(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、紙面上下方向は鉛直方向であり、紙面左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
ダイカストマシン1は、未硬化状態の金属材料を金型101の内部(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、金属材料を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。未硬化状態は、例えば、液状又は固液共存状態である。固液共存状態は、液状から凝固が進んだ半凝固状態、又は固体状から溶融が進んだ半溶融状態である。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、以下では、未硬化の金属材料として、基本的に溶湯(液状の金属材料)を例に取る。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、公知の種々の構成と同様とされて構わない。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際、又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図4参照)と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17と、画像を表示する表示装置15と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、図示の例では、型締装置7の固定ダイプレート(符号省略)に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
(射出装置の全体構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じる射出スリーブ21と、射出スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。
射出スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯を射出スリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、例えば、射出スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aから射出スリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置から射出スリーブ21内を前方へ摺動することにより、射出スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
(射出駆動部)
図2は、射出装置9の射出駆動部25の構成を示す模式図である。
射出駆動部25は、例えば、液圧式のものとされており、プランジャ23を駆動する射出シリンダ27と、射出シリンダ27に対する作動液(例えば油)の供給等を行う液圧装置29とを有している。
(射出シリンダ)
射出シリンダ27は、例えば、いわゆる単胴形の液圧シリンダによって構成されている。具体的には、例えば、射出シリンダ27は、シリンダ部31と、シリンダ部31の内部を摺動可能なピストン33と、ピストン33に固定され、シリンダ部31から延び出るピストンロッド35とを有している。
シリンダ部31は、例えば、概略、内部の断面形状が円形の筒状体である。シリンダ部31の内部は、ピストン33により、ピストンロッド35が延び出る側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hとに区画されている。ヘッド側室31h及びロッド側室31rに選択的に作動液が供給されることにより、ピストン33はシリンダ部31内を前後方向に摺動する。
射出シリンダ27は、プランジャ23に対して同軸的に配置されている。そして、図1に示すように、ピストンロッド35の先端は、プランジャ23の後端にカップリング(符号省略)を介して連結されている。シリンダ部31は、ダイカストマシン1の不動部分(例えば型締装置7の固定ダイプレート)などに対して固定的に設けられている。従って、ピストン33のシリンダ部31に対する移動により、プランジャ23は射出スリーブ21内を前進又は後退する。
(液圧装置)
図2に戻って、液圧装置29は、例えば、作動液を貯留するタンク39と、作動液を送出するポンプ41(液圧源)と、高圧の作動液を蓄えるアキュムレータ43(液圧源)と、を有している。タンク39、ポンプ41、アキュムレータ43及び射出シリンダ27は、複数の流路45A~45I(以下、A~Iを省略することがある。)によって接続されている。当該複数の流路45における作動液の流れは、複数のバルブ(49、51、55、57、59及び61)によって制御される。
なお、図2では、図示の便宜上、タンク39とポンプ41とを離して図示しているが、ポンプ41は、タンク39に貯留されている作動液を送出してよい。また、図示の都合上、タンク39は、2箇所に示されているが(一方は符号省略)、実際にはタンク39は、1つに纏められていてよい。
(タンク、ポンプ及びアキュムレータ)
タンク39は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク39内の作動液の圧力をタンク圧というものとする。開放タンクにおいては、作動液の圧力は、近似的に(作動液の自重の影響を無視すると)大気圧と同等である。ロッド側室31r又はヘッド側室31hがタンク39と接続されると、ロッド側室31r又はヘッド側室31h内の作動液の圧力は、基本的にはタンク圧となる。
ポンプ41は、電動機47(図4参照)によって駆動され、作動液を送出する。ポンプは、ロータリポンプ、プランジャポンプ、定容量ポンプ、可変容量ポンプ、1方向ポンプ、双方向(2方向)ポンプ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ41を駆動する電動機も、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ41(電動機)は、ダイカストマシン1の稼働中において常時駆動されてもよいし、必要に応じて駆動されてもよい。
アキュムレータ43は、適宜な方式のものとされてよく、例えば、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式又はプラダ式のものである。図示の例では、アキュムレータ43は、シリンダ式のものであり、特に符号を付さないが、シリンダ部と、シリンダ部を液体室と気体室とに区画するピストンとを有している。アキュムレータ43は、液体室に作動液が供給されることによって蓄圧され、その蓄圧された比較的高圧の作動液を射出シリンダ27に放出可能である。
(流路及びバルブ)
複数の流路45は、パイプ、ホース及び/又はその他の部材(例えば貫通孔が形成されたブロック状の部材)によって構成されてよい。また、以下に述べる複数の流路45は、その一部が互いに共用されてよい。複数の流路45及び複数のバルブによる液圧装置29の構成要素(27、39、41及び43)の接続関係は、例えば、以下のとおりである。
(ピストンの前進に係る流路及びバルブ)
ポンプ41とアキュムレータ43とは流路45Aを介して接続されている。これにより、例えば、ポンプ41からアキュムレータ43に作動液を供給してアキュムレータ43を蓄圧できる。
流路45Aには、ポンプ41からアキュムレータ43への流れを許容し、その反対方向の流れを禁止するチェックバルブ49が設けられている。これにより、アキュムレータ43からポンプ41への逆流が防止されている。
アキュムレータ43とヘッド側室31hとは流路45Bを介して接続されている。これにより、例えば、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ作動液が供給され、ピストン33が前進する。
流路45Bには、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの作動液の供給を許容及び禁止するACC用バルブ51が設けられている。ACC用バルブ51の構成は、適宜なものとされてよい。図示の例では、ACC用バルブ51は、パイロット式のチェックバルブによって構成されている。このチェックバルブは、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの流れを禁止するとともに、その反対方向の流れを許容し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容する。
ロッド側室31rとタンク39とは、ロッド側室31rに接続されている流路45Cと、タンク39に接続されている流路45Dとを介して接続可能である。これにより、例えば、ピストン33が前進するときにロッド側室31rからタンク39へ作動液を排出することができる。
ロッド側室31rとヘッド側室31hとは、上記流路45Cと、ヘッド側室31hに接続されている流路45Eとを介して接続可能である。これにより、例えば、ピストン33の前進に伴ってロッド側室31rから排出される作動液をヘッド側室31hへ流入させることができる。ひいては、ピストン33を前進させるときに必要な作動液を低減することができる。このように、流路45C及び45Eは、ランアラウンド回路53を構成している。
流路45C~45Eの間には、サーボバルブ55が介在している。図2において3ポート3位置切換弁の記号によってサーボバルブ55が表現されているように、流路45C、45D及び45Eの接続関係は、サーボバルブ55によって切り換えられる。具体的には、例えば、図示された3つの矩形のうち中央の位置では、流路45C、45D及び45Eは互いに遮断される。紙面左側の位置では、流路45C(ロッド側室31r)と流路45D(タンク39)とが接続されるとともに、流路45Cと流路45E(ヘッド側室)とが遮断される(ランアラウンド回路53がOFFされる。)。紙面右側の位置では、流路45C(ロッド側室31r)と流路45D(タンク39)とが遮断されるとともに、流路45Cと流路45E(ヘッド側室31h)とが接続される(ランアラウンド回路53がONされる。)。
サーボバルブ55は、流路45C(ロッド側室31r)から流路45D(タンク39)又は流路45E(ヘッド側室31h)への作動液の流量を制御可能に構成されており、流量制御弁としても機能する。この流量の制御により、例えば、ピストン33の前進速度が制御される。すなわち、サーボバルブ55は、いわゆるメータアウト回路を構成している。なお、サーボバルブ55は、例えば、圧力変動があっても流量を一定に保つことができる圧力補償付流量調整弁により構成されている。また、サーボバルブ55は、その名称のとおり、サーボ機構の中で使用され、入力信号に応じて流量を無段階に(連続的に、任意の値に)変調できるサーボバルブによって構成されている。
サーボバルブ55の弁体(後述)を駆動するための構成は適宜なものとされてよく、公知の種々の構成が適用されてよい。例えば、駆動方式は、電気-油圧式であってもよいし、電気式であってもよい。電気-油圧式では、入力された電気信号に応じたソレノイド(モータ)の変位がノズルフラッパ等の前段増幅部によってパイロット圧に変換され、このパイロット圧によって弁体が駆動される。電気式では、例えば、入力された電気信号に応じたソレノイドの変位が液圧を介さずに弁体に伝えられる。また、弁体は、電気又は液圧による駆動力が付与されていないときに所定位置に位置するように、スプリングによって付勢されていてよい。また、サーボバルブ55の弁体の位置に応じた信号(フィードバック用の信号)を出力するための構成も適宜なものとされてよく、公知の種々の構成が適用されてよい。例えば、差動トランスが用いられてよい。
流路45Eには、サーボバルブ55からヘッド側室31hへの流れを許容し、その反対方向の流れを禁止するチェックバルブ56が設けられている。これにより、例えば、ヘッド側室31hからロッド側室31rへの逆流が防止される。
(その他の動作に係る流路及びバルブ)
ポンプ41とロッド側室31rとは、ポンプ41に接続されている流路45Fと、ロッド側室31rに接続されている流路45Gとを介して接続可能である。これにより、例えば、ポンプ41からロッド側室31rへ作動液を供給して、ピストン33を後退させることができる。
ヘッド側室31hとタンク39とは、ヘッド側室31hに接続されている流路45Hと、タンク39に接続されている流路45Iとを介して接続可能である。これにより、例えば、ピストン33が後退するときにヘッド側室31hからタンク39へ作動液を排出することができる。
ポンプ41とヘッド側室31hとは、既述の流路45Fと、既述の流路45Hとを介して接続可能である。これにより、例えば、ポンプ41からヘッド側室31hへ作動液を供給して、ピストン33を前進させることができる。
流路45F~45Iの間には、切換弁57が介在している。図2において4ポート3位置切換弁の記号によって切換弁57が表現されているように、流路45F~45Iの接続関係は、切換弁57によって切り換えられる。具体的には、例えば、図示された3つの矩形のうち中央の位置では、流路45G(ロッド側室31r)、流路45H(ヘッド側室31h)及び流路45I(タンク39)は互いに接続される。これにより、例えば、射出シリンダ27を圧抜きすることができる。紙面左側の位置では、流路45F(ポンプ41)と流路45G(ロッド側室31r)とが接続されるとともに、流路45H(ヘッド側室)と流路45I(タンク39)が接続される。これにより、例えば、ピストン33を後退させることができる。紙面右側の位置では、流路45F(ポンプ41)と流路45H(ヘッド側室31h)とが接続されるとともに、流路45G(ロッド側室31r)と流路45I(タンク39)が接続される。これにより、例えば、ピストン33を前進させることができる。なお、後述の説明から理解されるように、切換弁57は、ロッド側室31rからタンク39への作動液の排出に寄与しなくても構わない。
流路45Gには、切換弁57からロッド側室31rへの流れを許容し、その反対方向の流れを禁止するチェックバルブ59が設けられている。これにより、例えば、サーボバルブ55によってロッド側室31rから排出される作動液の流量を制御しているときに、ロッド側室31rから切換弁57への流れを禁止することができる。
流路45Hには、ヘッド側室31hと切換弁57との間の流れを許容及び禁止する制御弁61が設けられている。制御弁61の構成は、適宜なものとされてよい。図示の例では、制御弁61は、パイロット式のチェックバルブによって構成されている。このチェックバルブは、パイロット圧が導入されていないときは、ヘッド側室31hから切換弁57への流れを禁止するとともに、その反対方向の流れを許容し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容する。制御弁61は、例えば、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ作動液を供給するときに、ヘッド側室31hの作動液が切換弁57へ流れることを阻止することに寄与する。
液圧装置29は、背圧除去シリンダ63を有している。背圧除去シリンダ63において、ピストンにより区画された2つのシリンダ室のうち、一方は、流路45Dに接続されており、他方は、不図示の空圧源に接続されている。従って、例えば、サーボバルブ55によってロッド側室31rとタンク39とが接続されている状態において、ロッド側室31rの液圧が急激に高くなった場合、その衝撃は、背圧除去シリンダ63によって吸収される。
(各種のセンサ)
射出装置9は、射出駆動部25等の動作を把握するために種々のセンサを有している。例えば、射出装置9は、ピストンロッド35(別の観点ではプランジャ23)の位置及び速度を検出するための位置センサ65と、液圧系の種々の位置における液圧を検出するための種々の圧力センサとを有している。圧力センサとしては、例えば、ヘッド側室31hの圧力を検出するヘッド圧センサ67、及びロッド側室31rの圧力を検出するロッド圧センサ69が設けられている。この他、例えば、アキュムレータ43の圧力を検出する圧力センサが設けられてもよい。
位置センサ65は、例えば、シリンダ部31に対するピストンロッド35の位置を検出し、プランジャ23の位置を間接的に検出する。位置センサ65の構成は適宜なものとされてよい。例えば、位置センサ65は、ピストンロッド35に固定的な不図示のスケール部とともに磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成するものであってもよいし、ピストンロッド35に固定的な部材との距離を計測するレーザー測長器によって構成されてもよい。
位置センサ65又は制御装置13は、概念的には、プランジャ23の位置の微分によってプランジャ23の速度を取得(検出)することが可能である。従って、位置センサ65は、速度センサと捉えられてもよい。例えば、位置センサ65がリニアエンコーダを構成している場合、位置センサ65は、不図示のスケール部との相対移動に応じてパルスを生成する。そして、位置センサ65及び/又は制御装置13は、生成されたパルスの数を積算することによって位置センサ65とスケール部との相対位置を特定可能であり、また、時間当たりのパルスの数を特定することによって速度を特定可能である。
ヘッド圧センサ67及びロッド圧センサ69は、例えば、プランジャ23が溶湯に加える圧力(射出圧力等)を間接的に検出することに利用される。例えば、制御装置13は、ヘッド圧センサ67の検出値と、ロッド圧センサ69の検出値と、ピストン33のヘッド側室31hにおける受圧面積(作動液から圧力を受ける面積)と、ピストン33のロッド側室31rにおける受圧面積と、プランジャ23の溶湯に対する接触面積とに基づいて、プランジャ23が溶湯に付与する圧力を算出可能である。なお、以下の説明では、このようなヘッド圧センサ67及びロッド圧センサ69(実施態様によってはヘッド圧センサ67のみ)の検出値に基づく射出圧力を単に射出圧力の検出値ということがある。
(サーボバルブの構造)
図3は、サーボバルブ55の要部の構成を示す模式的な断面図である。この図では、サーボバルブ55のうち、ヘッド側室31h、ロッド側室31r及びタンク39の間の流れを直接に制御する部分のみが模式的に示されている。従って、例えば、ソレノイド、パイロット流路及び/又はスプリング等の駆動に係る部分、差動トランス等のフィードバック信号の生成に係る部分、並びに弁体の駆動限を規定する部分等の図示は省略されている。
サーボバルブ55は、いわゆるスプール式のバルブによって構成されており、バルブスリーブ71と、バルブスリーブ71内を軸方向に摺動可能なスプール73とを有している。
バルブスリーブ71は、中空状の部材である。バルブスリーブ71の内部空間の横断面(図3の左右方向に直交する断面)の形状は、例えば、概略円形である。バルブスリーブ71の内周面(軸回りの内面)には、バルブスリーブ71の内外を連通する、ロッド側ポート75R、ヘッド側ポート75H及びタンク側ポート75Tが開口している。なお、以下では、単に「ポート75」といい、これらを区別しないことがある。図示の例では、ポート75は、バルブスリーブ71の内面における開口位置と、バルブスリーブ71の外面における開口位置とが概ね一致している。ただし、バルブスリーブ71の形状によっては、外面における開口位置を内面における開口位置からずらすことも可能である。
ロッド側ポート75Rには、流路45C(ロッド側室31r)が接続されている。ヘッド側ポート75Hには流路45E(ヘッド側室31h)が接続されている。タンク側ポート75Tには流路45D(タンク39)が接続されている。これらのポート75は、スプール73の移動方向(図3の左右方向)において、ヘッド側ポート75H、ロッド側ポート75R、タンク側ポート75Tの順に配置されている。なお、これらのポート75の、バルブスリーブ71の軸回りの位置は、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。
バルブスリーブ71の内周面には、軸方向(スプール73の移動方向)の、ポート75に対応する位置に、溝71aが形成されていてもよい。図示の例では、3つのポート75のうち、ヘッド側ポート75H及びロッド側ポート75Rに対応する位置に溝部71aが設けられている。なお、溝71aは、設けられなくてもよいし、3つのポート75のうちいずれに対して設けられてもよい。溝71aは、例えば、バルブスリーブ71の軸回りの方向に延びて、バルブスリーブ71を一周し、ポート75とつながっている(一部又は全部はポート75の一部と捉えられてもよい。)。
スプール73は、例えば、円柱においてその軸方向の2箇所が縮径した形状に形成されている。すなわち、スプール73は、3つの大径部73a、73b及び73cと、これらの間に位置しており、大径部よりも径が小さい2つの小径部73d及び73eとを有している。大径部は、例えば、バルブスリーブ71を摺動する概略円柱状に形成されている。小径部は、外周面がバルブスリーブ71の内面から離れている概略円柱状に形成されている。
小径部が2つのポート75に対向することによって、その2つのポート75は互いに連通される。また、いずれか1つのポート75に大径部が対向することにより、その1つのポート75は他のポート75から遮断される。また、いずれか2つのポートの間に大径部が位置することにより、その2つのポート75は互いに遮断される。図示の例では、具体的には、以下のとおりである。
図3では、中央の大径部73bがロッド側ポート75Rに対向している。これにより、ロッド側ポート75Rは、ヘッド側ポート75H及びタンク側ポート75Tの双方から遮断されている。また、別の観点では、大径部73bは、ヘッド側ポート75Hとタンク側ポート75Tの間に位置している。これにより、ヘッド側ポート75Hとタンク側ポート75Tとは遮断されている。この状態は、サーボバルブ55の図2に示した記号の中央の位置(ロッド側室31rからの作動液の排出を禁止している状態)に相当している。
なお、小径部73dは、ヘッド側ポート75H(例えばその全体)に対向している。小径部73eは、タンク側ポート75T(例えばその全体)に対向している。両側の大径部73a及び73cは、小径部73d及び73eと、バルブスリーブ71の両端部とを隔離することに寄与している。特に図示しないが、このバルブスリーブ71の両端部は、スプール73を駆動する駆動部を設けることに利用される。
図3の状態から、スプール73が図3の右側へ移動すると、左側の小径部73dは、ヘッド側ポート75Hに対する対向を維持しつつ、ロッド側ポート75Rの少なくとも一部に対向する。これにより、ヘッド側ポート75Hとロッド側ポート75Rとが連通される。この状態は、サーボバルブ55の図2に示した記号の右側の位置(ランアラウンド回路53をONにした状態)に相当している。
スプール73が図3の右側へ移動する過程では、左側の小径部73dは、ヘッド側ポート75Hの全体に対向する状態を維持しつつ、ロッド側ポート75Rに対向する面積を徐々に増加させていく。これにより、ヘッド側ポート75Hとロッド側ポート75Rとの間を流れる作動液の流量を制御するための開口度の変化が実現される。小径部73dは、例えば、ヘッド側ポート75Hの全体に対向したまま、ロッド側ポート75Rの全体に対向する位置まで移動可能とされている。このとき、開口度は最大となる。
なお、ロッド側ポート75Rとタンク側ポート75Tとの遮断は、両者の間に大径部73bが介在することによって維持される。図示の例では、小径部73dがロッド側ポート75Rの全体に対向する位置までスプール73が移動しても、大径部73bはタンク側ポート75Tに対向しない。ただし、大径部73bは、上記位置までスプール73が移動したときに、タンク側ポート75Tの一部又は全部に対向しても構わない。
上記とは逆に、図3の状態から、スプール73が図3の左側へ移動すると、右側の小径部73eは、タンク側ポート75Tに対する対向を維持しつつ、ロッド側ポート75Rの少なくとも一部に対向する。これにより、タンク側ポート75Tとロッド側ポート75Rとが連通される。この状態は、サーボバルブ55の図2に示した記号の左側の位置に相当している。
スプール73が図3の左側へ移動する過程では、右側の小径部73eは、タンク側ポート75Tの全体に対向する状態を維持しつつ、ロッド側ポート75Rに対向する面積を徐々に増加させていく。これにより、タンク側ポート75Tとロッド側ポート75Rとの間を流れる作動液の流量を制御するための開口度の変化が実現される。ただし、図示の例では、小径部73eがロッド側ポート75Rの全体に対向する位置に到達する前に、小径部73eのタンク側ポート75Tに対向する面積が減じられ始める。その直前の位置は開口度が最大の位置として扱われ、その位置から更に左側へのスプール73の移動はなされない。なお、サーボバルブ55は、小径部73eがロッド側ポート75Rの全体に対向する位置に到達するまで、小径部73eがタンク側ポート75Tの全体に対して対向する状態が維持されるように構成されても構わない。
なお、ロッド側ポート75Rとヘッド側ポート75Hとの遮断は、両者の間に大径部73bが介在することによって維持される。また、図示の例では、大径部73bは、スプール73が図3の左側へ移動することによってヘッド側ポート75Hの少なくとも一部に対向する。ただし、大径部73bは、ヘッド側ポート75Hに対向しなくても構わない。
(信号処理系の構成)
図4は、ダイカストマシン1の信号処理系に係る構成を示すブロック図である。
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部(13a~13f)が構築される。複数の機能部は、例えば、準備制御部13a、低速射出制御部13b、高速射出制御部13c、減速制御部13d、昇圧制御部13e及び保圧制御部13fを含む。なお、低速射出制御部13b及び高速射出制御部13c(並びに減速制御部13d)を纏めて射出制御部13hということがある。これらの複数の機能部が行う制御等の詳細については、後述する動作の説明(図6等)において説明する。
制御装置13には、各種の機器から各種の信号が入力される。制御装置13に信号を入力する機器は、例えば、入力装置17、位置センサ65、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67である。また、制御装置13は、各種の機器に制御信号を出力する。制御装置13が信号を出力する機器は、例えば、射出装置9の液圧装置29である。ここでは、液圧装置29の構成要素のうち、サーボバルブ55、ポンプ41を駆動する電動機47及び切換弁57を示している。
図4に示すように、液圧装置29は、液圧供給部77を備えていると捉えられてよい。液圧供給部77は、ポンプ41(図2)、電動機47、切換弁57及び制御弁61を含んでおり、ヘッド側室31h及びロッド側室31rへの作動液を供給する。その動作は、制御装置13によって制御される。
(射出装置の動作の概要)
図5は、射出装置9の動作を説明する図である。図5の上部は、射出速度(プランジャ23の速度)及び射出圧力(プランジャ23が溶湯に付与する圧力)の経時変化を示すグラフとなっている。図5の下部は、ACC用バルブ51、サーボバルブ55及び液圧供給部77の動作を示すタイミングチャートとなっている。
図5において、横軸tは時間を示している。図5の上部のグラフにおいて、縦軸は射出速度V及び射出圧力Pの大きさを示している。線Lvは射出速度の変化を示している。線Lpは射出圧力の変化を示している。
図5の「ACC用バルブ」の項目における線は、「開」に位置するときに、ACC用バルブ51にパイロット圧力が導入されていることを意味し、「閉」に位置するときに、ACC用バルブ51にパイロット圧力が導入されていないことを意味する。なお、図示の範囲では、ACC用バルブ51は、時点0でパイロット圧力が導入されて、その後、継続的にパイロット圧力が導入されている。
図5の「サーボバルブ」の項目における実線は、点線で示す位置にあるときに、図2の記号の中央の位置(ロッド側室31rからヘッド側室31h及びタンク39への流れを禁止する位置)にあることを意味する。また、上記実線は、点線よりも上方(「R→H」の位置)にあるときは、図2の記号の右側の位置(ロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れを許容する位置)にあることを意味する。また、上記実線は、点線よりも下方(「R→T」の位置)にあるときは、図2の記号の左側の位置(ロッド側室31rからタンク39への流れを許容する位置)にあることを意味する。また、上記実線は、点線から離れるほど、開口度(別の観点では流量)が大きくなることを意味している。
図5の「液圧供給部」の項目は、後述する変形例を説明するためのものであり、液圧供給部77の実施形態における動作とは異なる動作を示している。従って、ここでは説明を省略する。
射出装置9は、概観すると、鋳造サイクル毎に、低速射出工程(時点t0~t1)、高速射出工程(時点t1~t2)、減速工程(時点t2~t3)、昇圧(増圧)工程(時点t3~t5)及び保圧工程(時点t5~)を順に行う。
低速射出工程(時点t0~t1)は、射出の初期段階において、比較的低速の低速射出速度VLでプランジャ23を前進させる工程である。このように比較的低速で射出が行われることにより、例えば、溶湯によるガス(空気等)の巻き込みが低減される。低速射出速度VLの具体的な値は、入力装置17に対する操作によって適宜に設定されてよく、例えば、1m/s未満である。
高速射出工程(時点t1~t2)は、低速射出工程に続いて、低速射出速度VLよりも高速の高速射出速度VHでプランジャ23を前進させる工程である。このように比較的高速で射出が行われることにより、例えば、溶湯の凝固に遅れずに溶湯をキャビティCaに充填することができる。高速射出速度VHの具体的な値は、入力装置17に対する操作によって適宜に設定されてよく、例えば、1m/s以上である。
減速工程(時点t2~t3)は、プランジャ23の速度を減じる工程である。プランジャ23の速度を減じる制御を行うことによって、例えば、溶湯がキャビティCaに充填されるときに生じる衝撃(サージ圧)を低減することができる。
昇圧工程(時点t3~t5)は、プランジャ23によって溶湯に付与する圧力を上昇させて、溶湯の圧力を所定の鋳造圧力Peに至らせる工程である。保圧工程(時点t5~)は、鋳造圧力Peを維持し、溶湯の凝固を待つ工程である。溶湯の圧力を上昇させて凝固を待つことによって、例えば、鋳巣及び/又はヒケ等を減じることができる。鋳造圧力Peの具体的な値は、入力装置17に対する操作によって適宜に設定されてよい。
ACC用バルブ51は、例えば、上記の低速射出工程から保圧工程に亘ってパイロット圧が導入されて開かれている。これにより、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ作動液が供給されて、ピストン33に前進方向への力が加えられる。ひいては、上記の種々の工程が可能となる。
そして、サーボバルブ55の動作によって、上記の各種の工程の切換えが実現されている。具体的には、低速射出工程から高速射出工程への切換え(時点t1)、高速射出工程から減速工程への切換え(時点t2)、減速工程から昇圧工程への切換え(時点t3)、昇圧工程から保圧工程への切換え(時点t5)が実現されている。
(射出装置の動作の詳細)
図5に加えて、図6及び図7を参照して、射出装置9の動作の詳細について説明する。図6は、上述した射出装置の動作を実現するために制御装置13が実行する射出処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、鋳造サイクル毎に行われる。また、図7は、鋳造サイクルにおける複数のバルブの動作を示すタイムテーブルである。
図7の「サーボバルブ」の欄において、「C」は、サーボバルブ55が図2の記号の中央の位置にある(ロッド側室31rからヘッド側室31h及びタンク39への流れが禁止されている)ことを示している。「R→H」は、サーボバルブ55が図2の記号の右側の位置にある(ロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れが許容されている)ことを示している。「R→T」は、サーボバルブ55が図2の記号の左側の位置にある(ロッド側室31rからタンク39への流れが許容されている)ことを示している。
「ACC用バルブ」の欄において、「-」は、ACC用バルブ51にパイロット圧が導入されていない(アキュムレータ43からヘッド側室31hへの流れが禁止されている)ことを示している。「P」は、ACC用バルブ51にパイロット圧が導入されている(アキュムレータ43からヘッド側室31hへの流れが許容されている)ことを示している。
「制御弁」の欄において、「-」は、制御弁61にパイロット圧が導入されていない((ヘッド側室31hから切換弁57への流れが禁止されている)ことを示している。「P」は、制御弁61にパイロット圧が導入されている(ヘッド側室31hから切換弁57への流れが許容されている)ことを示している。
「切換弁」の欄において、「C」は、切換弁57が図2の記号の中央の位置にある(ポンプ41からロッド側室31r及びヘッド側室31hへの流れが禁止されている)ことを示している。「P→R」は、切換弁57が図2の左側の位置にある(ポンプ41からロッド側室31rへの流れが許容されている)ことを示している。「P→H」は、サーボバルブ55が図2の記号の右側の位置にある(ポンプ41からヘッド側室31hへの流れが許容されている)ことを示している。
(準備工程:時点t0前)
図6のステップST1及び図7の「1」の行に示すように、射出開始前(図5の時点t0の前)においては、準備工程が行われる。この準備工程の開始前において、射出装置9は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、プランジャ23(ピストン33)は、後退限に位置している。液圧装置29は、ピストン33を後退限に位置させることができる適宜な状態とされている。例えば、ACC用バルブ51及び制御弁61にはパイロット圧は導入されておらず、サーボバルブ55は閉じられており(図2の中央の位置)、切換弁57はポンプ41を射出シリンダ27から遮断している。
そして、準備工程において、制御装置13(準備制御部13a)は、切換弁57を図2の左側の位置に切り換え、ポンプ41からロッド側室31rに液圧を供給して、ロッド側室31rの圧力を上昇させる。これにより、射出開始時(時点t0)において、いわゆるジャンピングが生じる蓋然性が低減される。具体的には、以下のとおりである。
ヘッド側室31hへ作動液を供給してピストン33を前進させるとき、その速度は、既述のように、ロッド側室31rから排出される作動液の流量によって制御される。理論上は、ピストン33の速度は、ロッド側室31rから排出される作動液の流量によって一意に定まる。しかし、現実には、ピストン33の前進開始直後においてはロッド側室31rの作動液が圧縮されることから、ピストン33の速度は、ロッド側室31rから排出される作動液の流量によって定まる速度よりも速くなる。すなわち、ジャンピングが生じる。しかし、上記のように予めロッド側室31rの圧力を上昇させてロッド側室31r内の作動液を圧縮しておくことにより、ピストン33の前進開始時におけるロッド側室31r内の作動液の圧縮量を低減し、ひいては、ジャンピングを低減できる。
図6のステップST2に示すように、制御装置13(準備制御部13a)は、例えば、ロッド圧センサ69の検出する圧力が所定の設定圧力に到達したか否かを判定する。そして、準備制御部13aは、否定判定の間は、ポンプ41からロッド側室31rへの液圧の付与を継続する。そして、制御装置13は、肯定判定がなされると、次のステップに進む。上記設定圧力は、例えば、ポンプ41からロッド側室31rへ付与することができる最大の圧力(ポンプ41からロッド側室31rへ十分な時間で液圧を付与したときに到達する一定圧力)とされてもよいし、これよりも低い圧力とされてもよい。
(低速射出工程:t0~t1)
図6のステップST3及び図7の「2」の行に示すように、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13(準備制御部13a)は、切換弁57を図2の中央の位置に切り換えて、ポンプ41からロッド側室31rへの作動液の供給を停止し、準備工程を終える。同時に、制御装置13(低速射出制御部13b)は、ACC用バルブ51にパイロット圧を導入して、アキュムレータ43からヘッド側室31hに作動液を供給する。また、低速射出制御部13bは、サーボバルブ55を図2の左側の位置に切り換えて、ランアラウンド回路53をONにする。これにより、ピストン33(プランジャ23)は前進する。すなわち、低速射出工程が開始される。
より詳細には、ロッド側室31rとヘッド側室31hとは、ランアラウンド回路53によって接続されることにより、理論上は互いに同一の圧力となる。また、ピストン33のロッド側室31rにおける受圧面積は、ピストンロッド35の横断面の面積だけ、ピストン33のヘッド側室31hにおける受圧面積よりも小さい。従って、ピストン33がヘッド側室31hから受ける力はピストン33がロッド側室31rから受ける力よりも大きくなり、ピストン33は前進する。この際、ロッド側室31rから排出される作動液は、ヘッド側室31hへ流れ込む。
上記の低速射出開始条件は、例えば、固定金型103及び移動金型105の型締めが完了し、溶湯が射出スリーブ21に供給されることに加えて、上記のステップST2において肯定判定がなされたことを含む。なお、ダイカストマシン1の動作は、射出スリーブ21に対する溶湯の供給完了と、ステップST2の肯定判定との、いずれが先に満たされるように設定されていてもよい。
プランジャ23の速度は、サーボバルブ55の開口度の調整により制御される。具体的には、制御装置13は、位置センサ65の検出値に基づいてサーボバルブ55の開口度をフィードバック制御する。このフィードバック制御は、プランジャ23の速度自体の偏差に基づく通常の速度フィードバック制御であってもよいし、所定の時間刻みで時々刻々と更新される目標位置と現時点の位置との偏差に基づく位置フィードバック制御によって実現される速度フィードバック制御であってもよい。
(高速射出:t1~t2)
図6のステップST4及びST5並びに図7の「3」の行に示すように、制御装置13(高速射出制御部13c)は、プランジャ23が所定の高速射出開始位置に到達すると(ST4)、プランジャ23の速度を低速射出速度VLから高速射出速度VHに切り換えて、高速射出工程を行う。
具体的には、高速射出制御部13cは、図5の時点t1付近に示されているように、サーボバルブ55におけるロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れに係る開口度を大きくして、当該流れに係る流量を大きくする。また、高速射出制御部13cは、低速射出工程に引き続いて、位置センサ65の検出値に基づいてサーボバルブ55の開口度をフィードバック制御する。この速度フィードバック制御は、低速射出工程におけるものと同様に、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、位置フィードバック制御によって実現されるものであってもよい。
高速射出開始位置は、入力装置17に対する操作に基づいて適宜に設定されてよい。速度フィードバック制御が、速度自体の偏差に基づいて行われる場合、高速射出制御部13cは、例えば、位置センサ65の検出するプランジャ23の位置に基づいて、プランジャ23が高速射出開始位置に到達したか否か判定し、到達したと判定したときに目標速度を変更する。また、低速射出工程から高速射出工程へ引き続き、時々刻々と更新される目標位置に対する位置フィードバック制御によって実質的に速度フィードバック制御が行われる場合においては、例えば、低速射出工程から高速射出工程に亘る目標位置の時系列データに基づいて制御がなされた結果として、プランジャ23が上記の高速射出開始位置に到達したときに、プランジャ23の速度が切り換えられる。換言すれば、プランジャ23が高速射出開始位置に到達したか否かの判定はなされない。
(減速工程:t2~t3)
図6のステップST6及びST7並びに図7の「4」の行に示すように、制御装置13(減速制御部13d)は、プランジャ23が所定の減速開始位置に到達すると(ST6)、プランジャ23の速度を減速する減速工程を開始する。
具体的には、減速制御部13dは、図5の時点t2付近に示されているように、サーボバルブ55におけるロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れに係る開口度を小さくして、当該流れに係る流量を小さくする。また、減速制御部13dは、高速射出工程に引き続いて、位置センサ65の検出値に基づいてサーボバルブ55の開口度をフィードバック制御する。この速度フィードバック制御は、低速射出工程及び高速射出工程におけるものと同様に、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、位置フィードバックによって実現されるものであってもよい。
速度フィードバック制御が、速度自体の偏差に基づいて行われる場合、減速制御部13dは、例えば、位置センサ65の検出するプランジャ23の位置に基づいて、プランジャ23が減速開始位置に到達したか否か判定し、到達したと判定したときに目標速度を変更する。また、高速射出工程から減速工程へ引き続き、時々刻々と更新される目標位置に対する位置フィードバック制御によって実質的に速度フィードバック制御が行われる場合においては、例えば、高速射出工程から減速工程に亘る目標位置の時系列データに基づいて制御がなされた結果として、プランジャ23が上記の減速開始位置に到達したときに、プランジャ23の速度が切り換えられる。換言すれば、プランジャ23が減速開始位置に到達したか否かの判定はなされない。
減速開始位置は、例えば、入力装置17に対する操作に基づいて適宜に設定されてよい。溶湯がキャビティCaにある程度充填されると、溶湯が行き場を失い、プランジャ23は、その充填された溶湯から反力を受けて急激に減速される。減速開始位置は、このような急激な減速が開始されるときの衝撃を緩和するように適宜に設定されてよい。減速の開始及び/又は速度勾配は、上記のようなサーボバルブ55の制御と、溶湯からの反力とのいずれに大きく影響されてもよい。
(昇圧工程:t3~t5)
図6のステップST8及び図7の「5」の行に示すように、所定の昇圧開始条件が満たされると、制御装置13(昇圧制御部13e)は、射出圧力を上昇させる昇圧制御を開始する。
具体的には、図5の時点t3及び図7の「5」の行に示すように、制御装置13(昇圧制御部13e)は、サーボバルブ55の位置を図2の左側の位置に切り換えて、ロッド側室31rからの作動液の排出先をヘッド側室31hからタンク39へ切り換える。これにより、ロッド側室31rの圧力は、理論上、ヘッド側室31hの圧力と同等の圧力から、これよりも低いタンク圧とされる。その結果、プランジャ23によって溶湯に付与する圧力を大きくしやすくなる。昇圧の過程において、プランジャ23は略停止する(時点t4)
上記の昇圧開始条件は、適宜に設定されてよい。例えば、昇圧開始条件は、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値に基づく射出圧力が所定の設定圧力に到達したこと、ヘッド圧センサ67の検出値が所定の設定圧力に到達したこと、又は位置センサ65により検出されるプランジャ23の検出位置が所定の設定位置に到達したこととされてよい。昇圧開始条件(設定圧力又は設定位置の設定等)は、例えば、入力装置17に対する操作によって設定されてよい。
昇圧中のサーボバルブ55の開口度は、適宜に設定及び制御されてよい。例えば、昇圧制御部13eは、入力装置17に対する操作によって設定された所望の昇圧曲線が得られるように、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値から求められる射出圧力に基づいて、サーボバルブ55の開口度のフィードバック制御を行ってよい。より詳細には、例えば、フィードバック制御は、所定の時間刻みで時々刻々と更新される目標圧力に射出圧力の検出値が収束するように行われてよい。また、昇圧中のサーボバルブ55の開口度は、射出圧力に基づくフィードバック制御が行われずに、単に一定値(例えば最大値)に維持されるだけであってもよい。
一般に、ロッド側室31rからタンク39への作動液の排出は、昇圧工程及び保圧工程が終了するまで許容される。従って、ロッド側室31rの圧力はタンク圧となり、また、鋳造圧力Peは、アキュムレータ43の圧力によって決定される。しかし、ロッド側室31rの圧力がタンク39の圧力に近づいていく過程でロッド側室31rからの作動液の排出を禁止すると、アキュムレータ43の圧力がピストン33に付与する前進方向の力からロッド側室31rの圧力がピストン33に付与する後退方向の力を差し引いた力によって鋳造圧力Peが決定される。すなわち、任意の鋳造圧力Peを実現することができる。このような技術は、例えば、特開2004-330267及び特開2011-224626号公報に開示されており、その内容は、本願に対して参照による組み込み(incorporation by reference)がなされてよい。
図5の時点t5付近では、ロッド側室31rの圧力がタンク圧に近づく過程でサーボバルブ55を図2の中央の位置に切り換えてロッド側室31rからの作動液の排出を禁止して、任意の鋳造圧力Peを実現する場合の動作が示されている。この切り換えは、適宜な昇圧完了条件が満たされたときになされてよい。例えば、昇圧完了条件は、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値に基づく射出圧力が所定の設定圧力に到達したときになされてよい。上記設定圧力は、鋳造圧力Peであってもよいし、サーボバルブ55を閉じてからの射出圧力の変動を考慮した補正量を鋳造圧力Peに加算又は減算した圧力であってもよい。また、例えば、昇圧工程を開始してから所定の時間が経過したことを昇圧完了条件としてもよい。
なお、特に図示しないが、昇圧工程及び保圧工程に亘ってロッド側室31rからタンク39への流れが許容されて、ロッド側室31rの圧力をタンク圧とする制御がなされても構わない。ただし、本実施形態の説明では、主として、ロッド側室31rの圧力をタンク圧としない態様を例に取る。
(保圧工程:t5~)
上記のように昇圧工程が終了すると、図6のステップST10に示すように、制御装置13(保圧制御部13f)は保圧工程を行う。図7の「6」の行に示されているように、また、上記の昇圧工程の終了時の動作の説明から理解されるように、保圧制御部13fは、基本的には、昇圧工程においてサーボバルブ55によってロッド側室31rからの作動液の排出を禁止した状態を維持するように各種のバルブを制御する。これにより、理論上は、鋳造圧力Peが維持される。
この鋳造圧力Peが維持されている間に、溶湯は冷却されて凝固する。その後、保圧制御部13fは、保圧を終了するための処理を行う。例えば、保圧制御部13fは、ACC用バルブ51へのパイロット圧の導入を停止して、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの液圧の供給を停止してよい。また、保圧制御部13fは、制御弁61にパイロット圧を導入してヘッド側室31hからタンク39への作動液の流れを許容してヘッド側室31hをタンク圧としてもよい。サーボバルブ55によってロッド側室31rからタンク39への作動液の流れを許容してロッド側室31rをタンク圧としてもよい。
(保圧工程後)
特に図示しないが、保圧工程の後、制御装置13は、型締装置7に型開きを行わせるとともに、押出装置11により固定金型103から成形品を押し出す。このとき、制御装置13は、プランジャ23によりビスケットを押し出すための駆動力を射出シリンダ27が生じるように液圧装置29を制御する。この押出しは、昇圧工程における動作と同様の動作(別の観点ではアキュムレータ43の圧力)によって実現されてもよいし、後述する図7の「8」の行の動作(別の観点ではポンプ41の圧力)によって実現されてもよい。
その後、制御装置13は、プランジャ23を初期位置まで後退させる。具体的には、図7の「7」の行に示すように、サーボバルブ55は図2の中央の位置に切り換えられ、ロッド側室31rからの作動液の排出を禁止する。ACC用バルブ51はパイロット圧が導入されず、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの作動液の供給を禁止する。制御弁61はパイロット圧が導入されて、ヘッド側室31hから切換弁57への流れを許容する。切換弁57は、図2の左側の位置に切り換えられ、ポンプ41からロッド側室31rへの流れを許容するとともに、ヘッド側室31hからタンク39への流れを許容する。従って、ピストン33は、ポンプ41の圧力によって後退する。
また、制御装置13は、適宜な時期にポンプ41からアキュムレータ43へ作動液を供給してアキュムレータ43を蓄圧する。具体的には、例えば、ACC用バルブ51にパイロット圧力が導入されておらず、切換弁57がポンプ41から射出シリンダ27への作動液の供給を禁止している状態で、電動機47が駆動されることによって、ポンプ41から流路45Aを介してアキュムレータ43に作動液が供給される。
(ポンプによるプランジャ前進)
図7の「8」に示すように、射出装置9は、ポンプ41からヘッド側室31hへ作動液を供給してピストン33を前進させることもできる。この動作は、例えば、鋳造サイクルとは別に、入力装置17に対して所定の操作を行ってピストン33を前進させるときに行われる。
具体的には、サーボバルブ55は図2の左側の位置に切り換えられ、ロッド側室31rからタンク39への作動液の排出を許容する。ACC用バルブ51はパイロット圧が導入されず、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの作動液の供給を禁止する。制御弁61はパイロット圧が導入されていてもよいし、導入されていなくてもよく、いずれにせよ切換弁57からヘッド側室31hへの流れを許容する。切換弁57は、図2の右側の位置に切り換えられ、ポンプ41からヘッド側室31hへの流れを許容する。
なお、上記では、ロッド側室31rの作動液は、サーボバルブ55を介してタンク39へ排出されるが、サーボバルブ55を介してヘッド側室31hへ排出されてもよい。また、チェックバルブ59をパイロット圧によって開く構成とし、チェックバルブ59及び切換弁57を介してロッド側室31rからタンク39へ作動液を排出してもよい。
(保圧工程の詳細)
図8は、昇圧工程及び保圧工程において制御装置13が実行する昇圧・保圧処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップST21~ST23は、昇圧工程に対応している。具体的には、ステップST21では、制御装置13(昇圧制御部13e)は、昇圧工程を開始する。ステップST22では、制御装置13(昇圧制御部13e)は、昇圧完了条件が満たされたか否か判定する。図8では、昇圧完了条件として、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値に基づく射出圧力が鋳造圧力Peに到達したか否かの判定を例示している。そして、制御装置13は、否定判定のときは昇圧を継続し、肯定判定のときはステップST23に進む。ステップST23では、サーボバルブ55を図2の中央の位置に切り換えて、ロッド側室31rからの作動液の排出を禁止して、昇圧工程を完了する。別の観点では、保圧工程を開始する。
ここで、保圧工程では、基本的に、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの液圧の付与が継続されるとともに、ロッド側室31rからの作動液の排出は禁止される。従って、理論上は、アキュムレータ43の圧力と、サーボバルブ55によってロッド側室31rからの作動液の排出を禁止したときのロッド側室31rの圧力とによって実現された鋳造圧力Peが維持される。
しかし、現実には、作動液のリークによって、保圧中にプランジャ23から溶湯に付与する圧力が変動する可能性がある。例えば、ロッド側室31r側でリークが生じてロッド側室31rの圧力が低下すると、射出圧力は上昇して鋳造圧力Peよりも大きくなる。逆に、ヘッド側室31h側でリークが生じてアキュムレータ43の圧力が低下すると、射出圧力は低下して鋳造圧力Peよりも小さくなる。そこで、ステップST24~ST27に示すように、ポンプ41からロッド側室31r又はヘッド側室31hへ作動液を補給する処理がなされてよい。
ステップST24では、制御装置13(保圧制御部13f)は、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値に基づく射出圧力の検出値が所定の許容上限を上回ったか否か判定する。そして、保圧制御部13fは、肯定判定のときはステップST25に進み、否定判定のときはステップST26に進む。許容上限は、鋳造圧力Peよりも大きい圧力であり、入力装置17に対する操作によって設定されてもよいし、保圧制御部13fによって鋳造圧力Peに基づいて設定されてもよい。
ステップST25では、保圧制御部13fは、ポンプ41の液圧を一時的にロッド側室31rに付与して、ロッド側室31rの圧力を上昇させるように液圧供給部77を制御する。これにより、射出圧力が低下する。より具体的には、保圧制御部13fは、図7の「6」の行の括弧内に示すように、切換弁57を図2の左側の位置に切り換えて、ポンプ41からロッド側室31rへの流れを許容する。なお、ヘッド側室31hにつながっている流路45Hとタンク39とが切換弁57によって接続されるが、ヘッド側室31hからタンク39への作動液の排出は、パイロット圧が導入されていない制御弁61によって禁止される。
ロッド側室31rの圧力を上昇させる動作は、例えば、所定の時間だけ行われるものであってもよいし、射出圧力の検出値が所定の条件を満たすまで行われるものであってもよい。所定の条件は、射出圧力の検出値が許容上限を下回ることであってもよいし、射出圧力の検出値が鋳造圧力Pe(又はこれに対して所定の補正量を加味した圧力)まで低下することであってもよい。保圧制御部13fは、ロッド側室31rの圧力を上昇させた後、切換弁57を図2の中央の位置(ポンプ41から射出シリンダ27への流れを禁止する位置)に戻し、ステップST28に進む。
ステップST26では、保圧制御部13fは、ロッド圧センサ69及びヘッド圧センサ67の検出値に基づく射出圧力の検出値が所定の許容下限を下回ったか否か判定する。そして、保圧制御部13fは、肯定判定のときはステップST27に進み、否定判定のときはステップST28に進む。許容下限は、鋳造圧力Peよりも小さい圧力であり、入力装置17に対する操作によって設定されてもよいし、保圧制御部13fによって鋳造圧力Peに基づいて設定されてもよい。
ステップST27では、保圧制御部13fは、ポンプ41の液圧を一時的にヘッド側室31hに付与して、ヘッド側室31hの圧力を上昇させるように液圧供給部77を制御する。これにより、射出圧力が上昇する。より具体的には、保圧制御部13fは、図7の「6」の行の括弧内に示すように、切換弁57を図2の右側の位置に切り換えて、ポンプ41からヘッド側室31h(アキュムレータ43)への流れを許容する。なお、ロッド側室31rにつながっている流路45Gとタンク39とが切換弁57によって接続されるが、ロッド側室31rからタンク39への作動液の排出は、チェックバルブ59によって禁止される。
ヘッド側室31hの圧力を上昇させる動作は、例えば、所定の時間だけ行われるものであってもよいし、射出圧力の検出値が所定の条件を満たすまで行われるものであってもよい。所定の条件は、射出圧力の検出値が許容下限を上回ることであってもよいし、射出圧力の検出値が鋳造圧力Pe(又はこれに対して所定の補正量を加味した圧力)まで上昇することであってもよい。保圧制御部13fは、ヘッド側室31hの圧力を上昇させた後、切換弁57を図2の中央の位置(ポンプ41から射出シリンダ27への流れを禁止する位置)に戻し、ステップST28に進む。
ステップST28では、保圧制御部13fは、保圧終了条件が満たされたか否か判定し、否定判定のときはステップST24に戻り、肯定判定のときは保圧を終了する。保圧終了条件は、例えば、所定の時点(例えば保圧工程の開始時点)から所定の時間(例えば溶湯が凝固するのに十分な時間)が経過したこととされてよい。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ27と、ランアラウンド回路53と、タンク39と、サーボバルブ55とを有している。射出シリンダ27は、成形材料を金型101内へ押し出すプランジャ23を駆動する。ランアラウンド回路53は、射出シリンダ27のピストン33の前進に伴ってロッド側室31rから排出される作動液をヘッド側室31hへ流入させる。タンク39は、ピストン33の前進に伴ってロッド側室31rから排出される作動液を受け入れる。サーボバルブ55は、ランアラウンド回路53に設けられているとともにタンク39に接続されている。サーボバルブ55は、第1状態(図2の右側の位置)と第2状態(図2の左側の位置)との間で切換可能である。第1状態では、サーボバルブ55は、ロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れを許容しつつ、ロッド側室31rからタンク39への流れを禁止する。第2状態では、サーボバルブ55は、ロッド側室31rからヘッド側室31hへの流れを禁止しつつ、ロッド側室31rからタンク39への流れを許容する。かつサーボバルブ55は、第1状態及び第2状態のそれぞれでロッド側室31rから排出される作動液の流量を制御可能である。
従って、ランアラウンド回路53のON及びOFF、ロッド側室31rとタンク39との連通及び遮断、並びにロッド側室31rから排出される作動液の流量の制御が1つのサーボバルブ55によって実現される。その結果、例えば、構成の簡素化、制御の簡素化、工程間の切換え(例えば減速工程から昇圧工程への切換え)の円滑化、及び/又はコスト削減が期待される。
本実施形態では、サーボバルブ55は、上記第1状態と、上記第2状態と、ロッド側室31rからヘッド側室31h及びタンク39のいずれへの流れも禁止する第3状態(図2の中央の位置)との間で切換可能である。
この場合、例えば、サーボバルブ55によって実現できる動作が増加し、上述した簡素化の効果が向上する。例えば、サーボバルブ55は、昇圧工程においてロッド側室31rの圧力が低下する過程でロッド側室31rからの作動液の排出を禁止して、任意の鋳造圧力Peを実現することに利用可能である。
本実施形態では、サーボバルブ55は、中空状のバルブ本体(バルブスリーブ71)と、バルブスリーブ71内を移動可能な弁体(スプール73)と、を有している。バルブスリーブ71は、ロッド側室31rに通じているロッド側ポート75Rと、ヘッド側室31hに通じているヘッド側ポート75Hと、タンク39に通じているタンク側ポート75Tと、を有している。スプール73は、ロッド側ポート75Rとヘッド側ポート75Hとを連通するとともにロッド側ポート75Rとタンク側ポート75Tとを遮断する位置と、ロッド側ポート75Rとヘッド側ポート75Hとを遮断するとともにロッド側ポート75Rとタンク側ポート75Tとを連通する位置と、の間で移動可能である。
この場合、例えば、スプール73のバルブスリーブ71に対する移動だけで、ロッド側室31rからの作動液の排出先の切換えと、流量制御との双方を行うことができ、簡素化の効果が向上する。
本実施形態では、サーボバルブ55は、バルブ本体としてのバルブスリーブ71と、弁体としてのスプール73とを有しているスプールバルブである。ロッド側ポート75R、ヘッド側ポート75H及びタンク側ポート75Tは、バルブスリーブ71の軸回りの内周面に開口している。スプール73は、バルブスリーブ71内を軸方向に摺動する。ヘッド側ポート75Hは、ロッド側ポート75Rに対してスプール73の移動方向の一方側(図3の左側)に位置している。タンク側ポート75Tは、ロッド側ポート75Rに対してスプール73の移動方向の他方側(図3の右側)に位置している。スプール73は、大径部73bと、小径部73d及び73eとを有している。大径部73bは、バルブスリーブ71に対して摺動する径を有しており、ロッド側ポート75Rの全体を塞ぐことが可能である。小径部73dは、大径部73bに対して前記一方側(図3の左側)に位置しており、大径部73bよりも径が小さく、ロッド側ポート75R及びヘッド側ポート75Hに対向することによって両者を連通可能である。小径部73eは、大径部73bに対して前記他方側(図3の右側)に位置しており、大径部73bよりも径が小さく、ロッド側ポート75R及びタンク側ポート75Tに対向することによって両者を連通可能である。
この場合、例えば、ロッド側ポート75Rからバルブスリーブ71に流入した作動液の2つの行先(ヘッド側ポート75H及びタンク側ポート75T)がいずれもロッド側ポート75Rに隣接している。その結果、例えば、構成を簡素化したり、作動液の行先の切換えを迅速化したりできる。また、例えば、本実施形態とは異なり、ヘッド側ポート75H及びタンク側ポート75Tを塞ぐことが可能な2つの大径部の間に、ロッド側ポート75Rと他のポートとを連通する1つの小径部が設けられている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、作動液の流れを規制する大径部がロッド側ポート75Rに直接的に作用する。その結果、例えば、ロッド側室31rから排出される作動液の流量制御の精度向上が期待される。
また、本実施形態では、射出装置9は、チェックバルブ56を有している。チェックバルブ56は、ランアラウンド回路53内で、ヘッド側室31hとサーボバルブ55との間に位置しており、ヘッド側室31hからサーボバルブ55への流れを禁止し、サーボバルブ55からヘッド側室31hへの流れを許容する。
この場合、例えば、ランアラウンド回路53をONにしている状態でアキュムレータ43からヘッド側室31hに作動液を供給しているときに、ヘッド側室31hからロッド側室31rへの流れが生じる蓋然性が低減される。
また、本実施形態では、射出装置9は、射出制御部13hと、昇圧制御部13eとを有している。射出制御部13hは、少なくとも低速射出工程及び高速射出工程の期間中、前記第1状態(ランアラウンド回路53がONされる状態)となるようにサーボバルブ55を制御する。また、昇圧制御部13eは、少なくとも昇圧工程の期間中、前記第2状態(ロッド側室31rからタンク39への流れが許容される状態)となるようにサーボバルブ55を制御する。
この場合、ピストン33の移動距離が相対的に長い低速射出工程及び高速射出工程においてランアラウンド回路53によって作動液の必要量を低減できる。その一方で、昇圧工程においては、ロッド側室31rとヘッド側室31hとの圧力差を大きくして、昇圧を速やかに行うことができる。
また、本実施形態では、射出装置9は、液圧供給部77と、保圧制御部13fとを有している。液圧供給部77は液圧源(ポンプ41)を含んでいる。保圧制御部13fは、保圧工程の期間中一時的に(ステップST24で肯定判定がなされたときに)、ポンプ41からロッド側室31rへ液圧を付与するように液圧供給部77を制御する。
この場合、例えば、保圧工程中においてロッド側室31rから作動液がリークしてロッド側室31rの圧力が低下し、ひいては射出圧力が鋳造圧力Peよりも大きくなったときに、ロッド側室31rの圧力を上昇させ、射出圧力を鋳造圧力Peに近づけることができる。その結果、ダイカスト品の品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、射出装置9は、アキュムレータ43と、アキュムレータ43からヘッド側室31hへの作動液の流れを制御するACC用バルブ51とを有している。保圧制御部13fは、保圧工程の期間中、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ継続的に液圧が付与されるようにACC用バルブ51を制御し、かつ保圧工程の期間中一時的に(ステップST26で肯定判定がなされたとき)、液圧供給部77のポンプ41からヘッド側室31hへ液圧を付与するように液圧供給部77を制御する。
この場合、例えば、保圧工程中においてヘッド側室31h(アキュムレータ43)から作動液がリークしてヘッド側室31hの圧力が低下し、ひいては射出圧力が鋳造圧力Peよりも小さくなったときに、ヘッド側室31hの圧力を上昇させ、射出圧力を鋳造圧力Peに近づけることができる。その結果、ダイカスト品の品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、射出装置9は、準備制御部13aを有している。準備制御部13aは、射出開始前に液圧源(ポンプ41)からロッド側室31rへ液圧を付与して射出開始時のロッド側室31rの圧力をタンク39の圧力よりも高くしておくように液圧供給部77を制御する。
従って、既述のようにジャンピングが生じる蓋然性が低減される。また、保圧工程中にロッド側室31rに液圧を付与する液圧供給部77によってジャンピングが生じる蓋然性を低減する動作がなされることから、構成が簡素化される。
(変形例)
実施形態では、保圧工程は、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ継続的に圧力が付与されることによって実現された。しかし、保圧工程は、ポンプ41からヘッド側室31hへ継続的に圧力が付与されることによって実現されてもよい。
図5の「液圧供給部」の項目においては、そのような変形例における液圧供給部の動作が点線で示されている。図中、「P→H」は、ポンプ41からヘッド側室31hへ液圧が付与されていることを示している。「C」は、上記液圧の付与がなされていないことを示している。
図5の例では、保圧工程中の任意の時点t6までは、実施形態と同様の動作が行われる。時点t6は、保圧開始時点(昇圧完了時点、時点t5)であってもよいし、当該時点よりも後の時点(図示の例)であってもよい。また、時点t6は、例えば、入力装置17に対する操作によって設定されてよい。
そして、時点t6以後、保圧工程が完了するまでは、ポンプ41からヘッド側室31hへ継続的に作動液が供給される。これにより、ヘッド側室31hの圧力はポンプ圧となる。アキュムレータ43は、ポンプ41によって蓄圧された後、低速射出から昇圧工程までの期間中に作動液を射出シリンダ27へ放出しているから、ポンプ圧よりも低くなっている。従って、ポンプ41からヘッド側室31hへ液圧を付与して保圧を行うことによって、アキュムレータ43からヘッド側室31hへ液圧を付与する場合に比較して、高い鋳造圧力を得ることができる。
保圧工程においてポンプ41からヘッド側室31hへ液圧を付与するときの液圧装置29の状態は、例えば、ステップST27においてヘッド側室31hの圧力を上昇させるときの状態と同じ又は類似する状態とされてよい。具体的には、サーボバルブ55は図2の中央の位置(ロッド側室31rからの作動液の排出を禁止する位置)とされてよい。ただし、ロッド側室31rの圧力がタンク圧とされる態様に本変形例が適用されてもよい。ACC用バルブ51は、例えば、ステップST27とは異なり、パイロット圧が導入されない状態とされてよい。ただし、ステップST27と同様に導入されてもよい。制御弁61は、パイロット圧が導入されて、切換弁57からヘッド側室31hへの流れを許容している。切換弁57は図2の右側の位置に切り換えられて、ポンプ41からヘッド側室31hへの流れを許容している。
なお、実施形態の動作と、変形例の動作とは、入力装置17に対する操作によって選択可能であってもよい。
以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。溶湯は成形材料の一例である。バルブスリーブ71はバルブ本体の一例である。スプール73は弁体の一例である。小径部73dはヘッド側小径部の一例である。小径部73eはタンク側小径部の一例である。ポンプ41は液圧源の一例である。
本開示に係る技術は、上述した実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。
サーボバルブは、スプールバルブに限定されない。例えば、サーボバルブは、弁体がバルブ本体に対して回転するロータリーバルブであってもよいし、ポートの開口方向において弁体とポートとの距離が変化するものであってもよい。また、サーボバルブは、ロッド側室からヘッド側室及びタンクのいずれへの流れも禁止する第3状態に切換可能でなくてもよい。第1状態と第2状態との切り換えの間に、ロッド側室からヘッド側室及びタンクのいずれへの流れも許容する状態が生じてもよい。
実施形態に示した液圧装置の構成は一例に過ぎない。流路及びバルブの構成は、図示した以外にも種々可能である。また、射出シリンダは、増圧式のシリンダとされてもよい。アキュムレータは、射出用と昇圧用との2種のアキュムレータを含んでいてもよい。液圧供給部は、ポンプとバルブとの組み合わせに限定されず、例えば、液圧シリンダと、液圧シリンダのロッドを駆動して液圧シリンダから作動液を送出させる電動機とを含むものであってもよい。保圧工程中のロッド圧及びヘッド圧を上昇させる動作は、必要時間だけポンプを駆動するとともに、チェック弁によって射出シリンダからポンプへの逆流を防止するものであってもよい。