JP7102904B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド部にサイプが設けられた空気入りタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤ(以降、単にタイヤともいう)において、トレッド部のブロックにタイヤ幅方向に延びる複数のサイプを設け、サイプによるエッジ効果及び排水効果により、ウェット路面や氷上路面での制動性能を向上させるようにしている。しかしながら、サイプを設けるとブロックの剛性が低下するため、新品時においてはブロックの倒れ込みやせん断変形による摩耗の増大やドライ路面における操縦安定性の低下を生ずる。また、サイプをサイプ深さ方向に波形状に形成することによりブロックの変形を抑制してブロックの剛性を高めるようにしたものも知られている。しかし、波形状のサイプでは、加硫成型時の金型に設けられるサイプ刃の抜けが悪くなるため、タイヤからサイプ刃を抜く際にブロックの損傷を生じ易くなる。このようなタイヤからサイプ刃を抜くことを、以降、タイヤからの金型抜けという。
例えば、サイプによる新品時のブロックやリブの剛性の低下を抑制するとともに、摩耗進行に伴ってブロックやリブの剛性が過度に高くなることがなく、加硫成型時におけるタイヤからの金型抜けの悪化を効果的に改善することができる空気入りタイヤが知られている(特許文献1)。
上記空気入りタイヤは、トレッド部のブロック及び/またはリブにサイプを有し、このサイプには少なくともサイプの長さ方向両端部にサイプの幅方向に凹凸をなす屈曲部が設けられている。このサイプは、屈曲部の凹凸の大きさがサイプの長さ方向中央側に向かって徐々に小さくなり、サイプの長さ方向一端側の屈曲部と長さ方向他端側の屈曲部とが、サイプの幅方向に対して互いに反対方向に凹凸をなしている。
特開2011-105131号公報
上記サイプは、サイプの長さ方向の一端側から他端側に進むに連れて凹凸の振幅が徐々に低くなり、サイプの長さ方向の一端側と他端側の中央部では、凹凸の振幅はゼロになっている。上記空気入りタイヤでは、対向するサイプ壁面がお互いに近づくように倒れ込もうとしても、この倒れ込みを、サイプ壁面の凹凸が支えることができるので、サイプ壁面の倒れ込み変形に対する剛性が確保される一方、サイプの屈曲部の凹凸の大きさがサイプの長さ方向中央側に向かって徐々に小さくなることから、加硫成型時、金型のサイプ刃が抜け易くなる、とされている。
しかし、加硫成形終了時における空気入りタイヤからの金型抜けは依然として十分でない。タイヤからの金型抜けを向上させるために、屈曲部の凹凸の振幅を小さくすると、ブロックやリブの倒れこみ、すなわち、一方のサイプ壁面の倒れこみを、他方のサイプ壁面の凹凸が支えることが十分に行われず、サイプ壁面の倒れ込み変形に対する剛性が向上しない。
また、サイプが設けられた陸部が、サイプ延在方向に沿った変形(この変形を、せん断変形という)を受け、サイプ壁面が、互いに異なる変位量で変位をしようとする場合、上記サイプにはサイプ壁面をサイプの長さ方向の変位を阻止するような凹凸が少ないため、上記陸部のせん断変形に対する剛性は依然として低い。
そこで、本発明は、従来とは異なるサイプ形状を備えるサイプであって、タイヤ製造時、タイヤからの金型抜けを向上させつつ、サイプを設けた陸部の倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性を陸部に適切に持たせることができるサイプ、を備える空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、トレッド部にサイプが設けられた空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤの前記トレッド部は、
タイヤ赤道線から接地端までのペリフェリ距離の半分前記タイヤ赤道線から離れた中間位置と前記接地端との間の領域に設けられた、地面と接するショルダー陸部と、前記ショルダー陸部と溝を隔てて離間し、前記溝と前記タイヤ赤道線とに挟まれた領域に設けられた、地面と接する内側陸部と、を備え、
前記内側陸部及び前記ショルダー陸部の少なくともいずれか一方の領域には、第1サイプが設けられる。
前記トレッド部のトレッド表面から見た前記第1サイプの開口は、サイプ両端間を直線状に延在し、
前記第1サイプのサイプ深さ方向において、前記第1サイプの側壁面は、当該側壁面の一部である前記開口のエッジを通り前記サイプ深さ方向に延びる基準平面に対して最大突出高さと最大凹み深さが等しくなるように波状に凹凸し、
前記第1サイプの両側の側壁面のうち一方の第1側壁面は、前記第1サイプのサイプ延在方向の各位置において、サイプ深さ方向において、前記サイプ深さ方向に直交する方向に波状に曲がる少なくとも2つの山部と少なくとも1つの谷部を備え、他方の第2側壁面は、前記2つの山部に対向する位置に設けられる2つの谷部と、前記少なくとも1つの谷部に対向する位置に設けられる少なくとも1つの山部を備え、
前記第1側壁面では、前記サイプ延在方向のいずれの位置においても前記山部は、前記基準平面に対する突出高さを一定に維持しつつ、前記サイプ深さ方向に沿って前記山部及び前記谷部を見たとき、前記谷部の前記山部に対する凹み深さは、前記サイプ延在方向の位置に応じて変化し、
前記第1側壁面の前記山部は、前記谷部の1つを前記サイプ深さ方向に挟む第1山部と第2山部とを含み、
前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向の間隔が、前記サイプ延在方向の一方の側に進むに連れて大きくなり、前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つの、前記第1山部と前記第2山部からの凹み深さは、前記サイプ延在方向のうち前記一方の側に進むに連れて徐々に大きくなる。
前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つは、前記最大凹み深さの位置から、前記最大突出高さの位置に向かって前記凹み深さが徐々に小さくなってゼロになるように、前記最大突出高さの位置に向かって延びており、
前記谷部の1つの前記凹み深さが最大となる位置から最小となる位置までの前記サイプ延在方向に沿った距離をL1とし、前記最大突出高さあるいは前記最大凹み深さの寸法をL2とし、前記サイプ延在方向の前記最大凹み深さの位置における前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向に沿った離間距離をL3としたとき、
前記第1サイプは、積L2×L3が0.3~8mmであり、比L2/L1が0.0075~0.2であるサイプAを含み、
前記サイプAは、前記内側陸部の領域に設けられている、ことが好ましい。
前記第1サイプはサイプBを含み、
前記サイプBの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、前記サイプAの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、前記サイプBの積L2×L3は0.05~2mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1であり、
前記サイプBは、前記ショルダー陸部の領域に設けられている、ことが好ましい。
前記ショルダー陸部の領域には、対向する2つの側壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面である第2サイプが設けられている、ことが好ましい。
前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つは、前記最大凹み深さの位置から、前記最大突出高さの位置に向かって前記凹み深さがゼロになるように、前記最大突出高さの位置に向かって延びており、
前記谷部の1つの前記凹み深さが最大となる位置から最小となる位置までの前記サイプ延在方向に沿った距離をL1とし、前記最大突出高さあるいは前記最大凹み深さの寸法をL2とし、前記サイプ延在方向の前記最大凹み深さの位置における前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向に沿った離間距離をL3としたとき、
前記第1サイプは、積L2×L3が0.3~10mmであり、比L2/L1が0.006~0.2であるサイプCを含み、
前記サイプCは、前記ショルダー陸部の領域に設けられている、ことが好ましい。
前記第1サイプは、サイプDを含み、
前記サイプDの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、前記サイプCの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、前記サイプDの積L2×L3は0.05~3mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1であり、
前記サイプDは、前記内側陸部の領域に設けられている、ことが好ましい。
前記内側陸部の領域には、対向する2つの側壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面である第2サイプが設けられている、ことが好ましい。
前記谷部の1つの、前記トレッド表面からみた前記サイプ深さ方向の位置は、前記サイプ延在方向のいずれの位置でも同じである、ことが好ましい。
上述の空気入りタイヤによれば、タイヤ製造時、タイヤからの金型抜けを向上させつつ、サイプを設けた陸部の倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性を陸部に適切に持たせることができる。
一実施形態の空気入りタイヤの断面を示すタイヤ断面図である。 一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部に設けられるトレッドパターンの一例を示す図である。 (a)、(b)は、一実施形態の空気入りタイヤに設けられるサイプの一例を説明する図である。 図3(b)に示すサイプ壁面を平面視した図である。 (a)~(d)は、図4中のサイプ延在方向の位置A~Dで切断したときのサイプ壁面の形状の一例を模式的に示す図である。
以下、一実施形態の空気入りタイヤについて説明する。以降で説明する空気入りタイヤは、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2010(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で説明するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心にタイヤを回転させたとき、トレッド表面の回転する方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に対して直交して延びる放射方向をいい、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸からタイヤ径方向に離れる側をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸方向に平行な方向をいい、タイヤ幅方向外側とは、タイヤのタイヤ赤道線から離れる両側をいう。
また、以降で説明する空気入りタイヤの接地端は、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤのトレッド部のトレッド面が乾燥した水平面と接触する領域内のタイヤ赤道線から最も離れた端をいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
図1は、一実施形態の空気入りタイヤ10(以降、タイヤ10という)の断面を示すタイヤ断面図である。図2は、タイヤ10のトレッド部に設けられるトレッドパターンの一例を示す図である。
(タイヤ構造)
タイヤ10は、図1に示すように、骨格材あるいは骨格材の層として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
カーカスプライ層12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材を含む。図1に示すタイヤ10では、カーカスプライ層12は、1つのカーカスプライ材で構成されているが、2つのカーカスプライ材で構成されてもよい。カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト層14が設けられている。ベルト層14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20~30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材であり、下層のベルト材14aが上層のベルト材14bに比べてタイヤ幅方向の幅が広い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられ、トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイドウォール部を形成している。トレッドゴム部材18は2層のゴム部材で構成され、タイヤ径方向外側に設けられる上層トレッドゴム部材18aとタイヤ径方向内側に設けられる下層トレッドゴム部材18bとを有する。サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ層12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28を備える。
タイヤ10は、このようなタイヤ構造を有するが、タイヤ構造は、図1に示すタイヤ構造に限定されない。図1では、トレッドゴム部材18に形成される後述ずるトレッドパターン50の溝断面の図示は省略されている。
(トレッドパターン)
図2は、トレッド部に設けられるトレッドパターン50の一例を示す。トレッドパターン50は、タイヤ赤道線CL上にタイヤ周方向に延びる周方向主溝52と、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられる傾斜溝54,56と、連絡溝58,60,62,64と、分岐溝66,68を備える。
傾斜溝54,56は、周方向溝52から、タイヤ幅方向の両側に向かって、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対して傾斜してタイヤ幅方向外側にあるパターンエンドまで延びる。
傾斜溝54,56の溝幅は、タイヤ幅方向に進むほど広くなっている。
連絡溝58,60は、傾斜溝54,56から、タイヤ周方向に隣り合う2つの傾斜溝54,56と交差するようにタイヤ幅方向外側に延びて、2つ目の傾斜溝54,56で終端する。
連絡溝62,64は、傾斜溝54,56から、タイヤ周方向に隣り合う1つの傾斜溝54,56と交差するようにタイヤ幅方向外側に延びて、2つ目の傾斜溝54,56と交差することなく終端する。連絡溝58,60,62,64がタイヤ幅方向外側に進むときにタイヤ周方向に進む側と、傾斜溝54,56がタイヤ幅方向外側に進むときにタイヤ周方向に進む側とは互いに異なり反対側である。
分岐溝66,68は、傾斜溝54,56が連絡溝58,60と接続する位置からタイヤ幅方向内側に延びて周方向主溝52に連通する。
このような複数の溝により、タイヤ10のトレッド部は、内側陸部70とショルダー陸部72と、に区分けされた複数のブロックの陸部を備える。内側陸部70は、ショルダー陸部72と、少なくとも連絡溝58,60を隔てて離間し、連絡溝58あるいは連絡溝60とタイヤ赤道線CLとに挟まれた領域に設けられた、地面と接する部分である。ショルダー陸部72は、タイヤ赤道線CLから接地端Se(図2参照)までのペリフェリ距離の半分、タイヤ赤道線CLから離れた中間位置と接地端Seとの間の領域に設けられた、地面と接する部分である。
タイヤ10のトレッドパターン50は、このような形態であるが、トレッドパターン50は、図2に示すものに限定されない。
内側陸部70及びショルダー陸部72のそれぞれの領域には、サイプ80が設けられている。
なお、図2に示すトレッドパターン50では、溝あるいは接地端で四方が囲まれたブロックの領域にサイプ80が設けられるが、タイヤ周方向に連続するリブ状の陸部の領域にサイプ80が設けられてもよい。以下、サイプ80の形態を説明する。
(第1サイプの説明)
図3(a),(b)は、サイプ80の一例を説明する図である。図3(a)は、サイプ80のトレッド表面19における開口を示す。トレッド表面19から見た開口は、サイプ両端間を直線状に延在する。サイプ80の開口の長さ方向(以下、サイプ延在方向という)に沿ってサイプ80を区画するサイプ壁面(側壁面)80a,80bによって挟まれるサイプ空間の幅wは、例えば0.2~1.5mmであり、タイヤ金型では、板状のサイプ刃がサイプ80を形成する型として、タイヤ金型の溝を形成する凸部が設けられた金型トレッド形成面に装着される。
サイプ80の空間を区画するトレッド部の一対のサイプ壁面80a,80bのそれぞれは、サイプ延在方向の各位置において、サイプ深さ方向において、波状に屈曲あるいは湾曲する山部及び谷部を備える。具体的には、サイプ80のサイプ壁面80a,80bは、基準平面に対して最大突出高さと最大凹み深さが等しくなるように波状に凹凸する。基準平面とは、具体的には、サイプ壁面80aあるいはサイプ壁面80bの一部であるサイプ80の開口のエッジを通りサイプ深さ方向(図3(a)の紙面奥行き方向)に延びる平面である。
図3(b)には、サイプ壁面80aの凹凸形状が示されている。サイプ壁面80bは、各場所においてサイプ壁面80aと並行するように波状に屈曲あるいは湾曲する山部及び谷部を備え、サイプ壁面80aに対して一定の幅wで離間する。これにより、サイプ壁面80aとサイプ壁面80bにより区画された一定の幅wのサイプ空間が形成される。すなわち、サイプ80の幅wは、サイプ深さ方向及びサイプ延在方向で一定である。したがって、サイプ壁面80aの凸部の位置に対向するサイプ壁面80bの位置には凹部が、サイプ壁面80aの凹部の位置に対向するサイプ壁面80bの位置には凸部が設けられている。
サイプ80のサイプ壁面80a(第1側壁面)は、サイプ延在方向の各位置において、サイプ深さ方向において、サイプ深さ方向に直交する方向に波状に屈曲あるいは湾曲する少なくとも2つの山部と少なくとも1つの谷部を備える。
一方、サイプ壁面80bは、図示されないがサイプ壁面80aの2つの山部に対向する位置に設けられる2つの谷部と、サイプ壁面80aの少なくとも1つの谷部に対向する位置に設けられる少なくとも1つの山部と、を備える。
サイプ壁面80a(第1側壁面)では、サイプ延在方向のいずれの位置においても山部は、基準平面に対する突出高さを一定に維持する。サイプ深さ方向に沿って山部及び谷部を見たとき、谷部の山部に対する凹み深さは、サイプ延在方向の位置に応じて変化する。山部が一定の高さを維持する突出高さは、例えば、最大突出高さである。
図3(b)に示す例で細かく説明すると、サイプ壁面80aは、少なくとも、第1山部80M1と第2山部80M2と、第1谷部80V1と、を有する。第1谷部80V1は、第1山部80M1と第2山部80M2の、サイプ深さ方向の間に挟まれている。第1谷部80V1の第1山部80M1及び第2山部80M2に対する凹み深さは、サイプ延在方向の位置に応じて変化し、図示例では、図中右側に行くほど浅くなっている。
第1谷部80V1は、最大凹み深さを有する最深谷部の側(図3(b)に示す例では、左側)から、第1山部80M1及び第2山部80M2の、第1谷部80V1とサイプ深さ方向に隣り合う谷部に対する突出高さが最大となり最大突出高さを有する最大山部の側(図3(b)に示す例では右側)に向かって延びており、第1谷部80V1が最深谷部の側から最大山部の側に向かうに連れて、第1山部80M1と第2山部80Mに対する凹み深さは浅くなっている。すなわち、第1谷部80V1は、最大凹み深さの位置から、最大突出高さの位置に向かって凹み深さが小さくなってゼロになるように、最大突出高さの位置に向かって延びている。一方、第2側壁面80bは、図示されないが第1山部80M1と第2山部80M2の山部に対向する位置に設けられる2つの谷部と、第1谷部80V1に対向する位置に設けられる少なくとも1つの山部と、を備え、サイプ80の幅wがサイプ深さ方向及びサイプ延在方向で一定になっている。
第1山部80M1と第2山部M2のサイプ深さ方向の間隔は、サイプ延在方向の一方の側(図3(b)に示す例では紙面左側)に進むに連れて大きくなり、第1山部80M1と第2山部M2に挟まれた第1谷部80V1の、第1山部80M1と第2山部M2からの凹み深さは、サイプ延在方向のうち上記一方の側に進むに連れて徐々大きくなるように構成されている。
このように、サイプ80のサイプ延在方向のどの位置でも山部及び谷部が存在するので、サイプ延在方向に直交する方向の外力を受けてサイプ壁面80a,80bが互いに近づくような倒れ込み変形をしても、サイプ80のサイプ延在方向のどの位置でもサイプ壁面80a,80bの凹凸同士がかみ合ってサイプ壁面80a,80bを支えることができる。このため、トレッド部の陸部にサイプ80を設けたことによる陸部の剛性の低下のうち、倒れ込み変形に対する剛性の低下を抑制することができる。すなわち、サイプ80を設けた陸部の倒れ込み変形に対する剛性は、サイプを区画するサイプ壁面が互いに平行な平面である従来のサイプを設けた場合の陸部の倒れ込み変形に対する剛性に比べて向上する。しかも、第1谷部80V1がサイプ延在方向に向かうに連れて、凹み深さは浅くなるので、金型抜けを向上させることができる。
さらに、第1山部80M1の頂部と第2山部80M2の頂部のサイプ深さ方向の間隔がサイプ延在方向で変化しているので、サイプ延在方向の外力を受けてサイプ壁面80a,80bのうち一方のサイプ壁面が他方のサイプ壁面に対して相対的に大きな変位量でサイプ延在方向に変位しようとしても、すなわち、サイプ壁面80a,80bがサイプ延在方向に沿ったせん断変形を受けて変位しようとしても、一方のサイプ壁面の山部及び谷部のそれぞれに対向した位置にある他方のサイプ壁面の谷部及び山部が、一方のサイプ壁面の山部及び谷部を支えて、変位を阻止する。このため、サイプ80を設けた陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形に対する剛性の低下を抑制することができる。すなわち、サイプ80を設けた陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形に対する剛性は、サイプを区画するサイプ壁面が互いに平行な平面である従来のサイプを設けた場合の陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形に対する剛性に比べて向上する。
図4は、図3(b)に示すサイプ壁面80aを平面視した図である。図5(a)~(d)は、図4中のサイプ延在方向の位置A~Dで切断したときのサイプ壁面80aの形状の一例を模式的に示す図である。
山部は、稜線80R1,80R2,80R3,80R4を含む。稜線80R1,80R2,80R3,80R4は、サイプ壁面80aにおける、サイプ延在方向の同じ位置の、サイプ深さ方向の周辺の位置に対して凸形状を成した頂部が、サイプ延在方向に連続して延びる部分である。また、谷部は、谷底線80B1,80B2,80B3を含む。谷底線80B1,80B2,80B3は、サイプ延在方向の同じ位置の、サイプ深さ方向の周辺の位置に対して凹形状を成した底部が、サイプ延在方向に連続して延びる部分である。図4では、稜線80R1,80R2,80R3,80R4を実線で示し、谷底線80B1,80B2,80B3は、一点鎖線で示している。なお、本明細書でいう稜線は、山部の頂部が線である場合は、頂部の線であるが、頂部が幅を持った平面を成している場合、平面の中心位置を繋げた線であってもよい。
ここで稜線80R1,80R2,80R3,80R4は、サイプ延在方向に進むに連れて、サイプ深さ方向の位置が変化するように構成されている。稜線80R1,80R3は、図4中の右側に進むほど、サイプ深さ方向の深い位置に移動し、稜線80R2,80R4は、図4中の右側に進むほど、サイプ深さ方向の浅い位置に移動する。
なお、図4は、サイプ壁面80aの稜線及び谷底線を示しているが、サイプ壁面80bでは、サイプ壁面80aの稜線80R1,80R2,80R3,80R4に対向する位置に谷底線が設けられ、サイプ壁面80aの谷底線80B1,80B2に対向する位置に稜線が設けられるので、サイプ側壁面80bでは、谷底線は、サイプ延在方向に進むに連れて、サイプ深さ方向の位置が移動するように構成されている。
また、サイプ壁面80aの谷底線80B1は、図4に示すように、トレッド表面19に平行である。このとき、谷底線80B1と稜線80R1の間に挟まれた傾斜面Q、及び谷底線80B1と稜線80R2の間に挟まれた傾斜面Rは、サイプ壁面80bにおける対応する傾斜面と対峙するように構成されている。
このように、稜線あるいは谷底線のサイプ深さ方向の位置が変わることにより、サイプ延在方向の位置で、山部及び谷部の形状を変化させることができる。これにより、タイヤ金型のサイプ刃をトレッドゴムから抜き出すとき、サイプ刃がトレッドゴムの抵抗を受け難く、サイプ刃が抜け易い形状にすることができる。このため、タイヤからの金型抜けを向上させることができる。
また、図4に示す谷底線80B1と稜線80R1の間に挟まれた傾斜面Q、及び谷底線80B1と稜線80R2の間に挟まれた傾斜面Rは、サイプ壁面80bにおける対応する傾斜面と対峙するので、陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形により、一方のサイプ壁面の山部がサイプ延在方向に変位しようとしても、この山部と谷部の間の傾斜面(傾斜面R,Q)と対峙する他方のサイプ壁面の傾斜面とが当接して山部の変位を阻止するので、サイプ80を設けた陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形に対する剛性は、サイプを区画するサイプ壁面が互いに平行な平面である従来のサイプを設けた陸部のサイプ延在方向に沿ったせん断変形に対する剛性に比べて向上する。
一実施形態によれば、稜線80R1と稜線80R2とが、あるいは、稜線80R2と稜線80R3とが、あるいは、稜線80R3と稜線80R4とが、サイプ延在方向の一方の側に進むに連れて近づき、図4に示すように、稜線同士が合流することが好ましい。このとき、谷底線80B1における、稜線80R1及び稜線80R2に対する凹み深さは、最大山部に近づくほど徐々に浅くなり、谷底線80B1の凹み深さは、合流位置においてゼロになることが好ましい。これにより、タイヤからの金型抜けを向上させつつ、サイプが設けられた陸部の、倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性を、従来のサイプが設けられた陸部の、倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性に比べて向上させることができる。
図5(a)~(d)は、サイプ壁面の形状をより理解することができるように、図4に示す位置A~Dにおける凹凸形状を示している。図5(a)~(d)に示すように、稜線80R1、稜線80R2、稜線80R3、及び稜線80R4のサイプ深さ方向の位置は、サイプ延在方向の位置に応じて変化している。サイプ刃がトレッドゴムから抜き出されるときにサイプ刃が受ける抵抗は、サイプ深さ方向の凹凸形状の変動量の大きさに応じて変化し、変動量が小さいほど小さい。谷底線80B1,80B2,80B3の凹み深さは最大凹み深さから徐々に浅くなるので、位置B,Cにおける凹凸形状の変動量は、位置A,Dにおける凹凸形状の変動量に比べて小さい。このため、位置B,Cにおけるサイプ刃が受ける抵抗は小さく、タイヤからの金型抜けを向上させることができる。
一方、位置B,Cでは、図5(b),(c)に示すように、サイプ深さ方向に沿った凹凸形状の凹凸回数は、位置A,Dに比べて多い。このため、サイプ壁面が倒れこんだ時サイプ壁面同士が互いにかみ合って支え合う効果は大きい。
また、稜線80R1、稜線80R2、稜線80R3、及び稜線80R4は、基準平面Pに対する突出高さを維持しながら、サイプ深さ方向の位置が変化するので、稜線80R1、稜線80R2、稜線80R3、及び稜線80R4を形成する山部80M1,80M2の傾斜面が、対向するサイプ壁面80bの谷部の傾斜面に当接して支えられるので、サイプ壁面間で変位量が異なるせん断変形を受けてもサイプ壁面の変位を阻止する効果は大きい。
谷底線80B2は、図4に示すように、谷底線80B1に比べてサイプ深さ方向の深い位置に、谷底線80B1と平行に設けられ、谷底線80B2は、稜線80R2及び稜線80R3と合流し、谷底線80B2の、稜線80R2及び稜線80R3と合流する合流位置は、谷底線80B1と稜線80R1及び稜線80R2とが合流する合流位置と異なっている。谷底線80B2の、稜線80R2及び稜線80R3と合流する合流位置と、谷底線80B1と稜線80R1及び稜線80R2とが合流する合流位置とは、図4に示す例では、サイプ延在方向の互いに反対側の位置である。このような形状により、谷底線をサイプ深さ方向に繰り返し設けることができるので、サイプ80が設けられた陸部の倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性は、サイプを区画するサイプ壁面が互いに平行な平面である従来のサイプが設けられた陸部の剛性に比べて大きく向上する。
図4に示す谷底線80B1の、稜線80R1及び稜線80R2からの凹み深さが最大となる位置Aから最小(ゼロ)となる位置Dまでのサイプ延在方向に沿った距離L1(図4参照)は、例えば10~40mmである。
サイプ壁面80a,80bの最大凹み深さL2及び最大突出高さの寸法L2(図5参照)は、例えば、0.1~5mmであり、好ましくは、0.3~2mmである。
また、谷部80V1あるいは谷底線80B1が最大の凹み深さとなっている位置におけるタイヤ深さ方向に隣り合う山部80M1,80M2間の離間距離L3(図4参照)は、例えば0.5~8mmであり、好ましくは1~4mmである。
ここで、サイプ80によって、サイプ80が設けられたブロックあるいはリブ等の陸部の倒れ込み変形に加えて、せん断変形に対する剛性は、山部80M1,80M2を含む山部及び谷部80V1を含む谷部の形状によって変化する。例えば、上記距離L1(図4参照)に対する寸法L2(図5参照)の比L2/L1、及び、寸法L2と離間距離L3との積L2×L3を調整することにより、陸部の倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性を調整することが好ましい。
比L2/L1は、図4に示すサイプ深さ方向に隣り合う2つの稜線同士が、サイプ延在方向において接近する傾斜角度の高低の程度を示し、積L2×L3は、図4に示す傾斜面Q及び傾斜面Rのサイプ延在方向から見た投影面積の大小の程度を示す。比L2/L1及び積L2×L3が大きい程、せん断変形に対する陸部の剛性を高くすることができる。また、寸法L2が大きいほど、倒れこみ変形に対する陸部の剛性を高くすることができる。したがって、せん断変形及び倒れこみ変形に対する陸部の剛性を高くするには、寸法L2を向上させることが好ましい。しかし、寸法L2を過度に大きくすると、加硫工程におけるタイヤ金型からタイヤをとりだそうとするとき、サイプ刃がトレッドゴムの大きな抵抗を受けてタイヤを金型から離脱させることが難くなる。このため、寸法L2が大きいサイプをトレッドパターン全体に使用することは難しく、部分的に用いることが好ましい。この場合、寸法L2を所定の範囲内に制限した条件で、比L2/L1及び積L2×L3を調整することにより、倒れこみ変形に対する剛性、及びせん断変形に対する剛性を種々調整することができる。
例えば、寸法L2を変化させず、距離L1を小さくし、離間距離L3を大きくすることにより、比L2/L1及び積L2×L3向上させて、せん断変形に対する剛性を向上させることができる。また、比L2/L1及び積L2×L3を変化させず、寸法L2を所定の範囲内で大きくすることで、倒れこみ変形に対する剛性を向上させることができる。
例えば、図2に示すトレッドパターン50の内側陸部70においてタイヤ幅方向の横力に対する剛性を向上させてドライ操縦安定性(特に、初期操舵応答性)を向上させたタイヤ、及びショルダー陸部72において、タイヤ周方向の剛性を高めて荷重耐久性を向上させたタイヤを、サイプ80の距離L1、寸法L2、及び離間距離L3を調整することにより作製することができる。サイプ80が、図2に示すように、サイプ延在方向がタイヤ幅方向に対して45度未満になるように設けられるトレッドパターン50の場合、サイプ80として以下の条件を満たすサイプを所定の陸部に配置することが好ましい。以下、ドライ操縦安定性を向上させたタイヤ、及び、荷重耐久性を向上させたタイヤに適したサイプ80について説明する。
(1)ドライ操縦安定性を向上させたタイヤ
ドライ操縦安定性を向上させたタイヤを得るには、内側陸部70におけるタイヤ幅方向の横力に対する剛性を向上させることが好ましい。タイヤ幅方向に対して45度未満の方向をサイプ延在方向とするサイプ80を用いる場合、上述したせん断変形に対する剛性を向上させることが好ましい。この場合、内側陸部70の領域に設けられるサイプ80は、積L2×L3が0.3~8mmであり、比L2/L1が0.0075~0.2であるサイプAであることが好ましい。サイプAを内側陸部70の領域に設けることにより、ドライ操縦安定性を向上させることができる。サイプAは、図2に示す内側陸部70の領域全てに設ける必要はなく、一部分に設けてもよい。乗用車用タイヤの場合、距離L1は、例えば、10~40mmであり、寸法L2は、例えば、0.3~2mmであり、離間距離L3は、例えば、1~4mmである。
この場合、一実施形態によれば、ショルダー陸部72の領域に設けられるサイプ80は、サイプAと異なるサイプBを含むことが好ましい。サイプBの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、サイプAの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、積L2×L3は0.05~2mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1である。このようなサイプBをショルダー陸部72の領域に設けることにより、ドライ操縦安定性がより向上する。また、ウェット路面における制動性能も向上する。サイプBのサイプ壁面間の距離である幅wは、サイプAと同様の幅wとすることが好ましい。サイプBは、図2に示すショルダー陸部72の領域全てに設ける必要はなく、一部分に設けてもよい。乗用車用タイヤの場合、距離L1は、例えば、10~70mmであり、寸法L2は、例えば、0.1~1mmであり、離間距離L3は、0.5~2mmである。
また、一実施形態によれば、ショルダー陸部72の領域には、サイプ80に代えて、対向する2つのサイプ壁面が平行であり、サイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来のサイプ(第2サイプ)が設けられることも好ましい。この場合、サイプ壁面間の距離であるサイプの幅は、サイプ80と同様の幅wとすることが好ましい。この場合でも、ドライ操縦安定性は向上する。
(2)荷重耐久性を向上させたタイヤ
荷重耐久性とは、一定速度で回転するタイヤに荷重を徐々に付加したとき、どの程度の高荷重のレベルまで破壊することなく維持できる耐久性を有するか、を意味する。このようなタイヤを得るには、ショルダー陸部72の高荷重時のタイヤ周方向の倒れこみを抑制するためにショルダー陸部72のタイヤ周方向の剛性が高いことが好ましい。タイヤ幅方向に対して45度未満の方向をサイプ延在方向とするサイプ80を用いる場合、上述した倒れこみ変形に対する剛性を向上させることが好ましい。この場合、ショルダー陸部72の領域に設けられるサイプ80は、積L2×L3が0.3~10mmであり、比L2/L1が0.006~0.2であるサイプCであることが好ましい。サイプCをショルダー陸部72の領域に設けることにより、荷重耐久性を向上させることができる。サイプCは、図2に示すショルダー陸部72の領域全てに設ける必要はなく、一部分に設けてもよい。乗用車用タイヤの場合、距離L1は、例えば、10~50mmであり、寸法L2は、例えば、0.3~2mmであり、離間距離L3は、例えば、1~5mmである。
この場合、一実施形態によれば、内側陸部70の領域に設けられるサイプ80は、サイプDを含むことが好ましい。サイプDの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、サイプCの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、積L2×L3は0.05~3mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1である。このようなサイプDを内側陸部70の領域に設けることにより、荷重耐久性がより向上する。また、氷上路面における駆動性能も向上する。サイプDのサイプ壁面間の距離である幅は、サイプCと同様の幅wとすることが好ましい。サイプDは、図4に示す内側陸部70の領域全てに設ける必要はなく、一部分に設けてもよい。乗用車用タイヤの場合、距離L1は、例えば、10~70mmであり、寸法L2は、例えば、0.1~1mmであり、離間距離L3は、0.5~3mmである。
また、一実施形態によれば、内側陸部70の領域には、サイプ80に代えて、対向する2つのサイプ壁面が平行であり、サイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来のサイプ(第2サイプ)が設けられることも好ましい。この場合、サイプ壁面間の距離であるサイプの幅は、サイプ80と同様の幅wとすることが好ましい。この場合でも、荷重耐久性は向上する。
(実施例、従来例)
サイプ80の効果を確認するために、図2に示すトレッドパターン50のサイプに、種々寸法を変更したサイプ80を内側陸部70及びショルダー陸部72に設けた、図1に示すタイヤ構造を備えるタイヤ10(195/65R 15 91H)を作製して、ドライ操縦安定性能と荷重耐久性を調べた。
ドライ操縦安定性能については、4本のタイヤ10を、リム(リムサイズ 15×6.0J)に装着し、さらに、空気圧200kPaの条件で、試験車両(1500cc、前輪駆動の乗用車)に装着し、この試験車両を所定のコースの乾燥路面上を走行させて、ドライバによる官能評価で評価した。下記従来例を100として各例の評価結果を指数化した。指数は、指数が高い程、ドライ操縦安定性能が優れていることを示す。
荷重耐久性については、各例のタイヤに空気圧180kPaを充填して、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、周辺温度を38±3℃に制御したうえで、JATMA規定の最大荷重の88%に相当する荷重を負荷させて、速度81km/時にて2時間走行させ、次いで2時間毎に負荷荷重を13%ずつ増加させて、タイヤが破壊したときの走行時間を測定することで、評価した。この測定した走行時間について、従来例の走行時間を100として各例の走行時間を指数化した。指数は、指数が高いほど荷重耐久性が優れていることを示す。
下記表1,2に、各仕様と評価結果を示す。
従来例におけるサイプは、図3(b)に示すサイプ80の形態と異なり、3つの山部がサイプ深さ方向の同じ位置をトレッド表面に平行に延びその突出高さが一定であり、山部に挟まれた谷部もサイプ深さ方向の同じ位置をトレッド表面に平行に延びその凹み深さも一定である形態である。このサイプの、サイプ80の寸法L2に対応する寸法は0.7mmであり、サイプ深さ方向の隣り合う山部間の離間距離は1mmであり、この寸法を、表1の対応する欄に示した。このサイプを、内側陸部70及びショルダー陸部72の両方の領域全てに設けた。
なお、実施例に用いるサイプ80における距離L1が、図2に示すサイプ80の配置長さに対して短い場合、サイプ80の配置長さに対して不足する部分は、従来例と同様に、山部及び谷部がサイプ深さ方向の同じ位置をトレッド表面に平行に延びその突出高さ及び凹み深さが一定であるサイプの形態とし、このサイプを、サイプ80の配置長さの両端に設けた。
実施例3におけるショルダー陸部の領域に設けるサイプは、サイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来の平面状のサイプとし、実施例6における内側陸部の領域に設けるサイプは、サイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来の平面状のサイプとした。
Figure 0007102904000001
Figure 0007102904000002
実施例1~6のいずれも、従来例対比、ドライ操縦安定性及び荷重耐久性のいずれも向上することがわかる。これより、サイプ80を設けた陸部の倒れ込み変形及びせん断変形に対する剛性を、陸部に適切に持たせることができることがわかる。
実施例1と実施例2の比較より、ショルダー陸部72の領域に設けるサイプ80として、積L2×L3が0.05~2mmであり、比L2/L1が0.0014~0.1であり、内側陸部70の領域に設けるサイプ80の積L2×L3、比L2/L1より小さいサイプを用いることで、ドライ操縦安定性のみならず荷重耐久性が向上することがわかる。また、実施例3に示すように、ショルダー陸部72の領域にサイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来の平面状のサイプを設けても、従来例に対してドライ操縦安定性のみならず荷重耐久性が向上することができることがわかる。
実施例4と実施例5の比較より、内側陸部70の領域に設けるサイプ80として、積L2×L3が0.05~3mmであり、比L2/L1が0.0014~0.1であり、ショルダー陸部72の領域に設けるサイプ80の積L2×L3、比L2/L1より小さいサイプを用いることで、荷重耐久性のみならずドライ操縦安定性が向上することがわかる。また、実施例6に示すように、内側陸部70の領域にサイプ壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面となっている従来の平面状のサイプを設けても、従来例に対してドライ操縦安定性のみならずドライ操縦安定性が向上することがわかる。
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
10 空気入りタイヤ
12 カーカスプライ層
14 ベルト層
16 ビードコア
18 トレッドゴム部材
19 トレッド表面
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
26 インナーライナゴム部材
28 ベルトカバー層
50 トレッドパターン
52 周方向主溝
54,56 傾斜溝
58,60,62,64 連絡溝
66,68 分岐溝
70 内側陸部
72 ショルダー陸部
80 サイプ
80a,80b サイプ壁面
80M1 第1山部
80M2 第2山部
80V1 第1谷部
80R1,80R2,80R3,80R4 稜線
80B1,80B2,80B3 谷底線

Claims (8)

  1. トレッド部にサイプが設けられた空気入りタイヤであって、
    前記トレッド部は、
    タイヤ赤道線から接地端までのペリフェリ距離の半分前記タイヤ赤道線から離れた中間位置と前記接地端との間の領域に設けられた、地面と接するショルダー陸部と、前記ショルダー陸部と溝を隔てて離間し、前記溝と前記タイヤ赤道線とに挟まれた領域に設けられた、地面と接する内側陸部と、を備え、
    前記内側陸部及び前記ショルダー陸部の少なくともいずれか一方の領域には、第1サイプが設けられ、
    前記トレッド部のトレッド表面から見た前記第1サイプの開口は、サイプ両端間を直線状に延在し、
    前記第1サイプのサイプ深さ方向において、前記第1サイプの側壁面は、当該側壁面の一部である前記開口のエッジを通り前記サイプ深さ方向に延びる基準平面に対して最大突出高さと最大凹み深さが等しくなるように波状に凹凸し、
    前記第1サイプの両側の側壁面のうち一方の第1側壁面は、前記第1サイプのサイプ延在方向の各位置において、サイプ深さ方向において、前記サイプ深さ方向に直交する方向に波状に曲がる少なくとも2つの山部と少なくとも1つの谷部を備え、他方の第2側壁面は、前記2つの山部に対向する位置に設けられる2つの谷部と、前記少なくとも1つの谷部に対向する位置に設けられる少なくとも1つの山部を備え、
    前記第1側壁面では、前記サイプ延在方向のいずれの位置においても前記山部は、前記基準平面に対する突出高さを一定に維持しつつ、前記サイプ深さ方向に沿って前記山部及び前記谷部を見たとき、前記谷部の前記山部に対する凹み深さは、前記サイプ延在方向の位置に応じて変化し、
    前記第1側壁面の前記山部は、前記谷部の1つを前記サイプ深さ方向に挟む第1山部と第2山部とを含み、
    前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向の間隔が、前記サイプ延在方向の一方の側に進むに連れて大きくなり、前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つの、前記第1山部と前記第2山部からの凹み深さは、前記サイプ延在方向のうち前記一方の側に進むに連れて徐々に大きくなる、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つは、前記最大凹み深さの位置から、前記最大突出高さの位置に向かって前記凹み深さが徐々に小さくなってゼロになるように、前記最大突出高さの位置に向かって延びており、
    前記谷部の1つの前記凹み深さが最大となる位置から最小となる位置までの前記サイプ延在方向に沿った距離をL1とし、前記最大突出高さあるいは前記最大凹み深さの寸法をL2とし、前記サイプ延在方向の前記最大凹み深さの位置における前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向に沿った離間距離をL3としたとき、
    前記第1サイプは、積L2×L3が0.3~8mmであり、比L2/L1が0.0075~0.2であるサイプAを含み、
    前記サイプAは、前記内側陸部の領域に設けられている、
    請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第1サイプはサイプBを含み、
    前記サイプBの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、前記サイプAの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、前記サイプBの積L2×L3は0.05~2mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1であり、
    前記サイプBは、前記ショルダー陸部の領域に設けられている、
    請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ショルダー陸部の領域には、対向する2つの側壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面である第2サイプが設けられている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記第1山部と前記第2山部に挟まれた前記谷部の1つは、前記最大凹み深さの位置から、前記最大突出高さの位置に向かって前記凹み深さがゼロになるように、前記最大突出高さの位置に向かって延びており、
    前記谷部の1つの前記凹み深さが最大となる位置から最小となる位置までの前記サイプ延在方向に沿った距離をL1とし、前記最大突出高さあるいは前記最大凹み深さの寸法をL2とし、前記サイプ延在方向の前記最大凹み深さの位置における前記第1山部と前記第2山部の前記サイプ深さ方向に沿った離間距離をL3としたとき、
    前記第1サイプは、積L2×L3が0.3~10mmであり、比L2/L1が0.006~0.2であるサイプCを含み、
    前記サイプCは、前記ショルダー陸部の領域に設けられている、
    請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記第1サイプは、サイプDを含み、
    前記サイプDの積L2×L3及び比L2/L1は、いずれも、前記サイプCの対応する積L2×L3及び比L2/L1に比べて小さく、前記サイプDの積L2×L3は0.05~3mmであり、比L2/L1は0.0014~0.1であり、
    前記サイプDは、前記内側陸部の領域に設けられている、
    請求項5に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記内側陸部の領域には、対向する2つの側壁面がサイプ深さ方向に直線上に延びる平面である第2サイプが設けられている、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記谷部の1つの、前記トレッド表面からみた前記サイプ深さ方向の位置は、前記サイプ延在方向のいずれの位置でも同じである、請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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