図1は、(A)が本発明の第1実施形態の射出成形金型1の型閉じ状態の要部断面図、(B)がゲート切断装置11の構成を説明するための平面図である。図2、図3及び図4は、本発明の第1実施形態の射出成形金型1のゲート切断時、型開き完了時、及び成形品Pの押上げ時の要部断面図である。図1(A)及び図2から図4は、正面から見た図であり、射出成形金型1の説明において、方向は、図1の固定型101側を上、可動型201側を下とし、また図1の成形品P側を左、反対側を右とする。これらについては、他の実施形態においても同じである。本実施形態において、理解を容易にするために成形品Pにはドットを付している。この点は、他の実施形態においても同じである。
本発明の第1実施形態の射出成形金型1は、成形品Pを成形する固定型101と可動型201と、ゲートを切断するゲート切断装置11とを備える。
固定型101は、固定側取付板102と、固定側取付板102に対して着脱可能な固定側型板105とを有する。また固定型101には、固定側取付板102に対して固定側型板105を離脱させる固定側型板駆動手段121が設けられている。固定側型板105は、成形品Pの外面を形成するキャビティ面108を有し、さらにキャビティ面108の近くにゲート切断装置11を収容する収容部109を有する。収容部109は、固定側型板105を上下方向に貫通するかたちで設けられている。
固定側型板駆動手段121は、固定側型板105を固定側取付板102から離れるように移動させる手段であり、固定側型板105に取付けられたスプリング122と、固定側取付板102と固定側型板105との離隔距離を規制するストップボルト123とを備える。
スプリング122は、固定側型板105の上面106に連通するように設けられた凹部110に収容される。固定側取付板102の底面103には、スプリング122の伸縮をガイドするガイドピン124が取付けられている。
可動型201は、可動側型板205と可動側型板205に固定された可動側入れ子221とを有する。可動側入れ子221の外周には、成形品Pの内面を形成するコア面223が設けられている。可動側型板205は、上面206にゲート切断装置11のスライドカッター15及びホルダー61の下部が嵌り込む収容部209が設けられている。
収容部209は正面視において略矩形の凹部であり(図3参照)、収容部209の底面210は、可動側型板205の上面206と平行に設けられている。収容部209の底面210の左側には、ランナーRとなる凹部211が設けられている(図4参照)。さらに収容部209の左上端には、カッター21の先端部25が嵌り込む凹部212が設けられている(図3参照)。
この他、可動側入れ子221及び可動側型板205には、成形品Pを押出す(突き出す)エジェクタピン301が挿通する挿通孔が、さらに可動側型板205には、ゲート切断後のランナーRに残された樹脂を押出す(突き出す)エジェクタピン302が挿通する挿通孔が設けられている。
ゲート切断装置11は、成形品PにつながるゲートGを切断する装置であり、ゲートGを切断するスライドカッター15と、スライドカッター15と摺動可能に係合しスライドカッター15をスライドさせる保持駒41と、保持駒41を進退可能に収容するホルダー61とを備える。
スライドカッター15は、ゲートGを切断するカッター21と、カッター21を支持する摺動駒31とを備える。カッター21は、立方体形状の本体部22と、本体部22から突出するように設けられた先端部25とを備え、本体部基端24が摺動駒31に固定されている。先端部25は、本体部22に比較して小さく、本体部22とつながっている。本実施形態のスライドカッター15は、カッター21と摺動駒31とが別々に製作され、それが接合されているが、カッター21と摺動駒31とを一体的に形成してもよい。
カッター21の本体部22と先端部25との連結部にゲートGとなるゲート部26が設けられている。ゲート部26は、貫通孔であり、ランナーRにつながる基端側に比較してキャビティCにつながる先端側が小さく先細り形状となっている(図3A部拡大図参照)。またゲート部26は、本体部22側が傾斜面27、先端部25側(左側)が鉛直面28となっており、鉛直面28のキャビティC側先端には刃が設けられている。
摺動駒31は、保持駒41に摺動自在に連結し、保持駒41の移動に伴い移動し、取付けられたカッター21を左右方向に進退させる。摺動駒31は、矩形ブロック部材の右側側面が斜めに切欠かれ上部が下部に比較して小さい台形形状を有する(図1参照)。カッター21は、本体部底面23と摺動駒31の底面33とが面一となるように本体部基端24が摺動駒31の左側面34に固定されている。
摺動駒31は、傾斜面である右側面35には、保持駒41の傾斜面に設けられた凸条52が摺動自在に嵌り込む蟻溝36が設けられている。また摺動駒31の正面外壁37及び背面外壁にはホルダー61に設けられた凹溝68に摺動自在に嵌り込む凸条38を備える。
保持駒41は、摺動駒31と摺動可能に係合し上下方向に進退することでスライドカッター15を左右方向にスライドさせる。保持駒41は、矩形ブロック状の基台45と、摺動駒31と摺動可能に係合する駒部材47とを備える。駒部材47は、基台45の底面に接合されており、基台45と駒部材47とは一体化されている。本実施形態の保持駒41は、基台45と駒部材47とが別々に製作され、それが接合されているが、基台45と駒部材47とを一体的に形成してもよい。
駒部材47は、矩形ブロック部材の左側側面が斜めに切欠かれ、図1の正面視において上面に比較して下面が狭い台形形状を有する。駒部材47は、傾斜面である左側面50には、摺動駒31の傾斜面に設けられた蟻溝36に摺動自在に嵌り込む凸条52が設けられている。また駒部材47の正面外壁51及び背面外壁にはホルダー61に設けられた保持駒ガイドである凹溝69に摺動自在に嵌り込む凸条53が設けられている。
保持駒41は、取付けボルト55により基台45の上面が固定側取付板102の底面103に接するように固定側取付板102に固定されている。
ホルダー61は、保持駒41を進退可能に収容し、保持駒41を上下方向に案内するとともに、スライドカッター15をゲートGの切断方向に案内する。ホルダー61は、断面コ字形状を有し(図1(B)参照)、上端面及び下端面が開口した内部空間を備える箱状に形成され、左壁面65の下部には、カッター21の出入口66が設けられている。
ホルダー61は、出入口の上端67が、固定側型板105の底面107と面一となるように収容部109に取付けられている。このためホルダー61に設けられたカッター21の出入口66は、固定側型板105の底面107から下方に突出している。ホルダー61の固定側型板105の底面107から下方に突出している部分は、型閉じ時には、可動側型板205の収容部209に収容可能に構成されている。
ホルダー61には、図1を正面から見て手前側内壁(図示省略)及び奥側の内壁71には、スライドカッター15の摺動駒31を左右方向に案内する、摺動駒31の凸条38が嵌り込む凹溝68が水平方向に形成され、また保持駒41を上下方向に案内する保持駒41の凸条53が嵌り込む凹溝69が鉛直方向に設けられている。
スライドカッター15は、保持駒41と摺動自在に係合し、カッター21がホルダー61の出入口66から飛び出した状態でホルダー61に組み込まれる。このときカッター21は、本体部22及び先端部25の上面29が固定側型板105の底面107に摺動可能に当接する。また型閉じ状態において、ホルダー61の下端75、カッター21の本体部底面23及び摺動駒底面33は、可動側型板205に設けられた収容部209の底面210に当接する。
型閉じ状態でカッター21は、最も左側に移動しており(図1参照)、カッター21の先端25が凹部212に嵌り込む。これにより凹部211の上面が塞がれ、正面視において収容部209の左側にL部状の空間部が形成される。この空間部がランナーRであり、基端にはスプルー(図示省略)が繋り、先端がゲートGとなり、ゲートGは、キャビティCとつながる(図4参照)。
次に射出成形金型1の動作について説明する。
型が閉じられた状態で、図示を省略した射出装置から溶融した樹脂が射出され、樹脂は、固定型101に設けられたスプルー(図示省略)からランナーR及びスライドカッター15に設けられたゲート部26を経由してキャビティCに充填される。型が閉じられた状態とは、固定型101と可動型201とが接し、パーティング面が閉じられた図1の状態をいう。本実施形態では、パーティング面は、固定側型板105の底面107及び可動側型板205の上面206である。
型が閉じられた状態では、固定側取付板102と固定側型板105とは接しており、固定側型板駆動手段121のスプリング122は圧縮された状態である。保圧、冷却工程を経て成形品Pの取り出しとなるが、型開きは以下の要領で行われる。
第1ステップとして、パーティング面が閉じた状態で固定側型板駆動手段121を介して固定側型板105が後退させられる。固定側型板105が後退するとは、固定側型板105が固定側取付板102から離れることであり、図1において下方に移動することをいう。このときパーティング面が閉じた状態であるから、固定側型板105と可動型201と一体的に後退する(図2参照)。
固定側型板105が後退すると、ホルダー61も一緒に下降するため、保持駒41は、ホルダー61に対して相対的に上昇することとなる。これより保持駒41に係合する摺動駒31が、ホルダー61の摺動駒ガイドである凹部68に案内され右側に水平移動する。それに伴いカッター21も、固定側型板105の底面107及び収容部の底面210に挟まれた状態で右側にスライドする。
スライドカッター15が右側にスライドすることで、ゲート部26がゲートGを横切りゲートGを切断する。ゲート部26には刃が設けられ、さらにゲート部26は、ランナーR側に比較してキャビティC側が小さい先細り形状となっているためゲートGは面積が狭く、スライドカッター15が少し右にスライドするだけでゲートGは容易に切断される。
ゲートGは、固定側型板105が後退し始めた初期段階で切断される。ゲートGが切断された時点で、ランナーRの樹脂はゲートG切断前の状態と変わりない。固定側型板105は、ストップボルト123により移動が阻止されるまで後退を継続する。これよりスライドカッター15は、カッター21のゲート部26の鉛直面28が、ゲートGが切断されたランナーRの樹脂の先端部に引掛った状態で右側にスライドし、ランナーRの樹脂は、先端部が右側に引っ張られるため、ランナーRから樹脂の一部が外れる(図2参照)。
固定側型板105の後退が完了すると第2ステップに移行する。第2ステップでは、可動型201が固定型101から後退し、パーティング面が開く(図3参照)。続いて第3ステップとして成形品P及びランナーRの樹脂がエジェクタピン301、302で突き出される(図4参照)。これによりゲートGが切断された成形品PとランナーRの樹脂が回収される。
上記のようにゲート切断装置11は、コンパクトでありユニット化されているので射出成形金型1に組み込み易く、ゲート切断装置11を備える射出成形金型1をコンパクトにまた安価に製造することができる。また第1実施形態の射出成形金型1では、型閉じ状態でゲートGが切断されるため、ゲートGの切断を確実に又きれいに行うことができる。
図5は、本発明の第2実施形態の射出成形金型2の型閉じ状態の要部断面図である。図6、図7及び図8は、本発明の第2実施形態の射出成形金型2のゲート切断後、型開き完了時、及び成形品Pの押上げ時の要部断面図である。図1から図4に示す第1実施形態の射出成形金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の射出成形金型2は、成形品Pを成形する固定型101と可動型201と、ゲートを切断するゲート切断装置11とを備え、第1実施形態の射出成形金型1と基本構成を同じくするが、ゲート切断装置11の取付け要領及び動作要領が異なる。
固定型101は、固定側取付板(図示省略)と、固定側型板105と、固定側型板105にスプリング141を介して着脱自在に取り付けられた固定側入れ子131とを有する。固定側型板105及び固定側入れ子131は共に成形品Pの外面を形成するキャビティ面108、135を有する。
固定側入れ子131は、固定側型板105を部分的に切欠き設けられた凹部112に取付けられ、型閉じ状態で固定側入れ子の上面132が固定側型板105の底面107に、固定側入れ子131の底面133が可動側型板205の上面206に当接する。
固定側入れ子131は、固定側入れ子131を固定側型板105から離れるように移動させるスプリング141を収容するスプリング収容溝137を備える。スプリング141は、上端が固定側型板105の底面107に、下端がスプリング収容溝137の底面に固定され、固定側入れ子131は、スプリング141を介して固定側型板105と連結する。
スプリング141は、型閉じ状態において圧縮状態にあり(図5参照)、型開きに伴い固定側入れ子131を固定側型板105から離れるように移動させる固定側入れ子駆動手段である。固定側入れ子131と固定側型板105とは、第1実施形態のストップボルト123と同様の互いの離隔距離を規制するストップボルト(図示省略)が設けられている。
固定側入れ子131は、キャビティ面135の近くにゲート切断装置11を収容する収容部138を有する。収容部138は、固定側入れ子131を上下方向に貫通するかたちで設けられている。
ホルダー61は、カッター21の出入口の上端67が、固定側入れ子131の底面133と面一となるように固定側入れ子131の収容部138に取付けられている。このためホルダー61に設けられたカッター21の出入口66は、固定側入れ子131の底面133から下方に突出している。ホルダー61のうち固定側入れ子131の底面133から下方に突出している部分は、型閉じ時には、可動側型板205の収容部209に収容可能に構成されている。保持駒41は、基台45が固定側型板105の凹部112の天井面に固定されている。
次に射出成形金型2の動作について説明する。
型が閉じられた状態で、図示を省略した射出装置から溶融した樹脂が射出され、樹脂は、固定型101に設けられたスプルー(図示省略)からランナーR及びスライドカッター15に設けられたゲート部26を経由してキャビティCに充填される。型が閉じられた状態とは、固定型101と可動型201とが接し、パーティング面が閉じられた図5の状態をいう。本実施形態では、パーティング面は、固定側型板105の底面107、固定側入れ子131の底面133及び可動側型板205の上面206である。
型が閉じられた状態では、固定側型板105と固定側入れ子131とは接しており、固定側入れ子駆動手段であるスプリング141は圧縮された状態である。保圧、冷却工程を経て成形品Pの取り出しとなるが、型開きは以下の要領で行われる。
可動型201が固定型101から後退(降下)し型開きが始まる(図6参照)。型開きに伴い固定側型板105と可動型201とは離れるが、固定側入れ子131はスプリング141の付勢力により可動型201の方向に突出され、固定側入れ子131は可動型201に接した状態で一体的に後退する。このため型開きの初期段階では、パーティング面は完全に開いておらずパーティング面の一部は閉じた状態にある。
固定側入れ子131が後退すると、ホルダー61も一緒に下降するが、保持駒41は、固定側型板105に取付けられているため下降せず、保持駒41は、ホルダー61に対して相対的に上昇することとなる。これより保持駒41に係合する摺動駒31が、ホルダー61の摺動駒ガイドである凹部68に案内され右側に水平移動する。それに伴いカッター21も、固定側入れ子131の底面133及び収容部209の底面210に挟まれた状態で右側にスライドし、ゲートGが切断される(図6参照)。
固定側入れ子131が後退し始めた初期段階でゲートGが切断される。ゲートGが切断された時点で、ランナーRの樹脂はゲートG切断前の状態と変わりない。固定側入れ子131は、図示を省略したストップボルトにより移動が阻止されるまで後退を継続する。これよりスライドカッター15は、カッター21のゲート部26の鉛直面28が、ゲートGが切断されたランナーRの樹脂の先端部に引掛った状態で右側にスライドし、ランナーRの樹脂は、先端部が右側に引っ張られるため、ランナーRから樹脂の一部が外れる(図6参照)。
固定側入れ子131の後退が完了するとパーティング面が完全に開く(図7参照)。その後、成形品P及びランナーRの樹脂がエジェクタピン301、302で突き出される(図8参照)。これによりゲートGが切断された成形品PとランナーRの樹脂が回収される。
上記のように第2実施形態の射出成形金型2では、型開きに連動しスライドカッター15が移動しゲートGを切断する。ゲートGの切断は、パーティング面の一部が閉じた状態で行われるため、ゲートGの切断を確実に又きれいに行うことができる。
また第2実施形態の射出成形金型2も第1実施形態の射出成形金型1と同様に、コンパクトでユニット化されたゲート切断装置11が組み込まれるため射出成形金型2をコンパクトにまた安価に製造することができる。さらに第2実施形態の射出成形金型2では、固定側取付板102と固定側型板105とは固定されているのでコールドランナーのみならず、ホットランナーにも適用することができる。
図9は、本発明の第3実施形態の射出成形金型3の型閉じ状態の要部断面図である。図10、図11及び図12は、本発明の第3実施形態の射出成形金型3のゲート切断後、型開き完了時、及び成形品Pの押上げ時の要部断面図である。図1から図4に示す第1実施形態の射出成形金型1、図5から図8に示す第2実施形態の射出成形金型2と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態の射出成形金型3は、成形品Pを成形する固定型101と可動型201と、ゲートを切断するゲート切断装置11とを備え、第1実施形態の射出成形金型1と同様にパーティグ面を完全に閉じた状態でゲートGを切断することができる。第1実施形態の射出成形金型1では、ゲート切断装置11が固定型101に取付けられるのに対して、第3実施形態の射出成形金型3では、ゲート切断装置11が可動型201に取付けられる。
固定型101は、固定側取付板(図示省略)と、固定側型板105とを有し、固定側型板105には、成形品Pの外面を形成するキャビティ面108が設けられている。さらに固定側型板105には、固定側型板105の底面107に連通する、ゲート切断装置11のホルダー61の上部が嵌り込む収容部151が設けられている。収容部151は正面視において略矩形の凹部であり、収容部151の天井面152は、固定側型板105の底面107と平行に設けられている。
可動型201は、可動側型板205と可動側型板205に固定された可動側入れ子221と、可動側受板231とを有し、可動側受板231は、図示を省略した可動側受板駆動手段より固定側型板205から離れるように移動可能に構成されている。可動側受板駆動手段は、第1実施形態の固定側型板駆動手段121と同様に構成することができる。可動側入れ子221の外周には、成形品Pの内面を形成するコア面223が設けられている。
固定側型板205には、上面206に連通する、ゲート切断装置11のスライドカッター15及びホルダー61の下部が嵌り込む収容部209が設けられている。さらに固定側型板205には、保持駒41を収容する収容部241を備える。収容部241は、収容部209と連通し、また固定側型板205の底面207に連通するように設けられている。
保持駒41の駒部材47は、矩形ブロック部材の左側側面が斜めに切欠かれ、図9の正面視において下面に比較して上面が狭い台形形状を有する。保持駒41は、図示を省略した取付けボルトにより基台45の底面が可動側受板231の上面232に接するように可動側受板231に固定されている。
次に射出成形金型3の動作について説明する。
型が閉じられた状態で、図示を省略した射出装置から溶融した樹脂が射出され、樹脂は、固定型101に設けられたスプルー(図示省略)からランナーR及びスライドカッター15に設けられたゲート部26を経由してキャビティCに充填される。型が閉じられた状態とは、固定型101と可動型201とが接し、パーティング面が閉じられた図9の状態をいう。本実施形態では、パーティング面は、固定側型板105の底面107及び可動側型板205の上面206である。保圧、冷却工程を経て成形品Pの取り出しとなるが、型開きは以下の要領で行われる。
第1にパーティング面が閉じられた状態で図示を省略した可動側受板駆動手段より可動側受板231が後退させられる。可動側受板231が後退するとは、可動側受板231が可動側型板205から離れることであり、図9から図10の状態に移行することをいう。
可動側受板231が後退すると、保持駒41も後退するため、保持駒41に係合する摺動駒31が、ホルダー61の摺動駒ガイドである凹部68に案内され右側に水平移動する。それに伴いカッター21も、固定側型板105の底面107及び収容部209の底面210に挟まれた状態で右側にスライドし、ゲートGが切断される(図10参照)。
ゲートGは、固定側受板231が後退し始めた初期段階で切断される。ゲートGが切断された時点で、ランナーRの樹脂はゲートG切断前の状態と変わりない。可動側受板231は、図示を省略したストップボルトにより移動が阻止されるまで後退を継続する。これよりスライドカッター15は、カッター21のゲート部26の鉛直面28が、ゲートGが切断されたランナーRの樹脂の先端部に引掛った状態で右側にスライドし、ランナーRの樹脂は、先端部が右側に引っ張られるため、ランナーRから樹脂の一部が外れる(図10参照)。
可動側受板231の後退が完了すると型開きに移行する。具体的には可動型201が固定型101から後退し、パーティング面が開く(図11参照)。続いて成形品P及びランナーRの樹脂がエジェクタピン301、302で突き出される(図12参照)。これによりゲートGが切断された成形品PとランナーRの樹脂が回収される。
上記のように第3実施形態の射出成形金型3では、型開きに先立ち可動側受板231を後退させることでスライドカッター15をスライドさせゲートGを切断する。つまり第3実施形態の射出成形金型3では、第1実施形態の射出成形金型1と同様に型閉じ状態でゲートGが切断されるため、ゲートGの切断を確実に又きれいに行うことができる。
また第3実施形態の射出成形金型3も第1実施系形態の射出成形金型1と同様に、コンパクトでユニット化されたゲート切断装置11が組み込まれるため射出成形金型3をコンパクトにまた安価に製造することができる。
図13は、本発明の第4実施形態の射出成形金型4の型閉じ状態の要部断面図である。図14、図15及び図16は、本発明の第4実施形態の射出成形金型4のゲート切断時、型開き完了時、及び成形品Pの押上げ時の要部断面図である。図1から図4に示す第1実施形態の射出成形金型1、図9から図12に示す第3実施形態の射出成形金型3と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第4実施形態の射出成形金型4は、第3実施形態の射出成形金型3と基本構成を同じくする一方で、ゲート切断装置11の取付け位置が第3実施形態の射出成形金型3と異なる。第3実施形態の射出成形金型3は、ゲート切断装置11が、成形品Pの外側に位置するのに対して、第4実施形態の射出成形金型4は、ゲート切断装置11が、成形品Pの内側に位置する。ここで成形品Pの内側とは、成形品Pの平面視において成形品Pの外周に囲まれた領域内であり、本実施形態では、成形品Pのコア面223を形成する可動側入れ子221の真下である。
第4実施形態の射出成形金型4において、ゲート切断装置11は、可動側入れ子221と可動側型板205とに挟まれるように可動側型板205に取付けられる。このため第3実施形態の射出成形金型3で見られた固定側型板105の収容部151はない。一方で、固定側型板105には、カッター先端部25が嵌り込む凹部155が設けられている。凹部155は、成形品Pの外面を形成するキャビティ面108に連通する。
可動型201は、可動側型板205と可動側型板205に固定された可動側入れ子221と、可動側受板231とを有し、可動側受板231は、図示を省略した可動側受板駆動手段より固定側型板205から離れるように移動可能に構成されている。可動側受板駆動手段は、第1実施形態の固定側型板駆動手段121と同様に構成することができる。可動側入れ子221の外周には、成形品Pの内面を形成するコア面223が設けられている。
可動側入れ子221の真下に位置する固定側型板205にカッター21及びホルダー61の下部が嵌り込む収容部209が設けられている。収容部209は、固定側型板205の上面206に連通するように設けられている。さらに固定側型板205は、保持駒41を収容する収容部241を備える。収容部241は、収容部209と連通し、また固定側型板205の底面207に連通するように設けられている。
保持駒41の駒部材47は、矩形ブロック部材の右側面が斜めに切欠かれ、図13の正面視において下面に比較して上面が狭い台形形状を有する。保持駒41は、図示を省略した取付けボルトにより基台45の底面が可動側受板231の上面232に接するように可動側受板231に固定されている。
次に射出成形金型4の動作について説明する。射出成形金型4の動作は、射出成形金型3と比較してカッター21のスライド方向が逆であるが、基本的な動作は射出成形金型3と同じである。
型が閉じられた状態で、図示を省略した射出装置から溶融した樹脂が射出され、樹脂は、固定型101に設けられたスプルー(図示省略)からランナーR及びスライドカッター15に設けられたゲート部26を経由してキャビティCに充填される。型が閉じられた状態とは、固定型101と可動型201とが接し、パーティング面が閉じられた図13の状態をいう。本実施形態では、パーティング面は、固定側型板105の底面107及び可動側型板205の上面206である。保圧、冷却工程を経て成形品Pの取り出しとなるが、型開きは以下の要領で行われる。
第1にパーティング面が閉じられた状態で図示を省略した可動側受板駆動手段より可動側受板231が後退させられる。可動側受板231が後退すると、保持駒41に係合する摺動駒31が、ホルダー61の摺動駒ガイドである凹部68に案内され左側に水平移動する。それに伴いカッター21も、可動側入れ子の底面224及び収容部209の底面210に挟まれた状態で左側にスライドし、ゲート部26がゲートGを横切りゲートGを切断する。なお、カッター21のゲート部26の傾斜面27のキャビティ側先端には刃が設けられている。
ゲートGは、固定側受板231が後退し始めた初期段階で切断される。ゲートGが切断された時点で、ランナーRの樹脂はゲートG切断前の状態と変わりない。可動側受板231は、図示を省略したストップボルトにより移動が阻止されるまで後退を継続する。これよりスライドカッター15は、カッター21のゲート部26の傾斜面27が、ゲートGが切断されたランナーRの樹脂の先端部に引掛った状態で左側にスライドし、ランナーRの樹脂は、先端部が左側に引っ張られるため、ランナーRから樹脂の一部が外れる(図14参照)。
可動側受板231の後退が完了すると型開きに移行する。具体的には可動型201が固定型101から後退し、パーティング面が開く(図15参照)。続いて成形品P及びランナーRの樹脂がエジェクタピン301、302で突き出される(図16参照)。これによりゲートGが切断された成形品PとランナーRの樹脂が回収される。
上記のように第4実施形態の射出成形金型4では、型開きに先立ち可動側受板231を後退させることでスライドカッター15をスライドさせゲートGを切断する。つまり第4実施形態の射出成形金型4では、第1実施形態の射出成形金型1と同様に型閉じ状態でゲートGが切断されるため、ゲートGの切断を確実に又きれいに行うことができる。
また第4実施形態の射出成形金型4では、第1実施形態の射出成形金型1等と異なり、ゲート部26の傾斜面27側でゲートGを切断するため、ゲートGをスムーズにかつきれいにカットすることができる。また第4実施形態の射出成形金型4は、ゲート切断装置11が、成形品Pの内側に位置し、さらにゲート切断時にもカッター21が成形品Pの外側にはみ出さないので射出成形金型4をよりコンパクトにすることができる。
図17は、本発明の第5実施形態の射出成形金型5の型閉じ状態の要部断面図である。図18、図19及び図20は、本発明の第5実施形態の射出成形金型5のゲート切断時、型開き完了時、及び成形品Pの押上げ時の要部断面図である。図1から図4に示す第1実施形態の射出成形金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第5実施形態の射出成形金型5は、第1実施形態の射出成形金型1と同様に、成形品Pを成形する固定型101と可動型201と、ゲートを切断するゲート切断装置12とを備え、ゲート切断装置12が固定型101に取付けられている。ここで用いるゲート切断装置12は、ゲート切断装置11と基本構造は共通するもののゲート切断装置11の動作機構が異なり、これに伴いゲート切断装置12の構造も部分的に異なる。
固定型101は、固定側取付板102と、固定側型板105とを有し、固定側型板105には、ゲート切断装置12を収容する収容部109と、ゲート切断装置12を動作させるゲート切断装置駆動手段161を収容する収容部116と、カッター21を収容するカッター収容部117が設けられている。
収容部116は、固定側型板105の上面に連通するように設けられた凹部であり、収容部109は、収容部116と連通し、固定側型板105を貫通するかたちで設けられている。カッター収容部117は、型閉じ時にカッター21が収まる凹部であり、収容部109及びキャビティ面108に連通するように固定側型板105の底面107に設けられている。
収容部116の横幅(左右方向)は、収容部109の横幅に比較して大きく、収容部109は、収容部116の左寄りに位置する。但し、収容部109の収容部116に対する位置は特に限定されるものではない。また固定側型板105には、固定側型板105を貫通し、収容部116に連通する、リターンピン167が挿通する挿通孔118が穿設されている。
ゲート切断装置駆動手段161は、収容部116に配置される横長の連結部材162と、連結部材162と固定側取付板102との間に互いに連結し配置されるスプリング164と、挿通孔118に挿通され、連結部材162に連結するリターンピン167とを備え、型開きに連動してゲート切断装置12を動作させる。リターンピン167の下端168は、型閉じ状態で可動側型板205の上面206に接する。
ゲート切断装置12は、成形品PにつながるゲートGを切断する装置であり、ゲートGを切断するスライドカッター16と、スライドカッター16と摺動可能に係合しスライドカッター16をスライドさせる保持駒42と、保持駒42を進退可能に収容するホルダー62とを備える。
スライドカッター16の基本構成は、第1実施形態のスライドカッター15と同一であるが、摺動駒32、保持駒42及びホルダー62の構造が第1実施形態の摺動駒31、保持駒41及びホルダー61と異なる。
摺動駒32は、保持駒42に摺動自在に係合し、保持駒42の移動に伴い移動し、取付けられたカッター21を進退させる。摺動駒32は、矩形ブロック部材の右側側面が斜めに切欠かれ台形形状を有する(図18参照)。摺動駒32は、正面外壁37及び背面外壁の上部に、保持駒42の下部に設けられた凸条52が摺動自在に嵌り込む蟻溝36が設けられ、右側面にホルダー62に設けられた傾斜溝70に摺動自在に嵌り込む凸条39を備える。
保持駒42は、スライドカッター16と摺動可能に係合し上下方向に進退することでスライドカッター16を左右方向にスライドさせる。保持駒42は、摺動駒32と摺動可能に係合する矩形ブロック状の駒部材48と、棒状の連結材46とを備える。
駒部材48の底面には、保持駒32の上部に設けられた蟻溝36に摺動自在に嵌り込む凸条52が設けられている。また駒部材48の正面外壁及び背面外壁にはホルダー62に設けられた保持駒ガイドである凹溝(図示省略)に摺動自在に嵌り込む凸条(図示省略)が設けられている。連結材46は、第1実施形態の保持駒41の基台45に該当する部材であり、連結部材162の底面と駒部材48の上面とに連結する。
ホルダー62は、保持駒42を進退可能に収容し、保持駒42を上下方向に案内するとともに、スライドカッター16をゲートGの切断方向に案内する。ホルダー62は、ホルダー61と同様に断面コ字形状を有する。ホルダー62は、下端75が、カッター収容部117の上端と面一となるように固定側型板105の収容部109に取付けられている。
ホルダー62には、図17を正面から見て手前側内壁(図示省略)及び奥側の内壁にスライドカッター16の摺動駒32の凸条39が係合する傾斜溝70が設けられ、また保持駒42を上下方向に案内する保持駒42の凸条(図示省略)が嵌り込む凹溝(図示省略)が鉛直方向に設けられている。
スライドカッター16は、保持駒42と摺動自在に係合し、カッター21がホルダー62から飛び出した状態でホルダー62に組み込まれる。カッター21は、型閉じ時には、本体部22及び先端部25の上面29が固定側型板105のカッター収容部117の上面に摺動可能に当接し、本体部底面23及び摺動駒32の底面33が可動側型板205の上面206に当接する。
次に射出成形金型5の動作について説明する。
型が閉じられた状態で、図示を省略した射出装置から溶融した樹脂が射出され、樹脂は、固定型101に設けられたスプルー(図示省略)からランナーR及びスライドカッター16に設けられたゲート部26を経由してキャビティCに充填される。型が閉じられた状態とは、固定型101と可動型201とが接し、パーティング面が閉じられた図17の状態をいう。本実施形態では、パーティング面は、固定側型板105の底面107及び可動側型板205の上面206である。
型が閉じられた状態では、固定側取付板102と固定側型板105とは接しており、ゲート切断装置駆動手段161のスプリング164は圧縮された状態である。保圧、冷却工程を経て成形品Pの取り出しとなるが、型開きは以下の要領で行われる。
可動型201が固定型101から後退(降下)し型開きが開始される(図18参照)。それに連動してゲート切断装置駆動手段161のスプリング164が伸長し、保持駒42を突き出す。これにより保持駒42に係合する摺動駒32が、ホルダー62に設けられた傾斜溝70及び保持駒42に案内され右側に水平移動する。それに伴いカッター21は可動側型板205の上面206を摺動しながら右側にスライドし、ゲート部26がゲートGを横切りゲートGを切断する。
ゲートGは、可動型201が後退し始めた初期段階で切断される。ゲートGが切断された時点で、ランナーRの樹脂はゲートG切断前の状態と変わりない。保持駒42の突き出しは、連結部材162が収容部116の底面に当接するまで継続される。これよりスライドカッター16は、カッター21のゲート部26の鉛直面28が、ゲートGが切断されたランナーRの樹脂の先端部に引掛った状態で右側にスライドし、ランナーRの樹脂は、先端部が右側に引っ張られるため、ランナーRから樹脂の一部が外れる(図18参照)。
その後、可動側型板205が成形品Pを取り出し可能な位置まで後退し(図19参照)、成形品P及びランナーRの樹脂がエジェクタピン301、302で突き出される(図20参照)。これによりゲートGが切断された成形品PとランナーRの樹脂が回収される。
上記のように第5実施形態の射出成形金型5では、型開きに連動しスライドカッター16が移動しゲートGを切断するゲート切断装置12が固定型105にコンパクトに配置されている。さらにゲート切断装置12は、ユニット化されているため射出成形金型に組込み易く、これらによりゲート切断装置を備える射出成形金型をコンパクトにまた安価に製造することができる。第5実施形態の射出成形金型5では、固定側取付板102と固定側型板105とは固定された状態であるのでコールドランナーのみならず、ホットランナーにも適用することができる。
以上、第1から第5実施形態の射出成形金型1、2、3、4、5を用いて、本発明のゲート切断装置及び成形用金型を説明したが、本発明のゲート切断装置及び成形用金型は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。
例えば、第1実施形態のゲート切断装置11では、摺動駒31に蟻溝36を設け、保持駒41に凸条52を設け、これらを互いに摺動自在に係合させるが、摺動駒31に凸条を設け、保持駒41に蟻溝を設け、これらを互いに摺動自在に係合させてもよい。要すれば摺動駒31と保持駒41とを摺動自在に係合できればよく、一方に蟻溝、他方に凸条を設ければよい。これは、摺動駒31とホルダー61、保持駒41とホルダー61との関係においても同じである。
また本発明のゲート切断装置において、互いに係合する蟻溝、凸条の断面形状は図に示した矩形であるものに限定されるものではなく、嵌合部又は係合部の断面が円形、三角形等であるものであってもよい。また本発明のゲート切断装置及び成形用金型において、ホルダー、摺動駒及び保持駒それぞれの係合手段は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、リニアガイド等を用いてもよい。
第1から第5実施形態の射出成形金型1、2、3、4、5では、ホルダー61、62が固定型101又は可動型201とは別体となっているが、本発明の成形用金型においてホルダーを固定型及び/又は可動型に一体的に設けてもよい。
第1から第5実施形態の射出成形金型1、2、3、4、5に示すゲートGは、オーバーラップゲートと呼ばれるタイプのものであるが、本発明のゲート切断装置及び成形用金型において、ゲートGの種類は特に限定されるものではない。
第1実施形態のゲート切断装置11では、固定側型板105の駆動源としてスプリング122を使用するが、スプリングに代えて伸縮可能な他の弾性体を使用してもよい。これに関しては、他の実施形態で使用するスプリングにおいても同じである。また本発明の成形用金型において成形可能な成形品Pは、特に限定されるものでなく、アンダーカット部を有する成形品であってもよい。
また本発明のゲート切断装置及び成形用金型において、各構成部材の角及び側稜にR面取りやC面取り等が施されていてもよい。
また本発明のゲート切断装置及び成形用金型に使用される各構成部材の材質は、特定の材質に限定されるものではなく、公知のゲート切断装置及び成形用金型に使用される部材の材質と同様のものを適宜用いればよい。ただし各構成部材における摺動面は、摺動性の良好な材質又は摺動性の良好な表面処理が施された材料を用いることが好ましい。なお各摺動面は、面接触であるものに限定されるものではなく、線接触や点接触であってもよい。
また本発明のゲート切断装置及び成形用金型は、水平、垂直又はその他の方向に開閉する金型に適用可能である。また本発明のゲート切断装置及び成形用金型は、射出成形金型以外にダイカスト金型のようなモールド金型、モールドプレス成形金型などに好適に使用することができる。
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。