<多機能樹脂体の製造システム>
以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。例えば、図1は本実施形態の多機能樹脂体の製造方法の流れを示したフローチャートである。例えば、図2は本実施形態の多機能樹脂体の製造方法に用いる製造システムを示した概略図である。例えば、本実施形態において、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体に対して、気相転写染色法を用いてさらに、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を付加し、多機能樹脂体を製造する。例えば、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体としては、特定の波長域の光の透過率が所定の閾値以下となるような特徴的な機能を有するものであってもよい。なお、以下では、樹脂体として、樹脂体の1つであるレンズを例示して説明を行う。すなわち、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能レンズ8を例示して説明を行う。
もちろん、以下で例示する技術は、機能レンズ8以外の機能樹脂体(例えば、ゴーグル、携帯電話の機能カバー、ライト用の機能カバー、機能アクセサリー、機能玩具、機能フィルム(例えば、厚みが400μm以下等)、機能板材(例えば、厚みが400μm以上等)等のいずれかの機能成形体等)に対して、気相転写染色法を用いて、さらに機能を付加して、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体の製造する場合にも適用できる。また、以下で例示する機能付加用基体1は、気相転写染色以外の転写染色の工程において使用することも可能である。
なお、本実施形態によると、例えば、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(CR-39))、ポリウレタン系樹脂(トライベックス)、アリル系樹脂(例えば、アリルジグリコールカーボネート及びその共重合体、ジアリルフタレート及びその共重合体)、フマル酸系樹脂(例えば、ベンジルフマレート共重合体)、スチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート系樹脂、繊維系樹脂(例えば、セルロースプロピオネート)、チオウレタン系またはチオエポキシ等の高屈折材料、ナイロン系樹脂(ポリアミド系樹脂)、等の少なくともいずれかを材質(材料)とした機能樹脂体にさらに機能を付加することもできる。なお、例えば、機能樹脂体には、機能性染料が定着しやすい受容膜をコーティングする構成としてもよい。機能樹脂体に受容膜をコーティングすることによって、機能の付加を容易に実施することが可能となる。
例えば、本実施形態の多機能樹脂体の製造方法においては、第1工程、第2工程、第3工程、が実施される。例えば、本実施形態の多機能樹脂体の製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程の順序で行われる。例えば、第1工程は、第1の波長域の光の吸収を行う第1機能性染料であって、昇華性を有する第1機能性染料を、基体(例えば、基体2)に塗布することで、第1機能付加用基体(例えば、機能付加用基体1)を取得する工程である。例えば、第2工程は、第1工程によって取得された第1機能付加用基体と、第1の波長域とは異なる波長域である第2の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体(例えば、機能レンズ8)と、を対向させ、第1機能付加用基体を加熱することによって、第1機能付加用基体に塗布された第1機能性染料を昇華させ、第1機能性染料を機能樹脂体に付着させる工程である。例えば、第3工程は、第2工程によって、第1機能性染料が付着された機能樹脂体を加熱することによって、第1機能性染料を機能樹脂体に定着させる工程である。例えば、本実施形態において、上記の第1工程、第2工程、第3工程を備える多機能樹脂体の製造方法は、第1機能性染料を用いて機能樹脂体に第1の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することで、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体を取得する。これによって、例えば、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体を、多くの工程や複雑な作業が必要なく、容易に製造することができる。また、例えば、クラックが抑制された良好な多機能樹脂体を製造することができる。
また、例えば、多機能樹脂体における光の透過率のばらつきを抑制することができる。また、例えば、複数の波長域の組み合わせを変更することができるため、複数の波長域の光の透過率を低減することができる種々の多機能樹脂体を容易に製造することが可能となる。すなわち、例えば、特定の波長域の光の透過率を低減させる機能樹脂体に対して、他の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することができるため、複数の波長域の光の透過率を低減することができる種々の多機能樹脂体を容易に製造することが可能となる。
例えば、本実施形態において、多機能樹脂体の製造方法における各工程を実施するために製造システム100が用いられる。例えば、図2を参照して、本実施形態における製造システム100の概略構成について説明する。本実施形態の製造システム100は、染料塗布装置10、蒸着装置30、および染料定着装置(定着装置)50を備える。
例えば、第1工程において、染料塗布装置10が用いられる。例えば、染料塗布装置10は、機能樹脂体(本実施形態においては機能レンズ8)に蒸着される第1の波長域の光の吸収を行う第1機能性染料を、基体2に塗布させて、第1機能性染料が塗布された機能付加用基体1を取得するために用いられる。例えば、第2工程において、蒸着装置30が用いられる。例えば、蒸着装置30は、機能付加用基体1を第1の波長域とは異なる波長域である第2の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能レンズ8と対向させ、機能付加用基体1を加熱することによって、機能付加用基体1に塗布された昇華性染料を昇華させ、昇華性染料を機能レンズ8に付着させるために用いられる。例えば、第3工程において、定着装置50が用いられる。例えば、定着装置50は、第1機能性染料が付着された機能レンズ8を加熱することによって、第1機能性染料を機能レンズ8に定着させるために用いられる。
例えば、機能性染料は、少なくとも1つ以上の機能性染料が使用されるようにしてもよい。すなわち、例えば、本実施形態において、少なくとも1つ以上の特定の波長域の光の透過率を低減させる機能が機能樹脂体に対して付加されるようにしてもよい。この場合、例えば、1つの機能性染料が用いられるようにしてもよい。また、例えば、この場合、複数の機能性染料(例えば、2つの機能性染料、3つの機能性染料、4つの機能性染料、等)が用いられるようにしてもよい。
例えば、複数の機能性染料を用いる場合に、第1工程は、第1の波長域と第2の波長域と、は異なる波長域である第3の波長域の光の吸収を行う第3機能性染料をさらに基体に塗布した第1機能付加用基体を取得するようにしてもよい。この場合、例えば、第1機能付加用基体に塗布された第3機能性染料を昇華させ、第3機能性染料を機能樹脂体に付着させてもよい。また、この場合、例えば、第3工程は、第2工程によって、第3機能性染料が付着された機能樹脂体を加熱することによって、第3機能性染料を機能樹脂体に定着させるようにしてもよい。上記のようにして、例えば、本実施形態における多機能樹脂体の製造方法では、機能樹脂体に第1の波長域及び第3の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することで、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体を取得するようにしてもよい。これによって、機能樹脂体に、複数の波長域の光の透過率を低減させる機能を同時に付加することが可能となり、容易にスムーズに多機能樹脂体を製造することができる。
例えば、機能樹脂体に対して、複数の機能性染料を用いる場合に、第1工程は、複数の機能性染料を同時に基体に塗布する構成としてもよい。また、例えば、機能樹脂体に対して、複数の機能性染料を用いる場合に、第1工程は、複数の機能性染料を異なるタイミングで基体に塗布する構成としてもよい。
例えば、本実施形態において、波長域が異なる波長域とは、波長域間で少なくとも一部の波長域が異なる構成であってもよい。一例として、例えば、第1の波長域と第2波長域とが異なる波長域とは、少なくとも一部の波長域が異なる構成であってもよい。この場合、例えば、第1の波長域と第2波長域とが重畳しない構成であってもよい。また、この場合、例えば、第1の波長域と第2波長域とが重畳するが、一部は異なる構成であってもよい。なお、例えば、第1の波長域と第2の波長域との一部が重畳している構成の場合、第2の波長域に関する機能を有する機能樹脂体に第1波長域に関する機能が付加されることで、重畳部分の波長域について重畳部分の波長域の透過率の低減がより向上される構成であってもよい。
また、一例として、例えば、第1の波長域と第2の波長域と、は異なる波長域である第3の波長域とは、第1の波長域及び第2の波長域に対して少なくとも一部の波長域が異なる構成であってもよい。この場合、例えば、第1の波長域及び第2波長域に対して第3の波長域が重畳しない構成であってもよい。また、この場合、例えば、第1の波長域及び第2波長域に対して第3の波長域が重畳するが、一部は異なる構成であってもよい。なお、例えば、第1の波長域及び第2波長域に対して第3の波長域の一部が重畳している構成の場合、第2の波長域に関する機能を有する機能樹脂体に第1の波長域及び第3の波長域に関する機能が付加されることで、重畳部分の波長域について重畳部分の波長域の透過率の低減がより向上される構成であってもよい。
<多機能樹脂体の染色>
なお、例えば、本実施形態において、機能性染料の他に色を調整用の昇華性染料を用いることによって、多機能樹脂体を所望の色に染色するようにしてもよい。例えば、第1工程は、機能樹脂体を染色するための昇華性染料をさらに塗布した第1機能付加用基体を取得してもよい。この場合、例えば、第2工程は、第1機能付加用基体に塗布された昇華性染料を昇華させ、昇華性染料を機能樹脂体に付着させるようにしてもよい。また、この場合、例えば、第3工程は、第2工程によって、昇華性染料が付着された機能樹脂体を加熱することによって、昇華性染料を機能樹脂体に定着させるようにしてもよい。本実施形態における多機能樹脂体の製造方法では、上記工程によって、機能樹脂体に複数の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加するとともに前記機能樹脂体を染色するようにしてもよい。これによって、例えば、機能樹脂体に対して機能の付加できるとともに所望の色の多機能樹脂体を製造することができる。一例として、例えば、機能樹脂体に対して機能の付加する際に、機能性染料の影響によって所望していた色の多機能樹脂体が製造できなくなってしまった場合であっても、昇華性染料を用いて色の調整を行うことができるため、所望していた色の多機能樹脂体を得ることができる。
例えば、昇華性染料は、赤色、青色、及び黄色の少なくとも3つの染料が使用されるようにしてもよい。例えば、赤色、青色、及び黄色の少なくとも3つの染料に加えて、機能性染料が用いられるようにしてもよい。もちろん、昇華性染料としては、これら3色以外の色が使用されてもよい。例えば、混合色(緑、紫等)が用いられてもよい。
例えば、第1工程は、色情報取得工程と、設定工程と、を有してもよい。例えば、色情報取得工程は、作業者の所望する色情報(色データ)を取得するようにしてもよい。例えば、設定工程は、色情報取得工程によって取得した色情報に基づいて基体に塗布する昇華性染料(多機能樹脂体を染色するための昇華性染料)の量を設定する設定工程であって、機能性染料(例えば、第1機能性染料、第3機能性染料等)の量に応じた昇華性染料の量を設定するようにしてもよい。これによって、例えば、色情報を取得してそれに対応する昇華性染料の量を設定できるため、多機能樹脂体を容易に所望の色に染色することができる。また、例えば、樹脂体を所望の色に染色する際に機能性染料の量によって、樹脂体の色が変化してしまい、所望の色にならない場合があるが、機能性染料の量に対応する(応じた)昇華性染料の量が設定されることで、良好に所望する色にて多機能樹脂体を染色することができる。例えば、機能性染料の量が変更されていた場合であっても、樹脂体を良好に所望する色にて染色することができる。
例えば、色情報取得工程は、種々の装置で実施するようにしてもよい。この場合、例えば、色情報取得工程は、染料塗布装置(例えば、染料塗布装置10)が用いられてもよい。また、この場合、例えば、色情報取得工程は、染料塗布装置とは異なる装置で実施されるようにしてもよい。この場合、染料塗布装置は、異なる装置で設定された各染料の量を異なる装置から受信するようにしてもよい。
例えば、設定工程は、種々の装置で実施するようにしてもよい。この場合、例えば、設定工程は、染料塗布装置(例えば、染料塗布装置10)が用いられてもよい。また、この場合、例えば、設定工程は、染料塗布装置とは異なる装置で実施されるようにしてもよい。この場合、染料塗布装置は、異なる装置で設定された各染料の量を異なる装置から受信するようにしてもよい。
例えば、色情報としては、色調情報であってもよい。また、例えば、色情報としては、色調を示すための色相、彩度、明度の少なくともいずれかの情報であってもよい。また、例えば、色情報としては、色調を示すための各色の濃淡を示す濃度情報であってもよい。また、例えば、色情報は、濃度勾配情報(グラデーション情報)であってもよい。もちろん、色情報としては、上記情報に限定されない。例えば、色情報は、多機能樹脂体に染色される色調を設定するための情報であればよい。
<色情報取得工程>
例えば、色情報取得工程は、作業者が色情報を入力することによって、色情報が取得されるようにしてもよい。この場合、例えば、染料塗布装置(例えば、染料塗布装置10)において選択可能な色が提示され、作業者が所望する色(色調)を選択することで、色情報が入力されるようにしてもよい。また、この場合、例えば、作業者が色調に関するパラメータを入力することで、色情報が入力されるようにしてもよい。もちろん、作業者が色情報を入力する方法としては上記に限定されず、上記と異なる方法によって色情報が入力されるようにしてもよい。なお、色情報の入力は、染料塗布装置と異なる装置にて入力され、入力された色情報を染料塗布装置で受信することで、色情報を取得するようにしてもよい。
また、例えば、色情報取得工程は、染料塗布装置が色情報を受信することによって色情報を取得するようにしてもよい。例えば、色情報取得工程は、作業者が所望する色に染色された樹脂体の色調を測定する色情報測定手段によって測定された色情報を受信することによって色情報を取得するようにしてもよい。この場合、例えば、色情報測定手段は、染料塗布装置に設けられる構成であってもよいし、別の装置として設けられる構成であってもよい。
<設定工程>
例えば、設定工程は、色情報と、機能性染料(例えば、第1機能性染料、第3機能性染料等)の量と、昇華性染料(多機能樹脂体を染色するための昇華性染料)の量と、が対応付けされた情報である対応情報を用いて、各昇華性染料の量を設定するようにしてもよい。この場合、例えば、設定工程は、記憶手段(例えば、メモリ20)に記憶された対応情報であって、色情報と、機能性染料の量と、昇華性染料の量と、が対応付けされた情報である対応情報に基づいて、機能性染料の量と、昇華性染料の量と、を設定するようにしてもよい。なお、例えば、対応情報は、予め、シミュレーションや実験等によって、色情報と、機能性染料の量と、昇華性染料の量と、対応付けされた対応情報が設定されるようにしてもよい。これによって、作業者は各染料の量をそれぞれ詳細に設定する必要がなく、容易にスムーズに第1機能付加用基体を取得することができる。
なお、この場合、例えば、設定工程は、取得された色情報のみに基づいて、対応情報から昇華性染料の量が設定されるようにしてもよい。なお、例えば、機能性染料の量に応じた色情報が対応付けされているようにしておくことで、色情報に基づいて、機能性染料の量と、昇華性染料の量を設定することができる。また、この場合、例えば、設定工程は、取得された色情報の他に、機能性染料の量の情報を取得し、色情報と機能性染料の量の情報とに基づいて、対応情報から昇華性染料の量が設定されるようにしてもよい。なお、例えば、機能性染料の量の情報は、作業者が機能性染料の量の情報を入力することによって、機能性染料の量の情報が取得されるようにしてもよい。また、例えば、機能性染料の量の情報は、他の装置から受信することによって、取得されるようにしてもよい。
例えば、設定工程は、演算処理によって、各染料の量を設定するようにしてもよい。この場合、例えば、取得された色情報のみに基づいて、機能性染料の量と、昇華性染料の量と、を算出するようにしてもよい。なお、例えば、機能性染料の量に応じた色情報が対応付けされているようにしておくことで、色情報と機能性染料の量情報に基づいて、昇華性染料の量を算出し、設定することができる。また、この場合、例えば、設定工程は、取得された色情報の他に、機能性染料の量の情報を取得し、色情報と機能性染料の量の情報とに基づいて、昇華性染料の量と、を算出し、設定するようにしてもよい。なお、例えば、機能性染料の量の情報は、作業者が機能性染料の量の情報を入力することによって、機能性染料の量の情報が取得されるようにしてもよい。また、例えば、機能性染料の量の情報は、他の装置から受信することによって、取得されるようにしてもよい。
なお、設定工程は、上記と異なる手法によって、各染料の量を設定するようにしてもよい。例えば、作業者の所望する特定の波長域の光の透過率情報を取得して、機能性染料の量を設定するようにしてもよい。
<透過率情報取得工程>
例えば、本実施形態において、第1工程は、作業者の所望する特定の波長域の光の透過率情報を取得する透過率情報取得工程を有していてもよい。この場合、例えば、設定工程は、透過率情報取得工程によって取得した特定の波長域の光の透過率情報に基づいて、機能性染料(例えば、第1機能性染料、第3機能性染料等)の量を設定するようにしてもよい。なお、例えば、透過率情報は、特定の波長域(例えば、第1の波長域等)の光の透過率を示す情報であればよい。
例えば、透過率情報は、特定の波長域の透過率を直接的又は間接的に示す情報であればよい。これによって、透過率に応じた機能性染料の量が設定されるため、作業者は容易にスムーズに機能性染料の量を設定することができる。すなわち、作業者は容易にスムーズに機能付加用基体を取得することができる。
例えば、透過率情報取得工程は、種々の装置で実施するようにしてもよい。この場合、例えば、透過率情報取得工程は、染料塗布装置が用いられてもよい。また、この場合、例えば、透過率情報取得工程は、染料塗布装置とは異なる装置で実施されるようにしてもよい。この場合、染料塗布装置は、異なる装置で設定された透過率情報を異なる装置から受信するようにしてもよい。
例えば、透過率情報取得工程は、作業者が透過率情報を入力することによって、透過率情報が取得されるようにしてもよい。この場合、例えば、染料塗布装置において選択可能な波長域と透過率が提示され、作業者が所望する波長域と、作業者が所望する透過率と、を選択することで、透過率情報が入力されるようにしてもよい。また、この場合、例えば、作業者が透過率情報に関するパラメータを入力することで、透過率情報が入力されるようにしてもよい。もちろん、作業者が透過率情報を入力する方法としては上記に限定されず、上記と異なる方法によって透過率情報が入力されるようにしてもよい。なお、透過率情報の入力は、染料塗布装置と異なる装置にて入力され、入力された透過率情報を染料塗布装置で受信することで、透過率情報を取得するようにしてもよい。
また、例えば、透過率情報取得工程は、染料塗布装置が透過率情報を受信することによって透過率情報を取得するようにしてもよい。例えば、透過率情報取得工程は、作業者が所望する波長域の光の透過率を低減させる機能を有する樹脂体の波長域及びその透過率を測定する透過率測定手段によって測定された透過率情報を受信することによって透過率情報を取得するようにしてもよい。この場合、例えば、透過率測定手段は、染料塗布装置に設けられる構成であってもよいし、別の装置として設けられる構成であってもよい。
<機能樹脂体の取得>
例えば、本実施形態において、第1の波長域とは異なる波長域である第2の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体は、種々の製造方法によって取得することができる。すなわち、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体は、種々の製造方法によって取得することができる。例えば、機能樹脂体は、樹脂体に波長を選択的に吸収できる物質を練り込む方法、波長を選択的に吸収できる物質を混合した液の中に樹脂体を所定時間浸漬する方法(浸染法)、樹脂体に対して多層膜を形成する方法、等の少なくともいずれかが用いられて取得されるようにしてもよい。
また、例えば、機能樹脂体は、気相転写染色法が用いられて取得されるようにしてもよい。この場合、例えば、第4工程、第5工程、第6工程、が実施される。例えば、第4工程は、第2の波長域の光の吸収を行う第2機能性染料を基体(例えば、基体102)に塗布することで、第2機能付加用基体(例えば、第2機能付加用基体101)を取得する工程である。例えば、第5工程は、第4工程によって取得された第2機能付加用基体と、樹脂体と、を対向させ、第2機能付加用基体を加熱することによって、第2機能付加用基体に塗布された第2機能性染料を昇華させ、第2機能性染料を樹脂体に付着させる工程である。例えば、第6工程は、第5工程によって、第2機能性染料が付着された樹脂体を加熱することによって、第2機能性染料を樹脂体に定着させる工程である。例えば、本実施形態において、上記の第4工程、第5工程、第6工程を備える多機能樹脂体の製造方法は、第2機能性染料を用いて樹脂体に第2の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することで、機能樹脂体を取得する。このように、例えば、機能樹脂体を取得する際にも、多機能樹脂体を取得する際と同様の工程が実施されることで、より容易に多機能樹脂体を得ることができる。また、例えば、機能樹脂体及び多機能樹脂体を取得する際の双方の工程において、均一に機能性染料を塗布することができるため、多機能樹脂体における光の透過率のばらつきをより抑制することができる。
なお、例えば、樹脂体として、樹脂体の1つであるレンズ(例えば、レンズ108)を用いるようにしてもよい。もちろん、以下で例示する技術は、レンズ以外の樹脂体(例えば、ゴーグル、携帯電話のカバー、ライト用のカバー、アクセサリー、玩具、フィルム(例えば、厚みが400μm以下等)、板材(例えば、厚みが400μm以上等)等のいずれかの成形体等)に対して適用できる。
なお、例えば、本実施形態における機能性染料(例えば、第1機能性染料、第2機能性染料、第3機能性染料等)は、少なくとも1つの特定の波長域の光の吸収を行う機能性染料であってもよい。例えば、複数の特定の波長域の光の吸収を行う機能性染料の場合に、複数の特定の波長域間の間が開いている構成(例えば、波長のピークが複数存在し、各波長のピークの間が開いている構成)であってもよい。また、例えば、複数の特定の波長域の光の吸収を行う機能性染料の場合に、複数の特定の波長域の少なくとも一部の波長域が重畳している構成であってもよい。
なお、第四工程において、上記の色情報取得工程、設定工程、透過率情報取得工程、を実施するようにしてもよい。
以下、多機能樹脂体の製造方法について詳細に説明する。以下では、機能樹脂体の1つである機能レンズ8を気相転写染色法を用いて機能を付加し、多機能樹脂体を製造する場合を例示して説明を行う。
<第1工程>
例えば、第1工程は、染料塗布装置10によって、機能性染料(例えば、第1機能性染料)を基体2に塗布することで、機能付加用基体1を取得する(製造する)。例えば、第1工程において、染料塗布装置10は、後に機能レンズ8に蒸着される機能性染料を、基体2に塗布させることで、染料部6を形成する。例えば、基体2は、機能レンズ8に機能を付加する際に用いられる機能性染料を一旦保持する媒体である。基体2の詳細な説明については後述する。
本実施形態において、例えば、染料塗布装置10として、印刷装置が用いられる。例えば、本実施形態において、第1工程では、機能性染料が含有された機能付加用インクを印刷装置を用いて、基体2に印刷することによって、機能付加用基体1を取得する。これによって、機能性染料の塗布量を精度よくコントロールしやすくなり、基体に対し機能性染料を容易により均一に塗布することができる。さらに、印刷装置を用いることで、使用する機能性染料が削減される。本実施形態では、印刷装置によって印刷されたインクを乾燥させる工程が行われることで、機能性染料がさらに強固に保持される。
なお、本実施形態においては、機能性染料の他に、多機能樹脂体の色を調整するための昇華性染料を用いる場合を例に挙げて説明する。もちろん、機能性染料のみを用いるようにしてもよい。例えば、本実施形態において、昇華性染料は、赤色、青色、及び黄色の少なくとも3つの染料が使用される。例えば、赤色、青色、及び黄色の少なくとも3つの染料に加えて、機能性染料が吐出できることによって、多機能樹脂体を種々の色にて良好に染色することができる。すなわち、多機能樹脂体を種々の色にて良好に染色することができる機能付加用基体1を容易に取得することができる。もちろん、これら3色以外の色が使用されてもよい。例えば、混合色(緑、紫等)が用いられてもよい。
なお、例えば、本実施形態において、機能性染料は、インクの溶媒に溶解されていてもよい。例えば、この機能付加用インクをインクジェットプリンタ用のインク容器(例えば、インクパック、インクカートリッジ等)に入れ、インクジェットプリンタ11の装着部14にこのインク容器を装着する。なお、本実施形態においては、インク容器としてインクカートリッジ13が用いられる場合を例に挙げて説明する。例えば、機能付加用インクをインクジェットプリンタ用のインクカートリッジ13に入れ、インクジェットプリンタ11の装着部14にこのカートリッジ13を装着する。なお、例えば、本実施形態において、機能性染料としては、特定の波長域(例えば、第1の波長域)の光の透過率を低減させる機能性染料(例えば、第1機能性染料)が用いられる。なお、機能性染料の詳細については後述する。
なお、例えば、本実施形態において、機能性染料とともに、昇華性染料が使用される。なお、例えば、機能付加用インクと同様に、昇華性染料はインクの溶媒に溶解されていてもよい。本実施形態において、例えば、染色用インクは、赤色、青色、及び黄色の少なくとも3つの染色用インクを有する。例えば、この染色用インクをインクジェットプリンタ用のインク容器(例えば、インクパック、インクカートリッジ等)にそれぞれ入れ、インクジェットプリンタ11の装着部14にこのインク容器を装着する。なお、本実施形態においては、インク容器としてインクカートリッジ13が用いられる場合を例に挙げて説明する。例えば、染色用インクをインクジェットプリンタ用のインクカートリッジ13にそれぞれ入れ、インクジェットプリンタ11の装着部14にこのカートリッジ13を装着する。例えば、インクジェットプリンタ11は市販のものが使用可能である。なお、例えば、昇華性染料は、昇華時の熱に耐え得る耐熱性を有するものが用いられることが好ましい。一例として、本実施形態では、キノフタロン系昇華性染料またはアントラキノン系昇華性染料が用いられる(例えば、染料の一例については、特開2004-326018号公報、特開2003-185982号公報等を参照されたし)。
例えば、本実施形態においては、機能付加用インクと、染色用インクと、が別々のインクインク容器(本実施形態においては、インクカートリッジ13)に入れられる構成を例に挙げているがこれに限定されない。例えば、機能付加用インクと、染色用インクと、が混合された混合インクが用いられるようにしてもよい。この場合、例えば、混合インクがインク容器に入れられるようにしてもよい。
例えば、本実施形態において、印刷装置として、インジェクトプリンタ11を用いる場合を例に挙げて説明する。この場合、例えば、インクジェットプリンタ11による印刷によって、基体2に対し機能性染料が塗布される。本実施形態において、例えば、インジェクトプリンタ11は、装着部14と、インクジェットヘッド15と、制御手段(制御部)16と、を備える。もちろん、インジェクトプリンタ11としては、上記構成に限定されない。
例えば、装着部14は、機能性染料を含有する機能付加用インクのインク容器(例えば、後述するインクカートリッジ13等)と、昇華性染料を含有する染色用インクのインク容器(例えば、後述するインクカートリッジ13等)と、を装着する。例えば、インクジェットヘッド15は、装着部14にされた機能付加用インクのインク容器と、染色用インクのインク容器と、から機能付加用インクと染色用インクを基体2に向けて吐出する。これによって、基体2に機能付加用インクと染色用インクを印刷する。例えば、制御部16は、インクジェットヘッド15の駆動を制御して、機能付加用インクと、染色用インクと、をそれぞれのインクジェットヘッド15から独立して吐出させる。
なお、例えば、機能付加用インクとともに、染色用インクを吐出させる場合に、制御部16は、インクジェットヘッド15から機能付加用インクと染色用インクとを同時に吐出させ、機能性染料と昇華性染料を基体2に混合された状態で塗布させるようにしてもよい。なお、本実施形態において、同時とは、機能性染料と昇華性染料を混合された状態で基体2に塗布させることができる構成であればよく、略同時を含む。
なお、例えば、機能付加用インクとともに、染色用インクを吐出させる場合に、制御部16は、インクジェットヘッド15から機能付加用インクと染色用インクとを異なるタイミングで吐出させ、機能性染料と昇華性染料を基体2に塗布させるようにしてもよい。例えば、機能付加用インクと染色用インクの一方を先に吐出した後、他方をその後に吐出するようにしてもよい。
例えば、このインクジェットプリンタ11を使用して、所望の機能(例えば、特定の波長域の光の透過率を低下させる機能)を付加させるための機能性染料を含有する機能付加用インクと、所望の色に染色するための昇華性染料を含有する染色インクと、を基体に2にプリントさせるために、パーソナルコンピュータ12(以下PCという)を使用して、プリントされる各インクの吐出量の調製を行う。
なお、本実施形態においては、機能性染料を含有する機能付加用インクの量と、色を調整するための昇華性染料を含有する染色インクの量と、が色データとしてメモリ20に記憶されている。また、色データとして、色の濃度がメモリ20に記憶されている。例えば、作業者が所望する色データを選択することで、メモリ20から色データを呼び出し、何度でも同じ機能を付加および同じ色を再現することが可能性となっている。また、例えば、色の濃淡は、デジタル管理されるため、必要なときに何回でも同じ濃度の色を得ることができる。なお、例えば、濃度勾配は、ドローソフト等に備えられているグラデーション機能により取得することができる。また、例えば、好みに応じたグラデーションを予め設定しておき、PC12内に独自のグラデーションデータ(色データ)として、保存させておくようにしてもよい。なお、例えば、本実施形態においては、所望の色として、濃度勾配を有したグラデーション模様を例に挙げて説明するがこれに限定されない。例えば、所望の色としては、種々のデザイン(例えば、単色のデザイン、画像等)をプリントすることができる。
なお、例えば、付加する機能毎に色データがメモリ20に記憶されていてもよい。この場合、付加する機能を選択するとともに、その機能を付加した際の色データを選択するようにしてもよい。すなわち、機能性染料を含有する機能付加用インクの量と、色データと、が独立して設定されるようにしてもおいてもよい。なお、付加する機能が選択できる場合において、選択された機能に応じて、付加する機能に対応する機能性染料を含有する機能付加用インクが選択されて、インクジェットプリンタ11から吐出され、基体2にプリントされる。
なお、機能性染料の濃度も変更可能としてもよい。例えば、機能性染料の濃度を変更することで、光の透過率を変更することができる。この場合、例えば、機能性染料の濃度が選択可能とするとともに、機能性染料の濃度毎に、機能性染料を選択した濃度で塗布する際の色データを選択するようにしてもよい。
例えば、機能性染料を印刷装置によって印刷する基体2には、紙、金属板(例えば、アルミ、鉄、銅、等)、ガラス、等を用いる構成が挙げられる。以下の説明においては、基体2は、紙を例に挙げて説明する。また、本実施形態においては、例えば、基体2は、シート状の基体が用いられる。また、以下の説明においては、印刷装置は、インジェクトプリンタ11を例に挙げて説明する。例えば、インジェクトプリンタ11に基体2を入れ、PC12の操作により、予め設定しておいた機能の付加、色、及び色の濃度となるように各インクの印刷を行う。
なお、本実施形態において、染料塗布装置10における印刷装置として、インクジェットプリンタ11を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。印刷装置としては、レーザープリンタを用いて、印刷をすることで、機能性染料を基体2に塗布させる構成としてもよい。この場合、例えば、トナーを用いて、レーザープリンタによって、機能性染料が基体2に付着される。
なお、本実施形態においては、染色付着部10として印刷装置を用いて機能性染料を基体2に塗布させる構成を例に挙げたがこれに限定されない。例えば、染料塗布装置10は、基体2に機能性染料を塗布させることができる構成であればよい。例えば、染料塗布装置10は、ディスペンサー(液体定量塗布装置)、ローラ等を駆動することで機能付加用インクを機能付加用基体1に付着させてもよい。また、例えば、染料塗布装置10を用いずに、作業者によって、筆、ローラ、又はスプレー等を用いて、等を用いて機能付加用インクを機能付加用基体1に塗布させてもよい。なお、機能性染料をインク化させることなく、基体2に塗布させるようにしてもよい。
なお、機能性染料を基体2に塗布させる際に、少なくとも少なくとも1回以上機能性染料を塗布するようにしてもよい。例えば、1回の塗布(例えば、1回の印刷等)によって、機能性染料を基体2に塗布させるようにしてもよいし、複数回の塗布(例えば、複数回印刷)によって、機能性染料を基体2に塗布させるようにしてもよい。すなわち、色や濃度によって、機能性染料を基体2に塗布させる際の回数を変更するようにしてもよい。
<機能付加用インク>
例えば、本実施形態において、機能性染料(例えば、第1機能性染料)としては、近赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料が用いられる。一例として、本実施形態において、機能性染料としては、750nm~790nmの波長域の光を吸収する機能性染料が用いられる。もちろん、例えば、近赤外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能性染料としては、波長域が750nm~790nmの波長域に限定されず、任意の波長域を設定することができる。例えば、一般的に近赤外領域の波長域とされる750nm~2000nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、800nm~950nm等)の光を吸収する機能性染料が用いられてもよい。すなわち、作業者の所望する特定の波長域に関する機能性染料を用いることで、所望する特定の波長域に関する光の透過率を低減させる機能を機能樹脂体に付加することができる。
例えば、赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、ジインモニウム系、ナフタシアニン系、スクアリウム系、含金属アゾ系、等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
なお、本実施形態においては、機能性染料としては、近赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料が用いられる場合を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。例えば、機能性染料としては、近赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料とは異なる波長域の光を吸収する機能性染料を用いるようにしてもよい。
この場合、例えば、機能性染料としては、青色領域の波長域(例えば、一般的に、380nm~500nm)の光を吸収する機能性染料であってもよい。例えば、機能性染料としては、青色領域の波長域における特定範囲の波長域の光を吸収する機能性染料であってもよい。一例として、例えば、一般的に青色の波長域とされる380nm~500nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、430nm~490nm等)の光を吸収する機能性染料が用いられてもよい。例えば、青色領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、メロシアニン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、アルコキシアントラセン化合物、銅ポルフィリン錯体又はジメチン骨格、ピラゾロン骨格、ナフタルイミド骨格、ペソレン骨格を有する化合物等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、青色領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、青色領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
この場合、例えば、機能性染料としては、紫外領域の波長域(例えば、一般的に、320nm~400nm)の光を吸収する機能性染料であってもよい。例えば、機能性染料としては、紫外領域の波長域における特定範囲の波長域の光を吸収する機能性染料であってもよい。一例として、例えば、一般的に紫外領域の波長域とされる320nm~400nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、380nm~400nm等)の光を吸収する機能性染料が用いられてもよい。例えば、紫外領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系、等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、紫外領域の波長域の光を吸収する機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、紫外領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
もちろん、機能性染料としては、上記の波長域の光を吸収する機能性染料に限定されず、作業者が所望する任意の波長域の光を吸収する機能性染料を用いることができる。例えば、機能性染料としては、複数の特定の波長域(例えば、第1波長域及び第3波長域等)の光の透過率を低減するような機能を機能樹脂体に付加するようにしてもよい。一例として、例えば、機能性染料としては、青色領域と紫外領域の双方の波長域の光の透過率を低減するような機能を機能樹脂体に付加するような機能性染料が用いられてもよい。なお、例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能を機能樹脂体に付加する場合に、少なくとも1つ以上の機能性染料が用いられるようにしてもよい。例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能を機能樹脂体に付加する場合に、1つの機能性染料が複数の特定の波長域の機能を有する構成であってもよい。また、例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能を機能樹脂体に付加する場合に、複数の機能性染料(例えば、第1機能性染料及び第3機能性染料等)を用いるようにしてもよい。なお、複数の機能性染料を用いる場合に、複数の機能性染料が混合された状態で用いられてもよい。
以上のようにして、インクジェットプリンタ11によって機能性染料が塗布された機能付加用基体1が取得される。
<第2工程>
上記のように、第1工程によって取得された機能付加用基体1を用いて第2工程を行う。例えば、第2工程は、第1工程によって取得された機能付加用基体1を機能樹脂体(本実施形態においては、機能レンズ8)と対向させ、機能付加用基体1を加熱することによって、機能付加用基体1に塗布された機能性染料を昇華させ、機能性染料をレンズ8に付着させる工程である。例えば、第2工程において、蒸着装置30が用いられる。
例えば、蒸着装置30は、機能付加用基体1に付着された機能性染料及び昇華性染料を電磁波によって加熱することで、機能性染料及び昇華性染料を機能レンズ8に向けて昇華させる。その結果、機能性染料及び昇華性染料が機能レンズ8に蒸着される。なお、機能レンズ8には、後述する第3工程による機能性染料及び昇華性染料の定着を容易にするための受容膜等、各種の層が形成されていてもよい。例えば、本実施形態の蒸着装置30は、電磁波発生部31、蒸着用治具32、ポンプ36、およびバルブ37を備える。もちろん、蒸着装置30の構成は上記構成に限定されない。なお、本実施形態においては、機能性染料及び昇華性染料が機能レンズ8に蒸着される場合を例に挙げて説明するが、機能性染料のみが機能レンズ8に蒸着される場合であってもよい。
例えば、電磁波発生部31は、電磁波を発生させる。一例として、本実施形態では、赤外線を発生させるハロゲンランプが電磁波発生部31として使用されている。しかし、電磁波発生部31は、電磁波を発生させるものであればよい。従って、ハロゲンランプの代わりに、紫外線、マイクロ波等の他の波長の電磁波を発生させる構成を使用してもよい。例えば、蒸着装置30は、電磁波を機能付加用基体1に照射することで、短時間で昇華性染料の温度を上昇させることができる。また、機能付加用基体1の機能性染料及び昇華性染料を昇華させる場合、高熱となった鉄板等を機能付加用基体1に接触させることで機能性染料及び昇華性染料を加熱することも考えられる。しかし、機能付加用基体1と鉄板等とを均一に(例えば、隙間無く)接触させることは難しい。接触状態が均一でなければ、機能性染料及び昇華性染料が均一に加熱されずに透過率のばらつき、色ムラ等が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態の蒸着装置30は、機能付加用基体1から離間した電磁波発生部31からの電磁波によって、機能性染料及び昇華性染料を均一に加熱させることができる。
例えば、蒸着用治具32は、機能付加用基体1と機能レンズ8を保持する。本実施形態の蒸着用治具32は、レンズ支持部33および基体支持部34を備える。レンズ支持部33は、円筒状の基部と、基部の内側に配置された載置台とを備える。機能レンズ8は、基部に囲まれた状態で、レンズ支持部33の載置台によって支持される。基体支持部34は、円筒状の基部の上端に位置し、機能レンズ8よりも上方で機能付加用基体1を支持する。詳細は図示しないが、機能付加用基体1の外周縁部が基体支持部34上に載置されると、環状の基体押さえ部材が機能付加用基体1の外周縁部の上から載置される。その結果、機能付加用基体1の位置が固定される。なお、従来では、蒸着装置30の汚れを抑制するために、基体支持部34に保持された機能付加用基体1の上面に、さらに板状のガラスを載置することで、昇華した機能性染料及び昇華性染料が機能付加用基体1の裏側に抜けて広がることを抑制するようにしてもよい。
例えば、機能付加用基体1は、機能性染料及び昇華性染料が付着した面が機能レンズ8に対向するように配置される。本実施形態では、機能レンズ8の上方で機能付加用基体1が支持されるので、機能付加用基体1は、染料付着面が下方を向くように基体支持部34に載置される。
例えば、機能付加用基体1と機能レンズ8とを対向させる場合に、非接触(例えば、2mm~30mm等)で対向させるようにしてもよい。この場合、例えば、第2工程は、第1工程によって取得された機能付加用基体1を機能レンズ8と非接触に対向させ、機能付加用基体1を加熱することによって、機能付加用基体1に塗布された機能性染料及び昇華性染料を昇華させ、機能性染料及び昇華性染料を機能レンズ8に付着させるようにしてもよい。例えば、非接触に対向させることによって、機能性染料及び昇華性染料を昇華させるために機能付加用基体1を加熱した際の熱が機能樹脂体に伝導されてしまうことを抑制することができる。これによって、例えば、非接触に対向させることによって、機能付加用基体1を加熱した際の熱が機能樹脂体に伝導されてしまうことを抑制することができる。これによって、機能樹脂体が熱によって、変色、収縮等をしてしまうことを抑制することができる。
例えば、非接触に対向させることによって、機能付加用基体と機能樹脂体との間の距離が生じるため、機能樹脂体に対して機能性染料を十分に分散させて付着させることができる。また、例えば、機能樹脂体に対して昇華性染料を十分に分散させて付着させることができる。これによって、レンズ上における透過率のばらつき、色ムラをより抑制することができ、良好な多機能樹脂体を製造することができる。また、特に、多機能樹脂体の色において、基体2にグラデーション状の模様が塗布されている場合には、グラデーション状の模様を多機能樹脂体に好適に再現することができる。
例えば、ポンプ36は、蒸着装置30の内部の気体を外部に排出し、蒸着装置30の内部の気圧を低下させる。すなわち、例えば、ポンプ36は、蒸着装置30の内部の気体を外部に排出し、蒸着装置30の内部を所定の真空度にさせる。
例えば、第2工程において、レンズ8を蒸着装置30内に入れて機能性染料及び昇華性染料の付着を行う場合、ポンプ36により蒸着装置30内を所定の真空度にして付着作業を行う。なお、例えば、本実施形態では蒸着装置30内を所定の真空状態にするものとしているが、これに限るものではなく、蒸着装置30の内を常圧下において付着作業を行うことも可能である。
例えば、真空状態後、電磁波発生部31を使用して上方から機能付加用基体1を加熱させ、機能性染料及び昇華性染料を昇華させる。例えば、加熱温度は機能付加用基体1上で100℃を下回ると機能付加用基体1から機能性染料及び昇華性染料が昇華し難くなり、また、例えば、250℃を上回ると高温による機能性染料及び昇華性染料の変質やレンズ8の変形が生じ易くなる。従って、加熱温度は100~250℃の間が良いが、レンズ8の材料に合わせてできるだけ高い温度を選ぶようにするとよい。
<機能樹脂体>
例えば、本実施形態において、機能樹脂体(例えば、機能レンズ8)は、特定の波長域(例えば、第2波長域)の光の透過率を低減させる機能を有する。例えば、本実施形態において、機能レンズ8は、紫外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する。例えば、本実施形態において、機能レンズ8としては、紫外領域の波長域における特定範囲の波長域の光の透過率を低減させる。一例として、本実施形態において、例えば、機能レンズ8としては、380nm~400nmの波長域の光の透過率を低減させる機能を有する。
もちろん、例えば、紫外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能レンズ8としては、波長域が380nm~400nmの波長域に限定されず、任意の波長域を設定することができる。例えば、機能レンズ8としては、一般的に、320nm~400nmの光の透過率を低減させる構成であってもよい。例えば、機能レンズ8としては、紫外領域の波長域における特定範囲の波長域の光の透過率を低減させる構成であってもよい。一例として、例えば、一般的に紫外領域の波長域とされる320nm~400nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、380nm~400nm等)の光の透過率を低減させる機能レンズ8が用いられてもよい。
例えば、機能レンズ8としては、種々の製造方法によって取得(製造)することができる。例えば、機能レンズ8は、レンズに波長を選択的に吸収できる物質(例えば、染料)を練り込む方法、波長を選択的に吸収できる物質を混合した液の中にレンズを所定時間浸漬する方法(浸染法)、レンズに対して多層膜を形成する方法、気相転写染色法、等の少なくともいずれかが用いられて取得されるようにしてもよい。もちろん、機能レンズ8は、上記と異なる手法によって取得されるようにしてもよい。
例えば、本実施形態においては、例えば、機能レンズ8は、気相転写染色法が用いられて取得されている。以下、気相転写染色法を用いた機能レンズ8の製造方法について取得する。例えば、図3は本実施形態の機能樹脂体の製造方法の流れを示したフローチャートである。例えば、図4は本実施形態の機能樹脂体の製造方法に用いる製造システムを示した概略図である。
例えば、本実施形態において、気相転写染色法では、第4工程、第5工程、第6工程が実施される。なお、本実施形態における、第4工程、第5工程、第6工程としては、第1工程、第2工程、第3工程を実施する多機能樹脂体の製造方法にて用いられる製造システムを使用するようにしてもよい。もちろん、例えば、第4工程、第5工程、第6工程で用いる製造システムと、第1工程、第2工程、第3工程で用いる製造システムが異なる製造システムであってもよい。また、例えば、第4工程、第5工程、第6工程で用いる製造システムと、第1工程、第2工程、第3工程で用いる製造システムの少なくとも一部の構成が兼用される製造システムであってもよい。なお、本実施形態においては、第1工程、第2工程、第3工程を実施する多機能樹脂体の製造方法にて用いられる製造システムを用いて、第4工程、第5工程、第6工程を実施する場合を例に挙げて説明する。
例えば、第4工程は、特定の波長域(例えば、第2の波長域)の光の吸収を行う機能性染料(例えば、第2機能性染料)を基体102に塗布することで、第2機能付加用基体101を取得する工程である。例えば、第5工程は、第4工程によって取得された第2機能付加用基体101と、レンズ108と、を対向させ、第2機能付加用基体101を加熱することによって、第2機能付加用基体101に塗布された第2機能性染料を昇華させ、第2機能性染料をレンズ108に付着させる工程である。例えば、第6工程は、第5工程によって、第2機能性染料が付着されたレンズ108を加熱することによって、第2機能性染料をレンズ108に定着させる工程である。例えば、本実施形態において、上記の第4工程、第5工程、第6工程が実施されることで、第2機能性染料を用いてレンズ108に第2の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加し、機能レンズ8を取得する。
なお、例えば、本実施形態において、外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する機能レンズ8を取得する場合に、第2機能性染料としては、紫外領域の波長域の光の吸収を行う機能性染料が用いられる。例えば、紫外領域の波長域の光を吸収する第2機能性染料としては、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系、等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、紫外領域の波長域の光を吸収する第2機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、紫外領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
なお、本実施形態においては、機能レンズ8としては、紫外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する構成を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。例えば、機能レンズ8としては、紫外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能とは異なる波長域の光の透過率を低減させる機能を有する構成を用いるようにしてもよい。
この場合、例えば、機能レンズ8としては、青色領域の波長域(例えば、一般的に、380nm~500nm)の光の透過率を低減させる機能を有する構成であってもよい。例えば、機能レンズ8としては、青色領域の波長域における特定範囲の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する構成であってもよい。一例として、例えば、機能レンズ8としては、一般的に青色の波長域とされる380nm~500nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、430nm~490nm等)の光の透過率を低減させる機能を有する構成が用いられてもよい。例えば、青色領域の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する機能レンズ8を取得する際の第2機能性染料としては、メロシアニン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、アルコキシアントラセン化合物、銅ポルフィリン錯体又はジメチン骨格、ピラゾロン骨格、ナフタルイミド骨格、ペソレン骨格を有する化合物等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、青色領域の波長域の光を吸収する第2機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、青色領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
また、例えば、機能レンズ8としては、近赤外領域の波長域(例えば、一般的に750nm~2000nm)の光の透過率を低減させる機能を有する構成であってもよい。例えば、機能レンズ8としては、近赤外領域の波長域における特定範囲の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する構成であってもよい。一例として、例えば、機能レンズ8は、一般的に近赤外領域の波長域とされる750nm~2000nmの波長域における特定範囲の波長域(例えば、800nm~950nm等)の光の透過率を低減させる機能を有するが用いられてもよい。例えば、近赤外領域の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する機能レンズ8を取得する際の第2機能性染料としては、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、ジインモニウム系、ナフタシアニン系、スクアリウム系、含金属アゾ系、等の少なくともいずれかの染料が用いられてもよい。もちろん、赤外領域の波長域の光を吸収する第2機能性染料としては、上記染料に限定されず、昇華性を有し、赤外領域の波長域の光を吸収する機能性染料であればよい。
もちろん、機能レンズ8としては、上記の波長域の光の透過率を低減させる機能を有する構成に限定されず、作業者が所望する任意の波長域の光を低減させる機能を有する機能レンズ8を用いることができる。例えば、機能レンズ8としては、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能を有する機能レンズ8を用いるようにしてもよい。一例として、例えば、機能レンズ8としては、青色領域と紫外領域の双方の波長域の光の透過率を低減するような機能を有する機能レンズ8が用いられてもよい。
なお、例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能をレンズ108に付加する場合に、少なくとも1つ以上の機能性染料が用いられるようにしてもよい。例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能をレンズ108に付加する場合に、1つの機能性染料が複数の特定の波長域の機能を有する構成であってもよい。また、例えば、複数の特定の波長域の光の透過率を低減するような機能をレンズ108に付加する場合に、特定の波長域の光の透過率を低減するような機能を有する機能性染料を複数用いるようにしてもよい。なお、複数の機能性染料を用いる場合に、複数の機能性染料が混合された状態で用いられてもよい。
<第3工程>
例えば、第2工程が完了すると、第3工程が行われる。以下、第3工程について説明する。例えば、第3工程では、第2工程にて機能性染料及び昇華性染料が付着した機能レンズ8を加熱して機能性染料及び昇華性染料を定着させる。もちろん、第3工程は、機能性染料のみを定着させる工程であってもよい。
例えば、染料定着装置50は、機能性染料及び昇華性染料が蒸着された機能レンズ8を加熱することで、機能性染料及び昇華性染料を機能レンズ8に定着させる。例えば、機能レンズ8が加熱されることで、機能性染料及び昇華性染料が機能レンズ8に定着される。これによって、機能レンズ8に特定の波長域の光の透過率を低減する機能を付加するとともに、機能レンズ8を所望の色に染色をすることができる。
例えば、本実施形態では、オーブンが染料定着装置50として用いられる。オーブン(特に、送風式定温恒温器)を用いると、機能レンズ8の温度が長い時間をかけて徐々に上昇するので、温度差が発生し難い。よって、機能性染料及び昇華性染料が均等に機能レンズ8に定着し易い。
なお、例えば、第3工程を実施する場合に、常圧下にて加熱し機能性染料及び昇華性染料を定着させるようにしてもよい。もちろん、異なる気圧下で第3工程が実施されるようにしてもよい。例えば、作業者は、蒸着装置30内で機能レンズ8に対して機能性染料及び昇華性染料の付着を行った後、機能性染料及び昇華性染料が付着された機能レンズ8を取り出す。例えば、作業者は機能レンズ8を染料定着装置50に入れ、常圧下にて加熱し機能性染料及び昇華性染料を定着させる。
例えば、本実施形態では、加熱温度は、機能レンズ8が変形せず、十分な発色が可能な温度にて行う。例えば、加熱温度は、好ましくは、110℃以上160℃以下(110℃~160℃)であってもよい。この場合、例えば、第3工程は、第2工程によって、機能性染料及び昇華性染料が付着された機能樹脂体を、110℃~160℃の温度で加熱することによって、機能性染料及び昇華性染料を定着させるようにしてもよい。例えば、第3工程の温度を110℃以上で機能性染料及び昇華性染料を定着させることで、より機能樹脂体(本実施形態においては機能レンズ8)の内部に機能性染料及び昇華性染料が届きやすくなり、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を良好に付加できるとともに、より良好に染色を行うことができる。また、例えば、第3工程後に、染色した多機能樹脂体(本実施形態においては多機能レンズ)からの色抜けを抑制できる。また、例えば、第3工程の温度を160℃以下で機能性染料及び昇華性染料を定着させることで、機能樹脂体が加熱される過ぎることを抑制することができ、機能樹脂体の変形をよりしづらくすることができる。なお、加熱温度は、さらに好ましくは、120℃以上150℃以下である。この場合、例えば、第3工程は、第2工程によって、機能性染料及び昇華性染料が付着された機能樹脂体を、120℃~150℃の温度で加熱することによって、機能性染料及び昇華性染料を定着させるようにしてもよい。例えば、第3工程の温度を120℃~150℃で機能性染料及び昇華性染料を定着させることで、特定の波長域の光の透過率を低減する機能を良好に付加できるとともに、より良好に染色を行うことができる。また、例えば、第3工程後に、染色した多機能樹脂体からの色抜けをより抑制でき、多機能樹脂体の変形をより抑制することができる。
以上のように、例えば、本開示の多機能樹脂体の製造方法は、第1の波長域の光の吸収を行う第1機能性染料を、基体に塗布することで、第1機能付加用基体を取得する第1工程と、第1機能付加用基体と、第2の波長域の光の透過率を低減する機能を有する機能樹脂体と、を対向させ、第1機能付加用基体に塗布された第1機能性染料を昇華させ、第1機能性染料を機能樹脂体に付着させる第2工程と、第1機能性染料が付着された機能樹脂体を加熱することによって、第1機能性染料を機能樹脂体に定着させる第3工程と、を備え、第1機能性染料を用いて機能樹脂体に第1の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することで、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体を取得する。これによって、例えば、複数の波長域の光の透過率を低減する多機能樹脂体を、多くの工程や複雑な作業が必要なく、容易に製造することができる。また、例えば、クラックが抑制された良好な多機能樹脂体を製造することができる。
また、例えば、多機能樹脂体における光の透過率のばらつきを抑制することができる。また、例えば、複数の波長域の組み合わせを変更することができるため、複数の波長域の光の透過率を低減することができる種々の多機能樹脂体を容易に製造することが可能となる。すなわち、例えば、特定の波長域の光の透過率を低減させる機能樹脂体に対して、他の波長域の光の透過率を低減させる機能を付加することができるため、複数の波長域の光の透過率を低減することができる種々の多機能樹脂体を容易に製造することが可能となる。
なお、本実施形態において、染料部6の形状(印刷形状)は、円形状としているが、これに限るものではなく、例えば、半円形状やその他の形状(例えば、四角形状)であってもよい。
なお、本実施形態において、機能付加用基体1の加熱方法は上方から行っている場合を例に挙げているが、これに限定されない。例えば、機能付加用基体1の加熱方法は、側面又は下方からの加熱においても同じように昇華性染料の昇華をさせることができる。
なお、染料定着装置50の構成を変更することも可能である。例えば、染料定着装置50は、レーザを機能レンズ8上で走査させることで、機能レンズ8を加熱してもよい。この場合、染料定着装置50は、機能レンズ8の部位に応じて意図的に温度差を生じさせることも可能である。例えば、染料定着装置50は、グラデーションのある染色を施す場合等に、目的とするグラデーションの状態に応じてレーザの走査を制御してもよい。染料定着装置50は、レンズ8の各部位の温度が望ましい温度となるように、機能レンズ8の厚み等に応じてレーザの走査を制御してもよい。また、染料定着装置50は、電磁波を機能レンズ8に直接照射することでレンズを加熱してもよい。
また、染料塗布装置10、蒸着装置30、および染料定着装置50の各々で行われる工程(例えば、第1工程、第2工程、第3工程等)のうちの2以上が、1つの装置によって実行されてもよい。例えば、蒸着装置30によって行われる第2工程と、染料定着装置50によって行われる第3工程とを共に実行する多機能樹脂体製造装置が用いられてもよい。この場合、例えば、第2工程における機能付加用基体1の加熱と、第3工程における機能レンズ8の加熱とを、同一の加熱手段(例えば赤外線ヒータ等)が実行してもよい。また、多機能樹脂体製造装置は、複数の工程(例えば、第2工程から第3工程まで)を一連の流れで自動的に行ってもよい。
なお、例えば、機能性染料及び昇華性染料を用いる場合に、特定の波長域の光の透過率を低減させる領域をグラデーション状に設けた場合に、均一に特定波長域の光の透過率を低減できなくなる可能性がある。このため、例えば、機能性染料を塗布させる領域と昇華性染料を塗布させる領域とを異なる領域としてもよい。一例として、機能樹脂体の全体に対して機能性染料を定着させるとともに、機能樹脂体の一部の領域に対して昇華性染料を定着させるようにしてもよい。
以下、実験例及び比較例を示して本開示を具体的に説明するが、本開示は、下記実験例及び下記比較例に制限されるものではない。以下の実験例1~4では、機能樹脂体の表面に機能性染料を付着させ、表面に機能性染料が付着された機能樹脂体を加熱して機能性染料を機能樹脂体に定着させて、多機能樹脂体を取得した。また、以下の比較例1~4では、樹脂体に多層膜を形成することによって、多機能樹脂体を取得した。実験例及び比較例で得られた多機能樹脂体の波長透過率とクラックを評価した。
<実験例1>
今回の実験例は、第2の波長域として750nm~760nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズ(S-0.00)を用いた。なお、機能CR-39レンズは、CR-39レンズに第2の波長域として750nm~760nmの波長域の光の透過率を低減する機能が付加されたものである。今回の実験例は、機能CR-39レンズに対して、第1の波長域として430nm~500nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料を用いた。
始めに、プリンタに用いる機能付加用インクを作製する。機能性染料としては、430nm~500nmの波長域の光を吸収することができるFDB-006インク(山田化学工業株式会社)を用いた。例えば、容器に、機能性染料、純水、及び分散剤を入れ、純分撹拌を行い、染色用インクを製造した。例えば、分散剤としては、デモールMS(花王株式会社)を用いた。例えば、染料、分散剤、純水の組成比は染料6.0重量%、分散剤2.5重量%、純水91.5重量%とした。
例えば、機能性染料の量は好ましくは、0.1~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%である。もちろん、機能性染料の量は上記重量%に限定されず、任意の量で用いることができる。機能性染料が0.1重量%未満であると、染料が定着しにくくなり、所望する濃度が得られないことがある。また、機能性染料が20重量%を超えると、機能性染料の分散性が悪くなってしまうことがある。また、使用する機能性染料は、熱で分解せず、耐熱性のあるものを使用する必要がある。本実験例では、機能性染料の量を6.0重量%とした。
機能性染料を分散させるため、分散剤を十分攪拌した後、冷却用の水が入った容器に、染色用インクが入った容器を入れ、超音波ホモジナイザーにて指定時間処理を行ない、機能性染料を所望する粒径にする。その後、孔径約1μmのフィルター(ガラス繊維濾紙 GF/B)で染色用インクを吸引濾過し、粒径の大きいものやゴミ等を取り除く。その後、指定のインク濃度になるように純水を加え調整し、必要であれば保湿剤や表面張力を調整する界面活性剤を加えて、染色用インクを作製する。今回分散させるために超音波ホモジナイザーを用いたが、ビーズミル等の微粒子化装置を使用してもよい。このようにして、機能付加用インクを製造する。
この実験例では、プリンタの(EPSON PX-6250S)機能付加用インク用のインクカートリッジ内をよく洗浄したのち、作製した機能性染料を含有する機能付加用インクを入れ、プリンタにセットした。クリーニングを何度も繰り返した後、インクが切り替わったのを確認して、紙厚が100μmの基体(上質PPC用紙)に、印刷ソフトウエアTTS-PS2(株式会社ニデック)を用いて、上記の機能付加用インクを基体に吐出して印刷することで、機能性染料を塗布させ、機能付加用基体(機能性染料=1024)を製造した。
このようにして得た機能付加用基体を用いて機能CR-39レンズに機能の付加を行った。蒸着装置(ニデック製 TTM-1000)内にて治具に機能付加用基体を取り付けて、機能CR-39レンズへの機能性染料の蒸着作業を行った。この時の条件は、機能CR-39レンズの染料付着面側と機能付加用基体との距離を15mmとした。ポンプにて蒸着装置内の気圧を60Paまで下げた後、加熱ユニット(本実験例ではハロゲンランプを使用)にて機能付加用基体の表面温度を200℃まで加熱させた。なお、図示なき温度センサにより機能付加用基体の付近の温度を測定し、200℃到達と同時にハロゲンランプの電源を切り、機能性染料を昇華、付着させた。
その後、蒸着装置内の気圧を常圧に戻した後、機能性染料を定着させるためにオーブン内にて2時間加熱した。なお、このときのオーブンの加熱温度の条件は、140℃とし、機能性染料を付着させた機能CR-39レンズを加熱し、機能性染料の定着を行った。このようにして、機能CR-39レンズに機能を付加して、多機能CR-39レンズを製造した。その後、このように製造した多機能CR-39レンズに、ハードコート膜と反射防止膜を形成し、多機能CR-39レンズを完成させた。例えば、ハードコート膜は、シリコーン系熱硬化性ハードコート液を浸漬法にて塗布した後、加熱して形成させた。また、例えば、反射防止膜は、真空蒸着法にて、真空度1.0×10-3Pa以下、蒸着機の内部温度を70℃にして蒸着を行い、1層目にZrO2を40nm、2層目にSiO2を60nm、3層目にZrO2を120nm、4層目にSiO2を110nmの膜を形成させ、4層で反射防止膜として形成させた。多機能CR-39レンズを完成させた後、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、機能CR-39レンズは、CR-39レンズに対して、第2の波長域として750nm~760nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるKAYASORB IR-750インク(日本化薬株式会社)を用いて、上記と同様に蒸着装置を用いて、機能性染料をCR-39レンズに蒸着させ、オーブンで加熱してCR-39レンズに機能性染料を定着させて製造できる。例えば、機能CR-39レンズの製造方法としては、別の製造方法(例えば、CR-39レンズに波長を選択的に吸収できる機能性染料を練り込む方法、浸染法、CR-39レンズに対して多層膜を形成する方法、等)であってもよい。
[レンズの透過率評価]
機能付加用基体を用いて機能が付加された後の多機能CR-39レンズをLambda1050(perkinElmer製)で分光透過率を測定し、評価を行った。今回の評価では、第1の波長域の透過率及び第2の波長域の透過率を調べた。
第1の波長域の透過率及び第2の波長域の透過率がともに50%以下:○
第1の波長域の透過率及び第2の波長域の透過率の少なくとも一方の透過率が50%以上:×
[クラック評価]
多機能CR-39レンズにクラックが生じているか否かを目視にて確認した。
クラックなし:○
クラックあり:×
<実験例2>
第1の波長域として430nm~500nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるFDB-006インクの代わりに、第1の波長域として400nm~410nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるBANASORB UV-3701インク(オリヱント化学工業株式会社)を用いた以外は、実験例1と同様に、機能CR-39レンズに対して機能付加を行い、評価した。以上の結果を表1に示した。
<実験例3>
第2の波長域として750nm~760nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズの代わりに、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズを用いた以外は、実験例1と同様に、機能CR-39レンズに対して機能付加を行い、評価した。以上の結果を表1に示した。なお、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズを製造する際には、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるBANASORB UV-3701インクを用いた。
<実験例4>
第1の波長域として430nm~500nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるFDB-006インクの代わりに、第1の波長域として750nm~760nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるKAYASORB IR-750インクを用いた。また、第2の波長域として750nm~760nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズの代わりに、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズを用いた。上記以外は、実験例1と同様に、機能CR-39レンズに対して機能付加を行い、評価した。以上の結果を表1に示した。なお、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光の透過率を低減することができる機能CR-39レンズを製造する際には、第2の波長域として400nm~410nmの波長域の光を吸収することができる機能性染料であるBANASORB UV-3701インクを用いた。
<比較例1>
気相転写染色法を用いて多機能CR-39レンズを製造する代わりに、従来のように、ハードコート膜が形成されたCR-39レンズに多層膜を形成することによって多機能CR-39レンズを製造した。比較例1では、実験例1と同様に、第1の波長域及び第2の波長域として、430nm~500nm及び750nm~760nmのそれぞれの波長域の光を低減することができる多機能CR-39レンズを製造した。始めに、CR-39レンズを用意し、真空蒸着法にて、真空度1.0×10-3Pa以下、蒸着機の内部温度を70℃にして蒸着を行い、CR-39に多層膜を形成させた。多層膜の構成としては、CR-39の凸面において24層の膜を形成し、凹面において6層の膜を形成した。多層膜の構成については、表3に示した。多層膜を形成することによって、製造された多機能CR-39レンズに対して、実験例1と同様の評価基準にて評価をした。以上の結果を表2に示した。
<比較例2>
気相転写染色法を用いて多機能CR-39レンズを製造する代わりに、従来のように、ハードコート膜が形成されたCR-39レンズに多層膜を形成することによって多機能CR-39レンズを製造した。比較例2では、実験例2と同様に、第1の波長域及び第2の波長域として、400nm~410nm及び750nm~760nmのそれぞれの波長域を低減することができる多機能CR-39レンズを製造した。始めに、CR-39レンズを用意し、真空蒸着法にて、真空度1.0×10-3Pa以下、蒸着機の内部温度を70℃にして蒸着を行い、CR-39に多層膜を形成させた。多層膜の構成としては、CR-39の凸面において4層の膜を形成し、凹面において8層の膜を形成した。多層膜の構成については、表4に示した。多層膜を形成することによって、製造された多機能CR-39レンズに対して、実験例1と同様の評価基準にて評価をした。以上の結果を表2に示した。
<比較例3>
気相転写染色法を用いて多機能CR-39レンズを製造する代わりに、従来のように、ハードコート膜が形成されたCR-39レンズに多層膜を形成することによって多機能CR-39レンズを製造した。比較例3では、実験例3と同様に、第1の波長域及び第2の波長域として、430nm~500nm及び400nm~410nmのそれぞれの波長域を低減することができる多機能CR-39レンズを製造した。始めに、CR-39レンズを用意し、真空蒸着法にて、真空度1.0×10-3Pa以下、蒸着機の内部温度を70℃にして蒸着を行い、CR-39に多層膜を形成させた。多層膜の構成としては、CR-39の凸面において4層の膜を形成し、凹面において24層の膜を形成した。多層膜の構成については、表5に示した。多層膜を形成することによって、製造された多機能CR-39レンズに対して、実験例1と同様の評価基準にて評価をした。以上の結果を表2に示した。
表1に示すように、実験例1~4で製造された多機能CR-39レンズは、第1の波長域と第2の波長域のそれぞれについて光の透過率を低減させる機能を有することが確認された。すなわち、実験例1~4ででは、機能CR-39に対して機能性染料を定着させることで、機能性染料を定着させる前の機能CR-39の透過率と比較して、機能性染料が有する機能を付加することができることが確認された。また、実験例1~4で製造された多機能CR-39レンズには、クラックが生じておらず、良好な多機能CR-39レンズを製造できたことが確認された。
表2に示すように、比較例1~3で製造された多機能CR-39レンズは、第1の波長域と第2の波長域のそれぞれについて光の透過率を低減させる機能を有することが確認されたものの、クラックが生じていることが確認された。