以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<作業車両の全体構成>
図1は、作業車両(トラクタ)1の概略平面図である。図2は、ミッションケース12内の伝動線図である。図3は、前後進クラッチAの概略平断面図である。図4は、トラクタ1の機能ブロック図である。図5は、トラクタ1の油圧回路図である。
なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。トラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農用トラクタである。また、以下の説明において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。なお、トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において、操縦席8からステアリングホイール11へ向かう方向である(図1参照)。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定している。すなわち、作業者(操縦者ともいう)が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である(図6参照)。また、上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は、互いに直交している。
図1に示すように、トラクタ1は、前輪2と、後輪3と、駆動源としてのエンジン4と、変速装置5とを備えている。前輪2は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられている。後輪3は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられている。後輪3は、機体前部1Fのボンネット6内に搭載されたエンジン4から出力される回転動力を、ミッションケース12内の変速装置5で適宜減速して伝達され、回転動力によって駆動力を発生する。
変速装置(トランスミッション)5は、エンジン4からの回転動力を必要に応じて前輪2にも伝達する。この場合、前輪2と後輪3との四輪が駆動輪となって駆動力を発生する。すなわち、変速装置5は、二輪駆動と四輪駆動との切り換えが可能であり、エンジン4の回転動力を減速し、減速させた回転動力を前輪2および後輪3に伝達する。
トラクタ1の機体後部1Rには、ロータリ作業機などの作業機(図示省略)を装着可能な連結装置7が設けられている。連結装置7は、たとえば、左右のロワリンクや中央のトップリンクなどによってトラクタ1の機体後部1Rに作業機を連結する。トラクタ1は、たとえば、左右のリフトアームを油圧で回動することで、リフトロッドやリフトロッドと連結しているロワリンクなどを介して作業機を昇降させる。
また、トラクタ1は、機体上の操縦席8の周りがキャビン9で覆われている。トラクタ1は、キャビン9内において、操縦席8前方に設けられたダッシュボード10にステアリングホイール11が設けられ、操縦席8の左右側方や下方に、後述する前後進レバー63、副変速レバー75などの各種操作レバーや、後述するクラッチペダル61、アクセルペダル60などの各種操作ペダルが設けられている。
図2に示すように、変速装置(トランスミッション)5は、ミッションケース12(図1参照)と、ミッションケース12内に配置され、エンジン4から後輪3などへ回転動力を伝達する動力伝達機構13とを含んで構成されている。動力伝達機構13は、エンジン4の回転動力を、前輪2、後輪3および機体に連結された作業機へ伝達し、前輪2、後輪3および作業機を駆動する。
動力伝達機構13は、入力軸14と、前後進切換装置15と、主変速装置16と、高低変速装置17と、副変速装置18と、前輪変速装置19と、PTO(Power take-off)駆動装置20とを含んで構成されている。このうち、主変速装置16と高低変速装置17とは、トラクタ1の「主変速部」を構成し、副変速装置18は、トラクタ1の「副変速部」を構成する。
動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17、副変速装置18を順に介して後輪3へ伝達する。また、動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17、副変速装置18、前輪変速装置19を順に介して前輪2へ伝達する。また、動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、PTO駆動装置20を順に介して作業機へ伝達する。
入力軸14は、エンジン4の出力軸に設けられ、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。なお、以下では、動力伝達の方向を、エンジン4側を動力伝達上流側と規定し、最終的な出力先である前輪2、後輪3および作業機側をそれぞれ動力伝達下流側と規定している。
前後進切換装置15は、エンジン4から伝達される回転動力を、前進方向回転または後進方向回転に切り換える。前後進切換装置15は、前進側油圧多板クラッチ(以下、前進クラッチという)A1と、後進側油圧多板クラッチ(以下、後進クラッチという)A2と、前進側ギヤ15aと、後進側ギヤ15bとを備えている。前進クラッチA1と後進クラッチA2とは、「前後進クラッチA」を形成する。
前後進クラッチAは、前進クラッチA1および後進クラッチA2の断続(接続/接続解除)状態に応じて、入力軸14に伝達された回転動力を、メイン軸23へ伝達する。前後進クラッチAは、前進クラッチA1が接続状態の場合に、前進側ギヤ15aが正転ギヤ50aと噛合してメイン軸23を正転させる。また、前後進クラッチAは、後進クラッチA2が接続状態の場合に、後進側ギヤ15bが逆転ギヤ50bと噛合してメイン軸23を逆転させる。
前後進クラッチAは、メイン軸23の正転および逆転によってトラクタ1の前進と後進とを切り換える。なお、前後進クラッチAは、たとえば、操縦席8(図1参照)において前後進レバー63が操作されることで、油圧制御によって、前進および後進を切り換える。また、クラッチペダル61を踏み込み操作することで、前進クラッチA1と後進クラッチA2とを共に接続解除状態(ニュートラル状態)にする。
主変速装置16は、エンジン4からの回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速する。主変速装置16は、第1主変速クラッチB1と、第2主変速クラッチB2と、複数の変速段として、1速ギヤ16aと、2速ギヤ16bと、3速ギヤ16cと、4速ギヤ16dとを備えている。第1主変速クラッチB1は、油圧多板クラッチ(以下、1速クラッチという)B11と、油圧多板クラッチ(以下、3速クラッチという)B13とを備え、1速クラッチB11側に1速ギヤ16aが設けられ、3速クラッチB13側に3速ギヤ16cが設けられている。
また、第2主変速クラッチB2は、油圧多板クラッチ(以下、2速クラッチという)B22と、油圧多板クラッチ(以下、4速クラッチという)B24を備え、2速クラッチB22側に2速ギヤ16bが設けられ、4速クラッチB24側に4速ギヤ16dが設けられている。第1主変速クラッチB1と第2主変速クラッチB2とは、「主変速クラッチB」を形成する。
主変速クラッチBは、第1主変速クラッチB1および第2主変速クラッチB2の断続状態に応じて、エンジン4からの回転動力を1速ギヤ16a〜4速ギヤ16dのいずれかの変速比で変速して後段、すなわち、動力伝達下流側へ伝達する。なお、主変速クラッチBは、たとえば、操縦席8において主変速レバーまたは主変速増速ボタン121や主変速減速ボタン122(図8参照)が操作されることで、1速ギヤ16a〜4速ギヤ16dのうちの1つを選択して変速する。なお、このような変速操作は、トラクタ1の走行中に行うことができる。
高低変速装置17は、エンジン4からの回転動力を、高速段または低速段で変速する。高低変速装置17は、Hi(高速)側油圧多板クラッチ(以下、Hiクラッチという)C1と、Lo(低速)側油圧多板クラッチ(以下、Loクラッチという)C2と、Hi(高速)側ギヤ17aと、Lo(低速)側ギヤ17bとを備えている。HiクラッチC1とLoクラッチC2とは、「Hi−LoクラッチC」を形成する。Hi−LoクラッチCは、HiクラッチC1およびLoクラッチC2の断続状態に応じて、メイン軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を変更して変速軸24へ伝達する。
Hi−LoクラッチCは、主変速クラッチBによって変速された回転動力を、Hi側ギヤ17aの変速比またはLo側ギヤ17bの変速比で変速して後段、すなわち、動力伝達下流側へ伝達する。なお、Hi−LoクラッチCは、たとえば、操縦席8(図1参照)において主変速レバーまたは主変速増速ボタン121や主変速減速ボタン122が4速と5速との間で操作されると、油圧制御によって、自動的にHi側とLo側とに切り換えられ、Hi側4段、Lo側4段の8段変速を構成している。なお、このような変速操作は、トラクタ1の走行中に行うことができる。
副変速装置18は、エンジン4から、たとえば、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17を順に介して伝達される回転動力を複数の変速段のいずれかに変速可能である。副変速装置18は、第1副変速機(第1変速シフタ)D1と、第2副変速機(第2変速シフタ)D2とを備えている。なお、第1副変速機D1と第2副変速機D2とは、「副変速機D」を形成する。副変速機Dは、変速軸24に伝達された回転動力を、第1副変速機D1、ギヤ18a,18b、ギヤ18c,18d、第2副変速機D2、ギヤ18e,18f、ギヤ18g,18hを介して変速して変速軸25へ伝達する。副変速機Dは、エンジン4から伝達されて主変速装置16などで変速された回転動力を、たとえば、4段変速して後輪3側へ伝達する。
すなわち、メイン軸23の回転は、4段変速する主変速クラッチBと、高低2段に変速するHi−LoクラッチCと、機械式に4段変速する副変速機Dとによって変速され、最終的に変速軸25へ伝達される。図2に示す例では、変速装置5(動力伝達機構13)は、変速段が、4段変速、2段変速、4段変速となるため、4×2×4=32の合計32段に変速可能である。なお、主変速装置16の1速〜8速は、4段変速する主変速クラッチBと、高低2段に変速するHi−LoクラッチCとを組み合わせた変速段である。
また、変速装置5(動力伝達機構13)は、変速軸25に伝達された回転動力を、後輪デフ26、車軸(ドライブシャフト)27、遊星歯車機構28などを介して後輪3へ伝達する。この結果、トラクタ1は、エンジン4からの回転動力によって、後輪3が駆動輪として回転駆動する。
前輪変速装置19は、入力軸14に伝達された回転動力を、前輪2側へ伝達する。前輪変速装置19は、前輪増速クラッチE1と、前輪等速クラッチE2とを備えている。前輪増速クラッチE1と前輪等速クラッチE2とは、「前輪変速クラッチ(4WDクラッチ)E」を形成する。前輪変速クラッチEは、第1前輪駆動軸29aに設けられ、前輪等速クラッチE2が接続状態の場合に、第1前輪駆動軸29aの回転を等速で第2前輪駆動軸29bへ伝達する。また、前輪変速クラッチEは、前輪増速クラッチE1が接続状態の場合に、ギヤ19a,19b、ギヤ19c,19dを介して、第1前輪駆動軸29aの回転を増速して第2前輪駆動軸29bへ伝達する。
前輪変速クラッチEは、第2前輪駆動軸29bに伝達された回転動力を、前輪デフ30、車軸(ドライブシャフト)31、垂直軸32、遊星歯車機構33などを介して前輪2へ伝達する。これにより、トラクタ1は、左右の前輪2および左右の後輪3の四輪駆動で走行可能となる。
すなわち、変速軸25から伝達される前輪2の回転は、前輪変速クラッチEで後輪3よりも高速で回転可能となる。また、副変速機Dは、たとえば、1速(超低速)、2速(低速)、3速(中速)、4速(高速)に変速可能となるが、2速〜4速の間の変速については、シンクロ機構が設けられているため、トラクタ1の走行中に変速可能である。なお、副変速機Dを3段変速仕様とすることもできる。3段変速仕様については、機種に応じて1速(低速)、2速(中速)、3速(高速)仕様や2速(低速)、3速(中速)、4速(高速)仕様などがあり、仕様変更することもできる。
PTO駆動装置20は、エンジン4からの回転動力を変速して機体後部1R(図1参照)のPTO軸34から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動する。PTO駆動装置20は、PTOクラッチ装置21と、PTO変速装置22と、PTO軸34とを備えている。PTO駆動装置20は、機体後部1Rの作業機を駆動する駆動状態と、作業機の駆動を停止した非駆動状態とを切り換える。
PTOクラッチ装置21は、PTO軸34側への動力の伝達と遮断とを切り換える。PTOクラッチ装置21は、PTO油圧多板クラッチ(以下、「PTOクラッチ」という)Fと、ギヤ21aとを備えている。ギヤ21aは、入力軸14と一体的に回転可能に設けられたギヤ35と噛合している。PTOクラッチFは、接続状態となることで、PTO軸34側へと動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ35を介してギヤ21aに伝達された回転動力を伝達軸36へ伝達する。
また、PTOクラッチFは、接続解除状態となることで、PTO軸34側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ21aに伝達された回転動力の伝達軸36側への伝達を遮断する。なお、PTOクラッチFは、たとえば、作業者によって車内PTOオン/オフスイッチ、または車外PTOオン/オフスイッチがオン/オフされることで、油圧制御によって、PTO駆動状態またはPTO非駆動状態に切り換える。
PTO変速装置22は、PTO軸34側に動力を伝達する場合に変速するものである。PTO変速装置22は、第1PTO変速クラッチ(第1変速シフタ)G1と、第2PTO変速クラッチ(第2変速シフタ)G2とを備えている。第1PTO変速クラッチG1は、ギヤ22a側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37aとギヤ22aとを介してPTOクラッチ軸38側へと低速で伝達する。また、第1PTO変速クラッチG1は、ギヤ22b側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37bとギヤ22bとを介してPTOクラッチ軸38側へと中速で伝達する。
第2PTO変速クラッチG2は、ギヤ22c側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37cとギヤ22cとを介してPTOクラッチ軸38側へと高速で伝達する。また、第2PTO変速クラッチG2は、ギヤ22d側に接続されると、伝達軸37の回転を、カウンタ軸39に設けられたギヤ39aとギヤ22dとを介してPTOクラッチ軸38側へと逆回転で伝達する。PTOクラッチ軸38に伝達された動力は、接続軸40を介してPTO軸34を回転駆動する。
ここで、図3を参照して、前後進クラッチAを例として、油圧クラッチの構造について説明する。上記したように、前後進クラッチAは、正逆クラッチであり、入力軸14(図2参照)の回転動力を正転または逆転させて副変速軸(メイン軸)23へと伝達する。
図3に示すように、前後進クラッチAは、正転クラッチギヤ(前進側ギヤ)15aに設けられたクラッチ軸48aを備えている。クラッチ軸48aは、軸受47aおよび軸受47bによって副変速軸23に回動自在に支持されている。クラッチ軸48aの後方には複数の内側クラッチ板48bが配置されている。また、クラッチ軸48aは、後部がクラッチケース48dで覆われており、クラッチケース48dの前部内側に設けられた押え板48eが複数の内側クラッチ板48bの前端よりも動力伝達下流側に位置して配置されている。
クラッチケース48d内には、複数の外側クラッチ板48cが隣り合う内側クラッチ板48bの間に挟まれるように交互に配置されている。なお、内側クラッチ板48bは、内側に複数の歯を有しているため、クラッチ軸48aと一体となって回転する。また、外側クラッチ板48cは、外側に複数の歯を有しているため、クラッチケース48dと一体となって回転する。
クラッチケース48d内には、クラッチ軸48aの後方にバネ48gによって動力伝達上流側へ付勢されたクラッチピストン48fが設けられている。クラッチピストン48fの後部には、作動油が供給されるシリンダ部48hの空間が形成されている。このため、前後進クラッチAは、シリンダ部48hに作動油が供給され、供給された作動油の圧力がバネ48gの弾性力を上回るとクラッチピストン48fが前進し、内側クラッチ板48bと外側クラッチ板48cとを、押え板48eとの間で圧着させる。
圧着された内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cは、摩擦によって互いに動力を伝達するようになり、正転クラッチギヤ15aから伝達されてきた回転動力がクラッチケース48dへ伝達され、クラッチケース48dに対してスプライン嵌合している副変速軸23が回転する。
また、シリンダ部48hに作動油(圧油)が供給されず圧力が付与されていない状態では、クラッチピストン48fがバネ48gの弾性力によって後退するため、内側クラッチ板48bと外側クラッチ板48cとは圧着されない。このような場合、内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cが互いに動力を伝達しないので、PTOクラッチF(図2参照)が動力伝達を遮断した状態となり、正転クラッチギヤ15aが回転しても副変速軸23は回転しない。
なお、クラッチケース48dを挟んで、副変速軸23とは反対側には逆転クラッチギヤ(後進側ギヤ)15bが設けられており、上記した正転クラッチギヤ15aと同様に後進側の動力が伝達(および遮断)される。また、Hi−LoクラッチCや前輪変速クラッチ(4WDクラッチ)Eにおいても、上記構成と同様の構成のものが用いられている。なお、PTOクラッチFにおいては、上記構成の片側半分の構成のものが用いられている。
図4に示すように、トラクタ1の制御系(制御部)は、エンジン4(図2参照)の出力を制御する駆動輪2,3(図2参照)の回転を制御して走行速度を制御する走行制御部(走行系ECU(Electronic Control Unit)または変速制御部ともいう)100と、エンジン4を制御するエンジン制御部(エンジンECUともいう)100aと、作業機の昇降を制御する作業機昇降制御部(作業機昇降系ECUともいう)100bとを備えている。なお、図4には、トラクタ1にロータリ作業機が取り付けられている場合を例に示している。
走行制御部100には、上記した各クラッチA,B(B11,B13,B22,B24),Cの圧着状態を測定する圧力センサ、すなわち、1速クラッチ圧力センサ111、2速クラッチ圧力センサ112、3速クラッチ圧力センサ113、4速クラッチ圧力センサ114、高速(Hi)クラッチ圧力センサ115、低速(Lo)クラッチ圧力センサ116、前進クラッチ圧力センサ117、後進クラッチ圧力センサ118の各オン/オフ信号が入力される。
また、走行制御部100には、前後進レバー操作位置センサ119からの操作位置、副変速装置18(図2参照)による変速操作(副変速装置18によって変速された変速段)を検出する副変速センサ(副変速レバー操作位置センサ)120からの操作位置の各検出信号が入力される。また、走行制御部100には、主変速増速ボタン121からの操作位置、主変速減速ボタン122からの操作位置の各検出信号が入力される。また、走行制御部100には、クラッチペダルセンサ123からのクラッチペダル61(図6参照)の踏み込み操作位置の検出信号、4WD切換ダイヤル70の指示ダイヤル値などが入力される。なお、トラクタ1に、主変速レバーによる変速操作を検出する主変速レバー操作位置センサが設けられている場合は、走行制御部100には、主変速レバー操作位置センサからの操作位置の検出信号が入力される。
また、走行制御部100には、アクセルペダル60(図6参照)の踏み込み操作を検出するアクセルセンサ125からの踏み込み操作位置の検出信号、車速センサ126からの走行速度信号が入力される。また、走行制御部100には、ミッションオイル油温センサからのミッションケース12(図1参照)内のオイル温度、副変速レバー75(図8参照)からの操作位置の検出信号、アクセル変速設定スイッチの設定信号、後述するクラッチ圧(昇圧パターンまたは昇圧カーブ)を設定する昇圧パターン調節スイッチ76の指示ダイヤル値などが入力される。
また、走行制御部100からは、前進切換ソレノイド127、前後進昇圧ソレノイド128、後進切換ソレノイド129、クラッチペダルソレノイド130の切り換えおよび昇圧信号が前後進クラッチAへと出力される。また、走行制御部100からは、1速ソレノイド131から1速クラッチB11、3速ソレノイド133から3速クラッチB13、2速ソレノイド132から2速クラッチB22、4速ソレノイド134から4速クラッチB24へとそれぞれ切り換えおよび昇圧信号が出力される。また、走行制御部100からは、1,3速昇圧ソレノイド135、2,4速昇圧ソレノイド136からの切り換えおよび昇圧信号が出力される。また、走行制御部100からは、高速(Hi)昇圧ソレノイド137、低速(Lo)昇圧ソレノイド138からの切り換えおよび昇圧信号が高低(Hi−Lo)クラッチCへと出力される。
作業機昇降制御部100bには、作業機(ロータリ作業機)の昇降を検知する作業機昇降センサ140からの昇降検知信号、リフトアームセンサ141からのリフト位置信号が入力される。また、作業機昇降制御部100bからは、メイン上昇ソレノイド142からの上昇信号、メイン下降ソレノイド143からの下降信号が作業機昇降シリンダ(メインシリンダ)144へ出力される。
走行制御部100、エンジン制御部100a、作業機昇降制御部100bからは、各出力信号のうち、走行速度、変速位置、エンジン水温および他のデータ信号がステアリングホイール11(図1参照)の前方に設けられた表示部(メータパネル)150や操作パネル151に表示される。なお、メータパネル150には、たとえば、入力スイッチ152からの操作信号が入力される。また、走行制御部100、エンジン制御部100a、作業機昇降制御部100bは、たとえばCAN(Controller Area Network)通信によって制御信号の交信を行う。
また、走行制御部100、エンジン制御部100a、作業機昇降制御部100bの間には、通信ユニット160が設けられ、タブレットPCやスマートフォンなどのモバイル端末MTとも交信可能に構成されている。なお、上記したCANは、有線だけでなく無線通信を含むものとする。また、モバイル端末MTに、GPSが内蔵(MTa)されていてもよい。また、作業機昇降制御部100bと通信ユニット160との間には、作業機用コネクタ(たとえば、AGポート)161が設けられている。これにより、トラクタ1に連結される作業機の種類や型式などの特定などを行うことができる。
また、図5に示すように、トラクタ1では、エンジン4(図2参照)の回転動力により作動するポンプPがサクションフィルタなどを介してミッションケース2(図2参照)内の潤滑油を吸い上げ、油圧回路内に作動油として圧油が供給される。
図5に示すように、トラクタ1は、主変速クラッチB(第1主変速クラッチB1および第2主変速クラッチB2)、Hi−LoクラッチC、前後進クラッチAの圧着状態を調節可能に構成されている。このような各クラッチB(B1,B2),C,Aの圧着状態の調節は、各クラッチB(B1,B2),C,Aに対応する各アクチュエータ201,202,203,204,205,206,207,208を制御して行う。
第1主変速クラッチB1では、アクチュエータ201が1速ソレノイド131を介して供給された油圧によって1速クラッチB11を駆動するとともに、アクチュエータ203が3速ソレノイド133を介して供給された油圧によって3速クラッチB13を駆動する。なお、第1主変速クラッチB1に供給される作動油の流量は、比例制御弁である1,3速昇圧ソレノイド135によって調節可能に構成されている。
第2主変速クラッチB2では、アクチュエータ202が2速ソレノイド132を介して供給された油圧によって2速クラッチB22を駆動するとともに、アクチュエータ204が4速ソレノイド134を介して供給された油圧によって4速クラッチB24を駆動する。なお、第1主変速クラッチB1に供給される作動油の流量は、比例制御弁である2,4速昇圧ソレノイド136によって調節可能に構成されている。
Hi−LoクラッチCでは、アクチュエータ205が高速(Hi)昇圧ソレノイド137を介して供給された油圧によってHiクラッチC1を駆動するとともに、アクチュエータ206が低速(Lo)昇圧ソレノイド138を介して供給された油圧によってLoクラッチC2を駆動する。
前後進クラッチAでは、アクチュエータ207が前進切換ソレノイド127を介して供給された油圧によって前進クラッチA1を駆動するとともに、アクチュエータ208が後進切換ソレノイド129を介して供給された油圧によって後進クラッチA2を駆動する。なお、前進クラッチA1および後進クラッチA2に供給される作動油の流量は、前後進昇圧ソレノイド128またはクラッチペダルソレノイド130によって調節可能に構成されている。
また、各アクチュエータ201,203,202,204,205,206,207,208によって駆動される各クラッチ(第1主変速クラッチB1、第2主変速クラッチB2、Hi−LoクラッチC、前後進クラッチA)の圧着状態は、各ソレノイド131,133,132,134,137,138,127,129と各アクチュエータ201,203,202,204,205,206,207,208との間に設けられた各圧力センサ(1速クラッチ圧力センサ111、2速クラッチ圧力センサ112、3速クラッチ圧力センサ113、4速クラッチ圧力センサ114、高速クラッチ圧力センサ115、低速クラッチ圧力センサ116、前進クラッチ圧力センサ117、後進クラッチ圧力センサ118)によってそれぞれ測定される。これにより、各クラッチB(B1,B2),C,Aの圧着を調節することができる。
また、トラクタ1は、キャビン9内の操縦部において、操縦席8の周りに上記したステアリングホイール11やメータパネル150の他、アクセルペダル60、クラッチペダル61、ブレーキペダル62などの各種操作ペダルや、前後進レバー63、副変速レバー75などの各種操作レバーが設けられている。また、操縦席8の周りには、各種操作機器が設けられている。
<操縦部>
次に、図6、図7A、図7Bおよび図8を参照して、操縦席8の周りに設けられた各種操作機器について説明する。図6は、操縦席8の前方の概略斜視図である。図7Aおよび図7Bは、操作スイッチの説明図である。図8は、操縦席8の右側方の概略斜視図である。なお、各図に示す操作機器の種類や配置などは一例であり、これに限定されるものではない。
図6に示すように、操縦席8の前方には、ステアリングホイール11が設けられている。また、ステアリングホイール11が取り付けられたハンドルポスト66の下部左方にはクラッチペダル61が設けられ、ハンドルポスト66の下部右方にアクセルペダル60およびブレーキペダル62が設けられている。ブレーキペダル62は、左右のブレーキペダル62L,62Rを備えている。
ハンドルポスト66の上部左方には前後進レバー63が設けられている。ハンドルポスト66の上部右方にはウィンカーレバー67が設けられている。なお、ハンドルポスト66の上部右方には、ウィンカーレバー67の他、ワンタッチ昇降レバーなどが設けられている。なお、ワンタッチ昇降レバーは、作業機連結用のリフトアームをポジションレバーの操作位置または最上位置へワンタッチで移動させるように操作する操作レバーである。また、ハンドルポスト66にはPTO変速レバーなどが設けられている。
また、図6に示すように、ステアリングホイール11の前方にはダッシュボードカバー68が設けられている。ダッシュボードカバー68には、操縦席8に着座した作業者(操縦者)から見えるようにメータパネル150が設けられている。メータパネル150には表示画面(たとえば、液晶モニタ)155やエンジン回転計(タコメータ)156などが設けられている(図11A、図11B参照)。なお、表示画面155では、たとえば、現在選択されている変速段を表示する変速段表示、燃料消費率表示および走行速度表示などが表示される。このうち、燃料消費率表示と走行速度表示とは一定時間ごとに切り換わるように表示されてもよい。
また、たとえば、メータパネル150には、省エネモニタランプが設けられてもよい。省エネモニタランプは、エンジンモード選択スイッチで低燃費のエンジン出力カーブを選択している場合に点灯する。また、たとえば、ダッシュボードカバー68のたとえば右部には、走行/作業切換スイッチやエンジンモード選択スイッチなどが設けられている。なお、エンジンモード選択スイッチが押されると、エンジン4(図1参照)が低燃費のエンジン出力カーブで制御される。
図6に示すように、ハンドルポスト66の右方には、4WD切換ダイヤル70および入力スイッチ71が設けられている。図7Aに示すように、4WD切換ダイヤル70は、4WDクラッチE(図2参照)によって自動で4WDまたは2WDに切り換えるダイヤルスイッチである。
4WD切換ダイヤル70は、回転させることで、たとえば、「オート4WD」、「2WD」、「4WD」、「スーパーフルターン」、「2WDターン」の各走行モードに切り換える。4WD切換ダイヤル70を「オート4WD」にあわせると、通常は2WDで駆動するが、所定の条件(たとえば、ぬかるみ、凹凸道、急な坂道などの走行時、制動時、車速が0.5km/h未満の低速時、ステアリングホイール11をスーパーフルターン位置まで回した時など)を満たすことで自動的に4WDになる。なお、所定の条件から外れると、自動的に2WDに戻る。「オート4WD」モードは、たとえば、路上走行、圃場への出入り、トラックなどの積み降ろし、傾斜地作業やフロントローダ作業を行う場合に用いられる。
4WD切換ダイヤル70を「2WD」にあわせると、通常2WDで駆動し、制動時には自動的に4WDになる。4WD切換ダイヤル70を「4WD」にあわせると、通常4WDで駆動する。4WD切換ダイヤル70を「スーパーフルターン」にあわせると、通常は4WDで駆動し、ステアリングハンドル11(図6参照)を旋回操作すると、前輪2の回転が速くなり、小回りが利いて素早い旋回が可能となる。また、4WD切換ダイヤル70を「2WDターン」にあわせると、通常は4WDで駆動し、ステアリングハンドル11を旋回操作すると、前輪2の駆動が解除されて後輪3のみの2輪駆動(2WD)となり、小回りが利いて素早い旋回が可能となる。「2WDターン」モードは、前輪2の回転によって圃場を荒らしたくない場合に使用すると有効である。
また、たとえば、ハンドルポスト66の右方には、ワンタッチ耕耘スイッチ72(図7B参照)および入力スイッチが設けられてもよい。図7Bに示すように、ワンタッチ耕耘スイッチ72は、トラクタ1の駆動状態や様々な制御の設定をワンタッチで行えるスイッチである。ワンタッチ耕耘スイッチ72は、たとえば、「走行」、「こだわり」、「耕うん」の各モードに切り換える。ワンタッチ耕耘スイッチ72を「走行」にあわせると、上記した「オート4WD」、「4WD」、「2WD」のうちいずれか設定された走行モードが作動する。
ワンタッチ耕耘スイッチ72を「耕うん」にあわせると、たとえば、自動水平、四輪駆動、前輪増速(「スーパーフルターン」モード)など、一般的な耕耘作業に便利とされる機能が作動する。また、ワンタッチ耕耘スイッチ72を「こだわり」にあわせると、耕耘に必要な機能を作業者が設定することができる。
また、図8に示すように、操縦席8の右方には、副変速レバー75、主変速増速ボタン121、主変速減速ボタン122、昇圧パターン調節スイッチ(以下、変速感度ダイヤルという)76などが設けられている。また、操縦席8の右方には、ポジションレバー77、アクセルレバー80が設けられている。ポジションレバー77は、上記したリフトアームの昇降を操作するものである。また、操縦席8の右方には、PTO自動/手動切換スイッチ78や、PTO入切スイッチ、エンジン回転指示部、回転数増加調節スイッチ、回転数減少調節スイッチなどの操作スイッチが設けられている。なお、各操作スイッチのうち、PTO自動/手動切換スイッチ78では、上記したリフトアームが一定以上の高さまで上昇すると、自動でPTOクラッチF(図2参照)を接続解除する。また、操縦席8の右方には、この他の操作スイッチなどが配置された操作パネルを収納する操作パネル収納ボックス79が設けられている。
ここで、走行制御部100(図4参照)は、前後進クラッチA、主変速クラッチB(図2参照)などの油圧クラッチの接続圧力(クラッチ圧)を制御して、昇圧パターン(または、昇圧カーブともいう)を設定する。走行制御部100は、油圧クラッチの接続時における昇圧パターンを予め記憶部などに記憶する。
<油圧クラッチ接続時の昇圧パターン制御>
次に、図9A、図9Bおよび図9Cを参照して、クラッチ圧の昇圧パターン変更の一例を説明する。図9Aは、主変速昇圧パターン変更の説明図である。図9Bは、前後進昇圧パターン変更の説明図である。図9Cは、クラッチペダルの踏み込み操作による前後進昇圧パターン変更の説明図である。なお、各図には、各昇圧パターン変更の一例を模式的なグラフで示している。
トラクタ1では、走行制御部100(図4参照)によって、たとえば、変速時に油圧クラッチのクラッチ圧を一旦下げてから徐々に昇圧するような昇圧パターンで制御することで、変速ショックを抑制する。この場合、変更感度ダイヤル76(図8参照)を操作して(回して)、変速時における昇圧パターンを変更する。
図9Aに示すように、主変速昇圧パターン変更を行う場合、ベース圧力Pb、初期圧力P0(時間T0の圧力値)、到達圧力Pm(時間Tmの圧力値)をそれぞれ所定の割合増加させる。また、図9Bに示すように、前後進昇圧パターン(以下、リバース昇圧パターンという)変更を行う場合、時間t0〜t13に対応する圧力値P0〜P13をそれぞれ所定の割合増加させる。また、図9Cに示すように、クラッチペダル61(図6参照)の踏み込み操作によって前後進昇圧パターン(以下、クラッチ昇圧パターンという)変更を行う場合、クラッチペダルセンサ123(図4参照)の検出値、すなわち、クラッチペダル61の踏み込み操作量ごとに圧力値を所定の割合増加させる。
これまで、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを変更する場合、たとえば、メータパネル150のチェックモードなどで変更する必要があった。このため、高負荷作業を行う場合にこれらの昇圧パターンを操縦者が手軽に変更することができず、発進時や変速時にショックが発生して、走行フィーリングが悪化することがあった。そこで、変速感度ダイヤル76を操作することで、変速昇圧パターンに加えてリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを任意に変更可能とした。
走行制御部100(図4参照)は、変速感度ダイヤル76が操作されると、操作量に応じて、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを変更する制御を行う。このような構成によれば、高負荷作業を行う場合、操縦者が変速感度ダイヤル76を操作することで、発進時や変速時の昇圧パターンを変更することができ、前後進レバー63(図6参照)による発進操作時やクラッチペダル61(図6参照)の踏み込み操作時のフィーリング、すなわち、走行フィーリングをさらに向上させることができる。
なお、図10Aは、昇圧パターン調節スイッチ(変速感度ダイヤル)76の指示ダイヤル値に対する変速時の昇圧補正量を示す表である。図10Aに示すように、変速時において、変速感度ダイヤル76の指示ダイヤル値に対する好適な昇圧補正量は、たとえば、指示ダイヤル値が0〜9では、副変速が路上における速度すなわち「高速段」以外、副変速が路上における速度すなわち「高速段」のいずれも「0」となる。また、指示ダイヤル値が10〜512では、副変速が「高速段」以外では「1/100*指示ダイヤル値」、副変速が「高速段」では「1/60*指示ダイヤル値」となる。また、指示ダイヤル値が513〜1000では、副変速が「高速段」以外では「2/35*指示ダイヤル値−24」、副変速が「高速段」では「1/60*指示ダイヤル値」となる。また、指示ダイヤル値が1001〜1023では、副変速が「高速段」以外では「全圧」、副変速が「高速段」では「1/60*指示ダイヤル値」となる。なお、油温が20℃未満の場合は、指示ダイヤル値を「0」とすることが好ましい。
また、図10Bは、昇圧パターン調節スイッチ(変速感度ダイヤル)76の指示ダイヤル値に対する発進時の昇圧補正量を示す表である。図10Bに示すように、発進時において、変速感度ダイヤル76の指示ダイヤル値に対する好適なリバース昇圧およびクラッチ昇圧補正量は、たとえば、指示ダイヤル値が0〜512では、副変速が「高速段」以外では「1/23*指示ダイヤル値」、副変速が「高速段」では「0」となる。また、指示ダイヤル値が513〜1023では、副変速が「高速段」以外では「1/10*指示ダイヤル値−35」、副変速が「高速段」では「0」となる。
この場合、変速感度ダイヤル76を所定の指示ダイヤル値以上操作した場合にリバース昇圧カーブおよびクラッチ昇圧カーブの勾配を変化させるように構成することが好ましい。このような構成によれば、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを変更したい状況は高負荷作業時であるため、たとえば、変速感度の補正が一定値以上の場合に指示ダイヤル値に対する接続圧力の勾配を大きくすることで、高負荷作業に適した走行フィーリングを実現することができる。
ここで、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力が増加した状態で、通常走行すなわち副変速装置18が「高速段」で走行すると大きなショックが発生してしまう可能性がある。このため、走行制御部100は、副変速レバー75(図8参照)の操作位置を検出する副変速レバー操作位置センサ120(図4参照)によって副変速装置18が「高速段」に変速されたことが検出されている場合には、変速感度ダイヤル76によって変更された昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。
このような構成によれば、副変速装置18が「高速段」に変速操作されているときは路上走行などの低負荷走行であることが想定されるため、変速感度ダイヤル76によって高負荷走行を想定した昇圧パターンに変更されている場合には発進時や変速時にショックが発生してしまうおそれがあるので、変更された昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングをさらに向上させることができる。
すなわち、走行制御部100は、前後進レバー63が前進側に操作された場合における発進時のリバース昇圧パターンを予め記憶部などに記憶する。走行制御部100は、副変速レバー75の操作位置を検出する副変速レバー操作位置センサ120によって、副変速装置18が「高速段」に変速されたことが検出されている場合には、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。
このような構成によれば、高負荷走行、低負荷走行のいずれであっても、発進時のショックを抑制することができる。これにより、走行フィーリングをさらに向上させることができる。なお、後進時に高負荷走行する(高負荷の作業を行う)ことがほとんどないことから、変更されたリバース昇圧パターンを後進時には一時的に無効にすることで、発進時のショックを抑制することができる。これにより、走行フィーリングをさらに向上させることができる。
また、走行制御部100は、クラッチペダル61が踏み込み操作された場合における前後進クラッチAの接続時のクラッチ昇圧パターンを予め記憶部などに記憶する。走行制御部100は、副変速レバー75の操作位置を検出する副変速レバー操作位置センサ120によって、副変速装置18が「高速段」に変速されたことが検出されている場合には、変速感度ダイヤル76によって変更されたクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。
このような構成によれば、クラッチペダル61の踏み込み操作による前後進クラッチAの接続時におけるショック(発進時のショック)を抑制することができる。これにより、走行フィーリングをさらに向上させることができる。
また、走行制御部100は、主変速クラッチBによる変速時における変速先の主変速昇圧パターンを予め記憶部などに記憶する。走行制御部100は、副変速レバー75の操作位置を検出する副変速レバー操作位置センサ120によって、副変速装置18が「高速段」に変速されたことが検出されている場合には、変速感度ダイヤル76によって変更された主変速昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。
このような構成によれば、高負荷走行、低負荷走行のいずれであっても、主変速クラッチBの接続時におけるショック、いわゆる変速ショックを抑制することができる。これにより、走行フィーリングをさらに向上させることができる。
また、走行制御部100は、副変速装置18が「中速」に変速され、かつ、路上速または作業速をオン/オフで切り換え可能なATシフトで「入」が選択されている場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。このような構成によれば、高負荷走行を想定した昇圧パターンに変更されている場合には発進時や変速時にショックが発生してしまうおそれがあるので、変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、安全性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、副変速装置18が「中速」に変速され、かつ、主変速装置16が「4速」以上に変速されている場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。このような構成によれば、高負荷走行を想定した昇圧パターンに変更されている場合には発進時や変速時にショックが発生してしまうおそれがあるので、変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、安全性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、上記した4WD切換ダイヤル70による「オート4WD」または「2WD」モード(図7A参照)が選択されている場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。このような構成によれば、高負荷走行を想定した昇圧パターンに変更されている場合には発進時や変速時にショックが発生してしまうおそれがあるので、変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、安全性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、上記したワンタッチ耕耘スイッチ72による「走行」モード(図7B参照)が選択されている場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。このような構成によれば、高負荷走行を想定した昇圧パターンに変更されている場合には発進時や変速時にショックが発生してしまうおそれがあるので、変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、安全性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、作業機昇降センサ140(図4参照)によって作業機の上昇が検出されてから一定時間経過した場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。このような構成によれば、作業機を上昇させて一定時間経過した(すなわち、作業機による作業を行っていない)場合に変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にすることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、作業性を向上させることができる。
なお、この場合、走行制御部100は、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力を、一気に無効にせずに時間経過と共に徐々に減少させるように制御してもよい。このような構成によって、作業機を上昇させて一定時間経過した(すなわち、作業機による作業を行っていない)場合に変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力を減少させることで、発進時や変速時にショックが発生するのを防ぐことができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、作業性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、上記したような作業機昇降センサ140によって作業機の上昇が検出されてから一定時間経過した場合に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを無効にするかまたは徐々に減少させる制御を行う場合、作業機が下降されると、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを、変速感度ダイヤル76の指示ダイヤル値に対応して補正した昇圧パターンに戻す制御を行う。
このような構成によれば、作業機を下降させて作業を開始(再開)する場合に、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを補正した昇圧パターンに自動で戻すことで、作業内容に適したリバース昇圧パターンあるいはクラッチ昇圧パターンで作業を始めることができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、作業性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、リニアシフトが「後進」(作業機自動上昇)、かつ、副変速装置18が「低速」または「超低速」に変速されたことが検出されている場合、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを一時的に無効にする制御を行う。
このような構成によれば、たとえば、トラクタ1の駐車作業時や作業機の取り外し作業時に、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンのままによる発進時のショックを抑制することができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、安全性を向上させることができる。
図11Aおよび図11Bは、表示画面115の表示例を示す図である。上記したように、走行制御部100は、変速感度ダイヤル76を所定の指示ダイヤル値以上操作した場合にリバース昇圧カーブおよびクラッチ昇圧カーブの勾配を変化させるように制御する場合があるが、変速感度ダイヤル76による指示ダイヤル値が所定の指示ダイヤル値よりも大きい場合に発進時のショックに注意するよう操縦者に警告表示する構成としてもよい。たとえば、図11Aに示すように、走行制御部100は、メータパネル150の表示画面155に警告文を表示する制御を行う。リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力が増加している状態では低負荷での発進時に大きなショック(発進ショック)が発生する可能性があるため、警告することで危険を回避することができる。すなわち、安全性を向上させることができる。
また、上記したように、走行制御部100は、変速感度ダイヤル76を所定の指示ダイヤル値以上操作した場合にリバース昇圧カーブおよびクラッチ昇圧カーブの勾配を変化させるように制御する場合があるが、変速感度ダイヤル76による指示ダイヤル値が所定の指示ダイヤル値よりも大きい状態で、副変速装置18が「高速段」に変速された場合に、たとえば、メータパネル150に警告表示する構成としてもよい。また、走行制御部100は、警告表示と共に、ブザーなどの警告音を発する構成としてもよい。リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力が増加している状態で路上走行(副変速「高速」)するのは危険を伴うため、警告することで危険を回避することができる。すなわち、安全性を向上させることができる。
また、走行制御部100は、変速感度ダイヤル76によってリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを変更する制御を行うが、この場合、変速感度ダイヤル76の指示ダイヤル値に対するリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力勾配を、副変速装置18の変速段(たとえば、「超低速段」、「低速段」、「中速段」、「高速段」)ごとに切り換えるようにしてもよい。たとえば、作業内容が同じでも車速帯によって負荷が変わることがあるため、上記したように副変速装置18の変速段ごとにリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力勾配を切り換えることで、作業内容ごとに最適な昇圧パターンを得ることができる。これにより、作業性を向上させることができる。
また、たとえば、図11Bに示すように、メータパネル150において、変速感度ダイヤル76によって変更されたリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンのダイヤル値に対する圧力変化量を、たとえば、メータパネル150からの入力操作または他の入力部からの入力操作で変更可能に構成してもよい。また、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンの圧力変化量を、たとえば、モバイル端末MT(図4参照)からの入力操作で変更可能に構成してもよい。このように、リバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを簡単に変更可能とすることで、低負荷から高負荷までの幅広い作業に容易に対応可能となる。これにより、作業性を向上させることができる。
また、トラクタ1に、たとえば、農業機械の通信規格であるAGポート対応の作業機が装着された場合、作業機用コネクタ(AGポート)161(図4参照)に接続されることで、たとえば、メータパネル150の表示画面155(図11A、図11B参照)にて、変速感度ダイヤル76における、装着された作業機に対応するリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンとなるダイヤル値を報知(表示)するようにしてもよい。この場合、たとえば、グラフィック表示などで、変速感度ダイヤル76が作業機に応じて適切なダイヤル値よりも左右いずれかにずれている場合は適切な位置となるように指示してもよい。例としては、たとえば、変速感度ダイヤル76が左にずれている場合には右に回すように指示を出す。作業機ごとに作業負荷は異なるが、このような構成とすることで、作業機に応じて適切なリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを設定することができる。これにより、走行フィーリングを向上させることができるとともに、作業性を向上させることができる。
また、トラクタ1に、たとえば、AGポート対応の作業機が装着された場合、作業機用コネクタ161(AGポート)に接続されることで、変速感度ダイヤル76のダイヤル値が所定の規定範囲にある場合、作業機のたとえば種類ごとに決められた昇圧パターンとなるようにリバース昇圧パターンやクラッチ昇圧パターンを変更するようにしてもよい。このような構成によれば、作業機ごとに決められた昇圧パターンとなるように自動補正することで、作業効率や作業環境を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。