JP7087601B2 - 硫化剤の除去方法及びニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents

硫化剤の除去方法及びニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 Download PDF

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Description

本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの硫化処理を経て得られた硫化後液中の硫化水素等の硫化剤を除去する硫化剤の除去方法及びそれを用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法(ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス)として、硫酸を用いた高圧酸浸出法がある。この方法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬方法と異なり、還元及び乾燥工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であることとともに、ニッケル品位を50質量%程度まで上昇したニッケルを含む硫化物(以下「ニッケル硫化物」ともいう)を得ることができるという利点を有している。
高圧酸浸出法に基づくニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、例えば、下記工程を含む。
(a)ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し、高温高圧下で浸出し、得られた浸出スラリーから浸出残渣スラリーを固液分離して、ニッケルとともにコバルト等の金属元素を含む浸出液を得る、浸出工程及び固液分離工程
(b)浸出液に中和剤を添加して、不純物元素を含む中和澱物スラリーとニッケルを含む中和終液とを得る中和工程
(c)中和終液に対し、硫化水素ガスにより硫化処理を施してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程
(d)ニッケル硫化物の分離後の硫化後液に中和処理を施して無害化する排水処理工程
ニッケル硫化物分離後の硫化後液には硫化水素が溶存する。そこで、該硫化水素を除去するために、ニッケル硫化物分離後の硫化後液に、3価の鉄、例えば特許文献1に記載されるように、浸出スラリーを固液分離して得られた浸出液に中和処理及び硫化処理を施して得られた硫化後液を排水処理工程(中和処理工程)で無害化して得られる水酸化鉄(III)、又は、ヘマタイト(酸化鉄(III))と、硫酸とを添加する。これにより、水酸化鉄(III)又は酸化鉄(III)と、硫化後液に溶存する硫化水素とを反応させることで、硫化水素を除去することができる。水酸化鉄(III)による硫化水素の除去反応を下記式(1)に示す。また、酸化鉄(III)による硫化水素の除去反応を下記式(2)及び(3)に示す。
Fe(OH)+1/2HS+HSO
→FeSO+1/2S+3HO (1)
Fe+3HSO→Fe(SO+3HO (2)
Fe(SO+HS→2FeSO+HSO+S (3)
なお、このように硫化後液の溶存硫化水素を除去する際には、例えば特許文献2のように、曝気槽での撹拌と同時に、エアレーションを行うことで、溶存硫化水素ガスの除去を促進することが一般的である。
硫化工程では、ニッケルの回収ロスを減らすために、硫化水素ガス添加量を増やしてニッケル硫化物の生成量を増やし硫化後液のニッケル濃度を下げることが望ましい。しかし、硫化水素ガスの添加量を増やすことによって硫化工程後の硫化後液に溶存する硫化水素ガス量が増加すると、硫化水素を除去しきれず、系外に排出する排ガス中の硫化水素ガス濃度が上昇してしまうという問題が生じる。したがって、硫化工程のニッケルの回収ロスを減らすこと及び排ガス中の硫化水素ガス濃度を低くすることを両立するために、硫化水素を効果的に低減できる方法が求められている。
特開2004-089915公報 特開2015-127053公報
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにて生じる硫化後液から硫化水素等の硫化剤を除去する硫化剤の除去方法であって、硫化剤を効果的に低減できる硫化剤の除去方法及びそれを用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、硫化後液の溶存硫化水素等の硫化剤を除去する際に、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、酸浸出で得られる浸出スラリーのFe3+濃度を2.9g/L以上にし、該浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得て、該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して得られる水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を用いて硫化水素等の硫化剤を固定化することで、硫化後液に含まれる硫化剤を効果的に低減することができることを知見し、さらに検討を重ね、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、ニッケル酸化鉱石を硫酸により高温高圧下で酸浸出して得られる浸出スラリーを固液分離してニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得て、該浸出液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケルの硫化物と硫化後液とを生成させる湿式製錬プロセスにおいて、該ニッケルの硫化物を分離して得られた硫化後液中に溶存する硫化剤を除去する硫化剤の除去方法であって、前記酸浸出では、得られる浸出スラリー中のFe3+濃度を2.9g/L以上にし、前記固液分離では、前記浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得た後、該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理してニッケルを含む浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とを得、前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加することにより、該硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去する硫化剤の除去方法である。
(2)本発明の第2の発明は、前記浸出スラリーに対する固液分離により得られた前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、前記湿式製錬プロセスにおける、前記硫化後液に対して中和処理を施すことで無害化する排水処理に供し、前記硫化後液に対して、前記排水処理後の前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加する第1の発明に記載の硫化剤の除去方法である。
(3)本発明の第3の発明は、前記浸出スラリーに対する中和処理では、前記浸出スラリーのpHを2.5~3.2にする第1又は第2の発明に記載の硫化剤の除去方法である。
(4)本発明の第4の発明は、前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とともに硫酸を添加する第1~第3の発明のいずれかに記載の硫化剤の除去方法である。
(5)本発明の第5の発明は、前記硫化後液は、ニッケルイオン濃度が0.02~0.10g/Lであり、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム及びクロムから選択される少なくとも一種を含む硫酸酸性溶液である第1~第4の発明のいずれかに記載の硫化剤の除去方法である。
(6)本発明の第6の発明は、前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加するとともに、エアレーションを行う第1~第5の発明のいずれかに記載の硫化剤の除去方法である。
(7)本発明の第7の発明は、ニッケル酸化鉱石を硫酸により高温高圧下で酸浸出して浸出スラリーを得る浸出工程と、浸出工程で得られた前記浸出スラリーを固液分離してニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得る固液分離工程と、固液分離工程で得られた前記浸出液に中和剤を添加してニッケルを含む中和終液と不純物元素を含む中和澱物とを得る中和工程と、中和工程で得られた前記中和終液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケルの硫化物と硫化後液とを得る硫化工程と、前記ニッケルの硫化物を分離して得られた前記硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去する硫化剤除去工程と、を有するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、前記固液分離工程は、前記浸出工程で得られた前記浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得る予備中和工程、及び、該予備中和工程で得られた前記水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とを得る分離工程を有し、前記浸出工程では、前記浸出スラリー中のFe3+濃度を2.9g/L以上にし、前記硫化剤除去工程では、前記ニッケルの硫化物を分離して得られた前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加することにより、前記硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法にある。
本発明の硫化剤の除去方法によれば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにて生じる硫化後液から硫化水素等の硫化剤を効果的に低減させることができ、硫化後液から硫化水素等の硫化剤を十分に除去することができる。
このように本発明によれば、硫化後液中の硫化剤を効果的に低減することができるため、ニッケルを回収するための硫化剤を多量に添加することができる。したがって、本発明は、ニッケル酸化鉱の湿式製錬プロセスにおいて、ニッケルロスの低減及び硫化剤の除去不良発生の抑制による環境面や安全面の改善ができることから、その工業的価値はきわめて高い。
本実施の形態におけるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示す工程図である。 浸出スラリー中のFe3+濃度と遊離硫酸濃度との関係を示す図である。 浸出スラリー中のFe3+濃度と排ガス中の硫化水素濃度との関係を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.概要≫
本実施の形態に係る硫化剤の除去方法は、ニッケル酸化鉱石を硫酸により高温高圧下で酸浸出して得られる浸出スラリーを固液分離してニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得て、浸出液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケルの硫化物と硫化後液とを生成させることで、ニッケル硫化物を得るニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス(以下、単に「湿式製錬プロセス」ともいう)において生じる硫化後液から溶存する硫化水素等の硫化剤を除去する方法である。なお、本明細書において、除去対象である「硫化剤」には、硫化工程で用いた硫化水素、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤自体の他、硫化剤から生じた硫化水素も含む。また、ニッケル硫化物とは、ニッケルを含む硫化物をいい、コバルト等の他の金属とニッケルとの混合硫化物をも含む。
本実施の形態に係る硫化剤の除去方法は、具体的には、湿式製錬プロセスにおいて、酸浸出で得られる浸出スラリーのFe3+濃度を2.9g/L以上にし、該浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得て、該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して得られる水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を3価の鉄イオン源として用いて、硫化後液に添加する。これにより、詳しくは後述するが、浸出残渣中に含まれる水酸化鉄(III)によって、硫化後液中に溶存する硫化水素等の硫化剤を固定して除去(回収)する。なお、ここでいう「固定」とは、化合物を安定な形態に変換することであり、本実施の形態に係る硫化剤の除去方法では、硫化後液中に溶存する硫化水素等の硫化剤が、水酸化鉄(III)との反応によって単体の硫黄(S)として安定した形態に変換され、この単体の硫黄が沈殿生成して除去される。
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス≫
先ず、硫化剤の除去方法のより具体的な説明に先立ち、本実施の形態におけるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れを示す工程図である図1を用いて、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス全体について説明する。
図1に示すようにこの湿式製錬プロセスは、原料のニッケル酸化鉱石に硫酸を用いて高温高圧下で酸浸出して浸出スラリーを得る浸出工程S11と、浸出スラリーを必要に応じて多段洗浄しながらニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得る固液分離工程S12と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物スラリーとニッケルを含む中和終液とを得る中和工程S13と、中和終液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S14とを有する。本実施の形態においては、さらに、硫化工程S14で分離された硫化後液に対し中和処理を施して無害化する排水処理工程S20を有する。
本実施の形態に係る硫化剤の除去方法は、このニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにより得られる硫化後液を処理対象とし、その硫化後液に溶存する硫化剤を除去する。
(1)浸出工程
浸出工程S11は、原料のニッケル酸化鉱石に硫酸を用いて高温高圧下で酸浸出して浸出スラリーを得る工程である。例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して220℃~280℃の温度下で、加圧しながら撹拌処理を施し、ニッケルを含有する浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成させる。本実施の形態においては、詳しくは後述するが、浸出工程S11において、酸浸出で得られる浸出スラリー中のFe3+濃度が2.9g/L以上になるようにする。
ここで、ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8~2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。
(2)固液分離工程
固液分離工程S12は、浸出工程S11で得られた浸出スラリーを、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液と浸出残渣とに固液分離する工程である。本実施の形態においては、詳しくは後述するが、固液分離工程S12は、浸出工程S11で得られた浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得る予備中和工程S121と、予備中和工程S121で得られた水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とを得る分離工程S122とを有する。
予備中和工程S121では、浸出スラリーに中和剤を添加して、pHを上昇させる(例えばpH2.5~3.2にする)中和処理を施す。これにより、浸出スラリーに含まれる余剰の硫酸(以下、「遊離硫酸」ともいう)が中和されるとともに、浸出スラリー中のFe3+の一部又は全部が水酸化鉄(III)になる。
予備中和工程S121の中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物が挙げられる。
分離工程S122では、例えば、予備中和工程S121後の浸出スラリーを洗浄液と混合した後、凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を用いて、シックナー等の固液分離設備により固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、浸出スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。浸出スラリーを洗浄する洗浄液は、特に限定されないが、例えば、後段の硫化剤除去工程S30後の硫化後液(処理後硫化後液)等を用いることができる。なお、固液分離工程S12で得られる浸出残渣は、鉄化合物として、水酸化鉄(III)の他、酸化鉄(III)や硫酸鉄(III)を含む。
分離工程S122で分離された浸出液は、中和工程S13に移送され、一方で、浸出残渣は、シックナーの底部から回収される。浸出残渣には、ニッケルやコバルト等の有価金属が一部含まれる場合があるため、浸出残渣を洗浄して得られたニッケルやコバルト等の有価金属を含有する液も、中和工程S13に移送するようにしてもよい。
(2)中和工程
中和工程S13は、固液分離工程S12により得られた浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物スラリーとニッケルを含む中和終液とを得る工程である。固液分離工程S12により得られた浸出液に、中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物スラリーと中和終液とを得る。この中和工程S13における中和処理により、ニッケルやコバルト等の有価金属は中和終液に含まれるようになり、鉄の大部分が中和澱物スラリーとなる。中和殿物スラリーの沈降速度を促進するために、凝結剤を添加してもよい。
中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中和工程S13における中和処理では、浸出液の酸化を抑制しながら、pHを1~4の範囲に調整することが好ましく、2.5~3.5の範囲に調整することがより好ましい。pHが1未満であると、中和が不十分となり中和澱物スラリーと中和終液とに分離できない可能性があり、また、pHが2.5未満であると、後段の硫化工程S14の脱亜鉛工程やニッケル回収工程で硫化反応が進行しない可能性がある。一方で、pHが4を超えると、アルミニウム等の不純物のみならず、ニッケルやコバルト等の有価金属も中和澱物スラリーに含まれる可能性がある。中和工程S13で得られた中和殿物スラリーがニッケルやコバルト等の有価金属を含む場合は、中和殿物スラリーを固液分離工程S12に供給するようにしてもよい。
(3)硫化工程
硫化工程S14は、中和工程S13により得られた中和終液に硫化剤により硫化処理を施してニッケル硫化物と硫化後液とを得る工程である。この硫化工程S14における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、その他は硫化後液に含まれることになる。
具体的には、硫化工程S14では、得られた中和終液に対して硫化剤を添加し、中和終液に含まれるニッケルやコバルトを硫化物の形態にする硫化反応を生じさせる。これにより、不純物成分の少ないニッケルの硫化物と、ニッケル濃度を低い水準で安定させた硫化後液とを生成させる。なお、中和終液中に亜鉛が含まれる場合には、硫化剤を添加してニッケル硫化物を生成するに先立って、硫化剤を用いて亜鉛を硫化物として選択的に分離することができる(脱亜鉛工程)。すなわち、中和工程S13により得られた中和終液に硫化剤を添加することにより亜鉛硫化物を形成し該亜鉛硫化物を分離してニッケルを含むニッケル回収用母液を得る脱亜鉛工程と、ニッケル回収用母液に硫化剤を添加することによりニッケル硫化物を形成するニッケル回収工程とを有する、硫化工程S14としてもよい。
硫化剤としては、例えば、硫化水素、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等を用いることができるが、その中でも、硫化水素ガスを用いることが、取扱い容易さやコスト等の点で特に好ましい。
この硫化処理では、ニッケル硫化物のスラリーをシックナー等の沈降分離装置を用いて沈降分離処理して硫化物をシックナーの底部より分離回収する一方で、水溶液成分である硫化後液はオーバーフローさせて回収する。
本実施の形態に係る硫化剤の除去方法においては、硫化工程S14における硫化処理により得られた硫化後液、すなわち、硫化処理後のスラリーに対して固液分離処理を施して得られた硫化後液を処理対象とする。そして、本実施形態に係る硫化剤の除去方法は、実施例等に示すように硫化剤を効果的に低減できるため、前段の硫化工程S14で添加する硫化剤量を多くすることができ、ニッケル硫化物を十分生成することができるため、ニッケルの回収ロスを低減することができる。
(4)排水処理工程(中和処理工程)
排水処理工程S20では、硫化工程S14にて生成した硫化後液、すなわち、鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む硫化後液に対して、排出基準を満たす所定のpH範囲に調整する中和処理を施して無害化する排水処理を行う。これにより、鉄、マグネシウム、マンガン等の成分が除去される。
本実施の形態においては、詳しくは後述する硫化後液に対する硫化剤の除去処理である硫化剤除去工程S30を経て、溶存する硫化水素等の硫化剤が除去された硫化後液に対して、排水処理工程S20で排水処理を行う。
排水処理工程S20における中和処理による無害化の方法、すなわちpHの調整方法としては、特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム(石灰石)スラリーや水酸化カルシウム(消石灰)スラリー、水酸化ナトリウム等の中和剤を添加することによって所定の範囲に調整することができる。
また、排水処理工程S20における中和処理では、石灰石を中和剤として用いた第1段階の中和処理(第1の工程)と、消石灰を中和剤として用いた第2段階の中和処理(第2の工程)とからなる段階的な処理を行うことができる。このように段階的な中和処理を行うことで、効率的にかつ効果的な中和処理を行うことができる。
具体的に、第1の工程では、硫化剤除去工程S30で回収した硫化後液を中和処理槽に装入し、石灰石スラリーを添加して撹拌処理を施す。この第1の工程では、石灰石スラリーを添加することによって、硫化後液のpHを5~6に調整する。pHが5以下であるとアルミニウムが完全に除去されず、中和に使用する消石灰の使用量が増加する。
次に、第2の工程では、石灰石スラリーを添加して第1段階の中和処理を施した溶液に対して、消石灰スラリーを添加して撹拌処理を施す。この第2の工程では、消石灰スラリーを添加することによって、硫化後液のpHを8.5~9.5に引き上げる。
排水処理工程S20では、このような2段階の中和処理を施すことによって、中和処理残渣(排水処理澱物)が生成され、テーリングダムに貯留される(テーリング残渣)。一方、排水処理工程S20後の溶液(排水処理終液)は、排出基準を満たすものとなり系外に排出される。
ここで、排水処理工程S20における中和処理では、硫化後液中に残留している酸、硫化剤や、鉄イオン、マグネシウムイオンやマンガンイオン等の不純物元素イオンの量に応じて、消石灰や石灰石等の中和剤の量が決定される。したがって、硫化後液に残留する酸、硫化剤や、不純物の量が多ければ、中和剤の使用量も多くなる。
この点、本実施の形態においては、排水処理工程S20に先立ち、硫化剤除去工程S30で、硫化工程S14で得られた硫化後液に対して、その硫化後液に溶存する硫化水素等の硫化剤を除去するようにしている。そして、その硫化剤除去工程S30では、詳しくは後述するが、酸浸出で得られる浸出スラリーのFe3+濃度を2.9g/L以上にし、該浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得て、該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して得られる水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、硫化水素等の硫化剤を酸化固定化するための3価の鉄イオン源として用いている。水酸化鉄(III)は酸化鉄(III)と同様に、硫化剤を除去する反応を生じさせるためには硫酸に溶解させる必要があるが、水酸化鉄(III)は酸化鉄(III)よりも溶解しやすい。そのため、水酸化鉄(III)を硫化剤の除去反応に用いると、酸化鉄(III)を硫化剤の除去反応に用いる場合よりも、硫化剤除去工程S30での硫酸の添加量を少なくすることができる。このことから、排水処理工程S20に対して、硫酸や硫化剤濃度が低い硫化後液を移送させることができる。また、硫化剤を除去するための3価の鉄イオン源として、浸出液が中和工程S13、硫化工程S14、排水処理工程S20を経て得られる中和処理残渣(排水処理澱物)のみを用いた場合と比較して、マグネシウム、マンガン、アルミニウム等の不純物の濃度が低い硫化後液を移送させることができる。このことから、排水処理工程S20に対しては、硫酸や硫化剤濃度が低く、また、鉄、マグネシウム、マンガン、アルミニウム等の不純物の濃度が低い硫化後液を移送させることができる。その結果として、排水処理工程S20にて使用する中和剤の使用量を効果的に低減させることができ、ニッケル酸化鉱石処理全体としても効率的な操業を行うことができるという効果も奏する。
≪3.硫化剤の除去方法の詳細説明≫
上述したニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、硫化工程S14での硫化処理を経て生成した硫化後液には、硫化反応を生じさせるために添加した硫化水素等の硫化剤が溶存していることがある。加えて、硫化水素以外の硫化剤を使用した場合、溶液の状態によっては硫化水素ガスが発生し、反応後の液に未反応の硫化水素ガスが溶存することがある。
このように硫化後液に硫化水素等の硫化剤が残存している場合、系外に放流することができない。また、その硫化後液を固液分離工程S12や排水処理工程S20へ払い出すと、設備周辺において硫化水素の臭気が発生して環境トラブルが生じる可能性がある等、環境面や安全面で問題となる。
そこで、本実施の形態においては、硫化後液に含まれる硫化剤を硫黄として固定化、すなわち、溶存する硫化水素等の硫化剤を固体の硫黄Sの形態として固定化し、その硫化後液から回収除去するようにしている(硫化剤除去工程S30)。以下では、より詳細に、硫化工程S14において硫化水素ガスを硫化剤として用いたときに、硫化剤除去工程S30にて硫化後液に残存した硫化水素を除去する態様を一例として説明する。
具体的に、硫化剤除去工程S30では、Fe3+濃度が特定範囲の浸出スラリーを予備中和工程S121及び分離工程S122を有する固液分離工程S12に供して得られる水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、3価の鉄イオン源として用いる。硫化水素を含む硫化後液に対して、この水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加することで、硫化後液に含まれる硫化水素を固体硫黄の形態に固定化し除去する。
硫化工程S14にて得られる硫化後液は、例えば、ニッケルイオン濃度が0.02g/L~0.10g/L程度であり、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、クロム、鉛等の不純物を含む硫酸酸性溶液である。また、硫化後液のpHは、例えば1.5~2.0程度である。そして、上述のように硫化後液には、硫化工程S14での硫化処理にて用いた硫化水素が、例えば濃度20mg/L~400mg/L程度の割合で溶存している。
本実施の形態においては、このような硫化後液に対して、浸出工程S11の酸浸出で得られる浸出スラリーのFe3+濃度を2.9g/L以上にし、予備中和工程S121にて該浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得て、分離工程S122にて該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して得られる水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、添加する。浸出スラリーに含まれるFe3+から生成させ浸出残渣に含まれる水酸化鉄(III)を、3価の鉄イオン源として用いると、下記式(4)の反応が生じることによって、硫化後液に溶存する硫化水素が酸化されて固体の硫黄として固定化される。このように、3価の鉄イオン源として水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を用いることで、硫化水素を効果的に分解して低減することができる。なお、浸出残渣に含まれる水酸化鉄(III)は、通常、固体として含まれる場合は、酸化水酸化鉄(FeO(OH))として存在し、液体として含まれる場合は溶解した状態(Fe3+、OH)として存在する。下記式(4)に示すように、水酸化鉄(III)を硫化水素と反応させるためには水酸化鉄(III)を硫酸に溶解させる必要がある。そのため、処理対象の硫化後液に含まれる硫酸では水酸化鉄(III)の溶解が不十分な場合は、水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を硫化後液に添加するとともに、硫酸も硫化後液に添加する。
Fe(OH)+1/2HS+HSO
→FeSO+1/2S+3HO (4)
そして、本実施の形態においては、浸出工程S11の酸浸出で得られる浸出スラリー中のFe3+濃度は2.9g/L以上である。これにより、硫化水素を極めて効果的に低減できる。本発明者の検討により、後述する実施例にて説明する図3に示されるように、硫化剤除去工程S30において、浸出スラリー中のFe3+濃度と、硫化剤除去効果とには、相関があることが見出された。このことは、Fe3+濃度を2.9g/L以上の範囲に調整した浸出スラリーから得られる浸出残渣を用いることで、式(4)で示される水酸化鉄(III)による硫化水素除去反応の反応性が顕著に向上し、硫化水素を極めて効果的に低減できることによると推測される。
浸出スラリー中のFe3+濃度の調整は、浸出工程S11における浸出処理での硫酸の添加量を制御して浸出スラリー中の遊離硫酸濃度を調整することによって行うことができる。なお、遊離硫酸とは、余剰の硫酸、すなわち、金属元素と結合可能な硫酸イオン以外の硫酸である。遊離硫酸濃度は、水酸化ナトリウム溶液で中和滴定することで求められる。
図2は、浸出スラリー中の遊離硫酸濃度と浸出スラリー中のFe3+濃度との関係を示すグラフ図である。この図2に示されるように、遊離硫酸濃度が増加するに従い、浸出スラリー中のFe3+濃度が増加することが分かる。浸出工程S11における硫酸による浸出処理では、原料鉱石に含まれる鉄が浸出残渣として固定化されて浸出スラリー中に含まれることになるが、浸出処理に寄与しなかった未反応の硫酸(遊離硫酸)により、浸出残渣として固定化された鉄が再溶解してFe3+の形態で浸出スラリー中に存在するようになる。したがって、図2に示されるように、浸出スラリー中の遊離硫酸濃度とFe3+濃度とには、比例関係が成立する。そのため、浸出工程S11における浸出処理での硫酸の添加量を制御して浸出スラリー中の遊離硫酸濃度を調整することによって、浸出スラリー中のFe3+濃度を調整することができる。
また、浸出スラリー中のFe3+濃度は、3.6g/L以下とすることが好ましい。浸出スラリー中のFe3+濃度を高くするためには、浸出工程S11での硫酸添加量を増やす必要がある。硫酸添加量を増やすと、コストが増加する。また、硫酸添加量を増やすと、遊離硫酸濃度上昇により予備中和工程S121での中和剤添加量が増加するため、コストが増加する。また、硫酸添加量を増やすと、予備中和工程S121において微細な粒子が発生しやすくなり、分離工程S122において固液分離不良が発生する。そのため、浸出スラリー中のFe3+濃度は高すぎないほうがよく、3.6g/L以下が好ましい。
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、固液分離工程S12で得られた浸出残渣を、湿式製錬プロセスにおける排水処理工程S20での処理に装入し、排水処理工程S20にて中和処理を施すようにする。上述したように、排水処理工程S20では、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムや水酸化ナトリウム等の中和剤を添加して溶液のpHを8.5~9.5程度に調整する中和処理が行われる。したがって、排水処理工程S20における処理に浸出残渣を装入することで、その浸出残渣が含む酸化鉄(III)等の鉄化合物から水酸化鉄(III)を生成することができ、浸出残渣が含む水酸化鉄(III)量を多くすることができる。図1において、硫化後液に添加する水酸化鉄(III)を含む浸出残渣は、浸出残渣に対して排水処理(中和処理)を施すことで得られる排水処理残渣(中和処理残渣)及び溶液の両者でもよいし、該排水処理(中和処理)を施した後に固液分離して溶液から分離された排水処理残渣(中和処理残渣)のみでもよい。
ここで、湿式製錬プロセスにおいて、浸出スラリーを固液分離して得られた浸出残渣は、その浸出スラリーを固液分離して得られた浸出液が中和工程S13、硫化工程S14、排水処理工程S20を経て得られる中和処理残渣(排水処理澱物)等よりも、マグネシウム、マンガンや、アルミニウム等の不純物が少ない。そのため、本実施の形態のように、硫化剤除去工程S30において、浸出残渣を用いることにより、上記式(4)で示される水酸化鉄(III)による硫化水素除去反応がマグネシウム、マンガンや、アルミニウム等の元素によって阻害され難いため、硫化水素を効果的に除去することができる。
また、浸出スラリーを固液分離して得られた浸出残渣は、浸出液が中和工程S13、硫化工程S14、排水処理工程S20を経て得られる中和処理残渣(排水処理澱物)等に比べて、マグネシウム、マンガンや、アルミニウム等の不純物が少なく鉄の含有割合が高い。したがって、本実施の形態のように、硫化剤除去工程S30において、浸出残渣を硫化後液に添加することにより、添加する量に対する硫化水素の除去量が多くなり、硫化水素を効果的に除去することができる。
なお、硫化水素を固定化する3価の鉄イオン源として、硫酸鉄(III)を用いることも考えられるが、設備投資や資材購入等のコスト面で不利である。
硫化剤除去工程S30後の硫化後液(処理後硫化後液)は、例えばpHは1.5~2.0である。また、硫化剤除去工程S30に供給する硫化後液の流量や、排水処理工程S20に払い出す硫化剤除去工程S30後の硫化後液の流量は、例えば、500~700m/Hrである。また、硫化後液に添加する水酸化鉄(III)を含む浸出残渣の供給流量は40~50m/Hrである。
また、硫化剤除去工程S30における処理では、硫化後液に対して浸出残渣を添加するとともに、エアレーションを行うことが好ましい。すなわち、浸出残渣に含まれる水酸化鉄(III)と硫化水素との反応は、エアレーションを行う曝気槽で生じさせることが好ましい。例えば、特許文献2に記載されているように、縦型円筒形状の反応容器と、その反応容器内に設けられた撹拌羽根と、反応容器内の底部に設けられた多数の吹出口を有する円環状のエアレーション管とを備える曝気槽に硫化後液を供給し、浸出残渣を添加し、撹拌しながら、硫化後液のスラリー1mあたり1.8Nm以上の割合でエアレーションする。このようなエアレーションにより、硫化後液中に溶存する硫化水素の酸化を促進させることができ、より効率的に硫化水素を除去することができる。
硫化剤除去工程S30で硫化水素が除去された処理後硫化後液は、固液分離工程S12の洗浄液として用いてもよい。
以上のように、本実施の形態に係る硫化水素の除去方法によれば、3価の鉄イオン源として、Fe3+濃度が2.9g/L以上である浸出スラリーから生成させた水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を硫化水素の酸化の反応主体にすることで、硫化水素を効果的に低減させることができるため、硫化水素を十分に除去することができる。
このように本発明によれば、硫化後液中の硫化剤を効果的に低減することができるため、ニッケルを回収するための硫化剤を多量に添加することができる。したがって、本発明は、ニッケル酸化鉱の湿式製錬プロセスにおいて、ニッケルロスの低減及び硫化剤の除去不良発生の抑制による環境面や安全面の改善ができることから、その工業的価値はきわめて高い。
また、硫化水素を除去した後の処理後硫化後液は、排水処理工程S20に移送されて排水処理(中和処理)が施されるが、硫化水素が除去されていることから、その処理後硫化後液に対する排水処理では中和剤の使用量も有効に低減させることができ、ニッケル酸化鉱石処理全体としても効率的な操業を行うことができる。
なお、硫化剤除去工程S30や排水処理工程S20等のその他の工程において、微量の硫化水素が残留した場合や、そのまま系外に排出することができない有害ガスが生じた場合には、除害塔等の有害ガスを除去する設備で有害ガスを除去した後に、大気中に排出すればよい。また、処理後硫化後液は、固液分離工程S12における処理の洗浄液として用いてもよい。
以下に、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1~8及び比較例1~4)
図1に示すニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスで、硫化後液の硫化水素の除去操作を行った。具体的には、図1に示すように、先ず、浸出工程S11において、ニッケル酸化鉱石のスラリーをオートクレーブに装入し、高温高圧下で硫酸を用いて浸出処理を施すことによって浸出液と浸出残渣とを含有する浸出スラリーを得て、固液分離工程S12において、浸出工程S11で得られた浸出スラリーに、中和剤として炭酸カルシウムを添加して中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得て(予備中和工程S121)、得られた水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣スラリーとを得た(分離工程S122)。
次に、浸出液に対して不純物を中和除去した(中和工程S13)。そして、硫化工程S14で、中和工程S13で得られた中和終液に硫化剤として硫化水素ガスを添加して生成した亜鉛硫化物を分離し(脱亜鉛工程)、脱亜鉛工程後に硫化剤として硫化水素ガスを添加して生成したニッケル硫化物を回収した(ニッケル回収工程)。この硫化工程S14における硫化反応により、中和終液中のニッケル及びコバルトが硫化され、ニッケル・コバルト混合硫化物が生成した。生成した硫化物は、硫化処理後のスラリーをシックナーにより固液分離して回収した。
一方、硫化物を分離回収した後の硫化後液に溶存する硫化水素の濃度は20~400質量ppmであった。そこで、その硫化後液に溶存する硫化水素を除去する処理を行った(硫化剤除去工程S30)。
硫化水素の除去処理(硫化剤除去工程S30)においては、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの固液分離工程S12で得られた浸出残渣スラリーに対して中和剤(塩基性化合物)として炭酸カルシウムと水酸化カルシウムを添加してpHを8.5~9.5にし(排水処理工程S20)、得られた排水処理工程S20後の浸出残渣スラリー、すなわち水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、硫化後液に供給した。なお、全ての実施例1~8及び比較例1~4において水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加し硫酸を添加しなかった。浸出スラリー中の遊離硫酸の量を変更して、各実施例1~8及び比較例1~4の浸出スラリー中のFe3+濃度を変更した。
なお、硫化剤除去工程S30は、水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加した後の硫化後液を、撹拌するとともに空気を吹き込む曝気槽で行った。また、硫化剤除去工程S30後の曝気槽中のガスを除害塔に移送し、除害塔で水酸化ナトリウムに接触させた後に、除害塔の排気ガス排出口から排ガスとして排出した。また、硫化剤除去工程S30を経た硫化後液は、排水処理工程S20へ払い出した。
なお、硫化剤除去工程S30に供給する硫化後液は、ニッケル濃度が0.02~0.10g/L、鉄濃度が0.6~1.4g/L、アルミニウム濃度が3.5~8.0g/L、マグネシウム濃度が3.5~8.5g/Lであった。
また、硫化後液に添加した水酸化鉄(III)を含む浸出残渣は、中和処理残渣(排水処理殿物)及び溶液(排水処理終液)からなる。そして、該中和処理残渣(排水処理殿物)は、比重1.15~1.35g/cm、固形分濃度20~35質量%、鉄品位35~45質量%であった。また、該溶液(排水処理終液)は、ニッケル濃度が0.1mg/L以下、コバルト濃度が0.05mg/L以下、鉄濃度が0.1mg/L以下であった。
また、操業変動の影響を抑えるために、ニッケル回収工程に供給される始液流量は1200~1400m/Hrかつ始液温度は73℃、硫化剤除去工程S30に供給される硫化後液の流量は500~700m/Hr、排水処理工程S20に払い出される硫化剤除去工程S30後の硫化後液の流量は500~700m/Hr、硫化後液に添加する水酸化鉄(III)を含む浸出残渣の供給流量は40~50m/Hr、曝気槽のエアレーション流量は2700~3100Nm/Hrとした。
浸出スラリー中のFe3+濃度、及び、排気ガス排出口の排ガス中の硫化水素ガス濃度の測定結果を、表1及び図3に示す。なお、硫化剤除去工程S30後の処理後硫化後液のpHは1.5~2.0であった。
表1及び図3に示すように、硫化剤除去工程S30において浸出残渣スラリー(水酸化鉄(III)を含む浸出残渣)を添加し、浸出スラリー中のFe3+濃度が2.90g/L以上であった実施例1~8では、浸出スラリー中のFe3+濃度が2.90g/L未満の比較例1~4に比べて、硫化水素ガス濃度が低く、硫化水素を大幅に低減させることができることが分かった。
Figure 0007087601000001

Claims (7)

  1. ニッケル酸化鉱石を硫酸により220℃~280℃の温度下で、加圧しながら酸浸出して得られる浸出スラリーを固液分離してニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得て、該浸出液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケルの硫化物と硫化後液とを生成させる湿式製錬プロセスにおいて、該ニッケルの硫化物を分離して得られた硫化後液中に溶存する硫化剤を除去する硫化剤の除去方法であって、
    前記酸浸出では、得られる浸出スラリー中のFe3+濃度を2.9g/L以上3.6g/L以下にし、
    前記固液分離では、前記浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得た後、該水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理してニッケルを含む浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とを得、
    前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加することにより、該硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去する
    硫化剤の除去方法。
  2. 前記浸出スラリーに対する固液分離により得られた前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を、前記湿式製錬プロセスにおける、前記硫化後液に対して中和処理を施すことで無害化する排水処理に供し
    前記硫化後液に対して、前記排水処理後の前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加する
    請求項1に記載の硫化剤の除去方法。
  3. 前記浸出スラリーに対する中和処理では、前記浸出スラリーのpHを2.5~3.2にする、
    請求項1又は2に記載の硫化剤の除去方法。
  4. 前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とともに硫酸を添加する
    請求項1乃至3のいずれかに記載の硫化剤の除去方法。
  5. 前記硫化後液は、ニッケルイオン濃度が0.02~0.10g/Lであり、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム及びクロムから選択される少なくとも一種を含む硫酸酸性溶液である
    請求項1乃至4のいずれかに記載の硫化剤の除去方法。
  6. 前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加するとともに、エアレーションを行う
    請求項1乃至5のいずれかに記載の硫化剤の除去方法。
  7. ニッケル酸化鉱石を硫酸により220℃~280℃の温度下で、加圧しながら酸浸出して浸出スラリーを得る浸出工程と、浸出工程で得られた前記浸出スラリーを固液分離してニッケルを含む浸出液と浸出残渣とを得る固液分離工程と、固液分離工程で得られた前記浸出液に中和剤を添加してニッケルを含む中和終液と不純物元素を含む中和澱物とを得る中和工程と、中和工程で得られた前記中和終液に対し硫化剤により硫化処理を施してニッケルの硫化物と硫化後液とを得る硫化工程と、前記ニッケルの硫化物を分離して得られた前記硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去する硫化剤除去工程と、を有するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、
    前記固液分離工程は、前記浸出工程で得られた前記浸出スラリーに中和処理を施して水酸化鉄(III)を生成させて水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを得る予備中和工程、及び、該予備中和工程で得られた前記水酸化鉄(III)を含む浸出スラリーを固液分離処理して浸出液と水酸化鉄(III)を含む浸出残渣とを得る分離工程を有し、
    前記浸出工程では、前記浸出スラリー中のFe3+濃度を2.9g/L以上3.6g/L以下にし、
    前記硫化剤除去工程では、前記ニッケルの硫化物を分離して得られた前記硫化後液に対して、前記水酸化鉄(III)を含む浸出残渣を添加することにより、前記硫化後液に含まれる硫化剤を固定化し除去する
    ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
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