JP7031515B2 - オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7031515B2
JP7031515B2 JP2018128545A JP2018128545A JP7031515B2 JP 7031515 B2 JP7031515 B2 JP 7031515B2 JP 2018128545 A JP2018128545 A JP 2018128545A JP 2018128545 A JP2018128545 A JP 2018128545A JP 7031515 B2 JP7031515 B2 JP 7031515B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stainless steel
electricity
amount
treatment
steel sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018128545A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020007597A (ja
Inventor
浩史 神尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2018128545A priority Critical patent/JP7031515B2/ja
Publication of JP2020007597A publication Critical patent/JP2020007597A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7031515B2 publication Critical patent/JP7031515B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法に関する。
フォトエッチング加工とは、素材である金属板の表面にフォトレジスト法によるパターンを形成した後、スプレーや浸漬によるエッチングによって金属板を溶解し、フォトレジストパターンとほぼ同じ形状に金属板を加工する方法である。また、レーザー加工とは、CADデータなどを基に、金属板の表面をレーザーで溶融させて孔や所定のパターンを形成する加工方法である。
フォトエッチング加工やレーザー加工を施した後に、ステンレス鋼板の非加工部を陽極酸化で着色するなどといった利用方法がなされる場合がある。
フォトエッチング加工やレーザー加工といった精密加工性を向上させる従来技術として、例えば、特許文献1には非酸化性雰囲気中で光輝焼鈍を施すことで結晶粒を微細化する製造方法が開示されている。
しかしながら、例えば特許文献1の製造方法のように、非酸化性雰囲気中で光輝焼鈍を施すと、ステンレス鋼の主要成分であるFeに比べて酸化しやすい元素が、雰囲気中に存在する酸素と選択的に反応し、表面に濃化してしまう。特にSiの濃化が顕著である。
表面にSiが濃化すると、上記した陽極酸化による着色に代表される表面性状が関係する利用方法に悪影響をもたらす。
特許文献2には、このような表面濃化したSiを除去する方法として、pH12以上の電解液を用いて、液温40~70℃、電流密度2~25A/dm、処理時間3~60秒で電解することで、Fe比率0.4以上の組成の表面酸化皮膜を得る方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2の方法で処理し、Fe比率0.4以上の組成の表面酸化皮膜を得た場合、表面濃化したSiだけでなく、ステンレス鋼として不可欠の元素であるCrも必要以上に除去してしまうことがあった。
特許第5920555号公報 特開2005-272972号公報
従来技術では、ステンレス鋼板の表面に濃化したSiをある程度除去できるものの、同時にCrも除去してしまうことがあった。その結果、ステンレス鋼板からなる製品の表面に、陽極酸化で良好な着色をすることが難しくなるという課題が生じていた。加えて、精密加工には重要な特性である表面粗さなどの形状を大きく変えることなく、また美麗な光沢を維持した状態で表面Siを除去することが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小さな表面粗さ、光沢度を維持しつつ、表面のCrを極力除去せずにSiを除去することが可能なオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討したところ、中間焼鈍及び仕上焼鈍を実施後のオーステナイト系鋼板に対して陽極電解処理を行うと、電解処理の開始直後は、ステンレス鋼板の表面に濃化したSiが電解によって除去されるが、通電時間が長引くにつれて累積の通電電気量が増大すると電解電位が上昇し、Crが除去されやすくなることを見出した。また、Siが除去されることによって、相対的に鋼板表面におけるCr量が増加し、これによりCrが除去されやすくなることを見出した。更に、Crは溶解性が高く、電解時に多量に溶解してしまうことも見出した。そこで、電解処理の最初から途中までの間でSiを十分に取り除き、その後はCrの除去を極力抑制するような条件を検討したところ、電解条件のうち、電極に通電する電気量を徐々に低下させることで、Siを十分に除去する一方でCrの除去を抑制することに成功した。このような知見に基づき完成させた本発明は、以下の通りである。
[1] 冷間圧延後のオーステナイト系ステンレス鋼板に対し、中間焼鈍と、仕上焼鈍と、テンションレベラーによる矯正処理と、応力除去処理とを行うとともに、前記中間焼鈍、前記仕上焼鈍及び前記応力除去処理における均熱温度をそれぞれ600℃以上1000℃以下の範囲とし、均熱時間をそれぞれ5秒以上30秒以下とする第1工程と、
前記第1工程後の前記オーステナイト系ステンレス鋼板に対し、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組(ただしnは2以上の自然数)の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしkは1からnまでの自然数)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσ、電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))、及び電気量の総和に対する1回目の陽極電解処理の電気量の比率(σ/Σσ×100)が、下記(1)~(3)を満たす条件で陽極電解処理を行う第2工程と、
を備えるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
0.10(C/dm)≦Σσ≦25.0(C/dm) …(1)
0(C/dm/回)≦(σ-σ)/(n-1)≦5.00(C/dm/回) …(2)
10(%)≦σ/Σσ×100≦90(%) …(3)
[2] k回目の陽極電解処理における電気量σと、k+1回目の陽極電解処理における電気量σk+1との関係が、σ≧σk+1の関係にあることを特徴とする[1]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
[3] 前記電解液に、質量%で1~10%のアルカリ性界面活性剤が含まれることを特徴とする[1]または[2]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
[4] 前記オーステナイト系ステンレス鋼板の表面Si濃度が15質量%以下、表面粗さRaが0.100μm以下であることを特徴とする、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法によれば、小さな表面粗さ、光沢度を維持しつつ、表面のCrを極力除去せずにSiを除去することができる。これにより、オーステナイト系ステンレス鋼板の表面粗度の増大を防止し、光沢を維持したまま、着色を施すことができる。
実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法を説明するための電解設備の模式図。 表面Si分析結果の一例であり、比較例と発明例の効果を比べた図である。
以下、本発明の実施形態であるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、冷間圧延後のオーステナイト系ステンレス鋼板に対し、中間焼鈍と、仕上焼鈍と、テンションレベラーによる矯正処理と、応力除去処理とを行う第1工程と、第1工程後のオーステナイト系ステンレス鋼板を所定の条件で陽極電解処理する第2工程と、から構成される。以下、各工程について説明する。
(オーステナイト系ステンレス鋼板)
本実施形態の製造方法に適用可能なステンレス鋼板は、オーステナイト系ステンレス鋼板であれば特に制限はない。例えば、JIS G 4305に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼のSUS301、SUS301L、SUS301J1、SUS304L、SUS304J1、SUS304J2、SUS304LN、SUS304N1、SUS304N2、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS312L、SUS315J1、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS317、SUS317L、SUS317J1、SUS317J2、SUS317LNが適用可能である。以下、オーステナイト系ステンレス鋼板を単にステンレス鋼板と言う場合がある。
(第1工程)
第1工程は、冷間圧延後のステンレス鋼板に対し、中間焼鈍と、仕上焼鈍と、テンションレベラーによる矯正処理と、応力除去処理とを行う工程である。中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における均熱温度はそれぞれ、600℃以上1000℃以下の範囲とし、均熱時間はそれぞれ、5秒以上30秒以下とする。また、中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における雰囲気は、非酸化性雰囲気とすることが好ましく、より具体的には、Nを10%以上含有し、残部をHとする露点-40℃以下の非酸化性雰囲気が好ましい。
中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における均熱温度がそれぞれ600℃未満では、焼鈍若しくは応力除去の効果が十分に得られないので、均熱温度は600℃以上とする。より好ましくは650℃以上とし、更に好ましくは700℃以上とする。一方、均熱温度が1000℃を超えると、ステンレス鋼板の表面に多量のSiが形成してしまい、第2工程において陽極電解を施しても充分に表面Siを除去できなくなる。従って均熱温度の上限を1000℃以下とする。より好ましい均熱温度は950℃以下であり、更に好ましくは900℃以下である。
また、中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における均熱時間がそれぞれ5秒未満では、焼鈍若しくは応力除去の効果が十分に得られないので、均熱時間は5秒以上とする。より好ましくは10秒以上とする。一方、均熱時間が30秒を超えると、ステンレス鋼板の表面に多量のSiが形成してしまい、第2工程において陽極電解を施しても充分に表面Siを除去できなくなる。従って均熱時間の上限を30秒以下とする。より好ましい均熱温度は20秒以下である。
更に、中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における雰囲気を上記の非酸化性雰囲気とすることで、酸化スケールの生成を抑制して、冷間圧延ままの表面粗度を維持できる。
(第2工程)
第2工程は、例えば、図1に示すような電解設備1において行うことができる。図1に示す電解設備1は、電解槽2と、ステンレス鋼板10の搬送方向に沿って電解槽2の内部に配置された複数の電極3a~3eと、電解槽2の導入部及び導出部の近くに備えられたコンダクタロール4と、を備えている。
電解槽2は、搬送中のステンレス鋼板10の上側に配置される上部槽2aと、ステンレス鋼板10の下側に配置される下部槽2bとからなる。上部槽2aおよび下部槽2b内には、白金などからなる複数の電極3a~3eがステンレス鋼板10との間に所定の間隔を空けて配置されている。各電極3a~3eのステンレス鋼板10に対向する面は、ステンレス鋼板10の表面と略平行となるように配置されている。また、各電極3a~3eは、ステンレス鋼板10の搬送方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。このように、図1の例では、ステンレス鋼板10の上下に配置された2枚の電極を1組としたとき、合計で5組10枚の電極3a~3eが備えられている。電極の組数は5組に限らず、2組以上であればよい。また、各電極3a~3eは、図示略の導線によって、図示略の電源に電気的に接続されている。電極3a~3eは電解時の陰極とされる。各電極3a~3eにおける通電電気量は、電極3a~3e毎に独立に制御できるようになっている。
また、電解槽2には、電解槽2の外部との間で電解液を循環させるための循環機構が設けられていてもよく、電解槽2内の電解液を攪拌する攪拌機構が備えられていてもよく、電解槽2内の電解液の流動方向を特定の方向に制御するための流動制御手段が備えられていてもよい。
コンダクタロール4は、電解設備1の電解槽2にステンレス鋼板10を連続的に搬送するために備えられている。また、コンダクタロール4は、図示略の電源に接続されている。ステンレス鋼板10は、コンダクタロール4に電気的に接続されることにより、電解時の陽極とされる。
電解槽2の内部には、電解液が満たされている。電解液は、pHが5.0以上12.0未満の酸性~塩基性の水溶液が好ましい。第2工程における除去対象であるSiは、弱酸性~塩基性の領域で溶解度が増加する物質である。電解液のpHが5.0未満の場合は、Siの溶解度が小さすぎるために充分に表面Siが除去されない。また、電解液のpHが12.0以上になると、充分なSi溶解度があるが、電解によりSiだけでなくCrの溶解も促進してしまい、2種類の元素を単一の電解により除去してしまうため、Si除去効果が不十分となる。また、Crが除去されることで、ステンレス鋼板の発色を十分に確保できなくなる。そのため、電解液のpHは5.0以上12.0未満とする。電解液は例えば、NaOH水溶液、NaSO水溶液、NaOHとNaSOの混合水溶液、HSOとNaSOの混合水溶液等を例示できる。
電解液の温度は、特に限定されず、室温以上であれば問題ない。また、SO 2-やNO 等のようなpHに直接関係しないイオンや界面活性剤が含まれていてもよい。例えば、質量%で1~10%のアルカリ性界面活性剤が含まれていてもよい。
以下、上記の電解設備1を用いた第2工程を説明する。まず、第1工程後のステンレス鋼板10を、コンダクタロール4によって電解槽2内に導入する。また、コンダクタロール4及び電極3a~3eに対して電源から通電を行う。通電により、ステンレス鋼板10は陽極となり、電極2a~2eは陰極となる。コンダクタロール4によって連続的に電解槽2に導入されたステンレス鋼板10は、順次、電極3a~3eの近くを通過する。電極通過時に、各電極3a~3eによってステンレス鋼板10に対する陽極電解処理が行われる。図1に示す例では、5組10枚の電極3a~3eが備えられているので、ステンレス鋼板10の上面及び下面にはそれぞれ、電解槽2を通過する際に、連続して5回の陽極電解処理が施される。図1の例では、ステンレス鋼板10が電極2aを通過時に1回目の陽極電解処理が行われ、電極2eを通過時に5回目の陽極電解処理が行われる。陽極電解処理の回数は、図1の例に限らず、2回以上であればよい。
以下、第2工程における電解条件について説明する。
第1工程後のオーステナイト系ステンレス鋼板に対し、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組(ただしnは2以上の自然数)の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしkは1からnまでの自然数)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσ、電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))、及び電気量の総和に対する1回目の陽極電解処理の電気量の比率(σ/Σσ×100)が、下記(1)~(3)を満たす条件で陽極電解処理を行う。なお、nは陽極電解処理の回数である。図1においては、電解設備1における陰極として機能する電極3a~3eの組数である。nの上限は特に制限はないが、例えば、20以下、15以下、10以下、5以下のいずれでもよい。
0.10(C/dm)≦Σσ≦25.0(C/dm) …(1)
0(C/dm/回)≦(σ-σ)/(n-1)≦5.00(C/dm/回) …(2)
10(%)≦σ/Σσ×100≦90(%) …(3)
各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和Σσは、0.10(C/dm)以上、25.0(C/dm)以下が好ましい。電気量の総和Σσが0.10(C/dm)未満では、ステンレス鋼板10の表面からSiを十分に除去できなくなるので好ましくない。また、電気量の総和Σσが25.0(C/dm)を超えると、Siの除去反応とは異なる反応に電気量が消費されるため、Siを十分に除去できなくなる。より好ましい電気量の総和Σσは、0.50(C/dm)以上、21.0(C/dm)以下である。
次に、各回毎の陽極電解処理における電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))とは、1回目の陽極電解処理における電気量σと、最後のn回目の陽極電解処理における電気量σとの差分を、(n-1)で除した値である。電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))は、0(C/dm/回)以上、5.00(C/dm/回)以下が好ましい。本実施形態では、陽極電解処理における電気量を、各回毎に徐々に減少させることが好ましい。陽極電解処理が進むと、最初はステンレス鋼板からSiが除去されるが、Siの除去が進むと相対的にCrの表面濃度が増加して、Crが除去されやすくなる。このため、陽極電解処理の回数が増すたびに、陽極電解処理の電気量を徐々に低減させることで、Crの表面濃度の増加に伴うCrの除去速度の増加を抑制できるようになる。平均減少幅が5.00(C/dm/回)を超えると、早い回における陽極電解処理の電気量が相対的に大きくなり、早い段階でCrの溶出が起きてしまうので好ましくない。より好ましい平均減少幅((σ-σ)/(n-1))の上限は、3.00(C/dm/回)以下であり、更に好ましくは2.00(C/dm/回)以下であり、更に好ましくは1.00(C/dm/回)以下である。平均減少幅((σ-σ)/(n-1))は、0(C/dm/回)でもよい。すなわち各回の陽極電解処理における電気量が同一でもよい。
なお、電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))が0~5.00(C/dm/回)の範囲を満たす限りにおいて、k+1回目の陽極電解処理における電気量が、k回目の陽極電解処理における電気量より大きくなっても差し支えない。
次に、電気量の総和に対する1回目の陽極電解処理の電気量の比率(σ/Σσ×100)は、10(%)以上90(%)以下が好ましい。1回目の電気量の比率が10%未満では、最もCrの表面濃度が低い段階においてSiのみを十分に除去することができなくなり、ステンレス鋼板の発色性が低下してしまう。また、1回目の電気量の比率が90%を超えると、1回目の電解においてCrが多量に溶解して除去されてしまう。より好ましくは、1回目の陽極電解処理の電気量の比率(σ/Σσ×100)を20%以上、80%以下にするとよい。
また、本実施形態では、k回目の陽極電解処理における電気量σと、k+1回目の陽極電解処理における電気量σk+1との関係が、σ≧σk+1の関係にあることがより好ましい。なお、この場合のkは、1~(n-1)までの自然数になる。このように、陽極電解処理の電気量を徐々に低減させることが好ましい。これにより、ステンレス鋼板の表面にCrを残しつつ、Siを除去できるようになる。
本実施形態では、複数の電極を用いて陽極電解を連続して行う場合について説明したが、陽極電解の合間に、別の目的で陰極電解を実施してもよい。陰極電解時にステンレス鋼板の表面で起きる還元反応は、Si及びCrの除去に影響を与えない。なお、陰極電解を実施する場合は、陰極電解用の電極における電気量は、上記(1)~(3)の式には導入せずに無視する。
第2工程後のステンレス鋼板は、表面に付着した電解液を水洗等によって洗浄し、その後、コイル状に巻き取って製品とする。
本実施形態の製造方法によって得られるステンレス鋼板は、表面Si濃度が15質量%以下となり、表面粗さRaが0.100μm以下となる。これにより、オーステナイト系ステンレス鋼板の着色性が良好になる。
以上説明したように、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法によれば、小さな表面粗さ、光沢度を維持しつつ、表面のCrを極力除去せずにSiを除去することができる。これにより、オーステナイト系ステンレス鋼板の表面粗度の増大を防止し、光沢を維持したまま、着色を施すことができる。
(実施例1)
<供試材及び第1工程>
表1に示す2種類のオーステナイト系ステンレス鋼のスラブを準備した。これらのスラブに熱間圧延を施し、ショットブラストと酸洗により脱スケールを施した。脱スケールの条件は、一般的に用いられる方法で行った。脱スケール後に冷間圧延と中間焼鈍を施すことで、最終的に板厚0.1mmの素材を作成した。この素材を仕上焼鈍、テンションレベラーによる矯正処理、応力除去処理を施した。中間焼鈍および仕上焼鈍および応力除去処理は、Nを10%以上含有し、残部をHとする露点-40℃以下の非酸化性雰囲気中で行った。また、中間焼鈍及び応力除去処理における均熱温度をそれぞれ600℃以上1000℃以下の範囲とし、均熱時間をそれぞれ5秒以上30秒以下とした。仕上焼鈍の均熱温度および均熱時間は表2の通りとした。
Figure 0007031515000001
<第2工程>
これらの素材を用いて、図1に示す電解設備を用いて、様々なpHの電解液中にて電解を施した。陽極電解処理は5回連続で行った。表2に、電解条件を示す。なお、各回毎の陽極電解処理における電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))は0(C/dm/回)とした。すなわち各回の陽極電解処理における電気量は同一とした。また、σ/Σσk×100は20%であった。
Figure 0007031515000002
下線は、本発明の範囲外であることを示す。
表2に示す条件で電解した素材を用いて、表面組成、表面粗さ、光沢度を評価した。結果を表3に示す。
<表面組成>
表面組成は、XPS(X線光電子分光)により評価した。表2に示した素材の表面から深さ方向へ分析し、Fe、Cr、Ni、Si、Mn、Nbの総和に占めるSiの割合を算出した。
<表面粗さ>
接触式粗さ計を用いて、JIS B 601に規定された方法により測定した。圧延方向の平行方向および垂直方向に測定した値の平均値を算出し、代表値として用いた。
<光沢度>
光沢度計を用いて、JIS Z 8741に規定された方法により測定した。入射角は60°とし圧延方向の平行方向および垂直方向に測定した値の平均値を算出し、代表値として用いた。
Figure 0007031515000003
本発明No.1~13では、pHが5.0以上12.0未満の電解液で、正の電流を流した際の電解電気量の総和を0.10~24.0C/dmとしている。そのため、表面Siは15%以下となり、顕著に表面Siを除去できている。
比較材No.14は、最終焼鈍及び電解を施していないため、表面Siは15%を超える高い水準となった。図2に示すように、比較例No.14の表面のSi量は、発明例No.5に比べて明らかに多くなっている。図2は、XPS(X線光電子分光)による評価結果であって、ステンレス鋼板の表面から深さ方向へ分析し、Fe、Cr、Ni、Si、Mn、Nbの総和に占めるSiの割合を算出したものである。
比較材No.15は、最終焼鈍の温度が高いため、表面のSi濃度が増加してしまい、適切な条件で電解を施したが、表面Siは15%を超える高い水準となった。
比較材No.16~18は、電解液のpHが適切ではないため、表面Siが15%を超える高い水準となった。
比較材No.19は、電解電気量の総和Σσkが小さいため、表面Siは15%を超える高い水準となった。
比較材No.20は、最終焼鈍の均熱時間が長いため、表面のSi濃度が増加してしまい、適切な条件で電解を施したが、表面Siは15%を超える高い水準となった。
比較材No.21は、電解液のpHが低く、電解電気量の総和Σσkが大きい。そのため、表面Siは充分に除去できるものの、表面粗さが大きくなり、光沢度も著しく低下した。
(実施例2)
<供試材及び第1工程>
表1に示すオーステナイト系ステンレス鋼のスラブAを準備した。スラブAに熱間圧延を施し、ショットブラストと酸洗により脱スケールを施した。脱スケールの条件は、一般的に用いられる方法で行った。脱スケール後に冷間圧延と中間焼鈍を施すことで、最終的に板厚0.1mmの素材を作成した。この素材を仕上焼鈍、テンションレベラーによる矯正処理、応力除去処理を施した。中間焼鈍、仕上焼鈍および応力除去処理は、Nを10%以上含有し、残部をHとする露点-40℃以下の非酸化性雰囲気中で行った。また、中間焼鈍、仕上焼鈍及び応力除去処理における均熱温度をそれぞれ600℃以上1000℃以下の範囲とし、均熱時間をそれぞれ5秒以上30秒以下とした。
<第2工程>
第1工程後のステンレス鋼板を用いて、様々なpHの電解液中にて電解を施した。表4A及び表4Bに、電解条件をまとめる。
Figure 0007031515000004
Figure 0007031515000005
下線は、本発明の範囲外であることを示す。
表4A及び表4Bに示す条件で電解した素材を用いて、実施例1と同様にして、表面組成、表面粗さ、光沢度を評価した。
発明例22~32は、表面組成、表面粗さ、光沢度及び陽極酸化による着色品質が満足できるレベルであったが、比較例33~38では、表面組成、表面粗さ、光沢度及び陽極酸化による着色品質が満足できないレベルであった。

Claims (4)

  1. 冷間圧延後のオーステナイト系ステンレス鋼板に対し、中間焼鈍と、仕上焼鈍と、テンションレベラーによる矯正処理と、応力除去処理とを行うとともに、前記中間焼鈍、前記仕上焼鈍及び前記応力除去処理における均熱温度をそれぞれ600℃以上1000℃以下の範囲とし、均熱時間をそれぞれ5秒以上30秒以下とする第1工程と、
    前記第1工程後の前記オーステナイト系ステンレス鋼板に対し、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組(ただしnは2以上の自然数)の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσ(ただしkは1からnまでの自然数)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσとしたとき、電気量の総和Σσ、電気量の平均減少幅((σ-σ)/(n-1))、及び電気量の総和に対する1回目の陽極電解処理の電気量の比率(σ/Σσ×100)が、下記(1)~(3)を満たす条件で陽極電解処理を行う第2工程と、
    を備えるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
    0.10(C/dm)≦Σσ≦25.0(C/dm) …(1)
    0(C/dm/回)≦(σ-σ)/(n-1)≦5.00(C/dm/回) …(2)
    10(%)≦σ/Σσ×100≦90(%) …(3)
  2. k回目の陽極電解処理における電気量σと、k+1回目の陽極電解処理における電気量σk+1との関係が、σ≧σk+1との関係にあることを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
  3. 前記電解液に、質量%で1~10%のアルカリ性界面活性剤が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 前記オーステナイト系ステンレス鋼板の表面Si濃度が15質量%以下、表面粗さRaが0.100μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
JP2018128545A 2018-07-05 2018-07-05 オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 Active JP7031515B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018128545A JP7031515B2 (ja) 2018-07-05 2018-07-05 オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018128545A JP7031515B2 (ja) 2018-07-05 2018-07-05 オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020007597A JP2020007597A (ja) 2020-01-16
JP7031515B2 true JP7031515B2 (ja) 2022-03-08

Family

ID=69150738

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018128545A Active JP7031515B2 (ja) 2018-07-05 2018-07-05 オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7031515B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004169154A (ja) 2002-11-22 2004-06-17 Nippon Steel Corp 表面光沢に優れるステンレス鋼の製造方法
JP2005272972A (ja) 2004-03-26 2005-10-06 Nisshin Steel Co Ltd 光輝焼鈍処理ステンレス鋼板の塗装前処理方法および塗装用光輝焼鈍処理ステンレス鋼板
JP2008019491A (ja) 2006-07-14 2008-01-31 Sumitomo Metal Ind Ltd 均一皮膜を有するステンレス鋼板およびその製造方法
JP2011012334A (ja) 2009-07-06 2011-01-20 Sumitomo Metal Ind Ltd フォトエッチング加工用ステンレス鋼板およびその製造方法
JP5163588B2 (ja) 2009-04-21 2013-03-13 パナソニック株式会社 家庭電気製品収納庫
JP5920555B1 (ja) 2014-09-25 2016-05-18 新日鐵住金株式会社 オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4916178B1 (ja) * 1970-11-07 1974-04-20
JPS602695A (ja) * 1983-06-17 1985-01-08 Hitachi Ltd 発電プラント
JPH0668154B2 (ja) * 1987-06-08 1994-08-31 アベル株式会社 クロム合金の表面処理法
JP2588336B2 (ja) * 1991-12-13 1997-03-05 川崎製鉄株式会社 防眩性と耐食性を兼ね備えた外装用ステンレス鋼板の製造方法
JP2680785B2 (ja) * 1994-08-19 1997-11-19 株式会社日立製作所 焼鈍されたステンレス鋼帯の脱スケール方法及び装置
JP3772361B2 (ja) * 1995-03-31 2006-05-10 Jfeスチール株式会社 ステンレス鋼の表面処理方法
JP3152631B2 (ja) * 1997-06-06 2001-04-03 日本冶金工業株式会社 抗菌ステンレス鋼およびその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004169154A (ja) 2002-11-22 2004-06-17 Nippon Steel Corp 表面光沢に優れるステンレス鋼の製造方法
JP2005272972A (ja) 2004-03-26 2005-10-06 Nisshin Steel Co Ltd 光輝焼鈍処理ステンレス鋼板の塗装前処理方法および塗装用光輝焼鈍処理ステンレス鋼板
JP2008019491A (ja) 2006-07-14 2008-01-31 Sumitomo Metal Ind Ltd 均一皮膜を有するステンレス鋼板およびその製造方法
JP5163588B2 (ja) 2009-04-21 2013-03-13 パナソニック株式会社 家庭電気製品収納庫
JP2011012334A (ja) 2009-07-06 2011-01-20 Sumitomo Metal Ind Ltd フォトエッチング加工用ステンレス鋼板およびその製造方法
JP5920555B1 (ja) 2014-09-25 2016-05-18 新日鐵住金株式会社 オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020007597A (ja) 2020-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101289147B1 (ko) 표면품질이 우수한 저크롬 페라이트계 스테인리스 냉연강판을 제조하기 위한 친환경 고속 산세 프로세스
CZ177495A3 (en) Treatment of cold rolled stainless steel
JP7031515B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法
US2197653A (en) Method of electrically pickling and cleaning stainless steel and other metals
JP2003286592A (ja) ステンレス鋼帯の酸洗方法
EP1051545B1 (en) Method for treating a metal product
JP3792335B2 (ja) ステンレス鋼帯の脱スケールにおける仕上げ電解酸洗方法
KR100720278B1 (ko) Nb첨가 고 Cr 페라이트계 안정화 스테인리스강의 고속산세방법
JP6341382B2 (ja) 方向性電磁鋼板とその製造方法
JP3108629B2 (ja) ステンレス鋼帯の電解酸洗装置ならびにステンレス鋼帯の電解酸洗方法および焼鈍、酸洗方法
US6921443B1 (en) Process for producing stainless steel with improved surface properties
JP2842787B2 (ja) ステンレス冷延鋼帯の焼鈍・脱スケール方法
KR101145601B1 (ko) 오스테나이트계 스테인레스강의 고속산세방법
JP4037743B2 (ja) 表面光沢に優れるステンレス鋼の製造方法
JP4322726B2 (ja) 表面光沢に優れるステンレス鋼板の製造方法
JP2991829B2 (ja) 鋼質金属の高速酸洗方法
JP2000045086A (ja) ステンレス鋼の酸洗方法および酸洗液
EP1873264B1 (en) Method for cooling steel product with water
JP4132973B2 (ja) 表面の平滑なステンレス鋼板の製造方法
KR101073262B1 (ko) 니오븀 첨가 페라이트계 스테인리스강의 산세방법
JP2640565B2 (ja) ステンレス鋼板の連続製造装置
JPH05247700A (ja) ステンレス焼鈍鋼帯の電解デスケーリング方法
JP4218750B2 (ja) 表面性状に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板及びその製造方法
JP3949846B2 (ja) ステンレス鋼の脱スケール方法
JP2000288619A (ja) バフ研磨性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210303

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220117

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220125

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220207

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7031515

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350