以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る故障検出装置200を備えた電力変換装置100の一例を、電源10およびモータ20とともに示す。電力変換装置100においては、電源10から供給された電力を変換してモータ20に供給することによって、モータ20を制御する。
電源10は、モータ20を制御するための電力を供給する源である。電源10は、例えば、200Vの3相交流電源であってよい。電源10は、電力変換装置100を介してモータ20へ電力を供給する。
モータ20は、電気エネルギー(電力)を機械エネルギー(動力)に変換する機器である。モータ20は、電源10から供給され、電力変換装置100で変換された電力を動力に変換する。
電力変換装置100は、モータ20を目的にかなった回転速度やトルクで運転するために、電源10から得られた電力を電圧や周波数等を制御することによって変換し、モータ20へ供給する。電力変換装置100は、整流回路110と、平滑コンデンサ120と、インバータ回路130と、導体140と、制御回路150と、駆動回路160と、電流検出器170と、故障検出装置200とを備える。
整流回路110は、6個のダイオードがブリッジ接続されており、電源10の交流の出力を整流する。
平滑コンデンサ120は、整流回路110の直流出力端子間に接続されており、整流回路110の出力を平滑化する。
インバータ回路130は、整流回路110の直流出力端子間に接続されており、整流回路110の出力を変換してモータ20へ供給する。インバータ回路130は、例えば、3相電圧制御型インバータ回路であってよく、整流回路110から出力された直流電圧を3相交流電圧に変換して、3相交流モータであるモータ20へ供給する。この際、インバータ回路130の出力周波数を変えることにより、モータ20の速度を変化させることができる。このようなインバータ回路130は、例えば、第1~第3のアーム回路が並列接続されて構成される。それぞれのアーム回路は、直列に接続されたトランジスタからなる2つの半導体スイッチ素子と、これら半導体スイッチ素子を構成するトランジスタのエミッタ・コレクタ間にそれぞれ逆並列接続されたダイオードとを含む。なお、本図においては、半導体スイッチ素子がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である場合を一例として示している。しかしながら、これに限定されるものではない。半導体スイッチ素子として、トランジスタ、および、MOS-FET等、種々のスイッチング素子が用いられてよい。このような各アーム回路における2つの半導体スイッチ素子の接続点が、出力点U、出力点V、および、出力点Wをそれぞれ構成している。
導体140は、U相電流、V相電流、および、W相電流(「モータ電流」ともいう)が流れる配線であり、U相の導体140u、V相の導体140v、および、W相の導体140w(「導体140」と総称する。)を含む。このような3相の導体140は、それぞれ、一端がインバータ回路130の出力点に接続され、他端が3相誘導電動機からなるモータ20の励磁巻線の端部に接続されている。すなわち、U相の導体140uは、一端が出力点Uに、他端がモータ20におけるU相の励磁巻線の端部に接続されている。V相の導体140vは、一端が出力点Vに接続され、他端がモータ20におけるV相の励磁巻線の端部に接続されている。W相の導体140wは、一端が出力点Wに接続され、他端がモータ20におけるW相の励磁巻線の端部に接続されている。
制御回路150は、測定された様々な物理量(電流、電圧、回転速度等)に応じて、モータ20を制御するために必要な指令信号を駆動回路160へ与え、駆動回路160を制御する。
駆動回路160は、半導体スイッチ素子を構成するトランジスタのゲートをそれぞれ駆動する。駆動回路160は、例えば、制御回路150からの制御指令、一例として、PWM(Pulse Width Modulation)指令信号に基づき、インバータ回路130に含まれる半導体スイッチ素子を構成するトランジスタのゲートをそれぞれ駆動する。
このような電力変換装置100においては、モータ電流をフィードバックすることによって、モータ電流に基づくフィードバック制御が実行される。そのため、電力変換装置100には、モータ電流が流れる導体140に電流検出器170が設けられる。
電流検出器170は、一対の磁気センサを含み、導体140に流れる電流により発生する磁束密度に応じた値をそれぞれ検出する。電流検出器170の詳細については後述する。本実施形態において、このような電流検出器170は、3相の導体140のうちの少なくとも2相の導体140に設けられていればよい。本図においては、3相交流におけるU相を「第1相」と定義し、W相を「第2相」と定義した場合を一例として示している。すなわち、U相の導体140uおよびW相の導体140wに、第1相の電流検出器170uおよび第2相の電流検出器170w(「電流検出器170」と総称する。)がそれぞれ設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。電流検出器170は、U相の導体140uおよびV相の導体140vに設けられていてもよいし、V相の導体140vおよびW相の導体140wに設けられていてもよい。また、上述の説明では、電流検出器170が3相の導体140のうちの2相の導体140にのみ設けられている場合を一例として示したが、電流検出器170が3相全てに設けられる場合を排除するものではない。すなわち、電流検出器170は、U相の導体140u、V相の導体140v、および、W相の導体140wの全てに設けられていてもよい。
故障検出装置200は、このような電流検出器170に含まれる磁気センサから検出値を取得して相電流を推定する。そして、故障検出装置200は、相電流の推定値に基づいて、電流検出器170に含まれるいずれかの磁気センサの故障を検出する。
故障検出装置200は、取得部210と、推定部220と、検出部230とを備える。なお、これらブロックは、それぞれ機能的に分離された機能ブロックであって、実際のデバイス構成とは必ずしも一致していなくてもよい。すなわち、本図において、1つのブロックとして示されているからといって、それが必ずしも1つのデバイスにより構成されていなくてもよい。また、本図において、別々のブロックとして示されているからといって、それらが必ずしも別々のデバイスにより構成されていなくてもよい。また、本図においては、故障検出装置200が、制御回路150や駆動回路160とは異なるブロックとして示されているが、故障検出装置200の一部または全部は、制御回路150および駆動回路160の少なくともいずれかと一体に構成されていてもよい。一例として、制御回路150と故障検出装置200とが一体に構成され、1つのCPUによりこれらの機能が実現されてもよい。
取得部210は、第1相電流(U相電流)により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第1検出値と第1相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第2検出値を第1磁気センサと第2磁気センサからそれぞれ取得する。ここで、第1磁気センサは、第1相の電流検出器170uに含まれる一方の磁気センサであり、第2磁気センサは、第1相の電流検出器170uに含まれる他方の磁気センサである。同様に、取得部210は、第2相電流(W相電流)により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第3検出値と第2相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第4検出値を第3磁気センサと第4磁気センサからそれぞれ取得する。ここで、第3磁気センサは、第2相の電流検出器170wに含まれる一方の磁気センサであり、第4磁気センサは、第2相の電流検出器170wに含まれる他方の磁気センサである。
この際、電流検出器170が後述する演算回路を含む場合には、取得部210は、第1の演算結果および第2の演算結果を併せて取得してもよい。取得部210は、取得した第1検出値、第2検出値、第3検出値、および、第4検出値、並びに、第1の演算結果および第2の演算結果を推定部220へ供給する。
推定部220は、第1検出値と第2検出値を用いて第2相電流を推定した第1の推定値、第3検出値を用いて第2相電流を推定した第2の推定値、および、第4検出値を用いて第2相電流を推定した第3の推定値をそれぞれ算出する。同様に、推定部220は、更に、第3検出値と第4検出値を用いて第1相電流を推定した第4の推定値、第1検出値を用いて第1相電流を推定した第5の推定値、および、第2検出値を用いて第1相電流を推定した第6の推定値をそれぞれ算出する。推定部220は、算出した第1の推定値、第2の推定値、第3の推定値、第4の推定値、第5の推定値、および、第6の推定値を検出部230へ供給する。
検出部230は、第1の推定値、第2の推定値、および、第3の推定値に基づいて、第3磁気センサおよび第4磁気センサのいずれかの故障を検出する。同様に、検出部230は、更に、第4の推定値、第5の推定値、および、第6の推定値に基づいて、第1磁気センサおよび第2磁気センサのいずれかの故障を検出する。そして、検出部230は、検出結果に応じた推定値を制御回路150へ供給する。これに応じて、制御回路150は、検出部230から供給された推定値に基づくフィードバック制御を実行する。これについても後述する。
図2は、第1相の電流検出器170uを例として、電流検出器170の構成を導体140とともに示す。第1相の電流検出器170uは、第1磁気センサ171と、第2磁気センサ172と、第1の演算回路175uと、第1の出力部176uを含む。
第1磁気センサ171と第2磁気センサ172は、U相の導体140uを挟んで対向する位置に配置可能に構成され、第1磁気センサ171と第2磁気センサ172とで一対の磁気センサを成している。
第1磁気センサ171においては、U相の導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束の向きとセンサの検出方向(軸)とが略同方向であってよい。すなわち、第1磁気センサ171は、U相の導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第1検出値iu_det1を検出してよい。より好ましくは、第1磁気センサ171は、U相の導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束密度に比例して値が増加する第1検出値iu_det1を検出してよい。第1磁気センサ171は、検出した第1検出値iu_det1を第1の演算回路175uおよび第1の出力部176uへ供給する。
第2磁気センサ172においては、U相の導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束の向きとセンサの検出方向(軸)とが略逆方向であってよい。すなわち、第2磁気センサ172は、導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第2検出値iu_det2を検出してよい。より好ましくは、第2磁気センサ172は、導体140uに流れる第1相電流により発生する磁束密度に比例して値が減少する第2検出値iu_det2を検出してよい。第2磁気センサ172は、検出した第2検出値iu_det2を第1の演算回路175uおよび第1の出力部176uへ供給する。
このように、第1磁気センサ171と第2磁気センサ172は、対象電流が流れる導体140を挟んで対向する位置に配置可能に構成されるとともに、一方の検出方向が対象電流により発生する磁束の向きと略同方向に、他方の検出方向が対象電流により発生する磁束の向きと略逆方向に構成される。すなわち、第1磁気センサ171と第2磁気センサ172は、大きさが略同一で極性が異なる第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2をそれぞれ検出可能なように構成される。
第1の演算回路175uは、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を入力する。そして、第1の演算回路175uは、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を用いた演算により、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計に応じた第1の演算結果iu_detを得る。第1の演算回路175uは、このような演算結果を得ることが可能ないかなる回路であってもよい。一例として、第1の演算回路175uは、差分回路であってもよく、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を用いた差分演算により第1の演算結果iu_detを得てよい。この際、第1の演算回路175uは、差分回路の非反転入力端子に第1検出値iu_det1を入力し、反転入力端子に第2検出値iu_det2を入力し、ゲインを1とすることにより、第1相電流の略2倍に応じた第1の演算結果iu_detを得ることができる。第1の演算回路175uは、得られた第1の演算結果iu_detを第1の出力部176uへ供給する。なお、上述の説明では、第1の演算回路175uがゲインを1として第1相電流の略2倍に応じた第1の演算結果iu_detを得る場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。第1の演算回路175uは、ゲインを調整することによって、第1相電流の略等倍に応じた第1の演算結果iu_detを得てもよい。したがって、上述の「第1磁気センサ171および第2磁気センサ172によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計に応じた第1の演算結果iu_det」という用語には、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計そのものに応じた演算結果に加えて、このようにゲイン調整された演算結果をも含まれるものと定義される。なお、本明細書で記載する「合計」とは、2つ以上の値を合わせ計算することで、その計算は、和・差・積・商の四則演算とその他の計算を含めてもよい。
第1の出力部176uは、第1検出値iu_det1、第2検出値iu_det2、および、第1の演算結果iu_detを出力する。
なお、ここでは、説明を省略するが、第2相の電流検出器170wについても第1相の電流検出器170uと同様に構成されてよい。すなわち、第2相の電流検出器170wは、第3磁気センサ173と、第4磁気センサ174と、第2の演算回路175wと、第2の出力部176wとを含んでよい。ここで、「第1の演算回路175u」および「第2の演算回路175w」を「演算回路175」と総称する。また、「第1の出力部176u」と「第2の出力部176w」を「出力部176」と総称する。この場合、第3磁気センサ173は、W相の導体140wに流れる第2相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第3検出値iw_det1を検出してよい。同様に、第4磁気センサ174は、W相の導体140wに流れる第2相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第4検出値iw_det2を検出してよい。また、第2の演算回路175wは、第3検出値iw_det1および第4検出値iw_det2を用いた演算により、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計に応じた第2の演算結果iw_detを得てよい。そして、第2の出力部176wは、第3検出値iw_det1、第4検出値iw_det2、および、第2の演算結果iw_detを出力してよい。
本実施形態に係る故障検出装置200は、このように少なくとも2相の導体140に設けられた電流検出器170から検出値をそれぞれ取得して相電流を推定する。そして、本実施形態に係る故障検出装置200は、相電流の推定値に基づいて、電流検出器170に含まれるいずれかの磁気センサの故障を検出する。これについてフローを用いて詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る故障検出装置200が磁気センサの故障を検出するフローの一例を示す。
ステップS310において、故障検出装置200は、第1~第4検出値、並びに、第1~第2の演算結果を取得する。例えば、取得部210は、第1相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第1検出値iu_det1と第1相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第2検出値iu_det2を、第1相の電流検出器170uに含まれる第1磁気センサ171と第2磁気センサ172から第1の出力部176uを介してそれぞれ取得する。また、取得部210は、第1の演算結果iu_detを、第1相の電流検出器170uに含まれる第1の演算回路175uから第1の出力部176uを介して取得する。
同様に、取得部210は、第2相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が増加する第3検出値iw_det1と第2相電流により発生する磁束密度の増加に応じて値が減少する第4検出値iw_det2を、第2相の電流検出器170wに含まれる第3磁気センサ173と第4磁気センサ174から第2の出力部176wを介してそれぞれ取得する。また、取得部210は、第2の演算結果iw_detを、第2相の電流検出器170wに含まれる第2の演算回路175wから第2の出力部176wを介して取得する。
なお、ここでいう「取得する」とは、電流検出器170から直接取得することに限定されるものではない。取得部210は、これら検出値や演算結果を、例えば、他の機器やネットワーク等を介して取得してもよいし、各種メモリデバイスを介して取得してもよいし、ユーザ入力を介して取得してもよい。
また、上述の説明では、取得部210が、第1の演算結果iu_detおよび第2の演算結果iw_detを第1相の電流検出器170uおよび第2相の電流検出器170wからそれぞれ取得する場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。第1の演算結果iu_detおよび第2の演算結果iw_detの少なくともいずれかが第1相の電流検出器170uおよび第2相の電流検出器170wから供給されない場合(例えば、電流検出器170が演算回路175を含まない場合等)には、取得部210は、演算回路175と同様の演算を実行することにより、第1の演算結果iu_detおよび第2の演算結果iw_detの少なくともいずれかを取得してもよい。
取得部210は、取得した第1検出値iu_det1、第2検出値iu_det2、第3検出値iw_det1、および、第4検出値iw_det2、並びに、第1の演算結果iu_detおよび第2の演算結果iw_detを推定部220へ供給する。
ステップS320において、故障検出装置200は、第2相電流を推定した第1の推定値、第2の推定値、および、第3の推定値を算出する。例えば、推定部220は、第1検出値iu_det1と第2検出値iu_det2を用いて第2相電流を推定した第1の推定値iw_est(U)、第3検出値iw_det1を用いて第2相電流を推定した第2の推定値iw_est(W1)、および、第4検出値iw_det2を用いて第2相電流を推定した第3の推定値iw_est(W2)をそれぞれ算出する。これについて数式を用いて詳細に説明する。
各電流検出器170は自相の電流により発生する磁束に加えて、他相の電流により発生する磁束も検出する。ここで、U相とV相との間における磁束の結合パラメータをKuv、V相とW相との間における磁束の結合パラメータをKvw、および、W相とU相との間における磁束の結合パラメータをKwuとする。また、U相電流をiu、V相電流をiv、および、W相電流をiwとする。ここで、iu+iv+iw=0とすると、第1相の電流検出器170uに含まれる第1磁気センサ171が検出する第1検出値iu_det1は、次式により示される。
また、第1相の電流検出器170uに含まれる第2磁気センサ172が検出する第2検出値iu_det2は、次式により示される。
したがって、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2の和は、次式により示されることとなる。
また、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2の差は、次式により示されることとなる。
そして、(数5)を(数3)に代入することにより、推定部220は、次式に示されるように、第1磁気センサ171と第2磁気センサ172から取得した第1検出値iu_det1と第2検出値iu_det2を用いて、第2相電流を推定した第1の推定値iw_est(U)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174から取得した第3検出値iw_det1および第4検出値iw_det2を用いることなく、第2相電流を推定することができる。
また、第2相の電流検出器170wに含まれる第3磁気センサ173が検出する第3検出値iw_det1は、次式により示される。
また、第2相の電流検出器170wに含まれる第4磁気センサ174が検出する第4検出値iw_det2は、次式により示される。
ここで、(数7)におけるiwをiw_est(W1)とおいて整理することにより、推定部220は、次式に示されるように、第3磁気センサ173から取得した第3検出値iw_det1を用いて、第2相電流を推定した第2の推定値iw_est(W1)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第4磁気センサ174から取得した第4検出値iw_det2を用いることなく、第2相電流を推定することができる。
同様に、(数8)におけるiwをiw_est(W2)とおいて整理することにより、推定部220は、次式に示されるように、第4磁気センサ174から取得した第4検出値iw_det2を用いて、第2相電流を推定した第3の推定値iw_est(W2)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第3磁気センサ173から取得した第3検出値iw_det1を用いることなく、第2相電流を推定することができる。
例えばこのようにして、推定部220は、第1検出値iu_det1と第2検出値iu_det2を用いて第2相電流を推定した第1の推定値iw_est(U)、第3検出値iw_det1を用いて第2相電流を推定した第2の推定値iw_est(W1)、および、第4検出値iw_det2を用いて第2相電流を推定した第3の推定値iw_est(W2)をそれぞれ算出することができる。推定部220は、算出した第1の推定値iw_est(U)、第2の推定値iw_est(W1)、および、第3の推定値iw_est(W2)を検出部230へ供給する。
ステップS330において、故障検出装置200は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)の差の一方のみが基準を満たさないかどうか判定する。例えば、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否か、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。そして、検出部230は、いずれか一方のみが閾値を超える場合に、いずれか一方のみが基準を満たさない(Yes)と判定する。この場合、検出部230は、第2の推定値iw_est(W1)を算出する際に用いられた第3検出値iw_det1および第3の推定値iw_est(W2)を算出する際に用いられた第4検出値iw_det2のいずれかが異常な値であると推論して、当該第3検出値iw_det1および第3検出値iw_det2を検出した第3磁気センサ173および第4磁気センサ174のいずれかの故障を検出する。このように、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差のいずれか一方のみが予め定められた基準を満たさない場合に、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174のいずれかの故障を検出する。そして、故障検出装置200は、処理をステップS335に進める。
ステップS335において、故障検出装置200は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差が基準を満たさないかどうか判定する。例えば、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否か判定する。そして、検出部230は、閾値を超える場合に、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差が基準を満たさない(Yes)と判定する。そして、故障検出装置200は、処理をステップS340に進める。
ステップS340において、故障検出装置200は、第3磁気センサ173の故障を検出する。例えば、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差が基準を満たすのに対して、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差が基準を満たさない場合に、第2の推定値iw_est(W1)を算出する際に用いられた第3検出値iw_det1が異常な値であると推論して、当該第3検出値iw_det1を検出した第3磁気センサ173の故障を検出する。すなわち、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差が基準を満たす場合、第1の推定値iw_est(U)を算出する際に用いられた第1検出値iu_det1と第2検出値iu_det2、および、第3の推定値iw_est(W2)を算出する際に用いられた第4検出値iw_det2が正常な値である蓋然性が高い。このような場合に、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差のみが基準を満たさないということは、第3検出値iw_det1が異常な値である蓋然性が高い。したがって、検出部230は、このような場合に当該第3検出値iw_det1を検出した第3磁気センサ173の故障を検出する。このように、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差が予め定められた基準を満たさない場合に、第3磁気センサ173の故障を検出する。
一方、ステップS335において、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差の絶対値が予め定められた閾値以下である場合に、故障検出装置200は、処理をステップS350に進める。
ステップS350において、故障検出装置200は、第4磁気センサ174の故障を検出する。例えば、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差が基準を満たすのに対して、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差が基準を満たさない場合に、第3の推定値iw_est(W2)を算出する際に用いられた第4検出値iw_det2が異常な値であると推論して、当該第4検出値iw_det2を検出した第4磁気センサ174の故障を検出する。このように、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差が予め定められた基準を満たさない場合に、第4磁気センサ174の故障を検出する。
このように、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)、第2の推定値iw_est(W1)、および、第3の推定値iw_est(W2)に基づいて、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174のいずれかの故障を検出する。より詳細には、検出部230は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差に基づいて、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174のいずれかの故障を検出することができる。
一方、ステップS330において、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)の差の絶対値、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)の差の絶対値の両者が予め定められた閾値以下である場合、または、両者が予め定められた閾値を超える場合に、故障検出装置200は、処理をステップS360に進める。
ステップS360において、故障検出装置200は、第1相電流を推定した第4の推定値、第5の推定値、および、第6の推定値を算出する。例えば、推定部220は、第3検出値iw_det1と第4検出値iw_det2を用いて第1相電流を推定した第4の推定値iu_est(W)、第1検出値iu_det1を用いて第1相電流を推定した第5の推定値iu_est(U1)、および、第2検出値iu_det2を用いて第1相電流を推定した第6の推定値iu_est(U2)をそれぞれ算出する。
第2相の電流検出器170uに含まれる第3磁気センサ173が検出する第3検出値iw_det1は、次式により示される。
また、第2相の電流検出器170wに含まれる第4磁気センサ174が検出する第4検出値iw_det2は、次式により示される。
したがって、第3検出値iw_det1および第4検出値iw_det2の和は、次式により示されることとなる。
また、第3検出値iw_det1および第4検出値iw_det2の差は、次式により示されることとなる。
そして、(数15)を(数13)に代入することにより、推定部220は、次式に示されるように、第3磁気センサ173と第4磁気センサ174から取得した第3検出値iw_det1と第4検出値iw_det2を用いて、第1相電流を推定した第4の推定値iu_est(W)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172から取得した第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を用いることなく、第1相電流を推定することができる。
また、第1相の電流検出器170uに含まれる第1磁気センサ171が検出する第1検出値iu_det1は、次式により示される。
また、第1相の電流検出器170uに含まれる第2磁気センサ172が検出する第2検出値iu_det2は、次式により示される。
ここで、(数17)におけるiuをiu_est(U1)とおいて整理することにより、推定部220は、次式に示されるように、第1磁気センサ171から取得した第1検出値iu_det1を用いて、第1相電流を推定した第5の推定値iu_est(U1)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第2磁気センサ172から取得した第2検出値iu_det2を用いることなく、第1相電流を推定することができる。
同様に、(数18)におけるiuをiu_est(U2)とおいて整理することにより、推定部220は、次式に示されるように、第2磁気センサ172から取得した第2検出値iu_det2を用いて、第1相電流を推定した第6の推定値iu_est(U2)を算出することができる。すなわち、推定部220は、第1磁気センサ171から取得した第1検出値iu_det1を用いることなく、第1相電流を推定することができる。
このように、推定部220は、第3検出値iw_det1と第4検出値iw_det2を用いて第1相電流を推定した第4の推定値iu_est(W)、第1検出値iu_det1を用いて第1相電流を推定した第5の推定値iu_est(U1)、および、第2検出値iu_det2を用いて第1相電流を推定した第6の推定値iu_est(U2)をそれぞれ算出することができる。推定部220は、算出した第4の推定値iu_est(W)、第5の推定値iu_est(U1)、および、第6の推定値iu_est(U2)を検出部230へ供給する。
ステップS370において、故障検出装置200は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)の差の一方のみが基準を満たさないかどうか判定する。例えば、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否か、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。そして、検出部230は、いずれか一方のみが閾値を超える場合に、いずれか一方のみが基準を満たさない(Yes)と判定する。この場合、検出部230は、第5の推定値iu_est(U1)を算出する際に用いられた第1検出値iu_det1および第6の推定値iu_est(U2)を算出する際に用いられた第2検出値iu_det2のいずれかが異常な値であると推論して、当該第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を検出した第1磁気センサ171および第2磁気センサ172のいずれかの故障を検出する。このように、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差のいずれか一方のみが予め定められた基準を満たさない場合に、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172のいずれかの故障を検出する。そして、故障検出装置200は、処理をステップS375に進める。
ステップS375において、故障検出装置200は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差が基準を満たさないかどうか判定する。例えば、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差の絶対値が予め定められた閾値を超えるか否か判定する。そして、検出部230は、閾値を超える場合に、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差が基準を満たさない(Yes)と判定する。そして、故障検出装置200は、処理をステップS380に進める。
ステップS380において、故障検出装置200は、第1磁気センサ171の故障を検出する。例えば、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差が基準を満たすのに対して、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差が基準を満たさない場合に、第5の推定値iu_est(U1)を算出する際に用いられた第1検出値iu_det1が異常な値であると推論して、当該第1検出値iu_det1を検出した第1磁気センサ171の故障を検出する。すなわち、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差が基準を満たす場合、第4の推定値iu_est(W)を算出する際に用いられた第3検出値iw_det1と第4検出値iw_det2、および、第6の推定値iu_est(U2)を算出する際に用いられた第2検出値iu_det2が正常な値である蓋然性が高い。このような場合に、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差のみが基準を満たさないということは、第1検出値iu_det1が異常な値である蓋然性が高い。したがって、検出部230は、このような場合に当該第1検出値iu_det1を検出した第1磁気センサ171の故障を検出する。このように、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差が予め定められた基準を満たさない場合に、第1磁気センサ171の故障を検出する。
一方、ステップS375において、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差の絶対値が予め定められた閾値以下である場合に、故障検出装置200は、処理をステップS390に進める。
ステップS390において、故障検出装置200は、第2磁気センサ172の故障を検出する。例えば、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差が基準を満たすのに対して、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差が基準を満たさない場合に、第6の推定値iu_est(U2)を算出する際に用いられた第2検出値iu_det2が異常な値であると推論して、当該第2検出値iu_det2を検出した第2磁気センサ172の故障を検出する。このように、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(UW2)との差が予め定められた基準を満たさない場合に、第2磁気センサ172の故障を検出する。
一方、ステップS390において、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)の差の絶対値、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)の差の絶対値の両者が予め定められた閾値以下である場合、または、両者が予め定められた閾値を超える場合に、故障検出装置200は、いずれの磁気センサの故障も検出することなく、フローを終了する。
このように、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)、第5の推定値iu_est(U1)、および、第6の推定値iu_est(U2)に基づいて、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172のいずれかの故障を検出する。より詳細には、検出部230は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差に基づいて、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172のいずれかの故障を検出することができる。
故障検出装置200は、例えばこのようなフローにより、第1磁気センサ171、第2磁気センサ172、第3磁気センサ173、および、第4磁気センサ174のいずれが故障したかを特定することが可能である。したがって、電力変換装置100は、このような故障検出装置200による検出結果に基づいてフィードバック制御を実行するとよい。
図4は、本実施形態に係る故障検出装置200により故障が検出された磁気センサとフィードバック制御に用いる電流値との関係を示している。本図に示されるように、故障が検出された磁気センサが「なし」である場合、すなわち、いずれの磁気センサについても故障が検出されなかった場合、フィードバック制御に用いるU相電流として、(数5)に示されるiuが用いられてよい。すなわち、第1検出値iu_det1と第2検出値iu_det2の差分を2で除算した値、換言すれば、第1の演算結果iu_detを2で除算した値が用いられてよい。同様に、フィードバック制御に用いるW相電流として、(数15)に示されるiwが用いられてよい。すなわち、第3検出値iw_det1と第4検出値iw_det2の差分を2で除算した値、換言すれば、第2の演算結果iw_detを2で除算した値が用いられてよい。
故障が検出された磁気センサが「第1磁気センサ171」である場合、第1磁気センサ171により検出された第1検出値iu_det1を用いて算出された値をフィードバック制御に用いることは好ましくない。そこで、このような場合には、フィードバック制御に用いるU相電流として、(数20)に示される第6の推定値iu_est(U2)が用いられてよい。同様に、故障が検出された磁気センサが「第2磁気センサ172」である場合、第2磁気センサ172により検出された第2検出値iu_det2を用いて算出された値をフィードバック制御に用いることは好ましくない。そこで、このような場合には、フィードバック制御に用いるU相電流として、(数19)に示される第5の推定値iu_est(U1)が用いられてよい。
また、故障が検出された磁気センサが「第3磁気センサ173」である場合、第3磁気センサ173により検出された第3検出値iw_det1を用いて算出された値をフィードバック制御に用いることは好ましくない。そこで、このような場合には、フィードバック制御に用いるW相電流として、(数10)に示される第3の推定値iw_est(W2)が用いられてよい。同様に、故障が検出された磁気センサが「第4磁気センサ174」である場合、第4磁気センサ174により検出された第4検出値iw_det2を用いて算出された値をフィードバック制御に用いることは好ましくない。そこで、このような場合には、フィードバック制御に用いるW相電流として、(数9)に示される第2の推定値iw_est(W1)が用いられてよい。
したがって、検出部230は、いずれかの磁気センサの故障が検出された場合に、検出結果に応じた推定値を制御回路150へ供給するとよい。これに応じて、制御回路150は、検出部230から供給された推定値に基づくフィードバック制御を実行する。これにより、制御回路150は、磁気センサのいずれかの故障が検出された場合に、故障が検出されていない磁気センサからの検出値を用いて算出された推定値に基づいてフィードバック制御を実行することができる。
図5は、本実施形態に係る故障検出装置200を備えた電力変換装置100´の変形例を、電源10およびモータ20とともに示す。図5においては、図1と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。上述の実施形態においては、第1相の電流検出器170uおよび第2相の電流検出器170wが、第1の演算回路175uおよび第2の演算回路175wをそれぞれ含む場合を一例として示した。しかしながら、本変形例においては、第1相の電流検出器170u´および第2相の電流検出器170w´が、第1の演算回路175uをおよび第2の演算回路175wを含まずに、電力変換装置100´が演算回路175´を備える。この場合、演算回路175´は、第1の演算回路175uをおよび第2の演算回路175wが有する機能を実行してよい。
この際、例えば、制御回路150と故障検出装置200とが一体に構成され、1つのCPUによりこれらの機能が実現される場合、当該CPUが搭載された基板上に演算回路175´が実装されてもよい。このように、制御回路150が搭載された基板上に、第1検出値iu_det1および第2検出値iu_det2を用いた演算により、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計に応じた演算結果、および、第3検出値iw_det1および第4検出値iw_det2を用いた演算により、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174によりそれぞれ検出された磁束密度の大きさの合計に応じた演算結果を得る演算回路175´が実装されてもよい。
なお、上述の説明では、制御回路150と故障検出装置200とが一体に構成され、1つのCPUによりこれらの機能が実現される場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。本実施形態に係る故障検出装置200は、電力変換装置100とは別体に構成されたPC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。また、故障検出装置200は、コンピュータ内で1または複数実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、故障検出装置200は、故障検出用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。また、故障検出装置200がインターネットに接続可能な場合、故障検出装置200は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
このように、故障検出装置200は、電流検出器170に含まれる磁気センサから検出値を取得して相電流を推定する。そして、故障検出装置200は、相電流の推定値に基づいて、電流検出器170に含まれるいずれかの磁気センサの故障を検出する。これにより、故障検出装置200によれば、3相交流における2相のみに電流検出器170が設けられる場合であっても、いずれかの磁気センサが故障したことを検出することができる。特に、故障検出装置200は、第1の推定値iw_est(U)と第2の推定値iw_est(W1)との差、および、第1の推定値iw_est(U)と第3の推定値iw_est(W2)との差に基づいて、第3磁気センサ173および第4磁気センサ174のいずれかの故障を検出する。また、故障検出装置200は、第4の推定値iu_est(W)と第5の推定値iu_est(U1)との差、および、第4の推定値iu_est(W)と第6の推定値iu_est(U2)との差に基づいて、第1磁気センサ171および第2磁気センサ172のいずれかの故障を検出する。これにより、故障検出装置200によれば、故障した磁気センサを特定することができる。また、本実施形態において、このような故障検出装置200を備えた電力変換装置100が提供される。これにより、信頼性を担保するために冗長された電流検出手段が要求される電力変換装置100においても、3相全てに電流検出器170を設けることなく冗長化を図ることができる。そのため、このような電力変換装置100によれば、電流検出器170の総体積を低減でき、小型化を図ることができるうえ、コストダウンが可能となる。この際、演算回路175は、電流検出器170に内蔵されていてもよい。このような電流検出器170によれば、一対の磁気センサによりそれぞれ検出された検出値に加えて、これら検出値を用いた演算により得られた演算結果をも出力することができる。これに代えて、演算回路175´が電力変換装置100に内蔵されていてもよく、このような演算回路175´は、制御回路150を搭載する基板上に実装されていてもよい。このような電力変換装置100によれば、演算回路175を含まない電流検出器170´が用いられた場合であっても、制御回路150と同一基板上で演算回路175と同様の演算結果を得ることができる。
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
図6は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ9900の例を示す。コンピュータ9900にインストールされたプログラムは、コンピュータ9900に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ9900に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ9900に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU9912によって実行されてよい。
本実施形態によるコンピュータ9900は、CPU9912、RAM9914、グラフィックコントローラ9916、およびディスプレイデバイス9918を含み、それらはホストコントローラ9910によって相互に接続されている。コンピュータ9900はまた、通信インターフェイス9922、ハードディスクドライブ9924、DVDドライブ9926、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ9920を介してホストコントローラ9910に接続されている。コンピュータはまた、ROM9930およびキーボード9942のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ9940を介して入/出力コントローラ9920に接続されている。
CPU9912は、ROM9930およびRAM9914内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ9916は、RAM9914内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU9912によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス9918上に表示されるようにする。
通信インターフェイス9922は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ9924は、コンピュータ9900内のCPU9912によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブ9926は、プログラムまたはデータをDVD-ROM9901から読み取り、ハードディスクドライブ9924にRAM9914を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
ROM9930はその中に、アクティブ化時にコンピュータ9900によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ9900のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ9940はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ9920に接続してよい。
プログラムが、DVD-ROM9901またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ9924、RAM9914、またはROM9930にインストールされ、CPU9912によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ9900に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ9900の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
例えば、通信がコンピュータ9900および外部デバイス間で実行される場合、CPU9912は、RAM9914にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス9922に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス9922は、CPU9912の制御下、RAM9914、ハードディスクドライブ9924、DVD-ROM9901、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
また、CPU9912は、ハードディスクドライブ9924、DVDドライブ9926(DVD-ROM9901)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM9914に読み取られるようにし、RAM9914上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU9912は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU9912は、RAM9914から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM9914に対しライトバックする。また、CPU9912は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU9912は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ9900上またはコンピュータ9900近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ9900に提供する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。