〔第1実施形態〕
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(冷蔵庫1の概略)
図1は、第1実施形態の冷蔵庫1を示す正面図である。図1に示すように、冷蔵庫1は断熱箱体から成る本体部2を有し、本体部2には断熱壁9(図2参照)により仕切られる冷蔵室3、冷凍室5、野菜室7が形成される。
冷蔵室3の前面の開口面3a(図2参照)を塞ぐ扉4は、左右の二方向より択一的に開くことが可能な扉である。扉4は、左右端にハンドル4a、4bを有し、本体部2に鉛直な枢支軸4cまたは枢支軸4dで枢支され、左右の二方向から択一的に開閉できるようになっている。扉4の左右のハンドル4a、4bの近傍には、電動による扉4の開放を指示するための右操作ボタン4eおよび左操作ボタン4fが設けられている。右操作ボタン4eは、右開きを指示する操作ボタンであり、左操作ボタン4fは、左開きを指示する操作ボタンである。なお、扉4の開く方向を使用者が指示できるのであれば、左右の操作ボタンは独立していなくてもよい。
冷凍室5の前面の開口面はスライド式の扉6により開閉され、野菜室7の前面の開口面はスライド式の扉8により開閉される。各扉4、6、8の本体部2に面した周部には冷気漏れを防止するパッキン(不図示)が設けられる。パッキンには本体部2の前面に吸着するマグネット(不図示)が設けられる。
(扉4のカム機構)
図2は、冷蔵庫1の上部の扉4を開いた状態を示す斜視図である。冷蔵室3の上方には左右の両端部に一対の支持部材10が配される。冷蔵室3の下方には、左右方向に延びるアングル11が配される。各支持部材10および扉4の上面の左右の両端部には、扉4の中心線に対して左右対称に配される一対のカム機構12が設けられる。また、アングル11の左右の両端部および扉4の下面の左右の両端部にも同様の一対のカム機構12が設けられる。
扉4の上下にそれぞれ設けられる左右一対のカム機構12によって、扉4と本体部2とを係合および係合解除し、扉4が構成される。また、扉4の下面の中央部にはアングル11上を転動するローラ18(図3、図4参照)が設けられる。
図3は、アングル11およびローラ18の側面断面図であり、図4は、アングル11およびローラ18の正面断面図である。図3、図4に示すように、アングル11は金属板を断面L字型に屈曲して形成され、鉛直部11vがネジ(不図示)により断熱壁9(図2参照)に取り付けられる。アングル11の水平部11hの後端部には後方を下方に傾斜する傾斜面11aが設けられ、前端部には前方を下方に傾斜する傾斜面11cが設けられる。傾斜面11aの上端と傾斜面11cの上端との間には水平面11dが設けられる。
扉4の下面には貫通孔17aに挿通されるネジ(不図示)により支持部材17が取り付けられる。支持部材17の後部には回転軸を左右に配した複数のローラ18が軸支される。ローラ18が傾斜面11a上に配されると、扉4が自重によって閉じる方向に付勢される。また、ローラ18が傾斜面11c上に配されると、扉4が自重によって開く方向に付勢される。
図5は、扉4の上方のカム機構12を示す上面図であり、扉4が閉じられた状態を示している。また、図6は、図5のA-A断面図を示している。左右の両端部に配されるカム機構12は、支持部材10に設けられるヒンジピン21、リブ24、第1係合突起25(それぞれ図5中、ハッチングで示す)と、扉4に設けられる溝カム31、ボス34、第2係合突起35とを備えている。
ヒンジピン21は、支持部材10にインサート成形された金属から成り、扉4の枢支軸4cおよび枢支軸4d(図1参照)を形成する。リブ24は樹脂成形によってアーチ状に形成され、ヒンジピン21の周囲に配される。リブ24の内面にはヒンジピン21と同心の円筒面から成る案内面24aが形成される。尚、リブ24の案内面24aを多数のピンや突起部によって形成し、包絡面がヒンジピン21と同心の円弧になるように形成してもよい。即ち、案内面24aがヒンジピン21と同心の円弧上に沿って形成されていればよい。
第1係合突起25は左右のヒンジピン21の間に配置される。第1係合突起25には近い方のヒンジピン21と同心の円筒面25aと、遠い方のヒンジピン21と同心の円筒面25bとが対向して設けられる。
溝カム31、ボス34および第2係合突起35は、一体に樹脂成形されたカム部材30により形成され、扉4の上面にカム部材30が取り付けられる。溝カム31はヒンジピン21が係合し、連続する第1溝部32と第2溝部(受部)33とを有している。第1溝部32は本体部2側を開放し、枢支軸4c、4dに垂直な面内で開放端が内側に向くように傾斜して形成される。第2溝部33は第1溝部32の開放端と反対の端部に連続し、第1溝部32から外側に向かって屈曲して第1溝部32の開放端から離れる方向に延びる。ヒンジピン21が第1溝部32を移動して第2溝部33の閉じられた端部(後述する第2係止位置)にて嵌合することで、枢支軸4cあるいは枢支軸4dによる扉4の回動が可能になる。
ボス34は第2溝部33が凹設され、リブ24の案内面24aに摺動する円筒面34aを有している。また、ボス34の周面には後述する第1係止位置でリブ24との干渉を回避する逃げ部34b(図8参照)が設けられる。尚、リブ24の案内面24aが円筒面から成る場合には、ボス34の周面を多数のピンや突起部により形成してもよい。即ち、ボス34の周面を形成する多数のピンや突起部の包絡面が円筒面となるように形成してもよい。
第2係合突起35は、第1係合突起25の円筒面25a、25bとそれぞれ摺動する摺動面35a、35bを有している。カム部材30には第1係合突起25との干渉を回避する逃げ溝36が第2係合突起35の周囲に凹設される。
(扉駆動装置50)
図7は、冷蔵庫1の上面図である。図7に示すように、本体部2の上面には扉4の上方に延びる支持部材51が取り付けられ、支持部材51上に扉駆動装置50が設置される。扉駆動装置50は、扉4を電動にて開放する開駆動と、扉4を電動にて閉鎖する閉駆動とを行うものである。そして、扉駆動装置50は、扉4を開駆動および閉駆動する扉駆動機構に加えて、地震等の異常振動時に扉4が不用意に大きく開放することを規制する扉開放規制機能を有している。
本実施形態の冷蔵庫1においては、扉開放規制機能として扉4の横方向への移動(横移動)を規制して扉4の開放を規制する扉横移動規制機構80を備えている。詳細については後述するが、扉横移動規制機構80は、後述するロックピン81と係合部としての規制面82aおよび溝部82とを備える。なお、扉開放規制機能は、扉駆動機構の少なくとも一部を用いて扉4の開放を半扉領域以下に規制するものであればよい。後述する制御装置40(図21参照)は、異常振動の発生もしくは発生予測に応じて、扉横移動規制機構80にて扉4の開放を規制する。
扉駆動装置50は、扉4を開駆動および閉駆動する扉駆動機構として、摺動ピン(摺動子)59、摺動ピン59を駆動する駆動部58、摺動ピン59を摺動案内するカム部60および扉4の開き量を検知する開き量検知センサ43(図21参照)を備えている。
駆動部58は、モータ52、ウォーム53、ウォームホイール54、減速ギア55および減速ギアである回転体56を有している。回転体56の下面に摺動ピン59が設けられる。ウォーム53はモータ52のシャフトに取り付けられ、ウォームホイール54に噛合する。減速ギア55はウォームホイール54と同心に取り付けられる。回転体56は減速ギア55に噛合する。
以下の説明において、開口面3a(図2参照)の法線および扉4が閉じた状態の枢支軸4c(4d)に垂直な方向(作動方向)をX方向、開口面3aの法線方向をY方向、枢支軸4c(4d)の軸方向をZ方向という場合がある。本実施形態ではX方向が左右方向、Y方向が前後方向、Z方向が上下方向である。
カム部60は、扉4の上面に設けられる。カム部60は、回転体56のY方向の中心線CLに対して対称(左右対称)に設けられ、上方に突出するリブ63、リブ64、リブ73およびリブ74を有している。リブ63およびリブ64が左側に位置し、リブ73およびリブ74が右側に位置する。
リブ63は、開放カム面63aを有し、リブ73は、開放カム面73aを有する。開放カム面63aと開放カム面73aとは、中心線CLに対して対称をなす。図7に示す扉4の閉状態では、開放カム面63aは、本体部2に近づくに従って枢支軸4cから離れつつ摺動ピン59の軌道円よりも内側に入り込むように傾斜する。一方、開放カム面73aは、本体部2に近づくに従って枢支軸4cに近づきつつ摺動ピン59の軌道円よりも内側に入り込むように傾斜する。
リブ64は、閉鎖カム面64aを有し、リブ74は、閉鎖カム面74aを有する。閉鎖カム面64aと閉鎖カム面74aとは、中心線CLに対して対称をなす。図7に示す扉4の閉状態では、閉鎖カム面64aは、本体部2に近づくに従って枢支軸4cに近づくように傾斜する。一方、閉鎖カム面74aは、本体部2に近づくに従って枢支軸4cにから離れるように傾斜する。
つまり、カム部60には、摺動ピン59を摺動案内する4つのカム面63a,64a,73a,74aが形成されている。このうち、閉鎖カム面64aと開放カム面63aとは、Y方向に対する傾斜が逆方向となっており、中心線CLに対して共に枢支軸4d側に配置され、閉鎖カム面64aは開放カム面63aよりも本体部2に近い側に配置される。一方、閉鎖カム面74aと開放カム面73aとは、Y方向に対する傾斜が逆方向となっており、中心線CLに対して共に枢支軸4c側に配置され、閉鎖カム面74aは開放カム面73aよりも本体部2に近い側に配置される。
駆動部58の駆動により回転体56が時計回りCWに回転すると、摺動ピン59が左側の開放カム面63aに摺動する。この時、扉4は右側の枢支軸4cで枢支されて回動する。また、駆動部58の駆動により回転体56が反時計回りCCWに回転すると、摺動ピン59が右側の開放カム面73aに摺動する。この時、扉4は左側の枢支軸4dで枢支されて回動する。
駆動部58は、扉4の開駆動および閉駆動が終了すると、中心線CL上の正面側に摺動ピン59が位置するように回転体56を停止させる。中心線CL上の正面側の位置が摺動ピン59の待機位置である。摺動ピン59を常に待機位置で待機させることで、摺動ピン59にカム部60を引っ掛かることなく扉4を手動で開閉することができる。
(扉4の開閉動作)
次に、扉横移動規制機構80について説明する前に、扉4の開閉時の動作について説明する。なお、ここでは扉4を右方から開閉(右開き)する場合を例に説明するが、扉4を左方から開閉(左開き)する場合も同様である。図8、図9は、冷蔵庫1の扉4を開く際のカム機構の動作を説明する平面図である。
扉4の閉状態で両側のカム機構12は、図5に示す第1係止位置に配置される。即ち、左右のヒンジピン21が第1溝部32と第2溝部33との連結部に配置される。また、ボス34の逃げ部34bは、図5に示すように、リブ24の案内面24aに沿って配置される。
図5に示すように、第1溝部32は枢支軸4dに垂直な面内で前後方向に対して傾斜しているため、左右の第1溝部32の開放端からヒンジピン21が離脱することがない。従って、扉4の脱落を防止することができる。
扉4を右方から開く右操作ボタン4eが操作されると、駆動部58によって扉4を右方から開駆動する。即ち、回転体56が図7において反時計回りCCWに回転し、摺動ピン59がY方向の後方への移動を伴ってX方向の枢支軸4dから離れる右方向に移動する。これにより、摺動ピン59がリブ73の開放カム面73aに摺動して扉4を右方に押圧し、扉4が右方向に僅かに移動する。
扉4が右方に右方向に僅かに移動することで、図8に示すように、左側の溝カム31に係合したヒンジピン21は、第1溝部32から離れる方向に第2溝部33内を外側(図中、左方)に相対移動する。両方のヒンジピン21の間隔は一定のため、左側のヒンジピン21が外側に向かって相対移動すると、右側のヒンジピン21は内側に移動する。そして、左側のヒンジピン21が第2溝部33の閉じられた端部に到達することで、カム機構12が第2係止位置に配置される。
ここで、第1溝部32は開放端が扉4の内側に向かって傾斜しているので、右側のヒンジピン21は内側に移動することで第1溝部32の係合案内によって第1溝部32の開放端に向かって相対移動が可能となる。従って、扉4は、回動しながら左側の枢支軸4d側から右側の開放側にスライド移動して、扉4が右方から開かれる。
カム機構12が第2係止位置に配置されると、左側のボス34の円筒面34aがリブ24の案内面24aと摺動を開始する。これにより、ヒンジピン21と第2溝部33との係合により略前後方向への扉4の移動が規制され、ボス34とリブ24との係合により略左右方向への扉4の移動が規制される。従って、カム機構12は第2係止位置で扉4をスライド規制して回動自在に支持する。
カム機構12において、右側の第1係合突起25の円筒面25bと第2係合突起35の摺動面35bとが摺動し、左側の第1係合突起25の円筒面25aと第2係合突起35の摺動面35aとが摺動する。これにより、扉4をより安定して回動させることができる。
また、摺動ピン59と開放カム面73aとの摺動により扉4が開放方向に移動すると、ローラ18が扉4の自重による付勢力に抗して傾斜面11a(図3参照)を上昇し、扉4は上昇しながら開かれる。また、ローラ18が水平面11d(図3参照)に摺動して扉4は水平に開かれる。
図8の状態からさらに扉4が開かれると、図9に示すように、右側のヒンジピン21と溝カム31との係合が解除される。また、右側の第1係合突起25と第2係合突起35との係合が解除される。これにより、右側のカム機構12の係合が解除される。扉4は左側のヒンジピン21を中心としてスライド規制されて回動する。
図10、図11は、冷蔵庫1の扉駆動装置50の開駆動を説明する上面図であり、図10は開駆動の途中の状態を示し、図11は開駆動が完了した状態を示している。
図10に示すように、摺動ピン59は右側のカム機構12の係合が解除された後も継続して開放カム面73a上を摺動する。扉4が所定量開かれると摺動ピン59が開放カム面73aの終端(後端)に到達し、開駆動を終了する。
駆動部58による開駆動が終了すると、扉4の下面のローラ18が傾斜面11c(図3参照)と摺動し、扉4は自重により開かれる。これにより、図11に示すように摺動ピン59が開放カム面73aから離れた位置に配される。ローラ18が傾斜面11c(図3参照)を抜けると、扉4を手動で容易に開くことができる。駆動部58による開駆動が終了すると、モータ52が反転駆動して摺動ピン59が待機位置(図7の位置)に戻る。
扉4を閉じる場合には、左右のカム機構12に対して上記と逆の動作が行われる。扉4の開状態から手動で扉4を閉じる方向に押すと、ローラ18が傾斜面11c(図3参照)と摺動して扉4が上昇する。ローラ18が水平面11d(図3参照)に到達する状態にまで扉4が閉じられたことを開き量検知センサ43で検知すると、駆動部58によって扉4を閉駆動する。
図12~図14は、冷蔵庫1の扉駆動装置50の閉駆動を説明する上面図であり、図12は閉駆動途中の、扉4が半扉領域にあり引き込んでいる状態を示している。図13は、閉駆動が完了し、扉4が自閉領域にある状態を示しており、図14は、扉4が自閉した状態を示している。扉4が半扉領域にある状態とは、ローラ18が水平面11d(図3参照)にある状態であり、扉4に対して外部より力が加わらない限り、扉4は自重による自閉もせず自重による開放もしない状態である。扉4が自閉領域にある状態とは、ローラ18が傾斜面11a(図3参照)にある状態であり、扉4に対して外部より力が加わらなくとも、扉4は自重により自閉する状態である。
図12に示すように、扉4が半扉領域まで到達すると、回転体56が時計回りCWに回転し、待機位置の摺動ピン59がX方向の枢支軸4dに近づく方向(図中、左方)に移動する。これにより、摺動ピン59がリブ64の閉鎖カム面64aに摺動して扉4が閉じられ、自閉領域へと引き込まれる。
図13に示すように、扉4が所定量閉じられると摺動ピン59が閉鎖カム面64aの終端(前端)に到達する。この時、ローラ18が傾斜面11a(図3参照)上に配されており、この後は、ローラ18が傾斜面11aと摺動し、扉4は自重により閉じられる。
扉4が自閉領域に到達すると、摺動ピン59は、閉鎖カム面64aから離れ、摺動ピン59の摺動面が閉鎖カム面64aから開放カム面63aに切り替えられる。開放カム面63aに切り替えられると、図14に示すように、回転体56が反時計回りCCWに回転し、摺動ピン59がY方向の枢支軸4cに近づく方向(図中、右方)に移動して待機位置に戻る。ローラ18が傾斜面11aと摺動し、扉4が自重にて閉じられるとき、摺動ピン59が開放カム面63aを摺動することで、閉まる方向の付勢力に抗して扉4が支持され、扉4の閉じる速度が規制される。
なお、本実施形態において、ヒンジピン21およびリブ24を本体部2に設け、溝カム31およびボス34を扉4に設けたが、ヒンジピン21およびリブ24を扉4に設け、溝カム31およびボス34を本体部2に設けてもよい。また、第1係合突起25を本体部2に設け、第2係合突起35を扉4に設けたが、第1係合突起25を扉4に設け、第2係合突起35を本体部2に設けてもよい。
(扉横移動規制機構80の構成)
図7に戻り、扉駆動装置50は、扉開放規制機能として扉横移動規制機構80を備えている。扉横移動規制機構80は、前述したように、扉4の横方向への移動(横移動)を規制する。具体的には、左右の両側において、ヒンジピン21が第2溝部33の端部に嵌合することを阻止して扉4の開放を規制する。
扉横移動規制機構80は、駆動部58にて駆動されるロックピン81と、カム部60に設けられ、ロックピン81が係合して扉4の横移動を規制する係合部をなす規制面82aおよび溝部82を有している。ロックピン81は回転体56に設けられ、摺動ピン59と一体的に駆動される。また、規制面82aおよび溝部82は、ロックピン81と係合して、扉4の右方向への横移動を規制する。扉横移動規制機構80は、さらに摺動ピン59と開放カム面73aとを含み、扉4の左方向への横移動を、摺動ピン59と開放カム面73aにて規制する。
図15は、冷蔵庫1の扉駆動装置50のカム部60および回転体56の平面図であり、摺動ピン59が待機位置にある待機状態を示している。図15では、ロックピン81は、回転体56の中心線CL(図7参照)に対して左側であって、回転体56の中心Pに対して摺動ピン59と90°をなす位置に配置されている。また、中心Pからロックピン81までの距離である半径r2は、中心Pから摺動ピン59までの距離である半径r1の1.5倍に設定されている。摺動ピン59が待機位置にある場合のロックピン81の位置をロックピン81の待機位置とも称する。
カム部60における左側のリブ63には、ロックピン81が係合して扉4の右方向への移動を規制する規制面82aと溝部82が形成されている。溝部82は、扉4の開駆動、閉駆動に伴うロックピン81とリブ63との干渉を回避するために設けられた、ロックピン81の通路となる溝(窪み)である。溝部82は、本体部2側を開放し、正面側に向かって舌状に形成されている。規制面82aは、溝部82の壁面として形成されており、溝部82が規制面82aを有している。なお、図15、および後述する図16、図17においては、カム部60における窪んでいる部分をグレーで示す。
図16は、摺動ピン59およびロックピン81が扉横移動規制位置にある扉横移動規制状態を示している。駆動部58の駆動により回転体56が図15の状態から反時計回りCCWに回転すると、ロックピン81は規制面82aに沿って溝部82内を移動し、摺動ピン59は右側の開放カム面73aに向かって移動する。回転体56は、図15の状態から反時計回りCCWに所定の角度(図16では例えば9°)回転したところで停止する。これにより、ロックピン81は規制面82aに対向した位置で停止し、摺動ピン59は右側の開放カム面73aの摺動開始位置である前端に対向した位置で停止する。この位置が、ロックピン81および摺動ピン59の扉横移動規制位置である。
ロックピン81および摺動ピン59を扉横移動規制位置で停止させることで、扉4の横方向への移動を規制することができる。つまり、この状態で、扉4に対して、右方向に移動させる力が加わったとしても、ロックピン81が規制面82aに当接するため、扉4が右方向に動くことを規制する。また、この状態で、扉4に対して、左方向に移動させる力が加わったとしても、摺動ピン59が開放カム面73aに当接するため、扉4が左方向に動くことを規制する。
上述したように、扉4を開放するには、扉4を左右の何れかに横移動させて、左右の何れかのカム機構12においてヒンジピン21を第2溝部33の端部に嵌合させる必要がある(図8参照)。図16のようにロックピン81および摺動ピン59を扉横移動規制位置で停止させることで、扉4の横方向への移動を規制するため、左右の何れのカム機構12においてもヒンジピン21が第2溝部33の端部に嵌合することが阻止され、扉4の開放が規制される。
図17は、扉駆動装置50による開駆動途中の状態にある摺動ピン59およびロックピン81の状態を示している。図17は、図10のカム部60および回転体56の平面図に相当する。図17に示すように、溝部82が形成されていることで、扉横移動規制位置を通過したロックピン81はリブ63との干渉を生じない。
図18の(a)~(d)は、冷蔵庫1の扉4の上面図であり、左側の枢支軸4dにて扉4が回転している状態におけるロックピン81の位置の変化を示している。図18の(a)~(d)に示すように、扉4が所定量開かれて摺動ピン59が開放カム面73aの終端(後端)に到達してカム部60を抜けると、回転体56は停止して摺動ピン59による扉4の開駆動を終了する。このとき、扉4は左側の枢支軸4dにて開かれ、カム部60上のロックピン81の軌跡は枢支軸4dからの半径となる。
図19の(a)~(c)は、扉駆動装置50のカム部の平面図であり、扉4を右方から開駆動(右開き)した時の摺動ピン59およびロックピン81の軌跡を示している。図19の(a)は、上述した扉横移動規制状態である。摺動ピン59およびロックピン81がさらに反時計回りに回転すると、ロックピン81は規制面82aに対向した位置を超えて溝部82の壁面から離れる。これにより、扉4が右方向に動くことを規制しなくなる。そして、摺動ピン59がリブ73の開放カム面73aに摺動して扉4を右方に押圧し、扉4が右方向に僅かに移動することで、左側のカム機構12が第2係止位置に配置され、扉4は左側の枢支軸4dで枢支されて回動する。
図19の(b)は、摺動ピン59が右方の開放カム面73aを摺動して扉4を開放している途中の状態である。図19の(c)は、開駆動が完了し、摺動ピン59がカム部60から抜け出た状態である。溝部82は、扉4の開駆動では上記のように、摺動ピン59およびロックピン81が扉横移動規制位置を超えた後は、ロックピン81の軌跡に干渉しないように形成される。
図20の(a)~(c)は、扉駆動装置50のカム部の平面図であり、左方から開いた(左開き)扉4を閉駆動した時の摺動ピン59およびロックピン81の軌跡を示している。図20の(a)は、回転体56が反時計回りCCWに回転して摺動ピン59が閉鎖カム面74aを押しながら扉4を引き込んでいる状態である。図20の(b)は、摺動ピン59が開放カム面73aに接触した後、回転体56の回転方向が時計回りCWに切り換えられ、開放カム面73aを押している状態である。図20の(c)は、扉4の閉動作がほぼ完了し、摺動ピン59が待機位置に戻る状態である。溝部82は、扉4の閉駆動では上記のように、ロックピン81の軌跡に干渉しないように形成される。
なお、図20の(c)では、図19の(a)とほぼ同様に、摺動ピン59およびロックピン81が扉横移動規制位置となっているが、直前の図20の(b)では扉4は左方にスライドした状態であり、扉4を閉鎖させるに伴って扉4のカム機構12が第1係止位置となるまで扉4が右方にスライド移動することから、第1係止位置よりも右方に横移動することを規制する規制面82aにロックピン81が干渉することはない。
このように、カム部60における溝部82は、このような開駆動時および閉駆動時の摺動ピン59の移動に伴って移動するロックピン81の軌跡に基づいて設計されている。なお、ここでは、溝部82として、全体的に削ったように形成したが、ロックピン81の軌跡に基づいて、ロックピン81が干渉する部分のみを除去してもよい。
ロックピン81は、回転体56の中心Pに対して摺動ピン59との成す角度が80~90°の範囲であれば概ね設定可能である。90°を超えると、ロックピン81の半径r2にもよるが、ロックピン81が規制面82aに当たる位置が、カム部60の後端部に近くなり、ロックピン81と規制面82aとの係合が浅くなり、ロックピン81が抜ける恐れがある。また、80°よりも小さくなると、摺動ピン59が待機位置にある状態で、ロックピン81が規制面82aに当接する。摺動ピン59が待機位置にある状態で、ロックピン81が規制面82aに当接すると、扉4の右方向への移動が規制され、手動による扉4の開放方向が、左開きのみに制限されてしまう。
また、ロックピン81の半径r2は、摺動ピン59の半径r1以下にすると、ロックピン81の経路が摺動ピン59の経路に干渉するため、摺動ピン59の半径r1よりも大きくする必要がある。但し、半径r2が大きくなると、回転体56の径も大きくなり大型化する。そのため、半径r2は可能な範囲で小さくすることが好ましい。図16において言うと、開放カム面63aの強度を確保できる範囲で、ロックピン81の半径r2を小さくする(溝部82をリブ64側に近づける)ことで小型化が図れる。
(冷蔵庫1の電気的構成)
図21は、冷蔵庫1の電気的構成を説明するブロック図である。なお、図21は、扉駆動および扉開放規制に関係する電気的構成を示している。制御装置40は、マイクロコンピュータを主体に構成されている。制御装置40には、振動センサ41、通信装置42、前記右操作ボタン4e、前記左操作ボタン4f、前記開き量検知センサ43、前記駆動部58が接続されている。
振動センサ41は、例えば加速度センサから構成することができる。電気的に振動を検知する振動センサ41に代えて、機械的に振動を検知する構成であってもよい。通信装置42は、ネットワークを介した外部のサーバ等と通信して発表されている地震情報を取得する。具体的には、地震情報配信メール、緊急地震速報等を受信して地震情報等を取得する。取得する地震情報には、既に発生した地震の情報だけでなく、緊急地震予報等の予測を含む。開き量検知センサ43は、上述したように、扉駆動装置50に設けられており、扉4の開き量を検知する。
制御装置40は、右操作ボタン4eあるいは左操作ボタン4fが操作されると、開き量検知センサ43による検知に基づいて駆動部58を駆動して、扉4を右開きあるいが左開きで開駆動を実行する。また、制御装置40は、開き量検知センサ43にて扉4が半扉領域に達したことが検知されると、駆動部58を駆動して右開きあるいは左開きに対応して扉4を閉駆動する。
さらに、本実施の形態では、制御装置40は、振動センサ41にて予め定められている閾値以上の振動を検知する、または、通信装置42にて冷蔵庫1が設置されている地域の地震情報を取得すると、扉駆動装置50の扉横移動規制機構80を用いて扉4の開放を規制する。
(扉開放規制制御)
図22は、冷蔵庫1の第1扉開放規制制御を示すフローチャートである。制御装置40は、振動センサ41あるいは通信装置42の何れかにて、地震発生(予測を含む)が検知されたか否かを常時判断している(S1)。制御装置40は、地震発生が検知されると、扉駆動装置50を駆動して回転体56を所定量(本実施形態ではCCW方向に9°)回転させて、摺動ピン59およびロックピン81を待機位置から扉横移動規制位置まで移動させ、その位置で停止させる(S2)。これにより、扉駆動装置50は、摺動ピン59が右方の開放カム面73aの前端に対向すると共に、ロックピン81が規制面62aに対向した扉横移動規制状態となり、扉4の左右両方向の横移動が規制され、扉4の開放はロックされる。
制御装置40は、この後、振動センサ41にて最後に振動を検知してから所定時間経過したか否かを判断する(S3)。なお、振動センサ41にて最後に振動を検知してから所定時間経過前に再度振動を検知した場合は、所定時間経過のカウントをやり直す。
制御装置40は、最後に振動を検知してから所定時間経過したと判断すると、扉駆動装置50を駆動して回転体56を逆方向に所定量回転させて、摺動ピン59およびロックピン81を扉横移動規制位置から待機位置まで移動させる。これにより、扉駆動装置50による扉4のロックは解除される。
制御装置40は、扉横移動規制状態としている間は、報知音などで使用者に扉4がロック状態であることを報知してもよい。これにより、扉横移動規制状態の扉4を使用者が無理に開放しようとすることを防止できる。また、使用者に地震発生を報知することも可能となる。
扉駆動装置50による扉4のロックは使用者の操作によって解除できるようにしてもよい。これにより、使用者が地震発生を認識した上で、それでも冷蔵庫を使用したいと判断したときに、速やかに扉4のロックを解除でき、利便性を損ねないようにできる。
(効果)
以上のように、本実施形態においては、扉駆動装置50が、扉4を開駆動および閉駆動する扉駆動機構に加えて、地震等の異常振動時に扉4が不用意に大きく開放することを規制する扉開放規制機能を有している。具体的に扉開放規制機能として扉横移動規制機構80を有しており、扉横移動規制機構80は、扉駆動機構の駆動部58、カム部60および開き量検知センサ43等を用いて構成されている。
これにより、部品点数を削減して低コストとし、かつ、冷蔵庫1の本体部上部の構造が煩雑になることを抑制しつつ、扉4が電動にて駆動される高い利便性を有し、かつ、地震等の異常振動時に扉が不用意に大きく開放することを規制できる。
(変形例)
本実施形態においては、回転体56の中心線CL(図7参照)に対して左側にロックピン81を設け、カム部60の左側のリブ63に係合部としての規制面82aおよび溝部82を設けた。しかしながら、回転体56の中心線CLに対して右側にロックピン81を設け、カム部60の右側のリブ73に規制面82aおよび溝部82を設けてもよい。その場合は、ロックピン81が扉4の左方向への横移動を規制し、摺動ピン59が開放カム面63aに突き当たって扉4の右方向への横移動を規制する。また、回転体56の中心線CLの左右両側にロックピン81を一対設け、カム部60の左右両側のリブ63,73に規制面82aおよび溝部82を設けてもよい。
また、本実施形態では、扉駆動装置50は、カム部60が閉鎖カム面64a,74aを有する構成としていた。しかしながら、扉横移動規制機構80を構成するには、カム部60は開放カム面63a,73aを有していればよい。
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図23は、第2実施形態の冷蔵庫1Aを示す正面図である。図23に示すように、冷蔵庫1Aは、第1実施形態の冷蔵庫1の扉4に代えて、右扉4Rと左扉4Lとが2枚左右に配置された観音開きタイプの冷蔵庫である。右扉4Rは、本体部2の右端の枢支軸4cにて開閉され、右扉4Rの左端にハンドル4gを有する。左扉4Lは、本体部2の左端の枢支軸4dで開閉され、左扉4Lの右端にハンドル4hを有する。右扉4Rには電動による開放を指示するための右操作ボタン4eが設けられ、左扉4Lには電動による開放を指示するための左操作ボタン4fが設けられている。
また、右扉4Rおよび左扉4Lのカム機構について、図示してはいないが、右扉4Rは開動作に伴って右扉4Rが僅かに右方向へ横移動することで、枢支軸4cを構成する右扉4Rのヒンジピンが受部に嵌合し、開放可能になる。同様に、左扉4Lは開動作に伴って左扉4Lが僅かに左方向へ横移動することで、枢支軸4dを構成する左扉4Lのヒンジピンが受部に嵌合し、開放可能になる。
図24は、冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを説明する上面図であり、摺動ピン159が共に待機位置にある待機状態を示している。図24に示すように、冷蔵庫1Aは、扉4の扉駆動装置50に代えて、右扉4Rには右扉4Rの開駆動および閉駆動を行う右扉駆動装置150Rを備え、左扉4Lには左扉4Lの開駆動および閉駆動を行う左扉駆動装置150Lを備えている。
右扉駆動装置150Rは、カム部60に代えてカム部160を備えている。カム部160は、リブ163とリブ164が形成されている。リブ163には、右扉4Rを開駆動する開放カム面163aを有し、リブ164には、開放された右扉4Rを閉駆動する閉鎖カム面164aを有する。そして、カム部160は、規制面82aおよび溝部82に代えて係合部として係合溝182を有している。
また、右扉駆動装置150Rは、回転体56に代えて回転体156を備えている。回転体156には、外周側に摺動ピン159が設けられ、内周側にロックピン181が設けられている。ロックピン181の位置は、摺動ピン159が待機位置にある状態で、カム部160に形成された係合溝182に係合せず、摺動ピン159が待機位置より反時計回りCCWに所定の角度(図24では例えば15°)回転することで、係合溝182に係合し得る位置に設けられている。ロックピン181と係合溝182とで、扉横移動規制機構180が構成されている。
なお、ここでは左扉駆動装置150Lの詳細については説明しないが、左右が逆転するだけで、右扉駆動装置150Rと同様の構成を有している。
図25、図26は、冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rの開駆動を説明する上面図であり、図25は、開駆動途中の状態を示し、図26は開駆動が完了した状態を示している。開駆動時、右扉駆動装置150Rの回転体156は時計回りCWに回転される。図24を比較するとわかるように、図25においては、回転体156が時計回りCWに回転されたことで、枢支軸4cを構成する右扉4Rのヒンジピンが僅かに右方向に移動し、右扉4Rの開放が可能になる。
図26に示すように、右扉4Rが所定量開かれると摺動ピン159が開放カム面163aの終端(後端)に到達し、摺動ピン159が右扉4Rを開放方向に付勢しながら開放カム面163aから離れて開駆動が終了する。右扉4Rは摺動ピン159による開放方向への付勢によりさらに開かれる。冷蔵庫1と同様に、右扉4Rの開駆動が終了すると、摺動ピン159は待機位置に戻される。
図27は、冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rの手動開放時の状態を示す上面図である。摺動ピン159が待機位置にあることで、摺動ピン159にカム部160が引っ掛かることなく扉4を手動で開閉することができる。また、摺動ピン159が待機位置にある状態で、ロックピン181は右扉4Rの後端部よりも本体部側に位置しているので、ロックピン181にカム部60が引っ掛かることもない。
図28、図29は、冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rの閉駆動を説明する上面図であり、図28は、右扉4Rが半扉領域にあり引き込んでいる状態を示し、図29は、右扉4Rが自閉領域にある状態を示す。
図28に示すように、右扉4Rが半扉領域まで到達すると、回転体156が時計回りCWに回転し、待機位置の摺動ピン159が枢支軸4cより離れる方向(図中、左方)に移動する。これにより、摺動ピン159がリブ164の閉鎖カム面164aに摺動して右扉4Rが自閉領域へと引き込まれる。図29に示すように、右扉4Rが所定量閉じられると摺動ピン159が閉鎖カム面164aの終端(前端)に到達する。この時、右扉4Rは枢支軸4cに設けられたカムなどの扉自閉機構(不図示)が作用する範囲に入っているため、扉4は扉自閉機構により閉じられる。
図30は、冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを説明する上面図であり、ロックピン181が共に扉横移動規位置にある横移動規制状態を示している。回転体156が図24の状態から反時計回りCCWに回転すると、ロックピン181が係合溝182に入り込む。回転体56は、ロックピン181が係合溝182に入り込む角度だけ回転して停止する。この位置が、ロックピン181の扉横移動規制位置である。
ロックピン181を扉横移動規制位置で停止させることで、右扉4Rおよび左扉4Lの横方向への移動を規制することができる。
つまり、この状態で、右扉4Rに対して右方向に移動させる力が加わったとしても、ロックピン181が係合溝182に入り込んでいるので、右扉4Rが右方向に動くことはない。同様に、左扉4Lに対して左方向に移動させる力が加わったとしても、ロックピン181が係合溝182に入り込んでいるので、左扉4Lが左方向に動くことはない。なお、観音開きタイプでは、右扉4Rは扉閉鎖位置では元々左方向には横移動しない構成であり、左扉4Lは扉閉鎖位置では元々右方向には横移動しない構成である。したがって、右扉4Rは右方向への横移動を規制するだけでよく、左扉4Lは左方向への横移動を規制するだけでよい。
上述したように、右扉4Rを開放するには、僅かではあるが右扉4Rを右方向に横移動させて、枢支軸4cを構成する右扉4Rのヒンジピンと受部とを嵌合させる必要がある。このように右扉駆動装置150Rにおいて、ロックピン181を扉横移動規制位置で停止させることで、枢支軸4cを構成する右扉4Rのヒンジピンと受部とが嵌合することはなく、これにより、右扉4Rの開放が規制(阻止)される。
同様に、左扉4Lを開放するには、僅かではあるが左扉4Lを左方向に横移動させて、枢支軸4dを構成する左扉4Lのヒンジピンと受部とを嵌合させる必要がある。このように左扉駆動装置150Lにおいて、ロックピン181を扉横移動規制位置で停止させることで、枢支軸4dを構成する左扉4Lのヒンジピンと受部とが嵌合することはなく、これにより、左扉4Lの開放が規制(阻止)される。
また、冷蔵庫1Aも冷蔵庫1と同様の電気的構成を有している(図21参照)。図31は、冷蔵庫1Aの第1扉開放規制制御を示すフローチャートである。冷蔵庫1Aの制御装置40Aは、S1において地震発生が検知されると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して左右のロックピン181を待機位置から扉横移動規制位置まで移動させ、その位で置停止させる(S11)。これにより、各ロックピン181は、左右の係合溝182に嵌り込んだ状態で停止し、右扉4Rおよび左扉4Lの横移動が規制され、右扉4Rおよび左扉4Lがロックされる。その後、S3にて最後に振動を検知してから所定時間経過したと判断すると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して左右のロックピン181を扉横移動規制位置から待機位置まで移動させる(S12)。これにより、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lによる右扉4Rおよび左扉4Lのロックが解除される。
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図32は、第3実施形態の冷蔵庫1Bの右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを説明する上面図であり、摺動ピンが共に待機位置にある状態を示している。図32に示すように、第3実施形態の冷蔵庫1Bにおいては、第2実施形態の冷蔵庫1Aの右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lに設けられていた、扉横移動規制機構180が備えられていない。
また、冷蔵庫1Bも冷蔵庫1、1Aと同様の電気的構成を有している(図21参照)。冷蔵庫1Bにおいては、制御装置40Bが、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lにある各閉鎖カム面164aと各摺動ピン159とを用いて、扉開放規制機能を実現する。
図33は、冷蔵庫1Bの第2扉開放規制制御を示すフローチャートである。また、図34の(a)~(e)は、冷蔵庫1Bの右扉4Rの上面の模式図であり、右扉4Rの開放を規制する右扉駆動装置150Rの動きを示している。
制御装置40Bは、S1において地震発生が検知されると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して摺動ピン159を待機位置(図34の(a)参照)から扉自閉位置に移動させる(S21、図34の(b)参照)。扉自閉位置とは、右扉4Rおよび左扉4Lの開放を自閉領域に制限する摺動ピン159の位置であり、前述した図29に示す、摺動ピン159が閉鎖カム面164aの終端(前端)に対向する位置である。
摺動ピン159をこの位置まで移動させて停止させることで、たとえ右扉4Rおよび左扉4Lが異常振動にて開放されたとしても摺動ピン159に閉鎖カム面164aが突き当たることで、右扉4Rおよび左扉4Lがそれ以上に開放されることが規制される(図34の(c)参照)。つまり、右扉4Rおよび左扉4Lの開放を完全に規制するものではないが、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lにおける右扉4Rおよび左扉4Lを閉駆動する部品を利用して右扉4Rおよび左扉4Lの開放を自閉可能な自閉領域に制限することができる。
その後、S3にて最後に振動を検知してから所定時間経過したと判断すると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して摺動ピン159を扉自閉位置(図34の(c)参照)から待機位置(図34の(d)参照)まで移動させる(S22)。これにより、右扉4Rおよび左扉4Lは自重により自閉する(図34の(e)参照)。
(効果)
このように、特別な構成を一切追加することなく、制御装置40Bの制御だけで、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを用いて地震等の異常振動時に扉が不用意に大きく開放することを規制することができる。しかも、振動が収束した後に右扉4Rおよび左扉4Lを自閉させることができる。
(変形例)
本実施形態では、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lは、カム部160が開放カム面163aを有する構成としていた。しかしながら、第2扉開放規制制御にて右扉4Rおよび左扉4Lの開放を規制するには、カム部160は閉鎖カム面164aさえ有していればよい。
また、本実施形態では、第2実施形態の観音開きタイプの冷蔵庫1を流用して説明したが、扉を開く際に扉を横に移動させて枢支軸を構成するヒンジピンを受部に嵌合させる構成と組み合わせる必要はない。つまり、ヒンジピンが受部に予め嵌合されており、ヒンジピンと受部との間で、相対的な移動を伴わない構成(軸固定)においても適用できる。
また、本実施形態では、S21において、摺動ピン159の移動位置を、扉自閉位置に移動させる構成したが、右扉4Rおよび左扉4Lの開放を半扉領域に制限する半扉位置に移動させる構成としてもよい。
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図35は、第4実施形態の冷蔵庫1Cの右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを説明する上面図であり、摺動ピンが右扉および左扉の開放を半扉領域に制限する第1位置にある状態を示している。
図35に示すように、第4実施形態の冷蔵庫1Cは構造的には第3実施形態の冷蔵庫1Bと同様の構成を有し、制御装置40C(図21参照)が、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lにある閉鎖カム面164aと摺動ピン159とを用いて、扉開放規制機能を実現する。
第3実施形態の冷蔵庫1Bとの違いは、第4実施形態の冷蔵庫1Cにおいては、地震発生が検知されると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して摺動ピン159を扉自閉位置よりも扉開方向に開いた、扉の開きを半扉領域に制限する第1位置置に移動させて、その後、扉自閉位置(第2位置)にまで引き込む動作を行う点である。
図36は、冷蔵庫1Cの第3扉開放規制制御を示すフローチャートである。また、図37の(a)~(f)は、冷蔵庫1Cの右扉4Rの上面の模式図であり、右扉4Rの開放を規制する右扉駆動装置150Rの動きを示している。
冷蔵庫1Cの制御装置40Cは、S1において地震発生が検知されると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して摺動ピン159を待機位置(図37の(a)参照)から第1位置に移動させる(S31、図37の(b)参照))。第1位置とは、右扉4Rおよび左扉4Lの開放を半扉領域に制限する摺動ピン159の位置であり、前述した図28に示す、摺動ピン159が閉鎖カム面164aの開始端(後端)に対向する位置である。
摺動ピン159をこの位置まで移動させることで、たとえ右扉4Rおよび左扉4Lが開いたとしても閉鎖カム面164aが摺動ピン159に突き当たることで、それ以上に開放されることが規制される(図37の(c)参照)。
続いて、S32にて、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して、摺動ピン159を第1位置(図37の(c)参照)から扉自閉位置(第2位置)まで移動させて、右扉4Rおよび左扉4L引き込む(図37の(d)参照)。
その後、S3にて最後に振動を検知してから所定時間経過したと判断すると、右扉駆動装置150Rおよび左扉駆動装置150Lを駆動して摺動ピン159を扉自閉位置(図37の(d)参照)から待機位置(図37の(e)参照)まで移動させる。これにより、右扉4Rおよび左扉4Lは自重により自閉する(図37の(f)参照)。
(変形例)
第2扉開放規制制御よび第3扉開放規制制御は、右扉4Rおよび左扉4Lの横移動を規制する第1扉開放規制制御(図31)と組み合わせて用いることもできる。例えば、異常振動にて右扉4Rおよび左扉4Lが非常に早いタイミングで開放されてしまい、第1扉開放規制制御による右扉4Rおよび左扉4Lの横移動規制が間に合わなかった場合にも、第2扉開放規制制御又は第3扉開放規制制御を組み合わせて用いることで、右扉4Rおよび左扉4Lの開放を規制することができる。
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
第3実施形態で説明した第2扉開放規制制御は、第1実施形態の冷蔵庫1においての説明した左右の二方向より択一的に開くことが可能な扉4を備えた冷蔵庫においても提供できる。
図38は、第5実施形態の両開きの扉4を備えた冷蔵庫1Dにおける第2扉開放規制制御を示すフローチャートである。
冷蔵庫1Dの制御装置40D(図21参照)は、図38においては、S41において、回転体56を時計回りCWあるいは反時計回りCCWに回転させて摺動ピン59を左右何れかの扉自閉位置に動かして停止させる。これにより、摺動ピン59に閉鎖カム面64aまたは閉鎖カム面74aが対向し、扉4の開放を自閉領域に規制される。S42においては、S41とは逆方向に回転体56を回転させて、摺動ピン59を扉自閉位置から待機位置まで移動させて、規制を解除する。
また、第2扉開放規制制御又は第3扉開放規制制御は、扉4の横移動を規制する第1扉開放規制制御(図22)と組み合わせて用いることもできる。例えば、異常振動にて扉4が非常に早いタイミングで開放されてしまい、第1扉開放規制制御による扉4の横移動規制が間に合わなかった場合にも、第2扉開放規制制御又は第3扉開放規制制御を組み合わせて用いることで、扉4の開放を規制することができる。
なお、上記した第1実施形態1~5においては、扉駆動装置が冷蔵庫に搭載された構成を例示したが、本体部の開口面を開閉する鉛直方向を軸として回転する扉を有する電気機器や、家具など、種々のものに適用できる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る扉駆動装置は、本体部の開口面を開閉する鉛直方向を軸として回転する扉の開駆動又は閉駆動又はその両方を行う扉駆動装置であって、前記扉の開駆動又は閉駆動を行う扉駆動機構と、前記扉駆動機構を制御する制御部と、を備え、前記扉駆動機構の少なくとも一部を用いて前記扉の開放を半扉領域以下に規制する扉開放規制機能を有し、前記制御部は、異常振動の発生もしくは発生予測に応じて、前記扉開放規制機能にて前記扉の開放を規制することを特徴とする。
本発明の態様2に係る扉駆動装置は、前記態様1において、前記扉は、前記本体部に対して横方向に移動されることで当該扉と前記本体部とを開閉自在に軸支する枢支軸と受部とが嵌合し、前記扉開放規制機能は、前記扉の横移動を規制することで前記扉の開放を規制する構成とすることもできる。
本発明の態様3に係る扉駆動装置は、前記態様2において、前記扉駆動機構は、前記本体部に設けられ、駆動部にて駆動される摺動子と、前記扉に設けられ、前記摺動子が摺動するカム面を有するカム部と、を備え、当該扉駆動装置は、前記扉開放規制機能として、
前記駆動部にて駆動されるロックピンと、前記カム部に設けられ、前記ロックピンが係合して前記扉の横移動を規制する係合部と、を備える構成とすることもできる。
本発明の態様4に係る扉駆動装置は、前記態様3において、前記扉は、前記枢支軸もしくは前記受部を当該扉の左右の両端部に有し、当該扉を横移動させることで、左右に位置する何れか一方の前記枢支軸と前記受部とが嵌合して左右の二方向より択一的に開閉可能であり、前記カム部は、前記摺動子が摺動することで前記扉を開駆動する左右対称に配置された開放カム面を有し、前記ロックピンが前記係合部に係合して左右の何れか一方の横移動を規制し、前記摺動子が前記開放カム面に係合して左右の何れか他方の横移動を規制する構成とすることもできる。
本発明の態様5に係る扉駆動装置は、前記態様1において、前記扉駆動機構は、前記本体部に設けられ、駆動部にて駆動されて移動する摺動子と、前記扉に設けられ、前記摺動子が摺動するカム面を有するカム部と、を備え、前記カム部は、少なくとも前記扉を閉駆動する閉鎖カム面を有し、前記制御部は、異常振動の発生もしくは発生予測に応じて前記摺動子を前記閉鎖カム面と接触する位置に移動させることで前記扉開放規制機能を実現する構成とすることもできる。
本発明の態様6に係る扉駆動装置は、前記態様5において、前記制御部は、異常振動の発生もしくは発生予測に応じて前記摺動子を第1位置に移動させ、その後第2位置まで移動させ、前記第1位置は前記扉の開放を半扉領域に規制する位置であり、前記第2位置は前記扉の開放を前記扉が自閉する自閉領域に規制する位置である構成とすることもできる。
本発明の態様7に係る扉駆動装置は、前記態様1から6の何れか1項に記載の扉駆動装置を備えることを特徴としている。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。