JP7178767B2 - セメント組成物、及び、モルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法 - Google Patents
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Description
このように、フライアッシュは、コンクリート等の材料として非常に有用であるため、JIS規格化されている(「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」)。
また、フライアッシュが特定量使用されたフライアッシュセメント等は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(いわゆるグリーン購入法)の特定調達品目に指定されている。
フライアッシュの添加による製品の色彩の変動を防ぐためにフライアッシュの選別を行う方法として、特許文献1には、フライアッシュを充填材として使用するに当たって、フライアッシュをJIS Z 8722「色の測定方法-反射及び透過物体色」により測定し、JIS Z 8721「色の表示方法-三属性による表示」により定められる色の表示値を用いてフライアッシュの選別、及び/又は充填量の設定をすることを特徴とするフライアッシュの充填方法が記載されている。
[1] ハンターLab表色系におけるL値が47未満であるフライアッシュ、ポルトランドセメント、骨材、混和剤及び水を含み、かつ、消泡剤を含まないセメント組成物であって、上記混和剤は、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤から選ばれる1種以上、及び、上記セメント組成物中の空気量が3~12体積%になる量のAE剤を含むことを特徴とするセメント組成物。
[2] 上記フライアッシュ及び上記ポルトランドセメントの合計量100質量%中、上記フライアッシュの割合が30質量%以下である前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物からなるモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法であって、複数の種類のフライアッシュから、ハンターLab表色系におけるL値が47未満であるフライアッシュを選択し、該選択されたフライアッシュを、上記セメント組成物の材料として用いることを特徴とするモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法。
[4] 上記選択されたフライアッシュと、上記ポルトランドセメントを混合して、フライアッシュ混合セメントを調製し、該フライアッシュ混合セメントを、上記セメント組成物の材料として用いる前記[3]に記載のモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法。
本明細書中、「セメント組成物」は、硬化前のセメント組成物と硬化後のセメント組成物を含む。また、「モルタル又はコンクリート」は、硬化後のモルタル又はコンクリートを意味する。
本発明で用いるフライアッシュのハンターLab表色系におけるL値は47未満、好ましくは45以下、より好ましくは43以下、さらに好ましくは41以下、さらに好ましくは38以下、さらに好ましくは35以下、さらに好ましくは32以下、特に好ましくは29以下である。該L値が47以上である場合、コンクリート等の空気量を調整しなくても表面の黒色化を防止することが可能であるため本発明の方法を適用する必要性が乏しくなる。
該L値の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは23以上、特に好ましくは25以上である。該L値が20以上であれば、表面の黒色化をより防止することができる。
本発明では、上記フライアッシュは、例えば、複数の種類のフライアッシュの各々について、ハンターLab表色系におけるL値を測定して、該L値が47未満であるフライアッシュを選択して用いる。なお、ハンターLab表色系におけるL値の測定をしなくても、目視等によって該L値が47未満であることが判別できる場合には、L値の測定をせずにフライアッシュを選択してもよい。
なお、本発明において、フライアッシュ及びポルトランドセメントとして、「JIS R 5210(ポルトランドセメント)」に規定する少量混合成分としてのフライアッシュ(ただし、ハンターLab表色系におけるL値が47未満であるフライアッシュを選択して用いたもの)を含むポルトランドセメントを用いてもよい。
また、本発明において、フライアッシュ及びポルトランドセメントとして「JIS R 5213(フライアッシュセメント)」に規定するフライアッシュセメント(ただし、ハンターLab表色系におけるL値が47未満であるフライアッシュを選択して用いたもの)を用いてもよい。
なお、本発明において、フライアッシュ及びポルトランドセメントとして、例えば、「JIS R 5210(ポルトランドセメント)」に規定する少量混合成分としてのフライアッシュ(ただし、ハンターLab表色系におけるL値が47未満であるフライアッシュを選択して用いたもの)を2.5質量%含むポルトランドセメントを用いた場合は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量%中、フライアッシュの割合が2.5質量%であるものとして取り扱う。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、軽量細骨材、またはこれらの混合物等が挙げられる。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、又はこれらの混合物等が挙げられる。
骨材の配合量は特に限定されず、コンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、骨材の配合量は、フライアッシュとポルトランドセメントの合計量100質量部に対して、好ましくは100~700質量部、より好ましくは120~400質量部である。
水の配合量は特に限定されず、コンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、水の配合量は、水と、フライアッシュ及びポルトランドセメントの質量比(水/フライアッシュ及びポルトランドセメント)の値として、好ましくは0.2~0.6となる量である。
減水剤等としては、セメントに対する分散作用により、流動性の改善または強度の増大の作用を有するものとして、リグニンスルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系、またはポリカルボン酸系の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
コンクリート等が減水剤等を含むことにより、フライアッシュの配合量が多くても、モルタル又はコンクリートの表面の黒色化を防止することができる。
減水剤等の配合量は特に限定されず、コンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、該混和剤の配合量は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。該混和剤が液状である場合、該混和剤の固形分は、通常、前記の配合量の10~50質量%である。
モルタル又はコンクリートの中のAE剤の配合量は、硬化前のセメント組成物(モルタル又はコンクリート)の空気量が3~12体積%となる量である。硬化前のセメント組成物(モルタル又はコンクリート)の空気量を上記数値範囲内とすることで、黒色度の大きいフライアッシュの配合量が多くても、黒色化を防止することができる。
AE剤の好ましい配合量は、モルタルとコンクリートとで多少異なる。
モルタル中のAE剤の配合量は、表面の黒色化の防止効果、強度発現性および耐久性の観点から、硬化前のセメント組成物(上記モルタル)中の空気量が、好ましくは4~12体積%、より好ましくは4.5~11体積%、さらに好ましくは5~10体積%、特に好ましくは6~10体積%となる量である。
コンクリート中のAE剤の配合量は、表面の黒色化の防止効果、強度発現性および耐久性の観点から、硬化前のセメント組成物(上記コンクリート)中の空気量が、好ましくは3.5~7体積%、より好ましくは4~6.5体積%、特に好ましくは4.5~6体積%となる量である。
本発明のモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法によれば、モルタル又はコンクリートの表面の面積100%中、黒色化した部分の面積の合計の割合を3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下にすることができる。
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)フライアッシュ1~10:フライアッシュの強熱減量(表1中、「ig.loss」と示す。)、ハンターLab表色系におけるL値(表1中、「L値」と示す。)の詳細は表1に示す。なお、強熱減量は、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に準拠して測定した。また、L値は、分光色差計(日本電色工業社製、商品名「SE6000」)を用いて測定した。
(2)ポルトランドセメント:普通ポルトランドセメント(フライアッシュを含まないもの)、太平洋セメント社製
(3)細骨材:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に規定する標準砂
(4)減水剤A:リグニンスルホン酸系AE減水剤、BASFジャパン社製、商品名「マスターポゾリス No.70」
(5)減水剤B:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤、BASFジャパン社製、商品名「マスターグレニウム SP8SVX2」
(6)AE剤:BASFジャパン社製、商品名「マスターエア 303A」
(7)水:上水道水
表1のフライアッシュ1~9の各々について、フライアッシュ、ポルトランドセメント、細骨材、減水剤A、AE剤、及び水を含むモルタルを作製し、得られたモルタルの表面の黒色化を目視評価した。
フライアッシュの配合割合は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量%中、25質量%とした。
モルタルの配合は、水と、フライアッシュ及びポルトランドセメントの質量比(水/(フライアッシュ+ポルトランドセメント))が0.5、細骨材と、フライアッシュ及びポルトランドセメントの質量比(細骨材/(フライアッシュ+ポルトランドセメント))が2.5とし、減水剤Aの配合量は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量部に対して0.25質量部とし、AE剤の配合量は、硬化前のセメント組成物(モルタル)の空気量が8±2%になる量とした。
混練は、ホバートミキサーを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して行った。混練に際して、減水剤A及びAE剤は、水とともにミキサーに投入した。成形は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して行った。
なお、実施例1において作製したモルタルは、一般的なコンクリートを模擬したもの(一般的なコンクリート中の粗骨材を含まないもの)である。
成形直後のモルタルの表面について目視評価し、(i)表面の黒色化が認められない場合を「○」、(ii)表面の黒色化が若干認められるものの、表面の黒色化面積(モルタルの表面の面積100%中、黒色化した部分の面積の合計(%)、以下同様。)の割合が3%以下の場合を「△」、(iii)表面の黒色化が認められ、表面の黒色化面積の割合が3%を超える場合を「×」とした。
フライアッシュとして、表1のフライアッシュ10を用いる以外は、実施例1と同様にしてモルタルを作製し、得られたモルタルの表面の黒色化を目視評価した。
AE剤の配合量を、硬化前のセメント組成物(モルタル)の空気量が4.0~4.5%となるように調整した以外は、実施例1におけるフライアッシュ1、4、5又は9を用いたモルタルと同様にしてモルタルを成形し、各モルタルの表面の黒色化を目視評価した。
AE剤を配合しなかった以外は、実施例1におけるフライアッシュ4または9を用いたモルタルと同様にしてモルタルを成形し、各モルタルの表面の黒色化を目視評価した。なお、硬化前のセメント組成物(モルタル)中の空気量は2.5~2.8%であった。
[参考例2]
AE剤を配合しなかった以外は、参考例1と同様にしてフライアッシュ10を用いたモルタルを成形し、該モルタルの表面の黒色化を目視評価した。なお、硬化前のセメント組成物(モルタル)中の空気量は2.6%であった。
表1のフライアッシュ1~9の各々について、フライアッシュ、ポルトランドセメント、細骨材、減水剤B、AE剤、及び水を含むモルタルを成形し、得られたモルタルの表面の黒色化を目視評価した。
フライアッシュの配合割合は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量%中、25質量%とした。
モルタルの配合は、水と、フライアッシュ及びポルトランドセメントの質量比(水/(フライアッシュ+ポルトランドセメント))が0.3、細骨材と、フライアッシュ及びポルトランドセメントの質量比(細骨材/(フライアッシュ+ポルトランドセメント))が1.4とし、減水剤Bの配合量は、フライアッシュ及びポルトランドセメントの合計量100質量部に対して1.2質量部とし、AE剤の配合量は、硬化前のセメント組成物(モルタル)の空気量が8±2%になる量とした。
混練は、ホバートミキサーを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に記載される混練時間よりも2分間長くして行った。混練に際して、減水剤B及びAE剤は、水とともにミキサーに投入した。成形は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して行った。
なお、実施例3において作製したモルタルは、高強度コンクリートを模擬したもの(高強度コンクリート中の粗骨材を含まないもの)である。
成形直後のモルタルの表面を実施例1と同様に目視評価した。
フライアッシュとして、表1のフライアッシュ10を用いる以外は、実施例3と同様にしてモルタルを成形し、得られたモルタルの表面の黒色化を目視評価した。
結果を表1に示す。
一方、比較例1から、一般的なコンクリートを模擬したモルタルにおいて、L値が47未満の黒色度の大きいフライアッシュをモルタルの材料として使用し、かつ、AE剤を使用しない(空気量が3~12%となるように調整しない)場合、モルタルの表面の黒色化を防止できないことが分かる。
Claims (2)
- ハンターLab表色系におけるL値が20~29であるフライアッシュ、ポルトランドセメント、骨材、混和剤及び水を含み、かつ、消泡剤を含まないセメント組成物であって、
上記混和剤は、AE減水剤、及び高性能AE減水剤から選ばれる1種以上、並びに、AE剤を含み、
上記セメント組成物がモルタルの場合、該セメント組成物中のAE剤の配合量は、硬化前の該セメント組成物中の空気量が5~12体積%となる量であり、
上記セメント組成物がコンクリートの場合、該セメント組成物中のAE剤の配合量は、硬化前の該セメント組成物中の空気量が4.5~6体積%となる量であり、
上記フライアッシュ及び上記ポルトランドセメントの合計量100質量%中、上記フライアッシュの割合が25~30質量%であるセメント組成物からなるモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法であって、
複数の種類のフライアッシュから、ハンターLab表色系におけるL値が20~29であるフライアッシュを選択し、該選択されたフライアッシュを、上記セメント組成物の材料として用いることを特徴とするモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法。 - 上記選択されたフライアッシュと、上記ポルトランドセメントを混合して、フライアッシュ混合セメントを調製し、該フライアッシュ混合セメントを、上記セメント組成物の材料として用いる請求項1に記載のモルタル又はコンクリートの表面の黒色化防止方法。
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