この発明は、上述した問題を鑑み、それぞれに求められる電波特性に合わせて指向性が異なる送信アンテナ部と受信アンテナ部との性能をそれぞれ向上させることができるアンテナ装置及びレーダ装置を提供することを目的とする。
この発明は、電波を送受信するアンテナ装置であって、指向性が異なる送信アンテナ部と受信アンテナ部とを並設して表面に設けたアンテナ基板と、該アンテナ基板の表面から所定間隔を隔てて覆う、前記電波を透過する樹脂製のカバー体、及び該アンテナ基板の裏面側に配置されたベース体で構成する筐体とで構成され、前記カバー体において、前記送信アンテナ部に対向する部分を送信カバー部とするとともに、前記受信アンテナ部に対向する部分を受信カバー部とし、前記送信カバー部が、前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状で形成され、前記受信カバー部は、断面アーチ状に形成され、前記断面アーチ状は、前記電波の送信方向に突出する向きのアーチ状であり、さらに、送信される前記電波の広角方向に沿う形状であるアンテナ装置であることを特徴とする。
上記カバー体は、レドームと呼ばれる電波を透過する樹脂製のケース体である。
上記表面は、前記アンテナ基板において送信アンテナ部と受信アンテナ部とで構成するアンテナ部が設けられた側であり、そのためアンテナ部から電波を送信する送信方向は、前記アンテナ基板に対する表面側となる。また、上記裏面側はアンテナ基板における前記アンテナ部が設けた表面の反対側となる側である。
また、前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部は、送信アンテナ部と受信アンテナ部であってもよいし、送信アンテナ部同士、及びまたは受信アンテナ部同士であってもよい。また、アンテナ部としては、前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部と以外にアンテナ部があってもよい。
また、上述のカバー体において、前記受信アンテナ部に対向する部分とは、前記受信アンテナ部の表面側において所定間隔を隔てて対面する部分をいい、前記送信アンテナ部に対向する部分とは、前記送信アンテナ部の表面側において所定間隔を隔てて対面する部分をいう。
上述の送信される前記電波の広角方向とは、送信される電波(以下において送信波という)の拡散方向のうち拡散させたい所望の方向や、アンテナの形状やバッチアンテナの配列によって主に拡散する方向をいい、例えば搭載する車両の幅方向とすることができる。
上述の前記電波が送信される送信方向に突出するとともに、送信される前記電波の広角方向に沿う断面アーチ状とは、例えば、前方に向かって電波を送信するアンテナ装置である場合は前方に突出するとともに幅方向に沿う断面がアーチ状であることをいい、一定の曲率や曲率が変化する曲線で構成されたアーチ状のみならず、断面方向に沿って直線の方向が変化して略アーチ状を構成する場合も含む。
さらに、上記断面アーチ状は表面側のアーチ状と内面側のアーチ状が同じであっても、厚みは変化するように異なっていてもよい。また、広角方向に沿う断面アーチ状であれば、前記広角方向に交差する方向に対する断面がフラット状であっても曲線状など適宜の断面形状であってもよい。
上述の前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状とは、前記アンテナ基板の表面に対して平行な平面状やわずかに湾曲した曲面状、あるいは表面に対してわずかに傾斜する平面状であってもよい。
この発明により、それぞれに求められる電波特性に合わせて指向性の異なる送信アンテナ部と受信アンテナ部の性能をそれぞれ向上させることができる。
詳述すると、前記アンテナ基板の表面から所定間隔を隔てて覆う前記カバー体において、前記送信アンテナ部に対向する部分である送信カバー部が前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状で形成され、前記受信アンテナ部に対向する部分である受信カバー部が送信波の送信方向に突出するとともに、送信波の広角方向に沿う断面アーチ状に形成されているため、カバー体の各対向部を透過する電波の電波特性が送信アンテナ部で送信または受信する(以下において送信/受信すると記載する)電波と、受信アンテナ部で送信/受信する電波とで異なることとなる。
具体的には、送信アンテナ部で送信/受信する電波(以下において送信波/受信波という)が透過する送信カバー部が前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状で形成されているため、当該送信波/受信波の送信/受信する距離を所望の方向への長距離化することができる。
これに対し、受信アンテナ部で送信/受信する電波が透過する受信カバー部が送信波の送信方向に突出するとともに、送信波の広角方向に沿う断面アーチ状に形成されているため、受信アンテナ部における当該送信波/受信波の角度特性を向上することができる。
そのため、送信波/受信波の送信/受信する距離の所望の方向への長距離化と、送信波/受信波の広い角度範囲への対応という異なる指向性の向上を両立させることができる。
また、それぞれに求められる電波特性に合わせて送信アンテナ部と受信アンテナ部の性能を向上させることができる。
詳述すると、前記アンテナ基板の表面から所定間隔を隔てて覆う前記カバー体において、前記電波を受信する前記受信アンテナ部に対向する部分である受信カバー部が送信波の送信方向に突出するとともに、送信波の広角方向に沿う断面アーチ状に形成され、前記電波を送信する前記送信アンテナ部に対向する部分である送信カバー部が前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状で形成されているため、カバー体の対向部を透過する電波の電波特性が送信波と、検知対象物で反射し、受信アンテナ部で受信波とで異なることとなる。
具体的には、送信波が透過する送信カバー部が前記アンテナ基板の前記表面に対向するフラット状で形成されているため、送信波の検知距離を所望の方向への長距離化することができる。
これに対し、受信波が透過する受信カバー部が前記送信アンテナ部から送信波の送信方向に突出するとともに、送信波の広角方向に沿う断面アーチ状に形成されているため、受信アンテナ部における角度特性を向上することができる。
そのため、遠くの検知対象物まで送信波が届くとともに、広い角度範囲からの反射波を受信波として受信アンテナ部で受信することができ、アンテナ装置の検出精度を向上することができる。
この発明の態様として、前記受信カバー部は、前記断面アーチ状における両側に、他の部分より厚みが薄い薄肉部が設けられてもよい。
上述の他の部分より厚みが薄い薄肉部は、前記受信カバー部の表面において他の部分より裏面側に凹ませて形成してもよいし、前記受信カバー部の裏面において他の部分より表面側に凹ませて形成してもよいし、その両方によって形成されてもよい。さらには、溝状に形成してもよいし、滑らかに凹ませて形成してもよい。
この発明により、所望の角度範囲を超える範囲に対する送信波/受信波の影響を抑制し、つまり受信アンテナ部における角度特性を向上し、所望の角度範囲における送信波/受信波を高精度で送信/受信することができる。
またこの発明の態様として、前記薄肉部は、前記受信カバー部の表面に設けられた凹部によって構成されてもよい。
上述の前記受信カバー部の表面に設けられた凹部によって構成された前記薄肉部は、表面に設けた凹部によって所望の厚みで構成した薄肉部、あるいは表面及び裏面に設けた凹部によって所望の厚みで構成した薄肉部であってもよい。
この発明により、所望の厚みで構成した薄肉部を、仮に裏面に設けた凹部によって構成する場合に比べ、表面に設けた凹部によって構成された薄肉部は、所望の角度範囲を超える範囲に対する送信波/受信波の影響をさらに抑制し、つまり受信アンテナ部における角度特性をより向上し、所望の角度範囲における送信波/受信波をより高精度で送信/受信することができる。
またこの発明の態様として、前記薄肉部は、前記広角方向において前記受信アンテナ部に対向する箇所よりも外側に設けられてもよい。
この発明により、送信波/受信波の影響を抑制したい受信アンテナ部に対する所望の角度範囲を正確に設定することができる。
なお、上述の前記広角方向において前記受信アンテナ部に対向する箇所よりも外側は、例えば広角方向をアンテナ装置の幅方向とした場合における幅方向外側となる。
またこの発明の態様として、前記送信カバー部は、前記広角方向における両側に、前記フラット状を構成する主面に沿う方向及び前記送信方向に交差する向きの交差方向面が設けられてもよい。
なお、上述の前記広角方向における両側は、例えば広角方向をアンテナ装置の幅方向とした場合における幅方向両外側となる。
上述の前記フラット状を構成する主面に沿う方向及び前記送信方向に交差する向きの交差方向面は、前記フラット状を構成する前記送信カバー部の拡散方向の主面に沿う方向及び前記送信方向に交差する方向に対して傾斜する傾斜面や湾曲する面などで構成することができる。なお、交差する方向は、フラット状の前記送信カバー部に対して反送信方向に交差する方向つまり主面より裏面側に交差する方向、あるいは送信方向に交差する方向つまり主面より送信方向に交差する方向とすることができる。
この発明により、アンテナ装置の後方(裏面側)への送信波/受信波の送信/受信を抑制することができる。
詳述すると、車体に対して検知対象物を検知したい方向に送信方向を向けてアンテナ装置を取り付けるため、アンテナ装置の後方(裏面側)は車体となり、アンテナ装置の後方(裏面側)に対して送信波/受信波が送信/受信されると、アンテナ装置を取り付ける車体で反射し、いわゆるマルチパスによって誤検知が生じるおそれがある。
そこで、前記送信カバー部における前記広角方向における両側に、前記フラット状を構成する主面に沿う方向及び前記送信方向に交差する向きの交差方向面を設けることで、送信波/受信波の送信方向/受信方向への影響はなく、後方(裏面側)に対する送信波/受信波の送信/受信を抑制することができる。そのため、アンテナ装置を取り付ける車体で反射することによる誤検知を抑制し、検出精度を向上することができる。
またこの発明の態様として、前記送信カバー部の前記アンテナ基板に対面する側における前記送信アンテナ部の対向部分に、送信される前記電波の主たる送信方向を誘導する方向誘導手段が設けられてもよい。
この発明により、送信アンテナ部から送信する電波の送信方向を、例えば、アンテナ装置の正面から斜め側方などの所望の方向に誘導することができる。
詳述すると、例えば、アンテナ装置を車両の隅部に装着する場合、車両の前方あるいは後方に加え、車両の側方の検知対象物も検知することがあるが、その場合、送信方向がアンテナ装置の正面方向である場合、車両の前方あるいは後方と、車両の側方とのいずれか一方の検知対象物しか検知することができない。
これに対し、前記送信カバー部の前記アンテナ基板に対面する側における前記送信アンテナ部の対向部分に、送信される前記電波の送信方向を誘導する方向誘導手段を設けることで、送信アンテナ部から送信する電波の送信方向をアンテナ装置の正面から斜め側方に誘導することができ、隅部において斜め向きでアンテナ装置を取り付けることで、車両の前方あるいは後方に加え、車両の側方の検知対象物を検知することができる。
またこの発明の態様として、前記方向誘導手段は、前記送信カバー部における他の部分の厚みと異なる厚みの厚み変化部で構成されてもよい。
上記厚み変化部は、厚みが他の部分より薄い部分や厚い部分とすることができる。
この発明により、他の部材を設けることなく、送信カバー部を透過する送信波の送信方向を誘導することができる。
詳述すると、樹脂製のカバー体を透過する電波の透過性は、厚みによって変化するが、電波の周波数や樹脂材料に応じて厚みが薄いほど透過性の高いというものではなく、つまり厚みと透過性は比例関係にないため、透過性の高い厚みで構成された他の部分に比べて、前記方向誘導手段を透過性の低い厚みで構成することで他の部材を設けることなく、送信カバー部を透過する送信波の送信方向を誘導することができる。
またこの発明の態様として、前記ベース体を、導電性を有する導電性部材で構成し、前記カバー体及び前記ベース体において表裏方向に対向する箇所に、前記アンテナ基板の基板縁部を表裏方向に挟み込んで固定する挟み込み部が設けられてもよい。
この発明により、レドームを構成するカバー体に対してアンテナ基板を精度よく配置することができる。
詳述すると、電波を送受信するアンテナ部が表面上に設けられたアンテナ基板の表面から所定間隔を隔てて覆う、前記電波を透過する樹脂製のカバー体と、該アンテナ基板の裏面側を、所定間隔を隔てて覆うベース体とにおける表裏方向に対向する箇所に、前記アンテナ基板の基板縁部を表裏方向に挟み込んで固定する挟み込み部が設けられているため、前記カバー体及び前記ベース体を組み付けて筐体を構成することで、前記挟み込み部で前記アンテナ基板の基板縁部を表裏方向に挟み込んで、筐体にアンテナ基板を組み付けることができる。
なお、このカバー体とベース体との組み付け状態において、カバー体とベース体とにおいて表裏方向に対向する箇所に設けた前記挟み込み部で前記アンテナ基板の基板縁部を表裏方向に挟み込んで固定するため、レドームを構成するカバー体に対してアンテナ基板を精度よく配置することができる。
また、前記ベース体を、導電性を有する導電性部材で構成するため、前記ベース体を、ノイズを防止するシールド部材として機能させ、レドームを構成する前記カバー体とシールド部材を構成する前記ベース体とで、ノイズを防止できる筐体を構成することができる。したがって、カバー体とベース体とで構成する筐体内部においてシールド部材でアンテナ基板を保持する従来のアンテナ装置に比べて少ない部品点数でアンテナ装置を構成することができる。
また、導電性部材で構成し、シールド部材として機能する前記ベース体における前記挟み込み部とカバー体の挟み込み部とでアンテナ基板の基板縁部を挟み込んでいるため、シールド部材として機能する前記ベース体とアンテナ基板とが通電可能に確実に接触するため、シールド部材としてのノイズ防止効果を確実に発揮させることができる。
またこの発明は、上述のアンテナ装置を、前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部との並設方向が上下方向となるように配置され、前記広角方向が前記上下方向に直交する幅方向としたレーダ装置であることを特徴とする。
この発明により、所望の角度特性と検知距離の長距離化を効率的に発揮させたアンテナ装置を用いることで、検出精度の高いレーダ装置を構成することができる。
この発明により、それぞれに求められる電波特性に合わせて指向性が異なる送信アンテナ部と受信アンテナ部との性能をそれぞれ向上させることができるアンテナ装置及びレーダ装置を提供することができる。
図1はレーダ装置1の斜視図を示し、図2はレーダ装置1の分解斜視図を示し、図3はアンテナ装置10の正面側からの分解斜視図を示し、図4はアンテナ装置10の背面側からの分解斜視図を示し、図5はアンテナ装置10の正面図を示し、図6はアンテナ装置10のA-A矢視拡大図を示し、図7は電波特性の説明図を示し、図8は受信カバー部20Aの電波特性のグラフを示し、図9はアンテナ装置10のB-B矢視拡大図を示し、図10は送信カバー部20Bの電波特性の説明図を示し、図11はレーダ装置1の取付状態を示す概略平面図を示している。
詳述すると図7(a)は、カバー体20に設けた送信カバー部20Bと受信カバー部20Aの断面形状による電波特性を示すグラフであり、図7(b)は受信カバー部20Aに設けた側部スリット25による電波特性を示すグラフであり、図8は受信カバー部20Aに設けた側部スリット25の幅方向Wの位置による電波特性を示すグラフである。
また、図10(a)は送信カバー部20Bに設けた側方傾斜面27による電波特性を示すグラフであり、図10(b)は送信カバー部20Bの内面に設けた内面凹部29による電波特性を示すグラフである。さらに、図11において車両100における車幅方向の半分のみを図示している。
なお、アンテナ装置10の高さ方向(図1において上下方向)を上下方向Zとし、アンテナ装置10の幅方向(図1において左上と右下とを結ぶ方向)を幅方向Wとし、アンテナ装置10の奥行方向(図1において左下と右上とを結ぶ方向)を奥行方向Hとしている。さらに、上下方向Zにおいて上側を上方向Zuとするとともに、下側を下方向Zdとし、奥行方向Hにおいて手前側(図1において左下側)を前側Hfとするとともに、奥側(図1において右上側)を奥側Hbとしている。
レーダ装置1は、車載される小型のレーダ装置であり、図1及び図2に示すように、幅方向Wより上下方向Zに長い平面視略長方形状のアンテナ装置10と、アンテナ装置10を車両100(図11参照)の後方側角部など適宜の箇所に取り付けるための取付ブラケット60とで構成している。
取付ブラケット60は、平面視略長方形状のアンテナ装置10を脱着可能に取り付ける取付部材であり、アンテナ装置10を装着する装着箇所62と、装着箇所62から外側に延びる三か所の取付け箇所61とで構成されている。
詳述すると、取付ブラケット60は、図2に示すように、取付け箇所61と、装着箇所62とで構成されている。
取付け箇所61は、後述する装着箇所62から突出し、先端が半円形状に形成されるとともに、先端側にボルト孔611が形成されている。この取付け箇所61は、長方形状に形成した装着箇所62の上方向Zuの短辺における幅方向Wの中央部から上方向Zuに向けて突出するよう配置されるとともに、左右の両長辺の下方向Zdから徐々に互いに離間するよう傾斜配置されている。つまり、取付け箇所61は、平面視略長方形状に形成された装着箇所62から上方向Zuと、下方向Zdの幅方向Wの両側に向かう三方向に向けて設けられている。
装着箇所62は、底面部63と、長辺側側壁部64と、下壁部65と、上壁部66とで構成されている。
底面部63は、平面視略長方形状に形成されたアンテナ装置10に対して上下方向Z及び幅方向Wが略同程度平面視略長方形状に形成され、アンテナ装置10と組付け状態において、アンテナ装置10の底面を下方から覆うように構成されている。
また、底面部63には、部分的にコ字状に切り欠き、折り曲げて形成した3本の板バネ67が形成されている。板バネ67は、底面部63の上下方向Zの中央部より下方向Zdを基端とし上方向Zuに延びるよう形成し、幅方向Wの中央部に配置した中央板バネ671と、底面部63の上下方向Zの中央部近傍を基端とし下方向Zdに延びるよう形成し、中央板バネ671の幅方向Wの両側のそれぞれに配置した両側板バネ672とが設けられている。
長辺側側壁部64は、アンテナ装置10との組付け状態において、アンテナ装置10の長辺側側面と対向する壁面であり、上下方向Zに沿って切り欠いたスライド切欠き部641が形成されるとともに、上方向Zuを幅方向Wの外側に折り曲げた折曲げ部642が設けられている。このスライド切欠き部641には、部分的に上方に窪むスライド凹部643が形成されている。なお、スライド切欠き部641は、折曲げ部642にわたって形成されている。
下壁部65は、アンテナ装置10との組付け状態において、アンテナ装置10の下方向Zdの短辺側側面と対向する壁面であり、幅方向Wの中央部において、全幅の約半分程度を大きく切り欠いた大型切欠き部651と、該大型切欠き部651の幅方向Wの両側に略矩形状に小さく切り欠いた小型切欠き部652とを形成している。
上壁部66は、上方向Zuに配置された取付け箇所61の幅方向Wの両側に立設されている。この上壁部66の高さは、アンテナ装置10及び取付ブラケット60の組付け作業状態及び組付け状態においてアンテナ装置10における筐体10aの下面と干渉しない長さに形成されている。
なお、アンテナ装置10と取付ブラケット60との組付け状態において、大型切欠き部651はアンテナ装置10のコネクタ部22が配置可能な大きさに形成され、小型切欠き部652はアンテナ装置10の固定凸部37aが配置可能な大きさに形成されている。
上述のように構成した取付ブラケット60は、取付ブラケット60の上方向Zuから後述するアンテナ装置10をスライドし、底面部63に筐体10aを装着するように組み付けてレーダ装置1を構成することができる。このとき、アンテナ装置10は、固定凸部37bが折曲げ部642に形成されたスライド切欠き部641をスライドするように、取付ブラケット60に組み付けられる。
なお、本実施形態においては、上述のような取付ブラケット60を用いて、レーダ装置1を構成し、車両100に取り付けるが、取り付ける車両100自体や、車両100の取付場所等によって適宜の形状の取付ブラケットや適宜の異なる方法で取り付ければよい。
そして、取付ブラケット60によって車両の所定箇所に取り付けられるアンテナ装置10は、カバー体20とベース体30とで構成される筐体10aと、筐体10aの内部空間に配置されるアンテナ基板40とで構成されている。
筐体10aの上半部分を構成するカバー体20は、電波を透過する樹脂製であり、平面視略長方形状の周縁に沿って下方に突出する、所定の幅と高さを有する周縁部21と、平面視長方形状の周縁部21の上方向Zuの短辺部分から外側に突出する筒状のコネクタ部22とを備えている。
平面視長方形状のカバー体20において、上方向Zuが、側面視略円弧状に突出する略ドーム状の受信カバー部20Aであり、下方向Zdが、主面がフラット状である送信カバー部20Bを構成している。そして、カバー体20の平面視四隅には、ベース体30と固定する固定ボルト11を取り付ける固定部201を設けている。
カバー体20の上方向Zuに構成される受信カバー部20Aは、幅方向Wに沿う断面、つまり水平面上の断面において、前側Hfに突出するアーチ状であり、幅方向Wの両側に上下方向Zに延びる側部スリット25を設けている。
側部スリット25は、受信カバー部20Aの表面(カバー体20における前側Hfの面)において、所定の厚みt1(図6a部拡大図参照)を残して奥側Hbに凹む凹状の溝形状である。
受信カバー部20Aにおける側部スリット25より幅方向Wの外側において、周縁部21との角部を凹状に凹ませた凹状角部26を設けている。
カバー体20の下方向Zdに構成される送信カバー部20Bは、幅方向W及び上下方向Zに沿うフラット状であり、幅方向Wの両側に側方傾斜面27を設けている。
側方傾斜面27は、図9のb部拡大図に示すように、フラット状の主面20Baに対して奥側Hbに所定幅で傾斜させて構成している。なお、本実施形態においては、側方傾斜面27は主面20Baに対して奥側Hbに約11°の角度で傾斜させている。また、側方傾斜面27と周縁部21との角部にはテーパー面28を設けている。
また、送信カバー部20Bの内面には、図4に示すように、前側Hfに凹状となる所定幅の内面凹部29を、所定間隔を隔てて幅方向Wに2本配置している。なお、2本の内面凹部29の幅方向Wの間隔は、後述するように、アンテナバッチ43aを列状に配置した二列構成した送信アンテナ部432の列同士の間隔に対応する間隔で構成している。
なお、このように構成した受信カバー部20A及び送信カバー部20Bは、後述するアンテナ部43を構成する送信アンテナ部432で送信する電波(送信波)及び検知対象物で反射し、受信アンテナ部431で受信する電波(反射波)が透過しやすい厚みTで構成している。
また、受信カバー部20Aの幅方向Wの中央部分は、前側Hfにおいて、送信カバー部20Bの主面20Baと同程度の高さとなるように構成されている。
コネクタ部22は、正面視横長略長方形の筒状であり、上面に他のコネクタと嵌合して固定する嵌合固定部221を設けている。なお、正面視横長略長方形の筒状で構成されたコネクタ部22は、下半部分が周縁部21より下方に突出する態様で設けられている。なお、コネクタ部22は、上述の構成に限定されず、接続する他のコネクタに応じた適宜の形状で構成してもよい。
カバー体20の底面側には、図4に示すように、周縁部21に対して平面視内側には、下方に突出する周状嵌合凸部23を設けている。周状嵌合凸部23は、図6に示すように略V字状断面で構成している。
また、図6に示すように、周縁部21の底面において、受信カバー部20Aに対応するように底面視略枠状に下方に突出する挟み込み部24を設けている。挟み込み部24は、図4に示すように、上方向Zuが開放された底面視コ字状であり、周状嵌合凸部23から所定間隔を隔てて内側において、周壁状に構成している。
カバー体20と組み付けて筐体10aの下半部分を構成するベース体30は、カバー体20に対応する平面視長方形状で構成され、平面視長方形状に沿って、所定の高さ及び幅を有する周縁部31を設けている。
また、平面視長方形状の周縁部31における上方向Zuの短辺の中央に、コネクタ部22が嵌る嵌合凹部32を設けている。また、周縁部31は、平面視長方形状の角部が内側に面取りされており、面取り部分の外側となる平面視四隅には、固定部201と対応し、カバー体20と固定する固定ボルト11を螺合する固定部301を設けている。
図3に示すように、所定の高さ及び幅を有する周縁部31の幅方向中央付近には、カバー体20の周縁部付近から下方に突出する周状嵌合凸部23が嵌合する略U字状断面の嵌合溝部34を設けている。なお、嵌合溝部34は、嵌合した際に、周状嵌合凸部23の下端が溝底部に当接しない深さ及び断面形状で形成している。
なお、図4,6に示すように、嵌合溝部34を幅方向中央付近に形成した周縁部31における嵌合溝部34より平面視内側部分で、周縁部21の底面から底面視略枠状に下方に突出する挟み込み部24と上下方向に対向し、アンテナ基板40を上下方向から挟み込む挟み込み部35を構成している。
なお、ベース体30は、後述するアンテナ基板40と通電可能に当接してシールド部材として機能するように、導電性を有する導電性部材で構成されており、挟み込み部35より平面視内側において、後述するアンテナ基板40のアンテナ部43の平面視外側を囲むGND部(図示省略)と通電可能に接触する所望の枠状に形成されたGND枠部36を設けている。
また、平面視長方形状の短辺のうち上方向Zuの短辺の嵌合凹部32の両側と、平面視長方形状の長辺の中央付近と、底面とには、外側に突出し、取付ブラケット60と固定する固定凸部37(37a,37b,37c)を設けている。なお、平面視長方形状の長辺の中央付近に設けた固定凸部37bの上面には、スライド切欠き部641のスライド凹部643に係止する係止凸部371を設けている。
このように構成したカバー体20の周状嵌合凸部23をベース体30の嵌合溝部34に挿入して嵌合し、カバー体20とベース体30とを組み付けることで、カバー体20とベース体30とで囲まれた内部空間を有する筐体10aを構成することができる。
カバー体20とベース体30とを組み付けて構成した筐体10aの内部空間に配置されるアンテナ基板40は、電波を送受信するアンテナ部43が表面上(表面)に設けられた所定の厚みを有する基板41と、基板41の裏面側(奥側Hbの面)から外側に突出する端子部42とで構成している。なお、基板41の周縁部を基板周縁部41aとしている。
詳述すると、電波を送受信するアンテナ部43を表面上に設けた基板41は、図示省略するプリントパターンによってアンテナ部43を構成するプリント基板であり、角部が面取りされた平面視長方形状で形成している。
角部が面取りされた平面視長方形状の形成した基板41の短辺部分の中央(つまり、カバー体20におけるコネクタ部22に対応する箇所)に外側に突出する端子支持部411を設けている。
端子部42は、図4に示すように、基板41の裏面に沿って、端子支持部411より外側(上方向Zu)に突出する複数本のタブ421を、幅方向Wに所定間隔を隔てて配置しており、内側(下方向Zd)を基板41の厚み方向(奥行方向H)に貫通させて、上述のプリントパターンと導通可能に接続している。
このように構成された端子部42は、上述のカバー体20のコネクタ部22の内部に挿通され、コネクタ部22に接続される他のコネクタの端子と導通可能に接続される。なお、本実施形態においては、6本のタブ421で端子部42を構成しているが、また、端子部42やタブ421は、上述の構成に限定されず、接続する他のコネクタに応じた適宜の形状や本数で構成してもよい。
アンテナ部43は、複数のアンテナバッチ43a(アレイともいう)を行列配置して構成しており、行列配置した複数のアンテナバッチ43aのうち基板41における上方向Zuで受信アンテナ部431を構成し、下方向Zdで送信アンテナ部432を構成している。
詳述すると、基板41の上方向Zuにおいて、上下方向Zに所定間隔を隔ててアンテナバッチ43aを列状に配置するとともに、幅方向Wに所定間隔を隔てて4列配置して受信アンテナ部431を構成している。
これに対し、送信アンテナ部432は、基板41の下方向Zdにおいて、上下方向Zに所定間隔を隔ててアンテナバッチ43aを列状に配置するとともに、受信アンテナ部431における幅方向Wの間隔より広い所定間隔を幅方向Wに隔てて2列配置して構成している。
このように、アンテナ部43は、基板41の上方向Zuにおいて4列構成された受信アンテナ部431と、基板41の下方向Zdにおいて2列構成された送信アンテナ部432とで構成されており、上述の端子部42を構成する6本のタブ421は、アンテナバッチ43aを上下方向Zに並べて構成された各列に接続されている。
続いて、上述のように構成したカバー体20、ベース体30及びアンテナ基板40を組み付けてアンテナ装置10を構成する組み付け方法について説明する。
まず、アンテナ基板40をカバー体20に組み付ける。
上述のように、アンテナ基板40を組み付けたカバー体20に対して、下方からベース体30を組み付けるとともに、固定部201,301を固定ボルト11で締結してアンテナ装置10の組付けを完成させる。
このとき、カバー体20の周縁部21より下方に突出する周状嵌合凸部23が、ベース体30の周縁部31に形成した嵌合溝部34に挿入されるとともに、嵌合凹部32にコネクタ部22が嵌まり込む態様で組み付けられる。
また、上面が挟み込み部24の底面に当接した状態でアンテナ基板40が組み付けられたカバー体20とベース体30とを組み付けることで、図6のa部拡大図に示すように、カバー体20の挟み込み部24と、ベース体30の挟み込み部35とで奥行方向Hの両側から挟み込むようにしてカバー体20とベース体30とで構成する筐体10aにアンテナ基板40を装着することができる。
このように組み付けたアンテナ装置10では、アンテナ部43の受信アンテナ部431の前側Hfに断面アーチ状の受信カバー部20Aが配置され、アンテナ部43の送信アンテナ部432の前側Hfにフラット状の送信カバー部20Bが配置される。つまり、受信アンテナ部431と断面アーチ状の受信カバー部20Aとが奥行方向Hで対向し、送信アンテナ部432とフラット状の送信カバー部20Bとが奥行方向Hで対向する。
このとき、厚みTで構成された受信カバー部20A及び送信カバー部20Bとアンテナ部43とは、送信波及び受信波の透過性が高い間隔で配置されることとなる。換言すると、アンテナ部43は、厚みTで構成された受信カバー部20A及び送信カバー部20Bに対して、透過する送信波及び受信波の透過性が高い間隔で配置されることとなる。
なお、図7(a)に示すように、所望の角度範囲(本実施形態では±60°の範囲)において、二列配置されたアンテナ上部のみがアーチ状(ふた山アーチ状)に比べ、受信アンテナ部431と奥行方向Hで対向する断面アーチ状の受信カバー部20Aは前側Hfの利得が高く、送信アンテナ部432と奥行方向Hで対向するフラット状の送信カバー部20Bは広角方向、つまり幅方向Wへの利得が高いことがわかる。
また、受信カバー部20Aにおいて側部スリット25は、図6のa部拡大図に示すように、基板41のアンテナ部43を構成する4列構成の受信アンテナ部431の幅方向Wの外側よりさらに外側かつ挟み込み部24より幅方向Wの内側に配置されるとともに、所定の厚みt1を奥側Hbに残し、表面から奥側Hbに凹む凹状に形成しているため、上述の所望の角度範囲外(本実施形態では-180°乃至-60°及び+60°乃至+180°の範囲)での安定した利得を得ることができる。
詳述すると、図7(b)に示すように、所定の厚みt1(本実施形態では厚みTの半分程度の厚み)を奥側Hbに残し、表面から奥側Hbに凹む凹状に形成している側部スリット25(No.2)に対し、例えば、受信カバー部20Aの内面から前側Hfに向けて厚みt1を残して凹む形状の側部スリット(No.1)や受信カバー部20Aの内面や表面から厚みt1を残してそれぞれ凹ませた形状の側部スリット(No.3)に比べて、受信アンテナ部431で受信する受信波の上述の所望の角度範囲外(本実施形態では-180°乃至-60°及び+60°乃至+180°の範囲)での安定した利得を得ることができる。
また、図8に示すように、基板41のアンテナ部43を構成する4列構成の受信アンテナ部431の幅方向Wの外側よりさらに外側かつ挟み込み部24より幅方向Wの内側に配置している側部スリット25(No.2C)に対し、受信カバー部20Aにおける幅方向Wの最外側、つまり凹状角部26の代わりに配置された側部スリット(No.2A)や受信カバー部20Aにおける凹状角部26の幅方向Wの内側に続けて配置された側部スリット(No.2B)に比べて、上述の所望の角度範囲外(本実施形態では-180°乃至-60°及び+60°乃至+180°の範囲)での安定した利得を得ることができる。
このように、側部スリット25を基板41のアンテナ部43を構成する4列構成の受信アンテナ部431の幅方向Wの外側かつ挟み込み部24より幅方向Wの内側に配置されるとともに、所定の厚みt1を奥側Hbに残し、表面から奥側Hbに凹む凹状に形成しているため、上述の所望の角度範囲外での安定した利得を得ることができ、所望の角度範囲外からのマルチパスによる誤検知を抑制することができる。
また、上述の組み付け状態では、送信カバー部20Bの内面に設けた内面凹部29のそれぞれは、2列構成された送信アンテナ部432の各列の前側Hfに配置され、その幅方向Wの外側に側方傾斜面27が設けられている。したがって、側方傾斜面27は2列構成された送信アンテナ部432より幅方向Wの外側に配置されることとなる。
このように、送信カバー部20Bにおいて幅方向Wの外側に側方傾斜面27を設けているため、送信アンテナ部432から送信された送信波が上述の所望の角度範囲外(本実施形態では-180°乃至-60°及び+60°乃至+180°の範囲)への送信を抑制することができる。
詳述すると、図10(a)に示すように、送信カバー部20Bにおいて側方傾斜面27を設けない、つまり主面20Baのみで構成した場合(傾斜面なし)が上述の所望の角度範囲外にも送信波が送信されるのに対し、送信カバー部20Bにおいて幅方向Wの外側に側方傾斜面27を設けることで(傾斜面あり)、送信アンテナ部432から送信された送信波が上述の所望の角度範囲外への送信を抑制できることが確認できる。
また、二列構成した送信アンテナ部432の各列の前側Hfに内面凹部29を設けているため、送信アンテナ部432から送信波の前側Hfへの送信を抑制し、前側Hfに対して幅方向Wに向う斜め方向に送信波を送信することができる。
詳述すると、樹脂製の送信カバー部20Bを透過する電波の透過性は、図10(b)に示すように厚みによって変化し、送信アンテナ部432に対して所定間隔を隔てて配置した送信カバー部20Bは透過性の高い厚みTで構成し、内面凹部29を厚みTより薄い厚みt2(本実施形態では厚みTの1/3~2/3程度の厚み)で構成し、送信アンテナ部432の各列の前側Hfに内面凹部29を配置しているため、送信アンテナ部432から送信される送信波は内面凹部29を透過しにくくなり、前側Hfに対して幅方向Wに向く斜め方向に送信することができる。
また、4列構成した受信アンテナ部431と2列構成した受信アンテナ部431とで構成したアンテナ部43は、上述したように、2列構成された送信アンテナ部432のそれぞれから前側Hf及び幅方向Wの斜め方向に送信波を送信し、各列から送信された送信波が検知対象物で反射して反射波として4列構成した受信アンテナ部431で受信するため、受信アンテナ部431は仮想的に8受信アンテナを構成することができ、分解能を向上させることができる。
このように構成したアンテナ装置10は、上述したように取付ブラケット60に組み付けてレーダ装置1を構成し、レーダ装置1として、図11に示すように、車両100の後方Jbの角部において、車幅方向Jsの外側向き(本実施形態では45°の向き)に傾斜させて取り付ける。このとき、レーダ装置1におけるアンテナ装置10の受信カバー部20Aが上方向Zuとなり、送信カバー部20Bが下方向Zdとなる向きで取り付ける。
このように、電波を送信する送信アンテナ部432と、電波を受信する受信アンテナ部431とを並設して表面(前側Hfの面)に設けたアンテナ基板40と、アンテナ基板40の表面から所定間隔を隔てて覆う、電波を透過する樹脂製のカバー体20、及びアンテナ基板40の奥側Hbに配置されたベース体30で構成する筐体10aとで構成され、カバー体20において、受信アンテナ部431に対向する部分を受信カバー部20Aとするとともに、送信アンテナ部432に対向する部分を送信カバー部20Bとし、受信カバー部20Aを送信アンテナ部432から電波が送信される前側Hfに突出するとともに、送信波の幅方向Wに沿う断面アーチ状に形成し、送信カバー部20Bをアンテナ基板40の表面に対向するフラット状で形成したアンテナ装置10は、それぞれに求められる電波特性に合わせて送信アンテナ部432と受信アンテナ部431の性能を向上させることができる。
詳述すると、アンテナ基板40の表面から所定間隔を隔てて覆うカバー体20において、電波を受信する受信アンテナ部431に対向する部分である受信カバー部20Aが送信波の前側Hfに突出するとともに、送信波の幅方向Wに沿う断面アーチ状に形成され、電波を送信する送信アンテナ部432に対向する部分である送信カバー部20Bがアンテナ基板40の表面に対向するフラット状で形成されているため、カバー体20の対向部を透過する電波の電波特性が、送信アンテナ部432から送信する送信波と、検知対象物で反射し、受信アンテナ部431で受信する受信波とで異なることとなる。
具体的には、送信波が透過する送信カバー部20Bがアンテナ基板40の表面に対向するフラット状で形成されているため、送信波の検知距離を長距離化することができる。
これに対し、受信波が透過する受信カバー部20Aが前側Hfに突出するとともに、送信波の幅方向Wに沿う断面アーチ状に形成されているため、受信アンテナ部431における角度特性を向上することができる。
そのため、遠くの検知対象物まで送信波が届くとともに、広い角度範囲からの反射波を受信波として受信アンテナ部431で受信することができ、アンテナ装置10の検出精度を向上することができる。
また、受信カバー部20Aは、断面アーチ状における両側に、厚みTで形成された他の部分より厚みが薄くなる側部スリット25が設けられているため、所望の角度範囲を超える範囲からの受信波の影響を抑制し、つまり受信アンテナ部431における角度特性を向上し、所望の角度範囲からの受信波を高精度で受信して、検知対象物を検知することができる。
また、側部スリット25は、受信カバー部20Aの表面に設けられた凹部によって構成されているため、厚みTで構成した側部スリット25を、受信カバー部20Aの内面に設けた凹部によって構成する場合(No.1)に比べ、表面に設けた凹部によって構成された側部スリット25は、所望の角度範囲を超える範囲からの受信波の影響をさらに抑制し、つまり受信アンテナ部431における角度特性をより向上し、所望の角度範囲からの受信波をより高精度で受信して、検知対象物を検知することができる。
また、側部スリット25は、幅方向Wにおいて受信アンテナ部431に対向する箇所よりも幅方向Wの外側に設けられているため、受信波の影響を抑制したい受信アンテナ部431に対する所望の角度範囲を正確に設定することができる。
また、送信カバー部20Bは、幅方向Wにおける両側に、フラット状を構成する主面20Baの方向及び前側Hfに交差する向きの側方傾斜面27が設けられているため、アンテナ装置10の後方(奥側Hb)への送信波の送信を抑制することができる。
詳述すると、図11に示すように、車両100に対して検知対象物を検知したい方向に向けてレーダ装置1を取り付けるため、アンテナ装置10の後方(奥側Hb)は車両100となり、アンテナ装置10の後方(奥側Hb)に送信波が送信されると、アンテナ装置10を取り付ける車両100で反射し、いわゆるマルチパスによって誤検知が生じるおそれがある。
そこで、送信カバー部20Bにおける幅方向Wにおける両側に、フラット状を構成する主面20Baの方向及び前側Hfに交差する向きの側方傾斜面27を設けることで、後方(奥側Hb)への送信を抑制することができる。そのため、アンテナ装置10を取り付ける車両100で反射することによる誤検知を抑制し、検出精度を向上することができる。
また、送信カバー部20Bのアンテナ基板40に対面する側における送信アンテナ部432の対向部分に、送信波の透過性を低下させる内面凹部29が設けられているため、送信アンテナ部432から送信波の前側Hfをアンテナ装置10の正面から斜め側方に誘導することができる。
詳述すると、図11に示すように、車両100の後方Jbの角部において、車幅方向Jsの外側向き(本実施形態では45°の向き)に傾斜させて取り付ける。このとき、レーダ装置1におけるアンテナ装置10の受信カバー部20Aが上方向Zuとなり、送信カバー部20Bが下方向Zdとなる向きで取り付けるため、車両100の後方Jbに加え、車両100の車幅方向Jsの外側の検知対象物も検知するが、その場合、車両100の後方Jbと、車両100の車幅方向Jsの外側とのいずれか一方の検知対象物しか検知することができない。
これに対し、送信カバー部20Bのアンテナ基板40に対面する側における送信アンテナ部432の対向部分に、送信波の透過性を低下させる内面凹部29を設けることで、送信アンテナ部432から送信波の前側Hfをアンテナ装置10の正面から斜め側方に向けることができ、車両100の後方Jbの隅部において斜め向きでアンテナ装置10を取り付けることで、車両100の後方Jbに加え、車両100の車幅方向Jsの外側の検知対象物を検知することができる。
また、内面凹部29は、送信カバー部20Bにおける主面20Baなどの他の部分の厚みと異なる厚みt2となる内面凹部29で構成されているため、他の部材を設けることなく、送信カバー部20Bを透過する送信波の送信方向を誘導することができる。
詳述すると、樹脂製のカバー体20を透過する電波の透過性は、厚みによって変化するが、電波の周波数や樹脂材料に応じて厚みが薄いほど透過性の高いというものではなく、つまり厚みと透過性は比例関係にないため、透過性の高い厚み(T)で構成された他の部分に比べて、内面凹部29を透過性の低い厚み(t2)で構成することで他の部材を設けることなく、送信カバー部20Bを透過する送信波の送信方向を誘導することができる。
また、ベース体30を、導電性を有する導電性部材で構成し、カバー体20及びベース体30において奥行方向Hに対向する箇所に、アンテナ基板40の基板縁部を奥行方向Hに挟み込んで固定する基板周縁部41aを設けているため、レドームを構成するカバー体20に対してアンテナ基板40を精度よく配置することができる。
詳述すると、電波を送受信するアンテナ部が表面上に設けられたアンテナ基板40の表面から所定間隔を隔てて覆う、電波を透過する樹脂製のカバー体20と、アンテナ基板40の奥側Hbを、所定間隔を隔てて覆うベース体30とにおける奥行方向Hに対向する箇所に、アンテナ基板40の基板縁部を奥行方向Hに挟み込んで固定する基板周縁部41aが設けられているため、カバー体20及びベース体30を組み付けて筐体10aを構成することで、基板周縁部41aでアンテナ基板40の基板縁部を奥行方向Hに挟み込んで、筐体10aにアンテナ基板40を組み付けることができる。
なお、このカバー体20とベース体30との組み付け状態において、カバー体20とベース体30とにおいて奥行方向Hに対向する箇所に設けた基板周縁部41aでアンテナ基板40の基板縁部を奥行方向Hに挟み込んで固定するため、レドームを構成するカバー体20に対してアンテナ基板40を精度よく配置することができる。
また、ベース体30を、導電性を有する導電性部材で構成するため、ベース体30を、ノイズを防止するシールド部材として機能させ、レドームを構成するカバー体20とシールド部材を構成するベース体30とで、ノイズを防止できる筐体10aを構成することができる。したがって、カバー体20とベース体30とで構成する筐体10a内部においてシールド部材でアンテナ基板40を保持する従来のアンテナ装置10に比べて少ない部品点数でアンテナ装置10を構成することができる。
また、導電性部材で構成し、シールド部材として機能するベース体30における基板周縁部41aとカバー体20の基板周縁部41aとでアンテナ基板40の基板縁部を挟み込んでいるため、シールド部材として機能するベース体30とアンテナ基板40とが通電可能に確実に接触するため、シールド部材としてのノイズ防止効果を確実に発揮させることができる。
また、送信アンテナ部432と受信アンテナ部431との並設方向が上下方向Zとなるとともに、下方向Zに直交する幅方向Wとなるようにレーダ装置1を車両100に搭載しているため、所望の角度特性と検知距離の長距離化を効率的に発揮させて、検出精度を向上することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の送信アンテナ部は送信アンテナ部432に対応し、
以下同様に、
受信アンテナ部は受信アンテナ部431に対応し、
アンテナ基板はアンテナ基板40に対応し、
表面は表面に対応し、
カバー体はカバー体20に対応し、
裏面側は奥側Hbに対応し、
ベース体はベース体30に対応し、
筐体は筐体10aに対応し、
受信カバー部は受信カバー部20Aに対応し、
送信カバー部は送信カバー部20Bに対応し、
アンテナ装置はアンテナ装置10に対応し、
送信方向は前側Hfに対応し、
広角方向は幅方向Wに対応し、
薄肉部は側部スリット25に対応し、
外側は幅方向Wの外側に対応し、
主面は主面20Baに対応し、
交差方向面は側方傾斜面27に対応し、
方向誘導手段は内面凹部29に対応し、
厚み変化部は内面凹部29に対応し、
上下方向は上下方向Zに対応し、
幅方向は幅方向Wに対応し、
表裏方向は奥行方向Hに対応し、
挟み込み部は基板周縁部41aに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述のアンテナ部43は2列構成された送信アンテナ部432と4列構成された受信アンテナ部431とで構成したが、受信アンテナ部431及び送信アンテナ部432を構成する列数はこれに限定されず、適宜の列数で構成すればよい。
また、上述の説明では、2列構成された送信アンテナ部432の各列の間隔(幅方向Wの中心間距離)に応じ幅方向Wの間隔(中心間距離)で、各列の前側Hfに配置したが、例えば、内面凹部29自体の幅や内面凹部29同士の間隔(中心間距離)、あるいは、送信アンテナ部432を構成する各列に対する幅方向Wを位置は、車両100に取り付ける位置や向き、あるいは利得の得たい範囲に応じて調整してもよい。
なお、側部スリット25は、基板41のアンテナ部43を構成する4列構成の受信アンテナ部431の幅方向Wの外側よりさらに外側かつ挟み込み部24より幅方向Wの内側に配置したが、所望の角度範囲等に応じて適宜の位置に配置してもよいし、所定の厚みt1が確保できれば、側部スリット25に限らず、受信カバー部20Aの内面や表面から厚みt1を残してそれぞれ凹ませた形状の側部スリットであってもよい。
また、側方傾斜面27は、所望の角度範囲等に応じて幅方向Wの長さを調整してもよいし、湾曲面で構成してもよいし、前側Hfに突出するように構成してもよい。
さらに、内面凹部29は、送信カバー部20Bの表面を凹ませて構成してもよいし、電波の透過性が低い厚みであれば他の部分より厚く構成してもよい。
また、受信カバー部20Aは幅方向Wに沿う断面、つまり水平面上の断面において、前側Hfに突出する一定の曲率の曲線で構成したアーチ状であったが、曲率が変化する曲線で構成されたアーチ状のみならず、断面方向に沿って直線の方向が変化して略アーチ状を構成してもよい。さらに、表面側のアーチ状と内面側のアーチ状とが同じでなく、厚みは変化するように異なっていてもよい。また、広角方向に沿う断面アーチ状であれば、受信カバー部20Aは幅方向Wに交差する上下方向Zの断面がフラット状であっても曲線状など適宜の断面形状であってもよい。
送信カバー部20Bは、幅方向W及び上下方向Zに沿うフラット状の平面で構成したが、わずかに湾曲した面で構成してもよいし、アンテナ基板40に対してわずかに傾斜する向きで配置されてもよい。
また、カバー体20に設けた固定部201と、ベース体30に設けた固定部301とを固定ボルト11で固定して筐体10aを構成したが、スナップフィットなど適宜の方法でカバー体20とベース体30とを固定して筐体10aを構成してもよい。
また、カバー体20において受信アンテナ部431に対向する受信カバー部20Aを前側Hfに突出するアーチ状に構成し、送信アンテナ部432に対向する送信カバー部20Bをフラット状に構成したが、例えば、受信アンテナ部431に対向する受信カバー部20Aにおいて前側Hfに突出するアーチ状に構成する部分とフラット状に構成する部分を設けたり、送信アンテナ部432に対向する送信カバー部20Bにおいて前側Hfに突出するアーチ状に構成する部分とフラット状に構成する部分を設けてもよい。これにより、受信波を受信する受信アンテナ部431において複数の電波特性を備えたり、送信アンテナ部432から電波特性の異なる送信波を送信したりすることができる。
なお、本実施形態におけるレーダ装置1は、高周波電波を送受信するアンテナ装置10で構成しているが、例えば赤外線電波などの他の電波を送受信するアンテナ装置10を用いてもよいし、車体のリヤバンパーのみならず、例えばフロントバンパーなどの所望の箇所に取付けてもよく、また、自動二輪車、自転車、列車、航空機、または船舶など、移動可能な乗り物に取付けてもよい。