以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるシート搬送装置を備えたプリント装置(シート処理装置)の概略構成図である。プリント装置100は、ロール状に保持されたロールシート1の外周よりシートSが引き出され、Y方向に向けて搬送される。そして、プリントヘッド5によって所定の画像がプリントされた後に、カッタ8によって、画像のサイズに応じた位置で切断され、排出ガイド9から排出される。プリント装置100にはスタッカ101(シート積載装置)が接続され、プリント装置100から排出されたシートSは、スタッカ101に搬入され、傾斜して設けられたトレイユニット103に載置される。トレイユニット103に搬入されたシートSは、傾斜面に沿って重力方向の上方に搬送され、頂点を過ぎたら垂れ下がって保持される。連続プリントにより連続してスタッカ101に搬入されるシートSは、既に排出され、積載された積載シートSaの上に積載されることとなる。なお、スタッカ101はプリント装置100に対して接続と切り離しを行うことができる。
スタッカ101は、トレイユニット103と、トレイユニット103に対してシートSを搬送する搬送ユニット102(搬送部)とを備えている。こうしたトレイユニット103と搬送ユニット102との組み合わせが、X方向に沿って複数並設されて構成されている。また、X方向に並設されたトレイユニット103は、トレイ上流フレーム42とトレイ下流フレーム43(図5参照)とにより連結されている。
ここで、シートSの搬送経路の構成について説明する。ロールシート1から供給されたシートSは、搬送ローラ3およびピンチローラ4によって挟持されながら、プラテン6および下流プラテン7に搬送される。プラテン6は、画像データに基づいてインクを吐出するプリントヘッド5に対向する位置に設けられ、プリント中のシートSをその下方から支持している。また、プラテン6には、不図示のダクトや吸引ファンと連通した吸引口が形成されており、搬送中のシートSをプリント面の裏側から吸引して、その平滑性を保っている。プリントヘッド5(処理部)は、インクジェット方式によりシートSに対してインクを吐出する。そして、プリントヘッド5によるプリント動作が進み1ページ分の画像がプリントされると、プリントされた画像の位置に応じてカッタ8によりシートSが切断される。
シートSは、プリント装置100の排出ガイド9から排出されると、搬送ユニット102を介してトレイユニット103に搬入される。搬送ユニット102内に設けられた搬送ローラ12は、排出ガイド9から排出されたシートSの先端が、搬送ローラ12の搬送方向(矢印D1方向)上流側に備えられたシート検知センサ22で検知されたタイミングで駆動される。その後、シートSは、搬送ローラ12とピンチローラ13とにより挟持されて、トレイユニット103に搬送されることとなる。トレイユニット103に搬送されたシートSのサイズが十分に大きい場合には、シートSはトレイユニット103を構成する積載トレイ16の上方側端部からその先端が垂れ下がった状態で保持される。
なお、本明細書においてシート搬送装置は、例えば、搬送ユニット102により構成されるものとし、プリント装置100側のシートSの搬送機構(搬送ローラ3、ピンチローラ4)を含む構成としてもよい。また、プリント装置100には、搭載されているロールシート1の幅サイズ入力、オンライン/オフラインの切り替え、コマンド入力などをユーザーが行うための操作部が備えられている。
次に、図2を参照しながら、搬送ユニット102について説明する。図2には、搬送ユニット近傍の拡大図が示されている。搬送ユニット102は、スタッカ101において、プリント装置100から排出されたシートSの搬送方向の最も上流側に設けられた搬送機構である。プリント装置100の排出ガイド9より排出されたシートSは、ジョイント部10と上ガイド11との間に挿入され、ジョイント部10に支持され、かつ、上ガイド11によってそのカールが押さえられながら進行される。
搬送下ガイド20および搬送上ガイド21は、ジョイント部10と上ガイド11との間に挿入されたシートSを、搬送方向下流側に位置する搬送ローラ12およびピンチローラ13のニップ部Nに案内するためのガイドである。搬送上ガイド21には、ピンチローラ13が回転可能に取り付けられており、付勢手段(不図示)によって搬送ローラ12に向けて付勢されている。また、搬送上ガイド21には、排出ローラ15を支持する排出ローラホルダ29が回動可能に設けられている。一方、搬送下ガイド20において搬送ローラ12の搬送方向上流側には、シートSの先端および後端を検出するためのシート検知センサ22が設けられている。
ニップ部Nから抜けたシートSは、トレイユニット103の上ガイド17と積載トレイ16との間を進行し、最終的に積載トレイ16上に積載シートSaとして保持される。上ガイド17および積載トレイ16は、搬送方向上流側から下流側に向かって上り勾配となるように傾きを有しており、積載トレイ16の搬送方向上流側端部は、ニップ部Nよりも重力方向(Z方向)にhだけ低い位置に位置している。なお、以下の説明において、ニップ部Nと積載トレイ16の搬送方向上流側端部との間に生じる差hの段差を段差Hと称する。また、積載トレイ16の搬送方向上流側端部には、搬送ローラに対して串歯状に当接する突き当て部16bが設けられており、積載シートSaが積載トレイ16から滑り落ちることを防止する。
また、搬送ユニット102には、ニップ部Nと積載トレイ16との重力方向における差分(段差H)を大きく緩和して、ニップ部Nから搬送されるシートSを積載トレイ16(または積載シートSa)までガイド可能なクランプガイド14を有している。このクランプガイド14は、外部からの圧力に応じて撓むことが可能な平板状に形成されており、X方向に沿って複数設けられる。また、クランプガイド14は、後述する移動機構によって、先端部(搬送方向下流側の端部)が積載シートSaに接続および離間可能にY方向に進行(+Y方向の移動)および後退(-Y方向の移動)することが可能となっている。クランプガイド14は、進行することで先端部が積載トレイ16あるいは積載トレイ16に保持された積載シートSaの下端近傍に当接し、搬送ローラ12の搬送方向上流側と下流側とを直線状に連結して搬送経路を形成する。これにより、積載トレイ16に搬入されるシートSをスムーズに案内するガイドとしての役割だけでなく、積載トレイ16に積載シートSaがあるときには、当該積載シートSaの後端側を押さえるクランパとしての役割を兼ね備えている。なお、以下の説明においては、クランプガイド14が、Y方向に後退する動作を退避動作(または単に退避)と称し、退避動作によって最も後退した位置にある状態を退避状態と称する。また、クランプガイド14が、Y方向に進行する動作を突出動作と称し、突出動作によって最も突出した位置にある状態を突出状態と称する。図2では、クランプガイド14の突出状態を示している。
クランプガイド14の先端部には、回転体であるコロ24が取り付けられている。そして、クランプガイド14が積載トレイ16あるいは積載シートSaに当接したときには、このコロ24が積載トレイ16あるいは積載シートSaに当接しながら従動回転してY方向に進行する。図2に示す突出状態では、コロ24は積載トレイ16に積載される積載シートSaの最上位のシートに当接している。このコロ24を設けることにより、積載シートSaを傷つけることなく、クランプガイド14を積載トレイ16上の一部に押圧することができる。
突出状態において、排出ローラ15は、クランプガイド14の上面に当接し、クランプガイド14の抗力によって排出ローラホルダ29とともに持ち上げられる。このような状態で新たなシートSが排出されてくると、シートSは、クランプガイド14にガイドされるとともに排出ローラ15を回転しながらY方向に搬送され、積載トレイ16の最上位シートとして積載される。この際、図2のように、多少カールしていても、排出ローラ15の自重によってこれを押さえるので、積載トレイ16へ搬送中のシートSは、その平滑性を維持することができる。また、段差Hにおいては、クランプガイド14によって塞がれて、その差が大きく緩和されているので、排出ローラ15から抜けたシートSの先端が、段差Hに入り込んでジャムを発生することもない。さらに、積載トレイ16上にある積載シートSaの浮きについても、クランプガイド14の先端部によって押さえられるので、排出されるシートSの先端が積載シートSaに引っかかったり、突き当たってこれを押し出したりすることもない。
また、図3のように、退避状態において、クランプガイド14は、搬送下ガイド20の内側に収納され、コロ24は搬送ローラ12の外径内に納まった位置にある。即ち、退避状態のクランプガイド14は、少なくとも先端側が、積載トレイ16に積載された積載シートSaや、プリント装置100から排出されたシートSに接触しない位置にある。このため、排出ローラ15は自重により搬送ローラ12に当接する位置にある。このとき、ニップ部Nと積載トレイ16との間の段差Hは露出している。新たに排出されるシートSの先端がシート検知センサ22により検知されていないタイミングでは、このような退避状態を維持するようクランプガイド14が制御される。また、新たに排出されるシートSの後端がニップ部Nから抜けたタイミングでは、この退避状態となるようにクランプガイド14が制御される。シートSの後端がニップ部Nから抜けたタイミングにおいて退避状態となれば、既に積載トレイ16上にある積載シートSa上に搬送されたシートSの後端は段差Hを落下し、当該後端を積載シートSaの後端と揃えることができる。
次に、図4を参照しながら、搬送ローラ12およびクランプガイド14の駆動について説明する。搬送ローラ12およびクランプガイド14は、積載シートSaの幅方向(X方向)に沿って交互に配設されており、それぞれ制御部407(後述する。)によってその駆動が制御される。まず、搬送ローラ12のそれぞれは、共有するトルクリミッタ付きギア31を介して搬送ローラモータ23により回転可能に連結されている。搬送ローラモータ23は、制御部407によって、シート検知センサ22がシートSの先端を検知したタイミングで駆動されて、搬送ローラ12の回転が開始されるように制御される。シートSがプリント装置100における搬送ローラ3とスタッカ101における搬送ローラ12の両方で搬送されているときは、これら2つの搬送ローラの搬送速度は等しくなるように制御される。そして、搬送中に搬送ローラ3の搬送動作が停止すると、搬送ローラ12での搬送抵抗が大きくなり、トルクリミッタ付きギア31における抵抗値が閾値に達した(所定以上の負荷がかかった)タイミングで、搬送ローラ12の回転が停止される。一方、シートSがカットされ、搬送ローラ12のみで搬送されると、搬送ローラ12による搬送速度は、スタッカ101側で独立して制御することができるようになる。なお、搬送ローラ3の搬送速度などのプリント装置100側の情報については、プリント装置100と接続されたプリント装置接続ポート405(後述する。)を介して制御部407に入力されることとなる。
クランプガイド14はそれぞれ、ホルダ25に保持され、各ホルダ25はそれぞれ、共通するクランプガイド軸30を介してクランプガイドモータ28に連結されている。そして、クランプガイドモータ28は、制御部407によって、ギア26を順回転または逆回転する。これにより、ギア26に噛合されたガイドレール32を介してクランプガイド14がY方向で進行および後退することとなる。ギア26にはそれぞれ、トルクリミッタ27が取り付けられており、クランプガイドモータ28による進行や後退の度合いは、トルクリミッタ27によってクランプガイド14ごとに調整される。具体的には、クランプガイドモータ28がクランプガイド14を進行させるように回転したとき、クランプガイド14のコロ24が積載トレイ16または積載シートSaに当接し、規定の抗力を受けたタイミングでトルクリミッタ27が作動して停止する。つまり、X方向に並設された複数のクランプガイド14は、それぞれの位置の積載シートSaの厚み(積載高さ)に応じて進行の度合いが調整される。
クランプガイド14を退避状態から突出状態に移動したときには、図5のように、積載シートSaの有無や積載シートSaのサイズに応じて、突出動作によるクランプガイド14の位置が異なる。なお、図5では、クランプガイド14の位置の違いなどの理解を容易にするために、上ガイド17を取り除いた状態を示している。積載シートSaが存在する領域Aでは、図2のように、クランプガイド14は、コロ24が積載シートSaに当接するとともに、撓みながらY方向に進行する。そして、トルクリミッタ27において抵抗値が閾値を超えた位置で進行が停止する。トルクリミッタ27は、積載シートSaに対して過大な押圧力が働かないように調整されており、積載シートSaが傷つくことはない。
一方、積載シートSaが存在しない領域Bでは、図6のように、クランプガイド14は、コロ24が積載トレイ16に当接した状態でトルクリミッタ27が作動し、その進行が停止する。コロ24がより-Y側の位置(即ち、より早いタイミング)で当接している領域Aのほうが、より+Y側の位置(即ち、より遅いタイミング)で当接している領域Bに比べて+Y方向への移動量が少なくなっている。つまり、クランプガイド14はそれぞれの積載トレイ16上の積載シートSaの積載高さに応じて突出し量が変化している。このように突出し量に違いがあるにも関わらず、全てのクランプガイド14は、段差Hを塞いで、ニップ部Nと積載トレイ16(あるいは積載シートSa)の搬送方向下流側端部の差分とを緩和している。これにより、新たに搬送されてくるシートSの先端が段差Hに入り込むことなく、スムーズに搬送することができるようになる。
また、搬送ユニット102においては、シートSの搬送不良を検知するための搬送不良検知部300が設けられている。具体的には、図7(a)のように、搬送不良検知部300は、搬送ローラシャフト12a(ローラ回転軸)に設けられており、搬送ローラ12の間であり、かつ、クランプガイド14のY方向の移動を干渉しない位置に設けられている。そして、搬送不良検知部300は、例えば、図5のように、搬送時のシートSの基準となる基準位置(つまり、シートSの幅方向における位置を片側で規制する位置であって、図5では左端となる。)の近傍に設けられる。カールしているシートSでは、シートSの先端および後端におけるシートSの幅方向の両端部(図5のSb)におけるカールが顕著となる。これにより、シートSの幅方向の両端部が積載シートSaに当接する際に、シートSの引っ掛かりが生じ易く、搬送不良を生じ易い。このため、シートSの幅方向の端部が通過する位置の近傍(つまり、基準位置近傍である。)に搬送不良検知部300を配置することにより、効率的に搬送不良を検知することができるようになる。
搬送不良検知部300は、搬送ローラ12により搬送されるシートSと接触し、当該シートをピンチローラ302(後述する。)と挟持する検知ローラ301を有している。また、搬送上ガイド21において回転可能に設けられており付勢部材によって検知ローラ301に向かって付勢され、検知ローラ301に従動して回転するピンチローラ302を有している。さらに、検知ローラ301の回転状態を検知可能なエンコーダ部310を有している。
より詳細には、検知ローラ301は、搬送ローラ12と同じ直径となるように形成されており、ゴムなどの高摩擦係数の材質により形成されたリング状のリングローラ305と、リングローラ305を保持するホルダ306とにより構成されている。なお、検知ローラ301については、シートSとの当接面をサンドブラスト処理や砥粒の接着などによって摩擦係数を向上させた金属ローラなどを用いてもよい。また、検知ローラ301は、ストッパ307によってX方向の位置が規制されるとともに、トルクリミッタ308を介して搬送ローラシャフト12a(シャフト)上に設けられている。即ち、検知ローラ301は、搬送ローラ12と同軸上で回転可能な構成となっている。トルクリミッタ308は、搬送ローラシャフト12aによる回転力を検知ローラ301に伝達するとともに、所定以上の負荷がかかると、検知ローラ301に搬送ローラシャフト12aによる回転力の伝達を断つように構成されている。即ち、検知ローラ301は、搬送ローラシャフト12aの回転に連れて回転するとともに所定以上の負荷がかかると搬送ローラシャフト12aの回転の伝達が断たれるトルクリミッタを介して搬送ローラシャフト12aに設けられている。具体的には、例えば、検知ローラ301は、ピンチローラ302とシートSを挟持していないときに搬送ローラ12と同期して回転し、ピンチローラ302とシートSを挟持するとトルクリミッタ308によって回転力の伝達が断たれるようになされている。なお、トルクリミッタ308により回転力の伝達が断たれる場合には、検知ローラ301はシートSの搬送によって回転可能である。このように、検知ローラ301は、搬送ローラ12の回転軸たる搬送ローラシャフト12aを中心として回転可能、かつ、搬送ローラと同じローラ径(直径)である。このため、搬送ローラ12と同じタイミングでシートSの先端が当接し、搬送されるシートSの先端は、搬送ローラシャフト12aの回転に連れて回転される検知ローラ301とピンチローラとの間に導入されて挟持される。
エンコーダ部310(検知部)は、コードホイール303とエンコーダセンサ304とを備えるロータリーエンコーダである。コードホイール303は、ホルダ306に固定されており、ホルダ306(検知ローラ301)と一体となって回転する。エンコーダ部310は、例えば、インクリメンタル式のロータリーエンコーダ、特に、透過型の光学式ロータリーエンコーダであるが、他の形式のロータリーエンコーダであってもよい。コードホイール303は、図7(b)のように、スリット303aが環状に配列されている。スリット303aのそれぞれは、径方向に延びる線状をなしており、分解能に応じた数の複数のスリット303aが等間隔でコードホイールの周方向に配列されている。スリット303aでは光が透過し、隣接するスリット303aの間では遮光される。エンコーダセンサ304は、コードホイール303の周縁部の一部が挿入可能な構成のフォトインタラプタである。
エンコーダ部310では、検知ローラ301と一体となって回転するコードホイール303の回転をエンコーダセンサ304で読み取ることで、検知ローラ301の回転を検知する。即ち、エンコーダセンサ304では、検知ローラ301の回転に基づくパルス信号が出力されることとなる。こうしてエンコーダセンサ304から出力されたパルス信号は、例えば、搬送ローラを駆動するための駆動パルス信号と比較され、シートSの搬送不良が発生したか否かを判断する際に用いられる。このように、検知ローラ301は、エンコーダ部310によってその回転が検知される。そして、エンコーダ部310(エンコーダセンサ304)から出力されたパルス信号からは、ローラの回転量や回転速度を検知でき、検知した検知ローラ301の回転量や回転速度からは、シートSの搬送速度を算出することができる。即ち、エンコーダ部310では、シートSの搬送速度に対応するローラの回転を検知することとなる。
スタッカ101は、制御部407により全体の動作が制御される。図8のように、制御部407は、中央処理装置(CPU)401と、ROM402と、RAM403とにより構成される。具体的には、CPU401では、スタッカ101の動作の制御処理が実行される。このCPU401には、全体の動作や種々の処理を実行するための所定のプログラムを格納したROM402と、CPU401によるプログラム実行時に必要な各種レジスタなどが設定されたワーキングエリアとしてのRAM403とが接続されている。
また、CPU401は、プリント装置接続ポート405を介してプリント装置100に接続されている。CPU401には、シート検知センサ22と、エンコーダセンサ304と、搬送ローラモータ23の駆動を制御する搬送ローラ駆動部406と、クランプガイドモータ28の駆動を制御するクランプガイド駆動部408とが接続されている。そして、CPU401は、シート検知センサ22の検知結果に応じて、搬送ローラ駆動部406により搬送ローラモータ23を介して搬送ローラ12の回転を制御する。即ち、搬送ローラ12は、搬送ローラ駆動部406と搬送ローラモータ23とにより構成される駆動部における駆動力によって、搬送ローラシャフト12aを介して回転することとなる。なお、搬送ローラモータ23は、例えば、パルスモータであって、搬送ローラ駆動部406は、搬送ローラモータ23を駆動するための駆動パルス信号を出力する。さらに、クランプガイド駆動部408によりクランプガイドモータ28を介してクランプガイド14の移動を制御する。
さらに、CPU401は、検知ローラ301の回転に基づくパルス信号と、搬送ローラ駆動部406から出力される搬送ローラモータ23を駆動するための駆動パルス信号との比較結果に基づいて、搬送不良が発生したか否かを判断する。即ち、CPU401を含む制御部407は、スタッカ101の各構成部材の制御手段として機能するとともに、搬送不良が発生したか否かを判断する判断部としての機能も有する。
また、CPU401には、搬送不良が発生したか否かの判断結果を、ユーザーに通知するための通知部410が接続されている。通知部410としては、例えば、スタッカ101の操作部(不図示)に設けられた表示部やスピーカーあるいはプリント装置接続ポートを介して接続されたプリント装置100における操作部(不図示)に設けられた表示部やスピーカーとなる。
次に、図9乃至図12を参照しながら、スタッカ101の起動後に実行されるシート搬送処理について説明する。スタッカ101では、電源のONが確認されると、プリント装置100から排出されたシートSをトレイユニット103まで搬送するためのシート搬送処理が開始される。図9には、このシート搬送処理の詳細な処理内容が示されたフローチャートが示されている。シート搬送処理が開始されると、まず、シート検知センサ22により、プリント装置100から排出されたシートSの先端を検知したか否かを判断する(ステップS902)。ステップS902において、シートSの先端を検知していないと判断されると、再度ステップS902の処理を行う。なお、シート検知センサ22により、シートSの先端を検知していないときは、図10(a)のように、クランプガイド14は退避状態にあり、排出ローラ15は、自重によって搬送ローラ12と当接している。
また、ステップS902において、シートSの先端を検知したと判断されると、搬送ローラ12を駆動するとともに、クランプガイド14を駆動する(ステップS904)。即ち、ステップS904では、搬送ローラモータ23とクランプガイドモータ28とを駆動することとなる。これにより、図10(b)のように、搬送ローラ12は矢印I方向に回転するとともに、クランプガイド14は+Y方向に移動して排出ローラ15を押し上げて突出状態となる。なお、こうして搬送ローラ12が回転することにより、検知ローラ301も搬送ローラシャフト12aを介して回転することとなる。
先端が検知されたシートSは、その後、搬送ローラ12とピンチローラ13とのニップ部Nに挟持されてクランプガイド14にガイドされながら、積載トレイ16までスムーズに搬送される。シートSの先端は、搬送ローラ12に達する際に検知ローラ301にも達することとなる。このとき、検知ローラ301は、搬送ローラシャフト12aによってトルクリミッタ308を介して搬送ローラ12と同期して回転している。また、ピンチローラ302は、検知ローラ301に付勢して当接しており、検知ローラ301の回転に従動して回転している。このため、シートの搬送に従動して回転する従動ローラを備えた特許文献1の技術と比較して、シートSの先端が検知ローラ301やピンチローラ302に引っ掛かることなく、シートSを安定して搬送することができる。
搬送ローラ12が駆動されると、次に、エンコーダ部310において検知ローラ301の回転の検知を開始する(ステップS906)。即ち、ステップS906ではエンコーダセンサ304によって、検知ローラ301と一体で回転するコードホイール303の回転の検知を開始し、エンコーダ部310によって検知ローラ301の回転に基づくパルス信号の取得を開始する。ここで、シートSは、搬送ローラ12とピンチローラ13とに挟持されると、検知ローラ301とピンチローラ302とでも挟持される。なお、リングローラ305の摩擦係数から、トルクリミッタ308により搬送ローラシャフト12aの回転力の伝達が断たれても、シートSと検知ローラ301との間で滑りが生じないように、ピンチローラ302の検知ローラ301に対する付勢力が設定されている。これにより、シートSは、ピンチローラ302の付勢力によって検知ローラ301に押し付けられることとなり、シートSの移動が検知ローラ301に伝達され易くなる。このため、検知ローラ301とピンチローラ302とにシートSが挟持されている状態では、検知ローラ301は、シートSとの間で滑りが起こらず、シートSの搬送に同期して回転することができる。このように、シートSは、検知ローラ301とピンチローラ302とに挟持されながら搬送されることとなる。このため、シートとの摩擦力によってのみ回転する従動ローラにより搬送不良の検知を行う特許文献1の技術と比較して、より確実にシートSの搬送によって検知ローラ301が回転することとなり、正確に搬送不良を検出することができるようになる。
その後、搬送不良が発生したか否かの判断を行う(ステップS908)。即ち、ステップS908では、搬送ローラ12を駆動するための駆動パルス信号と、ステップS906で取得したパルス信号とに基づいて搬送不良が発生したか否かの判断を行う。ここで、積載トレイ16にシートSを搬送する際の搬送抵抗よりも搬送力が大きくなるように、シートSと搬送ローラ12との間の摩擦係数を考慮して、ピンチローラ13の搬送ローラ12への付勢力が設定されている。従って、搬送不良が発生していない状態では、搬送ローラ12は駆動パルス信号に基づく搬送量だけシートSを搬送することができる。また、シートSの搬送に同期する検知ローラ301は、シートSの搬送量に応じて回転する。これにより、図11(a)(b)のように、搬送ローラモータ23の駆動パルス信号(搬送ローラ12を駆動する駆動パルス信号)と、エンコーダ部310によるパルス信号(検知ローラ301の回転に基づくパルス信号)とは、それぞれ一定のパルス形状となる。
また、例えば、図12のように、シートSの先端が積載シートSaで引っ掛かって搬送不良が生じた場合、シートSを搬送する際の搬送抵抗が搬送力よりも大きくなり、シートSと搬送ローラ12との間で滑りが発生する。この状態で搬送ローラ12の駆動が継続されても(搬送ローラモータ23に駆動パルス信号が出力され続けても)、搬送ローラ12は回転するがシートSを搬送することができない。このような状態でプリント動作が続けられると、搬送ローラ3と搬送ローラ12との間でシートSのループが形成され、プリントヘッド5にシートSが接触して装置の故障の原因となる。
一方、検知ローラ301は、シートSとの間で滑りが生じないように、ピンチローラ302の付勢力が設定されている。これにより、シートSが搬送されないときには、検知ローラ301はその回転が停止する。従って、搬送不良が生じた状態では、搬送ローラ12は、シートSとの間で滑りが生じているが、駆動パルス信号によって回転が継続されている。このため、搬送不良が生じた場合でも、図11(a)のように、搬送ローラ12を駆動するための駆動パルス信号のパルス形状は一定である。一方、搬送不良が生じた状態では、シートSは、その搬送量が徐々に低下し、その後停止することとなる。このため、検知ローラ301は、ピンチローラ302とシートSを挟持したまま回転量が徐々に低下し、その後停止する。従って、搬送不良が生じた場合には、図11(c)のように、検知ローラ301の回転に基づくパルス信号は、シートSの搬送量に応じてパルス間隔が延び、シートSの停止により出力の変化がなくなる。
このように、ステップS908では、制御部407において、搬送ローラ12の駆動パルス信号が一定のパルス形状であり、かつ、エンコーダ部310によるパルス信号のパルス形状が一定でなくなるときに、搬送不良が生じたものと判断する。なお、パルス信号のパルス形状が一定でなくなるときとは、例えば、パルスの間隔が所定値を超えたとき、パルスの間隔が連続して異なったときなど、搬送不良の検出制度などに応じて設定することができる。
ステップS908において搬送不良が発生したと判断されると、搬送ローラ12およびプリント装置100におけるプリント動作(シートSの搬送を含む)を停止する(ステップS910)。そして、搬送不良が生じた旨を通知部410を介してユーザーに通知し(ステップS912)、このシート搬送処理を終了する。また、ステップS908において搬送不良が発生していないと判断されると、シート検知センサ22により、シートSの後端を検知したか否かの判断を行う(ステップS914)。即ち、ステップS914では、図10(c)のように、シートSの先端側が積載シートSa上に搬送されて、シート検知センサ22の上方側にシートSが位置しなくなる状態を検知することとなる。
ステップS914でシートSの後端を検知していないと判断されると、ステップS908に戻り、以降の処理を実行する。また、ステップS914でシートSの後端を検知したと判断されると、搬送不良が発生したか否かの判断を行う(ステップS916)。このステップS916では、ステップS908と同様の処理が行われる。また、シートSの後端を検知したと判断されたタイミングから時間の計測を開始する。ステップS916において搬送不良が発生したと判断されると、ステップS910に進み、以降の処理を実行する。
また、ステップS916において搬送不良が発生していないと判断されると、シートSの後端を検知した時点から第1の時間が経過したか否かの判断を行う(ステップS918)。なお、第1の時間とは、クランプガイド14の退避を開始すると、シートSの搬送中はクランプガイド14によりシートSをガイドするとともに、シートSの後端がニップ部Nから抜けたときにクランプガイド14が退避状態となる時間である。ステップS918において第1の時間が経過していないと判断されると、ステップS916に戻り、以降の処理を実行する。また、ステップS918において第1の時間が経過したと判断されると、クランプガイド14を後退(退避)させる(ステップS920)。クランプガイド14が後退すると、図10(d)のように、クランプガイド14が積載シートSaから離間するように移動する。そして、シートSの後端が搬送ローラ12とピンチローラ13とのニップ部Nから抜けるタイミングでは、図10(e)のように、クランプガイド14は退避状態となっている。これにより、シートSは、排出ローラ15と回転中の搬送ローラ12とに挟持されており、シートSの後端が退避中のクランプガイド14に接触して-Y方向に引き戻されたり、搬送ローラ12に接触して傷や折れが発生することはない。また、段差Hが露出した状態となっており、図10(f)のように、シートSの後端は積載トレイの規定位置に落下することとなる。
その後、再度、搬送不良が発生したか否かの判断を行う(ステップS922)。ステップS922では、ステップS908と同様に処理が行われる。ステップS922において搬送不良が発生したと判断されると、ステップS910に進み、以降の処理を実行する。また、ステップS922において搬送不良が発生していないと判断されると、シートSの後端を検知した時点から第2の時間が経過したか否かの判断を行う(ステップS924)。なお、第2の時間とは、第1の時間よりも長く、かつ、シートSの後端がシート検知センサ22を通過してから積載トレイ16に落下するのに十分な時間とする。ステップS924において第2の時間が経過していないと判断されると、ステップS922に戻り、以降の処理を実行する。また、ステップS924において第2の時間が経過したと判断されると、搬送ローラ12を停止して(ステップS926)、ステップS902に戻り、以降の処理を実行する。
以上において説明したように、シート搬送装置を構成する搬送ユニット102では、搬送ローラ12を回転する搬送ローラシャフト12a上に搬送不良検知部300を設けるようにした。この搬送不良検知部300は、トルクリミッタ308を介して搬送ローラシャフト12a上に設けられた検知ローラ301と、検知ローラ301に付勢されるピンチローラ302とを備えている。そして、検知ローラ301とピンチローラ302とによりシートSを挟持するまでは、検知ローラ301は、トルクリミッタ308を介して搬送ローラシャフト12aにより回転する。また、検知ローラ301とピンチローラ302とによりシートSを挟持すると、検知ローラ301は、トルクリミッタ308により搬送ローラシャフト12aからの回転力が断たれ、シートSの搬送に応じて回転する。
このため、搬送ユニット102では、シートSの先端が検知ローラ301やピンチローラ302に引っ掛かることなく検知ローラ301とピンチローラ302とに挟持することができる。これにより、シートSを安定して搬送することができるようになる。また、搬送ユニット102では、ピンチローラ302によりシートSを検知ローラ301に押し付ける構成のため、シートSとの当接面の摩擦力によってのみ従動する構成の特許文献1の技術と比較して、シートSの移動を検知ローラ301に確実に伝達可能となる。これにより、搬送不良の誤検知を抑制し、より確実に搬送不良を検知することができるようになる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形してもよい。
(1)搬送不良検知部300を基準位置の近傍に設けるようにしたが、搬送不良検知部300の配置位置は、これに限られるものではない。即ち、搬送不良検知部300は、搬送されるシートSの幅方向の少なくとも一方の端部の近傍に配置するようにすればよい。また、搬送されるシートSの幅方向にずれて位置するように複数配置するようにしてもよい。具体的には、搬送されるシートSの幅方向の両端部の近傍に配置するようにしてもよいし、搬送可能な種々のサイズのシートSの幅方向における端部(両端部)の近傍にそれぞれ配置するようにしてもよい。
シートSが幅方向に長く薄い場合には、図13のように、シートSの先端の一方の端部Scで引っ掛かりが生じると、引っ掛かりが発生した端部Sc近傍では、直ぐにシートSを搬送することができなくなる。このとき、シートSの先端の他方の端部Sdでは、シートSにしわが発生したり、シートSが斜行しつつ、しばらく搬送されることがある。この場合、引っ掛かりが発生した端部Sc近傍に搬送不良検知部300が配置されていないと、速やかに搬送不良が生じたことを検知できない。
具体的には、搬送不良が生じていない場合には、エンコーダ部310によるパルス信号は、搬送不良検知部300がシートSの幅方向におけるどの位置に設けられていても、図11(d)のように、一定のパルス形状となる。シートSの端部Sc側において搬送不良が発生した場合、搬送不良検知部300が端部Sc近傍に設けられている場合には、シートSの搬送量が急に減少した後に停止することから、図11(f)のように、パルス間隔が急に延びて最後は出力が変化しなくなる。一方、搬送不良検知部300が端部Sd近傍に設けられている場合には、シートSの搬送量は緩やかに減少した後に停止することから、図11(e)のように、パルス間隔が少しずつ延びて最後は出力が変化しなくなる。このように、配置する位置によって、エンコーダ部310によるパルス信号が異なってしまうため、搬送不良を検知するタイミングに差が生じてしまう。このため、上記のようにシートSの幅方向の両端部近傍に搬送不良検知部300を配置することによって、速やかに搬送不良を検知することができるようになる。また、シートSの幅方向に複数配置することによって、上記した効果を備えながら、種々のサイズのシートに対応することができるようになる。
(2)搬送不良検知部300(エンコーダ部310)から出力されたパルス信号を、搬送ローラ12を駆動するための駆動パルス信号と比較して搬送不良が発生したか否かの判断を行うようにしたが、これに限られるものではない。即ち、搬送ローラ12の回転を検知する検知部(例えば、ロータリーエンコーダ)を備え、当該検知部に基づくパルス信号と、エンコーダ部310によるパルス信号とを比較して、シートSの搬送不良が発生したか否かを判断するようにしてもよい。あるいは、プリント装置100における搬送ローラ3を駆動するための駆動パルス信号と、エンコーダ部310によるパルス信号とを比較して搬送不良が発生したか否かを判断するようにしてもよい。
あるいは、エンコーダ部310によるパルス信号からシートSの搬送速度を算出し、算出したシートSの搬送速度と、予め設定されているシートSの搬送速度との比較結果に基づいて、シートSの搬送不良が発生したか否かの判断を行うようにしてもよい。具体的には、エンコーダ部310によるパルス信号に基づいて算出されたシートSの搬送速度と、予め設定されているシートSの搬送速度とが、一致(例えば、誤差等を考慮した所定の範囲内で一致)してれば、搬送不良が発生していないと判断される。また、一致していなければ、搬送不良が発生したと判断される。なお、この場合には、エンコーダ部310のパルス信号に基づいて算出されたシートSの搬送速度と、プリントヘッド5におけるプリント速度や搬送ローラ3の搬送速度との比較結果に基づいて、搬送不良の発生の有無を判断するようにしてもよい。
(3)図14のように、検知ローラ301のローラ径(直径)を搬送ローラ12のローラ径よりも大きくし、検知ローラ301を挟むように配置された2つの搬送ローラ12により搬送されるシートSの裏面が、検知ローラ301に押し付けられるようにしてもよい。つまり、この場合には、検知ローラ301と搬送ローラ12との直径の差に起因する段差によって、シートSが検知ローラ301に押し付けられることとなる。さらにピンチローラ302と検知ローラ301との挟持も併せて二重の作用により検知ローラ301とシートSとの当接はより確実になる。このように、検知ローラ301とシートSとが確実に当接されることにより、検知ローラ301とシートSとの間の滑りを抑制しながら、シートSの移動を検知ローラ301に伝達することができる。このため、検知ローラ301がシートSの移動に確実に追従することができ、搬送不良の誤検知を抑制することができる。なお、構造の簡素化を優先するならピンチローラ302を省略することもできる。
(4)搬送ユニット102は、プリント装置100から搬送されたシートSを積載トレイ16に搬送する用途に限定されるものではない。即ち、例えば、シート上の画像を読み取る画像読取装置など、シートに対して所定の処理を行うシート処理装置から排出されるシートを、他の機構などに搬送するシート搬送装置として用いることができる。また、プリント装置100は、インクジェット方式によりプリントするインクジェットプリント装置に限定されるものではなく、他のプリント形式のプリント装置であってもよい。さらに、スタッカ101は、プリント装置100と一体的に構成されるようにしてもよいし、それぞれ別体で構成されるようにしてもよい。
(5)制御部407の機能については、例えば、別体に設けられたパーソナルコンピューターにより実行されるようにしてもよい。また、搬送ローラ12はピンチローラ13とシートSを挟持するようにしたが、シートSを搬送ローラ12とともに搬送可能に挟持することができれば、搬送ローラ12にシートSを押し付ける部材としては、ピンチローラ13に限定されるものではない。さらに、検知ローラ301を搬送ローラ12と同期して回転することができる構成であれば、検知ローラ301と搬送ローラ12とは同軸上で回転する構成に限定されるものではない。