JP7200173B2 - 水分散体、金属用コーティング剤および塗膜 - Google Patents
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Description
項1
構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体を含み、
反応性乳化剤(C)(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を除く)を用いて前記重合体を合成することにより得られる、水分散体。
項2
前記反応性乳化剤(C)がアニオン性反応性乳化剤を含む、項1に記載の水分散体。
項3
前記反応性乳化剤(C)が非イオン性反応性乳化剤を含む、項1に記載の水分散体。
項4
前記アニオン性反応性乳化剤が、重合性不飽和基、ポリオキシアルキレン基およびアニオン性基を有する化合物(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、および、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩は除く。)を含む、項2に記載の水分散体。
項5
前記重合体は、構成モノマーとして更に(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)を含有する、項1~4のいずれか1項に記載の水分散体。
項6
前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルの塩(A)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩およびアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~5に記載の水分散体。
項7
項1~6のいずれか1項に記載の水分散体を含む、金属用コーティング剤。
項8
項1~6のいずれか1項に記載の水分散体または請求項7に記載の金属用コーティング剤を用いて得られる塗膜。
本発明の水分散体は、構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体を含む。特に、本発明の水分散体は、反応性乳化剤(C)(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を除く)を用いて前記重合体を合成することにより得られるものである。つまり、本発明の水分散体は、前記反応性乳化剤(C)の存在下、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を重合する工程を含む方法により製造することができる。
(X)kP(=O)(OL)3-k (1)
で表される化合物が挙げられる。
好ましいカルボン酸ビニルは、酢酸ビニルである。
本実施形態に係る水分散体の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の乳化重合法を広く適用することができる。乳化重合法の一例として、重合用溶媒として水を用い、重合用モノマーを、乳化剤を用いて水中に乳化させ、これに重合開始剤を加えて反応させることにより重合体が合成され、必要に応じてアルカリで中和することにより、水分散体が得られる。アルカリとしては、公知の化合物を広く使用することができ、中でもアンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;モノメチルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン;が挙げられる。
本発明の水分散体は、各種用途の適用することができ、特に、本発明に係る水分散体は、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができることから、金属用コーティング剤の使用に適している。
本発明の金属用コーティング剤は、前記水分散体を含む限りは特に限定されない。金属用コーティング剤は、前記水分散体のみからなるものであってもよいし、その他の添加剤等を含むものであってもよい。金属用コーティング剤のその他添加剤は特に制限されず、公知の金属用コーティング剤に含まれる添加剤を広く挙げることができる。
塗膜は、水分散体または金属用コーティング剤を用いて得ることができる。塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の塗膜の形成方法を広く採用することができる。塗膜の形成方法の一例として、水分散体または金属用コーティング剤を基材に塗布し、加熱および乾燥することにより、基材表面に塗膜を形成することができる。従って、塗膜は、水分散体または金属用コーティング剤の乾燥物を含む。基材は、前記金属基板を用いることができる。
[合成例1:モノマー(A-1)の合成]
撹拌機、温度計、還流管を備えた反応容器に、スチレン化フェノール(モノスチレン化フェノール:ジスチレン化フェノール:トリスチレン化フェノール=80:19:1(モル比)の混合物)230g(1.0モル)、NaOH40g(1.0モル)およびアセトン210gを仕込み、撹拌しながら内温を40℃に昇温した。次にアリルクロライド91g(1.2モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに40℃に2時間保ち、反応を行った。反応生成物を濾過し、副生したNaClを除去した後、減圧下にアセトンを除去し、スチレン化アリルフェニルエーテル314gを得た。
無水リン酸の使用量を47g(0.33モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、前記式(1-1-1)で表されるリン酸モノエステルと、下記式(1-2-1)で表されるリン酸ジエステルとの混合物(モル比1:1)であるポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸セスキエステル(以下、(A-2)と略記する)を得た。
無水リン酸の使用量を36g(0.25モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、前記式(1-2-1)で表されるポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸ジエステル(以下、(A-3)と略記する)を得た。
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、下記式(1-1-2)で表されるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステル(以下、(A-4)と略記する)を得た。
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例2と同様の操作を行うことにより、前記式(1-1-2)で表されるモノエステルと下記式(1-2-2)で表されるジエステルとの混合物であるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸セスキエステル(以下、(A-5)と略記する)を得た。
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例3と同様の操作を行うことにより、前記式(1-2-2)で表されるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸ジエステル(以下、(A-6)と略記する)を得た。
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A-1)49.3gと水酸化ナトリウム4.0gを反応させる事で、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのナトリウム塩(以下、(A-7)と略記する)を得た。
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A-1)49.3gと25%アンモニア水6.8gを反応させ、水を留去する事で、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのアンモニウム塩(以下、(A-8)と略記する)を得た。
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A-1)49.3gとモノエタノールアミン6.1gを反応させ、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1-プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのモノエタノールアミン塩(以下、(A-9)と略記する)を得た。
モノマーBとして、下記の(B-1)~(B-4)を準備した。
・(B-1):アクリル酸ブチル
・(B-2):メタクリル酸メチル
・(B-3):スチレン
・(B-4):酢酸ビニル
反応性乳化剤(C)としては、下記に示す(C-1)~(C-9)を準備した。
・(C-1):第一工業製薬社製「アクアロンKH-10」
・(C-2):ADEKA社製「アデカリアソープSR-10」
・(C-3):Sino-Japan Chemical社製「SINONATE LRS10」
・(C-4):三洋化成工業社製「エレミノールJS-20」
・(C-5):花王社製「ラテムルPD-104」
・(C-6):Croda社製「Maxemul 6106」
・(C-7):第一工業製薬社製「アクアロンKH-20」
・(C-8):第一工業製薬社製「アクアロンAN-20」
・(C-9):ADEKA社製「アデカリアソープER-20」
反応性乳化剤(C)以外の反応性乳化剤として、下記に示す(c-1)を準備した。
・(c-1):第一工業製薬社製「アクアロンBC-10」
その他モノマー(a)として、下記の(a-1)~(a-3)を準備した。
・(a-1):アクリル酸
・(a-2):ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸モノエステル(製品名:ライトエステルP-1M、共栄社化学(株)製)
後掲の表1に示すように、モノマー(A)として合成例1で得られた(A-1)を2.5質量部と、モノマー(B)として(B-1)を123.75質量部および(B-2)を123.75質量部の混合物と、反応性乳化剤(C)として(C-1)を5質量部と、水107.15質量部とを混合し、乳化させることによりプレエマルションを得た。別途、滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、水117.11質量部および炭酸水素ナトリウム0.25質量部を仕込み、上記プレエマルションのうち36.46質量部を加えて80℃に昇温して15分間混合した。次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.38質量部を水10質量部に溶解した水溶液を加えて15分間反応させた後、残りのプレエマルションを3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。続いて、過硫酸アンモニウム0.12質量部を水10質量部に溶解した水溶液を添加して1時間反応させた後、40℃に冷却し、中和剤としてアンモニア水でpH8に調整することにより、水分散体を得た。なお、アンモニア水で中和したことにより、水分散体の段階では、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはアンモニウム塩になった。
モノマー(A)、モノマー(B)、反応性乳化剤(C)およびその他モノマー(a)の種類および使用量(質量部)を後掲の表1に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。なお、実施例7では、中和剤としてアンモニア水の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を使用したので、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはナトリウム塩になった。
モノマー(A)、モノマー(B)、反応性乳化剤(C)およびその他モノマー(a)の種類および使用量(質量部)を後掲の表2に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。なお、実施例9では、中和剤としてアンモニア水の代わりにモノエタノールアミンを使用したので、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはモノエタノールアミン塩になった。
モノマー(A)、モノマー(B)、反応性乳化剤(C)およびその他モノマー(a)の種類および使用量(質量部)を後掲の表3に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
モノマー(A)、モノマー(B)、反応性乳化剤(C)およびその他モノマー(a)の種類および使用量(質量部)を後掲の表4に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
各実施例、比較例および参考例で得られた水分散体について、下記の密着性1、密着性2、耐水白化性、防錆性、耐摩耗性、基材に対するぬれ性および耐侯性を評価した。
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、105℃で10分乾燥し、試験片を得た。この試験片を用いて、JIS K 5400-8.5に準じて、碁盤目試験を実施し、剥がれの割合から、下記基準により判定を行った。
≪判定基準≫
A:剥がれの割合が0%
B:剥がれの割合が0%超25%未満
C:剥がれの割合が25%以上50%未満
D:剥がれの割合が50%以上75%未満
E:剥がれの割合が75%以上
塗布後の乾燥温度を60℃に変更した以外は密着性1と同様の方法で判定した。
水分散体をガラス板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、105℃で10分乾燥して得たフィルムを、25℃の水に浸漬し、白化度を評価した。10ポイントの文字の上にフィルムを形成したガラス板を置き、フィルムを通して見た文字の識別性を下記基準により判定を行った。
≪判定基準≫
A:3日浸漬後も文字が見える。
B:1日浸漬後には文字が見えるものの、3日浸漬後には文字が見えない。
C:1日浸漬後には文字が見えない。
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、60℃で10分乾燥して得たフィルムに、JIS K 5600-5-6のクロスカット法に準拠して切り込みを入れた。このフィルムを3質量%の塩水に20℃で10日間浸漬後の状態を評価した。評価は錆の発生の具合について行い、下記基準により判定した。
≪判定基準≫
A:錆なし
B:クロスカット部のみ錆が見られる
C:全体に錆が見られる
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、60℃で10分乾燥して得たフィルムに、JIS K 5600-5-10に準拠し、摩耗減量を測定した。比較例1で得られた水分散体で形成されたフィルムの摩耗減量(g)を基準として(100%として)、各フィルムの摩耗減量の割合を算出し、下記基準により判定した。
≪判定基準≫
A:50%以下
B:50~80%
C:80%以上
水分散体を水で2倍に希釈して測定用サンプルを調製し、このサンプルを用いて、ウィルヘルミー型表面張力計にて25℃における表面張力(mN/m)を測定し、下記の基準で基材に対するぬれ性を評価した。表面張力が低いほど、基材に対するぬれ性が高いことを示す。
≪判定基準≫
〇:表面張力が40mN/m未満
×:表面張力が40mN/m以上
水分散体をガラス板に膜厚が254μm(wet)となるように塗布し、60℃で60分乾燥して得たフィルムを、岩崎電気(株)製のアイスーパーUVテスターSUV-W151を用い、耐候性を評価した。試験条件は、光源:メタルハライドランプ、UV強度:1000w/m2、温度:20℃、湿度:40%RH、照射時間:200時間、とした。試験前後でフィルムの色差ΔE*abを色差計(日本電色工業(株)製SD6000)を用いて測定し、下記の判定基準を元に評価した。試験前後の色差の差が小さいほど、フィルムの耐候性が高いことを示す。
≪判定基準≫
〇:ΔE*abが5未満。
×:ΔE*abが5以上。
Claims (5)
- 構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)と、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)とを含有する重合体を含み、
前記重合体の全構成モノマー中、前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)の含有割合が0.1~20質量%、前記モノマー(B)の含有割合が70~99.8質量%であり、
反応性乳化剤(C)(ただし、前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を除く)を用いて前記重合体を合成することにより得られ、
前記反応性乳化剤(C)はアニオン性反応性乳化剤を含み、
前記反応性乳化剤(C)の含有割合が、前記重合体の全構成モノマー中、0.1~20質量%であり、
前記アニオン性反応性乳化剤が、重合性不飽和基、ポリオキシアルキレン基およびアニオン性基を有する化合物(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、および、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩は除く。)を含む、水分散体。 - 構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)と、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)とを含有する重合体を含み、
前記重合体の全構成モノマー中、前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)の含有割合が0.1~20質量%、前記モノマー(B)の含有割合が70~99.8質量%であり、
反応性乳化剤(C)(ただし、前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を除く)を用いて前記重合体を合成することにより得られ、
前記反応性乳化剤(C)が非イオン性反応性乳化剤を含み、
前記反応性乳化剤(C)の含有割合が、前記重合体の全構成モノマー中、0.1~20質量%である、水分散体。 - 前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルの塩(A)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩およびアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水分散体。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の水分散体を含む、金属用コーティング剤。
- 金属基板に形成された塗膜であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の水分散体または請求項4に記載の金属用コーティング剤を用いて得られる塗膜。
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