[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1~図10に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
第1実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液(図示略)が封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4とを有しており、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。外筒4は、円筒状の胴部材11と、胴部材11の下部側に嵌合固定されて胴部材11の下部を閉塞する底部材12とからなっている。底部材12には、胴部材11とは反対の外側に取付アイ13が固定されている。
緩衝器1は、シリンダ2の内筒3の内部に移動可能に設けられたピストン18を備えている。このピストン18は、内筒3内を、一方のシリンダ内室である上室19(一側室)と、他方のシリンダ内室である下室20(他側室)との2つの室に区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入されている。
緩衝器1は、一端側部分がシリンダ2の内筒3の内部に配置されてピストン18に連結固定されると共に他端側部分がシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、上室19内を貫通しており、下室20は貫通していない。よって、上室19は、ピストンロッド21が貫通するロッド側室であり、下室20はシリンダ2の底側のボトム側室である。
ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす緩衝器1の伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになる。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす緩衝器1の縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されており、外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が装着されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも環状をなしており、ピストンロッド21は、これらロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。ピストンロッド21は、一端側部分がシリンダ2の内部でピストン18に固定され他端側部分がシリンダ2の外部にロッドガイド22およびシール部材23を介して突出する。
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部材12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されており、このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められて加締部26となっており、この加締部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持する。
ピストンロッド21は、主軸部27と、これよりも小径の取付軸部28とを有している。ピストンロッド21は、主軸部27が、ロッドガイド22およびシール部材23に摺動可能に嵌合され、取付軸部28がシリンダ2内に配置されてピストン18等に連結されている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。
取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に通路切欠部30が形成されており、軸方向の主軸部27とは反対側の先端位置にオネジ31が形成されている。通路切欠部30は、例えば、取付軸部28の外周部を、取付軸部28の中心軸線に平行な面で平面状に切り欠いて形成されている。通路切欠部30は、取付軸部28の周方向の180度異なる二カ所の位置にいわゆる二面幅の形状に形成することができる。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2に固定された取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ2とピストンロッド21との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン18およびピストンロッド21の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン18およびピストンロッド21の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ2とピストンロッド21との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ2とピストンロッド21との間に作用する。以下で説明するとおり、緩衝器1は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に支持される金属製のピストン本体35と、ピストン本体35の外周面に一体に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材36とによって構成されている。
ピストン本体35には、複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴37と、ピストン18の軸方向一側(図2の下側)の端部でこれら通路穴37を繋ぐ円環状の環状溝38と、複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39と、ピストン18の軸方向他側(図2の上側)の端部でこれら通路穴39を繋ぐ円環状の環状溝40とを有している。複数の通路穴37および環状溝38が上室19と下室20とを連通可能であり、複数の通路穴39および環状溝40も上室19と下室20とを連通可能である。
複数の通路穴37は、ピストン本体35の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴37,39のうちの半数を構成する。複数の通路穴37は、ピストン本体35の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に配置されており、軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に配置されて環状溝38に開口している。複数の通路穴39は、通路穴37とは逆に、ピストン本体35の軸方向他側(図2の下側)が径方向外側に配置されており、軸方向一側(図2の上側)が径方向内側に配置されて環状溝40に開口している。
複数の通路穴37内および環状溝38内の通路には、これら通路穴37内および環状溝38内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41が設けられている。第1減衰力発生機構41は、ピストン18の軸方向の一端側である下室20側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。第1減衰力発生機構41が下室20側に配置されることで、複数の通路穴37内および環状溝38内の通路は、常時上室19に連通し、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて作動流体としての油液が流れ出す伸び側の通路となる。これら通路穴37内および環状溝38内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の通路穴37内および環状溝38内の通路から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構となっている。
複数の通路穴39内および環状溝40内の通路には、これら通路穴39内および環状溝40内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42が設けられている。第1減衰力発生機構42は、ピストン18の軸方向の他端側である上室19側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。第1減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39内および環状溝40内の通路は、常時下室20に連通し、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。これら通路穴39内および環状溝40内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構となっている。
以上により、複数の通路穴37内および環状溝38内の通路と複数の通路穴39内および環状溝40内の通路とが、ピストン18の移動により上室19と下室20との間を作動流体である油液が流れるように連通することになる。また、複数の通路穴37内および環状溝38内の通路は、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側(図2の上側)に移動するときに油液が通過し、複数の通路穴39内および環状溝40内の通路は、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側(図2の下側)に移動するときに油液が通過する。
ピストン本体35は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28を挿通させるための挿通穴43が形成されている。挿通穴43は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部44と、小径穴部44よりも大径の軸方向他側の大径穴部45とを有している。ピストンロッド21は、通路切欠部30内が、ピストンロッド21を切り欠いて形成されるピストンロッド通路部46を構成している。ピストン本体35の大径穴部45内の通路と、取付軸部28のピストンロッド通路部46とは常時連通している。
ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、環状溝38の下室20側の開口よりも径方向外側に、第1減衰力発生機構41の一部を構成する環状のバルブシート47が形成されている。また、ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、環状溝40の上室19側の開口よりも径方向外側に、第1減衰力発生機構42の一部を構成する環状のバルブシート48が形成されている。ここで、挿通穴43は、小径穴部44が大径穴部45よりも軸方向のバルブシート47側に設けられている。
ピストン本体35において、バルブシート47の径方向外側は、バルブシート47よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の複数の通路穴39内の通路の下室20側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体35において、バルブシート48の径方向外側は、バルブシート48よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の複数の通路穴37内の通路の上室19側の開口が配置されている。
図3に示すように、伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン18のバルブシート47側に設けられており、軸方向のピストン18側から順に、複数枚(具体的には2枚)のディスク50と、複数枚(具体的には3枚)のディスク51と、一枚のパイロットディスク52と、複数枚(具体的には2枚)のディスク53と、一つのケース部材55と、一枚のディスク56と、複数枚(具体的には5枚)のディスク57と、複数枚(具体的には2枚)のディスク58と、複数枚(具体的には2枚)のディスク59と、複数枚(具体的には2枚)のディスク60と、一枚のディスク61と、一枚のディスク62とを有している。これらディスク50,51,53,56~62とパイロットディスク52とケース部材55とは、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。ディスク50,51,53,56~62とケース部材55とは、いずれも金属製である。ディスク50,51,53,56~62は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。
ディスク50は、ピストン18のバルブシート47の内径よりも小径の外径となっている。ディスク51は、ピストン18のバルブシート47の先端面の外径よりも若干大径の外径となっている。ディスク51は、バルブシート47の全周に当接可能であり、バルブシート47に対し離間および当接することで、ピストン18に形成された図2に示す複数の通路穴37内および環状溝38内の通路の下室20側の開口を開閉する。
図3に示すように、パイロットディスク52は、金属製のディスク71と、ディスク71の軸方向(厚さ方向)一側の外周側に固着されたゴム製のシール部材72とからなっている。ディスク71は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしており、ディスク51の外径よりも大径の外径となっている。シール部材72は、ディスク71の軸方向のピストン18とは反対の外周側に固着されており、円環状をなしている。複数枚のディスク51とパイロットディスク52とが、図2に示すバルブシート47に対し離間および当接して複数の通路穴37内および環状溝38内の通路を開閉する伸び側のメインバルブ65を構成している。
メインバルブ65とバルブシート47との間の開時に生じる通路と、通路穴37内および環状溝38内の通路とが、メインバルブ65の開弁時に上室19と下室20とを連通させる伸び側の第1通路75を構成している。第1通路75は、ピストン18に設けられており、ピストン18の移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が移動する。第1減衰力発生機構41は、この第1通路75に設けられ、この第1通路75を開閉して減衰力を発生する。
伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート47およびこれに当接するメインバルブ65のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート47およびメインバルブ65が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路75には上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第1通路75は、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
図3に示すように、ディスク53は、パイロットディスク52のシール部材72の最小内径よりも小径の外径となっている。ディスク53は、ディスク50の外径よりも小径の外径となっている。
ケース部材55は、有底筒状であって環状である。ケース部材55は、厚さ方向に貫通する貫通孔80が径方向の中央に形成されており、有孔円板状の底部81と、底部81の内周縁部から、底部81の軸方向に沿って両側に突出する円筒状の内側円筒状部82と、底部81の外周縁部から、底部81の軸方向に沿って一側に突出する円筒状の外側円筒状部83と、底部81の径方向における中間位置から、底部81の軸方向に沿って外側円筒状部83とは反対側に突出する環状のバルブシート84と、を有している。ケース部材55の貫通孔80をピストンロッド21の取付軸部28が貫通している。底部81と内側円筒状部82と外側円筒状部83とバルブシート84とは同軸状に配置されている。
底部81には、その径方向における外側円筒状部83およびバルブシート84と、内側円筒状部82との間に、底部81の軸方向に沿って貫通する貫通穴91が形成されている。底部81には、貫通穴91が、底部81の周方向に間隔をあけて複数(図3では部分断面とした関係上一カ所のみ図示)形成されている。なお、貫通穴91は底部81に少なくとも一つ設けられていれば良い。
内側円筒状部82の内周側の貫通孔80は、軸方向のバルブシート84とは反対側に、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる小径穴部92を有しており、軸方向のバルブシート84側に、小径穴部92よりも大径の大径穴部93を有している。貫通孔80に挿通されたピストンロッド21の取付軸部28は、その一部が軸方向においてケース部材55内に配置されることになる。ケース部材55の大径穴部93内の通路と、取付軸部28のピストンロッド通路部46とは常時連通している。
シール部材72は、ケース部材55の外側円筒状部83の内周面に全周にわたり摺動可能かつ液密的に嵌合しており、パイロットディスク52と外側円筒状部83との隙間を常時シールする。言い換えれば、パイロットディスク52は、シール部材72をケース部材55の外側円筒状部83に摺動可能かつ液密に嵌合させている。
ディスク56は、ケース部材55のバルブシート84の先端面の内径よりも小径の外径となっている。ディスク56には、ピストンロッド21の取付軸部28に嵌合する内周縁部から径方向外側に延在する切欠部101が形成されている。ディスク56は、ケース部材55の内側円筒状部82に当接することになるが、その際に切欠部101は内側円筒状部82を径方向に横断する。
複数枚のディスク57は、同外径であって、ケース部材55のバルブシート84の先端面の外径よりも若干大径の外径となっている。複数枚のディスク58は、同外径であって、ディスク57の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク59は、同外径であって、ディスク58の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク60は、同外径であって、ディスク59の外径よりも小径の外径となっている。
ディスク57~60は、ハードバルブ110を構成している。パイロットディスク52とケース部材55とハードバルブ110との間が、パイロットディスク52に背圧を加えるパイロット室111となる。バルブシート84は、パイロット室111のピストン18とは反対側の開口部を囲んでいる。
ハードバルブ110は、ディスク57においてバルブシート84に当接可能であり、バルブシート84に対し離間および当接することでパイロット室111を開閉する。ハードバルブ110がバルブシート84から離座すると、パイロット室111が下室20に連通する。ディスク56の切欠部101内の通路は、一方でパイロット室111に常時連通しており、他方でピストンロッド通路部46に常時連通している。切欠部101内の通路は、パイロット室111とピストンロッド通路部46との間に設けられて流路断面積が絞られる絞り、すなわちオリフィス112となっている。
ディスク61は、ハードバルブ110のうちの最も小径のディスク60の外径よりも小径の外径となっている。ディスク62は、ハードバルブ110のうちの中間の外径のディスク59の外径と同等の外径となっている。
図2に示すように、ピストンロッド21の取付軸部28には、第1減衰力発生機構41の第1減衰力発生機構42とは反対側に、ピストン周波数に感応して減衰力を可変とする周波数感応機構121が設けられている。
図3に示すように、周波数感応機構121は、軸方向のディスク62側から順に、ディスク62に当接する一つのハウジング122と、複数枚(具体的には2枚)のディスク123および一枚の区画ディスク124(区画部材,ディスク)と、一枚のディスク125と、一枚のディスク126と、一つのストッパ部材127と、を有している。ハウジング122、ディスク123,125,126およびストッパ部材127は、金属製である。ディスク123,125,126は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ハウジング122およびストッパ部材127は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。ハウジング122には、内部にピストンロッド21の取付軸部28の一部が配置されている。
ハウジング122は、有孔円板状の底部141(第1底部)と、底部141の外周側から底部141の軸方向に沿って一側に突出する円筒状の筒部142(第1筒部)とを有する有底筒状である。底部141には、径方向の中央に貫通孔144が形成されている。底部141は、有孔円板状の底部本体部145と、底部本体部145の内周側から底部本体部145よりも軸方向の筒部142側に突出する円環状の突出部146と、底部本体部145における突出部146と筒部142との間から底部本体部145よりも軸方向の筒部142側に突出する円環状の支持部147と、を有している。言い換えれば、底部141には、内周側に底部本体部145よりも筒部142と同側に突出する突出部146が、径方向中間位置に底部本体部145よりも筒部142と同側に突出する支持部147が、それぞれ形成されている。
突出部146には、これを径方向に横断する流路溝151が周方向に部分的に形成されている。支持部147には、これを径方向に横断する流路溝152が周方向に部分的に形成されている。貫通孔144は、軸方向の突出部146とは反対側に、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる小径穴部155を有しており、軸方向の突出部146側に小径穴部155より大径の大径穴部156を有している。流路溝151は、大径穴部156に開口している。ハウジング122の大径穴部156内の通路と、取付軸部28のピストンロッド通路部46とは常時連通している。筒部142の底部141とは反対側は開口部となっている。筒部142は、その内周面が底部141から開口部に向かうほど内径が大となるテーパ形状になっている。ストッパ部材127は、有底筒状のハウジング122の筒部142の開口部側に設けられている。
ハウジング122の径方向中央を軸方向に取付軸部28が貫通しており、ハウジング122内に、複数枚のディスク123、区画ディスク124、ディスク125およびディスク126が、取付軸部28をそれぞれの内側に貫通させて配置されている。
ハウジング122の底部141は、その軸方向の小径穴部155側の外端部でディスク62の内周側を支持しており、その軸方向の大径穴部156側の内端部である突出部146でディスク123の外周側を支持している。ハウジング122の支持部147は、その突出先端側の端部で、環状の区画ディスク124の径方向中間位置を支持する。支持部147に流路溝152が形成されていることによって、ハウジング122における支持部147の径方向内側と径方向外側とが常時連通する。
複数枚のディスク123は、ハウジング122の突出部146の先端面の外径よりも小径であって突出部146の先端面の内径よりも大径の外径となっている。
区画ディスク124は、金属材料からなる一定厚さの有孔円形平板状の撓み可能なディスク161と、ディスク161の外周側に固着されたゴム材料からなる弾性のシール部材162とからなっている。区画ディスク124は、全体として円形状で、弾性変形可能つまり撓み可能となっている。
環状のディスク161は、内径がディスク123の外径よりも大径であり、その内側にディスク123を径方向に隙間をもって配置可能な内径となっている。ディスク161は、ディスク123の枚数分(2枚分)の厚さよりも厚さが薄くなっている。ディスク161は、内径がディスク125の外径よりも小径であり、ディスク125に当接可能である。ディスク161は、ハウジング122の支持部147の先端面の外径よりも大径かつ筒部142の内径よりも小径の外径となっている。ディスク161は、取付軸部28を内側に貫通させてハウジング122内に配置されている。ディスク161は、ハウジング122内で、底部141の支持部147に当接して設けられている。ハウジング122の筒部142の内周面は、底部141から区画ディスク124側に離れるほど内径が大となるテーパ形状である。
シール部材162は、ディスク161の外周側に円環状をなして固着されている。シール部材162は、ディスク161と対向する面の全面がディスク161に固着されている。シール部材162は、ディスク161から軸方向のストッパ部材127とは反対側に突出するシール部171と、ディスク161から軸方向のストッパ部材127側に突出する当接部172とを有している。シール部171は、円筒状であり、全周にわたってディスク161に固着されている。シール部171は、ハウジング122の筒部142の内周面に全周にわたって摺動可能かつ液密的に嵌合しており、筒部142と区画ディスク124との間を常時シールする。
当接部172は、ディスク161の周方向に断続的に形成されている。当接部172は、区画ディスク124のストッパ部材127側への変形時にストッパ部材127に当接して弾性変形し、最大限近くまで変形すると、区画ディスク124はそれ以上の変形が抑制される。シール部171は、ディスク161の外周面を覆って当接部172に繋がっている。
区画ディスク124は、シール部171がハウジング122の筒部142に全周にわたって接触することでハウジング122に対し芯出しされ、その結果、取付軸部28に対しても芯出しされる。区画ディスク124は、そのディスク161がハウジング122の支持部147に当接して支持される。
ハウジング122の突出部146およびディスク125は、区画ディスク124のディスク161の内径よりも大径の外径となっている。よって、区画ディスク124は、ディスク161の内周側が、ハウジング122の突出部146とディスク125との間に配置されており、これらの間の範囲内で軸方向に移動可能となっている。区画ディスク124は、その表側と裏側とに圧力差がない状態では、ディスク161が、厚さ方向一側の面で支持部147に、厚さ方向他側の面でディスク125に、それぞれ当接して支持されている。ディスク125は、区画ディスク124を着座させるシート部である。
区画ディスク124は、撓み可能な状態でハウジング122内に配置されている。区画ディスク124は、ディスク161の内周側が、ハウジング122の突出部146とディスク125との間にて、複数枚のディスク123の軸方向長の範囲で移動可能となっている。また、区画ディスク124は、ディスク161のディスク125による支持とは反対の非支持側である外周側にハウジング122との間をシールする環状のシール部171が設けられている。区画ディスク124は、その内周側が、両面側からクランプされずに片面側のみディスク125に支持される単純支持構造となっている。ディスク126は、ディスク125の外径よりも大径の外径となっている。
ストッパ部材127は、円筒状の筒状部181と、筒状部181の外周部の軸方向の中央位置から径方向外方に広がる円板状のフランジ部182とを有している。筒状部181は、フランジ部182よりも軸方向両側に厚い厚肉である。ストッパ部材127は、筒状部181の内側にピストンロッド21の取付軸部28が嵌合される。
ストッパ部材127は、フランジ部182が、ハウジング122の筒部142よりも軸方向外側に配置されており、筒部142との間に、ハウジング122内を下室20に常時連通させる連通路185を形成している。
ここで、ストッパ部材127は、軸方向の中央位置を通り軸方向に直交する面を基準とする鏡面対称形状である。言い換えれば、ストッパ部材127には、表裏の区別がなく、表裏の間違いによる誤組み付けを生じない形状となっている。ストッパ部材127は、焼結により形成することが可能である。
区画ディスク124は、そのシール部171がハウジング122の筒部142の内周面に全周にわたり接触して、区画ディスク124と筒部142との隙間をシールする。つまり、区画ディスク124はパッキンバルブである。シール部171は、区画ディスク124がハウジング122とストッパ部材127との間の許容される範囲で変位および変形しても、区画ディスク124と筒部142との隙間を常時シールする。区画ディスク124は、ハウジング122に嵌合されることで芯出しされ、この状態で、ディスク161が内周部をディスク125に全周に渡って接触させることにより、ディスク125との隙間をシールする。
区画ディスク124は、ハウジング122内の底部141側に、容量可変な圧力室191を形成する。区画ディスク124は、ストッパ部材127との間に連通室192を形成する。連通室192は、連通路185を介して下室20に常時連通する。圧力室191は、区画ディスク124と、ハウジング122の底部141との間に形成されている。突出部146の流路溝151内の通路は、圧力室191とピストンロッド通路部46との間に設けられて流路断面積が絞られる絞り、すなわちオリフィス193となっている。区画ディスク124と、そのシート部としてのディスク125とは、圧力室191から連通室192への油液の流れを規制する一方、連通室192から圧力室191への油液の流れを許容するチェック弁195を構成している。
図4に示すように、縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン18のバルブシート48側に設けられており、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク201と、複数枚(具体的には4枚)のディスク202と、複数枚(具体的には2枚)のディスク203と、一枚のディスク204とを有している。これらディスク201~204は、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。ディスク201~204は、いずれも金属製である。ディスク201~204は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。
ディスク201は、ピストン18のバルブシート48の先端面の内径よりも小径の外径となっている。ディスク201には、ピストンロッド21の取付軸部28に嵌合する内周縁部から径方向外側に延在する切欠部211が形成されている。ディスク201の切欠部211内の通路は、一方で縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路に常時連通しており、他方でピストンロッド通路部46に常時連通している。切欠部211内の通路は、縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路とピストンロッド通路部46との間に設けられて流路断面積が絞られる絞りであり、導入オリフィス212となっている。図2に示すように、縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路は、下室20に常時連通しており、よって、下室20とピストンロッド通路部46との間に、図4に示す導入オリフィス212が設けられている。
複数のディスク202は、同外径であり、バルブシート48の先端面の外径より若干大径の外径となっている。ディスク202は、バルブシート48に全周にわたって当接可能であり、バルブシート48に対し離間および当接することでピストン18に形成された通路穴39内および環状溝40内の通路の開口を開閉する。
複数のディスク203は、同外径であり、ディスク202の外径よりも小径の外径となっている。ディスク204は、ディスク203の外径よりも小径の外径となっている。複数のディスク202および複数のディスク203が、バルブシート48に対し離間および当接して縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路を開閉するメインバルブ221を構成している。
メインバルブ221とバルブシート48との間の開時に生じる通路と、通路穴39内および環状溝40内の通路とが、メインバルブ221の開弁時に下室20と上室19とを連通させる縮み側の第1通路222を構成している。第1通路222は、ピストン18に設けられており、ピストン18の移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が移動する。第1減衰力発生機構42は、第1通路222に設けられ、第1通路222を開閉して減衰力を発生する。
縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート48およびこれに当接するメインバルブ221のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート48およびメインバルブ221が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路222には上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第1通路222は上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
図2に示すように、ピストンロッド21の取付軸部28には、縮み側の第1減衰力発生機構42の伸び側の第1減衰力発生機構41とは反対側に、極微低速バルブ機構231が設けられている。言い換えれば、極微低速バルブ機構231は、ピストン18に対し縮み側のメインバルブ221と同側に設けられており、メインバルブ221に対しピストン18とは反対側に設けられている。
図4に示すように、極微低速バルブ機構231は、ピストンロッド21の軸段部29側から順に、環状部材241と、ディスク242と、複数枚(具体的には2枚)のディスク243と、一枚のディスク244と、一枚のディスク245と、一枚のディスク246と、一枚のディスクバルブ247と、一つのケース部材248とを有している。これら環状部材241、ディスク242~246、ディスクバルブ247およびケース部材248は、いずれも金属製であり、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。
環状部材241、ディスク242~246およびディスクバルブ247は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ケース部材248は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。
ケース部材248は、有底筒状の一体成形品であり、有孔円板状の底部261(第2底部)と、底部261の外周縁部から、底部261の軸方向一側に突出する円環状の外側筒部262(第2筒部)と、底部261の内周縁部から、外側筒部262と同側に突出する円環状の内側筒部263とを有している。外側筒部262と内側筒部263とは、同軸状に配置されており、外側筒部262は、内側筒部263よりも底部261からの突出長さが長くなっている。ケース部材248は、底部261が、外側筒部262および内側筒部263よりもピストン18側に位置する向きで配置されており、底部261においてディスク204に当接している。
外側筒部262は全周にわたって連続する円環状をなしており、内周面が、底部261から軸方向に離れるほど大径となるテーパ面となっている。外側筒部262の外周面は、底部261の外周面と同一の円筒面を構成している。外側筒部262の軸方向における底部261とは反対側の先端面は、ケース部材248の中心軸線に直交する平面となっている。
外側筒部262の先端面および内周面の境界側の角縁部は、円環状をなしており、ディスクバルブ247が離着座する第1バルブシート271となっている。よって、第1バルブシート271は、ケース部材248の外側筒部262に環状に形成されている。
内側筒部263は、外周面が、底部261から軸方向に離れるほど小径となるテーパ面となっており、その軸方向における底部261とは反対側の先端面が、ケース部材248の中心軸線に直交する平面となっている。内側筒部263には、先端面に開口し径方向に貫通する通路溝272が周方向に間隔をあけて複数形成されている。よって、内側筒部263は全周にわたって連続する形状ではなく、周方向に断続的に形成されている。
ケース部材248は、その径方向の中央に、底部261および内側筒部263を軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28が挿通される挿通穴275が形成されている。挿通穴275は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部276と、小径穴部276よりも大径の軸方向他側の大径穴部277とを有している。大径穴部277は、主に内側筒部263に形成されており、小径穴部276は主に底部261に形成されている。大径穴部277の内周面には、複数の通路溝272がすべて開口している。
大径穴部277内の通路は、ピストンロッド21のピストンロッド通路部46と常時連通している。内側筒部263の通路溝272内の通路も大径穴部277内の通路を介してピストンロッド通路部46と常時連通している。
環状部材241は、軸段部29の外径よりも大径の外径となっており、ディスク242~246およびディスクバルブ247よりも厚く高剛性となっている。この環状部材241は、ピストンロッド21の軸段部29に当接している。ディスク242は、環状部材241の外径よりも大径の外径となっている。複数のディスク243は、同外径であり、環状部材241の外径よりも小径の外径となっている。
ディスク244は、ディスク243の外径よりも大径の外径となっている。ディスク245は、ディスク244の外径よりも大径の外径となっている。ディスク246は、ディスク245の外径よりも大径の外径となっている。よって、ディスク243~246は、軸方向においてケース部材248に近いほど外径が大径となっている。
ディスク246の外径は、ケース部材248の外側筒部262の先端面の内径、言い換えれば、第1バルブシート271の内径よりも小径となっている。また、ディスク246の外径は、ケース部材248の内側筒部263の先端面の外径よりも大径となっている。ディスク246の底部261側の端面からディスクバルブ247の厚さ分だけ底部261側にオフセットした位置は、ケース部材248の外側筒部262の先端面、言い換えれば、第1バルブシート271の底部261とは反対側の先端面よりも、軸方向において底部261側に配置されている。
ディスク246は、軸方向の底部261側の円環状の外周部に、ディスクバルブ247が離着座する。ディスク246は、これに積層されたディスク244,245と共に、ディスクバルブ247が離着座する第2バルブシート281を構成している。言い換えれば、第2バルブシート281はディスクバルブ247を着座時に支持する。ディスク244~246からなる第2バルブシート281はピストンロッド21を径方向内側に挿通させている。
第2バルブシート281は、ケース部材248の第1バルブシート271に対して、径方向内側に離間して配置されている。第2バルブシート281の底部261側の端面からディスクバルブ247の厚さ分だけ底部261側にオフセットした位置は、第1バルブシート271の底部261とは反対側の先端面よりも、軸方向において底部261側に位置している。ディスク244~246は、軸方向において底部261から遠いほど外径が小径となっている。これらディスク244~246は、薄い金属板からなっているため、ディスク244~246からなる第2バルブシート281は、撓み可能な構成となっている。これに対し、ケース部材248の第1バルブシート271は、第2バルブシート281と比べて剛性が高く、基本的に撓むことはない。第2バルブシート281は、ディスク244~246のそれぞれの厚みや外径、さらには枚数等を変更することで、ディスクバルブ247の支持剛性を調整することができるようになっている。
ディスク243の外径は、ケース部材248の内側筒部263の先端面の外径よりも若干大径の外径となっている。
ディスクバルブ247は、薄い一枚の金属板からなっており、撓み可能である。ディスクバルブ247は、緩衝器1に組み込まれる前の自然状態では全体が平板状をなしている。自然状態にあるディスクバルブ247は、図5に示すように、有孔円形平板状の外側環状部291と、外側環状部291の内径よりも小径の外径を有して外側環状部291の径方向内側に配置される有孔円形平板状の内側環状部292と、外側環状部291と内側環状部292とを接続する複数、具体的には2本の支持部293とを有している。外側環状部291と内側環状部292との間は、2本の支持部293を除いて空間となっている。ディスクバルブ247は、中心軸線を含む面を基準とする鏡面対称の形状をなしている。
外側環状部291は、外周面および内周面がいずれも円形で同心状に配置されており、言い換えれば、径方向の幅が一定の円環状をなしている。内側環状部292も、外周面および内周面がいずれも円形で同心状に配置されており、言い換えれば、径方向の幅が一定の円環状をなしている。2本の支持部293は、内側環状部292と外側環状部291との間に配置されており、内側環状部292に外側環状部291を同心状に支持する。
図4に示すように、内側環状部292は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を挿通させている。内側環状部292は、内径がピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能であって、外径がディスク246の外径、すなわち第2バルブシート281の外径よりも小径となっている。内側環状部292の外径は、ケース部材248の内側筒部263の先端面の外径よりも若干大径となっている。よって、ディスクバルブ247は、内側環状部292が、ディスク244~246と共に、ディスク243と内側筒部263とで軸方向にクランプされる。なお、内側環状部292の外径は、ケース部材248の内側筒部263の先端面の外径よりも小径であってもよい。
外側環状部291は、内径がディスク246の外径、すなわち第2バルブシート281の外径よりも小径となっており、外径がケース部材248の外側筒部262の先端面の内径、すなわち第1バルブシート271の直径よりも大径となっている。外側環状部291の外径、すなわちディスクバルブ247の外径は、メインバルブ221の外径よりも大径となっている。
環状のディスクバルブ247は、外側環状部291が、ケース部材248の第1バルブシート271に、外周側の外周側離接部301(離接部)において離接可能となっている。外側環状部291は、外周側離接部301が、全周にわたって第1バルブシート271に着座すると第1バルブシート271との隙間を閉塞し、第1バルブシート271から離座すると第1バルブシート271との隙間を開放する。
また、外側環状部291は、ディスク246の第2バルブシート281に、内周側の内周側離接部302が離接可能となっている。外側環状部291は、内周側離接部302が、全周にわたって第2バルブシート281に着座すると第2バルブシート281との隙間を閉塞し、第2バルブシート281から離座すると第2バルブシート281との隙間を開放する。外側環状部291が第2バルブシート281に着座する状態にあるとき、ディスク246は、ディスクバルブ247の外側環状部291と内側環状部292との隙間を閉塞する。
よって、ディスクバルブ247は、ケース部材248の第1バルブシート271に外周側の外周側離接部301が離接可能に配置されている。第2バルブシート281は、ディスクバルブ247の軸方向の第1バルブシート271とは反対側に設けられて、ディスクバルブ247の外周側離接部301よりも径方向内側の内周側離接部302を離接可能に支持している。ディスクバルブ247は、第1バルブシート271および第2バルブシート281に離接可能に配置される外側環状部291と、ピストンロッド21に嵌合して軸方向に固定される内側環状部292と、外側環状部291と内側環状部292とを接続する支持部293とを有している。
図5に示すように、2本の支持部293は、2か所の外側接続部311と、2か所の内側接続部312と、2か所の連結腕部313とを有している。
2か所の外側接続部311は、ディスクバルブ247の径方向において、中心よりも同じ一側に、ディスクバルブ247の周方向に間隔をあけて配置されて、外側環状部291と接続されている。2か所の外側接続部311は、いずれも外側環状部291の内周縁部から外側環状部291の径方向内側に突出している。
2か所の内側接続部312は、ディスクバルブ247の径方向において、中心よりも同じ逆側、すなわち2か所の外側接続部311とは反対側に、ディスクバルブ247の周方向に間隔をあけて配置されて、内側環状部292と接続されている。2か所の内側接続部312は、いずれも内側環状部292の外周縁部から内側環状部292の径方向外側に突出している。
ここで、2か所の内側接続部312の間隔は、2か所の外側接続部311の間隔よりも広くなっている。2か所の内側接続部312を結ぶ直線と、2か所の外側接続部311を結ぶ直線とは平行をなしている。よって、2か所の内側接続部312を結ぶ直線の中点と、2か所の外側接続部311を結ぶ直線の中点とを結ぶ直線は、内側環状部292および外側環状部291の中心、すなわちディスクバルブ247の中心を通る。ディスクバルブ247の周方向において一方で近い外側接続部311と内側接続部312との距離は、ディスクバルブ247の周方向において他方で近い外側接続部311と内側接続部312との距離と同等になっている。この距離は、2か所の内側接続部312を結ぶ距離よりも長く、2か所の外側接続部311を結ぶ距離よりも長い。
2か所の連結腕部313は、それぞれがディスクバルブ247の周方向に近い外側接続部311と内側接続部312とを接続させるように設けられている。すなわち、一方の連結腕部313は、一方でディスクバルブ247の周方向において近い一方の外側接続部311と一方の内側接続部312とを接続させており、これら外側接続部311と内側接続部312とで一方の支持部293を構成している。また、他方の連結腕部313は、他方でディスクバルブ247の周方向において近い他方の外側接続部311と他方の内側接続部312とを接続させており、これら外側接続部311と内側接続部312とで他方の支持部293を構成している。
ここで、2か所の連結腕部313は、外側環状部291の内周面および内側環状部292の外周面に沿って円弧状に延びており、外側環状部291および内側環状部292と同心の同一円上に配置されている。2か所の連結腕部313は、外側環状部291の内周面からの径方向距離と、内側環状部292の外周面からの径方向距離とが同等になっている。
図4に示すように、ディスクバルブ247の外側環状部291が、内周側の内周側離接部302において第2バルブシート281に着座すると、第2バルブシート281を構成するディスク246は、ディスクバルブ247の外側環状部291と内側環状部292との間を遮断する。言い換えれば、第2バルブシート281は、ディスクバルブ247の外側環状部291と内側環状部292との間を遮断可能に設けられている。ディスクバルブ247と、ケース部材248とが、これらの内側にケース内室321を形成している。
ケース内室321は、内側筒部263の通路溝272内および大径穴部277内の通路を介してピストンロッド21のピストンロッド通路部46に常時連通している。図3に示すように、パイロット室111もディスク56の切欠部101内のオリフィス112を介してピストンロッド21のピストンロッド通路部46に常時連通している。さらに、周波数感応機構121の圧力室191も、オリフィス193を介してピストンロッド21のピストンロッド通路部46に常時連通している。そして、ピストンロッド通路部46は、図4に示すように、ピストン18の大径穴部45内の通路と、ディスク201の切欠部211内の導入オリフィス212と、ピストン18の環状溝40内および複数の通路穴39内の通路とを介して、下室20に常時連通している。よって、ケース内室321、パイロット室111および圧力室191は、下室20に常時連通している。
ディスクバルブ247の外側環状部291の内周側離接部302を含む内周側は、第2バルブシート281に離着座可能なサブバルブ331を構成している。サブバルブ331は、上室19および下室20のうちの上室19側に設けられている。
サブバルブ331は、第2バルブシート281から離座することで、第2バルブシート281との隙間と、ディスクバルブ247の外側環状部291および内側環状部292の間の通路とを介して上室19とケース内室321とを連通させることになり、これにより、上室19を下室20に連通させる。このとき、サブバルブ331は、第2バルブシート281との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ331は、ケース内室321へ上室19から油液を第2バルブシート281との隙間を介して流入させる際に開く流入バルブであり、ケース内室321から上室19への第2バルブシート281との隙間を介しての油液の流出は規制する。
開弁時に出現するサブバルブ331および第2バルブシート281の間の通路と、ディスクバルブ247の外側環状部291および内側環状部292の間の通路と、ケース内室321と、ケース部材248の通路溝272内および大径穴部277内の通路と、ピストンロッド21のピストンロッド通路部46と、ピストン18の大径穴部45内の通路と、ディスク201の切欠部211内の導入オリフィス212と、環状溝40内および複数の通路穴39内の通路とが、ピストン18の上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す第2通路332を構成している。
第2通路332は、図3に示すように、ピストンロッド通路部46に連通するケース部材55の大径穴部93内の通路と、ディスク56の切欠部101内のオリフィス112と、パイロット室111と、ピストンロッド通路部46に連通するハウジング122の大径穴部156内の通路と、流路溝151内のオリフィス193と、チェック弁195により連通室192と仕切られている圧力室191とを含んでいる。
第2通路332は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。ハードバルブ110は、開弁してバルブシート84から離座すると、第2通路332のパイロット室111を下室20に連通させる。
第2通路332は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内のピストンロッド通路部46を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。ピストンロッド21を切り欠いて形成する以外にも、図4に示すケース部材248の大径穴部277内の通路と、ピストン18の大径穴部45内の通路と、図3に示すケース部材55の大径穴部93の通路と、ハウジング122の大径穴部156内の通路とに開口するように、ピストンロッド21の内部を穴状に貫通してピストンロッド通路部46を形成しても良い。すなわち、第2通路332は、ピストンロッド21を切欠き、または貫通して形成されるピストンロッド通路部46を含んでいれば良い。
図4に示すサブバルブ331と、第2バルブシート281とが、伸び側の第2通路332に設けられ、この第2通路332を開閉し、この第2通路332から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第2減衰力発生機構333を構成している。伸び側の第2減衰力発生機構333を構成するサブバルブ331は伸び側のサブバルブである。図2に示すように、サブバルブ331と第2バルブシート281とからなる第2減衰力発生機構333は、ピストンロッド21を径方向内側に挿通させており、第2通路332において、2つの上室19および下室20のうちの一方の上室19側に配置されている。
第2通路332において、第2減衰力発生機構333が開状態にあるときに、図4に示すディスク201の切欠部211内の導入オリフィス212が、流路断面積が固定の部分の中で絞られることになり、第2通路332における絞りとなる。導入オリフィス212は、サブバルブ331が開弁し、第2通路332で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ331よりも下流側に配置されている。言い換えれば、導入オリフィス212は、第2通路332におけるサブバルブ331よりも下室20側に配置されている。ケース内室321、図3に示すパイロット室111および圧力室191は、ピストンロッド通路部46に連通しており、いずれも図4に示す導入オリフィス212を介して下室20に常時連通している。
伸び側の第2減衰力発生機構333は、第2バルブシート281およびこれに当接するサブバルブ331のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第2減衰力発生機構333は、第2バルブシート281およびサブバルブ331が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路332には上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第2通路332は上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
図2に示すように、上室19と下室20とを連通可能な伸び側の第2通路332は、同じく上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路75と並列しており、並列する第1通路75と第2通路332とのうちの一方の第1通路75に第1減衰力発生機構41が、他方の第2通路332に第2減衰力発生機構333がそれぞれ設けられている。よって、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構333は、並列に配置されている。
図4に示すように、ディスクバルブ247の外側環状部291の外周側離接部301を含む外周側は、第1バルブシート271に離着座可能なサブバルブ341を構成している。サブバルブ341は、上室19および下室20のうちの上室19側に設けられている。
サブバルブ341は、第1バルブシート271から離座することで、第1バルブシート271との隙間を介してケース内室321と上室19とを連通させることになり、これにより、下室20を上室19に連通させる。このとき、サブバルブ341は、第1バルブシート271との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ341は、ケース内室321内から油液を上室19に、第1バルブシート271との隙間を介して排出する際に開く排出バルブであり、上室19からケース内室321内への第1バルブシート271との隙間を介しての油液の流入は規制する。
ピストン18の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路と、ディスク201の導入オリフィス212と、ピストン18の大径穴部45内の通路と、ピストンロッド21のピストンロッド通路部46と、ケース部材248の大径穴部277内および通路溝272内の通路と、ケース内室321と、開弁時に出現するサブバルブ341および第1バルブシート271の間の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す第2通路342を構成している。
第2通路342は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。第2通路342は、ピストンロッド通路部46に連通する図3に示す周波数感応機構121の縮み行程において開状態になるチェック弁195を含んでいる。第2通路342は、ピストンロッド通路部46に連通するケース部材55の大径穴部93内の通路と、ディスク56のオリフィス112と、パイロット室111と、ピストンロッド通路部46に連通するハウジング122の大径穴部156内の通路、オリフィス193、圧力室191、開弁時に出現するチェック弁195の通路および連通室192と、連通路185とを含んでいる。チェック弁195を構成する区画ディスク124は、第2通路332,342の一方である伸び側の第2通路332における圧力室191から連通室192への油液の流通を遮断し、他方である縮み側の第2通路342における連通室192から圧力室191への油液の流通を許容するよう構成されている。よって、周波数感応機構121は、伸び行程においてのみ周波数感応作動を行い、縮み工程においては周波数感応機能がキャンセルされる。
なお、区画ディスク124が、圧力室191および連通室192の圧力状態にかかわらず、圧力室191および連通室192間の油液の流通を常時遮断するように設定しても良い。つまり、区画ディスク124は、圧力室191および連通室192間の両方向の流通を遮断しても良い。言い換えれば、区画ディスク124は、圧力室191および連通室192間の少なくとも一方向への作動流体の流通を遮断すれば良い。
第2通路342は、第2通路332と同様、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内のピストンロッド通路部46を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。ピストンロッド21を切り欠いて形成する以外にも、上記のように、ピストンロッド21の内部を穴状に貫通してピストンロッド通路部46を形成しても良い。すなわち、第2通路342は、ピストンロッド21を切欠き、または貫通して形成されるピストンロッド通路部46を含んでいれば良い。
図4に示すように、サブバルブ341と、ケース部材248の外側筒部262に形成された環状の第1バルブシート271とが、縮み側の第2通路342に設けられ、この第2通路342を開閉し、この第2通路342から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第2減衰力発生機構343を構成している。言い換えれば、この第2減衰力発生機構343は、その第1バルブシート271がケース部材248に設けられている。縮み側の第2減衰力発生機構343を構成するサブバルブ341は縮み側のサブバルブである。サブバルブ341と第1バルブシート271とからなる第2減衰力発生機構343は、ピストンロッド21を径方向内側に挿通させており、第2通路342における2つの上室19および下室20のうちの一方の上室19側に配置されている。
図2に示すように、第2減衰力発生機構333,343を有する極微低速バルブ機構231と、周波数感応機構121とは、極微低速バルブ機構231が上室19に配置され、周波数感応機構121が下室20に配置されている。言い換えれば、極微低速バルブ機構231は、ピストン18の上室19側に配置され、周波数感応機構121は、ピストン18の下室20側に配置されている。
第2通路342において、第2減衰力発生機構343が開状態にあるときに、図4に示すディスク201の切欠部211内の導入オリフィス212が、流路断面積が固定の部分の中で前後よりも絞られることになり、第2通路342においても絞りとなる。導入オリフィス212は、第2通路332,342に共通である。導入オリフィス212は、サブバルブ341が開弁して第2通路342で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ341よりも上流側に配置されている。言い換えれば、導入オリフィス212は、第2通路342におけるサブバルブ341よりも下室20側に配置されている。導入オリフィス212は、縮み側の第1減衰力発生機構42を構成する部品のうちの、ピストン18に当接するディスク201を切り欠いて形成されている。
縮み側の第2減衰力発生機構343は、第1バルブシート271およびこれに当接するサブバルブ341のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第2減衰力発生機構343は、第1バルブシート271およびサブバルブ341が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路342には上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第2通路342は上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
図2に示すように、周波数感応機構121は、第2通路332,342の共通部分に設けられるハウジング122と、ハウジング122内に設けられて第2通路332,342の共通部分を一側の上室19側と他側の下室20側とに画成しハウジング122内に圧力室191を形成する区画ディスク124とを備えている。
緩衝器1は、少なくともピストン18内で軸方向に油液を通過させる流れとしては、上室19と下室20とが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構333,343を介してのみ連通可能である。よって、緩衝器1は、少なくともピストン18内を軸方向に通過する油液の通路上には、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
上室19と下室20とを連通可能な縮み側の第2通路342は、同じく上室19と下室20とを連通可能な縮み側の通路である第1通路222と、下室20側の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路を除いて並列しており、第1通路222と第2通路342との並列部分には、第1通路222に第1減衰力発生機構42が、第2通路342に第2減衰力発生機構343がそれぞれ設けられている。よって、いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構343は、並列に配置されている。
以上により、極微低速バルブ機構231の第2減衰力発生機構333,343は、図4に示すように、底部261と外側筒部262と内側筒部263とを有する有底筒状のケース部材248の外側筒部262に形成された環状の第1バルブシート271と、この第1バルブシート271に外周側の外周側離接部301が離接可能に配置される環状のディスクバルブ247と、ディスクバルブ247の軸方向の第1バルブシート271とは反対側に設けられ、ディスクバルブ247の外周側離接部301よりも径方向内側の内周側離接部302を離接可能に支持する第2バルブシート281と、を備えている。第2減衰力発生機構333は、第2通路332の上室19側の端部位置に設けられており、第2減衰力発生機構343は、第2通路342の上室19側の端部位置に設けられている。
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材351と、このベースバルブ部材351の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク352と、ベースバルブ部材351の上側つまり下室20側に設けられるディスク353と、ベースバルブ部材351にディスク352およびディスク353を取り付ける取付ピン354とを有している。
ベースバルブ部材351は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン354が挿通される。ベースバルブ部材351には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴355と、これら通路穴355よりもベースバルブ部材351の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴356とが形成されている。リザーバ室6側のディスク352は、下室20から通路穴355を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方で、リザーバ室6から下室20への通路穴355を介する油液の流れを抑制する。ディスク353は、リザーバ室6から通路穴356を介する下室20への油液の流れを許容する一方で、下室20からリザーバ室6への通路穴356を介する油液の流れを抑制する。
ディスク352は、ベースバルブ部材351とによって、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すと共に減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ機構357を構成している。ディスク353は、ベースバルブ部材351とによって、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ機構358を構成している。なお、サクションバルブ機構358は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生することなく油液を流す機能を果たす。
図2に示すように、ピストンロッド21の取付軸部28に、極微低速バルブ機構231、メインバルブ221、ピストン18、メインバルブ65、ケース部材55、ハードバルブ110および周波数感応機構121等を組み付けて、取付軸部28のオネジ31にナット361を螺合させる。すると、ナット361とピストンロッド21の軸段部29とが、周波数感応機構121の区画ディスク124を除いて、極微低速バルブ機構231、メインバルブ221、ピストン18、メインバルブ65、ケース部材55、ハードバルブ110および周波数感応機構121等の少なくとも内周側を軸方向にクランプする。
このような取付状態では、極微低速バルブ機構231の第2バルブシート281を構成するディスク244~246と、ディスクバルブ247とが、ディスク243とケース部材248の内側筒部263とに内周側がクランプされる。このとき、ディスクバルブ247は、図4に示すように、内側環状部292においてクランプされることになり、図5に示す支持部293および外側環状部291はクランプされない。それと共に、図4に示すように、ディスクバルブ247の外側環状部291のサブバルブ331が内周側離接部302において、第2バルブシート281にピストン18側から全周にわたって当接し、外側環状部291のサブバルブ341が外周側離接部301において、第1バルブシート271にピストン18とは反対側から全周にわたって当接する。
ここで、第1バルブシート271および第2バルブシート281の軸方向の位置とディスクバルブ247の厚さとの関係から、第1バルブシート271および第2バルブシート281に同時に当接する外側環状部291は、径方向外側ほど軸方向においてピストン18から離れるようにテーパ状に変形する。言い換えれば、外側環状部291は、第1バルブシート271に当接する外周側離接部301が、第2バルブシート281に当接する内周側離接部302よりも軸方向においてピストン18とは反対側に位置するようにテーパ状に変形する。
また、この取付状態において、メインバルブ221は、ディスク201を介してピストン18の環状溝40よりも径方向内側の部分とディスク204とに内周側がクランプされると共に、ピストン18の環状溝40よりも径方向外側のバルブシート48に全周にわたって当接する。
また、この取付状態において、図2に示すように、メインバルブ65は、ディスク50を介してピストン18の環状溝38よりも径方向内側の部分とディスク53とに内周側がクランプされると共に、ディスク51においてピストン18の環状溝38よりも径方向外側のバルブシート47に全周にわたって当接する。
また、この取付状態において、ハードバルブ110は、ディスク56を介してケース部材55の内側円筒状部82とディスク61とに内周側がクランプされると共に、ディスク57においてケース部材55のバルブシート84に全周にわたって当接する。
また、この取付状態において、図3に示すように、区画ディスク124は、ディスク161において、ハウジング122の支持部147に当接すると共にディスク125に全周にわたって当接する。
以上の緩衝器1の油圧回路図は、図6に示すようになる。すなわち、上室19と下室20とを結ぶ伸び側の第1通路75に第1減衰力発生機構41のメインバルブ65が設けられ、下室20と上室19とを結ぶ縮み側の第1通路222に第1減衰力発生機構42のメインバルブ221が設けられている。また、上室19と下室20とを結ぶ伸び側の第2通路332に第2減衰力発生機構333のサブバルブ331が設けられ、下室20と上室19とを結ぶ縮み側の第2通路342に第2減衰力発生機構343のサブバルブ341が設けられている。また、第2通路332および第2通路342の共通部分であるピストンロッド通路部46と第1通路222の下室20に常時連通する部分とを結ぶ通路に導入オリフィス212が設けられ、ピストンロッド通路部46と圧力室191とを結ぶ通路にオリフィス193が設けられている。また、圧力室191と下室20とを結ぶ通路にチェック弁195が設けられ、第1減衰力発生機構41のメインバルブ65に背圧を付与するパイロット室111とピストンロッド通路部46とを結ぶ通路にオリフィス112が設けられている。また、パイロット室111と下室20との間に第1減衰力発生機構41のハードバルブ110が設けられている。
緩衝器1は、ピストン18内を軸方向に通過する油液の流れでは、第1減衰力発生機構41のメインバルブ65およびハードバルブ110、第1減衰力発生機構42のメインバルブ221、第2減衰力発生機構333のサブバルブ331および第2減衰力発生機構343のサブバルブ341のいずれも開かなければ、上室19側から下室20に向けて油液が流れ出さない構造となっている。そして、緩衝器1は、通常の微低速領域のオリフィス特性については、ピストンロッド通路部46から、下室20へ通じる導入オリフィス212で設定するようになっている。言い換えれば、図4に示すように、緩衝器1は、上室19側の最もピストン本体35側に位置するところに切欠部211を有するディスク201があり、この切欠部211の面積で導入オリフィス212を設定する。緩衝器1は、縮み行程では、通常のピストンバルブとなってオリフィスレスとなる。また、緩衝器1には、下室20から上記導入オリフィス212、ピストンロッド通路部46および極微低速バルブ機構231を通って、上室19へ流れる流路がある。
いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構343のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ221は、複数枚のディスク202,203が積層されて構成されているため、一枚のディスクバルブ247からなる第2減衰力発生機構343のサブバルブ341よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構343が開弁し、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構343が共に開弁することになる。サブバルブ341は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生する極微低速バルブである。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構333,343のいずれにも下室20を上室19に連通させる固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構343が開弁するまで、油液は流れない。このため、減衰力は急激に立ち上がる。ピストン速度が、第2減衰力発生機構343が開弁する第1所定値よりも高速の領域であって、第1所定値よりも高速の第2所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構343が開弁して第2通路342を介して下室20から上室19に油液が流れる。
つまり、サブバルブ341が第1バルブシート271から離座して、縮み側の第2通路342で下室20と上室19とを連通させる。よって、下室20の油液が、一方で、ピストン18の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路と、導入オリフィス212とを介して、ピストンロッド21の通路切欠部30内のピストンロッド通路部46に流れ、他方で、図3に示す周波数感応機構121の連通路185および連通室192から、チェック弁195を開いて圧力室191に流れ、オリフィス193を介してピストンロッド通路部46に流れる。そして、ピストンロッド通路部46から、図4に示すケース部材248の大径穴部277内および通路溝272内の通路と、ケース内室321と、第2減衰力発生機構343のサブバルブ341および第1バルブシート271の間の通路と、を介して上室19に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。このとき、ピストン速度が上がると生じる、第2減衰力発生機構343と直列に設けられた導入オリフィス212およびオリフィス193による圧力損失で、極微低速領域の減衰力の傾きが決まる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第2所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構343が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、上記と同様にサブバルブ341が第1バルブシート271から離座して、縮み側の第2通路342で下室20から上室19に油液を流すことになる上、メインバルブ221がバルブシート48から離座して、縮み側の第1通路222でも下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、第2通路342に加えて、第1通路222を構成する複数の通路穴39内および環状溝40内の通路とメインバルブ221およびバルブシート48の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
以上により、緩衝器1は、縮み行程で下室20から上室19に油液を流す流路を第1通路222と第2通路342との並列で設け、メインバルブ221とサブバルブ341とを並列で設けている。また、導入オリフィス212およびオリフィス193は、第2通路342においてサブバルブ341と直列に接続されている。
なお、縮み行程においては、ベースバルブ25の減衰バルブ機構357による減衰力特性も合わせた特性となる。
いずれも伸び側の図3に示す第1減衰力発生機構41および図4に示す第2減衰力発生機構333のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ65は、複数枚のディスク51およびパイロットディスク52が積層されて構成されているため、一枚のディスクバルブ247からなる第2減衰力発生機構333のサブバルブ331よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構333が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構333が共に開弁することになる。サブバルブ331は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生する極微低速バルブである。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構333,343のいずれにも上室19を下室20に連通させる固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構333が開弁するまで油液は流れない。このため、ピストン速度が、第3所定値未満での伸び行程においては、減衰力は急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第2減衰力発生機構333が開弁する第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構333が開弁する。
つまり、サブバルブ331が第2バルブシート281から離座して、伸び側の第2通路332で上室19と下室20とを連通させる。よって、上室19の油液が、第2通路332を構成する、開状態のサブバルブ331と第2バルブシート281との間の通路と、ディスクバルブ247の外側環状部291と内側環状部292との間の通路と、ケース内室321と、ケース部材248の通路溝272内および大径穴部277内の通路と、ピストンロッド21のピストンロッド通路部46と、ピストン18の大径穴部45内の通路と、導入オリフィス212と、ピストン18の環状溝40内および複数の通路穴39内の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。このとき、ピストン速度が上がると生じる、第2減衰力発生機構333と直列に設けられた導入オリフィス212による圧力損失で、極微低速領域の減衰力の傾きが決まる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構333が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。つまり、サブバルブ331が第2バルブシート281から離座して、伸び側の第2通路332で上室19から下室20に油液を流すことになる上、メインバルブ65がバルブシート47から離座して、伸び側の第1通路75で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、第2通路332に加えて、第1通路75の複数の通路穴37内および環状溝38内の通路と、メインバルブ65およびバルブシート47の間の通路とを介して下室20に流れる。
このとき、メインバルブ65の開弁圧は、第2通路332の一部を構成するパイロット室111の圧力に応じて変化する。すなわち、ピストンロッド21への入力が低周波であって大ストロークの時は、第2通路332の一部を構成する周波数感応機構121の圧力室191に油液が流入し、圧力室191の容積を大きくするように、区画ディスク124を大きく変形させることになるが、区画ディスク124は、その後、ストッパ部材127によって変形が規制されることになる。よって、さらに油液が圧力室191が流入しようとすると、圧力室191の圧力が上がり、第2通路332の一部を構成するパイロット室111の圧力も上がって、メインバルブ65の開弁圧も上がり、ハードな減衰力特性となる。
一方、ピストンロッド21への入力が高周波であって小ストロークの時は、第2通路332の一部を構成する圧力室191に油液が流入し、圧力室191の容積を大きくするように、区画ディスク124を変形させることになるが、その変形量は小さい。よって、区画ディスク124は、ストッパ部材127によって変形が規制されることなく、圧力室191に油液が流入した分だけ変形する。その結果、圧力室191の圧力は上がらず、よって、パイロット室111の圧力も上昇しないため、メインバルブ65の開弁圧が低く、ソフトな減衰力特性となる。
上記した特許文献1には、同一行程で開弁するバルブを2つ有する緩衝器が記載されている。同一行程で開弁するバルブを2つ有することで、一方のバルブを他方のバルブよりもピストン速度が低速の領域で開弁させ、これよりも高速の領域では両方のバルブを開弁させることが可能となる。このような緩衝器では、ピストン速度が低速の領域からバルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。このような緩衝器において、周波数に依存して減衰力を可変とする要望がある。
第1実施形態の緩衝器1は、例えば伸び行程でのピストン18の移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に作動流体が移動する第1通路75および第2通路332を並列に設けると共に、第1通路75に第1減衰力発生機構41を、第2通路332に第2減衰力発生機構333を設けている。そして、ピストン速度が低速の領域では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構333が開弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構333が共に開弁するように構成している。これにより、ピストン速度が低速の領域からバルブ特性の減衰力を得ることができる。
また、第1実施形態の緩衝器1は、ハウジング122と、その内側に設けられて第2通路332を上室19側と下室20側とに画成してハウジング122内に圧力室191を形成する区画ディスク124とを備える周波数感応機構121を設けている。これにより、周波数に依存して減衰力を可変とすることが可能となる。
すなわち、緩衝器1は、極微低速バルブ機構231を設けることで極微低速減衰力を出すことができ、その上で、周波数感応機構121を設けることで、周波数感応の機能を出すことができる。導入オリフィス212が設けられていることから、導入オリフィス212を油液が比較的円滑に通過するピストン速度の極微低速領域では、周波数感応機構121への油液の流れを抑えることができるため、周波数によらずバルブ特性を発揮することができる。また、導入オリフィス212を油液が円滑に通過できないピストン速度の高速域では、周波数感応機構121への油液の流れを発生させることになって、周波数依存性を発揮することができる。
極微低速バルブ機構231を付けることで、緩衝器1が取り付けられた車は、極微低速バルブ機構231の効果として、微舵入力時および良路走行時は、乗り居心地のフラット感および直進安定性が向上する。また、ピストン速度が速くなると、高周波で小ストロークの入力、すなわち乗り心地を悪化させる高周波振動の入力に対してはソフトな減衰力特性となり振動伝達を遮断して乗り心地を改善させることができ、低周波で大ストロークの入力に対しては、ハードな減衰力特性となり、ばね上挙動を抑えて安定させ、急操舵に対しての安定感も向上させることができる。
図7は、第1実施形態の緩衝器1を加振した際に得られるストロークと減衰力との関係を示すリサージュ波形を示している。図7において、A1で示すように、高周波振動の入力に対してはソフトな減衰力特性になり、低周波振動の入力に対してはハードな減衰力特性になって、周波数に依存して減衰力が可変となることがわかる。
また、図8は、第1実施形態の緩衝器1を加振した際に得られる周波数と減衰力との関係を示す特性線図である。図8においても、A2で示すように、高周波振動の入力に対してはソフトな減衰力特性になり、低周波振動の入力に対してはハードな減衰力特性になって、周波数に依存して減衰力が可変となることがわかる。
また、図9は、第1実施形態の緩衝器1を加振した際に得られるストロークと減衰力との関係を示すリサージュ波形で、高周波振動X1と低周波振動X2とを重ねて示したものである。図9に示すように、高周波振動X1に対してはソフトな減衰力特性になり、低周波振動X2に対してはハードな減衰力特性になって、周波数に依存して減衰力が可変となることがわかる。
また、図10は、第1実施形態の緩衝器1を加振した際に得られるピストン速度と減衰力との関係を示すもので、高周波振動X3と低周波振動X4とを重ねて示したものである。図10から、A3に示すように、高周波振動X3と低周波振動X4とで極微低速の減衰力の周波数による変化を抑えながら、A4に示すように、ピストン速度が低速域以上の領域においては、ピストン速度が速い高周波振動X3とピストン速度が遅い低周波振動X4とで減衰力をソフトおよびハードに切り替えられることがわかる。
また、第1実施形態の緩衝器1は、第2減衰力発生機構333が伸び行程での上流側の上室19に配置され、周波数感応機構121が伸び行程での下流側の下室20に配置されるため、連通室192を下室20に常時連通させる構造にできる。よって、周波数感応機構121をコンパクトに構成することができる。
また、第1実施形態の緩衝器1は、第2通路332,342が、ピストンロッド21を切欠き、または貫通して形成されるピストンロッド通路部46を有するため、コンパクトに構成することができる。
第1実施形態の緩衝器1は、伸び行程で開弁する2つの第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構333を有し、縮み行程で開弁する2つの第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構343を有している。このような構成であっても、第2減衰力発生機構333,343が、底部261と外側筒部262とを有する有底筒状のケース部材248の外側筒部262に形成された環状の第1バルブシート271と、ケース部材248の第1バルブシート271に外周側の外周側離接部301が離接可能に配置される環状のディスクバルブ247と、ディスクバルブ247の第1バルブシート271とは反対側に設けられ、ディスクバルブ247の外周側離接部301よりも径方向内側の内周側離接部302を離接可能に支持する第2バルブシート281と、を備える構造となっている。このため、構造の簡素化を図ることが可能となり、部品点数の低減および軸方向長さの長大化を抑制できる。
また、第2減衰力発生機構333,343を構成するディスクバルブ247は、第1バルブシート271および第2バルブシート281に離接可能に配置される外側環状部291と、ピストンロッド21を挿通させてピストンロッド21に固定される内側環状部292と、これらを接続する支持部293とを有しているため、第1バルブシート271および第2バルブシート281に離接して開閉する外側環状部291の径方向の位置ずれを内側環状部292および支持部293で抑制しつつ、外側環状部291を他の部分に連結されないフリーバルブとほぼ同様に動作させることが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図11,図12に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図11に示すように、第2実施形態の緩衝器1Aにおいては、第1実施形態のピストンロッド21にかえて、これとは一部異なるピストンロッド21Aを有している。ピストンロッド21Aは、取付軸部28よりも軸方向長さが短い取付軸部28Aを有している。取付軸部28Aには、ピストンロッド21Aの軸方向における長さが通路切欠部30よりも短い通路切欠部30Aが形成されている。よって、ピストンロッド21Aは、その軸方向における長さがピストンロッド通路部46よりも短いピストンロッド通路部46Aを有している。
また、緩衝器1Aにおいては、ピストン18とナット361との間の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、ピストン18のバルブシート47側には、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク400と、一枚のディスク401と、一枚のパイロットディスク52Aと、複数枚(具体的には5枚)のディスク403と、一枚のバネディスク404と、一枚のディスク405と、一つのハウジング55Aと、複数枚(具体的には4枚)のディスク407と、一枚のディスク408と、一枚のディスク409と、一枚の環状部材410とが、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aをそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。
ディスク400,401,403,405,407~409、バネディスク404、ハウジング55Aおよび環状部材410は、いずれも金属製である。ディスク400,401,403,405,407~409および環状部材410は、いずれも内側にピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。バネディスク404、パイロットディスク52Aおよびハウジング55Aは、いずれも内側にピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合可能な円環状をなしている。
ハウジング55Aは、有底筒状で環状であり、径方向の中央に厚さ方向に貫通する貫通孔80Aが形成されている。ハウジング55Aは、有孔円板状の底部81A(第1底部)と、底部81Aの内周縁部から、底部81Aの軸方向に沿って両側に突出する円筒状の内側円筒状部82Aと、底部81Aの外周縁部から、底部81Aの軸方向に沿って一側に突出する円筒状の外側円筒状部83A(第1筒部)と、底部81Aの径方向における中間位置から、底部81Aの軸方向に沿って外側円筒状部83Aとは反対側に突出する環状のバルブシート84Aと、を有している。外側円筒状部83Aの底部81Aからの突出量は、内側円筒状部82Aの外側円筒状部83A側の突出量よりも大きい。ハウジング55Aは、内側円筒状部82Aの内周側の貫通孔80Aにピストンロッド21Aの取付軸部28Aを貫通させている。
図12に示すように、底部81Aには、その軸方向および径方向の外側円筒状部83A側に、中心軸線に対し直交する平坦な円環状のシート面431を有するディスク当接部432が形成されている。ディスク当接部432の径方向の中間位置には、シート面431から軸方向に凹むストッパ面433を有する円環状の凹部434が形成されている。凹部434は深さが深くなるほど径方向の幅が狭くなる形状である。ストッパ面433は、底部81Aの中心軸線を含む面での断面が周方向位置によらず一定の円弧状をなしている。
底部81Aには、軸方向の外側円筒状部83A側の径方向のディスク当接部432よりも内側に、径方向内側ほどシート面431からの高さが高くなるテーパ面435を有するテーパ部436が形成されている。テーパ部436は底部81Aの径方向における内側円筒状部82A側の端部に設けられている。底部81Aと内側円筒状部82Aと外側円筒状部83Aとバルブシート84Aとディスク当接部432と凹部434とテーパ部436とは同軸状に配置されており、これらの中心軸線がハウジング55Aの中心軸線となっている。
底部81Aには、凹部434の最も深い底位置、すなわち凹部434の径方向の幅の中央位置に、底部81Aの軸方向に沿って貫通する貫通穴437が形成されている。底部81Aには、貫通穴437が、底部81Aの周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、貫通穴437は底部81Aに少なくとも一つ設けられていれば良い。貫通穴437は、底部81Aの径方向において、バルブシート84Aよりも外側に配置されている。
ハウジング55A内には、底部81Aに対向して円環状の区画ディスク124A(区画部材)が設けられている。区画ディスク124Aは、金属製の平板であり、その外径が、ディスク当接部432のシート面431の最大径、言い換えれば外側円筒状部83Aの内径よりも若干小径かつストッパ面433の最大径よりも大径であり、その内径が、ディスク当接部432のシート面431の最小径よりも若干大径かつストッパ面433の最小径よりも小径となっている。これにより、区画ディスク124Aは、径方向移動を規制するように外側円筒状部83Aで案内されて軸方向に移動可能であり、シート面431に面接触してストッパ面433の全体を覆うようになっている。区画ディスク124Aはピストンロッド21Aの取付軸部28Aを貫通させている。
底部81Aの凹部434の最深位置に形成された貫通穴437は、この区画ディスク124Aと径方向の位置を合わせ軸方向に対向して設けられている。区画ディスク124Aは、シート面431に面接触することで貫通穴437を閉塞し、シート面431から離れることで貫通穴437を開放する。また、区画ディスク124Aは、凹部434内に入り込むように弾性変形可能であり、その際に、ストッパ面433とシート面431との径方向両側の境界周縁部、あるいはストッパ面433の全面に当接して、貫通穴437の閉塞状態を維持する。
底部81Aには、テーパ部436の径方向の中間位置に、ハウジング55Aの軸方向に沿って貫通する貫通穴438が形成されている。貫通穴438は底部81Aの周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、貫通穴438は底部81Aに少なくとも一つ設けられていれば良い。貫通穴438は、底部81Aの径方向において、バルブシート84Aと内側円筒状部82Aとの間に配置されている。これにより、貫通穴438は、ハウジング55Aの径方向すなわち底部81Aの径方向において貫通穴437よりも内側に設けられている。
内側円筒状部82Aの内周の貫通孔80Aは、軸方向のバルブシート84A側に、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合させる小径穴部92Aを有しており、軸方向のバルブシート84Aとは反対側に、小径穴部92Aよりも大径の大径穴部93Aを有している。内側円筒状部82Aを軸方向に貫通して両側に延びる取付軸部28Aは、その一部が軸方向においてハウジング55A内に配置されることになる。
ディスク400は、バルブシート47の先端面の内径よりも小径の外径となっている。ディスク401は、ピストン18のバルブシート47の先端面の外径よりも大径の外径となっている。ディスク401は、バルブシート47に当接可能であり、バルブシート47に対し離間および当接することでピストン18に形成された環状溝38内および通路穴37内の通路の開口を開閉する。
パイロットディスク52Aは、金属製のディスク71Aと、ディスク71Aに固着されるゴム製のシール部材72Aとからなっている。ディスク71Aは、内側にピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしており、ディスク401の外径よりも若干大径の外径となっている。シール部材72Aは、ディスク71Aのピストン18とは反対の外周側に固着されており、円環状をなしている。言い換えれば、パイロットディスク52Aは、その外周部に環状のシール部材72Aを有している。
シール部材72Aは、ハウジング55Aの外側円筒状部83Aの内周面に全周にわたり摺動可能かつ液密的に嵌合しており、パイロットディスク52Aと外側円筒状部83Aとの隙間を常時シールする。言い換えれば、パイロットディスク52Aは、シール部材72Aをハウジング55Aの外側円筒状部83Aに摺動可能かつ密に嵌合させている。
複数枚のディスク403は、同外径であり、パイロットディスク52Aのシール部材72Aの最小内径よりも小径の外径となっている。また、複数枚のディスク403は、ハウジング55Aの内側円筒状部82Aのピストン18側の先端面の外径よりも小径かつ大径穴部93Aの内径よりも大径の外径となっている。
バネディスク404は、ディスク403の外径よりも大径でパイロットディスク52Aのシール部材72Aの最小内径よりも小径の外径を有する平板状の基板部481と、基板部481から延出する押圧板部482とを有している。基板部481は円環状であり、押圧板部482は、基板部481の外周縁部から軸方向一側かつ径方向外方に傾斜しつつ延出している。押圧板部482は、基板部481の円周方向に間隔をあけて複数断続的に形成されており、区画ディスク124A側に延出している。バネディスク404は、複数の押圧板部482が、区画ディスク124Aのパイロットディスク52A側の面に当接して区画ディスク124Aをシート面431側に付勢してシート面431に当接させる。
ディスク405は、バネディスク404の基板部481よりも小径かつハウジング55Aの内側円筒状部82Aのピストン18側の先端面の外径よりも大径の外径となっている。ディスク405には、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aに嵌合する内周縁部から径方向外側に延在する切欠部485が形成されている。切欠部485内の通路はオリフィス486である。
オリフィス486は、一方でパイロットディスク52Aに背圧を付与するハウジング55A内のパイロット室111A(圧力室)に常時連通しており、他方でハウジング55Aの大径穴部93A内の通路およびピストンロッド通路部46Aに常時連通している。オリフィス486は、パイロット室111Aとピストンロッド通路部46Aとの間に設けられる絞りである。
パイロット室111Aは、このオリフィス486を介して、ハウジング55Aの大径穴部93A内の通路およびピストンロッド21Aのピストンロッド通路部46Aに常時連通しており、図11に示すように、ピストンロッド通路部46Aを介して、ディスク201の導入オリフィス212と、ピストン18の環状溝40および通路穴39とを介して下室20に常時連通している。
複数枚のディスク407は、同外径であり、バルブシート84Aの先端面の外径よりも若干大径の外径となっている。複数枚のディスク407が、バルブシート84Aに離着座可能なハードバルブ110Aを構成している。
ディスク408は、外径がディスク407の外径およびバルブシート84Aの先端面の内径よりも小径であり、ハウジング55Aの内側円筒状部82Aのピストン18とは反対側の先端面の外径と略同径となっている。ディスク409は、外径がディスク408の外径よりも大径であり、バルブシート84Aの先端面の外径と略同径である。環状部材410は外径がハードバルブ110Aよりも大径であり、剛性がハードバルブ110Aよりも高い。ディスク409および環状部材410は、ハードバルブ110Aの開方向への変形時にハードバルブ110Aに当接してハードバルブ110Aの開方向への規定以上の変形を規制する。
区画ディスク124Aが貫通穴437内の通路を閉塞し、ハードバルブ110Aが貫通穴438内の通路を閉塞した状態で、パイロットディスク52Aとハウジング55Aと区画ディスク124Aとハードバルブ110Aとの間がパイロット室111Aとなり、ハウジング55Aの底部81Aと区画ディスク124Aとの間が、貫通穴437内の通路を介して下室20と常時連通する連通室192Aとなる。よって、これら2つのパイロット室111Aおよび連通室192Aは、ハウジング55A内に区画ディスク124Aにより画成されて設けられている。
区画ディスク124Aは、その内周側および外周側が共に全周にわたってディスク当接部432のシート面431に当接する状態と、その内周側および外周側が共に全周にわたってシート面431とストッパ面433との両側境界縁部に当接する状態と、全周にわたってストッパ面433に面接触する状態とにおいては、パイロット室111Aと連通室192Aとの間の油液の流通を遮断する。また、区画ディスク124Aは、底部81Aから離間する状態では、連通室192Aとパイロット室111Aとの間の油液の流通を許容する。バネディスク404は、区画ディスク124Aをシート面431に当接するように付勢することになる。
よって、バネディスク404と、区画ディスク124Aと、ハウジング55Aのディスク当接部432および凹部434とが、パイロット室111A側から連通室192A側すなわち下室20側への油液の流れを規制する一方、連通室192A側すなわち下室20側からパイロット室111A側への油液の流れを許容するチェック弁195Aを構成している。
チェック弁195Aの弁体である区画ディスク124Aは、その全体が、軸方向にクランプされることはなく、いずれの部品にも固定されていない。区画ディスク124Aは、当接するバネディスク404およびハウジング55Aの底部81Aに対して離間可能である。区画ディスク124Aは、その全体が軸方向に移動可能なフローティングタイプのフリーバルブである。区画ディスク124Aは、液圧以外の付勢がバネディスク404のみでされてシート面431に対し近接および離間する。チェック弁195Aの区画ディスク124Aおよびバネディスク404は、いずれも金属のみからなり、ゴムシールを使っていない。区画ディスク124Aおよびバネディスク404は、いずれも一枚の板材からプレス加工で一体成形されている。
なお、バネディスク404の付勢力を、区画ディスク124Aが、パイロット室111Aおよび連通室192Aの圧力状態にかかわらず、パイロット室111Aおよび連通室192A間の油液の流通を常時遮断するように設定しても良い。つまり、区画ディスク124Aは、パイロット室111Aおよび連通室192A間の両方向の流通を遮断しても良い。言い換えれば、区画ディスク124Aは、パイロット室111Aおよび連通室192A間の少なくとも一方向への作動流体の流通を遮断すれば良い。
底部81Aに凹部434が形成されていることから、区画ディスク124Aはハウジング55A内の作動流体により撓み可能であり、パイロット室111Aの圧力が連通室192Aの圧力よりも高くなると、パイロット室111Aと連通室192Aとの連通を遮断しつつ、上記のように凹部434内に入り込むように撓んで、パイロット室111Aの容積を拡大させ、連通室192Aの容積を減少させるように変形する。また、この状態から、パイロット室111Aの圧力と連通室192Aの圧力との圧力差が小さくなると、区画ディスク124Aは、パイロット室111Aと連通室192Aとの連通を遮断しつつ、凹部434内への入り込みを減らして、連通室192Aの容積を増加させ、パイロット室111Aの容積を減少させるように変形する。また、連通室192Aの圧力がパイロット室111Aの圧力よりもバネディスク404の付勢力分を越えて高くなると、区画ディスク124Aは、バネディスク404の付勢力に抗してシート面431から離座して連通室192Aとパイロット室111Aとを連通させる。
ディスク401は、上述したように、ピストン18のバルブシート47に着座可能である。ディスク401およびパイロットディスク52Aがメインバルブ65Aを構成している。メインバルブ65Aは、ピストン18に形成された環状溝38内および通路穴37内の通路に設けられてピストン18の伸び側への摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
メインバルブ65Aは、ピストン18のバルブシート47と共に第1減衰力発生機構41Aを構成している。メインバルブ65Aは、そのディスク401がバルブシート47から離座して開くと、環状溝38内および通路穴37内の通路からの油液を下室20に流す。環状溝38内および通路穴37内の通路と、メインバルブ65Aとバルブシート47との間とが第1実施形態と同様の伸び側の第1通路75を構成している。バルブシート47とメインバルブ65Aとからなる伸び側の第1減衰力発生機構41Aは、ピストン18に設けられた第1通路75に設けられており、メインバルブ65Aでこの第1通路75を開閉して油液の流動を抑制することにより減衰力を発生する。第1通路75にも、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第1通路75は、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
バルブシート84Aは、パイロット室111Aのピストン18とは反対側の開口部を囲んでいる。ハードバルブ110Aは、バルブシート84Aに当接しており、バルブシート84Aに対し離間および当接することでパイロット室111Aを開閉する。ハードバルブ110Aは、バルブシート84Aから離座することで、パイロット室111Aを下室20に連通させると共にパイロット室111Aから下室20への油液の流れを抑制して減衰力を発生する。ハウジング55Aの底部81Aには、パイロット室111Aを構成する貫通穴438がこのハードバルブ110Aと対向して設けられている。
パイロット室111Aは、メインバルブ65Aに、ピストン18の方向、つまりディスク401をバルブシート47に着座させる閉弁方向に内圧を作用させる。メインバルブ65Aを含む第1減衰力発生機構41Aは、このパイロット室111Aの圧力により開弁が調整される。言い換えれば、第1減衰力発生機構41Aは、第1通路75を開閉するメインバルブ65Aと、メインバルブ65Aに閉弁方向に圧力を作用させるパイロット室111Aと、パイロット室111Aをメインバルブ65Aとで形成するハウジング55Aと、パイロット室111Aを下室20に連通させるハードバルブ110Aと、を備えている。第1減衰力発生機構41Aは、メインバルブ65Aおよびパイロット室111Aが、ピストン18とハウジング55Aの外側円筒状部83Aとの間に設けられ、区画ディスク124Aは、ハウジング55Aの底部81Aに設けられている。
第2実施形態においても、伸び行程のピストン速度が低速の領域では、第1減衰力発生機構41Aは閉弁した状態で第2減衰力発生機構333が開弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では、第1減衰力発生機構41Aおよび第2減衰力発生機構333が共に開弁するよう構成されている。
図11に示す第2減衰力発生機構333は、第1実施形態と同様、伸び行程において開弁することになり、開弁時に出現するサブバルブ331および第2バルブシート281の間の通路と、ディスクバルブ247の外側環状部291および内側環状部292の間の通路と、ケース内室321と、ケース部材248の通路溝272内および大径穴部277内の通路と、ピストンロッド21Aのピストンロッド通路部46Aと、ピストン18の大径穴部45内の通路と、ディスク201の導入オリフィス212と、ピストン18の環状溝40内および複数の通路穴39内の通路とが、ピストン18の上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す第2通路332Aを構成している。
第2通路332Aは、図12に示すように、ピストンロッド通路部46Aに連通するハウジング55Aの大径穴部93A内の通路と、ディスク405の切欠部485内のオリフィス486と、チェック弁195Aにより連通室192Aと仕切られるパイロット室111Aとを含んでいる。
第2通路332Aは、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。ハードバルブ110Aは、開弁してバルブシート84Aから離座すると、第2通路332Aのパイロット室111Aを下室20に連通させる。
第2通路332Aも、ピストンロッド21Aを切り欠いて形成される通路切欠部30A内のピストンロッド通路部46Aを含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21Aを切り欠いて形成されている。ピストンロッド21Aを切り欠いて形成する以外にも、ピストンロッド21Aの内部を穴状に貫通してピストンロッド通路部46Aを形成しても良い。
図11に示すように、サブバルブ331と第2バルブシート281とからなる伸び側の第2減衰力発生機構333が、第2通路332Aに設けられている。第2減衰力発生機構333は、ピストンロッド21Aを径方向内側に挿通させており、第2通路332Aにおいて、2つの上室19および下室20のうちの一方の上室19側に配置されている。ケース内室321およびパイロット室111Aは、ピストンロッド通路部46Aに常時連通しており、いずれも導入オリフィス212、環状溝40および通路穴39を介して下室20に常時連通している。第2通路332Aには、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第2通路332Aは、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
上室19と下室20とを連通可能な伸び側の第2通路332Aは、同じく上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路75と並列しており、並列する第1通路75と第2通路332Aとのうちの一方の第1通路75に第1減衰力発生機構41Aが、他方の第2通路332Aに第2減衰力発生機構333がそれぞれ設けられている。よって、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41Aおよび第2減衰力発生機構333は、並列に配置されている。
第2減衰力発生機構343は、第1実施形態と同様、縮み行程において開弁することになり、ピストン18の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路と、ディスク201の導入オリフィス212と、ピストン18の大径穴部45内の通路と、ピストンロッド21Aのピストンロッド通路部46Aと、ケース部材248の大径穴部277内および通路溝272内の通路と、ケース内室321と、開弁時に出現するサブバルブ341および第1バルブシート271の間の通路とが、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の第2通路342Aを構成している。
図12に示すように、第2通路342Aは、ピストンロッド通路部46Aに連通するハウジング55Aの大径穴部93A内の通路と、ディスク405の切欠部485内のオリフィス486と、パイロット室111Aと、開弁時に出現するチェック弁195Aの通路と、連通室192Aと、貫通穴437内の通路とを含んでいる。チェック弁195Aを構成する区画ディスク124Aは、第2通路332A,342Aの一方である第2通路332Aのパイロット室111Aから連通室192Aへの油液の流通を遮断するよう構成されており、他方である第2通路342Aの連通室192Aからパイロット室111Aへの油液の流通を許容するよう構成されている。第2通路342Aは、ピストンロッド21Aの通路切欠部30A内のピストンロッド通路部46Aを含んでいる。
サブバルブ341と、ケース部材248の外側筒部262に形成された環状の第1バルブシート271とからなる縮み側の第2減衰力発生機構343が、第2通路342Aに設けられている。第2減衰力発生機構343は、ピストンロッド21Aを径方向内側に挿通させており、第2通路342Aにおける2つの上室19および下室20のうちの一方の上室19側に配置されている。第2通路342Aには上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、よって、第2通路342Aは上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
第2減衰力発生機構333は、第2通路332Aの上室19側の端部位置に設けられており、第2減衰力発生機構343は、第2通路342Aの上室19側の端部位置に設けられている。
第2通路332A,342Aの共通部分に設けられるハウジング55Aと、ハウジング55A内に設けられて第2通路332A,342Aの共通部分を一側の上室19側と他側の下室20側とに画成しハウジング55A内にパイロット室111Aを形成する区画ディスク124Aとが、周波数感応機構121Aを構成している。周波数感応機構121Aは、下室20に配置されている。周波数感応機構121Aは、伸び行程においてのみ周波数感応作動を行い、縮み工程においては周波数感応機能がキャンセルされる。
図11に示すように、ピストンロッド21Aに、極微低速バルブ機構231、メインバルブ221、ピストン18、メインバルブ65A、周波数感応機構121Aおよびハードバルブ110A等を組み付けて、取付軸部28Aのオネジ31にナット361を螺合させる。すると、ナット361とピストンロッド21Aの軸段部29とが、周波数感応機構121Aの区画ディスク124Aを除いて、極微低速バルブ機構231、メインバルブ221、ピストン18、メインバルブ65A、周波数感応機構121Aおよびハードバルブ110A等の少なくとも内周側を軸方向にクランプする。
すると、極微低速バルブ機構231、メインバルブ221およびピストン18は、第1実施形態と同様の取付状態になる。また、この取付状態で、メインバルブ65Aは、ディスク400を介してピストン18の環状溝38よりも径方向内側の部分とディスク403とに内周側がクランプされると共に、ディスク401においてピストン18のバルブシート47に全周にわたって当接する。
また、この取付状態で、バネディスク404の基板部481およびディスク405が、ディスク403とハウジング55Aの内側円筒状部82Aとに内周側がクランプされる。また、この取付状態で、バネディスク404の押圧板部482が、区画ディスク124Aに当接して、区画ディスク124Aを、ハウジング55Aのシート面431に全周にわたって当接させる。また、この取付状態で、ハードバルブ110Aは、ハウジング55Aの内側円筒状部82Aとディスク408とに内周側がクランプされると共に、ハウジング55Aのバルブシート84Aに全周にわたって当接する。
緩衝器1Aも、少なくともピストン18内で軸方向に油液を通過させる流れとしては、上室19と下室20とが、第1減衰力発生機構41A,42および第2減衰力発生機構333,343を介してのみ連通可能である。よって、緩衝器1Aは、少なくともピストン18内を軸方向に通過する油液の通路上には、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
上室19と下室20とを連通可能な縮み側の第2通路342Aは、同じく上室19と下室20とを連通可能な縮み側の通路である第1通路222と、下室20側の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路を除いて並列しており、第1通路222と第2通路342Aとの並列部分には、第1通路222に第1減衰力発生機構42が、第2通路342Aに第2減衰力発生機構343がそれぞれ設けられている。よって、いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構343は、並列に配置されている。
縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41A,42および第2減衰力発生機構333,343のいずれにも下室20を上室19に連通させる固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構343が開弁するまで、油液は流れない。このため、減衰力は急激に立ち上がる。ピストン速度が、第2減衰力発生機構343が開弁する第1所定値よりも高速の領域であって、第1所定値よりも高速の第2所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構343が開弁して第2通路342Aを介して下室20から上室19に油液が流れる。
つまり、サブバルブ341が第1バルブシート271から離座して、縮み側の第2通路342Aで下室20と上室19とを連通させる。よって、下室20の油液が、一方で、ピストン18の複数の通路穴39内および環状溝40内の通路と、導入オリフィス212とを介して、ピストンロッド21Aの通路切欠部30A内のピストンロッド通路部46Aに流れ、他方で、周波数感応機構121Aの貫通穴437内の通路および連通室192Aから、チェック弁195Aを開いてパイロット室111Aに流れ、オリフィス486を介してピストンロッド通路部46Aに流れる。そして、ピストンロッド通路部46Aから、ケース部材248の大径穴部277内および通路溝272内の通路と、ケース内室321と、第2減衰力発生機構343のサブバルブ341および第1バルブシート271の間の通路と、を介して上室19に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。このとき、ピストン速度が上がると生じる、第2減衰力発生機構343と直列に設けられた導入オリフィス212およびオリフィス486による圧力損失で、極微低速領域の減衰力の傾きが決まる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第2所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構343が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、上記と同様にサブバルブ341が第1バルブシート271から離座して、縮み側の第2通路342Aで下室20から上室19に油液を流すことになる上、メインバルブ221がバルブシート48から離座して、縮み側の第1通路222でも下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、第2通路342Aに加えて、第1通路222を構成する複数の通路穴39内および環状溝40内の通路とメインバルブ221およびバルブシート48の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41A,42および第2減衰力発生機構333,343のいずれにも上室19を下室20に連通させる固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構333が開弁するまで油液は流れない。このため、ピストン速度が、第3所定値未満での伸び行程においては、減衰力は急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第2減衰力発生機構333が開弁する第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41Aは閉弁した状態で第2減衰力発生機構333が開弁する。
つまり、サブバルブ331が第2バルブシート281から離座して、伸び側の第2通路332Aで上室19と下室20とを連通させる。よって、上室19の油液が、第2通路332Aを構成する、開状態のサブバルブ331と第2バルブシート281との間の通路と、ディスクバルブ247の外側環状部291および内側環状部292間の通路と、ケース内室321と、ケース部材248の通路溝272内および大径穴部277内の通路と、ピストンロッド21Aのピストンロッド通路部46Aと、ピストン18の大径穴部45内の通路と、導入オリフィス212と、ピストン18の環状溝40内および複数の通路穴39内の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。このとき、ピストン速度が上がると生じる、第2減衰力発生機構333と直列に設けられた導入オリフィス212による圧力損失で、極微低速領域の減衰力の傾きが決まる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構333が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41Aが開弁する。つまり、サブバルブ331が第2バルブシート281から離座して、伸び側の第2通路332Aで上室19から下室20に油液を流すことになる上、メインバルブ65Aがバルブシート47から離座して、伸び側の第1通路75で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、第2通路332Aに加えて、第1通路75の複数の通路穴37内および環状溝38内の通路と、メインバルブ65Aおよびバルブシート47の間の通路とを介して下室20に流れる。
このとき、メインバルブ65Aの開弁圧は、第2通路332Aの一部を構成するパイロット室111Aの圧力に応じて変化する。すなわち、ピストンロッド21Aへの入力が低周波であって大ストロークの時は、第2通路332Aの一部を構成するパイロット室111Aに油液が流入し、パイロット室111Aの容積を大きくするように、区画ディスク124Aを大きく変形させることになるが、区画ディスク124Aは、その後、凹部434のストッパ面433に当接して変形が規制されることになる。よって、さらに油液がパイロット室111Aに流入すると、パイロット室111Aの圧力が上がり、メインバルブ65Aの開弁圧も上がり、ハードな減衰力特性となる。
一方、ピストンロッド21Aへの入力が高周波であって小ストロークの時は、第2通路332Aの一部を構成するパイロット室111Aに油液が流入し、パイロット室111Aの容積を大きくするように、区画ディスク124Aを変形させることになるが、その変形量は小さい。よって、区画ディスク124Aは、凹部434のストッパ面433に当接して変形が規制される状態にまで変形することはなく、パイロット室111Aに油液が流入した分だけ変形する。よって、パイロット室111Aの圧力が上昇しないため、メインバルブ65Aの開弁圧が低く、ソフトな減衰力特性となる。
以上に述べた第2実施形態の緩衝器1Aは、第1実施形態の緩衝器1と同様の効果を奏することができる。その上で、伸び側の第1減衰力発生機構41Aのメインバルブ65Aが、ピストン18とハウジング55Aの外側円筒状部83Aとの間に設けられており、周波数感応機構121Aの区画ディスク124Aが、このハウジング55Aの底部81Aに設けられるため、部品点数の低減および軸長の短縮化を図ることができる。
言い換えれば、伸び側の第1減衰力発生機構41Aのメインバルブ65Aに閉弁方向に圧力を作用させるパイロット室111Aを、周波数感応機構121Aのハウジング55Aおよび区画ディスク124Aによって形成するため、部品点数の低減および軸長の短縮化を図ることができる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に移動可能に設けられ、該シリンダ内を一側室と他側室とに区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の上流側となる室から下流側となる室に作動流体が移動する第1通路および第2通路と、前記ピストンに設けられる前記第1通路に設けられて減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、前記第1通路とは並列の前記第2通路に設けられて減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、前記第2通路に設けられるハウジングと前記ハウジング内に設けられて前記第2通路を前記一側室側と前記他側室側とに画成し前記ハウジング内に圧力室を形成する区画部材とを備える周波数感応機構と、を有し、ピストン速度が低速の領域では、前記第1減衰力発生機構は閉弁した状態で前記第2減衰力発生機構は開弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では、前記第1減衰力発生機構および前記第2減衰力発生機構が共に開弁するよう構成され、前記第2減衰力発生機構は前記一側室に配置され、前記周波数感応機構は前記他側室に配置される。これにより、ピストン速度が低速の領域からバルブ特性の減衰力が得られると共に、周波数に依存して減衰力を可変とすることが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記第2通路は、前記ピストンロッドを切欠き、または貫通して形成されるピストンロッド通路部を有する。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記ハウジングは第1筒部と第1底部とから構成され、前記第2減衰力発生機構は、第2筒部と第2底部とを有する有底筒状のケース部材の前記第2筒部に形成された環状の第1バルブシートと、前記ケース部材の前記第1バルブシートに外周側の離接部が離接可能に配置される環状のディスクバルブと、前記ディスクバルブの前記第1バルブシートとは軸方向反対側に設けられ、前記ディスクバルブの前記離接部よりも径方向内側を離接可能に支持する第2バルブシートと、を備え、前記区画部材は、撓み可能な状態で配置されるディスクであって、前記ディスクが前記第2通路の少なくとも一方への作動流体の流通を遮断するよう構成される。
第4の態様は、第3の態様において、前記ディスクバルブは、前記第1バルブシートおよび前記第2バルブシートに離接可能に配置される外側環状部と、前記ピストンロッドに嵌合する内側環状部と、前記外側環状部と前記内側環状部とを接続する支持部とを有する。
第5の態様は、第3または第4の態様において、前記第1減衰力発生機構は、前記ピストンと前記ハウジングの前記第1筒部との間に設けられ、前記ディスクは、前記第1底部に設けられる。
第6の態様は、第1乃至第5のいずれか一態様において、前記第1減衰力発生機構は、前記第1通路を開閉するバルブ部材と、前記バルブ部材に閉弁方向に圧力を作用させるパイロット室と、を備え、前記ハウジングおよび前記区画部材が前記パイロット室を形成する。