JP7276307B2 - プレス成形方法及びプレス成形金型 - Google Patents
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Description
図8に示すプレス成形品5は、平面視において二股に分岐する形状を有する天板部1と、天板部1に連続する縦壁部3を有している。以下、このようなプレス成形品5における二股に分岐した部分を分岐部23という。
まず、ブランク(金属板)をパッドで押さえたフォーム成形等により、図9に示すような、天板部1と、天板部1から第1屈曲部2を介して連続し縦壁部3の基端側となる中間縦壁部9と、中間縦壁部9から第2屈曲部11を介して連続する棚部13を有する中間成形品7を張り出し成形する(第1成形工程)。
このようなプレス成形方法として、張り出し成形とトリムを同一工程で実施する例が特許文献1に開示されている。
第1成形工程及びトリム工程によって形成された中間縦壁部9、第2屈曲部11及びフランジ部25(図11(a)参照)は、第2成形工程によって第2屈曲部11が曲げ戻されることで、図11(b)に示すように、縦壁部3となる。このとき、曲げ戻された第2屈曲部11に相当する部分には加工硬化が生じるため、図中矢印で示す部分の板厚が減少する。
さらに、伸びフランジ変形によって材料不足が生じやすいo部が近傍にあることで(図8参照)、a部からo部へ向かう材料流れが生じる。この板厚減少及び材料流れの両作用によってa部に割れが発生する。また、同様の理由でb部にも割れが生じる。
このように、従来の技術では、分岐部中央部に形成される縦壁部3の先端(o部)と、分岐部両側部における曲げ戻した部分(a部、b部)の割れを同時に防止することが難しいという課題があった。
前記第1成形工程は、前記第1屈曲部における分岐部中央部の曲げ半径R1C、前記第1屈曲部における分岐部中央部の曲げ稜線方向両側の部分の曲げ半径R1S、前記第2屈曲部における分岐部中央部の曲げ半径R2C、及び、前記第2屈曲部における分岐部中央部の曲げ稜線方向両側の部分の曲げ半径R2Sが、R2C<R2S、かつ、R2C<R1C、かつ、R1S≦R1Cの関係を満たすように成形することを特徴とするものである。
以下、各工程を説明する。なお、図1において、目標形状及び中間成形品7を説明した図8~図10と同一部分及び対応する部分には同一の符号が付してある。
第1成形工程S1は、図1(a)に示すような中間成形品7を成形する工程であり、中間成形品7は、天板部1と、天板部1から第1屈曲部2を介して連続し縦壁部3の基端側となる中間縦壁部9と、中間縦壁部9から第2屈曲部11を介して連続する棚部13を有している。
図2(a)と図2(b)を比較すると分かるように、第2屈曲部11を成形するダイ肩部19aに関し、第2屈曲部11の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RDC(以降、単に「ダイ肩RDC」という)が第2屈曲部11の分岐部両側部を成形する部分の曲率半径RDS(以降、単に「ダイ肩RDS」という)よりも小さく設定されている(RDC<RDS)。
一方、第1屈曲部2を成形するパンチ肩部15aに関しては、第1屈曲部2の分岐部両側部を成形する部分の曲率半径RPS(以降、単に「パンチ肩RPS」という)が第1屈曲部2の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RPC(以降、単に「パンチ肩RPC」という)以下に設定されている(RPS≦RPC)。
さらに、分岐部中央部のダイ肩RDCが分岐部中央部のパンチ肩RPCよりも小さく設定されている(RDC<RPC)。
なお、ダイ肩部19a及びパンチ肩部15aそれぞれにおける分岐部中央部と分岐部両側部の間は、曲げ稜線方向にRが徐々に変化する形状(徐変部、図1(a)拡大図)となっている。
図3(a)、図3(b)に示すように、中間成形品7は、第1屈曲部2における分岐部中央部の曲げ半径R1C、第1屈曲部2における分岐部両側部の曲げ半径R1S、第2屈曲部11における分岐部中央部の曲げ半径R2C、及び、第2屈曲部11における分岐部両側部の曲げ半径R2Sが、R2C<R2S、かつ、R2C<R1C、かつ、R1S≦R1Cの関係となっている。
また、R1S<R1Cの場合、分岐部中央部における曲げ半径R1Cの第1屈曲部2と分岐部両側部における曲げ半径R1Sの第1屈曲部2の間は、曲げ稜線方向に曲げ半径が中央から両側に向かって徐々に縮小する徐変部となっている。
また、分岐部中央部における曲げ半径R2Cの第2屈曲部11と分岐部両側部における曲げ半径R2Sの第2屈曲部11の間は、曲げ稜線方向に曲げ半径が中央から両側に向かって徐々に拡大する徐変部となっている。
中間成形品7の形状を上記のようにする理由について、図3~図5を用いて以下に説明する。
図4に示すように、分岐部中央部の第2屈曲部11の曲げ半径(R2C)を小さくし、分岐部両側部の曲げ半径(R2S)を大きくすることで、O-O断面における線長(X点からY点に至る実線の距離)が長く、P-P断面における線長(X点からY点に至る破線の距離)が短くなる。したがって、第1成形工程S1では、分岐部中央部の変形量が、分岐部両側部よりも大きくなっている。
なお、X点、Y点は両断面を重ねたときに両断面で共通の点である。
よって、中間成形品7の成形時に分岐部中央部の変形量を大きく(面積を大きく)成形しておくことで、第2成形工程S5における伸びフランジ変形量が少なくなり、図8に示したo部の割れが抑制される。
図5(a)は比較例として、第1屈曲部2における分岐部中央部の曲げ半径と分岐部両側部の曲げ半径が等しく、かつ、第2屈曲部11における分岐部中央部の曲げ半径R2Cよりも小さいものである(R1S=R1C<R2C)。
図5(b)は本実施の形態の一例であり、前述したように、第1屈曲部2における分岐部中央部の曲げ半径R1Cが、第2屈曲部11における分岐部中央部の曲げ半径R2C及び第1屈曲部2における分岐部両側部の曲げ半径R1Sよりも大きいものである(R2C<R1C、R1S<R1C)。
図中矢印は、中間成形品7成形時の材料流れを示すものである。
図5(c)は本実施の形態の他の例であり、前述したように、第1屈曲部2における分岐部中央部の曲げ半径R1Cが、第2屈曲部11における分岐部中央部の曲げ半径R2Cより大きくて、第1屈曲部2における分岐部両側部の曲げ半径R1Sと同等のものである(R2C<R1C、R1S=R1C)。なお、第1屈曲部2における分岐部両側部の曲げ半径R1Sは、第2屈曲部11における分岐部両側部の曲げ半径R2Sより小さくてもよい。図中、矢印の長さが長いほど、当該部において多く材料が流れることを示している。
これは、曲げ半径を大きくすることで第1屈曲部2の材料が流出しやすくなり、かつ、曲げ半径の小さい第2屈曲部11側に材料が引っ張られやすくなるからである。
トリム工程S3は、第1成形工程S1で成形された中間成形品7の棚部13から不要部を除去してフランジ部25を形成する工程である。
トリム工程S3は、図6に示すように、上刃27と、下刃29と、板押さえ31を有するトリム金型33によって行われる。上刃27及び下刃29は、協働して中間成形品7の棚部13から不要部を除去するためのものであり、それぞれ、切断するライン(トリムライン)に対応した形状のトリム刃(図示せず)を備えている。
第2成形工程S5は、トリム工程S3で不要部を除去した中間成形品7の第2屈曲部11を曲げ戻して縦壁部3を形成して、目標形状に成形する工程である。
第2成形工程S5は、図7に示すように、パンチ35と、パッド37と、ダイ39を有する第2金型41によって行われる。
パンチ35はプレス成形品5の内表面に対応した成形面を有するものであり、パッド37とともに中間成形品7の天板部1を把持する。また、ダイ39は、プレス成形品5の縦壁部3の外表面に対応した成形面を有するものであり、トリム工程S3で不要部を除去された中間成形品7の第2屈曲部11を曲げ戻す。
また、第1成形工程S1において第2屈曲部11の分岐部両側部での変形量を小さくしているので、曲げ戻す際の板厚減少及び加工硬化が低減されており、第2成形工程S5で第2屈曲部11を曲げ戻す際に割れが生じにくい。
材料となる金属板は、板厚2.3mm、引張強度が780MPa級の熱延鋼板とした。
プレス成形工程は、実施の形態1で説明した、第1成形工程S1、トリム工程S3、第2成形工程S5の3工程とした。
CAE成形解析により得られた、第2成形工程S5の下死点における、a部、b部、o部(図8参照)の最大板厚減少率を表1に示す。
以上、本実施例の結果から、ロアアームのような平面視において二股に分岐する形状を有するプレス成形品の分岐部中央部の縦壁部先端と、分岐部両側部の割れを同時に防止できることがわかった。
また、表1の従来例2は、第2屈曲部11の分岐部中央部と分岐部両側部の曲げ半径を同じとし、分岐部中央部の板厚減少率が成形限界範囲を超え、分岐部両側部の板厚減少率が成形限界範囲内となる例である。
そして、従来例1からは、第2屈曲部11の分岐部中央部における曲げ半径は小さい方が良いため従来例1で設定した値以下として、また、従来例2からは、第2屈曲部11の分岐部両側部の曲げ半径は大きい方が良いため従来例2で設定した値以上とするとよいことが分かる。
すなわち、第2屈曲部11の分岐部中央部と分岐部両側部の曲げ半径を同じとし、その値を種々変更して、リストライク下死点の板厚減少率を求めることで、分岐部中央部と分岐部両側部の曲げ半径が同じであって、分岐部中央部の板厚減少率が成形限界範囲内であり分岐部両側部の板厚減少率が成形限界を超える例(A値)と、分岐部中央部の板厚減少率が成形限界範囲を超えて分岐部両側部の板厚減少率が成形限界内となる例(B値)とを予め求めておき、分岐部中央部においては成形限界範囲内となるA値以下とし、分岐部両側部では成形限界範囲内となるB値以上とし、かつ、分岐部中央部の曲げ半径を分岐部両側部の曲げ半径より小さく設定するとよい。
2 第1屈曲部
3 縦壁部
5 プレス成形品
7 中間成形品
9 中間縦壁部
11 第2屈曲部
13 棚部
15 パンチ
15a パンチ肩部
17 パッド
19 ダイ
19a ダイ肩部
21 第1金型
23 分岐部
25 フランジ部
27 上刃
29 下刃
31 板押さえ
33 トリム金型
35 パンチ
37 パッド
39 ダイ
41 第2金型
Claims (2)
- 平面視において二股に分岐する形状を有する天板部と、該天板部に連続する縦壁部を備えたプレス成形品をプレス成形するプレス成形方法であって、
金属板をパッドでパンチに押し付けた状態で、前記天板部と、該天板部から第1屈曲部を介して連続し前記縦壁部の基端側となる中間縦壁部と、該中間縦壁部から第2屈曲部を介して連続する棚部を、前記パンチとダイが協働して張り出し成形する第1成形工程と、
前記棚部から不要部を除去してフランジ部を残すトリム工程と、
前記第2屈曲部を曲げ戻して、前記中間縦壁部と前記フランジ部に相当する部位からなる前記縦壁部を成形する第2成形工程とを備え、
前記第1成形工程は、前記第1屈曲部における分岐部中央部の曲げ半径R1C、前記第1屈曲部における分岐部中央部の曲げ稜線方向両側の部分の曲げ半径R1S、前記第2屈曲部における分岐部中央部の曲げ半径R2C、及び、前記第2屈曲部における分岐部中央部の曲げ稜線方向両側の部分の曲げ半径R2Sが、R2C<R2S、かつ、R2C<R1C、かつ、R1S≦R1Cの関係を満たすように成形することを特徴とするプレス成形方法。 - 請求項1記載のプレス成形方法を実現するためのプレス成形金型であって、
前記天板部と、該天板部から第1屈曲部を介して連続し前記縦壁部の基端側となる中間縦壁部と、該中間縦壁部から第2屈曲部を介して連続する棚部を有する中間成形品を成形する第1金型と、
前記棚部から不要部を除去してフランジ部を残すトリム金型と、
前記第2屈曲部を曲げ戻して、前記中間縦壁部と前記フランジ部に相当する部位からなる前記縦壁部を成形する第2金型とを備え、
前記第1金型は、前記第1屈曲部を成形するパンチ肩部を有するパンチと、該パンチと対向して配置され金属板を前記パンチに押し付けるパッドと、前記第2屈曲部を成形するダイ肩部を有するダイとを有し、
前記パンチ肩部における前記第1屈曲部の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RPC、及び、前記パンチ肩部における前記第1屈曲部の分岐部中央部の曲げ稜線方向両側部分を成形する部分の曲率半径RPS、前記ダイ肩部における前記第2屈曲部の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RDC、及び、前記ダイ肩部における前記第2屈曲部の分岐部中央部の曲げ稜線方向両側部分を成形する部分の曲率半径RDSが、RDC<RDS、かつ、RDC<RPC、かつ、RPS≦RPCの関係を満たすように設定されていることを特徴とするプレス成形金型。
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