JP7287889B2 - 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法 - Google Patents
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Description
1)
光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子であって、
前記偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、かつ、前記偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95である、偏光発光素子。
2)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、蛍光発光特性を有する、上記1)に記載の偏光発光素子。
3)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有する、上記1)または2)に記載の偏光発光素子。
4)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、ビフェニル骨格又はスチルベン骨格を有する、上記1)~3)のいずれかに記載の偏光発光素子。
5)
前記偏光発光素子が、JJIS Z 8781-4:2013に従って測定される色度a*の絶対値が5以下であり、かつ色相b*の絶対値が5以下である発光色を示す、上記4)に記載の偏光発光素子。
6)
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、下記式(1)で表される化合物又はその塩である、上記4)または5)に記載の偏光発光素子。
7)
前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、上記6)に記載の偏光発光素子。
Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表し、
nは0~3の整数を表す。)
8)
前記式(2)において、Xはニトロ基、置換基を有してもよいC1-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C1-C20アルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基である、上記7)に記載の偏光発光素子。
9)
前記式(2)において、Rが水素原子であり、nが1または2である、上記7)又は8)に記載の偏光発光素子。
10)
前記式(2)において、Rがメチル基である、上記7)又は8)に記載の偏光発光素子。
11)
前記式(3)において、Yが置換基を有してもよいアリール基である、上記7)~10)のいずれかに記載の偏光発光素子。
12)
前記基材が親水性高分子を含む、上記1)~11)のいずれかに記載の偏光発光素子。
13)
上記親水性高分子が、ポリビニルアルコールを含む、上記12)に記載の偏光発光素子。
14)
前記基材が、配向された親水性高分子フィルムである、上記1)~13)のいずれかに記載の偏光発光素子。
15)
前記基材が、ホウ素化合物をさらに含む、上記1)~14)のいずれかに記載の偏光発光素子。
16)
前記基材の厚さ方向において飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I2≦30×I1の関係を満たし、
I1が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離において検出された2次イオン強度の比を表し、
I2が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の両表面からそれぞれ前記基材の厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の最大値を表す、上記15)に記載の偏光発光素子。
17)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I3≦5×I4の関係をさらに満たし、
I3が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表し、
I4が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す、上記16)に記載の偏光発光素子。
18)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I5≦2×I6の関係をさらに満たし、
I5が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表し、
I6が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す、上記16)又は17)に記載の偏光発光素子。
19)
前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の濃度分布が、前記基材の表面から3μm~20μmの間に少なくとも存在する、上記16)~18)のいずれかに記載の偏光発光素子。
20)
前記偏光発光素子が、前記偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の有機染料及び/又は蛍光染料をさらに含む、上記1)~19)のいずれかに記載の偏光発光素子。
21)
前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに備えられている、上記1)~20)のいずれかに記載の偏光発光素子。
22)
前記可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率が、50%以下である、上記21)に記載の偏光発光素子。
23)
前記可視光吸収型色素含有層が光吸収異方性を有し、該光吸収異方性に基づく光の吸収方向が、前記偏光発光素子による偏光発光に対して直交方向である、上記21)または22)に記載の偏光発光素子。
24)
上記1)~23)のいずれかに記載の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光発光板。
25)
前記透明保護層が、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムである、上記24)に記載の偏光発光板。
26)
さらに支持体層を含む、上記24)または25)に記載の偏光発光板。
27)
上記1)~23)のいずれかに記載の偏光発光素子、又は上記24)~26)のいずれかに記載の偏光発光板を含む表示装置。
28)
前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられ、かつ、
前記可視光吸収型色素含有層が、少なくとも観察者側に設けられている、上記27)に記載の表示装置。
29)
前記偏光発光色素を含有する基材に前記ホウ素化合物を含有させながら延伸させるか、又は前記ホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸させる、上記15)~19)のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
本発明に係る偏光発光素子は、光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子である。また、偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、その偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95である。
偏光発光色素は、スチルベン骨格またはビフェニル骨格を基本骨格として有する化合物又はその塩であることが好ましい。このような基本骨格を有する偏光発光色素が、蛍光発光特性を示しつつ、かつ、オーダーパラメーターの値が0.81~0.95の範囲に制御されるよう基材に配向されるにことにより、他の偏光発光色素よりも高い偏光度を有する光、すなわち、高いコントラストを有する光を発光させることができる。偏光発光色素の基本骨格としてのスチルベン骨格及びビフェニル骨格は、それぞれの骨格自体が蛍光発光特性を示し、かつ、基材に配向させることにより高い二色性を示す作用を有する。この作用は、スチルベン骨格及びビフェニル骨格の各基本骨格の構造に起因するため、基本骨格構造にはさらに任意の置換基が結合されていてもよい。ただし、基本骨格構造にアゾ基を置換する場合、従来の染料系偏光板のように高い偏光度を実現できるものの、アゾ基が置換される位置によっては発光光量が著しく低下し、所望とする発光光量が得られないことがある。そのため、各基本骨格にアゾ基を置換する場合、その置換位置が重要となる。偏光発光色素は、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて併用してもよい。
スチルベン骨格を有する偏光発光色素は、好ましくは、下記式(1)で表される化合物又はその塩である。
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ターシャリブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基等の置換基を有してもよいC1-C20アルキルアミノ基;
フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N-フェニル-N-ナフチルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールアミノ基;
メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-ブチル-カルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいC1-C20アルキルカルボニルアミノ基;
フェニルカルボニルアミノ基、ビフェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基;
メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチル-スルホニルアミノ基等のC1-C20アルキルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ等が挙げられる。
このような式(5)で示される化合物の具体例は、例えば、特開平4-226162号公報に記載されている下記の化合物が挙げられる。
上記の特性を示す偏光発光素子は、偏光発光素子の偏光性能を阻害しない範囲で、上述した偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の蛍光染料及び/又は有機染料をさらに含んでいてもよい。併用される蛍光染料としては、例えば、C.I.Fluorescent Brightener 5、C.I.Fluorescent Brightener 8、C.I.Fluorescent Brightener 12、C.I.Fluorescent Brightener 28、C.I.Fluorescent Brightener 30、C.I.Fluorescent Brightener 33、C.I.Fluorescent Brightener 350、C.I.Fluorescent Brightener 360、C.I.Fluorescent Brightener 365等が挙げられる。
偏光発光素子は、偏光発光色素を含有することができ、かつ、配向することができる基材を備える。基材は、偏光発光色素を吸着し、かつ、ホウ素誘導体を含有し架橋しうる親水性高分子を含むことが好ましく、該親水性高分子を製膜して得られる親水性高分子フィルム、特に配向された親水性高分子フィルムであることが好ましい。親水性高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系樹脂が好ましい。親水性高分子は、偏光発光色素の染色性、加工性及び架橋性などの観点からポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルアルコール又はその誘導体のいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸のような不飽和カルボン酸等で変性した樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、偏光発光色素の吸着性及び配向性の点から、基材は、ポリビニルアルコール又はその誘導体から作製されたフィルムが好ましい。
偏光発光素子の製造方法は、以下の製法に限定されるものではないが、主に、ポリビニルアルコール又はその誘導体を用いたフィルムに上述した偏光発光色素を配向させることが好適である。以下、ポリビニルアルコール又はその誘導体を用いた場合を例とした偏光発光素子の作製方法について説明する。
膨潤工程は、20~50℃の膨潤液に、上記基材を30秒~10分間浸漬させることにより行うことが好ましく、膨潤液は水であることが好ましい。膨潤液による基材の延伸倍率は、1.00~1.50倍に調整することが好ましく、1.10~1.35倍に調整することがより好ましい。
上記膨潤工程にて膨潤処理を施して得られた基材に、少なくとも1種の偏光発光色素を含浸及び吸着させる。染色工程は、偏光発光色素を基材に含浸及び吸着させる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材を、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法、基材に該染色溶液を塗布し、吸着させる方法等が挙げられる。これらのうち、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法が好ましい。染色溶液中の偏光発光色素の濃度は、基材中に偏光発光色素が十分に吸着されていれば特に限定されるものではないが、例えば、染色溶液中に0.0001~1質量%であることが好ましく、0.001~0.5質量%であることがより好ましい。
染色工程又は予備洗浄工程の後、基材に架橋剤を含有させることができる。基材に架橋剤を含有させる方法は、架橋剤を含む処理溶液に基材を浸漬させることが好ましく、一方で、当該処理溶液を基材に塗布又は塗工してもよい。処理溶液中の架橋剤としては、例えば、ホウ素化合物を含有する溶液を使用する。ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸、硼砂、酸化ホウ素、水酸化ホウ素等の無機化合物、ボロン酸であるアルケニルボロン酸、アリールボロン酸、アルキルボロン酸、ボロン酸エステル、トリフルオロボラート又はその塩等が挙げられ、ホウ酸、硼砂が好ましくは、ホウ酸が特に好ましい。処理溶液中の溶媒は、特に限定されるものではないが、水が好ましい。処理溶液中のホウ素誘導体の濃度は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。処理溶液の温度は、30~80℃が好ましく、40~75℃がより好ましい。また、この架橋工程の処理時間は30秒~10分が好ましく、1~6分がより好ましい。この架橋工程により、得られる偏光発光素子は、高いコントラストを示す。このことは、従来技術において、耐水性又は光透過性を改善する目的で使用されていたホウ素化合物の機能からは全く予期し得ない優れた作用である。また、架橋工程においては、必要に応じて、カチオン、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理をさらに併せて行ってもよい。カチオンとはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、バリウムなどの金属に由来するイオンであり、好ましくは2価のイオンが用いられる。具体的には塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化バリウム等である。フィックス処理により、基材中における偏光発光色素の固定化が可能となる。このとき、カチオン系高分子化合物として、例えば、ジシアン系としてジシアンアミドとホルマリン重合縮合物、ポリアミン系としてジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物、ポリカチオン系としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアモンニウムクロライド・二酸化イオン共重合物、ジアリルアミン塩重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩重合物等が使用される。
上記架橋工程を行った後、延伸工程を実施する。延伸工程は、基材を一定の方向に一軸延伸することにより行われる。延伸方法は、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよい。基材の延伸倍率もまた、オーダーパラメーターの値を制御する際、重要である。偏光発光素子が示すオーダーパラメーターの値を所望の範囲に制御するため、基材の延伸倍率は、3.3倍以上であることが好ましく、3.3~8.0倍であることがより好ましく、3.5~6.0倍であることがさらに好ましく、4.0~5.0倍であることが特に好ましい。
上記延伸工程を実施した後には、基材の表面に架橋剤の析出又は異物が付着することがあるため、基材の表面を洗浄する洗浄工程を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は、基材を洗浄液に浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を基材に塗布又は塗工によって洗浄することもできる。洗浄液としては、水が好ましい。洗浄処理は一段階で実施しても、2段階以上の多段処理で実施してもよい。洗浄工程の洗浄溶の温度は、特に限定されるものではないが、通常、5~50℃、好ましくは10~40℃であり、常温であってよい。
上記洗浄工程の後、基材の乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるものの、より乾燥効率を高めるため、ロールによる圧縮やエアーナイフ又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことが可能であり、さらには、送風乾燥を行うことも可能である。乾燥処理の温度は、20~100℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、30秒~20分であることが好ましく、5~10分であることがより好ましい。
偏光発光素子は、偏光発光を吸収する層として、偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層をさらに備えることが好ましい。これにより、偏光発光のコントラスト、すなわち、偏光した発光において発光の強い軸の光の強度と、発光の弱い軸の光の強度との差が大きい偏光発光素子を得ることができる。
本発明に係る偏光発光板は、上述の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備えている。このような透明保護層は、偏光発光素子の耐水性、取扱性等を向上させるために使用される。そのため、このような透明保護層は、本発明に係る偏光発光素子が示す偏光作用に何ら影響を与えるものではない。但し、偏光発光素子が紫外光域の光を吸収して偏光発光を示す場合、透明保護層は、紫外光吸収機能を有さないことが好ましく、特に、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムであることが好ましい。
本発明に係る表示装置は、本発明における偏光発光素子又は偏光発光板を含んでいる。そのため、このような表示装置は、特定の波長の光が照射されることにより発光しながら映像を表示可能なディスプレイを形成できる。例えば、特定の波長のみ吸収する、すなわち特定の色を有する基材の表面に、異なる色の波長の偏光を発光させることができる。さらに、400nm以下の光、例えば紫外光を照射することによって可視光域に偏光発光作用を示し、この作用を利用することによって、ディスプレイ上に、映像表示が可能となる。このように、上述の偏光発光素子又は偏光発光板を液晶ディスプレイと組み合わせることによって、一般的な偏光板を用いた従来の液晶ディスプレイとは異なり、自己発光型液晶ディスプレイとしての活用が可能となる。また、表示装置において、偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられている場合、可視光吸収型色素含有層は、少なくとも観察者側に設けられていることが好ましい。可視光吸収型色素含有層を観察者側に配置することにより、観察者に対して高いコントラスの視感度を向上させることができる。
下記の実施例及び比較例で得た各偏光発光素子又は偏光発光板を測定試料とした評価を次のようにして行った。
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて偏光発光素子のオーダーパラメーターの値を評価した。各実施例及び比較例で作製した各偏光発光素子(測定試料)に、220nm~2600nmの波長領域にほぼ100%の偏光を有する光(以下、「絶対偏光」と称する)を照射できるように絶対偏光グラムテーラープリズムを設置し、各測定試料に、絶対偏光を照射した際の各波長の光の透過率を測定した。絶対偏光を照射し、偏光発光色素が配向した偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した際に測定されたた光透過率をKy、絶対偏光を照射し、偏光発光色素が配向した偏光発光素子において最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した際に測定されたた光透過率をKzとして、それぞれの値を下記式(I)に代入した。得られた値を、偏光発光素子のオーダーパラメーター(OPD)の値として評価した。
各測定試料の視感度補正単体透過率Ysは、可視光領域における400~700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)毎に求めた上記Ky及びKzを記式(V)に代入して各波長の単体透過率Tsを算出し、JISZ 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを下記式(VI)に代入して算出した。なお、下記式(VI)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
各測定試料の偏光度ρを、以下の式(VII)に、平行透過率Tp及び直交透過率Tcを代入して求めた。ここで、平行位透過率Tpは、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて、2枚の測定試料をその吸収軸方向が平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。また、直交位透過率Tcは、分光光度計を用いて、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ね合せて測定した分光透過率である。測定は、220~780nmの波長にわたって行った。
光源として、395nmハンドライトタイプ LEDブラックライト(Vansky JAPAN社製「FBA_VS-FL01 JP(ASIN:B01EAJB9BA)」)を用い、光源に紫外線透過・可視カットフィルター(五鈴精工硝子社製「IUV-340」)を設置し可視光をカットした。その上で、可視光領域及び紫外光領域の光に対して偏光機能を有する偏光板(ポラテクノ社製「SKN-18043P」、厚さ180μm、Ysは43%)以下「測定用偏光板」という)と、各実施例及び比較例で得られた偏光発光板とを設置し、偏光発光板が発光している偏光発光を、分光放射照度計(ウシオ電機社製「USR-40」)を用いて測定した。すなわち、光源からの光が、紫外線透過・可視カットフィルター、測定用偏光板及び各偏光発光板を、この順に通過し、各偏光発光板からの偏光が分光放射照度計に入射するように配置して測定した。その際、各偏光発光板の紫外光領域の光の吸収が最大になる吸収軸と、測定用偏光板の吸収軸とが平行になるように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLw(弱発光軸)、各偏光発光板の紫外光域の光の吸収が最大になる吸収軸と、測定用偏光板の吸収軸とが直交するように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLs(強発光軸)として、Lw及びLsを測定した。各偏光発光板の吸収軸と測定用偏光板の吸収軸とが平行である場合と、直交する場合との可視光域で発光された光のエネルギー量を確認し、Ls/Lwを偏光発光のコントラスト(ECR)の値とすることで、可視光域である400nm~700nmにおいて偏光発光を評価した。
(合成例1)
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸35.2部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸17.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製後4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である下記式(6)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム 41.4部を炭酸ナトリウム存在下で10℃の水300部に加え撹拌した。さらに、式(8)で示す化合物34.0部を加え、pH10で反応させた後、得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(9)の化合物のウェットケーキ68.4部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(9)の化合物(λmax:356nm)33部を得た。
国際公開第2005/033211号に記載の方法により合成した下記式(10)の化合物6.0部と炭酸カリウム1.6部を、N-メチル-2-ピロリドン50部に加え撹拌した。得られた溶液に4-メトキシベンゾイルクロリド2.1部を添加し、90℃にて4時間撹拌した。得られた反応液を20%塩化ナトリウム水溶液300部に加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(11)の化合物のウェットケーキ20.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(11)の化合物(λmax:372nm)5.0部を得た。
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2, 2’-ジスルホン酸ナトリウム 41.4部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸34.4部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製し、4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である式(12)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸4.0部と炭酸ナトリウム2.8部をN-メチル-2-ピロリドン30部に加え、次いで4-メトキシベンゾイルクロリド3.4部を5分間滴下した後、110℃にて6時間撹拌した。得られた反応液を水100部に添加し、析出固体をろ過分離し、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、ウェットケーキ10.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(14)の化合物(λmax:370nm)3.0部を得た。
特公昭50-033814号公報及び特公平03-294598号公報を参考にして、400部の氷水中に界面活性剤(ライオン社製「レオコールTD90」0.20部を加えて激しく攪拌し、その中に塩化シアヌル18.4部を添加し0~5℃で30分間攪拌し、懸濁液を得た。この懸濁液にアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を加え、pH4~6、0~30℃で4時間撹拌し、続いて4、4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸18.5部を加え、pH4~8、20~50℃で6時間撹拌した。得られた反応液にジエタノールアミン11部を加え、pH8~10、40~70℃で6時間撹拌した後、塩化ナトリウム80部を添加し析出固体をろ過分離し、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、ウェットケーキ100.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(15)のスチルベン系化合物(λmax:370nm)30.0部を得た。
反応液を得た。
合成例6で使用したアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を4-アミノベンゼンスルホン酸17.3部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(16)の化合物(λmax:370nm)23.0部を得た。
合成例6で使用したジエタノールアミン11部をフェノール18.8部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(17)の化合物(λmax:370nm)15.0部を得た。
合成例6で使用したアニリン-2,5-ジスルホン酸25.3部を4-アミノベンゼンスルホン酸アミド17.2部とする以外は合成例6と同様の方法により、下記式(18)の化合物(λmax:370nm)23.0部を得た。
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル2ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)を0.05部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に10分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は92.3%を示した。
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。得られた偏光発光板は、偏光発光素子とほぼ同等の光学特性を示した。
実施例1で作製した偏光発光素子において、化合物例5-1に記載の化合物を含む45℃の水溶液に、膨潤したフィルムを浸漬する時間(10分間)を、9分30秒間、9分間、8分30秒間、8分間、7分40秒間、7分30秒間にそれぞれ変更して浸漬させること以外は実施例1と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
実施例1で作製した偏光発光素子において、化合物例5-1に記載の化合物を含む45℃の水溶液に、膨潤したフィルムを浸漬する時間(10分間)を、5分間、2分間にそれぞれ変更して浸漬させること以外は実施例1と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.8%を示した。
実施例8で作製した偏光発光素子において、上記式(7)で表される化合物を基材に含有させた後、基材の延伸倍率(5.0倍)を、4.5倍、4.3倍、4.0倍、3.5倍、3.3倍にそれぞれ変更すること以外は実施例8と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例6で作製した上記式(15)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は92.1%を示した。
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例7で作製した上記式(16)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.7%を示した。
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例8で作製した上記式(17)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.5%を示した。
実施例1において用いた化合物例5-1に代えて、合成例9で作製した上記式(18)の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子の視感度補正単体透過率(Ys)は91.6%を示した。
実施例8で作製した偏光発光素子において、式(7)で表される化合物を基材に含有させた後、基材の延伸倍率(5.0倍)を、3.2倍、3.0倍、2.8倍、2.6倍にそれぞれ変更して延伸させること以外は実施例8と同様にして、各々オーダーパラメーターの値が異なる偏光発光素子を作製した。
米国特許第3,276,316号明細書の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を4倍に延伸した。得られたフィルムを、化合物例5-1が含有している常温の染色液に浸漬し、浸漬した液から取り出した後、基材の長さが4.2倍になるように延伸し、偏光発光素子を得た。この偏光発光素子を用いた以外は実施例1における偏光発光板の作製方法と同様に偏光発光板を作製した。得られた偏光発光素子のOPDの値は0.753であり、偏光発光のECRの値は5.0であった。
特開平4-226162号公報の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、化合物例5-1で表される化合物を、けん化度99%以上のポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製「PVA-117」)に0.43重量%分を添加、混合し、乾燥後の膜厚が75μmになるように製膜することにより、基材となるポリビニルアルコールフィルムを作製した。次いで、作製したフィルムの長さが7.0倍になるように一軸延伸して偏光発光素子を作製した。得られた偏光発光素子のOPDの値は0.679であり、偏光発光のECRの値は3.4であった。
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を40℃の水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、合成例1で得られた式(7)の化合物を0.3部、合成例2で得られた式(9)の化合物を0.15部、芒硝を1.0部、水を1000部含有する45℃の水溶液に、4分間浸漬して、式(7)の化合物及び式(9)の化合物をフィルムに含有させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。得られた偏光発光板は、偏光発光素子とほぼ同等の光学特性を示した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例3で得られた式(11)の化合物0.3部、及び合成例4で得られた式(13)の化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例5で得られた式(14)の化合物0.3部、及び合成例4で得られた式(13)の化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
式(7)の化合物0.3部及び式(9)の化合物0.15部に代えて、合成例5で得られた式(14)の化合物0.3部、及び化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)1.0部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
式(7)の化合物及び式(9)化合物の代わりに、式(19)で表される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料であるC.I.Direct Yellow 4を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
式(7)の化合物及び式(9)の化合物の代わりに、式(20)で示される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料である化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
式(7)の化合物及び式(9)の化合物の代わりに、式(21)で示される蛍光発光を示さない一般的な二色性染料である化合物0.15部を用いた以外は実施例18と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「VF-PS#7500」)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.5部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は32μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、表8に示すようなホウ酸に由来する2次イオン強度の比の情報が得られた。この結果から導き出されるホウ酸の濃度分布は表9のように得られた。
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1及び1600cm-1に基づく化合物例5-1に記載の化合物のエネルギーが、31μmの膜厚断面において、表層から10μmまで検出された。このことから、化合物例5-1に記載の化合物が基材の表層から10μmの深さまで少なくとも含有されていることが確認された。
得られた偏光発光素子の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。さらに、紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)を、水酸化ナトリウムで処理した偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板を得た。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例22で用いた化合物例5-1に代えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物を用いた以外は実施例22と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。ホウ素の濃度分布に関する情報を表8、9に示す。なお、偏光発光色素(上記式(7)の化合物)の膜厚断面における含有量は、実施例22と同等であった。
実施例22に記載の化合物5-1の代わりに、蛍光発光を示さないC.I.Direct Yellow 4を用いた以外は実施例22と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
ホウ素を用いなかったことは実施例22と同様にして、偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は31μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、または1600cm-1に基づく化合物例5-1に記載の化合物のエネルギーが、31μmの膜厚断面において、表層から10μmまで検出された。このことから、化合物例5-1に記載の化合物が基材の表層から10μmの深さまで少なくとも含有されていることが確認された。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
米国特許第3,276,316号明細書の実施例1に記載の方法と同様の処方により、比較例7に記載の偏光発光素子を作製した。この偏光発光素子を用いた以外は実施例22と同様に偏光発光板を作製した。
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は35μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、並びに1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、35μmの膜厚断面において、表層から2μmまで検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から2μmの深さまでしか含有されていないことが確認された。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
比較例14で作製した偏光発光素子を、ホウ素が5重量%含有した40℃の水溶液で5秒間含浸して、偏光発光素子を作製した。この偏光発光素子を用いた以外は実施例22と同様に偏光発光板を作製した。
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は32μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、表8に示すようなホウ酸に由来する2次イオン強度の比の情報が得られた。この結果から導き出されるホウ酸の濃度分布は表9のように得られた。
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1173cm-1、ならびに1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、32μmの膜厚断面において、表層から2μmまで検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から2μmの深さまでしか含有されていないことが確認された。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
特開平4-226162号公報の実施例1に記載の方法と同様の処方により、偏光発光素子を作製した。具体的には、化合物例5-1で表される化合物を、けん化度99%以上のポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製「PVA-117」)に0.43重量%分を添加、混合し、乾燥後の膜厚が75μmになるように製膜することにより、基材となるポリビニルアルコールフィルムを作製した。次いで、作製したフィルムの長さが7.0倍になるように130℃で14分間一軸延伸して偏光発光素子を作製した。
得られた偏光発光素子において、基材の厚さ(偏光発光素子の膜厚)は28μmであった。「ToF-SIMS 300」(ION-TOF社製)を用いて基材の表面から基材の厚さ方向に向けてホウ酸の含有量(基材の断面におけるホウ酸含有量)を測定したところ、ホウ素を含有していないことを確認した。
ラマン分光光度計(サーモフィッシャー製「DXR Raman Microscope」)を用いて、得られた偏光発光素子の膜厚断面に対して厚さ方向に走査しながらラマン分光を適用した。その結果、1150cm-1及び1600cm-1に基づく偏光発光色素のエネルギーが、28μmの膜厚断面において、表層から膜厚方向に均一に検出された。このことから、偏光発光色素は基材の表層から均一に含有されていることが確認された。
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、上記化合物例5-1として記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.3部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。偏光発光素子の両面に、水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、4重量%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製 NH-26)、可視光吸収型色素として、一般的に黒色色素として利用されている特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.2重量%含む水溶液でラミネートして、可視光吸収型色素含有層が接着層としてさらに設けられた偏光発光素子を備える偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例24で用いた化合物例5-1に加えて、合成例1で作製した上記式(7)の化合物0.08部を用いた以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子及び偏光発光板の作製)
実施例24で用いた、実特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物(可視光吸収型色素)を0.2重量%含む水溶液に代えて、一般的に橙色色素として利用されている445nmに最も高い光の吸収作用を有するC.I.Direct Orange 39を0.1重量%含む水溶液を用いた以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)0.3部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に、8分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5分間浸漬し、5.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.1部、トリポリ燐酸ナトリウム 1.0部を含む40℃の1000部の温水に20秒間浸漬し、乾燥して偏光発光素子を作製した。
(偏光発光素子の作製)
実施例27において、延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を0.1部、トリポリ燐酸ナトリウム 1.0部を含む40℃の1000部の温水に20秒間浸漬し、5.0倍に延伸した。その後、延伸方向とは直交方向に1.3倍さらに延伸しながら、乾燥して偏光発光素子を作製した以外は実施例27と同様にして、直交方向にも配向した吸収を有する偏光発光素子、及びその偏光発光板を作製し、測定試料とした。
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例24と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例25と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
可視光吸収型色素としての特許第4764829号の実施例1に記載されている化合物を用いない以外は実施例27と同様にして偏光発光素子及び偏光発光板を作製した。
光源(「LED M365L2」ソーラボ社製)から365nmの紫外線を照射し、分光機(「分光ポラリメーターPoxi-Spectora」東京インスツルメンツ社製)を用いて、実施例24~28及び比較例17~19で作製した偏光発光板からの偏光発光のストークススペクトルを測定し、偏光発の偏光度を測定した。
実施例1~28で作製した各測定試料を、105℃の環境下で1000時間、60℃かつ相対湿度90%の環境下で1000時間、それぞれ設置し、1000時間経過前後での偏光発光の比較を行うことによる耐久性試験を実施した。この結果、偏光度の低下、偏光発光特性に顕著な変化は見られなかった。このことから実施例1~28で作製した測定試料は、いずれも苛酷な環境下においても高い耐久性を有していることが示された。
Claims (24)
- 光の吸収を利用して偏光発光可能な少なくとも1種の偏光発光色素を基材に配向させた偏光発光素子であって、
前記基材が、ホウ素化合物をさらに含み、
前記少なくとも1種の偏光発光色素が、分子中にアゾ基を有さない下記式(1)で表される化合物又はその塩であり、
前記基材の厚さ方向において飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I2≦30×I1の関係を満たし、
I1が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から厚さ方向に向けて1/2Lの距離において検出された2次イオン強度の比を表し、
I2が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の両表面からそれぞれ前記基材の厚さ方向に向けて1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の最大値を表し、
前記偏光発光色素が、吸収された光の波長領域において偏光作用を示し、かつ、前記偏光作用が最も高い波長において、下記式(I)で算出されるオーダーパラメーター(OPD)の値が、0.81~0.95であることを特徴とする、偏光発光素子。
- 前記少なくとも1種の偏光発光色素が、蛍光発光特性を有する、請求項1に記載の偏光発光素子。
- 前記少なくとも1種の偏光発光色素が、紫外光領域~近紫外可視光領域の光を吸収することにより可視光領域の光を偏光発光可能な蛍光発光特性を有する、請求項1または2に記載の偏光発光素子。
- 前記偏光発光素子が、JIS Z 8781-4:2013に従って測定される色度a*の絶対値が5以下であり、かつ色相b*の絶対値が5以下である発光色を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記式(2)において、Xはニトロ基、置換基を有してもよいC1-C20アルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、C1-C20アルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基である、請求項5に記載の偏光発光素子。
- 前記式(2)において、Rが水素原子であり、nが1または2である、請求項5又は6に記載の偏光発光素子。
- 前記式(2)において、Rがメチル基である、請求項5又は6に記載の偏光発光素子。
- 前記式(3)において、Yが置換基を有してもよいアリール基である、請求項6~8のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記基材が親水性高分子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 上記親水性高分子が、ポリビニルアルコールを含む、請求項10に記載の偏光発光素子。
- 前記基材が、配向された親水性高分子フィルムである、請求項1~11のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I3≦5×I4の関係をさらに満たし、
I3が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表し、
I4が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の平均値を表す、請求項1~12のいずれか1項に記載の偏光発光素子。 - 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度が、I5≦2×I6の関係をさらに満たし、
I5が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記基材の少なくとも片面の表面から1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表し、
I6が、前記基材の厚さLにて検出された最大2次イオン強度に対する前記厚さLの中心から前記基材の両表面に向けて厚さ方向にそれぞれ1/4Lの距離までの間で検出された2次イオン強度の比の積分値を表す、請求項1~13のいずれか1項に記載の偏光発光素子。 - 前記ホウ素化合物に由来する2次イオン強度の濃度分布が、前記基材の表面から3μm~20μmの間に少なくとも存在する、請求項1~14のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記偏光発光素子が、前記偏光発光色素とは異なる少なくとも1種の蛍光染料及び/又は有機染料をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の偏光発光素子。
- 前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、目視にて前記偏光発光素子からの発光が確認できない色素を含む可視光吸収型色素含有層がさらに備えられ、
前記可視光吸収型色素含有層による可視光透過率の低下率が、50%以下である、請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子。 - 前記可視光吸収型色素含有層が光吸収異方性を有し、該光吸収異方性に基づく光の吸収方向が、前記偏光発光素子による偏光発光に対して直交方向である、請求項17に記載の偏光発光素子。
- 請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子と、該偏光発光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光発光板。
- 前記透明保護層が、紫外光吸収機能を有さないプラスチックフィルムである、請求項19に記載の偏光発光板。
- さらに支持体層を含む、請求項19または20に記載の偏光発光板。
- 請求項1~18のいずれか1項に記載の偏光発光素子、又は請求項19~21のいずれか1項に記載の偏光発光板を含む表示装置。
- 前記偏光発光素子の少なくとも一方の表面に、可視光吸収型色素含有層がさらに設けられ、かつ、
前記可視光吸収型色素含有層が、少なくとも観察者側に設けられている、請求項22に記載の表示装置。 - 前記偏光発光色素を含有する基材に前記ホウ素化合物を含有させながら延伸させるか、又は前記ホウ素化合物を基材に含有させた後に延伸させる、請求項1~15のいずれか1項に記載の偏光発光素子の製造方法。
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