以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。また図1においては車両右側のリヤフロアサイドパネルおよびサイドシルアウタ、図2においては車両左側のリヤサスペンションおよびリヤホイールハウスの図示は夫々省略するものとする。また図6中の「×」印はスポット溶接箇所を示すとともに本実施形態の車両の下部車体構造は、左右対称形状であるため、特に示す場合を除いて車両右側の構成に基づいて説明するものとする。
本実施形態の車両の下部車体構造においては、車室の床面を形成するフロアパネル1(図2参照)を設け、フロアパネル1の車幅方向略中央部には車室内に突出して、車両前後方向に延びるトンネル部2(図1、図2参照)が一体形成されている。
フロアパネル1の両サイドには、図1、図2に示すように、車体強度部材としてのサイドシル3を接合固定している。サイドシル3は、その車両前後方向の直交断面を示す例えば、図4に示すように、サイドシルインナ3aとサイドシルレイン3bとを備えて車両前後方向に延びる閉断面が構成され、さらにサイドシルレイン3bには、ボディサイドの一部を成す意匠パネルとしてのサイドシルアウタ3cが車幅方向外側から接合されている。
また、トンネル部2とサイドシル3との間において、フロアパネル1の下面には、車両前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム19(図2参照)が接合固定されている。
図2、図3に示すように、上述のフロアパネル1の後部には、上方に立ち上がるキックアップ部4を介して車体後部フロアを構成するリヤフロアパネル5を一体的に連設しており、該リヤフロアパネル5の両サイドには、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム6が設けられている。
リヤフロアパネル5の前部5F(以下、「リヤフロア前部5F」と称する)は、後部座席の底面を構成する一方、図1~図3に示すように、リヤフロアパネル5の後部5R(以下、「リヤフロア後部5R」と称する)は、荷室フロアを構成し、その車幅方向中間部に下方に窪むスペアタイヤパン又は他の部品を兼ねる凹部5aが一体形成されている。
同図に示すように、リヤフロアパネル5の上下各側には、左右一対のリヤサイドフレーム6間を車幅方向に橋渡しするリヤクロスメンバ8を配設している。
詳しくは、図2、図3に示すように、リヤフロア前部5Fの前部には、車幅方向に延びて両サイドのリヤサイドフレーム6を車幅方向に連結する前側リヤクロスメンバ8fをリヤフロア前部5Fの下面側から接合固定している。
リヤフロア前部5Fとリヤフロア後部5Rとの境界部であって、リヤフロアパネル5の上下両部には、リヤクロスメンバアッパ8mu(図1参照)とリヤクロスメンバロア8md(図2、図3参照)とをスポット溶接等により夫々接合固定している。これら両者8mu,8mdは何れも車幅方向に延びて両サイドのリヤサイドフレーム6を車幅方向に連結する中間リヤクロスメンバ8m(いわゆるNo.4クロスメンバ)であって、リヤクロスメンバアッパ8muとリヤフロアパネル5との間、並びに、リヤクロスメンバロア8mdとリヤフロアパネル5との間には、上下方向にオーバーラップする閉断面が夫々形成されている。
さらに図3に示すように、リヤフロア後部5Rには、該リヤフロア後部5Rの凹部5aを横切るように車幅方向に延びて両サイドのリヤサイドフレーム6を車幅方向に連結する後側リヤクロスメンバ8r(いわゆるNo.4.5クロスメンバ)をリヤフロア後部5Rの下面側から接合固定している。これら後側リヤクロスメンバ8rとリヤフロアパネル5との間には車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
図1~図3に示すように、リヤサイドフレーム6の車幅方向外側には、リヤホイールハウス7が設けられている。リヤホイールハウス7は、リヤホイールハウスアウタ7bとリヤホイールハウスインナ7aとを接合して構成されている。
サイドシル3の後部は、フロアパネル1の後端相当位置よりもさらに後方に配設されたリヤホイールハウス7の前部に達するまで延び、このうちサイドシルインナ3aおよびサイドシルレイン3bの各後端が、リヤホイールハウスインナ7aの前部に接合されている。
すなわち、サイドシル3の後部およびリヤホイールハウス7は、リヤサイドフレーム6に対して車幅方向外側にて隣接して配設されている。
図4~図6に示すように、上述したリヤサイドフレーム6は、キックアップ部4からリヤフロアパネル5の後端まで内部に車両前後方向に延びる閉断面60s(閉断面空間)が形成された車体側部剛性部材として構成しており、車両前後方向全体に亘って、リヤフロアサイドパネル61(「リヤサイドフレームアッパ61」とも称する)と、リヤフロアサイドパネル61の下方に配置されるリヤサイドフレームロア62等を備えている。
リヤフロアサイドパネル61は、リヤサイドフレーム6の上面を構成するとともに、リヤフロアパネル5の両サイドを構成するパネルである(図1、図4参照)。
すなわち、リヤフロアパネル5は、リヤフロアサイドパネル61と、リヤサイドフレーム6の車幅方向内側に隣接して配置されるリヤサイドフレーム隣接フロア部5cとで構成される。
リヤサイドフレーム隣接フロア部5cは、リヤフロアパネル5の車幅方向中央部分を構成し、リヤフロアサイドパネル61に対して、その車幅方向内側にて隣接するとともに車幅方向に略面一に配設される。
本実施形態では、リヤフロアサイドパネル61は、リヤサイドフレーム隣接フロア部5cよりも板厚を3倍程度厚く形成することで、該リヤサイドフレーム隣接フロア部5cよりも高剛性化している。
図4~図6に示すように、リヤサイドフレームロア62は、リヤサイドフレーム6の車幅方向内側にて下方程車幅方向外側へ傾斜しながら上下方向に延びる車幅内壁部(6a)と、該車幅内壁部(6a)の下端部から車幅方向外側に略水平に延びる下壁部(6c)とで一体形成され、これら車幅内壁部(6a)と下壁部(6c)とは、夫々リヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aと下壁部6cとを構成する。
なお当例においては、図4、図6に示すように、リヤサイドフレームロア62は、その車両前後方向の一部分をさらにリヤサイドフレームロア上側分割部材62uと、リヤサイドフレームロア下側分割部材62dとの2部材から構成しており、リヤサイドフレームロア上側分割部材62uと、リヤサイドフレームロア下側分割部材62dの車幅内壁部分とで、リヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aが構成される。
上述したリヤフロアサイドパネル61とリヤサイドフレームロア62とは、夫々の車幅方向内端に接合フランジ部61a,62aが形成されており(図4~図6参照)、これら接合フランジ部61a,62aによってリヤフロアサイドパネル61よりも車幅方向内側部分に位置する、リヤフロアパネル5のリヤサイドフレーム隣接フロア部5cの車幅方向外端5caを挟み込んだ状態でスポット溶接等にて3重接合されている(同図参照)。
接合フランジ部61a,62aは、リヤサイドフレーム6の下壁部6cに対して車幅内壁部6aによって立ち上がった、その上端に位置するため、キックアップフランジとも称され、車幅方向内側に向けて略水平に突出している(図4参照)。
一方、同図に示すように、リヤフロアサイドパネル61とリヤサイドフレームロア62とは、夫々の車幅方向外端にも接合フランジ部61b,62bが形成されており、これら接合フランジ部61b,62bが、リヤサイドフレーム6に対して幅方向外側に配設された車体部品のインナパネルに接合されている。
当例では、接合フランジ部61b,62bは、リヤサイドフレーム6の車両前後方向における、サイドシル3に対応する部位において、車体部品の上記インナパネルとしてのサイドシルインナ3aに接合され(図1~図6の特に図4~図6参照)、リヤホイールハウス7に対応する部位において、車体部品の上記インナパネルとしてのリヤホイールハウスインナ7aに接合される(図1~図3参照)。
これにより、リヤサイドフレーム6は、リヤフロアサイドパネル61およびリヤサイドフレームロア62と、幅方向外側に配設される車体部品の上記インナパネルとの間に車両前後方向に延びる閉断面60sを構成している(例えば図4~図6参照)。
また図2に示すように、リヤサイドフレーム6は、その前端がフロアパネル1の下面に接合固定された上述したフロアフレーム19の後端に接合される。さらに、リヤサイドフレーム6は、その車両前後方向における、リヤフロア前部5Fに対応する前部を、図1、図2に示すように、後方程上方に傾斜して延びる傾斜部6sとして構成するとともに、リヤフロア後部5Rに対応する後部を、車両後方向に略水平に直線状に延びる直線部6fとして構成している。
傾斜部6sは、図3に示すように、キックアップ部4の立ち上がり高さに対応してその前端から後方程上方へ向けて傾斜している。
図2に示すように、上記のリヤホイールハウス7は、リヤサイドフレーム6の傾斜部6sの後部から直線部6fにかけて車両前後方向に配設されるとともに、傾斜部6sの前部に対して車幅方向内側に迫り出すように膨出形成し、これに対応して傾斜部6sの後部は、リヤホイールハウス7を車幅方向内側に迂回するように傾斜して延び、直線部6fは、このような傾斜部6sの後端から車両後方へ直線状に延びている。
図3に示すように、傾斜部6sは、リヤフロア前部5Fがキックアップ部4を介してフロアパネル1に対して上方に配置されていることに伴って、後方程上方に傾斜するに伴って、リヤフロア前部5Fに対して前方程下方へ突出形成される。これにより、該傾斜部6sにおける、リヤフロア前部5Fの下面よりも下部は、リヤフロア前部5Fに対して、該傾斜部6sの車幅内壁部6aが縦壁状となるように立設する(図3、図4~図6参照)。
これにより、リヤフロア前部5Fの下方には、該リヤフロア前部5Fの下面よりも下方に突出した、左右一対のリヤサイドフレーム6の傾斜部6sと、前側リヤクロスメンバ8f(キックアップ部4)と中間リヤクロスメンバ8mとによって車両底面視で囲まれた空間9sが構成され(図2参照)、この空間9sに燃料タンク9の少なくとも上部が格納されている(図3参照)。燃料タンク9は、左右一対のタンクバンド9a,9bを用いて車体側に支持されている(図2参照)。当例では、タンクバンド9a,9bの前部は、前側リヤクロスメンバ8fに締結固定され、タンクバンド9a,9bの後部は、中間リヤクロスメンバ8mに締結固定されている。
一方、サイドシル3の後部は、図3に示すように、下面がフロアパネル1の下面と略同じ高さを維持するように車両前後方向に水平に延びている。
これにより同図に示すように、傾斜部6sに対して車幅方向外側に隣接して配設されたサイドシル3の後部は、後方程上方に傾斜した傾斜部6sの下面に対して下方へ突出形成しており、その下方への突出部分の車幅内壁部30(以下、「サイドシルキックアップ部30」と称する)は、傾斜部6sの下面に対して下方へ縦壁状に立設する。
当例では、サイドシルキックアップ部30は、リヤフロア前部5Fに対して後方程上方へ傾斜する傾斜部6sの形状に対応して後方程、下方への突出長さが長くなるように形成している。
ところで、図2、図3に示すように、本実施形態のリヤサスペンション10(車両右側のみ図示)は、トーションビーム式サスペンションであって、該リヤサスペンション10に備えたトレーリングアーム11は、その前端部12(以下、「アーム前端部12」と称する)を中心として後方が上下方向に揺動するように、リヤサイドフレーム6の傾斜部6sの下方において、軸部材13(図5参照)を介してアーム前端支持部20によって支持されている。
ここで、図2、図3中の符号14は、左右(車両右側のみ図示)のトレーリングアーム11を連結する断面U字形状のトーションバーを示し、同様に符号15は、トーションバー14と、トレーリングアーム11のトーションバー14よりも後側部分との間のコーナー部分に平坦なスプリング下端受け面(図示略)が上方に向けて形成された皿状のスプリング下端受け部材を示し、符号16は、スプリング下端受け部材15の上方でリヤサイドフレーム6の下面に平坦なスプリング上端受け面16aを下方に向けて接合されたスプリング上端受け部材を示す。なお、リヤホイールハウス7の上端部とトレーリングアーム11の後端との間に介在し、上下方向に伸縮可能なダンパ等の図示は省略する。
アーム前端部12には、図5に示すように、軸部材13としてのボルト131およびナット132を介してアーム前端支持部20に軸支される被支持構造120が構成されている。
被支持構造120は、図5に示すように、軸部材13に挿通される内筒121と、内筒121を取り巻くラバー部材122と、ラバー部材122の外周に設けられた外筒123とを有して構成される。
図3に示すように、アーム前端支持部20は、アーム前端部12に対して車幅方向内外各側および前側を取り囲むとともに後方および下方が開放するように配設された車両下面視でコ字状を成すコ字状部21(「アーム前端支持本体部21」とも称する)を備えている。
コ字状部21は、アーム前端部12に対して車幅方向内外各側に縦壁状に配設された車幅内壁部23およびサイドシルキックアップ部30と、アーム前端部12に対して前側にて、これらサイドシルキックアップ部30と車幅内壁部23とを車幅方向に橋渡しする前壁部24とで構成される。
車幅内壁部23は、接合フランジ部23aを介してリヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aに接合され(図3参照)、また図2に示すように、前壁部24は、接合フランジ部24aを介してリヤサイドフレーム6の下面に接合されるとともに接合フランジ部24bを介してサイドシルインナ3aのサイドシルキックアップ部30に接合される。
車幅内壁部23およびサイドシルキックアップ部30とは、図5に示すように、軸部材13の挿通を許容する貫通孔23h,3hが夫々形成されており、これら貫通孔23h,3hの周縁によって、各壁部23,30間に橋渡しされた軸部材13を介してアーム前端部12が軸支されている。
軸部材13としてのボルト131の先端部は、ナット132により締結されている。このボルト131の先端部とナット132との締結部分は、車幅内壁部23から燃料タンク9に向けて突出する突出部分に相当し、ゴム等の弾性部材から成るナットキャップ133によって、燃料タンク9側から覆われている(図5参照)。
また図3に示すように、車幅内壁部23と前壁部24とは、車両底面視で略L字形状になるように稜線25a(曲げ部)を介して一部材から成るアーム前端支持ブラケット25により一体に形成されている。
さらに図3、図5に示すように、本実施形態のアーム前端支持部20は、コ字状部21に加えて、ブレース部材80と補強部材90とガセット部材40とを備えている。
同図に示すように、ブレース部材80は、アーム前端部12よりも下方において、コ字状部21の車幅内壁部23に隣接配置した補強部材90と、サイドシルインナ3aの下面とに橋渡しされ、下方に開口形成されたコ字状部21の口開きを阻止するものである。
図2、図3、図5に示すように、補強部材90は、ブレース部材80の支持とコ字状部21の特に車幅内壁部23の補強を兼ねる部材であり、車幅内壁部23に対して車両側面視で略オーバーラップするように車幅方向外側(アーム前端部12側)に隣接配置される。
ブレース部材80は、その車幅方向内端が、図5に示すように、ボルト81aおよびナット81bから成るブレース取付け部81によって、補強部材90における、車両側面視でアーム前端部12に対応する部位よりも下部に締結固定されている。
詳しくは図3に示すように、ブレース部材80の車幅方向内端は、車両側面視で、補強部材90における、車幅内壁部23の下縁辺と後縁辺とのコーナー部に相当する位置に、ボルト81aおよびナット81bを介して取り付けられている。
図5に示すように、この補強部材90における、ブレース部材80の車幅方向内端の取り付け位置に相当するブレース取付け部81において、ボルト81aの先端部分がナット81bに締結されており、この締結部分が補強部材90から車幅方向内側に備えた燃料タンク9へ突き出すように配置される。
そして図3、図5に示すように、車幅内壁部23のコーナー部は、ブレース取付け部81におけるボルト81aおよびナット81bの締結部分の配置スペースを確保すべく、該締結部分の補強部材90からの車幅方向内側への突出長さに対応して車幅方向内側に膨出形成するとともに、ブレース取付け部81に有する締結部分を燃料タンク9側から車両側面視で覆う被覆部42cとして設けられている。
また図3に示すように、ガセット部材40はコ字状部21の前壁部24に対して前方へ延出され、前壁部24と、リヤサイドフレーム6の下面とを橋渡しするように、これらの間において延びており、車体への振動入力点としてのアーム前端部12からアーム前端支持部20に入力される振動のうち、特に車両上下方向および前後方向の振動を、振動入力点に極力近い位置で効果的に低下させるべくコ字状部21を補強する補強部材である。
ところで、リヤフロア前部5Fの下方の空間9s(タンク格納空間)に格納された燃料タンク9は、タンク容量を確保するために例えば、リヤサイドフレーム6の傾斜部6sに極力近接するように配置されている(図3~図5参照)。
このため、傾斜部6sの車幅方向内端に設けられ、キックアップフランジとも称される接合フランジ部61a,62aは、空間9sの上方かつ両サイドのコーナー部に設けられているが、燃料タンク9の上壁と略一致する、或いは若干上方に設けられるとともに、燃料タンク9の車幅外壁部と車幅方向に略一致する、或いは若干車幅方向外側に設けられている(図4、図5参照)。
また本実施形態においては、図1~図6に示すように、リヤサイドフレーム隣接フロア部5cの車幅方向外側には、その周辺部位に対して下方に凹むとともに車両前後方向に延びる凹状ビード55が形成されている。
凹状ビード55は、図1~図3に示すように、側突時に接合フランジ部61a,62aよりも下方に向けて変形する易変形部として形成されたものであり、車両前後方向に延びる接合フランジ部61a,62aに沿って、リヤサイドフレーム隣接フロア部5cにおける、接合フランジ部61a,62aに対して車幅方向内側にて隣接する位置に形成されている。
本実施形態では凹状ビード55は、車両側面視で上記燃料タンク9と重なる位置、すなわち車両前後方向における、燃料タンク9の前後各部を除く略全体に一致する位置に形成されるとともに(同図参照)、燃料タンク9の車幅外壁(側壁)の略直上の位置に形成されている(図4、図5参照)。
すなわち、凹状ビード55は、接合フランジ部61a,62aのエッジ部分(車幅方向内側の先端部分)よりも車幅方向および上下方向において、より近接位置に形成されている。
さらに凹状ビード55は、車両前後方向の直交断面視で下方へ突出した下面を接合フランジ部61a,62aのエッジ部分よりも滑らかな曲面状に形成されている(図4~図6参照)。
また図1、図4~図6に示すように、本実施形態のリヤサイドフレーム6の車両前後方向の周辺、すなわち少なくとも傾斜部6sの内部(閉断面60s)には、リヤサイドフレーム6の補強部材としてのリヤサイドフレームレイン50および節部材71,72,73(バルクヘッド)(図1、図5、図6参照)が配設されている。
リヤサイドフレームレイン50は、リヤサイドフレーム6の閉断面60sにおける車幅方向内側かつ下側のコーナー部に配設されており、図1、図6に示すように、傾斜部6sの前部から後部にかけて車両前後方向に沿って延びている。
図4~図6に示すように、リヤサイドフレームレイン50は、リヤサイドフレーム6の下壁部6cにその上面から接合可能に車幅方向に延びるレイン下壁内側部51と、リヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aにその車幅方向外面から接合可能に該レイン下壁内側部51の車幅方向内端から上方に延びるレイン内壁下側部52とで一体に形成されている。
図1、図6に示すように、節部材71,72,73(バルクヘッド)は、リヤサイドフレーム6の傾斜部6sにおいて、車両前後方向に間隔を隔てて複数配設されており、当例では、傾斜部6sの前部に配設された前側節部材71と、前側節部材71の後方に配設された中間節部材72と、中間節部材72の後方に配設された後側節部材73とを備えている。
図6に示すように、前側節部材71は、傾斜部6sの車両前後方向に延びる閉断面60sを仕切るように車両前後方向の直交面を構成するパネル状の節本体壁部71aと、該節本体壁部71aの車幅方向外端から前方に延出するように屈曲形成した車幅外縁接合フランジ部71bと、該節本体壁部71aの車幅方向内端から前方に延出するように屈曲形成した車幅内縁接合フランジ部71cと、該節本体壁部71aの下端から前方に延出するように屈曲形成した下縁接合フランジ部71dとで一体形成している。
同図に示すように、中間節部材72は、前側節部材71と同様に車両前後方向の直交面を構成するパネル状の節本体壁部72aと、該節本体壁部72aの車幅方向外端から前方に延出するように屈曲形成した車幅外縁接合フランジ部72bと、該節本体壁部72aの車幅方向内端から前方に延出するように屈曲形成した車幅内縁接合フランジ部72cと、該節本体壁部72a下端から前方に延出するように屈曲形成した下縁接合フランジ部72dと、さらに、節本体壁部72a上端から後方に延出するように屈曲形成した上縁接合フランジ部72eとで一体形成している。
同図に示すように、後側節部材73は、サイドシルインナ3aとリヤサイドフレーム6の下壁部6cとを橋渡しする節本体壁部73aと、節本体壁部73aの前後各縁部から下方へ延びる前壁部73b、後壁部73c(図1参照)とを備え、節本体壁部73aの上下各縁部には、サイドシルインナ3aとリヤサイドフレーム6の下壁部6cとの夫々に接合する接合フランジ部73d,73eが形成されている。さらに、前壁部73bおよび後壁部73cの各車幅方向外端には、前後各側に延出し、サイドシルインナ3aに接合する接合フランジ部73f,73gが形成されている。
図6に示すように、前側節部材71は、その車幅外縁接合フランジ部71bが、サイドシルインナ3aに車幅方向内側から接合され、車幅内縁接合フランジ部71cが、リヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aに車幅方向外側から接合され、下縁接合フランジ部71dが、リヤサイドフレーム6の下壁部6cに上方から接合される。
また同図に示すように、中間節部材72は、車幅外縁接合フランジ部72bが、サイドシルインナ3aに車幅方向内側から接合され、下縁接合フランジ部72dが、リヤサイドフレーム6の下壁部6cに上方から接合され、車幅内縁接合フランジ部72cが、リヤサイドフレーム6の車幅内壁部6aにその車幅方向外側から接合され、上縁接合フランジ部72eが、リヤフロアサイドパネル61に下方から接合される。
続いて車両の例えば、右側方から衝突物が衝突時(側突時)における、車両の下部車体構造が奏する作用について図7(a)(b)を用いて説明する。図7(a)(b)は側突初期(凹状ビード55が燃料タンク9に当接時)、側突後期(当接後)における図4に相当する作用説明図である。
側突時に、車両の下部車体構造は、車両の右側方から衝突物が侵入するに伴って、車両前後方向に延びるサイドシル3を中心として、車両前後方向の直交視で該サイドシル3の上方に備えた不図示のサイドドアやセンタピラーが車幅方向内側(車室側)へ倒れ込むように変形する。
なお、図7(a)中の仮想線は、側突により変形前の図4に示す車両の下部車体構造を示す。
これにより図7(a)に示すように、サイドシル3の車幅方向内側に隣接して配設されたリヤサイドフレーム6は、車幅方向内側の燃料タンク9に近接する側に移動するとともに、車幅方向の内側が外側に対して下方に傾くように変形することで、リヤサイドフレーム6の車幅方向内端に備えた接合フランジ部61a,62a(キックアップフランジ部)は、燃料タンク9の上方にて、略水平の姿勢からエッジ部分(車幅方向内端)が、車幅方向内側下方に向けて、すなわち燃料タンク9に向けて傾く。
側突時の車両の下部の変形が進行するに従って仮にそのまま接合フランジ部61a,62aが燃料タンク9に近接した場合には、該接合フランジ部61a,62aのエッジ部分が燃料タンク9に衝突することで破損するおそれがあるが、本実施形態においては、図1~図6に示すように、リヤフロア前部5Fにおける、接合フランジ部61a,62aに対して車幅方向内側で隣接する位置には、易変形部として、周辺に対して下方に凹むとともに車両前後方向に延びる凹状ビード55が形成されたものである。
このため図7(a)に示すように、側突時には、凹状ビード55が接合フランジ部61a,62aよりも先に下方へ向けて変形し燃料タンク9に押し当たる。この凹状ビード55は、接合フランジ部61a,62aのエッジ部のように鋭角状に突出しておらず、燃料タンク9との当接面(下面)が滑らかな曲面形に形成している。
このため、凹状ビード55が、接合フランジ部61a,62aよりも素早く燃料タンク9に当接することによって、図7(b)に示すように、燃料タンク9を接合フランジ部61a,62aから遠ざけるように車幅方向内側下方へ押し除けることができる。
なお、図7(b)中の仮想線は、図7(a)に示す車両の下部車体構造の要部を示す。
また、衝突時に凹状ビード55が燃料タンク9に押し当たった際に、仮に凹状ビード55による、燃料タンク9の接合フランジ部61a,62aからの押し除け量が十分でない場合であっても、凹状ビード55が、接合フランジ部61a,62aよりも素早く下方に変形することによって接合フランジ部61a,62aと燃料タンク9との間に介在し、該接合フランジ部61a,62aの燃料タンク9への当接を回避することができる。
また本実施形態においては、図1~図6に示すように、リヤサイドフレーム6の閉断面60sに節部材71,72,73を設けることで、側突時にリヤサイドフレーム6の断面崩れを防ぐことができる。
詳しくは、側突時に仮にリヤサイドフレーム6に断面崩れが生じた場合には、接合フランジ部61a,62aが予測不能な挙動を示すことで、凹状ビード55よりも先に接合フランジ部61a,62aが燃料タンク9に当接することが懸念される。
これに対して上述したように、リヤサイドフレーム6の閉断面60sに節部材71,72,73を設けることで、側突時にリヤサイドフレーム6が断面崩れを防ぎ、結果的に該リヤサイドフレーム6の車幅方向内端に有する接合フランジ部61a,62aが予測不能な変形挙動を示すことを防ぐことができる。これにより、凹状ビード55を接合フランジ部61a,62aよりも先に燃料タンク9に押し当てて該接合フランジ部61a,62aから遠ざけることができる。
また本実施形態においては、図5に示すように、軸部材13に備えたボルト131の先端部とナット132との締結部分、およびブレース取付け部81は、共に車幅内壁部23から燃料タンク9に向けて突出する突出部分に相当するが、夫々ナットキャップ133や被覆部42cにより燃料タンク9側から覆っている。
これにより、燃料タンク9に向けての鋭角状の突出部分が側突時に該燃料タンク9に直接的に衝突することを防ぐことができる。
図1~図6に示すように、上述した本実施形態の車両の下部車体構造は、リヤフロアパネル5(フロア)と、該リヤフロアパネル5の下面に接合されるとともに該リヤフロアパネル5の下面との間に車両前後方向に延びる閉断面60sを構成する左右のリヤサイドフレームロア62(サイドフレームロア)と、リヤフロアパネル5の下方、かつ、左右のリヤサイドフレームロア62間に配設される燃料タンク9を備える車両の下部車体構造であって、リヤフロアパネル5における、リヤサイドフレームロア62の車幅方向内端にて車幅方向内方へ延出する内側フランジ部としての接合フランジ部(61a,)62aに対して車幅方向内側で隣接するとともに車両側面視で燃料タンク9と重なる位置に、側突時に接合フランジ部(61a,)62aよりも下方に向けて変形する易変形部としての凹状ビード55が形成されたものである。
上記構成によれば、側突時に易変形部としての凹状ビード55が接合フランジ部(61a,)62aよりも下方に向けて変形することで、凹状ビード55が、接合フランジ部(61a,)62aよりも先に、これらの下方に備えた燃料タンク9に対して当接し、該燃料タンク9を接合フランジ部(61a,)62aに対して離間する側(車幅方向内側かつ下方)へ押し動かしたり、下方へ変形した凹状ビード55が接合フランジ部(61a,)62aと燃料タンク9との間に介在することで、接合フランジ部(61a,)62aのエッジ(車幅方向内端)が燃料タンク9にダイレクトに当接することを回避して燃料タンク9を保護することができる。
この発明の態様として、凹状ビード55は、その周辺に対して下方に凹むとともに車両前後方向にリヤフロアパネル5に延設したものである(同図参照)。
上記構成によれば、凹状ビード55という簡単な構成により易変形部を燃料タンク9に対してその車両前後方向に沿わせて形成できるため、燃料タンク9の車両前後方向全体に亘って接合フランジ部(61a,)62aのエッジに対する燃料タンク9のプロテクタ機能を高めることができる。
この発明の態様として、リヤフロアパネル5は、閉断面60sの上面を構成するサイドフレーム上面部としてのリヤフロアサイドパネル61と、該リヤフロアサイドパネル61よりも車幅方向内側に隣接配置されるとともに凹状ビード55が形成されたサイドフレーム隣接フロア部5cとを備え、リヤフロアサイドパネル61を、サイドフレーム隣接フロア部5cよりも剛性が高く設定したものである。
上記構成によれば、リヤフロアサイドパネル61の剛性をサイドフレーム隣接フロア部5cよりも高くすることで、側突時にサイドフレーム隣接フロア部5cに形成された凹状ビード55を接合フランジ部(61a,)62aよりも素早く燃料タンク9に向けて確実に変形させることができる。
この発明の態様として、閉断面60sに、該閉断面60sの断面変形を抑制する節部材71,72,73を備えたものである(図1、図6参照)。
上記構成によれば、閉断面60sに節部材71,72,73を備えることで、側突時にリヤサイドフレーム6が断面崩れすることを阻止することができる。
これにより、燃料タンク9の上方かつ車幅方向内側を指向していた接合フランジ部(61a,)62aのエッジが、凹状ビード55よりも先に下方(燃料タンク9)に向けて変形することを抑制できる。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。