JP7264699B2 - 油分解剤および油の分解方法 - Google Patents

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Description

NITE BP-02904 NITE BP-02905
本発明は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する油分解微生物とセラティア(Serratia)属に属する油分解微生物とを含む油分解剤(特に油脂分解剤)に関する。本発明はまた、当該油分解剤を利用した油脂を含む排水の処理方法に関する。
厨房や食品工場からの排水(廃水)には、通常、生ゴミや調理用油が含まれている。生ゴミ等の固形物は、排水口にカゴ等を設けることによって容易に排水から除去することが可能であるが、調理油のように液状のものを除去することは容易ではない。したがって、多量の油脂が混入した排水を排出する厨房や食品工場などの施設において、油脂を集積し上層部に浮上した油脂を分離して廃棄するため、除害施設(例えば、グリーストラップ)が設けられている。
しかしながら、グリーストラップ内で集積した油脂が固形化し、グリーストラップの水面にスカム(油の塊)として残留したり、グリーストラップの内壁面や配管内部に集積・付着して配管を閉塞したりすることがある。このとき、集積した油脂は、酸化・腐敗して、悪臭・害虫の発生原因となることがある。また、集積した油脂を放置すると、グリーストラップの油脂除去能力が低下し、下水や河川に油脂を流出させてしまう。そのため、グリーストラップ内で油脂が集積した場合、専門の業者に依頼してバキューム処理や高圧洗浄処理などで油脂の除去を行う必要があるためコストがかかってしまう。
そこで、グリーストラップにおいて、効率よく油脂を低減する方法、特に、油脂の分解・資化を行う微生物を用いる方法が検討されている。例えば、特許文献1には、遊離脂肪酸資化能を有する微生物として、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が記載されている。
特開2013-146689号公報
しかしながら、特許文献1に記載の微生物では、油脂分解性が十分でないという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、油(特に油脂)分解性に優れた油分解剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の2種の微生物を組み合わせることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、油(特に油脂)分解性に優れた油分解剤が提供される。
図1は、グリーストラップによる排水処理の仕組みを模式的に表す。 図2は、単離微生物Aのコロニー像を示す。 図3は、単離微生物Aのグラム染色像を示す。 図4は、単離微生物Bのコロニー像を示す。 図5は、単離微生物Bのグラム染色像を示す。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
<油分解剤(排水処理剤)>
本発明の一側面では、シュードモナス(Pseudomonas)属に属し、下記表1~3に記載の菌学的性質を示す、油分解微生物Aおよびセラティア(Serratia)属に属し、下記表4~6に記載の菌学的性質を示す、油分解微生物Bを含む油分解剤(排水処理剤)が提供される。本明細書では、シュードモナス(Pseudomonas)属に属し、下記表1~表3の菌学的性質を示す、油分解微生物Aを、単に「油分解微生物A」とも称する。同様にして、セラティア(Serratia)属に属し、下記表4~表6の菌学的性質を示す、油分解微生物Bを、単に「油分解微生物B」とも称する。
Figure 0007264699000001
Figure 0007264699000002
Figure 0007264699000003
Figure 0007264699000004
Figure 0007264699000005
Figure 0007264699000006
本発明に係る油分解微生物A、Bは、単一の微生物では油脂分解性があまり高くないが、これらの2種の微生物を組み合わせることによって、油脂低減において顕著な向上効果を示す。従って、本発明に係る微生物を含む油分解剤(排水処理剤)をグリーストラップ等の排水処理設備(除害施設)に用いることにより、油脂を効果的に低減することができる。
上述したように、本発明の油分解剤は、油分解微生物A及びBを必須に含む。ここで、油分解剤(排水処理剤)は乾燥形態または液状のいずれであっても良いが、粉末、顆粒、ペレット、タブレット等の乾燥形態が保存性の観点から好ましい。かような乾燥形態の油分解剤(排水処理剤)に用いられる油分解微生物A、Bとしては、培養液を噴霧乾燥や凍結乾燥等により乾燥した菌体末、または上記のように担体に固定化された状態の菌体でも良く、さらに、粉末、顆粒、ペレット、またはタブレット状に成形してもよい。または、ヒドロキシプロピルメチルセルロースやゼラチン等により、菌体や培養液をカプセル化してもよい。油分解剤(排水処理剤)はまた、油分解微生物A、Bのみから構成されてもよいが、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、乳糖、デンプン等の賦形剤をさらに含んでもよい。さらに、油分解剤(排水処理剤)は、油分解微生物Aおよび油分解微生物Bを、一緒に含んでも、またはそれぞれを分離して含んでもよい。
油分解剤(排水処理剤)に含まれる油分解微生物はA、Bは、死菌であっても生菌であっても良いが、油脂分解活性の持続性の観点から生菌であることが好ましい。
油分解剤(排水処理剤)に含まれる本発明に係る油分解微生物はA、Bの量は、特に制限されないが、油分解微生物はA、Bの合計量が、例えば、油分解剤(排水処理剤)の固形分中、例えば10~100重量%である。または、油分解剤(排水処理剤)に含まれる油分解微生物はA、Bの量(各油分解微生物A、Bの油分解剤における存在量)は、例えば、油分解剤(排水処理剤)全体に対して、1×10~1×1010CFU/gとなる量である。また、油分解剤(排水処理剤)は、本発明の目的効果が達成される限りにおいて、下記に詳述されるような、油分解微生物はA、Bと共生可能な他の微生物、油脂分解性酵素、油脂吸着剤、および界面活性剤からなる群から選択される1種以上等の添加剤を含んでもよい。
また、本発明に係る油分解剤における油脂分解微生物A、Bの混合比は、特に制限されない。本発明に係る油分解剤は、例えば、1:3~3:1、好ましくは1~3:1、より好ましくはおおよそ1:1の割合(油脂分解微生物A:Bの混合重量比)で油脂分解微生物A、Bを含む。
好ましい実施形態では、本発明に係る油分解剤(排水処理剤)は、油脂を24時間で50重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上:上限=100重量%)低減する。温度条件は、特に制限されないが、例えば30℃である。
本発明の油分解剤の製造方法は、特に制限されない。具体的には、(1)油分解微生物A及びBをそれぞれ培養し、得られた培養物を混合し、得られた混合物を必要であれば乾燥または担体に固定化する;(2)油分解微生物A及びBを共培養し、得られた培養物を必要であれば乾燥または担体に固定化する;(3)油分解微生物A及びBをそれぞれ培養し、乾燥または担体に固定化し、得られた乾燥物を混合するなどが使用できる。これらのうち、(2)が好ましい。すなわち、油分解微生物AおよびBは、共培養物の形態で含まれることが好ましい。
[油分解微生物]
本発明に係る油分解微生物Aは、上記表1~表3に示される菌学的性質を示す。また、本発明に係る油分解微生物Bは、上記表4~表6に示される菌学的性質を示す。
本発明に係る油分解微生物A、Bの一具体例として、以下のスクリーニング方法により単離した株がある。ここでは、以下のスクリーニング方法により単離した株を詳細に説明する。なお、本発明に係るシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) 2-3406-1株及びセラティア・エスピー(Serratia sp.) 2-3406-2株は、下記スクリーニング方法において、宮城県阿川沼付近の土壌から単離した。
1.スクリーニング方法
宮城県阿川沼付近の土壌またはグリーストラップの廃液、下水、河川水などから採取したサンプルを、以下の方法で作製された一次スクリーニング用液体培地5mLに適量添加し、30℃で一週間培養する。培養後の培養液100μLをさらに一次スクリーニング用液体培地5mLに接種し、再度30℃で一週間培養する。なお、本明細書において、以下の方法で作製された一次スクリーニング用液体培地を、単に「一次スクリーニング用液体培地」とも称する。
一次スクリーニング用液体培地は、以下の表7の組成となるように油脂以外の各成分を純水に溶解し、油脂を終濃度0.5w/v%となるように添加し、高温高圧滅菌して調製する。なお、油脂は、菜種油と大豆油とを1:1(w/w)の割合で混合して調製する。
Figure 0007264699000007
10倍希釈した一次スクリーニング後の培養液100μLを、以下の方法で作製された二次スクリーニング用寒天培地に塗布し、30℃で一週間培養する。培養後、油脂の分解によるハロの形成が確認できた菌株を単離する。培養後、寒天上での生育が確認できた菌株を単離する。なお、本明細書において、以下の方法で作製された二次スクリーニング用寒天培地を、単に「二次スクリーニング用寒天培地」とも称する。
二次スクリーニング用寒天培地は、以下の表8の組成となるように、油脂および寒天以外の各成分を純水に溶解し、油脂(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を終濃度0.5w/v%および寒天を終濃度2.0w/v%となるように添加し、高温高圧滅菌した後、適宜分注して固化させて調製する。
Figure 0007264699000008
次に、油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、以下の方法で作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液を調製する(油脂1%(w/v))。上記二次スクリーニングで得た各単離菌株を白金耳で一白金耳ずつ、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪培養(140rpm)する。
三次スクリーニング用液体培地は、以下の表9の組成となるように、各成分を純水に溶解し、塩酸にてpH6.0に調整し、高温高圧滅菌して調製する。
Figure 0007264699000009
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製する。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、下記数式(1)により油脂減少率(油脂分解率)(重量%)を求める。その結果、油脂減少率(油脂分解率)の高い菌株を単離することができる。
Figure 0007264699000010
その結果、宮城県阿川沼付近の土壌から、油脂減少率が比較的高かった菌株2株を単離した。この単離した2菌株(単離微生物)について、16S rDNA塩基配列および菌学的性質を以下のようにして決定した。なお、上記にて単離した2菌株(単離微生物)を、便宜上、それぞれ、「単離微生物A」及び「単離微生物B」と称する。
次に、下記方法に従い、上記単離微生物A及びBを同定した。
(単離微生物A)
1.培養条件
以下の条件で培養した菌株を供試菌体とする。
Figure 0007264699000011
2.16S rDNA塩基配列解析
PCR増幅からサイクルシークエンスまでの操作は、各プロトコールに基づいて行う。
Figure 0007264699000012
上記にて決定された単離微生物Aの16S rDNA塩基配列を、下記配列番号:1に示す。すなわち、本発明の一実施形態では、油分解微生物Aが、配列番号1で示される16S rDNA塩基配列を有する。
Figure 0007264699000013
単離微生物Aに関し、微生物同定用DNAデータベースDB-BA12.0(株式会社テクノスルガ・ラボ)および国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GenBank)に対するBLAST相同性検索の結果、単離微生物Aの16S rDNA部分塩基配列は、シュードモナス・プレコグロッシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)の基準株FPC951(アクセッション番号:AB009457)に対し相同率99.8%の相同性を示した。また、シュードモナス・モンテイリ(Pseudomonas monteilii)NBRC 103158(アクセッション番号:AB681966)やシュードモナス・エントモフィラ(Pseudomonas entomophila)L48(アクセッション番号:AY907566)など複数種に対し相同率99%以上の相同性を示した。DB-BA12.0に対するBLAST検索の結果を表12に示し、国際塩基配列データベースに対するBLAST検索の結果を表13に示す。なお、下記表において、「BSL」は、バイオセーフティレベルを意味し、バイオセーフティレベル(BSL)は日本細菌学会バイオセーフティ指針「病原細菌のBSLレベル」に従う(レベル1:ヒトに疾病を起こし、または動物に獣医学的に重要な疾患を起こす可能性のないもの(日和見感染を含む)、レベル2:ヒトまたは動物に病原性を有するが、実験室職員、地域社会、家畜、環境等に対し、重大な災害とならないもの、実験室内で暴露されると重篤な感染を起こす可能性はあるが、有効な治療法、予防法があり、伝播の可能性は低いもの、レベル3:ヒトに感染すると重篤な疾病を起こすが、他の個体への伝播の可能性は低いもの)。下記表中において、日和見病原体を「BSL1*」と示す。また、網掛けは、簡易分子系統解析に供した配列データを示す。
Figure 0007264699000014
Figure 0007264699000015
表12の網掛け配列データを用いて、簡易分子系統解析を行った。結果を以下に示す。なお、下記系統樹において、左上の線はスケールバーを示し、系統枝の分岐に位置する数値はブーストトラップ値であり、株名の末尾のTはその種の基準株(Type Strain)を示し、BSLは、バイオセーフティーレベル(BSL1*(日和見病原体)以上を表記)を示す。
Figure 0007264699000016
上記分子系統樹において、単離微生物Aは、シュードモナス(Pseudomonas)属が構成するクラスター内に含まれたが、既知種とは異なる分子系統学的位置を示した。
したがって、16S rDNA部分塩基配列解析の結果からは、単離微生物Aは、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)と同定される。なお、分子系統樹において、単離微生物Aは、シュードモナス・プレコグロッシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)の基準株FPC951(アクセッション番号:AB009457)及びシュードモナス・モンテイリ(Pseudomonas monteilii)NBRC 103158(アクセッション番号:AB681966)に近い分子系統学的位置を示した。このため、以下の2.菌学的性質の生理性状試験では、上記シュードモナス・プレコグロッシシダFPC951及びシュードモナス・モンテイリNBRC 103158を比較対象種とした。
3.菌学的性質
上記スクリーニングによって得られた単離微生物Aの菌学的性質を以下に示す。
形態観察は光学顕微鏡(BX50F4、Olympus, Japan)を用いて行った。グラム染色はフェイバーG「ニッスイ」(Nissui Pharmaceutical, Japan)を用いて行った。カタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(O/F)についての試験は、Barrow & Felthamの方法(Barrow G.I. & Feltham R.K.A. (1993), Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition, Cambridge University Press)の方法に基づいて行った。結果を表14に示す。
Figure 0007264699000017
次に、API(登録商標)20NE(bioMerieux,France)を用いて、製造業者のプロトコールに従って以下の項目について試験した。結果を表15に示す。
Figure 0007264699000018
また、株式会社テクノスルガ・ラボと英国NCIMB Ltd.との技術提携事項および公知技術に従い、以下の項目について試験した。結果を表16に示す。
Figure 0007264699000019
表14、図2、図3に示すように、単離微生物Aは、運動性を有するグラム陰性の桿菌で、グルコースを酸化し、カタラーゼおよびオキシダーゼ反応はともに陽性を示した。これらの性状は、シュードモナス (Pseudomonas)属の一般的な性状と一致すると考えられる(Barrow G.I. & Feltham R.K.A. (1993). Cowan and Steel's Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. Cambridge: University Press)。また、45℃での生育が観察された。
表15に示すように、単離微生物Aは、硝酸塩を還元せず;アルギニンジヒドロラーゼ活性及びウレアーゼ活性を示し;ゼラチンを加水分解せず;グルコース、L-アラビノースおよびn-カプリン酸などを資化し;D-マンノースおよびD-マンニトールなどを資化しなかった。
また、表16に示すように、単離微生物Aは、King’s B寒天培地上での蛍光色素を産生し;でんぷんを加水分解せず;レシチナーゼ活性及びリパーゼ活性を示さず;溶血性を示さなかった。
以上より、単離微生物Aの性状は、シュードモナス・プレコグロッシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)およびシュードモナス・モンテイリ(Pseudomonas monteilii)の性状と一致する点は多いものの、相違点が確認された(Nishimori E., Kita-Tsukamoto K. & Wakabayashi H. (2000). Pseudomonas plecoglossicida sp. nov., the causative agent of bacterial haemorrhagic ascites of ayu, Plecoglossus altivelis. Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2000, 50, 83-89; Toro M, Rami M.-H. R.-Bahena, Cuesta M. J., Velazquerz E. & Peix A. (2013). Pseudomonas guariconensis sp. nov., isolated from rhizospheric soil. Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 63, 4413-4420)。特に硝酸塩を還元せず、L-アラビノースを資化し、溶血性を示さない点、および45℃で生育する点は、シュードモナス・プレコグロッシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)の性状と異なる。また、King’s B寒天培地上で蛍光色素を産生する点、および45℃で生育する点で、シュードモナス・モンテイリ(Pseudomonas monteilii)の性状と異なる。
したがって、単離微生物Aは、新規な微生物であると判断し、本菌株をシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) 2-3406-1株(本明細書中、単に「2-3406-1株」とも称する)と命名した。また、この2-3406-1株は、2019年3月12日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託されており、その受託番号は、NITE BP-02904である。すなわち、本発明の一実施形態では、油分解微生物Aが、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) 2-3406-1株(受託番号NITE BP-02904)で特定される。
(単離微生物B)
1.培養条件
以下の条件で培養した菌株を供試菌体とする。
Figure 0007264699000020
2.16S rDNA塩基配列解析
PCR増幅からサイクルシークエンスまでの操作は、各プロトコールに基づいて行う。
Figure 0007264699000021
上記にて決定された単離微生物Bの16S rDNA塩基配列を、下記配列番号:2に示す。すなわち、本発明の一実施形態では、油分解微生物Bが、配列番号2で示される16S rDNA塩基配列を有する。
Figure 0007264699000022
単離微生物Bに関し、微生物同定用DNAデータベースDB-BA12.0(株式会社テクノスルガ・ラボ)および国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GenBank)に対するBLAST相同性検索の結果、単離微生物Bの16S rDNA部分塩基配列は、セラティア・キニボランス(Serratia quinivorans)の基準株DSM-4597(アクセッション番号:AJ233435)に対し相同率99.3%の相同性を示した。DB-BA12.0に対するBLAST検索の結果を表19に示し、国際塩基配列データベースに対するBLAST検索の結果を表20に示す。なお、下記表において、「BSL」は、バイオセーフティレベルを意味し、バイオセーフティレベル(BSL)は日本細菌学会バイオセーフティ指針「病原細菌のBSLレベル」に従う(レベル1:ヒトに疾病を起こし、または動物に獣医学的に重要な疾患を起こす可能性のないもの(日和見感染を含む)、レベル2:ヒトまたは動物に病原性を有するが、実験室職員、地域社会、家畜、環境等に対し、重大な災害とならないもの、実験室内で暴露されると重篤な感染を起こす可能性はあるが、有効な治療法、予防法があり、伝播の可能性は低いもの、レベル3:ヒトに感染すると重篤な疾病を起こすが、他の個体への伝播の可能性は低いもの)。下記表中において、日和見病原体を「BSL1*」と示す。また、網掛けは、簡易分子系統解析に供した配列データを示す。
Figure 0007264699000023
Figure 0007264699000024
表19の網掛け配列データを用いて、簡易分子系統解析を行った。結果を以下に示す。なお、下記系統樹において、左上の線はスケールバーを示し、系統枝の分岐に位置する数値はブーストトラップ値であり、株名の末尾のTはその種の基準株(Type Strain)を示し、BSLは、バイオセーフティーレベル(BSL1*(日和見病原体)以上を表記)を示す。
Figure 0007264699000025
上記分子系統樹において、単離微生物Bは、セラティア(Serratia)属が構成するクラスター内に含まれ、セラティア・キニボランス(Serratia quinivorans)の基準株DSM-4597(アクセッション番号:AJ233435)とクラスターを形成し、近縁であることが示された。
したがって、16S rDNA部分塩基配列解析の結果からは、単離微生物Bは、セラティア・キニボランス(Serratia quinivorans)に近縁なセラティア・エスピー(Serratia sp.)と同定される。
3.菌学的性質
上記スクリーニングによって得られた単離微生物Bの菌学的性質を以下に示す。
形態観察は光学顕微鏡(BX50F4、Olympus, Japan)を用いて行った。グラム染色はフェイバーG「ニッスイ」(Nissui Pharmaceutical, Japan)を用いて行った。カタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(O/F)についての試験は、Barrow & Felthamの方法(Barrow G.I. & Feltham R.K.A. (1993), Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition, Cambridge University Press)の方法に基づいて行った。結果を表21に示す。
Figure 0007264699000026
次に、API(登録商標)20NE(bioMerieux,France)を用いて、製造業者のプロトコールに従って以下の項目について試験した。結果を表22に示す。
Figure 0007264699000027
また、株式会社テクノスルガ・ラボと英国NCIMB Ltd.との技術提携事項および公知技術に従い、以下の項目について試験した。結果を表23に示す。
Figure 0007264699000028
表21、図4、図5に示すように、単離微生物Bは、運動性を有するグラム陰性の桿菌で、グルコースを酸化し、カタラーゼ反応は陽性を、オキシダーゼ反応は陰性を示した。これらの性状は、セラティア(Serratia)属の一般的な性状と一致すると考えられる(Barrow G.I. & Feltham R.K.A. (1993). Cowan and Steel's Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. Cambridge: University Press)。
表22に示すように、単離微生物Bは、硝酸塩を還元し;β-ガラクトシダーゼ、リシンデカルボキシラーゼおよびオルニチンデカルボキシラーゼの活性を示し;アルギニンジヒドロラーゼ活性及びウレアーゼ活性を示さず;アセトインを産生し;ゼラチンを加水分解し;グルコースおよびD-マンニトールなどを酸化し;L-ラムノースを酸化しなかった。また、表23に示すように、単離微生物Bは、pH10で生育し;7%NaClで弱いながら生育した。これらの性状は、16S rDNA部分塩基配列解析の結果において近縁であることが示唆されたセラティア・キニボランス(Serratia quinivorans)の性状と類似点はあるものの、相違点が確認された。特にウレアーゼ活性を示さず、7%NaClで生育する点はセラティア・キニボランス(Serratia quinivorans)の性状と異なる(Ashelford K.F., Fry J.C., Bailey M.J. & Day M.J. (2002). Characterization of Serratia isolates from soil, ecological implications and transfer of Serratia proteamaculans subsp. quinovora Gimont et al. 1983 to Serratia quinivorans corrig., sp. nov. Int. Syst. Evol. Microbaiol., 52, 2281-2289; Garcia-Fraile P., Chudickova M., Benada O., Pikula J. & Kolarik M. (2015). Serratia myotis sp. nov. and Serratia vespertilionis sp. nov., isolated from bats hibernating in caves. Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 65, 90-94)。
以上より、単離微生物Bは、セラティア (Serratia)属への帰属の可能性が示唆されたものの、セラティア (Serratia)属の既知種とは異なる可能性が示唆された。
したがって、単離された菌株(単離微生物B)は、新規な微生物であると判断し、本菌株をセラティア・エスピー(Serratia sp.) 2-3406-2株(本明細書中、単に「2-3406-2株」とも称する)と命名した。また、この2-3406-2株は、2019年3月12日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託されており、その受託番号は、NITE BP-02905である。すなわち、本発明の一実施形態では、油分解微生物Bが、セラティア・エスピー(Serratia sp.) 2-3406-2株(受託番号NITE BP-02905)で特定される。
油分解微生物A、B(特に、2-3406-1株、2-3406-2株)は、油脂の分解力に関しては単独では低いまたは中程度であるものの、両者を組み合わせることによって、油脂低減効果を有意に向上できることを見出した。すなわち、本発明の油分解剤は、高い油脂低減効果を発揮できる。なお、本明細書において、「油脂低減効果」は下記方法に従って評価する。
(油脂低減効果の評価)
本明細書において、油脂の減少は、以下の方法により評価される。すなわち、菜種油:大豆油=1:1(w/w)である油脂0.05gを、pH6.0の上記3次スクリーニング用液体培地と同じである無菌処理済の油脂分解評価用培地(5mL)に加えて試験液(pH6.0)を調製する(油脂1%(w/v))。なお、pHの調整は塩酸、硝酸、炭酸、硫酸などの無機酸やクエン酸、乳酸などの有機酸等の任意の酸やこれらの塩;および/または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の任意のアルカリ;によって行えばよいが、好ましくは塩酸(酸性側)または水酸化ナトリウム(アルカリ側)である。
この試験液に対し、平板培地(例えば、二次スクリーニング用寒天培地)上で培養した微生物を接種し、任意の温度帯で24時間振盪(140rpm)培養する。接種する菌の量は、白金耳で一白金耳程度である。試験液に接種する微生物は、三次スクリーニング用液体培地などで前培養したものを用いても良い。前培養することにより、接種する菌量を容易に調節できる。前培養した微生物を用いる場合は、試験液1mLに対し、1.5×10CFU/mLとなるように接種する。ここで、微生物が2種以上である場合には、上記接種量は、これら微生物の合計接種量とする。培養温度は菌体の油脂分解・資化能が高い温度帯に合わせて設定すればよいが、例えば10~40℃、好ましくは20~37℃である。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製する。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂(0.05g)と油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、上記数式(1)により油脂減少率(油脂分解率)(重量%)を求める。本発明に係る油分解微生物A、Bは、組み合わせて使用されることにより、上記方法で求められる油脂減少率が50重量%以上であればよい。本発明の好ましい実施形態では、30℃で培養した場合における油脂減少率が、60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(上限=100重量%)である。油脂減少率は高いほど好ましいので、上限は特に設定されないが、例えば、上記方法にて測定される油脂減少率が90重量%以下であれば十分である。長時間培養すれば油脂減少量は多くなる。しかしながら、微生物は除害施設から順次***されるため、通常、約1~3日ごとに除害施設へ微生物が補給される。従って、短時間(例えば24時間以内)で50重量%以上の油脂減少率を示す微生物は、実用面で優れる。
本明細書において「油脂」とは、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドのようなグリセリド類を多く含む食用または工業用油脂、ならびに脂肪酸を指す。前記油脂としては、例えば、オリーブ油、キャノーラ油、ココナッツ油、ごま油、米油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、牛脂、ラード、鶏油、魚油、鯨油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の食用油脂;およびアマニ油、ジャトロファ油、トール油、ハマナ油、ひまし油、ホホバ油等の工業用油脂;が含まれるが、好ましくはグリーストラップが設置されることが多いレストラン等で頻繁に排出される食用油脂である。脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;デセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、イコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ヘンイコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸;が挙げられる。脂肪酸は、食用または工業用油脂が分解されて生じたものであってもよい。
本発明の油分解剤は、本発明に係る油分解微生物A、Bを含む。ここで、本発明に係る油分解微生物A、Bの培養方法は、当該微生物が生育・増殖できるものであれば、いずれのものであってよい。例えば、微生物の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。通常、培地は、炭素源、窒素源および無機物を含む。
以下では、特記しない限り、これらの油分解微生物A、Bの培養方法を分けずに、説明する。なお、本発明に係る油分解微生物A、Bの培養方法は、同じ条件下で培養されてもまたは異なる条件下で培養されてもよく、それぞれの性状に応じて適宜選択されうる。以下では、本発明に係る油分解微生物A、Bを、一括して、「本発明に係る微生物」とも称する。
本発明に係る微生物の培養において使用できる炭素源としては、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。具体的には、微生物の資化性を考慮して、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、フラクトース、セロビオース、ラフィノース、キシロース、マルトース、ガラクトース、ソルボース、グルコサミン、リボース、アラビノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、α-メチル-D-グルコシド、サリシン、メリビオース、ラクトース、メレジトース、イヌリン、エリスリトール、リビトール、キシリトール、グルシトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトール、ソルビトール、N-アセチル-D-グルコサミン、アミグダリン、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜、白糖等の糖類、麦、米等の天然物、グリセロール、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸、酢酸フェニル、乳酸、コハク酸、グルコン酸、カプリン酸、リンゴ酸、グルクロン酸、ピルピン酸、クエン酸等の有機酸類、ヘキサデカン等の炭化水素などが挙げられる。上記炭素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。例えば、油分解微生物A(特に、2-3406-1株)を用いる場合は、上記炭素源のうち、グルコース、アラビノース、グルコン酸、カプリン酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸フェニルおよびこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)等を用いることが好ましい。また、上記炭素源を1種または2種以上選択して使用することができる。また、油分解微生物B(2-3406-2株)を用いる場合は、上記炭素源のうち、グルコース、マンニトール、イノシトール、ソルビトール、白糖、メリビオース、アミグダリン、アラビノースおよびこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)等を用いることが好ましい。また、上記炭素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
本発明に係る微生物の培養において使用できる窒素源としては、肉エキス、魚肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、トリプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、カゼイン、ミルクカゼイン、カザミノ酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素源;アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、尿素等の無機窒素源などが挙げられる。上記窒素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。例えば、油分解微生物A(特に、2-3406-1株)または油分解微生物B(2-3406-2株)を用いる場合は、上記窒素源のうち、魚肉エキス、トリプトン、酵母エキス、塩化アンモニウム等を用いることが好ましい。また、上記窒素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
本発明に係る微生物の培養において使用できる無機物としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などの、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等のハロゲン化物などが挙げられる。上記無機物は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記無機物を1種または2種以上選択して使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、界面活性剤等を添加してもよい。
本発明に係る微生物に効率よく油脂を分解・資化させるあるいは微生物の油脂分解・資化能を維持するためには、培地中に油脂を添加することが好ましい。油脂としては、上述の食用油脂、工業用油脂、ならびに脂肪酸が例示できる。油脂の添加量は、特に制限されず、培養する微生物による油脂分解・資化能などを考慮して適宜選択されうる。具体的には、油脂(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、培地1L中に1~30g、より好ましくは5~15gの濃度で添加することが好ましい。このような添加量であれば、微生物は、高い油脂分解・資化能を維持できる。なお、油脂は、単独で添加してもまたは2種以上の混合物の形態で添加してもよい。
本発明に係る微生物の培養は、通常の方法によって行える。例えば、微生物の種類によって、好気的条件下または嫌気的条件下で、微生物を培養する。前者の場合には、微生物の培養は、振盪あるいは通気攪拌などによって行われる。また、微生物を連続的にまたはバッチで培養してもよい。培養条件は、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本発明に係る微生物が増殖できる条件であれば特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて適宜選択されうる。通常は、培養温度が、好ましくは10~50℃、より好ましくは25~45℃である。また、培養に適当な培地のpHは、特に制限されないが、好ましくは5~8、より好ましくは5.5~7.5である。さらに、培養時間は、特に制限されず、培養する微生物の種類、培地の量、培養条件などによって異なる。通常は、培養時間は、好ましくは16~48時間、より好ましくは20~30時間である。
(他の成分)
本発明に係る油分解剤は、油分解微生物A、Bを必須に含むが、本発明に係る油分解微生物A、Bに加えて、油脂をより効率的に減少させる観点から、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、特開2017-136033号公報に記載の微生物、本発明に係る微生物と共生可能な他の微生物、リパーゼなどの油分解性酵素、pH調整剤、油脂吸着剤、界面活性剤などが挙げられる。
本発明に係る微生物と共生可能な他の微生物としては、例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属、キャンディダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Penicillium)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、リゾプス(Rhizopus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、フザリウム(Fusarium)属、セラチア(Serratia)属、テトラスファエラ(Tetrasphaera)属、フミコラ(Humicola)属、およびステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属等が例示できる。これらの微生物は、ATCC、NBRC、DSMZ等のカルチャーコレクションから入手してもよい。これらの微生物のうち、油脂の分解能の高さから、ヤロウィア属、エンテロバクター(Enterobacter)属またはスフィンゴモナス(Sphingomonas)属の微生物を用いることが好ましい。
ヤロウィア属の微生物としては、ヤロウィア・リポリティカ ATCC48436、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1548、ヤロウィア・リポリティカ LM02-011(受託番号NITE P-01813)、ヤロウィア・リポリティカ NBRC0746、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1209のようなヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ヤロウィア YH-01のようなヤロウィア スピーシーズ(Yarrowia sp.)等が例示できるが、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)がより好ましく、ヤロウィア・リポリティカ LM02-011(LM02-011株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2014年3月6日付で受託番号NITE P-01813として寄託している)が更に好ましい。
エンテロバクター属の微生物としては、エンテロバクター・エスピー(Enterobacter sp.)LM02-030株(LM02-030株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2015年5月12日付で受託番号NITE P-02048として寄託している)等が例示できる。
スフィンゴモナス属の微生物としては、例えば、特開2006-166874号公報に記載のスフィンゴモナス・エスピー 2629-3b、特開2017-136033号公報に記載のスフィンゴモナス・エスピー LM02-032株(LM02-032株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2015年6月19日付で受託番号NITE P-02069として寄託している)のようなスフィンゴモナス・エスピー(Sphingomonas sp.)等が例示できる。
本発明に係る油分解剤は、本発明に係る油分解微生物A、Bによる油脂の分解を補助するため、排水などにリパーゼやホスホリパーゼ等の油分解性酵素を含んでもよい。油分解性酵素としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、ムコール(Mucor)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、アブシディア(Absidia)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、エロモナス(Aeromonas)属、アルテルナリア(Alternaria)属、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属、ボーベリア(Beauveria)属、クロモバクター(Chromobacter)属、コプリヌス(Coprinus)属、フザリウム(Fusarium)属、ゲオトリクム(Geotricum)属、フミコラ(Humicola)属、ハイホジーマ(Hyphozyma)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、メタリジウム(Metarhizium)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、キャンディダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、および/またはトリコスポロン(Trichosporon)属から得ることができる。
市販の油分解性酵素としては、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼQLM(名糖産業株式会社);リパーゼA「アマノ(登録商標)」6、リパーゼDF「アマノ(登録商標)」15、リパーゼG「アマノ(登録商標)」50、リパーゼAY「アマノ(登録商標)」30SD、リパーゼR「アマノ(登録商標)」、リパーゼMER「アマノ(登録商標)」、ニューラーゼ(登録商標)F(アマノエンザイム株式会社);スミチーム(登録商標)NLS、スミチーム(登録商標)RLS(新日本化学工業株式会社);リリパーゼ(登録商標)A-10D、リリパーゼ(登録商標)AF-5、PLA2ナガセ(ナガセケムテックス株式会社);エンチロンAKG-2000、エンチロンLP、エンチロンLPG(洛東化成工業株式会社);Lipolase(登録商標)100T、Lipolase(登録商標)100L、Palatase20000L、Lipex(登録商標)100T、Lipex(登録商標)100L、Lipozyme(登録商標)RMIM、Lipozyme(登録商標)TLIM、Novozyme(登録商標)435FG(ノボザイムズ社製);ピカンターゼA、ピカンターゼR800(ディー・エス・エムジャパン社製)等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
油分解剤に含まれる油分解性酵素の量は、酵素が油脂と反応できれば特に制限されないが、油分解性酵素が、排水などに含まれる油脂1gに対して、10~2,000Uの割合となるような量で含まれることが好ましい。油分解性酵素が、排水などに含まれる油脂1gに対して、より好ましくは50~1,500U、さらに好ましくは100~1,000Uの割合となるような量で含まれる。または、油分解性酵素が、グリーストラップの容量に対して、好ましくは1,000~100,000U/L、より好ましくは2,000~80,000U/Lとなるような量で含まれてもよい。なお、油分解性酵素の活性単位(U)は、37℃、pH7の条件で1分間に1μモルの脂肪酸を遊離する酵素量である。
本発明に係る油分解剤は、特開2012-206084号公報に記載のシラスバルーン、珪藻土、パーライトのような無機高分子、ポリウレタン、ポリエチレン、メラニン樹脂のような有機高分子などの、油脂吸着剤を含んでもよい。
本発明に係る油分解剤は、油脂の凝集やスカムの形成を防止するため、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸(NaDDBS)、ラウリル硫酸アンモニウム、カゼインナトリウムなどの陰イオン界面活性剤;脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤;脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル)、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-t-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100)、レシチンなどの非イオン性界面活性剤;ベタイン、アミンオキシド、サポニンなどの両性界面活性剤などの界面活性剤を含んでもよい。
[排水処理方法]
本発明の一実施形態は、油脂を含む排水に本発明の油分解剤を添加する(接触させる)工程を含む、排水の処理方法に関する。本発明に係る油分解剤は油脂の低減効果に優れ、油脂を含む排水を効果的に浄化し得る特性を有する。従って、油脂を含む排水に、上記本発明に係る油分解剤を添加して、油脂分解微生物A及びBを排水と接触させることにより、油脂を効果的に低減することができる。なお、上記の微生物に関する説明は、必要に応じて改変されて本実施形態に適用され得る。また、本発明に係る排水処理方法において、本発明に係る油分解剤が上述したような他の成分を含んでも、または本発明に係る油分解微生物A、Bのみから構成される油分解剤に加えて、上記したような他の成分を排水に一緒に添加してもよい。
以下、図1を参酌しながら、本側面に係る排水処理方法についてより詳細に説明する。なお、本発明の排水処理方法が、図1に限定されるものではない。
図1は、グリーストラップ10による排水処理(廃水処理)の仕組みを模式的に表している。排水処理方法において、本発明に係る油分解剤は、グリーストラップ10に排出する前の排水にあらかじめ添加されていても良いが、典型的には、排水処理槽1中の排水へ添加される。但し、本発明に係る排水処理方法は、本発明に係る油分解剤(特に油分解微生物A、B)と油脂含有排水とを接触させることができる限り特に限定されない。
グリーストラップ10は、パイプ導入型、側溝導入型など、いずれの流入方式でもよい。また、地中埋設、スラブ天井、シンダー内埋設、床置型など、設置条件は特に制限されない。地中埋設の場合、例えば厨房や食品加工場において、排水路に流出した排水が残渣受け3に注ぎ込まれるように、グリーストラップ10を埋設する。可動式の場合、例えば、シンクの排水溝の下部に残渣受け3が位置するようにグリーストラップ10を設置する。
図1において、排水は、矢印の方向へ流れる。なお、グリーストラップ10への排水の投入は、回分式であっても連続式であっても良い。油脂含有排水は、残渣受け3を通じて排水処理槽1へと流れ込む。このとき、生ゴミ等の残渣の全部または一部は残渣受け3で捕集されるが、大部分の油脂は残渣受け3を通過して排水処理槽1へと流入する。排水処理槽1へ流入した油脂6は仕切り板2bにより水面5へ向かって浮上し、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間に集まる。従って、本発明に係る油分解剤を排水に加えない場合、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間で油脂6が次第に凝集し、スカムを形成することとなる。
本発明に係る油分解剤をグリーストラップ10に適用した場合、排水処理槽1にて(主として、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間にて)、油脂を含む排水と本発明に係る油分解剤(特に油分解微生物A、B)とが接触することとなる。本発明に係る油分解微生物は共に存在することにより油脂の分解活性が高く、資化性を有するため、油脂6の凝集を抑制し、スカムが形成されることを有効に防止し得る。特に、2-3406-1株及び2-3406-2株は、組み合わせることにより高い油脂分解活性を備える。これにより、油脂がトラップ管4を通じて外部環境へ流出することを防止し、環境保全の観点からも利点がある。
排水処理方法において、本発明に係る油分解剤に含まれる油分解微生物A、Bは、それぞれ、培養液中に懸濁された状態、培養液から固形分として回収された状態、乾燥された状態、担体に固定化された状態など、様々な形態で排水に接触させられ得る。培養液中に懸濁され、培養液から固形分として回収され、または乾燥された状態の油分解微生物A、Bは、一緒に、例えば、排水中へ添加され、排水と接触させられる。担体に固定化された状態の油分解微生物A、Bは、それぞれ、排水中へ添加されてもよいが、油分解微生物A、Bを一緒に固定化した担体をグリーストラップ内に設置し、微生物固定化担体に排水を通液させることにより油分解微生物A、Bと排水とを接触させることもできる。担体に固定化した油分解微生物A、Bをグリーストラップ内に設置することにより、排水と共に微生物が流出して菌数が低下することを防止し得る。
培養液から固形分として回収した油分解微生物A、Bを本発明に係る油分解剤に使用する場合、回収方法は当業者に公知のいずれの手段も採用できる。例えば、上述の方法により培養した油脂分解微生物の培養液を、遠心分離やろ過などにより固液分離し、固形分を回収して得ることができる。この固形分を乾燥(例えば、凍結乾燥)すれば、乾燥された状態の油脂分解微生物を得ることができる。
担体に固定化された状態の油脂分解微生物を用いる場合、油脂分解微生物を固定化する担体としては、微生物を固定化することができるものであれば特に制限されず、一般的に微生物を固定化するのに使用される担体が同様にしてあるいは適宜修飾されて使用される。例えば、アルギン酸、ポリビニールアルコール、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストラン等のゲル状物質に包括固定する方法や、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の表面に吸着固定する方法などが使用できる。
また、油脂分解微生物を担体に固定化する方法もまた特に制限されず、一般的な微生物の固定化方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて使用される。例えば、微生物の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、アスピレーターを用いて担体を減圧下におき、微生物の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、および微生物の培養液を滅菌した培地と担体との混合物に流し込み、振とう培養し、上記混合物から取り出した担体を自然乾燥する方法などが挙げられる。
本発明に係る方法において、排水に油分解剤を添加して油脂分解微生物を接触させる場合、添加する菌量は任意に設定できる。排水に添加する菌量は、特に制限されるものではないが、各油分解微生物A、Bの添加量が、排水に含まれる油脂1gに対して例えば1×10~1×1012CFUであり、好ましくは1×10~1×1011CFUとなるような量である。あるいは、各油分解微生物A、Bの添加量が、排水に含まれる油脂1gに対して、例えば0.1mg~5g(乾燥菌体重量)であり、好ましくは1mg~1.5g(乾燥菌体重量)となるような量であり、より好ましくは10mg~150mg(乾燥菌体重量)となるような量である。または、各油分解微生物A、Bの添加量が、グリーストラップ内の排水に対して、例えば1×10~1×1012CFU/L、より好ましくは1×10~1×1011CFU/Lとなるような量であってもよい。あるいは、各油分解微生物A、Bの添加量が、グリーストラップ内の排水に対して、例えば10mg~15g(乾燥菌体重量)/Lであり、好ましくは0.1g~1.5g(乾燥菌体重量)/Lとなるような量である。なお、上記量は、油脂分解微生物A、Bそれぞれの量を意味する。また、油脂分解微生物A、Bをそれぞれ2種以上組み合わせて用いる場合は、上記量は、各油脂分解微生物の合計量を意味する。なお、排水に添加する油分解微生物A、Bは、前培養したものを用いてもよい。前培養することにより、接種する菌量を容易に調節できる。
本発明に係る油分解剤が担体に固定化しない油脂分解微生物を含む場合には、排水を外部環境へ排出する際、担体に固定化しない油脂分解微生物は排水と共にグリーストラップ外へと排出される。このため、本発明においては、グリーストラップ(排水)に、定期的に油分解剤を添加することが好ましい。添加する間隔は特に制限されないが、例えば、1回/3時間、1回/24時間、または2~3日に1回の間隔で添加するのが好ましい。添加する方法は特に制限されず、排水が連続的にグリーストラップに流入する場合には、排水に混在させて添加してもよいし、グリーストラップ内の排水に直接、添加してもよい。厨房のシンクなどの排水口から油分解剤を添加すれば、洗浄により排出される排水とともに、油分解剤をグリーストラップ内に導入することができる。
グリーストラップは、油脂含有排水を連続的に導入し、処理後の排水を連続的に排出する形態であってもよいし、油脂含有排水を導入し、一括して処理した後に、処理後の排水を一括して排出する形態であってもよい。
また、本発明に係る排水処理方法において、油脂分解微生物と油脂とを接触させる際の温度、すなわちグリーストラップ内の排水の温度としては、任意に設定することができる。また、油脂分解微生物と油脂とを接触させる際のpH、すなわちグリーストラップ内の排水のpHとしても、任意に設定することができる。一般的には、温度は、例えば5~50℃であり、10~45℃が好ましく、20~37℃がより好ましい。pHは例えば5~8であり、5.5~7.5が好ましい。さらに、必要に応じて曝気等により排水にエアレーションを行っても良い。
なお、上記の油分解微生物および排水処理方法に関する説明は、必要に応じて改変されて本実施形態に適用され得る。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1:微生物の単離
宮城県阿川沼付近の土壌から採取したサンプルを、上記と同様にして作製された一次スクリーニング用液体培地に接種し、30℃で一週間培養した。培養後の培養液100μLをさらに一次スクリーニング用液体培地5mLに接種し、再度30℃で一週間培養した。
10倍希釈した一次スクリーニング後の培養液100μLを、上記と同様にして作製された二次スクリーニング用寒天培地に塗布し、30℃で一週間培養した。培養後、油脂の分解によるハロの形成が確認できた菌株を単離した。
次に、油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、上記と同様にして作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液を調製した(油脂1%(w/v))。上記二次スクリーニングで得た各単離菌株を白金耳で一白金耳ずつ、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪培養(140rpm)した。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、下記数式(1)により油脂減少率(重量%)を求めた。その結果、油脂減少率の高い菌株を単離した。
Figure 0007264699000029
単離した2菌株を、それぞれ、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) 2-3406-1株およびセラティア・エスピー(Serratia sp.) 2-3406-2株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(それぞれ、受託番号NITE BP-02904およびNITE BP-02905)。
実施例2:油脂減少率の評価
油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、上記と同様にして作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液(pH=6.0)を調製した(油脂1%(w/v))。二次スクリーニング用寒天培地上で培養した2-3406-1株及び2-3406-2株をそれぞれ白金耳で一白金耳ずつ、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪(140rpm)して共培養した。なお、共培養における2-3406-1株及び2-3406-2株の混合比(重量比)は1:1である。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))から、上記数式(1)により油脂減少率を求めた。その結果を下記表24に示す。
比較例1:油脂減少率の評価
油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、上記と同様にして作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液(pH=6.0)を調製した(油脂1%(w/v))。二次スクリーニング用寒天培地上で培養した2-3406-1株を白金耳で一白金耳、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪(140rpm)して培養した。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))から、上記数式(1)により油脂減少率を求めた。その結果を下記表24に示す。
比較例2:油脂減少率の評価
油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、上記と同様にして作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液(pH=6.0)を調製した(油脂1%(w/v))。二次スクリーニング用寒天培地上で培養した2-3406-2株を白金耳で一白金耳、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪(140rpm)して培養した。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))から、上記数式(1)により油脂減少率を求めた。その結果を下記表24に示す。
比較例3:油脂減少率の評価
従来公知の油脂分解微生物として、独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入したヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)NBRC0746株(ヤロウィア・リポリティカの標準株;以下、単に「NBRC0746株」とも称する)を用いた。
油脂0.05g(菜種油:大豆油=1:1(w/w))を、上記と同様にして作製された三次スクリーニング用液体培地5mLに加えて、滅菌した試験液(pH=6.0)を調製した(油脂1%(w/v))。NBRC0746株を白金耳で一白金耳、上記方法で調製した試験液に接種し、30℃で24時間振盪(140rpm)して培養した。
培養後、JIS K0102:2016改正(工業排水試験方法)に準じてノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油脂の残存量とし、試験液の調製時に添加した油脂0.05gと油脂の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))から、上記数式(1)により油脂減少率を求めた。その結果を下記表24に示す。
Figure 0007264699000030
表24に示されるように、2-3406-1株および2-3406-2株を組み合わせることによって、それぞれを単独で使用した場合および公知の油脂分解微生物であるNBRC0746株を使用した場合に比して、油脂減少率が顕著に向上できることが分かる。この結果から、本発明に係る油分解剤は、優れた油脂分解力を発揮できることが期待できる。
1 排水処理槽、
2a、2b、2c 仕切り板、
3 残渣受け、
4 トラップ管、
5 水面、
6 油脂、
10 グリーストラップ。

Claims (5)

  1. シュードモナス(Pseudomonas)属に属し、以下の菌学的性質を示す、油分解微生物Aおよびセラティア(Serratia)属に属し、以下の菌学的性質を示す、油分解微生物Bを含み、
    前記油分解微生物Aが、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) 2-3406-1株(受託番号NITE BP-02904)で特定され、
    前記油分解微生物Bが、セラティア・エスピー(Serratia sp.) 2-3406-2株(受託番号NITE BP-02905)で特定される、油分解剤。
    Figure 0007264699000031

    Figure 0007264699000032

    Figure 0007264699000033

    Figure 0007264699000034

    Figure 0007264699000035

    Figure 0007264699000036
  2. 前記油分解微生物Aが、配列番号1で示される16S rDNA塩基配列を有する、請求項1に記載の油分解剤。
  3. 前記油分解微生物Bが、配列番号2で示される16S rDNA塩基配列を有する、請求項1または2に記載の油分解剤。
  4. 前記油分解微生物A及びBは、共培養物の形態で含まれる、請求項1~のいずれか1項に記載の油分解剤。
  5. 油脂を含む排水に請求項1~のいずれか1項に記載の油分解剤を添加する工程を含む、排水の処理方法。
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