以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<マレイミド化合物>
本発明に係るマレイミド化合物は上記式(1)で表される構造を有する。
上述のマレイミド化合物は低融点である。当該マレイミド化合物は、溶融状態で型に流し込み、硬化させること等ができるため、FRP、パワー半導体封止材料の先端材料用途等にも好適に適用できる。なお、本発明に係るマレイミド化合物が低融点である理由は、必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムによるものと推察される。すなわち、マレイミド化合物は本来、マレイミド基が平面構造を有していることから、マレイミド化合物がπ-πスタッキングにより分子間で重なりやすい。その結果、マレイミド化合物は融点が高くなる傾向がある。これに対して、本発明に係るマレイミド化合物は、芳香環にアルケニル基、アルキニル基の置換基を有する。その結果、π-πスタッキングが防止または抑制され、分子間の重なりの程度が相対的に小さくなることで、マレイミド化合物が低融点になるものと考えられる。
また、一実施形態において、本発明に係るマレイミド化合物は溶融粘度が低い。その結果、流動しやすいことから、成形時に流し込みやすく、また、均一な硬化物が得られうる。このような効果が得られる理由も明らかではないが、上記と同様に、芳香環が有するアルケニル基、アルキニル基の置換基によるπ-πスタッキングの防止または抑制によるものと推察される。
さらに、一実施形態において、本発明に係るマレイミド化合物の硬化物は耐熱性に優れる。より詳細には、従来のマレイミド化合物は耐熱性が高いことが知られているが、本発明に係るマレイミド化合物はよりいっそう高い耐熱性を有しうる。その結果、FRPやパワー半導体封止剤等の先端材料用途に好適に適用することができる。このような効果が得られる理由としては、例えば、以下のメカニズムが考えられる。すなわち、本発明に係るマレイミド化合物は芳香環にアルケニル基、アルキニル基の置換基を有する。このため、硬化時にはマレイミド基に基づく架橋だけでなく、アルケニル基、アルキニル基による架橋が生じることから、優れた耐熱性が得られうる。
また、一実施形態において、本発明に係るマレイミド化合物の硬化物は誘電正接が低い。このため、電子部材、回路基板材料、絶縁フィルム、半導体封止材等に特に好適に適用することができる。このような効果が得られる理由としては、例えば、以下のメカニズムが考えられる。すなわち、一般に、誘電正接は、極性官能基の濃度および分子の剛直性に影響を受ける。マレイミド化合物が有するマレイミド基は剛直性が高く、またマレイミド基が重合して硬化した後もスクシンイミド構造を形成し、剛直性が維持され強固な架橋形態をとることから、一般には誘電正接が低い傾向がある。一方で、マレイミド化合物が部分構造として有するイミド基は、分極が生じうるため極性官能基ということができ、誘電正接が高くなる方向に寄与する。本発明に係るマレイミド化合物によれば、芳香環にアルケニル基、アルキニル基の置換基を有することから、マレイミド化合物全体としての極性官能基の濃度は低下する。そうすると、本発明に係るマレイミド化合物はいっそう誘電正接が低いものとなりうる。なお、アルケニル基、アルキニル基の置換基は芳香環に直接結合していることから、硬化時、高温環境下、高湿環境下等においてクライゼン転位が進行しない、またはほとんど進行しないため、硬化時、極性基の生成による誘電正接の上昇が生じにくい傾向がある。
上記式(1)において、R1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数2~10のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~10のアルキニル基を表す。
炭素原子数2~10のアルケニル基としては、特に制限されないが、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、メタリル基(メタアリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3-ブタジエニル基、1,4-ブタジエニル基、2,4-ブタジエニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ヘキサ-1,3,5-トリエニル基等が挙げられる。
炭素原子数2~10のアルキニル基としては、特に制限されないが、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1,3-ブタジイニル基等が挙げられる。
炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数2~10のアルキニル基は置換基を有していてもよい。当該「R1の置換基」としては、特に制限されないが、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上述のR1の置換基は、単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
これらのうち、R1としては、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数2~6のアルケニル基であることがより好ましく、イソプロペニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、シクロヘキセニル基、2,4-ブタジエニル基であることがさらに好ましく、イソプロペニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基であることが特に好ましく、アリル基であることが最も好ましい。
R2は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素原子数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基を表す。
炭素原子数1~10のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、メチルオキシメチル基、エチルオキシメチル基、プロピルオキシメチル基、ブチルオキシメチル基、メチルオキシエチル基、エチルオキシエチル基、プロピルオキシエチル基、ブチルオキシエチル基、メチルオキシプロピル基、エチルオキシプロピル基、プロピルオキシプロピル基、ブチルオキシプロピル基、メチルオキシブチル基、エチルオキシブチル基、プロピルオキシブチル基、ブチルオキシブチル基等が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基は置換基を有していてもよい。当該「R2の置換基」としては、特に制限されないが、ハロゲン原子等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、特に制限されないが、R1の置換基として上述したものが用いられうる。
これらのうち、R2としては、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
Aは置換または非置換の芳香族含有基を表す。なお、本明細書において、「芳香族含有基」は、芳香環を少なくとも1つ有する基を意味する。
芳香族含有基としては、特に制限されないが、ベンゼン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピロール、フラン、ピラン、ピラゾロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピロール等の1つの芳香環を有する基;ナフタレン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、連結基により2つ芳香環が結合する基等の2つの芳香環を有する基;アントラセン、ベンゾ[a]フルオレン、アクリジン、連結基により3つ芳香環が結合する基等の3つの芳香環を有する基;ベンズ[a]アントラセン、ピレン、クリセン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、連結基により4つ芳香環が結合する基等の4つの芳香環を有する基等が挙げられる。
この際、前記連結基としては、単結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、カーバメート基、カーボネート基、置換または非置換の炭素原子数1~10のアルキレン等が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルキレンとしては、特に制限されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン等が挙げられる。この際、炭素原子数1~10のアルキレンは、2つの芳香環の間で環を形成してもよい。
炭素原子数1~10のアルキレンは置換基を有していてもよい。当該「連結基の置換基」としては、特に制限されないが、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、特に制限されないが、R1の置換基として上述したものが用いられうる。
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、R2として上述したものが用いられうる。
これらの連結基は上述の置換基を単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
連結基により2つ芳香環が結合する基としては、例えば、ビフェニル、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、ビチオフェン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホン、フルオレン、ジフェニルメタン、1,2-ジフェニルエタン、1,1-ジフェニルエタン、1,3-ジフェニルプロパン等が挙げられる。
また、連結基により3つ芳香環が結合する基としては、ターフェニル、1-フェニルナフタレン、2-フェニルナフタレン、ジフェニルチオフェン、トリフェニルメタン、1,1,1-トリフェニルエタン、1,1,2-トリフェニルエタン、1,1,3-トリフェニルプロパン等が挙げられる。
なお、芳香族含有基は置換基を有していてもよい。換言すれば、芳香環の水素原子は、置換基に置換されていてもよい。「芳香族含有基の置換基」としては、特に制限されないが、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、上述のR2で記載されたものと同様のものが挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、R1の置換基として上述したものが挙げられる。
これらの芳香族含有基の置換基は単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
好ましい一実施形態において、Aは、下記式(2-1)~(2-13)で表される。
上記式(2-1)~(2-13)中、Xは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、カーバメート基、カーボネート基、置換または非置換の炭素原子数1~10のアルキレンを表す。
なお、Xの具体例は、上述の連結基と同様である。
Yは、窒素原子、CR3を表す。この際、前記R3は、水素原子、置換または非置換の炭素原子数1~10のアルキル基である。
なお、炭素原子数1~10のアルキル基としては、特に制限されないが、上述のR2で記載されたものと同様のものが挙げられる。
この際、前記炭素原子数1~10のアルキル基は、置換基を有していてもよい。当該「R3の置換基」としては、特に制限されないが、ハロゲン原子等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、特に制限されないが、R1の置換基として上述したものが用いられうる。
上記式(2-1)~(2-13)で記載される芳香環を構成する水素原子は置換基で置換されていてもよい。この際の置換基としては、上述の「芳香族含有基の置換基」と同一である。
なお、上述のR1およびマレイミド基は、それぞれ芳香環に直接結合することとなる。すなわち、芳香族含有基の芳香環を構成する水素原子が、nの数だけR1に置換され、mの数だけマレイミド基に置換される構造を有する。
一実施形態において、Aは、2または3つの芳香環を有することが好ましく、2つの芳香環を有することがより好ましく、式(2-1)、(2-2)で表される構造を有することがさらに好ましく、式(2-2)で表される構造を有することが特に好ましい。芳香環が2または3つ、好ましくは2つであると、芳香環がこれよりも多い場合と比べて、マレイミド化合物のπ-πスタッキングによる分子間の重なりが生じにくくなり、マレイミド化合物の溶融粘度が低下しうることから好ましい。
また、一実施形態において、Aは、式(2-1)~(2-7)、(2-13)であることが好ましく、式(2-1)~(2-7)であることがより好ましく、式(2-1)~(2-4)、(2-6)、(2-7)であることがさらに好ましく、(2-2)であることが特に好ましい。芳香環が高い平面性を有していると、得られる硬化物においてπ-πスタッキングによる分子間の重なりが生じやすくなることで硬化時に分子が規則正しく配列されることにより、マレイミド化合物の硬化物の耐熱性が高くなり、特に熱膨張係数が小さくなりうることから好ましい。
さらに、一実施形態において、Aは、式(2-1)~(2-7)、(2-13)であることが好ましく、式(2-1)~(2-7)であることがより好ましく、式(2-1)~(2-4)、(2-6)、(2-7)であることがさらに好ましく、(2-2)であることが特に好ましい。3以上の芳香環に結合する炭素原子、窒素原子を有するものと対比すると、ラジカルにより分解される化合物の安定性が相対的に低くなるため、分解が生じにくくなり、マレイミド化合物の硬化物の耐熱性が高くなる、特に耐熱分解温度が高くなりうることから好ましい。
また、一実施形態において、Aは、3つ以上の芳香環を有することが好ましく、3~5つの芳香環を有することがより好ましく、式(2-3)~(2-13)であることがさらに好ましく、(2-8)であることが特に好ましい。Aが芳香環を多数有することで、マレイミド化合物が部分構造として有するイミド基の分子全体としてのイミド基の極性官能基の濃度が低くなり、マレイミド化合物の硬化物の誘電正接が低くなりうることから好ましい。
好ましい一実施形態によれば、溶融粘度、耐熱性、誘電正接のバランスが優れることから、Aは、式(2-1)~(2-4)、(2-6)~(2-8)であることが好ましく、(2-2)、(2-8)、(2-9)であることがより好ましく、(2-2)、(2-8)であることがさらに好ましい。
また、nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の整数である。
前記nは、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~2であり、さらに好ましくは2である。
また、前記mは、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~2であり、さらに好ましくは2である。
なお、mとnとの比率(m:n)は、1:5~5:1であることが好ましく、1:2~2:1であることがより好ましく、1:1であることがさらに好ましい。mとnとの比率が上記範囲にあると、耐熱性および低融点が両立しうることから好ましい。
本発明に係るマレイミド化合物の具体的な構造としては、下記式(3-1)~(3-49)で表される化合物が挙げられる。
上述のうち、マレイミド化合物の溶融粘度に優れる観点から、式(3-1)~(3-37)であることが好ましく、式(3-5)~(3-19)、(3-24)、(3-37)であることがより好ましく、式(3-9)~(3-19)であることがさらに好ましい。
また、マレイミド化合物の硬化物の熱膨張係数が小さくなる観点から、式(3-4)~(3-49)であることが好ましく、式(3-4)~(3-25)、式(3-49)であることがより好ましい。
さらに、マレイミド化合物の硬化物の耐熱分解温度が高くなる観点から、式(3-1)~(3-25)、式(3-49)であることが好ましく、式(3-1)~(3-5)、式(3-9)~(3-25)、式(3-49)であることがより好ましい。
また、マレイミド化合物の硬化物の誘電正接が低くなる観点から、式(3-4)~(3-49)であることが好ましく、式(3-20)~(3-49)であることがより好ましい。
そして、溶融粘度、耐熱性、誘電正接のバランスに優れる観点から、式(3-9)~(3-19)、式(3-27)~(3-44)であることが好ましく、式(3-9)~(3-19)、式(3-27)~(3-37)であることがより好ましく、式(3-9)~(3-19)であることがさらに好ましい。
上述のマレイミド化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<組成物>
本発明の一形態によれば、上述のマレイミド化合物を含む、組成物が提供される。
上述のマレイミド化合物は、低融点であることから、組成物についても溶融状態で型に流し込み、硬化させる等をすることができる。このため、FRP、パワー半導体封止材料の先端材料用途等にも好適に適用できる。
また、一実施形態において、上述のマレイミド化合物は、溶融粘度が低い。このため、組成物が流動しやすいことから、成形時に流し込みやすく、また、均一な硬化物が得られうる。
さらに、一実施形態において、上述のマレイミド化合物は、硬化物が耐熱性に優れる。このため、これを含む組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。
また、一実施形態において、上述のマレイミド化合物の硬化物は誘電正接が低い。このため、これを含む組成物を硬化して得られる硬化物は、電子部材、回路基板材料、絶縁フィルム、半導体封止材等に好適に使用可能である。
一実施形態において、組成物は上述のマレイミド化合物を含む。その他、必要に応じて、反応性化合物、フィラー、繊維質基質、分散媒、樹脂、硬化剤、硬化促進剤、その他の配合物等をさらに含んでいてもよい。
[反応性化合物]
本発明の組成物は、本発明のマレイミド化合物以外の反応性化合物を含んでいてもよい。当該反応性化合物を含むことで、反応性や耐熱性、ハンドリング性など様々な特徴を組成物に付与することが可能である。
ここでいう反応性化合物とは、反応性基を有する化合物であり、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもかまわない。
反応性基としては、本発明のマレイミド化合物と反応しない官能基でも、反応する官能基でもよいが、耐熱性をより向上させるためには、本発明のマレイミド化合物と反応する官能基であることが好ましい。
本発明のマレイミド化合物と反応する官能基としては、例えばエポキシ基、シアナト基、マレイミド基、フェノール性水酸基、オキサジン環、アミノ基、炭素―炭素間二重結合を有する基が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が挙げられる。
シアナト基を有する化合物としては、シアネートエステル樹脂が挙げられる。
マレイミド基を有する化合物としては、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂が挙げられる。
オキサジン環を有する化合物としては、フェノール化合物、芳香族アミノ化合物をホルムアルデヒドとを反応させることで得られるベンゾオキサジンが挙げられる。これらのフェノール化合物、芳香族アミノ化合物は構造中に反応性官能基を有していてもよい。
アミノ基を有する化合物としてはDDM(4,4’-ジアミノジフェニルメタン)やDDE(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-{ビス4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族アミノ化合物が挙げられる。
炭素―炭素間二重結合を有する基を有する化合物としては、他のマレイミド化合物、ビニル系化合物、(メタ)アリル系化合物等があげられる。なお、本明細書において、「他のマレイミド化合物」と記載するときは、本発明に係るマレイミド化合物以外のマレイミド化合物であることを意味する。
上記の反応性化合物は、反応性基を一種類だけ有していても、複数種有していてもよく、官能基数も1つであっても複数であってもかまわない。また、複数種を同時に使用してもかまわない。
好ましい反応性化合物としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ビニル系化合物、芳香族アミノ化合物などが挙げられる。
その中でも特に好ましくは、他のマレイミド化合物、シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂、芳香族アミノ化合物である。
他のマレイミド化合物は本発明のマレイミド化合物と、マレイミド基同士の自己付加反応や置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基と、マレイミド基と、のエン反応により、架橋密度が向上し、その結果、耐熱性、特にガラス転移温度が向上する。
通常、マレイミド化合物を用い、均一な硬化物を得る為には、高温かつ長時間の硬化条件が必要となるため、多くの場合、反応促進のために過酸化物系触媒が併用される。しかし、本発明のマレイミド化合物は触媒を使用しない場合においても、硬化反応が進行し、均一な硬化物を得ることができる。過酸化物系触媒を使用することで、組成物の粘度上昇や、ポットライフの低下、また、硬化物中に微量の過酸化物が残存することによる物性低下等の課題があるが、本発明のマレイミド化合物は過酸化物系硬化剤を使用しなくてもよいことから、それら課題を解決することができる。
シアネートエステル樹脂と本発明のマレイミド化合物との硬化物は優れた誘電特性を示す。
エポキシ樹脂は本発明のマレイミド化合物と併用することで硬化物に靭性や金属密着性を付与できる。
芳香族アミノ化合物はアミノ基とマレイミド基とのマイケル付加反応により架橋密度が向上し耐熱分解温度、ガラス転移温度が向上する。
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有していれば特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
フェノキシ樹脂は、ジフェノールと、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンに基づく高分子量熱可塑性ポリエーテル樹脂のことであり、重量平均分子量が、20,000~100,000であることが好ましい。フェノキシ樹脂の構造としては、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。
シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
他のマレイミド化合物としては、例えば、下記構造式(i)~(iii)の何れかで表される各種の化合物等が挙げられる。
式(i)中Rはs価の有機基であり、αおよびβはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかであり、sは1以上の整数である。
式(ii)中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。
式(iii)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。
これらの他のマレイミド化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
オキサジン化合物としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F-a型ベンゾオキサジン樹脂)や4,4’-ジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P-d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ビニル系化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルピロリドン等の3級アミド基含有モノマー類等が挙げられる。
(メタ)アリル系化合物としては、酢酸アリル、塩化アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシメタノール、アリルオキシエタノール等のアリルオキシアルコール;、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテルなどのアリル基を2つ含有する化合物;トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルなどのアリル基を3つ以上含有する化合物;等、またはこれら化合物のメタアリル体が挙げられる。
[フィラー]
本発明の組成物は、フィラーをさらに含有していてもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ダイヤモンド等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラーおよび/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、およびそれらの複合物および酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD等が挙げられる。
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、分散体中に無機微粒子が好適に分散され、200nm以下であると、硬化物の強度の低下が防止できうる。
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP-25、テイカ(株)製ATM-100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD-701等が挙げられる。
[繊維質基質]
本発明の組成物は、繊維質基質をさらに含有していてもよい。本発明の繊維質基質は、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、および金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、一種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
上述の繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもよいし、織布状であっても、不織布状であってもよい。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもよい。
[分散媒]
本発明の組成物は、組成物の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であれば特に制限されず、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられる。これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
[樹脂]
また、本発明の組成物は、本発明のマレイミド化合物以外の樹脂を有していてもよい。樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば公知慣用の樹脂を配合すればよく、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、本発明のマレイミド化合物以外のマレイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂をいう。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
また、この他、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステルやリン酸エステル-カーボネート共重合体等を含有してもよい。これらは1種または2種以上を併用して用いることができる。
[硬化剤]
本発明の組成物は、硬化剤をさらに含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボキシル基含有硬化剤、チオール系硬化剤などが挙げられる。
アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核およびアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
[硬化促進剤]
本発明の組成物は、硬化促進剤をさらに含有していてもよい。当該硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、上述の硬化剤と併用してもよい。
硬化促進剤としては、硬化性樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用できる。具体的な効果促進剤としては、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)が好ましい。
[その他の配合物]
本発明の組成物は、その他の配合物を有していてもかまわない。当該その他の配合物としては、例えば、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
これらのその他の配合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<マレイミド硬化物>
本発明の一実施形態によれば、上述のマレイミド化合物を硬化してなる硬化物(マレイミド硬化物)が提供される。上述のマレイミド化合物は、単独重合が可能であり、マレイミド硬化物を得ることができる。
なお、前記硬化物には、必要に応じて、上述の硬化剤、硬化促進剤等を含んでいてもよい。
<硬化物>
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。また、誘電正接が低いことから、回路基板材料、絶縁フィルム、半導体封止材にも好適に使用可能である。
硬化物の成形方法は特に限定は無く、組成物単独で成形してもよいし、基材と積層することで積層体としてもかまわない。
本発明の組成物を硬化させる場合には、熱硬化を行えばよい。熱硬化する際、公知慣用の硬化触媒を用いてもよいが、本発明の組成物は、マレイミド基と、アルケニル基、アルキニル基と、の反応により硬化触媒を用いなくても硬化することが可能である。
熱硬化を行う場合、1回の加熱で硬化させてもよいし、多段階の加熱工程を経て硬化させてもかまわない。
硬化触媒を用いる場合には、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;p-トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機塩基類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の各種の塩基性窒素原子を含有する化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫又はステアリン酸錫など錫カルボン酸塩、;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトン過酸化物、t-ブチルパーベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などの有機過酸化物等を使用することができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
また、本発明のマレイミド化合物は、炭素―炭素間二重結合を有することから、活性エネルギー線硬化を併用することもできる。活性エネルギー線硬化を行う場合、光重合開始剤を組成物に配合すればよい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。前記アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。前記ベンジルケタール類としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。前記ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化と活性エネルギー線硬化を併用して硬化させる場合、加熱と活性エネルギー線照射を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。例えば、活性エネルギー線照射を行った後で熱硬化を行ってもよいし、熱硬化の後に活性エネルギー線硬化を行ってもよい。また、それぞれの硬化方法を2回以上組み合わせて行ってもよく、用途に合わせて適宜硬化方法を選択すればよい。
<積層体>
本発明の硬化物は基材と積層することで積層体とすることができる。
積層体の基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、積層体の形状としても、平板、シート状、あるいは三次元構造を有していても立体状であってもかまわない。全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明の硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層してもかまわない。
回路基板や半導体パッケージ基板といった用途の場合、金属箔を積層することが好ましく、金属箔としては銅箔、アルミ箔、金箔、銀箔などが挙げられ、加工性が良好なことから銅箔を用いることが好ましい。
本発明の積層体において、硬化物層は、基材に対し直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させてもかまわない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
成形された組成物を積層する場合、未硬化または半硬化された組成物層を積層してから硬化させてもよいし、組成物を完全硬化した硬化物層を基材に対し積層してもよい。
また、本発明の硬化物に対して、基材となりうる前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、基材となりうる前駆体または本発明の組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。基材となりうる前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
<繊維強化樹脂>
本発明の組成物が繊維質基質を有し、該繊維質基質が強化繊維の場合、繊維質基質を含有する組成物は繊維強化樹脂として用いることができる。
組成物に対し繊維質基質を含有させる方法は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定はなく、繊維質基質と組成物とを、混練、塗布、含浸、注入、圧着、等の方法で複合化する方法が挙げられる。この際、繊維の形態および繊維強化樹脂の用途によって適時選択することができる。
本発明の繊維強化樹脂を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて硬化物を製造する事ができる。特に、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂の主成分とする場合には、成形材料をプリプレグ化してプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられ、この他にもRTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vaccum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形等が挙げられる。
<プリプレグ>
本発明の繊維強化樹脂は、未硬化あるいは半硬化のプリプレグと呼ばれる状態を形成することができる。プリプレグの状態で製品を流通させた後、最終硬化をおこなって硬化物を形成してもよい。積層体を形成する場合は、プリプレグを形成した後、その他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成できるため、好ましい。
この時用いる組成物と繊維質基質の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調整することが好ましい。
<耐熱材料および電子材料>
本発明のマレイミド化合物は、その硬化物が低線膨張であって耐熱分解性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、各種溶剤への溶解性を示すことから塗料化が可能であり、従来型の300℃以上の高温焼き付けを要する耐熱塗料と比較し、低温での硬化が可能であることから、耐熱塗料用樹脂としても好適に使用可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
以下、代表的な製品について例を挙げて説明する。
1.半導体封止材料
本発明の組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記組成物、硬化促進剤、および無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
2.半導体装置
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で2~10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
3.プリント回路基板
本発明の組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
4.ビルドアップ基板
本発明の組成物からビルドアップ基板を得る方法は、例えば以下の工程が挙げられる。まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程(工程1)。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程(工程2)。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層および所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程(工程3)。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
5.ビルドアップフィルム
本発明の組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、基材である支持フィルム(Y)の表面に、上記組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における上記組成物の層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルムおよび保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルムおよび保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する硬化性樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
上記のようにして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルムおよび回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm2(9.8×104~107.9×104N/m2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
6.導電ペースト
本発明の組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例の記載に制限されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
<マレイミド化合物の合成>
[実施例1]
温度系、冷却管、撹拌機を取り付けた200mLのフラスコに、2-アリルアニリン塩酸塩76.17g(0.45mol)を仕込み、撹拌しながら100℃まで加熱した。パラホルムアルデヒド6.76g(0.23mol)を添加し、100℃で5時間反応させた後、70℃で空冷した。反応液を20%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、酢酸エチルで生成物を抽出した。イオン交換水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた後、減圧濃縮して下記式で表されるジアミノ化合物47.86g(収率:76%)を合成した。
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、撹拌機を取り付けた2Lフラスコに無水マレイン酸37.07g(0.38mol)、トルエン0.7Lを仕込み、室温で撹拌した。次いで、別途調製した上記で得たジアミノ化合物47.86g(0.17mol)およびジメチルホルムアミド(DMF)80mLの混合溶液を、前記2Lフラスコに1時間かけて滴下した。
滴下終了後、室温でさらに2時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物3.92gを加え、反応液を加熱し、還流下で共沸する水およびトルエンを冷却、分離した後、トルエンのみを系内に戻して脱水反応を8時間行った。室温まで空冷後、減圧濃縮して得られる褐色の溶液を酢酸エチル320mLに溶解させた。次いで、イオン交換水120mLで3回洗浄し、2%炭酸水素ナトリウム水溶液120mLで3回洗浄した。硫酸ナトリウムを添加して乾燥した後、減圧濃縮し、得られた反応物を80℃で4時間真空乾燥を行うことで、下記式で表されるマレイミド化合物を製造した。
なお、得られたマレイミド化合物を電界脱離質量分析法(FD-MS)にて分子量の測定を行った。具体的には、装置にJMS-T100GC AccuTOF(日本電子株式会社製)を用いた。測定範囲(m/z)は50.00~2000.00であり、変化率は25.6mA/minであり、最終電流値は40mAであり、カソード電圧は-10kVである。その結果、FD-MSスペクトルにてM+=438のピークが確認された。
[実施例2]
パラホルムアルデヒド6.76g(0.23mol)に代えて、ベンズアルデヒド23.88g(0.23mol)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、下記式で表されるジアミノ化合物54.08g(収率:68%)を合成した。
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、撹拌機を取り付けた2Lフラスコに無水マレイン酸32.95g(0.34mol)、トルエン0.7Lを仕込み、室温で撹拌した。次いで、別途調製した上記で得たジアミノ化合物54.08g(0.15mol)およびジメチルホルムアミド(DMF)70mLの混合溶液を、前記2Lフラスコに1時間かけて滴下した。
滴下終了後、室温でさらに2時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物3.49gを加え、反応液を加熱し、還流下で共沸する水およびトルエンを冷却、分離した後、トルエンのみを系内に戻して脱水反応を8時間行った。室温まで空冷後、減圧濃縮して得られる褐色の溶液を酢酸エチル285mLに溶解させた。次いで、イオン交換水100mLで3回洗浄し、2%炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで3回洗浄した。硫酸ナトリウムを添加して乾燥した後、減圧濃縮し、得られた反応物を80℃で4時間真空乾燥を行うことで、下記式で表されるマレイミド化合物を製造した。
実施例1と同様の方法で分子量の測定を行ったところ、FD-MSスペクトルにてM+=514のピークが確認された。
[実施例3]
パラホルムアルデヒド6.76g(0.23mol)に代えて、2-ナフトアルデヒド35.88g(0.23mol)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、下記式で表されるジアミノ化合物60.40g(収率:65%)を合成した。
ジアミノ化合物として上記で合成したもの60.40g(0.15mol)を用い、添加するp-トルエンスルホン酸一水和物の添加量を3.51gに変更したことを除いては、実施例2と同様の方法で、下記式で表されるマレイミド化合物を製造した。
実施例1と同様の方法で分子量の測定を行ったところ、FD-MSスペクトルにてM+=564のピークが確認された。
[比較例1]
下記式で表される市販のマレイミド化合物BMI-1000(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業株式会社製)を用いた。
<マレイミド化合物の評価>
実施例1~3および比較例1のマレイミド化合物を用いて各種性能の評価を行った。
[溶融粘度]
150℃における溶融粘度を測定した。この際、溶融粘度の測定には、コーンプレート型度測定機を用いた。得られた結果を下記表1に示す。
表1の結果から、実施例1~3のマレイミド化合物は150℃で溶融し、溶融粘度も低いことが分かる。
<硬化物の評価>
実施例1および2、並びに比較例1のマレイミド化合物の硬化物を用いて各種性能の評価を行った。
[硬化物の製造]
マレイミド化合物10gを、成形後の板厚が2.4mmとなるように注型し、170℃で2時間、次いで200℃で2時間、更に250℃で2時間加熱することでマレイミド化合物の硬化物を製造した。
[ガラス転移温度]
製造した硬化物(厚さ:2.4mm)を、幅5mm、長さ54mmのサイズに切りだし、これを試験片としてガラス転移温度を測定した。
なお、測定は、粘弾性測定装置としてDMS7100(DMA、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、測定条件は、変形モードを両手持ち上げ、測定モードを正弦波振動、周波数を1Hz、昇温温度を3℃/分とした。そして、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
得られた結果を下記表2に示す。
[熱膨張性]
製造した硬化物(厚さ:2.4mm)を、幅5mm、長さ5mmのサイズに切りだし、これを試験片として熱膨張性を測定した。
具体的には、熱分解性装置としてTMA/SS7100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いた。測定条件は、昇温速度を3℃/分とした。試験片の25~250℃の範囲の膨張率を熱膨張性として評価した。
得られた結果を下記表2に示す。
[耐熱分解温度(5%重量減少温度(Td5))]
製造した硬化物(厚さ:2.4mm)を細かく裁断し、これを試験片として耐熱分解温度を評価した。
具体的には、重量分析装置としてTG/TA6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いた。測定条件は、昇温温度を5℃/分、測定環境を窒素雰囲気下とした。試験片の重量が5%減少する5%重量減少温度(Td5)を耐熱分解温度として評価した。
得られた結果を下記表2に示す。
[誘電正接]
マレイミド化合物10gを、成形後の板厚が2.0mmとなるように注型し、170℃で2時間、次いで200℃で2時間、更に250℃で2時間加熱することで製造した硬化物を、幅1mm、長さ100mmのサイズに切りだし、これを試験片として誘電正接を測定した。
具体的には、装置としてネットワークアナライザE8362C(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。測定は、JIS C 6481に準拠して空洞共振法にて行った。より詳細には、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片を1GHzで誘電正接を測定した。
得られた結果を下記表2に示す。
表2に結果から実施例1および2は、耐熱性に優れることが分かる。また、誘電正接も低いことが分かる。