
本発明の織編物は、ハリ、コシ、及びふくらみがある風合いを有している。本発明の織編物が有する風合いの好適な例として、上記の工業洗濯を施した後に、後述の実施例にて説明する試験方法で測定されるKES値が、下記の範囲であることが好ましい。また、織編物表面に被膜がより均一に形成されていると、KES値が、下記の範囲を満足する傾向となる。
<曲げ特性>
B値(剛性)としては、例えば、織物である場合は、0.0200~0.2000gf・cm/cmであることが好ましく、編物である場合は、0.0020~0.0200gf・cm/cmであることが好ましい。2HB値(反発性)としては、例えば、織物である場合は0.040~0.100gf・cm/cmであることが好ましく、編物である場合は、0.0100~0.050gf・cm/cmであることが好ましい。曲げ特性が上記範囲であることで、柔らかすぎず反発性が損なわれることない一方で、硬すぎず着心地がいっそう良好となる。
<せん断特性>
G値(剛性)としては、例えば、織物である場合は、1.01~2.00gf・cm/degであることが好ましく、編物である場合は、0.50~1.00gf・cm/degであることが好ましい。2HG値(せん断角0.5°ヒステリシス)としては、例えば、織物である場合は、0.5~1.0gf/cmであることが好ましく、編物である場合は、0.50~2.00gf/cmであることが好ましい。2HG5値(せん断角5°ヒステリシス)としては、例えば、織物である場合は、4.5~9.0gf/cmであることが好ましく、編物である場合は、1.5~4.0gf/cmであることが好ましい。せん断特性が上記範囲であると、回復性にいっそう優れ、着心地が良好となる。
<表面特性>
MIU値(摩擦係数)としては、例えば、織物である場合は、0.100~0.200であることが好ましく、編物である場合は、0.100~0.200であることが好ましい。MMD値(摩擦係数の変動)としては、例えば、織物である場合は、0.0700~0.900であることが好ましく、編物である場合は、0.010~0.020であることが好ましい。SMD値(表面の粗さの変動)としては、例えば、織物である場合は9.5~9.9μmであることが好ましく、編物である場合は2.000~3.000μmであることが好ましい。表面特性が上記範囲であると、ざらざらし過ぎることがなく着心地がいっそう良好となり、肌触りがよく、生地がやわらかくなる。
KES値を上記範囲とするために、例えば、ラジカル重合の際の条件または処理液組成を適切に調整したり、二官能ビニル系モノマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の固着率を調整したり、適切な条件で高速液流処理を行ったりすることができる。
[用途]
本発明の織編物は、工業洗濯耐久性に優れた防汚性特に泥汚れなどの粉体汚れに顕著に優れ、粉体汚れ対策用の織編物として好ましく使用される。さらに吸水性、制電性も有しているので、制電性や帯電性が要求される衣料の素材として好適に使用される。例えば、スポーツ、ユニフォーム分野等のパンツ、シャツ、作業着等、医療機器、医薬、電子産業、精密機器、食品加工等の分野で使用される作業着;研究所、医療機関、介護機関等の分野で使用される白衣等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。但し、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
1.測定・試験方法
以下の実施例及び比較例における測定及び評価は下記の方法に従って行った。
(1)二官能ビニル系モノマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率の測定
各織物について、以下の式に従って、固着率(%)を求めた。
固着率(%)={(W1-W0)/W0}×100
W0:処理液で処理する前の、織編物の単位面積当たりの重量
W1:処理液で処理、および高速液流処理した後に得られた織編物の単位面積当たりの重量
(2)工業洗濯の手法
JIS L 1096:2010に規定のF-2法(中温ワッシャ法)に準じ、温度60℃、時間300分の条件で1回洗濯した後、湯洗を温度40℃、時間50分と温度40℃、時間100分の条件で2回行った後に、タンブル乾燥機にて温度60℃、30分の条件で乾燥した。これらの操作を1サイクルとして、合計5サイクル行った。
(3)制電性の測定
JIS L 1094:2014の「織物及び編物の帯電性試験方法」に規定されているB法(摩擦帯電圧測定法)に準拠し、20℃、40%RH環境下での、工業洗濯後の各織編物の摩擦帯電圧を測定した。
(4)吸水性の測定
工業洗濯後の各織編物から、縦20cm×横20cmの試験片を作成した。試験片に、JIS L-1907:2010の「7.1.1 滴下法」に規定されている方法にて測定した。
(5)風合い
工業洗濯後の各織編物から、縦20cm×横20cmの試験片を作成した。KES法(川端式評価法)を用いて曲げ剛性、せん断性、表面特性を測定した。詳しくは、下記の通り。
(曲げ剛性)
KESFB2-A(カトーテック株式会社製)を使用し、曲げ剛性(B)と曲げヒステリシス幅を求めた。
(せん断性)
KESFB1-A(カトーテック株式会社製)を使用し、1cm幅あたりのせん断性(G)、せん断角φ0.5°におけるせん断ヒステリシス幅(2HG)、せん断角φ5°におけるせん断ヒステリシス幅(2HG5)を求めた。
(表面特性)
KESFB4-A(カトーテック株式会社製)を使用し、平均摩擦係数(MIU)、摩擦係数の変動(MMD)、表面の凹凸の変動(SMD、単位;μm)を求めた。
(6)防汚性
工業洗濯後の試料から縦10cm×横10cmの試験片を4枚作成し試験片4枚の重量を量る。JIS Z 8901 試験用粉体1(8種関東ローム層)を試験片4枚の総重量の1/10の量で測りとり、規格袋No.16(たて480mm×横340mm、厚み0.03mmのポリエチレン製袋)に試験片と同時に投入し、その後エアポンプにて約8600mLの空気を注入し、口をねじり、ねじった先を粘着テープを使用して止め口を閉じる。
その袋をICI型ピリングテスターの回転箱にセットし、毎分60 回転±2回転速度で60分間操作する。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏面中央部5回指ではじき,余分な汚れを取る。
なお、指ではじくときは二本指で行い、1回はじくごとに試験片を90度回転させ、計5回はじく。
汚れを付着させた試験片をJIS L 0217の付表 1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定する方法によって洗濯を行い、60℃×30分間タンブラー乾燥させる。汚れを付着させる前の試験片および洗濯後の試験片の間に見える色差と、JIS L 0805に規定する汚染用グレースケールの色差とを比較し、判定する。判定は試験片4枚の平均値で表す。
2.織物の製造
参考例1
経糸及び経糸として総繊度167デシテックス/72フィラメントのポリエステル仮撚糸を用い、経糸密度108本/2.54cm、緯糸密度59本/2.54cmの2/2綾織物を製織した。得られた綾織物を通常の方法で精練し、テンター(株式会社市金工業社製)にて190℃で30秒間プレセットを行った。次いで、液流染色機(「サーキュラーMF」、株式会社日阪製作所製)を用いて、下記染色処方で、温度130℃、時間30分の条件で染色し、目付180g/mの白色の綾織物を得た。
<染色処方>
・蛍光染料 1%o.m.f
・酢酸(48%) 0.2cc/l
・水 残部
なお、蛍光染料は、「Hakkol STR」(昭和化学工業株式会社製)を使用した。
次に、この綾織物を下記処方1に示す処理液に浸漬した後、マングルで70質量%の絞り率で絞り、乾燥工程に付することなく、Jボックススチーマー(京都機械株式会社製)にて103℃の飽和蒸気処理を5分間行い、二官能ビニル系モノマーのラジカル重合を行った。
<処方1>
・二官能ビニル系モノマーA 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.3質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 3質量%
・オキサゾリン化合物40質量%含有水溶液 0.3質量%
・水 残部
なお、二官能ビニル系モノマーAは、ポリエチレングリコールジメタクリレート(一般式(1)において、R及びRがメチル基、Rがエチレン基、nが23である化合物)(新中村化学工業株式会社製)を使用し、トリメチロールメラミン80重量%含有水溶液は、「ベッカミンM-3」(三木理研工業株式会社製)を使用した。また、オキサゾリン化合物40質量%含有水溶液は「エポクロスWS500」(日本触媒株式会社製)を使用した。以下の実施例および比較例においても、同様である。
その後、高速液流処理を行った。高速液流処理は、具体的には、液流染色機(「サーキュラーMF」、株式会社日阪製作所製)を用いて、洗浄液の噴射角度(織物の進行方向に対する洗浄水の噴射角度)が40°であるフィラメントノズル(ノズル径90mm、洗浄液を噴射する隙間4mm)を装着し、洗浄水として水を使用して、ノズル圧0.2Mpa、洗浄液の噴射時の流量1200l/分、布速300m/分、浴比1:10、温度60℃で5分間の条件で、織物(長さ(50m/反×6反=300m)をエンドレスのロープ状にして循環させることにより行った。
次いで、ドラム乾燥機にて120℃、2分間の条件で乾燥を行い、テンターにて160℃、1分間のセットを行い、織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率は2.4%であった。
参考例2
処方1の処理液からオキサゾリン化合物を抜いた、下記処方2の処理液を使用したこと以外は、参考例1と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は2.3%であった。
<処方2>
・二官能ビニル系モノマーA 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.3質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 3質量%
・水 残部
(実施例3)
処方2の処理液に代えて、下記処方3の処理液を使用したこと以外は、参考例2と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は3.0%であった。
<処方3>
・二官能ビニル系モノマーA 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.4質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 5質量%
・水 残部
(実施例4)
処方2の処理液に代えて、下記処方4の処理液を使用したこと以外は、参考例2と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は3.6%であった。
<処方4>
・二官能ビニル系モノマーA 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.5質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 7質量%
・水 残部
(実施例5)
処方2の処理液に代えて、下記処方5の処理液を使用したこと以外は、参考例2と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は2.3%であった。
<処方5>
・二官能ビニル系モノマーA 2質量%
・過硫酸アンモニウム 0.35質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 5質量%
・水 残部
(比較例1)
参考例2と同条件で、織物(即ち、染色処理まで行った織物)を処方2に示す処理液に浸漬した後、マングルで70質量%の絞り率で絞り、テンターにて120℃、2分間の条件で乾燥を行い、さらに160℃、1分間のセットを行い(つまり、飽和蒸気処理、および高速液流処理を行わず)、織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は3.7%であった。
(比較例2)
処方2の処理液に代えて、下記処方6の処理液を使用した以外は、比較例1と同条件で織物を得た。得られた織物において、メラミン成分の合計固着率は1.4%であった。
<処方6>
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.15質量%
・水 残部
(比較例3)
上記処方6の処理液を使用した以外は、参考例1と同条件で織物を得た。得られた織物において、メラミン成分の合計固着率は0.6%であった。
参考例6
下記処方7の処理液を使用した以外は、参考例1と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は9.7%であった。
<処方7>
・二官能ビニル系モノマーA 10質量%
・過硫酸アンモニウム 0.5質量%
・トリメチロールメラミン80質量%含有水溶液 10質量%
・水 残部
(比較例4)
下記処方8の処理液を使用した以外は、参考例1と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマーの合計固着率は1.0%であった。
<処方8>
・二官能ビニル系モノマーA 3質量%
・過硫酸アンモニウム 0.15質量%
・水 残部
(比較例5)
高速液流処理の前に、ドラム乾燥機にて、120℃で2分間の乾燥工程に付した以外は、参考例2と同条件で織物を得た。得られた織物において、ビニル系ポリマーの合計固着率は3.5%であった。
参考例7
総繊度84デシテックス/72フィラメントのポリエステル仮撚糸(糸A)と総繊度75デニール36フィラメントのポリエステル仮撚糸(糸B)、総繊度78デシテックス/24フィラメントのナイロン仮撚糸(糸C)を用い、交編率を、糸A;50質量%、糸B;24.2質量%、糸C;25.8質量%とし、49ウェール/2.54cm、50コース/2.54cmの編密度として、モックロディの編物を製編した。得られた編物を通常の方法で精練し、次いで、液流染色機(「サーキュラーMF」、株式会社日阪製作所製)を用いて、下記染色処方で、温度130℃、時間30分の条件で染色し、目付170g/mの白色の編物を得た。
上記編物を使用した以外は、参考例1と同じ条件で編物を得た。得られた編物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率は2.3%であった。
参考例8
参考例7の処方1に代えて処方2を使用した以外は、参考例7と同様に加工し編物を得た。得られた編物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は2.3%であった。
(実施例9)
参考例7の処方1に代えて処方3を使用した以外は、参考例7と同様に加工し編物を得た。得られた編物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は3.1%であった。
(比較例6)
参考例7と同条件で、編物(即ち、染色処理まで行った編物)を処方2に示す処理液に浸漬した後、マングルで70質量%の絞り率で絞り、テンターにて120℃、2分間の条件で乾燥を行い、さらに160℃、1分間のセットを行い(つまり、飽和蒸気処理、および高速液流処理を行わず)、編物を得た。得られた編物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は3.8%であった。
(比較例7)
処方2に代えて、処方3に変更した以外は比較例6と同様の加工で編物を得た。得られた編物において、ビニル系ポリマー、メラミン成分の合計固着率は4.1%であった。
なお、表1および表1の工程において、Aは、浸漬、飽和蒸気処理(103℃×5分)、高速洗浄処理(60℃×5分)、乾燥(120℃×2分)、セット(160℃×1分)をこの順に行うことを示す。Bは、浸漬、乾燥(120℃×2分)、セット(160℃×1分)をこの順に行うことを示す。Cは、浸漬、飽和蒸気処理(103℃×5分)、乾燥(120℃×2分)、高速洗浄処理(60℃×5分)、セット(160℃×1分)をこの順に行うことを示す。
評価結果を表1および表2に示す。この結果、実施例3~5の織物および実施例の編物では、工業洗濯後の防汚性が4級以上であり、更に風合いも良好で、吸水性、制電性に優れていた。なお、実施例6においては、風合いに劣るものであったが、その他の性能については、十分に実用に耐えうるものであった。これに対して、比較例1の織物、および比較例6、7の編物は、二官能ビニル系モノマーを使用していたが、高速液流処理を施さなかったために、制電性は良好であったものの、防汚性が3.5級と劣っていた。比較例2は、高速液流処理を施さず、二官能ビニル系モノマーを使用していなかったために、防汚性、制電性について劣っていた。比較例3は、高速液流処理を施したが、二官能ビニル系モノマーを使用していなかったために、防汚性、制電性に劣っていた。比較例4はメラミン成分を使用しなかったために、防汚性に劣っていた。比較例5は、高速液流処理の前に、乾燥工程を実行していたために、防汚性に劣っていた。
なお、図1は実施例5で得られた防汚性織編物の表面を、分析走査電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製)を用いて撮影した写真である(倍率;100倍)。図1から理解できるように、防汚性、制電性、吸水性に優れ、風合いも良好である実施例5においては、構成繊維の各々において、二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマー、メラミン成分を含む被膜が均一に形成されていることが明らかである。図2は、比較例1で得られた織編物の表面を、分析走査電子顕微鏡、日本電子データム株式会社製)を用いて撮影した写真である(倍率;100倍)。そして、図2から理解できるように、高速液流処理を施しておらず、防汚性に劣り、KES値が本発明の好ましい範囲を満足しない比較例1においては、二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーを含む被膜が構成繊維間に余剰に付着している箇所、または微細な粒状のポリマーが残存する箇所が複数存在することが明らかである。
以上の結果から、ポリエステル系繊維上でポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーにメラミン成分を含み重合した後に高速液流処理に供することによって、ハリ、コシ、ふくらみ風合いが良く、工業洗濯耐久性に優れた防汚性、制電性及び吸水性を具備させ得ることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. ポリエステル系繊維を含む織編物であって、
    前記ポリエステル系繊維の表面に、ポリオキシアルキレンを含む二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーとメラミン成分とを含有する被膜を含み、前記二官能ビニル系モノマーはフルオロアルキル基を含まないものであり、
    かつ、100質量部の前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーに対し前記メラミン成分を133~250質量部含み、下記条件の工業洗濯後において、下記測定法による防汚性が4級以上であり、
    KES法によって測定されたB値(剛性)が、織物である場合に0.020~0.2000gf・cm /cmであり、編物である場合に0.0020~0.0200gf・cm /cmであり、かつ
    KES法によって測定された2HG5値(せん断角5°ヒステリシス)が、織物である場合に4.5~9.0gf/cmであり、編物である場合に1.5~4.0gf/cmであることを特徴とする防汚性織編物。
    (工業洗濯条件)
    JIS L 1096:2010に規定のF-2法(中温ワッシャ法)において、洗濯・乾燥操作を「温度60℃、時間300分の条件で1回洗濯した後、湯洗を温度40℃、時間50分と温度40℃、時間100分の条件で2回行った後に、タンブル乾燥機にて温度60℃、30分の条件で乾燥する」条件に変更し、当該洗濯・乾燥操作を合計5サイクル行う。
    (防汚性の測定条件)
    工業洗濯後の試料から縦10cm×横10cmの試験片を4枚作成し試験片4枚の重量を量る。JIS Z 8901 試験用粉体1(8種関東ローム層)を試験片4枚の総重量の1/10の量で測りとり、規格袋No.16(たて480mm×横340mm、厚み0.03mmのポリエチレン製袋)に試験片と同時に投入し、その後エアポンプにて約8600mLの空気を注入し、口をねじり、ねじった先を粘着テープを使用して止め口を閉じる。
    その袋をICI型ピリングテスターの回転箱にセットし、毎分60 回転±2回転速度で60分間操作する。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏面中央部5回指ではじき,余分な汚れを取る。
    なお、指ではじくときは二本指で行い、1回はじくごとに試験片を90度回転させ、計5回はじく。
    汚れを付着させた試験片をJIS L 0217の付表 1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定する方法によって洗濯を行い、60℃で30分間タンブラー乾燥させる。
    汚れを付着させる前の試験片および洗濯後の試験片の間に見える色差と、JIS L 0805に規定する汚染用グレースケールの色差とを比較し、判定する。判定は試験片4枚の平均値で表す。
  2. 前記織編物の構成繊維の総量100質量部当たり、前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーが0.5~5質量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載の防汚性織編物。
  3. 100質量部の前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマーに対し、オキサゾリン化合物が1~20質量部含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防汚性織編物。
  4. 前記二官能ビニル系モノマーが重合したビニル系ポリマー、メラミン成分、オキサゾリン化合物の合計固着率が、織編物の構成繊維の総量に対して1.0~5.0質量%であることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の防汚性織編物。
  5. 上記条件の工業洗濯後において、摩擦帯電圧が1000V以下であることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の防汚性織編物。
    (摩擦帯電圧の測定条件)
    JIS L 1094:2014の「織物及び編物の帯電性試験方法」に規定されているB法(摩擦帯電圧測定法)に準拠し、20℃、40%RH環境下での前記工業洗濯後の織物の摩擦帯電圧を測定する。
  6. 上記条件の工業洗濯後において、吸水性が10秒以下であることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の防汚性織編物。
    (吸水性の測定条件)
    縦20cm×横20cmの試験片を作成し、この試験片に、JIS L-1907:2010の「7.1.1 滴下法」に規定されている方法により測定する。
  7. ポリエステル系繊維を含む織編物を、二官能ビニル系モノマー0.5~5質量%とメラミン成分0.5~10質量%とを含む処理液に接触させて、ラジカル重合する工程を実行した後に、乾燥工程に付することなく高速液流処理による湯洗い工程を実行することを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の防汚性織編物の製造方法。
  8. 前記処理液が、さらにオキサゾリン化合物を0.05~5質量%を含有することを特徴とする、請求項に記載の防汚性織編物の製造方法。

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