以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の全体構成を概略的に示す図である。図2および図3は、図1に示されるパルス管冷凍機10の作動ガス回路構成を示す概略図である。図2は、パルス管冷凍機10の吸気工程を示し、図3は、パルス管冷凍機10の排気工程を示す。
パルス管冷凍機10は、圧縮機12と、コールドヘッド14とを備える。コールドヘッド14は、パルス管16、蓄冷器18、被冷却物19を冷却する冷却ステージ20、フランジ部22、および室温部24を備える。パルス管冷凍機10は、単段式のパルス管冷凍機である。ただし、パルス管冷凍機10は、あるいは多段式(例えば二段式)のパルス管冷凍機とすることも可能である。
パルス管冷凍機10は、一例として、GM(Gifford-McMahon)方式のダブルインレット型パルス管冷凍機である。よって、コールドヘッド14の室温部24には、バッファ容積26、例えばバッファタンクが接続されている。また、室温部24は、2つの流路抵抗(例えば、オリフィス、または絞り弁など)を有する。以下では説明の便宜上、第1流路抵抗をダブルインレットオリフィス28と称し、第2流路抵抗をバッファオリフィス30と称する。ただし、流路抵抗をオリフィスのみに限定することを意図するものではない。
詳しくは後述するが、パルス管冷凍機10は、室温部24に収容された流路切替機構に関して、典型的なパルス管冷凍機と異なる。室温部24は、ロータリーバルブではなく、スプールバルブ32を備える。スプールバルブ32は、バルブ駆動室34と、バルブ駆動室34の圧力に応じて第1位置と第2位置とを移動するスプール36と、を備える。スプール36は、第1位置で蓄冷器18の高温端を圧縮機12の吐出口に接続し、第2位置で蓄冷器18の高温端を圧縮機12の吸入口に接続する。また、パルス管冷凍機10は、コールドヘッド14から離れて配置され、バルブ駆動室34の圧力を制御する圧力制御機構38を備える。圧力制御機構38は、駆動室吸気バルブV1と駆動室排気バルブV2とを有する。
圧縮機12およびスプールバルブ32によって、パルス管冷凍機10の振動流発生源が構成される。すなわち、圧縮機12が生み出す作動ガスの定常流から、スプールバルブ32の切替動作によって蓄冷器18を通じてパルス管16内に作動ガスの圧力振動を生成することができる。また、バッファ容積26、ダブルインレットオリフィス28、およびバッファオリフィス30によって、パルス管冷凍機10の位相制御機構が構成される。位相制御機構によって作動ガスの圧力振動に対しパルス管16内のガス要素(ガスピストンとも呼ばれる)の変位振動の位相を遅らせることができる。適切な位相遅れは、パルス管16の低温端でのPV仕事を生じさせ、作動ガスを冷却することができる。冷却された作動ガスとの熱交換により冷却ステージ20が冷却される。
圧縮機12は、圧縮機吐出口12aと圧縮機吸入口12bとを有し、回収した低圧PLの作動ガスを圧縮して高圧PHの作動ガスを生成するよう構成されている。圧縮機吐出口12aから蓄冷器18を通じてパルス管16に作動ガスが供給され、パルス管16から蓄冷器18を通じて圧縮機吸入口12bへと作動ガスが回収される。圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bはそれぞれ、パルス管冷凍機10の高圧源および低圧源として機能する。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、例えばヘリウムガスである。
一般に高圧PH及び低圧PLはともに、パルス管冷凍機10の周囲環境圧力(例えば大気圧)よりかなり高い。よって、高圧PH及び低圧PLはそれぞれ、第1高圧及び第2高圧と呼ぶこともできる。通例、高圧PHは例えば2~3MPaである。低圧PLは例えば0.5~1.5MPaである。
パルス管冷凍機10には、高圧ライン13aおよび低圧ライン13bが設けられている。高圧ライン13aは、圧縮機吐出口12aから延び、高圧ライン分岐点40aで分岐し、コールドヘッド14の高圧ポート42と圧力制御機構38の駆動室吸気バルブV1に接続されている。高圧PHの作動ガスは高圧ライン13aを通じて、圧縮機12からコールドヘッド14へと、また圧縮機12から圧力制御機構38へと流れる。低圧ライン13bは、圧縮機吸入口12bから延び、低圧ライン分岐点40bで分岐し、コールドヘッド14の低圧ポート44と圧力制御機構38の駆動室排気バルブV2に接続されている。低圧PLの作動ガスは低圧ライン13bを通じて、コールドヘッド14から圧縮機12へと、また圧力制御機構38から圧縮機12へと流れる。
また、パルス管冷凍機10には、バルブ駆動室ライン46が設けられている。バルブ駆動室ライン46は、バルブ駆動室34から延び、途中で分岐し、駆動室吸気バルブV1と駆動室排気バルブV2に接続されている。
高圧ライン13aおよび低圧ライン13bはそれぞれ、圧縮機12とコールドヘッド14と圧力制御機構38を接続する剛性または可撓性の配管であってもよい。また、バルブ駆動室ライン46は、コールドヘッド14と圧力制御機構38を接続する剛性または可撓性の配管であってもよい。
パルス管16は、パルス管高温端16aと、パルス管低温端16bとを有し、パルス管高温端16aからパルス管低温端16bへと延在する。パルス管高温端16aおよびパルス管低温端16bはそれぞれ、パルス管16の第1端および第2端とも称しうる。パルス管高温端16aおよびパルス管低温端16bにはそれぞれ整流器が設けられていてもよい。同様に、蓄冷器18は、蓄冷器高温端18aと、蓄冷器低温端18bとを有し、蓄冷器高温端18aから蓄冷器低温端18bへと延在する。蓄冷器高温端18aおよび蓄冷器低温端18bはそれぞれ、蓄冷器18の第1端および第2端とも称しうる。パルス管16および蓄冷器18が延びる方向をコールドヘッド14の軸方向Aと表す。
パルス管低温端16bと蓄冷器低温端18bは冷却ステージ20によって構造的に接続され熱的に結合されている。冷却ステージ20には冷却ステージ流路21が形成されている。冷却ステージ流路21を通じて、パルス管低温端16bは、蓄冷器低温端18bと流体的に連通している。したがって、圧縮機12から供給される作動ガスは、蓄冷器低温端18bから冷却ステージ流路21を通じてパルス管低温端16bへと流れることができる。パルス管16からの戻りガスは、パルス管低温端16bから冷却ステージ流路21を通じて蓄冷器低温端18bへと流れることができる。
例示的な構成においては、パルス管16は内部を空洞とする円筒状の管であり、蓄冷器18は内部に蓄冷材を充填した円筒状の管であり、両者は互いに隣り合って各々の中心軸を平行として配置されている。パルス管16および蓄冷器18は、冷却ステージ20から同方向に延びており、パルス管高温端16aおよび蓄冷器高温端18aは、冷却ステージ20に対して同じ側に配置されている。このようにして、パルス管16、蓄冷器18、および冷却ステージ20は、U字状に配置されている。
被冷却物19は、冷却ステージ20上に直接設置され、または冷却ステージ20に剛性または可撓性の伝熱部材を介して熱的に結合されている。パルス管冷凍機10は、冷却ステージ20からの伝導冷却によって被冷却物19を冷却することができる。なおパルス管冷凍機10によって冷却される被冷却物19は、一例として、超伝導電磁石またはその他の超伝導装置、あるいは赤外線撮像素子またはその他のセンサなど固形物であるが、これに限られない。言うまでもなく、パルス管冷凍機10は冷却ステージ20に接触する気体または液体を冷却することもできる。
一方、パルス管高温端16aと蓄冷器高温端18aはフランジ部22によって接続されている。フランジ部22は、パルス管冷凍機10が設置される支持台または支持壁などの支持部48に取り付けられる。支持部48は、冷却ステージ20および被冷却物19を(蓄冷器18およびパルス管16とともに)収容する断熱容器または真空容器の壁材またはその他の部位であってもよい。
フランジ部22の一方の主表面からパルス管16および蓄冷器18が冷却ステージ20へと延び、フランジ部22の他方の主表面には室温部24が設けられている。したがって、支持部48が断熱容器または真空容器の一部を構成する場合には、フランジ部22が支持部48に取り付けられるとき、パルス管16、蓄冷器18、および冷却ステージ20は、当該容器内に収容され、室温部24は、容器外に配置される。
このようにして、圧縮機12、室温部24、および圧力制御機構38は周囲環境(例えば、室温大気圧環境)に配置される。バッファ容積26も周囲環境に配置される。蓄冷器18、パルス管16、および冷却ステージ20は周囲環境から隔離された環境(例えば、極低温真空環境)に配置される。
なお、室温部24は、フランジ部22に直接取り付けられている必要はない。室温部24は、パルス管冷凍機10のコールドヘッド14から分離して配置され、剛性または可撓性の配管によりコールドヘッド14に接続されてもよい。こうして、パルス管冷凍機10の位相制御機構がコールドヘッド14から分離して配置されてもよい。
室温部24は、スプールバルブ32を蓄冷器18に接続する蓄冷器流路50と、バッファ容積26をパルス管16に接続するバッファ流路52と、冷却ステージ流路21を迂回して蓄冷器18をパルス管16に接続するバイパス流路54とを有する。バッファ容積26は、高圧PHと低圧PLとの中間圧(例えば高圧PHと低圧PLの平均圧)を有する作動ガスの中間圧源として働く。
蓄冷器流路50およびバッファ流路52はそれぞれ、フランジ部22を貫通して、蓄冷器高温端18aおよびパルス管高温端16aまで延びている。蓄冷器流路50は、スプールバルブ32の第2ガス室35を蓄冷器高温端18aに接続する。ダブルインレットオリフィス28は、バイパス流路54の途中に設けられ、バッファオリフィス30は、バッファ流路52の途中に設けられている。バッファ流路52は、バッファ容積26をバッファオリフィス30に接続し、さらに、バッファオリフィス30をパルス管高温端16aに接続する。バイパス流路54は、蓄冷器流路50から分岐してダブルインレットオリフィス28に接続され、さらに、ダブルインレットオリフィス28から延びてバッファ流路52に合流する。バイパス流路54は、バッファオリフィス30とパルス管高温端16aとの間でバッファ流路52に接続されている。
よって、蓄冷器流路50を通じてスプールバルブ32と蓄冷器高温端18aとの間で作動ガスの流入および流出が可能であり、さらに、冷却ステージ流路21を通じて蓄冷器18とパルス管低温端16bとの間で作動ガスの流入および流出が可能である。また、バッファ流路52すなわちバッファオリフィス30を通じてバッファ容積26とパルス管高温端16aとの間で作動ガスの流入および流出が可能である。バイパス流路54すなわちダブルインレットオリフィス28を通じてスプールバルブ32とパルス管高温端16aとの間で作動ガスの流入および流出が可能である。
スプールバルブ32は、スプール36を収容するとともにスプール36の移動を案内するスリーブ56を有する。バルブ駆動室34は、スプール36の一端とスリーブ56との間に形成されている。バルブ駆動室34は、スプールバルブ32の第1ガス室と呼ぶこともできる。第2ガス室35は、スプール36の他端とスリーブ56との間に形成されている。バルブ駆動室34と第2ガス室35は、スプール36に対して互いに反対側に位置する。
スプール36は、バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によってスリーブ56に対して移動することができる。バルブ駆動室34が第2ガス室35より低圧であるとき、スプール36は、バルブ駆動室34を縮小し第2ガス室35を拡張するようにスリーブ56内を移動する(図において上向きに動く)。逆に、バルブ駆動室34が第2ガス室35より高圧であるとき、スプール36は、バルブ駆動室34を拡張し第2ガス室35を縮小するようにスリーブ56内を移動する(図において下向きに動く)。
スリーブ56は、高圧ポート42および低圧ポート44として働く2つの貫通穴を有する。また、スリーブ56には、別の2つの貫通穴が設けられ、その一方を通じてバルブ駆動室34がバルブ駆動室ライン46に連通し、他方を通じて第2ガス室35が蓄冷器18およびパルス管16に連通している。
一例として、スプール36は、コールドヘッド14の軸方向Aに延在する円柱状の部材であり、スリーブ56は、コールドヘッド14の軸方向Aに延在しスプール36と同軸配置された円筒状の内周面を有する部材である。スプール36およびスリーブ56はそれぞれ、ピストンおよびシリンダと呼ぶこともできる。高圧ポート42および低圧ポート44はスリーブ56の側面に形成され、別の2つの貫通穴はそれぞれスリーブ56の端面に形成されている。なおスプール36とスリーブ56の延在方向は、コールドヘッド14の軸方向Aに限られず、他の方向であってもよい。
また、スプールバルブ32は、スプール36とスリーブ56との間のクリアランスに配置された複数のシール部材、具体的には、第1シール部材58a、第2シール部材58b、第3シール部材58c、および第4シール部材58dを有する。これらシール部材は、互いに異なる軸方向位置でスプール36に装着され、スプール36の周方向に延びている。シール部材は、例えばスリッパーシールまたはOリングなどの作動ガスを密閉する部材であるが、望まれるシール性能を有する限り、その他の接触シールまたは非接触シールであってもよい。
スプールバルブ32の内部の作動ガス空間は、シール部材によって、バルブ駆動室34と第2ガス室35を含む5つの区画に分離されている。残りの3つの区画は、スプール36とスリーブ56との間のクリアランスに形成されている。すなわち、クリアランスは、第1クリアランス領域60a、第2クリアランス領域60b、および第3クリアランス領域60cに分離され、これらはスプール36の軸方向に互いに隣接している。
第1シール部材58aは、バルブ駆動室34と第1クリアランス領域60aとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第2シール部材58bは、第1クリアランス領域60aと第2クリアランス領域60bとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第3シール部材58cは、第2クリアランス領域60bと第3クリアランス領域60cとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第4シール部材58dは、第3クリアランス領域60cと第2ガス室35との間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。
スプール36は、スプール主流路62を有する。スプール主流路62の一端は第2クリアランス領域60bに連通し、スプール主流路62の他端は第2ガス室35に連通している。スプール主流路62は、スプール36の側面から端面へとスプール36を貫通して形成されていてもよい。
また、スプール36とスリーブ56との間には、戻しバネ64が設けられている。戻しバネ64は、例えば、スプール36の上死点と下死点との中間の初期位置にスプール36を付勢する。戻しバネ64は、スプール36が上死点にあるときスプール36を下向きに引き戻し、スプール36が下死点にあるときスプール36を上向きに引き戻すことができる。戻しバネ64は、第2ガス室35に収容されている。なお戻しバネ64は、バルブ駆動室34に設けられてもよい。また、戻しバネ64を設けることは必須ではなく、スプールバルブ32は戻しバネ64を備えなくてもよい。
スプールバルブ32は、蓄冷器高温端18aに隣接して配置されるようにコールドヘッド14に固定されている。このようにすれば、蓄冷器流路50の長さを短くすることができる。蓄冷器流路50の長さは、バッファ流路52の長さよりも、またはバイパス流路54の長さよりも短くてもよい。一例として、スプールバルブ32のスリーブ56がフランジ部22に固定され、蓄冷器高温端18aの直上に第2ガス室35が配置されている。このようにすれば、蓄冷器流路50の長さをできるだけ短くすることができる。
スプール主流路62、第2ガス室35、および蓄冷器流路50は、パルス管冷凍機10の冷凍能力に寄与しないいわゆる死容積(デッドボリューム)を形成する。したがって、蓄冷器流路50の長さを短くすることにより、死容積を小さくすることができる。これは、パルス管冷凍機10の冷凍能力の向上に役立つ。
図2および図3を参照して、スプールバルブ32の動作を説明する。上述のように、図2にはパルス管冷凍機10の吸気工程の様子が示され、図3にはパルス管冷凍機10の排気工程の様子が示されている。スプールバルブ32のスプール36は、吸気工程において第1位置に移動し、排気工程において第2位置に移動する。第1位置および第2位置はそれぞれ、吸気位置および排気位置と呼ぶこともできる。
図2に示されるように、吸気工程においては、駆動室排気バルブV2が開かれ、駆動室吸気バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、低圧PLとなる。このとき第2ガス室35は低圧PLより若干高い圧力を有する。なぜなら、コールドヘッド14(すなわち蓄冷器18およびパルス管16)内の圧力変動はバルブ駆動室34での圧力変動に対していくらか遅延しているからである。吸気工程の開始時点では、スプール36は下死点またはその近傍に位置する(図2において第2ガス室35に破線で示す)。バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を縮小するようにスリーブ56内を軸方向に移動する(破線の矢印で示す)。戻しバネ64の復元力もスプール36の上動に役立つ。
スプール36の上動によりスプール36が第1位置、すなわち上死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域60bが高圧ポート42に隣接する。高圧ポート42がスプール主流路62を通じて第2ガス室35に接続され、圧縮機吐出口12aから高圧PHの作動ガスが蓄冷器18およびパルス管16に供給される。このとき低圧ポート44には第3クリアランス領域60cが隣接する。低圧ポート44はスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。
図3に示されるように、排気工程においては、駆動室吸気バルブV1が開かれ、駆動室排気バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、高圧PHとなる。このとき第2ガス室35は高圧PHより若干低い圧力を有する。排気工程の開始時点では、スプール36は上死点またはその近傍に位置する(図2においてバルブ駆動室34に破線で示す)。バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を拡張するようにスリーブ56内を軸方向に移動する(破線の矢印で示す)。戻しバネ64の復元力もスプール36の下動に役立つ。
スプール36の下動によりスプール36が第2位置、すなわち下死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域60bが低圧ポート44に隣接する。低圧ポート44がスプール主流路62を通じて第2ガス室35に接続され、圧縮機吸入口12bへと作動ガスが排出され、パルス管16および蓄冷器18は低圧PLとなる。このとき高圧ポート42には第1クリアランス領域60aが隣接する。高圧ポート42はスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吐出口12aとの接続は遮断されている。
このようにして、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するパルス管冷凍機10の主圧力切替バルブとして機能する。圧力制御機構38は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをスプールバルブ32のバルブ駆動室34に交互に接続し、スプール36を適切に駆動するようにバルブ駆動室34の圧力を制御することができる。
上述のように、典型的なパルス管冷凍機は、流路切替機構としてロータリーバルブを有し、ロータリーバルブの回転摺動面にはいくつかの作動ガスポートが設けられている。これら作動ガスポート間の相互接続を回転により切り替えるために、これらポートは回転摺動面において径方向に互いに異なる場所に配置される。ロータリーバルブ内で作動ガスに生じる圧力損失を低減するにはポートを広くとる必要があるが、これはロータリーバルブの径の拡大、つまり回転摺動面の面積増加を招く。回転摺動面が大きくなれば回転時に働く摩擦抵抗が大きくなるから、ロータリーバルブを駆動するのに必要なトルクも増加し、モータなどの駆動源も大型のものが必要になる。これは、ロータリーバルブの製造コストの上昇や、パルス管冷凍機の大型化などの不利益をもたらす。とくに、大きな冷凍能力を出力する大型のパルス管冷凍機に関しては、こうした不利益が顕著となりうる。
一般に、GM冷凍機など他の代表的な極低温冷凍機に比べてパルス管冷凍機は静粛な運転が可能であり、そのため、ノイズや振動を嫌う冷却用途に適する。ロータリーバルブは、たいていの場合、モータ、バルブロータ、およびバルブステータが一つのロータリーバルブユニットとして構成される。これをパルス管冷凍機のコールドヘッドに直接設置すれば、モータもコールドヘッドの一部をなす。このような設計を大型のパルス管冷凍機に採用したとすると、大型のモータがコールドヘッドに直接設置されることになる。大型モータは相応の電磁気的ノイズ及び/または機械的振動の発生源となるので、好ましくない。
こうしたノイズや振動の伝達を避けるために、ロータリーバルブユニットをコールドヘッドから離れた場所に配置し、両者を長い配管で接続する設計も考えられる。ところが、この設計では、ロータリーバルブの作動ガス出入口からコールドヘッドの蓄冷器までの配管容積も大きくなる。この容積は冷凍能力に寄与しない死容積であるから、その増加は望まれない。
このように、流路切替機構としてロータリーバルブを用いる既存のパルス管冷凍機では、ロータリーバルブからコールドヘッドに伝達されるノイズ・振動の十分な低減を、死容積の増加および冷凍能力の低下を避けることなく実現することは困難である。
これに対して、実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、スプールバルブ32を備える。そのため、上述のようなロータリーバルブに起因する不利益が生じにくい。
スプールバルブ32においては、スプール主流路62などバルブ内部流路を拡張しても、それは駆動源の大型化に直接関係しない。スプールバルブ32はバルブ駆動室34の作動ガス圧によって流体的に動作する。そのため、バルブ駆動室34の容積は比較的小さくてよい。よって、バルブ駆動室34のサイズは小さく抑えつつ、スプールバルブ32の内部流路を拡張することができ、それにより、スプールバルブ32内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することができる。ロータリーバルブを採用する場合に比べて、パルス管冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することができる。
また、圧力制御機構38は、コールドヘッド14から離れて配置される。そのため、圧力制御機構38がノイズ源または振動源となりうるとしても、圧力制御機構38からコールドヘッド14へのノイズまたは振動の伝達は抑制される。加えて、バルブ駆動室34の容積が小さくてよいので、圧力制御機構38も比較的小型でよい。よって、圧力制御機構38が発生させうるノイズまたは振動はそもそも小さく、コールドヘッド14に与えうる影響も小さい。
上述のように、スプールバルブ32は、蓄冷器高温端18aに隣接して配置されるようにコールドヘッド14に固定されている。したがって、死容積となる蓄冷器流路50を短くすることができ、パルス管冷凍機10の冷凍能力が向上される。
圧力制御機構38の具体的構成は種々ありうる。例えば、駆動室吸気バルブV1および駆動室排気バルブV2はそれぞれ、個別に制御可能なバルブの形式をとってもよい。各バルブ(V1,V2)は、電磁開閉弁であってもよい。各バルブ(V1,V2)は、予め定められたバルブタイミングで自動的に開閉動作をするように構成されていてもよい。あるいは、圧力制御機構38は、ロータリーバルブの形式で構成されてもよい。
図4は、実施の形態に係る圧力制御機構38の構成を概略的に示す図である。圧力制御機構38は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをバルブ駆動室34に交互に接続するロータリーバルブ66を備える。
ロータリーバルブ66は、モータ66a、バルブロータ66b、バルブステータ66c、およびバルブハウジング66dを備える。バルブロータ66bおよびバルブステータ66cはバルブハウジング66dに収容され、両者はバルブ摺動面66eで互いに面接触するように隣接して配置されている。バルブステータ66cは、バルブハウジング66dに固定されている。モータ66aは、バルブハウジング66dの外側に設置され、モータ66aの出力軸がバルブハウジング66dを貫通してバルブロータ66bへと延びている。
バルブハウジング66dの内部には、圧力室66fが形成され、バルブロータ66bおよびバルブステータ66cは、圧力室66fに配置されている。一例として、圧力室66fには、高圧ライン13aが接続され、高圧PHが導入されている。バルブステータ66cには、低圧ライン13bとバルブ駆動室ライン46が接続されている。バルブステータ66cとバルブハウジング66dの間には少なくとも2つのシール部材が装着され、1つのシール部材によって低圧ライン13bが圧力室66f(すなわち高圧ライン13a)からシールされ、他の1つのシール部材によってバルブ駆動室ライン46が低圧ライン13bからシールされる。したがって、ロータリーバルブ66の内部において高圧ライン13a、低圧ライン13b、およびバルブ駆動室ライン46の間での直接の作動ガスの流通は防止される。
モータ66aの駆動により出力軸が回転し、それにより、バルブロータ66bがバルブステータ66cに対して回転摺動する。バルブロータ66bの回転摺動に伴ってバルブ摺動面66eで流路接続が周期的に切り替わり、ロータリーバルブ66は、高圧ライン13aと低圧ライン13bをバルブ駆動室ライン46に交互に接続する。
バルブロータ66bとバルブステータ66cからなるロータリーバルブ66の具体的な流路構成は、種々の公知のものを適宜採用することができるので、詳細説明は省略する。上述の説明では、圧力室66fに高圧ライン13aが接続され、バルブステータ66cに低圧ライン13bが接続されているが、これとは逆に、バルブステータ66cに高圧ライン13aが接続され、圧力室66fに低圧ライン13bが接続される構成も可能である。
このように、圧力制御機構38がロータリーバルブ66として構成される場合には、極低温冷凍機のロータリーバルブの既存の設計を流用することができる。よって、圧力制御機構38を容易に製造することができ、有利である。
図5は、第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の全体構成を概略的に示す図である。第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、作動ガス回路の配管接続に関して、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と異なり、その余については第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機10においても、スプールバルブ32が利用される。したがって、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と同様に、スプールバルブ32内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することと、パルス管冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することを両立することができる。よって、コールドヘッドのための流路切替機構としてロータリーバルブを採用する既存の典型的なパルス管冷凍機に比べて、有利である。
図5に示されるように、パルス管冷凍機10は、バルブ駆動室34を圧力制御機構38に接続する脱着可能な継手68を備える。脱着可能な継手68は、バルブ駆動室ライン46の途中に設けられている。脱着可能な継手68は、例えば、セルフシーリング・カップリングである。
脱着可能な継手68は、比較的長い配管で圧力制御機構38に接続されてもよい。例えば、脱着可能な継手68は、コールドヘッド14の室温部24に近接してバルブ駆動室ライン46に設置されていてもよい。この場合、脱着可能な継手68は、圧縮機側配管46aにより圧力制御機構38に接続され、コールドヘッド側配管46bにより室温部24(具体的にはスプールバルブ32のバルブ駆動室34)に接続されている。圧縮機側配管46aは、脱着可能な継手68からバルブ駆動室34までの流路長さ(コールドヘッド側配管46bを含む)よりも長い。あるいは、脱着可能な継手68は、室温部24に隣接して設置されていてもよい。
このようにして、圧力制御機構38を脱着可能な継手68を介してコールドヘッド14に接続しているので、バルブ駆動室ライン46を長くして圧力制御機構38をコールドヘッド14から遠隔に配置することが容易となる。これは、圧力制御機構38で発生しうる電磁気的ノイズ及び/または機械的振動のコールドヘッド14への伝達を抑制することに役立つ。また、圧力制御機構38は、脱着可能な継手68によりコールドヘッド14から取り外し可能に接続されているから、作業者は、圧力制御機構38をコールドヘッド14から取り外してメンテナンスを施すことができる。
また、比較的長い圧縮機側配管46aを使用することにより、バルブ駆動室ライン46を長くしつつスプールバルブ32はコールドヘッド14に近接配置することができる。例えば、スプールバルブ32を蓄冷器高温端18aに隣接して配置することができる。このようにすれば、蓄冷器流路50を短くして死容積を小さくするとともに、圧力制御機構38からコールドヘッド14へのノイズや振動の伝達を抑制することができる。
脱着可能な継手68は、パルス管冷凍機10の作動ガス回路の他の場所に追加して設けられてもよい。図5に示されるように、例えば、脱着可能な継手68が、高圧ライン13aおよび低圧ライン13bの少なくとも一方に設けられてもよい。このようにすれば、圧縮機12からコールドヘッド14へのノイズや振動の伝達を抑制することができる。
また、パルス管冷凍機10は、高圧ライン分岐点40aおよび低圧ライン分岐点40bを有するマニホールド70を備えてもよい。マニホールド70を介して、圧縮機12とコールドヘッド14が接続され、かつ圧縮機12と圧力制御機構38が接続されている。マニホールド70は、床面またはその他の静止部に固定されてもよい。圧縮機12は、マニホールド70から離れて配置され、配管により接続されている。このようにすれば、圧縮機12からコールドヘッド14へのノイズや振動の伝達を抑制することができる。
図5に示されるように、圧力制御機構38は、マニホールド70から離れて配置され、配管により接続されてもよい。あるいは、圧力制御機構38は、マニホールド70に設置されてもよい。
図6は、第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の他の構成を概略的に示す図である。パルス管冷凍機10は、高圧ライン13a、低圧ライン13b、およびバルブ駆動室ライン46の少なくとも1つに設置されたノイズ遮断構造72を備えてもよい。ノイズ遮断構造72は、脱着可能な継手68に直接にまたは配管を介して連結され、ノイズ遮断構造72が設置された配管を伝達する電磁気的ノイズを遮断または低減するように構成されている。脱着可能な継手68は、ノイズ遮断構造72の少なくとも片側(図6においては両側)に設けられている。
一例として、ノイズ遮断構造72は、一対のフランジ72aと、これらフランジ72aに挟持されたノイズ遮断体72bとを備える。ノイズ遮断体72bは、例えば、セラミックコーティングまたはフッ素樹脂コーティングなどの絶縁性コーティング材で被覆された金属体である。フランジ72aおよびノイズ遮断体72bは、ボルトやナットなどの適宜の締結具により相互に固定されている。フランジ72aおよびノイズ遮断体72bを貫通して、作動ガス流路が形成されている。
ノイズ遮断構造72を設けることにより、圧縮機12または圧力制御機構38からコールドヘッド14へのノイズの伝達をさらに抑制することができる。
図7および図8は、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の作動ガス回路構成を示す概略図である。図7は、パルス管冷凍機10の吸気工程を示し、図8は、パルス管冷凍機10の排気工程を示す。第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、スプールバルブ32に関して、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と異なり、その余については第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
スプールバルブ32は、バルブ駆動室34と反対側でスプール36に隣接する背圧室74と、バルブ駆動室34および背圧室74からシールされた接続流路76とを備える。接続流路76は、スプール36が第1位置にあるとき蓄冷器高温端18aを圧縮機吐出口12aに接続し、スプール36が第2位置にあるとき蓄冷器高温端18aを圧縮機吸入口12bに接続する。
また、スプールバルブ32は、スプール36とスリーブ56との間のクリアランスに配置された複数のシール部材、具体的には、第1シール部材58a、第2シール部材58b、第3シール部材58c、および第4シール部材58dを有する。これらのシール部材によって、スプールバルブ32の内部の作動ガス空間は、バルブ駆動室34、第1クリアランス領域60a、第2クリアランス領域60b、第3クリアランス領域60c、および背圧室74に分離されている。背圧室74は、第4シール部材58dによって第3クリアランス領域60cからシールされている。
背圧室74には、中間圧バッファ78が接続されている。スリーブ56の背圧室74側の端面に形成された貫通穴を通じて、背圧室74は中間圧バッファ78と連通している。中間圧バッファ78は、高圧PHと低圧PLとの中間圧PM(例えば高圧PHと低圧PLの平均圧)を有する。よって、背圧室74の圧力は、中間圧PMに保持される。
接続流路76は、スプール36の軸方向に関して第2シール部材58bと第3シール部材58cの間に配置されている。したがって、接続流路76は、第2クリアランス領域60bと連通している。言い換えれば、接続流路76は、第2クリアランス領域60bの流路幅を拡張している。第2クリアランス領域60bすなわち接続流路76は、スリーブ56の側面に形成された貫通穴を通じて蓄冷器流路50に連通している。接続流路76は、一例として、スプール36の円筒側面に形成された溝であり、スプール36の周方向に全周にわたって延びている。あるいは、接続流路76は、スプール36を径方向に貫通していてもよい。
図7に示されるように、吸気工程においては、駆動室排気バルブV2が開かれ、駆動室吸気バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、低圧PLとなる。背圧室74は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室34と背圧室74の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を縮小するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。
スプール36の上動によりスプール36が第1位置、すなわち上死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域60bが高圧ポート42に隣接する。高圧ポート42が接続流路76を通じて蓄冷器流路50に接続され、圧縮機吐出口12aから高圧PHの作動ガスが蓄冷器18およびパルス管16に供給される。このとき低圧ポート44には第3クリアランス領域60cが隣接する。低圧ポート44はスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。
図8に示されるように、排気工程においては、駆動室吸気バルブV1が開かれ、駆動室排気バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、高圧PHとなる。背圧室74は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室34と背圧室74の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を拡張するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。
スプール36の下動によりスプール36が第2位置、すなわち下死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域60bが低圧ポート44に隣接する。低圧ポート44が接続流路76を通じて蓄冷器流路50に接続され、圧縮機吸入口12bへと作動ガスが排出され、パルス管16および蓄冷器18は低圧PLとなる。このとき高圧ポート42には第1クリアランス領域60aが隣接する。高圧ポート42はスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吐出口12aとの接続は遮断されている。
このようにして、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するパルス管冷凍機10の主圧力切替バルブとして機能する。圧力制御機構38は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをスプールバルブ32のバルブ駆動室34に交互に接続し、スプール36を適切に駆動するようにバルブ駆動室34の圧力を制御することができる。
第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10においても、スプールバルブ32内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することと、パルス管冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することを両立することができる。よって、コールドヘッドのための流路切替機構としてロータリーバルブを採用する既存の典型的なパルス管冷凍機に比べて、有利である。
図2および図3を参照して説明した第2ガス室35とは異なり、第3の実施の形態に係る背圧室74は、スプールバルブ32から蓄冷器18への作動ガス流路から流体的に隔離されている。背圧室74は、死容積(デッドボリューム)を形成しない。したがって、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機10に比べて、死容積を小さくすることができるという利点がある。
図9および図10は、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の他の構成を概略的に示す図である。中間圧バッファ78を設けることは、必須ではない。図9に示されるように、背圧室74は、バッファ容積26に接続されてもよい。また、図10に示されるように、中間圧バッファ78を設けることに代えて、背圧室74は、蓄冷器高温端18aに接続されてもよい。この場合、背圧室74を蓄冷器高温端18aに接続するオリフィスなどの第3流路抵抗80が位相制御または流量制御のために設けられていてもよい。このようにしても、図7および図8を参照して説明したのと同様に、死容積を小さくすることができる。
図11および図12は、第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の作動ガス回路構成を示す概略図である。図11は、パルス管冷凍機10の吸気工程を示し、図12は、パルス管冷凍機10の排気工程を示す。第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、スプールバルブ32に関して、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と異なり、その余については第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10について、第3の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10においては、スプール36は、一組の対向配置されたピストン82を備える。2つのピストン82は、1つのスリーブ56に収められ、各ピストン82の片側にバルブ駆動室34が形成され、反対側すなわち2つのピストン82の間に背圧室74が形成されている。
2つのピストン82は、同様の構成を有する。各ピストン82は、ピストン82とスリーブ56との間のクリアランスに配置された4つのシール部材(58a~58d)を有する。これらのシール部材によって、スプールバルブ32の内部の作動ガス空間は、バルブ駆動室34、第1クリアランス領域60a、第2クリアランス領域60b、第3クリアランス領域60c、および背圧室74に分離されている。背圧室74は、2つのピストン82それぞれの第4シール部材58dの間に形成されている。
背圧室74は、第3流路抵抗80を通じて蓄冷器高温端18aに接続されている。ただし、これは必須ではなく、図7および図8に示されるように、背圧室74は、中間圧バッファ78に接続されてもよい。あるいは、図9に示されるように、背圧室74は、バッファ容積26に接続されてもよい。
また、各ピストン82は、バルブ駆動室34および背圧室74からシールされた接続流路76を備える。接続流路76は、ピストン82が第1位置にあるとき蓄冷器高温端18aを圧縮機吐出口12aに接続し、ピストン82が第2位置にあるとき蓄冷器高温端18aを圧縮機吸入口12bに接続する。接続流路76は、第2クリアランス領域60bと連通している。
スプールバルブ32は、2つの接続流路76を有するから、高圧ライン13aは、これら接続流路76に接続されるように圧縮機吐出口12aから延びて途中で2つに分岐している。同様に、低圧ライン13bも、2つの接続流路76に接続されるように圧縮機吸入口12bから延びて途中で2つに分岐している。スリーブ56は、2つの高圧ポート42と2つの低圧ポート44を有する。バルブ駆動室ライン46は、2つのバルブ駆動室34に接続されるように圧力制御機構38から延びて途中で2つに分岐している。蓄冷器流路50は、2つの接続流路76に接続されるように蓄冷器高温端18aから延びて途中で2つに分岐している。
図11に示されるように、吸気工程においては、駆動室排気バルブV2が開かれ、駆動室吸気バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、低圧PLとなる。背圧室74は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室34と背圧室74の圧力差により2つのピストン82はバルブ駆動室34を縮小するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。2つのピストン82は互いに離れるように逆向きに動く。
こうして各ピストン82が第1位置に到達すると、第2クリアランス領域60bが高圧ポート42に隣接する。高圧ポート42が接続流路76を通じて蓄冷器流路50に接続され、圧縮機吐出口12aから高圧PHの作動ガスが蓄冷器18およびパルス管16に供給される。このとき低圧ポート44には第3クリアランス領域60cが隣接する。低圧ポート44はピストン82によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。
図12に示されるように、排気工程においては、駆動室吸気バルブV1が開かれ、駆動室排気バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、高圧PHとなる。背圧室74は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室34と背圧室74の圧力差により2つのピストン82はバルブ駆動室34を拡張するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。2つのピストン82は互いに近づくように逆向きに動く。
こうして各ピストン82が第2位置に到達すると、第2クリアランス領域60bが低圧ポート44に隣接する。低圧ポート44が接続流路76を通じて蓄冷器流路50に接続され、圧縮機吸入口12bへと作動ガスが排出され、パルス管16および蓄冷器18は低圧PLとなる。このとき高圧ポート42には第1クリアランス領域60aが隣接する。高圧ポート42はピストン82によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吐出口12aとの接続は遮断されている。
このようにして、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するパルス管冷凍機10の主圧力切替バルブとして機能する。圧力制御機構38は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをスプールバルブ32のバルブ駆動室34に交互に接続し、ピストン82を適切に駆動するようにバルブ駆動室34の圧力を制御することができる。
第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10においても、スプールバルブ32内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することと、パルス管冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することを両立することができる。よって、コールドヘッドのための流路切替機構としてロータリーバルブを採用する既存の典型的なパルス管冷凍機に比べて、有利である。
また、第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10によれば、2つのピストン82が対向配置され互いに逆向きに往復動するので、単一のスプール36が往復動する場合に比べて、スプールバルブ32が発生する振動を低減することができる。
図13は、第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10に適用可能なスプールバルブ32の他の構成を概略的に示す図である。スプールバルブ32は、振動を減衰させるための少なくとも1つのダンパー84を備えてもよい。ダンパー84は、ピストン82とスリーブ56との間の衝突の衝撃を緩和するように、ピストン82とスリーブ56との間に配置されていてもよい。また、ダンパー84は、2つのピストン82どうしの衝突の衝撃を緩和するように、2つのピストン82の間に配置されていてもよい。図13に示されるように、2つのバルブ駆動室34と背圧室74のそれぞれにダンパー84が設置されてもよい。例示的な構成として、ダンパー84は、固定部材84aと緩衝材84bとを備えてもよい。ダンパー84は、ダンパー84を設けることにより、スプールバルブ32が発生する振動をさらに低減することができる。
なお、ダンパー84は、一つのスプール36を有するスプールバルブ32においてスプール36とスリーブ56との間の衝突の衝撃を緩和するように、スプール36とスリーブ56との間に配置されていてもよい。
図14は、第4の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の他の構成を概略的に示す図である。対向ピストン型のスプールバルブ32の構成は、4バルブ型パルス管冷凍機にも応用することができる。この場合、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するだけでなく、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをパルス管高温端16aにも交互に接続するように構成されている。パルス管冷凍機10は、ダブルインレットオリフィス28およびバイパス流路54を備えない。
図14に示されるように、一方のピストン82(図において上方のピストン82)の接続流路76は、蓄冷器流路50を通じて蓄冷器高温端18aに接続されている。また、他方のピストン82(図において下方のピストン82)の接続流路76は、パルス管流路86を通じてパルス管高温端16aに接続されている。パルス管流路86には、オリフィスなどの第4流路抵抗88が位相制御または流量制御のために設けられていてもよい。
このようにすれば、一方のピストン82(図において上方のピストン82)が、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するように動作し、他方のピストン82(図において下方のピストン82)が、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをパルス管高温端16aに交互に接続するように動作することができる。
図15および図16は、第5の実施の形態に係るパルス管冷凍機10の作動ガス回路構成を示す概略図である。図15は、パルス管冷凍機10の吸気工程を示し、図16は、パルス管冷凍機10の排気工程を示す。上述の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、ダブルインレット型パルス管冷凍機であるのに対し、第5の実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、4バルブ型パルス管冷凍機として構成されている。以下、第5の実施の形態に係るパルス管冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するだけでなく、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをパルス管高温端16aにも交互に接続するように構成されている。単一のスプール36を有するスプールバルブ32についても、4バルブ型パルス管冷凍機として構成することは可能である。パルス管冷凍機10は4バルブ型であるから、第1の実施の形態とは異なり、パルス管冷凍機10は、ダブルインレットオリフィス28およびバイパス流路54を備えない。
スプールバルブ32は、バルブ駆動室34および第2ガス室35を備える。バルブ駆動室34は、スプール36の一端とスリーブ56との間に形成され、第2ガス室35は、スプール36の他端とスリーブ56との間に形成されている。スプール36は、バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によってスリーブ56に対して移動することができる。スプール36とスリーブ56との間には、戻しバネ64が設けられている。戻しバネ64は、第2ガス室35に収容されている。
スプール36は、スプール主流路62、スプール副吸気流路90、およびスプール副排気流路92を備える。スプール主流路62は、スプール36とスリーブ56との間のクリアランスを第2ガス室35に連通する。スプール主流路62は、スプール36の側面から端面へとスプール36を貫通して形成されていてもよい。スプール副吸気流路90およびスプール副排気流路92は、一例として、スプール36の円筒側面に形成された溝であり、スプール36の周方向に全周にわたって延びている。スプール副吸気流路90およびスプール副排気流路92は、スプール36の軸方向に互いに異なる位置に形成され、一方がバルブ駆動室34側にあり、他方が第2ガス室35側にある。
スリーブ56は、2つの高圧ポート42a,42bと2つの低圧ポート44a,44bを有する。一方の高圧ポート42aは、圧縮機吐出口12aをスプール主流路62に連通するためにスリーブ56に設けられ、他方の高圧ポート42bは、圧縮機吐出口12aをスプール副吸気流路90に連通するためにスリーブ56に設けられている。高圧ライン13aは、これら高圧ポート42a,42bに接続されるように圧縮機吐出口12aから延びて途中で2つに分岐している。一方の低圧ポート44aは、圧縮機吸入口12bをスプール主流路62に連通するためにスリーブ56に設けられ、他方の低圧ポート44bは、圧縮機吸入口12bをスプール副排気流路92に連通するためにスリーブ56に設けられている。低圧ライン13bは、これら低圧ポート44a,44bに接続されるように圧縮機吸入口12bから延びて途中で2つに分岐している。
バルブ駆動室ライン46は、圧力制御機構38をバルブ駆動室34に接続する。蓄冷器流路50は、第2ガス室35を蓄冷器高温端18aに接続する。また、スリーブ56は、2つのパルス管ポート94a,94bを有する。一方のパルス管ポート94aは、パルス管高温端16aをスプール副吸気流路90に連通するためにスリーブ56に設けられ、他方のパルス管ポート94bは、パルス管高温端16aをスプール副排気流路92に連通するためにスリーブ56に設けられている。パルス管流路86は、これらパルス管ポート94a,94bに接続されるようにパルス管高温端16aから延びて途中で2つに分岐している。パルス管流路86には、オリフィスなどの第4流路抵抗88が位相制御または流量制御のために設けられていてもよい。
スプールバルブ32は、スプール36とスリーブ56との間のクリアランスに配置された複数のシール部材(58a~58h)を有する。これら8個のシール部材(58a~58h)は、互いに異なる軸方向位置でスプール36に装着され、スプール36の周方向に延びている。スプールバルブ32の内部の作動ガス空間は、シール部材(58a~58h)によって、バルブ駆動室34、第2ガス室35、および7つのクリアランス領域(60a~60g)に分離されている。8個のシール部材(58a~58h)と7つのクリアランス領域(60a~60g)は、軸方向に交互に配置されている。第1シール部材58aは、バルブ駆動室34と第1クリアランス領域60aとの間に配置され、第8シール部材58hは、第7クリアランス領域60gと第2ガス室35との間に配置されている。スプール副吸気流路90は、第2シール部材58bと第3シール部材58cとの間に配置され、第2クリアランス領域60bに連通している。スプール副排気流路92は、第6シール部材58fと第7シール部材58gとの間に配置され、第6クリアランス領域60fに連通している。
図15に示されるように、吸気工程においては、駆動室排気バルブV2が開かれ、駆動室吸気バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、低圧PLとなる。このとき第2ガス室35は低圧PLより若干高い圧力を有する。吸気工程の開始時点では、スプール36は下死点またはその近傍に位置する。バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を縮小するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。戻しバネ64の復元力もスプール36の上動に役立つ。
スプール36の上動によりスプール36が第1位置、すなわち上死点またはその近傍に到達すると、第4クリアランス領域60dが高圧ポート42aに隣接する。また、第2クリアランス領域60bが高圧ポート42bおよびパルス管ポート94aに隣接する。よって、高圧ポート42aがスプール主流路62を通じて第2ガス室35に接続され、圧縮機吐出口12aから高圧PHの作動ガスが蓄冷器18に供給され、さらに冷却ステージ流路21を通じてパルス管16に供給される。また、高圧ポート42bが、第2クリアランス領域60bおよびスプール副吸気流路90を通じてパルス管流路86に接続され、圧縮機吐出口12aから高圧PHの作動ガスがパルス管高温端16aに供給される。
このとき、低圧ポート44aには第5クリアランス領域60eが隣接し、低圧ポート44bには第7クリアランス領域60gが隣接する。よって、低圧ポート44a,44bはスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。また、パルス管ポート94bには第6クリアランス領域60fが隣接しているので、パルス管高温端16aからスプール副排気流路92を通じた圧縮機吸入口12bへの接続も遮断されている。
図16に示されるように、排気工程においては、駆動室吸気バルブV1が開かれ、駆動室排気バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室34に連通され、バルブ駆動室34の圧力は、高圧PHとなる。このとき第2ガス室35は高圧PHより若干低い圧力を有する。排気工程の開始時点では、スプール36は上死点またはその近傍に位置する。バルブ駆動室34と第2ガス室35の圧力差によりスプール36はバルブ駆動室34を拡張するようにスリーブ56内を軸方向に移動する。戻しバネ64の復元力もスプール36の下動に役立つ。
スプール36の下動によりスプール36が第2位置、すなわち下死点またはその近傍に到達すると、第4クリアランス領域60dが低圧ポート44aに隣接する。また、第6クリアランス領域60fが低圧ポート44bおよびパルス管ポート94bに隣接する。よって、低圧ポート44aがスプール主流路62を通じて第2ガス室35に接続され、圧縮機吸入口12bへと作動ガスが排出され、パルス管16および蓄冷器18は低圧PLとなる。また、低圧ポート44bが、第6クリアランス領域60fおよびスプール副排気流路92を通じてパルス管流路86に接続され、パルス管高温端16aから圧縮機吸入口12bへと作動ガスが排出される。
このとき、高圧ポート42aには第3クリアランス領域60cが隣接し、高圧ポート42bには第1クリアランス領域60aが隣接する。高圧ポート42a,42bはスプール36によって塞がれているので、蓄冷器18およびパルス管16と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。また、パルス管ポート94aには第2クリアランス領域60bが隣接しているので、圧縮機吐出口12aからスプール副吸気流路90を通じたパルス管高温端16aへの接続も遮断されている。
このようにして、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを蓄冷器高温端18aに交互に接続するパルス管冷凍機10の主圧力切替バルブとして機能する。加えて、スプールバルブ32は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをパルス管高温端16aに交互に接続するパルス管冷凍機10の副圧力切替バルブとして機能する。圧力制御機構38は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをスプールバルブ32のバルブ駆動室34に交互に接続し、スプール36を適切に駆動するようにバルブ駆動室34の圧力を制御することができる。
第5の実施の形態に係るパルス管冷凍機10においても、スプールバルブ32内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することと、パルス管冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することを両立することができる。よって、コールドヘッドのための流路切替機構としてロータリーバルブを採用する既存の典型的なパルス管冷凍機に比べて、有利である。
図17から図19は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10に適用可能な圧力制御機構38の他の構成を概略的に示す図である。圧力制御機構38は、種々の具体的構成をとりうる。
図17に示されるように、パルス管冷凍機10は、主たる圧縮機12と補助圧縮機96とを備えてもよい。圧縮機12は、コールドヘッド14のための作動ガスの高圧源および低圧源としてコールドヘッド14に接続されている。補助圧縮機96は、圧力制御機構38のための作動ガスの高圧源および低圧源として圧力制御機構38に接続されている。このようにして、コールドヘッド14と圧力制御機構38が別個の圧縮機を用いて運転されてもよい。
図18に示されるように、圧力制御機構38は、リニア圧縮機97を備えてもよい。リニア圧縮機97は、電磁石などのアクチュエータ97aと、アクチュエータ97aの駆動により往復動する圧縮機ピストン97bと、バルブ駆動室ライン46に接続された圧縮室97cとを備える。圧縮室97cにおいては、圧縮機ピストン97bが前進するとき(図18において圧縮機ピストン97bが左に移動するとき)作動ガスが圧縮され、高圧の作動ガスが圧縮室97cからバルブ駆動室ライン46を通じてバルブ駆動室34に供給される。圧縮機ピストン97bが後退するとき(図18において圧縮機ピストン97bが右に移動するとき)圧縮室97cの圧力は低下し、それにより、バルブ駆動室34の圧力も低下する。このようにして、圧力制御機構38は、バルブ駆動室34の圧力を制御することができる。なお、リニア圧縮機97は、公知の構成のものを適宜採用することができる。
図19に示されるように、圧力制御機構38は、アクチュエータ98a、ベローズ98bまたはその他の可動膜と、バルブ駆動室ライン46に接続された圧縮室98cと、を備えてもよい。アクチュエータ98aの駆動によりベローズ98bが変形し、それにより圧縮室98cの作動ガス圧力が制御される。したがって、圧力制御機構38は、バルブ駆動室34の圧力を制御することができる。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
例えば、第2の実施の形態において説明した脱着可能な継手68は、第3の実施の形態、または第4の実施の形態、または第5の実施の形態に係るパルス管冷凍機10に適用されてもよい。あるいは、脱着可能な継手68は、図17から図19を参照して説明したパルス管冷凍機10に適用されてもよい。