JP6963966B2 - 多孔質セラミックス材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質セラミックス材料及びその製造方法に関する。
セラミックス材料のうちリン酸カルシウム系セラミックス材料は、骨や歯の主成分であり、優れた生体親和性を有しており、且つ安全性にも優れていることから、人工骨などのインプラント材料、再生医療などに用いられる細胞培養用の足場材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用の薬剤担持材料などの生体材料として広く研究されている。
リン酸カルシウム系セラミックス材料から成る人工骨は骨折や骨腫瘍、骨の変性疾患などの治療において使用されている。人工骨としてのリン酸カルシウム系セラミックス材料に求められる性能として特に重要視されているのは、骨伝導性(骨形成に適した環境を提供し、骨形成細胞を遊走・定着させ、その場で骨を形成させる性質)、および術時ハンドリングに耐える強度である。
しかしながら骨伝導性と強度は背反する性能である。骨伝導性を確保するためにはリン酸カルシウム系セラミックス材料を多孔質化することで、細胞や骨・血管組織の侵入路となる気孔を豊富に有することが好ましい。一方で強度を確保するためには気孔をできるだけ含まないことが好ましい。そこでこのジレンマを解決するべくリン酸カルシウム系セラミックス材料の多孔構造(気孔の量、形)に関して多くの研究がなされている。
多孔質リン酸カルシウム系セラミックス材料としては、(1)多数の気孔が三次元的に密に分布し、隣接する気孔同士がそれらを区画する骨格壁部において相互に連通した連球状開気孔を有するリン酸カルシウム系焼結体(特許文献1参照)、(2)気孔を有するビーズ形状の多孔質セラミックス材料をナイロンワイヤーなどで連結して構築されたビーズ集積体(特許文献2参照)などが提案されている。
また、直径が10〜500μmで、一方向に配向して貫通している気孔を有する焼結体が、人工骨として適したリン酸カルシウム系セラミックス材料であることが開示されている(特許文献3、4参照)。
特許第3470759号公報 特開2003−335574号公報 特開2004−275202号公報 特開2005−1943号公報
しかし、特許文献1による提案では、連球開気孔からなる連通部の孔径が小さく且つ配向性を持たないため、新生骨が材料内部に侵入しにくい、あるいは侵入できない気孔も存在しうる。また、特許文献2の提案では、多数のビーズをナイロンワイヤーなどで連結するため、実用性が低い。
また、特許文献3及び4記載の提案では、本発明者らが追試したところ、気孔の配向方向に対する垂直方向には細胞や組織の侵入性が劣ることが明らかとなった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、良好な骨伝導性と実用的な強度を両立する多孔質セラミックス材料、及びその効率的な製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、以下の特徴を有する本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 実質的に一方向に配向して貫通している気孔及び該気孔の間のセラミックス領域中に形成された粒状の気孔を有することを特徴とする多孔質セラミックス材料。
[2] 孔径10μm以上30μm未満の気孔容積率が10%以上である焼結体からなることを特徴とする、上記[1]に記載の多孔質セラミックス材料。
[3] 前記セラミックス領域中に形成された粒状の気孔が球形の気孔であり、該球形の気孔の孔径が3〜40μmであることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の多孔質セラミックス材料。
[4] 工程A:セラミックス原料と有機ビーズを媒体に分散させてスラリーを調製する工程、
工程B:スラリーを所定の容器に充填し、該スラリーを一方向に凍結させる工程、
工程C:凍結させたスラリーを乾燥させて成形体を得る工程、及び
工程D:乾燥させた成形体を焼成する工程
を含む、実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料の製造方法。
[5] 有機ビーズが有機球形ビーズである、上記[4]に記載の方法。
[6] スラリー中の有機ビーズの含量がスラリー総重量の2〜6重量%である、上記[4]または[5]に記載の方法。
[7] 有機ビーズの平均粒子径が3〜40μmである、上記[4]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
本発明によれば、一方向に配向して貫通している気孔の配向方向だけでなく、該気孔の配向方向に対する垂直方向にも細胞や組織が侵入し得、良好な骨伝導性と実用的な強度が両立した、特に人工骨などに適した多孔質セラミックス材料を実現することができ、また、かかる多孔質セラミックス材料を簡便に、効率よく製造できる多孔質セラミックス材料の製造方法を提供することができる。
本発明の多孔質セラミックス材料の一例を模式的に示した斜視図である。 図1の多孔質セラミックス材料における実質的に一方向に配向して貫通している気孔の隣接する気孔間を拡大して示した模式断面図である。 本発明の多孔質セラミックス材料の製造方法の一例を模式的に示した図である。 本発明の多孔質セラミックス材料の製造方法におけるスラリーの凍結工程で使用する凍結装置の一例の模式図である。 凍結したスラリーの模式断面図(図5(A))、凍結したスラリーの乾燥後の成形体の模式断面図(図5(B))、および成形体を焼成して得られた焼結体の模式断面図(図5(C))である。 実施例2で作製されたセラミックス材料の断面のSEM観察像である。 比較例2で作製されたセラミックス材料の断面のSEM観察像である。 実施例2で作製されたセラミックス材料の動物実験後のマイクロCT観察像である。 実施例2で作製されたセラミックス材料の動物実験後の組織標本の顕微鏡観察像(皮質骨部中心部)である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明の多孔質セラミックス材料の一例の模式斜視図である。
本発明の多孔質セラミックス材料では、該一例の多孔質セラミックス材料11(図1)に示されるように、実質的に一方向に配向して貫通している気孔12を有する。ここで、実質的に一方向に配向して貫通している気孔12の個々の気孔はセラミックス材料11の内部においてセラミックス物質が存在せずに空間になっている領域である。本発明において、「気孔が実質的に一方向に配向する」とは、一軸方向に伸びた複数の気孔12が存在して、そのような複数の気孔の長軸の方向が実質的に一方向に揃っていることをいう。より具体的には、セラミックス材料中にある一軸方向に伸びた気孔のうちの例えば半数以上、好ましくは80%以上の気孔の長軸の方向が例えば角度30°以内の範囲で揃っている。なお、ここでいう「角度」とは、任意平面への気孔の長軸の正写影の交差角度のことである。また、「貫通」とは気孔がその長軸の方向において、セラミックス材料を貫通していることを意味する。
実質的に一方向に配向して貫通している気孔12(以下、「配向貫通気孔12」とも称する。)の各気孔の配向方向に垂直な断面の面積は、好ましくは0.05×10-3〜100×10-3mmであり、より好ましくは0.05×10-3〜50×10-3mmである。本発明でいう「配向方向」とは、実質的に一方向に配向して貫通している気孔12のうちの長軸の方向が同一の気孔の数が最も多い気孔の長軸の方向である。該断面の面積が上記範囲内であれば、細胞や骨・血管組織が侵入するのに十分な大きさであり、かつ、毛細管現象により血液等の体液が通過し易くなる。ただし、本発明の課題解決のために、必ずしも配向貫通気孔12の全ての気孔の断面が厳密に上記の面積をもつことは要さない。なお、配向貫通気孔12の各気孔の配向方向に垂直な断面の形状(平面形状)は、断面の面積が上記の範囲内にあれば、特に限定はされない。
配向貫通気孔12の個々の気孔の断面積を求めるには、測定対象の多孔質セラミックス材料を樹脂中に包埋し、これを配向方向に対して垂直に薄切し、これを電子顕微鏡などで観察し、着目する気孔に由来する開口面積を順々に測定することで求めることができる。このとき、測定対象の材料を1mm毎に切り出してそれぞれの断面において開口面積を測定することにより、気孔の配向の長さ方向にわたる該気孔の断面積の推移を本発明の目的に適った精度で評価することができる。
配向貫通気孔12の個々の気孔の長軸方向の長さは、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは10mm以上であり、さらに好ましくは20mm以上、とりわけ好ましくは30mm以上である。該長さの上限は特に制限されない。十分な長さの気孔を有していれば、切断などの加工により、インプラント用材料などを取得し易くなる。ただし、本発明の課題解決のために、配向貫通気孔12の全ての気孔が上記長さをもつことは要さない。
図2は図1の多孔質セラミックス材料11に形成された配向貫通気孔12における隣接する気孔間を拡大して示した模式断面図である。すなわち、本発明の多孔質セラミックス材料は、該図2に示されるように、配向貫通気孔12の配向方向と垂直方向においても細胞の侵入性を確保するために、配向貫通気孔12の隣接する気孔12A、12Bの間のセラミックス領域13(以下、「セラミックス壁」とも称する)中にも粒状の気孔14を存在させている。この粒状の気孔14は、複数の気孔がそれらの一部同士がつながってセラミックス壁13を貫通する状態に存在していてもよい。
本発明の多孔質セラミックス材料は、配向貫通気孔12の隣接する気孔の間のセラミックス領域13に粒状の気孔14を存在させているので、配向貫通気孔12を通じて多孔質セラミックス材料に侵入した細胞や骨・血管組織が粒状の気孔14を経由して配向貫通気孔12における隣接する気孔の間を容易に移動、伸展し得る。
粒状の気孔14は好ましくは球形の気孔である。後述の本発明の多孔質セラミックス材料の製造方法の一具体例に示されるように、粒状の気孔14は、通常、有機ビーズに由来して形成される気孔(有機ビーズの除去痕)である。
なお、「球形の気孔」の「球形」とは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、気孔の断面の画像を取得し、その画像に基づいて、測定された気孔の面積(S)と周囲長(L)から、以下の円形度を表す式に基づいて算出される円形度(真円は1.0であり、不定形になるほど0.0に近づく)が0.8以上であることを意味する。
円形度=4π×S/L
粒状の気孔14の孔径は、特に限定はされないが、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmであり、さらに一層好ましくは、10μm以上30μm未満である。上記範囲内であれば、配向貫通気孔12を通じて多孔質セラミックス材料に侵入した細胞や骨・血管組織の気孔14を経由して配向貫通気孔12における隣接する気孔12A、12Bの間での移動、伸展がより容易に進行し得る。
粒状の気孔14の孔径は、例えば、測定対象の多孔質セラミックス材料を樹脂中に包埋し、これを薄切し、これを走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察し、着目する気孔の面積円相当径を測定することによって測定される。具体的には、以下の方法を採用した。
薄切したサンプル中の断面の面積が最大の気孔の断面の面積について、下記式により円相当径を算出して、これを気孔14の孔径とする。
円相当径={4×(断面の面積)÷π}の正の平方根
また、セラミックス壁13中の粒状の気孔14の存在量はセラミックス壁13の断面における粒状の気孔14の面積率(%)が5〜40%程度となる量存在することが好ましい。面積率(%)が5%未満であると気孔の配向方向と垂直方向への細胞や組織の侵入性の効果が期待できなくなり、40%を超えると、術時ハンドリングに耐える強度を確保できない可能性がある。ここでいう面積率はセラミックス材料の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像から下記式にて計算される。
面積率(%)=[粒状の気孔の総面積/(粒状の気孔の総面積+セラミックス領域の面積)]×100
なお、上記式中の「セラミックス領域の面積」にはセラミックス原料粒子(無機物粒子)の焼結粒子間隙(1μmレベルの気孔)の面積も含む。
特許文献3及び4記載のリン酸カルシウム系セラミックス材料では、実質的に一方向に配向して貫通している気孔の配向方向と母床骨の長軸方向が「平行」になるように移植した場合は、母床骨の断端から気孔の入口を経て効率的に細胞や組織が材料の内部に侵入する。一方、実質的に一方向に配向して貫通している気孔の配向方向と母床骨の長軸方向が「垂直」になるように移植した場合は、気孔の入口が母床骨の断端と接しないため「平行」になるように移植した場合と比較して細胞や組織の侵入性がやや低下する。このことから臨床における使用の際には実質的に一方向に配向して貫通している気孔の配向方向と母床骨の長軸方向が「平行」になるように移植することが推奨される。
しかしながら実際の臨床では実質的に一方向に配向して貫通している気孔の配向方向と母床骨の長軸方向を「平行」に配置して移植することが難しい場合もある。本発明の多孔質セラミックス材料であれば、配向貫通気孔12の隣接する気孔の間のセラミックス壁13にも気孔14を有するので、配向貫通気孔12の気孔の配向方向と母床骨の長軸方向を「平行」に配置して移植ができない場合においても、細胞や組織の良好な侵入性を確保することが可能である。
本発明の多孔質セラミックス材料の気孔率は、好ましくは40〜90%であり、より好ましくは50〜80%である。気孔率が40%以上であれば、生体内移植後の材料内に充分な組織、例えば、骨・血管組織の形成が見込まれる。一方、気孔率90%以下であれば、実用的な強度は確保される。
ここでいう「気孔率」はJIS R 1634に準拠して測定される。具体的には、以下のとおりである。評価対象の多孔質セラミックス材料から直径6mm×高さ7mmの円柱状の試験片を切り出す。その試験片の重量及び体積を測定して、以下の式より、気孔率を算出する。
嵩密度=(試験片の重さ)/(試験片の体積)
気孔率(%)=(1−嵩密度/理論密度)×100
本発明の多孔質セラミックス材料は、後述のとおり、典型的には、セラミックス原料である無機物粒子及び有機ビーズを含むスラリーを凍結、乾燥させた成形体を焼成して得られる焼結体であり、配向貫通気孔12の隣接する気孔12A、12Bの間のセラミックス壁に侵入した血液、骨髄液などの組織液や体液中に含まれる細胞などが隣接する気孔の間をより容易に移動できるようになる観点から、水銀圧入法による積算細孔容積分布を測定して求められる、孔径10μm以上30μm未満の気孔(マクロ孔)の容積率が全気孔容積中の10%以上である焼結体であることが好ましい。かかる、孔径10μm以上30μm未満の気孔(マクロ孔)の気孔容積率は好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上である。また、焼結粒子間隙に相当する比較的孔径の小さいマクロ孔を有していることが好ましく、かかる比較的孔径の小さいマクロ孔の孔径は0.1〜5μmであることが好ましい。かかる比較的孔径が小さいマクロ孔を有すると、表面積の増大に伴って多孔質セラミックス材料の吸収や骨形成に有利に作用する。また、多孔質セラミックス材料中への血液や骨髄液などの組織液や体液中に含まれる細胞等の速やかな侵入と多孔質セラミックス材料の強度とのバランスの観点からは、孔径が30μm以上の気孔(マクロ孔)の容積率が全気孔容積中の30〜99%の範囲にあるのが好ましく、70〜95%の範囲にあるのがより好ましい。なお、通常、孔径10μm以上30μm未満の気孔(マクロ孔)には、主にセラミックス壁13中の粒状の気孔14の孔径が反映し、孔径が30μm以上の気孔(マクロ孔)には、配向貫通気孔の短径(すなわち、配向貫通気孔の長軸に対する垂直方向の孔径)が反映する。
また、本発明の多孔質セラミックス材料は、好ましくは、骨形成の点から、セラミックス原料にリン酸カルシウム系セラミックス原料を使用した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス材料である。
次に、本発明の実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料の製造方法について説明する。
本発明の実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料の製造方法は、典型的には、次の方法で製造されるが、これに限定されない。
図3は本発明の実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料の製造方法の一例を模式的に示した図である。
セラミックス原料および有機ビーズを媒体中に分散させてスラリー21を調製するスラリー調製工程(工程A:図3(A))、得られたスラリー21を容器31に充填した後(図3(B))、該容器31をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定方向(図3(C)の矢印方向)に挿入して、スラリーを一方の端部側から一方向に凍結させる工程(工程B)、凍結させたスラリーを乾燥させて成形体を得る工程(工程C)、乾燥させた成形体を焼成して実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料11を得る工程(工程D:図3(D)))を有する。
以下、各工程に従って、本発明の製造方法をより詳しく説明する。
図3(A)はスラリーの調製を模式的に表す。工程Aに用いるスラリー21は、セラミックス原料および有機ビーズを媒体に分散させて調製することができる。ここで、「セラミックス原料」とは本発明の多孔質セラミックス材料を製造するための無機物粒子のことであり、好ましくはリン酸カルシウム系セラミックス材料を製造するための無機物粒子のことである。また、スラリー21には好ましくは後述する添加剤が溶解又は分散している。
リン酸カルシウム系セラミックス原料としては、例えば、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、リン酸三カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、またはリン酸水素カルシウム2水和物などが例示され、また、これらのうちの任意の2種以上の混合物であっても良い。また、リン酸カルシウム系セラミックス原料におけるCa成分の一部が、Sr、Ba、Mg、Fe、Al、Y、La、Na、K、Ag、Pd、Zn、Pb、Cd、H、及び、これら例示の元素中の希土類元素以外の他の希土類元素から選ばれる一種以上で置換されてもよい。また、(PO)成分の一部が、VO、BO、SO、CO、及びSiOから選ばれる一種以上で置換されてもよい。さらに、(OH)成分の一部が、F、Cl、O、CO、I、及びBrから選ばれる一種以上で置換されてもよい。
骨形成の点から、リン酸カルシウム系セラミックス原料は、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、リン酸三カルシウムが好ましく、水酸アパタイト、リン酸三カルシウムがより好ましい。リン酸カルシウム系セラミックス原料は、天然鉱物由来であっても、各種湿式法、乾式法などで化学的に合成されたものであってもよい。
スラリー21中のセラミックス原料の含量としては、スラリーの総重量に対し、10〜60重量%の範囲が好ましく、20〜50重量%の範囲がより好ましい。
セラミックス原料を分散させるのに用いる媒体としては、後述する凍結乾燥により除去可能な昇華性を有するものが好ましい。例えば、水、tert−ブチルアルコール、ベンゼンなどが挙げられ、好ましくは水である。また、水は精製度の高いものが好ましく、蒸留水、イオン交換水、精製水、滅菌精製水、注射用水などが好適である。
有機ビーズとしては、一般的にプラスチックと呼ばれるものであればよく、好ましくは、常温(25℃)で融解せず、水に不要であり、無機物のコンタミネーションを含まないものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びポリエチレングリコール等から選択されるプラスチックのビーズが例示される。中でもポリメタクリル酸メチルビーズが好適である。
スラリー中の有機ビーズの含量としては、スラリーの総重量に対し、2〜6重量%の範囲であることが好ましく、2〜5.5重量%の範囲であることがより好ましい。スラリーの総重量に対する有機ビーズの含量が6重量%を超えると工程Bにおいて霜柱状の媒体の結晶61の成長がしにくくなり、2重量%未満では気孔12の配向方向と垂直方向への細胞や組織の侵入性を担保するのに十分な量の粒状の気孔を確保できなくなるおそれがある。また有機ビーズとセラミックス原料の重量比(有機ビーズ:セラミックス原料)は0.03:1〜0.6:1が好ましく、0.05:1〜0.15:1の範囲がより好ましい。
有機ビーズは球状粒子、非球状粒子のいずれであってもよいが、気孔14の孔径を比較的均一に制御できるという点から球状粒子(有機球形ビーズ)が好ましい。また、有機ビーズをレーザー回折法により測定した場合の平均粒子径は3〜40μmの範囲が好ましく、10〜40μmの範囲がより好ましい。なお、ここでいう、平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、有機ビーズの粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。測定サンプルは、有機ビーズを超音波により精製水等の分散媒に分散させたものを好ましく使用することができる。
なお、「球状粒子」とは、真球度が0.8以上、1.0以下の範囲にあるものを言い、「非球状粒子」とは、真球度が0.8以上、1.0以下の範囲にある球状粒子に相当しない粒子を意味する。非球状粒子の形状は、実質的に球状でないという意味であり、例えば、フレーク状、針状、板状、塊状、繊維状等が挙げられる。ここで真球度とは、走査型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における粒子の最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)を意味する。
スラリー21には、スラリーの粘度を増加させてスラリーの分散性を向上させ、焼成前のセラミックス多孔質成形体の形状を保持し、さらに焼結時の結晶粒子成長を制御する目的で、スラリーに添加剤を溶解または分散させることが好ましい。添加剤は、前記目的を達成しうる化合物や組成物であれば、特に限定されないが、焼結時に燃焼し、焼失する有機物である縮合系高分子が好ましい。この場合、焼成後に得られるセラミックス材料には添加物に由来する成分が実質的に残存しないことから、生物に対して安全性に優れる。このような添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチラート、アガロース、コラーゲン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上を併用してもよい。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じてスラリー21に、上記した成分以外の成分を添加してもよい。
スラリーに添加剤を添加する場合、添加する添加剤の量は、スラリーの総重量に対し、0.1〜20重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましく、5〜8重量%の範囲がより好ましい。
スラリー21の調製は公知の方法によることができる。典型的には、媒体に攪拌しながらセラミックス原料、有機ビーズと必要に応じて添加剤を加えることによってスラリー21が調製される。スラリー21の脱泡処理を行うことが好ましい。この場合、気泡がスラリー中に残らずに、結果として焼結体中に気泡に起因した不所望な孔(欠陥)が形成することが回避できる。脱泡処理の方法としては、既知の方法を用いればよく、例えば、真空中で攪拌しながら脱泡する方法、遊星混練などによる脱泡する方法などが挙げられる。
図3(C)は、容器31中のスラリー21を凍結する工程(工程B)を模式的に示している。工程Bでは、スラリー21が一方の端部側から一方向に凍結することで霜柱状の媒体の結晶が成長する。具体的には、工程Aで得られたスラリー21を容器31に充填し、該容器31をスラリー21の凝固点以下に冷却した冷媒41に挿入(浸漬)していくことにより、容器内のスラリー21を一方の端部側(すなわち、容器31の挿入方向先端側の端部)から一方向に凍結させてスラリーの成形体を得る。このような凍結の結果、該成形体中に霜柱状の凝固した媒体の結晶が成長し、一方向へ配向する。
図4は、凍結のために用い得る凍結装置の一例の模式図である。
当該凍結装置71では、スラリー21を収容した円筒状容器31が例えば定速モーター等の適当な動力源70に繋がれており、容器31がスラリーの凝固点以下に冷却された冷媒41の上から、前記動力源70を用いて冷媒41に向けて降下し、冷媒41へ挿入(浸漬)していく。
容器31を冷媒41に挿入していく速度、すなわち、容器31の冷媒41への浸漬速度は、高い強度と適度な孔径の連通孔を有する多孔質セラミックス材料が得られるという観点から、スラリー21中の媒体の凍結による結晶の成長速度と当該浸漬速度が略等しくなるように制御することが好ましい。なお、ここでいう「結晶の成長速度」は、例えば、容器31の側壁に目盛りを付しておき、容器内のスラリー21中の媒体の凍結面の移動速度を算出することで求めることができる。
当該凍結装置71を使用すれば、容器31内でスラリー21の凍結をほぼ均一に面状に進行させることができ、媒体の結晶も面状に成長させることができる。この点は、容器31の複数の高さにおいて、その中心部(軸線部)と側壁近傍部に温度センサーを設置し、容器の同一高さにおいて、容器内の中心部(軸線部)と側壁近傍部でのスラリーの温度がほぼ同じであることを確認している。
通常、スラリー21中の媒体に水を用いる場合、容器31の浸漬速度は1〜200mm/hの範囲が好ましく、5〜100mm/hの範囲がより好ましく、10〜50mm/hの範囲が最も好ましい。容器31の浸漬速度とスラリー21中の媒体の凍結による結晶の成長速度とが著しく異なる場合、例えば、結晶の成長速度よりも浸漬速度が著しく大きい場合、スラリー21は側面、上面などから、不規則に凍結が進み、媒体の一方向的な凍結体が得られない。一方、結晶の成長速度より浸漬速度が著しく小さい場合、容器31の上部(すなわち、容器31の挿入方向先端側の端部とは反対側の端部)ほど媒体の結晶の融合が生じ凝固した媒体成分の形状が浸漬の方向で不均一な凍結体となることから、好ましくない。本発明でいう「容器の浸漬速度とスラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度とが略等しい」とは、一方の速度が他方の速度の概ね50〜150%の範囲内にあることであり、好ましくは80〜120%の範囲にあることである。
当該凍結装置71では、容器31が冷媒41に没している部分から上方向(すなわち、容器31の冷媒41への挿入方向先端側の端部から容器31の他方側の端部へ向かう方向)へと一方向にスラリーが凍結される。冷媒の温度は、スラリーの凝固点よりも低い必要があるが、冷媒41の温度は、スラリーに用いる媒体の融点から100℃低い温度の範囲(すなわち、融点〜(融点−100℃)の範囲)が好ましく、より好ましくは媒体の融点よりも15℃低い温度から媒体の融点よりも50℃低い温度の範囲(すなわち、(融点−15℃)〜(融点−50℃)の範囲)である。例えば、媒体に水を用いる場合、0℃〜−100℃の範囲が好ましく、より好ましくは−15℃〜−50℃の範囲である。また、結晶の成長速度は、冷媒の温度に依存し、冷媒41が低温ほど、結晶の成長速度が大きくなり、浸漬する速度を大きくすることができ、同等形状の媒体の結晶を形成させる場合、生産性を向上できる。なお、スラリーの凝固点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて容易に測定することができる。
このように、スラリーを一方向に凍結させていくことで(特にスラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度と容器の浸漬速度が等しくなるように容器の浸漬速度を制御することで)、スラリーに含まれる媒体が長く一方向に配向した柱状の凝固した媒体成分(霜柱状の凝固した媒体成分)となり、結果として一方向に長く伸び、長手方向にわたる断面積の変化が少ない気孔をもつセラミックス焼結体を得ることができる。
冷媒41は、スラリーを凝固点以下に冷却することができる媒体であれば、特に限定されるものではなく液体ヘリウム、液体窒素、液体酸素、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ヘキサンなどの炭化水素類、イオン性液体などを用いることができる。但し、熱交換による冷媒の気化、温度上昇などが生じる場合は、適宜、冷媒の追加や冷却を行い、冷媒の液面位置、及び温度の制御を行うことが好ましく、これらの変動を最小限とするためには、浸漬するスラリーに対し、充分な量の冷媒を用いることが好ましい。
冷媒により冷却された冷媒上の雰囲気により、容器31の冷媒に浸漬していない側壁方向からスラリーが凍結しないように、容器31の側壁はスラリーが分散している媒体よりも比熱の大きな素材が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂のような熱絶縁性材料で形成されていることが望ましい。また、容器の側壁の厚さは0.5mm以上であることが好ましい。この場合、収容されたスラリーが側壁に接する部分から凍結しにくくなり、企図した通り、一方向に配向した霜柱状の凝固した媒体成分の構造がより揃いやすくなる。なお、容器31の底部と側壁の材質は同一であっても良く、別の材質であっても良い。別の材質である場合、容器31の底部はスラリーが分散している媒体よりも比熱が小さく熱伝導性の高い金属(例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレスなど)などの素材が好ましい。
なお、容器31の形状は特に限定されるものではないが、より均一に熱伝導が行える観点から、図3、4に示されるような円筒状の容器が好ましく使用される。また、前記で説明したように、本発明では、容器内でスラリーの凍結がほぼ均一に面状に進行し、媒体の結晶を面状に成長させることが重要であるが、容器の径(内径)が大きすぎると、容器内の中心部(軸線部)と側壁近傍部でのスラリーの冷却度合いが相違して、凍結がほぼ均一に面状に進行しにくくなるおそれがあるので、容器の内径は、円筒状容器である場合、直径が200mm以下であるのが好ましく、より好ましくは150mm以下である。容器の内径の下限は特に限定はされないが、配向方向に垂直な断面の面積(開口面積)が0.05×10-3〜100×10-3mmの配向貫通気孔を有する成形体を得るという点から、1mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上である。
上記の凍結装置71(図4)は、スラリー21を充填した容器31を移動させて、冷媒41へ容器31を挿入(浸漬)させているが、本発明においては、スラリーを充填した容器を固定し、冷媒(冷媒収容容器)を移動させることで、スラリーを充填した容器を冷媒へ挿入(浸漬)する構成にしても、また、スラリーを充填した容器と冷媒(冷媒収容容器)の双方を移動させて、スラリーを充填した容器を冷媒へ挿入(浸漬)する構成にしてもよい。
工程Cでは凍結したスラリーを乾燥させて成形体を得る。典型的には、スラリーの入った容器をそのまま減圧下にて凍結乾燥を行う。この操作により霜柱状の凝固した媒体成分を昇華させ、凝固した媒体成分が存在していた部分が昇華痕としてマクロ孔になり、結果として、成形体中に実質的に一方向に配向した気孔62が形成される。図5(A)は凍結したスラリーの模式断面図、図5(B)はスラリーを乾燥させて得られた成形体の模式断面図である。凍結したスラリーには、セラミックス原料の粒子51と、実質的に一方向に配向した凝固した媒体成分61が存在し、乾燥後は、凝固した媒体成分61が存在していた領域に実質的に一方向に配向した気孔(マクロ孔)62が形成されている。
工程Dでは、得られた成形体を焼成する(図3(D))。典型的には、工程Cで得られた成形体を容器31から抜き取り、必要に応じて適当な成形を行い、それぞれのセラミックスに適した温度、及び焼結時間で焼成する。焼結(焼成)に際しては、得られる焼結体の機械的強度が、生体内への埋入に適した強度となるように、すなわち、手術現場で、加工が可能であり、かつ、生体埋入後に破損などが生じない程度となるように、焼結条件を決めることが望ましい。こういった焼結条件は、セラミックスの種類、多孔質体の気孔率、気孔の孔径、及び気孔の配向性などを考慮して適宜決定することができる。また、焼成の際に用いられるエネルギー源としては、特に限定されないが、熱、及びマイクロ波などが一般的に用いられる。なお、焼成温度はセラミック原料の種類によっても異なるが、一般的には、1000〜1800℃が好ましく、1100〜1600℃がより好ましい。焼成温度が1000℃未満では、焼結による緻密化が十分進行せずに、強度が低くなる傾向となり、1800℃を超えると、融解や相転移により別の結晶状態へ変化する傾向となる。また、焼成時間は通常1〜4時間程度が一般的である。
工程Dで焼成された成形体(図5(C))は、霜柱状の凝固した媒体成分61の昇華痕に相当する実質的に一方向に配向した気孔(マクロ孔)62に加えて有機ビーズの燃焼痕に相当する気孔(マクロ孔)82を有するセラミックス焼結体、好ましくは、焼結粒子間隙に相当する比較的孔径が小さいマクロ孔(孔径が0.1〜5μmのマクロ孔)をも有するセラミックス焼結体となって、本発明の実質的に一方向に配向して貫通している気孔を有する多孔質セラミックス材料が作製される。即ち、図5(C)中の気孔(マクロ孔)62が図1、2中の実質的に一方向に配向した気孔12に相当し、図5(C)中の気孔(マクロ孔)82が図2中の粒状の気孔14に相当する。
本発明の多孔質セラミックス材料を人工骨として用いる場合には、所望の形状に成形し、滅菌するのが好ましい。
多孔質セラミックス材料をブロック状に成形する方法としては、特に制限されること無く、既知の方法を用いればよい。具体的には、機械加工による成形法が挙げられる。一般にセラミックス材料は硬くて脆い素材であるため、セラミックス層の厚さが不均一である従前の多孔質セラミックス材料は、機械加工性が極めて低かった。本発明の多孔質セラミックス材料は、上記のように、気孔が実質的に一方向に配向しており、且つその孔径もほぼ均一なため、貫通気孔と貫通気孔との間のセラミックス層の厚さもほぼ均一である。したがって、従前の多孔質セラミックス材料に比べ、優れた機械加工性を示す。
また、多孔質セラミックス材料を顆粒状に成形する方法についても、特に制限されること無く、既知の方法を用いればよい。具体的には、モルダグラインダー、ボールミル、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャーなどの機械的粉砕、乳鉢などでの粉砕などが挙げられる。また、粉砕された多孔質セラミックス材料をふるいなどで、粒径を揃えてもよい。
多孔質セラミックス材料を滅菌する方法についても、特に制限されること無く、既知の方法を用いればよい。具体的には、高圧蒸気滅菌法(オートクレーブ)、γ線滅菌、EOG滅菌、及び電子線滅菌などが挙げられる。その中でも、高圧蒸気滅菌法は最も一般的な滅菌法として、汎用されている。
本発明の多孔質セラミックス材料(好ましくは多孔質リン酸カルシウム系セラミックス材料)は、上記の人工骨などのインプラント材料、再生医療などに用いられる細胞培養用の足場材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用の薬剤担持材料などとして有用である。
さらには、より高いレベルでの組織、例えば、骨組織の誘導を目的として、トランスフォーミング成長因子(TGF−β1)、骨形成因子(BMP−2またはBMP−7)などの組織、例えば、骨組織に対して成長を促す作用のある物質を、本発明の多孔質セラミックス材料に含浸、吸着、固定化してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔スラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度の測定方法〕
スラリーを充填した容器についた目盛りから、スラリー中の媒体の凍結面の移動速度を算出することで、スラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度を求めた。また、その際、同時に、スラリーを充填した容器の複数の高さにおいて、容器の中心部(軸線部)及び側壁近傍に温度センサーを設置し、それぞれの温度がほぼ同一であることを確認した。
〔気孔率の測定方法〕
気孔率はJIS R 1634に準拠して測定した。具体的には、以下のとおりである。評価対象の多孔質セラミックス材料から直径6mm×高さ7mmの円柱状の試験片を切り出す。その試験片の重量、及び体積を測定して、以下の式より、気孔率を算出した。
嵩密度=(試験片の重さ)/(試験片の体積)
気孔率(%)=(1−嵩密度/理論密度)×100
〔圧縮強度の測定方法〕
JIS R 1608 に準拠した。ただし、試験片は直径6mm×高さ7mmの円柱状試験片を使用した。
〔気孔容積率の測定方法〕
孔径分布は水銀圧入法(測定範囲:4×10−3〜4×10μm)により測定した。ただし、試験片は直径6mm×高さ7mmの円柱状試験片を使用した。気孔容積率は、水銀圧入法により得られた孔径分布から算出し、測定範囲における全気孔容積のうちの、孔径10μm以上30μm未満の気孔の容積の割合、および孔径30μm以上の気孔の容積の割合をそれぞれ気孔容積率として測定した。なお、水銀とβ−リン酸三カルシウムとの接触角は130°、表面張力を485mN/mとした。
〔実施例1、2〕
蒸留水中にβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)、添加剤、及びポリメタクリル酸メチル製ビーズ(平均粒子径20μm)を表1の組成で分散・溶解させたスラリーを容器に40g充填し、4℃に保持された冷蔵庫にて3時間冷却した。その容器を、−25℃に冷却したエチルアルコール浴に15mm/hで浸漬し、霜柱状の氷をスラリー中に形成させた。このようにして得られた凍結体を真空中で昇華乾燥させた後、その乾燥体を1120℃にて5時間焼結することで、多孔質のセラミックス焼結体を得た。
〔比較例1〕
ポリメタクリル酸メチル製ビーズを7重量%とした以外は実施例1の方法に従い、表1に記載の各条件で実施した。
〔比較例2〕
ポリメタクリル酸メチル製ビーズを用いなかった以外は実施例1の方法に従い、表1に記載の各条件で実施した。
実施例1、2及び比較例1、2により調製された材料(セラミックス焼結体)の気孔特性(気孔率、気孔容積率、粒状の気孔の有無、粒状の気孔の孔径等)及び圧縮強度を表1に示す。なお、気孔率、気孔容積率及び圧縮強度以外の特性は明細書本文中で説明した方法で測定した。
Figure 0006963966
*1:比較例1で得られたセラミックス焼結体は、配向貫通気孔は形成されず、気孔と骨格がランダムな形で存在し、骨格部内に有機ビーズに由来する粒状の気孔がランダムに存在していた。
図6は実施例2により調製した材料にエポキシ樹脂を含浸させた試験片の断面(気孔の配向方向に平行な断面)のSEM観察像である(倍率:150倍)。
図7は比較例2により調製した材料にエポキシ樹脂を含浸させた試験片の断面(気孔の配向方向に平行な断面)のSEM観察像である(倍率:150倍)。
〔動物実験による評価〕
ビーグル犬の大腿骨骨幹部にφ4mmの骨孔を作製し、そこに円柱状(φ4mm×10mm;気孔の配向方向は円柱の高さ方向)に成形した実施例2の材料を移植した。骨の長軸方向に対して気孔の方向は直交するような形であり、気孔の開口部が骨の断端部と接していないことから、細胞や組織の侵入には比較的不利な方向である。
図8は実施例2の材料を移植後6週間後のマイクロX線CT像である。材料は骨と癒合していることが確認された。
図9は実施例2の材料を移植後6週間後の非脱灰標本の顕微鏡観察像である。材料の中心部においても骨形成が確認された。
本発明によれば、霜柱状の凝固した媒体成分の昇華痕に相当するマクロ孔、有機ビーズの燃焼痕に相当する球形状のマクロ孔、さらに焼結粒子間隙に相当する比較的孔径の小さいマクロ孔を有する多孔質セラミックス材料が作製される。
該多孔質セラミックス材料は、インプラント材料、再生医療などに用いられる細胞培養用の足場材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用の薬剤担持材料等に利用できる。
11 多孔質セラミックス材料
12 実質的に一方向に配向して貫通している気孔
13 セラミックス領域(セラミック壁)
14 粒状の気孔
21 スラリー
31 容器
41 冷媒
51 セラミックス原料の粒子
61 媒体の結晶
62 実質的に一方向に配向して貫通している気孔
70 動力源
71 凍結装置
81 有機ビーズ
82 粒状の気孔(略球形の気孔)

Claims (6)

  1. 実質的に一方向に配向して貫通している気孔及び該気孔の間のセラミックス領域中に形成された粒状の気孔を有する多孔質セラミックス材料であって、
    孔径10μm以上30μm未満の気孔容積率が10%以上であり、かつ、孔径30μm以上の気孔容積率が30%以上90%未満である焼結体からなることを特徴とする、多孔質セラミックス材料
  2. 前記セラミックス領域中に形成された粒状の気孔が球形の気孔であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質セラミックス材料。
  3. 工程A:セラミックス原料と有機ビーズを媒体に分散させてスラリーを調製する工程、
    工程B:スラリーを所定の容器に充填し、該スラリーを一方向に凍結させる工程、
    工程C:凍結させたスラリーを乾燥させて成形体を得る工程、及び
    工程D:乾燥させた成形体を焼成する工程
    を含む、実質的に一方向に配向して貫通している気孔及び該気孔の間のセラミックス領域中に形成された粒状の気孔を有し、孔径10μm以上30μm未満の気孔容積率が10%以上であり、かつ、孔径30μm以上の気孔容積率が30%以上90%未満である多孔質セラミックス材料の製造方法。
  4. 有機ビーズが有機球形ビーズである、請求項に記載の方法。
  5. スラリー中の有機ビーズの含量がスラリー総重量の2〜6重量%である、請求項またはに記載の方法。
  6. 有機ビーズの平均粒子径が3〜40μmである、請求項のいずれか1項に記載の方法。
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