JP7070419B2 - 1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法に関する。
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、その生産の規制が予定されている。HCFCは、例えば、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225ca)や1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225cb)等があるが、HCFCの規制に伴い、上記HCFCに代わる化合物の開発が望まれている。
HCFCに代わる化合物の一例は、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd、以下単に、「1233yd」ともいう。)である。1233ydは、地球温暖化係数(GWP)が小さく、洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤およびエアゾールの用途に有用な新たな化合物である。1233ydは、幾何異性体として、1233ydのE体とZ体が存在するが、用途や、混合する成分との相溶性等によって、1233ydのZ体または1233ydのE体を単独で用いたり、1233ydのZ体と1233ydのE体を混合物として用いたりもする。
1233ydの製造方法としては、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244ca)を、水酸化クロムを触媒として窒素気流下、気相でフッ化水素と反応させて、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-245ca)を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、1233ydが副生する。そのため、上記反応で得られる組成物を回収し、その組成物中に含まれる1233ydを分離することで、1233ydを得ることができる。
しかしながら、上記の方法で生成する1233ydは、1233ydのE体と1233ydのZ体の混合物であって、
1233ydのE体とZ体を分離することについては開示されていない。また、上記の方法は、1233ydのE体とZ体の組成を調整するものでもない。
そのため、1233ydのE体とZ体のいずれかを選択的に反応させ、工業的に有利に、かつ効率よく所定の組成の1233ydを製造することのできる方法が求められている。
国際公開第1994/14737号
本発明は、工業的に有利かつ効率的な方法で、1233ydのE体とZ体のいずれかを選択的に反応させ、所定の組成の1233ydを製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示す構成の1233ydの製造方法を提供する。
[1] 1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を所定の異性化反応温度における平衡比(モル比)とは異なるモル比で含有する原料組成物中の前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)を、前記異性化反応温度で異性化反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を製造する、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[2] 前記原料組成物において、前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)と前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)のモル比(1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)/1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E))が、前記異性化反応温度における平衡比(モル比)より小さい、[1]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[3] 前記異性化反応は、前記原料組成物を金属触媒と接触させることで行う[1]または[2]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[4] 前記金属触媒が、金属単体、合金、金属酸化物および金属ハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質である、[3]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[5] 前記金属触媒を構成する金属が、第4族金属元素、第6族金属元素、第8族金属元素、第9族金属元素、第10族金属元素、第11族金属元素、第12族金属元素および第13族金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である、[3]または[4]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[6] 前記金属触媒が、金属酸化物および金属ハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である[3]~[5]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[7] 前記金属酸化物が、アルミナおよびクロミアから選ばれる少なくとも1種である、[4]~[6]いずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[8] 前記金属ハロゲン化物が、金属塩化物の一部がフッ素化された化合物である、[4]~[6]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[9] 前記異性化反応温度が0℃以上500℃以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[10] 前記異性化反応は、液相で行う[1]~[9]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[11] 前記異性化反応は、気相で行う[1]~[9]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[12] 前記異性化反応は、不活性ガスの存在下で行う、[11]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[13] 前記異性化反応は、0℃以上260℃以下で行う、[11]または[12]のいずれかに記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
[14] 1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を、所定の異性化反応温度における平衡比(モル比)とは異なるモル比で含有する原料組成物中の前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を、前記異性化反応温度で異性化反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)を製造する、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)の製造方法。
[15] 前記原料組成物において、前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)と前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)のモル比(1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)/1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E))が、前記異性化反応温度における平衡比(モル比)より大きい、[14]に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)の製造方法。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記した場合、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、分子内に二重結合を有し、E体とZ体が存在する化合物については、E体とZ体をそれぞれ化合物の略称の末尾に(E)、(Z)と表記して示す。なお、化合物名の略称の末尾に(E)、(Z)の表記がないものは、E体および/またはZ体を示す。
本発明の1233ydのZ体の製造方法によれば、工業的に有利かつ効率的な方法で、1233ydのE体を選択的に反応させて1233ydのZ体を製造することができる。
本発明の1233ydのE体の製造方法によれば、工業的に有利かつ効率的な方法で、1233ydのZ体を選択的に反応させて1233ydのE体を製造することができる。
各異性化反応温度における1233ydのE体とZ体の合計に対する1233ydのZ体の存在比率(モル%)を表わすグラフである。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[1233yd(Z)または1233yd(E)の製造方法]
本発明の一実施形態である1233ydの製造方法は、下記式[1]で示すように、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)(HCFO-1233yd(E)、以下「1233yd(E)」ともいう。)および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)(HCFO-1233yd(Z)、以下「1233yd(Z)」ともいう。)を、異性化反応温度における平衡比とは異なるモル比で含有する原料組成物を用意し、該原料組成物中の、1233yd(E)を異性化反応させて、1233yd(Z)を製造する方法である。また、本発明の他の実施形態である1233ydの製造方法は、下記式[2]で示すように、上記原料組成物中の、1233yd(Z)を異性化反応させて、1233yd(E)を製造する方法である。
Figure 0007070419000001
Figure 0007070419000002
上記式[1]および[2]に示される1233yd(E)および1233yd(Z)間の異性化反応は平衡反応である。本実施形態の1233ydの製造方法は、該異性化反応が生じる条件(以下「異性化条件」ともいう。)で異性化反応を行うものである。なお、上記式[1]または式[2]で示す異性化反応を、以下、単に「異性化反応」ともいう。
前記異性化反応の平衡状態において、1233yd(Z)および1233yd(E)は、所定のモル比(平衡比)で存在する。本明細書において、平衡比とは、「異性化反応の平衡状態における1233yd(E)に対する1233yd(Z)のモル比」のことをいい、該平衡状態における[(1233yd中の1233yd(Z)のモル数)/(1233yd中の1233yd(E)のモル数)]で表される。平衡比は、異性化反応させる際の反応温度(以下、異性化反応温度ともいう。)、圧力等により異なる。
たとえば、大気圧、異性化反応温度が20℃における平衡比は、97/3程度である。また、大気圧、異性化反応温度が230℃における平衡比は、91/9程度である。以下、「1233yd(Z)/1233yd(E)」は、1233yd(E)に対する1233yd(Z)のモル比を表わす。
ここで、各異性化反応温度における1233yd(E)と1233yd(Z)の合計に対する1233yd(Z)の存在比率(モル%)を、図1に示す。図1のグラフから、異性化反応温度が高くなると、1233yd(Z)の存在比率が小さくなり、平衡比は小さくなることがわかる。
本実施形態の1233yd(Z)の製造方法においては、1233yd(Z)/1233yd(E)が、異性化反応温度における平衡比より小さい原料組成物を用いることで、1233yd(Z)を製造できる。すなわち、上記異性化反応温度での異性化反応により、反応生成物中の1233yd(Z)の含有比が原料組成物中の含有比に比べて増大して、1233yd(Z)が製造される。例えば、本実施形態の1233yd(Z)の製造方法によれば、条件を最適化することで、簡便な操作で反応生成物中の1233yd(Z)と1233yd(E)の合計量に対して、1233yd(Z)の含有量を80モル%以上とすることもできる。
一方、本実施形態の1233yd(E)の製造方法においては、1233yd(Z)/1233yd(E)が、異性化反応温度における平衡比より大きい原料組成物を用いることで、1233yd(E)を製造できる。すなわち、上記異性化反応温度での異性化反応により、反応生成物中の1233yd(Z)の含有比が原料組成物中の含有比より減少して、1233yd(E)が製造される。
このように、本実施形態の製造方法においては、原料組成物中の1233yd(Z)/1233yd(E)を調整することで、1233yd(E)から1233yd(Z)への反応および1233yd(Z)から1233yd(E)の反応のうち、何れかの反応を選択的に進行させることができる。
なお、原料組成物中の1233yd(Z)/1233yd(E)と異性化温度における平衡比との差が小さい場合は、この差が大きい場合に比べて、1233yd(Z)と1233yd(E)の間の見かけ上の変換率は小さくなる。しかしながら、例えば、後述するように、1233yd(Z)を製造する場合、上記異性化反応と、異性化反応で得られる1233yd(Z)と1233yd(E)の蒸留分離、蒸留分離により得られる1233yd(E)の再異性化を繰り返すことで、工業的に有利かつ効率的な方法で1233yd(E)から1233yd(Z)を得ることができる。これは、1233yd(E)を製造する場合も同様である。
[原料組成物]
本実施形態の製造方法において、原料組成物は、1233yd(E)および1233yd(Z)を、異性化反応温度における平衡比(モル比)と異なるモル比で含む。原料組成物は、1233yd(E)および1233yd(Z)の他に、1233yd(E)および1233yd(Z)以外の不純物を含んでいてもよい。原料組成物に含まれる不純物としては、1233yd(E)および1233yd(Z)の製造原料や、1233yd(E)および1233yd(Z)を製造する際に1233yd(E)および1233yd(Z)以外に生成する副生物等が挙げられる。なお、上記不純物を含有する原料組成物を用いて異性化反応させた場合、上記不純物から生成する副生物は、蒸留等の既知の手段により除去することが可能である。不純物としては、1233yd(E)または1233yd(Z)が異性化反応する条件で不活性な化合物であることが好ましい。
1233yd(E)および1233yd(Z)は、公知の方法で製造可能である。例えば、HCFC-244caをフッ化水素と反応させ、HCFC-245caを製造する際の副生物として1233ydが得られる。
上記の方法で得られた1233ydをそのまま原料組成物として用いてもよいし、1233ydを蒸留等の公知の方法により、1233ydのE体とZ体に分離して、所望の混合比に調製したものを原料組成物として用いてもよい。
さらに、上記の方法で得られた組成物中には、1233ydの他、生成物であるHCFC-245ca、製造原料であるHCFC-244ca、製造工程で副生する1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン等が含まれる。この組成物をそのまま原料組成物として用いてもよい。
本実施形態の製造方法は、バッチ方式、連続流通方式のどちらの方法でも可能である。本実施形態の製造方法は、製造効率の点で連続流通方式であることが好ましい。
[異性化条件]
前記したように、1233yd(Z)を製造する際、例えば、原料組成物における1233yd(Z)/1233yd(E)は、所定の異性化反応温度における平衡比よりも小さい条件とする。一方、1233yd(E)を製造する際、例えば、原料組成物中の1233yd(Z)/1233yd(E)が、所定の異性化反応温度における平衡比よりも大きい条件とする。
また、本実施形態の製造方法において、上記条件を満たす原料組成物を所定の異性化条件での異性化反応に供することで、上記異性化反応により所望の化合物を製造できる。また、反応器内で原料組成物と金属触媒を接触させる方法、反応器内で原料組成物とラジカル発生剤を接触させる方法、または原料組成物を加熱する方法等によって、異性化反応を促進させることができる。これらの方法によれば、速やかに異性化反応を進行させ、平衡状態にすることができる。そのため、上記方法は、1233yd(E)を異性化させて1233yd(Z)を製造する、または1233yd(Z)を異性化させて1233yd(E)を製造する、工業的な方法として適している。
本実施形態の製造方法において、異性化反応は液相で行ってもよいし、気相で行ってもよい。液相で反応を行う場合は、気相で反応を行う場合と比較して、同量の目的物を製造する場合に、サイズの小さい反応器で反応させることができるといった利点がある。一方、気相で反応を行う場合は、液相で反応を行う場合と比較して、反応時間を短くすることができ、副生物である1,2,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン(ClCHF-CCl=CHClの生成を抑制できるといった利点や、時間あたりの目的物の製造量が多くなるといった利点がある。
[反応器]
本実施形態の製造方法に用いられる反応器としては、後述する反応器内の温度および圧力に耐えるものであれば、特に限定されず、例えば、ガラスフラスコやオートクレーブ、円筒状の縦型反応器を用いることができる。反応器の材質としては、ガラス、鉄、ニッケル、鉄またはニッケルを主成分とする合金等が用いられる。また、反応器は、反応器内を加熱する電気ヒータ等を備えていてもよい。
〈金属触媒を用いた異性化〉
本実施形態の製造方法において、異性化反応は、金属触媒を用いて行うことが好ましい。金属触媒を用いることで反応速度を向上させ、製造効率を向上させることができる。金属触媒は、異性化反応に対して触媒作用を有する。金属触媒としては、例えば、金属(金属単体または合金)、金属酸化物、金属ハロゲン化物等が挙げられる。金属触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、効率よく異性化反応を進行させることから、金属酸化物または金属ハロゲン化物が好ましい。
金属触媒を構成する金属としては、遷移金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素、第14族金属元素、第15族金属元素が挙げられる。中でも、第4族金属元素、第6族金属元素、第8族金属元素、第9族金属元素、第10族金属元素、第11族金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素、第14族金属元素、第15族金属元素が好ましく、第4族金属元素、第6族金属元素、第8族金属元素、第10族金属元素、第11族金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素が好ましい。
金属触媒を構成する金属が、遷移金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素、第14族金属元素、第15族金属元素である場合、具体的には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)(第4族金属元素)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)(第5族金属元素)、クロム(Cr)、タングステン(W)(第6族金属元素)、レニウム(Re)(第7族金属元素)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)(第8族金属元素)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)(第9族金属元素)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)(第10族金属元素)、銅(Cu)(第11族金属元素)、亜鉛(Zn)(第12族元素)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)(第13族金属元素)、スズ(Sn)(第14族金属元素)、アンチモン(Sb)(第15族金属元素)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることがより好ましい。
金属触媒は、上記した金属の1種であってもよく、2種以上の金属の合金であってもよい。金属酸化物は、上記した金属の1種の酸化物であってもよく、2種以上の金属の複合酸化物であってもよい。金属ハロゲン化物は、上記した金属の1種のハロゲン化物であってもよく、2種以上の金属の複合ハロゲン化物であってもよい。
また、金属触媒は、担体に担持されていてもよい。担体としては、例えば、アルミナ担体、ジルコニア担体、シリカ担体、シリカアルミナ担体、活性炭に代表されるカーボン担体、硫酸バリウム担体、炭酸カルシウム担体などが挙げられる。活性炭としては、例えば、木材、木炭、果実ガラ、ヤシガラ、泥炭、亜炭、石炭などの原料から調製した活性炭などが挙げられる。担体は、金属触媒と同種の化合物である場合、金属触媒としての機能を有していてもよい。
また、金属触媒は、反応性向上の観点から、あらかじめ活性化処理されていることが好ましい。活性化処理の方法としては、加熱下または非加熱下で金属触媒を活性化処理剤と接触させる方法が挙げられる。活性化処理剤としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、含フッ素炭化水素などを用いることができる。活性化処理剤としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、活性化処理剤としては、含フッ素炭化水素を用いることが好ましい。活性化処理剤として用いる含フッ素炭化水素としては、例えば、トリクロロフルオロメタン(CFC-11)、ジクロロジフルオロメタン(CFC-12)、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、ジクロロフルオロメタン(HCFC-21)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、トリフルオロメタン(HFC-23)、テトラフルオロエチレン(FO-1114)等が好適である。また、原料組成物中の1233yd(E)または1233yd(Z)を活性化処理剤に用いることもできる。
また、金属触媒に対しては、このような反応前の活性化処理の他に、再活性化処理を行うことができる。すなわち、異性化反応において、金属触媒の活性が落ち、1233ydのE体とZ体との間の変換速度が低下したとき(異性化平衡に到達するまでの時間が長くかかるようになったとき)には、金属触媒を再活性化処理することが好ましい。これにより、金属触媒の活性を再生させて金属触媒を再利用することができる。
再活性化処理の方法としては、使用前の活性化処理と同様に、金属触媒を加熱下または非加熱下で活性化処理剤と接触させる方法が挙げられる。再活性化処理のための処理剤(再活性化処理剤)としては、酸素、フッ化水素、塩化水素、含塩素・含フッ素炭化水素等を用いることができる。含塩素・含フッ素炭化水素としては、炭化水素の水素の一部が塩素で置換された化合物、フッ素で置換された化合物、塩素およびフッ素で置換された化合物が挙げられ、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン(HCC-30)、クロロメタン、塩化ビニル、CFC-11、CFC-12、CFC-13、HCFC-21、HCFC-22、HFC-23、FO-1114、1233yd(E)、1233yd(Z)等を挙げることができる。また、再活性化処理において、副反応の抑制および金属触媒の耐久性向上等の点から、再活性化処理剤を希釈するために窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
金属触媒は、反応器に収容される前に活性化処理が行われていてもよいが、操作が簡便で作業効率が良いため、反応器に収容した状態で活性化処理を行うことが好ましい。そのため、活性化処理剤を、金属触媒を収容した反応器に導入して活性化処理を行うことが好ましい。活性化処理剤は、常温のまま反応器に導入してもよいが、反応性を向上させる観点から、反応器に導入する際に加熱等により温度調節を行うことが好ましい。
また、活性化処理の効率を高めるために、反応器内を加熱した状態で活性化処理をすることが好ましい。その場合、反応器内の温度は50~400℃に加熱することが好ましい。
(液相での異性化)
本実施形態の1233ydの製造方法を液相で行う場合、反応容器内で、液体状態の原料組成物を金属触媒と接触させて行うことができる。
本実施形態の1233ydの製造方法を、液相で行う場合、金属触媒としては、金属ハロゲン化物が好ましい。なかでも、Al、Sb、Nb、Ta、W、Re、B、Sn、Ga、In、Zr、HfおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むハロゲン化物を用いることがより好ましい。
金属ハロゲン化物としては、GaCl、GaCl、ZrCl、BCl、AlCl、HfCl、InCl、TiCl等の金属塩化物、またはこれらの金属塩化物の一部がフッ素化されたもの、例えば、AlFCl、AlFCl、TiCl、TiClF、ZrCl2、ZrClZrClF等を使用することができる。また、金属触媒として、GaBr、GaI、HfBr、InI、TiBr等の金属臭化物、金属ヨウ化物またはこれらの金属臭化物、金属ヨウ化物の一部が上記活性化処理等によって塩素化、フッ素化されたものを使用することができる。なかでも、異性化反応を効率的に進行することができる点から、金属塩化物の一部がフッ素化された化合物、例えば、AlFCl、AlFClが好ましい。
このような金属触媒の添加量は、原料組成物中の1233yd(E)および1233yd(Z)の合計量(100質量%)に対して、外添で1~100質量%とすることが好ましく、5~50質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。上記範囲であると、異性化反応を効率的に進行することができる。
本実施形態の製造方法を液相で行う場合、反応熱を制御するために反応溶媒を加えることが好ましい。反応溶媒は、上記金属触媒を用いる場合、金属触媒に対して不活性な化合物であって、出発物質および目的物を溶解させるが、金属触媒を溶解させない化合物である。また、蒸留などによって、目的物と容易に分離可能な化合物である。このような反応溶媒は、例えば、沸点が60℃~200℃の非プロトン性の有機溶媒、具体的には、四塩化炭素、クロロホルム等が好ましい。
異性化反応を、金属触媒を用いて液相で行う場合の反応条件は、反応温度が0~150℃であることが好ましく、10~100℃であることがより好ましく、10~50℃であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異性化反応を効率的に進行させることができる。反応時間は、反応温度や金属触媒の種類にもよるが、製造効率の点から通常0.5~200時間が好ましく、特に1~100時間がより好ましく、1~10時間がさらに好ましい。
(気相での異性化)
本実施形態の1233ydの製造方法を、気相で、金属触媒を用いて行う場合、異性化反応は、反応器内で原料組成物と金属触媒を接触させて行うことができる。具体的に、例えば、反応器内に金属触媒を収容し、反応部を形成させて、この反応部に原料組成物を流通させることで行うことができる。この場合、金属触媒は、固定床型または流動床型のいずれの形式で収容されていてもよい。また、固定床型である場合には、水平固定床型または垂直固定床型のいずれであってもよい。上記異性化反応によって多成分より構成される混合ガスが生じた際に、比重差により、場所によって各成分の濃度分布が生じることを防ぎやすいため、金属触媒は、垂直固定床型であることが好ましい。以下、本実施形態の1233ydの製造方法を気相で行う方法について、本実施形態の製造方法を連続流通方式で行い、原料組成物を気相の状態で金属触媒と接触させて異性化反応を行う場合の反応条件について説明するが、本発明はこれに限定されない。
本実施形態の製造方法を気相で行う場合、金属触媒としては、金属単体または金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、酸化クロム(クロミア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、フッ化鉄、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化クロム、塩化クロムなどが挙げられる。これらの金属触媒の中でも、入手が容易で、効率よく異性化反応を進行させる点で、アルミナ、クロミアが好ましい。
本実施形態の1233ydの製造方法を気相で行う場合、副反応の抑制、出発物質の反応器への供給のしやすさ、流量の調整の点から、原料組成物とともに、希釈ガスを反応器に供給することが好ましい。また、異性化反応を上記した金属触媒の存在下で行う場合、希釈ガスを用いることで金属触媒の耐久性を向上させるという利点もある。
希釈ガスとしては、窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウムなど)、本実施形態の異性化反応において不活性な有機化合物のガス等が挙げられる。不活性な有機化合物としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の飽和炭化水素や、トリフルオロメタン(HFC-23)、ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、テトラフルオロエタン(HFC-134またはHFC-134a)、トリフルオロエタン(HFC-143またはHFC-143a)、ジフルオロエタン(HFC-152またはHFC-152a)、テトラフルオロプロパン(HFC-254ebなど)等のフルオロ炭化水素が挙げられる。希釈ガスの量は、特に制限されないが、具体的には、反応器に供給される原料組成物(100モル%)に対して、好ましくは1~10000モル%、より好ましくは10~1000モル%、さらに好ましくは30~500モル%、最も好ましくは50~150モル%の量が挙げられる。希釈ガスは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本実施形態の製造方法を気相で行う場合、原料組成物は、予熱した後に反応器に導入してもよい。この際の予熱温度は、原料組成物中の1233yd(E)および1233yd(Z)を気化させ、反応性を向上させる点から、20~300℃であることが好ましく、50~250℃であることがより好ましい。
また、希釈ガスを用いる場合、原料組成物と希釈ガスは、反応性を向上させる点から、上記した好ましい温度に予熱してから反応器に導入することが好ましい。原料組成物と希釈ガスは、それぞれ上記温度に予熱してから混合し、その後反応器に供給してもよいし原料組成物と希釈ガスを混合した後、予熱して反応器に供給してもよい。
本実施形態の製造方法において、異性化反応を気相で行う場合の反応条件は、反応圧力については、例えば、反応時間の短縮等の目的で加圧を必要とする場合には、1.0MPa以下の加圧条件、反応器内の内圧で常圧~1.0MPaの圧力条件とすることが可能である。工業的な実施のしやすさの点から、常圧、もしくは0.2MPa以下の微加圧で反応を行うことが好ましい。常圧とは、大気圧のことである。
原料組成物と金属触媒の接触温度(反応温度)は、反応器内の温度として0~500℃が好ましく、50~350℃がより好ましく、100~260℃がさらに好ましく、150~250℃がもっとも好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、異性化反応を効率的に進行することができる。一方、反応温度が上記上限値以下であれば、1233yd(E)および1233yd(Z)の分解による副生物の生成を抑えることができる。反応器内での原料組成物と金属触媒の接触時間(反応時間)は、0.1~1000秒間が好ましく、1~100秒間がより好ましい。なお、接触時間は、原料組成物の反応器内での滞留時間に相当し、原料組成物の反応器への供給量(流量)を調節することで制御できる。
〈ラジカル発生剤との接触による異性化〉
本実施形態の製造方法において、上記異性化反応は、原料組成物をラジカル発生剤と接触させて行うことができる。ラジカル発生剤は、熱または光によって活性化されてラジカルを発生するものである。原料組成物をラジカル発生剤と接触させて、異性化反応を行わせる方法としては、原料組成物と、熱または光によって活性化させたラジカル発生剤を、反応器内で接触させる方法が挙げられる。この場合、異性化反応は気相で行われることが好ましい。
ラジカル発生剤は、熱または光のいずれか一方で活性化させてもよく、両者を併用してもよい。工業的には、熱のみによる活性化が好ましく、加熱した反応器に原料組成物とラジカル発生剤の混合物を供給し、反応器内で当該混合物に熱エネルギーを付与して、熱によりラジカル発生剤を活性化させる方法が簡便で好ましい。
ラジカル発生剤を光によって活性化させる場合、ラジカル発生剤に対して光を照射すればよい。照射する光として具体的には、波長200~400nmの光を含む紫外線や可視光線などが挙げられる。このような光照射に用いられる光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
光照射の方法としては、例えば、少なくとも上記異性化反応に必要な波長の光を透過し、反応系に存在する成分に不活性で、耐食性の材料で構成されたジャケットを装着した光源を反応成分ガス中に挿入し、反応器内部から反応成分に対して光を照射する等の方法が挙げられる。また、光源が熱を発生する場合には、反応温度によっては、上記ジャケットは冷却手段を有するジャケットであることが好ましい。
ラジカルは、不対電子を有する原子、分子、あるいはイオン等の化学種であり、化学種の電荷がプラスのラジカルカチオン、電荷がマイナスのラジカルアニオン、電荷が中性のラジカル、ビラジカル、カルベン等を含む。具体的には、フッ素ラジカル、塩素ラジカル、臭素ラジカル、ヨウ素ラジカル、酸素ラジカル、水素ラジカル、ヒドロキシラジカル、ニトロキシラジカル、窒素ラジカル、アルキルラジカル、ジフルオロカルベンまたは炭素ラジカル等が挙げられる。
上記したようなラジカルを発生させるラジカル発生剤としては、熱や光等の外部エネルギーの付与によって、ラジカルを発生する、1233yd(E)および1233yd(Z)以外の化合物である。ラジカル発生剤として具体的には、塩素、臭素等のハロゲンガス、またはハロゲン化炭化水素等、空気、酸素、オゾン、過酸化水素等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン類中の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子で置換したハロゲン化炭化水素であって、当該ハロゲン化炭化水素はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素の少なくとも1つを含むものである。ラジカル発生剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル発生剤として、上記したなかでは、安価で入手のし易さから、酸素、空気および塩素が好ましい。なかでも、塩素はラジカルを発生させやすい点で好適である。また、生成物との分離が容易である点からは、ラジカル発生剤として、空気または酸素が好適である。
反応器に供給されるラジカル発生剤の量は、微量であることが好ましい。ラジカルの生成が連鎖するためである。また、過剰のラジカル発生剤の添加は、副資材の無駄となるだけでなく、反応後の目的物質あるいは出発物質と、ラジカル発生剤との分離工程の負荷を生じる。
〈加熱による異性化〉
本実施形態の1233ydの製造方法における異性化反応は、原料組成物の温度を変動させて、例えば加熱して、行うことができる。異性化反応を、加熱によって行う場合、異性化反応は、反応器内で原料組成物を加熱して行うことができる。この加熱は、具体的には、例えば、電気炉等の加熱炉により加熱された反応器内に、原料組成物を供給すればよい。この場合、異性化反応は気相で行われることが好ましい。
異性化反応を加熱により行う場合、反応圧力は、金属触媒を用いる場合と同様、常圧もしくは0.2MPa以下の微加圧であることが好ましい。加熱温度(反応温度)は、400~1000℃とすることが好ましく、400~900℃がより好ましい。反応器内での原料組成物の滞留時間(反応時間)は、0.001~1000秒間が好ましく、0.01~100秒間がより好ましい。反応温度を上記した好ましい範囲内で高くする、または反応時間を長くすることで異性体間の変換率を向上させ、その反応温度での平衡比又は平衡比に近い割合で異性体を含有する1233ydを得ることができる。
(反応生成物)
本実施形態の製造方法においては、目的物である1233yd(E)または1233yd(Z)を、反応器から流出する反応生成物中に得ることができる。反応生成物には、原料組成物に含まれる不純物等から生成した副生物や、1233yd(E)または1233yd(Z)の分解により生成した副生物が含有されることがある。副生物は、具体的には、1,2,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン等である。反応生成物中のこれらの副生物は、蒸留等の既知の手段で望まれる程度に除去することができる。
また、上記異性化反応では、上述したように、異性化条件において異性化反応の平衡状態が形成されるため、反応条件(異性化条件)を好適なものに調整したとしても、反応生成物中には、目的物に加えて、出発物質が含まれる。すなわち、反応生成物中には、1233yd(E)および1233yd(Z)の両者が含まれる。
反応生成物中の1233yd(E)および1233yd(Z)は、沸点に差があるため、通常の蒸留方法によって分離することが可能である。したがって、上記で得られる反応生成物を、必要に応じて酸洗浄、アルカリ洗浄、合成ゼオライトなどの吸着剤による脱水、副生物の除去を行い、蒸留することで、高純度の1233yd(E)および1233yd(Z)をそれぞれ得ることができる。具体的には、上記で洗浄等を行った、1233yd(E)および1233yd(Z)を含む反応生成物を、蒸留塔に供給して蒸留し、塔頂から1233yd(E)を主成分とする留出物を、塔底から1233yd(Z)を含む缶出物をそれぞれ得ることができる。
例えば、目的物が1233yd(Z)である場合、蒸留によって得られた留出物に含まれる1233yd(Z)/1233yd(E)は、平衡比よりも小さくなる。そのため、この留出物を原料組成物として用い、上記同様に異性化反応させることで、留出物中の1233yd(E)を1233yd(Z)へ変換させることが可能である。
一方、目的物が1233yd(E)である場合、蒸留によって得られた缶出物に含まれる1233yd(Z)/1233yd(E)は、平衡比よりも大きくなる。そのため、缶出物を、原料組成物として用い、上記同様に異性化反応させることで、留出物中の1233yd(Z)を1233yd(E)へ変換させることが可能である。
このように、異性化反応と蒸留を繰り返し行うことで、効率的に目的物を製造できる。
以上、本実施形態の製造方法によれば、原料組成物を所定の異性化条件での異性化反応に供することで、工業的に有利かつ効率的な方法で、1233yd(E)を異性化して、1233yd(Z)を製造する、または、1233yd(Z)を異性化して、1233yd(E)を製造することができる。
[分析条件]
以下の各種化合物の製造において、得られた反応組成物の組成分析はガスクロマトグラフ(GC)を用いた。カラムはDB-1301(長さ60m×内径250μm×厚み1μm、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
[1233yd(Z)の製造]
(実施例1)
まず、以下に示すようにして、金属触媒を活性化した。すなわち、-20℃に冷却された冷媒を循環させたジムロート冷却器を3つ口フラスコ(内容積50mL)に設置し、これに、100g(0.75モル)の三塩化アルミニウム(AlCl)を仕込み、0℃に冷却した後、230g(2.2モル)のジクロロフルオロメタン(CHFCl)を撹拌しながらゆっくり滴下した。
低沸点ガスの発生を伴いながらジクロロフルオロメタンの異性化が進行した。そして、異性化の進行とともに、金属触媒である三塩化アルミニウム(AlCl)と活性化処理剤であるジクロロフルオロメタンとの間のハロゲン交換反応が進行し、フッ素置換されたハロゲン化アルミニウムが生成した。反応を1時間継続した後に揮発成分を除去し、金属触媒を乾燥した。こうして、部分フッ素化された塩化アルミニウムを得た。
次に、0℃に冷却したジムロート冷却器が設置されたガラス反応器(内容積50mL)に、金属触媒として、上記反応で得られた部分フッ素化塩化アルミニウム1gを入れ、これに溶媒として四塩化炭素10gを加えた。次に、反応器の温度を20℃に設定し、1233ydのE体とZ体の混合物であり、Z体とE体のモル比(1233yd(Z)/1233yd(E))が0.01/99.99である原料組成物の10g(0.08モル)をゆっくりと加え撹拌しながら1時間反応を行った。実施例1で用いた原料組成物の組成(モル比)を表1に示す。
反応後の液をろ別して金属触媒を除去し、反応生成物の20gを液相として回収した。次いで、得られた反応生成物の液相を、ガスクロマトグラフを用いて分析し、反応生成物の組成を求めた。結果を反応条件とあわせて表1に示す。
Figure 0007070419000003
(実施例2)
原料組成物中の1233ydのE体とZ体の含有比を変更した以外は実施例1と同様の手順で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および結果を表2に示す。
Figure 0007070419000004
(実施例3、4)
まず、以下のように金属触媒を活性化した。すなわち、ペレット状活性アルミナ(直径3mm、高さ3mm、比表面積160m/g、日揮触媒化成社製、製品名N612N)を内径2.54cm、長さ100cmのインコネル(登録商標)600製反応管(反応器)に充填し、塩浴中に浸漬した。塩浴を250℃に加熱して、反応器内に、窒素/HCFC-22(CHClF)の2/1(モル比)の混合ガスを、10時間流通し金属触媒を活性化させた。
次に、塩浴の温度(反応温度)を実施例3では230℃、実施例4では280℃に設定した。また、HCFC-22の供給を停止し、実施例1と同様の原料組成物と窒素の混合ガスを接触時間(反応時間)20秒で反応器内に供給した。原料組成物を、表3に示す条件で、反応器内に流通させて、異性化反応させた。反応器出口のガス組成をガスクロマトグラフで分析することで反応生成物の組成を分析した。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表3に示す。
(実施例5)
金属触媒を使用せず、反応温度を400℃に変えた以外は、実施例3と同様の条件で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表3に示す。
Figure 0007070419000005
(実施例6)
原料組成物中の1233ydのE体とZ体の含有比を変更した以外は実施例3と同様の手順で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表4に示す。
Figure 0007070419000006
[1233yd(E)の製造]
(実施例7)
0℃に冷却したジムロート冷却器が設置されたガラス反応器(内容積50mL)に、金属触媒として、上記反応で得られた部分フッ素化塩化アルミニウム1gを入れ、これに溶媒として四塩化炭素10gを加えた。次に、反応器の温度を20℃に設定し、1233ydのE体とZ体の混合液であり、Z体とE体のモル比(1233yd(Z)/1233yd(E))が99.99/0.01である原料組成物10g(0.08モル)をゆっくりと加え、撹拌しながら1時間反応を行った。原料組成物の組成を表5に示す。
次に、反応後の液をろ別して金属触媒を除去し、反応生成物20gを液相として回収した。次いで、得られた液相を、ガスクロマトグラフを用いて分析し、反応生成物の組成を求めた。分析結果を反応条件とあわせて表5に示す。
Figure 0007070419000007
(実施例8)
原料組成物の組成を変更した以外は実施例7と同様の手順で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表6に示す。
Figure 0007070419000008
(実施例9、10)
実施例3と同様に、金属触媒として、上記で得られた活性化アルミナを用いた。また、実施例3と同様にして、反応温度を実施例9では230℃、実施例10では280℃に設定し、表7に示す組成の原料組成物と窒素の混合ガスを反応器に供給した。原料組成物を、表7に示す条件で、反応器内に流通させて、異性化反応させた。反応器出口のガス組成をガスクロマトグラフで分析することで反応生成物の組成を分析した。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表7に示す。
(実施例11)
金属触媒を使用せず、反応温度を400℃に変化させた他は実施例9と同様の手順で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表7に示す。
Figure 0007070419000009
(実施例12)
原料組成物の組成を変更した以外は実施例9と同様の手順で、異性化反応を行った。原料組成物の組成、反応条件および分析結果を表8に示す。
Figure 0007070419000010
表1~8より、原料組成物を所定の異性化条件での異性化反応に供することで、異性化反応させて、1233yd(Z)または1233yd(E)を製造できることが分かる。

Claims (3)

  1. 1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を所定の異性化反応温度における平衡比(モル比)とは異なるモル比で含有する原料組成物中の前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)を、気相で前記異性化反応温度にて金属触媒と接触させることで異性化反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)を製造する方法であり、
    前記金属触媒が、金属酸化物および金属ハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
    前記金属酸化物が、アルミナおよびクロミアから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記金属ハロゲン化物が、金属塩化物の一部がフッ素化された化合物であり、
    前記異性化反応温度が、100℃~260℃であることを特徴とする1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
  2. 前記原料組成物において、前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)と前記1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E)のモル比(1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)/1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(E))が、前記異性化反応温度における平衡比(モル比)より小さい、請求項1に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
  3. 前記異性化反応は、不活性ガスの存在下で行う、請求項1または2に記載の1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(Z)の製造方法。
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