JP7411361B2 - 光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置 - Google Patents

光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7411361B2
JP7411361B2 JP2019164088A JP2019164088A JP7411361B2 JP 7411361 B2 JP7411361 B2 JP 7411361B2 JP 2019164088 A JP2019164088 A JP 2019164088A JP 2019164088 A JP2019164088 A JP 2019164088A JP 7411361 B2 JP7411361 B2 JP 7411361B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
polarized light
group
polarized
light emitting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019164088A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020060762A (ja
Inventor
典明 望月
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Kayaku Co Ltd
Original Assignee
Nippon Kayaku Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Kayaku Co Ltd filed Critical Nippon Kayaku Co Ltd
Publication of JP2020060762A publication Critical patent/JP2020060762A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7411361B2 publication Critical patent/JP7411361B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)
  • Illuminated Signs And Luminous Advertising (AREA)

Description

本発明は、光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように可視域の偏光した光を提供しうる光源、または表示装置に関する。
一般に、人間の目や、画像認識装置であるカメラなどは、周囲の画像として光を感知する。近年、自動車分野やロボット分野等における自動運転安全技術において、画像認識装置が必需となりつつあり、通常、動作による光の変化を、カメラを用いて感知して自動安全装置を作動させる。この自動安全装置は、可視域の光だけでなく、紫外域、赤外域等の光など様々な光を感知している。そのため、光感知における誤作動を無くすことが必需であり、例えば、特許文献1や2には、様々な関連技術が公開されている。誤作動の主な原因の一つは、反射する光に由来するものである。例えば、道路上に水たまりや雪面、あるいは氷面が存在した場合、それらが光の反射面として機能してしまい、これらの表面に人間や信号機等の存在を示す光が反射された場合、その場所に人間や信号機が存在しているものと安全装置が誤認識してしまう恐れがある。この誤認識は、自動運転を行う車やバイク、あるいはロボットの誤作動を引き起こす原因となるだけでなく、人間の目にも誤認識を与える原因ともなり得る。
このような誤認識は、屋外の環境に限らず、屋内の環境、特に水回りや大理石、陶器、ステンレス家具等による光反射によっても起こり得る。近年、室内においても、顔認識機能や動作認識機能を利用した機器の活用が増えつつあるため、誤認識による誤作動を発生させない技術が求められていた。
特許第5859897号公報 特開2014-072592号公報
従来の自動運転安全装置やカメラは、受光する側の画像処理等で誤作動防止対策を施している。しかしながら、受光した光が、反射による光であるか否かについて判別することは難しかった。これまでの誤作動を防止出来る方法は、従来、受光側でカメラやアプリケーションを用いて反射を抑制する方法がとられており、根本的に、発光側の光自体の反射防止対策がなされるものではなかった。それに対して、本願の発明は、これまでの周囲環境に照射する光によって発生する誤認識を防止する処方を提供し、自動安全装置の誤作動を無くすだけでなく、人に対しても視認性を向上しうる光源および表示装置を提供するものである。
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して、垂直方向の偏光した光が入射されるように可視光領域の偏光した光を発光する光源、または表示装置を提供することで、人間の目の誤認識や、光や動作を認識する安全装置における誤認識等を防止出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本願発明の技術を用いることにより、光源が透明であり、さらには文字や画像も表示しうる表示装置も実現可能であることを見出した。特に、光を反射する媒体により光反射が起こりうる環境において、各種装置の誤認識による誤作動を防止できる点で、本発明は重要である。
すなわち本発明は、1)~8)に関する。
1)
光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように可視域の偏光した光を提供しうる光源、または表示装置。
2)
光の透過率が40%以上100%以下であることを特徴とする1)に記載の光源、または表示装置。
3)
可視域の偏光した光を発光する偏光発光素子を含む1)または2)に記載の光源、または表示装置
4)
上記偏光発光素子が、光誘発源より発光された紫外域~近紫外可視域の光を利用して可視域の光を発光する偏光発光素子であることを特徴とする3)に記載の光源、または表示装置。
5)
上記1)~4)のいずれか一項に記載の光源、または表示装置に、さらに光を反射しうる媒体を具備してなることを特徴とする光学システム。
6)
屋外で用いることを特徴とする1)~4)のいずれか一項に記載の光源、または表示装置または5)に記載の光学システム。
7)
運転装置向けに用いることを特徴とする1)~4)のいずれか一項に記載の光源、または表示装置または5)に記載の光学システム。
8)
自動車、バイク、自転車等の車両または船舶向けに用いることを特徴とする1)~4)のいずれか一項に記載の光源、または表示装置または5)に記載の光学システム。
光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように可視域の偏光した光を提供しうる光源、または表示装置を提供することで、人間の目の誤認識や、光や動作を認識する安全装置における誤認識による誤作動等を防止出来る。特に、光を反射する媒体により光反射が起こりうる環境において、各種装置の誤認識を防止できる点で、本発明は重要である。また、本願発明の技術によれば、90%以上の透過率を有しながらも可視偏光を発光する光源を提供することが可能なため、透明でありながら偏光を発光しうる光源となる。さらに、その光源は紫外域の光を入射させることでも可視域の偏光を発光するため、光誘発源として目に見えない光を用いた本願光源又は表示装置を提供できる。さらに液晶セルでその偏光を制御することにより任意の映像を提供しうる表示装置を提供しうる。
上記光源または表示装置が垂直方向の偏光を発光することは、受光側で偏光遮光板や自動車や二輪車等の運転者が偏光レンズや偏光サングラスを用いる場合であっても好適である。一般的に、自動車等の安全装置や運転者は、吸収型偏光レンズや偏光サングラスを用いるが、その光吸収型偏光レンズや偏光サングラスの光の吸収軸は反射媒体に対して水平方向、即ち、平行方向である。その理由としては、水面や雪、アスファルト等で反射してくる光は水平方向(S偏光)であるため、その偏光のみを吸収し、逆の軸の光、即ち反射媒体に対して垂直方向(P偏光)は透過することで、周囲環境の反射を抑えた情報を入手し、視認性の向上、誤認の防止、目の疲れや機器の誤認による誤作動を減らすことを目的としているためである。本願発明の光源、もしくは表示装置を提供されれば、周囲に垂直方向の偏光のみを提供しうるため、前述の反射防止効果を提供できるだけでなく、一般的な偏光レンズや偏光サングラスを用いている運転者や機器に、表示を阻害することなく情報を提供することが出来る。よって、本願発明の光源及び表示装置は、一般的な偏光レンズや偏光サングラスを用いている機器や運転者に対しても、正確な視覚情報を提供しうる装置になるため好ましい。
実施例3の図面代用写真
比較例3の図面代用写真
光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように可視域の偏光した光を提供しうる光源、または表示装置であることを特徴とする。尚、本願の水平方向、または垂直方向とは限りなく正確な角度、例えば0°、または90°を指すものではなく、あくまで大まかなその方向を表すものである。具体的には、垂直方向を0°または水平方向を90°とした場合、それぞれの方向に対して±10°程度角度が異なっても本願の効果を発現するものである。
一般的に、光は、光を反射する媒体があれば反射してしまい、その反射した光は偏光を有していることが知られている。例えば、入射する光が、光を反射する媒体との間でなす角度が30°~80°である場合、反射して視認しうる光は比較的強い偏光を有する。一般的には、「ブリュースター角」と呼ばれる角度に相当する場合、反射媒体に対して垂直方向の光は反射が著しく小さくなり、反射媒体に対して水平方向の偏光の反射する光との比は大きくなる。つまり、反射光は偏光を有するものであるが、本願はこの現象を利用した光源または表示装置を提供し、光を反射する媒体に対して垂直方向の入射となるよう偏光を出射しうる光源とすることによって、光の反射を抑制しうる光源、それを用いた表示装置を提供しうる。
本願の光源、または表示装置と光を反射する媒体との間でなす角度は、特に限定されるものではなく、任意の角度で配置することが出来る。光源、または表示装置から出射(発光)した光と、光を反射する媒体との間でなす角度は、反射媒体に対して垂直方向を0°とした場合、30°~85°を成す角がより良いが、好ましくは40°~80°、より好ましくは50°~75°が良い。尚、本願の光源または表示装置から発する全光量すべてが30°~85°の範囲にある必要はなく、反射媒体に対して入射する一部の光が該角度範囲で出射されることにより反射を低減または抑制しうる光源または表示装置を達成できる。
上記、光を反射する媒体とは、例えば、水、雪、氷、石、葉っぱなどの自然環境に存在するものの他、銀、アルミニウム、銅、鉄等の金属、鏡、プラスチック、大理石、アスファルト、紙、ガラスなども挙げられ、また、水、雪、氷などが付着したアスファルトやプラスチックなども挙げられ、光を反射可能な媒体であれば特に限定されない。
本願発明で用いる光源、もしくは表示装置を実現するためには、それを発光させるための光誘発源が必要であり、光誘発源からの光を偏光に変換させる、もしくはその光誘発源からの光を利用して偏光した光を発光させる必要がある。本願で用いる光源、または表示装置に光を入射しうる光誘発源の光は、光を発光できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、LEDランプ、白色電球、キセノンランプ、紫外線ランプ、水銀ランプ等が用いることができ、特に限定されるものではない。本願発明で用いる光誘発源は、光を出射出来れば一般的な発光機器であっても良い。一般的な発光機器としては、例えば、液晶ディスプレイ、OLED、FED、CRT、LEDディスプレイ、LEDマイクロディスプレイ等、光を発光し映像等を表示しうる機器を用いることが出来る。それら光誘発源からの光の波長は限定されず、任意の波長であってよい。例えば、紫外域、可視域、赤外域等の波長の光を出射しうる光誘発源を用いることが出来る。
本願の光源または表示装置より発光した偏光した光の偏光軸は、光を反射する媒体を水平方向とした場合、垂直方向の偏光した光であることを必要とする。垂直方向の偏光は、一般に「P偏光」とも呼ばれる。光を反射する媒体に垂直方向の偏光を照射することにより、反射した光は減衰され光の反射を抑制することが出来る。本願発明において、光を反射する媒体に対して垂直方向の偏光した光が入射されるように可視域の偏光した光である「P偏光」を出射させる光源または表示装置とするためには、光誘発源からの光を偏光した光に変換できるように光誘発源の最表面に一般的な偏光板などの偏光に変換できる光学素子を配置するか、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光しうる素子(偏光発光素子)を反射媒体に対して垂直方向の偏光した光を出射することで、本願の技術の形態を達成しうる。
(偏光板)
上記偏光板は、光誘発源からの光を偏光した光に変換できる機能を有する偏光板であれば特に限定されない。好ましくは可視域の光を偏光に変換できる機能を有していることが良い。該偏光板としては、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板、特定の波長のみを偏光制御できる染料系偏光板、ポリエンを利用したタイプの偏光板、ワイヤーグリッドタイプの偏光板などであっても良い。上記偏光板は、400~700nmの一部又は全部の波長域の光に対して偏光性能を有している。ヨウ素系偏光板としては例えば特開2001-290029号公報、特開2010-072548号公報等に記載のものが挙げられ、染料系偏光板としては特開2001-033627号公報、特開2004-251962号公報等に記載のものが挙げられ、特定の波長のみを偏光制御出来る染料系偏光板であれば、特開2007-084803号公報、特開2007-238888号公報等に記載のものが挙げられ、ポリエンを利用した偏光板であれば、特表2005-527847号公報、特表2005-517974号公報等に記載のものが挙げられ、ワイヤーグリッドタイプの偏光板としては特表2003-519818号公報、特表2003-502708号公報等に記載のものがあげられる。反射型偏光板としては米国特許第3610729号、WO95/17303号、WO95/17692号、WO95/17699号、WO96/19347号、WO99/36262号、WO2005/0888363号、特開2007-298634号公報、WO2011/074701号等に記載のものがあげられ、製品としてはDBEF(3M社製)が例示できる。また、上記偏光板として反射型偏光板を用いることが、一軸の直線偏光を透過させることができるだけでなく、異なる軸の偏光した光を内部へ反射させ光の再利用が可能であるため好ましい。よって、偏光板として上記反射型偏光板を用いることが、本願発明の一つの好ましい形態として挙げられる。また、上記各偏光板を、反射媒体に対して入射する光が垂直方向に偏光した光(P偏光)になるように光誘発源に配置することが本願発明の光源、または表示装置を達成しうるため一つの好ましい形態として挙げられる。
上記おいて偏光板の偏光の軸が反射媒体に対して垂直方向、すなわち反射媒体に対してP偏光が出射されるように配置することが、本願の機能を達成しうるための一つの好ましい形態であるが、偏光の軸が反射媒体に対して垂直方向、すなわち反射媒体に対してP偏光を提供しうる偏光板の形態としては、ヨウ素系偏光板や染料系偏光板の吸収軸を反射媒体に対して水平方向、即ち偏光板の吸収軸を反射媒体に対して平行方向に配置することで達成しうる。ヨウ素系偏光板や染料系偏光板の吸収軸を水平方向に配置することで、垂直方向の偏光した光のみが透過し、その垂直方向の光は反射が抑制されるため、本願の光源もしくは表示装置を提供しうる。
さらに好ましい形態としては、吸収型や複屈折型の偏光板を用いるのではなく、表示に際し、可視光領域の偏光した光を発光する素子を用いることが視認性を向上させるために好ましい。可視光領域の偏光した光を発光する素子について、本願では「偏光発光素子」と省略して記載する場合がある。
上記偏光発光素子は、該素子に光誘発源から紫外域~可視域の光を照射することにより可視域の偏光した光を発光する素子を指し、該素子が発光する機能を活用し、光源として用いたり、表示装置として用いることが出来る。該素子から出射される偏光した光の方向が、反射媒体に対して垂直方向、具体的には反射媒体に対して垂直方向の波(P偏光)であることにより、光源もしくはそれを用いて表示装置を得ることが出来る。
上記偏光発光素子の光透過率が高いと、偏光を発光した表示だけでなく、その素子を通過した情報が得られることが出来るためより好ましい。こうした透明性と表示を両立する特徴を有する表示装置は、透明ディスプレイやシースルーディスプレイと呼ばれ、表示される情報とは別に、そのディスプレイを通して背景を視認することも可能となる。例えば、本願発明の反射媒体に対して垂直方向(P偏光)を発光する光源または表示装置の後ろに、標識や看板、一般的な表示装置を配置することにより、人や機器にその情報を提供しつつも、光源もしくは表示装置から反射を抑える光を提供しうる。
上記偏光発光素子の光透明性は高い方が好ましいが、その透明性は限定されるものではない。一般的に40%~100%の透過率を有することにより、その媒体を通して背景を視認することが容易であることから、例えば、上記光源、または表示装置が有する光透過率は40%以上100%以下であることが良く、例えば、50%以上あれば背景の情報を提供する装置として良好に機能し、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上が良い。
上記偏光発光素子の透明性を維持する方法としては、可視域で偏光を発光する素子でありながら、可視域380~780nmにおける光を全部、もしくは一部しか光を吸収しないことがよく、例えば、紫外~近紫外可視域の光を利用して可視域の偏光した光を発光する偏光発光素子を得ることが良い。尚、光誘発源からの紫外~近紫外可視域の光を利用して可視域の光を発光することは、一般的には蛍光発光もしくは燐光発光と呼ばれ、本願では発光した光が偏光した蛍光発光であることが好ましい。
紫外~近紫外可視域の光を利用して可視の光を発光する素子(偏光発光素子)の好ましい形態の1つとしては、例えば、光波長領域において、430nmより短波長の光で、紫外~近紫外可視域における範囲の光を吸収し、380nm~780nmの可視域の一部または全部に発光スペクトルピークを有する偏光した光を発光する素子であり、後述する基材および偏光発光色素1種以上を少なくとも含む。偏光発光素子を偏光発光させるために照射される紫外~近紫外可視域の光とは、300~430nmの光を好ましく用いることが出来るが、目に見えない光、もしくは目の感度が著しく低い波長の光を用いることが好ましい。そのため、より好ましくは340~415nm、さらに好ましくは350~400nm、特に好ましくは350~390nmの光を用いることが良い。照射する紫外~近紫外可視域の光は、偏光の有無は問わず、偏光を有していても良い。そういった偏光発光素子に照射される紫外~近紫外可視域の光とはLEDなどの一般的な光誘発源でも良いし、紫外~近紫外可視域の光を含む自然光、例えば太陽光でも良い。
<基材>
上記偏光発光素子は、後述する偏光発光色素を吸着・配向するための高分子フィルムを基材として用いる。該高分子フィルムは、好ましくは、一般的な二色性を有する偏光発光色素、特にスチルベン骨格を有する色素またはビフェニル骨格を有する色素を吸着しうる親水性高分子を製膜して得られる親水性高分子フィルムが良い。該親水性高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系樹脂が好ましく、上記二色性を有する偏光発光色素の染色性、加工性及び架橋性などの観点からポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体であることが好ましい。上記ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、及びこれらのいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸のような不飽和カルボン酸等で変性したもの等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール又はその誘導体からなるフィルムが、二色性を有する偏光発光色素の吸着性及び配向性の点から、好適に用いられる。当該基材は、例えば、市販のポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体からなるフィルムを用いてもよく、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜することにより作製してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えば、含水ポリビニルアルコールを溶融押出する方法、流延製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去)、キャスト製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を基盤上に流し、乾燥)、及びこれらの組み合わせによる方法等、公知の製膜方法を採用することができる。基材の厚さは通常10~100μm、好ましくは20~80μm程度である。
<偏光発光素子の製造方法>
上記偏光発光素子の製造方法は、以下の製法に限定されるものではないが、主に、ポリビニルアルコールまたはその誘導体によってなるフィルムを用いた場合が好適である。ポリビニルアルコールまたはその誘導体によってなるフィルムを用いた場合を例とした偏光発光素子の作製方法について述べる。
上記偏光発光素子の作製方法は、基材を準備する工程、該基材を膨潤液に浸漬し、該基材を膨潤させる膨潤工程、膨潤させた該基材を、上記偏光発光色素1種以上を少なくとも含む染色溶液に含浸させ、基材に偏光発光色素を吸着させる染色工程、偏光発光色素を吸着させた基材を、ホウ酸を含有する溶液に浸漬することにより偏光発光色素を基材中で架橋させる架橋工程、偏光発光色素を架橋させた基材を一定の方向に一軸延伸して偏光発光色素を一定の方向に配列させる延伸工程、必要に応じて、延伸させた基材を洗浄液で洗浄する洗浄工程および/または、洗浄させた基材を乾燥させる乾燥工程を含んでいる作製方法を、以下、例示して説明する。
(膨潤工程)
上記膨潤工程について説明する。膨潤工程は、20~50℃の膨潤液に、上記基材を30秒~10分間浸漬させることにより行うことが好ましく、膨潤液は水であることが好ましい。膨潤液による基材の延伸倍率は、1.00~1.50倍に調整することが好ましく、1.10~1.35倍に調整することがより好ましい。
(染色工程)
上記染色工程について説明する。上記膨潤工程を経て得られた基材に、後述する偏光発光色素1種以上を吸着させる。該染色工程は、偏光発光色素を基材に吸着可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材を、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法や、基材に偏光発光色素を含む染色溶液を塗布する方法等が挙げられるが、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法が好ましい。染色溶液中の偏光発光色素の濃度は、基材中に偏光発光色素が十分に吸着されていれば特に限定されるものではないが、例えば、染色溶液中に0.0001~1質量%であることが好ましく、0.0001~0.5質量%であることがより好ましい。染色工程における染色溶液の温度は、5~80℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、40~50℃が特に好ましい。また、染色溶液に基材を浸漬する時間は、適宜調節可能であり、30秒~20分の間で調節するのが好ましく、1~10分の間がより好ましい。染色溶液に含まれる偏光発光色素は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記偏光発光色素は、色素構造の違い等によりその発光色が異なるため、基材に、上記偏光発光色素を複数種含有させることにより、生じる発光色を様々な色になるように適宜調整することができる。また、必要に応じて、染色溶液は、1種以上の有機染料および/又は蛍光染料をさらに含んでいてもよい。
(偏光発光色素)
上記偏光発光色素は、スチルベン骨格またはビフェニル骨格のいずれか少なくとも一方を構造内に有し、蛍光を発光する化合物又はその塩である。上記偏光発光色素は、蛍光発光を有しつつ、二色比を有することにより、偏光した光を発光させることが出来る。特に、スチルベン骨格やビフェニル骨格を有する偏光発光色素は、蛍光発光特性に優れ、かつ、配向させることにより高い二色比を有する特性を兼ね備える。これら特性は、上記各骨格に由来し、これら特性をさらに向上させたり、吸収波長や発光波長、耐光、耐湿、耐オゾンガス等の各種堅牢性、溶解度等、各種特性を調整するために、上記各骨格に、さらに任意の置換基を導入することが可能である。この置換基導入に際しては、置換基の種類や置換位置によって、従来の染料系偏光板のように高い偏光度を実現できるものの、発光光量が著しく低下してしまうため、蛍光発光特性に優れ、かつ、高い二色比を有するためには、置換基の種類や置換位置の選択が重要となる。また、上記偏光発光色素は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用され得る。
(a)スチルベン骨格を有する色素
上記スチルベン骨格を有する色素は、好ましくは、式(1)で表される化合物またはその塩である。
Figure 0007411361000001
上記式(1)において、L及びMは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基を表すが、必ずしもこれらに限定されない。式(1)で表されるスチルベン骨格を有する色素は蛍光発光を有し、かつ、配向することにより二色性が得られることが知られているが、これは主にスチルベン骨格に起因するものであり、さらに任意の置換基が導入されていても良い。ただし、スチルベン骨格のL位置、および、M位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
上記置換基を有してもよいアミノ基としては、例えば、非置換のアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ターシャリブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N-フェニル-N-ナフチルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールアミノ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-ブチル-カルボニルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ビフェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチル-スルホニルアミノ基等の炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ等が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましい。また、上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基における置換基としては、特に制限はないが、例えば、ニトロ基、シアノ基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アリールオキシ基等が挙げられる。
上記カルボキシアルキル基としては、例えば、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいカルボニルアミド基としては、例えば、N-メチル-カルボニルアミド基(-CONHCH)、N-エチル-カルボニルアミド基(-CONHC)、N-フェニル-カルボニルアミド基(-CONHC)等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいナフトトリアゾール基としては、例えば、ベンゾトリアゾール基、ナフトトリアゾール基等が挙げられる。
上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ターシャリブチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいビニル基としては、例えば、ビニル基、メチルビニル基、エチルビニル基、ジビニル基、ペンタジエン基等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいアミド基としては、例えば、アセトアミド基(-NHCOCH)、ベンズアミド基(-NHCOC)等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、案トラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
上記置換基を有しても良いカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-ブチル-カルボニル基、フェニルカルボニル基等が挙げられる。
上記置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基における置換基としては、特に制限はないが、上記置換基を有してもよいアミノ基の項で述べた置換基と同じで良い。
上記式(1)で表されるスチルベン骨格を有する色素は、下記式(2)で表される色素もしくはその塩又は下記式(3)で表される色素もしくはその塩であることが特に好ましい。これら色素を用いることによって、より鮮明な白色発光をする偏光発光素子を得ることができるため好ましい。
Figure 0007411361000002
上記式(2)において、置換基Rは水素原子、塩素原子、臭素原子、又はフッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表す。置換基を有していても良いアルキル基としては、上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基の項で述べたものと同じで良い。置換基を有してもよいアルコキシル基は、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基等である。置換基を有してもよいアミノ基は、上記と同じで良く、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はフェニルアミノ基等である。置換基Rは、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよいが、好ましくは、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、3位、5位、又は8位に結合している。
上記式(2)において、nは0~3の整数であり、好ましくは1~2である。上記式(2)において、-(SOH)基は、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよい。-(SOH)基のナフタレン環における置換位置は、n=1であるとき、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、4位、6位、又は7位であることが好ましく、n=2であるとき、5位と7位、および6位と8位であることが好ましく、n=3であるとき3位と6位と8位の組み合わせであることが好ましい。また、Rが水素原子であり、nが1であることが特に好ましい。
上記式(2)におけるXは、ニトロ基又は置換基を有してもよいアミノ基を表し、ニトロ基であることが好ましい。置換基を有してもよいアミノとしては、上記と同様でよく、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましい。
上記式(3)におけるYは、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有してもよいナフチル基であることがさらに好ましく、置換基としてアミノ基とスルホ基が置換したナフチル基であることが特に好ましい。
式(3)におけるZは、上記式(2)におけるXについて説明したのと同じ置換基を表し、ニトロ基であることが好ましい。
式(1)で示される化合物として、例えば、Kayaphorシリーズ(日本化薬社製)、Whitex RP等のホワイテックスシリーズ(住友化学社製)等が挙げられる。また、下記に式(1)で示される化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0007411361000003
(b)ビフェニル骨格を有する色素
上記ビフェニル骨格を有する色素は、好ましくは、式(4)で表される化合物又はその塩である。
Figure 0007411361000004
上記式(4)において、P及びQは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、又は置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基、置換基を有しても良いアミノ基を表すが、必ずしもこれらに限定されない。ただし、ビフェニル骨格のP位置、および、/または、Q位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
上記式(4)で表される化合物は、好ましくは、下記式(5)で表される化合物である。
Figure 0007411361000005
上記式(5)において、jは、0~2の整数を示す。(SOH)-基の好ましい置換位置は、特に限定されないが、ビニル基を1位とした時、2位、4位、6位が好ましく、特に好ましくは2位または4位である。
上記式(5)において、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシル基、アラルキロキシ基、アルケニロキシ基、炭素数1~4のアルキルスルホニル基、炭素数6~20のアリールスルホニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルボキシアルキル基からなる群より選択される基である。カルボキシアルキル基としては、上記と同じで良い。
上記炭素数が1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ターシャリブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
上記炭素数1~4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、ターシャリブトキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
上記アラルキロキシ基としては、炭素数7~18のアラルキロキシ基等が挙げられる。
上記アルケニロキシ基としては、炭素数1~18のアルケニロキシ基等が挙げられる。
上記炭素数1~4のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、ターシャリブチルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基等が挙げられる。
上記炭素数6~20のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基等が挙げられる。
上記式(5)において、R~Rの好ましい置換位置は、好ましくはビニル基を1位とした時、2位、4位、6位が好ましい。
上記式(5)で表される偏光発光色素の合成方法を次に説明する。式(5)で表される偏光発光色素は公知の方法で作製できるが、例えば、4-ニトロベンズアルデヒド-2-スルホン酸をホスホネートと縮合させ、次いでニトロ基を還元することによって得られる。
式(5)で表される化合物は、特開平4-226162号公報に記載されている下記の化合物などで例示される。
Figure 0007411361000006
上記式(1)~(5)で表される化合物の塩は、無機陽イオン又は有機陽イオンと共に形成する塩である。無機陽イオンとしては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、及びカリウム等の陽イオン、並びに、アンモニウムイオン(NH )が挙げられる。有機陽イオンとしては、例えば、下記式(D)で表される有機アンモニウムが挙げられる。
Figure 0007411361000007
式(D)中、Z1からZ4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、又はヒドロキシアルコキシアルキルを表わし、Z1~Z4の少なくともいずれか1つは水素原子以外の基である。
1~Z4の具体例としては、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル等のC-Cアルキル、好ましくはC-Cアルキル;ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、及び2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシC-Cアルキル、好ましくはヒドロキシC-Cアルキル;並びにヒドロキシエトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシエチル、3-ヒドロキシエトキシプロピル、3-ヒドロキシエトキシブチル、及び2-ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル、好ましくはヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル等が挙げられる。
これらの無機陽イオン及び有機陽イオンうち、より好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びアンモニウム等の陽イオンが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン、アンモニウムイオン、及びナトリウムイオンがより好ましい。
その他、上記偏光発光素子において使用可能な偏光発光色素としては、例えば、
C.I.Fluorescent Brighter 5,
C.I.Fluorescent Brighter 8,
C.I.Fluorescent Brighter 12,
C.I.Fluorescent Brighter 28,
C.I.Fluorescent Brighter 30,
C.I.Fluorescent Brighter 33,
C.I.Fluorescent Brighter 350,
C.I.Fluorescent Brighter 360,
C.I.Fluorescent Brighter 365,
などが挙げられる。これらの蛍光染料は遊離酸であっても、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩又はアミン類の塩であってもよい。
上記にて得た偏光発光色素の1種単独又は2種以上を組み合わせ、配向させることにより、偏光した光を発光する偏光発光素子が得られる。該偏光発光素子において、2種以上の偏光発光色素を用いる場合、それら偏光発光色素間の配合割合を調整することによって、様々な発光色になるよう調整することが可能となる。例えば、色度a値及びb値の絶対値がいずれも5以下となるように調整することにより、偏光発光素子が発光する偏光光を白色にすることが可能となる。上記色度a値及びb値は、それぞれ偏光発光素子に光を入射させたときに、偏光発光素子から出射される光について測定した分光分布に基づき、JIS Z 8781-4:2013に従って求められる。JIS Z 8781-4:2013に定められる物体色の表示方法は、国際照明委員会(略称「CIE」)が定める物体色の表示方法に相当する。色度a値及びb値の測定は、通常、測定試料に自然光を照射して行われるが、本願の明細書及び特許請求の範囲においては、偏光発光素子に紫外光領域等の短波長の光を照射し、発光した光を測定することにより色度a値及びb値を確認できる。発光光のaの絶対値は、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。また、発光光のbの絶対値は、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。a値及びb値の絶対値が、それぞれ独立に5以下であれば、人間の目では白色として感知することができ、さらにそれぞれが共に5以下であれば、より好ましい白色発光として感知することが出来る。発光する偏光が白色であることにより、太陽光のような自然な光源、ペーパーホワイト色を有する光源として利用が可能であり、カラ-フィルターなどを用いるディスプレイに置いても応用が簡易であるという利点がある。発光強度については、光っていることが目に感知出来ればディスプレイに応用することは問題ない。特に、本願の特徴としては発光が高い偏光度を持つこと、および、可視光領域の透過率が高いことが重要である。
(2)その他の色素
上記偏光発光素子は、スチルベン骨格、又はビフェニル骨格を有する色素又はその塩を単独又は複数含むことに加えて、偏光発光機能を阻害しない範囲で、色調整等を目的として、必要に応じて他の有機染料又は他の蛍光染料を1種以上さらに含んでいてもよい。他の有機染料としては、特に限定されないが、二色性の高いものが好ましく、かつ、スチルベン骨格、又はビフェニル骨格を有する色素の光学特性に影響が少ない色素が好ましい。他の有機染料としては、例えば、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 71、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 31、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Blue 69、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Green 80、及びC.I.Direct Green 59等が挙げられる。これらの有機染料は遊離酸であっても、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩又はアミン類の塩であってもよい。
上記他の有機染料又は他の蛍光染料を併用する場合、所望とする偏光発光素子の色調整のために、配合する染料を選択し、配合比率等を調整することが可能である。調製する目的により、有機染料又は蛍光染料の配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、偏光発光素子100質量部に対して、これら他の有機染料又は他の蛍光染料の総量が0.01~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
上記染色溶液は、上記の各染料に加え、必要に応じて更に染色助剤を含有してもよい。染色助剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム(芒硝)、無水硫酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは硫酸ナトリウムである。染色助剤の含有量は、使用される染料の染色性に基づく上記浸漬時間や染色溶液の温度等によって任意に調整可能であるが、染色溶液中に0.0001~10質量%であることが好ましく、0.0001~2質量%であることがより好ましい。
上記染色工程後、該染色工程で基材の表面に付着した染色溶液を除去するために、任意に予備洗浄工程を経ることができる。予備洗浄工程を経ることによって、次に処理する液中に基材の表面に残存する染料が移行することを抑制することができる。予備洗浄工程では、洗浄液として一般的には水が用いられる。洗浄方法は、洗浄液に染色した基材を浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を当該基材に塗布することによって洗浄することもできる。洗浄時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~300秒であり、より好ましくは1~60秒である。予備洗浄工程における洗浄液の温度は、基材を構成する材料が溶解しない温度であることが必要となり、一般的には5~40℃で洗浄処理が施される。尚、予備洗浄工程を経ずとも、偏光発光素子の性能には特段大きな影響を及ぼさないため、予備洗浄工程は省略することも可能である。
(架橋工程)
染色工程又は予備洗浄工程の後、基材に架橋剤を含有させることができる。基材に架橋剤を含有させる方法は、架橋剤を含む処理溶液に基材を浸漬させることが好ましく、一方で、当該処理溶液を基材に塗布又は塗工してもよい。処理溶液中の架橋剤としては、ホウ酸を含有する溶液を使用する。処理溶液中の溶媒は、特に限定されるものではないが、水が好ましい。処理溶液中のホウ酸の濃度は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。処理溶液の温度は、30~80℃が好ましく、40~75℃がより好ましい。また、この架橋工程の処理時間は30秒~10分が好ましく、1~6分がより好ましい。本発明に係る偏光発光素子の製造方法が、この架橋工程を有することにより、得られる偏光素子の発光する光の偏光度は高く、表示体として高いコントラストを示す。このことは、従来技術において、耐水性又は光透過性を改善する目的で使用されていたホウ酸の機能からは全く予期し得ない優れた作用である。また、架橋工程においては、必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理をさらに併せて行ってもよい。該フィックス処理により、偏光発光素子中の染料固定化が可能となる。このとき、カチオン系高分子化合物として、例えば、カチオン、ジシアン系としてジシアンアミドとホルマリン重合縮合物、ポリアミン系としてジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物、ポリカチオン系としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアモンニウムクロライド・二酸化イオン共重合物、ジアリルアミン塩重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩重合物等が使用される。
(延伸工程)
上記架橋工程を経た後、延伸工程を実施する。延伸工程は、基材を一定の方向に一軸延伸することにより行われ、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよい。延伸倍率は、3倍以上であることが好ましく、より好ましくは5~8倍である。
湿式延伸法においては、水、水溶性有機溶剤又はその混合溶液中で基材を延伸することが好ましい。より好ましくは、架橋剤を少なくとも1種含有する溶液中に基材を浸漬しながら延伸処理を行う。架橋剤は、例えば、上記架橋剤工程におけるホウ酸を用いることができ、好ましくは、架橋工程で使用した処理溶液中で延伸処理を行うことができる。延伸温度は40~70℃であることが好ましく、45~60℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であり、好ましくは2~7分である。湿式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。尚、延伸処理は、任意に、染色工程の前に行ってもよく、この場合には、染色の時点で染料の配向も一緒に行うことができる。
乾式延伸法において、延伸加熱媒体が空気媒体である場合には、空気媒体の温度が常温~180℃で基材を延伸するのが好ましい。また、湿度は20~95%RHの雰囲気中であることが好ましい。基材の加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、熱間圧延伸法及び赤外線加熱延伸法等が挙げられるが、これらの延伸方法に限定されるものではない。乾式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。
(洗浄工程)
延伸工程の際、基材の表面に架橋剤の析出又は異物が付着することがあるため、基材の表面を洗浄する洗浄工程を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は、基材を洗浄液に浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を基材に塗布又は塗工によって洗浄することもできる。洗浄液としては、水が好ましい。洗浄処理は一段階で実施しても、2段階以上の多段処理で実施してもよい。洗浄工程の洗浄溶の温度は、特に限定されるものではないが、通常、5~50℃、好ましくは10~40℃であり、常温であってよい。
上述した各工程で用いる溶液又は処理液の溶媒としては、上記水の他にも、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールまたはトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミンおよびジエチレントリアミン等のアミン類等が挙げられる。当該溶液又は処理液の溶媒は、これらに限定されるものではないが、最も好ましくは水である。また、これらの溶液又は処理液の溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
(乾燥工程)
洗浄工程の後、基材の乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるものの、より乾燥効率を高めるため、ロールによる圧縮やエアーナイフ又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことが可能であり、さらには、送風乾燥を行うことも可能である。乾燥処理の温度は、20~100℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、30秒~20分であることが好ましく、5~10分であることがより好ましい。
以上の方法で、本発明に係る偏光発光素子を作製することができる。本発明に係る偏光発光素子は偏光発光を示し、かつ、紫外線領域において偏光を示す素子であり、二色性色素が高温や高湿熱環境下でも分解しないため、高い耐久性を有する。
上記偏光発光素子は、紫外域~可視域の光、特に紫外域~近紫外可視域の光の照射を受けると、そのエネルギーを利用して可視光領域の偏光した光を発光する。偏光発光素子が発光する光が可視域の偏光した光であることから、可視域の光に対して偏光機能を有する一般的な偏光板を介して偏光発光素子を観察した場合、その可視光領域に偏光機能を有する一般的な偏光板の軸の角度を変えることによって、偏光した光を発光した軸の光と著しく発光の少ない軸の光とを視認することができる。偏光発光素子が発光する光の偏光度は、70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。また、ビフェニル骨格またはスチルベン骨格を有する偏光発光色素を用いた偏光発光素子は、可視域の光を透過させるため、高い透過率を有する。偏光発光素子の可視域の光の透過率は、視感度補正された透過率において、50%以上であれば従来の液晶ディスプレイと比較して明らかに飛躍的な高透過な液晶ディスプレイが得られるが、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。本願で用いる偏光発光素子は高い透過率を有することから、非発光状態において可視光領域での吸収が小さく、透明度の高い偏光発光素子が得られるため、偏光発光素子を用いることは本願の好ましい形態の一つである。
[偏光発光板]
上記偏光発光素子の少なくとも一方の面に透明保護層を有することで偏光発光板とすることも出来る。該透明保護層は、偏光発光素子の耐水性や取扱性等を向上させるために使用され、該透明保護層は上記偏光発光素子が示す偏光機能に何ら影響を与えるものではない。
上記透明保護層は、光学的透明性および機械的強度に優れる透明保護膜であることが好ましい。また、透明保護層は、偏光発光素子の形状を維持できる層形状を有するフィルムであることが好ましく、透明性および機械的強度の他に、熱安定性、水分遮蔽性等にも優れるプラスチックフィルムであることが好ましい。このような保護膜を形成する材料としては、例えば、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、或いは、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が挙げられ、好ましくはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムやシクロオレフィン系フィルムが用いられる。透明保護層の厚さは、1μm~200μmの範囲が好ましく、10μm~150μmの範囲がより好ましく、40μm~100μmが特に好ましい。上記偏光板を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、偏光発光素子に透明保護層を重ねて、公知の処方にてラミネートすることによって偏光板を作製することができる。
該偏光発光板は、透明保護層と偏光発光素子との間に、透明保護層と偏光発光素子とを貼り合わせるための接着剤層をさらに備えていてもよい。該接着剤層を構成する接着剤は、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルーイソシアネート系接着剤等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコール系接着剤が用いられる。透明保護層と偏光発光素子とを接着剤により貼り合せた後、適切な温度で乾燥又は熱処理を行うことにより上記偏光発光板を作製することができる。
また、上記偏光発光板は、透明保護層の露出面に、反射防止層、防眩層、さらなる透明保護層等の公知の各種機能性層を適宜備えていてもよい。このような各種機能性を有する層を作製する場合、各種機能性を有する材料を透明保護層の露出面に塗工する方法が好ましく、各種機能性層又はフィルムを接着剤若しくは粘着剤を介して透明保護層の露出面に貼合せることも可能である。
上記さらなる透明保護層としては、例えば、アクリル系、ポリシロキサン系等のハードコート層、ウレタン系の保護層等が挙げられる。また、単体透過率をより向上させるために、透明保護層の露出上に反射防止層を設けることもできる。反射防止層は、例えば、二酸化珪素、酸化チタン等の物質を、透明保護層上に蒸着又はスパッタリング処理するか、或いは、フッ素系物質を透明保護層上薄く塗布することにより形成することができる。
上記偏光発光素子、または偏光発光板より発光する偏光が反射媒体に対して垂直方向に偏光を発光する(P偏光を発光する)ように設置することで、水平方向の反射媒体において反射を減衰できる本願の光源として好ましい形態を提供することが出来る。
上記偏光発光素子、または偏光発光板を反射媒体に対して垂直方向に偏光が出射するように配置することで、反射を抑制できる光を出射出来る光源として活用が可能であるが、該偏光発光素子、または偏光発光板の加工や液晶セル等と組み合わせることによって画像や文字を提供することが可能であるが、さらに、偏光の位相を制御する媒体を用いることにより、発光する偏光の位相を変化させることができ、直線偏光だけでなく、円偏光や楕円偏光などの様々な偏光に変換された光や波長に変換できるようになり、文字や映像を表示できるようになるため、偏光発光素子、又は偏光発光板とともに位相を制御する媒体を用いることが、本願発明の好ましい1つの形態として挙げられる。上記位相を制御する媒体とは、位相差板(または、波長板、位相差フィルム等とも呼ばれる)が動的に駆動する場合や、電気的に液晶を駆動させて制御する液晶セル等が挙げられる。特に、位相を制御する媒体として、電気的に位相を制御可能な液晶セルを用いることが好ましい。光には粒子と波の性質があるが、光を波として表現した場合、その波の位相を制御可能であることを意味する。偏光性能に着目した場合、例えば、波長板は、直線偏光の光に所定の位相差を与える光学機能素子であり、偏光は特定の軸の光に対して、その他の軸(例えば90°)において、異なる位相を設けることが可能である。すなわち、一つの偏光した光に対して、その光路上に位相差板を設けることにより、その逆の軸の偏光としたり、円偏光、楕円偏光などを新たに付与することが可能となる。したがって、位相差板は、配向した複屈折材料(例えば、延伸フィルム)などを利用して直交する2つの偏光成分に位相差をつけることにより、入射した光の偏光の状態を変えることが出来る素子と言える。この波長板の具体的用途としては、例えば、特定の光の波長をλとした場合、そのλ/2の位相差板の遅相軸を偏光の軸に対して45°に設置することにより、波長板(位相差板)に入射した直線偏光を90°回転させ、入射した偏光軸とは直交(90°)方向に偏光軸を有する偏光として出射することを可能とする。また、λ/4の位相差板の遅相軸を偏光の軸に対して45°に設置した場合には、波長板(位相差板)に入射した直線偏光を、円偏光として出射することを可能とする。近年では、偏光解消フィルムも販売されており、発光した偏光した光を解消することも可能となる。偏光解消フィルムとは、“東洋紡社製SRF”等が挙げられる。そういった位相差板の透過率は50~99%が良いが、好ましくは70~99%、さらに好ましくは80~99%である。
本願で用いる偏光発光素子、並びに偏光発光板は、紫外~近紫外可視域に吸収異方性、即ち紫外光領域に偏光機能を有していることから、その吸収異方性により蛍光発光に変換される光の量が照射された軸の偏光した光の吸収量によって、偏光発光素子から発光する光量を制御できる。即ち、本願に記載の偏光発光素子、並びに偏光発光板は光誘発源からの光、例えば紫外偏光を偏光発光素子または偏光発光板の光の吸収軸に照射し、可視発光を制御することが出来る。具体的には、光誘発源から発光される紫外光領域の光の偏光軸が、偏光発光素子、並びに偏光発光板の紫外光吸収軸に一致した場合には偏光を発光するが、一方で、入射される紫外光領域の光の偏光軸が、偏光発光素子、並びに偏光発光板の紫外線吸収軸と異なる場合には偏光を発光しない。つまり、本願の偏光発光素子、並びに偏光発光板を光源として用いることは紫外光領域の光、即ち視認に影響を与えない光によって表示が制御できるため、視認に必要な表示に影響しないために好ましい。
紫外光領域の光を制御しうる偏光板とは、例えば、ヨウ素や国際公開第2005/015275号等に記載されている二色性色素を用いた偏光板を使用することができるが、その場合、偏光板の保護機能付与として、層、またはフィルムを設ける場合、紫外線吸収能力のないフィルムでラミネートするか、紫外線吸収能力のない層を設けることが良い。さらに、紫外光領域の偏光を制御しうるワイヤーグリッド偏光板でもよい。好ましくは可視光領域に吸収が少なく、高い透過率を有する国際公開第2005/015275号等に記載されている染料系偏光板を用いることが好ましい。これら紫外光領域の偏光した光を作り出せる偏光板と本願発明で用いる偏光発光素子、並びに偏光発光板と、紫外光領域の偏光を制御しうる動的に位相差を制御しうる媒体、具体的には液晶セルを構成に用いることより、紫外光領域の偏光を用いて表示可能な、透明性が非常に高い、本願発明の光源または表示装置を得ることが出来る。
上記、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、垂直方向の偏光した光が入射されるように可視光領域の偏光した光を発光する光源、または表示装置を提供することで、人の誤認識や光や動作を認識する安全装置において誤認識による誤作動を防止出来る表示装置を提供しうる。
本願発明の光源、または表示装置は、特に車両や船舶において好適に用いることが出来る。例えば、運転者や光を感知する機器に対し、反射の少ない光を提供し、防眩性の高い光源や表示装置を提供しうるだけでなく、特に、上記機器に対しては、誤認識による誤作動防止が可能な表示装置を提供しうるため好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。また、下記に記載されている「%」及び「部」は、特に言及されない限り質量基準である。尚、各実施例及び比較例で使用した化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形態で記載した。
(偏光板)
一般的な偏光板として、SKN-18243P(株式会社ポラテクノ社製)を用いて本願のディスプレイを作製した。一般的な偏光板とは可視域に高い偏光機能を有し、紫外域の光の透過率が著しく低い偏光板製品である。
(合成例1)
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸35.2部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸17.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製後4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である式(6)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
Figure 0007411361000008
得られた式(6)の乾燥粉体62.3部を水300部に加え攪拌し、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0とした。得られた溶液に28%アンモニア水20部、及び硫酸銅五水和物9.0部を加え、90℃で2時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム25部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、式(7)の化合物のウェットケーキ40.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(7)の化合物(λmax:376nm)20.0部を得た。
Figure 0007411361000009
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)1.0重量部、合成例1で得られた化合物(7)を0.3重量部、芒硝を1.0重量部、水1500重量部を含有する45℃の水溶液に、4分間浸漬して含有させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5倍に5分間で延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子を得た。
(偏光発光素子を用いた偏光発光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液中で35℃において10分間処理し、水洗し、次いで70℃で10分乾燥させた。アルカリ処理して得られたトリアセチルセルロースフィルムを、偏光発光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートし、70℃で10分乾燥させ、偏光発光板を得た。本偏光発光板に紫外線を照射したところ白色な発光をし、かつ、さらに偏光板を介して該発光を確認したところ偏光発光素子の加工の際に延伸軸方向に白色の偏光発光をし、一方で非延伸軸においては偏光の発光はしないことを確認した。
(紫外線域偏光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、C.I.Direct Yellow 28を0.2部、芒硝を1.5部、水を1500部含有する45℃の水溶液に、4分間浸漬して含有させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、5倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して408nmに最も高い偏光度と340nm~415nmに偏光を有する紫外線域偏光素子を得た。
(紫外線域偏光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液で、35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。アルカリ処理して得られたトリアセチルセルロースフィルムを、紫外線域偏光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして、70℃で10分乾燥させ、偏光板を得た。以下、本偏光板は、紫外線域偏光板と記載する。
得られた偏光板、偏光発光板、紫外線域偏光板を、下記のように評価した。
[評価]
(a)単体透過率Ts、平行位透過率Tp、及び直交位透過率Tc
各測定試料の単体透過率Ts、平行位透過率Tp、及び直交位透過率Tcを、分光光度計(日立製作所社製「U-4100」)を用いて測定した。ここで、単体透過率Tsは、測定試料を1枚で測定した際の各波長の透過率である。平行位透過率Tpは、2枚の測定試料をその吸収軸方向が平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。直交位透過率Tcは、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ね合せて測定した分光透過率である。測定は、220~780nmの波長にわたって行った。
(b)偏光度ρ
各測定試料の偏光度ρを、以下の式(I)に、平行透過率Tp及び直交透過率Tcを代入して求めた。
(数1)
ρ={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100 …式(I)
(c)視感度に補正された単体透過率Ys
各測定試料の単体透過率Ysは、可視域における400~700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに求めた上記単体透過率Tsについて、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを式(I)に代入して算出した。なお、下記式(V)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
(数2)
Figure 0007411361000010
得られた偏光発光板、紫外線域偏光板、偏光板のそれぞれにおける375nmの単体透過率(Ts 375)、375nmの偏光度(ρ 375)、視感度に補正した透過率(Ys)、および、視感度に補正した偏光度(ρy)を表1に示す。得られたそれぞれの紫外光領域、および、可視光領域の偏光機能が分かる。
Figure 0007411361000011
(d)発光した光の偏光の測定
光誘発源として、紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」)を用い、光誘発源に紫外線透過・可視カットフィルター(五鈴精工硝子社製「IUV-340」)を設置し可視光をカットした。その上で、可視光領域及び紫外光領域に偏光機能を有する偏光板(ポラテクノ社製「SKN-18043P」、厚さ180μm、Ysは43%)を配置し、各測定試料、即ち偏光発光板、紫外線域偏光板、偏光板を設置し、偏光発光板、紫外線域偏光板、偏光板が発光している偏光発光を、分光放射照度計(ウシオ電機社製「USR-40」)を用いて測定した。すなわち、光誘発源からの光が、紫外線透過・可視カットフィルター、可視光領域及び紫外光領域に偏光機能を有する偏光板、及び各測定試料(偏光発光板、紫外線域偏光板、偏光板)を、この順に通過し、分光放射照度計に偏光した光が入射するように配置して測定した。その際に、測定試料の紫外線の吸収が最大になる吸収軸と紫外・可視偏光板の吸収軸方向が平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLw(弱発光軸)、測定試料の紫外線の吸収が最大になる吸収軸と可視光領域及び紫外光領域に偏光機能を有する偏光板(ポラテクノ社製「SKN-18043P」)の吸収軸方向が直交となるように重ね合せて測定した各波長の分光発光量をLs(強発光軸)として、Lw及びLsを測定した。各測定試料、即ち偏光発光板、紫外線域偏光板、偏光板と、可視光領域及び紫外光領域に偏光機能を有する偏光板との吸収軸が平行な場合と、直交の場合との可視光領域で発光された光のエネルギー量を確認することで、可視光領域である400nm~700nmにおいて偏光した光の発光量の評価を行った。
表2に得られた各偏光板の460nm、550nm、610nm、670nmの各波長におけるLs及びLwを示す。
Figure 0007411361000012
表2に示されるように、偏光発光板は、高いLs値が検出されており、かつ、測定した4波長においてLs値とLw値との差も顕著であることを示していることから、紫外線を照射することによって発光し、その発光した光は偏光機能を有していることが分かる。また、各波長いずれにおいてもLw値とLs値の差がより顕著であり、良好なコントラストを有していることが分かる。また、JIS Z 8781-4:2013より求められる偏光発光板のLs時の色度a値及びb値は、a値が0.68、及びb値は-1.2であった。このことから、偏光発光板は白色光を発光していることが分かる。一方で、紫外線域偏光板、及び偏光板は光誘発源からの光を照射しても発光を示さなかったことが分かる。
[実施例1]
光誘発源として白色LEDライトを用い、一般的な偏光板としてSKN-18243P(株式会社ポラテクノ社製)を反射媒体である鏡面のプラスチック(ポリカーボネート製プラスチック板)に対して水平方向に吸収軸を有するように偏光板を配置し、垂直方向の偏光(P偏光)が発光する本願の光源とした。その得られた光源からの光を反射媒体に照射したところ、反射媒体からの反射光の視認性は著しく低下したことから、光源からの光が反射媒体から反射する場合には顕著に抑制されることが分かった。
[比較例1]
光誘発源として白色LEDライトを用い、一般的な偏光板としてSKN-18243P(株式会社ポラテクノ社製)を反射媒体である鏡面のプラスチック(ポリカーボネート製プラスチック板)に対して垂直方向に吸収軸を有するように偏光板を配置し、水平方向の偏光(S偏光)が発光するようにした。その得られた光を反射媒体に照射したところ、偏光板を通しているにも関わらず光の反射が顕著に確認された。
[実施例2]
偏光発光板の偏光した光の発光軸を反射媒体である鏡面のプラスチック(ポリカーボネート製プラスチック板)に対して垂直方向の偏光(P偏光)が発光するように配置し、本願光源とした。その偏光発光板に、視認する方向から光誘発源として紫外線の光(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにして光を照射し、偏光発光板から偏光を発光させた。その得られた偏光を鏡面であるプラスチックに照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認した。本願光源より発した光の反射の視認性は著しく低下した。このことから、透明な偏光発光をするフィルムを垂直方向の偏光を発光するように設置することによって、透明なフィルムでありながら反射を抑制する光源が作製できたことが分かった。尚、光誘発源からの紫外線を偏光発光板に照射する方向は、視認する方向からに限定されず任意の方向から紫外光を照射出来れば良く、偏光発光板に紫外線が照射出来れば、反射を抑制する光源が得られることが分かった。
[比較例2]
偏光発光板の偏光発光軸を反射媒体である鏡面のプラスチック(ポリカーボネート製プラスチック板)に対して水平方向の偏光(S偏光)が発光するように配置した。その偏光発光板に視認する方向から光誘発源として紫外線の光(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにして光を照射し、偏光を発光させた。その得られた偏光を鏡面であるプラスチックに照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認したところ、発した光の反射光は十分に確認された。このことから、偏光発光をするフィルムを水平方向に偏光を発光するように設置しても反射を抑制しうる光源は得られなかった。
[実施例2A]
実施例2において、偏光発光板の偏光発光軸を垂直方向の偏光(P偏光)とした光源と同光量を有する自然光の発光機器としてLEDライトを、鏡面であるポリカーボネート製プラスチック(反射媒体)に照射するに際し、光の入射角度を反射媒体に対して垂直方向を0°、その反射光量を1とし、光の入射角度を反射媒体に対して変えた場合の反射面からの反射光量を測定し表3に示す結果を得た。その際、自然光の発光機器(白色LEDライト)の光の反射光量と、偏光発光板の偏光発光軸を垂直方向の偏光(P偏光)した光の反射光量とを、鏡面であるポリカーボネート製プラスチックに光を入射した場合の反射光量を比較し、下記表3の結果を得ている。反射光量は、反射光を、輝度計(コニカミノルタ社製 CA-2000)を用いて得られた値を測定値とし、自然光(白色LED)または光源に対して反射媒体を介して逆位置に輝度計を光入射角度と同じ角度で設置し、反射光量を測定した。
その結果を下記に示す。
Figure 0007411361000013
反射面に対して垂直方向に偏光した光の反射率は、傾斜角度40°において自然光に対して3.6倍反射量が低減しており、傾斜角度70°では約67倍反射量が低減し反射面に対して垂直方向に偏光した光の反射率は0.008と限りなく反射光量が少ないことが分かった。このことから本願の光源からの光を反射媒体に出射すると反射を著しく抑制できることが分かる。
[実施例2B]
実施例2において、偏光発光板の偏光発光軸を鏡面であるポリカーボネート製プラスチック(反射媒体)に対して平行方向の偏光(S偏光)が発光するように配置し、その偏光発光軸に対して45°になるように波長540nmにおいて270nmの位相差値を有するポリカーボネート樹脂よりなる位相差板を貼合した。尚、270nmの位相差値を有する位相差板は、波長540nmにおいて1/2λ位相差板として機能しているフィルムであり、380nm~780nmにおいて92%以上の透過率を有していているものを用いた。その偏光発光板から発光した光を、反射して視認できる方向から光誘発源(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))より紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにして光を照射し、偏光発光板から偏光を発光させた。その得られた偏光を、反射媒体として鏡面であるポリカーボネート製プラスチックに、反射媒体の垂直方向を0°とした時、60°の角度から照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認した。その結果、光源から発した光の反射の視認性は著しく低下した。このことから、透明な偏光発光をする偏光発光素子または偏光発光板を反射媒体に対して平行方向に偏光を発光するように設置しても、1/2λの位相差値を有するフィルム等を用いることによって、偏光発光板の発光した偏光が反射媒体に対して平行方向の偏光(S偏光)から垂直方向の偏光(P偏光)に変わり、反射を抑制する光源が作製できることが分かった。尚、光誘発源である紫外線を偏光発光板に照射する方向は、視認する方向からに限定されず任意の方向から光を照射することによって、反射を抑制する光源が得られることが分かった。
[実施例2C]
実施例2において、偏光発光板の偏光発光軸を鏡面であるポリカーボネート製プラスチック板(反射媒体)に対して垂直方向の偏光(P偏光)が発光するように配置し、その偏光発光軸に対して45°になるように波長540nmにおいて135nmの位相差値を有するポリカーボネート樹脂よりなる位相差板を貼合した。尚、135nmの位相差値を有する位相差板は、波長540nmにおいて1/4λ位相差板として機能しているフィルムであり、380nm~780nmにおいて92%以上の透過率を有していているものを用いた。その偏光発光板を、位相差板を貼合してなる本願光源から発光した光を、反射して視認できる方向から紫外線の光を光誘発源(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにした)を照射し、本願光源より偏光を発光させた。その光源から得られた偏光を、反射媒体として鏡面であるポリカーボネート製プラスチックに、反射媒体の垂直方向を0°とした時、2°の角度から照射し、そのプラスチック板から反射される光を、吸収軸に対して135nmの位相差値を有するフィルムを45°に貼合された偏光板を用いて、反射媒体の垂直方向に対して±10°の角度において偏光板側から(偏光板の位相差板を反射媒体側にして)確認した。その結果、光源の反射光の視認性は著しく低下していることが分かった。このことから、透明フィルムでありながら偏光発光をする偏光発光素子または偏光発光板を反射媒体に対して垂直方向に偏光を発光するように設置して、1/4λの位相差値を有するフィルム等を用いることによって、偏光板を介して視認する場合に反射を抑制しうる光源を提供しうることが分かった。尚、紫外線を偏光発光板に照射する方向は、視認する方向からに限定されず任意の方向から光を照射することによって、反射を抑制する光源が得られることが分かった。
[実施例3]
偏光発光板の偏光発光軸を隣り合うパターンにおいて互いに90°になるように、フィルムを配置し、パターンを有する偏光を発光する光源を作製した。その偏光発光板に視認する方向から紫外線の光を光誘発源(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにした。そのパターンを有する光源をより照射された光を、鏡面であるプラスチックに照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認した。図1中、指で持っている偏光発光板のパターン素子において、指で持っている位置を反射媒体に対して水平方向に偏光を発光する位置とし、そこを起点として隣り合うパターンにおいて互いに90°になるように、フィルムを配置している。この時、該パターンを構成しているいずれの偏光発光板は、偏光発光軸が水平方向と垂直方向の異なる偏光を発光するパターンを有するにも関わらず、透明でありながら均一な発光を示していた。一方で、そこから得られた偏光した光の反射した光を確認すると、反射しているパターンと反射を抑制できているパターンとを交互に有していることが分かる。さらに、その反射光を確認したところ、発光軸が垂直方向の偏光を発光していた場合には、反射は抑制され光源として機能していたものの、発光軸が水平方向の偏光を発光していた場合には、反射は抑制されていなかった(図1)。このことから、該光源は、反射媒体に対して垂直に配置した光源において反射を抑制できる光を提供しうることが分かる。尚、光誘発源より紫外線を偏光発光板に照射する方向は、視認する方向からに限定されず任意の方向から光を照射することによって、反射を抑制する光源が得られることが分かった。
[比較例3]
実施例3における図1において、偏光発光軸を斜め45°に設置し、反射光を確認した。その結果、偏光発光板は偏光発光軸が実施例3と同パターンを有する(隣り合うパターンが90°になるように偏光を発光する)にも関わらず、そこから得られた偏光した光の反射は、図2のように反射を抑制できていなかった。
[実施例4]
紫外線域偏光板/液晶セル/偏光発光板の構成で、偏光発光板から出射される偏光した光が、鏡面であるポリカーボネート製プラスチック板(反射媒体)に対して垂直方向に出射されるようにして、透明な液晶パネルを作製した。尚、該液晶パネルは87%の透過率を有しており高い透明性を有していた。その液晶パネルにおいて、紫外線域偏光板側から紫外線の光を光誘発源(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにした。得られた液晶パネルからの発光は液晶セルの駆動に応じて文字や画像が表示されていた。その液晶パネルから出射される光を鏡面であるプラスチック(反射媒体)に照射し、そのプラスチック板(反射媒体)から反射される反射光を確認したところ、光の反射は著しく抑制されていた。このことから、反射媒体に対して垂直方向の偏光発光を提供している反射を抑制する本願の表示装置が作製できたことが分かった。
[比較例4]
実施例4において、偏光発光板から出射される偏光した光を、鏡面であるポリカーボネート製プラスチック板(反射媒体)に対して水平方向に出射されるようにして透明な液晶パネルを作製した以外は同様に表示装置を作製した。得られたその液晶パネルから出射される光を鏡面であるプラスチックに照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認したところ、光の反射抑制されておらず、反射媒体に表示装置で表示された文字や映像が十分に確認できてしまっていた。
[実施例5]
発光機器である赤色、緑色、青色、白色を発色する各LEDランプの前面に、偏光発光板の偏光発光軸を鏡面であるポリカーボネート製プラスチック板(反射媒体)に対して垂直方向の偏光(P偏光)が発光するように配置し、本願表示装置を作製した。赤色、緑色、青色、白色を発色する各LEDランプを発光させながら、その偏光発光板に視認する方向から紫外線の光を光誘発源(紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」))にて紫外線光照射を行った。その際、ブラックライトの光出射部には可視光カットフィルター(五十鈴ガラス社製 IUV-340)を用いて可視光が出射されないようにして光を照射した。その得られた発光を反射媒体として鏡面であるポリカーボネート製プラスチックに、反射媒体の垂直方向を0°とした時に60°の角度から照射し、そのプラスチック板から反射される反射光を確認した。その結果、赤色、緑色、青色、白色を発色する各LEDランプの光は反射媒体において十分に反射しているのに対して、反射媒体に対して本願光源から出射した光の反射光の視認性は著しく低下した。このことから、LEDランプとともに、本願の光源を反射媒体に対して用いることによって、反射する光と、反射を抑制すべき光とを、それぞれ発光しうる表示装置が得られることが分かった。このことはつまり、偏光を有さない発光機器からの光と反射媒体に対して垂直方向の偏光を発光する光源とを用いることによって、反射する光と、反射を抑制すべき光とを、それぞれ発光しうる本願の光源、並びにそれを用いた表示装置が作製できることが分かった。このことから、その本願の光源で用いる偏光発光板の透明性が高いことによって、偏光を有さない光源から発した光の反射媒体における反射する光の量を低減させないことを示す事が分かる。
以上のことから、本願の光誘発源から発した光を偏光に変換、または光誘発源から出射された光を利用して偏光を発光し、光を反射する媒体に対して光を照射するに際し、反射媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように可視域の偏光した光を提供しうる光源、または映像表示装置を提供することで、人の誤認識や光や動作を認識する安全装置において誤認識による誤作動防止に至る表示装置が提供しうる。さらに、透明である偏光発光素子または偏光発光板を偏光が反射媒体に対して垂直方向に出射されるように設置することによって、透明性を有しながらも偏光を発光しうる光源、または表示装置が得られることが分かった。こういった光源、または表示装置は反射しうるプラスチックや石(例えば大理石)などに照射されても反射が抑制できるばかりか、こういった光源、または表示装置を車、バイク、自転車や道路向けのサイネージや看板等に用いることによって、環境において水溜りや雪などが存在しても、反射を抑制すべき光を提供できる。また、船舶用の光源、または表示装置としても同様に、水面にて光の反射を抑制しうる光を提供しうるものである。
本願の光源、または表示装置を用いることによって従来の自動安全装置やカメラでも受光する側の画像処理等で誤作動防止対策をすることなくても、誤認識による誤作動を防止出来る光を提供しうる。また、本願の光源、または表示装置を用いることによって光の反射を抑制する光を提供しうるため、自動安全装置の誤認識による誤作動を無くすだけでなく、人に対しても視認性を向上しうる反射を抑制できる光を提供することが出来る。また、反射しない光として、セキュリティ性や意匠性等、様々な利点を活かした応用も可能となる。

Claims (6)

  1. 光誘発源と、偏光発光色素を吸着・配向した親水性高分子フィルムからなる偏光発光素子とからなる光源を備えた表示装置であって、
    前記偏光発光素子が、光誘発源より発光された紫外域~近紫外可視域の光を利用して可視域の光の偏光を発光し、光を反射する媒体に対して垂直方向の偏光が入射されるように配置された、
    光や動作を認識する機器における誤認識による誤動作防止用表示装置。
  2. 前記偏光発光素子の光の透過率が40%以上100%以下であることを特徴とする請求項1に記載の誤動作防止用表示装置。
  3. 請求項1又は2に記載の誤動作防止用表示装置に、前記光を反射する媒体を備える光学システム。
  4. 屋外で用いることを特徴とする請求項3に記載の光学システム。
  5. 運転装置向けに用いることを特徴とする請求項3に記載の光学システム。
  6. 自動車、バイク、自転車等の車両または船舶向けに用いることを特徴とする請求項3に記載の光学システム。
JP2019164088A 2018-09-11 2019-09-10 光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置 Active JP7411361B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018169800 2018-09-11
JP2018169800 2018-09-11

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020060762A JP2020060762A (ja) 2020-04-16
JP7411361B2 true JP7411361B2 (ja) 2024-01-11

Family

ID=70218969

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019164088A Active JP7411361B2 (ja) 2018-09-11 2019-09-10 光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7411361B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001174809A (ja) 1999-12-15 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 面状偏光発光体
JP2004205953A (ja) 2002-12-26 2004-07-22 Nitto Denko Corp 光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置
WO2014178398A1 (ja) 2013-04-30 2014-11-06 シャープ株式会社 照明装置
JP2014222567A (ja) 2013-05-13 2014-11-27 株式会社タムロン 車両用灯具
US20170336628A1 (en) 2016-05-23 2017-11-23 Lg Electronics Inc. Head up display for vehicle

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09330609A (ja) * 1995-12-05 1997-12-22 Matsushita Electric Ind Co Ltd バックライト装置及びカラー表示装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001174809A (ja) 1999-12-15 2001-06-29 Asahi Kasei Corp 面状偏光発光体
JP2004205953A (ja) 2002-12-26 2004-07-22 Nitto Denko Corp 光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置
WO2014178398A1 (ja) 2013-04-30 2014-11-06 シャープ株式会社 照明装置
JP2014222567A (ja) 2013-05-13 2014-11-27 株式会社タムロン 車両用灯具
US20170336628A1 (en) 2016-05-23 2017-11-23 Lg Electronics Inc. Head up display for vehicle

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020060762A (ja) 2020-04-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7287889B2 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、表示装置及び偏光発光素子の製造方法
JP7182552B2 (ja) 光学システム及び表示装置
JP2019056904A (ja) 面状偏光発光素子
JP7442517B2 (ja) 光学素子又は偏光板及びこれらを用いたアイウェア
JP7429105B2 (ja) 偏光発光板、及びそれを備えた光学装置
JP7411361B2 (ja) 光の反射を抑制する偏光発光光源および表示装置
WO2021166907A1 (ja) 光学システム及びそれを備えた光学装置
JP7336964B2 (ja) 光学制御システム
JP7479136B2 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、並びにそれを用いた表示装置
JP7522738B2 (ja) 発光性化合物又はその塩、ならびにこれを用いた偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置
JP7288298B2 (ja) 表示装置
JP7452969B2 (ja) 偏光発光板、及びそれを備えた光学装置
WO2021106798A1 (ja) 偏光発光素子、偏光発光板、及び表示装置
CN114026199B (zh) 含有水溶性香豆素系化合物或其盐的偏光发光膜、偏光发光板及显示装置
TW202111087A (zh) 使用發光性化合物或其鹽而得之偏光發光元件、偏光發光板及顯示裝置
CN113924289A (zh) 发光性化合物或其盐,以及含有该化合物的偏光发光元件、偏光发光板及显示装置
CN114072392A (zh) 发光性化合物或其盐,以及含有该化合物的偏光发光元件、偏光发光板及显示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20201119

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220419

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221130

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230418

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230612

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231020

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231211

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7411361

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150