JP6817147B2 - 親水性保持剤 - Google Patents

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Description

本発明は、親水性保持剤、当該親水性保持剤を含む親水化コーティング剤、および当該親水性保持剤を用いたエマルジョンの製造方法に関する。
風呂、トイレ、壁紙、窓ガラス、建物の外壁、光学フィルム等に用いられる部材には高い耐汚染性が求められており、これを達成するための方法の一つとして、部材表面を親水化処理する方法が挙げられる。かような処理を施すことにより、部材表面には均一な水膜が形成されるため、その上に汚れが付着しても、水で洗い流すことで汚れを容易に除去することができる。
親水化処理としては、酸化チタン等の光触媒性能を有する無機化合物が一般的に用いられるが、(紫外光等の)光照射下でないと高親水性を発揮しないため、実使用環境において十分な耐汚染性が得られず、かつ処理工程が煩雑になるという問題があった。
このような問題を解決するための技術として、特許文献1には、光照射等の処理を行わなくても高親水性を発揮できる親水性付与剤(濡れ性向上剤)が開示されている。
特開2017−66401号公報
特許文献1に記載の親水性付与剤(濡れ性向上剤)を乳化重合してコーティング剤を調製し、塗膜を作製した場合、初期の親水性は良好である。しかし、その効果が十分に保持されない場合があるということが本発明者らの検討により判明した。
したがって、本発明は、親水性付与剤を含む親水化コーティング剤から形成される塗膜に対して親水性保持効果を付与できる、親水性保持剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、以下の構成を有する親水性保持剤によって、上記課題を解決できることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、親水性付与剤を含む親水化コーティング剤から形成される塗膜の親水性を保持するのに用いられる親水性保持剤であって、下記式(1)で表されるイオン結合性塩1を含む、親水性保持剤である。
上記式(1)中、
は、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
m1は、オキシエチレン基の平均付加モル数で1〜50の数であり、
は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである。
親水性付与剤を含む親水化コーティング剤に本発明の親水性保持剤を導入すると、当該親水化コーティング剤から形成される塗膜は親水性を保持することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
本明細書において、「塗膜の親水性が高い」との文言は、「塗膜表面の水に対する濡れ性が高い」との文言と同義であり、塗膜表面の水に対する接触角が、60°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらにより好ましくは10°以下であることをいう。また、「塗膜の親水性が保持される」とは、「洗浄後も塗膜の表面の親水性が高い」ことを意味し、洗浄後も塗膜表面の水に対する接触角が上記範囲内にあることを意味する。
本明細書において、「洗浄」とは、水(例えば、純水、中性洗剤を含有する水溶液等)をスポンジ等に含ませ、これを被洗浄物に繰り返し接触させ、必要に応じて自然乾燥、加温乾燥、減圧乾燥等により上記水を除去することをいう。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの総称を指す。同様に、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの総称を指す。
<親水性保持剤>
本発明に係る親水性保持剤は、下記式(1)で表されるイオン結合性塩1を含む。
上記式(1)中、
は、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
m1は、オキシエチレン基の平均付加モル数で1〜50の数であり、
は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである。
特許文献1には、特定の構造を有するイオン結合性塩が親水性付与剤として機能することが開示されている。ここで、当該イオン結合性塩を水系媒体中で乳化重合してコーティング剤を調製し、塗膜を作製した場合、初期は良好な親水性を示す。しかしながら、本発明者らの検討によれば、その効果が洗浄処理によって損なわれる、すなわち塗膜の親水性が十分に保持されない場合があるということが判明した(本願の比較例1を参照)。
本発明者は、この原因について以下の可能性を考えた。界面活性剤存在下、水系媒体中で乳化重合を行う場合、界面活性剤が形成するミセルの内部が反応場となるが、該ミセル内部は疎水的であるため、特許文献1に記載のイオン結合性塩のような親水性モノマーはミセル内部に取り込まれにくい。このため、親水性モノマーは、他のモノマー(例えば後述のエチレン性不飽和単量体)と共重合しにくい。かようにして得られたポリマーエマルジョンを用いて塗膜を形成すると、親水性モノマー由来成分は比較的低分子の形態で塗膜中に存在することになる。このため、初期の親水性が良好であったとしても、洗浄処理によって当該成分が容易に除去され、塗膜表面の親水性が損なわれるものと考えられる。
そこで、本発明者が鋭意検討したところ、上記式(1)で表されるイオン結合性塩1を例えば乳化重合の界面活性剤として用い、特許文献1に開示されているイオン結合性塩等の親水性付与剤を含む重合性組成物を水系媒体中で乳化重合し、得られたポリマーエマルジョンから塗膜を形成すると、高い親水性保持効果を発現することがわかった。当該効果を奏するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
上記式(1)で表されるイオン結合性塩1は、乳化重合の界面活性剤としての働きを有しつつ、親水性付与剤と他のモノマー(例えば後述のエチレン性不飽和単量体)との相溶性を高める働きを有する。このため、親水性付与剤が親水性モノマーである場合、当該イオン結合性塩1が構成するミセルの内部に取り込まれやすくなり、他のモノマーと共重合しやすくなる。かようにして得られたポリマーエマルジョンを用いると、親水性モノマー由来成分が共有結合した塗膜が形成される。このため、洗浄しても親水性モノマー由来成分が除去されにくく、洗浄後の塗膜も高い親水性を発現することができる。すなわち、高い親水性保持効果を示すことができる。
また、上記式(1)で表されるイオン結合性塩1を界面活性剤として用いて乳化重合した場合、得られるポリマー粒子の表面にはイオン結合性塩1やその重合体が存在することとなる。このため、親水性付与剤がコロイダルシリカなどの場合、ポリマー粒子の表面に吸着して一体化しやすく、洗浄処理を行っても取れにくい。ゆえに、かような親水性付与剤を含むコーティング剤から形成される塗膜は、洗浄しても高い親水性を発現することができる。すなわち、高い親水性保持効果を示すことができる。
なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
[イオン結合性塩1]
本発明の親水性保持剤に含まれるイオン結合性塩1は、下記式(1)で表される。
上記式(1)において、Rは、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基、すなわち、ドデシル基(例えばn−ドデシル基)、トリデシル基(例えばn−トリデシル基)、テトラデシル基(例えばn−テトラデシル基)のいずれかであるが、入手容易性の観点から、ドデシル基またはトリデシル基が好ましく、トリデシル基が特に好ましい。また、本発明の効果を一層向上させる観点から、Rは、置換されていてもよい炭素数12〜14の分枝状のアルキル基であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態において、Rは、置換されていてもよい分枝状のトリデシル基である。
が置換されている場合、そのような置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。
上記式(1)中、m1は、オキシエチレン基の平均付加モル数(以下、EO平均付加モル数とも称する)で、1〜50の数である。m1は、粘度低下による作業性向上および塗膜表面の親水性付与の観点から、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20である。
上記式(1)中、Q は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである。Q は、より好ましくは、N,N−ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノ(2−イソシアノエチル)アンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノ(2−シアノプロピル)アンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノ(1,2−エポキシプロパン)アンモニウムイオンである。Q は、さらにより好ましくは、N,N−ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。Q は、特に好ましくは、N,N−ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。
イオン結合性塩1の好ましい例としては、下記式(1−1)〜(1−9)で表される化合物が挙げられる。
イオン結合性塩1は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオン結合性塩1は、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。合成品の場合、イオン結合性塩1の製造方法は、特に制限されず、例えば、アニオン交換法、中和法、酸エステル法などが挙げられる。また、硫酸エステルのアンモニウム塩またはスルホン酸エステルのアンモニウム塩と、窒素含有化合物とを反応させアンモニアを留去してB成分を得る脱アンモニア法なども好適に用いられる。
<用途>
本発明の親水性保持剤は、親水性付与剤を含む親水化コーティング剤に導入することで、当該親水化コーティング剤から形成される塗膜に対して親水性保持効果を付与することができる。言い換えれば、本発明の親水性保持剤および親水性付与剤を含む親水化コーティング剤から形成される塗膜は、洗浄後も高い親水性を発現することができる。具体的には、洗浄後の塗膜表面の接触角が、60°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらにより好ましくは10°以下である。
[親水性付与剤]
親水化コーティング剤に含まれる親水性付与剤としては、界面活性剤、アルキルシリケート化合物、コロイダルシリカ、親水性モノマー等の公知の親水性化合物を使用することができる。中でも、親水性付与剤が親水性モノマーである場合、本発明の効果が一層奏される。なお、当該親水性付与剤には、上記式(1)で表されるイオン結合性塩1は含まれない。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよく、公知の界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、後述の[ポリマーエマルジョンの製造方法]の項で例示されているものを使用することができる。また、当該界面活性剤は、低分子、高分子のいずれであってもよい。
アルキルシリケート化合物としては、エチルシリケート、プロピルシリケート等が挙げられ、これらのオリゴマーも含みうる。
コロイダルシリカとしては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法等の公知の方法で製造されたコロイダルシリカを使用することができる。
親水性モノマーとしては、親水性基を有する(メタ)アクリル単量体(但しアクリル酸を除く)が好ましい。ここで、「親水性基」は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ウレア基、カルボニル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、アミド基、エーテル基、シアノ基、ポリオキシアルキレン基、チオール基、アルデヒド基、イミド基、イミダゾール基、エステル基、ホスホジエステル基(−O−P(=O)OH−O−)等を指し、好ましくはエポキシ基、ポリオキシアルキレン基である。親水性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基を有する(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミド等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記式(2)で表されるイオン結合性塩2等が挙げられる。
(イオン結合性塩2)
塗膜内部の耐水性を維持しつつ、塗膜表面の親水性を高める観点から、親水性付与剤は、下記式(2)で表されるイオン結合性塩2を含むことが好ましい。
上記式(2)中、Rは、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基、すなわち、ドデシル基(例えばn−ドデシル基)、トリデシル基(例えばn−トリデシル基)、テトラデシル基(例えばn−テトラデシル基)のいずれかであるが、入手容易性の観点からトリデシル基が好ましい。また、本発明の効果を一層向上させる観点から、Rは、置換されていてもよい炭素数12〜14の分枝状のアルキル基であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態において、Rは、置換されていてもよい分枝状のトリデシル基である。Rが置換されている場合、そのような置換基としては、上記Rで述べた基などが挙げられる。
上記式(2)中、Aは、炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基(−CH−CH(CH)−)、n−ブチレン基、1−メチルプロピレン基(−CH−CH−CH(CH)−)、2−メチルプロピレン基(−CH−CH(CH)−CH−)、ジメチルエチレン基(−CH−C(CH−)、エチルエチレン基(−CH−CH(CHCH)−)、等が挙げられる。なお、Aが炭素数3〜4のアルキレン基である場合、分枝状のアルキレン基であることが好ましい。また、Aにおいて、(AO)m2の主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、Aは、エチレン基、イソプロピレン基およびエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、少なくとも2種を有することがより好ましい。かような基を有することで、塗膜内部の耐水性を維持しつつ、塗膜表面の親水性を高めることができる。
上記式(2)中、m2は、AOの平均付加モル数であって、2〜50の数である。m2は、粘度低下による作業性向上および塗膜表面の親水性付与の観点から、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20である。
上記式(2)中、(AO)m2は、ポリオキシアルキレンを表し、少なくとも2種のオキシアルキレン基を含むことが好ましい。かようなポリオキシアルキレン構造とすることで、塗膜内部の耐水性を維持しつつ、塗膜表面の親水性を高めることができる。(AO)m2は、好ましくは、オキシエチレン基(−CO−、以下EOとも称する)、オキシプロピレン基(−CO−、以下POとも称する)およびオキシブチレン基(−CO−、以下BOとも称する)からなる群より選択される少なくとも2種を含む。(AO)m2は、より好ましくは、オキシエチレン基およびオキシブチレン基を含む。なお、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有することができるが、分枝状のアルキレン基を有することが好ましい。さらに、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、(AO)m2の主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。中でも、オキシプロピレン基は、下記化学式(P1)または(P2)で示される基の少なくとも一方を有することが好ましく、オキシブチレン基は、下記化学式(B1)または(B2)で示される基の少なくとも一方を有することが好ましい。かような基を有することで、塗膜内部の耐水性を維持しつつ、塗膜表面の親水性を高めることができる。
また、(AO)m2において、オキシブチレン基の割合は、好ましくは3〜90モル%であり、より好ましくは10〜80モル%である。なお、オキシブチレン基が2種以上の構造を有する場合、上記オキシブチレン基の割合は、各構造の割合(モル%)の合計を表す。少なくとも2種のオキシアルキレン基の配列は、ランダム型、ブロック型のいずれでもよいが、合成が簡便であり、かつ効率良く塗膜表面の親水性を発現できることから、ブロック型であることが好ましい。なお、ブロック型の場合、配列の順序は問わない。すなわち、例えば、(AO)m2がエチレンオキシド/ブチレンオキシドのブロック共重合体の場合、スルホン酸基にはポリエチレンオキシド鎖が連結してもよいし、ポリブチレンオキシド鎖が連結してもよい。
(AO)m2は、炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物であり、かようなアルキレンオキシド付加物の構造は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド等のアルキレンオキシドの1種または2種以上により形成される構造である。中でも、エチレンオキシドおよび1,2−ブチレンオキシドを含むアルキレンオキシドにより形成される構造であることが好ましい。なお、(AO)m2が2種以上の上記化合物により形成される場合、ランダム付加、ブロック付加のいずれで形成されてもよい。
上記式(2)中、Q は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンであり、具体例としては上記Q と同様であるが、特に好ましくは、N,N−ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオンである。
イオン結合性塩2の好ましい例としては、下記式(2−1)〜(2−4)で表される化合物が挙げられる。
イオン結合性塩2は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオン結合性塩2は、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。合成品の場合、イオン結合性塩2の製造方法は、特に制限されず、例えば、アニオン交換法、中和法、酸エステル法などが挙げられる。また、硫酸エステルのアンモニウム塩またはスルホン酸エステルのアンモニウム塩と、窒素含有化合物とを反応させアンモニアを留去してB成分を得る脱アンモニア法なども好適に用いられる。
[溶媒]
親水化コーティング剤は、溶媒を含みうる。溶媒としては、特に制限されないが、環境負荷の観点から、水系媒体が好ましい。ここで、「水系媒体」とは、少なくとも水を50質量%以上含有するものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
[その他の成分]
親水化コーティング剤には、樹脂、重合開始剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の成分がさらに含まれていてもよい。なお、当該成分が親水性付与剤にも該当する場合には、親水性付与剤に分類するものとする。
樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。また、樹脂は、上記の親水性保持剤および/または親水性付与剤と共重合した形態で、親水化コーティング剤中に存在していてもよい。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
[親水性保持剤の親水性コーティング剤への導入方法]
本発明の親水性保持剤を親水化コーティング剤に導入する方法としては、特に制限されないが、例えば、本発明の親水性保持剤および上記の親水性付与剤を含む重合性組成物を調製し、当該重合性組成物を乳化重合してポリマーエマルジョンを製造し、当該ポリマーエマルジョンを親水化コーティング剤として使用する方法が好ましい。当該方法であれば、親水性保持剤が界面活性剤として働いてミセルを形成するため、当該ミセル内部で乳化重合が進行し、親水性保持剤と親水性付与剤とが一体化したポリマー粒子が形成されうる。ゆえに、本発明の効果が一層向上しうる。
上記の重合性組成物は、上記の樹脂を構成する原料化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー)をさらに含むことが好ましく、例えばエチレン性不飽和単量体をさらに含むことがより好ましい。当該成分を含むことで、得られたポリマーエマルジョンはそれ単独で親水化コーティング剤として機能しうるため、親水化コーティング剤の調製が簡便となる。したがって、本発明は、親水性保持剤と、親水性付与剤と、エチレン性不飽和単量体(前記親水性保持剤および親水性付与剤を除く)とを含む重合性組成物の乳化重合物を含む親水化コーティング剤についても提供する。
(エチレン性不飽和単量体)
エチレン性不飽和単量体としては、エチレン性不飽和基を有する化合物(上記の親水性保持剤および親水性付与剤を除く)であれば、特に制限されない。なお、本明細書において、「エチレン性不飽和基」とは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等を指す。
エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル単量体、ビニル単量体、α−オレフィン等が挙げられる。
(メタ)アクリル単量体としては、アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の単官能(メタ)アクリレート;デカンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニル単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等の芳香族ビニル単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル単量体;シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等の脂環式ビニル単量体等が挙げられる。
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
エチレン性不飽和単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[ポリマーエマルジョンの製造方法]
本発明は、親水性保持剤の存在下、親水性付与剤およびエチレン性不飽和単量体(前記親水性保持剤および親水性付与剤を除く)を乳化重合することを有する、ポリマーエマルジョンの製造方法についても提供する。上述したように、当該方法で得られたポリマーエマルジョンは、それ単独でも親水化コーティング剤として機能しうるため、コーティング剤の調製が簡便となり、好ましい。
上記方法において、親水性付与剤としては、上記の親水性モノマーを使用することが好ましく、上記式(2)で表されるイオン結合性塩2を用いることがより好ましい。かような親水性付与剤を用いて乳化重合することで、親水性保持剤が形成するミセル内部で親水性付与剤とエチレン性不飽和単量体とが共重合できるため、親水性保持剤、親水性付与剤およびエチレン性不飽和単量体が一体化したポリマー粒子を形成することができる。ゆえに、本発明の効果が一層向上しうる。
乳化重合の方法としては、(1)単量体成分を界面活性剤および水系媒体中に滴下しながら重合を行う方法(単量体滴下法);(2)原料(単量体成分、界面活性剤および水系媒体)の全量を混合したものから一括で重合を行う方法(単量体一括仕込み法);(3)原料のうちの一部(単量体成分のうちの1種または2種以上等、界面活性剤、水系媒体、および重合開始剤)を用いて初期重合しシードエマルジョンを製造した後、シードエマルジョンへ残りの原料を添加して乳化重合を行う方法(シードエマルジョン法);(4)パワーフィード法等が挙げられる。また、(1)〜(4)の乳化重合は、単層重合でも多段重合であっても良い。中でも、粒径をコントロールしやすいことから、上記(3)の方法が好ましい。なお、上記(1)〜(4)の方法において、水系媒体は、上記と同様の定義であり、好ましくは水である。
上記(3)の方法においては、原料全量の5〜10質量%を初期重合してシードエマルジョンを製造した後、残りの原料をシードエマルジョンへ添加して乳化重合を行うことが好ましい。なお、本明細書において、原料全量に対する初期重合を行う原料量の質量割合を「モノマーシード量(質量%)」と称する。すなわち、本発明のポリマーエマルジョンの製造方法において、モノマーシード量は、好ましくは5〜10質量%である。
本発明に係るポリマーエマルジョンの製造方法において、親水性付与剤の使用量は、エチレン性不飽和基を有する化合物(親水性保持剤を除く)の合計質量に対して、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらにより好ましくは2〜5質量%である。
界面活性剤として本発明の親水性保持剤を使用する際の使用量は、イオン結合性塩1の使用量として、エチレン性不飽和基を有する化合物(親水性保持剤を除く)の合計質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%であり、さらにより好ましくは1〜2質量%である。
本発明の親水性保持剤に含まれるイオン結合性塩1は、単独でも充分に界面活性剤として機能するが、必要に応じて従来公知の界面活性剤、反応性乳化剤、高分子量乳化剤、保護コロイドなどを併用することもできる。
併用できる界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤としては長鎖アルキル硫酸塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などであり、また非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、プルロニック型界面活性剤などを挙げることができる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられ、市販品としては日本乳化剤株式会社製ニューコール(登録商標)707−SF等を使用することができる。
併用できる高分子乳化剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレートなどが挙げられ、また併用できる保護コロイドとしてはアルギン酸ナトリウムなどのようなアニオン性保護コロイド、ヒドロキシエチルセルロースのような非イオン性保護コロイドなどが例として挙げられる。
陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子乳化剤および/または保護コロイドと併用する場合の使用量は、その合計質量として、親水性保持剤1質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
本発明のポリマーエマルジョンの製造方法においては、ポリマー粒子の凝集を抑制するため、アクリル酸を使用することが好ましい。アクリル酸の使用量は、エチレン性不飽和基を有する化合物(親水性保持剤を除く)の合計質量に対して、好ましくは1〜5質量%である。
乳化重合において使用できる重合開始剤としては、特に制限されず、カリウム、ナトリウム、アンモニウムの過硫酸塩または過ホウ酸塩、過酸化水素などの無機過酸化物;過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキシド、過酢酸などの有機過酸化物;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、4−アゾビス−(4−シアノペンタノイック)酸またはそのアルカリ金属塩などのラジカル生成重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の使用量としては、エチレン性不飽和基を有する化合物(親水性保持剤を除く)の合計質量に対して、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.1〜2.0質量%がより好ましく、0.1〜1.0重量%がさらにより好ましい。
また、重合開始剤として過酸化物を使用する場合、必要があれば、当該過酸化物とアスコルビン酸、可溶性亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、チオ硫酸塩などの還元剤とを併用することができ、また水中で重金属イオンを発生する金属単量体または硫酸第一鉄などの水中で金属イオンを発生する金属化合物とを組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。
また、連鎖移動剤も併用することができ、そのようなものとして例えばt−ドデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリフェニルメタンなどを使用することができる。
さらにまた、乳化重合技術において慣用の添加剤、例えばキレート化剤、緩衝剤、有機酸の塩、溶媒などを使用することができる。
乳化重合の温度は、特に制限されないが、好ましくは60〜90℃である。また、乳化重合の時間も、特に制限されないが、好ましくは1〜10時間である。
本発明の効果のさらなる向上の観点から、本発明のポリマーエマルジョンの製造方法において、得られるポリマー粒子の平均粒径は、10〜200nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましく、50〜120nmであることがさらにより好ましい。なお、本明細書において、ポリマー粒子の平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザーナノZSにより算出される値を採用するものとする。ポリマー粒子の平均粒径は、上記のシードエマルジョン法でポリマーエマルジョンを製造する場合には、モノマーシード量等を調節することにより、所望の範囲に制御することができる。
[塗膜]
上述したように、本発明に係る親水性保持剤を、親水性付与剤を含む親水化コーティング剤に導入することで、当該親水化コーティング剤から形成される塗膜の親水性保持効果が向上する。したがって、本発明は、上記の親水化コーティング剤の乾燥物または硬化物からなる塗膜についても提供する。
このような塗膜を所望とする対象物の表面に形成することで、対象物表面の親水性を保持することができる。対象物の材質としては、特に制限されないが、例えば、プラスチック、ガラス等が挙げられる。また、対象物の形状としても、特に制限されないが、例えば、フィルム、繊維、シート、テープ等が挙げられる。
親水性コーティング剤の塗布方法としては、公知の塗布方法を適宜使用することができ、例えば、スピン塗布、ロール塗布、グラビア塗布、リバース塗布、スプレー塗布、エアーナイフ塗布、カーテン塗布、ロールブラッシュ、含浸、バーコーターによる塗布などの方法を用いることができる。
乾燥条件は、対象物の耐熱性や親水化コーティング剤に含まれる溶媒の沸点等に応じて適宜調節できる。乾燥温度は、特に制限されないが、例えば、50〜180℃、80〜150℃、または110〜130℃である。乾燥時間も、特に制限されないが、例えば、0.5〜120分、1〜60分、または1〜10分である。乾燥雰囲気も、特に制限されないが、例えば、大気、不活性ガス(例えば窒素)、真空である。
硬化方法としては、熱硬化、光硬化、室温硬化等、公知の硬化方法を採用することができ、その条件についても適宜選択されうる。熱硬化の場合、上述の乾燥と同じ条件で実施してもよい。すなわち、乾燥および熱硬化は同時に進行してもよい。また、本発明の塗膜を形成するにあたり、乾燥および硬化の両方を実施してもよい。例えば、予備乾燥により親水化コーティング剤に含まれる溶媒を除去した後、光硬化を実施してもよい。
形成される塗膜の膜厚は、ドライ膜厚として、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは5〜20μmであり、さらにより好ましくは10〜15μmである。かような範囲であれば、塗膜を付与する対象物の性質(硬度、可撓性等)を損ねることなく、対象物の親水性を高めることができる。
本発明に係る塗膜の表面は親水性が高く、例えば、水に対する接触角が60°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらにより好ましくは10°以下である。さらに、この高い親水性は、水(例えば、純水、中性洗剤を含有する水溶液等)で塗膜を洗浄した後においても持続する。したがって、本発明に係る塗膜は、耐汚染性、防曇性、帯電防止性についても保持しうる。言い換えれば、本発明に係る親水化コーティング剤は、耐汚染塗料、防曇塗料、帯電防止塗料としても機能しうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は25℃で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<イオン結合性塩の合成>
(合成例1:イオン結合性塩1の合成)
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(略称:2M−MA)157.2質量部に、トリデカノール(分枝状)を用いて従来公知の方法により合成したポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステル塩(略称1305−S、EO平均付加モル数20)517.4質量部を添加した後50℃で1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩1(略称:[2M−MA][1305−S])を657.6質量部得た。
(合成例2:イオン結合性塩2の合成)
圧力計、導入管、温度計、撹拌機を備えたオートクレーブに、トリデカノール(分枝状)200.4質量部と水酸化カリウム2.0質量部を仕込み、170℃まで昇温した。その後、1,2−ブチレンオキシド216.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入して10時間反応させ、さらに、エチレンオキシド220.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入して10時間反応させた。反応後、ポリオキシブチレン/ポリオキエチレントリデシルエーテル639.0質量部を得た。得られたポリオキシブチレン/ポリオキエチレントリデシルエーテル637.0質量部を110℃まで昇温し、スルファミン酸97.1質量部を加え、3時間反応させた。反応後、未反応のスルファミン酸を濾別し、ポリオキシブチレン/ポリオキエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩([C1327−O−(BO)−(EO)−SO ][NH ])734.1質量部を得た。
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(略称:2M−AA)143.2質量部に、上記で合成したポリオキシブチレン/ポリオキエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩を734.1質量部添加した後、50℃で1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩2(略称:[2M−MA][130305−S])を860.1質量部得た。
<ポリマーエマルジョン1〜7の調製>
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、テフロン(登録商標)半月撹拌翼を備えたフラスコに、水100.0質量部を仕込み、80℃まで昇温した。別途、三角フラスコにアクリル酸n−ブチル80.0質量部、メタクリル酸メチル112.0質量部、アクリル酸4.0質量部、親水性付与剤として上記合成例2で合成した[2M−MA][130305−S]8.0質量部、界面活性剤として日本乳化剤株式会社製ニューコール(登録商標)707−SF(略称:N−707−SF) 2.04質量部および上記合成例1で合成した[2M−MA][1305−S]4.0質量部、水86.3質量部、10%ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液5.0質量部を仕込み、混合物を得た。冷却管等を備えた上記フラスコに上記混合物15.7質量部(モノマーシード量5質量%)仕込み、80℃に昇温して30分間の初期重合を行った。その後3時間かけて三角フラスコ中の残りの混合物を80℃で滴下した。さらに80℃で1時間熟成を行い、28%アンモニア水1.1質量部を使用して中和し、ポリマーエマルジョン1を得た。
(実施例2)
[2M−MA][1305−S]の添加量を2.0質量部に変更し、かつN−707−SFを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリマーエマルジョン2を得た。
(実施例3)
メタクリル酸メチルの添加量を108質量部に変更し、かつ親水性付与剤としてメタクリル酸グリシジル4質量部を混合物にさらに添加したこと以外は実施例2と同様にして、ポリマーエマルジョン3を得た。
(実施例4)
初期重合を31.4重量部(モノマーシード量10質量%)で行ったこと以外は実施例2と同様にして、ポリマーエマルジョン4を得た。
(実施例5)
初期重合を31.4重量部(モノマーシード量10質量%)で行ったこと以外は実施例3と同様にして、ポリマーエマルジョン5を得た。
(比較例1)
[2M−MA][1305−S]を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリマーエマルジョン6を得た。
(比較例2)
メタクリル酸メチルの添加量を120質量部に変更し、かつ[2M−MA][130305−S]を使用しなかったこと以外は実施例2と同様にして、ポリマーエマルジョン7を得た。
<試験片の作製>
上記で得られたエマルジョン1〜7 1gをそれぞれ3MILバーコーターにてガラス板に塗布して110℃で10分乾燥した後、室温にて24時間静置し、ドライ膜厚15μmの塗膜を有する試験片を得た。
<試験片の評価>
[接触角測定]
上記実施例で得られた試験片について、水の接触角を測定した。接触角計を用い、乾燥状態(25℃/50%RH)で、液体として純水を使用して約1μLの液滴を針先に作り、これを試験片の塗膜表面に接触させて試験片上に液滴を作った。試験片と液体とが接する点における、液体表面に対する接線と試験片表面がなす角で、液体を含む側の角度を接触角とした。
[洗浄方法(耐久性試験)]
水1Lに市販の家庭用中性洗剤5滴(約100mg)を加えた洗浄水をスポンジに湿らせ、このスポンジで試験片を10回擦り、水道水に次いでイオン交換水の順ですすぎ、水滴を拭き取った後に130℃で10分間乾燥させた。この工程を1回行った後、上記と同様にして試験片の接触角を再度測定した。
表1の実施例1〜5で示されるように、界面活性剤としてイオン結合性塩1([2M−MA][1305−S])を、親水性付与剤としてイオン結合性塩2([2M−AA][130305−S])をそれぞれ使用して調製したポリマーエマルジョン1〜5について、得られた塗膜の接触角は20°以下であり、洗浄処理後も20°以下に保持されていた。特に、ポリマー粒子の平均粒径が比較的小さいポリマーエマルジョン4および5では、洗浄処理による接触角上昇が見られず、親水性保持効果が高かった。
一方、比較例1で示されるように、界面活性剤としてイオン結合性塩1を使用せずに調製したポリマーエマルジョン6については、初期の接触角は良好であるものの、洗浄処理を行うことで接触角が大幅に上昇した。また、比較例2に示されるように、界面活性剤としてイオン結合性塩1を使用したものの、親水性付与剤を使用せずに調製したポリマーエマルジョン7についても、初期の接触角は良好であるものの、洗浄処理を行うことで接触角が大幅に上昇した。
上記の結果から、本発明の親水性保持剤は、親水性付与剤を含む親水化コーティング剤から形成される塗膜に対して親水性保持効果を付与できることが実証された。

Claims (8)

  1. 親水性付与剤を含む親水化コーティング剤から形成される塗膜の親水性を保持するのに用いられる親水性保持剤であって、下記式(1)で表されるイオン結合性塩1を含む、親水性保持剤:
    上記式(1)中、
    は、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
    m1は、オキシエチレン基の平均付加モル数で1〜50の数であり、
    は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである。
  2. 前記親水性付与剤は、下記式(2)で表されるイオン結合性塩2を含む、請求項1に記載の親水性保持剤:
    上記式(2)中、
    は、置換されていてもよい炭素数12〜14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
    は、炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
    m2は、AOの平均付加モル数で1〜50の数であり、
    (AO)m2は、少なくとも2種のオキシアルキレン基を含み、その配列はランダム型、ブロック型のいずれでもよく、
    は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである。
  3. 請求項1に記載の親水性保持剤、親水性付与剤およびエチレン性不飽和単量体(前記親水性保持剤および親水性付与剤を除く)を含む重合性組成物の乳化重合物を含む、親水化コーティング剤。
  4. 前記親水性付与剤は、下記式(2)で表されるイオン結合性塩2を含む、請求項3に記載の親水化コーティング剤:
    上記式(2)中、R、A、m2、(AO)m2およびQ は、請求項2と同様の定義である。
  5. 請求項3または4に記載の親水化コーティング剤の乾燥物または硬化物からなる塗膜。
  6. 請求項1に記載の親水性保持剤の存在下、親水性付与剤およびエチレン性不飽和単量体(前記親水性保持剤および親水性付与剤を除く)を乳化重合することを有する、ポリマーエマルジョンの製造方法。
  7. 前記親水性付与剤は、下記式(2)で表されるイオン結合性塩2を含む、請求項6に記載のポリマーエマルジョンの製造方法:
    上記式(2)中、R、A、m2、(AO)m2およびQ は、請求項2と同様の定義である。
  8. ポリマー粒子の平均粒径が50〜120nmである、請求項6または7に記載のポリマーエマルジョンの製造方法。
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