JP7287889B2 - 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法 - Google Patents

偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7287889B2
JP7287889B2 JP2019532873A JP2019532873A JP7287889B2 JP 7287889 B2 JP7287889 B2 JP 7287889B2 JP 2019532873 A JP2019532873 A JP 2019532873A JP 2019532873 A JP2019532873 A JP 2019532873A JP 7287889 B2 JP7287889 B2 JP 7287889B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polarized light
light
group
emitting
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019532873A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019022212A1 (ja
Inventor
陵太郎 森田
典明 望月
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Kayaku Co Ltd
Original Assignee
Nippon Kayaku Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Kayaku Co Ltd filed Critical Nippon Kayaku Co Ltd
Publication of JPWO2019022212A1 publication Critical patent/JPWO2019022212A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7287889B2 publication Critical patent/JP7287889B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09BORGANIC DYES OR CLOSELY-RELATED COMPOUNDS FOR PRODUCING DYES, e.g. PIGMENTS; MORDANTS; LAKES
    • C09B57/00Other synthetic dyes of known constitution
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09KMATERIALS FOR MISCELLANEOUS APPLICATIONS, NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE
    • C09K11/00Luminescent, e.g. electroluminescent, chemiluminescent materials
    • C09K11/06Luminescent, e.g. electroluminescent, chemiluminescent materials containing organic luminescent materials
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B5/00Optical elements other than lenses
    • G02B5/20Filters
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B5/00Optical elements other than lenses
    • G02B5/30Polarising elements
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02FOPTICAL DEVICES OR ARRANGEMENTS FOR THE CONTROL OF LIGHT BY MODIFICATION OF THE OPTICAL PROPERTIES OF THE MEDIA OF THE ELEMENTS INVOLVED THEREIN; NON-LINEAR OPTICS; FREQUENCY-CHANGING OF LIGHT; OPTICAL LOGIC ELEMENTS; OPTICAL ANALOGUE/DIGITAL CONVERTERS
    • G02F1/00Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics
    • G02F1/01Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics for the control of the intensity, phase, polarisation or colour 
    • G02F1/13Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics for the control of the intensity, phase, polarisation or colour  based on liquid crystals, e.g. single liquid crystal display cells
    • G02F1/133Constructional arrangements; Operation of liquid crystal cells; Circuit arrangements
    • G02F1/1333Constructional arrangements; Manufacturing methods
    • G02F1/1335Structural association of cells with optical devices, e.g. polarisers or reflectors

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Nonlinear Science (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mathematical Physics (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Polarising Elements (AREA)
  • Led Device Packages (AREA)
  • Optical Filters (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)

Description

本発明は、高い耐久性を具備し、かつ、高い偏光度(コントラスト)を有する偏光発光を示す偏光発光素子、これを用いた偏光発光板及び表示装置、並びに該偏光発光素子の製造方法に関する。
光の透過・遮へい機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等の表示装置の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、初期の頃の電卓及び時計等の小型機器、さらにはノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクター、液晶テレビ、カーナビゲーション、及び屋内外の情報表示装置、計測機器等が挙げられる。また、このような偏光板は、偏光機能を有するレンズへの適用も可能であり、視認性の向上したサングラス、近年では3Dテレビなどに対応する偏光メガネなどへも応用されており、さらに、ウェアラブル端末をはじめとする身近な情報端末への応用・実用化もされている。このように、偏光板の用途は広範囲にわたっているため、使用条件も低温~高温、低湿度~高湿度、低光量~高光量等幅広く適用される。そのため、各用途への適用に対応すべく、偏光性能が高くかつ耐久性に優れた偏光板が求められている。
一般に、偏光板を構成する偏光膜は、延伸配向したポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルム、あるいは、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール系フィルムの脱水によりポリエンを生成して、配向せしめたポリエン系のフィルム等の基材に、二色性色素としてヨウ素や二色性染料を染色又は含有することにより製造される。このような従来の偏光膜から構成される偏光板は、可視光領域に光の吸収作用を有する二色性色素を用いているため、可視光領域での透過率が低下する。例えば、市販されている一般的な偏光板の透過率は35~45%である。
可視光領域における透過率が35~45%と低くなる理由は、偏光板に二色性色素が用いられているためである。偏光板が100%の偏光度を示すためには、2次元平面においてx軸及びy軸の光が存在する場合、一方の軸の光が吸収される必要がある。そのどちらか一方の一軸の光を吸収するために、偏光板には二色性色素が用いられている。よって、可視光領域における透過率は、理論的に100%の光量に対して50%以下になってしまう。更に、二色性色素の配向、フィルム媒体による光損失、及び、フィルム表面の界面反射などが原因で、透過率は理論値の50%よりさらに低下してしまう。こうした従来の偏光板の透過率が低くなってしまう問題に鑑み、可視光領域において、一定の透過率を保持しつつ、偏光機能を付与する技術として、特許文献1には紫外線用偏光板が記載されている。しかし、この紫外線用偏光板を利用する場合、偏光板が黄色く着色してしまい、また、約410nm付近の光によって偏光機能を発現する偏光板しか提供できない。つまり、このような紫外線用偏光板は、可視光領域において偏光機能を発現するものではなく、特定の紫外又は可視光領域のみで機能する偏光板であった。
通常、可視光領域の透過率が低い偏光板、あるいは、偏光度の低い偏光板をディスプレイ等に用いると、ディスプレイ全体の輝度又はコントラストが低下する。この問題を解決すべく、従来の偏光板を用いずに偏光を得る方法が研究されている。その方法の1つとして、特許文献2~6には、偏光発光を示す素子(偏光発光素子)が開示されている。
国際公開第2005/01527号 特開2008-224854号公報 特許第5849255号公報 特許第5713360号公報 米国特許第3,276,316号明細書 特開平4-226162号公報
しかし、特許文献2~4に記載される偏光発光素子は、特殊な金属、例えばランタノイドやユーロピウム等の希少価値が高い金属を用いている。そのため、コストが高く、また、製造が非常に難しいため大量生産には不向きである。さらに、これらの偏光発光素子は、偏光度が非常に低いためディスプレイに使用することが難しく、また、直線偏光である発光を得ることが非常に難しい。また、発光としても特定の波長の円偏光発光または楕円偏光発光しか得られない問題がある。このため、特許文献2~4に記載される偏光発光素子をディスプレイに使用しても、発光輝度が暗く、コントラストが低く、液晶セルの設計が難しいなどの不利点があった。
一方で、特許文献5、6には、紫外光を照射して偏光発光を示す素子が開示されている。しかしながら、その素子が発光する光の偏光度は低く、かつ、素子の耐久性が低いといった問題があった。一般的に、コントラスト値が10を超えると人の目による視認性は飛躍的に向上することが知られている。例えば、新聞、雑誌等の文字のコントラスト値は10程度である。そのため、液晶ディスプレイへの実使用を考慮しても、コントラスト値が10を超えていることは、視認性確保のために必要な値である。
特許文献5、6に記載されている偏光発光を示す素子は、その作製時に、基材としてポリビニルアルコールフィルムを用いているが、偏光した光のコントラスト値は10よりも低く、視認性の観点からも液晶ディスプレイへの適用には不向きであった。このような従来の偏光素子の欠点に鑑み、偏光発光作用を示し、その偏光発光度が高く、さらには、可視光領域での透過率が高く、過酷な環境下における耐久性が求められる液晶ディスプレイ等にも応用可能な新たな偏光板とそのための材料の開発が望まれている。
本発明は、高い偏光度(コントラスト)を有する偏光発光を示し、かつ、過酷な環境下で高い耐久性が求められる液晶ディスプレイ等にも応用可能な偏光発光素子、これを用いた偏光発光板及び表示装置、並びに該偏光発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子において、配向する偏光発光色素の光の吸収に基づくオーダーパラメーターの値が、発光する光の偏光度、特にコントラストに対して大きく影響を及ぼすとの知見を得た。そして、当該知見に基づき、偏光発光色素の光の吸収に基づくオーダーパラメーターの値を制御することにより、高い耐久性を具備しつつ、高い偏光度(コントラスト)を有する光を発光可能な偏光発光素が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
1)
光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子であって、
前記偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、かつ、前記偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95である、偏光発光素子。
Figure 0007287889000001
(上記式(I)中、Kyは、前記偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表し、Kzは、前記偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表す。)
2)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、蛍光発光特性を有する、上記1)に記載の偏光発光素子。
3)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有する、上記1)または2)に記載の偏光発光素子。
4)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、ビフェニル骨格又はスチルベン骨格を有する、上記1)~3)のいずれかに記載の偏光発光素子。
5)
前記偏光発光素子が、JJIS Z 8781-4:2013に従って測定される色度aの絶対値が5以下であり、かつ色相bの絶対値が5以下である発光色を示す、上記4)に記載の偏光発光素子。
6)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、下記式(1)で表される化合物又はその塩である、上記4)または5)に記載の偏光発光素子。
Figure 0007287889000002
(式中、L及びMは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよいC-C20アルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいカルボニル基からなる群から選択される。)
7)
前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、上記6)に記載の偏光発光素子。
Figure 0007287889000003
(式(2)中、Xはニトロ基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表し、
Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表し、
nは0~3の整数を表す。)
Figure 0007287889000004
(式(3)中、Yは置換基を有していてもよいC-C20アルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Zは、ニトロ基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表す。)
8)
前記式(2)において、Xはニトロ基、置換基を有してもよいC-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C-C20アルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基である、上記7)に記載の偏光発光素子。
9)
前記式(2)において、Rが水素原子であり、nが1または2である、上記7)又は8)に記載の偏光発光素子。
10)
前記式(2)において、Rがメチル基である、上記7)又は8)に記載の偏光発光素子。
11)
前記式(3)において、Yが置換基を有してもよいアリール基である、上記7)~10)のいずれかに記載の偏光発光素子。
12)
前記基材が親水性高分子を含む、上記1)~11)のいずれかに記載の偏光発光素子。
13)
上記親水性高分子が、ポリビニルアルコールを含む、上記12)に記載の偏光発光素子。
14)
前記基材が、配向された親水性高分子フィルムである、上記1)~13)のいずれかに記載の偏光発光素子。
15)
前記基材が、ホウ素化合物をさらに含む、上記1)~14)のいずれかに記載の偏光発光素子。
16)
前記基材の厚さ方向において飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦30×Iの関係を満たし、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離において検出された2次イオン強度の比を表し、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の両表面からそれぞれ前記基材の厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の最大値を表す、上記15)に記載の偏光発光素子。
17)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦5×Iの関係をさらに満たし、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表し、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す、上記16)に記載の偏光発光素子。
18)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦2×Iの関係をさらに満たし、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表し、
が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す、上記16)又は17)に記載の偏光発光素子。
19)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の濃度分布が、前記基材の表面から3μm~20μmの間に少なくとも存在する、上記16)~18)のいずれかに記載の偏光発光素子。
20)
前記偏光発光素子が、前記偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の有機染料及び/又は蛍光染料をさらに含む、上記1)~19)のいずれかに記載の偏光発光素子。
21)
前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに備えられている、上記1)~20)のいずれかに記載の偏光発光素子。
22)
前記可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率が、50%以下である、上記21)に記載の偏光発光素子。
23)
前記可視光吸収型色素含有層が光吸収異方性を有し、該光吸収異方性に基づく光の吸収方向が、前記偏光発光素子による偏光発光に対して直交方向である、上記21)または22)に記載の偏光発光素子。
24)
上記1)~23)のいずれかに記載の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光発光板。
25)
前記透明保護層が、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムである、上記24)に記載の偏光発光板。
26)
さらに支持体層を含む、上記24)または25)に記載の偏光発光板。
27)
上記1)~23)のいずれかに記載の偏光発光素子、又は上記24)~26)のいずれかに記載の偏光発光板を含む表示装置。
28)
前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられ、かつ、
前記可視光吸収型色素含有層が、少なくとも観察者側に設けられている、上記27)に記載の表示装置。
29)
前記偏光発光色素を含有する基材に前記ホウ素化合物を含有させながら延伸させるか、又は前記ホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸させる、上記15)~19)のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
本発明によれば、光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子において、該偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、かつ、その偏光作用が最も高い波長において、所定の式で算出されるオーダーパラメーター(ОPD)の値が、0.81~0.95に制御されている。すなわち、例えば、紫外光領域の光を吸収することで可視光領域に偏光発光を示す偏光発光色素において、偏光発光が強い軸の発光量と弱い軸の発光量が制御されている。これにより、その可視光領域における偏光発光のコントラストを飛躍的に向上させることができ、その結果、高い偏光度(コントラスト)を有する偏光発光を示す偏光発光素子及びこれを用いた偏光発光板を提供することができる。また、希少性の高いランタノイド金属等を使用しなくとも、高い偏光度を有する偏光発光素子及びこれを用いた偏光発光板を提供することができる。さらに、本発明に係る偏光発光素子及びこれを用いた偏光発光板は、熱、湿度等に対して優れた耐久性を示す。そのため、当該偏光発光素子及びこれを含む偏光発光板は、可視光領域での高い透過性及び過酷な環境下での高い耐久性が求められる液晶ディスプレイ等の表示装置に応用することができる。
図1は、実施例1~7、比較例1及び2で作製した偏光発光素子のOPDの値とRCEの値との関係を示す図である。 図2は、実施例8~13、比較例3~6で作製した偏光発光素子のOPDの値とRCEの値との関係を示す図である。
<偏光発光素子>
本発明に係る偏光発光素子は、光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子である。また、偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、その偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95である。
Figure 0007287889000005
上記式(I)におけるKyは、偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表す。一方、Kzは、偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表す。
光の吸収を利用して偏光発光可能な偏光発光色素は、一般的には蛍光色素又は燐光発光色素に属するが、具体的には、特定の光を吸収し、その光を利用して発光エネルギーに変換しうる色素を指す。このような色素として、蛍光色素、燐光発光色素のいずれを用いてもよいが、蛍光色素を使用することが好適である。また、該色素は、吸収した光の波長と、発光する光とが異なることが多く、波長変換色素とも呼ばれることがある。このように、偏光発光素子に含まれる少なくとも1種の偏光発光色素は、蛍光発光特性を有することが好ましく、特に、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有することがより好ましい。
また、偏光発光色素は、基材に配向させることにより、二色性色素のように、基材に配向した軸とその直交軸とで光吸収異方性を有し、光の吸収異方性、すなわち、偏光機能を発現する。
偏光機能を発現した偏光発光色素の各波長の透過率に着目し、偏光発光色素を配向させた偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した場合の光透過率(すなわち、光の透過量が少ない軸での透過率)をKzとし、一方、偏光発光色素を配向させた偏光発光素子において最も高い吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した場合の光透過率(すなわち、光の透過量が多い軸での透過率)をKyとする。そして、これらKy、Kzを上記式(I)に代入することより、オーダーパラメーター、すなわち配向秩序度を算出することができる。
オーダーパラメーター(配向秩序度)とは、液晶等の物質の配向を計測するために用いる指標として一般的に使用され、オーダーパラメーターの値が高い数値を示すほど偏光発光素子が高い配向秩序を有していることを示している。一般的に、オーダーパラメーターの値の算出式は、下記式(II)のように表され(「ディスプレイ材料と機能性色素(CMC出版、中澄博行監修,、P65)」参照)、式(II)で表される数式を変換すると、下記式(III)が導き出される。この式(III)をさらに変換することにより、オーダーパラメーター(OPD)を、上記式(I)で表わすことができる。この際、式(II)及び式(III)中の要素として、APARAは配向した偏光発光色素の向きに対して平行方向の吸光度であり、ACROSSは配向した色素の向きに対して直交方向の吸光度である。それぞれの吸光度はLog(A)によって算出され、Log(A)で算出されたそれぞれの吸光度に、Ky及びKzによって得られる吸光度を式(III)に代入することによって、式(I)が導かれる。この式(I)に基づき、光の吸収を利用して偏光発光可能な色素の配向秩序度を制御し、これにより、高いコントラスト値を有する偏光発光を示す偏光発光素子を得ることができる。このように、オーダーパラメーターの値を0.81~0.95の範囲に制御することにより、高いコントラスト値を有する偏光発光を得ることができ、オーダーパラメーターの値は、0.83~0.95の範囲であることが好ましく、0.85~0.94の範囲であることがより好ましく、0.87~0.93の範囲であることがさらに好ましい。オーダーパラメーターの値は、高い程好ましいものの、オーダーパラメーターの値が0.95より大きい場合、偏光発光が有するコントラスト値が必ずしも高くなるとは限らず、安定性に欠ける。そのため、生産上、安定して高いコントラストを有する偏光発光を示す偏光発光素子を得るため、オーダーパラメーターの値の上限値は、0.95に設定される。
OPD=(APARA-ACROSS)/(APARA+2×ACROSS)・・・(II)
OPD=(APARA/ACROSS-1)/(APARA/ACROSS+2)・・・(III)
偏光発光色素を1種又は複数用いて基材中に含有させ、配向させることにより偏光発光を示す偏光発光素子が得られる。このような偏光発光素子は、偏光発光色素の配合割合を調整することによって、様々な発光色を示す。例えば、JIS Z 8781-4:2013に従って測定される色度aの絶対値が5以下であり、かつ色相bの絶対値が5以下であることによって、偏光発光素子からの発光色は白色を示す。JIS Z 8781-4:2013の基準に従う色度a値及び色相b値は、光の色相測定時に求められる値である。当該基準に定められる物体色の表示方法は、国際照明委員会(略称:CIE)が定める物体色の表示方法に相当する。色度a値及びb値の測定は、通常、測定試料に自然光を照射して行われるが、本発明に使用される偏光発光素子においては、偏光発光素子に紫外線等の短波長の光を照射し、偏光発光素子から発光した光を測定することによって色度a値及びb値を確認することができる。紫外光領域の光を照射しても、偏光発光を示す光の色度aの絶対値が5以下であり、色相bの絶対値が5以下であることにより、白色の偏光発光を示す偏光発光素子が得られていることを意味する。発光した偏光の色度aの絶対値が、5以下であれば、白色として感知できるが、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。また、発光した光の色相bも同様に、色相bの絶対値が5以下であれば、白色として感知できるが、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。このように、色度a及びbの絶対値が、それぞれ独立に5以下であれば、人間の目では白色として感知することができ、さらに、各々が共に5以下であれば、より好ましい白色発光として感知することができる。発光する偏光が白色であることにより、太陽光のような自然な光源、ペーパーホワイト端末等の光源として利用が可能である。そのため、このような偏光発光素子を白色偏光発光型の偏光発光素子として利用することができ、また、カラーフィルタなどを用いるディスプレイに置いても応用が簡易である。尚、白色光の発光強度については、発光が視覚的に感知できればディスプレイに応用することは可能である。発光が視覚的に感知するためには、特に、発光が高い偏光度を有し、かつ、可視域の透過率が高いことが重要である。
<偏光発光色素>
偏光発光色素は、スチルベン骨格またはビフェニル骨格を基本骨格として有する化合物又はその塩であることが好ましい。このような基本骨格を有する偏光発光色素が、蛍光発光特性を示しつつ、かつ、オーダーパラメーターの値が0.81~0.95の範囲に制御されるよう基材に配向されるにことにより、他の偏光発光色素よりも高い偏光度を有する光、すなわち、高いコントラストを有する光を発光させることができる。偏光発光色素の基本骨格としてのスチルベン骨格及びビフェニル骨格は、それぞれの骨格自体が蛍光発光特性を示し、かつ、基材に配向させることにより高い二色性を示す作用を有する。この作用は、スチルベン骨格及びビフェニル骨格の各基本骨格の構造に起因するため、基本骨格構造にはさらに任意の置換基が結合されていてもよい。ただし、基本骨格構造にアゾ基を置換する場合、従来の染料系偏光板のように高い偏光度を実現できるものの、アゾ基が置換される位置によっては発光光量が著しく低下し、所望とする発光光量が得られないことがある。そのため、各基本骨格にアゾ基を置換する場合、その置換位置が重要となる。偏光発光色素は、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて併用してもよい。
上述のように、偏光発光色素は、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有することが好ましい。具体的には、偏光発光色素を基材に含有させた後、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を照射することにより、可視光域、例えば400~700nmの波長域において、0.04μW/cm以上の発光強度の偏光発光を示すことが好ましく、0.05μW/cm以上の発光強度の偏光発光を示すことがよりに好ましく、0.1μW/cm以上の発光強度の偏光発光を示すことがさらに好ましい。尚、一般的に紫外光は400nm以下の波長領域の光を示すものの、430nm以下の波長領域の光も人間の視感度としては著しく低い。そのため、紫外光領域~近紫外可視光領域の光は、人の目に見えない光として定義することができ、例えば、300nm~430nm波長領域の光であることが好ましい。偏光発光色素を使用することにより、目に見えない光を吸収して偏光発光可能な偏光発光素子を得ることができる。
(a)スチルベン骨格を有する偏光発光色素
スチルベン骨格を有する偏光発光色素は、好ましくは、下記式(1)で表される化合物又はその塩である。
Figure 0007287889000006
上記式(1)中、L及びMは、各々独立して、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有していてもよいC-C20アルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換を有していてもよいウレイド基、または置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいカルボニル基からなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。式(1)で示されるスチルベン骨格を有する化合物は、蛍光発光を示し、また、配向させることによって二色性が得られる。発光特性は、スチルベン骨格に起因するものであるため、L及びMの各基が結合し得る置換基はアゾ基を有していなければ、特に限定されるものではなく、任意の置換基であってよい。
置換基を有してもよいアミノ基としては、例えば、非置換のアミノ基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ターシャリブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基等の置換基を有してもよいC-C20アルキルアミノ基;
フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N-フェニル-N-ナフチルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールアミノ基;
メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-ブチル-カルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいC-C20アルキルカルボニルアミノ基;
フェニルカルボニルアミノ基、ビフェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基;
メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチル-スルホニルアミノ基等のC-C20アルキルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ等が挙げられる。
これらのアミノ基の中でも、置換基を有してもよいC-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C-C20アルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基が好ましい。
置換基を有してもよいカルボニルアミド基としては、例えば、N-メチル-カルボニルアミド基(-CONHCH)、N-エチル-カルボニルアミド基(-CONHC)、N-フェニル-カルボニルアミド基(-CONHC)等が挙げられる。
置換基を有していてもよいC-C20アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等の直鎖状のC-C12アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分岐鎖状のC-C10アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状のC-Cアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
置換基を有していてもよいビニル基として、例えば、エテニル基、スチリル基、アルキル基を有するビニル基、アルコキシ基を有するビニル基、ジビニル基、ペンタジエン基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミド基として、例えば、アセトアミド基(-NHCOCH)、ベンズアミド基(-NHCOC)等が挙げられる。
置換基を有していてもよいウレイド基として、例えば、モノアルキルウレイド基、ジアルキルウレイド基、モノアリールウレイド基、ジアリールウレイド基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられ、好ましくはC-C12アリール基である。アリール基は、環構成原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1~3つのヘテロ原子を含む5員環又は6員環の複素環基であってもよい。このような複素環基の中でも、窒素原子および硫黄原子から選択される原子を環構成原子として含む複素環基であることが好ましい。
置換基を有してもよいカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-ブチル-カルボニル基、フェニルカルボニル基等が挙げられる。
上述した置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニトロ基、シアノ基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
カルボキシアルキル基としては、例えば、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
式(1)で示される化合物として、例えば、Kayaphorシリーズ(日本化薬社製)、Whitex RP等のホワイテックスシリーズ(住友化学社製)等が挙げられる。また、下記に式(1)で示される化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
[化合物例1]
Figure 0007287889000007
スチルベン骨格を有する他の化合物として下記式(2)または式(3)で示される化合物またはその塩であることが好ましい。これらの化合物を用いることによって、より鮮明な白色発光をする偏光発光素子を得ることができる。さらに、下記式(2)および式(3)で示される化合物もスチルベン骨格に起因して蛍光発光を示し、また、配向させることによって二色性が得られる。
Figure 0007287889000008
上記式(2)において、Xは、ニトロ基又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。置換基を有してもよいアミノ基は、上記式(1)における置換基を有してもよいアミノ基と同様に定義される。これらの中でも、Xは、ニトロ基、置換基を有してもよいC-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C-C20アルキルスルホニルアミノ基、または置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましく、特に、ニトロ基であることがより好ましい。
上記式(2)中、Rは、水素原子、塩素原子、臭素原子またはフッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、置換基を有してもいてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。置換基を有していてもよいアルキル基としては、上記式(1)における置換基を有していてもよいC-C20アルキル基と同様に定義される。置換基を有してもいてもよいアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基等である。置換基を有していてもよいアミノ基は、上記式(1)における置換基を有してもよいアミノ基と同様に定義され、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、またはフェニルアミノ基等である。Rは、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよいが、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、3位、5位、又は8位に結合していることが好ましい。これらの中でも、Rは、水素原子又はC-C20アルキル基であることが好ましく、RがC-C20アルキル基である場合、メチル基であることが好ましい。
上記式(2)中、nは0~3の整数であり、好ましくは1である。また、上記式(2)中、-(SOH)は、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素原子に結合していてよい。-(SOH)のナフタレン環における位置は、トリアゾール環と縮合している炭素原子を1位、2位とした場合、n=1であれば、4位、6位、または7位であることが好ましく、n=2であれば、5位と7位、および6位と8位であることが好ましく、n=3であれば、3位と6位と8位の組み合わせであることが好ましい。これらのうち、Rが水素原子であり、かつnが1または2であることが特に好ましい。
式(3)中、Yは、置換基を有していてもよいC-C20アルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。これらの中でも、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有してもよいナフチル基であることがさらに好ましく、置換基としてアミノ基とスルホ基が置換したナフチル基であることが特に好ましい。
式(3)中、Zは、上記式(2)におけるXと同様に定義され、ニトロ基、又は、置換基を有してもよいアミノ基を表し、ニトロ基であることが好ましい。
ビフェニル骨格を有する化合物は、好ましくは下記式(4)で示される化合物またはその塩である。
Figure 0007287889000009
上記式(4)において、P及びQは、それぞれ独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよいC-C20アルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいウレイド基、または置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいカルボニル基を表すが、これらに限定されるものではない。ただし、ビフェニル骨格のP位置、および/または、Q位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
上記式(4)で表される化合物は、好ましくは、下記式(5)で表される化合物である。
Figure 0007287889000010
上記式(5)中、jは0~2の整数を示す。また、-(SOH)が結合される位置は、-CH=CH-が結合されている炭素原子を1位とした場合、2位、4位、6位が好ましく、4位が特に好ましい。
上記式(5)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、アラルキロキシ基、アルケニロキシ基、C-Cアルキルスルホニル基、C-C20アリールスルホニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルボキシアルキル基である。R~Rが結合される位置は、特に限定されるものではないが、ビニル基を1位とした場合、2位、4位、6位が好ましく、4位が特に好ましい。
-Cアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
-Cアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
アラルキロキシ基としては、例えば、C-C18アラルキロキシ基等が挙げられる。
アルケニロキシ基としては、例えば、C-C18アルケニロキシ基等が挙げられる。
-Cアルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、ターシャリブチルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基等が挙げられる。
-C20アリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基等が挙げられる。
上記式(5)で表される化合物は公知の方法で作製可能であり、例えば、4-ニトロベンズアルデヒド-2-スルホン酸をホスホネートと縮合させ、次いでニトロ基を還元することによって合成することができる。
このような式(5)で示される化合物の具体例は、例えば、特開平4-226162号公報に記載されている下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007287889000011
式(1)~(5)で示される化合物の塩とは、上記各式で示される各化合物の遊離酸が無機陽イオン又は有機陽イオンと共に塩を形成している状態を意味する。無機陽イオンとしては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の各陽イオン、又は、アンモニウム(NH )等が挙げられる。また、有機陽イオンとしては、例えば、下記式(A)で表される有機アンモニウム等が挙げられる。
Figure 0007287889000012
式(A)中、Z1~Z4は、各々独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表わし、かつ、Z1~Z4の少なくともいずれか1つは水素原子以外の基である。
1~Z4の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC-Cアルキル基、好ましくはC-Cアルキル基;ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシC-Cアルキル基、好ましくはヒドロキシC-Cアルキル基;並びに、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル基、好ましくはヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル基等が挙げられる。
これらの無機陽イオン又は有機陽イオンの中でも、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アンモニウム等の各陽イオンがより好ましく、リチウム、アンモニウム又はナトリウムの各無機陽イオンが特に好ましい。
上記のような構造を有する偏光発光色素は、分子中にアゾ基を有さないため、アゾ結合に起因する光の吸収が抑制される。特に、スチルベン骨格を有する化合物は、紫外光の照射により発光作用を示し、また、スチルベン骨格の強い炭素-炭素二重結合の存在により分子が安定する。そのため、このような特定構造を有する偏光発光色素を用いた偏光発光素子は、光を吸収し、そのエネルギーを利用して、可視光領域に偏光発光作用を示すことができる。
(その他の色素)
上記の特性を示す偏光発光素子は、偏光発光素子の偏光性能を阻害しない範囲で、上述した偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の蛍光染料及び/又は有機染料をさらに含んでいてもよい。併用される蛍光染料としては、例えば、C.I.Fluorescent Brightener 5、C.I.Fluorescent Brightener 8、C.I.Fluorescent Brightener 12、C.I.Fluorescent Brightener 28、C.I.Fluorescent Brightener 30、C.I.Fluorescent Brightener 33、C.I.Fluorescent Brightener 350、C.I.Fluorescent Brightener 360、C.I.Fluorescent Brightener 365等が挙げられる。
有機染料としては、例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ71、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.ブルー69、シー.アイ.ダイレクト.ブルー78、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、及びシー.アイ.ダイレクト.グリーン59等が挙げられる。これらの有機染料は遊離酸であっても、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩又はアミン類の塩であってもよい。
<基材>
偏光発光素子は、偏光発光色素を含有することができ、かつ、配向することができる基材を備える。基材は、偏光発光色素を吸着し、かつ、ホウ素誘導体を含有し架橋しうる親水性高分子を含むことが好ましく、該親水性高分子を製膜して得られる親水性高分子フィルム、特に配向された親水性高分子フィルムであることが好ましい。親水性高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系樹脂が好ましい。親水性高分子は、偏光発光色素の染色性、加工性及び架橋性などの観点からポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルアルコール又はその誘導体のいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸のような不飽和カルボン酸等で変性した樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、偏光発光色素の吸着性及び配向性の点から、基材は、ポリビニルアルコール又はその誘導体から作製されたフィルムが好ましい。
以下、ポリビニルアルコール系樹脂を含む基材を用いて偏光発光色素を吸着し配向させる方法について例示する。ポリビニルアルコール系樹脂を含む基材は、例えば、市販品を用いてもよく、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜することにより作製してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えば、含水ポリビニルアルコールを溶融押出する方法、流延製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去)、キャスト製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を基盤上に流し、乾燥)、及びこれらの組み合わせによる方法等、公知の製膜方法を採用することができる。基材の厚さは適宜設計することができるが、通常10~100μmである、好ましくは20~80μmである。
また、基材は、ホウ素化合物をさらに含むことが好ましい。特に、ホウ素化合物が基材の厚さ方向(表面からの深さ方向)に、ほぼ均一になるよう含有していること、すなわち、基材の表面と中心部との差がほとんどない濃度でホウ化合物が基材に含まれていることが好ましい。ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸、硼砂、酸化ホウ素、水酸化ホウ素等の無機化合物、ボロン酸であるアルケニルボロン酸、アリールボロン酸、アルキルボロン酸、ボロン酸エステル、トリフルオロボラート又はその塩等が挙げられ、ホウ酸、硼砂が好ましくは、ホウ酸が特に好ましくい。基材の膜厚方向に対して中心部までホウ素化合物がより高い濃度で含有されていることにより、偏光発光素子の偏光発光のコントラストをさらに向上させることができる。また、ホウ素化合物が基材の中心部まで含有されていることにより、偏光発光素子により高い耐久性を付与することができる。
基材にホウ素化合物を含有させるためには、基材に偏光発光素子を含有させる染色工程を行っておくことが必要である。これは、ホウ素化合物が含有されている基材に偏光発光色素を含有させようとしても、基材がホウ素化合物により架橋しているため、偏光発光色素の染色性が著しく阻害され、深さ方向に偏光発光色素が含浸しないためである。また、基材の延伸倍率が高すぎると、基材に染色溶液が十分に吸着されず、結果として偏光発光色素が基材の内部まで含有することを著しく阻害してしまう。そのため、延伸倍率が元の長さの3.5倍に達する前に染色工程を適用することが好ましく、元の長さの3.0倍に達する前がより好ましく、2.0倍に達する前が特に好ましい。また、基材を製膜する原料の段階、例えば、水とポリビニルアルコールと偏光発光色素との混合物から基材を製膜し、それを延伸して得る方法においては、基材の膨潤工程で偏光発光色素が溶出してしまうことがあり、また、基材の製膜時に膜厚ムラが発生し、この膜厚ムラによりフィルムの透過率のムラの原因になることがあるため、量産には不向きとなることがある。よって、基材に偏光発光色素を含有させる時点では、基材の製膜段階では偏光発光色素が含有されておらず、かつ、ホウ素誘導体を含有する工程の前であって、かつ、基材の延伸倍率が元の長に対して3.5倍以下であることが好ましい。
基材にホウ素化合物が含有していることを確認する方法としては、基材の断面においてホウ素化合物が存在している分布状態を確認すればよい。ホウ素化合物が基材の断面にどのように存在するかを確認する方法として、基材の断面をToF-SIMS測定によって確認することができる。ToF-SIMSとは、飛行時間型二次イオン質量分析法であり、Time Of Flight Secondary Ion Mass Spectometryの略である。試料に超高真空下で1次イオンビームを照射すると、試料の極表面(1~3nm)から2次イオンが放出される。放出された2次イオンを飛行時間型質量分析計へ導入することで、試料最表面の質量スペクトルが得られる。1次イオンビームの照射量を低く抑えることにより、試料の表面成分を、化学構造を保った分子イオン、部分的に開裂したフラグメントとして検出することができ、これにより試料最表面の元素組成、化学構造の情報を得ることができる。この分析法を基材の断面測定に適用することによって、ホウ素化合物、例えばホウ酸、硼砂の場合には、その構成元素であるホウ素、酸化ホウ素、水酸化ホウ素等が検出されることによって、基材の断面、すなわち厚さ方向のホウ素化合物を検出することができる。このように、ToF-SIMS測定により、基材の厚さ方向におけるホウ素化合物の濃度分布(含有分布)、さらにはその含有比率を確認することができる。
少なくとも1種以上の偏光発光色素とホウ素化合物とを含む基材において、少なくとも片面の基材の厚さ方向において飛行時間型二次イオン質量分析法により測定されたホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦30×Iの関係を満たすことが好ましく、I≦15×Iの関係を満たすことがより好ましく、I≦5×Iの関係を満たすことがさらに好ましい。この関係式において、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する基材の少なくとも片面の表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離において検出された2次イオン強度の比を表す。また、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する基材の両表面からそれぞれ基材の厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の最大値を表す。上記の関係は基材の両表面から満たされることが好ましい。
また、ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦5×Iの関係をさらに満たすことが好ましく、I≦3×Iの関係をさらに満たすことがより好ましく、I≦1.5×Iの関係をさらに満たすことが特に好ましい。この関係式において、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す。また、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する厚さLの中心から基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す。上記の関係は基材の両表面から満たされることが好ましい。
さらに、ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦2×Iの関係をさらに満たすことが好ましく、I≦Iの関係をさらに満たすことがより好ましい。この関係式において、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す。また、Iは、基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する厚さLの中心から基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す。上記の関係は基材の両表面から満たされることが好ましい。尚、上記の各関係式において、「基材の少なくとも片面の表面」とは、基材の表側の表面又は裏側の表面等の記載のない限り、基材の表面と裏面のいずれであってもよい。例えば「基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度」とは、基材の表側の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度と、基材の裏側の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度のいずれであってもよい。
このように、ホウ素化合物、例えばホウ酸の基材における濃度分布を制御することにより、偏光発光の偏光度をより向上させることができる。
より高い偏光度を有する偏光発光を得るためには、ホウ素化合物が基材の表層部だけでなく中心部にも含まれることが好ましい。具体的には、ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の濃度分布が、基材の表面から3μm~20μmの間に少なくとも存在することが好ましく、基材の表面から少なくとも5μmの深さまで存在することがより好ましく、少なくとも8μmの深さまで存在することがさらに好ましく、少なくとも10μmの深さまで存在することが特に好ましい。さらに好ましくは基材の両表面より、該関係が満たされることが好ましい。
また、偏光発光色素が基材の厚さのどの程度まで含有しているかを確認することもできる。この方法として、ラマン分析法が挙げられる。物質に光を照射すると光の散乱が起こり、散乱光のなかには入射した光と同じ波長の光が散乱されるレイリー散乱(弾性散乱)と、分子振動によって入射光とは異なる波長に散乱されるラマン散乱(非弾性散乱)が存在する。そのラマン光を分光し、得られたラマンスペクトルより、分子レベルの構造を解析する手法がラマン分光法である。顕微ラマン分光光度計を適用することによって、マイクロメートルオーダーで基材の厚さ方向のエネルギーを感知できるため、偏光発光色素が含有されている基材の厚さを正確に確認することができる。このように、基材の断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用することによって、偏光発光色素が基材に含有している程度を測定することができる。具体的には、上述のスチルベン化合物、例えば化合物例5-1に記載の化合物であれば、1170~1180cm-1及び1560~1600cm-1のそれぞれに基づくエネルギーを検出することができる。そして、検出されたエネルギーを基材の断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用する。このような方法により、偏光発光色素が基材の厚さのどの程度まで含有しているかを確認することができる。
<偏光発光素子の製造方法>
偏光発光素子の製造方法は、以下の製法に限定されるものではないが、主に、ポリビニルアルコール又はその誘導体を用いたフィルムに上述した偏光発光色素を配向させることが好適である。以下、ポリビニルアルコール又はその誘導体を用いた場合を例とした偏光発光素子の作製方法について説明する。
偏光発光素子の作製方法は、基材を準備する工程と、該基材を膨潤液に浸漬し、該基材を膨潤させる膨潤工程と、膨潤させた該基材を上記偏光発光色素の1種以上を少なくとも含む染色溶液に含浸させ、基材に偏光発光色素を吸着させる染色工程と、偏光発光色素を吸着させた基材を、ホウ酸を含有する溶液に浸漬することにより偏光発光色素を基材中で架橋させる架橋工程と、偏光発光色素を架橋させた基材を一定の方向に一軸延伸して偏光発光色素を一定の方向に配列させる延伸工程と、必要に応じて、延伸させた基材を洗浄液で洗浄する洗浄工程および/または洗浄させた基材を乾燥させる乾燥工程と、を含んでいる。
(膨潤工程)
膨潤工程は、20~50℃の膨潤液に、上記基材を30秒~10分間浸漬させることにより行うことが好ましく、膨潤液は水であることが好ましい。膨潤液による基材の延伸倍率は、1.00~1.50倍に調整することが好ましく、1.10~1.35倍に調整することがより好ましい。
(染色工程)
上記膨潤工程にて膨潤処理を施して得られた基材に、少なくとも1種の偏光発光色素を含浸及び吸着させる。染色工程は、偏光発光色素を基材に含浸及び吸着させる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材を、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法、基材に該染色溶液を塗布し、吸着させる方法等が挙げられる。これらのうち、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法が好ましい。染色溶液中の偏光発光色素の濃度は、基材中に偏光発光色素が十分に吸着されていれば特に限定されるものではないが、例えば、染色溶液中に0.0001~1質量%であることが好ましく、0.001~0.5質量%であることがより好ましい。
染色工程における染色溶液の温度は、5~80℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、40~50℃が特に好ましい。染色溶液に基材を浸漬する時間は、オーダーパラメーターの値を制御する際、重要である。偏光発光素子が示すオーダーパラメーターの値を、所望の範囲に制御するため、染色溶液に基材を浸漬する時間は、6~20分の間で調節するのが好ましく、7~10分の間がより好ましい。
染色溶液に含まれる偏光発光色素は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記偏光発光色素は、化合物によりその発光色が異なるため、基材に、上記偏光発光色素を1種以上含有させることにより、生じる発光色を様々な色になるように適宜調整することができる。また、必要に応じて、染色溶液は、偏光発光色素とは異なる1種以上の有機染料及び/又は蛍光染料をさらに含んでいてもよい。
蛍光染料及び/又は有機染料を併用する場合、所望とする偏光素子の色調整のために、配合する染料を選択し、配合比率等を調整することが可能である。調製目的により、蛍光染料または有機染料の配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、偏光素子100質量部に対して、これら蛍光染料及び/又は有機染料の総量が0.01~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
また、上記の各染料に加え、必要に応じてさらに染色助剤を併用してもよい。染色助剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム(芒硝)、無水硫酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは硫酸ナトリウムである。染色助剤の含有量は、使用される二色性色素の染色性に基づく上記浸漬時間、染色時の温度等によって任意に調整可能であるが、染色溶液中に0.0001~10質量%であることが好ましく、0.0001~2質量%であることがより好ましい。
上記染色工程後、当該染色工程で基材の表面に付着した染色溶液を除去するために、任意に予備洗浄工程を実施することができる。予備洗浄工程を実施することによって、次に処理する液中に基材の表面に残存する偏光発光色素が移行することを抑制することができる。予備洗浄工程では、洗浄液として一般的には水が用いられる。洗浄方法は、洗浄液に染色した基材を浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を当該基材に塗布することによって洗浄することもできる。洗浄時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~300秒であり、より好ましくは1~60秒である。この予備洗浄工程における洗浄液の温度は、基材を構成する材料が溶解しない温度であることが必要となり、一般的には5~40℃で洗浄処理が施される。尚、予備洗浄工程の工程がなくとも、偏光素子の性能には特段大きな影響を及ぼさないため、予備洗浄工程は省略することも可能である。
(架橋工程)
染色工程又は予備洗浄工程の後、基材に架橋剤を含有させることができる。基材に架橋剤を含有させる方法は、架橋剤を含む処理溶液に基材を浸漬させることが好ましく、一方で、当該処理溶液を基材に塗布又は塗工してもよい。処理溶液中の架橋剤としては、例えば、ホウ素化合物を含有する溶液を使用する。ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸、硼砂、酸化ホウ素、水酸化ホウ素等の無機化合物、ボロン酸であるアルケニルボロン酸、アリールボロン酸、アルキルボロン酸、ボロン酸エステル、トリフルオロボラート又はその塩等が挙げられ、ホウ酸、硼砂が好ましくは、ホウ酸が特に好ましい。処理溶液中の溶媒は、特に限定されるものではないが、水が好ましい。処理溶液中のホウ素誘導体の濃度は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。処理溶液の温度は、30~80℃が好ましく、40~75℃がより好ましい。また、この架橋工程の処理時間は30秒~10分が好ましく、1~6分がより好ましい。この架橋工程により、得られる偏光発光素子は、高いコントラストを示す。このことは、従来技術において、耐水性又は光透過性を改善する目的で使用されていたホウ素化合物の機能からは全く予期し得ない優れた作用である。また、架橋工程においては、必要に応じて、カチオン、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理をさらに併せて行ってもよい。カチオンとはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、バリウムなどの金属に由来するイオンであり、好ましくは2価のイオンが用いられる。具体的には塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化バリウム等である。フィックス処理により、基材中における偏光発光色素の固定化が可能となる。このとき、カチオン系高分子化合物として、例えば、ジシアン系としてジシアンアミドとホルマリン重合縮合物、ポリアミン系としてジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物、ポリカチオン系としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアモンニウムクロライド・二酸化イオン共重合物、ジアリルアミン塩重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩重合物等が使用される。
(延伸工程)
上記架橋工程を行った後、延伸工程を実施する。延伸工程は、基材を一定の方向に一軸延伸することにより行われる。延伸方法は、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよい。基材の延伸倍率もまた、オーダーパラメーターの値を制御する際、重要である。偏光発光素子が示すオーダーパラメーターの値を所望の範囲に制御するため、基材の延伸倍率は、3.3倍以上であることが好ましく、3.3~8.0倍であることがより好ましく、3.5~6.0倍であることがさらに好ましく、4.0~5.0倍であることが特に好ましい。
上記湿式延伸法においては、水、水溶性有機溶剤又はその混合溶液中で基材を延伸することが好ましい。より好ましくは、架橋剤を少なくとも1種含有する溶液中に基材を浸漬しながら延伸処理を行う。架橋剤は、例えば、上記架橋剤工程におけるホウ素化合物を用いることができ、好ましくは、架橋工程で使用した処理溶液中で延伸処理を行うことができる。延伸温度は40~60℃であることが好ましく、45~58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であり、好ましくは2~7分である。湿式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。尚、延伸処理は、任意に、染色工程の前に行ってもよく、この場合には、染色の時点で偏光発光色素の配向も一緒に行うことができる。
上記乾式延伸法において、延伸加熱媒体が空気媒体である場合には、空気媒体の温度が常温~180℃で基材を延伸するのが好ましい。また、湿度は20~95%RHの雰囲気中であることが好ましい。基材の加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、熱間圧延伸法及び赤外線加熱延伸法等が挙げられるが、これらの延伸方法に限定されるものではない。乾式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。乾式延伸工程においては、偏光発光色素を含有する基材にホウ素誘導体を含有させながら延伸させるか、又はホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸させることができるが、ホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸処理することが好ましい。ホウ素誘導体を適用する温度は40~90℃が好ましく、50~75℃がより好ましい。ホウ素化合物の濃度は1~10%であることが好ましく、3~8%であることがより好ましい。乾式延伸の処理時間は、1~15分であることが好ましく、2~12分であることがより好ましく、3~10分であることがさらに好ましい。
(洗浄工程)
上記延伸工程を実施した後には、基材の表面に架橋剤の析出又は異物が付着することがあるため、基材の表面を洗浄する洗浄工程を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は、基材を洗浄液に浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を基材に塗布又は塗工によって洗浄することもできる。洗浄液としては、水が好ましい。洗浄処理は一段階で実施しても、2段階以上の多段処理で実施してもよい。洗浄工程の洗浄溶の温度は、特に限定されるものではないが、通常、5~50℃、好ましくは10~40℃であり、常温であってよい。
上記各工程で用いる溶液又は処理液の溶媒としては、上記水の他にも、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン及びジエチレントリアミン等のアミン類等が挙げられる。当該溶液又は処理液の溶媒は、これらに限定されるものではないが、最も好ましくは水である。又、これらの溶液又は処理液の溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(乾燥工程)
上記洗浄工程の後、基材の乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるものの、より乾燥効率を高めるため、ロールによる圧縮やエアーナイフ又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことが可能であり、さらには、送風乾燥を行うことも可能である。乾燥処理の温度は、20~100℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、30秒~20分であることが好ましく、5~10分であることがより好ましい。
上述の製造方法により、本発明に係る偏光発光素子を作製することができ、得られた偏光発光素子は、高い耐久性を有すると共に、高い偏光度(コントラスト)を有する偏光発光を示す。
偏光発光素子は、光の吸収、特に紫外光域の光の吸収により得られたエネルギーを利用して、可視光領域に偏光発光を示す。この偏光発光の明度の差をより向上させるため、偏光発光が高い偏光度(コントラスト)を有することが好ましい。偏光発光素子より発光する光が可視光域の偏光であることから、可視光域の光に対して偏光機能を有する一般的な偏光板を介して偏光発光素子を観察した場合、その偏光板の軸の角度を変えることによって、偏光発光と非発光とを視認することができる。偏光発光素子が発光する偏光の偏光度は、例えば70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。また、コントラストは高いほど好ましく、偏光度が高いほど、高い傾向を示す。偏光発光素子が、可視光域の光を吸収せずに透過させる場合、偏光発光素子の可視光域の光の透過率は、視感度補正透過率において、例えば60%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。このような偏光発光素子は、高い偏光度を有するため、非発光状態において可視光域での吸収が小さくなり、これにより、透明度の高い偏光発光素子を得ることができる。また、偏光発光素子による偏光発光の偏光度が高いことは、輝度が明るく、高コントラストのディスプレイを実現することができるため、重要であり、さらに、可視光域の光の透過率が高いことは、透明性が高い新たな液晶ディスプレイの提供として有効である。
<可視光吸収型色素含有層>
偏光発光素子は、偏光発光を吸収する層として、偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層をさらに備えることが好ましい。これにより、偏光発光のコントラスト、すなわち、偏光した発光において発光の強い軸の光の強度と、発光の弱い軸の光の強度との差が大きい偏光発光素子を得ることができる。
偏光発光素子に可視光吸収型色素含有層をさらに形成する方法は、特に限定されるものではないが、偏光発光素子に、可視光領域の光を吸収し、かつ、発光機能を示さない色素を含む層を設けることが好ましい。このような可視光吸収型色素含有層は、可視光吸収型色素を偏光発光色素の表面に直接塗布したり、偏光発光素子の表面にのみ可視光吸収型色素を含ませたり、可視光吸収型色素を含ませた樹脂層を偏光発光素子上に形成したり、偏光発光素子に後述する透明保護層を形成する際に可視光吸収型色素を含ませた接着層を用いることで透明保護層と偏光発光素子との間に可視光吸収型色素含有層を形成したり、または、透明保護層に可視光吸収型色素を含ませることにより、偏光発光素子に可視光吸収型色素含有層を形成することができる。可視光吸収型色素含有層による偏光発光の吸収方向は、光吸収異方性を有するかどうかは必ずしも限定されるものではないが、可視光吸収型色素含有層が光吸収異方性を有し、該光吸収異方性に基づく光の吸収方向が、偏光発光素子による偏光発光に対して直交方向であることが好ましい。これにより、偏光発光素子からの偏光発光の偏光軸(発光軸)と直交方向の光を強く吸収することができ、その結果、より高い偏光度(コントラスト)を有する偏光発光を得ることができる。尚、可視光吸収型色素含有層は、偏光発光素子の表層に設けられていればよく、偏光発光素子の片面のみに設けられていても良く、偏光発光素子の両面に積層されていてもよい。
可視光吸収型色素とは、蛍光量子収率(φ)が低く、光を吸収する際、目視で蛍光又は燐光などの発光を確認できない色素である。蛍光量子収率とは、吸収された光子数に対する放出された光子数で表される割合(放出された光子数/吸収された光子数)であり、蛍光量子収率が高いほど、良好な発光色素として認識される。つまり、蛍光量子収率が1に近づくほど優れた発光色素として認識され得るが、可視光吸収型色素はその蛍光量子収率が低いものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ディスプレイ等の表示媒体において、可視光吸収型色素含有層を介して発光が目視にて確認できなければよい。
可視光吸収型色素の発光強度(F)は、一般的に、下記式(IV)で表される。式(IV)中、Ιは、可視光吸収型色素に照射される光(励起光)の強度を表し、εは、一定波長の光に対する可視光吸収型色素の吸収の強さを、すなわち、分子吸収効率を表し、φは、上述の蛍光量子収率を表し、Cは、可視光吸収型色素のモル濃度を表す。可視光吸収型色素に照射される光は、表示媒体が使用される環境、照射装置によって変動し、また、発光強度(F)も、可視光吸収型色素の分子吸収効率(ε)、濃度(C)によっても変動する。そのため、可視光吸収型色素の蛍光量子収率(φ)のみで表示媒体に適用する好ましい可視光吸収型色素を限定することは困難である。このような観点から、可視光吸収型色素は、目視にて偏光発光素子からの発光が確認できない色素であればよく、例えば、蛍光量子収率(φ)が0.1以下の色素を利用することができ、蛍光量子収率(φ)が0.01以下であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。
発光強度(F)=Ι×ε×φ×C・・・(IV)
可視光吸収型色素が有する吸収波長は、偏光発光素子に用いる偏光発光色素の発光波長の光のみを吸収し得ることが好ましく、一方で、偏光発光色素の吸収波長に可視光吸収型色素の吸収が少ない、又は皆無であることがより好ましい。これにより、偏光発光素子の偏光発光におけるコントラストは向上し、かつ、偏光発光色素の吸収効率をより向上させることができる。
可視光吸収型色素含有層の可視光透過率は特に限定されるものではないが、偏光発光素子の層界面、特に表層界面の発光が、可視光吸収型色素によって抑制されることにより、偏光発光素子の偏光発光におけるコントラストは向上する。可視光吸収型色素含有層は、可視光透過率の測定時に影響されない程度の可視光を吸収し、かつ、可視光透過率の低下率(損失)が0%でも上記の効果を発揮することもある。例えば、偏光発光素子の可視光透過率が90%以上である場合、可視光吸収型色素含有層による可視光透過率は0~50%であることにより一般的な偏光板以上の可視光透過率を実現することができる。そのため、可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率が、50%以下であれば、偏光発光素子からの偏光発光が示すコントラストを向上させることができるため、偏光機能を発現できる偏光発光素子として利用価値が高い。また、一般的な偏光板とは異なり、発光型偏光機能フィルムとしても利用可能であるため、様々な分野で利用可能である。偏光発光をより吸収し、かつ、可視光吸収型色素含有層による可視光透過率が高いほど偏光発光素子として可視光透過率が向上する。そのために可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率(損失)は、50%以下が好ましく、0~30%がより好ましくで、0~20%がさらに好ましく、0~10%が特に好ましい。可視光透過率の低下率が0~10%であることにより、偏光発光のコントラストは向上しつつ、高い透過率を維持することができる。
[偏光発光板]
本発明に係る偏光発光板は、上述の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備えている。このような透明保護層は、偏光発光素子の耐水性、取扱性等を向上させるために使用される。そのため、このような透明保護層は、本発明に係る偏光発光素子が示す偏光作用に何ら影響を与えるものではない。但し、偏光発光素子が紫外光域の光を吸収して偏光発光を示す場合、透明保護層は、紫外光吸収機能を有さないことが好ましく、特に、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムであることが好ましい。
透明保護層は、光学的透明性及び機械的強度に優れる透明保護膜であることが好ましい。また、透明保護層は、偏光発光素子の形状を維持できる層形状を有するフィルムであることが好ましく、透明性及び機械的強度の他に、熱安定性、水分遮蔽性等にも優れるプラスチックフィルムであることが好ましい。このような保護膜を形成する材料としては、例えば、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、あるいは、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が挙げられ、好ましくはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムやシクロオレフィン系フィルムが用いられる。透明保護層の厚さは、1μm~200μmの範囲が好ましく、10μm~150μmの範囲がより好ましく、40μm~100μmが特に好ましい。偏光発光板を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、偏光発光素子に透明保護層を重ねて、公知の処方にてラミネートすることによって偏光発光板を作製することができる。
偏光発光板は、透明保護層と偏光発光素子との間に、透明保護層を偏光発光素子に貼り合わせるための接着剤層をさらに備えていてもよい。接着剤層を構成する接着剤は、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル-イソシアネート系接着剤等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコール系接着剤が用いられる。透明保護層と偏光発光素子とを接着剤により貼り合せた後、適切な温度で乾燥又は熱処理を行うことによって偏光発光板を作製することができる。
また、偏光発光板は、透明保護層の露出面に、反射防止層、防眩層、さらなる透明保護層等の公知の各種機能性層を適宜備えていてもよい。このような各種機能性を有する層を作製する場合、各種機能性を有する材料を透明保護層の露出面に塗工する方法が好ましく、一方、そのような機能を有する層又はフィルムを接着剤若しくは粘着剤を介して透明保護層の露出面に貼合せることも可能である。
さらなる透明保護層としては、例えば、アクリル系、ポリシロキサン系等のハードコート層、ウレタン系の保護層等が挙げられる。また、単体透過率をより向上させるために、透明保護層の露出上に反射防止層を設けることもできる。反射防止層は、例えば、二酸化珪素、酸化チタン等の物質を、透明保護層上に蒸着又はスパッタリング処理するか、あるいは、フッ素系物質を透明保護層上薄く塗布することにより形成することができる。
本発明に係る偏光発光板は、必要に応じて、さらに支持体層を含んでいてもよい。支持体層としては、例えば、ガラス、水晶、サファイヤ等の透明な支持体等をさらに設けることができる。このような支持体は、偏光発光板に貼り付けるため、平面部を有していることが好ましく、また、光学用途の観点から、透明基板であることが好ましい。透明基板としては、無機基板と有機基板に分けられ、例えば、無機基板としては、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶基板、サファイヤ基板、スピネル基板等が挙げられ、有機基板としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー等から構成される基板が挙げられる。透明基板の厚さ、大きさは特に限定されるものでなく、適宜決定することができる。また、このような透明基板を有する偏光発光板には、単体透過率をより向上させるために、その支持体面又は偏光発光板面の一方もしくは双方の面に反射防止層を設けることが好ましい。偏光発光板と支持体平面部とを接着させるためには、透明な接着(粘着)剤を支持体平面部に塗布し、次いで、この塗布面に本発明に係る偏光発光板を貼付すればよい。使用する接着剤又は粘着剤は、特に限定されるものではなく、市販されているものを用いることができ、アクリル酸エステル系の接着剤又は粘着剤が好ましい。
本発明に係る偏光発光板は、位相差板を貼付すことにより、円偏光を発光する素子若しくは円偏光発光板、又は楕円偏光を発光する素子又は楕円偏光発光板として使用することもできる。偏光発光板に支持体等をさらに設ける場合、支持体は、位相差板側に設けても、偏光発光板側に設けてもよい。このように、偏光発光板には様々な機能性層、支持体等をさらに設けることができ、このような偏光発光板は、例えば、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、カーナビゲーション及び屋内外の計測器や表示器等、レンズ、あるいはメガネ等の様々な製品に使用できる。
本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、紫外光領域において高い偏光度を示すと共に、さらには、可視光領域において偏光発光作用、高い透過率を示す。また、本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、熱、湿度、光等に対して優れた耐久性を示すため、過酷な環境下でも、その性能を維持することが可能であり、従来のヨウ素系偏光板よりも高い耐久性を有する。そのため、本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、可視光領域での高い透明性及び過酷な環境下での高い耐久性が求められる液晶ディスプレイ、例えば、テレビ、ウェアラブル端末、タブレット端末、スマートフォン、車載モニター、屋外又は屋内にて用いられるデジタルサイネージ、スマートウィンドウ等の各種表示装置に応用することができる。
[表示装置]
本発明に係る表示装置は、本発明における偏光発光素子又は偏光発光板を含んでいる。そのため、このような表示装置は、特定の波長の光が照射されることにより発光しながら映像を表示可能なディスプレイを形成できる。例えば、特定の波長のみ吸収する、すなわち特定の色を有する基材の表面に、異なる色の波長の偏光を発光させることができる。さらに、400nm以下の光、例えば紫外光を照射することによって可視光域に偏光発光作用を示し、この作用を利用することによって、ディスプレイ上に、映像表示が可能となる。このように、上述の偏光発光素子又は偏光発光板を液晶ディスプレイと組み合わせることによって、一般的な偏光板を用いた従来の液晶ディスプレイとは異なり、自己発光型液晶ディスプレイとしての活用が可能となる。また、表示装置において、偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられている場合、可視光吸収型色素含有層は、少なくとも観察者側に設けられていることが好ましい。可視光吸収型色素含有層を観察者側に配置することにより、観察者に対して高いコントラスの視感度を向上させることができる。
本発明に係る表示装置は、可視光領域で高い透過率を有しているため、従来の偏光板のような可視光領域の透過率の低下がないか、透過率の低下があっても、従来の偏光板の透過率よりも透過率の低下が著しく少ない。例えば、従来の偏光板であるヨウ素系偏光板、他の染料化合物を使用した染料系偏光板は、偏光度をほぼ100%にするためには、可視光領域での視感度補正が35~43%程度である必要がある。その理由としては、従来の偏光板は、光の吸収軸として縦軸と横軸の両方を有しているが、ほぼ100%の偏光度を得るために縦軸又は横軸の一方の入射した光を吸収する、すなわち、一方の軸では光を吸収し、他方の軸では光を透過することによって偏光が生じる。このような場合、一方の軸での光は吸収されて透過しないことから、必然的に透過率は50%以下となってしまう。また、従来の偏光板は二色性色素を延伸されたフィルム中で配向させて偏光板を作製しているが、必ずしも二色性色素が100%配向しているとは限らず、また、光の透過軸に対しても若干ではあるが光の吸収作用を有している。そのため、物質の表面反射によって透過率を約43%以下としなければ、100%の偏光度は実現できない、つまり、透過率を低下させなければ高い偏光度を実現することができなかった。それに対して、本発明に係る偏光発光素子又は偏光発光板が紫外光域の光に吸収作用を有する場合、約400nm以下に光の吸収軸がある。この場合、偏光発光素子又は偏光発光板は可視光領域に偏光した光を発光する偏光発光作用を示す一方で、可視光領域ではほとんど光を吸収しないため、可視光領域での透過率は非常に高くなる。さらに、可視光領域では、偏光発光作用を示すため、従来の偏光板を用いるよりも光の損失は少なく、つまり、従来の偏光板のような透過率の低下は非常に少ない。このことから、本発明に係る偏光発光素子又は偏光発光板を使用した表示装置、例えば、液晶ディスプレイは、従来の偏光板を用いた液晶ディスプレイよりも高い輝度が得られる。さらに、本発明に係る偏光発光素子又は偏光発光板を含む表示装置は、透明性が高いことから、液晶ディスプレイでありながら、極めて透明に近いディスプレイが得られる。また、文字、画像の表示時には偏光発光が透過するように設計できることから、透明な液晶ディスプレイでありながらも表示可能なディスプレイが得られる、すなわち、透明なディスプレイに文字等が表示可能なディスプレイが得られる。そのため、本発明に係る表示装置は、光損失がない透明な液晶ディスプレイ、特に、シースルーディスプレイとしての適用に有効である。
一方で、本発明に係る表示装置は、例えば、人の目に見えない紫外光により偏光が可能であることから、紫外光によって表示可能な液晶ディスプレイへの応用が可能である。その紫外光領域に表示された画像等を、コンピュータ等によって認識することによって、紫外光の照射したときのみ視認可能とする簡易でセキュリティ性の高い液晶ディスプレイを作製することができる。
本発明に係る表示装置は、例えば、紫外光を照射することによって偏光発光作用を示し、その偏光発光を利用した液晶ディスプレイが作製可能である。そのため、可視光を使用した通常の液晶表示ディスプレイではなく、紫外光を使用した液晶表示ディスプレイを実現することも可能とする。つまり、光のない暗い空間においても、紫外光が照射され得る空間であれば、表示される文字、画像等が表示される自己発光型液晶ディスプレイを作製することが可能となる。
さらに、可視光領域と紫外光領域とでは光の吸収帯域が異なるため、可視光領域は可視光領域の光によって表示可能な液晶表示部位と、紫外光による偏光発光作用によって表示された光での液晶表示部位とが併在する異なる2つの表示が可能なディスプレイを作製することも可能である。2つの異なる表示が可能なディスプレイは、これまでにも存在はしているが、同一液晶パネルでありながら、紫外光領域と可視光領域とで別々の光源によって異なる表示が可能なディスプレイは存在しない。このことから、本発明に係る表示装置は、上記の偏光発光素子又は偏光発光板を有することによって新規なディスプレイの作製が可能となる。
本発明に係る表示装置は、車載用又は屋外表示用液晶ディスプレイであってもよい。車載用又は屋外表示用液晶ディスプレイにおいて、使用する液晶セルは、例えば、TN液晶、STN液晶、VA液晶、IPS液晶などに限定されるものでなく、当該液晶ディスプレイは、あらゆる液晶ディスプレイモードで使用が可能である。本発明に係る偏光発光素子は、偏光性能に優れ、さらに車内や屋外の高温、高湿状態でも変色、偏光性能の低下が抑えられるため、車載用又は屋外表示用液晶ディスプレイの長期信頼性の向上に寄与することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。下記に記載されている「%」及び「部」は、特に言及されない限り質量基準である。尚、各実施例及び比較例で使用した化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形態で記載した。
[評価方法]
下記の実施例及び比較例で得た各偏光発光素子又は偏光発光板を測定試料とした評価を次のようにして行った。
(a)オーダーパラメーター(OPD)
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて偏光発光素子のオーダーパラメーターの値を評価した。各実施例及び比較例で作製した各偏光発光素子(測定試料)に、220nm~2600nmの波長領域にほぼ100%の偏光を有する光(以下、「絶対偏光」と称する)を照射できるように絶対偏光グラムテーラープリズムを設置し、各測定試料に、絶対偏光を照射した際の各波長の光の透過率を測定した。絶対偏光を照射し、偏光発光色素が配向した偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した際に測定されたた光透過率をKy、絶対偏光を照射し、偏光発光色素が配向した偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した際に測定されたた光透過率をKzとして、それぞれの値を下記式(I)に代入した。得られた値を、偏光発光素子のオーダーパラメーター(OPD)の値として評価した。
Figure 0007287889000013
(b)視感度補正単体透過率Ys
各測定試料の視感度補正単体透過率Ysは、可視光領域における400~700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)毎に求めた上記Ky及びKzを記式(V)に代入して各波長の単体透過率Tsを算出し、JISZ 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを下記式(VI)に代入して算出した。なお、下記式(VI)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
Ts=(Ky+Kz)/2・・・(V)
Figure 0007287889000014
(c)偏光度ρ
各測定試料の偏光度ρを、以下の式(VII)に、平行透過率Tp及び直交透過率Tcを代入して求めた。ここで、平行位透過率Tpは、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて、2枚の測定試料をその吸収軸方向が平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。また、直交位透過率Tcは、分光光度計を用いて、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ね合せて測定した分光透過率である。測定は、220~780nmの波長にわたって行った。
ρ={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100 ・・・(VII)
(d)偏光発光のコントラスト
光源として、395nmハンドライトタイプ LEDブラックライト(Vansky JAPAN社製「FBA_VS-FL01 JP(ASIN:B01EAJB9BA)」)を用い、光源に紫外線透過・可視カットフィルター(五鈴精工硝子社製「IUV-340」)を設置し可視光をカットした。その上で、可視光領域及び紫外光領域の光に対して偏光機能を有する偏光板(ポラテクノ社製「SKN-18043P」、厚さ180μm、Ysは43%)以下「測定用偏光板」という)と、各実施例及び比較例で得られた偏光発光板とを設置し、偏光発光板が発光している偏光発光を、分光放射照度計(ウシオ電機社製「USR-40」)を用いて測定した。すなわち、光源からの光が、紫外線透過・可視カットフィルター、測定用偏光板及び各偏光発光板を、この順に通過し、各偏光発光板からの偏光が分光放射照度計に入射するように配置して測定した。その際、各偏光発光板の紫外光領域の光の吸収が最大になる吸収軸と、測定用偏光板の吸収軸とが平行になるように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLw(弱発光軸)、各偏光発光板の紫外光域の光の吸収が最大になる吸収軸と、測定用偏光板の吸収軸とが直交するように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLs(強発光軸)として、Lw及びLsを測定した。各偏光発光板の吸収軸と測定用偏光板の吸収軸とが平行である場合と、直交する場合との可視光域で発光された光のエネルギー量を確認し、Ls/Lwを偏光発光のコントラスト(ECR)の値とすることで、可視光域である400nm~700nmにおいて偏光発光を評価した。
<偏光発光色素の合成>
(合成例1)
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸35.2部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸17.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製後4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である下記式(6)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
Figure 0007287889000015
得られた式(6)の中間体62.3部を水300部に加え撹拌し、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0とした。得られた溶液に28%アンモニア水20部、及び硫酸銅五水和物9.0部を加え、90℃で2時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム25部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(7)の化合物のウェットケーキ40.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(7)の化合物(λmax:376nm)20.0部を得た。
Figure 0007287889000016
(合成例2)
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム 41.4部を炭酸ナトリウム存在下で10℃の水300部に加え撹拌した。さらに、式(8)で示す化合物34.0部を加え、pH10で反応させた後、得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(9)の化合物のウェットケーキ68.4部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(9)の化合物(λmax:356nm)33部を得た。
Figure 0007287889000017
(合成例3)
国際公開第2005/033211号に記載の方法により合成した下記式(10)の化合物6.0部と炭酸カリウム1.6部を、N-メチル-2-ピロリドン50部に加え撹拌した。得られた溶液に4-メトキシベンゾイルクロリド2.1部を添加し、90℃にて4時間撹拌した。得られた反応液を20%塩化ナトリウム水溶液300部に加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(11)の化合物のウェットケーキ20.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(11)の化合物(λmax:372nm)5.0部を得た。
Figure 0007287889000018
(合成例4)
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2, 2’-ジスルホン酸ナトリウム 41.4部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸34.4部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製し、4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である式(12)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
Figure 0007287889000019
得られた式(12)の中間体83.8部を水300部に加え撹拌し、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0とした。得られた溶液に28%アンモニア水20部、及び硫酸銅五水和物9.0部を加え、90℃で2時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム25部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(13)の化合物のウェットケーキ40.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(13)で表される化合物 20.0部を得た。
Figure 0007287889000020
(合成例5)
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸4.0部と炭酸ナトリウム2.8部をN-メチル-2-ピロリドン30部に加え、次いで4-メトキシベンゾイルクロリド3.4部を5分間滴下した後、110℃にて6時間撹拌した。得られた反応液を水100部に添加し、析出固体をろ過分離し、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、ウェットケーキ10.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(14)の化合物(λmax:370nm)3.0部を得た。
Figure 0007287889000021
(合成例6)
特公昭50-033814号公報及び特公平03-294598号公報を参考にして、400部の氷水中に界面活性剤(ライオン社製「レオコールTD90」0.20部を加えて激しく攪拌し、その中に塩化シアヌル18.4部を添加し0~5℃で30分間攪拌し、懸濁液を得た。この懸濁液にアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を加え、pH4~6、0~30℃で4時間撹拌し、続いて4、4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸18.5部を加え、pH4~8、20~50℃で6時間撹拌した。得られた反応液にジエタノールアミン11部を加え、pH8~10、40~70℃で6時間撹拌した後、塩化ナトリウム80部を添加し析出固体をろ過分離し、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、ウェットケーキ100.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(15)のスチルベン系化合物(λmax:370nm)30.0部を得た。
反応液を得た。
Figure 0007287889000022
(合成例7)
合成例6で使用したアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を4-アミノベンゼンスルホン酸17.3部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(16)の化合物(λmax:370nm)23.0部を得た。
Figure 0007287889000023
(合成例8)
合成例6で使用したジエタノールアミン11部をフェノール18.8部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(17)の化合物(λmax:370nm)15.0部を得た。
Figure 0007287889000024
(合成例9)
合成例6で使用したアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を4-アミノベンゼンスルホン酸アミド17.2部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(18)の化合物(λmax:370nm)23.0部を得た。
Figure 0007287889000025
[実施例1]
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル2ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)を0.05部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に10分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は92.3%を示した。
(偏光発光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。得られた偏光発光板は、偏光発光素子とほぼ同等の光学特性を示した。
[実施例2~7]
実施例1で作製した偏光発光素子において、化合物例5-1に記載の化合物を含む45℃の水溶液に、膨潤したフィルムを浸漬する時間(10分間)を、9分30秒間、9分間、8分30秒間、8分間、7分40秒間、7分30秒間にそれぞれ変更して浸漬させること以外は実施例1と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
[比較例1及び比較例2]
実施例1で作製した偏光発光素子において、化合物例5-1に記載の化合物を含む45℃の水溶液に、膨潤したフィルムを浸漬する時間(10分間)を、5分間、2分間にそれぞれ変更して浸漬させること以外は実施例1と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
実施例1~7において得られた各測定試料において、KyとKzとの差が最も大きい波長におけるオーダーパラメーター(OPD)の値と、測定したコントラスト(ECR)の値において最も高い値を示したECRの値を、表1に、同様にして比較例1及び2で得られた結果を表2にそれぞれ示す。また、図1に、実施例1~7及び比較例1~2におけるOPDとECRの関係を示す。
Figure 0007287889000026
Figure 0007287889000027
上記表1、2及び図1より、OPDの値が0.81以上を示すと発光コントラストが飛躍的に向上し、これに伴いECRの値が10を大きく超えることが分かる。この結果から、偏光発光素子のOPDの値が0.81以上であることにより、偏光発光のコントラストが顕著に向上することが分かる。
[実施例8]
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.8%を示した。
[実施例9~13]
実施例8で作製した偏光発光素子において、上記式(7)で表される化合物を基材に含有させた後、基材の延伸倍率(5.0倍)を、4.5倍、4.3倍、4.0倍、3.5倍、3.3倍にそれぞれ変更すること以外は実施例8と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
[実施例14]
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例6で作製した上記式(15)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は92.1%を示した。
[実施例15]
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例7で作製した上記式(16)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.7%を示した。
[実施例16]
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例8で作製した上記式(17)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.5%を示した。
[実施例17]
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例9で作製した上記式(18)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.6%を示した。
[比較例3~6]
実施例8で作製した偏光発光素子において、式(7)で表される化合物を基材に含有させた後、基材の延伸倍率(5.0倍)を、3.2倍、3.0倍、2.8倍、2.6倍にそれぞれ変更して延伸させること以外は実施例8と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
実施例8~13において得られた各測定試料において、KyとKzとの差が最も大きい波長におけるオーダーパラメーター(OPD)の値と、測定したコントラスト(ECR)の値において最も高い値を示したECRの値を表3に、同様にして比較例3~6で得られた結果を表4にそれぞれ示す。また、図2に、実施例8~13及び比較例3~6におけるOPDとECRの関係を示す。さらに、偏光発光色素が異なる実施例1、8、14~17において得られた各測定試料において、KyとKzとの差が最も大きい波長におけるオーダーパラメーター(OPD)の値と、測定したコントラスト(ECR)の値において最も高い値を示したECRの値を表5に示す。
Figure 0007287889000028
Figure 0007287889000029
Figure 0007287889000030
上記表3~5及び図2より、OPDの値が0.81以上を示すと発光コントラストが飛躍的に向上し、これに伴いECRの値が10を大きく超えることが分かる。この結果から、偏光発光素子のOPDの値が0.81以上であると、偏光発光のコントラストが顕著に向上することが分かる。
[比較例7]
米国特許第3,276,316号明細書の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を4倍に延伸した。得られたフィルムを、化合物例5-1が含有している常温の染色液に浸漬し、浸漬した液から取り出した後、基材の長さが4.2倍になるように延伸し、偏光発光素子を得た。この偏光発光素子を用いた以外は実施例1における偏光発光板の作製方法と同様に偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子のOPDの値は0.753であり、偏光発光のECRの値は5.0であった。
[比較例8]
特開平4-226162号公報の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、化合物例5-1で表される化合物を、けん化度99%以上のポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製「PVA-117」)に0.43重量%分を添加、混合し、乾燥後の膜厚が75μmになるように製膜することにより、基材となるポリビニルアルコールフィルムを作製した。次いで、作製したフィルムの長さが7.0倍になるように一軸延伸して偏光発光素子を作製した。得られた偏光発光素子のOPDの値は0.679であり、偏光発光のECRの値は3.4であった。
[実施例18]
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を40℃の水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、合成例1で得られた式(7)の化合物を0.3部、合成例2で得られた式(9)の化合物を0.15部、芒硝を1.0部、水を1000部含有する45℃の水溶液に、4分間浸漬して、式(7)の化合物及び式(9)の化合物をフィルムに含有させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
(偏光発光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。得られた偏光発光板は、偏光発光素子とほぼ同等の光学特性を示した。
[実施例19]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例3で得られた式(11)の化合物0.3部、及び合成例4で得られた式(13)の化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[実施例20]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例5で得られた式(14)の化合物0.3部、及び合成例4で得られた式(13)の化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[実施例21]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例5で得られた式(14)の化合物0.3部、及び化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)1.0部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[比較例9]
式(7)の化合物及び式(9)化合物の代わりに、式(19)で表される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料であるC.I.Direct Yellow 4を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
Figure 0007287889000031
[比較例10]
式(7)の化合物及び式(9)の化合物の代わりに、式(20)で示される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料である化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
Figure 0007287889000032
[比較例11]
式(7)の化合物及び式(9)の化合物の代わりに、式(21)で示される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料である化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
Figure 0007287889000033
表6に、実施例18~21及び比較例9~11で作製した偏光発光素子の最大偏光度を示す波長と、最大偏光度を示す波長における単体透過率(Ts)、平行位透過率(Tp)、直交位透過率(Tc)、偏光度(ρ)、及び視感度補正単体透過率(Ys)を示す。
Figure 0007287889000034
また、表7に実施例18~21及び比較例9~11で作製した偏光発光素子において、460nm、550nm、610nm及び670nmの各波長で測定されたLs及びLwの値、並びに、Lsでの偏光発光における発光色としてJIS Z 8781-4:2013に従って測定された色度aの値及び色相bの値をそれぞれ示す。
Figure 0007287889000035
表6に示されるように、実施例18~21で作製した偏光発光素子は、最大偏光度を示す波長が380nm以下であることから、紫外光域に光の吸収特性を有する偏光発光素子として機能していることが分かった。また、可視光域の透過率(視感度補正透過率Ys)は約90%を示しており、紫外光域に偏光機能を有しながらも可視光域では高い透明度を示すことが分かった。さらに、偏光度ρも95%以上の高い値を示していた。これに対して、比較例9~11で作製した偏光発光素子は、最大偏光度を示す波長が400nm以上であり、視感度補正単体透過率(Ys)も低下していることから、可視光透過率の低下が観察された。
さらに、表7に示されるように、実施例18~21で作製した偏光発光素子では、LwとLsが検出されたため、これらの偏光発光素子は紫外線を照射することによって発光することが分かった。また、実施例18~21で作製した偏光発光素子は、Lwの値とLsの値に差があることから、その発光は偏光していることが分かった。さらに、実施例18~21で作製した偏光発光素子は、紫外線を照射することによって400~700nmの広い帯域に渡って偏光発光を示し、かつ、色度a及び色相bの絶対値がともに5以下であった。このことから、実施例18~21で作製した偏光発光素子は、紫外光の照射により白色の偏光発光を示す白色発光型偏光発光素子として機能していることが示された。一方、比較例9~11で作製した偏光発光素子は、Lsの値が低く、Lwは検出されなかったため、偏光発光を示していないか、微弱な偏光発光しか示していないことが確認された。そのため、比較例9~11で作製した偏光発光素子は、色度aについては測定範囲外であった。
[実施例22]
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.5部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
(ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の測定)
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は32μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、表8に示すようなホウ酸に由来する2次イオン強度の比の情報が得られた。この結果から導き出されるホウ酸の濃度分布は表9のように得られた。
(ラマン分光法による偏光発光色素の測定)
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1及び1600cm-1に基づく化合物例5-1に記載の化合物のエネルギーが、31μmの膜厚断面において、表層から10μmまで検出された。このことから、化合物例5-1に記載の化合物が基材の表層から10μmの深さまで少なくとも含有されていることが確認された。
(偏光発光板の作製)
得られた偏光発光素子の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。さらに、紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)を、水酸化ナトリウムで処理した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。
[実施例23]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例22で用いた化合物例5-1に代えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物を用いた以外は実施例22と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。ホウ素の濃度分布に関する情報を表8、9に示す。なお、偏光発光色素(上記式(7)の化合物)の膜厚断面における含有量は、実施例22と同等であった。
[比較例12]
実施例22に記載の化合物5-1の代わりに、蛍光発光を示さないC.I.Direct Yellow 4を用いた以外は実施例22と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[比較例13]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
ホウ素を用いなかったことは実施例22と同様にして、偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の測定)
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は31μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
(ラマン分光法による偏光発光色素の測定)
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、または1600cm-1に基づく化合物例5-1に記載の化合物のエネルギーが、31μmの膜厚断面において、表層から10μmまで検出された。このことから、化合物例5-1に記載の化合物が基材の表層から10μmの深さまで少なくとも含有されていることが確認された。
[比較例14]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
米国特許第3,276,316号明細書の実施例1に記載の方法と同様の処方により、比較例7に記載の偏光発光素子を作製した。この偏光発光素子を用いた以外は実施例22と同様に偏光発光板を作製した。
(ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の測定)
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は35μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
(ラマン分光法による偏光発光色素の測定)
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、並びに1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、35μmの膜厚断面において、表層から2μmまで検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から2μmの深さまでしか含有されていないことが確認された。
[比較例15]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
比較例14で作製した偏光発光素子を、ホウ素が5重量%含有した40℃の水溶液で5秒間含浸して、偏光発光素子を作製した。この偏光発光素子を用いた以外は実施例22と同様に偏光発光板を作製した。
(ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の測定)
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は32μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、表8に示すようなホウ酸に由来する2次イオン強度の比の情報が得られた。この結果から導き出されるホウ酸の濃度分布は表9のように得られた。
(ラマン分光法による偏光発光色素の測定)
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、ならびに1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、32μmの膜厚断面において、表層から2μmまで検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から2μmの深さまでしか含有されていないことが確認された。
[比較例16]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
特開平4-226162号公報の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、化合物例5-1で表される化合物を、けん化度99%以上のポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製「PVA-117」)に0.43重量%分を添加、混合し、乾燥後の膜厚が75μmになるように製膜することにより、基材となるポリビニルアルコールフィルムを作製した。次いで、作製したフィルムの長さが7.0倍になるように130℃で14分間一軸延伸して偏光発光素子を作製した。
(ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の測定)
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は28μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
(ラマン分光法による偏光発光色素の測定)
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1150cm-1及び1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、28μmの膜厚断面において、表層から膜厚方向に均一に検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から均一に含有されていることが確認された。
下記表8、9に、実施例22、23及び比較例15で作製した偏光発光素子において、それぞれToF-SIMS測定により得られた2次イオン強度の比(強度比)に関するデータを示す。2次イオンの強度の比とは、各偏光発光素子においてそれぞれの測定で最も高い2次イオン強度(最大2次イオン強度)の値を1として、この2次イオン強度の値に対する各距離で測定された2次イオン強度の値の比である。また、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)をLで表す。例えば、下記表8において、基材表側表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離における2次イオン強度の比がIを表し、基材表側表面(0μm)から厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比と、基材裏側表面(32μm)から厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比のうち、最大値を示す強度比がIを表す。
また、下記表9中、2次イオン強度の比(0~1/4L平均1)とは、基材の表側表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値(I)を表す。2次イオン強度の比(1/2~1/4L間平均)とは、基材の厚さLの半分(中心)から、基材の表側表面及び裏側表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値(I)を表す。2次イオン強度の比(0~1/4L平均2)とは、基材の裏側表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値(I)を表す。2次イオン強度の比(0~1/4L積分1)、2次イオン強度の比(1/2~1/4L間積分)、2次イオン強度の比(0~1/4L積分2)とは、それぞれ、2次イオン強度の比の積分値を表し、2次イオン強度の比(0~1/4L積分1)及び2次イオン強度の比(0~1/4L積分2)がI、2次イオン強度の比(1/2~1/4L間積分)がIにそれぞれ相当する。なお、該積分値は、基材の厚さ方向に対して2μm毎に得られた値の積分としている。
Figure 0007287889000036
Figure 0007287889000037
上記表8、9の結果から、実施例22及び23で作製した偏光発光素子は、基材の厚み方向に向けて、中心付近(1/2L~1/4L間)においても、比較的高い値の2次イオン強度の比を示していた。このことから、実施例22及び23で作製した偏光発光素子には、基材の表面近傍だけでなく、中心付近までホウ素が多く存在していることがわかる。一方、比較例15で作製した偏光発光素子は、中心付近の2次イオン強度の比の値が低く、基材の表面近傍に対して、中心付近のホウ素が著しく少なかった。
下記表10に、実施例22、23及び比較例12~16で作製した偏光発光素子の最大偏光度を示す波長と、最大偏光度を示す波長における単体透過率(Ts)、平行位透過率(Tp)、直交位透過率(Tc)、偏光度(ρ)及び視感度補正単体透過率(Ys)を示す。
Figure 0007287889000038
また、下記表11に実施例22、23及び比較例13~16で作製した偏光発光素子における最大偏光発光を示す波長と、その波長におけるLs及びLw、並びに、LsとLwとの比を示す。尚、比較例12で作製した偏光発光素子は偏光発光を示さなかったためLs及びLwを測定していない。
Figure 0007287889000039
上記表10に示されるように、実施例22及び23で作製した偏光発光素子は、400nmに以下の波長帯域の光を吸収し、その帯域で偏光機能を有していることが分かる。また、実施例22及び23で作製した偏光発光素子は、比較例13~16で作製した偏光発光素子よりも偏光度が高いため、その偏光機能は比較例12~16よりも優れていた。さらに、施例22及び23で作製した偏光発光素子は、可視域の透過率(視感度補正透過率Ys)は約90%を示しており、可視光域における透明度も高いことが分かった。
また、表11に示されるように、実施例22及び23で作製した偏光発光素子は、LwとLsが検出されたため、紫外線を照射することによって偏光発光を示し、また、その偏光の偏光度(Ls/Lw)も比較例13~16で作製した偏光発光素子よりも高かった。さらに、一般的な偏光板で使用されている二色性色素を用いた比較例12は、偏光発光を示さなかった。上記各評価結果から、実施例22及び23で作製した偏光発光素子は、偏光発光可能であり、偏光発光において高い偏光度を有することがわかる。
[実施例24]
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、上記化合物例5-1として記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.3部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
(偏光発光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。偏光発光素子の両面に、水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、4重量%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)、可視光吸収型色素として、一般的に黒色色素として利用されている特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.2重量%含む水溶液でラミネートして、可視光吸収型色素含有層が接着層としてさらに設けられた偏光発光素子を備える偏光発光板を作製した。
[実施例25]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例24で用いた化合物例5-1に加えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物0.08部を用いた以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[実施例26]
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例24で用いた、実特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物(可視光吸収型色素)を0.2重量%含む水溶液に代えて、一般的に橙色色素として利用されている445nmに最も高い光の吸収作用を有するC.I.Direct Orange 39を0.1重量%含む水溶液を用いた以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[実施例27]
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.3部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.1部、トリポリ燐酸ナトリウム 1.0部を含む40℃の1000部の温水に20秒間浸漬し、乾燥して偏光発光素子を作製した。
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。偏光発光素子の両面に、水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を作製した。作製した偏光発光板は、偏光発光素子と同じ光学特性を示していた。
[実施例28]
(偏光発光素子の作製)
実施例27において、延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.1部、トリポリ燐酸ナトリウム 1.0部を含む40℃の1000部の温水に20秒間浸漬し、5.0倍に延伸した。その後、延伸方向とは直交方向に1.3倍さらに延伸しながら、乾燥して偏光発光素子を作製した以外は実施例27と同様にして、直交方向にも配向した吸収を有する偏光発光素子、及びその偏光発光板を作製し、測定試料とした。
[比較例17]
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[比較例18]
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例25と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
[比較例19]
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例27と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光の偏光度の測定)
光源(「LED M365L2」ソーラボ社製)から365nmの紫外線を照射し、分光機(「分光ポラリメーターPoxi-Spectora」東京インスツルメンツ社製)を用いて、実施例24~28及び比較例17~19で作製した偏光発光板からの偏光発光のストークススペクトルを測定し、偏光発の偏光度を測定した。
表12に、実施例24~28及び比較例17~19で作製した偏光発光板における最大偏光度を示す波長(λabs max)と、視感度補正単体透過率(Ys)及び偏光発光の最大発光波長(460nm)から±30nm範囲での偏光度(DOP)の結果を示す。
Figure 0007287889000040
上記表12に示されるように、実施例24~28で作製した偏光発光板は、紫外光~近紫外可視光域に光を吸収する作用を有しながらも、可視光域において高い透過率を有し、かつ偏光発光を示していることが分かる。また、実施例24~28で作製した偏光発光板は、比較例17~19で作製した偏光発光板と比較して、透過率の低下が2%未満であるにも関わらず実、発光偏光度(DOP)が高くなっていることが分かる。特に、実施例25と比較例18とを比較すると、実施例25で作製した偏光発光板のDOPは3.48%も向上した。
(耐久性試験)
実施例1~28で作製した各測定試料を、105℃の環境下で1000時間、60℃かつ相対湿度90%の環境下で1000時間、それぞれ設置し、1000時間経過前後での偏光発光の比較を行うことによる耐久性試験を実施した。この結果、偏光度の低下、偏光発光特性に顕著な変化は見られなかった。このことから実施例1~28で作製した測定試料は、いずれも苛酷な環境下においても高い耐久性を有していることが示された。
このように、本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、自発光型の偏光フィルム、すなわち偏光発光フィルムとして応用できる。また、このような偏光発光素子及び偏光発光板は、優れた耐久性を具備しつつ、可視光域で高い透過率を有する。一般的に、コントラスト値が10を超えると人の目による視認性は飛躍的に向上する。例えば、新聞紙面における文字のコントラスト値、一般的な書籍文字のコントラスト値は5~10の範囲である。本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、この範囲を大幅に上回るコントラスト値を有する偏光発光を可能とする。したがって、本発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板を用いた表示装置は、可視光領域で透明性が高く、長期にわたって、偏光発光による画像表示が可能であるため、テレビ、パソコン、タブレット端末、さらには、透明ディスプレイ(シースルーディスプレイ)等、幅広い用途へ適用可能である。さらに、本偏光発光色素としてスチルベン系化合物を用いて作製された偏光発光素子は、紫外光により発光可能である。そのため、発明に係る偏光発光素子及び偏光発光板は、人間の目で認識しにくい紫外光等非可視光照射により機能発現が求められるような、高いセキュリティが要求されるディスプレイやセンサー等の機能媒体に応用することも可能である。

Claims (24)

  1. 光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子であって、
    前記基材が、ホウ素化合物をさらに含み、
    前記少なくとも1種の偏光発光色素が、分子中にアゾ基を有さない下記式(1)で表される化合物又はその塩であり、
    Figure 0007287889000041
    式(1)中、L及びMは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよいC -C 20 アルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいカルボニル基からなる群から選択され、
    前記基材の厚さ方向において飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦30×Iの関係を満たし、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離において検出された2次イオン強度の比を表し、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の両表面からそれぞれ前記基材の厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の最大値を表し、
    前記偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、かつ、前記偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95であることを特徴とする、偏光発光素子。
    Figure 0007287889000042
    (上記式(I)中、Kyは、前記偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表し、Kzは、前記偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した場合の光透過率を表す。)
  2. 前記少なくとも1種の偏光発光色素が、蛍光発光特性を有する、請求項1に記載の偏光発光素子。
  3. 前記少なくとも1種の偏光発光色素が、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有する、請求項1または2に記載の偏光発光素子。
  4. 前記偏光発光素子が、JIS Z 8781-4:2013に従って測定される色度aの絶対値が5以下であり、かつ色相bの絶対値が5以下である発光色を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  5. 前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
    Figure 0007287889000043
    (式(2)中、Xはニトロ基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表し、nは0~3の整数を表す。)
    Figure 0007287889000044
    (式(3)中、Yは置換基を有していてもよいC-C20アルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Zは、ニトロ基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表す。)
  6. 前記式(2)において、Xはニトロ基、置換基を有してもよいC-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C-C20アルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基である、請求項に記載の偏光発光素子。
  7. 前記式(2)において、Rが水素原子であり、nが1または2である、請求項又はに記載の偏光発光素子。
  8. 前記式(2)において、Rがメチル基である、請求項又はに記載の偏光発光素子。
  9. 前記式(3)において、Yが置換基を有してもよいアリール基である、請求項のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  10. 前記基材が親水性高分子を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  11. 上記親水性高分子が、ポリビニルアルコールを含む、請求項10に記載の偏光発光素子。
  12. 前記基材が、配向された親水性高分子フィルムである、請求項1~11のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  13. 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦5×Iの関係をさらに満たし、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表し、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す、請求項1~12のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  14. 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I≦2×Iの関係をさらに満たし、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表し、
    が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す、請求項1~13のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  15. 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の濃度分布が、前記基材の表面から3μm~20μmの間に少なくとも存在する、請求項1~14のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  16. 前記偏光発光素子が、前記偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の蛍光染料及び/又は有機染料をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  17. 前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、目視にて前記偏光発光素子からの発光が確認できない色素を含む可視光吸収型色素含有層がさらに備えられ、
    前記可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率が、50%以下である、請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
  18. 前記可視光吸収型色素含有層が光吸収異方性を有し、該光吸収異方性に基づく光の吸収方向が、前記偏光発光素子による偏光発光に対して直交方向である、請求項17に記載の偏光発光素子。
  19. 請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光発光板。
  20. 前記透明保護層が、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムである、請求項19に記載の偏光発光板。
  21. さらに支持体層を含む、請求項19または20に記載の偏光発光板。
  22. 請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子、又は請求項1921のいずれか1項に記載の偏光発光板を含む表示装置。
  23. 前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられ、かつ、
    前記可視光吸収型色素含有層が、少なくとも観察者側に設けられている、請求項22に記載の表示装置。
  24. 前記偏光発光色素を含有する基材に前記ホウ素化合物を含有させながら延伸させるか、又は前記ホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸させる、請求項1~15のいずれか1項に記載の偏光発光素子の製造方法。
JP2019532873A 2017-07-28 2018-07-26 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法 Active JP7287889B2 (ja)

Applications Claiming Priority (15)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017146355 2017-07-28
JP2017146398 2017-07-28
JP2017146354 2017-07-28
JP2017146355 2017-07-28
JP2017146398 2017-07-28
JP2017146354 2017-07-28
JP2017179677 2017-09-20
JP2017179677 2017-09-20
JP2017232387 2017-12-04
JP2017232387 2017-12-04
JP2018031820 2018-02-26
JP2018031820 2018-02-26
JP2018094216 2018-05-16
JP2018094216 2018-05-16
PCT/JP2018/028164 WO2019022212A1 (ja) 2017-07-28 2018-07-26 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019022212A1 JPWO2019022212A1 (ja) 2020-08-20
JP7287889B2 true JP7287889B2 (ja) 2023-06-06

Family

ID=65040460

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019532873A Active JP7287889B2 (ja) 2017-07-28 2018-07-26 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP7287889B2 (ja)
CN (1) CN110832363B (ja)
TW (1) TWI783016B (ja)
WO (1) WO2019022212A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7479136B2 (ja) 2018-11-22 2024-05-08 日本化薬株式会社 偏光発光素子、偏光発光板、並びにそれを用いた表示装置

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020140190A (ja) * 2019-02-22 2020-09-03 住友化学株式会社 積層体、及び画像表示装置
WO2020170697A1 (ja) * 2019-02-22 2020-08-27 住友化学株式会社 積層体、及び画像表示装置
US20220229315A1 (en) * 2019-05-17 2022-07-21 Nippon Kayaku Kabushiki Kaisha Optical Element Or Polarizing Plate, And Eyewear Using Same
TWI825331B (zh) * 2019-07-12 2023-12-11 日商日本化藥股份有限公司 發光性化合物或其鹽,以及含有該化合物之偏光發光元件、偏光發光板及顯示裝置
JPWO2021010351A1 (ja) * 2019-07-12 2021-01-21
JPWO2021010331A1 (ja) * 2019-07-12 2021-01-21
WO2021106798A1 (ja) * 2019-11-29 2021-06-03 日本化薬株式会社 偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置
JP7448910B2 (ja) * 2019-11-29 2024-03-13 日本化薬株式会社 液晶セル及び液晶表示装置
JP7429127B2 (ja) 2020-02-06 2024-02-07 日本化薬株式会社 偏光発光繊維及びその製造方法
JPWO2021166907A1 (ja) * 2020-02-17 2021-08-26
JP7337007B2 (ja) * 2020-03-06 2023-09-01 日本化薬株式会社 塗布型偏光発光素子

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001174809A (ja) 1999-12-15 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 面状偏光発光体
JP2001174636A (ja) 1999-12-17 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 蛍光偏光板
JP2002110363A (ja) 2000-09-29 2002-04-12 Hitachi Ltd 有機電界発光素子及びそれを用いた光電子素子
JP2007264011A (ja) 2006-03-27 2007-10-11 Konica Minolta Holdings Inc 表示素子
JP2011231245A (ja) 2010-04-28 2011-11-17 Mitsubishi Chemicals Corp 蛍光二色性色素、蛍光二色性色素組成物、波長変換用色素、これらを用いた液晶組成物、波長変換素子および液晶素子

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3276316A (en) * 1961-08-02 1966-10-04 Polaroid Corp Process for polarizing ultraviolet light utilizing oriented polymer sheet with incorporated dichroic fluorescent dye
JP3617540B2 (ja) * 1994-09-08 2005-02-09 三井化学株式会社 アゾ化合物及び該化合物を用いた偏光フィルム
TWI422559B (zh) * 2009-12-01 2014-01-11 Toyo Ink Mfg Co 彩色濾光片用藍色著色組成物、彩色濾光片及彩色顯示器
US10180597B2 (en) * 2011-05-18 2019-01-15 Toyobo Co., Ltd. Liquid crystal display device, polarizing plate, and polarizer protection film
KR101918543B1 (ko) * 2011-07-22 2018-11-14 니폰 가야꾸 가부시끼가이샤 편광소자 및 편광판

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001174809A (ja) 1999-12-15 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 面状偏光発光体
JP2001174636A (ja) 1999-12-17 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 蛍光偏光板
JP2002110363A (ja) 2000-09-29 2002-04-12 Hitachi Ltd 有機電界発光素子及びそれを用いた光電子素子
JP2007264011A (ja) 2006-03-27 2007-10-11 Konica Minolta Holdings Inc 表示素子
JP2011231245A (ja) 2010-04-28 2011-11-17 Mitsubishi Chemicals Corp 蛍光二色性色素、蛍光二色性色素組成物、波長変換用色素、これらを用いた液晶組成物、波長変換素子および液晶素子

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
山下芳男,非対称4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム水溶液のケイ光性と光安定性,有機合成化学,日本,有機合成化学協会,1972年,第30巻/第9号,818-822

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7479136B2 (ja) 2018-11-22 2024-05-08 日本化薬株式会社 偏光発光素子、偏光発光板、並びにそれを用いた表示装置

Also Published As

Publication number Publication date
TWI783016B (zh) 2022-11-11
CN110832363B (zh) 2022-07-22
TW201910439A (zh) 2019-03-16
JPWO2019022212A1 (ja) 2020-08-20
WO2019022212A1 (ja) 2019-01-31
CN110832363A (zh) 2020-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7287889B2 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法
CN111133347B (zh) 光学***及显示装置
JP7200108B2 (ja) スチルベン系化合物又はその塩、並びに、偏光膜、偏光板及び表示装置
JP2019056904A (ja) 面状偏光発光素子
JP7429105B2 (ja) 偏光発光板、及びそれを備えた光学装置
WO2021166907A1 (ja) 光学システム及びそれを備えた光学装置
JP7336964B2 (ja) 光学制御システム
JP7522738B2 (ja) 発光性化合物又はその塩、ならびにこれを用いた偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置
JP7479136B2 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、並びにそれを用いた表示装置
WO2021106798A1 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置
JP7288298B2 (ja) 表示装置
JP7452969B2 (ja) 偏光発光板、及びそれを備えた光学装置
TWI826705B (zh) 發光性化合物或其鹽,以及含有該化合物之偏光發光元件、偏光發光板及顯示裝置
TWI825331B (zh) 發光性化合物或其鹽,以及含有該化合物之偏光發光元件、偏光發光板及顯示裝置
CN114026199B (zh) 含有水溶性香豆素系化合物或其盐的偏光发光膜、偏光发光板及显示装置
JP7406458B2 (ja) 水溶性ペリレン系二色性蛍光染料、又はその塩を用いた偏光機能を有する偏光発光膜、偏光発光板及び表示装置
JP7411361B2 (ja) 光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置
WO2021010351A1 (ja) 発光性化合物又はその塩を用いた偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20200421

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200519

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20201124

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220713

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220906

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20221116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230203

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20230203

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20230213

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20230214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230509

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230525

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7287889

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150