〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1~図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
本発明における実施の形態1の飛行時間測定装置10を備えた光レーダー装置1の構成について図2に基づいて説明する。図2は、本実施の形態の光レーダー装置1の構成を示す模式図である。
光レーダー装置1は、図2に示すように、パルス光L1を対象物Mに照射し、対象物Mからの反射光L2を受光する飛行時間測定装置10と、飛行時間測定装置10へ電源を供給し、パルス光の照射と受光のタイミングを制御する制御・電源部20と、飛行時間測定装置10と制御・電源部20とを保持する筺体30とを有している。
また、光レーダー装置1は、筺体30を回転させると共に、制御・電源部20へ電源を供給し、回転に関する同期信号を伝達し、制御・電源部20からの計測結果を外部へ出力するインターフェイスを含む駆動・インターフェイス部40を含んでいる。
図2に示す座標軸は、一般的な用途では、Z軸が鉛直方向、Y軸がパルス光の照射方向、すなわち測定対象方向、X-Y平面が水平面を指す。
光レーダー装置1は、飛行時間測定装置10を回転させることによって、パルス光L1を水平方向にスキャンする装置であり、回転角度は360度であってよく、又は120度若しくは210度のように、一定の範囲であっても構わない。
次に、前記光レーダー装置1に備えられた飛行時間測定装置10の構成について、図3に基づいて説明する。図3は、光レーダー装置1における飛行時間測定装置10の構成を示す模式図である。
飛行時間測定装置10は、図3に示すように、レンズ50、1/4波長板51、偏光ビームスプリッタ60、パルス発光素子70、受光素子80、光学バンドパスフィルタ68を含んでいる。
レンズ50は結像光学素子である。パルス発光素子70の光出射部と受光素子80の受光部とは、レンズ50の一方の焦点位置に配置されている。レンズ50は、パルス光L1にとってはコリメータレンズとして働く一方、遠方からの反射光L2にとっては受光素子80へ反射光L2を集光する結像光学素子として働く。パルス発光素子70は、Z軸方向に直線偏光したパルス光L1を発する素子である。偏光ビームスプリッタ60は、Z軸に対して45度傾斜し、X軸と平行な面に境界面を有するキューブ型であり、パルス発光素子70から発したZ軸方向に直線偏光した光を透過する。1/4波長板51は、Z軸方向に直線偏光した光を円偏光に変える。したがって、パルス光L1は、レンズ50から、円偏光したほぼ平行光として、対象物Mへ照射される。対象物Mからの反射光L2はレンズ50で集光され、偏光ビームスプリッタ60によって、X方向に直線偏光した成分が受光素子80へ集光される。反射光L2が円偏光している場合には、1/4波長板51によって、X方向の直線偏光に変えられるため、偏光ビームスプリッタ60の反射ロスは少ない。尚、本構成では、結像光学素子としてレンズ50を用いているが、必ずしもこれに限らず、軸外れ反射鏡のような反射鏡であっても、結像光学素子として同様に構成することができる。
飛行時間測定装置10は、レンズ50の外側に、雨滴、泥、ゴミ、等の障害物の付着を防ぐための透明なカバー等のフードを有していてもよい。前記フードは、距離測定に寄与しない可視光等の光をカットするフィルター機能を有していてもよい。このような結像光学素子を保護する窓となるカバー以外には、反射鏡等の他の光学素子を含まないことが好ましい。反射による光量の低下や、偏光状態の変化を防止するためである。ただし、後述する変形例1及び変形例2では、スキャンニング用のミラーを用いる構成が示されているが、これらは回転機構を用いずにスキャンするために必須の部品であり、例外である。また、スキャンニング用のミラーは、反射率が高い高精度の物を用いることによって、光量の低下を最小限に抑制することができる。
パルス発光素子70として、端面発光レーザチップを用いる場合には、発光層面をZ軸と平行にし、発光光軸をY軸方向に設置する。端面発光レーザチップは発光層に平行に直線偏光するため、このような配置によって、Z軸方向に直線偏光させることができる。端面発光レーザチップから発せられる光は、ニアフィールドでは、Z軸方向の発散に比べ、X軸方向の発散が大きい。
パルス発光素子70として、面発光レーザチップを用いる場合も同様であるが、直線偏光させた面発光レーザチップを、偏光方向がZ軸と平行になるように設置する。
図2に示すように、受光素子80の前面には、光学バンドパスフィルタ68を設けることが好ましい。パルス光L1の波長を透過帯の中心波長として、数nmから数十nmの波長透過帯幅を持つ光学バンドパスフィルタ68を加えることによって、反射光L2の内、パルス光L1とは異なる背景光によって発生する成分を削減し、SN比を向上することができるためである。
図3示す飛行時間測定装置10の構成によれば、レンズ50を光の照射と受光との両方に共用し、かつ偏光ビームスプリッタ60を用いることによってパルス光L1と反射光L2とが同一光路上を通過するように構成することができる。光照射に関しては、パルス発光素子70の直線偏光した光を、ほぼそのまま照射できるため、光のロスが少ない。反射光に対しても、対象物Mからの反射光L2がパルス光L1と同じ円偏光している場合には、ロスが少ない。また、レンズ50を共用することによって、大きなレンズを減らし、コストを低減することができる。さらに、偏光ビームスプリッタ60は、レンズ50の後方(対象物Mとは逆方向)に設置するために、レンズ50の径よりも小さなサイズの偏光ビームスプリッタを使用することが可能となる。その結果、コストを低減することができる。
尚、1/4波長板51は必ずしも必要ではない。1/4波長板51を設けない場合には、パルス光L1は直線偏光し、受光される反射光L2は、パルス光L1とは異なる直線偏光を有する。したがって、受光強度が対象物Mの反射特性によって変わるが、本発明の一態様における効果は変わらない。
(パルス発光素子)
パルス発光素子70は、半値幅が1nsecから数百nsec程度のパルス幅で発光する素子である。パルスのピークパワーは数Wから数百Wである。発光波長は用途によって決定できるが、波長700nmから1000nm程度の赤外線であることが好ましい。
これにより、人の目に見えないため、邪魔にならない上に、長波長程、動物の目に対する安全性が高いという利点がある。また、発光波長が長い程、背景光強度も低下するが、特に940nmから950nm付近の波長は、空気中の水分による太陽光の吸収によって強度が低下しているので、好ましい。また、発光波長が1000nm以下では、安価なシリコン素子を受光部に使用できるという利点がある。シリコン素子では、波長が短い程、量子効率が向上するため、前記のような背景を考慮して、900nmから950nm付近が最も好ましい。
パルス光L1の遠方での断面形状は、実際にレーザ光を発する領域の大きさである発光領域の形状によって決まる。このため、端面発光レーザチップでは、発光層に対して平行方向には長く、かつ垂直方向には短い楕円形に近い形となる。一方、面発光レーザチップでは、パルス光L1の遠方での断面形状は、複数のレーザ発光ユニットの配置形状によって決まり、円形や正多角形、長方形等、様々な形状が可能である。
パルス発光素子70の発する光は、遠方まで強度を落とさずに届く必要があり、発散はできる限り低減しなければならない。遠方でのパルス光L1の発散は、パルス発光素子70の発光領域の大きさが大きい程、大きいため、発光領域は小さい方が好ましい。ここで、発光領域の大きさとは、ニアフィールドで見た発光領域の最大径Pを意味する。
端面発光レーザチップの発光領域は、発光層に対して平行方向に長く、かつ垂直方向に短く、その結果、最大径Pは発光層に対して平行方向の長さであり、通常、大凡リッジ幅に等しい。発光層に対して垂直方向の発光領域の大きさをUとすると、発光領域のアスペクト比P/Uは、P/U>>1である。
面発光レーザチップでは、発光領域が複数のレーザ発光ユニットを含む場合が多いため、各レーザ発光ユニットの発光部の大きさを表すアパーチャのサイズではなく、複数のレーザ発光ユニット全体の最大径が、発光領域の大きさPである。面発光レーザチップでは、通常、P/U~1である。
パルス発光素子70は、発光するレーザチップと共に、それを駆動する駆動回路を含んでいることが好ましい。その発光のための電源は、制御・電源部20から供給され、発光前の充電動作や発光動作のタイミングも制御・電源部20によって制御される。
(レンズ)
レンズ50は、遠方まで測定するためには、焦点距離fが長いことが好ましい。焦点距離fが長いと、パルス光L1の発散を低減でき、遠方での光照射強度を高めることができる。また、焦点距離fが長いと、レンズ50の近傍におけるパルス光L1の口径が大きくなるため、単位面積当たりの光強度が低減され、レーザ機器の安全基準であるクラス1条件を満足し易くなる。結果的に、パルス光のピークパワーを高くすることによって、より遠方までの測定が可能となる。
さらに、レンズ50は、開口径が大きいことが好ましい。レンズ50の開口径が大きいと、レンズ50の集光能力が高く、遠方からの反射光L2を有効に集光できる。尚、図2においては、レンズ50と偏光ビームスプリッタ60との間には、1/4波長板51しかないため、飛行時間測定装置10のY軸方向の長さが、焦点距離fの長さに対応して長くなる構成となっている。ただし、レンズ50と偏光ビームスプリッタ60との間の光路を折り曲げることによって、飛行時間測定装置10のY軸方向の長さを短縮する目的で、レンズ50と偏光ビームスプリッタ60との間にミラーを配置してもよい。
本構成では、レンズ50を照射光であるパルス光L1のコリメータレンズとして用いる一方、レンズ50を結像光学素子として用いることにより反射光L2を受光素子に集光する。
パルス発光素子70の発光部の大きさをPとし、発光部から発する光の角度分布の半値幅をθとすると、大凡以下の関係が成立する。ただし、受光部の大きさQは、発光領域の大きさPと同方向の受光部の長さである。
レンズ50の近傍でのパルス光L1の径:
φ(0)=2・f・sin(θ/2)(=1.3cm)
レンズ50から遠方の距離Lの対象物Mのパルス光L1の照射領域IAの径:
φ(L)=P・L/f+φ(0)(=28.0cm)
レンズ50によって照射領域IAが受光部上に投影された投影部PAの径:
Iφ(L)=φ(L)/L・f
=P+2・f^2・sin(θ/2)/L(=0.21mm)
尚、括弧内の数値は半値幅θ=10度、焦点距離f=75mm、発光領域の大きさP=0.2mm、距離L=100mの場合の値である。遠方では、Iφ(L)の第2項が無視できるため、Iφ(L)≒Pである。
ここで、光照射領域と受光領域との関係について、図4の(a)~(d)に基づいて説明する。図4の(a)~(d)は、飛行時間測定装置10における光照射領域と受光領域との関係を示す模式図である。
反射光L2の受光信号強度を高めるためには、図4の(a)に示すように、受光素子80の実際の受光領域RAを投影部PAに重ね合わせなければならない。しかし、図4の(a)に示すように、受光領域RAの大きさが発光領域の大きさPとほぼ等しい場合には、パルス発光素子70の中心又は受光素子80の中心が、レンズ50の光軸から互いに異なる方向にずれて配置されると、図4の(b)(c)に示すように、投影部PAと受光領域RAとの間にずれが生じる。その結果、パルス光L1の反射光が背景光の反射光に対して減少し、SN比が低下し、最大測定距離が短縮する。図4の(d)に示すように、投影部PAに対して、受光領域RAを大きくすると、受光系と照射系の光軸が多少ずれても、受光は可能である。しかし、受光領域RAを大きくすると、パルス光L1が照射されない対象物Mまで受光領域RAに含んでしまい、不要な背景光を受光することとなり、SN比は低下し、最大測定距離は伸びない。この課題に対する対策については、後述する受光素子80の欄で説明する。
(偏光ビームスプリッタ)
偏光ビームスプリッタ60は、本実施の形態では、図3に示すように、偏光ビームスプリッタ60は、2個の直角プリズムを貼り合せ、接合面に多層誘電体膜を形成したキューブ型として記述している。しかし、偏光ビームスプリッタ60は、キューブ型に限定せず、プレート型であってもよい。キューブ型の場合、接合面に対して、入射光のP偏光(図2ではZ軸方向の偏光)を透過し、S偏光(図3ではX軸方向の偏光)を反射する通常の偏光ビームスプリッタでよい。偏光ビームスプリッタ60は、できるだけレンズ50から離して設置することが好ましい。図2から明らかなように、レンズ50から離れる程、偏光ビームスプリッタ60の大きさを小さくできるからである。
(受光素子)
本実施の形態における受光素子80の構成を図1に基づいて説明する。図1は、光レーダー装置1における受光素子80の構成を示す模式図である。
受光素子80は、図1に示すように、受光部81と、列選択回路91と、行選択回路92と、総和回路93と、ToF計測ユニット94と、制御回路95と、メモリ96とを含んでいる。
受光部81は、n行m列のアレイ状に配置された受光検出素子であるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)(i,j)からなっている。受光部81は、照射領域IAのレンズ50による受光素子80上への投影部PAよりも大きく構成されており、パルス発光素子70と受光素子80との設置位置が、相対的に異なる方向にずれた場合においても、投影部PAは受光部81内に留まるように構成されている。投影部PAと重なるSPAD(i,j)のみを活性化することによって、位置ずれがあっても常に投影部PAを必要最低限のSPAD(i,j)でカバーすることができる。したがって、不要な背景光を受光することなく、SN比を高く保つことができ、最大測定距離が減じることを回避できる。
本実施の形態では、Si基板上に形成したSPAD(i,j)を用いることによって、大規模なアレイを容易に製造できるため、大きなコストの増加がない。例えば、端面レーザチップの発光領域は200μm×10μm程度であり、図2の構成では、投影部PAの大きさも同程度となる。位置ずれを縦方向及び横方向のいずれにおいても±100μmとしても、受光部81の大きさは、400μm×210μm程度である。これはSi-LSIの通常の大きさである数mmに比べれば、十分小さい。
また、本実施の形態のようなスキャンタイプの飛行時間測定では、一発のパルス光L1によって、飛行時間測定を行わなければならない場合がある。多数のパルス光L1に関する測定結果を加算することができない。したがって、照射領域IAでのパルス光L1の強度は、背景光よりも十分強く、受光素子80が検出する光子数は多い。このような状況では、大きなSPADを少数配置するよりも小さなSPADを多数配置する方が好ましい。1個のSPADは、1回の受光の後、不感時間(Daed time)(10nsec~100nsec)には、別の受光ができないためである。1個当たりのSPADが、不感時間に受光する平均フォトン数は1個よりも小さいことが望ましい。したがって、図1に示すように、多数のSPADをアレイ状に配置することは、このようなスキャンタイプの飛行時間測定装置10には適している。
受光部81の形状は、投影部PAの形状と許容すべき位置ずれ量とに応じて、自由に変えることができる。例えば、端面発光レーザの場合には、発光領域が楕円形であり、投影部PAの形状も楕円形となるため、図4に示す長方形の形状か、楕円形の形状が好ましい。発光領域が円形に近い面発光レーザでは、投影部PAも円形に近いため、四角形又は円形が好ましい。図4において、左右方向よりの上下方向の位置ずれが大きくなる可能性が高ければ、上下方向の長さを長くすることもできる。
また、投影部PAと重なるSPAD(i,j)の個数は、できるだけ多いことが好ましく、少なくとも50個以上が好ましく、100個以上がさらに好ましい。
受光素子80は、受光部81内のSPAD(i,j)の内、投影部PAと重なる行及び列を選択して活性化するための回路として、列選択回路91及び行選択回路92を有している。SPAD(i,j)は、列選択線Cjによって列選択回路91と接続し、行選択線Riによって行選択回路92と接続している。受光部81は、活性化された列選択線Cj及び行選択線Riに繋がるSPAD(i,j)のみが活性化し、入射するフォトンを検知する。しかし、他のSPAD(i,j)は検知しないため、測定には全く寄与しない。したがって、余分な背景光を検知することが避けられる。
SPAD(i,j)は、列信号線OCjによって列カウンタCTjに接続されている。列カウンタCTjは、接続されたSPAD(i,j)がフォトンを検知した際に発生するパルス数を加算するバイナリーカウンタであり、測定期間にj列のSPADが検知したフォト数の和を積算値Njとして出力する。列カウンタCT1~CTmは総和回路93に接続され、総和回路93の出力はToF計測ユニット94に接続されている。測定期間が終わると個々の列カウンタCTjの出力が総和回路93に読み出される。総和回路93は各列カウンタCTjの出力の総和ΣNj=N1+N2+・・・・Nmを計算し、結果をToF計測ユニット94へ出力する。この読み出し毎に、列カウンタCT1~CTm及び総和回路93はリセットされる。
パルス光L1の発光から一定時間ΔT毎に、上記動作が繰り返され、ToF計測ユニット94には、各時間帯のΣNjが時系列で蓄えられる。動作l番目(lは0からlmまでの整数)のΣNjをN(l)とすれば、N(l)は、パルス発光によって、経過時間T=ΔT・lから一定時間ΔTの間に受光部81が検出したフォトン数となる。Tm=ΔT・lmは最長飛行時間であり、Tm・c/2(c:光速)が測定可能な最大距離となる。ToF計測ユニット94は記録されたN(l)から飛行時間を計算する。計算方法に関しては後述する。
本実施の形態では、列毎に列カウンタCTjを設けたが、複数の列毎にバイナリーカウンタを設けてもよい。ただし、多数の列の出力を1個のバイナリーカウンタで計数する場合には、数え落としが生じる可能性が高まるため、各列の計数量に応じて、パルスの数え落としを最小限に抑制するように構成しなければならない。
また、列カウンタCTjは、一定時間ΔT毎に、計数結果を総和回路93へ掃き出し、リセットし、次の計数を進める。このため、計数を中断する時間帯が発生する場合がある。この係数中断時間は、極力短くすることが好ましい。そのためには、例えば、列カウンタCTjに、計数結果を蓄えておくバッファを付随させることが考えられる。これにより、カウンタ部分をリセットしても、バッファの内容は保持される。このため、総和回路93はこのバッファから計数結果を読み出し、読み出し終了後にカウンタの内容とバッファの内容とを同期させる構成を採れば、カウンタのリセット動作の時間が中断時間となる。
或いは、2系列のカウンタを設けて、ΔT毎に切り替えて使用することによって、実質的に中断時間をゼロにすることができる。尚、活性化されたSPAD(i,j)のフォトン検出数を所定の時間毎に計数する回路構成は、図1のような、列毎にバイナリーカウンタで集計して、全てのバイナリーカウンタの総計を取る構成に限る必要はない。活性化されたSPAD(i,j)のフォトン検出数の総計を、時系列で求められる回路構成であれば、どのような構成でも構わない。
以上のような受光素子80の様々な機能の実行、及びそのタイミング制御を行う制御回路95が受光素子80に含まれる。制御回路95は、CPUユニットや、RAM、不揮発性メモリ等のメモリ96を含んでいてもよい。
次に、受光部81を構成するSPADの具体的構成を、図5及び図6に基づいて説明する。図5は、受光部81を構成するSPADの具体的構成を示す模式図である。図6は、受光部81を構成するSPADアレイの構成を示す模式図である。
SPADアレイの要素であるSPAD(i,j)は、図5に示すように、フォトダイオードPD、トランジスタTr、パルス出力回路81aを含んでいる。フォトダイオードPDへは、行選択線Riから電源が供給される。トランジスタTrのゲート電極には列選択線Cjが接続されており、行選択線Riが電源に接続し、列選択線Cjが活性化されたSPAD(i,j)のみが、フォトン検出モードとなる。本実施の形態のSPAD(i,j)では、非能動クエンチング方式を採用しており、トランジスタTrのON抵抗がクエンチング用の抵抗を兼用している。能動クエンチングの場合は、別の回路構成となる。
パルス出力回路81aは、フォトダイオードPDがフォトンを検出した場合に、一定時間幅のパルスをOCj上に出力する回路である。また、図5においては、トランジスタTrをフォトダイオードPDのGND側に配置しているが、トランジスタTrをフォトダイオードPDと高電圧電源との間に配置してもよい。さらに、トランジスタTrもNMOS(N - metal-oxide-semiconductor)に限定されず、PMOS(P - metal-oxide-semiconductor)でもよい。
行選択回路92は、図6に示すように、例えば、SPADの電源VSPADを各行選択線Riへ接続するスイッチSW1~SWnと、スイッチSWiを制御する回路を含んでいる。行選択回路92は、任意の組合せでスイッチSWiをオンすることができる。図示しないが、列選択回路91も同様に、任意の列信号線Cjを活性化するスイッチと、その制御回路とを含んでいる。
図5に示すSPAD(i,j)の回路では、トランジスタTrがNMOS-FET(field-effect transistor:電界効果トランジスタ)で構成されているため、列信号線CjがHレベルに設定されたとき、SPAD(i,j)は活性化される。
活性化すべきSPAD(i,j)の選択は、図7~9に示すフローに基づいて行われる。図7は、受光素子80のメインのセットアップフローを示すフローチャートであり、図8及び図9は受光素子80の詳細フローを示すフローチャートである。
図7に示すように、飛行時間測定装置10が組み立てられると(S1)、パルス発光素子70の発光テスト(S2)と、受光素子80のテスト(S3)と、不良SPADの特定(S4)とが実施される。尚、S1~S4の工程の順序は、異なっても構わない。S2のパルス発光素子70の発光テストでは、パルス発光素子70が仕様通りにパルス光L1を発するか否かをテストする。S3の受光素子80のテストでは、受光素子80が、個々のSPADの検出特性は別にして、他の回路が正常に動作するかをテストする。すなわち、パルス光L1のパルス幅、中心波長、波長分布及び発光パワー等の、パルス発光素子70そのものの特性が適正であることに加えて、偏光ビームスプリッタ60、1/4波長板51及びレンズ50を透過した後のパルス光L1の照射方向や照射方向に垂直な面内での光強度分布が適正であること等が評価される。
S4の不良SPADの特定では、主に暗時のSPAD特性を評価する。詳細は、図8に基づいて実施される。図8は、受光素子80の不良SPAD除外工程を示すフローチャートである。
図8に示すように、飛行時間測定装置10の組み立てが完了すると(S11)、電源が投入される(S12)。続いて、初期設定として、選択行を表すiが1に設定されると共に、全てのG(j)が0に設定される(S13)。ここで、G(1)~G(m)は1ビットのメモリであり、G(j)=0であればj列は使用可能である一方、G(j)=1であればj列は使用不可であることを示す。続いて、行選択回路92によって、スイッチSWiをオン(閉)とする(S14)。
次に、S15からS19までは、選択列番号1から選択列番号mまでを順次テストするループを示している。具体的には、まず、選択列番号1を選択する(S15)。G(j)=0であれば(S16)、列選択回路91によって列選択線Cjが活性化される(S17)。これにより、SPAD(i,j)が活性化され、暗時のパルス出力がCTjに積算され(S18)、積算数DCjが仕様値よりも大きいか又は小さいかが判定される(S19)。積算数DCjが仕様値よりも大きい場合には、SPAD(i,j)は使用できないため、G(j)=1に設定される(S21)。一方、小さければ、問題ないため、選択列番号jに1を加算して(S20)、S16に戻る。
S15からS21までのループによって、選択行番号iについて、全ての選択列番号がテストされると、選択行番号iに1を加算して(S22)、次の選択行番号に移るために、S14へ戻る。選択行番号iがnよりも大きくなった時点で(S23)、テストが終了する(S24)。
本構成では、選択列番号jに1個でもダークカウント数が多いSPAD(i,j)がある場合は、選択列番号j全体を使用しないように設定している。このような一連のフローは、制御回路95によってコントロールされる。ダークカウント数の多いSPADが存在すると、該当する列の信号数が増加するために、反射光L2の入射による信号と区別できなくなる恐れがある。したがって、ダークカウント数のテストつまり図7に示す不良SPADの特定(S4)は、受光列の特定(S5)及び受光行の特定(S6)の前に完了する必要がある。
次いで、投影部PAに重なるSPAD(i,j)を選択する図7に示す受光列の特定(S5)及び受光行の特定(S6)について、図9に基づいて説明する。図9は、受光素子80において、活性化する列及び行を選択する工程を示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、飛行時間測定装置10の電源を投入した後(S31)、前記不良SPADの特定(S4)の結果によって得られたG(j)に基づいて、G(j)=0を満たす選択列番号jについてのみ、列選択回路91がCjを活性化する(S32)。行選択回路92は全てのスイッチSWiをオン(閉)とする(S33)。この状態で、試験体にパルス光L1を照射し(S34)、反射光L2を受光する(S35)。このとき、活性化された選択列番号jの列カウンタCTjには、反射光L2によるフォトン検出数が記録されている。
S36からS42では、列カウンタCTjの結果を読み出し、仕様値以上のカウント数があった選択列番号のみを選択する。これにより、反射光L2が到達しない列を除外することができる。
具体的には、S36において、選択列番号j=1に初期設定し、S37では、不良SPADの特定(S4)のテストをパスした選択列番号jのみが選択される。S38では、列カウンタCTjのカウント数Njが読み出され、S39では、カウント数Njが仕様値よりも小さい場合には、G(j)=1とすることによって選択列番号jを除外する。S42では選択列番号jに1を加えて(S41)、選択列番号jがm以下の場合(S42)には、S37に戻る。このようにして、ダークカウント数の異常がなく、反射光L2を検知できる選択列番号が選択され、G(j)にその結果が記録される。
次いで、投影部PAに重なるSPAD(i,j)を有する選択行番号iの選択について説明する。
まず、初期設定として選択行番号i=1を設定し、かつ全てのH(i)を0に設定する(S43)。ここで、H(i)は選択行番号iが反射光L2を受光する上で、有効か否かを記録するメモリである。H(i)=0なら有効であり、H(i)=1なら無効である。
次いで、これまでのテストで得られたG(j)に基づいて、G(j)=0を満たす選択列番号jのみを活性化する(S44)。
その後、S45からS53までのループにおいて、行毎にパルス光L1による反射光L2の受光可否をテストする。具体的には、選択されたi行のスイッチSWiを行選択回路92によってオン(閉)し(S45)、試験体にパルス光L1を照射し(S46)、反射光L2を受光する(S47)。続いて、各列の列カウンタCTjの積算値Njを読み出し、総和回路93によってΣNjを計算する(S48)。そして、S49においてΣNjが仕様値よりも大きいか又は小さいかを判定する。ΣNjが仕様値よりも小さければ、選択行番号iは反射光L2の受光に寄与しないと見做して、H(i)=1に設定する(S50)。一方、ΣNjが仕様値以上であれば、反射光L2の受光に寄与するため、H(i)=0のまま、選択行番号iに1を加算し(S51)、選択行番号iがn以下の場合は(S52)、S45へジャンプする。選択行番号iがnより大きければ(S52)、テストが終了する(S53)。
このようにして、G(j)=0を満たす選択列番号j、及びH(i)=0を満たす選択行番号iを選択することによって、投影部PAと重なるSPAD(i,j)群を選択することができる。G(j)及びH(i)は、メモリ96に記憶される。
次に、図1に示すToF計測ユニット94による飛行時間(ToF)の決定方法の一例を説明する。
図2及び図3に示す飛行時間測定装置10からの1回のパルス光L1の発光に対して、パルス光L1の発光から、ΔT毎に計測した反射光L2の測定値N(0)、N(1)、・・・・N(lm)が、図1に示す受光素子80のToF計測ユニット94に記憶される。
本実施の形態では、ΔTはパルス光L1のパルス幅の例えば半分に設定されているとする。ここで、N(l)の一例を、図10に示す。図10は、飛行時間測定装置10における測定結果を示す図である。
図10に示すように、N(l)の大半は背景光による信号であり、背景光による信号レベルNbを超えた信号が対象物Mからのパルス光L1の反射光L2である。ただし、測定値N(l)は、図10に示されるように、ポアソン分布にしたがうため、バラツキが大きく、背景光の信号レベルNbを決定するには注意を要する。
背景光の信号レベルNbは、次のように決定される。すなわち、N(l)の平均値[N]をまず求める。ポアソン分布では分散が平均値の平方根に等しいため、背景光の信号レベルNbは[N]+α・√[N]とすることができる。αは3~5程度の定数である。図10の例では、[N]=4.0であり、受光フォトン数の最大値「14」はα=5に対応する。したがって、αを5と大きく設定することによって、背景光によるノイズを避けて、対象物Mからの反射光L2だけを検出することができる。
一方、例えばα=3とすれば、背景光の信号レベルNb=11となり、受光フォトン数「12」及び前記最大値「14」の2点が排除できないが、パルス光L1の反射光L2の信号強度が弱く、受光フォトン数の信号強度が「12」しかない対象物Mに対しても、対象物と認識できる。したがって、多少ノイズを拾っても、対象物の可能性がある物を幅広く検出しようとする場合と、ノイズの可能性があるものはできる限り排除して確実に対象物である物だけを検出しようとする場合とでは、αの値を変更すればよい。このように、ToF計測ユニット94は記憶された一連のN(l)から、背景光の信号レベルNbを決定し、背景光の信号レベルNbを越える信号を対象物として抽出し、その飛行時間を求める機能を有している。前述した説明では、1回のパルス光L1について説明したが、複数回のパルス発光の測定を積算し、その結果をN(l)とする場合も同様である。
(制御・電源部及び駆動・インターフェイス部)
次に、図2に示す制御・電源部20及び駆動・インターフェイス部40について説明する。
まず、駆動・インターフェイス部40は筺体30を所定の回転角に向ける。そして、それと同期して、制御・電源部20は飛行時間測定装置10にパルス発光させ、対象物Mへパルス光L1を照射する。パルス発光と同時に、反射光L2の計測を始める。
飛行時間測定装置10が決定した飛行時間は、制御・電源部20を経由して、駆動・インターフェイス部40から回転角の情報と共に外部へ送られる。
尚、制御・電源部20及び駆動・インターフェイス部40の詳細については、公知の技術が適用できるため、説明を省略する。
(効果の説明)
本実施の形態における光レーダー装置1の飛行時間測定装置10を用いて、以下の条件及び方法で効果を検証した。
すなわち、飛行時間測定装置10におけるパルス発光素子70から発光されるパルス光L1の発光条件として、発光波長905nm、ピークパワー31W、パルス幅6nsecとした。パルス発光素子70における端面発光レーザチップの発光領域の大きさは、P=200μm、U=10μmであった。ニアフィールドでの光の発散角度は、X方向25度、Z方向に10度であった。
受光素子80の受光部81については、147μm×357μmの領域に、7μm角のSPADを21行×51列、総数1071個を配列した。配列に際しては、受光素子80及びパルス発光素子70の各設計位置からの相対的な位置ずれが、Z方向及びX方向共に大凡±50μm以内と想定し、この範囲内であれば、感度低下無しに測定できることを必要基準とした。
図5に示すSPADのフォトダイオードPDの受光部は直径4.5μmの円形をしており、量子効率は15%であった。
また、図3に示す光学バンドパスフィルタ68として、透過帯中心波長905nm、透過帯幅45nmの干渉フィルターを用いた。レンズ50は、焦点距離75mm、F2.8(開口径26.8mm)であり、レンズ50通過後のパルス光L1の発散角はX軸方向に±0.004度、Z軸方向に±0.08度であった。偏光ビームスプリッタ60は、一辺の長さが15mmのキューブ型を用い、その中心がレンズ50から40mmの位置に設置した。受光素子80は光学バンドパスフィルタ68、1/4波長板51、及び偏光ビームスプリッタ60を介して、レンズ50の焦点位置に設置した。同様に、パルス発光素子70は1/4波長板51、及び偏光ビームスプリッタ60を介して、レンズ50の焦点位置に設置した。尚、レンズ50の光軸上にパルス発光素子70における端面発光レーザチップの発光領域の中心がくるように設置したが、Z軸方向及びX軸方向それぞれ、数十μmの誤差があった。同様に、レンズ50の光軸上に受光部81の中心が来るように設置したが、こちらもやはり数十μmの誤差が生じた。これらの誤差は、基板の加工精度、基板へのチップのマウント精度などによって、予想される誤差であった。
検証方法として、飛行時間測定装置10を組み立てた後、図7に示すS2からS4までの工程を行った。尚、SPAD(12、43)のダークカウント数が大きかったため、j=43列は不使用とした。
次いで、飛行時間測定装置10から100m離れた点に、試験体として白色の紙を置き、この紙に向けてパルス光L1を照射し、図9のフローチャートに示す列、行の選択工程を行った。尚、試験体の設置位置は、できる限り遠方であることが好ましい。可能で有れば、最大測定距離に近いことが好ましい。そうすることで、最大測定距離付近で有効な受光領域RAを特定できるためである。この工程は暗所で行った。
測定結果の例を図11に示す。図11は、飛行時間測定装置10の受光素子80における受光強度分布を示す図である。尚、図11においては、作図の都合上、行と列との配置を入れ替えている。また、図11においては、飛行時間のタイミングで測定した受光強度を丁度1000回積算し、最大値を1として、規格化されている。
図11において実線枠で示すように、選択行番号i=3~9、選択列番号j=5~39が受光領域RAとして有効であった。すなわち、受光領域RAにおいて有効なSPAD数は7×35=245個であり、全体の1071個の内の約23%であった。尚、図11から明らかなように、少しでも反射光L2を検出しているSPADを網羅的に受光領域RAとしている訳ではない。反射光L2の信号が、背景光よりも有意に強いSPADを受光領域RAとすることによって、SN比を向上することができる。本構成のように、楕円形の投影部PAに対して長方形の受光領域RAを設定する場合には、角部のSPADの反射光L2の信号が弱い場合があり得るが、大半のSPADにおいて、反射光L2の信号が背景光の信号よりも大きいことが好ましい。
図11において一点鎖線枠で示すように、本来の設計中心がSPAD(i,j)=SPAD(11,26)であるのに対して、実際の受光領域RA中心がSPAD(i,j)=SPAD(6,22)であることから、相対的な位置ずれは、Z方向に-35μm(=5×7μm)、X方向に-28μm(=4×7μm)であったことが分かる。この例では、不良列i=43は受光領域RA含まれないため、不良列の影響は全くなかった。
43列を除いた全SPADでの受光信号数に対して、上記有効とした245個の受光信号数は約75%であったことから、パルス光L1の反射光L2の内、約3/4を有効領域によって捕えられることとなる。また、受光素子80の中心に位置する、受光領域RAと同サイズ(7行、35列)の領域の受光信号数は、約19%であった。
したがって、本構成のように、パルス発光素子70と受光素子80との位置ずれをカバーできる機構を持たない場合には、位置ずれによって、信号量が約1/4(=19%/75%)に低下することとなる。背景光の信号量は変わらないため、SN比も同様に1/4に低下し、最大測定距離は大幅にて低下する。
一方、総数1071個のSPADを常に使用する場合には、パルス光L1の反射光L2の信号は、位置ずれ範囲が±75μm以内であれば、常に本構成の並みの信号量を確保できる。しかし、この場合、背景光の反射光が4.4倍(=1071/245)に増加するため、SN比が低下し、最大測定距離が短くなる。
前記試験体を飛行時間測定装置から200mの位置に置き、飛行時間を測定した結果を図10に示している。測定は7月の良く晴れた日に行っており、背景光は非常に強い。背景光によるフォトンカウント数は最大14個、平均は4.0個であった。
この結果、200mの距離においても、最大背景光信号よりも十分大きな信号が得られた。繰り返し測定では、試験体からの信号は、平均26.7個、最大36個、最少16個であった。したがって、本構成での最大測定距離として、大凡200mが可能である。
しかし、前述のように、本構成と同じ受光領域を有し、位置ずれ補正機構を持たなければ、背景信号量は変わらずに、パルス光L1の反射光強度は1/4となるため、最大測定距離は100m以下となる。また、本実施の形態の受光素子80の全領域を受光領域として使う場合には、反射光信号強度は10%~20%程度の増加が見込めるが、背景光強度が4.4倍となるため、図10に示した背景光信号数が、38個程度まで増加する。したがって、最大距離は130m~140m程度となる。
尚、対象物Mまでの距離が短くなると、投影部PAは受光領域RAを覆って拡大し、さらに受光光量が距離の2乗に反比例して増加するため、飛行時間測定に支障を来すようなことは起きない。
以上のように、本構成のように、受光素子80の受光領域を、遠方の対象物Mでの、パルス光L1の照射領域IAが、受光素子80上に投影される投影部PAを含むように構成し、受光素子80とパルス発光素子70の光軸が、組立時にずれた場合には、受光素子80上の投影部PAを含む部分のみを活性化する。この結果、高いSN比を実現することができる。これにより、精密な位置合わせをする必要が無く、飛行時間測定装置10の組立精度を緩和することができるため、生産効率を高め、組立コストを下げることができる。また、常にパルス光L1の反射光L2が到達する受光部81のみを活かすことによって、高いSN比を実現し、最大測定距離を大幅に伸ばすことができる。
〔変形例1〕
本実施の形態1の光レーダー装置1における変形例1である光レーダー装置1aの構成を図12に基づいて説明する。図12は,本実施の形態1における変形例1の光レーダー装置1aの構成を示す模式図である。
図12に示すように、光レーダー装置1aは回転機構では無く、反射ミラーによって測定領域をスキャンする点が光レーダー装置1と異なる。ただし、飛行時間測定装置10aは、飛行時間測定装置10と同じ機能を有している。筺体30aを回転する必要がないため、小型、軽量化、低消費電力化が容易である。また、反射ミラーは、2次元スキャンできる点が有利である。
詳細には、変形例1の光レーダー装置1aは、パルス光L1を対象物Mに照射し、対象物Mからの反射光L2を受光する飛行時間測定装置10aと、飛行時間測定装置10aへ電源を供給し、かつパルス光L1の照射及び反射光L2の受光のタイミングを制御する制御・電源部20aと、パルス光L1の照射方向へ反射するミラー35と、ミラー35の向く方向を制御するミラー駆動部36と、これらを収納する筺体30aとを有している。
筺体30aは、パルス光L1及び反射光L2を透過する窓を有している。尚、窓は、雨滴、泥、及びゴミ等の障害物の付着を防ぐための透明なカバー等のフードを有していてもよい。また、フードは、距離測定に寄与しない可視光等の光をカットするフィルター機能を有していてもよい。
前記構成の光レーダー装置1aでは、反射光L2は、ミラー35で反射されて、飛行時間測定装置10aへ到達する。ミラー35の向く方向を決定し、ミラー駆動部36に指示を出す機能は制御・電源部20aに含まれる。制御・電源部20aは、計測結果を外部へ出力するインターフェイス機能も含む。座標軸は、前記図2と同様である。ミラー35がZ軸を回転軸に回転する場合は、前記光レーダー装置1と同様に、X-Y面内を1次元スキャンすることとなる。ミラー35をZ軸回りの回転に加えて、Z軸に直交し、X軸と45度に交わる軸の回りの回転を加えることによって、Z軸方向のスキャンも可能となる。
光レーダー装置1a内の飛行時間測定装置10aとミラー35との位置関係は、図12に限定されることなく、用途に合わせて決定できる。例えば、飛行時間測定装置10aの光軸をZ軸方向に合せ、ミラー35をZ軸回りの回転とZ軸に対する傾斜とを制御することによって、X―Y面内で360度をカバーし、かつZ軸方向に所定の角度を振ることができ、広範囲の領域を測定することも可能である。ミラー35はガルバノミラーでもよく、MEMSミラーでもよい。
光レーダー装置1aは、パルス光L1の照射領域IAに適合した受光領域を実現し、パルス発光素子70に対する受光素子80の位置合わせ精度を大幅に緩和することによって、最大測定距離を大きく伸ばし、かつコスト低減が可能な飛行時間測定装置10aを採用している。これによって、光レーダー装置1aは、最大測定距離を伸ばし、かつ生産コストを低減することができる。また、光レーダー装置1aは、2次元スキャンが可能であり、小型化し易いという特徴を有している。
〔変形例2〕
本実施の形態1の光レーダー装置1における変形例2である光レーダー装置1bの構成を図13に基づいて説明する。図12は、本実施の形態1における変形例2の光レーダー装置1bの構成を示す模式図である。
図13に示すように、光レーダー装置1bは回転機構では無く、ポリゴンミラーによって測定領域をスキャンする点が光レーダー装置1と異なる。ただし、飛行時間測定装置10bは、飛行時間測定装置10と同じ機能を有している。筺体30bを回転する必要がないため、小型、軽量化、低消費電力化が容易である。また、ポリゴンミラーは、2次元スキャンできる点が有利である。
詳細には、変形例2の光レーダー装置1bは、パルス光L1を対象物Mに照射し、対象物Mからの反射光L2を受光する飛行時間測定装置10bと、飛行時間測定装置10bへ電源を供給し、かつパルス光L1の照射及び反射光L2の受光のタイミングを制御する制御・電源部20bと、パルス光L1の照射方向へ反射するポリゴンミラー35bと、ポリゴンミラー35bの回転を制御するミラー駆動部36bと、これらを収納する筺体30bとを有している。
筺体30bは、パルス光L1及び反射光L2を透過する窓を有している。尚、窓は、雨滴、泥、ゴミ、等の障害物の付着を防ぐための透明なカバー等のフードを有していてもよい。また、フードは、距離測定に寄与しない可視光等の光をカットするフィルター機能を有していてもよい。
前記構成の光レーダー装置1bでは、反射光L2は、ポリゴンミラー35bによって反射されて、飛行時間測定装置10bへ到達する。ポリゴンミラー35bの向く方向を決定し、ミラー駆動部36bに指示を出す機能は制御・電源部20bに含まれる。制御・電源部20bは、計測結果を外部へ出力するインターフェイス機能も含む。座標軸は、前記図2と同様である。ポリゴンミラー35bのミラー面の傾斜角が一定であり、Z軸を回転軸に回転する場合は、前記光レーダー装置1と同様に、X-Y面内を1次元スキャンすることとなる。ポリゴンミラー35bの各ミラー面のZ軸に対する傾斜角度を異なる角度に設定することによって、Z軸方向に異なる複数の角度で、水平スキャンが可能となる。
光レーダー装置1b内の飛行時間測定装置10bとポリゴンミラー35bとの位置関係は、図13に限定されることなく、用途に合わせて決定できる。
光レーダー装置1bは、パルス光L1の照射領域IAに適合した受光領域を実現し、パルス発光素子70に対する受光素子80の位置合わせ精度を大幅に緩和することによって、最大測定距離が大きく伸ばし、かつコスト低減が可能な飛行時間測定装置10bを採用している。これによって、光レーダー装置1bは、最大測定距離を伸ばし、かつ生産コストを低減することができる。また、光レーダー装置1bは、2次元スキャンが可能であり、小型化し易いという特徴を有している。
このように、本実施の形態における受光素子80は、パルス光L1によって照射された対象物Mにおける照射を受けた照射領域IAからの反射光L2を結像光学素子としてのレンズ50にて結像して受光部81で受光することによって飛行時間を計測する。そして、受光部81は、対象物Mの照射領域IAにて反射されて受光部81に結像された投影部PAよりも大きく形成されており、受光部81のうち、投影部PAと重なる部分が受光領域として活性化されている。尚、活性化とは、入射するフォトンを検知できる状態にあることをいう。
これにより、少なくとも対象物の照射領域を受光部に結像させることができると共に、受光素子と発光素子との間に光軸を含む相対位置のずれがあっても受光部に結像させることが可能である。
また、本実施の形態における受光素子80では、受光部81のうち、投影部PAと重なる部分が受光領域として活性化されている。この結果、対象物Mの照射領域IAだけを測定対象とするので、背景光に対する強度比を少しでも高めることができ、延いては最大測定距離が減じることを回避することができる。
したがって、パルス光L1の照射領域IAに適合した受光領域を実現すると共に、パルス発光素子70に対する受光素子80の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子80を実現することができる。
また、本実施の形態における飛行時間測定装置10・10a・10bは、パルス発光素子70と、偏光ビームスプリッタ60と、結像光学素子としてのレンズ50と、受光素子80とを少なくとも含む。また、パルス発光素子70は、パルス光L1を、偏光ビームスプリッタ60及びレンズ50をこの順で通過させて対象物Mに照射し、対象物Mからの反射光L2は、レンズ50及び偏光ビームスプリッタ60をこの順で通過して受光素子80に結像される。さらに、パルス発光素子70及び受光素子80は、レンズ50の一方の焦点位置にそれぞれ配されている。
このため、パルス光L1によって照射された対象物Mにおける照射を受けた照射領域IAからの反射光L2をレンズ50にて確実に結像して受光部81で受光することができる。したがって、パルス光L1の照射領域IAに適合した受光領域を実現すると共に、パルス発光素子70に対する受光素子80の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子80cを実現し、それにより、最大測定距離を落とさずにコスト低減が可能な飛行時間測定装置10・10a・10bを実現することが可能となる。
また、本実施の形態における光レーダー装置1・1a・1bは、飛行時間測定装置10・10a・10bをそれぞれ備えている。これにより、光レーダー装置1・1a・1bの直近から、ブラインドスポットの発生を防止し、かつ遠距離まで測定可能な光レーダー装置を実現することが可能となるという効果を奏する。また、製造バラツキに左右されず、最大測定距離を増大させる光レーダー装置1を提供することが可能となる。尚、光レーダー装置1・1a・1bのパルス光L1及び反射光L2のスキャン機構に関しては、回転機構やミラーに限らず、液晶偏向グレーティングを用いたビームスキャン装置のような非機械的スキャン方式を用いても、同様の利点を享受することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の一実施形態について図14~図19に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態の光レーダー装置1cは、実施の形態1の光レーダー装置1に対して、受光素子80cの構成が異なり、それ以外は実施の形態1と同じである。
(受光素子)
本実施の形態における受光素子80cの構成について、図14及び図15に基づいて説明する。図14は、本実施の形態の光レーダー装置1cに備えられた飛行時間測定装置10cの受光素子80cの構成を示す模式図である。図15は、受光素子80cにおける受光部81cを構成するSPADcアレイの構成を示す模式図である。
本実施の形態の受光素子80cは、図14に示すように、前記実施の形態1の図1に示す受光素子80に比べて、SPADc(i,j)及びそのアレイ構成、特に行選択回路92cの構成が異なっている。
具体的には、本実施の形態の受光素子80cのアレイ構成は、図15に示すように、SPADc(i,j)が、電源線VSPAD、行選択線Ri、列選択線Cj及び列信号線OCjに接続されている。すなわち、図16に示すように、本実施の形態のSPADc(i,j)は、前記実施の形態1において図5に示すSPAD(i,j)と同じであり、フォトダイオードPD、トランジスタTr、パルス出力回路81aを含んでいる。本実施の形態におけるSPADc(i,j)と前記実施の形態1の図5に示すSPAD(i,j)との大きな相違点は、フォトダイオードPDを検出モードにするトランジスタTrのゲート電極の制御法にある。
詳細には、前記実施の形態1の受光素子80の受光部81では、図5に示すように、列選択線CjによってSPAD(i,j)を直接制御していたのに対して、本実施の形態の構成の受光素子80cの受光部81cでは、図16に示すように、トランジスタTrのゲート電極は記憶回路M(i,j)に繋がっており、SPADc(i,j)は記憶回路M(i,j)の状態によって制御される。
実施の形態1では、個々のSPAD(i,j)は行単位及び列単位で選択されたが、本実施の形態では、記憶回路M(i,j)を使って、個々のSPADを個別に選択することができる。
この結果、本実施の形態では、実施の形態1よりも、きめ細かな受光領域RAcの設定が可能となる。すなわち、実施の形態1では、各SPADへの電源は、行選択線Riによって供給されていたが、本実施の形態では電源線VSPADによって、各SPADcに電源が供給される。この結果、本実施の形態では、SPADcを活性化するスイッチであるトランジスタTrを制御する記憶回路M(i,j)が、行選択線Riと列選択線Cjとによって制御される。記憶回路M(i,j)は、少なくともトランジスタTrのオンかオフを記憶すればよく、1ビットのメモリが有ればよい。
以下では、記憶回路M(i,j)がH状態のとき、トランジスタTrがオンし、L状態のときにオフすると考える。
尚、記憶回路M(i,j)のメモリは、通常のSRAMであり、電源投入時に外部メモリから読み込んで、記憶回路M(i,j)に書き込んでもよいし、不揮発性メモリであってもよい。不揮発性メモリを用いる場合には、行選択線Riと列選択線Cjとによって、揮発的に制御できるモードと、不揮発性メモリに書き込みを行い、かつ書き込んだH/L状態によってトランジスタTrを制御するモードとが必要である。
各記憶回路M(i,j)への書き込みは、行選択線Riと列選択線Cjとを介して行われる。例えば、初期状態では、記憶回路M(i,j)は全てL状態である。このため、行選択線Riが活性化されたときの列選択線CjがH状態であれば、記憶回路M(i,j)がH状態となり、そうでなければL状態を維持すればよい。したがって、行選択回路92c及び列選択回路91は、通常のデコーダ回路の機能を有すればよい。
以上のように、本実施の形態の受光素子80cは、実施の形態1の受光素子80に比べて、SPADc(i,j)を選択的に活性化する方法が異なるが、投影部PAと重なるSPADc(i,j)のみを活性化する点は受光素子80と同じである。このため、投影部PAと受光領域RAとの間に位置ずれが有っても、常に投影部PAを必要最低限のSPADc(i,j)でカバーすることができる。
活性化すべきSPADc(i,j)の選択は、基本的には、前記実施の形態1の図7に示す受光素子80のメインのセットアップフローを示すフローチャートにしたがう。しかし、本実施の形態では、受光列の特定と受光行の特定とは分けずに行うため、図7に示す受光列の特定(S5)と受光行の特定(S6)は、受光SPADの特定となる。
本実施の形態の受光素子80cにおける不良SPADの除外工程について、図17に基づいて説明する。図17は、受光素子80cの不良SPAD除外工程を示すフローチャートである。尚、図17は、実施の形態の図7の不良SPADの特定(S4)に相当する暗時SPADcの特性評価である。
図17に示すように、光レーダー装置1cの組み立てが完了すると(S61)、電源が投入される(S62)。続いて、初期設定として、選択行番号を表すiが1に設定される(S63)。続いて、行選択回路92によって、行選択線Riを活性化する(S64)。
次に、S65からS74までは、選択列番号1から選択列番号mまでを順次テストするループを示している。具体的には、まず、選択列番号jを選択列番号1から順に選択する(S65)。これにより、列選択回路91によって、列選択線Cjが活性化される(S66)。この結果、SPADc(i,j)が活性化され、暗時のパルス出力がCTjに積算され(S67)、積算数DCjが仕様値よりも大きいか又は小さいかが判定される(S68)。積算数DCjが仕様値よりも大きい場合には、SPADc(i,j)は使用できないため、K(i,j)=1に設定される(S69)。一方、小さければ問題ないため、K(i,j)=0に設定される(S70)。尚、K(i,j)は1ビットのメモリであり、K(i,j)=0であれば、SPADc(i,j)は使用可能である一方、K(i,j)=1であれば、SPADc(i,j)は使用不可を示す。その後。選択列番号jに1を加算して(S71)、S66に戻る。
S64からS72までのループによって、選択行番号iについて、全ての列がテストされると、選択行番号iに1を加算して(S73)、次の行に移るために、S64に戻る。選択行番号iがnよりも大きくなった時点で(S74)、テストが終了する(S75)。
本構成では、ダークカウント数が多いSPADc(i,j)のみを選別することができるため、列全体を使用不能にする実施の形態1よりも不良SPADcの影響を抑えることができる。以上のような一連のフローは制御回路95によって、コントロールされる。
次いで、投影部PAに重なるSPADc(i,j)を選択するフロー、つまり図7に示す受光列の特定(S5)と受光行の特定(S6)とを含めた受光SPADの特定について図18に基づいて説明する。図18は、受光素子80cにおいて、活性化するSPADを選択するフローを示すフローチャートである。尚、図18のフローチャートは、試験体等の配置や測定条件は、実施の形態1と同じである。
図18に示すように、まず、光レーダー装置1cの電源を投入した後(S81)、初期状態において、選択行番号を表すiが1に設定される(S82)。そして、選択列番号を表すjを1に設定した後(S83)、S84からS94までのフローにおいて、全ての選択列番号jについて、受光量のチェックを行う。
具体的には、図17のフローチャートで得られたK(i,j)に基づいて、K(i,j)=1である選択列番号jのSPADcについては、ダークカウント不良があるため、受光量のチェックは行わず、S91へジャンプする。その判断工程がS84である。
S84の後、行選択回路92c及び列選択回路91により、行選択線Riと列選択線Cjとを活性化する(S85)。この状態で、試験体にパルス光L1を照射し(S86)、反射光L2を受光する(S87)。このとき、活性化された選択列番号jの列カウンタCTjには、反射光L2によるフォトン検出数が記録されているので、列カウンタCTjのカウント数Ljが読み出される(S88)。次いで、カウント数Ljが仕様値よりも小さいか否かが判断され(S89)、カウント数Ljが仕様値よりも小さい場合には、K(i,j)=1とする(S90)。これにより、反射光L2が到達しないSPADc(i,j)を除外することができる。
次いで、選択列番号jに1を加え(S91)、選択列番号jが選択列番号m以下の場合(S92)には、S84に戻る。
このようにして、ダークカウント数の異常が無く、反射光L2を検知できる列が選択され、K(i,j)にその結果が記録される。全ての選択列番号jのチェックが終了すると、選択行番号iに1を加え(S93)、選択行番号iが選択行番号n以下である限り、S83に戻る。
以上のようにして、全てのSPADc(i,j)の受光量が測定され、仕様で定められた値以上の受光量のあるSPADc(i,j)だけが選び出される。K(i,j)はそのまま記憶回路M(i,j)に書き込まれるか、又はメモリ96に蓄えられた後に電源が投入される毎に、記憶回路M(i,j)に書き込まれる。
上記の手順によって、測定領域を決定した例を図19に示す。尚、図19においては、作図の都合上、行と列との配置を入れ替えている。また、図19においては、飛行時間のタイミングで測定した受光強度を丁度1000回積算し、最大値を1として、規格化されている。本実施の形態では、規格値が0.3以上の部分を受光領域RAcとした(尚、規格値0.3未満のSPADを一部含むのは、周囲の分布から見て、低めにばらついたためであると解釈した。)。ここで、規格値0.3は、最大背景光の信号強度の約3倍の信号量を目安として選択した。このように、受光領域の大半のSPADにおいて、反射光L2の信号が、背景光の信号よりも有意に大きいことが好ましい。
図19においては、白抜きで示すように、SPADc(4,10)及びSPADc(4,41)はダークカウント量が大きく、不良とした。また、図19においては、塗り潰しで示すように、最大受光量に対して、大凡30%以上の受光量を示すSPADc(i,j)のみを受光領域RAcに指定した。ここで、前記SPADc(4,10)は受光領域RAcの中にあるが、受光領域RAc中のSPAD数187個に対して、1個の欠落なので、影響は限られている。
さらに、図19においては、受光領域RAcの中心が、受光部の中心から行方向に56μm(=7μm×8)、列方向に77μm(=7μm×11)ずれている。このように、受光量の多い所だけを選択することによって、受光領域RAcを小さく限定しているため、パルス発光素子70と受光素子80cとの位置ずれが、より大きな所までカバーできることが、本実施の形態の利点である。
一方、受光領域RAcを狭めたことによって、SN比の悪化が懸念される。図19において、受光領域RAcに含まれるSPAD数は188個であり、この個数は、実施の形態1の約76%となり、背景光信号量は同じだけ低下する。実施の形態1では、平均4.0個、最大14個であったが、本構成では、平均3.0個、最大で10個であった。
一方、200mの距離に置いた試験体からの信号は、実施の形態1では平均26.7個、最大36個、最少16個であったのに対し、本構成では、平均21.4個、最大30、最少13であった。
パルス光の反射光信号は約80%であり、背景光量の減少程は減っていない。本構成でも、最大測定距離200mを実現できた。この理由は、図19に示すように、受光領域RAcが受光部81cの端部に偏った場合でも、受光部81cの中心側に受光領域RAcを伸ばし、信号量が多いSPADだけを選択することによって、背景光信号の増加を抑えながら、パルス光L1の反射光L2を有効に検出できるからである。
以上のように、本実施の形態の構成では、受光部81cの任意のSPADc(i,j)を選択的に活性化できるため、不良SPADの影響を最小限に抑えると共に、受光素子80cとパルス発光素子70との位置ずれに対して、広い範囲で対応できる。
〔実施の形態3〕
本発明の一実施形態について図20に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態における光レーダー装置1dの飛行時間測定装置10dは、実施の形態1の光レーダー装置1の飛行時間測定装置10に対して、図20に示すように、光照射系と受光系とが結像光学素子を共有しない構成となっている。それ以外は実施の形態1と同じである。
本実施の形態における飛行時間測定装置10dの構成について、図20に基づいて説明する。図20は、本実施の形態における光レーダー装置1dにおける飛行時間測定装置10dの構成を示す模式図である。
図20に示すように、本実施の形態における光レーダー装置1dの飛行時間測定装置10dには、受光系には受光レンズ50dがあり、照射系にはコリメーションレンズ52がある。また、受光レンズ50d及びコリメーションレンズ52の前方には、偏光ビームスプリッタ60d及び1/4波長板51dが配置されている。
受光素子80dは受光レンズ50dの焦点位置に配置される一方、パルス発光素子70dはコリメーションレンズ52の焦点位置に配置される。
この構成によって、パルス光L1dの光軸と受光する反射光L2dの光軸とを一致させることができる。本構成では、対象物M上でのパルス光L1dの照射領域IAdはコリメーションレンズ52によって制御でき、受光素子80dの対象物M上の受光領域RAdは受光レンズ50dによって制御できる。その結果、実施の形態1の飛行時間測定装置10に対して、設計の自由度が増す。
ここで、パルス発光素子70dの発光部の大きさをPdとし、発光部から発する光の角度分布の半値幅をθdとし、受光素子80dの受光部の大きさQdとすると、大凡以下の関係が成立する。
飛行時間測定装置10dの近傍でのパルス光L1dの径:
φd(0)=2・fd・sin(θd/2)
飛行時間測定装置10dから遠方(距離L)の対象物M上でのパルス光L1dの照射領域IAdの径:
φd(L)=Pd・L/fd+φd(0)
受光部に投影される照射領域IAdのイメージである投影部PAdの径:
Iφd(L)=f/L・φd(L)
=Pd・f/fd+2・fd・f・sin(θd/2)/L
実施の形態1では焦点距離fd=fであったため、遠方の対象物Mによる投影部PAdの径は、ほぼPdに等しかったが、本構成では焦点距離f≠fdが可能であり、様々な組み合わせが可能である。
ところで、SPADを形成するプロセスの加工寸法が大きく、1個のSPADの大きさが実施の形態1のように7μmと小さくできず、例えば、15μm程度までしか縮小できない場合がある。1個のSPADの大きさが15μm程度であるときには、実施の形態1の場合には、受光領域に含まれるSPAD数は1/4となってしまう。この結果、そのままでは、計測時の信号数が減少し、SN比が低下してしまう。
そこで、この事態を回避して実施の形態1と同数のSPAD数を確保するには、受光部の大きさも2倍に広げ、照射領域も2倍にする必要がある。照射領域を2倍にするためには、パルス発光素子70dの発光部の大きさPdを2倍にするか、焦点距離fdを半分にするか、何れかが必要である。通常、レーザの発光域を大きくすることは難しいため、コリメーションレンズ52の焦点距離fdを半分にすればよい。
逆に、パルス発光素子70dの発光パワーを上げるために、より大きな発光部の大きさPdを有する面発光レーザをパルス発光素子70dとして使用する場合には、コリメーションレンズ52の焦点距離fdを大きくすることによって、照射領域IAdの大きさを小さくして、投影部PAdの径を小さくすることができる。
本実施の形態の構成によれば、パルス発光素子70dの発光領域の大きさと、受光素子80dの受光部との大きさの関係が変化しても、受光レンズ50dの焦点距離、及びコリメーションレンズ52の焦点距離を適切に選択することができる。これによって、受光素子80dの受光部を、パルス光L1dの照射領域IAdが受光素子80d上に投影される投影部PAよりも大きく構成することができる。この結果、受光素子80dの光軸とパルス発光素子70dの光軸とがずれた場合にも、受光素子80d上の投影部PAdのみを活性化することによって、高いSN比を実現することができる。
これにより、精密な位置合わせをする必要がなく、飛行時間測定装置10dの組立精度を緩和することができるため、生産効率を高め、組立コストを下げることができる。さらに、パルス光L1dの反射光L2dが到達する受光部のみを活かすことによって、高いSN比を実現し、最大測定距離を大幅に伸ばすことができる。
〔実施の形態4〕
本発明の一実施形態について図21~図24に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態における光レーダー装置1eの飛行時間測定装置10eは、実施の形態1の光レーダー装置1の飛行時間測定装置10に対して、図21に示すように、パルス発光素子70eが複数の発光部を含み、受光素子80eが複数の受光部を含む点が異なっている。
本実施の形態における飛行時間測定装置10eの構成について、図21及び図22の(a)(b)に基づいて説明する。図21は、本実施の形態の光レーダー装置1eにおける飛行時間測定装置10eの構成を示す模式図である。図22の(a)は、飛行時間測定装置10eにおけるパルス発光素子70eの構成を示す正面図である。図22の(b)は、飛行時間測定装置10eにおけるパルス発光素子70eの構成を示す平面図である。
前記実施の形態1における光レーダー装置1は、単チャネル構成である。このため、解像度を上げる上では不利であった。これに対して、多チャネル化し、測定点を増やすことによって、解像度を上げることが本実施の形態の主目的である。
まず、多チャネル化する場合として、パルス発光素子70eの発光部と受光素子80eの受光部とを一対一で対応させる場合を考える。この場合、各発光部の光軸と対応する受光部の光軸とを合わせなければならない。
ところで、単体の発光部の光軸と単体の受光部の光軸とを対応させるには、ミクロンオーダーの精度での位置合わせが必要となり、非常な労力が必要となる。この問題点は、光レーダー装置の小型化を進める程、大きな問題となる。この点も改善することが本実施の形態の目的である。
本実施の形態の飛行時間測定装置10eのパルス発光素子70eは、図21に示すように、パルス発光素子70eが複数の発光部を含み、かつ受光素子80eが複数の受光部を含んでいる。
具体的には、図22の(a)(b)に示すように、本実施の形態の飛行時間測定装置10eでは、パルス発光素子70eは、例えば8個の発光部78-1~78-8を含んでいる。ただし、パルス発光素子70eは、必ずしも8個の発光部78-1~78-8に限定される必要はなく、例えば2個以上であれば、どのような数でも構わない。
詳細には、図22の(a)に示すように、パルス発光素子70eは、N層71とP層73と間に発光層72を有してなっている。
N層71は、N型GaAs基板及びその上に成長されたN型層を含む。N層71の上には、発光層72及びP層73が順次エピタキシー成長され、各発光部78-1~78-8に対応したリッジ77-1~77-8、及びP電極76-1~76-8が形成されている。N層71の裏面には、N電極75が形成され、リッジ77-1~77-8間は絶縁膜74が覆っている。各リッジ77-1~77-8は、等間隔Rで互いに平行に配置されている。
図22の(b)に示すように、各リッジ77-1~77-8の中心線は、端面79F・79Bと直交している。尚、端面79Fが光照射方向である。パルス発光素子70eは、照射系の光軸に対して、端面79Fを垂直とし、かつリッジ77-1~77-8が平行になるように設置される。
ここで、図21においては、発光部78-3がパルス発光素子70eの光軸上にある場合を例示しており、発光部78-m(mは1~8の何れかの整数)の光軸からの距離をZmとすると、Zm=(m-3)・Rで表される。
この結果、発光部78-mから発した光は、偏光ビームスプリッタ60、1/4波長板51及びレンズ50eを通して対象物Mに照射される。このとき、レンズ50eの光軸からは、Z軸方向に互いに異なる角度で対象物Mに照射される。
発光部78-mから発したパルス光をパルス光L1-mとし、パルス光L1-mの進行方向がY軸となす角度をAmとすると、tan(Am)=Zm/fの関係にある。各発光部78-mは、対応するP電極76-mと共通のN電極75との間に電流を流すことによって、発光を生じる。ここでは、順次発光することを想定している。
パルス発光素子70eは、各発光部78-mの駆動回路を含んでいることが好ましい。尚、図20では駆動回路を省略している。その発光のための電源は、制御・電源部20eから供給され、発光前の充電動作や発光動作のタイミングも制御・電源部20eによって制御される。
次に、受光素子80eの構成を、図23に示す。受光素子80eは、図23に示すように、パルス発光素子70eと同様に、8個の受光部81-1~81-8を有している。各受光部81-mは、互いに等間隔Rで配置されている。各受光部81-mは、受光制御部82-mをそれぞれ有している。受光制御部82-mは、受光部81-mに電源を供給し、受光部81-mの出力信号を増幅し、加工した後、計測回路83へ伝達する。計測回路83は、各受光部81-m毎の飛行時間Tmを求め、制御・IO・電源部84へ送る。受光素子80eへの電源供給及びタイミング制御は、制御・電源部20eにて行われる。尚、パルス発光後の受光開始は、パルス発光素子70eからタイミング信号を直接送ることにより制御してもよい。
ここで、図21に示すように、受光素子80eは、受光部の中心線85がレンズ50eの光軸と平行となるように、Z軸に対して垂直に設置される。図21に示すパルス発光素子70eと一対一に対応させるために、受光系の光軸の中心が受光部82-3の中心にくるように配置される。図23において、受光部82-mの受光系の光軸の中心を基準にした座標Ymは、Ym=(m-3)・Rで表される。
パルス発光素子70e及び受光素子80eをモノリシックに形成すれば、発光部78-m及び受光部81-mの位置関係はリソグラフィ技術の精度によって決まるため、非常に高精度に製造することができる。本実施の形態では、個々の発光部や受光部のような小さな部品を、個別に高精度に設置する必要がなく、個別の発光部や受光部に比べれば遥かに大きいパルス発光素子70eや受光素子80eを高精度に設置すればよい。このため、飛行時間測定装置10eを製造することは桁違いに容易となる。特に、高解像度化するために、発光部や受光部の数を16個、32個、64個と増やす場合には、効果はより顕著となる。
したがって、本実施の形態の構成では、飛行時間測定装置10eの製造が容易となり、不良の発生を抑制し、低コストで生産が可能となる。
尚、本実施の形態の受光素子80eの各受光部80-mの構成は、実施の形態1の受光素子80の受光部81の構成、又は実施の形態2の受光素子80cの受光部81cの構成と同じである。受光制御部82-mは、実施の形態1と同様に行選択回路92や列選択回路91を少なくとも含んでいる。受光制御部82-mは、実施の形態1と同様に、列カウンタCTj、総和回路93、及び関連する制御回路含んでいてもよい。
本実施の形態の受光部81-mでは、対応する発光部78-mによる対象物Mの光照射領域IA-mが、レンズ50eによって受光部81-m上に投影される投影部PA-mよりも大きく、しかも、投影部PA-mと重なる部分のみを活性化し、実際の光検出を行うことができる。
したがって、パルス発光素子70e及び受光素子80eの設置に際して、パルス発光素子70e及び受光素子80eが設計位置から多少ずれたとしても、受光部80-mによって、位置ずれを補正することができる。
尚、パルス発光素子70e及び受光素子80eとして、図22及び図23に示す1個のデバイスを、それぞれ複数配置してもよい。例えば、図22に示した8個の発光部を有する発光デバイスを直列に2個並べることによって、合計16個の発光部を有するパルス発光素子として使用することができる。同時に、図23に示した8個の受光部を有する受光デバイスを直列に2個並べることによって、合計16個の受光部を有する受光素子として使用することができる。各デバイスを1個使う場合に比べ、工数は2倍となるが、16個の発光部や受光部を有するデバイスを開発することなく容易に2倍の解像度を有するパルス発光素子や受光素子を製造することができる。
また、このような使用方法を可能とするために、端部のリッジ77-1及びリッジ77-8の中心から、チップの端部までの距離はR/2以下であることが好ましく、端部の受光部81-1及び受光部81-8の中心から、チップの端部までの距離はR/2以下であることが好ましい。
本実施の形態では、パルス発光素子70eは、例えば、各リッジ77-1~77-8の幅は200μm、リッジの配置ピッチはR=350μm、各発光部78-1~78-8の発光波長905nm±1nm、及びピークパワー31W±1Wとし、パルス幅6nseeで駆動している。
また、受光素子80eはシリコン基板に形成されており、受光部81-1~81-8は、発光部の配置ピッチと同じR=350μmで配置されている。各受光部81-mは、実施の形態1の受光部81と同様の構成である。ただし、配置ピッチが350μmであるため、例えば、SPADの配置数は21×43=903個であり、受光部81-mの大きさは、147μm×301μmとした。受光制御部82-mは、実施の形態1の行選択回路92や列選択回路91及び列カウンタCTjを含んでいる。計測回路83は総和回路93及びToF計測ユニット94の機能を含み、制御・IO・電源部84は制御回路95の機能を含んでいる。すなわち、受光素子80eは、少なくとも受光素子80の受光部81の機能を8個集積しており、ToF計測機能を共有している。受光部81-mは、対応する発光部78-mによる遠方の対象物Mからの投影部PA-mを覆う受光領域RA-mをそれぞれの受光部81-mに設定することができる。
本実施の形態では、図21に示す光学バンドパスフィルタ68として、例えば、透過帯中心波長905nm、及び透過帯幅45nmの干渉フィルターを用いた。レンズ50eは焦点距離40mm、及びF1.8(開口径22.2mm)である。偏光ビームスプリッタ60は、一辺の長さが15mmのキューブ型を用い、その中心がレンズ50eから20mmの位置に設置した。受光素子80eは、光学バンドパスフィルタ68、1/4波長板51及び偏光ビームスプリッタ60を介して、レンズ50eの焦点位置に設置した。同様に、パルス発光素子70eは1/4波長板51及び偏光ビームスプリッタ60を介して、レンズ50eの焦点位置に設置した。レンズ50e通過後のパルス光の発散角は0.29度程度であった。各発光部78-1~78-8からのパルス光L1-1~L1-8は、Y軸方向に対して、Z軸側に+1.0度、+0.5度、0度、-0.5度、-1.0度、-1.5度、-2.0度及び-2.5度の振れ角にて、それぞれ放出される。
各受光部81-1~81-8は、前記パルス光L1-1~L1-8に対する反射光L2-1~L2-8を受光する。発光部78-1~78-8は順番に発光され、それに対応して、受光部81-1~81-8が順次受光する。したがって、一時に活性化される発光部と受光部とは一対である。前記制御・電源部20からの信号により、制御・IO・電源部84が選択した受光部81-mには、受光制御部82-mから各SPADに電源が供給される。
上記のような測定を順次繰り返すことによって、一度に8点の測定を実施することができる。この場合、Z軸方向の角度分解能は0.5度であった。ただし、このZ軸方向の角度分解能(R/f(rad))は、レンズ50eの焦点距離f、並びに発光部及び受光部の各ピッチRによって制御することができる。例えば、長い焦点距離fのレンズ50eを使用することによって、角度分解能を小さくすることができる。
本実施の形態では、8個のチャネルを順次駆動することによって、実施の形態1と同等の最大測定距離を実現することができる。その際、受光部81-mの一方の辺の長さを削減した分だけ、位置ずれ補正範囲は狭まったが、組立誤差があっても、受光領域RA-mを適切に設定することにより、最大測定距離が低下することはなかった。
このように、本実施の形態の光レーダー装置1eは、角度分解能を向上するための複数発光部及び複数の受光部を有しており、最大測定距離が長く、製造方法が容易であるという特徴を有している。
本実施の形態では、パルス発光素子70eの発光部78-mの配置ピッチは一定とした。この結果、受光素子80eの受光部81-mの配置ピッチも一定であった。しかし、配置ピッチは必ずしも一定である必要はなく、様々な変更が可能である。例えば、視野の中心部では、分解能を高くし、周辺部では分解能を低くするという目的で、隣接する発光部の距離を、パルス発光素子70eの中央部では周辺部より、短くすることができる。その場合には、受光素子80eにおける受光部81-mの座標Ymは、対応する発光部78-mの座標Zmと、等しくなければならない。
尚、本実施の形態では、パルス発光素子70eの発光部78-mと受光素子80eの受光部81-mとは、一対一対応している場合を示したが、1対2等の構成も可能である。例えば、角度分解能を非常に高めたい場合、発光部78-mに対して受光部81-ma、81-mb、81-mc等にすることが可能である。
〔変形例〕
本実施の形態4の変形例における光レーダー装置1fの構成として、図24に示すように、受光部81f-1~8に対応して、計測回路83f-1~8を複数(図24では8個)準備することが可能である。
本実施の形態4の変形例における光レーダー装置1fの構成について、図24に基づいて説明する。図24は、本実施の形態4の変形例における光レーダー装置1fの受光素子80fの構成を示す模式図である。
図24に示すように、本実施の形態の変形例における光レーダー装置1fの受光素子80cは、受光部81f-1~81f-8及び受光制御部82f-1~82f-8が複数個(図24では8個)ある点は受光素子80eと同じである。しかし、計測回路83f-1~83f-8が受光部81f-1~81f-8に対応して複数(図12では8個)準備されている点が相違する。
すなわち、受光部81f-m、受光制御部82f-m、計測回路83f-mは、実施の形態1の受光素子80の受光部81、又は実施の形態2の受光素子80cの受光部81cと同じ機能を有しており、同時に動作することができる。ここで、本実施の形態の変形例では、パルス発光素子70fの見かけは図22の(a)(b)とは変わらないが、複数個(本変形例では8個)の発光部78f-1~78f-8を同時発光することができる。また、受光部81f-1~81f-8も同時受光することが可能である。
実施の形態4では、発光部と受光部との対は、一対ずつ動作していたが、本変形例では同時動作が可能である。これにより、測定時間を短縮することができる。また、測定回数を増やすことによって、測定結果を加算し、測定精度を向上することが可能となる。
〔実施の形態5〕
本発明の一実施形態について図25及び図26に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施の形態における光レーダー装置1gの飛行時間測定装置10gは、図25に示すように、実施の形態3の光レーダー装置1dの飛行時間測定装置10dと同様に、光照射系と受光系とでは光学素子を共有しない構成となっている。すなわち、受光系には受光レンズ50gがあり、照射系にはコリメーションレンズ52gがある。しかし、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ60dは使用せず、光照射系の光軸と受光系の光軸とは別々に配置される点が異なっている。
本実施の形態における光レーダー装置1gの飛行時間測定装置10gの構成について、図25及び図26に基づいて説明する。図25は、本実施の形態における光レーダー装置1gの飛行時間測定装置10gの構成を示す模式図である。図26は、光レーダー装置1gにおける受光素子80gの光照射領域と受光領域との関係を示す模式図である。
図25に示すように、本実施の形態の飛行時間測定装置10gは、偏光ビームスプリッタ60dは使用せず、光照射系の光軸と受光系の光軸とは別々に配置されている。尚、本実施の形態においては、光照射系の光軸と受光系の光軸とが互いに平行な場合を想定して説明する。
例えば、設計段階では、光照射系の光軸と受光系の光軸とが互いに平行であるとしても、実際の飛行時間測定装置10gの製造段階では、受光レンズ50g、コリメーションレンズ52g、パルス発光素子70g及び受光素子80gの取り付け精度のバラツキによって、両光軸が完全に平行である可能性は少なく、両者がクロスする場合も在り得る。
本実施の形態では、このようなバラツキがあっても、最大測定距離が大きい飛行時間測定装置10gを高効率で生産できるようにすることである。また、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ60dや1/4波長板51dが必要なく、構造が簡略化され、製造コストを下げることができる。
図25に示すように、例えば、パルス発光素子70gの発光部の大きさをPgとし、発光部から発する光の角度分布の半値幅をθgとし、受光レンズ50gの光軸とコリメーションレンズ52gの光軸との距離をDとすると、実施の形態1及び実施の形態3と同様に以下の関係が成立する。
飛行時間測定装置10gの近傍でのパルス光L1gの径:
φg(0)=2・fg・sin(θg/2)
飛行時間測定装置10gから遠方(距離L)の対象物Mでのパルス光L1gの照射領域IAgの径:
φg(L)=Pg・L/fg+φg(0)
受光部81g上に投影される照射領域IAgの投影部PAgの径:
Iφg(L)=f/L・φg(L)
=Pg・f/fg+2・fg・f・sin(θg/2)/L
本実施の形態では、光照射系の光軸と受光系の光軸とが互いに重ならないために、投影部PAgの中心は受光レンズ50gの光軸上に落ちず、下記Wのシフトが生じる。
受光部81gにおける照射領域IAgの中心と受光レンズ50gの光軸との距離:
W=D/L・f
ここで、距離D=30mm、距離L=100m、焦点距離f=75mmとすれば、距離W=22.5μmである。したがって、遠方の対象物Mであれば、実施の形態1や実施の形態2で想定した位置ずれ補正範囲以下の大きさであり、受光素子80gが受光素子80又は受光素子80cと同様の構成を有しておれば、同様に最大測定距離を大きくすることができる。
しかし、図25に示すように、対象物Mまでの距離Lに応じて、距離Wが変化するために、短距離での対応策が必要となる。遠方ではIφg(L)の第2項であるf/L・φg0が無視できるため、投影部PAgの大きさは、パルス発光素子70gの発光部の大きさPgとコリメーションレンズ52g及び受光レンズ50gの各焦点距離の比で決まる定数Pg・f/fgとなる。
一方、距離Lが小さくなると、第2項が大きくなるため、投影部PAgの大きさが増加すると共に、その中心がX軸方向に距離Wだけ移動する。そこで、目標とする最大測定距離での投影部PAgをカバーすると共に、短距離側の投影部PAgが存在する方向に受光部81gの受光領域RAgを拡大する。これによって、遠方から近傍までの対象物Mを捕えることができる。
遠方の対象物Mに対しては、投影部PAg以外の部分まで受光領域に含まれるため、SN比は多少悪化するが、遠方から近傍まで、1個の受光素子80gで計測できる。一方、近傍の対象物Mに対しては、その投影部PAg全体をカバーすることはできないが、短距離であるため、受光効率が高い。このため、比較的狭い受光領域であっても、十分な信号量を得ることができる。
図25に示した投影部PAgを与えるパルス発光素子70gは、端面発光レーザを使っており、発光層がX軸と平行となるように配置している。この配置では、遠方では、図26に示すように、投影部PAgはX軸方向に長い楕円状の形状を示す。一方、近距離では投影部PAgがX軸方向に移動するため、受光領域の拡張を少なくすることができる。すなわち、SN比の悪化を抑制することができ、最大測定距離を伸ばすことができる。
端面発光レーザの発光層をZ軸と平行に配置する場合には、受光領域を大きく拡張せざるを得ないため、このような効果は得られない。したがって、パルス発光素子70gの発光領域は、受光素子80gが配置されている方向と平行に広がっていることが好ましい。そのためには、端面発光レーザを発光層がX軸と平行となるように配置するか、又は面発光レーザの発光領域の形状をX軸方向に細長くすることが好ましい。
飛行時間測定装置10gにおいて、最大測定距離を伸ばす一方、できる限り短距離まで測定するためには、光軸間の距離Dを小さくすることが効果的だが、2個のレンズ間距離を近づけることには限界がある。それ以外で可能な対策は、コリメーションレンズ52gの焦点距離fgを受光レンズ50gの焦点距離fに対して、できる限り小さくすることである。
例えばf/fg=2とすれば、遠方の対象物Mに対する投影部PAgの大きさが2倍となり、近距離での投影部PAgの拡大を半分に抑えることができる。この結果、受光領域RAgの拡張によるSN比の低下を抑制することができる。したがって、コリメーションレンズ52gの焦点距離fgは、受光レンズ50gの焦点距離fよりも小さいことが好ましい。
実際には、組立誤差の態様によって、受光部81gの中心に対する投影部PAgの相対的な位置が変わる。また、対象物Mまでの距離によって、移動する方向も変わる。そこで、受光部81gを十分大きく形成し、受光領域を遠方の対象物Mの投影部PAgを少なくともカバーし、近距離の対象物Mの投影部PAgの一部を含むように拡張する。これによって、遠距離から近距離まで対応でき、しかも、最大測定距離が大きな飛行時間測定装置10gを実現することができる。また、製造誤差に対するマージンを広げ、製造コストを低減することができる。
〔実施の形態6〕
本発明の一実施形態について図27に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施の形態における光レーダー装置1hの飛行時間測定装置10hは、図27に示すように、実施の形態3における光レーダー装置1dの飛行時間測定装置10dと、実施の形態4における光レーダー装置1eの飛行時間測定装置10eとを組み合せたものである。
すなわち、本実施の形態の飛行時間測定装置10hは、実施の形態3の飛行時間測定装置10dに対して、受光素子80hの受光部81h-mの配置ピッチRaとパルス発光素子70hの発光部78h-mの配置ピッチRbとを同一にする必要がない点が異なっている。これにより、本実施の形態の飛行時間測定装置10hは、設計の自由度が高めることができるものとなっている。
本実施の形態における光レーダー装置1hの飛行時間測定装置10hの構成について、図27に基づいて説明する。図27は、本実施の形態における光レーダー装置1hの飛行時間測定装置10hの構成を示す模式図である。
図27に示すように、本実施の形態における光レーダー装置1hの飛行時間測定装置10hでは、受光素子80hの受光部81h-mの配置ピッチRaとパルス発光素子70hの発光部78h-mの配置ピッチRbとは同一ではない。
すなわち、パルス発光素子70hの発光部78h-mから発したパルス光をパルス光L1h-mとし、パルス光L1h-mの進行方向がY軸となす角度をAmとすると、tan(Am)=Zm/fhの関係にある。Zmは発光部78h-mの中心のZ座標であり、fhはコリメーションレンズ52hの焦点距離である。
一方、Y軸となす角度Amで帰ってくる反射光L2h-mは、Ym=f/fh・Zmとなる。この理由は、受光素子80hの受光部81h-mのY座標は、tan(Am)=Ym/fの関係にあるためである。
この結果、Ra=f/fh・Rbとなり、受光レンズ50hとコリメーションレンズ52hの値を調整することによって、パルス発光素子70hの発光部78h-mの配置ピッチに対して、受光素子80hの受光部81h-mの配置ピッチを大きくしたり、又は小さくしたりすることができる。
実施の形態4では、Rbに合せるために、受光部を小さくしてRaをRbに合せたが、位置ずれ調整範囲は縮小した。これに対して、本実施の形態の構成の場合には、f/fh>1と設定すれば、RaをRbに対して大きくできるため、受光部を設計し直す必要がなくなる。
本実施の形態の受光素子80hの各受光部は、遠方の対象物Mでの、対応するパルス光の照射領域が、受光部上に投影される投影部を含むように、受光領域を構成することができる。したがって、角度分解能を高めるための複数チャネルを有する飛行時間測定装置10hにおいても、受光素子80hの光軸とパルス発光素子70hの光軸とが、組立時にずれた場合でも、受光素子80h上の投影部を含む部分のみに受光領域を設定することによって、高いSN比を実現でき、最大測定距離を大幅に伸ばすことができる。
これにより、精密な位置合わせをする必要がなく、飛行時間測定装置10hの組立精度を緩和することができるため、生産効率を高め、組立コストを下げることができる。さらに、受光レンズ50hとコリメーションレンズ52gとを独立させることによって、受光領域と発光領域とのピッチを変更することができ、装置の設計自由度を高めることができる。
〔実施の形態7〕
本発明の一実施形態について図28に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施の形態における受光素子80iは、実施の形態2の受光素子80cと回路構成は同じであるが、動作方法のみが異なる。
すなわち、実施の形態1・2では、受光領域は、飛行時間測定装置10・10cの製造段階において、一意的に決定され、以後、変更されることは想定していなかった。以降においては、実施の形態2との対比により説明する。
本実施の形態では、図28に示すように、複数の受光領域RAi-1・RAi-2・RAi-3を有している。受光領域RAi-1は、受光領域RAcと同じである。受光領域RAi-2は、受光領域RAi-1を包含し、受光領域RAi-1よりも広い受光領域である。受光領域RAi-3は、受光領域RAi-2を包含し、受光領域RAi-2よりも広い受光領域である。受光領域RAi-1・RAi-2・RAi-3は、この順で受光領域が広く、より多くの反射光L2iを受光することができる。図28の例では、受光領域RAi-1に対して、受光領域RAi-2は約11%、受光領域RAi-3は17%多くの反射光L2iの信号を受光することができる。
また、本実施の形態では、状況に応じて、受光領域を切り換えて使用することができる。例えば、太陽光が明るい昼間には、受光領域RAi-1を受光領域として用いることによって反射光L2iが背景光よりも有意に強いSPADのみを活性化し、SN比を高め、昼間の最大測定距離を伸ばすことができる。また、背景光が殆どない夜間には、受光領域RAi-3を受光領域として用いることによって、より多くの反射光L2iの信号を計測し、夜間の最大測定距離を伸ばすことができる。受光領域RAi-3は受光領域RAi-1に比べて17%信号量が多いため、距離が8%伸びても同じ信号量を計測できる。このため、受光領域RAi-1を用いる場合に比べて、最大測定距離を約8%伸ばすことができる。
上記の受光領域の切換は、メモリ96に複数の受光領域のデータを記憶しておき、制御回路95が、選択された受光領域のデータに基づいて、各SPADi(i,j)の記憶回路M(i,j)に「H」又は「L」のデータを書き込めばよい。受光領域の選択は、時刻や周囲の状況に応じて、外部システムから受光素子80iに、使用する受光領域を指示してもよい。或いは、受光素子80iが受光領域外のSPADからの出力を測定することによって、昼間と夜間との区別を行い、受光領域を切り換えてもよい。
本実施の形態の受光素子80iの受光部は、遠方の対象物Mでの、対応するパルス光L1の照射領域が、受光部上に投影される投影部を含むように、大きさの異なる複数の受光領域を構成することができる。したがって、飛行時間測定装置10iにおいても、受光素子80iの光軸とパルス発光素子70iの光軸とが、組立時にずれた場合でも、受光素子80i上の投影部を含む部分のみに受光領域を設定することによって、高いSN比を実現することができ、最大測定距離を大幅に伸ばすことができる。
これにより、精密な位置合わせをする必要がなく、飛行時間測定装置10iの組立精度を緩和することができるため、生産効率を高め、組立コストを下げることができる。さらに、周囲の明暗に応じて、受光領域を切り換えることによって、暗時の最大測定距離を昼間よりさらに伸ばすことができる。これにより、光レーダー装置1iの性能をさらに高めることができる。
尚、今回開示された実施の形態及び変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の一態様における範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
〔まとめ〕
本発明の態様1における受光素子80は、パルス光L1によって照射された対象物Mにおける照射を受けた照射領域IAからの反射光L2を結像光学素子(レンズ50)にて結像して受光部81で受光することによって飛行時間を計測するための受光素子80であって、前記受光部81は、前記対象物Mの照射領域IAにて反射されて該受光部81に結像された投影部PAよりも大きく形成されており、前記受光部81のうち、前記投影部PAと重なる部分が受光領域として活性化されていることを特徴としている。尚、活性化とは、入射するフォトンを検知できる状態にあることをいう。
飛行時間測定装置の組み立てには、必ず誤差が伴い、受光素子と発光素子との相対位置にはバラツキが存在する。そこで、本発明の一態様における受光素子では、受光部は、対象物の照射領域が受光部に結像された投影部よりも大きく形成されている。これにより、少なくとも対象物の照射領域を受光部に結像させることができると共に、受光素子と発光素子との間に光軸を含む相対位置のずれがあっても受光部に結像させることが可能である。
また、本発明の一態様における受光素子では、受光部のうち、投影部と重なる部分が受光領域として活性化されている。この結果、対象物の照射領域だけを測定対象とするので、背景光に対する強度比を少しでも高めることができ、延いては最大測定距離が減じることを回避することができる。
したがって、パルス光の照射領域に適合した受光領域を実現すると共に、発光素子に対する受光素子の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子を実現することができる。
本発明の態様2における受光素子80・80cは、前記受光領域を予め記憶する記憶部(メモリ96)を備えているとすることができる。
これにより、個々の受光素子の受光領域の詳細を、外部システムから指示する必要がなくなり、受光部のうち、反射領域からの投影部と重なる部分を確実に受光領域として活性化することが可能となる。
本発明の態様3における受光素子80cでは、前記受光領域は、不良部を含まないことが好ましい。尚、不良部とは、当初から欠陥を有し、本来の活性可能状態になっても、入射するフォトンを検知できる状態とならない不能な受光検出素子をいう。
これにより、検知不能な受光検出素子を排除することにより、受光量の変動を回避して検出精度の高い受光素子を実現することができる。
本発明の態様4における受光素子80では、前記受光部81は、SPADからなる受光検出素子をアレイ状に配置しているとすることができる。
SPADからなる受光検出素子は、検出感度が高い。このため、例えば、発光素子からの一発のパルス光によって飛行時間測定を行わなければならない場合にも容易に検出することができる。また、SPADからなる受光検出素子は、大規模なアレイを容易に製造することができるので、大きなコストの増加がない。
本発明の態様5における受光素子80では、前記受光領域は、前記アレイ状の行と列との単位で設定されているとすることができる。
これにより、照射領域からの投影部と重なる部分である受光領域を、行と列とからなる要素の集合として特定することができる。
本発明の態様6における受光素子80では、前記受光領域は、前記SPAD毎に設定されているとすることができる。
これにより、照射領域からの投影部と重なる部分である受光領域を、SPADからなる受光検出素子を個々の要素の集合として直接的に特定することができる。
本発明の態様7における受光素子80は、前記SPADからのパルス出力を加算するバイナリーカウンタ(列カウンタCTj)を備えているとすることができる。
これにより、受光部が検出したパルス出力されるフォトン数の個数をバイナリーカウンタにて計数することができる。
本発明の態様8における受光素子80iでは、前記受光部は、複数の受光領域RAi-1・RAi-2・RAi-3を備え、状況に応じて適用する受光領域RAi-1・RAi-2・RAi-3を選択可能となっているとすることができる。
これにより、周囲の明暗等の状況に応じて、受光領域を切り換えることによって、暗時である夜間の最大測定距離を明時である昼間よりもさらに伸ばすことができる。延いては、光レーダー装置1iの性能をさらに高めることができる。
本発明の態様9における受光素子80eは、複数の前記受光部81-1~81-8を備えているとすることができる。
これにより、受光素子を多チャネル化し、測定点を増やすことによって、解像度を上げることが可能となる。
本発明の態様10における飛行時間測定装置10・10a・10bは、パルス発光素子70と、偏光ビームスプリッタ60と、結像光学素子(レンズ50)と、態様1~9のいずれかに記載の受光素子80とを少なくとも含み、前記パルス発光素子70は、パルス光L1を、前記偏光ビームスプリッタ60及び前記結像光学素子(レンズ50)をこの順で通過させて対象物Mに照射し、前記対象物Mからの反射光L2は、前記結像光学素子(レンズ50)及び前記偏光ビームスプリッタ60をこの順で通過して前記受光素子80に結像され、前記パルス発光素子70及び前記受光素子80は、前記結像光学素子(レンズ50)の一方の焦点位置にそれぞれ配されていることを特徴としている。
前記構成によれば、パルス発光素子及び前記受光素子は、結像光学素子の一方の焦点位置にそれぞれ配されている。このため、パルス光によって照射された対象物における照射を受けた照射領域からの反射光を結像光学素子にて確実に結像して受光部で受光することができる。したがって、パルス光の照射領域に適合した受光領域を実現すると共に、発光素子に対する受光素子の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子を実現し、それにより、最大測定距離を落とさずにコスト低減が可能な飛行時間測定装置を実現することが可能となる。
本発明の態様11における飛行時間測定装置10d・10hは、パルス発光素子70d・70hと、コリメーションレンズ52・52hと、偏光ビームスプリッタ60・60hと、結像光学素子(受光レンズ50d・50h)と、態様1~9のいずれかに記載の受光素子80d・80hとを少なくとも含み、前記パルス発光素子70d・70hは、パルス光L1d・L1-1~L1-8を、前記コリメーションレンズ52・52h及び前記偏光ビームスプリッタ60・60hをこの順で通過させて対象物Mに照射し、前記対象物Mからの反射光L2d・反射光L2-1~L2-8は、前記偏光ビームスプリッタ60・60h及び前記結像光学素子(受光レンズ50d・50h)をこの順で通過して前記受光素子80d・80hに結像され、前記パルス発光素子70d・70hは、前記コリメーションレンズ52・52hの一方の焦点位置に配されており、前記受光素子80d・80hは、前記結像光学素子(受光レンズ50d・50h)の一方の焦点位置に配されていることを特徴としている。
前記構成によれば、パルス発光素子は、前記コリメーションレンズの一方の焦点位置に配されており、前記受光素子は、前記結像光学素子の一方の焦点位置に配されている。このため、パルス光によって照射された対象物における照射を受けた照射領域からの反射光を結像光学素子にて確実に結像して受光部で受光することができる。したがって、パルス光の照射領域に適合した受光領域を実現すると共に、発光素子に対する受光素子の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子を実現し、それにより、最大測定距離を落とさずにコスト低減が可能な飛行時間測定装置を実現することが可能となる。
本発明の態様12における飛行時間測定装置10gは、パルス発光素子70gと、コリメーションレンズ52gと、結像光学素子(受光レンズ50g)と、態様1~9のいずれかに記載の受光素子80gとを少なくとも含み、前記パルス発光素子70gは、パルス光L1gを、前記コリメーションレンズ52gを通過させて対象物Mに照射し、前記対象物Mからの反射光L2gは、前記結像光学素子(受光レンズ50g)を通過して前記受光素子受光素子80gに結像され、前記パルス発光素子70gは、前記コリメーションレンズ52gの一方の焦点位置に配されており、前記受光素子80gは、前記結像光学素子(受光レンズ50g)の一方の焦点位置に配されていることを特徴としている。
前記構成によれば、パルス発光素子は、コリメーションレンズの一方の焦点位置に配されており、受光素子は、結像光学素子の一方の焦点位置に配されている。このため、パルス光によって照射された対象物における照射を受けた照射領域からの反射光を結像光学素子にて確実に結像して受光部で受光することができる。したがって、パルス光の照射領域に適合した受光領域を実現すると共に、発光素子に対する受光素子の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子を実現し、それにより、最大測定距離を落とさずにコスト低減が可能な飛行時間測定装置を実現することが可能となる。
本発明の態様13における飛行時間測定装置10e・10hでは、前記パルス発光素子70e・70hは、複数の発光部78-1~78-8を備えているとすることができる。
これにより、パルス発光素子を多チャネル化し、測定点を増やすことによって、解像度を上げることが可能となる。
本発明の態様14における光レーダー装置1・1a~1hは、態様10~13のいずれかに記載の飛行時間測定装置を備えていることを特徴としている。
前記構成によれば、パルス光の照射領域に適合した受光領域を実現すると共に、発光素子に対する受光素子の位置合わせ精度を大幅に緩和できる受光素子を実現し、それにより、最大測定距離を落とさずにコスト低減が可能な飛行時間測定装置を実現し、最大測定距離を伸ばした安価な光レーダー装置を実現することができる。
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。