JP6990921B2 - 上位運動ニューロンの誘導方法 - Google Patents

上位運動ニューロンの誘導方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6990921B2
JP6990921B2 JP2018505803A JP2018505803A JP6990921B2 JP 6990921 B2 JP6990921 B2 JP 6990921B2 JP 2018505803 A JP2018505803 A JP 2018505803A JP 2018505803 A JP2018505803 A JP 2018505803A JP 6990921 B2 JP6990921 B2 JP 6990921B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pluripotent stem
cells
upper motor
ngn2
cell
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018505803A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017159380A1 (ja
Inventor
治久 井上
恵子 今村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyoto University
Original Assignee
Kyoto University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyoto University filed Critical Kyoto University
Publication of JPWO2017159380A1 publication Critical patent/JPWO2017159380A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6990921B2 publication Critical patent/JP6990921B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/10Cells modified by introduction of foreign genetic material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/02Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K45/00Medicinal preparations containing active ingredients not provided for in groups A61K31/00 - A61K41/00

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

関連出願
本出願は、2016年3月15日付け出願の日本国特許出願2016-50477号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
本発明は、多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する方法に関する。本発明はまた、上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞に関する。
一般に、疾患研究は細胞モデルが確立すると加速される。適用できる解析手法が大幅に増え、治療薬のスクリーニング速度も飛躍的に上昇するからである。特に、疾患の原因となる細胞が体内から非侵襲的な方法では採取できない細胞、及び/又は***能のない細胞である場合には、疾患の細胞モデルを得ることの意義は非常に大きい。
ニューロンはそのような細胞の代表であり、特定のニューロンが変性することで発症する神経変性疾患は、細胞モデルの恩恵が特に大きい疾患と考えられている。なかでも、アルツハイマー型認知症、パーキンソン症、及び筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は、社会の高齢化とともに患者数が急増しており、研究の加速化が切望されている。
これらの疾患の細胞モデル作製に近年大きく貢献しているのが、多能性幹細胞又は体細胞を目的の細胞に分化誘導するDirected differentiation法である。ニューロンを生じるDirected differentiation法には、多能性幹細胞をモルフォゲン(morphogen)等の外的シグナルに晒すことでニューロンへ分化誘導する方法と、多能性幹細胞又は体細胞に特定の遺伝子を導入して発現させることでニューロンへ分化誘導する方法が知られている(非特許文献1)。
外的シグナルによって分化誘導する方法は、多能性幹細胞を胎生期の神経発生と似た環境に置くことで、神経分化を担う遺伝子発現を誘導する方法である。胎生期の神経発生では、発生の進行と伴に変化し続ける外的環境からのフィードバック(外的シグナル)を受けながら様々な転写因子が連続的に発現することで、神経系を構成する多種多様な細胞が産生される。そのため、この方法では特定の種類のニューロンのみを分化誘導することは難しく、通常さまざまなサブタイプのニューロンを含むヘテロな細胞集団が得られる。また、機能的に成熟したニューロンを得るには、発生期と同様に数カ月という長い時間を要する(例として、非特許文献2)。
これに対し、特定の遺伝子発現によって分化誘導する方法(前記外的シグナルによる方法と区別するために、Neuronal induction法と呼ばれる場合がある)は、主に特定の転写因子を発現させることで、神経分化を担う遺伝子発現プログラムの一部を強制的に実行させる方法である。そのため、この方法では分化の方向性を制御できる可能性が考えられるが、該方法を用いて目的の種類のニューロンを優先的に分化誘導できた例は非常に少ない。多能性幹細胞における遺伝子発現の効果は、従来法で得られた知見から予測することが困難だからである。なお、この方法では一般に分化に要する時間が短縮されて、数日から数週間で成熟したニューロンが得られる。
Neuronal induction法によって目的のニューロンを分化誘導した貴重な成功例として、ヒト多能性幹細胞、ヒト及びマウスの線維芽細胞、及びマウスのアストロサイトにAscl1、Lmx1A、及びNurr1遺伝子を導入し発現させることで、約2-3週間で中脳黒質のドーパミン作動性ニューロンを分化誘導した例が報告されている(例として、非特許文献4、5)。中脳黒質のドーパミン作動性ニューロンはパーキンソン症で選択的に障害されるニューロンであり、当該方法を用いてパーキンソン症の細胞モデルが得られることが期待されている。
また、ヒト及びマウスの多能性幹細胞にNgn2遺伝子を導入し発現させると、90%以上の細胞が大脳皮質のグルタミン酸作動性ニューロン(さらに詳しくは、皮質第2層及び3層の錐体細胞)に約1-2週間で分化することが報告されている(非特許文献3、特許文献1)。大脳皮質のグルタミン酸作動性ニューロンは、アルツハイマー型認知症において広域に障害されるニューロンである。当該方法を用いて家族性患者由来人工多能性幹細胞から作製されたニューロンは、該患者のAβプロセシング異常を再現し得ることから(特許文献1)、アルツハイマー型認知症の細胞モデルとして期待されている。
そして、ALSについても、Neuronal induction法を用いて細胞モデルを作製する試みが行われている。ALSは、大脳皮質運動野の第5層に存在する上位運動ニューロンと、脊髄に存在する下位運動ニューロンが選択的に変性する疾患である。前記上位運動ニューロンは、下位運動ニューロン、又は、橋及び延髄の神経核に投射しており、下位運動ニューロンに投射する経路(皮質脊髄路)が四肢の随意運動を制御し、橋及び延髄に投射する経路(皮質延髄路)が嚥下と舌の動き等を制御している。上位・下位いずれの運動ニューロンが先に変性するかは患者によって異なるが、一方から始まった変性は他方へと伝播するため、最終的に両経路が侵されて患者は死に至る(非特許文献6)。
これまで、下位運動ニューロンについては、マウス及びヒト多能性幹細胞にLhx3、Ngn2、及びIsl1の3遺伝子を(特許文献1)、マウスの線維芽細胞にAscl1、Brn2、Myt1l、Lhx3、Hb9、Isl1、Ngn2の7遺伝子を、ヒト線維芽細胞に前記7遺伝子にNeuroD1を加えた8遺伝子を導入して発現させることで(非特許文献7)、約1-3週間で作製できることが報告されている。
しかしながら、上位運動ニューロンを分化誘導する方法はまだ知られていない。Neuronal induction法に限らず、外的シグナルを用いた分化誘導法においても、成熟した上位運動ニューロンが分化誘導できた例は報告されていない。
よって、ALSの病態を真に理解し有効な治療法を開発するために、in vitroで上位運動ニューロンを分化誘導する方法が求められていた。
WO2014/148646
Ho S.-M., et al, Biomarker Insight, 10(S1):31-41, 2015 Mariani J., et al, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 109:12770-12775, 2012 Zhang Y., et al, Neuron, 78:785-798, 2013 Caiazzo M., et al, Nature, 476:224-227, 2011 Theka I., et al, Stem Cell Trans. Med., 2:473-479, 2013 Gordon P.H., Aging Dis., 4:295-310, 2013 Son E.Y., et al, Cell Stem Cell, 9:205-218, 2011 Bertrand N., et al, Nature Rev. Neurosci., 3:517-530, 2002 Arlotta P., et al, Neuron, 45:207-221, 2005 Woodworth M.B., et al, Cell, 151:918-918.e1, 2012 Chanda S., et al, Stem Cell Reports, 3:282-296, 2014 Egawa N., et al, Science Translational Medicine, 4:145ra104, 2012 Vierbuchen T., et al, Nature, 463:1035-1041, 2010 Pang Z.P., et al, Nature, 476:220-223, 2011 Yoo A.S., et al, Nature, 476:228-231, 2011
本発明は、上記従来技術が抱える事情を鑑みてなされたものであり、多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞の提供を目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ヒト由来人工多能性幹細胞にNgn2及びFezl遺伝子を導入して発現させると、約80%の細胞が3週間後には機能的な錐体細胞に分化することを見出した。そして、当該錐体細胞の約20%の細胞は、大脳皮質第5層と運動野のマーカー遺伝子を発現し、培養下で下位運動ニューロンに投射してシナプスを形成できること、すなわち、機能的な上位運動ニューロンであることを明らかにした。
さらに、家族性ALS患者由来人工多能性幹細胞から上記方法により製造した上位運動ニューロンは、ALSに特徴的な病的性質(TDP-43タンパクの細胞内凝集等)を自発的に生じることが見出された。
これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
[1] 多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養する工程を含む、多能性幹細胞から錐体細胞を製造する方法。
[2] 前記外来性のNgn2及びFezlを薬剤応答性プロモーターで発現させる、前記[1]に記載の方法。
[3] 前記外来性のNgn2及びFezlを2A配列を用いてポリシストロニックに発現させる、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記培養期間が21日間以上である、前記[1]-[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記錐体細胞が上位運動ニューロンである、前記[1]-[4]のいずれかに記載の方法。
[6] Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸を染色体内に含む多能性幹細胞。
[7] 前記Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸が、薬剤応答性プロモーターに機能的に接合された核酸である、前記[6]に記載の多能性幹細胞。
[8] 前記Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸が、2A配列を介して連結されている、前記[6]又は[7]に記載の多能性幹細胞。
[9] 前記多能性幹細胞が、ヒト由来人工多能性幹細胞である、前記[6]-[8]のいずれかに記載の多能性幹細胞。
[10] 前記ヒトが、筋萎縮性側索硬化症患者である、前記[9]に記載のヒト由来人工多能性幹細胞。
[11] 前記[5]に記載された方法で製造された上位運動ニューロンをシナプス前細胞、下位運動ニューロンをシナプス後細胞とするシナプス結合を含む培養物。
[12] 前記下位運動ニューロンが、多能性幹細胞から製造された下位運動ニューロンである、前記[11]に記載の培養物。
[13] 前記下位運動ニューロンが、多能性幹細胞に外来性のLhx3、Ngn2、及びIsl1を発現させて製造された下位運動ニューロンである、前記[12]に記載の培養物。
[14] 下記工程を含む、筋萎縮性側索硬化症の予防又は治療薬のスクリーニング方法;
(1)家族性ALS患者由来人工多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養して、該多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する工程、
(2)(1)で得られた上位運動ニューロンを、被験物質と接触させる工程、
(3)(2)で被験物質と接触させた上位運動ニューロン、及び接触させなかった上位運動ニューロン(すなわち、対照細胞)を培養し、神経突起長、凝集化したTDP-43タンパク量、又はGPR50の発現量を測定する工程、
(4)前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンの神経突起長もしくはGPR50の発現量が対照細胞の該値よりも高値である被験物質、又は、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンにおける凝集化したTDP-43タンパク量が対照細胞の該値よりも低値である被験物質を、筋萎縮性側索硬化症の予防又は治療薬として選択する工程。
本発明により、多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する方法と、上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞が提供される。さらに、本発明により、ALSの上位運動ニューロンモデルと皮質脊髄路モデルが提供される。
下記図面において、“DOX+”は後述するDOX含有培地で培養された細胞、“DOX-”はDOX不含培地で培養された細胞を表す。また、図中の“Tuj1”は、抗β-III tubulin抗体であるTuj1抗体を用いて免疫染色したことを表す。
マウスES細胞株(KH2株)、及び、テトラサイクリン応答性プロモーターに制御される外来性Brn2、Ascl1、及びMyt1l遺伝子を染色体内に有するKH2株(BAM安定導入株;Clone 1、2)に対し、DOX含有/不含培地で培養して72時間後に、β-III tubulin免疫染色とDAPI染色を行った蛍光顕微鏡イメージである。 図2A:テトラサイクリン応答性プロモーターに制御される外来性Ngn2及びFezl遺伝子を染色体内に有する201B7(NF安定導入株)に対し、DOX含有培地で培養後7日目に、β-III tubulinとhNucに対する二重免疫染色を行った蛍光顕微鏡イメージである。図2B:解析方法を説明する工程表である。図2C:DOX含有培地で培養後7日目のNF安定導入株に対してβ-III tubulin・CaMKII二重免疫染色とDAPI染色(図2C)を行い、同視野において、β-III tubulin免疫染色とDAPI染色のシグナル(左パネル)、CaMKII免疫染色とDAPI染色のシグナル(図2C、中央パネル)、β-III tubulin・CaMKII二重免疫染色とDAPI染色のシグナル(図2C、右パネル)をそれぞれマージした蛍光顕微鏡イメージである。図2D:テトラサイクリン応答性プロモーターに制御される外来性Fezl遺伝子を染色体に有する201B7株(F安定導入株)に対し、DOX含有培地で培養後7日目にDAPI染色(青色)を行い、mCherryの蛍光(赤色)とマージさせた蛍光顕微鏡イメージである。 NF安定導入株から分化した上位運動ニューロンに対し、分化誘導から7日目(図3A)、及び21日目(図3B)に、全細胞パッチクランプ法を用いてカレントインジェクション後に測定されたNa/K電流(Na/K currents)、活動電位(Action potentials)、及び、シナプス後電流(Postsynaptic currents)を示す。 NF安定導入株から分化誘導後7日目のニューロン(DOX+)に対し、大脳皮質第5層のマーカー遺伝子(Ctip2、TLE4、ER81、Sox5)、運動野のマーカー遺伝子(Crim1、Diap3、Igfbp4)、前頭葉のマーカー遺伝子(Robo1、PCDH17)、及び錐体細胞のマーカー遺伝子(OTX1、CaMKII)の発現をreal-time PCR法を用いて解析した結果を表す。 NF安定導入株から分化誘導後21日目のニューロン(DOX+)に対し、Crim1及びCaMKIIの発現量をreal-time PCR法を用いて解析した結果(図5A)、Crim1・β-III tubulin二重免疫染色とDAPI染色(図5B、左パネル)、及び、CaMKII・β-III tubulin二重免疫染色とDAPI染色(図5B、右パネル)を行った結果を表す。 図6A:上位運動ニューロン(緑色)が下位運動ニューロン(赤色)に投射して形成されるシナプス構造の模式図である。図6B、C:NF安定導入株から分化した上位運動ニューロン(GFPを発現)が、LNI安定導入株から分化した下位運動ニューロン(TdTOMATOを発現)に投射し、シナプスを形成していることを示す蛍光顕微鏡イメージである。分化誘導から14日目にvGLT1に対する免疫染色を行い、同視野についてのTOMATO/EGFP/vGLT1の三重イメージ(図6B、Cの左パネル)、TOMATO/vGLT1二重イメージ(図6Bの右パネル及び図6Cの中央パネル)を表す。図6Cの右パネルは図6C左パネル中で四角で囲んだ領域の拡大図である。図中のバーは10μmを表す。 家族性ALS患者由来iPS細胞株から外来性Ngn2及びFezlの発現により分化したニューロンに対し、TDP-43・SMI-32で二重免疫染色(図7A)、TDP-43・SMI-32二重免疫染色とDAPI染色(図7B)を行った蛍光顕微鏡イメージを表す。 家族性ALS患者由来iPS細胞株から分化した上位運動ニューロンの神経突起の伸展を観察した蛍光顕微鏡イメージである。右パネル中の矢印は、伸長停止した神経突起を表す。 家族性ALS患者由来iPS細胞株から分化した上位運動ニューロン(ALS-UMN:赤丸)、及び201B7 NF安定発現株から分化した上位運動ニューロン(Control-UMN:水色丸)に対し、シングルセルRNA-sequencing法を行いてGPR50の発現量を解析した結果を表す。
以下に、本発明の好適な実施形態について詳述する。
本明細書では、遺伝子から生じる転写物のヌクレオチド配列(NM_~)、及びタンパクのアミノ酸配列(NP_~)の情報として、NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに登録されている標準配列(Reference Sequence)のIDを記載する。複数の標準配列が登録されているものについても一配列のみを記載するが、当該記載は例示であり、記載された配列への限定を意味するものではない。なお、本明細書では特に断りがない限り、遺伝子のOfficial symbol及びIDはヒト遺伝子のものを表す。
1.上位運動ニューロンを含む錐体細胞の製造方法
本発明により、多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養することで、多能性幹細胞から上位運動ニューロンを含む錐体細胞を製造する方法が提供される。当該方法では、約80%という高効率で多能性幹細胞を錐体細胞へと分化させることができ、そのうちの約20%が上位運動ニューロンである。
<外来性のNgn2及びFezl>
本発明においてNgn2とは、Ngn2(Official symbol:NEUROG2、Official full name:neurogenin 2)遺伝子及びNgn2タンパクのことである。Ngn2タンパク(例として、ヒト:NP_076924、マウス:NP_033848)は、Activator-typeの塩基性helix-loop-helix型転写因子(bHLH因子)であり、神経幹細胞を神経細胞へと分化誘導するプロニューラル因子の一つである(非特許文献8)。
本発明においてFezlとは、Fezl(Official symbol:FEZF2、Official full name:FEZ family zinc finger 2)遺伝子及びFezlタンパクのことである。Fezlタンパク(例として、ヒト:NP_060478、マウス:NP_536681)は、zinc finger型転写因子であり、大脳皮質第5層及び6層に細胞体が存在し、皮質外に投射する錐体細胞(subcerebral projection neuron)の細部系譜で特異的に発現することが知られている(非特許文献9、10)。
本発明において外来性のNgn2及びFezlとは、内在性のNgn2及びFezlではないことを意味する。よって、外来性のNgn2及びFezlの発現とは、外部から細胞内に導入された核酸(具体的には、Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸)からNgn2及びFezlが発現すること、又は、外部から細胞内にNgn2タンパク及びFezlタンパクが導入されることを指す。
前記Ngn2をコードする核酸としては、例えば、標準配列として登録されているNM_009718(マウス)、NM_024019(ヒト)、又はこれらの転写派生体(transcript variant)のヌクレオチド配列を有する核酸が挙げられる。また、前記標準配列及び転写派生体の配列を有する核酸に、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補性を有する核酸であってもよい。そして、Fezlをコードする核酸としては、例えば、標準配列として登録されているNM_080433(マウス)、NM_018008(ヒト)、又はこれらの転写派生体(transcript variant)のヌクレオチド配列を有するDNA等が挙げられる。また、前記標準配列及び転写派生体の配列を有する核酸に、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補性を有する核酸であってもよい。
前記ストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度の洗浄条件、さらに厳しくは「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件で洗浄しても正鎖と相補鎖とがハイブリダイズ状態を維持する条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、いっそう好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸は、一本鎖及び二本鎖のいずれでもよく、DNA及びRNAのいずれでも良い。また、DNA/RNAキメラ、DNA-RNAハイブリットであってもよい。このうち、好ましくは二本鎖DNA、又は一本鎖RNAである。
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸は、Ngn2及びFezlを発現させるための制御配列を含むことができ、当該制御配列としては、例えば、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイト等の配列が挙げられる。また、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、及び、蛍光タンパク質、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列等を含んでいてもよい。
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸は、Ngn2及びFezlがポリシストロニックに発現するように、IRES又は2Aコード配列(以降、2A配列と略記する)を介して機能的に連結されていてもよい。特に、2A配列を用いて連結された場合には、当該2種類のタンパクの同時且つ等モル発現が可能となるため(Nat. Biotech., 5, 589-594, 2004)、本発明において特に好ましい。当該2A配列はいずれのウイルス由来のものを用いてもよいが、好適には口蹄病ウイルス(FMDV)の2A配列である(J. General Virology, 89, 1036-1042, 2008)。
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸が一本鎖の場合には、安定性の向上を目的として、修飾ヌクレオチド(ヌクレオチド類似体を含む)を好適に含むことができる。そのような修飾ヌクレオチドの例としては、糖修飾リボヌクレオチド(例として、2’-フルオロ、2’-O-メチル、又は2’-O-メトキシエチル修飾されたリボヌクレオチド等)、骨格修飾リボヌクレオチド(例として、S化ヌクレオチド(Phosphorothioate)等)、及び塩基修飾リボヌクレオチド(例として、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン等)、及び、ヌクレオチド類似体(2’,4’-BNA(bridge nucleic acid)/LNA(Locked Nucleic Acid)(Koshkin et al., J. American Chemical Society, 120:13252-13253, 1998)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)(WO2000/047599)等)等が挙げられる。これらの修飾ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体はいずれも公知技術であり、オリゴ核酸の生体内安定性を向上させる方法として汎用されている(Summerton and Weller, Antisense Nuc. Acid Drug Dev., 7:187-195(1997);Hyrup et al., Bioorgan.Med.Chem.,4:5-23(1996)、参照)。
<外来性Ngn2及びFezlの導入>
Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸を多能性幹細胞に導入する方法は特に限定されないが、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクターに導入した形態で、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって多能性幹細胞内に導入することができる。
ウィルスベクターとしては、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウィルスベクター等が例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)等が挙げられる。プラスミドとしては、哺乳動物用プラスミド全般を使用することができる。なお、前記Ngn2及びFezlを発現させるための制御配列、選択マーカー配列、及び、レポーター遺伝子配列等は、ベクターによって供給されてもよい。
前記ベクターは、前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸を多能性幹細胞の染色体に効率良く挿入するためのトランスポゾン配列を有していることが好ましい。本発明に用いることができるトランスポゾン配列は特に限定されないが、好適なものとして、piggyBacトランスポゾンのトランスポゾン配列が挙げられる(Yusa M., et al, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 108:1531-1536, 2011)。前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸が2つのトランスポゾン配列の間に挿入されたベクターを、該トランスポゾン配列に対応するトランスポゼース(piggyBacトランスポゾン配列に対しては、piggyBacトランスポゼース)を前記細胞内で発現し得る態様でコードする核酸とともに細胞に導入することで、該トランスポゾン配列に挟まれた領域(前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸を含む領域)が染色体内に挿入された細胞を効率よく得ることができる。
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸が1本鎖の場合には、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって多能性幹細胞に導入してもよい。細胞内における当該発現レベルを維持するために、複数回、例えば、2回、3回、4回、又は5回等導入を行っても良い。
外来性Ngn2及びFezlをタンパクの形態で導入する場合には、例えば、リポフェクション、及びマイクロインジェクションなどの手法によって導入することができる。その際、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTAT及びポリアルギニン)との融合タンパクの状態で導入してもよい。細胞内における前記外来性のNgn2及びFezlタンパク量を維持するために、複数回、例えば、2回、3回、4回、又は5回等導入を行っても良い。
<外来性Ngn2及びFezlの発現>
前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸からの当該Ngn2及びFezlの発現は、誘導可能なプロモーターに制御されることが好ましい。誘導可能なプロモーターの例としては、薬剤応答性プロモーターが挙げられ、その好適な例として、テトラサイクリン応答性プロモーター(tetO配列が7回連続したテトラサイクリン応答配列(TRE)を有するCMV最小プロモーター)が挙げられる。該プロモーターは、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA;reverse tetR(rTetR)とVP16ADから構成される融合タンパク質)の発現下において、テトラサイクリン又はその誘導体が供給されることにより活性化されるプロモーターである。よって、テトラサイクリン応答性プロモーターを用いて発現誘導を行う場合には、前記活性化因子を発現する様式を併せ持つベクターを用いることが好ましい。前記テトラサイクリンの誘導体としては、ドキシサイクリン(doxycycline、本願では以降、DOXと略記する)を好適に用いることができる。
上記以外の薬剤応答性プロモーターを用いた発現誘導系としては、エストロゲン応答性プロモーターを用いた発現誘導システム(例として、WO2006/129735)、RSL1によって誘導されるプロモーターを用いたRheoSwitch哺乳類誘導性発現システム(New England Biolabs社)、cumateによって誘導されるプロモーターを用いたQ-mateシステム(Krackeler Scientific社)又はCumate誘導性発現システム(National Research Council(NRC)社)、及びエクジソン応答性配列を有するプロモーターを用いたGenoStat誘導性発現システム(Upstate cell signaling solutions社)等が挙げられる。
上述したような薬剤応答性プロモーターを用いる場合には、当該プロモーターの活性化を誘導し得る薬剤(例えば、前記テトラサイクリン応答性プロモーターを含むベクターの場合には、テトラサイクリン又はDOX)を培地に所望の期間添加し続けることで、外来性Ngn2及びFezlの発現を維持することができる。そして、培地から当該薬剤を除去する(例えば、該薬剤を含まない培地に置換する)ことで、前記遺伝子の発現を停止させることが可能である。
さらに、前記Ngn2及びFezlの発現誘導は、前記Ngn2をコードする核酸及びFezlをコードする核酸を構成的プロモーターに機能的でない形で接合させておき、所望の時期に当該接合状態を機能的な接合状態に変換することで行ってもよい。このような例としては、前記構成的プロモーターと前記遺伝子をコードする配列の間に、LoxP配列で挟まれた特定の配列(例えば、薬剤耐性遺伝子をコードする配列や転写終結を誘導する配列)を配しておき、所望の時期にCreを作用させて前記LoxP配列で挟まれた配列を除去することで、前記接合状態を機能的な接合状態に変換する方法等が挙げられる。さらに、前記LoxP配列の代わりにFRT配列又はトランスポゾン配列(例として、piggyBacトランスポゾン配列)を、前記Creの代わりにFLP(flipase)又は当該トランスポゾン(例として、piggyBacトランスポゾン)を用いてもよい。
上記目的で用いることができる構成的プロモーターとしては、SV40プロモーター、 LTRプロモーター、CMV(cytomegalovirus)プロモーター、RSV(Rous sarcoma virus)プロモーター、MoMuLV(Moloney mouse leukemia virus) LTR、HSV-TK(herpes simplex virus thymidine kinase)プロモーター、EF-αプロモーター、及びCAGプロモーター等が挙げられる。
上記のようにCre、FLP、トランスポゾンを用いて接合状態を変換することで発現誘導を行った場合には、所望の期間経過後に再度Cre、FLP、トランスポゾンを作用させて前記配列(LoxP配列、FRT配列、又はトランスポゾン配列)で挟まれた配列を除去することで、前記遺伝子の発現を停止させることもできる。
また、別の態様として、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウイルスベクターやプラスミド、エピソーマルベクター等の容易に細胞内から消失させ得るベクターを用いることで、前記遺伝子の発現期間を制御することも可能である。
上位運動ニューロンを含む錐体細胞の製造において、外来性Ngn2及びFezlの発現は3日間以上維持されることが好ましく、4日間、5日間、6日間、7日間のいずれにおいても本発明の効果を奏することができ、特に好ましくは7日間である。前記発現を維持する期間が長期になることで上位運動ニューロン及び錐体細胞の製造に不利益を生じることはないが、好ましくは3日以上14日以下、特に好ましくは7日以上14日以下である。
<多能性幹細胞>
本発明において、多能性幹細胞とは、生体に存在するすべての細胞に分化可能な多能性を有し、かつ、増殖能を併せもつ幹細胞のことである。例として、以下に限定するものではないが、胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹細胞(nuclear transfer embryonic stem cell;ntES細胞)、***幹細胞(spermatogonial stem cell;GS細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell;EG細胞)、人工多能性幹細胞(pluripotent stem cell;iPS細胞)、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)等が挙げられる。これらのうち、本発明に好適な多能性幹細胞は、ES細胞及びiPS細胞であり、特に好ましくはiPS細胞である。
iPS細胞は、特定の初期化因子をDNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することで作製され得る、ES細胞とほぼ同等の特性(例えば、分化多能性と自己複製による増殖能)を有する体細胞由来の人工幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka(2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al.(2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al.(2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106(2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA又はES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3又はGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al.(2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al.(2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al.(2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al.(2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al.(2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al.(2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A,(2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al.(2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al.,(2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al.(2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al.(2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al.(2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al.(2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al.(2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al.(2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al.(2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
当業者は上記刊行物を参照することにより、本発明に好適に使用できる遺伝子を適宜選択し、周知の方法に従ってiPS細胞を製造することができる。
また、本発明には、既に樹立された多能性幹細胞株を好適に用いることができ、市販のマウス及びヒトのES細胞株及びiPS細胞株を用いてもよい。ヒトES細胞株としては、例えば、KhES-1(HES0001)、KhES-2(HES0002)、及びKhES-3(HES0003)株等が、理化学研究所バイオリソースセンターから入手可能である(細胞開発材料室;http://cell.brc.riken.jp/ja/)。健常者から樹立されたiPS細胞株としては、例えば、201B7(HPS0063)、253G1(HPS0002)、409B2(HPS0076)、及び454E2(HPS0077)株等、ALS患者から樹立されたiPS細胞株としては、例えば、本発明者によって樹立されたCiRA0021(HPS0327)、CiRA0022(HPS0290)、CiRA0023(HPS0291)、CiRA0024(HPS0292)、CiRA0025(HPS0293)、及びCiRA0026(HPS0294)等が、いずれも前記センターから入手可能である。上記株名の後ろのカッコ内の英数字は寄託番号を表す。また、米国コリエル インスティチュート(Coriell Institute;https://catalog.coriell.org)からも、各種多能性細胞株が入手可能である。
本発明に係る上位運動ニューロンを含む錐体細胞の製造に用いることができる多能性幹細胞は、疾患モデルの作製という観点から、疾患患者から樹立されたiPS細胞、疾患の原因遺伝子が導入された健常者由来多能性幹細胞、又は、疾患の原因遺伝子を機能的に欠失した健常者由来多能性幹細胞等であってよい。当該疾患モデルの作製に好適な多能性幹細胞については、「3.疾患モデル提供」で詳しく説明する。
<培養方法>
外来性のNgn2及びFezlが導入され、且つ、該Ngn2及びFezlを発現する多能性幹細胞は、ニューロンへの分化誘導に適した培地(本書では以降、神経分化用培地と呼ぶ)中で培養されることが好ましい。そのような培地としては、基本培地のみ、又は、神経栄養因子を添加した基本培地を用いることができる。本発明における神経栄養因子とは、神経細胞の生存と機能維持に重要な役割を果たしている膜受容体のリガンドであり、例えば、Nerve Growth Factor(NGF)、Brain-derived Neurotrophic Factor(BDNF)、Neurotrophin 3(NT-3)、Neurotrophin 4/5(NT-4/5)、Neurotrophin 6(NT-6)、basic FGF、acidic FGF、FGF-5、Epidermal Growth Factor(EGF)、Hepatocyte Growth Factor(HGF)、Insulin、Insulin Like Growth Factor 1(IGF 1)、Insulin Like Growth Factor 2(IGF 2)、Glia cell line-derived Neurotrophic Factor(GDNF)、TGF-b2、TGF-b3、Interleukin 6(IL-6)、Ciliary Neurotrophic Factor(CNTF)及びLIF等が挙げられる。このうち、本発明において好ましい神経栄養因子は、GDNF、BDNF、及びNT-3である。前記基本培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium(DMEM)培地、Ham's F12(F12)培地、Dulbecco's Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(DMEM/F-12)培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium培地(Lifetechnologies社)、及びこれらの混合培地等が挙げられる。基本培地には血清が含まれていてもよく、含まれていなくても(すなわち、無血清)良い。培地には、必要に応じて、例えば、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2 supplement(Invitrogen)、B27 supplement(Invitrogen)、アルブミン、トランスフェリン、アポトランスフェリン、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロール等の1以上の血清代替物を添加することができ、また、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、セレン酸、プロゲステロン及びプトレシン等の1以上の物質を添加してもよい。
本発明では、神経分化用培地として、DMEM/F12培地とNeurobasal Medium培地を体積比1:1で混合した混合培地に、N2 supplement、B27 supplement、BDNF、GDNF、及びNT3を添加した培地を好適に用いることができる。
前記外来性Ngn2及びFezlを発現する多能性幹細胞の培養は、単独で(すなわち、他種細胞の非存在下で)行うことができるが、上位運動ニューロンへの分化効率を向上させるために、グリア細胞の共存下で行ってもよい。本発明においてグリア細胞とは、神経系を構成する非神経細胞を指し、マイクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、およびシュワン細胞等が例示される。このうち、本発明において最も好ましいグリア細胞はアストロサイトである。
本発明では、前記外来性Ngn2及びFezlが導入された多能性幹細胞をグリア細胞(特に好ましくは、アストロサイト)のフィーダー層上に播種/培養し、前記外来性遺伝子の発現誘導を行うことが好ましい。本発明に用いるグリア細胞は、ヒト、マウスいずれのものでもよく、入手し易さの点からはマウスのグリア細胞が好適である。
グリア細胞は、当業者に周知の方法に従い、マウス胎児又は新生児の脳から容易に調製することができる(例として、Jacquier A., et al, Hum. Mol. Genet., 18:2127-2139, 2009参照)。各社から市販されている製品を用いてもよく、また、細胞バンクからも入手可能である(例として、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のJCRB細胞バンク(http://cellbank.nibiohn.go.jp/)のMA-89(寄託番号:IFO50293))。
前記外来性Ngn2及びFezlを発現する多能性幹細胞を培養して上位運動ニューロンに分化誘導する際の培養温度は特に限定されないが、約30-40℃、好ましくは約37℃である。CO2含有空気の雰囲気下での培養が好ましく、CO2濃度は好ましくは約2-5%である。
<錐体細胞及び上位運動ニューロン>
錐体細胞は、大脳皮質と海馬に存在するグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンである。錐体細胞は、形態的及び生理学的な特徴からさまざまなサブタイプに分類されており、それぞれが機能的にも異なる役割を果たしていると考えられている。
本発明では、“β-III tubulin又はMAP2(microtubule-associated protein 2)陽性の突起(神経突起と呼ぶ場合がある)を少なくとも1以上有する細胞”を“ニューロン”と定義する。そして、本発明における“錐体細胞”とは、“前記ニューロンの定義を満たし、さらに錐体細胞のマーカー遺伝子を1以上発現する細胞”と定義される。前記錐体細胞のマーカー遺伝子としては、例えば、CaMKII(calcium/calmodulin-dependent protein kinase II;ヒト:NM_015981、NP_057065、マウス:NM_177407、NP_803126)、OTX1(orthodenticle homeobox 1;NM_014562、NP_055377)等が挙げられる。
本明細書では、“前記錐体細胞の定義を満たす細胞であって、さらにシナプス形成能を獲得した細胞”を、機能的な分化が完了した錐体細胞という意味で、“成熟した錐体細胞”と呼ぶ。
大脳の上位運動ニューロンは、大脳皮質運動野の第5層に細胞体が存在し、脊髄全角の下位運動ニューロン、又は、橋及び延髄の神経核に投射する大型の錐体細胞に代表される。本発明では、“前記ニューロンの定義を満たす細胞であって、さらに、
大脳皮質第5層のマーカー遺伝子を1以上発現し、且つ、運動野のマーカー遺伝子を1以上発現する細胞、又は、
大脳皮質第5層のマーカー遺伝子もしくは運動野のマーカー遺伝子を1以上発現し、且つ、細胞体の直径が15μm以上(さらに好ましくは、20μm以上)の細胞”、
を“上位運動ニューロン”と定義する。
前記大脳皮質第5層のマーカー遺伝子としては、例えば、Ctip2(Couptf-interacting protein 2、別名としてB-cell CLL/lymphoma 11B;NM_138576、NP_612808)、TLE4(transducin like enhancer of split 4;NM_001282748、NP_001269677)、ER81(ets variant 1;NM_004956、NP_004947)、Sox5(SRY-box 5;NM_006940、NP_008871)等が挙げられる。また、前記運動野のマーカー遺伝子としては、例えば、Crim1(cysteine rich transmembrane BMP regulator 1 (chordin-like);NM_016441、NP_057525)、Diap3(diaphanous related formin 3;NM_001042517、NP_001035982)、Igfbp4(insulin like growth factor binding protein 4;NM_001552、NP_001543)等が挙げられる。
本明細書では、“前記上位運動ニューロンの定義を満たす細胞であって、さらに、下位運動ニューロンに対して自身をシナプス前細胞とするシナプス結合を形成し得る細胞”を、機能的な分化が完了した上位運動ニューロンという意味で“成熟した上位運動ニューロン”と呼ぶ。
本発明において錐体細胞を製造するとは、前記錐体細胞の定義を満たす細胞を50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上含有する細胞集団を得ることを意味する。また、上位運動ニューロンを製造するとは、前記上位運動ニューロンの定義を満たす細胞を5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上含有する細胞集団を得ることを意味する。なお、本発明において、“上位運動ニューロンを含む錐体細胞を製造する方法”は、“上位運動ニューロンを製造する方法”と同義である。
2.上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞
本発明の第2の態様として、上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞が提供される。前記外来性Ngn2及びFezlが導入された多能性幹細胞は、該Ngn2及びFezlを発現することで、約80%という高効率で錐体細胞に変換され、さらに、約16%(すなわち、前記錐体細胞の約20%)という効率で上位運動ニューロンに変換され得る細胞である。これまで、錐体細胞に変換可能な多能性幹細胞として、外来性遺伝子としてAscl1のみ(非特許文献11)又はNgn2のみ(非特許文献3、特許文献1)が導入された多能性幹細胞が報告されているが、いずれも上位運動ニューロンを生じ得ることは示されていない。
よって、本発明に係る外来性Ngn2及びFezlが導入された多能性幹細胞は、上位運動ニューロンに変換可能であることが確認された初めての多能性幹細胞である。
本発明に係る上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞は、前記外来性Ngn2及びFezlを発現誘導可能な様式で染色体内に保持していることが好ましい。これにより、所望の時期に前記多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造することができ、さらに、当該多能性幹細胞を細胞株として安定に維持できるようになる。当該発現誘導可能な様式としては、例えば、前記<外来性Ngn2及びFezlの発現制御>の項で説明した種々の様式を用いることができる。本発明においては、前記外来性Ngn2及びFezlをコードする核酸が発現誘導可能なプロモーターに機能的に接合された様式が好ましく、当該プロモーターとしては、薬剤応答性プロモーターが好ましい。
本発明に係る上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞は、ヒトを含む動物に多能性幹細胞の状態で投与し、その後分化誘導することで、該投与部位において上位運動ニューロンに変換させることが可能である(特許文献1参照)。当該投与部位としては、大脳皮質が好ましく、さらに好ましくは大脳皮質第5層である。このように、本発明に係る上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞は、疾患等で失われた上位運動ニューロンを補充するための細胞製剤として用いてもよい。
3.皮質脊髄路モデルの提供
本発明の第3の態様として、上位運動ニューロンが下位運動ニューロンに投射した皮質脊髄路の細胞モデルが提供される。
これまで、動物組織から神経連絡を保ったままのニューロンを培養下に移す技術としてスライスカルチャー法が知られているが、該方法では脳と脊髄のような異なる組織にまたがる神経結合を温存することは(少なくとも現時点では)不可能である。また、実験動物の脳及び脊髄から上位・下位運動ニューロンを採取して共培養することは可能だが、培養下で両運動ニューロン間の神経連絡を再構築できた例は、哺乳類では報告されていない。
このように、ヒトを含む哺乳類では、皮質脊髄路の培養モデル(細胞モデル)を作製することは極めて困難であった。
本発明に係る方法を用いて製造された上位運動ニューロンは、下位運動ニューロンと共培養することで、上位運動ニューロンをシナプス前細胞、下位運動ニューロンをシナプス後細胞とするシナプス結合を形成することができる細胞である。よって、当該シナプス結合を含む培養物は、哺乳類における初めての皮質脊髄路細胞モデルである。
前記下位運動ニューロンは、多能性幹細胞から外的シグナルによって分化誘導する方法(例として、非特許文献12)、多能性幹細胞に外来性Lhx3、Ngn2、及びIsl1を発現させて分化誘導する方法(特許文献1)、体細胞にAscl1、Brn2、Myt1l、Lhx3、Hb9、Isl1、Ngn2、NeuroD1を発現させて分化誘導する方法(非特許文献7)等によって製造することができる。このうち、短期間で下位運動ニューロンを安定して製造できることから、多能性幹細胞に外来性Lhx3、Ngn2、及びIsl1を発現させて分化誘導する方法が好ましい。例えば、外来性Lhx3、Ngn2、及びIsl1を発現誘導可能な態様で染色体に含む多能性幹細胞と、本発明に係る上位運動ニューロンに変換可能な多能性幹細胞とを共培養し、各々を分化誘導することで、上位運動ニューロンが下位運動ニューロンに投射したシナプス結合を含む培養物を短期間(目安として、前記分化誘導から2-3週間程度)で容易に得ることが可能である。さらに、前記2種類の多能性幹細胞における外来性遺伝子が同じシステムによって発現制御されていると、両多能性幹細胞の分化誘導を一括して制御できるため、一段と好適である。当該目的に好適に用いることができる発現制御システムとしては、前述した薬剤プロモーターによる発現制御システムが挙げられる。
本発明に係る皮質脊髄路モデルは、これまで分子レベルでの解析が困難であった、上位運動ニューロンの下位運動ニューロンへの投射機構や情報伝達機構の解析系として用いることができる。
4.疾患モデルの提供
本発明の第4の態様として、上位運動ニューロンの異常を伴う疾患の細胞モデルが提供される。当該細胞モデルは、本発明に係る上位運動ニューロンを製造する方法を、上位運動ニューロンが障害される疾患の患者由来iPS細胞、又は、該患者に由来する遺伝子変異を導入された多能性幹細胞に適用することで得ることが可能である。
前記疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)、原発性側索硬化症(Primary lateral sclerosis;PLS)等が挙げられる。このうち、ALSについては、これまでに多数の家族性患者/家系が報告されており、当該患者/家系において見出された遺伝子変異の情報が英国King’s College London大学の公開データベース“ALSOD:The Amyotrophic Lateral Sclerosis Online Database”(http://alsod.iop.kcl.ac.uk)から入手可能である。
なお、本発明における“健常者”とは、上位運動ニューロンが障害される疾患に罹患していない者の意である。
前記疾患患者由来iPS細胞としては、家族性患者から樹立されたiPS細胞が好ましい。家族性ALS患者の例としては、SOD1(superoxide dismutase 1, soluble;NM_000454)、TDP-43(NM_007375、NP_031401)、FUS(FUS RNA binding protein;NM_004960)、ALS2(NM_020919)、ADAR2(adenosine deaminase, RNA-specific, B1;NM_001112)、C9orf72(chromosome 9 open reading frame 72;NM_14500)、GRN(granulin;NM_002087)、PFN1(profilin 1;NM_005022)、EPHA4(EPH receptor A4;NM_001304537)、ERBB4(erb-b2 receptor tyrosine kinase 4、NM_005235)、ANG(Homo sapiens angiogenin, ribonuclease, RNase A family, 5;NM_001145)、UBQLN2(ubiquilin 2;NM_013444)、HNRNPA2B1(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A2/B1、NM_031243)、又はOPTN(optineurin 1、NM_001008211)遺伝子に変異を有する患者が挙げられる。このうち、SOD1、TDP-43、及びFUS遺伝子変異は患者数が多いことから、本発明に好適に用いることができる。
前記患者に由来する遺伝子変異を導入された多能性幹細胞は、前記疾患患者で同定された変異型遺伝子を導入、又は、当該内在性遺伝子を機能的に欠失した多能性幹細胞であってよい。また、この目的に用いる多能性幹細胞は、健常人に由来する多能性幹細胞であることが好ましい。
例えば、ALSを引き起こすことが知られるSOD1、TDP-43、及びFUS遺伝子変異の多くは機能獲得型変異であるため、当該遺伝子変異の導入は、該変異型遺伝子を健常者由来多能性幹細胞に導入して行ってもよい。前記変異型遺伝子を多能性幹細胞に導入する方法は特に限定されず、例えば、<外来性Ngn2及びFezlの導入>の項で説明した方法を用いてもよい。
一方でALSを引き起こす遺伝子変異には機能喪失型変異も知られており(例として、ALS2及びADAR2遺伝子変異)、これらの遺伝子変異の導入は、内在性遺伝子の機能破壊(すなわち、knockout)であってよい。前記遺伝子の機能破壊は当業者に周知の方法を用いて行うことができ、例えば、CRISPR-Cas9システム(Gaj T., et al, Trends Biotechnol., 31:397-405, 2013; Doudna J.A., et al, Science, 346, no.6213, 2014)、及び、TALエフェクターヌクレアーゼ(Transcription Activator-Like Effector Nuclease;TALEN)システム(Miller J.C., et al, Nat. Biotechnol., 29:143-148, 2011)等を用いてもよい。
前記疾患患者に由来するiPS細胞、又は、前記疾患患者で同定された変異型遺伝子を導入もしくは対応する野生型遺伝子を機能的に破壊した健常者由来多能性幹細胞に、外来性Ngn2及びFezlを導入し発現させることで、該疾患に特徴的な病的性質を備えた上位運動ニューロンを得ることが可能である。
前記方法を用いて作製された上位運動ニューロンは、そのまま該疾患の上位運動ニューロンモデルとして用いてもよく、また、下位運動ニューロンと共培養してシナプス結合(上位運動ニューロンをシナプス前細胞、下位運動ニューロンをシナプス後細胞とするシナプス結合)を形成させた状態で用いてもよい。
5.薬剤スクリーニング方法の提供
本発明の第5の態様として、上位運動ニューロンの異常を伴う疾患に対する予防又は治療薬をスクリーニングする方法が提供される。当該方法は、前述した疾患モデル(上位運動ニューロンモデル、皮質脊髄路モデル等)に対し、被験物質の効果を解析する工程を含むことを特徴とする。
前記スクリーニング方法は、例えば、下記工程(1)-(4)を含む方法であってよい。
(1)家族性ALS患者由来人工多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養して、該多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する工程、
(2)(1)で得られた上位運動ニューロンを、被験物質と接触させる工程、
(3)(2)で被験物質と接触させた上位運動ニューロン、及び接触させなかった上位運動ニューロン(すなわち、対照細胞)を培養し、神経突起長、凝集化したTDP-43タンパク量、又はGPR50の発現量を測定する工程、
(4)前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンの神経突起長、もしくはGPR50の発現量が対照細胞の該値よりも高値である被験物質、又は、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンにおける凝集化したTDP-43タンパク量が対照細胞の該値よりも低値である被験物質を、筋萎縮性側索硬化症の予防又は治療薬として選択する工程。
<被験物質>
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質としては、例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、合成低分子化合物、天然化合物、細胞抽出物、植物抽出物、動物組織抽出物、血漿、海洋生物由来の抽出物、細胞培養上清、及び微生物発酵産物等が挙げられる。これらの物質は新規なもの、公知なもののいずれでもよい。
本発明において、上位運動ニューロンと被験物質との接触は、上位運動ニューロンを含む培養系の培養液に被験物質を添加して行うことができる。当該接触させる期間は、前記指標の変化が確認できる期間であれば特に限定されないが、例えば、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上であってよく、より好ましくは2日間である。接触期間の終了は、例えば、当該培地を被験物質を含まない培地に交換することで行うことができる。添加する被験物質の濃度は、化合物の種類(溶解性、毒性等)によって適宜調節可能である。
<予防及又は治療薬の選択>
本発明に係るスクリーニング方法では、上位運動ニューロンの神経突起長、凝集化したTDP-43タンパク量、及びGPR50の発現量から選ばれる1以上の値を指標として、被験物質を選別してもよい。具体的には、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンにおける神経突起長又はGPR50発現量の値が被験物質と接触させなかった上位運動ニューロン(対照細胞)の該値よりも高い場合、又は、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンにおける凝集化したTDP-43タンパク量の値が対照細胞の該値よりも低い場合に、当該被験物質をALSの予防又は治療薬として選択することができる。なお、本発明における予防及び/又は治療薬は、シード化合物となるものも含めた意である。
神経突起の伸展不良は、これまで作製された多くの神経変性疾患モデルにおいて、障害されるニューロンに共通してみられる性質である。そのため、神経突起の伸展不良は、ニューロンの脆弱性の指標として広く用いられている。
TDP-43タンパクは、健常人では主に核内に局在するが、ALS患者では核から細胞質に移行して(細胞質で)凝集することが知られており、当該移行と凝集体の形成がALS発症に深く関わると考えられている。
GPR50の発現量がALS患者で有意に低下することは、本願において初めて明らかにされたことである。
前記神経突起長の計測は、当業者に周知の方法を用いて行うことができ、例えば、細胞画像解析装置(インセルアナライザー)を用いて自動的に計測してもよい。また、前記凝集化したTDP-43タンパク量も当業者に周知の方法を用いて測定することができ、例えば、DAPI核染色とTDP-43に対する免疫染色を行い、DAPI核染色のシグナルとマージしないTDP-43シグナル量として、細胞画像解析装置を用いて自動的に計測してもよい。さらに、前記GPR50発現量も当業者に周知の方法を用いて測定することができ、例えば、蛍光標識されたプローブを用いたin situ hybridizationを行い、該シグナルを細胞画像解析装置を用いて自動的に計測する方法等が挙げられる。
本発明においては、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンの指標の値が、対照細胞の該値と比べて、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.5倍以上又は3倍以上である場合に“高値”と判断してもよい。また、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンの指標の値が、対照細胞の該値と比べて、80%、70%、60%、50%、又は40%以下である場合に“低値”と判断してもよい。なお、本発明における前記対照細胞には、有効性がないことが確認されている薬剤と接触させた上位運動神経細胞も含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。最初に、下記実施例で用いた材料及び基本的な実験手法について説明する。
<ヒトiPS細胞株>
以下の実施例では、特に断りがない限り、ヒトiPS細胞として、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥博士より分与された201B7株を用いた(Takahashi K, et al, Cell, 131:861-72, 2007)。201B7株は健常者より樹立されたiPS細胞株で、理化学研究所バイオリソースセンター細胞開発材料室からも入手可能である(寄託番号HPS0063)。また、TDP-43遺伝子にG298S変異を有する家族性ALS患者より樹立したiPS細胞株(実施例3で使用)は、米国コリエル インスティチュートから入手したND32947E18株を用いた。
<外来性核酸>
以下の実施例では、外来性遺伝子として下記のマウスcDNAを用いた;
Ngn2(NM_009718)、Fezl(NM_080433)、Brn2(NM_008899)、Ascl1(NM_008553)、Myt1l(NM_001093775)、Lhx3(NM_001039653)、Isl1(NM_021459AC)。
<手法1:多能性幹細胞の培養と外来遺伝子の発現誘導>
ヒト由来NF安定導入株は、Accutase(Innovative Cell Technologies社)処理によって単一細胞に解離させた後、matrigel(BD Biosciences社製)でコートされたプラスチックプレート、又は、アストロサイトが培養されたプラスチックプレートに、約2×105 cell/wellの細胞密度で播種した。使用した培地は、神経分化用培地(1% N2 supplement(Invitrogen社)、2% B27 supplement(Invitrogen社)、10ng/ml BDNF(R&D Systems社)、10ng/ml GDNF(R&D Systems社)、及び10ng/ml NT3(R&D Systems社)が添加された、DMEM/F12培地とNeurobasal Medium培地の混合培地(混合体積比は1:1、いずれもLife Technologies社)である。なお、前記アストロサイトは生後1日目の野生型マウス(C57BL/6J)の大脳皮質より文献(Jacquier A., et al, Hum. Mol. Genet., 18:2127-2139, 2009)に記載の方法で調製し、10日間培養して単層(フィーダー層)にした。
翌日、培地を1μg/ml DOX(Clontech社)を添加した神経分化用培地(以降、DOX含有培地と呼ぶ)に置換して、当該外来性遺伝子の発現を誘導した。その後は、2日置きに培地を半量ずつ交換した。
[比較例1]多能性幹細胞に導入する遺伝子の検討(1)
胎生期の大脳皮質の神経発生では、脳室帯で神経幹細胞が***と分化を繰り返してニューロン(厳密には、ニューロンへと分化が方向付けられた細胞)を生じ、該ニューロンは将来の定住場所に向かって移動しながら特定のサブタイプのニューロンへと分化する。前記ニューロンへの分化の方向付けにはNgn2又はAscl1の発現が重要であり、その後様々な転写因子が連続して協調的に働くことでサブタイプが決定すると考えられている(非特許文献10)。
これまでの研究により、Ngn2を多能性幹細胞に単独で導入・発現させると、ほぼすべての細胞が大脳皮質第2及び3層のグルタミン酸作動性ニューロンへと分化し(非特許文献3)、Ascl1を単独で導入・発現させると、グルタミン酸作動性ニューロンだけでなく、GABA作動性ニューロンを含むさまざまなサブタイプのニューロンを生じることが報告されている(非特許文献11)。そこで、Ascl1の単独発現によって得られる細胞集団の中に上位運動ニューロンが含まれていることを期待して、KH2株(正常マウスES細胞株)及び201B7株にAscl1をコードする核酸を導入・発現させて、得られた細胞を免疫染色法を用いて解析した。しかしながら、各々の細胞株について約200,000個の細胞を解析しても、前記上位運動ニューロンの定義を満たす細胞は見出されなかった(データは非開示)。
Neuronal induction法は2009年に最初の成功例が報告された新しい手法であり、その実績はまだ非常に少ない。現時点において、Neuronal induction法によって大脳皮質を構成するニューロンを分化誘導した例は、前述した非特許文献3、12、特許文献1の他には、Brn2、Ascl1、Myt1lの3遺伝子(合わせて“BAM因子”と呼ばれている)を導入・発現させた例(例として、非特許文献13)、前記BAM因子にNueroD1を追加して導入・発現させた例(非特許文献14)、Ascl1、Myt1l、NeuroD、miR-9/9、及びmiR-124を導入・発現させた例(非特許文献15)に代表される。
そこで、多能性幹細胞にBAM因子を導入・発現させて得られるニューロンのなかに、上位運動ニューロンが含まれるかどうかを解析した。
<BAM発現ベクターの作製>
pDEST31発現ベクター(Invitrogen Life Technologies社製)をベースとして、Brn2、Ascl1、及びMyt1lをコードする核酸が2A配列を介して連結され、その下流にIRES配列を介してmCherryをコードする核酸が連結された核酸が、テトラサイクリン応答性プロモーターに機能的に接合された発現カセット(以降、BAM発現カセットと呼ぶ)を含むベクター(以降、BAM発現ベクターと呼ぶ)を作製した。よって、当該発現カセットからは、テトラサイクリン又はその誘導体に応答して、Brn2、Ascl1、Myt1l、及びmCherryがポリシストロニックに発現する。なお、前記BAM発現ベクターにおいて、前記BAM発現カセットは2つのFrt配列の間に挿入されている。
<BAM安定導入株の作製と解析>
前記BAM発現ベクターをflipaseをコードする核酸とともに、エレクトロポレーション法を用いてKH2株に導入した。KH2株は、ColA1座の下流にFrt配列を有し、内在性のR26プロモーターの制御下でリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子であるM2rtTAを発現するマウスES細胞株である(Beard C, et al., Genesis 2006;44:23-28)。前記導入細胞に対して薬剤セレクションを行い、前記BAM発現カセットが染色体に挿入された細胞を選別して株化した。当該株化細胞に対して免疫染色を行い、未分化細胞のマーカー遺伝子(NANOG及びSSEA1)の発現を維持している細胞株をさらに選別して、クローン1及びクローン8を得た。
前記クローン1及び8を0.25% trypsinを用いて単一細胞に解離させた後、matrigel-coatedプラスチックプレート上に播種した。翌日、培地をDOX含有培地に置換して、BAM因子の発現を誘導した。誘導開始から72時後に、β-III tubulinに対する免疫染色を行った結果を図1に示す。前記ニューロンの定義を満たす細胞は観察されたが、前記上位運動ニューロンの定義を満たす細胞は見出されなかった(約20,000細胞の解析結果)。
よって、BAM因子を多能性幹細胞に導入し発現させても、上位運動ニューロンはほとんど生じないことが確認された。すなわち、これまで知られているNeuronal induction法では、上位運動ニューロンは実質的に分化誘導されないことが明らかとなった。
[実施例1]多能性幹細胞に導入する遺伝子の検討(2)
これまで、主にマウスを用いた解析により、サブタイプ決定期に上位運動ニューロンの細胞系譜(将来上位運動ニューロンになる細胞)で発現する遺伝子が多数同定されている。なかでも、非特許文献9では、2種類の錐体細胞(皮質第5層に存在し、右脳に投射するCallosal projection neuron、及び、視覚野に存在し、視蓋前域に投射するCorticotectal projection neuron)をコントロールとした詳細な解析を行い、サブタイプ決定期の初期にはSox5、Ctip2、Clim1等、中期にはCrim1、mu-crystallin等、後期にはencephalopsin、csmn1、cadherin22、pcp4、netrin-G1等の遺伝子が上位運動ニューロンの細胞系譜で有意に発現上昇することを報告している。さらに、発生期を通して上位運動ニューロンで発現する遺伝子として、fezl、cadherin13等を、また、Callosal projection neuronとの比較において上位運動ニューロンの細胞系譜に特異的な遺伝子として、lgfbp4、diap3、S100a10等を報告している。なお、fezl及びcadherin13は、上位運動ニューロンに限らず、皮質第5層に存在する他の皮質下投射ニューロン(例として、Corticotectal projection neuron)でも発現することが知られている(非特許文献10)。
本発明者は、サブタイプ決定期の上位運動ニューロンで発現することが報告された上記遺伝子について検討を行った。そして、意外にも、Ngn2とFezlを組み合わせた場合に、多能性幹細胞を錐体細胞に高効率で分化誘導できることを見出した。以下に、用いた解析手法を説明する。
<NF発現ベクターの作製>
PB-TAC-ERNベクター(Tanaka A., et al, PLoS One, 8:e61540, 2013参照)をベースとして、Ngn2をコードする核酸とFezlをコードする核酸が2A配列を介して連結され、下流にIRES配列を介してmCherryをコードする核酸が連結された核酸が、テトラサイクリン応答性プロモーターに機能的に接合された発現カセット(以降、NF発現カセットと呼ぶ)を含むベクター(以降、NF発現ベクターと呼ぶ)を作製した(特許文献1参照)。前記NF発現カセットからは、テトラサイクリン又はその誘導体に応答して、Ngn2、Fezl、及びmCherryがポリシストロニックに発現する。さらに、前記NF発現ベクターはrtTA-NeoR発現カセット(=EF1αプロモーターの制御下にrtTAとneomycin耐性遺伝子をポリシストロニックに発現する発現カセット)を有し、前記NF発現カセットとrtTA-NeoR発現カセットからなる2つの発現カセットの前後にpiggyBacトランスポゾンの逆向き反復配列を有している。
コントロールとして、前記NF発現カセットからNgn2をコードする核酸が欠失したベクター(以降、F発現ベクターと呼ぶ)も作製した。当該F発現ベクターからは、テトラサイクリン又はその誘導体に応答して、Fezl及びmCherryがポリシストロニックに発現する。
<NF安定導入株の作製>
前記NF発現ベクターを、piggyBacトランスポゼースをコードする核酸とともに、エレクトロポレーション法を用いて201B7株に導入した。その後、neomycin(50μg/ml)を含む培地で培養して、前記2つの発現カセットが染色体に挿入された細胞を選別し、株化した。さらに、前記株化細胞に対して免疫染色を行い、未分化細胞のマーカー遺伝子(NANOG及びSSEA1)の発現を維持している細胞株(以降、NF安定導入株と呼ぶ)を選別した。
また、前記F発現ベクターについても、同じ手法を用いて安定導入株(以降、F安定導入株と呼ぶ)を作製した。
<NF安定導入株の解析>
(1)免疫学的解析
前記NF安定導入株を前記手法1に従ってアストロサイトのフィーダー層上に播種し、翌日、外来性Ngn2及びFezlの発現を誘導した(図2B)。発現誘導から7日後の細胞に対し、β-III tubulinに対するTuji抗体と、ヒト特異的Nuc抗体(←hNuc抗体とは何でしょうか?)で二重免疫染色した結果を図2Aに示す。ほぼ全てのhNuc陽性細胞(すなわち、ヒト細胞)において、β-III tubulinの発現が認められた。当該β-III tubulin陽性細胞では細胞体が肥厚して神経突起が長く伸展しており、典型的なニューロンの形態を呈していた。
よって、NF安定導入株において外来性Ngn2及びFezlの発現を誘導すると、約7日後にはほぼすべての細胞がニューロンに分化することが明らかとなった。
次に、β-III tubulinとCaMKIIに対する免疫染色、及び、DAPIによる核染色を行った(図2C)。図2Cの右パネルは、β-III tubulinのシグナル(赤色)、CaMKIIAのシグナル(緑色)、及びのDAPI核染色のシグナル(青色)をマージさせたイメージである。β-III tubulin陽性細胞の約80%は、CaMKII陽性であった。
よって、NF安定導入株から外来性Ngn2及びFezlの発現により分化したニューロンの約80%は、錐体細胞であることが明らかとなった。
さらに、前記F安定導入株についても、外来性Fezlの発現を誘導し、7日後に同様の解析を行った。しかしながら、F安定導入株では、β-III tubulin、CaMKIIいずれの発現も確認されず、細胞体は扁平なままで、突起伸展も観察されなかった(図2Dの右パネル)。
以上より、多能性幹細胞にNgn2とFezlを導入して発現させると、7日後には約80%の細胞が錐体細胞に分化するが、Fezlのみを発現させてもニューロンに分化誘導されないことが示された。
(2)電気生理学的解析
発現誘導から7日後のNF安定導入株に対し、全細胞パッチクランプ法を用いてニューロンとしての機能的な成熟度を解析した。典型的な測定結果を図3Aに示す。測定した全ての細胞において、Na/K電流及び活動電位が観察されたが、シナプス電流は観察されなかった。よって、発現誘導から7日後のNF安定導入株では、電位依存性Naチャネル及びKチャネルが発現して活動電位を生じることができるが、シナプスはまだ形成していないことがわかった。
次に、発現誘導から21日後のNF安定導入株に対して同じ解析を行った。その結果、測定したすべての細胞において、活動電位とシナプス電流が記録された(図3B)。
以上の結果より、多能性幹細胞にNgn2とFezlを導入して発現させると、約80%の細胞が錐体細胞へと分化誘導され、21日後には機能的に成熟した錐体細胞になることが示された。
[実施例2]分化誘導されたニューロンのサブタイプ解析
外来性Ngn2とFezlの発現によって多能性幹細胞から分化誘導されるニューロンのサブタイプを解析した。
(1)大脳皮質第5層及び運動野のマーカー遺伝子の発現解析
前記NF安定導入株を前記手法1に従ってmatrigel-coatedプラスチックプレート上に播種し、翌日外来性Ngn2及びFezlの発現を誘導した。発現誘導から7日後の細胞を回収してRNAを抽出し、real-time PCR法を用いて種々の遺伝子の発現量を解析した。結果を図4に示す。分化誘導した細胞(DOX+)では、分化誘導しなかったコントロール細胞(DOX不含培地で7日間培養した細胞;DOX-)と比べて、錐体細胞のマーカー遺伝子(OTX1及びCaMKII)、大脳皮質第5層のマーカー遺伝子(Ctip2、TLE4、ER81、及びSox5)、及び前頭野のマーカー遺伝子(SPGAP1、Robo1、及びPCDH17)の発現がいずれも大幅に増加していた。さらに、運動野のマーカー遺伝子(Crim1、Diap3、Igfbp4)のうち、Crim1とDiap3の発現が大幅に増加し、Igfbp4の発現も僅かながら増加していた(図3)。
よって、当該細胞集団には、上位運動ニューロンに分化した細胞が含まれていることが示唆された。特に、上位運動ニューロンへのサブタイプ決定期の初期に発現することが知られるSox5、及びCtip2の発現が非常に高いことから、上位運動ニューロンへの分化成熟途上にある細胞が多く含まれることが強く示唆された。
続いて、発現誘導から21日後のNF安定導入株からRNAを抽出して、Crim1(運動野マーカー)とCaMKII(錐体細胞マーカー)の発現量を解析した。分化誘導しなかった細胞(DOX-)と比べて、分化誘導した細胞(DOX+)では、Crim1のmRNA量が約2.8倍、CaMKIIのmRNA量は約149倍に増加していた(図5A)。
さらに、発現誘導から21日後の細胞に対し、Crim1とβ-III tubulin(図5B)、及びCaMKIIとβ-III tubulin(図5C)に対する二重免疫染色を行った。図5B及び図5Cにおいて、β-III tubulin陽性細胞はいずれも肥厚した細胞体と長い神経突起を有しており、ニューロンに分化したことがわかる。そして、図5Cではβ-III tubulin陽性細胞のほぼすべてがCaMKII陽性であることから、ニューロンに分化した細胞のほぼすべてが錐体細胞であることが確認された。これに対し、図5Bでは、β-III tubulin陽性細胞の一部(約20%)がCrim1陽性であり、該二重陽性細胞の細胞体の直径はいずれも15μm以上であった(図5B)。さらに、前記Crim1陽性細胞は、Ctip2(第5層マーカー)で免疫染色した場合にもすべて陽性であった(データは非開示)。
よって、NF安定導入株からNgn2及びFezlの発現によって分化した錐体細胞の一部(約20%)は、上位運動ニューロンであることが明らかとなった。
(2)下位運動ニューロンとのシナプス形成能の解析
前記上位運動ニューロンの機能的な成熟度を調べるために、下位運動ニューロンとのシナプス形成能を解析した。
<LNI安定導入株の改変>
下位運動ニューロンのリソースとして、本発明者が特許文献1において作製した“MN化因子導入-ヒト正常対照由来iPS細胞”の株化細胞を用いた。当該細胞株(本明細書では以降、LNI安定導入株と呼ぶ)は、前記NF安定発現株作製と同じ手法により、テトラサイクリン又はその誘導体に応答してLhx3、Ngn2、及びIsl1をポリシストロニックに発現する発現カセットが染色体に挿入された201B7株である。当該LNI安定導入株は、DOX処理により、約14日で機能的に成熟した下位運動ニューロンを生じることができる(特許文献1)。
このLNI安定導入株に、HB9プロモーターによって発現制御されるTdTOMATOをコードするレンチウイルスを感染させて、下位運動ニューロンに分化するとTdTOMATOの蛍光(赤色)を発するように改変した。
<NF安定導入株の改変>
実施例1で作製したNF安定導入株に、CaMKIIプロモーターによって発現制御されるEGFPをコードするレンチウイルスを感染させて、錐体細胞に分化するとEGFPの蛍光(緑色)を発するように改変した。
<上位・下位運動ニューロンの共培養系の作製と解析>
前記レンチウイルス感染から4時間後の改変LNI安定導入株及び改変NF安定導入株を、前記手法1に従ってアストロサイトのフィーダー層上に播種した。翌日、培地をDOX含有培地に置換して、それぞれの外来遺伝子の発現を誘導した。発現誘導から2週間後に細胞を固定し(4%PFA使用)、グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーであるvGLT1(vesicular glutamate transporter 1)に対する免疫染色を行った。vGLT1は、グルタミン酸作動性ニューロンのシナプス小胞の膜上に局在し、グルタミン酸を該小胞内に運び入れるトランスポーターである。通常、成熟したグルタミン酸作動性ニューロンの神経終末には多数のシナプス小胞が集積するため、vGLT1はシナプス部位を検出するマーカーとして汎用されている。
前記共培養系に対して蛍光顕微鏡観察を行い、赤色で視覚化された下位運動ニューロンと、緑色で視覚化され且つ細胞体の直径が15μm以上である上位運動ニューロンが接触している部位を探索した(図6A参照)。図6B及びCに、下位運動ニューロンの細胞体及び/又はその神経突起に、上位運動ニューロンの神経突起が接触している部位のイメージを示す。
図6Bの左パネルでは、下位運動ニューロンの細胞体と神経突起(赤色)に、上下異なる方向から伸展してきた緑色の長い神経突起(異なる上位運動ニューロンに由来する神経突起)が接触しており、当該接触部位及びその近傍にはvGLT1のドット状シグナル(青色)が複数認められる。青色のシグナルを見やすくするために、TdTOMATOシグナル(赤色)とvGLT1シグナル(青色)だけを重ね合わせたイメージが図6Bの右パネルである。当該右パネルでは、前記上位運動ニューロンの神経突起と下位運動ニューロンが接触していた部位及びその近傍に、前記左パネルよりも多くの青色ドット(vGLT1のシグナル)が認められた。
図6Cは、図6Bとは別の視野において、下位運動ニューロンの神経突起に、視野の左側から伸展してきた上位運動ニューロンの神経突起が接触した部位のTdTOMATO/EGFP/vGLT1三重イメージ(左パネル)、及びTdTOMATO/vGLT1二重イメージ(中央パネル)である。右パネルは、左パネルにおいて四角で囲んだ領域(接触部)を拡大した三重イメージで、上位運動ニューロンの神経突起(緑色)のうち、下位運動ニューロンと接触している先端部分にvGLT1のドット状シグナル(青色)が集積していることがわかる。
よって、NF安定導入株から、外来性Ngn2及びFezlの発現により、下位運動ニューロンを標的としてシナプス結合を形成できるニューロン、すなわち、上位運動ニューロンとして機能的に成熟したニューロンが分化誘導されることが示された。
以上の結果より、多能性幹細胞にNgn2及びFezlを導入して発現させることで、約3週間後には機能的な上位運動ニューロンが製造できることが示された。
さらに、上記結果より、外来性Ngn2及びFezlが導入された多能性幹細胞と、外来性Lhx3、Ngn2、及びIsl1が導入された多能性幹細胞を共培養し、前記全外来性遺伝子の発現を誘導することで、上位運動ニューロンをシナプス前細胞、下位運動ニューロンをシナプス後細胞とするシナプス結合を含む培養系(すなわち、皮質脊髄路モデル)が得られることが示された。
[実施例3]ALSモデル上位運動ニューロンの作製
ALS患者由来iPS細胞から本発明に係る方法で上位運動ニューロンを製造して、当該ニューロンの性質を解析した。
<ALS-iPSC NF安定導入株の作製と分化誘導>
TDP-43遺伝子にG298S変異を有する家族性ALS患者の体細胞から本発明者が樹立したiPS細胞株(非特許文献12参照、本明細書では以降、“ALS-iPSC”と呼ぶ)に、実施例1と同じ手法を用いて、前記NF発現カセットが染色体に挿入された安定導入株(以降、ALS-iPSC NF安定導入株と呼ぶ)を作製した。
前記ALS-iPSC NF安定発現株を前記手法1に従ってアストロサイトのフィーダー層上に播種し、翌日外来性Ngn2及びFezlの発現を誘導した。なお、コントロールとして、実施例1で201B7株から作製したNF安定発現株を用いた。
<ALS-iPSC NF安定導入株の解析>
これまで、ALSモデル動物及び家族性ALS患者由来iPS細胞から分化誘導された下位運動ニューロンを用いた解析により、ALSを発症する下位運動ニューロンに特徴的な異常(病態)が複数報告されている。そのうち、本来核タンパクであるTDP-43タンパクの細胞質への移行と凝集化は、孤発性ALS患者の剖検組織でも頻繁に観察されることから、家族性・孤発性を問わずALSの発症機序に深く関わると考えられている(参照:Scotter E.L., et al, Neurotherapeutics, 12:352-363, 2015)。また、神経突起の伸展不良は、変性し易い(脆弱な)ニューロンに広く認められる特徴である。
そこで、前記ALS-iPSC NF安定発現株から得られる上位運動ニューロンについて、これらの病的性質の有無を解析した。
(1)TDP-43タンパクの細胞質移行と凝集化の有無
発現誘導から28日後の細胞に対し、TDP-43に対する抗体及びSMI-32抗体を用いた二重免疫染色を行った(図7A)。コントロールから分化誘導された上位運動ニューロン(以降、Control-UMNと呼ぶ)では、TDP-43(緑色)とSMI-32(赤色)のシグナルがマージした領域(黄色)はほとんど観察されないが(図7Aの左パネル)、ALS-iPSC NF安定発現株から分化誘導された上位運動ニューロン(以降、ALS-UMNと呼ぶ)では、黄色の領域を有する細胞が多数観察された(図7Aの右パネル)。さらに、DAPI核染色との三重イメージでは(図7B)、Control-UMNでは核内にのみTDP-43のドット状シグナルが観察されたのに対し(図7B、左パネル)、ALS-UMNでは核内だけでなく細胞質にも複数のTDP-43ドット状シグナルが観察された(図7B、右パネル)。
よって、前記家族性ALS患者由来iPSCから外来性Ngn2及びFezlの発現によって分化した上位運動ニューロンでは、自発的にTDP-43タンパクが細胞質に移行して凝集化することが示された。
(2)神経突起の伸展不良の有無
突起進展の様子を生きたまま観察できるように、前記ALS-iPSC NF安定発現株に、CaMKIIプロモーターによって発現制御されるEGFPをコードするレンチウイルス(実施例2で使用したものと同じ)を感染させて、錐体細胞に分化するとEGFPの蛍光(緑色)を発するように改変した。
前記手法1に従ってアストロサイトのフィーダー層上に播種し、翌日に外来性Ngn2及びFezlの発現を誘導して蛍光顕微鏡観察を行った。すると、発現誘導から14日目以降に、細胞体の直径が15μm以上の錐体細胞において、神経突起の先端(すなわち、成長円錐)が縮小して突起伸展が停止する現象が頻繁に観察された(図8、右パネル中の矢印)。これに対し、前記コントロールから分化誘導されたニューロンでは、28日後まで解析しても突起の伸展停止は観察されなかった(図8、左パネル)。さらに、上記異常が認められた錐体細胞では、大脳皮質第5層のマーカー遺伝子の発現が確認された。
よって、前記家族性ALS患者由来iPSCから外来性Ngn2及びFezlの発現によって分化した上位運動ニューロンは、神経突起を伸展させる能力が低いことがわかった。
以上の結果より、ALS患者由来iPSCに外来性Ngn2及びFezlを発現させて得られる上位運動ニューロンは、ALSに特徴的な病的性質を備えた脆弱なニューロンであることが明らかとなった。よって、当該上位運動ニューロンは、ALSのモデル上位運動ニューロンになり得ることが示された。
[実施例4]新規ALSマーカーの同定
実施例3で作製したALSモデル上位運動ニューロンにおいて、特異的に発現量が変化する遺伝子を探索した。
前記ALS-iPSC NF安定導入株及びコントロールNF安定導入株を実施例3と同じ方法を用いて分化誘導し、28日後に上位運動ニューロンに分化した細胞を選んでシングルセルRNA-sequencing法を行った(Illimina社のHiSeq 2500 Sequencing Systemを用いて、100-cycle Single-Read modeで解析)。当該ALS-UMN及びControl-UMN間で遺伝子発現パターンを比較した結果、ALS-UMNでは発現が検出されない遺伝子として、GPR50(Official symbol:G protein-coupled receptor 50、NM_004224)が見出された(図8)。GPR50は、Gタンパク質共役受容体の一種で、これまで大鬱病性障害や双極性障害等の精神疾患と遺伝的相関が報告されているが(Thomson PA., et al, Mol. Psychiatry, 10:470-478, 2005)、運動ニューロン疾患との関わりを示唆する知見はない。図8に示されるように、Control-UMNでは解析した細胞の約80%においてGPR50の強いシグナルが検出されたのに対し、ALS-UMNでは解析した細胞すべてにおいてGPR50のシグナルは検出されなかった。
よって、GPR50の発現消失は、ALSのマーカーとなり得ることが示された。
これまで、家族性ALS患者から同定された遺伝子変異を導入することで様々なALSモデルマウスが作製され、下位運動ニューロンの変性に関する様々な知見が得られている(参照:McGoldrick P., et al, Biochim. Biophys. Acta. Sci., USA, 1832:1421-1436, 2013)。しかしながら、解剖学的な差異によりマウスにはヒトのような皮質脊髄路が存在しないため、モデルマウスを用いて上位運動ニューロンの変性機構や上位・下位運動ニューロン間の変性伝播機構を研究することはできなかった。ましてや、上位運動ニューロンに対して生存促進や変性阻止作用を直接奏し得る薬剤をスクリーニングする手段は存在しなかった。
本発明に係る多能性幹細胞は、当該外来性遺伝子の発現を誘導するだけで機能的な上位運動ニューロンへと変換され、下位運動ニューロンと神経結合を形成し得る細胞である。よって、本発明に係る上位運動ニューロンモデルと皮質脊髄路モデルの普及により、ALSを含む上位運動ニューロン疾患の治療方法と治療薬の研究が大幅に加速されることが期待される。

Claims (13)

  1. 多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養する工程を含む、多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する方法であって、
    前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞であり、
    前記上位運動ニューロンがCtip2を発現するものである、方法
  2. 前記外来性のNgn2及びFezlを薬剤応答性プロモーターで発現させる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記外来性のNgn2及びFezlを2A配列を用いてポリシストロニックに発現させる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記培養期間が21日間以上である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸を染色体内に含む多能性幹細胞。
  6. 前記Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸が、薬剤応答性プロモーターに機能的に接合された核酸である、請求項に記載の多能性幹細胞。
  7. 前記Ngn2をコードする外来性核酸及びFezlをコードする外来性核酸が、2A配列を介して連結されている、請求項又はに記載の多能性幹細胞。
  8. 前記多能性幹細胞が、ヒト由来人工多能性幹細胞である、請求項のいずれかに記載の多能性幹細胞。
  9. 前記ヒトが、筋萎縮性側索硬化症患者である、請求項に記載のヒト由来人工多能性幹細胞。
  10. 請求項に記載された方法で製造された上位運動ニューロンをシナプス前細胞、下位運動ニューロンをシナプス後細胞とするシナプス結合を含む培養物。
  11. 前記下位運動ニューロンが、多能性幹細胞から製造された下位運動ニューロンである、請求項10に記載の培養物。
  12. 前記下位運動ニューロンが、多能性幹細胞に外来性のLhx3、Ngn2、及びIsl1を発現させて製造された下位運動ニューロンである、請求項11に記載の培養物。
  13. 下記工程を含む、筋萎縮性側索硬化症の予防又は治療薬のスクリーニング方法;
    (1)家族性ALS患者由来人工多能性幹細胞に外来性のNgn2及びFezlを発現させて培養して、該多能性幹細胞から上位運動ニューロンを製造する工程、ここで、前記上位運動ニューロンはCtip2を発現するものである
    (2)(1)で得られた上位運動ニューロンを、被験物質と接触させる工程、
    (3)(2)で被験物質と接触させた上位運動ニューロン、及び接触させなかった上位運動ニューロン(すなわち、対照細胞)を培養し、神経突起長、凝集化したTDP-43タンパク量、又はGPR50の発現量を測定する工程、
    (4)前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンの神経突起長もしくはGPR50の発現量が対照細胞の該値よりも高値である被験物質、又は、前記被験物質と接触させた上位運動ニューロンにおける凝集化したTDP-43タンパク量が対照細胞の該値よりも低値である被験物質を、筋萎縮性側索硬化症の予防又は治療薬として選択する工程。
JP2018505803A 2016-03-15 2017-03-02 上位運動ニューロンの誘導方法 Active JP6990921B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016050477 2016-03-15
JP2016050477 2016-03-15
PCT/JP2017/008276 WO2017159380A1 (ja) 2016-03-15 2017-03-02 上位運動ニューロンの誘導方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017159380A1 JPWO2017159380A1 (ja) 2019-02-14
JP6990921B2 true JP6990921B2 (ja) 2022-02-03

Family

ID=59851824

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018505803A Active JP6990921B2 (ja) 2016-03-15 2017-03-02 上位運動ニューロンの誘導方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6990921B2 (ja)
WO (1) WO2017159380A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102111025B1 (ko) * 2018-06-05 2020-05-15 고려대학교 산학협력단 신경줄기세포 배양액을 유효성분으로 함유하는 항노화 또는 주름억제용 화장료 조성물 및 이의 제조 방법

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014148646A1 (ja) 2013-03-21 2014-09-25 国立大学法人京都大学 神経分化誘導用の多能性幹細胞

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014148646A1 (ja) 2013-03-21 2014-09-25 国立大学法人京都大学 神経分化誘導用の多能性幹細胞

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
「ヒトES細胞から層構造を持った大脳皮質組織の産生に成功」, [online], 2008.11.6, 独立行政法人 理化学研究所, [2021.3.9検索], インターネット<URL: https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/press/2008/20081106_1/20081106_1.pdf>
Nat. Neurosci.,2010年,Vol.13,pp.1345-1347
Neuron,2013年,Vol.78,pp.785-798
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2005年,Vol.102, No.47,pp.17184-17189

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2017159380A1 (ja) 2019-02-14
WO2017159380A1 (ja) 2017-09-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6745498B2 (ja) 神経分化誘導用の多能性幹細胞
Zhang et al. Rapid single-step induction of functional neurons from human pluripotent stem cells
US20180072988A1 (en) Generation of functional cells from stem cells
JP6612736B2 (ja) 心筋細胞の選別方法
JP7236738B2 (ja) 神経前駆細胞の選別方法
EP3219808B1 (en) Screening method using induced neurons
US9404082B2 (en) Method for production of eosinophil from pluripotent stem cell
WO2021172542A1 (ja) 成熟心筋細胞の製造法
IL178480A (en) Methods for generating neuronal cells from human embryonic stem cells and uses thereof
JP6990921B2 (ja) 上位運動ニューロンの誘導方法
Geater et al. Cellular models: HD patient-derived pluripotent stem cells
WO2020054647A1 (ja) アストロサイトの製造方法
JP7274216B2 (ja) 細胞興奮毒性評価方法
US20220326225A1 (en) Pluripotent stem cell, nerve cell, and application thereof
WO2022102787A1 (ja) 多能性幹細胞からアストロサイトを製造する方法
US20220315890A1 (en) Nerve cell and application thereof
US20220403331A1 (en) Methods for producing neural cells
WO2020090836A1 (ja) 細胞の製造方法
Taga et al. Human induced pluripotent stem cell–derived astrocytes progenitors as discovery platforms: opportunities and challenges
JPWO2019078263A1 (ja) 多能性幹細胞から人工神経筋接合部を得る方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180913

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200210

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200313

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210316

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210513

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210715

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20211006

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20211011

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211102

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211130

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6990921

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150