<射出装置の概略構成>
図1は、本開示の実施形態に係る射出装置1を有するダイカストマシンDC1の要部構成を示す模式図である。なお、以下では、紙面の左右方向(後述するプランジャ5の前後進方向)を前後方向ということがある。
ダイカストマシンDC1は、金型101内(キャビティ107)に成形材料としての溶湯(溶融状態の金属材料)を射出し、その溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。
具体的には、ダイカストマシンDC1は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う不図示の型締装置と、型締めされた金型101の内部に溶湯を射出する射出装置1と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105から押し出す不図示の押出装置と、これらを制御する制御装置とを有している。射出装置1以外の構成は、基本的に従来の種々の構成と同様でよく、説明は省略する。
射出装置1は、例えば、キャビティ107に連通するスリーブ3と、スリーブ3内の溶湯をキャビティ107へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ7と、射出シリンダ7へ作動液を供給する液圧装置9と、液圧装置9を制御する制御装置11とを有している。射出装置1も、制御装置11の構成(別の観点では動作)を除いては、従来の種々の構成を適用可能である。射出装置1の構成は、例えば、以下のとおりである。
スリーブ3は、例えば、固定金型103に挿通された筒状部材である。プランジャ5は、スリーブ3内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。スリーブ3の上面に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給され、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ107に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯がキャビティ107に射出される。
射出シリンダ7は、例えば、シリンダ部13と、シリンダ部13の内部を摺動可能なピストン15と、ピストン15に固定され、シリンダ部13から延び出るピストンロッド17とを有している。
シリンダ部13は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体であり、その径は長手方向において一定である。シリンダ部13の内部は、ピストン15により、ピストンロッド17が延び出る側のロッド側室13rと、その反対側のヘッド側室13hとに区画されている。ロッド側室13r及びヘッド側室13hに選択的に作動液が供給されることにより、ピストン15はシリンダ部13内を前後方向に摺動する。
射出シリンダ7は、例えば、プランジャ5に対してその後方に同軸的に配置されている。そして、ピストンロッド17は、プランジャ5にカップリング(符号省略)を介して連結されている。シリンダ部13は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、ピストン15のシリンダ部13に対する移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進又は後退する。
なお、図示の例では、射出シリンダ7は、ピストンとしてピストン15のみを有する単胴式とされているが、射出シリンダ7は、いわゆる増圧式のものとされてもよい。すなわち、特に図示しないが、射出シリンダ7は、シリンダ部13のヘッド側室13hに通じる増圧シリンダ部と、増圧シリンダ部内を摺動可能な増圧ピストンとを有していてもよい。増圧ピストンは、ヘッド側室13hからの圧力を受ける受圧面積に対して、その反対側の受圧面積が大きく、これにより、増圧作用を奏する。
液圧装置9は、例えば、作動液を貯留するタンク19と、タンク19の作動液を送出可能なポンプ21と、蓄圧された作動液を放出可能なアキュムレータ23と、これら及び射出シリンダ7を互いに接続する複数の流路(第1流路25A〜第3流路25C)と、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数のバルブ(蓄圧制御バルブ27、イン側バルブ28及び流量制御弁29)とを有している。なお、図1では、図示の都合上、2個所にタンク19を示している。実際には、これらは、一のタンク19に統合されていてよい。
タンク19は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク19は、ポンプ21及びアキュムレータ23を介して射出シリンダ7に作動液を供給し、また、射出シリンダ7から排出された作動液を収容する。
ポンプ21は、不図示の電動機によって駆動され、作動液を送出する。ポンプは、ロータリポンプ、プランジャポンプ、定容量ポンプ、可変容量ポンプ、1方向ポンプ、双方向(2方向)ポンプ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ21を駆動する電動機も、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ21(電動機)は、ダイカストマシンDC1の稼働中において常時駆動されてもよいし、必要に応じて駆動されてもよい。ポンプ21は、例えば、アキュムレータ23に対する作動液の供給(アキュムレータ23の蓄圧)、及び、射出シリンダ7に対する作動液の供給に寄与する。
アキュムレータ23は、適宜な方式のものとされてよく、例えば、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式又はプラダ式のものである。図示の例では、アキュムレータ23は、シリンダ式のものであり、特に符号を付さないが、シリンダ部と、シリンダ部を液体室と気体室とに区画するピストンとを有している。アキュムレータ23は、液体室に作動液が供給されることによって蓄圧され、その蓄圧された比較的高圧の作動液を射出シリンダ7に放出可能である。
第1流路25Aは、ポンプ21とアキュムレータ23(その液体室)とを接続している。これにより、例えば、ポンプ21からアキュムレータ23へ作動液を供給してアキュムレータ23を蓄圧することができる。
第2流路25Bは、アキュムレータ23(その液体室)とヘッド側室13hとを接続している。これにより、例えば、アキュムレータ23からヘッド側室13hへ作動液を供給して、ピストン15を前進させることができる。
第3流路25Cは、ロッド側室13rとタンク19とを接続している。これにより、例えば、ピストン15の前進に伴ってロッド側室13rから排出される作動液をタンク19に収容することができる。
なお、図1では、液圧装置9が有する流路のうち、本実施形態の特徴に関わる代表的な流路を例示しており、実際には、液圧装置9は不図示の他の種々の流路を有している。例えば、液圧装置9は、ピストン15を後退させるために、ポンプ21からロッド側室13rに作動液を供給する流路を有している。
図示した若しくは不図示の複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。複数の流路は、適宜に一部が共通化されてよい。例えば、図1の例では、第1流路25A及び第2流路25Bは、アキュムレータ23側の一部が共通化されている。
蓄圧制御バルブ27は、第1流路25Aに設けられており、例えば、ポンプ21からアキュムレータ23への作動液の供給の許容及び禁止に寄与する。蓄圧制御バルブ27は、例えば、方向制御弁により構成されており、より具体的には、例えば、スプリング及び電磁石によって駆動される4ポート3位置切換弁により構成されている。蓄圧制御バルブ27は、例えば、一の位置(例えば中立位置)では、アキュムレータ23と、タンク19及びポンプ21との間の流れを禁止し、他の一の位置では、ポンプ21からアキュムレータ23への流れを許容するとともにアキュムレータ23からタンク19への流れを禁止し、さらに他の一の位置では、ポンプ21からアキュムレータ23への流れを禁止するとともにアキュムレータ23からタンク19への流れを許容する。
イン側バルブ28は、第2流路25Bに設けられており、例えば、アキュムレータ23からヘッド側室13hへの作動液の供給の許容及び禁止に寄与する。イン側バルブ28は、例えば、パイロット式の逆止弁により構成されており、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ23からヘッド側室13hへの作動液の流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを禁止する。
流量制御弁29は、第3流路25Cに設けられており、例えば、ロッド側室13rからタンク19への作動液の流量の制御に寄与する。この流量の制御により、ピストン15の前進速度が制御される。すなわち、流量制御弁29は、いわゆるメータアウト回路を構成している。流量制御弁29は、例えば、圧力変動があっても流量を一定に保つことができる圧力補償付流量調整弁により構成されている。また、流量制御弁29は、例えば、サーボ機構の中で使用され、入力信号に応じて流量を無段階に変調できるサーボバルブによって構成されている。
なお、メータアウト回路に加えてメータイン回路が設けられてよい。例えば、特に図示しないが、アキュムレータ23とヘッド側室13hとの間に、流量制御弁29と同様の構成の流量制御弁が設けられてもよい。イン側バルブ28が流量を調整する機能を有していてもよい。
図1では、液圧装置9の有するバルブのうち、本実施形態の特徴に関わる代表的なバルブを例示しており、実際には、液圧装置9は不図示の他の種々のバルブを有している。例えば、液圧装置9は、ポンプ21からロッド側室13rへの作動液の供給を許容及び禁止するためのバルブを有している。また、例えば、液圧装置9は、ポンプ21からヘッド側室13hへ作動液を供給可能に流路及びバルブを有していてもよい。
制御装置11は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置等を含んで構成されている。制御装置11は、予め記憶しているプログラムに従って、入力された信号に基づいて各部を制御するための制御信号(制御指令)を出力する。なお、制御装置11は、射出装置1の制御装置として構成されていてもよいし、射出装置1の動作だけでなく、不図示の型締装置及び不図示の押出装置等の動作も制御する、ダイカストマシンDC1の制御装置として構成されていてもよい。また、そのハードウェアは、複数の位置(複数の筐体)に分散されていてもよいし、一纏まりにされていてもよい。
制御装置11に信号を入力するのは、例えば、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置33、アキュムレータ23の圧力(ACC圧)を検出するACC用圧力センサ34、ヘッド側室13hの圧力(ヘッド圧)を検出するヘッド用圧力センサ36、ロッド側室13rの圧力(ロッド圧)を検出するロッド用圧力センサ38、及びプランジャ5(ピストンロッド17)の位置を検出する位置センサ37である。制御装置11が信号を出力するのは、例えば、オペレータに情報を表示する表示装置35、ポンプ21を駆動する不図示の電動機(厳密にはそのドライバ)、各種のバルブ(例えば図示したバルブ又は図示したバルブに対するパイロット圧を制御するバルブ)である。
入力装置33及び表示装置35は、適宜な構成とされてよく、一部又は全部が一体的に構成されていてもよい。例えば、入力装置33及び表示装置35は、タッチパネルと機械スイッチとを含んで構成されてよい。入力装置33は、例えば、低速射出速度、高速射出速度及び鋳造圧力等の成形条件を設定するための操作、並びに成形サイクルの開始を射出装置1に指示するための操作を受け付ける。
ACC用圧力センサ34は、例えば、アキュムレータ23の液体室の圧力を検出する。なお、ACC用圧力センサ34は、アキュムレータ23の気体室の圧力を検出するものとされてもよい。ACC用圧力センサ34は、図示のように液体室の圧力を直接的に検出するように設けられていてもよいし、図示とは異なり、液体室の圧力と同等の圧力を有する流路の圧力を検出するように設けられていてもよい。ACC用圧力センサ34の構成は、公知の種々のものとされてよい。
ヘッド用圧力センサ36は、図示のようにヘッド側室13hの圧力と同等の圧力を有する流路の圧力を検出するように設けられていてもよいし、図示とは異なり、ヘッド側室13hの圧力を直接的に検出するように設けられていてもよい。ヘッド用圧力センサ36の構成は、公知の種々のものとされてよい。
ロッド用圧力センサ38は、図示のようにロッド側室13rの圧力と同等の圧力を有する流路の圧力を検出するように設けられていてもよいし、図示とは異なり、ロッド側室13rの圧力を直接的に検出するように設けられていてもよい。ロッド用圧力センサ38の構成は、公知の種々のものとされてよい。
位置センサ37は、例えば、シリンダ部13に対するピストンロッド17の位置を検出し、プランジャ5の位置を間接的に検出する。位置センサ37の構成は適宜なものとされてよい。例えば、位置センサ37は、ピストンロッド17に固定的に設けられ、ピストンロッド17の軸方向に延びる不図示のスケール部とともに磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成するものであってもよいし、ピストンロッド17に固定された部材との距離を計測するレーザー測長器によって構成されてもよい。
なお、位置センサ37単体、又は位置センサ37と制御装置11との組み合わせは、計時しつつ、位置を繰り返し検出することによって、位置の微分値であるプランジャ5の速度を取得することが可能である。従って、位置センサ37は、実質的に速度を検出可能な速度センサと捉えられてもよい。
<射出装置の基本動作の概略>
図2は、射出装置の基本動作の一例の概略を説明するための図である。
同図において、横軸は時間tを示し、縦軸は射出速度V、射出圧力P、及びプランジャ5の位置Dを示している。射出速度Vは、プランジャ5の速度である。射出圧力Pは、プランジャ5が溶湯に付与する圧力である。位置Dは、ここでは、射出開始時点(時点t0)の位置を基準としたプランジャ5の位置であり、別の観点では、射出開始時点からのプランジャ5の移動距離Dであり、ひいては、射出速度Vの積分値である。図中、線Ln1は射出速度Vの経時変化を示し、線Ln2は射出圧力Pの経時変化を示し、線Ln3は位置Dの経時変化を示している。
射出装置1は、例えば、概観すると、低速射出(概ねt0〜t2)、高速射出(概ねt2〜t3)、及び増圧(昇圧、概ねt3又はt4〜)を順に行う。これらの工程の動作は、例えば、以下のとおりである。
(低速射出)
不図示の型締装置によって固定金型103及び移動金型105の型締めが完了し、溶湯がスリーブ3に供給されると、制御装置11は、プランジャ5の前進を開始し(時点t0)、比較的低速の低速射出速度VL(時点t1〜t2)でプランジャ5を前進させる。これにより、溶湯による空気の巻き込みが抑制されつつ、スリーブ3内の溶湯がキャビティ107へ向かって押し出されていく。低速射出速度VLは、適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s未満である。一般には、0.2〜0.3m/s程度が多く、0.1m/s程度とされることもある。また、低速射出速度VLは、例えば、一定の値である。ただし、適宜な変速制御がなされてもよい。低速射出において、射出圧力は、射出速度が比較的低速であることから、比較的低圧(低速射出圧力PL)となる。
上記のような動作のために、制御装置11は、具体的には、例えば、イン側バルブ28への閉じるパイロット圧力の導入を停止することにより、アキュムレータ23から第2流路25Bを介してヘッド側室13hへ作動液を供給する。これにより、ピストン15は前進し、ひいてはプランジャ5が前進する。この際、ピストン15の前進に伴って容積が縮小するロッド側室13rの作動液は、例えば、第3流路25Cを介してタンク19に排出される。プランジャ5の速度は、メータアウト回路(流量制御弁29)によって制御される。メータイン回路が併用されてもよいことは既に述べた通りである。
なお、ロッド側室13rから排出される作動液は、不図示の流路(ランアラウンド回路)を介してヘッド側室13hへ還流され、メータアウト回路(流量制御弁29)は、この還流される流量を制御してもよい。
(高速射出)
プランジャ5が所定の高速切換位置に到達すると(時点t2)、制御装置11は、比較的高速の高速射出速度VHでプランジャ5を前進させる。これにより、例えば、溶湯の凝固に遅れずに速やかに溶湯がキャビティ107に充填される。高速射出速度VHは適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s以上である。高速射出速度VHは、例えば、一定の値である。ただし、適宜な変速制御がなされてもよい。高速射出において、射出圧力は、射出速度が比較的高速であることから、低速射出圧力PLよりも高い高速射出圧力PHとなる。
上記のような動作のために、制御装置11は、具体的には、例えば、低速射出から引き続いてアキュムレータ23からヘッド側室13hへの作動液の供給を継続しつつ、メータアウト回路の流量制御弁29の開度を大きくする。ロッド側室13rの作動液は、低速射出と同様に、タンク19に排出されてもよいし、不図示の流路を介してヘッド側室13hに還流されてもよい。プランジャ5の速度は、メータアウト回路(流量制御弁29)によって制御される。メータイン回路が併用されてもよいことは既に述べた通りである。
(減速、増圧及び保圧)
高速射出の結果、キャビティ107に溶湯が概ね充填されると(時点t3)、溶湯の圧力は上昇し、プランジャ5は減速する。なお、適宜な時期にメータアウト回路(流量制御弁29)によって減速制御が行われてもよい。
その後、プランジャ5は(略)停止し(時点t4)、溶湯の圧力は上昇して鋳造圧力(終圧)に到達する(増圧工程)。そして、鋳造圧力が維持される(保圧工程)。なお、鋳造圧力は、ロッド側室13rとヘッド側室13hとの圧力差によってプランジャ5に加えられる力とプランジャ5が溶湯から受ける反力とが釣り合うときの溶湯の圧力である。このとき、ロッド側室13rの圧力は、タンク圧とされていてもよいし、増圧工程中の適宜な時期にロッド側室13rからの作動液の排出が禁止されることによって適宜な圧力とされていてもよい。また、ヘッド側室13hの圧力は、図1の例(単胴式の射出シリンダ7)では、アキュムレータ23の圧力と同等であり、増圧式の射出シリンダでは、アキュムレータ23の圧力が増圧ピストンによって適宜に増圧されたものと同等である。
そして、溶湯が凝固すると、不図示の型締装置による型開き、不図示の押出装置によるダイカスト品の金型からの押し出し、及び、ロッド側室13rに作動液が供給されることによるプランジャ5の後退等が行われる。
<速度制御のためのサーボ構成>
上述のように、少なくとも射出開始から高速射出の終了までにおいては、流量制御弁29による速度制御がなされる。この速度制御は、基本的に(後述する一部の期間を除いて)フィードバック制御とされる。フィードバック制御は、例えば、直接的には位置フィードバック制御とされ、実質的に速度フィードバック制御がなされる。具体的には、以下のとおりである。
図3(a)は、制御装置11が生成する、目標速度に係る情報を示す概念図である。
制御装置11は、入力装置33を介して、オペレータによる目標速度の設定を受け付ける。目標速度は、例えば、プランジャ5の位置Dに対して設定される。具体的には、例えば、制御装置11は、プランジャ5の複数の位置Dと、各位置Dにおける目標速度との入力を受け付ける。これにより、プランジャ5の位置Dと目標速度とを対応付けた情報が生成される。
図3(a)の紙面左側に示す目標速度テーブルTb1は、上記のようにして生成されたプランジャ5の位置Dと目標速度とを対応付けた情報の一例を示している。目標速度テーブルTb1では、プランジャ5の複数の位置D0〜Diと、各位置における目標速度V0〜Viとが対応付けられている。目標速度テーブルTb1は、例えば、RAM及び/又は外部記憶装置に保持される。
なお、位置D0は、例えば、射出の開始時の位置であり、このときの速度V0は0である。オペレータが目標速度を設定する位置Dの数(i)は、例えば、オペレータによって適宜に設定される。また、位置Dと次の位置Dとの間の速度は、制御装置11によって適宜な補間計算によって特定されてよい。速度が一定となる位置範囲は、例えば、一の位置Dと次の位置Dとで同一の目標速度が設定されることによって、その2つの位置Dの間に設定されてよい。
次に、制御装置11は、位置Dに対する目標速度の情報(目標速度テーブルTb1)を経過時間に対する目標速度の情報に変換する。図3(a)の紙面右側に示す目標位置テーブルTb2は、そのような変換された情報の一例を示している。目標位置テーブルTb2では、経過時間(時点tt0〜ttm)と、各時点における目標位置Dt0〜Dtmとが対応付けられている。目標位置テーブルTb2は、例えば、RAMに保持される。
目標速度テーブルTb1から目標位置テーブルTb2への変換は、従来と同様に、適宜に行われてよい。例えば、まず、制御装置11は、目標速度テーブルTb1に基づいて、刻み幅が比較的短い複数の位置D毎の目標速度を補間計算する。そして、制御装置11は、その補間データの目標速度を比較的短い所定の時間刻み((時点tt0〜ttmの時間刻み以下)を乗じて積算していく。これにより、実質的に、経過時間(時点tt0〜ttm)毎に、射出開始時からその経過時間までの目標速度の積分値が算出される。すなわち、経過時間毎の目標位置が算出される。この積算の過程では、積算値(目標位置)が補間データの位置Dに到達する度に、積算すべき目標速度を変える。
なお、速度V0(V=0)からの立ち上がりについては、例えば、速度V0とV1との間の補間(例えば1次関数による補間)によって得られた速度Vに基づいて目標位置が特定されてよい。また、目標速度テーブルTb1から目標位置テーブルTb2への変換は、上記のような近似計算ではなく、式によって求められてもよい。
制御開始の時点tt0は、図2における射出開始の時点t0に対応している。制御終了の時点ttmは、射出の速度制御の終了に対応しており、例えば、図2の時点t3、時点t4又はその間の適宜な時点に対応している。なお、成形サイクル中の制御では、経過時間が時点ttmに到達したか否かに関わらずに、所定の要件が満たされたこと(例えば射出圧力が所定の圧力に到達したこと)を条件として速度制御が終了され、増圧のための圧力制御が開始されてもよい。時点tt0〜ttmの時間刻みは、例えば、射出工程に亘って一定である。また、時間刻みの長さは、射出波形(図2の線Ln1の波形)が好適に実現されるように適宜に設定されてよいが、例えば、1msである。
図3(b)は、流量制御弁29のフィードバック制御に係る構成を示すブロック図である。
このフィードバック系は、既述の位置センサ37及び流量制御弁29に加えて、制御装置11内に構成されるFB制御部39と、FB制御部39からの制御信号CS1を適宜な制御出力CS2に変換して流量制御弁29に出力するサーボドライバ41とを有している。なお、制御出力CS2は、制御信号CS1に基づくものであるので、以下では、両者を区別せずに、制御指令CSということがある。
FB制御部39は、位置センサ37の検出値に基づいて、目標速度が実現されるように流量制御弁29の(リアルタイム)フィードバック制御を行う。具体的には、例えば、FB制御部39は、目標位置テーブルTb2を参照して、経過時間毎に、その経過時間に対して設定された目標位置Dtを特定し、その特定した目標位置Dtと、位置センサ37の検出する位置Ddとの偏差Deを算出し、算出した偏差に応じた指令値の制御指令CSを出力する。すなわち、FB制御部39は、経時変化する目標位置へ検出位置を一致させるようにする位置フィードバック制御によって、実質的に速度フィードバック制御を行う。
なお、上記のフィードバック制御を行う周期(時間刻み)は、例えば、目標位置テーブルTb2における経過時間(時点tt0〜ttm)の時間刻みと同一であり、例えば、1ms程度である。
偏差Deから制御指令CSの指令値への変換は、例えば、偏差Deに対して所定の比例ゲインKを乗じることによってなされる。すなわち、FB制御部39では、比例制御が行われる。なお、PI制御、PD制御又はPID制御等が行われてもよいし、ファジー制御等の他の制御方式が適宜に導入されてもよい。
サーボドライバ41は、例えば、単に制御信号CS1を制御出力CS2に変換するだけでなく、流量制御弁29の開度が制御信号CS1によって指定された開度となるように、流量制御弁29から出力される開度を示す信号に基づいて流量制御弁29のフィードバック制御を行う。すなわち、サーボドライバ41は、マイナーループのフィードバック制御を行う。ただし、サーボドライバ41は、例えば、単に制御信号CS1を制御出力CS2に変換するだけであってもよい。
なお、サーボドライバ41は、制御装置11の一部又は流量制御弁29の一部として捉えられてもよい。また、サーボドライバ41は、制御装置11とともに配置されていてもよいし、流量制御弁29とともに配置されていてもよい。以下では、制御装置11による流量制御弁29の制御について、サーボドライバ41を省略して説明することがある。
図3(b)に示す例では、流量制御弁29は、第3流路25Cを開閉するメイン弁29aと、メイン弁29aを駆動するためのパイロット弁29bとを有している。そして、メイン弁29aの開度を示す信号がサーボドライバ41に出力され、上記のマイナーループのフィードバック制御が行われる。さらに、パイロット弁29bの開度を示す信号がサーボドライバ41に出力され、マイナーループの更にマイナーループのフィードバック制御がなされてもよい。
<流量制御弁のオーバーラップ特性>
図4(a)〜図4(c)は、流量制御弁29の構成を模式的に示す断面図である。なお、この図は、オーバーラップ特性を説明するための模式的なものであり、正確に流量制御弁29の構造乃至は形状の一例を示すものではない。
流量制御弁29は、例えば、滑り弁の一種であるスプール式の弁であり、中空状の弁本体43と、弁本体43内を摺動可能なスプール45とを有している。
弁本体43の中空部43aは、一定の断面で紙面左右方向に延びている。また、弁本体43には、中空部43aと弁本体43の外部とを連通する第1ポート47A及び第2ポート47Bが形成されている。弁本体43は、例えば、第1ポート47Aがロッド側室13rに接続され、第2ポート47Bがタンク19に接続されるように第3流路25Cに組み込まれる。なお、2つのポートの接続先は上記と逆でもよい。
スプール45は、概ね軸状の部材であり、例えば、中空部43aの断面形状(紙面左右方向に直交する断面の形状)よりも僅かに小さい断面形状を有する第1ランド部45a及び第2ランド部45bと、これらランド部の間に位置し、ランド部よりも径が小さい小径部45cとを有している。スプール45は、紙面左右方向において中空部43a内を移動可能である。
図4(a)は、スプール45が所定の基準位置(中立点)にあり、流量制御弁29が閉じられている状態を示している。この位置では、第1ランド部45aは、スプール45の移動方向において、第1ポート47Aに対して中央に位置しており、第1ポート47Aを塞いでいる。これにより、第1ポート47Aと第2ポート47Bとの間の流れが禁止される。このとき、第1ランド部45aは、スプール45の移動方向等において、第1ポート47Aだけでなく、第1ポート47Aの周囲において弁本体43に重なっている。この重なり量をOLとし、図4(a)のときの重なり量OLをOL1とする。
図4(b)は、スプール45が図4(a)の位置から開位置へ少し変位した状態を示している。スプール45が図4(a)の位置から変位しても、図4(a)の状態で第1ランド部45aは、重なり量OL1で第1ポート47Aの周囲に重なっていたことから、直ちには第1ポート47Aは開かれない。具体的には、図4(b)で示すように、重なり量OLが0となる位置まで、第1ポート47Aは第1ランド部45aに塞がれたままである(開かれない。)。
図4(c)は、スプール45が図4(b)の位置から更に開位置側へ変位した状態を示している。この状態では、第1ポート47Aが第1ランド部45aによって塞がれていた状態が解除される。すなわち、第1ポート47Aが開かれる。これにより、矢印y1で示すように、第1ポート47Aから第2ポート47Bへの流れが許容される。また、流量制御弁29の開度は、図4(b)の位置と図4(c)の位置との間でスプール45が変位することによって連続的に調整され、これにより流量が連続的に制御される。
このように、流量制御弁29では、スプール45が所定の重複区間OR(紙面左側の境界のみ示す)内にあるときは、スプール45が変位しても第1ポート47Aは開かれず、スプール45が重複区間ORを抜けると、第1ポート47Aが開かれる。このような、弁体(スプール45)が基準位置から少し変位して、その後初めてポートが開かれるような弁体と弁本体との重なりの状態は、オーバーラップとよばれている。このようなオーバーラップを採用することによって、例えば、スプール45が基準位置にあるときに、作動液の流れをより確実に遮断することができる。
スプール45を駆動するための駆動力は、ソレノイド(リニア式電動機)から直接的に付与されてもよいし、ソレノイドによって駆動されるパイロット弁からの液圧によって付与されてもよい(図3(b)の例)。流量制御弁29は、入力された制御指令CSの指令値に応じた位置へスプール45を移動させる。
図5は、オーバーラップ形の流量制御弁29の流量特性を示す図である。
この図において、横軸は、流量制御弁29に入力される制御指令CSの指令値Cvを示している。なお、流量制御弁29は、指令値Cvに応じた位置にスプール45を位置させるから、別の観点では、横軸は、スプール45の位置である。図5において縦軸は、プランジャ5の速度である。なお、プランジャ5の速度は、ロッド側室13rから流量制御弁29を介して排出される作動液の流量に比例するから、別の観点では、縦軸は、流量制御弁29における流量である。
縦軸の下端は、V=0に対応している。横軸は、流量制御弁29の構成によって適宜に正負及び絶対値が割り当てられる。従って、例えば、指令値Cvと速度Vとが線形の関係にあっても、比例とは限らない。ただし、以下では、説明の便宜上、指令値Cvの値は、紙面右側に行くほど増加するものとして指令値Cvの値の変化について表現することがある。
Cv=Cv0は、図4(a)のOL=OL1の状態に対応している。Cv=Cv1は、図4(b)のOL=0の状態に対応している。すなわち、Cv0からCv1までの範囲は、スプール45が重複区間OR内に位置する状態に対応し、Cv1よりも紙面右側の範囲は、スプール45が重複区間ORを抜けて、第1ポート47Aが開かれた状態に対応している。
線Ln11は、流量制御弁29の理想上の流量特性を示している。線Ln12は、流量制御弁29の実測された流量特性を示している。線Ln13は、線Ln12に対する近似値を示している。
既述のように、スプール45が重複区間ORに位置している場合においては、第1ポート47Aは、第1ランド部45aによって塞がれている。従って、線Ln11によって示されているように、理想的には、プランジャ5の速度は0である。そして、指令値CvがCv1を超えると、指令値Cvの値の増加に応じて(例えば線形の関係で)、速度Vが上昇する。
しかし、スプール45と弁本体43の内周面との間には作動液(例えば油)が浸入可能な隙間がある。このような隙間が設けられていることによって、スプール45の弁本体43に対する円滑な移動が可能となる。この隙間の大きさは、流量制御弁29の構造及び大きさによって適宜に設定されるが、例えば、数μm〜数十μmである。そして、流量制御弁29においては、作動液がこの隙間を流れるいわゆる隙間流れによって、スプール45が重複区間OR内に位置していても、第1ポート47Aから第2ポート47Bへの流れが生じる。
従って、実際には、線Ln12によって示されているように、スプール45が重複区間OR内に位置している状態においても、スプール45の変位によって速度Vは変化する。具体的には、例えば、スプール45が基準位置(指令値Cv0に対応する位置)にあるときは、速度Vは概ね0であり、基準位置からの変位が増加すると、速度Vも上昇する。そのときの変位(指令値Cv)と速度Vとの関係は、例えば、近似値の線Ln13からも理解されるように、概ね線形である。また、その変化率は、第1ポート47Aが開かれてから(Cv>Cv1)の変化率よりも小さい。スプール45が重複区間ORとその外側の区間との境界に位置する(Cv=Cv1)ときのプランジャ5の速度VOLは、低速射出速度VLとして設定可能な速度よりも低い速度であり、例えば、0.15m/s以下又は0.1m/s未満である。
<オーバーラップ特性に起因する課題>
図6(a)及び図6(b)は、上記のようなオーバーラップ特性によって生じる課題を説明するための図である。これらの図において、横軸は時間を示しており、縦軸は、射出速度V及び指令値Cvを示している。また、時点t0及びt1並びに低速射出速度VLの符号から理解されるように、この図は、図2を参照して説明した、射出開始時から低速射出の途中までに対応している。
図6(a)は、従来、出願人の実施している射出装置において行われている制御方法を説明するための図である。この図において、線Ln21は、オペレータが設定する射出速度Vの目標値の経時変化を示している。線Ln22は、実際の射出速度Vの経時変化を示している。
上述のように、スプール45が重複区間ORに位置している間においては、基本的には第1ポート47Aは第1ランド部45aに塞がれている。そこで、従来は、制御装置11は、まず、重複区間ORを抜ける位置まで即座にスプール45を移動させ、これにより速やかに射出速度を立ち上げ、その後(時点t11以降)、図3(b)を参照して説明したフィードバック制御を行っていた。
具体的には、従来の制御装置11は、射出開始時から比較的短い時間で、制御指令CSの指令値Cvを、基準位置に対応するCv0から、重複区間の境界位置に対応するCv1よりも大きいCv11とする。Cv11の大きさ、及びCv0からCv11へ移行するときの変化率は、基本的に射出装置1の製造者によって設定される。すなわち、Cv11の大きさ、及びCv0からCv11へ移行するときの変化率は、オペレータによる射出速度Vの設定によらず、一定である。ただし、Cv11の大きさは、入力装置33への操作によって、2段階の大きさのいずれかに切換可能である場合もある。図示の例では、Cv11は、低速射出速度VLに対応する指令値と概ね同等である。
図6(b)は、上記のような制御において生じる課題を説明するための図である。この図において、線Ln24は、オペレータが設定する射出速度Vの目標値の経時変化を示している。線Ln25は、実際の射出速度Vの経時変化を示している。
この図に示されるように、近年、射出の開始時において、射出速度を速やかに低速射出速度VLに到達させるのではなく、比較的緩やかな速度勾配で低速射出速度VLに到達させる(時点t12において到達させる)ように射出速度を設定することがある。このような場合、図6(a)と同様に、時点t11までに指令値CvをCv11にすると、時点t11の付近で実際の速度が目標速度を大きく上回り、次に、ゆっくり速度が下がり、その後、実際の速度が目標速度に収束する。すなわち、実際の速度の目標速度に対する追従性が低い。
その理由としては、例えば、以下のものが挙げられる。時点t11における指令値Cv11が時点t11における目標速度に対して大きい。指令値CvがCv1以下の範囲内であっても(スプール45が重複区間に位置していても)、作動液の流量は0ではなく、これによっても実際の速度が目標速度を超えることがある。また、フィードバック制御の比例ゲインK(図3(b))は、指令値CvがCv1を超えているとき(スプール45が重複区間を抜けているとき)を基準として設定されている。従って、矢印y3で示している領域のように、指令値CvがCv1を下回ると(スプール45が重複区間にあると)、指令値Cvに対する流量の変化量に比較して比例ゲインKが小さく、速やかに射出速度を目標値に追従させることができない。
<オープン制御の利用>
(制御方式の切換え)
図6(c)は、上記のような課題を解決するために本実施形態に係る射出装置1が行う制御の概要を説明するための、図6(a)及び図6(b)に対応する図である。線Ln24は、図6(b)の線Ln24と同様に、オペレータが設定する射出速度Vの目標値の経時変化を示している。線Ln27は、実際の射出速度Vの経時変化を示している。
上記のように、従来は、オペレータが入力装置33を介して設定した射出速度Vの目標値に関わらず、流量制御弁29は、射出の開始時において、予め定められた比較的短い時間で、スプール45が重複区間ORを抜けて一定の開度になるような制御が行われた。
一方、本実施形態では、制御装置11は、射出の開始時において、オペレータが入力装置33を介して設定した射出速度Vの目標値に応じたオープン制御を行い、その後、フィードバック制御を行う。このオープン制御では、スプール45が重複区間にあるときの流量制御弁29の流量特性も考慮される。換言すれば、このオープン制御では、重複区間におけるスプール45の移動に対応する指令値の経時変化は、オペレータが設定した目標速度に応じて変わる。これにより、例えば、設定された目標速度が、射出開始後に、比較的緩やかな速度勾配で低速射出速度VLに到達するようなものである場合においても、実際の速度が目標速度に好適に追従する。
例えば、オペレータが設定した目標速度が、時点t12で低速射出速度VLに到達し、その後、ある程度の期間(例えば高速射出の開始までの期間)、低速射出速度VLが維持されるようなものである場合においては、制御装置11は、時点t12までオープン制御を行い、その後、フィードバック制御を行う。時点t0から時点t12までの指令値Cvは、図5に示したような指令値Cvと速度Vとの対応関係の情報を参照して、目標速度に応じた指令値Cvを特定することによって設定される。
図7は、オープン制御からフィードバック制御へ移行するときの制御装置11の動作の変化を示す模式図である。紙面上方側の図は、射出開始時においてオープン制御が行われている状態に対応し、紙面下方側の図は、オープン制御に続いてフィードバック制御が行われている状態に対応している。
図7の紙面上方側に示すように、制御装置11は、図3(b)を参照して説明したFB制御部39に加えて、流量制御弁29のオープン制御を行うためのOP制御部49を有している。また、制御装置11は、経過時間毎の指令値Cvを規定する情報として、OP制御用テーブル51を生成し、RAM等に保持している。
OP制御用テーブル51は、例えば、所定の時間刻みの時点tt0〜ttnと、各時点における目標速度に対応する指令値Ct0〜Ctnとを対応付けて保持している。OP制御用テーブル51は、上述のように、図5のような流量制御弁29の流量特性の情報を参照して、経過時間毎の目標速度に対応する指令値Cvを特定することによって生成される。
そして、OP制御部49は、OP制御用テーブル51を参照して、経過時間毎に設定された指令値Cvの制御指令CSを流量制御弁29に順次出力する。なお、このオープン制御においても、サーボドライバ41によるマイナーループのフィードバック制御がなされてよいことは当然である。
なお、制御開始の時点tt0は、図3(a)と同様に、図6(c)における射出開始の時点t0に対応している。指令値Ct0は、図6(c)における指令値Cv0(速度0)に対応している。なお、時点tt0(t0)のときのデータ(速度0に対応するデータ)は、実際にはOP制御用テーブル51に不要である。
制御終了の時点ttnは、例えば、図6(c)における射出速度が一定(低速射出速度VL)になる時点t12に対応している。指令値Ctnは、図6(c)における指令値Cv11(低速射出速度VL)に対応している。なお、時点ttnは、時点tt0〜ttnの時間刻み1つ分程度で、時点t12に対して直前又は直後となる時点であってもよく、この場合も、時点t12までオープン制御を行うという場合に含まれるものとする。
OP制御部49が指令値Cvを変更する時間刻み(OP制御用テーブル51における時点tt0〜ttnの時間刻み)は、例えば、オープン制御に亘って一定である。また、時間刻みは、フィードバック制御の時間刻みと同じであってもよいし、異なっていてもよい。時間刻みの長さは、適宜に設定されてよいが、例えば、1ms程度である。
OP制御用テーブル51の生成及びOP制御部49による制御においては、重複区間ORの内外を区別する判定等は特に行われる必要はない。時点tt0〜ttnの時間刻みが比較的短く、射出開始時付近の速度(例えば低速射出速度VL)が比較的低く、また、図5に示されたような重複区間ORの流量特性を含む情報が参照されることによって、結果的に、指令値Cvは、スプール45が重複区間OR内にあるときの範囲内(図5の指令値Cv0からCv1までの範囲内)でも、オペレータが設定した目標速度に応じて経時変化する。
OP制御部49が時点ttnまでの制御を終えると、図7の紙面下方側に示すように、OP制御部49に代わって、FB制御部39が制御指令CSを流量制御弁29に出力する。その動作の概略は、図3(b)を参照して説明したとおりである。
制御装置11は、図3(a)を参照して説明したように、目標位置テーブルTb2を生成可能であり、このうち、オープン制御の終了時点である時点ttn(具体的な制御方式によってはttn+1)以降の情報をフィードバック制御のための情報としてRAM等に保持している。すなわち、制御装置11は、所定の時間刻みの時点ttn〜ttmと、各時点における目標位置Dtn〜Dtmとを対応付けたFB制御用テーブル53を保持している。そして、FB制御部39は、図3を参照して説明したように、経過時間毎に、その時点の目標位置Dtを特定し、偏差Deに比例ゲインを乗じて指令値Cvを設定する。
FB制御部39は、フィードバック制御からオープン制御へ移行するときにOP制御部49が出力した制御指令CSの指令値Cv(OP制御用テーブル51の指令値Ctn)をオフセットとして取り込んでもよい。すなわち、偏差Deに比例ゲインKを乗じて得た指令値に指令値Ctnを加算して、最終的な指令値Cvとする。これにより、例えば、定常偏差が解消されやすくなる。
(流量制御弁の特性データの生成)
上述のように、OP制御用テーブル51の生成においては、図5に示したような流量制御弁29の流量特性の情報が参照される。この流量特性は、異なる種類の製品間ではもとより、同一種類(同一の設計値)の製品間においてもばらつく。その要因としては、流量制御弁29を作製する際の寸法の誤差、及び流量制御弁29が設けられるダイカストマシンDC1のサイズの相違等が挙げられる。また、1個の流量制御弁29においても、その流量特性は、摩耗等によって経年変化する。そこで、射出装置1は、適宜な時期に、流量特性を計測して、流量特性の情報を更新(最初は生成)する。
(情報更新のための専用動作)
図8は、射出装置1が流量特性を計測するときの動作の一例を説明するための模式図である。
この図において、横軸は時間tを示し、縦軸は、指令値Cv及びプランジャ5の速度Vを示している。線Ln31は、指令値Cvの経時変化を示し、線Ln32は、プランジャ5の速度Vの経時変化を示している。
線Ln32で示されるプランジャ5の速度Vは、線Ln31で示される指令値Cvの制御指令CSを流量制御弁29へ出力したときの計測値である。速度Vの計測は、例えば、位置センサ37によってなされる。この図に示される動作は、成形サイクルとは別に行われる。また、この動作は、例えば、スリーブ3に溶湯が供給されていない、いわゆる空打ちの状態で行われる。
制御装置11は、例えば、線Ln31で示されているように、複数の指令値Cvについて制御指令CSを順次出力する。また、制御装置11は、例えば、各指令値Cvについて、所定の時間T0に亘って制御指令CSを出力する。そして、制御装置11は、各指令値Cvの制御指令CSを出力しているときのプランジャ5の速度Vを検出する。これにより、制御装置11は、指令値Cvに対応するプランジャ5の速度Vを特定することができ、ひいては、図5に示したような流量特性の情報が生成される。
なお、種々の指令値Cvについての制御指令CSの出力順は、図示の例のように指令値Cvが徐々に大きくなる(流量が徐々に大きくなる)ものであってもよいし、逆に、小さくなるものであってもよいし、ランダムであってもよい。時間T0の長さ及び指令値Cvを変えるときの変化量は、例えば、種々の指令値Cvに対して一定であり、また、その具体的な値は適宜に設定されてよい。測定対象となる指令値Cvの範囲は、OP制御用テーブル51の生成に必要十分な範囲とされ、少なくともスプール45が基準位置(図4(a))から重複区間ORを抜けるまでに対応する指令値Cvの範囲を含む。なお、これらの測定用のパラメータは、基本的に射出装置1の製造者によって設定されるが、オペレータが入力装置33を介して設定可能であってもよい。各時間T0における速度Vとしては、例えば、その時間T0の間に計測された速度Vの平均値が用いられてよい。
上記の動作は、所定の条件が満たされたとき(例えば所定の時期が到来したとき)に制御装置11によって自動的に行われてもよいし、オペレータによって所定の操作がなされたときに行われてもよい。また、上記の動作を行う時期は、適宜に選択されてよく、例えば、ダイカストマシンが出荷されてから最初の稼働開始時、日々の稼働開始時、制御結果の良否判定(後述)で否判定がされたとき、オペレータが設定した任意の時期である。
(射出動作に基づく情報更新)
上記では、射出動作(成形サイクル)とは別に、流量制御弁29の流量特性を計測するための専用の動作が行われる態様について説明した。この専用の動作に基づく流量特性の情報の更新に併せて、又は代えて、射出動作に基づいて、流量特性の情報の更新がなされてもよい。
図9は、射出動作に基づいて流量制御弁29の流量特性の情報が更新される態様における、射出装置1の構成を示す模式図である。
この図において、特性テーブル55は、流量制御弁29の流量特性に係る情報を保持するデータであり、指令値Cv(Cr0〜Crj)と、指令値Cvが出力されたときのプランジャ5の速度V(Vr0〜Vrj)の値とを対応付けて保持している。そして、オペレータが設定した射出速度が実現されるように、特性テーブル55が参照されて、OP制御用テーブル51が設定される。
図7を参照して説明したように、OP制御部49は、射出動作において、OP制御用テーブル51を参照して、経過時間毎に設定された指令値Cvの制御指令CSを流量制御弁29に順次出力する。このとき、制御装置11の情報更新部69は、その制御指令CSの指令値Cvと、位置センサ37の検出する速度とを取得し、同一時点のもの同士(又は指令値Cvに対して少し遅い時点の速度)を対応付ける。これにより、特性テーブル55の生成又は更新が可能になる。
具体的には、例えば、情報更新部69は、オープン制御中に取得した複数組の指令値Cv及び検出速度のデータに対して適宜に補間及び/又は外挿を行って、特性テーブル55に保持されている指令値Cvに対応する速度を算出し、その算出した速度によって特性テーブル55に保持されている速度Vの値を更新する。又は、情報更新部69は、取得した複数組の指令値Cv及び検出速度のデータによって、特性テーブル55に保持されている指令値Cvごと、特性テーブル55の速度Vの値を更新してもよい。
この射出動作に基づく特性テーブル55の更新は、毎サイクル行われてもよいし、所定の条件が満たされたときのみ行われてもよい。所定の条件は、例えば、オペレータによって特定の操作が入力装置33に対してなされたこと、所定回数のサイクルが実行されたこと、後述する差dD(図11)が所定値を超えたことである。特性テーブル55の更新に必要な情報の収集は毎サイクル実行し、所定の条件が満たされたときのみ(例えば後述する良否判定で良と判定されたときのみ)特性テーブル55の更新を行ってもよい。
(流量特性の情報の補正)
図9において示すように、特性テーブル55が参照されてOP制御用テーブル51が設定されるまでの間において、特性テーブル55の補正がなされてもよい。
例えば、所定圧力まで蓄圧されたアキュムレータ23からヘッド側室13hへ作動液を供給してプランジャ5を駆動することにより、図5の線Ln13で示した速度Vの経時変化が得られたとする。理想的には、成形サイクルが繰り返されても、前記の所定圧力は一定である。
しかし、現実には、例えば、成形サイクルが繰り返されることによって前記の所定圧力は徐々に低下していくことがある。及び/又は、アキュムレータ23を蓄圧するポンプ21の制御のばらつき等に起因して、成形サイクル間において前記の所定圧力が変動する。その結果、図5において、線Ln13で示される特性は、線Ln14で示されるような特性に変化してしまう。なお、図5では、線Ln13の特性が得られたときよりも前記の所定圧力が低下し、指令値Cvに対する速度Vが低下した場合が例示されている。
そこで、例えば、イン側バルブ28を開く直前、又は流量制御弁29のオープン制御を開始する直前において(以下、これらを「射出直前」ということがある。)、その射出直前におけるACC用圧力センサ34の検出値の変化に基づいて、特性テーブル55を補正する。当該補正は、例えば、毎サイクル行われる。
具体的には、例えば、特性テーブル55が得られた(生成又は更新された)ときのACC圧(基準圧力)に対して、今回(現在のサイクル)のACC圧(射出直前のACC用圧力センサ34の検出値)が低下している場合においては、指令値Cvに対応付けられている速度Vの値を低下させる。逆に、特性テーブル55が得られたときのACC圧に対して、今回のACC圧が上昇している場合においては、指令値Cvに対応付けられている速度Vの値を上昇させる。
OP制御用テーブル51は、特性テーブル55が参照されて設定されるから、特性テーブル55の補正によって、OP制御用テーブル51の指令値Cvが実質的に補正される。具体的には、例えば、射出直前のACC用圧力センサ34の検出値が、特性テーブル55が得られたときのACC圧(基準圧力)に対して小さいとき(又は大きいとき)は、前記検出値が前記の基準圧力と同等であるときよりも流量制御弁29の開度が大きくなる(又は小さくなる)ように、指令値Cvが実質的に補正される。
より具体的な補正方法は適宜なものとされてよい。別の観点では、ACC圧の変化の程度に対する補正の程度は適宜に設定されてよい。例えば、特性テーブル55が得られたときのACC圧をP1、射出直前のACC圧をP2とした場合、特性テーブル55の速度Vの値に対して√(P2/P1)を乗じ、これを補正後の速度Vの値としてよい。すなわち、ACC圧の比のルート値(平方根)を速度Vに乗じてよい。この補正は、ベルヌーイの定理に基づいている。
なお、上記において、「特性テーブル55が得られたときのACC圧」は、既述の説明から理解されるように、例えば、成形サイクルとは別の計測用動作(図8)が行われたときのACC圧(より具体的には、例えば、計測用動作の開始直前におけるACC用圧力センサ34の検出値)でもよいし、特性テーブル55が得られたときの成形サイクル(図9)のACC圧(射出直前のACC用圧力センサ34の検出値)であってもよい。
補正後の特性テーブル55、及び補正に利用された射出直前のACC圧(P2)は、その成形サイクルのみに用いられるべく、一時的に保持されるものであってもよいし、以降の成形サイクルでも利用可能に保持されるものであってもよい。以降の成形サイクルでも利用される場合においては、例えば、その補正後の特性テーブル55及びACC圧(P2)が、次に(例えば次の成形サイクルにおいて)特性テーブルの補正を行うときの、補正対象の特性テーブル55及び基準圧力(P1)となる。なお、図9を参照して説明した成形サイクルの動作に基づく特性テーブル55の更新が毎サイクル行われる場合においては、補正後の特性テーブル55は、基本的に、そのサイクルのみにおいて用いられるものである。
(流量制御弁の駆動開始タイミング)
図10は、射出開始時において、流量制御弁29の開方向への駆動を開始するタイミング(オープン制御の開始)を説明するための図である。
この図において、横軸tは時間を示している。図の上段において、縦軸は、圧力Pを示しており、線Ln33は、ヘッド側室13hの圧力(ヘッド用圧力センサ36の検出値)の経時変化を示している。その下段は、イン側バルブ28及び流量制御弁29の駆動状態を示すタイミングチャートとなっている。
射出開始直前においては、イン側バルブ28及び流量制御弁29は閉じられている。射出開始時においては、まず、イン側バルブ28が開かれる。これにより、アキュムレータ23からヘッド側室13hへ作動液が供給される。なお、作動液の圧縮を無視すれば、アキュムレータ23からヘッド側室13hへは液圧が付与されるだけで、作動液は流れないことになるが、このような状態も作動液の供給と表現する。
アキュムレータ23からヘッド側室13hへの作動液の供給が開始されることによって、ヘッド圧は上昇していく。具体的には、ヘッド圧は、アキュムレータ23の圧力(ACC圧PACC)に近づいて行く。なお、射出の初期におけるACC圧の低下は比較的小さく、ここでは、ACC圧PACCは一定であるものとして示されている。
そして、ヘッド用圧力センサ36の検出値が所定の設定値Psに到達すると、流量制御弁29のオープン制御が開始される。これにより、例えば、オープン制御が行われるときのヘッド圧は、特性テーブル55が得られたときのヘッド圧に近くなる、及び/又はヘッド圧の過渡特性がオープン制御に及ぼす影響が低減される。
設定値Psは、ACC圧PACC未満の範囲で適宜に設定されてよく、また、射出装置1の製造者によって設定されていてもよいし、オペレータによって設定されてもよいし、制御装置11が種々の鋳造条件に基づいて自動的に設定してもよい。
(制御結果の良否判定)
図11は、オープン制御による制御結果の良否判定方法を説明するための図である。
この図において、横軸は、時間tを示している。縦軸は、プランジャ5の速度V及びプランジャ5の位置Dを示している。時点t0及びt12並びに低速射出速度VLの符号から理解されるように、この図は、図6(c)に示した射出速度の設定がなされた場合の射出開始時の経時変化を示している。
線Ln24は、図6(c)と同様に、目標速度Vの経時変化を示している。線Ln35は、目標速度Vから求められる目標位置Dの経時変化を示している。線Ln36は、実際のプランジャ5の位置D(位置センサ37による検出値)の経時変化を示している。
理想的には、位置センサ37による検出位置を示す線Ln36は、目標位置を示す線Ln35に一致する。しかし、例えば、流量制御弁29の経年変化によって流量特性が変化したり、射出装置1に何らかの異常が生じたりすると、図示の例のように線Ln36は、線Ln35に一致しなくなる。
そこで、制御装置11は、例えば、オープン制御が終了するとき(オープン制御の時間刻み1つ分程度前後してもよい)の、目標位置及び検出位置の差dDを算出し、この差dDが所定の許容範囲内か否か(閾値を超えたか否か)によって、制御の良否判定を行う。そして、制御装置11は、閾値を超えたと判定したときは、例えば、所定の警告画像を表示装置35に表示させる。これにより、例えば、オペレータは、流量特性の情報を更新すべき時期であることを知ったり、射出装置1に何らかの異常が生じたことを知ったりすることができる。警告画像は、例えば、所定の文字及び/又は所定の図形を表示することによって、差dDが閾値を超えたことを知らせたり、流量特性の情報を更新すること(例えば図8を参照して説明した計測専用の動作の実行)を促したりするようなものである。
(ブロック図及びフローチャート)
図12は、上記のようなオープン制御を利用した射出制御を実現するための信号処理系の構成を概念的に示すブロック図である。
制御装置11は、特性テーブル55を記憶部11aに保持している。記憶部11aは、例えば、外部記憶装置又はRAMである。制御装置11において、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部(39、49、61、62、63、65、67、69、70及び71)が構成される。各機能部の動作は、例えば、以下のとおりである。
目標速度設定部61は、オペレータの操作に応じた入力装置33からの信号に基づいて、目標速度を設定する。例えば、目標速度設定部61は、図3(a)に示した目標速度テーブルTb1を生成する。
補正部62は、射出直前のACC用圧力センサ34の検出値と、基準圧力(特性テーブル55が得られたときのACC圧)とに基づいて、記憶部11aに保持されている特性テーブル55を補正する。
指令値設定部63は、目標速度設定部61が生成した目標速度テーブルTb1と、補正後の特性テーブル55とに基づいて、オープン制御のための経過時間毎の指令値を設定する。例えば、指令値設定部63は、図7に示したOP制御用テーブル51を生成する。
目標位置算出部65は、目標速度設定部61が生成した目標速度テーブルTb1に基づいて、フィードバック制御のための経過時間毎の目標位置を算出する。例えば、目標位置算出部65は、図7に示したFB制御用テーブル53を生成する。
なお、後述するフローチャートの説明でも理解されるように、指令値設定部63は、図3(a)に示した目標位置テーブルTb2も利用する。目標位置算出部65は、この目標位置テーブルTb2の生成に兼用されてよい。
OP制御部49については、図7を参照して説明したとおりである。また、FB制御部39については、図3(b)及び図7を参照して説明したとおりである。
更新用制御部67は、図8を参照して説明した動作を行う。すなわち、図8において線Ln31で示された指令値Cvの経時変化が実現されるように制御指令CSを流量制御弁29に出力する。ここで、例えば、特性テーブル55の指令値Cvが固定的であり、速度Vの値のみが更新されるような態様においては、更新用制御部67は、特性テーブル55を参照して、特性テーブル55に保持されている指令値Cvを、出力する制御指令CSの指令値Cvとして用いてよい。
情報更新部69は、例えば、更新用制御部67が図8の線Ln31で示される指令値Cvの制御指令CSを出力しているときに、その指令値Cvと、位置センサ37の検出するプランジャ5の速度Vの値とを取得する。又は、情報更新部69は、図9を参照して説明したように、射出動作において、OP制御部49によって出力されている制御指令CSの指令値Cvと、位置センサ37の検出するプランジャ5の速度Vの値とを取得する。そして、情報更新部69は、取得した指令値Cv及び速度Vの値に基づいて、特性テーブル55を更新する。
良否判定部70は、目標速度設定部61の設定した目標位置及び位置センサ37の検出した位置に基づいて、図11を参照して説明した良否判定を行う。すなわち、良否判定部70は、オープン制御の終了時における目標位置及び検出位置の差dDが所定の閾値を超えたか否か判定する。
表示制御部71は、良否判定部70によって差dDが閾値を超えたと判定されたときに、所定の警告表示を行うように表示装置35に制御指令を出力する。
図13は、オープン制御を利用した射出制御を実現するために制御装置11が実行するメイン処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、制御装置11に電源が投入されたときに開始される。
ステップST1では、制御装置11は、入力装置33に対して、特性テーブル55の更新を指示する操作がなされたか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST2へ進み、否定判定のときはステップST2をスキップする。
ステップST2では、制御装置11は、図8を参照して説明したように、成形サイクルとは別の、流量特性を計測するための専用の動作を行って、特性テーブル55を更新する。すなわち、制御装置11は、種々の指令値Cvの制御指令CSを流量制御弁29へ順次出力して、そのときの速度Vを計測し、その計測結果に基づいて特性テーブル55の速度Vの値を更新する。
このように、図示の例では、オペレータによって入力装置33に対する操作に応じて、特性テーブル55の更新がなされる。ただし、既に言及したように、オペレータの操作に加えて、又は代えて、所定の条件が満たされたときに制御装置11が自動的に特性テーブル55の更新を行ってもよい。所定の条件は、例えば、現在がダイカストマシンDC1の電源投入直後であること、又は後述するステップST31で制御結果が良好でないと判定されたことなどである。
ステップST3では、制御装置11は、入力装置33に対して、成形条件を設定するための操作がなされたか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST4へ進み、否定判定のときはステップST4をスキップする。なお、成形条件は、例えば、射出速度及び鋳造圧力である。
ステップST4では、制御装置11は、入力装置33に対する操作によって入力された情報に基づいて成形条件を設定する。
ステップST5では、制御装置11は、入力装置33に対して、成形サイクルを開始するための操作がなされたか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST6へ進み、否定判定のときはステップST6及び7をスキップする。
ステップST6では、制御装置11は、ステップST4で設定された成形条件で成形サイクルが1回行われるように制御指令を出力する。これにより、例えば、型締装置による型締め、射出装置1による射出、型締装置による型開き、及び押出装置による成形品の押し出し等が行われる。
ステップST7では、制御装置11は、成形サイクルの繰り返しを終了する条件が満たされたか否か判定する。例えば、ステップST4で設定されたサイクル数でステップST6が繰り返されたか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときは、次に進み(図示の例ではステップST1に戻り)、否定判定のときはステップST6に戻って成形サイクルを繰り返す。
図14は、制御装置11が図13のステップST4で実行する成形条件設定処理の一例を示すフローチャートである。ただし、この図では、成形条件の設定手順のうち射出速度の設定手順のみを図示している。
ステップST11では、制御装置11は、入力装置33からの信号に基づいて、図3(a)に示した目標速度テーブルTb1を生成する。
ステップST12では、制御装置11は、図3(a)を参照して説明したように、目標速度テーブルTb1に基づいて目標位置テーブルTb2を生成する。
ステップST13では、制御装置11は、オープン制御からフィードバック制御に切り換えるプランジャ5の位置を設定する。例えば、制御装置11は、目標速度テーブルTb1に基づいて、射出開始時に最初に一定の速度(通常は低速射出速度VL)とされる位置を特定し、この位置を切り換えが行われる位置とする。なお、目標速度テーブルTb1の保持する複数の位置Dに対して、又は目標速度テーブルTb1の位置Dとは別に、切換位置をオペレータが入力装置33を介して指定可能であってもよい。
ステップST14では、制御装置11は、ステップST13で設定した切換位置と、ステップST12で生成した目標位置テーブルTb2の目標位置Dtとを比較して、目標位置テーブルTb2から、切換位置以降のデータを抽出する。これにより、図7に示したFB制御用テーブル53が生成される。
図15は、制御装置11が図13のステップST6で実行する成形サイクル処理の一例を示すフローチャートである。ただし、この図では、成形サイクル処理の手順のうち速度制御に係る手順のみを図示している。
ステップST21では、制御装置11は、ACC圧取得条件が満たされたか否か判定する。すなわち、制御装置11は、図5及び図9を参照して説明した特性テーブル55の補正に利用される、射出直前のACC圧を検出すべき時期が到来したか否か判定する。ACC圧取得条件は、例えば、アキュムレータ23の充填が完了したことである。別の観点では、当該条件は、後述するステップST27においてのイン側バルブ28が開かれるまで、ACC圧が基本的に変動しない状態となったことである。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST22に進み、否定判定のときは待機する。
ステップST22では、制御装置11は、ACC圧を取得する。すなわち、制御装置11は、射出直前のACC圧として、ACC用圧力センサ34の検出値を取得する。
ステップST23では、制御装置11は、図5及び図9を参照して説明したように、ACC圧の検出値と、記憶部11aに記憶されている特性テーブル55が得られたときのACC圧(基準圧力)との比較に基づいて、特性テーブル55を補正する。なお、補正後の特性テーブル55は、既に述べた説明から理解されるように、補正前の特性テーブル55に代えて記憶部11aに記憶されてもよいし、補正前の特性テーブル55とは別個に記憶部11aに記憶されて利用されてもよい。
ステップST24では、制御装置11は、図7に示したOP制御用テーブル51を生成する。具体的には、例えば、まず、制御装置11は、ステップST12で生成された目標位置テーブルTb2の目標位置Dtと、ステップST13で設定した切換位置とを比較して、目標位置テーブルTb2から、射出開始位置から切換位置までの範囲(オープン制御が行われる範囲)に対応するデータを抽出する。そして、制御装置11は、その抽出したデータの複数の目標位置Dtに対応する目標速度を目標速度テーブルTb1に基づいて特定する。これにより、目標位置テーブルTb2から抽出したデータの経過時間と、目標速度テーブルTb1で規定されている目標速度とを対応付け、ひいては、経過時間に対する目標速度のテーブルを生成できる。
目標位置テーブルTb2から抽出したデータの複数の目標位置Dtに対応する目標速度を目標速度テーブルTb1に基づいて特定するときの特定方法は、適宜なものとされてよい。例えば、目標速度テーブルTb1を目標位置テーブルTb2に変換する方法において説明したように、目標速度テーブルTb1の補間データを生成し、補間データの目標速度に所定の時間刻みを乗じて順次積算していく。そして、その積算値(目標位置)が、上記の目標位置テーブルTb2から抽出したテーブルの目標位置Dtに到達したとき(超えたとき)、そのときの目標速度を目標位置Dtに対応する目標位置としてよい。もちろん、式から求めるようにしてもよい。
その後、制御装置11は、ステップST23において補正された特性テーブル55に基づいて、上記の経過時間と目標速度とを対応付けたテーブルの目標速度に対応する指令値を特定する。例えば、目標速度Vtが、特性テーブル55にて保持されている速度Vd1とVd2との間の値であり、速度Vd1とVd2に対応付けられている指令値がCvd1及びCvd2である場合において、目標速度Vtに対応する指令値Cvは、Cv=Cd1+(Cd2−Cd1)×(Vt−Vd1)/(Vd2−Vd1)によって求められてよい(目標速度Vtの前後の2つのデータから求められてよい。)。もちろん、特性テーブル55の複数のデータを近似する近似式を求め、この近似式に目標速度を代入して指令値を算出してもよい。ただし、この場合、重複区間ORとその外側とで近似式を別にすることが好ましく、その近似式を分けるための境界の指令値は、例えば、予め製造者によって設定されている。
ステップST25では、制御装置11は、図7を参照して説明したように、ステップST24で設定したオープン制御用の指令値のうち、オープン制御の最後の指令値をフィードバック制御のオフセットとして設定する。
ステップST26では、制御装置11は、所定の射出開始条件が満たされたか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST22に進み、否定判定のときは待機する。射出開始条件は、例えば、不図示の給湯装置によってスリーブ3への溶湯の供給が完了したことなどである。
ステップST27では、制御装置11は、イン側バルブ28を開くための制御信号を出力する。これにより、イン側バルブ28が開かれ、アキュムレータ23からヘッド側室13hへ液圧が付与される。ひいては、図10を参照して説明したように、ヘッド側室13hの圧力は上昇していく。
ステップST28では、制御装置11は、図10を参照して説明したように、ヘッド用圧力センサ36の検出した検出値が所定の設定値Psに到達したか否か判定し、肯定判定のときはステップST29へ進み、否定判定のときは待機する。
ステップST29では、制御装置11は、射出速度のオープン制御を実行する。すなわち、制御装置11は、OP制御用テーブル51を参照して、現在の経過時間に対応する指令値Cvを特定し、その指令値Cvの制御指令CSを流量制御弁29に出力する。別の観点では、制御装置11は、流量制御弁29の開方向への駆動を開始する。なお、OP制御用テーブル51(目標位置テーブルTb2)の時点tt0は、例えば、ステップST28を抜けた時点とされる。
ステップST30では、制御装置11は、オープン制御の終了条件が満たされたか否か判定する。例えば、制御装置11は、OP制御用テーブル51で規定されている最後の時点まで制御指令CSの出力が完了したか否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST31に進み、否定判定のときはステップST29に戻ってオープン制御を継続する。
ステップST31では、制御装置11は、現在のプランジャ5の検出位置と、現在のプランジャ5の目標位置との差dDを算出する。すなわち、制御装置11は、図11を参照して説明したように、オープン制御の終了時点における差dDを算出する。次に、制御装置11は、差dD(その絶対値)が所定の許容範囲内(閾値以下)か否か判定する。そして、制御装置11は、肯定判定のときはステップST32に進み、否定判定のときはステップST33に進む。
ステップST32では、制御装置11は、図9を参照して説明したように、オープン制御(ステップST29)を実行していたときの、指令値Cvと、位置センサ37によって検出された速度Vとに基づいて、特性テーブル55に保持されている情報を更新する。
ステップST33では、制御装置11は、所定の警告画像を表示装置35に表示させるように制御指令を出力する。
ステップST34では、制御装置11は、流量制御弁29のフィードバック制御を行う。すなわち、制御装置11は、FB制御用テーブル53を参照して、現在の経過時間に対応する目標位置を特定し、その特定した目標位置と位置センサ37の検出する位置との偏差に応じた制御指令CSを出力する。
なお、図13〜図15のフローチャートは、あくまで手順を概念的に説明するためのものであり、適宜に変更されてよく、また、実際には適宜に並列処理がなされてもよい。例えば、ステップST31〜ST33の処理は、オープン制御又はフィードバック制御と並行して実行されてよいし、オープン制御の終了時に取得された検出位置に基づいて、フィードバック制御が終了した後に行われてもよい。また、例えば、指令値の設定(ステップST24)は、ヘッド圧が設定値Psを超える前(オープン制御の開始前)までになされればよいから、ACC圧取得条件(ステップST21)は、射出開始条件(ステップST26)と同一とされたり、イン側バルブ28を開く制御指令が出力されたこと(ステップST27)とされたりすることも可能である。
図13〜図15において、ステップST2は、更新用制御部67及び情報更新部69に対応している。ステップST32も情報更新部69に対応している。ステップST11は目標速度設定部61に対応している。ステップST12〜ST14は目標位置算出部65に対応している。ステップST23は補正部62に対応している。ステップST12、ST13及びST24は指令値設定部63に対応している。ステップST29はOP制御部49に対応している。ステップST31は良否判定部70に対応している。ステップST33は表示制御部71に対応している。ステップST34はFB制御部39に対応している。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置1は、射出シリンダ7、アキュムレータ23(液圧源)、ヘッド用圧力センサ36、流量制御弁29及び制御装置11を有している。射出シリンダ7は、金型101内に通じるスリーブ3内を摺動可能なプランジャ5と連結可能なピストンロッド17、ピストンロッド17に固定されているピストン15、及びピストン15を摺動可能に収容しているシリンダ部13を有している。シリンダ部13の内部はピストン15によってピストンロッド17の側のロッド側室13rと、その反対側のヘッド側室13hとに区画されている。アキュムレータ23は、ヘッド側室13hへ作動液を供給可能である。ヘッド用圧力センサ36は、ヘッド側室13hの圧力を検出可能である。流量制御弁29は、ロッド側室13rから排出される作動液の流量を制御可能である。制御装置11は、アキュムレータ23からヘッド側室13hへの作動液の供給が開始された後、ヘッド用圧力センサ36の検出圧力が所定の設定値Psまで上昇したことを条件として、流量制御弁29を開方向へ駆動するオープン制御を開始するOP制御部49を含む。
ここで、図10を参照して説明したように、ヘッド側室13hの圧力は、イン側バルブ28を開くと同時にACC圧まで上昇するのではなく、イン側バルブ28が開かれてから徐々に上昇する。従って、例えば、イン側バルブ28を開く制御と、流量制御弁29を開くためのオープン制御とを同時に開始すると、流量制御弁29のオープン制御を開始しているにも関わらず、流量制御弁29の開度に応じた速度でプランジャ5が前進しないおそれがある。その結果、例えば、射出開始時における速度制御の精度が低下する。しかし、本実施形態では、ヘッド圧が設定値Psまで上昇した状態で流量制御弁29を開くためのオープン制御を開始していることから、例えば、上記のような不都合が解消される。また、例えば、イン側バルブ28を開いてから所定の時間が経過したことを条件として流量制御弁29のオープン制御を開始する態様に比較して、アキュムレータ23の圧力変動等が生じても、オープン制御を開始したときのヘッド圧が安定する。その結果、流量制御弁29のオープン制御の精度が向上する。
また、本実施形態では、射出装置1は、ユーザの操作を受け付ける入力装置33を更に有している。流量制御弁29は、入力された制御指令CSの指令値Cvに応じた位置へスプール45(弁体)を位置させ、スプール45が所定の重複区間OR内にあるときはスプール45が移動しても第1ポート47Aが閉じられたままとされ、スプール45が重複区間ORを抜けることにより第1ポート47Aが開かれ始めるオーバーラップ形のものである。制御装置11は、スプール45が重複区間OR内にあっても隙間流れによって生じるプランジャ5の移動も含めて、流量制御弁29への制御指令CSの指令値Cvとプランジャ5の速度とを対応付けた特性テーブル55(特性情報)を保持する記憶部11aと、入力装置33に対する操作に基づいてプランジャ5の目標速度を設定する目標速度設定部61と、特性テーブル55に基づいて、目標速度設定部61が設定した目標速度に対応する流量制御弁29への制御指令CSの指令値Cvを特定することにより、OP制御部49が出力する制御指令CSの指令値Cvを設定する指令値設定部63と、を更に有している。
従って、従来は、目標速度の設定に関わらずに、比較的短い所定の期間内にスプール45が重複区間ORを抜けるように流量制御弁29が開かれていたところ、本実施形態では、目標速度の設定に応じて、スプール45が重複区間ORにある状態も含めて、流量制御弁29が好適に開かれる。その結果、例えば、目標速度に対する実際の射出速度の追従性が向上する。そして、上記のようにヘッド圧が設定値PSまで上昇してからオープン制御を開始することから、この追従性も向上する。また、別の観点では、例えば、ヘッド圧の上昇を待たずにオープン制御を開始する態様に比較して、特性テーブル55が得られたときのヘッド圧と、オープン制御の開始時におけるヘッド圧とが近くなることから、特性テーブル55に基づくオープン制御の精度が向上する。
また、本実施形態では、射出装置1は、液圧源としてのアキュムレータ23と、アキュムレータ23の圧力を検出するACC用圧力センサ34と、を有している。制御装置11は、オープン制御開始前の所定時点(ステップST21で肯定判定がなされた時点)におけるACC用圧力センサ34の検出圧力が低いほどオープン制御における流量制御弁29の開度が大きくなるように、OP制御部49が出力する制御指令CSの指令値Cvをサイクル間で変化させる補正部62を更に有している。
従って、例えば、ACC圧の変動がオープン制御におけるプランジャ5の速度に及ぼす影響が低減される。また、別の観点では、例えば、射出開始直前のACC圧が特性テーブル55を得たときのACC圧と異なっていても、特性テーブル55に基づくオープン制御の精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、補正部62は、オープン制御開始前の所定時点におけるACC用圧力センサ34の検出圧力が低いほど制御指令CSの指令値Cvに対応付けられているプランジャ5の速度が低下するように、指令値設定部63に参照される特性テーブル55を補正することにより、OP制御部49が出力する制御指令CSの指令値Cvをサイクル間で変化させる。
従って、例えば、特性テーブル55が保持している速度Vに対して、基準圧力P1(例えば特性テーブル55が得られたときのACC圧)と、射出直前のACC圧P2との比のルート値√(P2/P1)を乗じるような簡便な補正によって、精度よく指令値Cvを補正することができる。例えば、特性テーブル55が保持している指令値Cvに対してルート値の逆数√(P1/P2)を乗じて特性テーブル55を補正したり、指令値設定部63が設定した制御指令CSの指令値Cvに対して前記のルート値の逆数√(P1/P2)を乗じたりする態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれる)においては、スプール45が重複区間ORを抜ける前後において特性が変わることに高精度に対応しようとすると、重複区間ORを抜ける前後で分けて演算を行わなければならない。本実施形態では、例えば、そのような不都合は生じない。
また、本実施形態では、射出装置1は、プランジャ5の位置を検出可能な位置センサ37を更に有している。制御装置11は、オープン制御において出力された制御指令CSの指令値Cvと、オープン制御において位置センサ37が検出した速度Vとに基づいて、特性テーブル55を更新する情報更新部69を更に有している。
従って、例えば、流量制御弁29の経年変化に迅速に対応して特性テーブル55を更新することができる。また、例えば、ダイカストマシンDC1の稼働開始からの状態変化(例えば作動液の温度上昇)がプランジャ5の速度に及ぼす影響にも対応して、特性テーブル55を更新することができる。その結果、例えば、オープン制御の精度が好適に維持される。
また、本実施形態では、制御装置11は、オープン制御の終了時点における、目標速度設定部61が設定した目標速度に基づいて算出されたプランジャ5の位置と、位置センサ37によって検出されたプランジャ5の位置との差dDが所定の許容範囲内か否か判定する良否判定部70を更に有している。情報更新部69は、良否判定部70によって許容範囲内と判定されたときのみ(ステップST31で肯定判定がなされたときのみ)、オープン制御における指令値Cv及び速度Vに基づく特性情報の更新を行う(ステップST32)。
従って、例えば、何らかの理由によって指令値Cvに対してプランジャ5の速度Vが異常値を示すような場合にまで特性テーブル55が更新されてしまうおそれが低減される。その結果、例えば、特性テーブル55の信頼性が維持され、ひいては、オープン制御の精度が維持される。また、オープン制御の終了時における算出位置(目標位置)と検出位置とに基づいて良否を判定することから、誤差が最も大きくなる蓋然性が高い時点の結果に基づいて良否を判定することになり、1時点における比較ながら、判定結果の信頼性が高い。
また、本実施形態では、制御装置11は、オープン制御に続いて、位置センサ37の検出値に基づいて、目標速度設定部61が設定した目標速度が実現されるように流量制御弁29のフィードバック制御を行うFB制御部39を更に有している。
従って、例えば、射出開始時においては、オープン制御により射出速度の高精度化が図られ、その後においては、フィードバック制御によって射出速度の高精度化が図られる。その結果、例えば、射出速度が相対的に低速で、かつスプール45が重複区間ORに位置する射出開始時においてフィードバック制御を可能とする必要がなく、ひいては、分解能が高い位置センサ37を用いたり、ゲインを調整したりする必要がない。
また、本実施形態では、流量制御弁29への制御指令CSの指令値Cvとプランジャ5の速度Vとを対応付けた特性情報は、所定の複数の指令値Cvと、プランジャ5の複数の速度Vとを対応付けたテーブル(特性テーブル55)である。制御装置11は、成形サイクルとは別に、前記の所定の複数の指令値Cvの制御指令を順次出力する更新用制御部67を更に有している。情報更新部69は、更新用制御部67から前記の所定の複数の指令値Cvの制御指令CSが順次出力されたときに位置センサ37が検出した速度Vによって、特性テーブル55において前記の所定の複数の指令値Cvと対応付けられている速度Vを更新する。
従って、例えば、特性テーブル55に保持される指令値Cvと、特性テーブル55を生成するための計測における指令値Cvとが互いに対応しており、指令値Cvに対応する速度を正確に取得することができる。ひいては、特性テーブル55の信頼性が向上し、プランジャ5の速度が目標速度に追従しやすくなる。
また、本実施形態では、制御装置11は、目標速度設定部61が設定した目標速度に基づいて、経過時間毎のプランジャ5の目標位置を算出する目標位置算出部65を有している。FB制御部39は、経過時間毎に、そのとき位置センサ37によって検出されたプランジャ5の位置Ddとそのときのプランジャ5の目標位置Dtとの偏差Deに比例した値と、所定のオフセット値との和に基づいて指令値Cvを算出する。そして、FB制御部39は、オープン制御における最後の指令値(図7のCtn)をオフセット値として用いる。
従って、定常偏差が抑制されやすくなるとともに、オープン制御からフィードバック制御へ移行する際のプランジャ5の速度の連続性も確保される。その結果、プランジャ5の速度の目標速度に対する追従性がより向上する。
また、本実施形態では、制御装置11は、目標速度設定部61が設定した目標速度に基づいて算出されたオープン制御の終了時のプランジャ5の位置と、オープン制御の終了時に位置センサ37によって検出されたプランジャ5の位置との差dD(図9)が所定の閾値を超えているときに、所定の警告画像を表示装置35に表示させる表示制御部71を有している。
従って、オペレータは、特性テーブル55を更新すべき時期であることなどを知ることができる。その結果、例えば、不良品が大量に生産される前に、早期に流量制御弁29の経年変化等に対応することができる。
また、本実施形態では、OP制御部49及びFB制御部39は、目標速度設定部61によって設定されたプランジャ5の目標速度が、射出開始から一定の速度(低速射出速度VL)に上昇し、その後、その一定の速度が維持されるものである場合において、前記の一定の速度に到達するときにオープン制御からフィードバック制御に切り換わるように流量制御弁29の制御を行う。
通常、そのような射出開始後の最初の一定の速度(低速射出速度VL)は、比較的低い速度であり、かつスプール45が重複区間ORを抜けるときのプランジャ5の速度(図5におけるVOL)に比較して十分に高い。従って、そのような速度(低速射出速度VL)に到達するときにオープン制御からフィードバック制御に切り換えることによって、例えば、重複区間ORでフィードバック制御が実行されたり、不必要にオープン制御が長く実行されたりするような不都合が生じにくい。すなわち、全体として好適に速度制御がなされる。
以上の実施形態において、ダイカストマシンDC1は成形機の一例である。アキュムレータ23は液圧源の一例である。OP制御部49はオープン制御部の一例である。スプール45は弁体の一例である。第1ポート47Aはポートの一例である。特性テーブル55は特性情報の一例である。ACC用圧力センサ34はアキュムレータ用圧力センサの一例である。FB制御部39はフィードバック制御部の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。
特性情報を更新する機能、オープン制御の最後の指令値をオフセット値とする機能、制御結果の良否を判定する機能、及び/又は警告表示を行う機能等の種々の機能を実現するための構成は設けられなくてもよい。そのような機能がなくても、ヘッド圧の上昇を考慮した流量制御弁の制御がなされることに変わりはない。
射出開始時にヘッド側室へ作動液を供給する液圧源は、アキュムレータに限定されない。例えば、ポンプ、又は電動機によってピストンが駆動されるシリンダであってもよい。また、このようなアキュムレータ以外の液圧源は、射出全体に亘って利用されてもよいし、射出の初期のみにおいて利用されてもよい。このような態様であっても、例えば、ヘッド圧が設定値まで上昇してから流量制御弁のオープン制御を開始することによって、流量制御弁の開方向への駆動開始から速やかにプランジャを駆動することができる。別の観点では、射出開始時のオープン制御の精度を向上させることができる。
実施形態では、液圧源からヘッド側室への作動液の供給は、イン側バルブが開かれることによって開始された。ただし、上記のように液圧源はアキュムレータには限定されないから、例えば、ポンプ又はシリンダを駆動する電動機の駆動開始によってヘッド側室への作動液の供給が開始されてもよい。制御装置は、そのような作動液の供給を開始するための制御指令を出力した後、ヘッド圧が設定値まで上昇したか否か判定してよい。
オープン制御は、オペレータの操作によって設定された目標速度に応じた指令値の制御指令を出力するものに限定されない。例えば、オープン制御は、図6(a)及び図6(b)を参照して説明した、オペレータの設定した目標速度に関わらずに、一定の期間に一定の開度まで流量制御弁を開くものであってもよい。この場合であっても、ヘッド圧が設定値まで上昇してから流量制御弁のオープン制御を開始することによって、例えば、オープン制御の開始から速やかにプランジャを駆動することができる。
流量制御弁は、オーバーラップ形のものに限定されない。別の観点では、指令値の設定方法及び/又は特性情報は、オーバーラップ特性が加味されていなくてもよい。また、流量制御弁は、オーバーラップ形のものであっても、オーバーラップ特性が指令値の設定方法及び/又は特性情報に加味されていなくてもよい。また、オーバーラップ形の流量制御弁は、スプール式のものに限定されない。例えば、弁体が軸回りに回転する滑り弁であってもよい。
流量制御弁への制御指令の指令値とプランジャの速度とを対応付けた特性情報は、複数の指令値と複数の速度とを対応付けたテーブルに限定されない。例えば、特性情報は、速度から指令値を算出する計算式であってもよい。また、特性情報は、指令値と速度とを直接的に対応付けたものではなく、例えば、指令値と流量制御弁における流量とを対応付けた情報と、流量とプランジャの速度とを対応付けた情報とからなっていてもよい。
実施形態では、オープン制御における指令値と、検出された速度とに基づく特性情報の更新(ステップST32)を行うか否かの判定と、警告表示(ステップST33)を行うか否かの判定とは、同一の判定(ステップST31)とされた。ただし、両者の判定は、互いに異なる指標(実施形態では差dD)に基づくものであってもよいし、指標が同一であっても、両者で閾値が異なっていてもよい。
実施形態の説明において、オープン制御における指令値と、検出された速度とに基づく特性情報の更新は毎サイクルにおいて行われる必要はないことについて言及した。同様に、ACC圧に基づく指令値のサイクル間における変化(特性情報の補正)は、毎サイクルにおいて行われる必要はない。例えば、所定数のサイクル毎に行われたり、ACC圧の基準圧力(例えば特性情報が得られたときのACC圧)に対する変化率が所定範囲を超えたときに行われたりしてもよい。
ACC圧に基づく指令値のサイクル間における変化は、実施形態においても言及したように、特性テーブルの速度の値の補正に限定されない。例えば、特性情報に基づいて、目標速度に対応する指令値を特定する際に、目標速度にACC圧の比のルート値の逆数を乗じて指令値特定用の速度を算出し、この指令値特定用の速度に対応する指令値を特性情報に基づいて得てもよい。
実施形態では、入力装置を介して、プランジャの位置に対して射出速度が設定された。ただし、入力装置を介して、経過時間に対して射出速度が設定されてもよい。また、実施形態では、直接的には位置フィードバック制御を行うことによって、実質的に速度フィードバック制御が行われた。ただし、速度自体の偏差に基づく速度フィードバック制御が行われてもよい。
実施形態では、射出速度が最初の一定速度(低速射出速度)に到達する位置(時点)がオープン制御からフィードバック制御へ切り換えられる切換位置とされた。ただし、切換位置は、他の位置とされてもよい。
また、切換位置は、例えば、弁体が重複区間を抜けて重複区間から所定量離れた位置とされてよい。すなわち、設定された目標速度に基づいて切換位置を設定するのではなく、弁体の流量特性に基づいて切換位置が設定されてもよい。なお、実施形態では、目標位置テーブルTb2に保持されている目標位置Dtを参照することによって、射出開始から切換位置までに対応するデータが目標位置テーブルTb2から抽出された。上記のように、重複区間を基準に切換位置を設定する場合においては、例えば、目標位置テーブルTb2からデータを抽出することを除いては実施形態と同様にして経過時間と指令値とを対応付けたテーブルを作成し、その後、指令値が予め設定された値(オープン制御の終了に対応する値)に到達するまでの範囲が抽出されることにより、OP制御用テーブル51が生成されてよい。また、OP制御用テーブル51における、指令値が予め設定された値に到達するときの経過時間に基づいて、目標位置テーブルTb2からFB制御用テーブル53が抽出されてよい。
制御結果の良否判定は、オープン制御が終了した時点の位置に基づくものに限定されない。例えば、射出開始からオープン制御の終了までの誤差を継続的に取得して、そのうちの最大値を用いて判定がなされてもよい。
実施形態では、ヘッド側室13hへの作動液の供給が開始された後、ヘッド用圧力センサ36の検出圧力が設定値まで上昇したときに、流量制御弁29のオープン制御を開始した。ここで、流量制御弁が閉じられている状況においては、ヘッド圧の上昇に伴って、ロッド圧も上昇する。従って、ヘッド側室13hへの作動液の供給が開始された後、ロッド用圧力センサ38の検出圧力が設定値まで上昇したときに、流量制御弁29のオープン制御を開始するようにしてもよい。
ヘッド圧が設定値まで上昇したときにメータアウト回路の流量制御弁のオープン制御を開始する特徴以外の、実施形態で示した種々の特徴は、メータアウト回路の流量制御弁、又は当該流量制御弁のオープン制御等を前提としない射出装置及び成形機に適用されてもよい。例えば、オーバーラップ特性を考慮した特性情報に基づく指令値の設定、特性情報の更新、ACC圧に基づく特性情報の補正等の特徴は、メータイン回路を構成する流量制御弁のオープン制御に適用されてよい。