JP7215380B2 - 車両の変速制御装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両のエンジンと駆動輪との間に設けられた有段式自動変速機の変速制御に関するものである。

エンジンと駆動輪との間に設けられた有段式自動変速機を備えた車両において、有段式自動変速機の変速段を制御するために予め設定された変速パターンすなわち変速線図が用いられている。この変速パターンは、車両の燃費性能、車両の加速走行性能、車両のノイズおよび振動（ＮＶ）性能などを、多数のユーザが受け入れ可能となるようにバランス（均衡）させる変速制御となるように決定されている。すなわち、この変速パターンには、例えば上記３つの性能のうちの１つの性能に関して車両が本来実現可能なその性能を出し切るような変速特性を折り込むことができない。

これに対して、搭乗者たとえば運転者が、有段式自動変速機の変速タイミングを個人的に評価し、評価結果に応じて変速線図の車速や傾きを変更することを可能とする変速制御装置が提案されている。例えば、特許文献１に記載の変速制御装置がそれである。

特開平０２－００３７５６号公報

ところで、特許文献１では、有段式自動変速機の変速タイミングに関する搭乗者の評価に基づいて、その評価が反映されるように有段式自動変速機の変速タイミングを変更することができる。しかし、搭乗者が車両の燃費性能、車両の加速走行性能、車両のノイズおよび振動（ＮＶ）性能のいずれを重視した志向を有しているのかが反映されておらず、上記変速特性の変更が搭乗者の意図よりも過大な変更或いは過少な変更となるおそれがあった。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、搭乗者の志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性を変更することができる車両の変速制御装置を提供することにある。

上記目的を達成するための、第１発明の要旨とするところは、（ａ）予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、（ｂ）前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、（ｃ）前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、（ｄ）前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、（ｅ）前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域の少なくとも一方における過去の変更と比較して同方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくすることにある。
第２発明の要旨とするところは、（ａ）予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、（ｂ）前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、（ｃ）前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、（ｄ）前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、（ｅ）前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域の少なくとも一方における過去の判断履歴と比較して最も多い方向の判断履歴と同方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくすることにある。
第３発明の要旨とするところは、（ａ）予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、（ｂ）前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、（ｃ）前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、（ｄ）前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、（ｅ）前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を、前記変更対象領域における過去の変更履歴がない場合は、前記変更対象領域の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも大きくすることにある。

第４発明の要旨とするところは、第１発明から第３発明のいずれか１の発明において、前記評価対象物は、前記車両に搭載されたエンジン、前記有段式自動変速機、前記車両のうちの少なくとも１つであり、前記官能評価は、前記エンジンの回転速度、エンジン音、前記有段式自動変速機の変速タイミング、前記車両の加速、前記車両内の騒音、および、前記車両内の振動のうちの少なくとも１つに関するものであることにある。

第５発明の要旨とするところは、第１発明から第３発明のいずれか１の発明において、前記変速特性変更部は、前記搭乗者の前記官能評価がよくなるように、前記変速パターンの回転方向およびトルク方向のうちの少なくとも一方を変更することにある。

第６発明の要旨とするところは、第１発明から第３発明のいずれか１の発明において、前記変速特性変更部は、実際の走行を反映する走行領域が前記変更対象領域から離れたときに、或いは、停車中に、前記変更対象領域における変更を実行することにある。

第１発明～第３発明の車両の変速制御装置によれば、（ａ）予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、（ｂ）前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、（ｃ）前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向を決定する評価傾向決定部と、（ｄ）前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを含む。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第４発明の車両の変速制御装置によれば、記評価対象物は、前記車両に搭載されたエンジン、前記有段式自動変速機、前記車両のうちの少なくとも１つであり、前記官能評価は、前記エンジンの回転速度、エンジン音、前記有段式自動変速機の変速タイミング、前記車両の加速、前記車両内の騒音、および、前記車両内の振動のうちの少なくとも１つに関するものである。これにより、前記エンジンの回転速度、エンジン音、前記有段式自動変速機の変速タイミング、前記車両の加速、前記車両内の騒音、および、前記車両内の振動のうちの少なくとも１つに関して、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第５発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、前記搭乗者の前記官能評価がよくなるように、前記変速パターンの回転方向およびトルク方向のうちの少なくとも一方を変更する。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第１発明～第３発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定する。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第１発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域における過去の変更と比較して同方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくする。これにより、前記変速パターンの変更対象領域における変化量が変更されるので、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第２発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴と比較して最も多い方向の判断履歴と同じ方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくする。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第３発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を、前記変更対象領域における過去の変更履歴がない場合は、前記変更対象領域の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも大きくする。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように有段式自動変速機の変速特性が変更される。

第６発明の車両の変速制御装置によれば、前記変速特性変更部は、実際の走行を反映する走行領域が前記変更対象領域から離れたときに、或いは、停車中に、前記変更対象領域における変更を実行する。これにより、変速パターンの変更対象領域における変更が車両の走行に影響しない。

本発明が適用された、有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置およびそれを制御する電子制御装置の一例を説明する概略構成図である。 図１の有段式自動変速機の構成の一例を説明する骨子図である。 図１の有段式自動変速機において、上記各ギヤ段を成立させる際の摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。 図１の有段式自動変速機の変速を制御する変速線図である。 図１の電子制御装置の通信装置とコード信号により紐付けられたスマートホン を用いて、自動変速機の有段変速に起因して車両に発生した現象についての搭乗者の官能評価を入力する場合の一例を説明をする図である。 図１の電子制御装置において、評価傾向決定部により、官能評価に基づいて搭乗者が不満に感じる評価対象物の現象についての官能評価の重視傾向が決定される複数の具体例と、その重視傾向に対応する変速線の変更方向と、を示す図表である。 図１の電子制御装置において、変速特性変更部により変速特性が回転方向に所定量変更された例を模式的に示す図である。 図１の電子制御装置において、変速特性変更制御が起動されたタイミングにおける走行領域を変速パターンの変更対象領域とすることを説明する図である。 図１の電子制御装置において、変速特性変更部による変速特性変化量の決定方法を説明する図である。 図１の電子制御装置において、変速特性変更部による変速特性変更を実行する領域を説明する図である。 図１の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。 図１の電子制御装置における変速特性の変化量決定作動を詳しく説明するフローチャートである。

以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。

図１は、本発明が適用された駆動装置１２を有する車両１０の一例を説明する概略図である。図１に示すように、エンジン１４、トルクコンバータ１６、および遊星歯車型有段式の自動変速機１８を含んで駆動装置１２が構成されており、エンジン１４の出力は、トルクコンバータ１６、自動変速機１８、差動歯車装置２０、および左右の車軸２２を経て駆動輪２４へ伝達される。駆動力源であるエンジン１４は、燃料の燃焼で動力を発生するガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関に相当し、トルクコンバータ１６は流体式伝動装置に相当する。

図２は、エンジン１４、トルクコンバータ１６、および自動変速機１８の骨子図であり、エンジン１４とトルクコンバータ１６との間にはダンパ２６が配設されている。ダンパ２６は、エンジン１４のトルク変動を吸収したりねじり振動を吸収したりするもので、ダンパ２６の軸心まわりに配設された複数の圧縮コイルスプリング２８を備えて構成されている。

トルクコンバータ１６は、ポンプ翼車１６ｐおよびタービン翼車１６ｔを有し、エンジン１４からダンパ２６を介して伝達された動力を、流体を介してタービン軸３４に出力するとともに、エンジン１４の動力を流体を介することなくタービン軸３４に直接伝達するロックアップクラッチ３６を備えている。ロックアップクラッチ３６は、自動変速機１８内に設けられた油圧制御回路４２のソレノイド弁ＳＬによってオンオフ切換され、リニアソレノイド弁ＳＬＵによってスリップ制御されるようになっている。

自動変速機１８は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース５０内において、シングルピニオン型の第１遊星歯車装置５２を有する第１変速部５４と、ダブルピニオン型の第２遊星歯車装置５６およびシングルピニオン型の第３遊星歯車装置５８を有してラビニヨ型に構成されている第２変速部６０とを共通の軸心上に有し、タービン軸３４の回転を変速して出力回転部材６２から出力する。タービン軸３４は、自動変速機１８の入力部材に相当する。また、出力回転部材６２は自動変速機１８の出力部材に相当するもので、本実施例では図１に示す差動歯車装置２０のドリブンギヤ（大径歯車）６４と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤである。なお、この自動変速機１８およびトルクコンバータ１６は、中心線（軸心）に対して略対称的に構成されており、図２の骨子図においてはその中心線の下半分が省略されている。

自動変速機１８は、２つのクラッチＣ１、Ｃ２、３つのブレーキＢ１～Ｂ３（以下、特に区別しない場合は単にクラッチＣ、ブレーキＢという）、および、一方向クラッチＦ１を備えており、それ等のクラッチＣおよびブレーキＢがそれぞれ係合、開放されることにより、第１変速部５４および第２変速部６０の各回転要素（サンギヤＳ１～Ｓ３、キャリアＣＡ１～ＣＡ３、リングギヤＲ１～Ｒ３）の連結状態が変更されて、第１速ギヤ段「１ｓｔ」～第６速ギヤ段「６ｔｈ」の６つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、後進ギヤ段「Ｒｅｖ」が成立させられる。

クラッチＣおよびブレーキＢは、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式の摩擦係合装置で、油圧制御回路４２のリニアソレノイド弁ＳＬ１～ＳＬ５によってそれぞれ係合、開放状態が切り換えられるとともに、係合、開放時の過渡油圧などが制御される。図３は、上記各ギヤ段を成立させる際の摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表で、「○」は係合、空欄は開放、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、「△」は駆動時のみ作動を意味している。

図３において、前進ギヤ段では、クラッチＣ１と一方向クラッチＦ１又はブレーキＢ２との係合により第１速ギヤ段「１ｓｔ」が、クラッチＣ１とブレーキＢ１との係合により第２速ギヤ段「２ｎｄ」が、クラッチＣ１とブレーキＢ３との係合により第３速ギヤ段「３ｒｄ」が、クラッチＣ１とクラッチＣ２との係合により第４速ギヤ段「４ｔｈ」が、クラッチＣ２とブレーキＢ３との係合により第５速ギヤ段「５ｔｈ」が、クラッチＣ２とブレーキＢ１との係合により第６速ギヤ段「６ｔｈ」が、それぞれ成立させられる。また、ブレーキＢ２とブレーキＢ３との係合により後進ギヤ段「Ｒｅｖ」が成立させられ、クラッチＣ１、Ｃ２、ブレーキＢ１～Ｂ３が何れも開放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル「Ｎ」が成立させられる。上記各ギヤ段の変速比γ（＝タービン軸３４の入力回転速度Ｎｔ／出力回転部材６２の出力回転速度Ｎｏｕｔ）は、第１遊星歯車装置５２、第２遊星歯車装置５６、および第３遊星歯車装置５８の各ギヤ比（＝サンギヤの歯数／リングギヤの歯数）ρ１、ρ２、ρ３に応じて定められ、第１速ギヤ段「１ｓｔ」の変速比γが最も大きく、高速側（第６速ギヤ段「６ｔｈ」側）程小さくなる。

このような駆動装置１２は、図１に示すように電子制御装置８０（本発明の変速制御装置に対応）を備えている。電子制御装置８０は、ＣＰＵ、ＲＡＭ、ＲＯＭ、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、ＣＰＵはＲＡＭの一時記憶機能を利用しつつ予めＲＯＭに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン１４の出力制御や、自動変速機１８の変速制御、ロックアップクラッチ３６のＯＮ・ＯＦＦ制御等を実行するようになっている。この電子制御装置８０は、必要に応じてエンジン制御用や、変速制御用などに分けて構成される。

上記電子制御装置８０には、アクセル開度センサ６６により検出されたアクセルペダル６８の操作量であるアクセル開度Ａｃｃを表すアクセル操作量信号、エンジン回転速度センサ７０により検出されたエンジン１４の回転速度であるエンジン回転速度Ｎｅを表す信号、冷却水温センサ７２により検出されたエンジン１４の冷却水温ＴＨｗを表す信号、スロットル弁開度センサ７４により検出された電子スロットル弁の開度θｔｈを表すスロットル弁開度信号、タービン回転速度センサ７６により検出されたタービン軸３４の回転速度である入力回転速度Ｎｔを表す信号、車速センサ７８により検出された出力回転部材６２の出力回転速度Ｎｏｕｔすなわち車速Ｖに対応する車速信号などが、それぞれ供給される。

また、電子制御装置８０からは、電子スロットル弁の開度θｔｈを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、エンジン１４の点火時期を指令する点火信号、エンジン１４の吸気管又は筒内に燃料を供給し或いは停止する燃料噴射装置によるエンジン１４への燃料供給量を制御する燃料供給量信号などのエンジン制御信号Ｓｅが出力されるとともに、エンジン１４を始動する際にはエンジン１４をクランキングするためのモータ駆動信号Ｓｍがスタータモータ３０に出力される。また、自動変速機１８のギヤ段（ニュートラル「Ｎ」を含む）を切り換えるために油圧制御回路４２内のリニアソレノイド弁ＳＬ１～ＳＬ５を制御する変速制御信号Ｓｃ、ロックアップクラッチ３６のＯＮ、ＯＦＦやスリップ量ΔＮを制御するソレノイド弁ＳＬおよびリニアソレノイド弁ＳＬＵを駆動するためのロックアップ制御信号Ｓｐなどが出力される。

上記電子制御装置８０は、エンジン出力制御部８２、変速制御部８４、通信装置８６、官能評価入力部８８、評価傾向決定部９０、および、変速特性変更部９２等を機能的に含んで構成されている。エンジン出力制御部８２（エンジン出力制御手段）は、アクセル開度Ａｃｃが増加する程エンジン出力が増大するように、スロットルアクチュエータにより電子スロットル弁をアクセル開度Ａｃｃに応じて開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御するなどして、エンジン１４の出力制御を実行する。

変速制御部８４（変速制御手段）は、自動変速機１８の変速制御やニュートラル制御等を行うもので、例えば図４に示すような車速Ｖおよびアクセル開度Ａｃｃの二次元座標内に予め設定されている変速マップすなわち変速パターン（変速線図）に従って、実際の車速Ｖおよびアクセル開度Ａｃｃを参照することで、第１速ギヤ段「１ｓｔ」～第６速ギヤ段「６ｔｈ」を変速制御したり、前記後進ギヤ段「Ｒｅｖ」を成立させたり、総てのクラッチＣおよびブレーキＢを開放してニュートラル「Ｎ」にしたりする。

図４に示すように、変速マップは、車速Ｖおよびアクセル開度Ａｃｃから成り且つ各変速段に対応する複数本の変速線が設定された２次元マップで構成され、各変速線は実線で示すアップシフト線および破線で示すダウンシフト線で示されている。そして、車両の走行状態が何れかの変速線を跨いだ位置に変化すると、その変速線に対応する変速段への変速が実行される。例えば、運転者のアクセルペダルの踏み込みによってアクセル開度Ａｃｃが増加すると、破線で示す第３速ギヤ段（３ｒｄ）から第２速ギヤ段（２ｎｄ）へのダウンシフト線を跨ぐので、第３速ギヤ段から第２速ギヤ段へのダウンシフトが判断される。

また、車速Ｖが低下すると、破線で示す第３速ギヤ段（３ｒｄ）から第２速ギヤ段（２ｎｄ）へのダウンシフト線を跨ぐので、第３速ギヤ段から第２速ギヤ段へのダウンシフトが判断される。なお、第３速ギヤ段から第２速ギヤ段へのダウンシフトにおいて、図３の係合作動表に示すように、ブレーキＢ１が係合されると共に、ブレーキＢ３が開放される。したがって、例えば第３速ギヤ段から第２速ギヤ段へのダウンシフトでは、ブレーキＢ１が係合側摩擦装置となり、ブレーキＢ３が開放側摩擦装置となる。すなわち、自動変速機１８は、係合側摩擦装置の係合と開放側摩擦装置の開放とが為されることで変速される。

通信装置８６は、無線、赤外線、或いは有線により、例えばスマートホンなどの携帯型電子情報端末機器、車載端末機器、車載音声入力機器との間で通信を行なう。この通信により、通信装置８６は、搭乗者たとえば運転者によって携帯型電子情報端末機器、車載端末機器、車載音声入力機器などに入力された、自動変速機１８の有段変速に起因して車両１０に発生した現象についての搭乗者たとえば運転者の不満に対応する官能評価の情報を無線通信、光通信などのＯＴＡ（Ｏｖｅｒ Ｔｈｅ Ａｉｒ）或いは有線を介して受信する。官能評価入力部８８は、通信装置８６が受信した官能評価の情報、例えば自動変速機１８の有段変速に起因して車両１０に発生した現象についての搭乗者の不満に対応する官能評価を読み込む。スマートホンなどの携帯型電子情報端末機器は、自動運転にて走行中に搭乗者による入力に便利である。また、車載音声入力機器は、車両１０の走行中に運転者による入力に便利である。

図５は、電子制御装置８０の通信装置８６とコード信号により紐付けられたスマートホン９４を用いて、自動変速機１８の有段変速に起因して車両１０に発生した現象についての搭乗者たとえば運転者の不満に対応する官能評価を、入力する場合の説明をする図である。図５の左側のスマートホン９４には、官能評価の対象物を選択的に接触入力するために「エンジン」、「ＡＴ（自動変速機）」、「車両」が表示されたタッチパネル画面が表示されている。図５の中央のスマートホン９４には、上記「エンジン」が入力された場合の次のタッチパネル画面が表示されている。このタッチパネル画面は、現象を選択的に接触入力するために、「エンジン回転」、「エンジン音」が表示されている。図５の右側のスマートホン９４には、官能評価を接触入力するために「高い」、「低い」が表示されたタッチパネル画面が表示されている。例えば、対象物として「エンジン」が選択され、現象として「エンジン回転」が選択され、官能評価として「高い」が選択された場合には、官能評価入力部８８には、エンジンの回転が高すぎるという官能評価が読み込まれる。

評価傾向決定部９０は、官能評価入力部８８により読み込まれた官能評価に基づいて、搭乗者たとえば運転者が不満に感じる評価対象物の現象についての官能評価の重視傾向を決定する。図６は、その複数の具体例を示している。

図６において、入力情報欄内の評価対象物の欄には、車両１０に搭載されたエンジン１４、自動変速機１８、車両１０自身が挙げられている。入力情報欄内の現象の欄には、エンジン１４については「回転」および「音」が挙げられ、それら「回転」および「音」に対する官能評価については、「高すぎ」・「低すぎ」および「うるさい」・「おとなしい」がそれぞれ設定されている。また、自動変速機１８については「アップシフト」および「ダウンシフト」が挙げられ、それら「アップシフト」および「ダウンシフト」に対する官能評価については、「早い」・「遅い」および「早い」・「遅い」がそれぞれ設定されている。また、車両１０については、車両の挙動（加速Ｇおよび減速Ｇ）、騒音（エンジン音）、振動（こもり音および車内騒音）が挙げられ、官能評価については、加速Ｇにおいては「強い」・「弱い」が、減速Ｇにおいては「強い」・「弱い」が、エンジン音においては、「うるさい」・「おとなしい」が、こもり音においては「うるさい」が、車内振動においては「不快」がそれぞれ設定されている。

図６において、変速線変更内容の欄には、変速線図の回転およびトルクにおける変化の方向（変更方向）が矢印を用いて示されている。例えば、評価傾向決定部９０は、エンジンについて、回転が高すぎる又は低すぎるという官能評価であるときは燃費重視又は車両の走り重視の重視傾向すなわち運転志向と判定して、その官能評価を抑制するようにすなわち官能評価がよくなるように、重視傾向に基づいてエンジン回転速度を低下させる方向又は上昇させる方向に変速線を所定量変更する。

また、例えば、評価傾向決定部９０は、車両の挙動のうちの加速Ｇについて、強い（強すぎる）又は弱い（弱すぎる）という官能評価であるときは車両の走り重視の重視傾向すなわち運転志向と判定して、その官能評価を抑制するようにすなわち官能評価がよくなるように、重視傾向に基づいてエンジン出力トルクを増加させる方向又は低下させる方向に変速線を所定量変更する。

また、例えば、評価傾向決定部９０は、車両の振動について、こもり音が「うるさい」又は車内振動が「不快」という官能評価であるときは車両のノイズおよび振動（ＮＶ）重視の重視傾向すなわち運転志向と判定して、その官能評価を抑制するようにすなわち官能評価がよくなるように、評価（重視）傾向に基づいてエンジン回転速度を上昇させ且つエンジントルクを低下させる方向に変速線を所定量変更する。

評価傾向決定部９０において、上記のエンジン回転が高すぎるという官能評価であるときの燃費重視の重視傾向すなわち運転志向という判定、上記の車両の挙動の加速Ｇが強い（強すぎる）又は弱い（弱すぎる）という官能評価であるときの車両の走り重視の重視傾向すなわち運転志向という判定、および、上記の車両の振動のこもり音又は車内振動がうるさい又は不快という官能評価であるときの車両のノイズおよび振動（ＮＶ）の重視傾向すなわち運転志向という判定の場合には、その傾向を判断する上で優先度の高い情報として処理される。

変速特性変更部９２は、評価傾向決定部９０により決定された評価対象物の現象についての官能評価の重視傾向に基づいて、官能評価が満たされるように自動変速機１８の変速特性を変更する。すなわち、変速特性変更部９２は、官能評価に表れた搭乗者の不満が低くなるようにすなわち官能評価がよくなるように、自動変速機１８の変速パターンの回転方向およびトルク方向の少なくとも一方を変更する。

図７は、エンジン１４のエンジン回転速度Ｎｅ（ｒｐｍ）とエンジン１４の出力トルクＴｅとの二次元座標内に示された、自動変速機１８の第４速と第５速とを切り換える変速線Ｌ４５を、１点鎖線に示す変速線から実線に示す変速線へ、エンジン１４の回転方向において所定量だけ低く変更した例を、模式的に示している。

変速特性変更部９２は、搭乗者による官能評価の入力に基づいて自動変速機１８の変速特性を変更する変速特性変更制御が起動されたタイミングを記憶し、図８に示すように、そのタイミングにおける走行領域を変速パターンの変更対象領域Ａ１とし、その変更対象領域Ａ１内の変速線Ｌ４５から変速パターンの変更を実施する。図８は、変速線Ｌ４５を、車速Ｖ（ｋｍ／ｈ）と車両加速度α（ｍ／ｓｅｃ^２）との二次元座標において模式的に示している。図７、図８、および後述の図９に示す変速パターンは、図４に示す通常の変速線に換算して、変速制御部８４における変速制御に用いられる。

変速特性変更部９２は、図９の模式図に示す、変速パターンの変更対象領域Ａ１における判断履歴および変更対象領域Ａ１の周辺領域、例えば周辺領域Ａ２～Ａ６における判断履歴の少なくとも一方に基づいて、変更対象領域Ａ１における変速特性（変速線）の変化量を決定する。例えば、変速特性変更部９２は、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化量を、変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域Ａ２～Ａ６の少なくとも一方における判断履歴と比較して、同傾向の変更、例えば同方向の変更である場合は同傾向でない変更である場合よりも大きくする。

また、変速特性変更部９２は、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化特性の変更方向が、変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域Ａ２～Ａ６の少なくとも一方における判断履歴と比較して、最も多い方向の判断履歴と同じ方向である場合は、異なる方向の場合よりも変化特性の変化量を大きくする。さらに、変速特性変更部９２は、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変速特性の変化量を、変更対象領域Ａ１における変更履歴がない場合は、変更対象領域Ａ１の周辺領域Ａ２～Ａ６における変更履歴がある場合よりも大きくする。

図９は、車両加速度α（ｍ／ｓｅｃ^２）と車速Ｖ（ｋｍ／ｈ）との二次元座標内に示された、自動変速機１８の第４速と第５速とを切り換える変速線Ｌ４５を、１点鎖線に示す変速線から実線に示す変速線へ、エンジン１４のトルク方向において所定量だけ高く変更した例を、模式的に示している。そして、変速特性変更部９２は、変速パターンにおいて実際の走行を反映する走行領域が変更対象領域Ａ１から１領域以上離れた領域、例えば図１０の領域Ａ１０となったとき、或いは停車中に、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変更を実行する。変速制御部８４は、変速特性変更部９２により変更された変速パターンを用いて自動変速機１８の変速を実行する。

図１１および図１２は、電子制御装置８０の制御作動の要部すなわち自動変速機１８の変速特性を変更する変速線の変更制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数ｍｓｅｃ乃至数十ｍｓｅｃ程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。

先ず、ステップＳ１０（以下、ステップを省略する）において、搭乗者たとえば運転者が車両１０の燃費、挙動、騒音、振動等に不満を感じて、その不満を調整するための自動変速機１８の変速線の変更を目的として変速線の変更制御を起動操作したか否かが判断される。このＳ１０の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、Ｓ２０において、そのときの走行領域に対応する変更対象領域Ａ１が記憶される。次いで、Ｓ３０において、エンジン１４、自動変速機１８、車両１０などの評価の対象物、およびその現象が、搭乗者たとえば運転者により入力されるとともに記憶され、Ｓ４０において、その現象についての官能評価が入力され、記憶される。上記Ｓ２０、Ｓ３０、Ｓ４０は、官能評価入力部８８として機能している。

評価傾向決定部９０に対応するＳ５０では、例えば図６に示す関係から実際の官能評価に基づいて評価対象物についての評価重視傾向と、変速線の回転方向およびトルク方向についての変更内容が決定される。次いで、変速特性変更部９２に対応するＳ６０、Ｓ７０、Ｓ８０が実行される。

Ｓ６０では、例えば図９の模式図に示す、変速パターンの変更対象領域Ａ１における今回の制御サイクルよりも前の制御サイクルにおいて決定された過去の判断履歴および変更対象領域Ａ１の周辺領域Ａ２～Ａ６における過去の判断履歴の少なくとも一方に基づいて、変更対象領域Ａ１における変速特性（変速線）の変化量が決定される。例えば、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化量が、変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域の少なくとも一方における過去の変更と比較して、同じ方向の変更である場合は同方向でない変更である場合よりも大きく設定される。また、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変速特性の変更方向が変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域の少なくとも一方における過去の判断履歴と比較して最も多い方向の判断履歴の方向と同じである場合は、同方向でない場合よりも変更対象領域Ａ１における変速特性の変化量が大きく設定される。さらに、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化量が、変更対象領域Ａ１における過去の変更履歴がない場合は、変更対象領域Ａ１の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも、大きく設定される。

図１２は、Ｓ６０における変速パターンの変化量の決定作動の要部を詳細に示すフローチャートである。図１２のＳ６１では、変更対象領域Ａ１に過去の変更履歴が無いか否かが判断される。このＳ６１の判断が肯定される場合は、Ｓ６２において、変更対象領域Ａ１の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも変速パターンの変化量の変更方向へ大きく変更され、判断履歴および変更履歴が残される。しかし、Ｓ６１の判断が否定される場合は、Ｓ６３において、今回決定された変速パターンの変化量の変更方向が、過去および周辺領域と同じ方向の変更であるか否かが判断される。

Ｓ６３の判断が肯定される場合は、Ｓ６４において、決定された変更方向へＳ６２の場合よりも小さく変更され、判断履歴および変更履歴が残される。しかし、Ｓ６３の判断が否定された場合は、Ｓ６５において、変更対象領域Ａ１における過去の判断履歴、および周辺領域における過去の判断履歴において今回と同じ方向の判断履歴が最も多いか否かが判断される。Ｓ６５の判断が肯定される場合はＳ６４が実行される。しかし、Ｓ６５の判断が否定される場合は、Ｓ６６において、今回の変更方向の判断履歴は残し、変速パターンの変更は実施されない。すなわち、変更対象領域Ａ１および周辺領域の過去の判断履歴と比較して今回と同じ変更方向の判断履歴が最も多い場合（本実施例ではＳ６４の場合）は、最も多い方向でない場合（本実施例では変更が実施されないＳ６６の場合）よりも、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化量が大きくされる。

図１１に戻って、Ｓ７０では、現在の走行領域が変更対象領域Ａ１から十分に離れている、例えば１領域以上離れているか否かが判断される。例えば図１０において、現在の走行領域が十分に離れた領域であるか否かが判断される。このＳ７０の判断が否定されるうちは、Ｓ７０が繰り返し実行されることで、待機させられる。しかし、Ｓ７０の判断が肯定された場合は、Ｓ８０において、変速パターンの変化量の変更が実行される。

上述のように、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる自動変速機１８を備えた車両１０の電子制御装置８０であって、車両１０の走行に関連した車両１０の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部８８と、官能評価入力部８８に読み込まれた官能評価に基づいて搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての官能評価の重視傾向を決定する評価傾向決定部９０と、評価傾向決定部９０により決定された評価対象物の現象についての官能評価の重視傾向に基づいて、官能評価がよくなるように自動変速機１８の変速特性を変更する変速特性変更部９２とを、含む。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、評価対象物は、車両１０に搭載されたエンジン１４、自動変速機１８、車両１０のうちの少なくとも１つであり、官能評価は、エンジン１４の回転速度およびエンジン音、自動変速機１８の変速タイミング、車両１０の加速、車両１０内の騒音および振動のうちの少なくとも１つに関するものであることから、エンジン１４の回転速度およびエンジン音、自動変速機１８の変速タイミング、車両１０の加速、車両１０内の騒音および振動のうちの少なくとも１つに関して、運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、官能評価がよくなるように、変速パターンの回転方向およびトルク方向の少なくとも一方が変更されることによって、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、変速パターンの変更対象領域Ａ１における過去の判断履歴および変更対象領域Ａ１の周辺領域における過去の判断履歴の少なくとも一方に基づいて、変更対象領域Ａ１における変速特性の変化量が決定されるので、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変速特性の変更方向が、変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域の少なくとも一方における過去の変更と比較して同方向である場合は、同方向でない場合よりも変速特性の変化量が大きくされることで、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変化量が変更されることにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、変更対象領域Ａ１における変速特性の変更方向が、変更対象領域Ａ１および変更対象領域Ａ１の周辺領域の過去の判断履歴と比較して最も多い変更方向の判断履歴と同方向である場合は、同方向でない場合よりも大きくされる。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変速特性の変化量を、変更対象領域Ａ１における過去の変更履歴がない場合は、変更対象領域Ａ１の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも大きくされる。これにより、搭乗者の志向たとえば運転者の運転志向を反映するように自動変速機１８の変速特性が変更される。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、変速特性変更部９２により、変速パターンにおいて実際の走行を反映する走行領域が前記変更対象領域Ａ１から離れたときに、或いは、停車中に、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変更が実行される。これにより、変速パターンの変更対象領域Ａ１における変速パターンの変更が車両１０の走行に影響しない。

また、本実施例の電子制御装置（変速制御装置）８０によれば、携帯型電子情報端末機器、車載端末機器、車載音声入力機器を運転者又は搭乗者が操作することで、運転者又は搭乗者による官能評価が官能評価入力部８８に読み込まれる。これにより、走行中において、官能評価入力部８８に対して車両１０の走行に関連して搭乗者たとえば運転者の不満に対応する官能評価を簡便に読み込ませることができる。

以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。

例えば、前述の実施例の自動変速機１８は、遊星歯車型有段式の自動変速機であったが、機械式無段変速機或いは電気式無段変速機の変速比を段階的に変化させるように模擬変速段を切換える変速線が予め設定され、その変速線に基づいて模擬変速段が切換えられる形式の自動変速機であってもよい。

また、前述の実施例の自動変速機１８は、遊星歯車型の有段式自動変速機であったが、予め設定された変速線に基づいてアクチュエータによって変速段が切換えられる常時噛合型平行軸式有段変速機であってもよい。

また、前述の実施例では、官能評価の項目が図６に示された１６種類のものであったが、官能評価の項目はそれよりも少ない数、例えば１項目であってもよいし、多い数であってもよい。また、前述の実施例では、入力情報欄内に評価対象物が複数あったが、１つでもよい。

また、前述の実施例の図４の変速マップは、車速Ｖおよびアクセル開度Ａｃｃからなる２次元マップで構成されるとしたが、例えば、横軸の車速Ｖ（ｋｍ／ｈ）を、出力回転速度Ｎｏｕｔ（ｒｐｍ）やエンジン回転速度Ｎｅ（ｒｐｍ）、縦軸のアクセル開度Ａｃｃ（％）を、スロットル弁の開度θｔｈ（％）、要求出力Ｐｒｅ（ｋＷ）、車両加速度α（ｍ／ｓｅｃ^２）に置き換えられても構わない。また、前述の実施例の図１１のＳ６０や図１２のＳ６５では判断履歴が利用されたが、判断履歴に代えて変更履歴が利用されてもよい。

なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。

１０：車両
１４：エンジン
１８：自動変速機（有段式自動変速機）
８０：電子制御装置（変速制御装置）
８６：通信装置
８８：官能評価入力部
９０：評価傾向決定部
９２：変速特性変更部

Claims (6)

1. 予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、
   前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、
   前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、
   前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、
   前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域の少なくとも一方における過去の変更と比較して同方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくする
   ことを特徴とする車両の変速制御装置。
2. 予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、
   前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、
   前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、
   前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、
   前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変更方向が、前記変更対象領域および前記変更対象領域の周辺領域の少なくとも一方における過去の判断履歴と比較して最も多い方向の判断履歴と同方向である場合は、同方向でない場合よりも前記変速特性の変化量を大きくする
   ことを特徴とする車両の変速制御装置。
3. 予め記憶された変速パターンに基づいて変速段が切り換えられる有段式自動変速機を備えた車両の変速制御装置であって、
   前記車両の走行に関連した前記車両の搭乗者による１または２以上の官能評価を読み込む官能評価入力部と、
   前記官能評価入力部に読み込まれた前記官能評価に基づいて前記搭乗者が不満に感じる、評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向が、燃費重視、走り重視、およびＮＶ重視のうちの何れの志向に属するか、を決定する評価傾向決定部と、
   前記評価傾向決定部により決定された前記評価対象物の現象についての前記官能評価の重視傾向に基づいて、前記官能評価がよくなるように前記有段式自動変速機の変速特性を変更する変速特性変更部とを、含み、
   前記変速特性変更部は、前記変速パターンの変更対象領域における過去の判断履歴および前記変更対象領域の周辺領域の過去の判断履歴のうちの少なくとも一方の判断履歴に基づいて、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を決定するもので、前記変更対象領域における前記変速特性の変化量を、前記変更対象領域における過去の変更履歴がない場合は、前記変更対象領域の周辺領域における過去の変更履歴がある場合よりも大きくする
   ことを特徴とする車両の変速制御装置。
4. 前記評価対象物は、前記車両に搭載されたエンジン、前記有段式自動変速機、前記車両のうちの少なくとも１つであり、
   前記官能評価は、前記エンジンの回転速度、エンジン音、前記有段式自動変速機の変速タイミング、前記車両の加速、前記車両内の騒音、および、前記車両内の振動のうちの少なくとも１つに関するものである
   ことを特徴とする請求項１から３の何れか１の車両の変速制御装置。
5. 前記変速特性変更部は、前記搭乗者の前記官能評価がよくなるように、前記変速パターンの回転方向およびトルク方向のうちの少なくとも一方を変更する
   ことを特徴とする請求項１から３の何れか１の車両の変速制御装置。
6. 前記変速特性変更部は、実際の走行を反映する走行領域が前記変更対象領域から離れたときに、或いは、停車中に、前記変更対象領域における変更を実行する
   ことを特徴とする請求項１から３のいずれか１の車両の変速制御装置。

Images