以下、種々の例示的実施形態について説明する。
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、基板を処理する基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板保持部に保持された前記基板の裏面に対向する位置に環状に設けられ、前記基板より小さい径を有するリング部材と、前記処理液供給部による処理液の供給の前に、前記基板の裏面のうち、前記基板保持部に保持された状態で前記リング部材に対向する位置よりも外周側の少なくとも一部に、接触角を大きくした改質領域を形成する改質処理部と、を有する。
上記の基板処理装置では、改質処理部により基板の裏面のうち基板保持部に保持された状態で前記リング部材に対向する位置よりも外周側の少なくとも一部に改質処理が行われる。この結果、基板法面に接触角が大きくなるように改質された改質領域が設けられる。この改質領域が設けられることで、基板の裏面に回り込んだ処理液は、改質領域において基板からの落下が促進される。そのため、改質領域よりも内側に処理液が回り込むことを防ぐことができることから、基板の裏面へ処理液が回り込むことを抑制することが可能となる。
別の例示的実施形態において、前記改質領域は、前記基板の外周端に沿った環状に形成される。
改質領域が基板の外周端に沿った環状に形成されることで、基板の裏面への処理液の回り込みがさらに効果的に抑制される。
別の例示的実施形態において、前記基板の反りに係る情報を取得する反り情報取得部をさらに有し、前記改質処理部は、前記反り情報取得部により取得された情報に基づいて、前記改質領域の大きさを決定する。
反り情報取得部において基板の反りに係る情報を取得し、当該情報に基づいて改質処理部において改質領域の大きさを決定する構成とすることで、基板の形状に応じて改質領域の大きさを決定することができるため、基板の形状に応じて裏面への処理液の回り込みを効果的に抑制することができる。
別の例示的実施形態において、前記リング部材は、前記反り情報取得部により取得された情報に基づいて、昇降可能である。
反り情報取得部により取得された情報に基づいて、リング部材が昇降可能であることにより、例えば、基板に反りが発生している場合には基板の反りに対応させてリング部材を昇降させることができるため、基板の形状によらず裏面への処理液の回り込みを効果的に抑制することができる。
別の例示的実施形態において、前記改質処理部は、改質剤を前記基板に対して付着させることで改質領域を形成する。
改質処理部が改質剤を基板に対して付着させることで改質領域を形成する構成とすることで、改質領域の形成を容易に行うことができる。
別の例示的実施形態において、前記改質剤は、カチオン系界面活性剤である。
改質剤としてカチオン系界面活性剤を用いることで、改質領域の形成時に副生成物が発生することを防ぐことができる。したがって、改質領域の形成時に発生する副生成物の影響等を考慮する必要がなくなり、改質処理を行う場所を柔軟に選択することができる。
一つの例示的実施形態において、基板処理方法は、基板を処理する基板処理方法であって、前記基板の裏面のうち、前記基板を保持する基板保持部に保持された際に前記基板より小さい径を有するリング部材に対向する位置よりも外周側となる領域の少なくとも一部に、接触角を大きくした改質領域を形成する改質処理工程と、前記基板保持部に保持された前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給工程と、を有する。
上記の基板処理方法では、改質処理工程において、基板の裏面のうち基板保持部に保持された状態でリング部材に対向する位置よりも外周側となる領域の少なくとも一部に改質処理が行われる。この結果、基板法面に接触角が大きくなるように改質された改質領域が設けられる。この改質領域が設けられることで、基板の裏面に回り込んだ処理液は、改質領域において基板からの落下が促進される。そのため、改質領域よりも内側に処理液が回り込むことを防ぐことができることから、基板の裏面へ処理液が回り込むことを抑制することが可能となる。
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[基板処理システム]
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、および当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウエハWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウエハW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。具体的には、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウエハW(基板)の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
[基板処理装置]
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。図1および図2に示すように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御装置100とを備える。
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウエハWの導入および塗布・現像装置2内からのウエハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウエハW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームA1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウエハWを収容する。受け渡しアームA1は、キャリアCからウエハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウエハWを受け取ってキャリアC内に戻す。
処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。処理モジュール11,12,13は、それぞれ、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。
処理モジュール11は、液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2によりウエハWの表面上の下層膜、および、下層膜上の中間膜を形成する。処理モジュール11の液処理ユニットU1は、下層膜および中間膜を形成するための処理液をウエハW上に塗布する。処理モジュール11の熱処理ユニットU2は、下層膜および中間膜の形成に伴う各種熱処理を行う。下層膜としては、例えば、反射防止(SiARC)膜が挙げられる。また、中間膜としては、例えば、SOC(Spin On Carbon)膜、金属を含有するハードマスク(メタルハードマスク)が挙げられる。
処理モジュール12は、液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2により中間膜上にレジスト膜を形成する。処理モジュール12の液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液を中間膜の上に塗布する。処理モジュール12の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、塗布膜を硬化させてレジスト膜Rとするための加熱処理(PAB:Pre Applied Bake)が挙げられる。
処理モジュール13は、液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。処理モジュール13の液処理ユニットU1は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
処理モジュール14は、現像ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU3および熱処理ユニットU4により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。現像ユニットU3は、露光済みのウエハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU4は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウエハWを昇降させる。
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウエハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置されたウエハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウエハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。まず制御装置100は、キャリアC内のウエハWを棚ユニットU10に搬送するように受け渡しアームA1を制御し、このウエハWを処理モジュール11用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール11内の液処理ユニットU1、および、熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWの表面上に下層膜を形成し、さらに、下層膜上に中間膜を形成するように、液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜および中間膜が形成されたウエハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウエハWを処理モジュール12用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール12内の液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWの表面に対してレジスト膜を形成するように液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウエハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウエハWを処理モジュール13用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWのレジスト膜上に上層膜を形成するように液処理ユニットU1および熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウエハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送アームA3を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウエハWを露光装置3に送り出すように受け渡しアームA8を制御する。その後制御装置100は、露光処理が施されたウエハWを露光装置3から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように受け渡しアームA8を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウエハWを処理モジュール14内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、このウエハWのレジスト膜に現像処理を施すように現像ユニットU3および熱処理ユニットU4を制御する。その後制御装置100は、ウエハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウエハWをキャリアC内に戻すように昇降アームA7および受け渡しアームA1を制御する。以上で塗布・現像処理が完了する。
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、熱処理ユニットU2又は熱処理ユニットU4と、これを制御可能な制御装置100とを備えていればどのようなものであってもよい。
[制御装置]
制御装置100は、図3に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、制御装置100の機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、制御装置100を構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取る。記録媒体RMは、基板処理システム1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。
記憶部M2は、種々のデータを記憶する。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、ウエハWを処理する際の各種データ(いわゆる処理レシピ)、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データ等を記憶する。
処理部M3は、各種データを処理する。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、液処理ユニットU1、熱処理ユニットU2、現像ユニットU3、および、熱処理ユニットU4を動作させるための動作信号を生成する。
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を各種装置に送信する。
制御装置100のハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図4に示す回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124と、タイマー125とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理手順を露光・現像装置2に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクおよび光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラムおよびプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート124は、プロセッサ121からの指令に従って、基板処理システム1の各部との間で電気信号の入出力を行う。タイマー125は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
制御装置100は、上記の構成により、基板処理システム1に含まれる液処理ユニットU1、熱処理ユニットU2、現像ユニットU3、および、熱処理ユニットU4等を制御する。また、制御装置100は、図3において図示しない他のユニットの制御も同時に行う。なお、上記の制御装置100の構成は一例であって、上記に限定されるものではない。
[現像ユニットの構成]
次に、上述した現像ユニットU3の構成について説明する。図5は、現像ユニットU3の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
現像ユニットU3には、図5に示すようにウエハWを保持する基板保持部としてのスピンチャック300が設けられている。スピンチャック300は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウエハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウエハWをスピンチャック300上に吸着保持できる。
スピンチャック300は、シャフト301を介して、スピンチャック300の下方に設けられた駆動部302に接続されている。この駆動部302により、スピンチャック300は所定の速度に回転でき、さらにスピンチャック300は昇降自在になっている。
スピンチャック300に保持されたウエハWの裏面側には、ウエハWを下方から支持し昇降させるための昇降ピン310が、例えば3本設けられている。昇降ピン310は、昇降部311によって昇降自在になっている。
スピンチャック300の上方には、ウエハWの表面に処理液としての現像液を供給する処理液供給部としての現像液ノズル320が設けられている。現像液ノズル320には、現像液供給源321に連通する供給管322が接続されている。現像液供給源321内には、現像液が貯留されている。
現像液ノズル320は、水平方向に延伸する長尺状のスリットノズルである。現像液ノズル320の下端面には、例えばウエハWの径よりも長く形成されたスリット状の吐出口320aが形成されている。
現像液ノズル320は、アーム(図示せず)を介して駆動部(図示せず)に接続されている。駆動部の駆動により、アームは水平方向に移動可能であり、現像液ノズル320をウエハWの表面上で移動させることができる。また、駆動部の駆動により、アームは昇降自在であり、現像液ノズル320の高さを調節できる。
スピンチャック300の上方には、図5に示すようにウエハWの表面に現像液のリンス液を供給するリンス液ノズル330が設けられている。リンス液ノズル330には、リンス液供給源331に連通する供給管332が接続されている。リンス液供給源331内には、例えば純水(DIW)などのリンス液が貯留されている。
リンス液ノズル330は、アーム(図示せず)を介して駆動部(図示せず)に接続されている。駆動部の駆動により、アームは水平方向に移動可能であり、リンス液ノズル330をウエハWの表面上で移動させることができる。また、駆動部の駆動により、アームは昇降自在であり、リンス液ノズル330の高さを調節できる。
スピンチャック300に保持されたウエハWの外縁部上方には、図4に示すようにウエハWの反りを計測する反り計測部340(反り情報取得部)が設けられている。反り計測部340では、ウエハWの反りに係る情報として、反りの大きさを計測し、その計測結果を取得している。反り計測部340には、例えばレーザ変位計が用いられる。反り計測部340は、スピンチャック300に保持されたウエハWを360度回転させ、ウエハWの外縁部全周の高さ方向の変位を測定する。また、反りのない平坦なウエハWをスピンチャック300で保持した状態の、当該ウエハの高さ方向の基準値を予め把握しておく。そして、反り計測部340で測定されたウエハWの外縁部の変位と、基準値との差から、ウエハWの反り量を計測する。反り計測部340で計測されたウエハWの反りに係る情報(反り情報)は、上述した制御装置100に出力される。
スピンチャック300の下方には、ウエハWの裏面の外周部にリンス液を噴射するリンス液供給部としてのバックリンスノズル350が複数設けられている。バックリンスノズル350は、リンス液供給源351に連通する供給管352が接続されている。リンス液供給源351内には、例えば純水(DIW)などのリンス液が貯留されている。なお、リンス液供給源351は上述したリンス液供給源331と共通に設けられていてもよい。
また、スピンチャック300の下方には、ウエハWの裏面の外周部に表面改質用の改質液を噴射する改質処理部としての改質液ノズル360が複数設けられている。本実施形態では、表面改質を行うための改質剤として改質液が用いられる場合について説明する。改質液ノズル360は、改質液供給源361に連通する供給管362が接続されている。改質液供給源361内には、ウエハWの裏面の接触角が大きくなるように変化させるための改質液が貯留されている。
改質液は、ウエハWの裏面のうち外周の特定領域の接触角を大きくするための液体である。改質液としては、カチオン系界面活性剤を用いることができる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、ステアルトリモニウムクロリドを用いることができるが、これに限定されるものではない。ウエハWの裏面は、シリコン酸化膜(シリコン熱酸化膜:SiO2)により覆われている。したがって、シリコン酸化膜に対して付着可能であって、且つ、その表面の接触角をシリコン酸化膜よりも大きくすることができ、且つ、改質時に副生成物が発生しない材料であれば、改質液に使用することができる。また、改質液による改質(接触角の変化)は、現像処理が行われている間に限った一時的なものであってもよく、改質液がウエハWの裏面に付着している状態において、接触角が大きくできればよい。改質液の噴霧により改質領域が形成される。改質領域の大きさの決定、および、改質液の噴霧は、制御装置100により制御される。すなわち、制御装置100は、改質処理部の一部として機能する。改質液によるウエハWの裏面の改質については後述する。
図5に戻り、スピンチャック300の側方には、スピンチャック300に保持されたウエハWを取り囲むようにカップ体370が設けられている。カップ体370は、外カップ371および内カップ372を備えている。外カップ371は上部側が四角形状であり、下部側が円筒状を有している。外カップ371の下部側には段部371aが設けられており、この段部371aには、外カップ371を昇降させるための昇降部373が接続されている。内カップ372は円筒状を有し、その上部側が内側に傾斜している。内カップ372は、外カップ371の上昇時に、その下端面が段部371aと当接することによって上方へ押し上げられる。この結果、ウエハWから現像液を除去する際には、カップ体370(外カップ371及び内カップ372)を上昇させて、ウエハWから飛散する液を受け止めることができる。
カップ体370の下方には、カップ体370で回収された液体を回収し、排出するための液受け部376が設けられている。液受け部376の底面には液受け部376内の気体及び液体を排出する排出管377が接続され、排出管377の下流側に設けられた気液分離器(図示せず)を介して気液分離が行われる。気液分離後の排液は(図示せず)の排液タンクに回収される。
スピンチャック300の下方には、円形板380が設けられており、円形板380の外側には断面形状が山型の環状のガイド部材381が設けられている。ガイド部材381は、ウエハWよりこぼれ落ちた現像液やリンス液を、円形板380の外側に設けられた液受け部376へとガイドする。
ガイド部材381の頂部には、環状のリング部材382が設けられている。リング部材382は、ウエハWより小さい径を有しており、ウエハWの裏面外縁部側に設けられている。具体的には、リング部材382は、ウエハWの外側面から例えば65mmの位置に配置されている。リング部材382は、ウエハWの裏面に対向する上端部がナイフエッジ形状を有しており、いわゆるナイフエッジリングを構成している。また、リング部材382の上面382aは平坦面となっている。
ガイド部材381とリング部材382には、昇降部383が接続されている。この昇降部383により、リング部材382は昇降自在であり、ウエハWの裏面に対して近接、離間自在に構成されている。昇降部383は、ガイド部材381とリング部材382を昇降できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば圧電素子やモータなどのアクチュエータが用いられる。
なお、例えばリング部材382がガイド部材381とは別に設けられている場合には、昇降部383はリング部材382のみを昇降させるようにしてもよい。
リング部材382は、現像液ノズル320からウエハWの表面に供給された現像液が、当該表面から裏面に回り込むのを抑制するために用いられる。具体的には、現像時において、昇降部383によりリング部材382をウエハWの裏面に近接して配置し、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aを所定距離にする。そうすると、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aの間で現像液による液シールが形成され、これによりウエハWの裏面に対してさらに回り込もうとする現像液を受け止め、吸収することができる。なお、この液シールを適切に形成するため、上述したように上面382aは平坦面とすることができる。
現像時におけるリング部材382の位置(上下方向の位置:すなわち、リング部材382とウエハWとの距離)は、制御装置100で制御される。制御装置100では、反り計測部340で計測されたウエハWの反り情報に基づいて、ウエハWの反り状態にかかわらず、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が常に所定距離になるように、リング部材382の位置を制御する。例えば制御装置100では、反りのない平坦なウエハWに対するリング部材382の基準位置を予め把握しておく。そして、ウエハWの反り情報、すなわち反り量を、リング部材382の基準位置からの差分として用いて、リング部材382の位置を算出する。
なお、ウエハWの裏面に対する現像液の回り込みやすさは、現像液の種類、ウエハWの裏面の表面状態などにより変化する。したがって、現像液の種類やウエハWの裏面の表面状態などにかかる固定条件について、予め制御装置100に設定登録をすることにより考慮されるようにする構成としてもよい。
なお、リング部材382の昇降は行わない構成としてもよい。すなわち、昇降部383を備えておらず、リング部材382(およびガイド部材381)の位置は固定されていてもよい。
[現像ユニットによる基板処理方法]
次に、以上のように構成された現像ユニットU3を用いて行われる基板処理方法について説明する。図6は、現像ユニットU3による基板処理の手順を説明するフロー図である。また、図7は、現像ユニットU3による基板処理の手順を模式的に説明する図である。
図6に示すように、基板処理方法には、ウエハWの反りの計測(S01)、改質処理領域の設定(S02)、改質処理(S03:改質処理工程)、および、現像処理(S04:処理液供給工程)、が含まれる。
まず、露光・現像装置2の搬送アームA3によってウエハWが処理モジュール14の現像ユニットU3に搬入される。搬入されたウエハWは、搬送アームA3から予め昇降して待機していた昇降ピン310に受け渡される。続いて、昇降ピン310が下降し、ウエハWはスピンチャック300に保持される。
この状態で、図7(a)に示すようにスピンチャック300に保持されたウエハWを360度回転させ、反り計測部340によってウエハWの外縁部全周の変位を測定して、ウエハWの反りを計測する(S01)。反り計測部340で計測されたウエハWの反り情報は、制御装置100に出力される。
なお、本実施形態では、反り計測部340による反り計測は、ウエハW毎に枚葉に行われる。但し、反り計測のタイミングはこれに限定されず、例えばロット毎にしてもよく、かかる場合ロットの先頭のウエハWに対して反りが計測される。あるいは、ウエハ処理の処理レシピが変わる毎に、ウエハWの反りを計測してもよい。
制御装置100では、ウエハWの反り情報に基づいて、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H1になるリング部材382の位置を算出する。算出されたリング部材382の位置に基づいて、昇降部383が昇降し、リング部材382が当該位置に配置される。すなわち、図8(a)に示すようにウエハWが凹型に反っている場合(ウエハWの外縁部が上方に反っている場合)、昇降部383によってリング部材382を上昇させる。一方、図8(b)に示すようにウエハWが凸型に反っている場合(ウエハWの外縁部が下方に反っている場合)、昇降部383によってリング部材382を下降させる。なお、本実施形態では、距離H1は例えば1.0mm±0.2mmである。また、リング部材382の移動は、後述の改質対象領域(改質領域)の決定(S02)および改質処理(S03)の後に行ってもよい。
なお、例えばウエハWの反りが全周において均一でない場合には、最も反りが小さかった箇所におけるウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H1になるように、リング部材382の位置を制御する構成とすることができる。このような場合としては、ウエハWの外縁部の反り量が周方向に不均一であり、外縁位置によって反り具合が変わる場合が挙げられる。なお、本実施形態では、最小の距離H1は例えば1.0mm±0.2mmである。
次に、制御装置100において、ウエハWの反り情報に基づいて、改質対象領域を決定する(S02)。改質対象領域とは、ウエハWの裏面のうち、改質液の噴霧により接触角を大きく変化させる領域であり、すなわち、改質領域に対応する。改質対象領域の接触角を大きくし、ウエハW裏面の疎水化を促進することで、改質処理後の改質領域での現像液(またはリンス液)の落下を促進する。
改質対象領域について、図9を参照しながら説明する。改質液による改質の対象となる領域は、ウエハWの裏面のうち外周領域である。特に、ウエハWをスピンチャック300に保持した状態においてリング部材382よりも外側に配置される領域が改質対象領域となる。図9は、ウエハWのうち、外周となる領域の一部を拡大しているが、改質対象領域は、領域P1、領域P2、および領域P3のうち、少なくとも領域P1を含む。領域P1~P3はいずれもウエハWの中心を軸とした環状の領域であり、ウエハWの内周側から領域P3、領域P1および領域P1の順に連続している。領域P1~P3のうち、必ず改質対象領域となる領域は領域P1である。また、領域P2,P3は、いずれも、必要に応じて改質対象領域となる領域である。
領域P1と領域P2との境界B1、すなわち、領域P1の外側端部は、ウエハWの外周端B11と、リング部材382の上面382a(の中央)と対向する位置B12との間の中央よりも外周側に設けられる。また、領域P1と領域P2との境界B2、すなわち、領域P1の内側端部は、ウエハWの外周端B11と、リング部材382の上面382a(の中央)と対向する位置B12との間を結ぶ長さに対して、リング部材382の上面382aと対向する位置B12から1%~30%の位置に設けられる。このようにして設定された領域P1の外側端部と内側端部との間が改質対象領域となる。
領域P2,P3に対応する領域、すなわち、領域P1の外周側および内周側は、いずれも、必要に応じて改質対象領域とすることができる領域である。ウエハWの裏面のうちリング部材821の上面832aに対応する位置B12よりも外側には現像液(またはリンス液)が回り込む可能性がある。これに対して、位置B12よりも内側には、リング部材382により現像液(またはリンス液)が回り込む可能性は低いと考えられる。したがって、ウエハWの裏面のうち位置B12よりも内側よりも内側は改質対象領域にしない構成とすることで、改質にかかるコストを抑制しながら改質による効果を十分に得ることができる。領域P2,P3を改質対象領域とするか否かは、例えば、ウエハWの種類または処理液(現像液D等)の種類等に基づいて変更してもよいし、ウエハWの形状に基づいて変更してもよい。
改質対象領域は、ウエハWの形状のうち、その反りに基づいて変更してもよい。例えば、図8(a)に示すように、ウエハWが凹型に反っている場合(ウエハWの外縁部が上方に反っている場合)、現像液(またはリンス液)のウエハW裏面への回り込みが大きく(回り込み量が多く)なると考えられる。したがって、改質対象領域を広く設けて、現像液(またはリンス液)の付着の低減効果を高める構成とすることができる。一方、図8(b)に示すように、ウエハWが凸型に反っている場合(ウエハWの外縁部が下方に反っている場合)、現像液(またはリンス液)のウエハW裏面への回り込みが小さく(回り込み量が少なく)なると考えられる。したがって、改質対象領域を狭く設けた場合でも、現像液(またはリンス液)の付着の低減効果を十分発揮できるため、改質対象領域を狭くする構成とすることが考えられる。
改質対象領域の大きさを設定した後、図7(b)に示すように、スピンチャック300によるウエハWの回転を継続した状態で、改質液ノズル360から改質対象領域として設定された領域に対して改質液R1を噴霧し、改質処理を実施する(S03)。スピンチャック300によるウエハWの回転を継続することで、過剰に噴霧された改質液R1は適切に除去される。また、改質処理の際に加熱・乾燥等の処理が必要な場合には、改質液R1を噴霧後、適切に処理を行う。改質処理を行うことで、改質対象領域であった領域は、接触角が変化した改質領域P10(図10参照)となる。改質領域P10は、ウエハWの裏面の外周側(リング部材382よりも外側)に形成された外周端に沿った環状の領域となる。すなわち、ウエハWをスピンチャック300において保持した際に、ウエハWの外周端とリング部材382に対向する位置B12との間に改質領域P10が設けられる。なお、改質領域P10は円環状となっていてもよい。
なお、改質領域P10におけるウエハW裏面(の表面)の接触角が50°以上であると、現像液(またはリンス液)の付着を防ぐ効果が高められる。したがって、改質領域P10における接触角を上記の範囲とすることが好ましい。なお、少なくとも改質領域P10における接触角が、改質処理を行っていない場合のウエハW表面の接触角よりも大きくすることで、現像液(またはリンス液)の付着を防ぐ効果が得られる。
その後、現像処理(S04)を実施する。具体的な手順は以下の通りである。
まず、現像液ノズル320をウエハWの外縁部(一端部)の上方まで移動させた後、現像液ノズル320の吐出口320aから表面張力によって現像液Dを露出させる。その後、現像液ノズル320を下降させて現像液DをウエハWの表面に接触させた状態で、現像液ノズル320をウエハWの径方向に移動させ、図7(c)に示すように、現像液ノズル320をウエハWの外縁部(他端部)まで移動させる。これにより、現像液ノズル320によって、ウエハWの表面全体に現像液Dが供給され、パドルが形成される。この現像液Dのパドルによって、ウエハW上のレジスト膜が現像される。
このように現像液Dを用いて現像処理を行う際、図10に示すようにウエハWの表面に供給された現像液Dは、ウエハWの外縁部を介して裏面に回り込んでしまう。そして、現像液Dが後述の裏面洗浄における洗浄範囲外、すなわちウエハWの裏面の内側まで回り込んでしまうと、ウエハWの裏面の汚染の原因となってしまう。
この点、本実施形態では、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H1に維持されているため、現像液DはウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間に受けとめられ、液シール(液膜)Dsを形成する。この液シールDsにより、ウエハWの裏面に現像液Dが回り込むことを抑制することができる。
また、リング部材382の上面382aは平坦面を形成しているため、液シールDsの幅が広くなり、液シールDsによる回り込み防止効果を向上させることができる。
また、本実施形態では、反り計測部340で計測されたウエハWの反り情報に基づいてリング部材382の位置が調節されているため、例えウエハWに反りが生じていた場合でも、現像液DのウエハWの裏面側への回り込みを適切に抑制することができる。
また、本実施形態では、ウエハWの裏面のうち、リング部材382の上面382aとの対向位置よりも外側(図9に示す位置B12よりも外側)に改質領域P10(図10参照)が設けられている。改質領域P10では、その他の領域と比較して表面の接触角が大きくされているため、改質領域P10を伝う現像液Dが下方に落下しやすくなる。すなわち、現像液DがウエハWの裏面に付着した状態を防ぐことができる。また、改質領域P10は、リング部材382の上面382aとの対向位置よりも外側に設けられている。そのため、リング部材382にまで到達する現像液Dを減らすことができ、大量の現像液Dがリング部材382へ到達して液シールDsによる回り込み防止効果が低減することを防ぐことができる。
次に、現像液Dによる現像が終了すると、現像液ノズル320を移動させた待機部327に移動させた後、図7(d)に示すようにリンス液ノズル330をウエハWの中心部の上方まで移動させる。その後、スピンチャック300によってウエハWを回転させながら、リンス液ノズル330からウエハWの表面にリンス液R2を供給する。供給されたリンス液R2は遠心力によりウエハWの表面全面に拡散されて、当該表面が洗浄される。
このようにリンス液R2を用いて洗浄処理を行う際にも、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間は距離H1に維持されており、現像液Dの液シールDsが形成されている。この液シールDsにより、これにより、ウエハWの表面に供給されたリンス液R2が裏面に回り込むことを抑制することができる。同様に、改質領域P10においてリンス液R2の落下が促進されるので、リンス液R2の回り込みをさらに抑制することができる。
所定時間経過後、図7(e)に示すようにスピンチャック300によるウエハWの回転を継続し、またリンス液ノズル330からのリンス液R2の供給を継続したままの状態で、リンス液R3によるウエハWの裏面の洗浄を開始する。リンス液R3は、バックリンスノズル350より供給される。
ウエハWの裏面洗浄に際しては、まず、図10に示すようにウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H2になるように、昇降部383によりリング部材382を下降させる。本実施形態では、距離H2は、例えば距離H1における高さ位置から1.0mm程度下降した位置である。続いて、バックリンスノズル350からウエハWの裏面の外周部にリンス液R3を噴射する。
このようにウエハWの裏面にリンス液R3を噴射する前に、リング部材382を所定位置まで下降させているので、リンス液R3がリング部材382に干渉して残存することを抑制することができる。そして、このようにリング部材382にリンス液R3が残存しないので、ウエハWの裏面に液滴が付着するのを抑制することができ、液滴に起因するウエハWの表面欠陥を抑制することができる。
リンス液R2によるウエハWの表面洗浄とリンス液R3によるウエハWの裏面洗浄が十分に行われた後、図7(f)に示すようにリンス液ノズル330からのリンス液R2の供給を停止するとともに、バックリンスノズル350からのリンス液R3の供給を停止する。そして、スピンチャック300によってウエハWの回転を継続し、ウエハWの表面に供給されたリンス液R2を振り切って除去し、当該表面を乾燥させる。
その後、リンス液ノズル330を移動させ、ウエハ搬送装置70の搬送アーム70aによってウエハWが現像ユニットU3から搬出される。こうして、一連のウエハWに対する現像処理が終了する。
以上のように、本実施形態で説明した基板処理装置(現像ユニットU3を含む塗布・現像装置2)および基板処理方法によれば、改質処理部としての改質液ノズル360を用いて噴霧される改質液R1によって、ウエハW裏面の改質処理(S03)が行われる。この結果、ウエハWの裏面のうち、リング部材832を対向する位置よりも外側の外周領域の一部について、接触角が大きくなるように改質された改質領域P10が設けられる。ウエハWの外周領域に外周端に沿った環状の改質領域P10が設けられることで、ウエハWの裏面に回り込んだ現像液Dまたはリンス液R2が改質領域P10においてウエハWからの落下が促進される。そのため、改質領域P10よりも内側に現像液Dが回り込むことを防ぐことができる。従来の基板処理装置においても、改質領域P10よりも内側にリング部材382が設けられる。そのため、リング部材382を用いて形成される現像液Dの液シールDsにより、現像液Dまたはリンス液R2が裏面に回り込むことが抑制されていた。しかしながら、回り込む現像液Dの量が多い場合には、液シールDsを用いた回り込みの抑制が十分になる可能性も考えられる。本実施形態に係る基板処理装置では、リング部材382に対向する位置よりも外側に改質領域P10が設けられることで、改質領域P10においても過剰な現像液Dまたはリンス液の回り込みをさらに抑制することができる。
また、上記の基板処理装置および基板処理方法では、反り情報取得部として機能する反り計測部340で計測されたウエハWの反りに係る情報に基づいて、改質対象領域(改質領域P10となる領域)を設定することができる。このような構成とすることで、ウエハWの反りの有無およびその大きさに応じて現像液Dまたはリンス液R2の回り込みを適切に抑制することができる。また、現像液Dまたはリンス液R2の回り込みが少なくなるような状況の場合(ウエハWが凸型に反っている場合など)には改質対象領域を狭くすることも可能となり、コストの増大等を防ぐことができる。
また、上記の基板処理装置および基板処理方法では、現像液Dによる現像中、反り計測部340で計測されたウエハWの反り情報に基づいて、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H1になるようにリング部材382の位置が調節されている。したがって、例えウエハWに反りが生じていた場合でも、現像液DのウエハWの裏面側への回り込みを適切に抑制することができる。
さらに、リンス液R2による裏面洗浄中、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H2になるようにリング部材382を下降させる。そのため、リンス液R2がリング部材382に干渉して残存することを抑制することができる。なお、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの間が距離H1であっても、その距離H1は適切であるため、裏面洗浄終了後に、リング部材382にリンス液R2が残存するのを抑えることができる。ただし、本実施形態のようにリング部材382を下降させることで、リンス液R2がリング部材382に残存するのをより確実に抑制することができる。
[変形例]
次に、変形例に係る基板処理装置および基板処理方法について説明する。
改質処理は、改質液ノズル360を用いた改質液の噴霧とは異なる方法で行ってもよい。改質液をウエハWの裏面に対して付着させることで改質処理を行う場合、改質液の噴霧に代えて、改質液の塗布により改質液を付着させてもよい。また、改質を行う材料が液剤とは性質の異なる材料であってもよい。改質を行う材料の特性に応じて、改質処理部の配置および構成を変更することができる。
上記実施形態では、現像ユニットU3において、ウエハWの裏面の改質領域の形成と、現像処理と、を行う場合について説明した。しかしながら、改質領域の形成は現像ユニットU3とは異なるユニットを用いて行ってもよい。ウエハWの裏面における改質対象領域の設定、および、設定領域に対する改質処理を行うこと場所は、現像処理を行う場所とは異なる場所とすることができる。
改質処理を行う場所が現像ユニットU3とは異なる場所である場合、改質に使用する材料を変更することができる。上記実施形態では、ウエハWの裏面のうち外周の特定領域の接触角を大きくするための改質剤としてカチオン系界面活性剤が好適に用いられる場合について説明した。これは、改質剤がカチオン系界面活性剤であると、改質剤がウエハWに付着してウエハWの表面改質を行う(接触角を大きくさせる)場合に、副生成物を発生しないまたは発生しても周囲の部品等に影響を与えないことに由来する。現像ユニットU3において改質処理を行う場合、副生成物が現像液Dによる現像等に影響する可能性が考えられる。一方、現像ユニットU3とは異なる場所で改質処理を行う場合、改質処理に伴って副生成物が反応しても問題が無い環境であれば、カチオン系界面活性剤とは異なる材料を改質剤として使用することができる。現像ユニットU3とは異なる場所で改質処理を行う場合に使用可能な改質剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、トリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)、ジメチル(ジメチルアミノ)シラン(DMSDMA)、1,1,3,3-テトラメチルジシラン(TMDS)、ポリシラザン希釈液、シロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。このように、シランカップリング剤を利用してウエハWの裏面の表面改質を行なって接触角を大きくすることで、現像液D(またはリンス液R2)の裏面への回り込みを抑制する構成としてもよい。
また、上記実施形態では、改質領域P10が外周端に沿った環状である場合について説明したが、改質領域P10の形状は適宜変更することができる。例えば、改質領域P10は、ウエハWの外周に沿って破線状に形成されていてもよい。改質領域P10が破線状に形成されている場合でも、改質領域P10を通過するように移動した現像液D(またはリンス液R2)については接触角の変化により落下が促進されるため、裏面への回り込みが抑制される。このように、改質領域P10が環状に形成されていない場合でも、リング部材382よりも外側の少なくとも一部が改質されることで、現像液D(またはリンス液R2)の回り込みを抑制することが可能である。ただし、改質領域P10が環状である場合、現像液D(またはリンス液R2)の回り込みを効果的に抑制することができる。
また、現像ユニットU3の装置構成についても適宜変更することができる。例えば、現像ユニットU3では、リング部材382にエアガスを噴射する、ガス供給部としてのガスノズルがさらに設けられていてもよい。ガスノズルは、例えばリング部材382の内側において、ガイド部材381上に環状に設けることができる。ガスノズルには、全周に亘ってガス噴出口が形成され、リング部材382の全周にエアガスを噴射できる構成とすることができる。この場合、例えば、リンス液R2によるウエハWの裏面洗浄の終了後に、リング部材382に残存するリンス液R2の液滴をエアガスにより除去することができる。したがって、リング部材382への液滴の残存をより確実に抑制することができる。なお、ガスノズルを用いたエアガスの噴射は、例えば、上述の現像液Dの液シールDsを除去するために行われてもよい。
上記実施形態では、レーザ変位計である反り計測部340によってウエハWの反りを計測し、これを反りに係る情報として取得していたが、ウエハWの反りの測定方法はこれ限定されない。例えば反り情報取得部に対応する反り計測部340としてカメラを用い、ウエハWの外縁部を撮像して、撮像画像からウエハWの反り量を算出してもよい。また、反り計測部340として、例えば静電容量センサまたは超音波センサが用いられる。この場合、反り計測部340は、スピンチャック300に保持されたウエハWの外縁部下方に設けられていてもよい。また、反り計測部340は、現像ユニットU3の外部に設けられていてもよい。このように、反り情報取得部により取得する反りに係る情報の取得方法に応じて、反り情報取得部の配置は適宜変更することができる。また、反り情報取得部は、改質領域P10の大きさ、または、ウエハWの裏面とリング部材382の上面382aとの距離を調整するために必要な反りに係る情報を取得できればよい。したがって、反り情報取得部は、反りの大きさを直接計測する方法とは異なる方法で反りに係る情報を取得してもよい。また、反り情報取得部によるウエハWの反り計測を行うタイミングについても適宜変更することができる。
上記実施形態の現像ユニットU3には、リング部材382が1重に設けられている場合について説明したが、リング部材382が同心状に複数設けられていてもよい。また、複数のリング部材382はそれぞれ独立して昇降自在に構成され、個別に高さ調整が可能であってもよい。
上記実施形態の現像ユニットU3では、スリットノズルである現像液ノズル320を用いて、ウエハWを回転させずにウエハWの表面に現像液Dの液パドルを形成する、所謂静止現像を行っていたが、回転現像を行ってもよい。回転現像では、例えばスピンチャック300によってウエハWを回転させながら、ウエハWの中心部に現像液Dを供給し、遠心力により現像液DをウエハWの表面全面に拡散させて現像を行う。このような回転現像においても、本開示の構成を適用することで、上述した効果を享受することができる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。