実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるスクロール圧縮機の縦断面模式図である。図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。また、温度及び圧力の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、システム及び装置等における状態及び動作等において相対的に定まるものとする。また、模式図は、実施の形態の加工性及び組立性まで考慮した構造を忠実に提示するものではなく、構成をシンプルに説明するための簡易的なものである。
このスクロール圧縮機1は、冷媒等の流体を吸入し、圧縮して高圧の状態として吐出させる機能を有し、外殻を構成する密閉容器21の内部に、圧縮機構部10、モータ18及びその他の構成部品を収納する。圧縮機構部10とモータ18とは軸15で連結されている。図1に示すように、密閉容器21内において、圧縮機構部10が上方に、モータ18は圧縮機構部10の下側に、それぞれ配置されている。密閉容器21の下方は油溜めとなっており、潤滑油22が貯留されている。
密閉容器21の内部には、フレーム14とサブフレーム19とが配置されている。フレーム14は、モータ18の上側に配置されてモータ18と圧縮機構部10との間に位置している。サブフレーム19は、モータ18の下側に位置している。フレーム14及びサブフレーム19は、密閉容器21に固着されている。フレーム14の中央部には主軸受14aが設けられており、サブフレーム19の中央部には副軸受19aが設けられている。主軸受14a及び副軸受19aに軸15が回転自在に支持されている。
密閉容器21の内部を高圧空間211と低圧空間212とに区画するセパレータ29が圧縮機構部10の上側に配置されている。セパレータ29よりも上方が高圧空間211、下方が低圧空間212となっている。セパレータ29は、密閉容器21に固着されている。
固定スクロール11の揺動スクロール12とは反対側の端面とセパレータ29との間には、固定スクロール11に形成された第1吐出ポート111に連通する吐出室291aが形成されている。セパレータ29の中央部には、入口側が吐出室291aに開口し、出口側が高圧空間211に開口し、圧縮室9内で圧縮された流体を高圧空間211へ吐出する第2吐出ポート292が形成されている。第2吐出ポート292の出口側には、吐出室291aへの流体の逆流を防ぐため、第2吐出ポート292を開閉する吐出弁25と、吐出弁25のリフト量を制限する吐出弁ストッパ25bとが設けられている。圧縮室9内で流体が所定圧力まで圧縮されると、吐出弁25がその弾性力に逆らって持ち上げられ、圧縮された流体が第2吐出ポート292から高圧空間211内に吐出され、吐出管24を通ってスクロール圧縮機1の外部に吐出される。
セパレータ29には更に、リリーフ機構220及びアンロード機構230等が設けられているが、これらの構成については改めて詳述する。
密閉容器21には、低圧空間212に連通し流体を吸入するための吸入管23と、高圧空間211に連通し流体を吐出するための吐出管24が設けられている。
圧縮機構部10は、吸入管23から吸入した流体を圧縮し、密閉容器21内の上方に形成されている高圧空間211に排出する。圧縮機構部10は、固定スクロール11と揺動スクロール12とを備え、図1に示すように、固定スクロール11は上側に、揺動スクロール12は下側に配置されている。固定スクロール11は、固定台板11aと、固定台板11aの一方の面に立設された渦巻状突起である固定渦巻歯11bとで構成されている。揺動スクロール12は、揺動台板12aと、揺動台板12aの一方の面に立設された渦巻状突起である揺動渦巻歯12bとで構成されている。
固定渦巻歯11b及び揺動渦巻歯12bは、例えばインボリュート曲線にならって形成されており、固定渦巻歯11b及び揺動渦巻歯12bが噛み合って組み合わされることで、固定渦巻歯11bと揺動渦巻歯12bとの間に、複数の圧縮室9が形成される。
固定スクロール11と揺動スクロール12はセパレータ29とフレーム14との間に配置されている。固定スクロール11は、固定スクロール11の外周に複数配置された径方向ガイド部材28によって平面位置と姿勢とが規制される。固定スクロール11の固定台板11aには、一端が圧縮室9に開口し、他端が後述の背圧室291bに開口する一対の抽気孔112が形成されている。
揺動スクロール12において揺動渦巻歯12bの形成面とは反対側の面の中心部に、円筒形状のボス部121が形成されている。揺動スクロール12は、このボス部121に軸15の上端に設けられた後述の偏心部15aが嵌入されて、固定スクロール11に対して自転することなく偏心旋回運動を行う。
モータ18は、ステータ18aと、ステータ18aの内周側で回転可能な軸15に固定されたロータ18bからなる。ステータ18aは、通電されることによってロータ18bを回転させる。ステータ18aは、外周面が焼き嵌め等により密閉容器21に固着支持されている。ロータ18bは、ステータ18aに通電がされることにより回転し、軸15を駆動する。
軸15は、上端部に偏心部15aが形成されており、偏心部15aが揺動スクロール12のボス部121に嵌合され、軸15の回転により揺動スクロール12が偏心旋回運動する。
軸15には、モータ18の上側に第1バランサ16が取り付けられている。また、ロータ18bの下側に第2バランサ17が取り付けられている。第1バランサ16は、偏心部15aと偏心方向が逆向きになるように取り付けられている。
軸15の下端部には、給油ポンプ27が装着されている。給油ポンプ27は軸15の回転に従い、油溜めに保有している潤滑油22を軸15内部に設けられた給油孔152を通して各摺動部に供給する。
圧縮機構部10内には、揺動スクロール12の偏心旋回運動中における自転運動を阻止するためのオルダムリング等の姿勢規制手段13が配設されている。この姿勢規制手段13は、フレーム14と揺動スクロール12との間に配設され、揺動スクロール12の自転運動を阻止すると共に、公転運動である偏心旋回運動を可能とする。
図1において、密閉容器21に設けられた図示省略の電源端子に通電されると、ステータ18aとロータ18bとの間にトルクが発生し、主軸受14aと副軸受19aとで支持された軸15が回転する。軸15の回転により、揺動スクロール12が姿勢規制手段13により自転を規制されて偏心旋回運動する。
揺動スクロール12の運動に伴うアンバランスは、軸15に取り付けられた第1バランサ16とロータ18bに取り付けられた第2バランサ17とによって釣り合わせるようになっている。軸15の回転により、密閉容器21の下部に貯留した潤滑油22が給油ポンプ27で汲み上げられ、軸15内に設けられた給油孔152から各摺動部に供給される。
吸入管23から密閉容器21内に吸入されたガスは、揺動スクロール12の偏心旋回運動に伴い、複数の圧縮室9のうち最外周の圧縮室9に取り込まれる。
ガスを取り込んだ圧縮室9は、揺動スクロール12の偏心旋回運動に伴い、外周部から中心方向に移動しながら容積を減じ、流体を圧縮する。圧縮された流体は、固定スクロール11に設けた第1吐出ポート111及びセパレータ29に設けた第2吐出ポート292から吐出弁25を押し上げて高圧空間211に吐出され、吐出管24から密閉容器21外に排出される。
以下、渦巻の動作及び抽気孔112の位置に関する記述は実施の形態1及び実施の形態2に共通である。
図2は、図1のスクロール圧縮機の揺動スクロールの偏心旋回に伴う圧縮行程を示す図である。図2において、複数の圧縮室9のうち、最も内側の圧縮室9を最内室9a、最も外側の圧縮室9を最外室9c、最内室9aと最外室9cとの間の圧縮室9を、内側から数えて2つ目の圧縮室という意味で第2室9bという。図2には、2.5巻程度の渦巻仕様の例を示している。
図2(b)は、クランク角が吸入完了角の状態を示している。すなわち、最も外側の圧縮室9における流体の吸入が完了し、固定渦巻歯11bと揺動渦巻歯12bとによって形成される複数の圧縮室9として、内側から順に、最内室9aと、一対の第2室9bと、一対の最外室9cとが形成されたところを示している。以下、吸入完了角とは、渦巻歯の巻き終わり側で圧縮室9の吸入が完了したときのクランク角を指す。
図2(c)は、クランク角が連通角の状態を示している。上記図2(b)では、固定渦巻歯11bと揺動渦巻歯12bとが巻き始め側で接触してシール形成点130を形成していることで、最内室9aと一対の第2室9bとが形成されている。これに対し、図2(c)では、シール形成点130が離間する直前、第2室9bが最内室9aと合流して一室となるところである。以下、連通角とは、第2室9bが最内室9aと合流して一室となるときのクランク角を指す。
図2(d)は、シール形成点130が離間し、第2室9bが最内室9aと合わさって一室となった状態、最内室9aと最外室9cとの2室状態を示している。
図2(e)~図2(f)も、最内室9aと最外室9cの2室状態を示している。
以上のように、クランク角0~2πの揺動スクロール12の偏心旋回1回転の間に、吸入完了角と連通角とに対するクランク角の大小により、圧縮室9は2室又は3室となる。すなわち、吸入完了角から連通角の間は、最外室9c、第2室9b及び最内室9aの3室となる。連通角から吸入完了角の間は、最外室9cと最内室9aとの2室となる。そして、吸入完了角において新たな最外室9cが形成されて、それまでの最外室9cが第2室9bとなり、最外室9c、第2室9b及び最内室9aの3室となる。
図2(a)~図2(f)において、図2(b)で吸入が完了した最外室9cは、揺動スクロール12の偏心旋回により、図2(c)、図2(d)、図2(e)、図2(f)、図2(a)を経て、容積が小さくなることで、流体の圧縮を行う。そして、再び図2(b)に到達することで新たに最外室9cができるため、これまでの最外室9cが第2室9bとなる。この第2室9bが、図2(c)の連通角において最内室9aに合流し始める。
一対の抽気孔112は、それぞれ固定渦巻歯11bの内向面/外向面に沿って設けられ、内向面/外向面各々の巻き終わり部11ba及び巻き終わり部11bb(図2(b)参照)から伸開角で約2.5π内側に位置している。
吸入完了時のクランク角を0とすると、クランク角0で吸入完了した最外室9cは揺動スクロール12の偏心旋回運動に伴って渦巻中心方向に移動する。クランク角が約π/2のとき、つまり吸入完了後1/4回転前後で第2室/最外室間のシール形成点が抽気孔位置を通過すると、最外室9cに抽気孔112が開口し始める。そして、抽気孔112が開口した最外室9cが、渦巻中心方向に容積を減少しながら移動し、吸入完了時から揺動スクロール12が1回転偏心旋回運動した2回目の吸入完了角において、最外室9cが第2室9bとなる。このように最外室9cが第2室9bになった後も、次の第2室/最外室間シール形成点の抽気孔位置通過まではこの第2室9bに抽気孔112が開口している。
最内室(連通角以前の場合は第2室)/最外室間のシール形成点の抽気孔位置通過が連通角よりも後となる設定では、揺動スクロール12の偏心旋回運動が進み、連通角での第2室9bと最内室9aの合流以降は、最内室9aに抽気孔112が開口する。シール形成点が抽気孔位置を通過した時点で抽気孔112は第2室に開口する。前記2回目の吸入完了角からクランク角が約π/4になると、第2室9bへの抽気孔112の開口が終了し、2回目の吸入完了角後1/4回転前後の最外室9cに抽気孔112が開口し始める。
揺動スクロール12の偏心旋回により、抽気孔112から見れば、近づいてくる最外室9cに開口してから、この最外室9cが第2室9bを経て最内室9aとなるまで開口し続けた後、次に近づいてくる最外室9cに開口し始める、という動作が繰り返される。抽気孔112は、揺動スクロール12の偏心旋回1回転中常に何れかの圧縮室9即ち中間圧圧縮室37に開口し、圧縮室9内の圧力を後述の背圧室291bに供給する。図2によると、抽気孔112が揺動渦巻歯12bによって塞がれ、厳密には圧縮室9に開口しない時間もあるが、開口しない時間は僅かであって、実質的には常に何れかの圧縮室9に開口している。
スクロール圧縮機においては、渦巻仕様が決まることで組込容積比、すなわち(吸入完了容積)/(連通角到達時の第2室の容積)が決まる。スクロール圧縮機1では、上述したように、吸入完了角で最外室9cが形成された後、揺動スクロール12が1回転偏心旋回運動して再び吸入完了角に到達することで最外室9cが第2室9bになり、更に揺動スクロール12が偏心旋回運動して連通角に到達することで、その第2室9bが最内室9aに合流する。つまり、最外室9cが形成されてから、その最外室9cが連通角において最内室9aと合流して第1吐出ポート111と連通するまでの間、その圧縮室9では運転条件の高低圧に関わらず圧縮が行われる。
圧縮比或いは圧力比は、ある圧縮室が吸入完了時点からどれだけ圧縮されたかを、容積減少の結果の昇圧に着目して示す指標であって、同じ渦巻仕様であっても冷媒物性及び吸入状態量によって異なってくる。渦巻仕様としては組込容積比で定義する方が合理的である。
通常、スクロール圧縮機では、組込容積比は固定値である。このため、吸入圧と吐出圧との圧力差が例えば比較的小さい運転条件では、圧縮機構部で冷媒を圧縮し過ぎる過圧縮が生じる。つまり、上述したように、揺動スクロールが吸入完了角から1回転偏心旋回運動し、更に連通角に到達するまで、圧縮室では圧縮が継続されるので、組込容積比まで圧縮したときに、圧縮室内の圧力が高圧を上回ると、必要以上に昇圧することによる損失、所謂過圧縮損失を生じる。
組込容積比を持つことによる過圧縮損失を低減することは、スクロール圧縮機の圧縮機構特有の課題である。その1つの手段が、連通角到達以前の圧縮室から高圧側への吐出、つまり高圧バイパスを行う、所謂リリーフ機構であり、本実施の形態1ではリリーフ機構として後述のリリーフポート295及びリリーフ弁26等を設けている。
本実施の形態1の低圧バイパスによるアンロードを、密閉容器21外から圧縮機構部10へ接続する配管等を用いることなく可能とした構造について、以下に説明する。
図3は、本発明の実施の形態1によるスクロール圧縮機のアンロード時の要部断面模式図である。図4は、本発明の実施の形態1によるスクロール圧縮機のアンロード時のアンロード機構の拡大模式図である。図5は、本発明の実施の形態1によるスクロール圧縮機の非アンロード時の要部断面模式図である。図6は、本発明の実施の形態1によるスクロール圧縮機の非アンロード時のアンロード機構の拡大模式図である。
固定スクロール11の揺動スクロール12とは反対側の端面とセパレータ29との間には、背圧室291bが形成されている。背圧室291bは、セパレータ29の低圧空間212側の面に形成された円環状の凹部で構成されている。背圧室291bの内周面118の溝には環状のシール部材33が配置されている。また、背圧室291bの外周面119の溝には環状のシール部材34が配置されている。これにより、固定スクロール11の固定台板11aとセパレータ29との間には、円筒状の吐出室291aと、環状の背圧室291bとが区画される。
吐出室291aは、第1吐出ポート111に連通しており、第1吐出ポート111から吐出された流体によって高圧となる。背圧室291bは、固定スクロール11に形成された抽気孔112を介して圧縮途中の圧縮室9即ち中間圧圧縮室37に連通しており、中間圧となる。
セパレータ29には、過圧縮リリーフを行うリリーフ機構220としてリリーフポート295、リリーフ弁26及びリリーフ弁26のリフト量を制限するリリーフ弁ストッパ26bが設けられている。リリーフポート295は、入口側が背圧室291bに開口し、出口側が高圧空間211に開口している。リリーフ弁26及びリリーフ弁ストッパ26bは、リリーフポート295の出口側に設けられている。
固定スクロールの軸方向位置が固定されているスクロール圧縮機においては、運転中の渦巻歯或いは台板の変形及び熱膨張等により、渦巻歯先が、対向する相手側のスクロールの台板に接触又は干渉することがある。最終的に渦巻歯先或いは相手台板の焼付きに至る可能性があるので、この不都合を避けるため、組立時に、渦巻歯先と対向する相手側のスクロールの台板との間に歯先すきまを設定する必要があった。組立時設定歯先すきまは、流体の漏れ経路となることから、圧縮機としての効率低下の要因となっていた。
これに対し、本実施の形態1のスクロール圧縮機1は、背圧室291bに中間圧力を導くと共に、吐出室291aに吐出圧を導くことで、固定スクロール11に軸方向の力を付加して揺動スクロール12側に押し付ける構造となっている。所謂、軸方向コンププライアント方式を採用しているので、予め、組立時において歯先すきまを設定する必要がない。これにより、歯先すきまを極小化して漏れ損失を低減できる。
セパレータ29には更に、圧縮室9から低圧側へ流体をバイパスすることによりスクロール圧縮機1の吐出量を制限するアンロードと、吐出量100%のフルロードとを切り替えるアンロード機構230が組み込まれている。以下、フルロードを非アンロードということがある。
アンロード機構230は、スプール状の制御弁31と、ばね等の弾性体32とがセパレータ29内の径方向に形成されたアンロード孔296に配置されている。アンロード孔296の径方向内側の端部には、制御弁31による高圧導入孔294aの閉止を防ぐ凸部29aが形成されている。アンロード孔296の径方向外側の端部はプラグ35cで閉じられている。
アンロード機構230は、中間圧圧縮室37内の流体を、抽気孔112と、背圧室291bと、セパレータ29に形成されたアンロード経路とを経由して低圧空間212にバイパスすることで、アンロードを行う。アンロード経路は、背圧室291bに一端が開口する背圧室連通路293aと、低圧空間212に一端が開口する低圧空間連通路293bと、アンロード孔296内の制御弁小径部外周空間293cとから構成される。
制御弁31は、アンロード孔296内にスライド自在に配置されていて、アンロード孔296内をスライドすることで、アンロード孔296内での制御弁小径部外周空間293cの位置を移動させる。つまり、制御弁31は、背圧室連通路293aが制御弁小径部外周空間293cに対して開く位置(図4)と、閉じる位置(図6)とに移動してアンロード経路を開閉し、アンロードと非アンロードとを切り替える。
セパレータ29には、アンロード孔296に開口する、高圧導入孔294a及び低圧導入孔294bが形成されている。高圧導入孔294aは、一端が高圧空間211に開口し、他端がアンロード孔296に開口し、高圧空間211の高圧流体を、アンロード孔296において制御弁31の移動方向の一方の端面31a側空間に導入する。低圧導入孔294bは、一端がアンロード孔296に開口し、他端が低圧空間212に開口し、低圧空間212の低圧流体を、アンロード孔296において制御弁31の移動方向の他方の端面31b側の低圧導入空間297に導入する。
弾性体32は、制御弁31の他方の端面31b側の低圧導入空間297に配置されており、制御弁31を高圧側(図6の右側)に付勢している。制御弁31は、運転停止時、弾性体32の付勢力により高圧側に押圧されて一方の端面31aが凸部29aに接触した状態となっている。この状態において、制御弁31は、背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路を開放している。
スクロール圧縮機1の運転条件が、高低圧差が設定値以下であるとき、制御弁31の一方の端面31aに作用する高圧と他方の端面31bに作用する低圧との差圧力よりも、弾性体32による弾性力が上回る。この場合、制御弁31は端面31a方向に押圧され、図3及び図4に示すように制御弁31の一方の端面31aが凸部29aに接触する位置まで移動して停止し、背圧室連通路293aと制御弁小径部外周空間293cとが連通する。つまり背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路が開放される。その結果、中間圧圧縮室37内の流体が、抽気孔112、背圧室291b、背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bの順に通過して低圧空間212に排出される。このため、中間圧圧縮室37が抽気孔112に連通している間、言い換えれば中間圧圧縮室37の外周側シール形成点が抽気孔112を通過するまでの間は、中間圧圧縮室37では圧縮が為されず、容量制御、すなわちアンロード状態となる。
スクロール圧縮機1の運転条件が、高低圧差が設定値を超える場合には、制御弁31の一方の端面31aに作用する高圧と他方の端面31bに作用する低圧との差圧力が、弾性体32による弾性力を上回る。この場合、図5及び図6に示すように制御弁31が端面31b方向にスライドし、背圧室連通路293aが制御弁31によって塞がれる。これにより、背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路が閉じられ、アンロード状態から非アンロード状態に切り替わる。
このようにアンロード機構230は、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて制御弁31の一方の端面31aと他方の端面31bとに作用する圧力が変化することで、制御弁31が自動的に移動し、アンロードと非アンロードとを自動的に切り替える。アンロードと非アンロードとの切り替え点となる上記設定値は、制御弁31の両端面に作用する圧力を考慮して弾性体32のばね定数を選択することで、所望の値に調整することが可能である。
アンロード機構230は、制御弁31の両端面に作用させる高低圧を、密閉容器21内から導いているので、密閉容器21内で完結した構造であり、密閉容器21外から圧縮機構部10へ接続する配管等が不要である。
次に、スクロール圧縮機1の動作を、吐出室291a及び背圧室291bの作用、並びにリリーフ機構220及びアンロード機構230の動作に着目して説明する。
運転時、固定スクロール11は、吐出室291a及び背圧室291bの圧力を受けて、固定スクロール11外周に複数配置された径方向ガイド部材28(図2参照)によって平面位置と姿勢を規制されながら、圧縮室9内の圧力に抗して軸方向に揺動スクロール12側へ押し付けられる。
高低圧差が小さい条件での運転時は、上述したようにアンロード機構230において制御弁31が背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路を開放する。これにより、中間圧圧縮室37内の流体が、抽気孔112、背圧室291b及びアンロード経路等を介して低圧空間212に排出され、アンロード状態となる。
アンロード時において、吸入完了角から1/4回転までの間は、最外室9cすなわち中間圧圧縮室37で必ずしも必要ではない圧縮作用を行うことになる。しかし、吸入完了直後の容積変化に対する昇圧幅が小さい領域なので性能低下は限られたものとなり、実用上は問題ない。
高低圧差が設定値を超える条件での運転時は、上述したようにアンロード機構230において制御弁31が背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路を閉じ、非アンロード状態となる。
また、非アンロードで低圧縮比の運転時に背圧室291bに連通する中間圧圧縮室37の圧力が吐出圧を上回ると、リリーフ弁26がその弾性力に逆らって持ち上げられる。揺動スクロール12が吸入完了角から1回転偏心旋回運動し、更に連通角に到達するまでの間に、中間圧圧縮室37である第2室9b内の圧力が吐出圧を上回ると、リリーフ弁26がその弾性力に逆らって持ち上げられる。これにより、背圧室291bの流体がリリーフポート295から高圧空間211内にリリーフされ、過圧縮損失が低減される。
以上に説明した過圧縮リリーフとアンロードの何れの場合も、圧縮室9から直接、高圧空間211又は低圧空間212に流体を排出するのではなく、背圧室291bを経由して排出するため、背圧室291bとその前後の流路とがバッファとなる。これにより、圧縮室9内の圧力変動と、過圧縮リリーフ及びアンロード側の脈動とが、ダイレクトに影響し合うことのない安定した過圧縮損失の低減及び容量制御を実現できる。
また、アンロード時、抽気孔112が開口している圧縮室9の実質的な吸入完了は、抽気孔112が開口しなくなったタイミングとなる。このため、アンロード時の圧縮室9の昇圧部分の圧力及びその受圧面積である圧縮室9の平面投影面積は、非アンロード時よりも減少する。したがって、アンロード時は、固定スクロール11を軸方向上向きに押し上げて揺動スクロール12から引き離そうとする力が、非アンロード時よりも減少する。このため、固定スクロール11に作用する軸方向下向きの力が、軸方向上向きの力に比べて過剰とならないように、アンロード時は非アンロード時よりも背圧力を減らす必要がある。
しかし、何らかの理由により背圧室291bに中間圧が残った状態でアンロードとなると、固定スクロール11を揺動スクロール12に押し付けようとする背圧力が減少しないことになる。この場合、軸方向コンプライアントの押付け力、つまり軸方向下向きの力が過剰となり、摺動損失の増大から歯先の焼付きに至るといった不具合が生じる可能性がある。
本実施の形態1では、アンロードと背圧室291bの圧力開放とが同じ制御弁31という要素によって行われるため、背圧室291bに中間圧が残った状態でアンロードになることがなく、このような不具合が生じることが避けられる。
以上説明したように、本実施の形態1は、セパレータ29にアンロード孔296が形成されており、制御弁31がアンロード孔296内で移動することでアンロード経路を開閉するアンロード機構230を備えている。制御弁31の位置を移動させるために制御弁31の両端面に作用させる低圧及び高圧を、密閉容器21内から導く構成とし、アンロードに係る構造が、密閉容器21内で完結している。このため、アンロードを、密閉容器21外から圧縮機構部10へ配管接続することなく行うことができる。したがって、従来のように圧縮機構部10と密閉容器21外の配管とを接続したり、その配管に弁類を備えたりする必要が無く、コストの低減を図ることができる。
また、本実施の形態1では、アンロードと非アンロードとの切り替えが運転条件に応じて自動的に切り替えられる。つまり、非アンロードからアンロードへの移行及びアンロードから非アンロードへの復帰が自動で行われる。このため、外部からの切り替え操作のための配管接続によるコスト増大を避けることができ、また、切り替え弁等の操作が不要である。これにより、幅広い容量で効率の良いスクロール圧縮機1を得ることができる。
本実施の形態1において、制御弁31は、高低圧差が予め設定した設定値を超えるとき、アンロード経路を閉、高低圧差が設定値以下のとき、アンロード経路を開とする。このように、高低圧差に応じてアンロードと非アンロードとを切り替えることができる。
本実施の形態1において、アンロード機構230は、制御弁31を高圧側に付勢して、制御弁31を、アンロード経路を開放する位置に位置させる弾性体32を備えている。制御弁31は、運転条件に応じて変化する高低圧差に応じた差圧力が弾性体32の付勢力を上回ることで、アンロード経路を開放する位置から閉じる位置に移動する。これにより、非アンロードからアンロードへの移行及びアンロードから非アンロードへの復帰を自動で行える。
本実施の形態1において、アンロード孔296はセパレータ29に形成されている。アンロード経路は、背圧室291bに一端が開口する背圧室連通路293aと、低圧空間212に一端が開口する低圧空間連通路293bと、制御弁小径部外周空間293cとから構成されている。セパレータ29には、制御弁31の一方の端面31bが面する空間に低圧空間212の低圧を導入する低圧導入孔294bと、制御弁31の他方の端面31aが面する空間に高圧空間211の高圧を導入する高圧導入孔294aとが形成されている。この構造により、制御弁31の両端面に密閉容器21内から高低圧を作用させることができる。
また、本実施の形態1では、リリーフポート295及びアンロード経路がセパレータ29に形成され、それぞれが背圧室291bに連通し、背圧室291bが、固定スクロール11に設けた抽気孔112を介して中間圧圧縮室37に連通している。リリーフ機構220とアンロード機構230とで共通の抽気孔112が中間圧圧縮室37に開口する構成により、過圧縮リリーフ及びアンロードの何れにおいても、圧縮室9に開口するポートは抽気孔112のみである。したがって、過圧縮リリーフ及びアンロードの各々について、独立のポートが必要であった従来の構成に比べて、圧縮室9に開口するポート数を最少とすることができる。
本実施の形態1では、吐出室291a及び背圧室291bの圧力による固定スクロール11の揺動スクロール12側への押圧により、歯先すきまを最小化でき、圧縮効率を高効率化することができる。また、背圧室からの高圧側リリーフによる低圧縮比条件での過圧縮損失低減と併せて、幅広い条件及び容量範囲で高効率のスクロール圧縮機を得ることが可能となる。
なお、本実施の形態1では、制御弁31で背圧室連通路293aを塞ぐことで背圧室連通路293a、制御弁小径部外周空間293c、低圧空間連通路293bからなるアンロード経路を閉じるようにしているが、低圧空間連通路293bを塞ぐことでアンロード経路を閉じるようにしてもよい。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、アンロード孔296がセパレータ29に形成されていたが、実施の形態2では、固定スクロール11にアンロード孔117が形成されている。以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
図7は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機の縦断面模式図である。図8は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機の要部断面模式図である。図8において点線で囲った部分がアンロード機構230に相当する。図9は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機のアンロード時のアンロード機構の拡大模式図である。図10は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機の非アンロード時のアンロード機構の拡大模式図である。図8~図10において操作圧導入横孔124及び受圧ポケット115に示した矢印は油圧の向きを示している。
図11は、図7の固定スクロールを渦巻側から見た図である。図12は、図7の固定スクロールを反渦巻側から見た図である。図13は、図7の揺動スクロールを渦巻側から見た図である。図14は、図7の揺動スクロールを反渦巻側から見た図である。
図15は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機のアンロード時の渦巻組み合わせ状態を示す平面形状図である。図16は、図15のアンロード機構の拡大形状図である。図17は、図7のアンロード機構の制御弁の形状図である。図18は、図7のアンロード機構のばね座36の形状図である。図19は、図7のアンロード機構のプラグの形状図である。図20は、本発明の実施の形態2によるスクロール圧縮機の非アンロード時の渦巻組み合わせ状態を示す平面形状図である。図21は、図20のアンロード機構の拡大形状図である。
本実施の形態2のアンロード機構230は、スプール状の制御弁31と、ばね等の弾性体32と、ばね座36とが、固定スクロール11の固定台板11aに形成されたアンロード孔117に配置されている。アンロード孔117は、図11及び図12に示すように、固定スクロール11の固定台板11aの外周から渦巻中心を通過せずに固定台板11aを貫通して形成されている。アンロード孔117の一端側は図16に示すようにプラグ35aで塞がれ、他端側はばね座36で塞がれている。
アンロード機構230は、中間圧圧縮室37内の流体を、抽気孔112と、背圧室291bと、固定台板11aに形成されたアンロード孔117に構成されたアンロード経路とを介して低圧空間212にバイパスすることで、アンロードを行う。アンロード経路は、背圧室291bに一端が開口する背圧室連通路113と、低圧空間212に一端が開口する低圧空間連通路114と、背圧室連通路113の他端と低圧空間連通路114の他端とを連通する制御弁小径部外周空間120とから構成される。制御弁小径部外周空間120は、アンロード孔117の一部である。
制御弁31は、アンロード孔117にスライド自在に配置されて、一方の端面31aとばね座36との間に配置された弾性体32によってアンロード孔117のプラグ35a方向(図16の左方)に押圧されている。これにより、制御弁31は、他方の端面31bがプラグ35aの先端に当接した状態でアンロード孔117内に配置されている。プラグ35aは図16及び図19に示すように先端部が後方のアンロード孔117閉止部よりも小径に形成されており、固定スクロール11に形成されている後述の操作圧導入孔116を塞がないようになっている。なお、図7~図9では、プラグ35aの形状等が上記の説明と異なるが、図7~図9は模式図であって、図19に示した形状も具体的形状の一例に過ぎない。
ばね座36は図18に示すように、先端部がアンロード孔117の径よりも小径に形成され、その小径部分外周とアンロード孔117内面の間に弾性体32が挿入される。ばね座36の中心部には均圧用の細孔36aが貫通している。
固定スクロール11の固定台板11a及び固定渦巻歯11bには、固定渦巻歯11bの立設方向に貫通する操作圧導入孔116が形成されている。操作圧導入孔116の一端はアンロード孔117に、制御弁31のプラグ35a側の端面31bが面する操作圧導入空間298で、開口している。操作圧導入孔116の他端は、固定渦巻歯11bの歯先面に形成された円形で凹状の受圧ポケット115に開口している。受圧ポケット115の径は、後述の操作圧導入縦孔125の揺動軌跡を包含できる径に設定されており、受圧ポケット115は操作圧導入縦孔125に常に連通している。
揺動スクロール12の揺動台板12aには、図8及び図14に示すように揺動スクロール12のボス部121内から給油圧を固定スクロール11の受圧ポケット115に導く操作圧導入横孔124及び操作圧導入縦孔125が形成されている。操作圧導入横孔124は、揺動台板12aの平面方向横穴であり、操作圧導入縦孔125は、操作圧導入横孔124から縦に延びて揺動台板12a上面に開口する縦穴である。
軸15の回転により給油ポンプ27が駆動されて潤滑油22が給油孔152を上昇し、ボス部121の上部内側に供給される。ボス部121に供給された潤滑油22は、操作圧導入横孔124、操作圧導入縦孔125、受圧ポケット115、操作圧導入孔116を経てアンロード孔117に供給される。これにより、制御弁31の操作圧導入空間298側の端面31bに、揺動スクロール12のボス部121内上部から下流側の抵抗と、給油ポンプ27のポンプ圧とに応じた油圧が作用する。
制御弁31の操作圧導入空間298と反対側の端面31aには常に低圧が作用している。これは、制御弁31の端面31aが面する空間が、ばね座36に形成された細孔36aによって低圧空間212と均圧していることに依る。
スクロール圧縮機1が比較的低速で運転される、つまり、軸15の回転数が設定回転数以下であるとき、給油ポンプ27の給油量は少なく、給油圧は低い。したがって、制御弁31の操作圧導入空間298側の端面31bへの作用圧由来の力よりも、操作圧導入空間298と反対側の端面31aへの作用圧由来の力と弾性体32の弾性力の合計の方が上回る。この場合、図15及び図16に示すように、制御弁31がプラグ35a側に移動してプラグ35aの先端に当接する。これにより、図9に示すように背圧室連通路113と、制御弁小径部外周空間120と、低圧空間連通路114とが連通し、アンロード経路が開放される。
その結果、中間圧圧縮室37内の流体が、抽気孔112、背圧室291b、背圧室連通路113、制御弁小径部外周空間120、低圧空間連通路114の順に通過して低圧空間212に排出される。このため、中間圧圧縮室37が抽気孔112に連通している間、言い換えれば中間圧圧縮室37の外周側シール形成点が抽気孔112を通過するまでの間は、中間圧圧縮室37では圧縮が為されず、容量制御、すなわちアンロード状態となる。
軸15の回転数が設定回転数を超えると、給油ポンプ27の給油量が増大し、給油圧が上昇する。これにより、制御弁31の操作圧導入空間298側の端面31bへの作用圧由来の力が、操作圧導入空間298と反対側の端面31aへの作用圧由来の力と弾性体32の弾性力の合計を上回る。このとき、図10、図20及び図21に示すように、制御弁31がプラグ35aから離れて弾性体32を圧縮する方向に移動し、図10に示すように低圧空間連通路114が制御弁31によって塞がれる。これにより、背圧室連通路113、制御弁小径部外周空間120及び低圧空間連通路114からなるアンロード経路が閉じられ、アンロード状態から非アンロード状態に切り替わる。
このようにアンロード機構230は、スクロール圧縮機1の運転回転数に応じて制御弁31の両端面に作用する圧力が変化することで、制御弁31が自動的に移動し、アンロードと非アンロードとを自動的に切り替える。アンロードと非アンロードとの切り替え点となる上記設定回転数は、制御弁31の両端面に作用する圧力を考慮して弾性体32のばね定数を選択することにより、所望の値に調整することが可能である。
アンロード機構230は、制御弁31の一方の端面31a及び他方の端面31bに作用させる低圧及び操作圧である油圧を、密閉容器21内から導いている。つまり、アンロード機構230は、密閉容器21内で完結した構造であり、密閉容器21外から圧縮機構部10へ接続する配管等が不要である。
以上説明したように、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、軸方向押付による歯先すきまの漏れ損失低減、高圧側リリーフによる低圧縮比条件での過圧縮損失低減の効果を得られる。また、本実施の形態2によれば実施の形態1と同様に、密閉容器内で完結したアンロード機構による容量制御の、圧縮室に開口するポート数最少での構成、圧縮室内の圧力変動とリリーフ側及びアンロード側の脈動とが影響し合わないことによる安定的動作、を実現できる。また、実施の形態2によれば実施の形態1と同様に、アンロードと背圧室の圧力開放とが制御弁という単一要素の動作によって行われるため信頼性が高い、広運転範囲、高効率のスクロール圧縮機を、低コストで得ることができる。
また、本実施の形態2では、回転数に依存した油圧をアンロード機構の操作圧として利用することで実施の形態1に比べて、容量制御のより広範囲での利用が可能となる。空調用途の部分負荷条件では、負荷率が下がる程、より低圧縮比、より低差圧となる傾向がある。負荷率低下に運転回転数を減じることだけで対応しようとすると、低速運転に起因する漏れ損失の相対的増大を招くため、アンロード運転により非アンロード運転時よりも最低回転数を高く保つことが有効である。
高低圧は冷凍サイクルの高温熱源と低温熱源の温度差に依存するので、上述の部分負荷条件のように温度差小と空調負荷減が相関を持っている場合は、実施の形態1の高低圧差依存でアンロード運転に移行するような機構で有効である。これに対して、例えば1台の室外機と多数の室内機で構成されるシステムでは、高低圧差に依らずアンロードした方が良い場合がある。高外気温時に室内機1台のみの冷房運転を行なうような場合、室内外の気温差に依存する高低圧差は大きくて、室内機の運転台数減により空調負荷が室外機容量に比して小さくなるので、アンロードするのが望ましい。
アンロードせずに運転回転数減のみで、室内機稼働台数極少に対応した室外機容量制御を行なうと、圧縮機は低速運転となり前述のように漏れ損失増大による性能低下を招く。また、差圧は温度差に起因するので圧縮機構の各部材に作用する差圧由来の荷重(例えば軸受負荷)が小さくなるわけではないので、低速高差圧運転による軸受焼き付き等を避けるために限界を超えた低回転数運転は出来ない。つまり、差圧依存で起動するアンロード機構が有効ではない運転条件が存在する。
実施の形態2の回転数依存でのアンロード運転移行によれば、低差圧ではないがシステムの容量に比して必要な冷凍能力が小さい、という場合に対応するときにも著しい低回転数運転を回避することが可能となるという効果がある。
本実施の形態2のスクロール圧縮機1は、軸15の下端部に給油ポンプ27を備える。給油ポンプ27は、軸15の回転により、密閉容器21の下部に溜められた潤滑油22を、軸15に貫通して設けられた給油孔152を介して圧縮機構部10に供給する。制御弁31の操作圧導入空間298側の端面31bには、給油ポンプ27から供給される潤滑油22の油圧が作用する。また、制御弁31の操作圧導入空間298と反対側の端面31aには低圧空間の低圧が作用する。この構成により、運転条件に応じて、制御弁31の両端面に作用する圧力差が変化し、制御弁31の位置が移動してアンロード経路の開閉を行うことができる。
本実施の形態2において、制御弁31は、軸15の回転数が予め設定した設定回転数を超えるとき、アンロード経路を閉、回転数が設定回転数以下のとき、アンロード経路を開とする。このように、軸15の回転数に応じてアンロードと非アンロードとを切り替えることができる。
本実施の形態2において、アンロード孔117は固定スクロール11に形成されている。アンロード経路は、背圧室291bに一端が開口する背圧室連通路113と、低圧空間212に一端が開口する低圧空間連通路114と、制御弁小径部外周空間120とから構成されている。アンロード孔117内のばね座36には、制御弁31の反操作圧導入空間側である端面31a側に低圧空間212の低圧を導入する細孔36aが形成されている。また、固定スクロール11には、制御弁31の端面31b側の操作圧導入空間298に給油ポンプ27からの油圧を供給する操作圧導入経路である、受圧ポケット115及び操作圧導入孔116が形成されている。この構造により、制御弁31の両端面に密閉容器21内から低圧及び操作圧である油圧を作用させることができる。
なお、本実施の形態2では、制御弁31で低圧空間連通路114を塞ぐことで背圧室連通路113、制御弁小径部外周空間120、低圧空間連通路114からなるアンロード経路を閉じるようにしているが、背圧室連通路113を塞ぐことでアンロード経路を閉じるようにしてもよい。