以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。本実施形態における染料付基体1は、樹脂体に対して転写染色を行って染色樹脂体を製造する工程において使用される。以下では、樹脂体の1つであるプラスチックレンズ4を、染料付基体1を用いて気相転写染色によって染色する場合を例示する。しかし、以下で例示する技術は、プラスチックレンズ4以外の樹脂体(例えば、携帯電話のカバー、ライト用のカバー、アクセサリー、玩具等)を染色する場合にも適用できる。また、以下で例示する染料付基体1は、気相転写染色以外の転写染色の工程において使用することも可能である。
なお、本実施形態によると、例えば、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(CR−39))、ポリウレタン系樹脂、アリル系樹脂(例えば、アリルジグリコールカーボネート及びその共重合体、ジアリルフタレート及びその共重合体)、フマル酸系樹脂(例えば、ベンジルフマレート共重合体)、スチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート系樹脂、繊維系樹脂(例えば、セルロースプロピオネート)、チオウレタン系またはチオエポキシ等の高屈折材料等を材質とした樹脂体を染色することもできる。
<転写染色の工程>
図1を参照して、染料付基体1を使用して樹脂体(本実施形態ではプラスチックレンズ4)を染色する工程(染色樹脂体の製造工程)について説明する。まず、染料付基体1の製造工程が実行される。本実施形態の染料付基体1は、シート状の基体(染色用基体)2における一方の面に染料部3を備える。染料部3は、プラスチックレンズ4に蒸着される昇華性染料を含んでいる。本実施形態では、眼鏡に装着される1セット(2つで一対)のプラスチックレンズ4を染色するために、一対の染料部3が1単位として基体2に形成される。染料付基体1の製造工程の詳細については後述する。
次いで、染料付基体1に付着した染料をプラスチックレンズ4に転写する転写工程が実行される。本実施形態では、染料付基体1の染料部3に含まれる昇華性染料が加熱されることで、染料がプラスチックレンズ4に向けて昇華される。その結果、染料がプラスチックレンズ4に蒸着される。なお、プラスチックレンズ4には、後述する定着工程による染料の定着を容易にするための受容膜等、各種の層が形成されていてもよい。
本実施形態の転写工程(蒸着工程)は、蒸着部5によって行われる。蒸着部5は、電磁波発生部6、蒸着用治具7、およびポンプ8を備える。電磁波発生部6は、染料付基体1に電磁波を照射することで、染料の温度を短時間で上昇させる。本実施形態では、赤外線を発生させるハロゲンランプが電磁波発生部6として用いられている。しかし、紫外線、マイクロ波等の他の波長の電磁波を発生させる構成を電磁波発生部6として用いてもよい。また、他の方法で昇華性染料を加熱することも可能である。例えば、高温となった鉄板等を染料付基体1に接触させることで、昇華性染料を加熱してもよい。蒸着用治具7は、染料付基体1とプラスチックレンズ4を保持する。本実施形態の蒸着用治具7は、プラスチックレンズ4から適切な距離だけ離間した位置に染料付基体1を保持する。その結果、プラスチックレンズ4に蒸着される染料に色ムラ等が発生することが抑制される。また、染料付基体1は、染料部3が付着された面がプラスチックレンズ4に対向するように配置される。ポンプ8は、蒸着部5の内部の気体を外部に排出し、蒸着部5の内部の気圧を低下させる。本実施形態の転写工程は、染料付基体1およびプラスチックレンズ4の周囲の気圧を低下させた状態(例えば、略真空状態)で行われる。従って、大気圧下で蒸着が行われる場合に比べて昇華性染料が適切に昇華され、プラスチックレンズ4に蒸着される。
次いで、定着工程が行われる。定着工程では、染料が蒸着されたプラスチックレンズ4が加熱されることで、染料がプラスチックレンズ4に定着される。その結果、染色樹脂体が製造される。本実施形態の定着工程は、オーブン9によって行われる。オーブン9(特に、送風式定温恒温器)を用いると、プラスチックレンズ4の温度が長い時間をかけて徐々に上昇するので、温度差が発生し難い。よって、染料が均等にプラスチックレンズ4に定着し易い。なお、定着工程の内容を変更することも可能である。例えば、レーザをプラスチックレンズ4上で走査させることで、プラスチックレンズ4を加熱してもよい。また、転写工程と定着工程が共に同一の装置によって行われてもよい。この場合、例えば、転写工程における加熱と、定着工程における加熱とを、同一の加熱手段(例えば赤外線ヒータ等)が実行してもよい。
<印刷装置>
図2〜図4を参照して、染料付基体1の製造工程で使用される印刷装置10の一例について説明する。図2に示すように、印刷装置10は、筐体11、インク容器装着部12、および操作部15を備える。筐体11は、印刷装置10の各種構成を保持する。筐体11の内部構成については後述する。インク容器装着部12にはインク容器(例えば、インクパック、インクカートリッジ等)が装着される。本実施形態の印刷装置10には、インクを吐出するインクヘッド33(図4参照)が8個設けられている。従って、インク容器装着部12には、8個のインクヘッド33の各々にインクを供給するために、インク容器が装着されるスロット13が8個設けられている。操作部15には各種操作指示が入力される。
染料部3が印刷された基体2は、筐体11から前方に送出される。筐体11の前方には、筐体11から送出された基体2が載置される受け台17が設置されている。受け台17は、印刷装置10の本体に対して取り外し可能に設けられている。従って、ユーザは、受け台17を取り外すことで、受け台17に載置された1枚または複数枚の基体2を容易に運搬することができる。
本実施形態の基体2には、細長い(つまり、長尺状の)シート状の基体2が用いられる。一例として、本実施形態の基体2は、ロール形状に巻かれた細長い紙(ロール紙)である。しかし、ロール紙以外の材料(例えば、シート状の金属箔、シート状の樹脂等)を基体2として使用してもよい。印刷装置10は、複数(一例として、本実施形態では4つ)の基体2を装着し、装着した複数の基体2の各々に対して染料部3を並行して印刷することもできる。本実施形態の印刷装置10は、筐体11から送出される4つの基体2の各々を収容するために、4つの受け台17を備えている。
図3に示すように、印刷装置10の筐体11は、前側上部が開放された略箱状に形成されている。筐体11の上端部には、開閉カバー19が上下方向に回動可能に装着されている。開閉カバー19が上方に回動されることで、筐体11の前側上部が開放される。印刷装置10の後側下部には、基体2を装着する基体装着部20が設けられている。本実施形態では、細長いシート状の基体2がロール状に巻かれた状態で基体装着部20に装着される。本実施形態の基体装着部20は、ロール状の染色用基体2(以下、「ロール状基体2」という場合もある)の軸心部分に嵌め込まれることで、ロール状基体2を回転可能に保持する。さらに、本実施形態の基体装着部20は、隣接するロール状基体2の間に配置される治具(図示せず)を備える。治具は、複数のロール状基体2の間の距離を一定距離に保つ。ロール状基体2の内側面および外側面と、印刷装置10との配置関係については後述する。
筐体11の内部には、下部ベース22、上部ベース26、キャリッジ30、およびガイドレール31が設けられている。下部ベース22は、送出される基体2の下方に位置する。上部ベース26は、送出される基体2の上方に位置する。つまり、基体2は、下部ベース22と上部ベース26の間を前後方向に通過する。
下部ベース22の上端における後部には、送出部23が設けられている。送出部23は、基体装着部20に装着された基体2(本実施形態では4つの基体2)を、基体2の長手方向に沿って送出する。一例として、本実施形態の送出部23は、回転軸が左右方向に延びるグリットローラである。本実施形態の送出部23は、基体送出モータ35(図6参照)によって回転することで、4つの基体2を送出する。上部ベース26の下端には、基体2を送出部23に向けて押圧するピンチローラ27が設けられている。ピンチローラ27の回転軸は、送出部23の回転軸と平行である。なお、送出部23の構成を変更することも可能である。例えば、送出部23は、複数の基体2の各々を別個に送出してもよい。
下部ベース22の上端における送出部23の前方には、基体2を切断するカッター24が設けられている。本実施形態のカッター24は、カッター駆動モータ36(図6参照)によって左右方向に移動することで、細長い基体2を短手方向に切断する。
下部ベース22よりも上方、且つ送出部23よりも前方には、キャリッジ30およびガイドレール31が設けられている。ガイドレール31は、左右方向に延びる棒状の部材であり、筐体11に固定されている。キャリッジ30は、複数のインクヘッド33(図4参照)を底部に備えている。キャリッジ30は、キャリッジモータ37(図6参照)によって、ガイドレール31に沿って左右方向に移動する。印刷装置10は、キャリッジ30を左右方向(主走査方向)に移動させながら、インクヘッド33からインクを吐出させることで、主走査方向の印刷を行う。また、印刷装置10は、送出部23によって基体2を前後方向に移動させることで、副走査を行う。主走査と副走査が繰り返し行われることで、基体2の印刷面に2次元の染料部3が印刷される。なお、主走査および副走査の方法を変更できることは言うまでもない。例えば、印刷装置10は、キャリッジ30を主走査方向および副走査方向に移動させてもよい。また、印刷装置10は、固定されたインクヘッド33に対し、基体2を主走査方向および副走査方向に移動させてもよい。
<インクヘッドとインクの種類の関係>
図4を参照して、本実施形態におけるインクヘッド33とインクの種類の関係について説明する。図4に示すように、キャリッジ30の底部には複数のインクヘッド33が設けられている。例えば、インクヘッド33は、樹脂体に蒸着される昇華性の染料が含有されたインクを、染色用基体に向けて吐出することで、染色部3を基体2に印刷する。複数のインクヘッド33の各々は、インク容器装着部12(図2参照)に装着された複数のインク容器の各々に対し、インク供給路(例えば可撓性チューブ)によって別個に接続されている。従って、本実施形態では、1つのインクヘッド33に1つのインク容器からインクが供給される。
一例として、本実施形態では、黒(BK)、青(B)、赤(R)、黄(Y)の4色のインクが適宜選択されて吐出されることで、基体2に印刷する染料部3の色(換言すると、染料付樹脂体1を用いた染色工程によって染色される樹脂体の色)が再現される。これに対し、本実施形態の印刷装置10が備えるインクヘッド33の数は8個である。つまり、本実施形態の印刷装置10は、染色する樹脂体の色を再現するために使用されるインクの色数(以下、「使用色数」という)よりも多くのインクヘッド33を備える。
本実施形態では、複数のインクヘッド33の一部には、色が互いに同一であり、且つ樹脂体に対する適正が互いに異なる少なくとも2つ以上のインクの各々を吐出する複数のインクヘッド33が含まれている。一例として、本実施形態で使用される黒のインクは1種類であり、図4に示すBKのインクヘッド33から吐出される。本実施形態の黒インクは、種々の基材の染色に適している。青のインクは2種類であり、一方の青インクはB1のインクヘッド33から吐出され、他方の青インクはB2のインクヘッド33から吐出される。赤のインクは2種類であり、一方の赤インクはR1のインクヘッド33から吐出され、他方の赤インクはR2のインクヘッド33から吐出される。黄色のインクは3種類であり、3種類の黄インクは、Y1、Y2、Y3の各々のインクヘッド33から吐出される。詳細は後述するが、本実施形態の印刷装置10は、色が同一である複数種類のインクのうち、染色する樹脂体の特性(例えば、樹脂体の基材)に適した1または複数のインクを選択し、基体2に印刷する。
なお、使用色数、使用するインクの種類、インクヘッド33の数等を変更することも可能である。例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色によって染料部3の色が再現されてもよい。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色によって染料部3の色が再現されてもよい。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色と、赤(R)、黄(Y)、青(B)の3色と、の組み合わせによって、染料部3の色が再現されてもよい。他の色(例えば茶色等)のインクが用いられてもよい。黒インクが複数種類使用されてもよい。
<印刷装置におけるロール状基体の配置>
図5は、基体2の構成図である。例えば、基体2は、基体2に付着された昇華性の染料を加熱し、染料を樹脂体に向けて昇華させることでプラスチックレンズ4を染色する染色工程(染色樹脂体の製造工程)において使用されるものである。
例えば、基体2は、染料が付着される面(以下、染色面と記載)51を備える。染色面51は、染色部3が印刷される面である。また、例えば、基体2は、基体2に比べて高い電磁波吸収率を有する電磁波吸収層52を備える。電磁波吸収層52は、少なくとも染色面51の反対側に形成される。例えば、基体2は、ロール形状に形成された基体であって、染色面51がロール形状の基体2の外側面に形成されている。また、例えば、基体2では、電磁波吸収層52がロール形状の基体2の内側面53に形成されている。
例えば、電磁波吸収層52は、少なくとも電磁波発生部6が発生させる波長の電磁波を、基体2よりも高い吸収率で吸収できればよい。一例として、本実施形態では、耐熱性を有する黒色または濃色(本実施形態では黒色)の顔料を含有する着色インクによって、電磁波吸収層52が形成されている。図5に示すように、本実施形態の電磁波吸収層52は、基体2における一方の面の一部を占める領域に形成される(余白56が残る状態で形成される)。従って、一方の面の全てに電磁波吸収層52が形成される場合に比べて、基体2のコストが低下する。
なお、本実施形態においては、染色面51がロール形状の基体2の外側面に形成され、電磁波吸収層52がロール形状の基体2の内側面53に形成されている構成の基体2を例に挙げて説明したがこれに限定されない。少なくとも、染色面51がロール形状の基体2の外側面に形成されている構成であればよい。
例えば、基体2は、印刷装置10に装着されて用いられる。例えば、ユーザは、基体装着部20に基体2を装着する。ここで、例えば、ロール形状の基体2は、基体2がロール状に巻かれているため、カール部(丸みのクセ)55が付いている。これによって、染色部3を基体2に印刷する際に、基体2と印刷装置10のインクヘッド33とが接触し、目詰まりの発生、染色用基体の巻き込み等の不具合が発生することがある。
図3および図5に示すように、本実施形態において、ユーザは、印刷装置10によって染色部3を印刷する際に、印刷装置10のインクヘッド33に対して、ロール形状の基体2の外側面が対向するように、基体2を印刷装置10の基体装着部20に設置する。すなわち、印刷装置10のインクヘッド33に対して、基体2の外側面が対向するように、染色面51が外側面に形成されたロール形状の基体2を、印刷装置10の基体装着部20に設置することで、カール部55とインクヘッド33が接触することを抑制することができる。
<電気的構成>
図6を参照して、本実施形態の染料付基体製造システム100の電気的構成について説明する。本実施形態の染料付基体製造システムは、印刷装置10とパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)60を備える。
印刷装置10は、印刷装置10の動作を制御する制御部40を備える。制御部40は、CPU(プロセッサ)41、ROM42、およびRAM43を備える。CPU41は、印刷装置10の各部の制御を司る。ROM42には、印刷装置10の動作を制御するための制御プログラム(例えば、図13に例示する印刷処理を実行するための印刷制御プログラム等)、および初期値等が記憶されている。制御プログラムは、図示しない不揮発性メモリに記憶されていてもよい。RAM43には各種情報が一時的に記憶される。制御部40には、操作部15、インクヘッド33、基体送出モータ35、カッター駆動モータ36、キャリッジモータ37、および外部通信インターフェース38が、バスを介して接続されている。外部通信インターフェース38は、印刷装置10をPC60等の外部機器に接続する。
PC60は、PC60の動作を制御する制御部70を備える。制御部70は、CPU71、ROM72、RAM73、およびハードディスクドライブ(HDD)74を備える。CPU71はPC60における各種処理を司る。ROM72には、CPU71が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。RAM73は各種情報を一時的に記憶する。HDD74は不揮発性の記憶媒体である。HDD74には、例えば、図7に例示する印刷制御データ作成処理を実行するための印刷制御データ作成プログラム、および各種テーブル(例えば図9参照)が記憶されている。HDD74に記憶されるプログラムは、CD−ROMまたはインターネット等を介して取得されてもよい。制御部70には、モニタ61、操作部62、および外部通信インターフェース68が、バスを介して接続されている。モニタ61は、制御部70による制御に従って各種画像を表示する。操作部62(例えば、キーボード、マウス等)には、ユーザによる各種操作指示が入力される。外部通信インターフェース68は、PC60を印刷装置10等の外部機器に接続する。
<印刷制御データ作成処理>
図7〜図12を参照して、PC60が実行する印刷制御データ作成処理について説明する。印刷制御データは、印刷装置10の動作を制御するためのデータである。本実施形態の印刷装置10は、PC60から入力した印刷制御データに従って、基体2に対する染料部3の印刷を実行する。PC60のCPU71は、印刷制御データの作成指示を入力すると、印刷制御データ作成プログラムに従って、図7に例示する印刷制御データ作成処理を実行する。
本実施形態における印刷制御データ作成処理には、印刷リストを作成する処理(S1〜S7)と、印刷リストに従って印刷制御データを作成する処理(S8〜S18)とが含まれる。印刷リスト89(図8参照)は、製造する染料付基体1のリストである。印刷リスト89では、製造する染料付基体1の単位毎に、リストにおける順番(リスト順)と、印刷する染料部3の色とを含む各種情報が対応付けられている。図8の印刷リスト89では、リスト順が「No.」で表示されており、色が「色名」のコードで表示されている。印刷制御データを作成する処理(S8〜S18)では、印刷リスト89に従って、基体2に対する複数単位の染料部3の印刷位置が登録される。
図7に示すように、印刷リストを作成する処理(S1〜S7)では、まず、リスト順に「1」が加算される(S1)。本実施形態では、リスト順を管理するカウンタの値が、印刷制御データ作成処理の開始時に「0」となっている。従って、最初にS1の処理が行われると、リスト順を管理するカウンタの値は「1」となる。
次いで、CPU71は、染色する樹脂体の基材、および、基体2に印刷する染料部3の色(換言すると、染料付基体1によって染色される樹脂体の色)を含む各種設定情報を取得する(S2)。
図8を参照して、設定情報の取得方法の一例について説明する。本実施形態では、CPU71は、印刷リスト89を作成する処理中に、設定情報入力画面80(図8参照)をモニタ61に表示する。設定情報入力画面80には、色名入力欄81、基材入力欄82、濃度入力欄83、パターン入力欄84、リスト追加ボタン86、印刷開始ボタン87、および印刷リスト89が表示される。
色名入力欄81には、基体2に印刷する染料部3の色(つまり、製造される染料付基体1によって染色される樹脂体の色)が入力される。なお、染料付基体1に印刷された染料部3の色と、この染色用基体1を用いて染色される樹脂体の色とが外観上異なる場合があることは言うまでもない。基材入力欄82には、染色する樹脂体の基材が入力される。濃度入力欄83には、樹脂体を染色する色の濃度が入力される。パターン入力欄84には、染料部3の印刷パターンが入力される。印刷パターンには、例えば、樹脂体の全面に均一に染色するためのパターン、グラデーション状に樹脂体を染色するためのパターン、樹脂体の中心部と外周部で濃度を変更するためのパターン等を採用できる。リスト追加ボタン86は、ユーザが印刷リスト89に項目を追加する場合に操作される。S2の処理では、リスト追加ボタン86が操作されると、その時点で各種入力欄81〜84に入力されている各種設定情報が、追加する印刷リストに対応する設定情報として取得される。印刷開始ボタン87は、基体2への染料部3の印刷を開始させる場合にユーザによって操作される。
CPU71は、各種設定情報を取得すると(S2)、取得した特性情報(本実施形態では基材)に応じて、複数(本実施形態では8種類)のインクの中から印刷に使用するインクを決定する(S3)。詳細には、CPU71は、色が互いに同一であり、且つ、樹脂体に対する適正が異なる少なくとも2つ以上のインクを含む複数のインクから、樹脂体を染色する際に用いるインクを、取得された特性情報に基づいて選択する。
一例として、本実施形態では、CPU71は、染色する樹脂体の特性と、樹脂体に対して適正なインクとが対応付けされた情報である対応情報に基づいて、複数のインクの中から、樹脂体を染色する際に用いるインクを選択する。例えば、本実施形態では、染色する樹脂体の基材と、染色工程に使用するインクとを対応付ける対応情報の一種であるインク決定テーブル(図9参照)が、HDD74に記憶されている。
図9に例示したインク決定テーブルでは、いずれの基材を染色する場合でも、BK、B、R、Yの4色のインクの少なくともいずれかによって色が再現されるように定められている。しかし、B、R、Yのインクの各々については、色が互いに同一であり、且つ樹脂体の基材に対する適正が互いに異なる複数のインクの中から、染色する樹脂体の基材に適した1つまたは複数のインクが使用されるように、テーブルが作成されている。本実施形態のS3では、CPU71は、インク決定テーブルを参照することで、S2で取得された基材に対応するインクを、印刷に使用するインクとして決定する。
なお、本実施形態においては、染色する樹脂体の特性情報が操作部62を介して入力されることで、CPU71によって取得される。しかし、特性情報を取得する方法を変更することも可能である。例えば、CPU71は、別の装置から特性情報を受信することで、特性情報を取得してもよい。
なお、印刷に使用するインクを決定する方法は適宜変更できる。例えば、対応情報は、操作部62の操作によって設定できてもよい。例えば、図9に例示したインク決定テーブルは、メーカー等によって予め作成されていてもよい。CPU71は、インク決定テーブルの内容(つまり、樹脂体の特性情報と使用インクの対応)を、ユーザによる操作指示に基づいて変更してもよい。CPU71は、ユーザによる操作指示に基づいて、インク決定テーブルを新たに作成してもよい。また、テーブルを使用することは必須ではない。例えば、CPU71は、染色に使用するインクを決定する際に、使用インクの選択指示の入力をユーザに要求し、ユーザによって選択されたインクを使用インクとして決定してもよい。テーブルが用いられることなく、入力された基材に対応するインクが自動的に選択されるように、予めプログラムが作成されていてもよい。また、樹脂体の特性情報は基材の情報に限定されない。例えば、染色する樹脂体の厚み、形状等の少なくともいずれかの情報が、樹脂体の特性情報として用いられてもよい。また、本実施形態では、樹脂体の特性情報に関わらず、4色のインクが1種類ずつ使用される(つまり、常に4つのインクヘッド33が使用ヘッドとして決定される)。しかし、CPU71は、樹脂体の特性情報に応じて、使用するインクの数を変更してもよい。また、色が互いに同一であり、且つ樹脂体に対する適正が異なる2つ以上のインクを、1つの樹脂体を染色するための使用インクとして決定してもよい。
CPU71は、使用するインクを決定すると(S3)、S2で取得した色(換言すると、ユーザによって選択された色)を、S3で決定したインクによって再現するように、1単位の染料部3を印刷するためのデータを作成する(S4)。CPU71は、作成した1単位分のデータを、印刷リスト89のn番目に追加して保存する(S5)。次いで、CPU71は、印刷開始の指示が入力されたか否かを判断する(S7)。入力されていなければ(S7:NO)、処理はS1へ戻り、次のリスト順への印刷リスト89の追加処理が行われる(S1〜S5)。本実施形態では、ユーザは、印刷リスト89を追加する毎に色を入力することができる。よって、種々の色の染料付基体1が効率良く製造される。印刷開始ボタン87が操作されて、印刷開始の指示が入力されると(S7:YES)、ユーザによって設定された印刷方式に基づいて印刷制御データが作成される(S8〜S18)。
図10および図11を参照して、本実施形態における染料部3の印刷方式について説明する。本実施形態の染料付基体製造システム100は、細長い基体2の各々に対し、複数単位の染料部3を、基体2の長手方向(図10および図11における上下方向)に並べて印刷することができる。従って、多くの単位の染料部3が効率良く印刷される。さらに、本実施形態では、それぞれの基体2を切断することで、複数単位の染料部3を含む基体断片29が作成される。この場合、複数単位の染料部3を含む基体断面29毎に、染料部3の印刷後の各種作業が行われる。従って、1つの単位の染料部3のみを含む染料付基体1を、染料部3の印刷後すぐに製造する場合に比べて、作業効率が向上する。細長い基体2が適宜切断されて用いられるので、基体2のロスを削減することも可能である。
また、本実施形態では、1つの基体断片29に含める染料部3の単位数(本実施形態では、1つの基体断片29の長手方向に並べる染料部3の単位数)を、ユーザが選択することができる。例えば、図10および図11に示す例では、ユーザによって選択された単位数(以下、「選択単位数」という)は「5」である。しかし、選択単位数が「4」となると、それぞれの基体断片29には4単位の染料部3が形成される。従って、基体断片29を作成する際の自由度が向上する。さらに、本実施形態では、ユーザが選択可能な単位数の上限が定められている。よって、基体断片29が大きくなりすぎて(つまり、長くなりすぎて)逆に作業効率が低下してしまうことが防止される。一例として、本実施形態における単位数の上限は「5」であるが、上限は適宜変更できる。
図10および図11を参照して、複数の基体2に対する複数の染料部3の印刷配列について説明する。図10および図11では、図面上の上下方向が、送出部23による基体2の送出方向(縦方向または列方向という場合もある)となっている。図面上の左右方向が、送出方向に交差する交差方向(横方向または行方向という場合もある)となっている。
図10に示すように、本実施形態の染料付基体製造システム100は、送出方向に交差する交差方向に沿って、複数単位の染料部3を登録順に従って並べることができる。以下では、図10に例示する印刷を横配列印刷と言う。図10に例示する横配列印刷では、右側から左側に向けて登録順に、4単位の染料部3が4つ(4列)の基体2の各々に1単位ずつ並べられる。交差方向に一並び(一行)の染料部3の印刷が完了すると、印刷が完了した一並びの染料部3から送出方向にずれた位置に、登録順の続きに従って再度一並びの染料部3の印刷が行われる。図10に示す例では、選択単位数が「5」となっている。従って、4つの基体2に対して最大で4列×5行の染料部3が、一連の印刷動作によって印刷される。横方向印刷によると、複数の基体2の各々に極力均等な数の染料部3が印刷される。従って、複数の基体2に対して効率良く染料部3が印刷される。
なお、図10に示す例では右側から左側に向けて染料部3の登録順が1つずつ増加している。しかし、左側から右側に向けて登録順が増加してもよい。また、例えば、登録順が右側から「1」、「3」、「2」、「4」となるように配置することも可能である。登録順が左側から「1」、「4」、「2」、「3」となるように配置することも可能である。つまり、「交差方向に沿って、登録順に従って並べる」とは、交差方向の一方から他方に向けて登録順が昇順となるように並べることに限定する意味では無く、登録順が連続した最大4単位の染料部3を、登録順の大小に関わらず交差方向に沿って並べることも含む。
図11に示すように、本実施形態の染料付基体製造システム100は、複数単位の染料部3を送出方向に沿って登録順に並べることができる。以下では、図11に例示する印刷を縦配列印刷と言う。図11に例示する縦配列印刷では、4つ(4列)の基体2の各々に対して、複数単位の染料部3が送出方向に沿って登録順に並べられる。詳細には、図11に示す例では、最も右側の基体2に対し、登録順「1」〜「5」の染料部3が並べられる。右から2番目の基体2に対し、登録順「6」〜「10」の染料部3が並べられる。右から3番目の基体2に対し、登録順「11」〜「15」の染料部3が並べられる。右から4番目の基体2に対し、登録順「16」〜「20」の染料部3が並べられる。図11に示す例では、選択単位数が「5」となっている。従って、一連の印刷動作では、それぞれの基体2に対して5単位の染料部3が印刷される。縦方向印刷によると、ユーザは、登録順が連続した複数単位の染料部3を、それぞれの基体2毎に纏めて管理することができる。
なお、本実施形態の印刷装置10は、複数の基体2を横断するようにキャリッジ30を主走査させることで、複数の基体2に対して複数単位の染料部3を並行して印刷することができる。従って、図11に示す例では、登録順「1」、「6」、「11」、「16」の染料部3が並行して印刷された後、登録順「2」、「7」、「12」、「17」の染料部3が並行して印刷される。従って、それぞれの基体2に対する複数単位の染料部3の印刷が別々に行われる場合に比べて、複数の基体2を送出する回数が低下する。
本実施形態では、ユーザは、横方向印刷および縦方向印刷を含む複数の印刷配列のいずれかを選択し、印刷装置10に実行させることができる。よって、ユーザは、染料付基体1の製造効率および管理効率等に応じて、所望の印刷方式に沿った印刷を印刷装置10に実行させることができる。
図12を参照して、印刷方式の設定方法の一例について説明する。本実施形態では、CPU71は、印刷方式設定画面90(図12参照)をモニタ61に表示することができる。印刷方式設定画面90を表示するタイミングは、例えば、印刷開始の指示が入力された後でもよいし、印刷方式の設定開始指示が入力される任意のタイミングでもよい。印刷方式設定画面90には、横配列印刷選択ボタン91、縦配列印刷選択ボタン92、列数入力欄94、行数(選択単位数)入力欄95、およびOKボタン97が表示される。
横配列印刷選択ボタン91は、横配列印刷が選択される場合にユーザによって操作される。縦配列印刷選択ボタン92は、縦配列印刷が選択される場合にユーザによって操作される。列数入力欄94には、所定の上限数(本実施形態では4列)以下の範囲内で、染料部3を印刷する基体2の数(つまり、使用する列数)が入力される。行数(選択単位数)入力欄95には、それぞれの基体2に送出方向に沿って並べる染料部3の単位数が入力される。前述したように、本実施形態では、選択単位数の上限が定められている。ユーザは、定められた上限値以下の範囲内で選択単位数を入力する。OKボタン97は、印刷方式の設定が完了した際にユーザによって操作される。
図7の説明に戻る。印刷開始ボタン87が操作されて、印刷開始の指示が入力されると(S7:YES)、CPU71は、ユーザによって選択された選択単位数を取得する(S8)。CPU71は、ユーザによって選択された印刷配列(本実施形態では、横配列印刷または縦配列印刷)を取得する(S9)。
選択された印刷配列が横配列印刷であれば(S11:YES)、印刷装置10に横配列印刷を実行させるための印刷制御データを作成する処理(横配列データ作成処理)が行われる(S12、S13)。詳細には、本実施形態のCPU71は、複数単位の染料部3の印刷位置を、リスト順に従って、交差方向に沿って順に登録する(S12)。前述したように、交差方向に沿って1行に並べる染料部3の単位数の上限は、使用する列数となる。また、本実施形態のCPU71は、染料部3の印刷登録が完了した行数が選択単位数となるまで、それぞれの行への印刷登録を順次実行する(S13)。なお、登録可能な最大の単位数(例えば、図10および図11に示す例では、「4列」×「5行」の単位数)の登録が完了する前に、印刷リスト89に保存されている全てのリストの印刷登録が完了した場合には、その時点で処理はS17に移行する。
選択された印刷配列が縦配列印刷であれば(S11:NO)、印刷装置10に縦配列印刷を実行させるための印刷制御データを作成する処理(縦配列データ作成処理)が行われる(S14、S15)。詳細には、本実施形態のCPU71は、複数単位の染料部3の印刷位置を、それぞれの基体2に対して、送出方向に沿ってリスト順に登録する(S14)。前述したように、それぞれの基体2に対して縦方向に1列に並べる染料部3の単位数の上限は、選択単位数となる。また、本実施形態のCPU71は、染料部3の印刷登録が完了した列数が、使用する列数(つまり、印刷する基体2の数)となるまで、それぞれの列への印刷登録を順次実行する(S15)。なお、使用する全ての列への登録が完了する前に、印刷リスト89に保存されている全てのリストの印刷登録が完了した場合には、その時点で処理はS17に移行する。以上の処理によって、選択単位数の染料部3を基体2に対して縦方向に印刷するための一連の印刷制御データが完成する。
CPU71は、S12〜S15で作成した印刷制御データを印刷装置10に送信する(S17)。CPU71は、印刷登録が未だ行われていない染料部3のデータが印刷リスト89に残存しているか否かを判断する(S18)。残存していれば(S18:YES)、処理はS11へ戻り、一連の印刷制御データが再度作成される。印刷リスト89にデータが残存していなければ(S18:NO)、印刷制御データ作成処理は終了する。
<印刷処理>
図13を参照して、印刷装置10が実行する印刷処理について説明する。本実施形態の印刷装置10では、印刷処理を制御するための印刷プログラムがROM42に記憶されている。印刷装置10のCPU41は、印刷制御データをPC60から受信すると、印刷プログラムに従って、図13に例示する印刷制御データ作成処理を実行する。
図13に示すように、印刷処理を開始すると、CPU41は、複数のインクの中から印刷(染色)に使用するインクを選択する(S21)。前述したように、本実施形態の印刷装置10は、基体2に印刷するために使用されるインクの色数よりも多い個数のインクヘッド33を備える。それぞれのインクヘッド33から吐出される複数のインクには、色が互いに同一であり、且つ、樹脂体に対する適正が異なる少なくとも2つ以上のインクが含まれる。CPU41は、染色に使用するインク(つまり、使用するインクヘッド33)を、染色する樹脂体の特性情報に基づいて決定する。なお、本実施形態では、使用するインクはPC60によって決定されており、使用するインクの情報が印刷制御データに含まれている。CPU41は、印刷制御データに含まれる使用インクの情報に従って、実際に印刷に使用するインクを決定する。ただし、印刷装置10のCPU41が、樹脂体の特性情報に基づいて使用インクを決定してもよい。
次いで、CPU41は、受信した印刷制御データが横配列印刷用の印刷制御データであるか否かを判断する(S22)。横配列印刷用の印刷制御データであれば(S22:YES)、CPU41は、印刷登録が行われた複数の染料部3を、印刷制御データに従って、交差方向に沿って登録順に並べて印刷する(S23)。詳細には、本実施形態のCPU41は、交差方向に登録順に並んだ染料部3を、複数の基体2に対して1行ずつ印刷する。つまり、1行の染料部3の印刷が完了した後に、未だ印刷されていない染料部3が存在する場合には、CPU41は、印刷が完了した染料部3から送出方向にずれた位置に、未だ印刷されていない染料部3を続けて印刷する。
受信した印刷制御データが縦配列印刷用の印刷制御データであれば(S22:NO)、CPU41は、印刷登録が行われた複数の染料部3を、印刷制御データに従って、送出方向に沿って登録順に並べて印刷する(S24)。詳細には、本実施形態のCPU41は、送出方向に登録順に並んだ染料部3を、1または複数の基体2に対して1行ずつ印刷する。
次いで、CPU41は、印刷制御データによって定められた所定行の印刷が完了したか否かを判断する(S25)。完了していなければ(S25:NO)、所定行の印刷が完了するまで印刷動作が継続される。所定行の印刷が完了すると(S25:YES)、CPU41は、カッター駆動モータ36によるカッター24の駆動を制御して、染料部3が印刷された部分と未印刷の部分の間で基体2を切断することで、基体断片29を作成する(S26)。次いで、CPU41は、PC60から受信した全ての印刷制御データの印刷が完了したか否かを判断する(S27)。完了していなければ(S27:NO)、処理はS21へ戻り、次の基体断片29が作成される(S21〜S26)。全ての印刷制御データの印刷が完了すると(S27:YES)、印刷処理は終了する。
<染料付基体製造工程>
図14を参照して、本実施形態における染料付基体の製造工程について説明する。まず、ユーザは、1つの基体断片29に含める染料部3の単位数(選択単位数)を、上限値以下の範囲内で選択する(S31)。前述したように、本実施形態では、ユーザは選択単位数をPC60に入力する。しかし、例えば印刷装置10等に対して選択単位数が入力されてもよい。次いで、ユーザは、印刷装置10のインクヘッド33に対して、ロール形状の染色用基体2の外側面が対向するように、基体2を印刷装置10に設置(配置)する(S32)。これによって、基体2の先端部近傍がインクヘッド33の方向に向けて屈曲することが抑制される。
次いで、ユーザは、印刷装置10によって、所定数の染料部3をそれぞれの基体2に対して長手方向に並べて印刷する(S34)。ユーザは、基体2を切断することで、複数単位の染料部3が印刷された基体断片29を作成する(S35)。前述したように、本実施形態では、印刷装置10のカッター24によって基体2が切断されることで、基体断片29が作成される。しかし、例えば、ユーザが自ら基体2を切断してもよいし、他の装置(例えばシートカッター)を用いて基体2を切断してもよい。
全ての印刷制御データの印刷が完了すると(S36:YES)、ユーザは、基体断片29に印刷されたインクを乾燥させる(S38)。一例として、本実施形態では、それぞれの基体断片29が乾燥用治具(図示せず)にセットされ、乾燥用治具が乾燥機(例えば、送風機またはオーブン等)にセットされることで、基体断片29のインクの乾燥工程が行われる。従って、1単位ずつ切断された基体2を乾燥させる場合に比べて、効率良く乾燥工程が行われる。なお、乾燥工程を変更することも可能である。例えば、乾燥機を用いることなく、基体断片29を所定時間以上放置することで、インクを乾燥させてもよい。
次いで、ユーザは、インクが乾燥された基体断片29をさらに切断することで、1つの単位の染料部3を含む染料付基体(単位基体)1を作成する(S39)。その結果、ユーザは、転写工程を行う場合に、染色したい色に応じた適切な染料付基体1を容易に選択して使用することができる。一例として、本実施形態のS39では、シートカッターによって基体断片29が1単位毎に切断される。しかし、基体断片29を切断する方法は適宜変更できる。例えば、ユーザが手動で基体断片29を切断してもよい。以上の工程によって、染料付基体製造工程は終了する。
以上説明したように、本実施形態の一つの態様である染料付基体の製造方法は、昇華性の染料を加熱し、染料を樹脂体に向けて昇華させることで樹脂体を染色する染色工程において使用される染料付基体の製造方法である。本実施形態における染料付基体の製造方法は、設置ステップおよび印刷ステップを含む。設置ステップは、染料が付着されるロール形状に形成された染色用基体2であって、染料が付着される側の面がロール形状の染色用基体2の外側面に形成された染色用基体2に、印刷装置10によって染料を印刷する際に、印刷装置10のインクヘッド33に対して染色用基体2の外側面が対向するように、染色用基体2を印刷装置10に設置するステップである。印刷ステップは、印刷装置10のインクヘッド33によって、樹脂体に蒸着される染料が含有されたインクを染色用基体2に向けて吐出することで、染料を染色用基体2に印刷するステップである。
本実施形態によると、ロール形状の染色用基体2の先がインクヘッド33に向けて屈曲することが抑制される。従って、例えば、染色用基体2の先がインクヘッド33に接触することで生じる不具合(例えば、インクヘッドの目詰まり、染色用基体2の巻き込み等)の発生が抑制される。また、染色用基体2とインクヘッド33の間の距離が不均一となることで生じる不具合(例えば、色ムラの発生等)が抑制される。また、本実施形態では、ロール形状の染色用基体2をカットしながら染料付基体1が製造される。よって、予めカットされた染色用基体を用いる必要が無くなるので、製造コストを低減することが容易である。
本実施形態における染色用基体2は、染料が付着される側の面の反対側の面に、染色用基体2の材質に比べて高い電磁波吸収率を有する電磁波吸収層52を備える。電磁波吸収層52は、ロール形状の染色用基体2の内側面に形成される。従って、本実施形態によると、電磁波吸収層52を有する染料付基体1が迅速に製造される。また、電磁波吸収層52を有する染料付基体1が低コストで製造される。
本実施形態における一つの態様である染色樹脂体の製造方法は、蒸着ステップと定着ステップを含む。蒸着ステップは、前述した染料付基体の製造方法によって製造された染料付基体1を樹脂体と対向させ、染料付基体1に付着した染料を加熱することによって、染料を昇華させて樹脂体に蒸着させるステップである。定着ステップは、染料が蒸着された樹脂体を加熱することによって、染料を樹脂体に定着させるステップである。本実施形態によると、染色された樹脂体が効率良く製造される。
本実施形態の一つの態様である印刷制御装置(例えばPC60)は、取得手段および選択手段を備える。取得手段は、染色を行う樹脂体の特性情報を取得する。選択手段は、樹脂体に蒸着される昇華性染料が含有された複数のインクであって、色が互いに同一であり、且つ樹脂体に対する適正が異なる少なくとも2つ以上のインクを含む複数のインクから、樹脂体を染色する際に用いるインクを、樹脂体の特性情報に基づいて選択する。本実施形態によると、ユーザが所望する色となるように染色が行われる。また、樹脂体の特性に応じた適正なインクが選択されて印刷が行われるので、樹脂体が好適に染色される。また、染料付基体1が迅速に製造される。
本実施形態の印刷制御装置は、樹脂体の特性情報と適正なインクとが対応付けされた情報である対応情報に基づいて、複数のインクの中から樹脂体を染色する際に用いるインクを選択する。対応情報は、ユーザによる操作部62の操作によって設定することも可能である。この場合、新たな種類の樹脂体を染色する場合でも、樹脂体に適したインクが容易に選択される。また、温度、湿度等の環境変化の影響によって、所望の色で染色を行うことが難しい場合であっても、ユーザは、対応情報を設定することで染色の工程を調整することができる。
本実施形態の一つの態様である印刷装置10は、インクヘッド33、制御部40、取得手段、および選択手段を備える。インクヘッド33は、昇華性の染料が含有されたインクを染色用基体2に向けて吐出する。印刷装置10が備えるインクヘッド33は、染色用基体2に印刷するために使用されるインクの色数よりも多い。制御部40は、印刷装置10の動作を制御する。取得手段は、染色を行う樹脂体の特性情報を取得する。選択手段は、色が互いに同一であり、且つ樹脂体に対する適正が異なる少なくとも2つのインクを含む複数のインクから、樹脂体に染色する際に用いるインクを、樹脂体の特性情報に基づいて選択する。従って、樹脂体が好適に製造される。
本実施形態の一つの態様である印刷制御プログラムは、印刷装置10の動作を制御する印刷制御装置(例えばPC60)において実行される。前記印刷制御プログラムが印刷制御装置のプロセッサによって実行されることで、取得ステップおよび選択ステップが印刷制御装置によって実行される。取得ステップは、染色を行う樹脂体の特性情報を取得するステップである。選択ステップは、色が互いに同一であり、且つ樹脂体に対する適正が異なる少なくとも2つ以上のインクを含む複数のインクから、樹脂体を染色する際に用いるインクを、樹脂体の特性情報に基づいて選択するステップである。本実施形態の印刷制御プログラムによると、樹脂体が好適に製造される。
本実施形態の一つの態様である染料付基体の製造方法は、樹脂体に蒸着される昇華性染料を含む染料部3を備えた染料付基体1を製造する方法であり、印刷ステップ、断片作成ステップ、および乾燥ステップを含む。印刷ステップは、昇華性染料を含有したインクを印刷装置10によって細長い基体2に吐出させることで、1つまたは1セットの樹脂体を染色する染料部3を1つの単位として、複数単位の染料部3を基体2の長手方向に並べて印刷するステップである。断片作成ステップは、染料部3が印刷された基体2を切断することで、複数単位の染料部3を含む基体断片29を作成するステップである。乾燥ステップは、基体断片29に含まれる複数単位の染料部3のインクを乾燥させるステップである。
本実施形態によると、印刷後に行われる各種作業(例えば、基体2の運搬作業、乾燥作業等の少なくともいずれか)が、複数単位の染料部3を含む基体断片29毎に行われる。従って、染料付基体1が効率良く製造される。さらに、細長い基体2が適宜切断されて用いられるので、基体2のロスを削減することも容易である。
本実施形態の断片作成ステップは、印刷装置10が備えるカッター24によって行われる。従って、本実施形態では、基体断片29が印刷装置10によって効率良く作成される。
本実施形態では、印刷ステップにおける複数単位の染料部3の印刷と、断片作成ステップにおける基体断片29の作成とが、印刷装置10によって交互に実行される。従って、複数の基体断片29を作成する場合でも、印刷装置10は効率良く基体断片29を作成することができる。
本実施形態における染料付基体の製造方法は、乾燥ステップにおいてインクが乾燥された基体断片29をさらに切断することで、1つの単位の染料部3を含む基体2を作成する単位基体作成ステップをさらに含む。従って、ユーザは、転写工程を行う場合に、染色したい色に応じた適切な染料付基体1を容易に選択して使用することができる。
本実施形態における染料付基体の製造方法は、1つの基体断片29に含める染料部3の単位数を、所定の上限値以下の範囲内で選択する指示を入力する単位数入力ステップをさらに含む。印刷ステップでは、選択された単位数の染料部3が、印刷装置10によって基体2に印刷される。従って、基体断片29を作成する際の自由度が向上する。例えば、少ない数の染料付基体1を製造するのも容易である。さらに、本実施形態では、ユーザが選択可能な単位数の上限が定められている。よって、基体断片29が大きくなり過ぎて逆に作業効率が低下してしまうことが防止される。
本実施形態における一つの態様である印刷装置10は、インクヘッド33、カッター24、および制御部40を備える。インクヘッド33は、樹脂体に蒸着される昇華性染料が含有されたインクを基体2に向けて吐出することで、昇華性染料を含む染料部3を基体2に印刷する。カッター24は基体2を切断する。制御部40は印刷装置10の動作を制御する。制御部40は、インクヘッド33の駆動を制御することで、1つまたは1セットの樹脂体を染色する染料部3を1つの単位として、複数単位の染料部3を細長い基体2に印刷させる。制御部40は、カッター24の駆動を制御して基体2を切断することで、複数単位の染料部3を含む基体断片29を作成する。本実施形態の印刷装置10によると、染料付基体1が効率良く製造される。
本実施形態における一つの態様である印刷装置10は、基体装着部20、送出部23、インクヘッド33、および制御部40を備える。基体装着部20は、細長いシート状の基体2を複数装着する。送出部23は、基体装着部20に装着された複数の基体2を、基体2の長手方向に沿って送出する。インクヘッド33は、樹脂体に蒸着される昇華性染料が含有されたインクを、送出部23によって送出される複数の基体2に向けて吐出することで、昇華性染料を含む染料部3を複数の基体2に印刷する。制御部40は、印刷装置10の動作を制御する。制御部40は、送出部23およびインクヘッド33の駆動を制御することで、1つまたは1セットの樹脂体を染色する染料部3を1つの単位として、1単位または複数単位の染料部3を複数の基体2に印刷させる。本実施形態によると、1つの基体2のみに対して染料部3が印刷される場合に比べて、複数の染料付基体1が効率良く製造される。
本実施形態では、制御部40は、印刷登録が行われた複数単位の染料部3を複数の基体2に印刷する場合に、送出部23による複数の基体2の送出方向に交差する交差方向に沿って、複数単位の染料部3を登録順に従って並べる横配列印刷を実行する。横配列印刷によると、複数の基体2に極力均等に染料部3が印刷される。つまり、特定の基体2に複数の染料部3が印刷され、且つ他の基体2に染料部3が印刷されない状況となる頻度が低下する。従って、横配列印刷によると、複数の基体2に対して効率良く染料部3が印刷される。
本実施形態では、制御部40は、交差方向に沿って一並びの染料部3を登録順に従って並べて印刷した後に、印刷登録され且つ未だ印刷されていない染料部3が存在する場合に、印刷された一並びの染料部から送出方向にずれた位置に、未だ印刷されていない染料部3を交差方向に沿って並べて印刷することが可能である。従って、本実施形態の印刷装置10は、複数の基体2に対する染料部3の印刷を横配列印刷によって効率良く実行しつつ、それぞれの基体2に複数単位の染料部3を印刷することも可能である。
本実施形態では、制御部40は、印刷登録が行われた複数単位の染料部3を複数の基体2に印刷する場合に、送出部23による複数の基体2の送出方向に沿って、複数単位の染料部3を登録順に並べる縦配列印刷を実行する。縦配列印刷によると、登録順が連続した複数単位の染料部3が、1つの基体2に並べて印刷される。従って、縦配列印刷によると、登録順が連続した複数の染料部3を、それぞれの基体2毎に纏めて管理することができる。
本実施形態の制御部40は、横配列印刷と縦配列印刷を含む複数の印刷方式のいずれかを、ユーザによって入力される印刷方式の選択指示に応じて実行する。従って、ユーザは、染料付基体1の製造効率および管理効率等に応じて、所望の印刷方式に沿った印刷を印刷装置に実行させることができる。
本実施形態の制御部40は、縦配列印刷を実行する場合に、送出方向に沿って基体2に登録順に並べる染料部3の数を所定の上限値以下とする。よって、1つの基体2に多数の染料部3が印刷されて管理効率が逆に低下してしまうことが防止される。
本実施形態の制御部40は、複数の基体2の各々に異なる色の染料部3を印刷させることが可能である。従って、ユーザは、種々の色の染料付基体を効率良く得ることができる。
本実施形態における一つの態様である印刷制御データ作成プログラムは、印刷装置10の動作を制御するための印刷制御データを作成するデータ作成装置(一例として、本実施形態ではPC60)によって実行される。印刷装置10は、基体装着部20、送出部23、およびインクヘッド33を備える。印刷制御データ作成プログラムがデータ作成装置のプロセッサによって実行されることで、データ作成ステップがデータ作成装置によって実行される。データ作成ステップは、1つまたは1セットの樹脂体を染色する染料部3を1つの単位として、1単位または複数単位の染料部3を複数の基体2に印刷させる印刷制御データを作成するステップである。本実施形態によると、1つの基体2のみに対して染料部3が印刷される場合に比べて、複数の染料付基体1が効率良く製造される。
本実施形態におけるデータ作成ステップは、複数単位の染料部3の印刷位置を、送出部23による複数の基体2の送出方向に交差する交差方向に沿って順に登録して印刷制御データを作成する横配列データ作成ステップを含む。横配列データ作成ステップによると、複数の基体2に極力均等に染料部3が印刷される。
本実施形態におけるデータ作成ステップは、複数単位の染料部3の印刷位置を、送出部23による複数の基体2の送出方向に沿って順に登録して印刷制御データを作成する縦配列データ作成ステップを含む。縦配列データ作成ステップによると、登録順が連続した複数の染料部3を、それぞれの基体2毎に纏めて管理することができる
本実施形態では、横配列データ作成ステップと縦配列データ作成ステップを含む複数のデータ作成ステップのいずれかが、ユーザによって入力される選択指示に応じて実行される。従って、ユーザは、染料付基体1の製造効率および管理効率等に応じて、所望の印刷方式に沿った印刷を印刷装置に実行させることができる。
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、印刷制御データ作成処理(図7参照)はPC60によって実行される。しかし、印刷制御データ作成処理の少なくとも一部が他のデバイスによって実行されてもよい。例えば、印刷制御データ作成処理の少なくとも一部を、印刷装置10の制御部40が実行してもよい。つまり、印刷装置10自身が、印刷制御データを作成する印刷制御装置またはデータ作成装置として機能してもよい。
上記実施形態では、基体断片29が一旦製造されて染料部3が乾燥された後、基体断片29がさらに切断されることで、1単位の染料部3を含む染料付基体1が製造される。1単位の染料部3を含む染料付基体1によって蒸着工程が行われる。しかし、複数単位の染料部3を含む染料付基体を製造することも可能である。例えば、複数単位の染料部3が印刷された基体断片29を、そのまま染料付基体1として蒸着工程に使用してもよい。この場合、1単位の樹脂体を染色するための蒸着用治具7に、染色用基体1を1つずつ設置する必要が無くなる。また、基体断片29をさらに切断する必要も無くなる。従って、染色工程の効率がさらに向上する。また、複数の染料部3が印刷された細長い基体2を切断せずに、そのまま染料部3を乾燥してもよい。この場合、染料部3の乾燥後に基体2を切断してもよい。また、染料部3を乾燥させた後に、基体2を再度ロール状に巻いて保管してもよい。
基体2およびインクの少なくともいずれかに帯電防止剤を付与することも可能である。一例として、電磁波吸収層52を形成するインクに帯電防止剤を付与してもよい。この場合、基体2の広い範囲に帯電防止剤が付着する。また、昇華性染料が含有されたインクに帯電防止剤を付与してもよい。基体2およびインクの少なくともいずれかに帯電防止剤を付与することで、埃等が染料付基体1に付着し難くなる。その結果、樹脂体の染色品質が向上する。