JP7253627B2 - 鞍乗り型車両の車輪速センサ取り付け構造 - Google Patents

Description

本発明は、車輪速センサ取り付け構造に関する。

近年の鞍乗り型車両においては、ＡＢＳ（Anti-lock Brake System）やＴＣＳ（Traction Control System）を採用するために、車輪に車輪速センサを備えることがある。
例えば、特許文献１には、後輪を支持するスイングアームに車幅方向外側から車輪速センサを取り付け、この車輪速センサおよびセンサケーブルを別体のカバー部材で車幅方向外側から覆う構成が開示されている。

特許第４８５６４９５号公報

しかし、上記従来の構成では、スイングアームの外側面に取り付けたカバー部材が車幅方向外側に露呈し、見栄えが悪かった。
一方、見栄えをよくするために、スイングアームに車幅方向内側から車輪速センサを取り付けることが考えられる。この場合、車輪速センサの取り付け時にも車幅方向外側から車輪速センサを目視できないため、以下の課題が生じる。すなわち、車輪速センサの取り付け位置の確認がし難く、車輪速センサの取り付け位置精度にばらつきが生じてしまう。

そこで本発明は、車輪速センサを設けることによる外観性への影響を抑えるとともに車輪速センサの位置精度を確保することができる車輪速センサ取り付け構造を提供する。

上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体（Ｆ）に支持され、車輪（ＷＲ）を支持する車輪支持部材（３８）と、前記車輪（ＷＲ）の回転速度を検出する車輪速センサ（５１）と、を備え、前記車輪速センサ（５１）は、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に配置され、且つ、側面視で前記車輪（ＷＲ）の車軸（ＡＲ）と前記車輪支持部材（３８）のシャシ部品取り付け部（３８ｃ１，３８ｃ２）とで囲まれる領域（Ｎ）に少なくとも一部が配置される。
この構成によれば、車輪速センサを車輪支持部材の車幅方向内側に取り付けるので、車輪速センサが視認され難く、外観性への影響を抑えることができる。また、車輪速センサを取り付ける際に、後輪軸およびシャシ部品取り付け部によってセンサ取り付け部が探しやすくなるので、以下の効果を奏する。すなわち、車輪速センサの取り付け作業性を向上させ、車輪速センサの位置精度を確保することができる。

本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられ、前記車輪速センサ（５１）を締結するセンサ締結部（６３）に隣接し、前記車輪速センサ（５１）の位置決めに供される位置決め部（６１）を備える。
この構成によれば、車輪速センサをセンサ締結部に配置する際に、車輪速センサの位置決めが容易かつ正確になされる。このため、車輪速センサの位置精度を確保するとともに、車輪速センサの締結作業を容易にすることができる。

本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられ、前記センサ締結部（６３）および位置決め部（６１）から離間し、前記車輪速センサ（５１）の締結部中心の回転方向の位置決めに供される第二位置決め部（６２）を備える。
この構成によっても、車輪速センサをセンサ締結部に配置する際に、車輪速センサの位置決めが容易かつ正確になされる。このため、車輪速センサの位置精度を確保するとともに、車輪速センサの締結作業を容易にすることができる。

本発明の第四の態様は、上記第三の態様において、前記第二位置決め部（６２）は、前記車輪速センサ（５１）の被係合部（５１ｄ）に係合する部位に、前記被係合部（５１ｄ）に沿うように形成された囲繞部（６２ａ）を備える。
この構成によれば、突出部が車輪速センサの回転方向の位置決めを行う際の被係合部の負荷を抑えることができる。

本発明の第五の態様は、上記第一から第四の態様の何れか一つにおいて、前記車輪速センサ（５１）は、保護部材（５２）で覆われ、前記保護部材（５２）とともに前記車輪支持部材（３８）に締結される。
この構成によれば、車輪速センサの保護性を向上させるとともに、保護部材は車輪速センサと共締め固定として取り付け作業性を向上させることができる。

本発明の第六の態様は、上記第五の態様において、前記車輪速センサ（５１）は、前記保護部材（５２）に設けられた保持部（５２ｄ）と、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられた位置決め部（６１）と、に挟持された状態で前記車輪支持部材（３８）に取り付けられる。
この構成によれば、車輪速センサを二方向から挟んだ状態で車輪支持部材に取り付けるので、車輪速センサの位置精度を向上させることができる。

本発明によれば、車輪速センサを設けることによる外観性への影響を抑えるとともに車輪速センサの位置精度を確保することができる車輪速センサ取り付け構造を提供することができる。

本発明の実施形態における自動二輪車の右側面図である。 上記自動二輪車の後輪周辺の右側面図である。 上記自動二輪車の後輪周辺の後面図である。 図２の要部を拡大した右側面図である。 図２の要部を車幅方向内側から見た左側面図であり、図３のＶ－Ｖ断面図である。 補助アームのセンサ取り付け部周辺の斜視図である。 補助アーム単体のセンサ取り付け部周辺の斜視図である。 車輪速センサのセンサ小組体の斜視図である。 車輪速センサの保護カバーの斜視図である。 図４のＸ－Ｘ断面図である。 図４のＸＩ－ＸＩ断面図である。

以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印ＦＲ、車両左方を示す矢印ＬＨ、車両上方を示す矢印ＵＰ、車体左右中心を示す線ＣＬが示されている。

＜車両全体＞
図１に示すように、本実施形態の自動二輪車（鞍乗り型車両）１は、車体フレームＦの前端部にヘッドパイプ１３を備えている。ヘッドパイプ１３には、前輪ＷＦを軸支するフロントフォーク１１及び操向ハンドル１２が繰向可能に支持されている。車体フレームＦの下部には、スイング式動力ユニット（以下、パワーユニットＵという。）の前部下側が上下揺動可能に支持されている。自動二輪車１は、原動機であるエンジン（内燃機関）Ｅと駆動輪である後輪ＷＲとが車体フレームＦ（車体本体）に対して一体的に揺動するパワーユニットＵを備えたユニットスイング式の鞍乗り型車両である。

図２、図３を併せて参照し、パワーユニットＵは、自動二輪車１の原動機であるエンジンＥを前部に配置し、エンジンＥの出力を変速する変速機Ｍを後部左側に配置した一体のユニットである。変速機Ｍの後部には、駆動輪である後輪ＷＲの車軸（後輪車軸）ＡＲが支持されている。パワーユニットＵの前部は、車体フレームＦの支持部に懸架リンク等を介して上下揺動可能に支持されている。パワーユニットＵの後端部は、緩衝装置である左右一対のリヤクッション９を介して、車体フレームＦの後端部に支持されている。図中符号ＷＲａは後輪ＷＲのホイール、符号ＷＲｃは後輪ＷＲ（車軸ＡＲ）の中心軸線をそれぞれ示す。

図１に示すように、車体フレームＦは、ヘッドパイプ１３から下後方へ延びるダウンフレーム１４と、ダウンフレーム１４の下端部から後方へ延びるロアフレーム１５と、ロアフレーム１５の後端部から後上方へ延びるリヤフレーム１６と、を備えている。車体フレームＦの周囲は、車体カバー２７で覆われている。車体カバー２７の後部上方には、乗員着座用の前後着座面を有するシート２８が支持されている。

車体カバー２７は、シート２８に着座した運転者が足を載せるステップフロア２９と、ステップフロア２９の前方に連なるフロントボディ２７Ｆと、ステップフロア２９の後方に連なるリヤボディ２７Ｒと、を備えている。ステップフロア２９の上方でシート２８と操向ハンドル１２との間は、乗員が車体を跨ぎやすくする跨ぎ空間とされている。図中符号１９はパッセンジャー用の折り畳みステップを示す。

ステップフロア２９は、例えば車体の低床部の左右幅に渡って平坦状をなし、低床部の略水平な上面（フロア面２９ａ）を形成している。自動二輪車１は、運転者が足を載せるステップフロア２９を有するスクーター型車両である。なお、ステップフロア２９の左右中央に前後方向に延びるセンタートンネルを備える構成でもよい。

エンジンＥは、不図示のクランクシャフトの回転中心軸線を左右方向（車幅方向）に沿わせた４ストローク単気筒エンジンであり、クランクケース２１の前端部からシリンダ部２２を前方に向けて略水平に（詳細にはやや前上がりに傾斜させて）突出させている。
図３を参照し、クランクケース２１の左後方には、左方に張り出した後に後方に延出するリヤアームとしての変速機ケース３５が連なっている。変速機ケース３５内には、変速機Ｍが収容されている。

変速機Ｍは、変速機ケース３５の側面視の長さ方向に渡って収容されるベルト式無段変速機である。変速機ケース３５の後部右側には後輪車軸ＡＲ（出力軸でもある）が突出し、この後輪車軸ＡＲに後輪ＷＲが一体回転可能に取り付けられる。

クランクケース２１の後部右側には、前後方向に延びる補助アーム３８の前端部が結合されている。補助アーム３８は、変速機ケース３５とともに、後輪ＷＲを支持するリヤアーム（スイングアーム）を構成する。補助アーム３８は、後端部に後輪車軸ＡＲの右端部を支持する。補助アーム３８は、変速機ケース３５とともに後輪ＷＲを支持するスイングアームを構成する。変速機ケース３５および補助アーム３８の各後端部には、左右一対のリヤクッション９の下端部が連結される。左右リヤクッション９の上端部は、左右リヤフレーム１６の後端部にそれぞれ連結される。

補助アーム３８には、車幅方向で貫通する中央開口３８ａが形成されている。補助アーム３８の車幅方向内側には、補強リブ３８ｂを残して肉抜きが施されている。補助アーム３８の後部の車幅方向内側には、後輪ブレーキＢＲのキャリパ３１がキャリパブラケット３２を介して取り付けられている。図中符号３８ｃ１は補助アーム３８におけるキャリパブラケット３２を取り付けるキャリパブラケット取り付け部（シャシ部品取り付け部）、符号３８ｃ２はキャリパブラケット３２におけるキャリパ３１を取り付けるキャリパ取り付け部（シャシ部品取り付け部）、符号３８ｃ３は補助アーム３８におけるリヤクッション９の下端部を連結するクッション連結部（シャシ部品取り付け部）をそれぞれ示す。図示都合上、各取り付け部３８ｃ１，３８ｃ２，３８ｃ３は締結ボルト位置に付番する。

後輪ＷＲの右側方には、エンジンＥの排気管４１に接続されるマフラー（消音器）４２が配置されている。後輪ＷＲの左側方には、変速機ケース３５の上部に支持されたエアクリーナ２５が配置されている。

＜ＡＢＳ＞
自動二輪車１は、車輪のスリップ率をフィードバックして車輪に対する制動力を制御するアンチロックブレーキシステム（「Anti-lock Brake System」、以下、「ＡＢＳ」という。）を採用している。自動二輪車１のＡＢＳは、前後輪ＷＦ，ＷＲのそれぞれに車輪速センサを備え、これら各車輪速センサの出力を相互に比較することで、前後輪ＷＦ，ＷＲのブレーキ液圧を制御する。

自動二輪車１は、液圧式（油圧式）のディスクブレーキである前輪ブレーキＢＦおよび後輪ブレーキＢＲを備えている。
後輪ブレーキＢＲは、後輪ＷＲと一体回転するブレーキディスク３３と、ブレーキディスク３３を挟圧して摩擦制動力を発生させるキャリパ３１と、を備えている。なお、前輪ブレーキＢＦも同様の構成である。

前後ブレーキの各キャリパは、不図示のＡＢＳモジュレータを介してマスターシリンダに接続されている。マスターシリンダには、ブレーキレバー等のブレーキ操作子が連結されている。車両制動時には、運転者がブレーキ操作子を操作してマスターシリンダに液圧を発生させ、この液圧がＡＢＳモジュレータを介して前後キャリパに供給される。これにより、前後キャリパがブレーキディスクを挟圧し、前後輪ＷＦ，ＷＲの回転を制動する。

ＡＢＳモジュレータは、車両制動時、車輪速センサ５１の検出情報から、前後輪ＷＦ，ＷＲがロック状態に陥りそうになったことを検知可能である。ＡＢＳモジュレータは、前後輪ＷＦ，ＷＲのロックの可能性を検知すると、前後ブレーキに対するＡＢＳ制御（アンチロックブレーキ制御）を行う。ＡＢＳ制御は、キャリパに供給するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持することでなされる。

＜後輪周り＞
図４、図１０、図１１に示すように、後輪ブレーキＢＲは、後輪ＷＲの右側部に配置されている。後輪ブレーキＢＲのブレーキディスク３３は、中央部が開口する環状の円板状をなしている。ブレーキディスク３３の内周側には、ブレーキディスク３３を後輪ＷＲのホイールハブ８に締結可能とする複数の締結フランジ３３ａが突設されている。複数の締結フランジ３３ａは、ディスク周方向（後輪ＷＲの周方向）で等間隔に並ぶように配置されている。ホイールハブ８には、ブレーキディスク３３の各締結フランジ３３ａを取り付けるためのディスク取り付け部８ａが複数設けられている。各ディスク取り付け部８ａは、車幅方向に沿う締結ボルトＢ１を車幅方向外側から着脱可能とする。各ディスク取り付け部８ａには、ブレーキディスク３３の締結フランジ３３ａとともに、センサリング５５の締結フランジ５５ａが共締め固定される。

図４を参照し、後輪ブレーキＢＲのキャリパ３１は、補助アーム３８にキャリパブラケット３２を介して支持されている。キャリパ３１は、補助アーム３８に固定されたキャリパブラケット３２に対し、車軸方向（車軸に沿う方向、車幅方向）で規定量だけスライド可能に支持された浮動式（片押し式）である。補助アーム３８の後部の車幅方向内側には、キャリパブラケット３２を締結するための上下一対のキャリパブラケット取り付け部３８ｃ１が設けられている。

キャリパ３１は、車軸方向でブレーキディスク３３を跨ぐ態様のキャリパボディ３１ａと、キャリパボディ３１ａの内側に保持され、ブレーキディスク３３を挟圧するための一対のブレーキパッド３１ｂと、を備えている。キャリパボディ３１ａの車軸方向外側には、車軸方向に沿うシリンダおよびピストン（何れも符号を略す）が設けられている。キャリパボディ３１ａは、シリンダ内の油室に液圧が供給されてピストンが車軸方向内側に移動することで、車軸方向外側のブレーキパッド３１ｂがブレーキディスク３３の外側面を押圧するとともに、その反力でキャリパボディ３１ａが車軸方向外側にスライドし、車軸方向内側のブレーキパッド３１ｂがブレーキディスク３３の内側面を押圧する。これにより、両ブレーキパッド３１ｂがブレーキディスク３３を挟圧し、後輪ＷＲの制動がなされる。なお、キャリパ３１は対向ピストン型でもよい。

＜車輪速センサ＞
図４～図６、図８に示すように、後輪ＷＲの回転速度を検出する車輪速センサ５１は、補助アーム３８の車幅方向内側に取り付けられている。ホイールハブ８の右端部には、後輪ＷＲと一体回転するプレート状のセンサリング（パルサリング）５５が取り付けられている。

車輪速センサ５１は、補助アーム３８（車輪支持部材）に直接取り付けられているが、これに限らない。例えば、車輪速センサ５１は、補助アーム３８に別部材を介して間接的に取り付けられてもよい。例えば、車輪速センサ５１は、補助アーム３８と同様に後輪ＷＲに対して非回転側となる部材に取り付けられてもよい。

車輪速センサ５１は、センサリング５５の回転に伴いパルス信号を発生するピックアップコイルを有している。ピックアップコイルは、センサリング５５のピックアップ孔５５ｂ１の回転に伴う磁束変化によってパルス信号を発生する。車輪速センサ５１は、ピックアップコイルで発生したパルス信号を制御ユニットに出力する。車輪速センサ５１からは、センサケーブル５４が引き出される。センサケーブル５４は、規定の制御ユニットに接続される。例えば、車輪速センサ５１により検知した車輪速情報は、ＡＢＳおよびトラクションコントロールシステム等の制御に用いられる。

車輪速センサ５１は、円柱状の検出部５１ａと、検出部５１ａの軸方向一端側に一体に設けられるホルダ部５１ｂと、を有している。ホルダ部５１ｂは、検出部５１ａの軸方向視で長円形状をなしている。ホルダ部５１ｂの長軸方向一側には検出部５１ａが配置され、ホルダ部５１ｂの長軸方向他側にはボルト挿通孔５１ｃが配置されている。検出部５１ａは、外形状を形成するケース内にピックアップコイルを収容する。検出部５１ａのケースとホルダ部５１ｂとは、樹脂等により一体形成されている。検出部５１ａの軸方向他端は、センサリング５５に対向する検出端とされる。ボルト挿通孔５１ｃには、車輪速センサ５１を補助アーム３８のセンサ取り付け部６０に締結固定するための締結ボルトＢ２が挿通される。

ホルダ部５１ｂの短軸方向の一側縁５１ｂ１は、後述する保護カバー５２の基端部の側縁に設けられた保持爪部５２ｄが当接する第一被係合部である。
ホルダ部５１ｂの短軸方向の他側縁５１ｂ２は、補助アーム３８の車幅方向内側に設けられた立壁部（位置決め部）６１に当接する第二被係合部である。
ホルダ部５１ｂの長軸方向一側端からは、長軸方向に沿う円筒状の配線導出部５１ｄが突出している。配線導出部５１ｄは、ホルダ部５１ｂと一体形成されている。配線導出部５１ｄの先端からは、信号線であるセンサケーブル５４が引き出され、車体側に取り回されている。

車輪速センサ５１は、後輪ＷＲに対して非回転側となる補助アーム３８に取り付けられている。車輪速センサ５１は、補助アーム３８の後部の車幅方向内側に取り付けられている。これにより、車輪速センサ５１と補助アーム３８の後部の車幅方向内側に配置されたセンサリング５５とが車幅方向で近接し、車輪速センサ５１の設置が容易となる。

＜センサリング＞
図４、図１０、図１１に示すように、センサリング５５は、後輪ＷＲと同軸の環状をなす被検出部５５ｂと、被検出部５５ｂの外周側に延出する複数の締結フランジ５５ａと、を備えている。センサリング５５は、被検出部５５ｂおよび締結フランジ５５ａを含んで平板状に形成されている。被検出部５５ｂは、車軸方向視でホイールハブ８よりも小径に設けられている。被検出部５５ｂには、複数のピックアップ孔５５ｂ１がリング周方向で等間隔に形成されている。被検出部５５ｂには、車輪速センサ５１の検出端が車軸方向外側から対向している。被検出部５５ｂは、ブレーキディスク３３の外側面よりも車軸方向外側に配置されている。複数の締結フランジ５５ａは、リング周方向で等間隔に並ぶように配置されている。各締結フランジ５５ａは、ブレーキディスク３３の複数の締結フランジ３３ａの各々に車幅方向外側から重なっている。各締結フランジ５５ａは、ブレーキディスク３３の各締結フランジ３３ａとともに、ホイールハブ８に共締め固定されている。

＜保護カバー＞
図５、図６、図８、図９に示すように、車輪速センサ５１には、保護カバー５２が装着される。保護カバー５２は、検出部５１ａを挿入して被覆する円筒状のカバー部５２ａと、カバー部５２ａの軸方向基端側から径方向に延出する延出部５２ｂと、を有している。延出部５２ｂには、締結ボルトＢ２を挿通するボルト挿通孔５２ｃが形成されている。保護カバー５２は金属製であるが、樹脂等（ゴム等の弾性材料を含む）により一体形成してもよい。保護カバー５２は、カバー部５２ａに検出部５１ａを挿入した状態で、延出部５２ｂをホルダ部５１ｂの長軸方向他側に重ねた状態となる。この状態で、延出部５２ｂおよびホルダ部５１ｂの各ボルト挿通孔５１ｃ，５２ｃに締結ボルトＢ２が挿通される。この締結ボルトＢ２は、補助アーム３８の車幅方向内側のセンサ取り付け部６０の締結ボス６３に螺着し締め込まれる。これにより、車輪速センサ５１および保護カバー５２が補助アーム３８に共締め固定される。以下、車輪速センサ５１に保護カバー５２を装着した小組体をセンサ小組体５３ということがある。

保護カバー５２の基端部の一側縁には、車輪速センサ５１への組み付け状態で、ホルダ部５１ｂの短軸方向の一側縁５１ｂ１に当接する保持爪部５２ｄが設けられている。保持爪部５２ｄは、保護カバー５２のカバー部５２ａと延出部５２ｂとに跨って設けられている。保持爪部５２ｄは、ホルダ部５１ｂの一側縁５１ｂ１に沿って長い直方体状をなしている。保持爪部５２ｄは、センサ小組体５３を補助アーム３８に取り付ける際に以下の作用を生じる。保持爪部５２ｄは、締結ボルトＢ２の締め込み方向（時計回り方向、図中矢印ＣＷ方向）で保護カバー５２が共回りすると、車輪速センサ５１のホルダ部５１ｂの一側縁５１ｂ１に当接して押し付けられる。車輪速センサ５１は、ホルダ部５１ｂの他側縁５１ｂ２が立壁部６１に当接して回り止めがなされている。したがって、保持爪部５２ｄがホルダ部５１ｂの一側縁５１ｂ１に押し付けられると、保持爪部５２ｄと立壁部６１とでホルダ部５１ｂが挟持される。図１０中寸法Ｌは保持爪部５２ｄと立壁部６１とが車幅方向で重なる領域を示す。

＜センサ取り付け部＞
図５～図７に示すように、補助アーム３８の後部の車幅方向内側には、センサ小組体５３を取り付けるためのセンサ取り付け部６０が設けられている。センサ取り付け部６０は、補助アーム３８における後輪車軸ＡＲを挿通支持するアクスル挿通部３８ｄの前方に配置されている。センサ取り付け部６０は、センサ小組体５３を締結するための締結ボス６３を有するとともに、センサ小組体５３（特に車輪速センサ５１）を位置決めする立壁部６１および突出部６２を有している。

アクスル挿通部３８ｄは、ベアリング等を保持する円筒壁３８ｄ１を有している。円筒壁３８ｄ１の前端側には、径方向外側に延びる接続壁３８ｄ２を介して締結ボス６３が接続、支持されている。締結ボス６３は、接続壁３８ｄ２に対して下方にずれて配置されている。接続壁３８ｄ２の車幅方向内側の先端部には、車幅方向に沿って車幅方向内側に立ち上がる立壁部６１が設けられている。立壁部６１は、締結ボス６３の車幅方向内側の先端面（締結座面）６３ａから垂直に立ち上がっている。立壁部６１は、締結ボルトＢ２の締め込み方向ＣＷでホルダ部５１ｂの他側縁５１ｂ２を当接させる。これにより、締結ボルトＢ２の締め込み時における車輪速センサ５１の回り止めがなされる。

突出部６２は、立壁部６１の上方において、補助アーム３８の車幅方向内側に露出する補強リブ３８ｂと一体形成されている。突出部６２の車幅方向内側の先端部には、車輪速センサ５１の配線導出部５１ｄの外周面に沿うように湾曲した凹状部６２ａが形成されている。凹状部６２ａは、車輪速センサ５１を補助アーム３８に取り付けた際に、配線導出部５１ｄの車幅方向外側から前方に渡る範囲を囲繞する。配線導出部５１ｄの前方とは、締結ボルトＢ２の締め込み方向（締結方向）ＣＷとは逆方向（締結解除方向、反時計回り方向）の側である。これにより、補助アーム３８から車輪速センサ５１を取り外す際は、車輪速センサ５１の前記逆方向への回転が突出部６２により規制される。

そして、本実施形態において、センサ取り付け部６０およびセンサ小組体５３は、補助アーム３８の後部の車幅方向内側に配置されている。また、センサ取り付け部６０およびセンサ小組体５３は、側面視で後輪車軸ＡＲの軸心と補助アーム３８の上下キャリパブラケット取り付け部３８ｃ１の締結ボルトの軸心とを結んで囲まれる三角形状の領域Ｎに、少なくとも一部（実施形態では全体）が配置されている。これにより、車輪速センサ５１が車幅方向外側から視認され難く、外観性への影響を抑えることができる。本実施形態において、キャリパブラケット取り付け部３８ｃ１およびキャリパ取り付け部３８ｃ２を含んでキャリパ取り付け部（シャシ部品取り付け部）３８ｃ１，３８ｃ２と称することがある。

また、補助アーム３８の車幅方向外側から車輪速センサ５１の取り付けを行う際に、後輪車軸ＡＲおよび上下キャリパ取り付け部３８ｃ１，３８ｃ２によってセンサ取り付け部６０を探しやすくなる。すなわち、後輪車軸ＡＲおよび上下キャリパ取り付け部３８ｃ１，３８ｃ２の存在に基づき、センサ取り付け部６０の位置を触感で探しやすくなる。このため、センサ小組体５３の組み付けを容易に行うことができる。
また、キャリパブラケット３２を取り付ける前にセンサ小組体５３を取り付ける工順とすれば、センサ小組体５３の取り付けをより容易にすることができる。また、センサ小組体５３の取り付け後には、センサ小組体５３の前方にキャリパブラケット３２が配置されるので、センサ小組体５３の保護性を向上させることができる。

また、補助アーム３８の後部の車幅方向内側には、センサ小組体５３を締結するセンサ締結部（締結ボス６３）の後方に隣接して位置決め部（立壁部６１）が設けられている。立壁部６１は、締結ボルトＢ２中心の回転方向（締結方向）で、センサ小組体５３（特に車輪速センサ５１）の位置決めを行う。これにより、センサ小組体５３をセンサ取り付け部６０に配置する際に、センサ小組体５３の位置決めが容易かつ正確になる。また、ボルト締結時にもセンサ小組体５３の共回りを規制する。このため、センサ小組体５３の取り付けをより容易に行うことができる。

さらに、補助アーム３８の後部の車幅方向内側には、締結ボス６３および立壁部６１から離間して第二位置決め部（突出部６２）が設けられている。突出部６２は、締結ボルトＢ２中心の回転方向（締結解除方向）で、センサ小組体５３（特に車輪速センサ５１）の位置決めを行う。これによっても、センサ小組体５３をセンサ取り付け部６０に配置する際に、センサ小組体５３の位置決めが容易かつ正確になる。また、ボルト締結解除時にもセンサ小組体５３の共回りを規制する。このため、センサ小組体５３の取り付けおよび取り外しをより容易に行うことができる。

突出部６２は、車輪速センサ５１の配線導出部５１ｄの外周に沿うように湾曲して配線導出部５１ｄに係合する凹状部６２ａを有している。これにより、センサ小組体５３の位置決めが容易かつ正確になるとともに、センサ小組体５３の共回りを規制する際にも配線導出部５１ｄへの負荷が抑えられる。

車輪速センサ５１は、樹脂製の保護カバー５２で覆われ、保護カバー５２とともに補助アーム３８に締結固定される。これにより、車輪速センサ５１の保護性が向上するとともに、保護カバー５２を車輪速センサ５１と共締め固定して取り付けおよび取り外しを容易にすることができる。

センサ小組体５３を締結する際、締結ボルトＢ２の締め込み方向ＣＷで車輪速センサ５１が共回りすると、車輪速センサ５１のホルダ部５１ｂの一側縁５１ｂ１が立壁部６１に当接する。この状態で、保護カバー５２がさらに共回りすると、保護カバー５２の保持爪部５２ｄがホルダ部５１ｂの他側縁５１ｂ２に当接して押圧する。その結果、締結ボルトＢ２の締め込み後には、車輪速センサ５１のホルダ部５１ｂは、保護カバー５２の保持爪部５２ｄと補助アーム３８の立壁部６１とに挟持される。この状態で、車輪速センサ５１が保護カバー５２とともに補助アーム３８に取り付けられるため、車輪速センサ５１の取り付け位置の精度を向上させることができる。

なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、実施形態では後輪ＷＲの車輪速センサ５１の取り付け構造に適用したが、前輪ＷＦの車輪速センサの取り付け構造に適用してもよい。この場合、車輪支持部材は補助アーム３８（スイングアーム）等の後輪支持部材に代わりフロントフォーク１１等の前輪支持部材となる。車輪支持部材は、車体フレームＦに支持されるものに限らず、車体に搭載したエンジンや変速機等に支持されるものでもよい。また、キャリパ３１がキャリパブラケット３２等を介さず車輪支持部材に直接取り付けられる構成でもよい。また、キャリパ３１の配置は車軸の前方に限らず、車軸の上下または後方に配置されてもよい。車輪速センサ５１の配置領域を規定するシャシ部品取り付け部は、キャリパ取り付け部３８ｃ１，３８ｃ２に限らず、サスペンション部品やステアリング部品の取り付け部であってもよい。

前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車（原動機付自転車及びスクータ型車両を含む）のみならず、三輪（前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む）又は四輪の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

１ 自動二輪車（鞍乗り型車両）
３８ 補助アーム（車輪支持部材）
３８ｃ１ キャリパブラケット取り付け部（シャシ部品取り付け部）
３８ｃ２ キャリパ取り付け部（シャシ部品取り付け部）
５１ 車輪速センサ
５１ｄ 配線導出部（被係合部）
５２ 保護カバー（保護部材）
５２ｄ 保持爪部（保持部）
５５ センサリング
６０ センサ取り付け部
６１ 立壁部（位置決め部）
６２ 突出部（第二位置決め部）
６２ａ 凹状部（囲繞部）
６３ 締結ボス（センサ締結部）
Ｆ 車体フレーム（車体）
ＷＲ 後輪（車輪）
ＡＲ 車軸
Ｎ 領域

Claims (4)

1. 鞍乗り型車両の車体（Ｆ）に支持され、車輪（ＷＲ）を支持する車輪支持部材（３８）と、
   前記車輪（ＷＲ）の回転速度を検出する車輪速センサ（５１）と、を備え、
   前記車輪速センサ（５１）は、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に配置され、且つ、側面視で前記車輪（ＷＲ）の車軸（ＡＲ）と前記車輪支持部材（３８）のシャシ部品取り付け部（３８ｃ１，３８ｃ２）とで囲まれる領域（Ｎ）に配置され、
   前記車輪速センサ（５１）は、保護部材（５２）で覆われ、前記保護部材（５２）とともに前記車輪支持部材（３８）に締結され、
   前記車輪速センサ（５１）は、前記保護部材（５２）に設けられた保持部（５２ｄ）と、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられた位置決め部（６１）と、に締結部中心の回転方向で挟持された状態で前記車輪支持部材（３８）に取り付けられる、鞍乗り型車両の車輪速センサ取り付け構造。
2. 前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられ、前記車輪速センサ（５１）を締結するセンサ締結部（６３）に隣接し、前記車輪速センサ（５１）の位置決めに供される位置決め部（６１）を備える、請求項１に記載の鞍乗り型車両の車輪速センサ取り付け構造。
3. 鞍乗り型車両（１）の車体（Ｆ）に支持され、車輪（ＷＲ）を支持する車輪支持部材（３８）と、
   前記車輪（ＷＲ）の回転速度を検出する車輪速センサ（５１）と、を備え、
   前記車輪速センサ（５１）は、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に配置され、且つ、側面視で前記車輪（ＷＲ）の車軸（ＡＲ）と前記車輪支持部材（３８）のシャシ部品取り付け部（３８ｃ１，３８ｃ２）とで囲まれる領域（Ｎ）に配置され、
   前記車輪速センサ（５１）は、保護部材（５２）で覆われ、前記保護部材（５２）とともに前記車輪支持部材（３８）に締結され、
   前記車輪速センサ（５１）は、前記保護部材（５２）に設けられた保持部（５２ｄ）と、前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられた位置決め部（６１）と、に挟持された状態で前記車輪支持部材（３８）に取り付けられ、
   前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられ、前記車輪速センサ（５１）を締結するセンサ締結部（６３）に隣接し、前記車輪速センサ（５１）の位置決めに供される位置決め部（６１）を備え、
   前記車輪支持部材（３８）の車幅方向内側に設けられ、前記センサ締結部（６３）および位置決め部（６１）から離間し、前記車輪速センサ（５１）の締結部中心の回転方向の位置決めに供される第二位置決め部（６２）を備える、鞍乗り型車両の車輪速センサ取り付け構造。
4. 前記第二位置決め部（６２）は、前記車輪速センサ（５１）の被係合部（５１ｄ）に係合する部位に、前記被係合部（５１ｄ）に沿うように形成された囲繞部（６２ａ）を備える、請求項３に記載の鞍乗り型車両の車輪速センサ取り付け構造。

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