JP7230623B2 - 製パン用油脂組成物および製パン用穀粉生地 - Google Patents

製パン用油脂組成物および製パン用穀粉生地 Download PDF

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Description

本発明は、製パンに使用し、作業性が良好で、十分なボリューム、腰持ちが得られ、かつ歯切れの良いパンが得られる製パン用油脂組成物に関する。
近年、多種多様なパン類が製造され、店頭に陳列されている。その中で、十分なボリュームがあり、縦に膨らんだ腰持ちが良好なパン類は、外観がよく、消費者の購買意欲をかきたてる要因となっている。また、食感においては、歯切れよく食べやすい食感が好まれる傾向にある。
これらパン類は、いずれも自動化された製造ラインにて製造されることが多く、パン生地がべたついたり、反対に締まったりすると製造ライン中にある分割機に生地が付着したり、成型機にて生地が千切れたりするなど作業性が低下するため、作業性が低下しないことを前提として、ボリューム、腰持ちが良好であり、歯切れ良い食感のパン類の製造が望まれている。
パン類のボリュームを向上させる方法として例えば、ペクチンや小麦活性グルテンを使用する方法(特許文献1)や、アスコルビン酸類やアミノ酸またはその塩を使用する方法(特許文献2)などが開示されている。しかしこれらの従来の技術ではパン類のボリュームは大きくなるが、腰持ち、歯切れが十分ではなく、パン品質として十分に満足いくものではなかった。
パン類の外観を向上させる方法として、アスパラギン酸プロテアーゼに属するプロテアーゼであるレンネットとアスコルビン酸をパン生地に混合する方法(特許文献3)が開示されているが、ボリュームと腰持ちは得られるが、歯切れが満足のいくものではなかった。
パン類の歯切れを向上させる方法として、糖質、澱粉またはセルロース、蛋白質および増粘剤を活用する方法(特許文献4)や、加工澱粉を活用する方法(特許文献5)が開示されているが、いずれもボリュームに欠けることから、パン品質として十分に満足いくものではなかった。
さらに、パン生地の歯切れの低下に対して、グリセリンモノ脂肪酸エステルやジグリセリンモノ脂肪酸エステル、コハク酸モノグリセリド等の乳化剤を組み合わせることによって改善を図る方法(特許文献6、7)が開示されているが、歯切れの低下を抑制することでボリュームおよび腰持ちが低減するなどの弊害があった。
以上のように、製造時の作業性が良好で、十分なボリュームおよび腰持ちを得ながら歯切れの良いパンが得られるとの問題は未だ解決されていない。
特開平8-173013号公報 特開平5-49384号公報 特開2010-81858号公報 特開平10-234290号公報 特開平9-271313号公報 特開2009-39070号公報 特開2016-77240号公報
本発明は、製造時の作業性が良好で、製パン後に、十分なボリューム、腰持ちが得られ、かつ歯切れの良いパンが得られる製パン用油脂組成物を提供することを目的とする。
発明者は鋭意検討を重ねた結果、食用油脂にL-シスチンを添加し、さらに、酵素成分としてプロテアーゼ、及びα-アミラーゼを組み合わせることによって上記課題を解決するとの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の製パン用油脂組成物、製パン用穀粉生地である。
〔1〕
(A)食用油脂中に、(B)L-シスチン、(C)プロテアーゼ及び(D)α-アミラーゼを含有し、(A)食用油脂100質量部に対して、(B)L-シスチンを0.01~1質量部、(C)プロテアーゼを活性量50000u/g基準で0.02~0.1質量部、(D)α-アミラーゼを活性量1500u/g基準で0.066~2質量部含有する製パン用油脂組成物。
〔2〕
(C)プロテアーゼと(D)α-アミラーゼの活性量の比率((C):(D))が、1:0.1~0.8である〔1〕記載の製パン用油脂組成物。
〔3〕
さらに、(E)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを食用油脂100質量部に対して0.1~5質量部含有する、〔1〕又は〔2〕記載の製パン用油脂組成物。
〔4〕
穀粉100質量部に対して、〔1〕、〔2〕又は〔3〕のいずれか1項に記載の製パン用油脂組成物を0.5~20質量部含有する製パン用穀粉生地。
本発明により、作業性が良好で、製パン後に、十分なボリューム、腰持ちが得られ、かつ歯切れの良いパンが得られる製パン用油脂組成物を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔製パン用油脂組成物〕
本発明の製パン用油脂組成物は、(A)食用油脂、(B)L-シスチン、(C)プロテアーゼ、(D)α-アミラーゼを含有することを特徴とする。なお、本発明の製パン用油脂組成物はショートニングまたはマーガリンのような乳化物のいずれの形態においても、生地に練り合わせることで、その効果を製パン後に発揮することができる。
(A)食用油脂
食用油脂としては、食用に適する油脂が使用でき、具体的には、牛脂、豚脂、魚油、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、コーン油等の天然の動植物油脂、及びこれらの硬化油、極度硬化油、エステル交換油等が挙げられ、これらを目的に応じて適宜選択され、1種類又は2種類以上組み合わせて用いられる。L-シスチン、プロテアーゼ、α-アミラーゼを食油中に含有することで、食用油脂を媒体としてパン生地中にこれら素材は均一に分散することができ、効果を十分に発揮することができる。反対に、これら素材を食用油脂に含有させず、パン生地にそれぞれ単体で添加した場合は、本発明の効果を得ることは期待できない。
(B)L-シスチン
本発明において使用されるL-シスチンは、アミノ酸の1種であり、2つのシステイン分子がジスルフィド結合によって繋がった構造を有することを特徴とする。本発明において使用できるL-シスチンはその形態や由来に限定されないが、L-シスチンの粒度は細かい方が、パン生地中に含まれるグルテン内部へ作用し、グルテンと結合することでグルテンを補強し、パンのボリュームが向上する。一般的にボリュームが向上したパンは、焼成後下に縮みやすく、横に広がった形状の、いわゆる腰持ちが低下したパンになるが、L-シスチンのグルテン補強効果により腰持ちが低下せず、結果としてパンのボリュームと腰持ちが良好になる。ボリュームを向上させるために、グルコースオキシダーゼやアスコルビン酸等の酸化剤を使用した際には、多量に使用した場合など、パン生地が過度に引き締まることが知られているが、L-シスチンを用いた際にはパン生地が過度に引き締まることなくパンのボリュームと腰持ちが良好なパンを得ることができる。
L-シスチンの粒度は、特に制限されないが、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。粒度を小さくすることにより、食用油脂中の分散性に優れるため、パン生地中においてL-シスチンのグルテン補強効果をより安定的に発揮することができ、パンのボリュームと腰持ちが良好になる。
L-シスチンの含有量は、食用油脂100質量部に対し0.01~1質量部であり、より好ましくは0.03~0.5質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.3質量部である。0.01質量部未満であるとパンのボリュームと腰持ち効果が得られ難く、1質量部を超えるとパンの歯切れが低下してしまうおそれがある。
L-シスチンは、市販されており、例えば(株)トープロの「L-シスチン」等が例示できる。
L-シスチンの使用はパンのボリュームと腰持ちを良好にすることができるが、本発明は、さらに、特定種の酵素(プロテアーゼ及びα-アミラーゼ)を製パン時に働かせることにより、本発明の効果を相乗的に発揮させることができる。
(C)プロテアーゼ
本発明に使用されるプロテアーゼは、パン生地に含まれるグルテンを適度に分解するため、パンのボリュームを向上し、歯切れの良好なパンを得ることができるという作用がある。本発明において使用されるプロテアーゼの至適pHは、特に制限されないが、塩基性、中性、酸性のものがあり、本発明に使用されるプロテアーゼは、そのうち至適pH2~4の酸性域であることが好ましい。
製パン工程では、前期(分割時)および中期段階(成型時)では、中性~塩基性であり、後期段階(ホイロ時)では、酸性となる。酸性域でプロテアーゼの活性が高まることで、製パン工程の後期段階(ホイロ時)にグルテンを適度に分解するため、前期から中期段階で過度な分解を生じず、作業性に影響を及ぼさないという効果がある。
なお、プロテアーゼはエンド型、エキソ型、エンド・エキソ混合型があり、いずれを選択しても良いが好ましくはエンド型を使用する。
プロテアーゼの含有量は、食用油脂100質量部に対して活性量50000u/g基準で0.02~0.1質量部であり、より好ましくは0.02~0.06質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.04質量部である。0.02質量部未満であると十分な歯切れやボリューム向上効果が得難く、0.1質量部を超えるとパン生地がべたつくことにより作業性が低下し、横に広がった形状の、いわゆる腰持ちが低下したパンになるおそれがある。
なお、例えば、食用油脂100質量部に対して活性量50000u/g基準で0.02~0.1質量部との意味は、食用油脂100gに対して活性量1000u(ユニット)~5000u(ユニット)に換算することができるものである。
本発明において使用されるプロテアーゼは、例えばナガセケムテックス(株)の「デナプシン2P」、新日本化学工業(株)の「スミチームAP」等が例示できる。なお、上記酵素の名称はいずれも商品名である。
(D)α-アミラーゼ
本発明において使用されるα-アミラーゼは、至適温度が45~80℃であることが好ましい。より好ましくは、50~70℃である。α-アミラーゼとは、α-1,4-グルコシド結合を加水分解することによってデキストリンを生成する酵素であり、Bacillus等の細菌由来、Malt等の穀物由来、及びAspergillus等のカビ由来のいずれも用いることができる。α-アミラーゼは、パン生地に含まれる澱粉のα-1,4-グルコシド結合を加水分解し、焼成中のパン生地の粘度を適度に低下する。これにより、グルテンの伸びが適度に向上し、パンのボリューム向上効果が得られる。
至適温度が45℃以上であると焼成前の低温度のホイロ工程等で酵素による加水分解が進みすぎず、パン生地のベタツキを抑え、作業性を向上する効果がある。また、焼成時の80℃を超える温度では、パン生地中のグルテンが変性して、パン骨格形成が起こる。そのため、80℃を超える温度では、パンのボリューム向上効果が低下する。至適温度が80℃以下のα-アミラーゼを使用すると、グルテンの変性が生じる前にα-アミラーゼの作用によりパンのボリュームを向上することができるという効果を奏する。
さらに、酵素の失活温度が60~100℃であることが好ましい。より好ましくは、70~90℃である。失活温度が60℃以上であると、焼成時の昇温時に酵素がパン生地に作用できる時間が長くなり、ボリューム向上効果をより発揮する。また、失活温度が100℃以下の場合、焼成後のパンに酵素活性が残らず、パンの保管中に酵素の働きでパンの形状が崩壊することを防止することができる。
α-アミラーゼの含有量は、食用油脂100質量部に対して活性量1500u/g基準で0.066~2質量部であり、より好ましくは0.1~1.333質量部であり、さらに好ましくは0.1~0.666質量部である。0.066質量部未満であるとボリューム向上効果が得られないおそれがあり、2質量部を超えると30℃前後の作業温度域におけるわずかな酵素活性であってもα-1,4-グルコシド結合を過剰に加水分解してしまう。これにより、生地がべたつき、作業性の低下が生じ、さらに焼成中のパン生地粘度が過度に低下することで、横に広がった形状の、いわゆる腰持ちが低下したパンになるおそれがある。なお、食用油脂100gに対して酵素活性量への換算は、プロテアーゼの場合と同じである。
本発明において使用されるα-アミラーゼとして例えばノボザイムジャパン(株)製の「Fungamyl」、「Novamyl-3D」、「Opticake Fresh 50B」および新日本化学工業「スミチームL」等が例示できる。なお、上記酵素の名称はいずれも商品名である。
本発明において、プロテアーゼとα-アミラーゼの活性量の比率((C)プロテアーゼ:(D)α-アミラーゼ)は、1:0.1~0.8であり、より好ましくは1:0.1~0.5である。活性量の比率(プロテアーゼを1とした際のα-アミラーゼの活性量)が0.1未満であるとボリューム向上効果が低下しやすくなる。0.8を超えるとボリュームは向上するが、横に広がった形状の、いわゆる腰持ちが低下したパンになるおそれがある。
(E)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル
本発明の製パン用油脂組成物に、さらに、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを含有することで、本発明の製パン用油脂組成物の使用する効果を高めることができる。
本発明に使用されるプロピレングリコールモノ脂肪酸エステルは、構成脂肪酸として特に制限されるものではないが、好ましくは炭素数16~24の脂肪酸である。プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルは食用油脂の油脂結晶を細かくし、本願の油脂組成物をパン生地に均一分散させることができる。その結果、食用油脂に含まれる、L-シスチンプロテアーゼおよびα-アミラーゼの効果が十分に発揮されることになる。
プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルの含有量は、食用油脂100質量部に対し0.1~5質量部であり、好ましくは0.3~4質量部であり、さらに好ましくは0.5~2質量部である。0.1質量部以上であると、油脂結晶を細かくする効果が十分に働き、本発明の油脂組成物のパン生地への分散性を向上し、L-シスチン、プロテアーゼおよびα-アミラーゼの効果を十分に発揮するという効果を奏する。5質量部以下であると、油脂結晶を細かくする作用が強くなりすぎず、適度な可塑性を有する。そのため、本発明の油脂組成物とパン生地との混合性が高まり、L-シスチン、プロテアーゼおよびα-アミラーゼの効果を十分に発揮するという効果を奏する。
本発明における製パン用油脂組成物には、パン生地の伸展性や風味、パンの外観等を損なわない限りにおいて、加工澱粉、その他酵素、乳化剤、保存料、pH調整剤、色素、香料等を適宜使用してもよい。
本発明における製パン用油脂組成物の製法は、通常のマーガリン、ショートニングの製造方法において、プロテアーゼおよびα-アミラーゼを失活しない温度で添加すればよい。例えば以下の製法が挙げられる。
まず油脂および油溶成分を80℃で加熱し、均一溶解後、70~75℃にて殺菌した水および水に十分に溶解、殺菌した水溶成分を添加し、50~55℃まで降温する。次に、プロペラ撹拌にて均一に混合撹拌後、酵素(プロテアーゼおよびα-アミラーゼ)を添加し、試作機を用いて急冷可塑化し、30℃以下まで冷却することにより、目的の製パン用油脂組成物を得る。上記製造において、高温状態にある均一混合物を冷却する際には均一混合物を入れている容器自身を外部から冷却しても良いが、一般的にショートニング、マーガリン製造に用いられるチラー、ボテーター、コンビネーター等を用いて急冷する方が性能上好ましい。
〔製パン用穀粉生地〕
本発明の製パン用穀粉生地は、穀粉と本発明の製パン用油脂組成物を含有するものである。本発明の製パン用油脂組成物の含有量は、穀粉100質量部に対して、0.5~20質量部、好ましくは2~10質量部である。製パン用油脂組成物の含有量をこの範囲とすることによって、作業性が良好で、十分なボリューム、腰持ちを得られ、かつ歯切れの良いパンが得られる。
穀粉は、特に制限されないが、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉等が挙げられる。
本発明の製パン用穀粉生地を焼成して得られるパン類には、フィリングなどの詰め物をしたパン類も含まれ、食パン、特殊パン、調理パン、菓子パンなどが挙げられる。具体的には食パンとして白パン、黒パン、フランスパン、バラエティブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロール)が挙げられる。特殊パンとしてはマフィンなど、調理パンとしてはホットドック、ハンバーガーなど、菓子パンとしてはジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパンなどが挙げられる。
本発明の製パン用穀粉生地に用いる原料としては、主原料の穀粉として小麦粉の他にイースト、イーストフード、乳化剤、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等)、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー等が挙げられる。さらに一般に原料として用いると老化しやすくなる、レーズン等の乾燥果実、小麦粉ふすま、全粒粉等を使用できる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。また、測定方法等を記載する。
(1)L-シスチンの粒度測定
L-シスチンの粒度はレーザー回折式粒度分布測定器(SALD-2100:(株)島津製作所製)を用いて測定した。
(2)プロテアーゼ活性測定方法
プロテアーゼの活性量は、0.6%ミルクカゼイン(pH3.0、1/10M燐酸緩衝液)5mlに1mlの酵素液を加えて、30℃、10分間反応させ、酵素分解により生じたペプチド及びアミノ酸(可溶性成分)をフォリン-チオカルト試薬で発色させることにより求めた。なお、可溶性成分は、遠心分離することにより不溶性成分と分離し測定した。エンドプロテアーゼの活性量は、1μgのチロジンに相当する量を1ユニット(u)とし、反応時間1分間あたりに生じた可溶性成分についてユニット数を算出し、更に酵素量あたりのユニット数(u/g)として算出した。
(3)プロテアーゼの至適pHの測定
プロテアーゼの至適pHは、上記(2)の活性測定方法にて、ミルクカゼインを含む燐酸緩衝液のpHを変えて測定した。最大活性量を示したpHが至適pHである。
(4)α-アミラーゼ活性測定方法
下記の(4-1)~(4-3)の手順にて測定した。
(4-1)サンプル吸光度の測定:5mlの緩衝液(Britton-Robinson Buffer、pH8.5、50mM(阿南功一ら著,「基礎生化学実験法6」,P277,丸善(株))に、ネオ.アミラーゼテスト「第一」〔第一化学薬品(株)より入手、製品番号701501-005〕を1錠添加し、約10秒間撹拌した後、2mM塩化カルシウム水溶液で希釈した1mlの酵素溶液を添加して、50℃にて15分間反応させる。1mlの0.5N水酸化ナトリウム水溶液を添加、撹拌することで反応を停止させた後、遠心分離(400×g、5分間)にて不溶成分を沈殿させ、得られた遠心上澄の620nmにおける吸光度を測定する。
(4-2)ブランク吸光度の測定:5mlの緩衝液(Britton-Robinson Buffer、pH8.5、50mM(阿南功一ら著,「基礎生化学実験法6」,P277,丸善(株))にネオ.アミラーゼテスト「第一」を1錠添加し、約10秒間撹拌する。これに1mlの0.5N水酸化ナトリウム水溶液を添加、撹拌した後、1mlの酵素溶液を添加し、50℃にて15分間インキュベートした後、遠心分離(400×g、5分間)にて不溶成分を沈殿させ、得られた遠心上澄の620nmにおける吸光度を測定する。
(4-3)酵素活性の算出:ネオ.アミラーゼテスト「第一」同封の国際単位の検量線を基準とし、これに(4-1)と(4-2)の吸光度の差をあてはめることでアミラーゼの活性を算出した。
(酵素の至適温度の測定)
酵素の至適温度は、酵素を水に溶解し、5℃ずつ温度を変えて上記(4)の方法で活性を測定し、最も活性の高い温度を求めた。
(実施例1)
表1の配合組成で以下の方法により製パン用油脂組成物を製造した。すなわち、パーム硬化油(融点42℃)5kg、パーム油30kg、菜種硬化油35kg(融点36℃)、および菜種油30kg、L-シスチン(粒度29μm)100g、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル1kg配合し80℃にて加熱したのち、50~55℃に降温し、プロテアーゼ30g、α-アミラーゼ300gを添加後、プロペラ撹拌にて十分に撹拌を行い、ついでショートニング試作機を用いて急冷練り上げすることで製パン用油脂組成物を得た。なお、酵素の活性量は表1~2に示す通りである。
表1及び表2に記した製パン用油脂組成物を使用して、以下の製造方法によりパンを製造し、作業性、ボリューム、腰持ち、歯切れを評価した。これらの評価結果は各表の下部に示す。
(パンの製造方法)
〔中種生地調整〕
強力粉700g、イーストフード0.1g、イースト3g、水420をミキサーボウルに投入し、低速2分中速2分捏ね上げ、捏ね上げ温度26℃の中種生地を28℃で2時間発酵させた。
〔本捏生地調整〕
発酵させた中種生地をミキサーボウルに投入し、さらに強力粉300g、上白糖140g、脱脂粉乳20g、食塩16g、水240gを投入し低速3分、中速5分捏ね上げ、ここで練り込み用油脂として実施例1~14および比較例1~8において得られた組成物を70g投入し、さらに低速3分、中速4分捏ね上げ、捏ね上げ温度28℃の生地を得た。フロアタイム30分取った後、50gに分割し、次いでベンチタイム30分取った後、モルダーを通してコッペパン形に成型した。鉄板に並べた生地を温度38℃、湿度85%のホイロに50分入れて最終発酵を行った。最終発酵後、上火205℃、下火205℃のオーブンに入れ8分焼成した。焼成後、室温にて20分放冷し袋に入れた。
評価項目としては、生地の作業性、ボリューム、腰持ち、歯切れの4つを評価項目として設けた。それぞれの評価項目について、評価方法を下記に記す。なお、各評価項目は、機能性の添加物を配合していない比較例1の製パン用油脂組成物を基準として、各実施例及び各比較例を比較した。
〔作業性の評価方法〕
比較例1の製パン用油脂組成物を使用したパン生地の状態を通常の良好な生地状態であるとし「◎」とした。そして基準と比較して、生地がかなりべたついた場合、もしくはかなりしまる場合を「×」、生地がややべたついた場合、もしくはややしまる場合を「△」、生地がわずかにべたつく場合、もしくはわずかにしまる場合を「○」として評価を行った。「◎」および「○」の評価を合格とした。
〔ボリュームの評価方法〕
焼成後1日目のパンの比容積を測定し、ボリューム評価の指標とした。パンの比容積は、アステックス(株)製3Dレーザー体積計を用いて測定した。比較例1を使用した場合と比較して、比容積が1.08倍以上の場合を「◎」、1.04倍以上1.08倍未満の場合を「○」、1.0倍以上1.04倍未満の場合を「△」、1.0倍未満を「×」として評価を行った。「◎」および「○」の評価を合格とした。
〔腰持ちの評価方法〕
アステックス(株)製3Dレーザー体積計を用いて焼成後1日目のパンの腰持ちを測定した。腰持ちは、パンの最大高をH、パンの短辺の横幅をWとした際に下記の(式1)にて表される値である。
腰持ち=H/W(式1)
比較例1を使用した場合と比較して、腰持ちが1.05倍以上の場合を「◎」、1.02倍以上1.05倍未満の場合を「○」、1.0倍以上1.02倍未満の場合を「△」、1.0倍未満を「×」として評価を行った。「◎」および「○」の評価を合格とした。
〔歯切れの評価方法〕
(株)山電製「RHEONERII」を用いて焼成後1日目のパンの歯切れを測定した。パンを3cmの輪切りにし、測定台に置き、刃型プランジャーにて5mm/secで圧縮し刃が貫通するのに必要な破断荷重値を測定した。比較例1を使用した場合の破断荷重値を100として、破断荷重値(相対値)が80未満の場合を「◎」、80以上90未満の場合を「○」、90以上100未満の場合を「△」、100以上の場合を「×」として評価を行った。「◎」および「○」の評価を合格とした。
Figure 0007230623000001
Figure 0007230623000002
表1及び表2において酵素及び乳化剤は以下を使用した。
〔使用酵素〕
#1:(商品名)「スミチームAP」(プロテアーゼ) 新日本化学工業(株)製、至適pH3、活性量50000u/g
#2:(商品名)「デナプシン2P」(プロテアーゼ) ナガセケムテックス(株)製、至適pH3、活性量20000u/g
#3:(商品名)「Novamyl-3D」(マルトース生成α-アミラーゼ) ノボザイムジャパン(株)製、至適温度70℃、活性量1500u/g、失活温度85℃
#4:(商品名)「Fungamyl」(α-アミラーゼ) ノボザイムジャパン(株)製、至適温度55℃、活性量15000u/g、失活温度70℃
〔使用乳化剤〕
#5:(商品名)「エマルジーMS」(モノグリセリンモノ脂肪酸エステル)理研ビタミン(株)
#6:(商品名)「リケマールPB100」(プロピレングリコールモノベヘン酸エステル)理研ビタミン(株)
#7:(商品)「リケマールPS100」(プロピレングリコールモノステアリン酸エステル)理研ビタミン(株)
#8:(商品名)「サンソフト818H」(ポリグリセリン縮合リシノレート)太陽化学(株)
表1、2の結果より、(B)L-シスチン、(C)プロテアーゼ、(D)マルトース生成α-アミラーゼの配合量が本発明の範囲を満たさない場合(比較例1~8)、ボリューム、腰持ちおよび歯切れの全てを満たすことができず、(C)プロテアーゼの配合量が多い場合(比較例5)、パン生地がべたつき作業性が低下することが分かる。



Claims (3)

  1. (A)食用油脂中に、(B)L-シスチン、(C)プロテアーゼ(D)α-アミラーゼ及び(E)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを含有し、(A)食用油脂100質量部に対して、(B)L-シスチンを0.01~1質量部、(C)プロテアーゼを活性量50000u/g基準で0.02~0.04質量部、(D)α-アミラーゼを活性量1500u/g基準で0.066~2質量部、(E)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを0.1~2質量部含有する製パン用油脂組成物(但し、L-アスコルビン酸及び増粘剤のいずれも含まない。)
  2. (C)プロテアーゼと(D)α-アミラーゼの活性量の比率((C):(D))が、1:0.1~0.8である請求項1記載の製パン用油脂組成物。
  3. 穀粉100質量部に対して、請求項1又は2に記載の製パン用油脂組成物を0.5~20質量部含有する製パン用穀粉生地(但し、冷凍パン生地を含まない。)
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