JP7080856B2 - 金属粉末、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の一態様は、電子部品などに使用される導電ペースト用途、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極の導電ペースト用途に好適な金属粉末、及びその製造方法に関する。
スマートフォンやタブレット端末に代表される携帯情報端末は、多機能化、高機能化に伴い、電子部品の数が増える傾向にある。このため、限られた面積のメイン基板に搭載するため、基板に搭載されるセラミックコンデンサは小型化、大容量化が求められている。
積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に伴い、積層セラミックコンデンサの内部電極も薄層化・低抵抗化等が要求されている。そのためには内部電極に使用される金属粉末は、一次粒子の平均粒径が300nm以下は勿論のこと、200nm以下、さらには100nm以下の超微粉であることが要望されている。
しかし、内部電極の膜厚が薄くなるにつれて、コンデンサの容量が低下する問題が顕著になる。これは、薄層電極に使用される小粒径の金属粉末のペースト中における分散性が悪く、電極中に金属粉末の充填率が低くなる領域が発生し、その領域では焼成時の収縮が大きくなり、電極層の空隙が多く発生することによる結果として電極の容積が小さくなることが原因と考えられる。
上記のような問題に対処する手段として、例えば特許文献1にはニッケル粉に硫黄を含有させ、ニッケル粒子の表面に存在する硫黄のうち、硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物イオンとして存在する硫黄とのモル比を規定することで焼結特性及び分散性を改善したニッケル粉が開示されている。
また特許文献2には、ニッケルに非磁性金属元素を添加してニッケル結晶のa軸長を特定の範囲にすることで残留磁化を低くし、凝集を抑制したニッケル粉が開示されている。
国際公開公報「WO2015/156080号」(2015年10月15日公開) 国際公開公報「WO2014/080600号」(2014年5月30日公開)
しかしながら、内部電極の薄層化に伴うコンデンサの容量低下を改善する、さらなる解決策が求められている。
したがって、本発明の一態様は、積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に伴うコンデンサの容量低下を改善し得る、内部電極の導電ペーストに好適な金属粉末を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、金属粉末中の特定の形状の粒子の割合が、金属粉末の或る種の挙動、特に、分散性、焼結開始温度、及び充填率等に大きな影響を与えることを見出し、本発明の一態様を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様は、金属粒子が連結してなる連結粒子のうち、アスペクト比が1.2以上であり、円形度が0.675以下であり、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である連結粒子が上記金属粉末に含まれる割合が、個数基準で500ppm以下であることを特徴とする金属粉末に関する。
本発明の一態様によれば、上記形状の連結粒子が含まれる割合を500ppm以下にすることで、電極ペースト中の金属粒子の分散性を改善することができ、電極中の金属粉末の充填率を高くすることができる。
気相還元法により金属粉末を製造する装置の一例を示す図である。 実施例1で使用した金属粉末製造装置を示す図である。 実施例1で得られた乾燥ニッケル粉末のSEM画像である。
<金属粉末>
(構成金属)
本発明の一態様において、金属粉末とは、金属粒子の集合体のことであり、該金属粒子を構成する金属としては、珪素、銅、ニッケル、銀、モリブデン、鉄、クロム、タングステン、タンタル、コバルト、レニウム、白金、パラジウム等、及びこれらの合金が挙げられる。これらの中でも、ニッケル、モリブデン、銀、タングステン、銅、白金、パラジウム及びこれらの合金が特に好ましい。特に、ニッケル、銅、銀、及びこれらの合金が最も好ましい。これらの金属粉末は、ペーストフィラー、特に導電ペーストのフィラーに好適に使用される。
(個数50%径)
本発明の一態様において、金属粉末の個数50%径の上下限は特に制限はされないが、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電ペーストのフィラーとしての用途から、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。また、金属粉末の生産コストや発火性の観点から、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが最も好ましい。
なお、「個数50%径」とは、金属粉末を構成する金属粒子の個数基準における粒度分布において頻度(又は累積)50%に相当する粒子の径のことを意味する。金属粉末の個数50%径は、走査電子顕微鏡により金属粉末の写真を撮影し、画像解析ソフトを使用して、その写真から金属粒子約1,000個の粒径を測定し、得られた金属粉末の粒度分布より、その個数50%径を算出することができる。この場合において、「粒径」とは、金属粒子の画像解析で求められる投影像に外接する最小円の直径である。
(連結粒子)
金属粉末には、凝集のない独立した一次粒子に加え、一次粒子が凝集した二次粒子も含まれ得る。この二次粒子のうち、「連結粒子」とは、例えば、ジェットミル等の公知の解砕装置によって解砕してもなお、金属粉末中に残留する二次粒子であり、典型的には、一次粒子同士が互いに融着してなる二次粒子のことを意味する。このような、「連結粒子」のなかでも、球形度(真球度ともいう)が低い粒子、特に、複数の一次粒子が一列に連なった、特定の基準の長さを超える細長い形状の連結粒子の割合が、金属粉末のペースト中での分散性、焼結開始温度、及び充填率等の挙動に大きな影響を与えることが分かった。
なお、本明細書中では、特に説明がない限り、便宜上「連結粒子」とは、金属粉末を走査電子顕微鏡により撮影した写真に映っている粒子のうち、当該写真において「アスペクト比」が1.2以上であり、「円形度」が0.675以下であり、「長径」が金属粉末の個数50%径の3倍以上である金属粒子である連結粒子のことを指す。
ここで、「長径」は、金属粒子の投影像に外接する最小面積の長方形の長辺の長さであり、「アスペクト比」は、当該長方形における長辺の長さを短辺の長さにて割った値である。
また、「円形度」は、下記式(1)により求められる値である。
円形度=(4π×〔金属粒子の投影面積〕)/〔金属粒子の投影周長〕 (1)
円形度が1のとき、粒子の投影像は真円であり、当該粒子の立体形状は真球状に近いと予想できる。また、円形度が0に近づくにつれて、撮影された粒子の立体形状には、凹凸が多く存在し、複雑な形状であると予想できる。
金属粉末中の「連結粒子」の割合は、走査電子顕微鏡により金属粉末の写真を撮影し、その写真に撮影された金属粒子約40,000個から、画像解析ソフトを使用して、アスペクト比が1.2以上であり、円形度が0.675以下であり、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である金属粒子の数を計測して得られる個数率(以下、「連結粒子率」と表記することもある)を意味する。なお、金属粉末の画像を撮影するための試料を調製する条件等は、後述する実施例を参照するとよい。
本発明の一態様において、金属粉末に含まれる連結粒子の割合は、個数基準で500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。連結粒子の割合がこの範囲であることにより、金属粉末の電極ペースト中での分散性を改善し、電極中の金属粉末の充填率を高くするという効果を得ることができる。金属粉末の個数50%径が400nm以下、300nm以下、さらには200nm以下、及び100nm以下の超微粉であっても、上記の効果が得られる。したがって、この金属粉末を内部電極用導電ペーストのフィラーとして用いることにより、電極の欠陥によるコンデンサの容量の低下を防ぐことができる。
(結晶子径)
本発明の一態様において、金属粉末における個数50%径に対する、金属粉末の結晶子径の比(結晶子径/個数50%径)は0.50以上であることが好ましく、さらには0.55以上であることがより好ましい。連結粒子率が500ppm以下である金属粉末において、結晶子径の個数50%径に対する比が0.50以上であることにより、金属粉末の焼結特性、特に焼結塗膜の平滑性を一層改善することができる。
なお、金属粉末の結晶子径は、X線回折装置により回折ピークの半値幅を求め、以下に示すScherrerの式により算出される。
(数1)
結晶子径=(0.9×〔X線波長〕)/(〔ピーク半値幅〕×cos〔回折角〕)
例えば、Ni粉末の結晶子径は、(111)面、(200)面、(220)面の回折ピークの半値幅から求める。
(粗大粒子)
本発明の一態様において、金属粉末には粗大粒子が含まれ得る。ここで、粗大粒子とは、アスペクト比が1.2未満、又は円形度が0.675を超える球状又は略球状粒子であって、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である金属粒子ことを意味する。つまり、粗大粒子とは、アスペクト比、又は円形度が連結粒子の要件を満たしていないが、連結粒子と同様に長径が大きく、球形状に近い一次粒子、又は二次粒子である。金属粉末中に含まれる粗大粒子の割合は、個数基準で15ppm以下であることが好ましく、さらには5ppm以下であることがより好ましい。連結粒子率が500ppm以下である金属粉末において、粗大粒子の割合がこの範囲であることにより、積層セラミックコンデンサの内部電極の導電ペーストフィラーとして用いるときに、電極層を平滑にすることができ、電極間のショート等の不良を防止することができる。
金属粉末中の「粗大粒子」の割合は、走査電子顕微鏡により金属粉末の写真を撮影し、その写真に撮影された金属粒子約60,000個から、画像解析ソフトを使用して、アスペクト比が1.2未満又は、円形度が0.675以上であり、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である金属粒子の数を計測して得られる個数率(以下、「粗大粒子率」と表記することもある)を意味する。
<金属粉末の製造方法>
本発明一態様に係る金属粉末は、例えば、気相法や液相法等の既知の方法で製造することができる。特に、金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスとを接触させることにより金属粉末を生成する気相還元法、あるいは熱分解性の金属化合物を噴霧して熱分解する噴霧熱分解法等の気相法は、生成する金属微粉末の粒径を制御し易くさらに球状の粒子を効率よく製造することができる。このため、金属粉末の個数50%径、連結粒子率及び粗大粒子率を好適な範囲となるように制御しやすい。以下に、特に好ましい金属粉末の製造方法の一態様として、気相還元法について説明する。
(気相還元法)
気相還元法においては、気化させた金属ハロゲン化物のガスと水素等の還元性ガスとを反応させる。特に、気相還元法は、生成する金属粉末の粒径を精密に制御することができ、さらに粗大粒子の発生を防止できる点からより好ましい金属粉末の製造方法である。
気相還元法において金属ハロゲン化物ガスを得る方法については公知の方法を使用することができる。例えば、無水塩化コバルト等の固体金属ハロゲン化物を加熱、昇華させて不活性ガスにより還元部に運搬する方法を採ることもできる。あるいは、原料となる固体金属にハロゲンガスを接触させて金属ハロゲン化物ガスを連続的に発生させる方法を採ることもできる。特に、粒度分布等の品質の安定性、及び生成した金属粉末への汚染の防止の点から、原料となる固体金属にハロゲンガスを接触させて金属ハロゲン化物ガスを連続的に発生させ、この金属ハロゲン化物ガスを直接還元部に導く方法が好ましい。
気相還元法により金属粉末を製造する装置の一例を図1に示す。図1に示す装置において、還元反応領域cを内包する反応装置は有底円筒状をなし、その一端には金属ハロゲン化物ガスノズルaが取り付けられており、これにより反応装置内に金属ハロゲン化物ガスと不活性ガスとの混合ガスが供給されるようになっている。また、当該反応装置における同じ一端には還元性ガスノズルbが取り付けられている。還元性ガスノズルbから反応装置内に供給される還元性ガスにより、金属ハロゲン化物が還元反応領域cにて還元されて金属粉末dが生成される(還元反応工程)。反応装置のもう一つの端には、冷却ガスノズルeが取り付けられており、冷却ガスノズルeから反応装置内に供給される冷却ガスにより生成した金属粉末dが迅速に冷却され、金属粒子の凝集を防止する。反応装置には回収管fが取り付けられており、金属粉末dは回収管fを流通して回収装置に送られる。
(金属ハロゲン化物ガス)
金属ハロゲン化物ガスとしては、塩化珪素(III)ガス、塩化珪素(IV)ガス、塩化銅(I)ガス、塩化銅(II)ガス、塩化ニッケルガス、塩化銀ガス、塩化モリブデンガス(III)ガス、塩化モリブデン(V)ガス、塩化鉄(II)ガス、塩化鉄(III)ガス、塩化クロム(III)ガス、塩化クロム(VI)ガス、塩化タングステン(II)ガス、塩化タングステン(III)ガス、塩化タングステン(IV)ガス、塩化タングステン(V)ガス、塩化タングステン(VI)ガス、塩化タンタル(III)ガス、塩化タンタル(V)ガス、塩化コバルトガス、塩化レニウム(III)ガス、塩化レニウム(IV)ガス、及び塩化レニウム(V)ガス、フッ化白金(VI)ガス、フッ化パラジウム(II)ガス並びにこれらの混合ガスが挙げられる。最も好ましくは、塩化ニッケルガス、塩化銅(I)ガス、塩化銅(II)ガス、塩化銀ガス、及びこれらの混合ガスである。
なお、金属ハロゲン化物ガスは、塩化炉(不図示)に充填された固体金属にハロゲンガスを反応させることによって生成することができる。塩化炉内の温度は、原料金属がハロゲン化される温度であり、当該原料金属の融点以下であればよい。例えば、金属ニッケルから塩化ニッケルガスを生成する場合、反応を十分進めるために800℃以上とし、ニッケルの融点である1483℃以下とし、反応速度と塩化炉の耐久性を考慮すると、実用的には900℃~1200℃の範囲が好ましい。
また、生成した金属ハロゲン化物ガスは、適宜ヘリウム、アルゴン、ネオン、及び窒素等の不活性ガスで希釈することで金属ハロゲン化物ガスの分圧を制御することがより好ましい。具体的には、ハロゲン化炉におけるハロゲンガスの供給量を調整することで金属ハロゲン化物ガスの発生量を調整し、発生した金属ハロゲン化物ガスに対する不活性ガスの供給量を調整することによって、混合ガスにおける金属ハロゲン化物ガスの分圧(言い換えれば、混合ガス中における金属ハロゲン化物ガスのモル%濃度)を調整する。ここで、金属ハロゲン化物ガスの分圧が高い条件では生成する金属粉末の粒径が大きくなり、分圧を下げるに従って粒径が小さくなるため、金属ハロゲン化物ガスの分圧により生成する金属粉末の粒度分布を制御することができる。これにより生成する金属粉末の品質を任意に設定できるとともに、品質を安定させることができる。図1に示す金属ハロゲン化物ガスノズルaを通過するときにおいて、金属ハロゲン化物ガスと不活性ガスとの混合ガスにおける金属ハロゲン化物ガスの分圧は、混合ガスの全圧を1.0としたときに、0.01~0.95(Pa/Pa)、より好ましくは0.01~0.7、さらに好ましくは0.01~0.6、最も好ましくは0.01~0.5である。このような分圧の範囲は、金属粉末の生産効率を高く維持しながら、粒径、粒度分布、粒子の形状、その結晶性、及び焼結性などの品質を備えた目的の金属の超微粉を製造する上で好ましい態様である。
なお、以下の説明において、便宜上、「金属ハロゲン化物ガス」とは、「不活性ガスを含んでいる金属ハロゲン化物ガス(つまり、混合ガス)」の意味も含み得る。
(還元性ガス)
金属ハロゲン化物ガスを還元するための還元性ガスには、水素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、一酸化炭素ガス、メタンガス及びこれらの混合ガスが挙げられる。特に好ましくは、水素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、及びこれらの混合ガスである。なお、還元性ガスに硫化水素ガスが含まれる場合、得られた金属粉末における金属粒子は硫黄を成分として含み得る。
また、還元性ガスノズルbから反応装置内に供給される還元性ガスの供給量は、金属ハロゲン化物ガスの還元に必要な理論量(化学当量)もしくはそれ以上を導入することが好ましく、限定されるものではないが、理論量の300~10000モル%、より好ましくは1000~6000モル%に相当する還元性ガスを供給するとよい。
(還元反応領域)
「還元反応領域」は、反応装置内の一部を占める領域であり、金属ハロゲン化物ガスノズルaの先端の近傍に位置し、金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスの反応による金属粒子の生成が行われる領域のことである。また、「還元反応領域」は、少なくとも、反応装置内に供給された金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスとが接触し始める地点と、金属粒子が生成し始める地点とを含む領域でもあり、当該領域では黒体輻射によって炭化水素等の気体燃料が発する燃焼炎に似た輝炎が生じる。また、還元反応領域内にて生成した金属は核を成し、当該核を成長させつつ、当該還元反応領域内を通過する。
還元反応領域における平均温度は、供給される金属ハロゲン化物ガスを速やかに還元することができる温度に設定する。一例として、金属ハロゲン化物ガスとして塩化ニッケルガスを使用する場合、図1に示す還元反応領域cの平均温度は、通常900~2,000℃、好ましくは1,000~1,800℃、さらに好ましくは1,200~1,600℃である。
還元反応領域内において金属粒子が生成する際、金属粒子の温度は、金属ハロゲン化ガスの反応熱によって、還元反応領域内の雰囲気温度(平均温度)よりも100~600℃程度高い「最高到達温度」に到達する。この「最高到達温度」は、還元反応領域内において生成する金属粒子毎にバラつきを生じ得る。ここで、還元反応領域内の雰囲気温度が場所によって異なると、金属粒子が生成する位置によって金属粒子が達する「最高到達温度」が異なることとなる。この最高到達温度のバラつきが大きいと、連結粒子や粗大粒子が発生し易くなる。このため、金属粒子が発する反応熱による最高到達温度のバラつきの幅は80℃以下であることが好ましく、さらには50℃以下であることがより好ましい。粒子が生成する際の最高到達温度のバラつきが大きい場合、周囲よりも温度が高い場所では粗大粒子が生成し易く、また周囲よりも温度が低い場所では連結粒子が生成する原因となる微小な粒子が生成し易い。ここで、粒子が生成する際の最高到達温度の幅、つまり、最高到達温度の最高値と最低値との差を、80℃未満にすることによって、連結粒子率を500ppm以下にまで低減することができ、粗大粒子率を15ppm以下にまで低減させることができる。なお、「最高到達温度」に達した金属粒子のそれぞれは、その後、還元反応領域から排出され、冷却される。
反応装置の還元反応領域内における粒子生成時の温度変化は、流体シミュレーションによる計算で求めることができる。
流体シミュレーションには、流体シミュレーションソフト(ANSYS,Inc.製、商品名ANSYS CFX)を使用し、還元部を含むシミュレーションモデルを作製し、約2mm間隔の六面体メッシュに分割し、ガスの流量と温度、及び装置の壁面温度を境界条件として与えて計算を行う。乱流モデルにはk-εモデルを使用し、反応モデルには渦消散モデルを使用する。
なお、還元反応領域が占有する反応装置内の場所の違いによる温度のバラつきを低減させる方法としては、例えば、還元反応領域を囲む壁面全体を既知の加熱手段、例えば、マイクロ波加熱装置、電気ヒーター、レーザー加熱、ガスバーナー、又はこれらの組み合わせ等によって均一に加熱する方法が挙げられる。また、これらのうち、マイクロ波加熱装置を用いることが、不純物の混入防止及びエネルギー効率の観点からより好ましい。
以上の還元反応領域で生成した金属粉末を含むガスは還元反応領域外へと流れ、冷却ガスと接触し、混合する。これにより、金属粉末を400℃以下の温度まで急速に冷却する(冷却工程)。急速な冷却により金属粉末の粒子同士が接合して連結粒子になることをさらに抑制することができる。
上記冷却ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、水素ガス及びそれらの混合ガスが挙げられる。冷却ガスの温度は、通常、0~100℃、好ましくは0~50℃、より好ましくは0~30℃である。また、冷却ガスの流量は、金属粉末の時間あたりの生成量の50倍から300倍の流量である。これにより、金属粉末を冷却する冷却速度を10,000℃/秒よりも速くすることができ、連結粒子率を小さくすることができる。
以上の気相還元法による金属粉末の製造方法では、金属ハロゲン化物ガスの濃度(分圧)、流速、還元反応領域の温度分布、及び生成した金属粉末の冷却速度等を調整することで、所望の個数50%径、連結粒子率、及び粗大粒子率をもつ金属粉末を得ることができる。
以上の方法で得られた金属粉末は、残留する金属ハロゲン化物を除去することが好ましい(洗浄工程)。金属ハロゲン化物の除去方法は特に限定されるものではなく、例えば、金属粉末を、pHや温度を制御した特定の条件を満たす液体中に懸濁させることで易溶性の金属ハロゲン化物を除去する方法や、減圧環境下で金属粉末の焼結温度以下の高温で保持することで揮発性の金属ハロゲン化物を気化させて除去する方法をとることができる。一例として、金属粉末は、pH4.0~6.5の範囲に調整された炭酸水溶液を洗浄液として使用することによって洗浄することが好ましい。未反応の金属ハロゲン化物ガスを好適に除去することができる。また、金属粉末が含まれている洗浄液を純水で置換するか、あるいは、加熱をして炭酸を除去することにより金属粉末の凝集を解くことができ、金属粉末を再分散することができる。よって、連結粒子の含有量をさらに好適に減少することができる。
金属ハロゲン化物を除去した後において、液相中で処理を行った場合は、金属粉末スラリーを乾燥する(乾燥工程)。乾燥方法は特に限定されるものではなく、既知の方法を使用することができる。具体的には高温のガスと接触させ乾燥する気流乾燥、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。このうち、気流乾燥は粒子同士が凝集することを抑制することができるため好ましい。
金属粉末を乾燥した後、当該金属粉末は、乾燥することにより発生した粒子同士の凝集を解砕してもよい(解砕工程)。金属粉末の凝集を解砕するための方法は特に限定されるものではなく、既知の方法を使用することができる。具体例としては、高圧のガス流により粒子同士を衝突させるジェットミルやビーズミル等が挙げられる。1パスの解砕で凝集の除去が十分ではない場合、複数パスの解砕を行っても良いが、過度の解砕により結晶子径が小さくなり、焼結特性が悪化する場合があるため適宜調整が必要である。すなわち、金属粉末の解砕は、当該金属粉末の個数50%径に対する結晶子径の比が、0.5以上に維持されるよう、解砕機を通過させる回数を調整することが好ましい。
以上に説明した製造方法によって、一態様に係る金属粉末を好適に製造ることができる。しかしながら、本願の発明は、金属粉末を分級することにより、当該金属粉末に含まれている連結粒子、及び粗大粒子の割合を低減する態様を除外するものではない。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
[実施例1]
図2に示す装置を電気ヒーターにより1,100℃の雰囲気温度に加熱し、金属ハロゲン化物ガスノズルaより、塩化ニッケルガス、及び窒素ガスの混合ガスを導入した。ここで、塩化ニッケルガスの分圧は混合ガスの全圧を1.0として0.037であった。同時に還元性ガスノズルbから水素ガスを反応装置内に導入し、反応装置内で塩化ニッケルガスを還元して金属粉末(ニッケル粉末)dを得た。
なお、ニッケル生成反応の際、反応熱により生成するニッケル粉末は約1,400℃まで加熱され、生成したニッケル粉末を含むガス流は、ニッケル粉末の黒体輻射により、炭化水素等の気体燃料が発する燃焼炎に似た輝炎として観察された。
また、この輝炎が発生する領域(すなわち還元反応領域c)の周囲の壁面をマイクロ波加熱装置gによって周波数2.45GHz、出力4.9kWで加熱し、塩化ニッケルガスと水素ガスとを接触させる領域における温度のバラつきを低減した。この際、粒子生成時のニッケル粒子の最高到達温度のバラつきを流体シミュレーションソフト(ANSYS,Inc.製、商品名ANSYS CFX)を使用して求めたところ、粒子生成時の最高到達温度の幅は最大で40℃であった。
流体シミュレーションでは還元部を含むシミュレーションモデルを作製し、約2mm間隔の六面体メッシュに分割し、ガスの流量と当該ガスの温度、及び装置の壁面温度を境界条件として与えて計算を行った。乱流モデルにはk-εモデルを使用し、反応モデルには渦消散モデルを使用した。
生成された金属粉末(ニッケル粉末)dは、2つの冷却ガスノズルeから導入される25℃の窒素ガスと混合され、400℃以下まで冷却された後、回収管fにより図示しないバグフィルタに導き、ニッケル粉末を分離し、回収した。
回収したニッケル粉末はpHと温度を適切に管理した水中(洗浄液中)に分散、沈降する洗浄工程を5回繰り返して残留する塩化ニッケルを取り除いた後に、気流乾燥装置で水分含有率が0.5%以下になるように乾燥処理を行った。さらに、ジェットミルによる解砕を1パス行った。得られたニッケル粉末を、厚み約1μmになるようにガラス板上に塗布して撮影した、乾燥ニッケル粉末のSEM画像を図3に示す。
[実施例2]
塩化ニッケルガス及び窒素ガスの混合ガス中における塩化ニッケルガスの分圧を0.15とし、マイクロ波加熱装置の出力を2.8kWとした以外は、実施例1と同様にして、反応装置内で塩化ニッケルガスを還元してニッケル粉末を製造した。ニッケル粒子が生成する領域内の温度差は最大で45℃であった。
[実施例3]
塩化ニッケルガス及び窒素ガスの混合ガス中の塩化ニッケルガスの分圧を0.29とし、マイクロ波加熱装置の出力を3.2kWとした以外は、実施例1と同様にして、反応装置内で塩化ニッケルガスを還元してニッケル粉末を製造した。粒子生成時のニッケル粒子の最高到達温度の幅は最大で65℃であった。
[比較例1]
マイクロ波加熱装置gの出力を0に変更した以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を製造した。粒子生成時のニッケル粒子の最高到達温度の幅は最大で84℃であった。
[比較例2]
マイクロ波加熱装置gの出力を0に変更し、ジェットミルによる解砕を3パスにした以外は、実施例2と同様にしてニッケル粉を製造した。粒子生成時のニッケル粒子の最高到達温度の幅は最大で95℃であった。
[比較例3]
マイクロ波加熱装置gの出力を0に変更し、塩化ニッケルガスの分圧を0.33にした以外は、実施例3と同様にしてニッケル粉を製造した。粒子生成時のニッケル粒子の最高到達温度の幅は最大で90℃であった。
[評価]
実施例1~2及び比較例1~2で得られた乾燥ニッケル粉末について、個数50%径、連結粒子率、結晶子径、粗大粒子率を以下の方法で測定した。
また、溶媒への分散性、焼結特性、充填率、及び塗膜の平滑性を以下の方法で評価した。
a.個数50%径
走査電子顕微鏡(株式会社日本電子製、商品名JSM-7800F)により金属ニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、商品名MacView4.0)を使用して、粒子約1,000個の粒径を測定してその個数50%径を算出した。なお、粒径は金属粒子投影像に外接する最小円の直径とした。
b.連結粒子率
走査電子顕微鏡(株式会社日本電子製、商品名JSM-7800F)により金属ニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、商品名MacView4.0)を使用して、粒子約40,000個のうち、アスペクト比が1.2以上かつ円形度が0.675以下の連結粒子で、長径が前記で求めた個数50%径の3倍以上である粒子の数を数えて算出した。この場合において、金属粒子投影像に外接する最小面積の長方形の長辺の長さを長径とし、(長辺の長さ÷短辺の長さ)の値をアスペクト比とする。また、(4π×〔金属粒子の投影面積〕)/〔金属粒子の投影周長〕の値を円形度とする。
c.結晶子径
結晶子径はX線回折装置(スペクトリス株式会社パナリティカル事業部製、商品名X’Pert PRO)によりニッケル結晶の(111)面、(200)面、(220)面の回折ピークの半値幅を求め、Scherrerの式 結晶子径=(0.9×X線波長)/(ピーク半値幅×cos〔回折角〕) により算出した結晶子径の値を、金属粒子における結晶子径の平均値とした。測定条件はX線管の加速電圧を45kV、電流値を40mAとし、X線の波長はCu―Kα線を使用した。X線の入射側はソーラースリットを0.04ラジアン、マスクを15mm、発散スリットを1/2°、散乱防止スリットを1°とした。検出器側はソーラースリット0.04ラジアン、散乱防止スリットを5.5mmとした。スキャン速度は0.04°/sとした。
d.粗大粒子率
走査電子顕微鏡(株式会社日本電子製、商品名JSM-7800F)により金属ニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、商品名MacView4.0)を使用して、粒子約600,000個のうち、アスペクト比が1.2未満又は円形度が0.675を超える球状又は略球状粒子で、個数50%径の3倍以上の長径を持つ粒子の数を算出した。
e.分散性
ニッケル粉末0.5gにポリカルボン酸系分散剤5重量%水溶液100mlを加え、超音波分散機(株式会社ギンセン製、商品名GSD600AT)を使用して出力600W、振幅幅30μmで60秒分散した。分散後、メンブレンフィルター(孔径1μm、フィルター径25mm)(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製、商品名ニュークリポアメンブレン)を使用して吸引圧0.1MPaで吸引ろ過を行い、その際の通過時間からニッケル粉末の凝集挙動を表1のように評価した。
Figure 0007080856000001
f.焼結特性、及び充填率
ニッケル粉末1g、樟脳3重量%、及びアセトン3重量%を混合し、この混合物を内径5mm、長さ10mmの円柱状金属容器に充填し、500MPaで圧縮して試験ペレットを作製した。この試験ペレットの熱収縮挙動を、熱機械分析装置(株式会社リガク製、商品名TMA8310)を使用し、1.5体積%水素‐窒素の還元性ガス雰囲気下、大気圧、昇温速度5℃/分の条件で測定した。
測定結果から焼結開始温度として5%収縮温度を求め、ニッケル粉末の焼結特性を表2のように評価した。焼結開始温度が高いほど、耐熱性に優れる傾向を示す。
また、700℃まで加熱した際の収縮率から焼成体の充填率を(焼成体の密度÷ニッケルのバルク密度)の式で求め、表3のように評価した。充填率が高いほど、電極に適用する際における焼成による収縮が発生しにくい。
Figure 0007080856000002
Figure 0007080856000003
g.塗膜の平滑性
ニッケル粉末0.5gにポリカルボン酸系分散剤5重量%水溶液100mlを加え、超音波分散機(株式会社ギンセン製、商品名GSD600AT)を使用して出力600W、振幅幅30μmで60秒分散した。分散したスラリーを10分間静置して沈降させた後、上澄みを捨て、沈降したスラリー約100mgを5μmのアプリケータで石英板上に塗布した。石英板上のニッケル塗膜を電気炉(株式会社モトヤマ製、商品名SLT-2035D)を使用して、1.5体積%水素‐窒素の還元性ガス雰囲気下、大気圧、昇温速度5℃/分の条件で昇温し、1,000℃で1時間焼成した。焼成した塗膜の表面粗さ(Sz:最大高さ;最高ピークと最深谷との間の高さ)をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名VHX-1000)で測定し、塗膜の平滑性を(Sz値÷ニッケル粉の個数50%径)の値で表4のように評価した。
Figure 0007080856000004
実施例及び比較例のニッケル粉の個数50%径、連結粒子率、結晶子径、及び粗大粒子率を表5に示し、分散性、焼結特性、充填率、及び塗膜の平滑性の評価結果を表6に示す。
なお、実施例1は撮影した粒子中に粗大粒子が1個も発見できなかったため、評価結果を検出限界未満とした。
Figure 0007080856000005
Figure 0007080856000006
表5、表6から明らかなように、実施例1のニッケル粉は、比較例1と比較して個数50%径が同程度であるにもかかわらず、連結粒子率及び粗大粒子率が低いために、分散性、焼結特性、充填率及び焼成塗膜の平滑性が優れていることがわかる。また実施例2のニッケル粉は、比較例2と比較して個数50%径が同程度であるにもかかわらず、結晶子径が大きく連結粒子が少ないため、分散性、焼結特性及び充填率が優れていることがわかる。
以上の結果から、本発明の金属粉末は積層セラミックコンデンサの製造工程において優れた分散性、焼結特性、充填率及び焼成塗膜の平滑性を有し、結果として電極層の空隙の発生を抑制しコンデンサの容量の低下の防止に対して有効なものであることが実証された。
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極の導電ペースト用の金属粉末として好適に利用することができる。
a…金属ハロゲン化物ガスノズル
b…還元性ガスノズル
c…還元反応領域
d…金属粉末
e…冷却ガスノズル
f…回収管
g…マイクロ波加熱装置

Claims (6)

  1. 金属粒子が連結してなる連結粒子のうち、アスペクト比が1.2以上であり、円形度が0.675以下であり、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である連結粒子が上記金属粉末に含まれる割合が、個数基準で500ppm以下であり、
    上記金属粉末の個数50%径に対する結晶子径の比が、0.50以上であり、
    上記金属粒子を構成する金属は、銅であることを特徴とする金属粉末。
  2. アスペクト比が1.2未満であるか、又は円形度が0.675を超え、長径が上記金属粉末の個数50%径の3倍以上である粗大粒子が当該金属粉末に含まれる割合が、個数基準で15ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末。
  3. 上記個数50%径は、10nm以上、400nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属粉末。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の金属粉末の製造方法であって、金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスとを反応させる還元反応工程を含み、
    上記還元反応工程において、金属ハロゲン化物ガスが通過する還元反応領域の平均温度は、上記金属粉末の融点以下の温度であり、還元反応領域を囲む反応装置壁面全体を均一に加熱することにより、金属粒子が生成する際の最高到達温度の幅を、80℃以下とすることを含み、
    上記金属粒子を構成する金属は、銅であることを特徴とする金属粉末の製造方法。
  5. 上記還元反応工程後、上記金属粉末を400℃以下の温度まで冷却する冷却工程を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の金属粉末の製造方法。
  6. 上記金属ハロゲン化物ガスが不活性ガスを含む、混合ガスであり、当該混合ガスにおける金属ハロゲン化物ガスの分圧は、当該混合ガスの全圧を1.0としたときに、0.01~0.95(Pa/Pa)であることを特徴とする請求項4または5に記載の金属粉末の製造方法。
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