JP7078009B2 - 電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主としてモータや発電機などの回転機用の鉄心に用いて好適な高周波特性と磁束密度が優れた電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
モータや発電機で消費される電力量は莫大であり、エネルギー消費量削減の観点からこれらの機器で用いられる鉄心の低損失化が必要とされている。
また、電気自動車やハイブリッド電気自動車をはじめとして家庭用電気機器に至るまで、その小型・軽量化を進めるうえで回転機の高回転化が進展している。高回転の電動機の鉄心で発生する損失を有効に低減するためには、鉄心の高周波損失を低減する必要があり、そのためには、鉄心材として用いられる電磁鋼板の薄厚化と電気抵抗率の増加が有効な手段である。
上記したような用途に用いられる電磁鋼板として、素材鋼板を圧延法により十分に薄い母材としてから、化学気相浸珪法により鋼板表面にSiを蒸着し、さらに鋼板内部にSiを拡散させ、均一化させることで5質量%以上の高Siを含有する電磁鋼板を製造する方法が確立されており、高周波磁気特性の改善には有効であることが知られている。
また,板厚方向にSi含有量を傾斜させることで高周波領域の磁気特性がさらに改善することから、高速回転や多極化により高周波数で鉄心が磁化されるモータでは、Si傾斜型の電磁鋼板が適している。
しかしながら、Si傾斜型の電磁鋼板では、多くの回転機で必要とされる磁界強度500~5000A/mでの磁束密度(B5~B50)を高められないという問題があった。
また,板厚方向でSi含有量を傾斜させた鋼板は,板厚方向に均一なSi含有量を有する鋼板に比べて高周波域の鉄損特性が優れ,かつ板厚方向に均一に高Si化させた鋼板に比べて飽和磁化値が大きいという利点を有するものの,モータ鉄心として使用される際に重要となる磁界強度範囲の中で500~5000A/m付近の領域での磁束密度が小さいという問題を有していた。
回転機の鉄心として使用される電磁鋼板の磁束密度が低い場合、モータ鉄心材として利用した場合十分なトルクが得られず、電流値の増加でこれを補おうとすると銅損が増加するという問題を生じる。特に高速域で駆動されるモータにおいては、鉄心は磁束密度が低い領域で励磁されるため、特に磁界強度500A/mでの磁束密度であるB5付近の低い磁界強度領域で高い磁束密度が得られることが重要であるが、Si傾斜型の電磁鋼板ではB5付近の磁束密度が低いところに問題を残していたのである。
また、電磁鋼板の高周波鉄損を改善するためには板厚を低減することも有効であるが、例えば0.05mm以下の板厚の電磁鋼板を板厚精度も含めて安定して製造するには困難性が高く、コストの上昇を招くという問題点があった。
このため、高周波特性を改善するための実用的な手法としては、ある程度の薄厚化を達成した上で、Si含有量を十分に高くすることが有効であるといえる。
特公昭35-2657号公報 特開平4-362132号公報 特許第4123629号公報 特開平7-173542号公報 特開平6-128642号公報
さて、発明者らは、Siの含有を傾斜型とすることで高周波特性を改善した鋼板において,磁束密度B5の低下を防止するには、Si量の増加による飽和磁化の低下,および板厚方向のSi含有量の傾斜に起因する内部応力の発生に応じて,鋼板の結晶方位を抜本的に改善することが有効でないかとの考えを持つに至った。
通常の電磁鋼板の開発においても、集合組織の改善は磁束密度の向上に有効に作用し、一方でSi含有量の増加は電気抵抗率の増加を通じて鉄損を改善し,さらに板厚方向のSi含有量の傾斜は板厚表層部に磁束を集めることで特に高周波域の鉄損改善を改善することが知られているが、これらはそれぞれ単独で追及されるのが通常であり、本発明のように両者を相補的に用いる技術は提案されていなかった。
これに対して本発明は、鋼板の集合組織として、正キューブ方位{100}<001>もしくは面内無方向方位{100}<uvw>を用いることで、500A/m程度の低磁場域における磁束密度の低下を改善することを念頭において、このような鋼板を得るために種々の実験と検討を重ねた末に、開発されたものである。
電磁鋼板において磁化容易方向である<001>方向を板面内に集積させることは、500A/m程度の磁界強度で得られる磁束密度を向上させることができ,Si傾斜型高けい素鋼板で顕著な低下が生じるB5の向上を図るのに有効である。
一方、鋼板面内の<001>方位を高度に集積させるための方法として、正キューブ方位{100}<001>あるいは面内無方向方位{100}<uvw>を発達させる手法が知られている。
正キューブ方位{100}<001>を改善する手法としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1には、一方向に冷間圧延したのち、さらにこの冷延方向と交差する方向に冷間圧延を加え、短時間焼鈍と900~1300℃の高温焼鈍を行う、いわゆるクロス圧延を利用して、{100}<001>方位粒を、インヒビターを利用して二次再結晶させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、熱延方向に対して直角の方向に50~90%の圧下率で冷延し、ついで一次再結晶を目的とする焼鈍を施したのち、二次再結晶と純化を目的とする最終仕上焼鈍を施して、{100}<001>方位粒を、AlNをインヒビターとして利用して二次再結晶させる方法が開示されている。
これらの方法はいずれも、通常の冷間圧延とは大きく異なるクロス圧延を用いているため、母材のSi含有量を極度に高めた場合、圧延時の割れなどのトラブルが発生し、工業生産が事実上不可能である。
また、特許文献3では、C:0.003~0.08wt%、Si:2.0~8.0wt%、Mn:0.005~3.0wt%およびAl:0.0010~0.012wt%を含み、かつSe、S、OおよびNをそれぞれ30ppm以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる溶鋼を、スラブとし、ついで熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、ついで再結晶焼鈍を施し、その後必要に応じて焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる電磁鋼板の製造方法において、最終冷延前における平均結晶粒径を100μm以上、650μm以下とする製造方法が開示されている。
この方法の場合、圧延前粒径を粗大にする必要があるため、圧延時に割れが発生しやすい。特にSi含有量を高めた場合、割れの発生がさらに助長されるため、高Siの材料を製造することが困難である。
また、面内無方向方位{100}<uvw>を有する鋼板の製造方法として、特許文献4には、1.0質量%以下のC、0.2~6.5質量%のSi、0.05~3質量%のMnを含有した鋼板を、タイトコイル状態もしくは積層状態にて最終焼鈍する際に、焼鈍分離剤として脱炭を促進する物質、もしくは、脱炭を促進する物質と脱Mnを促進する物質を用いて焼鈍する方法が開示されている。
この方法においても、高Si材を得るにはSi含有量の高い母材を冷間圧延する必要があり、Si含有量を4質量%以上とすることは困難である。
さらに、特許文献5には、質量%で、4.0%<Si≦8.0%、Al≦2.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼を、移動更新する冷却体表面によって凝固せしめて鋳造鋼帯とし、次いで該当鋳造鋼帯を冷間圧延して所定の厚さとした後、仕上げ焼鈍する高珪素含有無方向性電磁鋼板の製造方法において、冷間圧延に際し圧延率を5%以上40%未満とすることにより面内無方向方位となる無方向性電磁鋼板を製造する方法が開示されている。
この方法では、鋳造により所定の厚さの鋼帯を得た後、冷間圧延して目的とする板厚とするため、冷間圧延率を低くすることができるが、急冷鋳造後の鋼帯には組織の不均一やエッジ部および内部に欠陥が生じやすいため、冷間圧延時の割れは通常の圧延よりも発生しやすく、やはり集合組織の発達した高Si材を安定的に得ることは困難といえる。
以上述べた二方向性電磁鋼板あるいは面内無方向性電磁鋼板の製造においては、製鋼段階でSi含有量を4%以上に高めた場合、冷間圧延が困難となるため、所望の製品が得られないという問題点が生じる。
これに対し、冷間圧延前の母材段階では冷間圧延で製造可能な範囲のSi含有量としておき、十分に集合組織が発達した鋼帯を得てから化学気相浸珪法よってSiを鋼板内部に注入し,拡散を制御することで、十分に板厚が薄い鋼板において,板厚方向にSi含有量を傾斜させ,板厚表層部を高Siとした鋼板を得ることが可能である。このような鋼板を回転機用鉄心として適用した場合、低損失・高効率の実現が可能である。化学気相浸珪法によれば、母材鋼板の高Si化と同時に、集合組織形成のための冷間圧延前の母材鋼板の結晶粒径の粗大化を図った場合に特に顕著になる、鋼帯の破断などの問題を回避することができる。
本発明は、上記の着想に基づき、種々の実験と検討を重ねた末に完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、Si:4.0%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなり、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の磁気特性を有する板厚0.25mm以下とした母材鋼板に対して、外部からSiを注入し、拡散させることにより、板厚表層部についてはSi含有量を5.5~7.0%とし,板厚中心部についてはSi含有量を2.0~4.0%とすることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
2.前記母材鋼板の平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とする前記1記載の電磁鋼板の製造方法。
3.前記母材鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005~2.0%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.50%、Mo:0.005~0.50%、Cr:0.05~1.50%、Ni:0.005~2.0%およびP:0.005~0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする前記1または2記載の電磁鋼板の製造方法。
4.Siを、板厚表層部において5.5~7.0質量%,板厚中心部において2.0~4.0質量%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる板厚が0.25mm以下の電磁鋼板であって、圧延方向のB5が1.0T以上、圧延直角方向のB5が0.95T以上であることを特徴とする電磁鋼板。
5.前記電磁鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005~2.0%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.50%、Mo:0.005~0.50%、Cr:0.05~1.50%、Ni:0.005~2.0%およびP:0.005~0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする前記4記載の電磁鋼板。
本発明により得られる電磁鋼板を、高回転・高周波の条件で使用されるモータや発電機等の回転機の鉄心材料として用いることにより、鉄損と銅損の両方を改善することができ、従来よりも高いモータ効率を達成することが可能であり、高周波域で鉄心が磁化される高周波モータや多極モータでその効果が高い。
以下、本発明に従う電磁鋼板の製造方法および得られた電磁鋼板における各構成要件について具体的に説明する。なお、成分に関する「%」は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
(1) Si注入前の母材鋼板のSi含有量:4.0%以下(残部は不可避的不純物)
冷間圧延により製造されるSi注入前の母材鋼板のSi含有量が4.0%を超える場合、冷間圧延の荷重が過大となるとともに、鋼帯の割れ発生頻度が増加して通常の工業生産設備での製造が困難となるので、母材鋼板のSi量は4.0%以下に限定する。なお、Si量は、磁気特性の観点から2.0%以上とすることが好ましい。
(2) Si注入前の母材鋼板の磁気特性:圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上
Si注入後の飽和磁化の低下を考慮し、Si注入前に十分に高い方位集積度の鋼板を用いる必要がある。圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の母材鋼板にSiを注入することにより、板厚表層部のSi含有量を5.5%以上に高めた場合でも、圧延方向のB5を1.0T以上、圧延直角方向のB5を0.95T以上とすることができる。ここで、母材鋼板の磁気特性を5000A/mでの磁束密度であるB50で規定しているのは、B50により集合組織の改善効果を明確に規定できるからであり、Si注入前の状態のB50を高位とすることで低磁場領域の磁束密度であるB5を改善することができる。また、このようなB5に対する効果は板厚表層部を高Siとした場合も有効に発揮される。
(3) 板厚0.25mm以下で、板厚方向にSi含有量を傾斜させ,板厚表層部におけるSi含有量を5.5~7.0%,板厚中心部におけるSi含有量を2.0~4.0%(製品)
高周波磁気特性改善のため、板厚は0.25mm以下とし、板厚表層部におけるSi含有量を5.5~7.0%とする。板厚が0.25mmを超えると、全板厚を均一に高Siとした場合も、あるいは板厚表層部を高Siとした場合でも、高周波領域の鉄損を十分に改善することができない。これに対し、板厚を0.25mm以下とし、さらに板厚表層部のSi含有量を5.5%以上に高めることで渦電流損が改善され、鉄損の改善が可能なる。
板厚を0.25mm以下とした場合であっても、板厚表層部のSi含有量が5.5%未満の場合、特に高周波領域の渦電流損が増加して鉄損が増加する。一方、板厚表層部におけるSi含有量が7.0%を超えると鋼板の脆化が顕著となるため、7.0%以下に限定する。
一方、板厚中心部におけるSi含有量が2.0%を下回ると1kHz以下の周波数域での渦電流損が増加し、この周波数領域で駆動されるモータに適用した場合に損失の劣化を招く。また、板厚中心部のSi含有量を4.0%超とするためには、母材となる鋼板のSi含有量を4.0%超とする必要があり、圧延が困難になるため4.0%以下に限定する。
また、板厚表層部と中心層のSi含有量の差は1.5%以上とする(表層部5.5%、中心層4.0%の場合)ことが好ましい。板厚表層部と板厚中心層部のSi含有量に差を設けることで、Si含有量を高くした板厚表層部に磁束が集中し、5kHz以上の高周波条件での渦電流損を改善することが可能となる。
本発明において、板厚表層部におけるSi含有量は、板厚表面から板厚の20分の1の領域での平均値とする。また、板厚中心部におけるSi含有量は、板厚中央部における板厚の20分の1の領域での平均値とする。板厚表層部においては、このような領域を十分に高いSi含有量とすることにより、高周波域で板厚表層部に磁束が集中した場合に、十分に高い渦電流損低減効果を得ることができる。
また、板厚については、薄いほどSi含有量が高い効果と相まって効果を発揮するので、本発明においては、より高い鉄損低減効果を得るには0.20mm以下の板厚とするのがより望ましい。
(4) 鋼板へのSiの注入
圧延が容易なSi含有量:4.0%以下とした母材鋼板に対し、冷間圧延後にSiを注入することで板厚方向に高Si含有量が傾斜分布した電磁鋼板を安定的に製造することが可能である。
Siを注入する方法としては種々の方法が適用可能であるが、化学気相浸珪法により鋼板表面のSi量を一時的に増加させた後、高温での焼鈍により板厚方向で所定のSi分布を得る方法が工業的に確立しており、本発明に適用するのに適している。
(5) Si注入処理前の母材鋼板の平均結晶粒径:200μm以上
後述する表2のNo.35~42に示されるように、Si注入処理前の母材鋼板の平均結晶粒径を200μm以上とすることにより、仕上げ焼鈍後の集合組織が改善されてSi注入処理によるB5の低下が防止される結果、モータ鉄心として使用した場合に高いモータ効率が得られる。これは、Si拡散処理が1200℃に達する高温で行われるため、拡散処理中の一次粒成長の過程でB5増加に不利な{111}集合組織が発達するおそれがあるが、Si注入処理前の粒径を大きくしておけば拡散処理中の一次粒成長に伴う{111}集合組織の発達が抑制されるためと考えられる。
従って、本発明においては、Si注入処理前の鋼板において、圧延方向のB50を1.80T以上、圧延直角方向のB50を1.75T以上とすると同時に、一次粒径を200μm以上としておくのが好ましい。このような母材鋼板を得るためには、熱延板焼鈍温度を1060℃程度以上とし、冷間圧延を180℃程度以上、冷間圧延後の焼鈍温度を1020℃以上とするのがよく、またさらに良好な特性を得るには冷間圧延前の一次粒径を200μm以上としておくのが好ましい。ここでの母材鋼板の平均結晶粒径(一次再結晶粒径)は、板厚方向に直交する平面で切った断面において計測するのが適している。
(6) 圧延方向のB5が1.0T以上、圧延直角方向のB5が0.95T以上(製品)
製品の圧延方向のB5を1.0T以上、圧延直角方向のB5を0.95T以上とすることにより、高周波領域で使用する回転機において、十分に高いトルクと高効率を得ることが可能となる。また、分割鉄心として用いたとき、磁束密度が高くなるティース方向を圧延方向とすることで、より良好な特性を得ることができる。このため、圧延直角方向よりも圧延方向の磁束密度を高めておくことは実機特性改善の観点から有利である。
次に、Si以外の任意添加成分について説明する。
Mn:0.005~2.0%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有用な元素であるが、含有量が0.005%に満たないとその効果がなく、一方2.0%を超えると集合組織形成が困難となるので、Mn含有量は0.005~2.0%の範囲とすることが好ましい。
Sn:0.01~0.50%
Snは、0.01%以上の添加で集合組織改善により正キューブ方位鋼板あるいは面内無方向鋼板の方位集積度向上に寄与するが、0.50%を超えると効果が飽和する一方、コストアップを招くため、上限は0.50%とすることが好ましい。
Sb:0.005~0.50%
Sbも、Sn同様、磁束密度向上に効果のある元素である。しかしながら、含有量が0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えるとその効果は飽和に達するので、Sb含有量は0.005~0.50%とすることが好ましい。
Mo:0.005~0.50%
Moは、熱間圧延における鋼板表面の欠陥を防止すると共に、表層酸化抑制により鉄損低減に効果のある元素である。しかしながら、含有量が0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えた場合には炭化物を形成し、鉄損が増加するため、Mo含有量は0.005~0.50%とすることが好ましい。
Cr:0.05~1.50%
Crは、Siとともに鋼板の電気抵抗率を増加させることにより渦電流損を低減する作用を有する元素である。しかしながら、添加量が0.05%を下回るとこのような効果が得られず、一方1.50%を超えて添加すると炭化物を形成して磁気特性の劣化を招くため、Cr含有量は0.05~1.50%の範囲とすることが好ましい。
Ni:0.005~2.0%
Niは、強磁性体元素であることも磁束密度の向上に寄与しているものと推察される。しかしながら、添加量が0.005%に満たないと磁気特性の向上量が小さく、一方2.0%を超えると集合組織形成が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni添加量は0.005~2.0%とすることが好ましい。
P:0.005~0.5%
Pは、集合組織改善効果を有するが、この効果は0.005%以上で発現する。一方、0.5%を超えて添加すると鋼板の脆化を招く。従って、P含有量は0.005~0.5%の範囲とすることが好ましい。
上掲した各成分は母材鋼板中に添加することで集合組織形成に寄与すると共に、製品の地鉄中に存在することで磁気特性を改善する効果を有する。
集合組織を適正に制御したSi注入処理前の母材鋼板を製造するために、上記の他にスラブ鋳造後の成分として、C:0.002~0.10%、Al:0.0010~0.015%を含有させることは、圧延方向および圧延直角方向に高い磁束密度を有する集合組織を形成する上で有利である。
C:0.002~0.10%
Cは、冷間圧延において、結晶粒内における局所変形を促進させ、{100}<001>組織の発達を促して磁気特性を向上させるのに有効に寄与する。しかしながら、冷間圧延前の鋼中の含有量が0.002%に満たないと{100}<001>粒の生成効果が小さくなるために磁束密度の低下を招く。一方、C量が0.10%を超えると脱炭焼鈍で除去することが困難になるだけでなく、熱延板焼鈍時に部分的にγ変態を起こし集合組織の形成が困難となる。従って、C含有量は0.002~0.10%とするのがよい。
Al:0.0010~0.015%
Alは、母材鋼板を得るための集合組織形成のための焼鈍の際に{100}<001>粒を適度に発達させる作用を有する。Al量が0.0010%に満たないと{100}<001>方位の集積度が低下して良好な磁束密度が得られず、一方Al量が0.015%を超えると、やはり{100}<001>方位の集積度が低下するだけでなく、{110}<001>方位が増加して、圧延面内における平均的な磁気特性の劣化を招く。従って、Al含有量は0.0010~0.015%の範囲とするのがよい。
次に、本発明の代表的な製造条件について述べる。
本発明の鋼板を製造するには、Siを2.5%~4.5%含有し、必要に応じてMn、Sn、Sb、Mo、Cr、Ni、P、C、Alを含有する鋼スラブを、熱間圧延により板厚1.5~3.5mmの熱延板とした後、必要に応じて温度1080℃~1170℃の熱延板焼鈍を施し、ついで酸洗後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により厚さ0.03~0.25mmの最終板厚としたのち、必要に応じて1回または複数の焼鈍を施すことにより母材鋼板を得る。
ここに、熱延板焼鈍温度は、母材鋼板における集合組織形成の観点から1060℃以上とすることが、また冷間圧延は、母材鋼板における集合組織形成の面から最高温度を180℃程度以上とすることが、さらに冷間圧延後の焼鈍温度は、母材鋼板における集合組織形成と結晶粒径の最適化の面から1020℃以上とするのが好ましい。
その後、化学気相浸珪法、電着塗装およびメッキなどの方法で鋼板表面にSiを濃化させ、続いて1150℃以上の高温の焼鈍でSiを所定の板厚方向分布となるように鋼中に拡散させて所望のSi傾斜鋼板を得る。ここで,冷間圧延は,鋼板最高温度が180℃以上に1回以上達する必要がある。また,鋼板表面にSiを濃化させる前に鋼中のC含有量が5ppm以上60ppm以下とする脱炭焼鈍を施してから、900℃以上に8時間以上保持するボックス焼鈍を施すのがよい。
このような一連の焼鈍においては、脱炭焼鈍後に所定のCを鋼中に残存させることにより、その後のボックス焼鈍により、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上を実現する組織の形成が促進される。このボックス焼鈍では900℃以上に8時間以上保持することで、二次再結晶による粗大な結晶粒が得られるので、浸珪のための高温焼鈍で結晶粒成長が起こらず、磁束密度の低下を防止することが可能となる。
表1に示す「Si注入処理前成分(母材鋼板の成分)」とC:0.015%、Al:0.0030%を含む組成からなるスラブを、連続鋳造にて製造したのち、1100℃で20分間加熱してから、熱間圧延により2.5mm厚に仕上げた。ついで、熱延板焼鈍および冷間圧延(圧延での最高温度)を表1に示す条件で行い、0.20~0.30mmの最終板厚に仕上げた。
その後、水素:75%、窒素:25%、露点:50℃の雰囲気中にて表1に示す焼鈍温度で均熱時間:20秒の再結晶と脱炭焼鈍を兼ねた焼鈍を行い、鋼中Cを10ppmまで低減した。ついで、窒素雰囲気中にて950℃、35時間の仕上焼鈍を行った。仕上げ焼鈍後の地鉄中にはC:8ppm、Al:0.0015%が不純物として残留した。
上記した仕上げ焼鈍後の鋼板から圧延方向および圧延直角方向の磁気特性評価のためのエプスタイン試験片を採取後、Ar雰囲気で800℃に3時間保持する歪取り焼鈍を行い、圧延方向および圧延直角方向の磁束密度B50を測定した。
続いて、上記仕上げ焼鈍後の鋼帯に対して化学気相浸珪法により鋼板表面のSi濃度を濃化させた後、1200℃で種々の時間保持することにより板厚方向のSi分布を種々の水準に制御したのち、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂、エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300℃で焼き付けて電磁鋼板の製品とした。この製品からエプスタイン試験片を切り出し、圧延方向および圧延直角方向の磁束密度B5を測定した。
続いて、得られた電磁鋼板を用いて8極のIPMSMモータ(分布巻き)を製作し、トルク0.1Nm、回転数30000rpmでのモータ効率を評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0007078009000001
Figure 0007078009000002
表2に示したように、本発明の電磁鋼板の使用により、従来の材料よりも高いモータ効率を得ることができる。
特に、母材鋼板の平均結晶粒径を200μm以上とし(No.35~42)、さらに適量の任意成分を添加した場合(No.37~42)には、高いモータ効率が得られている。

Claims (5)

  1. 質量%で、Si:4.0%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなり、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の磁気特性を有する板厚0.25mm以下とした母材鋼板に対して、外部からSiを注入し、拡散させることにより、板厚表層部についてはSi含有量を5.5~7.0%とし,板厚中心部についてはSi含有量を2.0~4.0%とすることを特徴とする、圧延方向のB が1.0T以上、圧延直角方向のB が0.95T以上である電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記母材鋼板の平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とする請求項1記載の電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記母材鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005~2.0%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.50%、Mo:0.005~0.50%、Cr:0.05~1.50%、Ni:0.005~2.0%およびP:0.005~0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする請求項1または2記載の電磁鋼板の製造方法。
  4. Siを、板厚表層部において5.5~7.0質量%,板厚中心部において2.0~4.0質量%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる板厚が0.25mm以下の電磁鋼板であって、圧延方向のBが1.0T以上、圧延直角方向のBが0.95T以上であることを特徴とする電磁鋼板。
  5. 前記電磁鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005~2.0%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.50%、Mo:0.005~0.50%、Cr:0.05~1.50%、Ni:0.005~2.0%およびP:0.005~0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする請求項4記載の電磁鋼板。
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