以下、いわゆる縦軸型の洗濯機に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態間で、同一部分には同一符号を付して新たな図示や繰り返しの説明を省略する。
(1)第1の実施形態
図1から図8を参照して第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る洗濯機1の内部構成を概略的に示しており、まず、洗濯機1の全体構成について述べる。ここで、洗濯機1は、例えば鋼板から全体として矩形箱状に構成された外箱2の上部に、合成樹脂製のトップカバー3を備えている。
前記外箱2内には、洗濯水を溜めることが可能な水槽4が、周知構成の弾性吊持機構5により弾性的に吊り下げ支持されて設けられている。前記水槽4の底部には、排水口6が形成されている。この排水口6には、電子制御式の排水弁7を備えた排水路8が接続されている。排水弁7などから排水機構が構成されている。尚、詳しく図示はしないが、水槽4の底部にはエアトラップが設けられ、このエアトラップに接続されたエアチューブを介して、水槽4(洗濯槽10)内の水位を検出する水位センサ9(図2参照)が設けられている。
前記水槽4内には、脱水槽を兼用する縦軸型の洗濯槽10が回転可能に設けられている。この洗濯槽10は、有底円筒状をなし、その周壁部には、多数個の脱水孔10aが形成されている。この洗濯槽10の上端部には、例えば液体封入形の回転バランサ11が取付けられている。また、洗濯槽10の内底部には、撹拌体としてのパルセータ12が配設されている。洗濯槽10内には、図示しない衣類が収容されるようになっており、衣類の洗い、すすぎ、脱水等の行程からなる洗濯運転が行われる。
このとき、前記水槽4の上部には、水槽カバー13が装着されている。この水槽カバー13には、ほぼ中央部に洗濯物出し入れ用の開口部13aが設けられていると共に、その開口部13aを開閉する内蓋14が取付けられている。更に、水槽カバー13の後部寄り部分には、後述する給水機構により、水槽4内に給水を行うための給水口20が設けられている。尚、前記水槽4の背壁部の上部には、洗濯槽10の最高水位よりも高い位置に、溢水口4aが設けられている。水槽4の外側には、溢水口4aに連続し該溢水口4aから溢れた水を排出するための溢水ホース22が設けられている。詳しく図示はしないが、溢水ホース22の先端部は、前記排水路8に接続されている。
そして、前記水槽4の外底部には、周知構成の駆動機構15が配設されている。詳しい図示及び説明は省略するが、この駆動機構15は、例えばアウタロータ形のDC三相ブラシレスモータからなる洗濯機モータ16(図2参照)、中空の槽軸18、該槽軸18を貫通する撹拌軸19、前記洗濯機モータ16の回転駆動力をそれら軸18、19に選択的に伝達するクラッチ機構17(図2参照)等を備えている。前記槽軸18の上端には、前記洗濯槽10が連結されており、前記撹拌軸19の上端には、前記パルセータ12が連結されている。尚、図2にのみ示すように、駆動機構15には、前記洗濯機モータ16の回転位置(ひいては回転数)を検知する回転センサ31や、洗濯機モータ16に流れる電流を検知する電流センサ32も設けられている。
前記クラッチ機構17は、例えばソレノイドを駆動源とした周知構成を備えており、コンピュータを主体として構成された制御装置21により切替え制御される。周知のように、クラッチ機構17は、洗濯槽10を回転自在にして、洗濯機モータ16の回転力を前記槽軸18及び撹拌軸19の双方に伝達する状態(洗濯槽10側)と、洗濯槽10を水槽4に対し固定状態にロックして、洗濯機モータ16の回転力を撹拌軸19のみに伝達する状態(パルセータ12側)とを切替えるようになっている。尚、洗濯槽10を固定状態にロック・ロック解除する機構は、歯部同士のかみ合いにより連結・切離しを行うので、洗濯槽10の回転方向の抵抗が少ない(スムーズに回る)方がクラッチの切替えがしやすい構造となっている。
これにて、駆動機構15は、クラッチ機構17により、洗い時及びすすぎ時(洗い行程)には洗濯槽10の固定(停止)状態で、洗濯機モータ16の駆動力を、撹拌軸19を介してパルセータ12に伝達してパルセータ12を直接正逆回転駆動する。また、駆動機構15は、脱水時(脱水行程)等には、クラッチ機構17により、槽軸18と撹拌軸19との連結状態で、洗濯機モータ16の駆動力を槽軸18を介して洗濯槽10に伝達し、洗濯槽10(及びパルセータ12)を一方向に高速で直接回転駆動するようになっている。
前記トップカバー3は、下面が開口すると共に、その上面が前方に向けて下降傾斜するような薄形の中空箱状をなすと共に、その中央部には、前記洗濯槽10の上方(水槽カバー13の開口部13aの上方)に位置して、ほぼ円形の洗濯物の出入口3aが形成されている。トップカバー3の上面には、全体として矩形パネル状をなし、前記出入口3aを開閉するための蓋23が設けられている。
また、このトップカバー3の上面の前辺部には、横長形状の操作パネル24が設けられている。詳しく図示はしないが、この操作パネル24は、ユーザが洗濯機1に対する電源の入り切りや各種の設定・指示等を行うための操作部や、必要な表示を行う表示部等を備えて構成されている。操作パネル24の裏面側には、前記制御装置21(電子ユニット)が設けられている。
このトップカバー3の後部には、給水源この場合水道から供給される水を、給水経路を通して水槽4(洗濯槽10)内に給水するための給水機構25が設けられている。この給水機構25は、接続口26、給水弁27、注水ケース28、給水ホース29等を備える。そのうち接続口26は、図示しない水道の蛇口に接続された接続ホースの先端部が接続される。前記給水弁27は、電磁的に開閉動作する開閉弁からなり、前記制御装置21により制御される。また、給水ホース29の先端部が前記水槽カバー13の給水口20に接続されている。
これにて、給水弁27が開放されることにより、水が注水ケース28及び給水ホース29を順に通って、給水口20から水槽4内に供給される。尚、図示はしないが、注水ケース28内には引出し式の洗剤収容部等が設けられ、洗剤収容部に洗剤が収容されている場合には、その洗剤を溶かしながら給水が行われる。
図2は、上記した制御装置21を中心とした、洗濯機1の電気的構成を概略的に示している。制御装置21は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主体として構成され、洗濯機1全体を制御して洗濯運転の各行程を実行する。この制御装置21は、前記操作パネル24からの操作信号が入力されると共に、操作パネル24の各表示部の表示を制御する。また、制御装置21には、前記水位センサ9の検知した洗濯槽10内の水位検知信号が入力されると共に、前記回転センサ31、電流センサ32からの検知信号が入力される。
制御装置21は、前記洗濯機モータ16、クラッチ機構17を駆動制御すると共に、前記給水弁27、排水弁7を制御する。以上の構成により、制御装置21は、操作パネル24におけるユーザの洗濯コースの設定操作等に応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯機1の各機構を制御する。例えば周知の自動運転のコースにあっては、洗い、すすぎ、脱水の各行程からなる洗濯運転を実行する。この場合、すすぎ行程では、例えば脱水すすぎ(中間脱水)動作とためすすぎ動作とが順に実行される。ためすすぎ動作の後に、排水動作が行われて最終の脱水行程に移行する。
尚、自動運転のコースにあっては、運転開始時に、洗濯槽10内の洗濯物の布量検知動作が実行される。そして、その布量検知動作の結果に基づいて、洗いやためすすぎ時の水位が複数段階で設定されると共に、各行程の実行時間等が自動設定される。洗濯槽10内への給水制御は、水位センサ9の水位検知に基づいて行われる。前記布量検知動作は、周知のように、駆動機構15によりパルセータ12を短時間だけ回転駆動し、その時に洗濯機モータ16に流れる電流を電流センサ32により検出することに基づいて行われる。
さて、本実施形態では、次の動作説明で詳述するように、制御装置21は、主としてそのソフトウエア構成により、すすぎ行程後の排水実行中に、槽洗浄のための残水脱水動作を実行する。この残水脱水動作は、前記水位センサ9の検出に基づき、洗濯槽10内が第1の所定水位(例えば45リットル)以下の状態で、該洗濯槽10を目標回転数(例えば130rpm)まで回転させることにより行われる。本実施形態では、制御装置21は、前記排水弁7等からなる排水機構の排水能力を判定する判定手段としても機能し、判定に応じた高さの水位から残水脱水動作を開始する。
このとき、本実施形態では、制御装置21は、すすぎ行程後の排水時に、第1の所定水位よりも高い水位において、洗濯槽10内の水位が所定高さ減少する時間を計測することに基づいて、排水能力を判定するように構成されており。より具体的には、高水位(例えば62リットル)から、第1の所定水位(45リットル)まで低下するに要する所要時間(タイマー値t)が計測される。
その所要時間(タイマー値t)が、しきい値(例えば1分15秒)未満である場合、つまりタイマー値tがしきい値に至る前に既に第1の所定水位が検出された場合には、排水能力が高いと判定される。これに対し、所要時間(タイマー値t)が、しきい値(例えば1分15秒)以上である場合、つまり第1の所定水位が検出された時点で、タイマー値tがしきい値以上であった場合には、排水能力が低いと判定される。そして、制御装置21は、排水能力が高いと判定した場合には、第1の所定水位から残水脱水動作を開始し、排水能力が低いと判定した場合には、前記第1の所定水位よりも低い第2の所定水位(例えば27リットル)から残水脱水動作を開始する。尚、残水脱水動作は、一定時間(例えば2分間)実行され、その後、最終の脱水行程に移行される。
次に、上記構成の洗濯機1の動作について、図3〜図8も参照して述べる。図6のフローチャートは、例えば通常の洗濯運転コースが実行された場合の、制御装置21が実行する行程を順に示している。図7は、そのうちためすすぎ行程後の排水行程(図6のステップS9)における、制御装置21が実行する詳細な処理手順を示している。更に、図8は、制御装置21が実行する、ためすすぎ行程後の排水行程(図6のステップS9)における制御の状態を示している。即ち、時間経過に伴う、洗濯槽10の水位、排水弁7の開閉状態、クラッチ機構17の切替え状態(洗濯槽10側かパルセータ12側か)、洗濯槽10(洗濯機モータ16)の回転数の変化の様子を示している。
今、ユーザが、洗濯運転を実行させたい場合、ドラム10内に衣類を投入すると共に、注水ケース28の洗剤収容部に洗剤を投入する。そして、操作パネル24において洗濯運転のコース(例えば自動運転のコース)を選択設定し、運転をスタートさせる。すると、制御装置21は、図6に示す行程を順に実行して、洗濯運転を進めていく。この洗濯運転の全体的な行程については、ステップS9の排水の行程を除いて周知であるため、ごく簡単に説明する。尚、図示はしていないが、洗濯運転の開始時には、まず、ドラム10内の衣類の布量判定が行われ、布量判定に基づいて水位や時間などが決定される。ここでは、洗い及びすすぎの水位が高水位(62リットル)に設定される場合を例とする。
洗濯運転が開始されると、まずステップS1では、洗濯槽10(水槽4)内に設定水位まで給水する給水の行程が実行され、ステップS2にて、洗い行程が実行される。洗い行程が終了すると、ステップS3にて排水の行程が行われる。ステップS4では、中間脱水の行程が行われ、ステップS5にて、シャワーすすぎの行程が行われる。ステップS6にて、再度中間脱水の行程が実行される。ステップS7にて、設定されたすすぎ水位まで給水が行われ、ステップS8にて、ためすすぎの行程が実行される。ためすすぎの行程が終了すると、ステップS9にて排水の行程が実行され、その後、ステップS10にて最終の脱水の行程が実行される。
さて、上記ステップS9の排水の行程では、詳細には、図7のフローチャートに示す手順で処理が行われる。即ち、まずステップU1にて、排水弁7が開放され、これと共に、ステップU2にて、タイマーの計時が開始される。次のステップU3では、洗濯槽10内の水位が、第1の所定水位(45リットル)に到達したかどうかが判断される。そして、第1の所定水位に到達したときに(ステップU3にてYes)、ステップU4にて、その時点でタイマーが計時した値がタイマー値tとされる。
このとき、タイマー値tは、給水弁7の開放によって、洗濯槽10内の水位が高水位(62リットル)から第1の所定水位(45リットル)まで低下するに要した時間となり、排水機構の排水能力、つまり単位時間たりの排水量に応じた値となる。ステップU5では、タイマー値tが、しきい値(この場合1分15秒)未満かどうかが判断される。タイマー値tがしきい値未満であった場合には(ステップU5にてYes)、排水能力が高いと判定され、次のステップU6にて、第1の残水脱水動作が実行される。残水脱水動作については、図8の説明にて述べる。
一方、タイマー値tがしきい値以上であった場合には(ステップU5にてNo)、排水能力が低いと判定され、次のステップU8にて、洗濯槽10内の水位が第2の所定水位(27リットル)まで低下したかどうかが判断される。第2の所定水位に到達すると(ステップU8にてYes)、ステップU9にて、第2の残水脱水動作が実行される。この残水脱水動作は、一定の動作時間(例えば2分間)実行され(ステップU7)、排水行程が終了する。尚、詳しく図示はされていないが、排水開始から所定の時間内に第2の所定水位への到達が検知されなかった場合には(ステップU8にてNo)、異常と判断され、残水脱水動作は行われず、行程が強制終了される。
上記残水脱水動作においては、図8に示すような制御が行われる。即ち、排水の行程が開始されると(時刻T0)、排水弁7が開放される。このときに、クラッチ機構17は、パルセータ12側から洗濯槽10側に切り替えられる。また、この時点では、洗濯槽10(洗濯機モータ16)の回転数は0である。ためすすぎ終了時点では、洗濯槽10内の水位は高水位(62リットル)となっており、排水弁7の開放により、洗濯槽10(水槽4)からの排水が行われ、洗濯槽10内の水位は次第に低下していく。
そして、洗濯槽10内の水位が第1の所定水位に到達すると(時刻T1)、それまでに要した時間(タイマー値t)がしきい値(1分15秒)と比較される。タイマー値tがしきい値未満であった場合には、その時点(時刻T1)から、第1の残水脱水動作が実行される。この第1の残水脱水動作は、洗濯槽10の回転数を、例えば1秒間に、25rpmずつ加速しながら、目標回転数である130rpmまで上げることにより行われ、130rpmでの回転を一定時間継続した後、洗濯機モータ16がオフされ、洗濯槽10が停止される。
これに対し、洗濯槽10内の水位が第1の所定水位に到達するに要した時間(タイマー値t)がしきい値以上であった場合には、洗濯槽10内の水位が第2の所定水位(27リットル)に到達するまで排水を続ける。そして、洗濯槽10内の水位が第2の所定水位に到達した時点(時刻T2)から、第2の残水脱水動作が実行される。この第2の残水脱水動作も、同様に、洗濯槽10の回転数を、例えば1秒間に、25rpmずつ加速しながら、目標回転数である130rpmまで上げることにより行われ、130rpmでの回転を一定時間継続した後、洗濯機モータ16がオフされ、洗濯槽10が停止される。
上記したような残水脱水動作の実行により、洗濯槽10が回転して、水槽4の内壁面と脱水槽10の外周面との間で、水流が生じ、洗濯槽10の外周面や水槽4の内面などが水流で洗われる。また、洗濯槽10の回転に伴う遠心力により、洗濯槽10の外周側ひいては水槽4の内面に向かう水の圧力が大きくなり、効果的な洗浄が行われる。
ここで、残水脱水動作の開始時の水位は比較的低くても、残水脱水動作中においては、洗濯槽10内の水面が、遠心力により、外周側がいわばすり鉢状に持ち上がる現象が生ずる。この場合、洗濯槽10の回転前(停止時)においては、図3に示すように、洗濯槽10内の水面S1は比較的低く、水平である。これに対し、洗濯槽10が回転を開始すると、図4に示すように、洗濯槽10内の水面S2は、外周側がいわばすり鉢状に持ち上がるようになる。更に、洗濯槽10が目標回転数で回転していると、図5に示すように、水面S3の外周側での持ち上がり高さも溢水口4a近くに届くくらいまで大きくなる。水槽4の内面や洗濯槽10の外面に汚れが付着するのは、主として溢水口4aよりも下方なので、水槽4及び洗濯槽10の高さ方向全体に対する効果的な洗浄を行うことができる。
上記残水脱水動作は、排水弁7が開放して排水を行いながら実行されるので、洗濯槽10内での水位が必要以上に上がることを防止することができる。但し、例えば排水路8に物が詰まる等、排水機構よる排水能力が低くなった場合には、排水がスムーズに進まずに、洗濯槽10内の水の減少の仕方が異常に遅くなる(或いは水位が全く減少しない)ことが考えられる。そのような異常があると、外周側での水位が必要以上に高くなって、溢水水位(溢水口4a)を超えてしまう虞がある。
ところが、上記構成では、排水機構の排水能力が判定され、その判定に応じた高さの水位から、残水脱水動作が開始されることになる。排水能力が高い場合には、比較的高い第1の所定水位から残水脱水動作を開始しても、比較的短時間で排水が進むので、溢水することを防止することができる。また、排水能力が比較的低い場合には、比較的低い第2の所定水位から残水脱水動作を開始することによって、溢水することを未然に防止することができる。従って、残水脱水動作時には、水槽4及び洗濯槽10の高さ方向全体に対する効果的な洗浄を行うことが可能となりながら、溢水口4aから水を溢水させて無駄にすることを防止することができる。
このように本実施形態の洗濯機1によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、上記構成においては、制御装置21は、すすぎ行程後の排水動作中に、残水脱水動作を実行する。これにより、洗濯槽10の外周面や水槽4の内面などの汚れが付着しやすい部位が、水流で洗われるようになり、汚れの付着が防止される。別途のコースではなく通常の洗濯運転のコースの実行時に、いわば自動的に槽洗浄が行われることになるので、ユーザにとっての煩わしさがなくなる。ためすすぎの行程で使用した残水を利用するので、水を節約しながら槽洗浄を行うことができる。
そして、制御装置21は、排水機構における排水能力を判定し、その判定に応じた高さの水位から、残水脱水動作を開始する。排水能力が高い場合には、比較的高い水位から残水脱水動作を開始しても、溢水することを防止することができる。また、排水能力が比較的低い場合には、比較的低い水位から残水脱水動作を開始することによって、溢水することを未然に防止することができる。この結果、本実施形態によれば、残水脱水動作により槽洗浄を効果的に行うことができながら、残水脱水動作時において水が溢れること防止することができるという優れた効果を奏する。
特に本実施形態では、すすぎ行程後の排水時に、第1の所定水位よりも高い水位において、洗濯槽10内の水位が所定高さ減少する時間を計測することに基づいて、排水能力を判定するように構成した。これにより、排水機構の排水能力を確実に判定することができる。しかも、すすぎ行程後の排水時に第1の所定水位まで低下する前に判定を行うことができ、残水脱水動作を行う直前の排水能力をいわばリアルタイムで判定することができる。その判定に従って、開始水位を制御しながら残水脱水動作を実行することにより、槽洗浄の効果を得ながら、溢水を確実に防止することができる。
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について、図9を参照して述べる。この第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、すすぎ行程後の排水行程において制御装置21が実行する残水脱水動作の制御の状態にある。即ち、本実施形態では、制御装置21は、排水機構の排水能力の判定に応じて、残水脱水動作を行う際の、動作実行時間、洗濯槽10の回転速度、加速度、回転方法の少なくともいずれかを相違させるように構成されている。
具体的には、図9に示すように、ためすすぎ行程後、排水弁7が開放されて排水の行程が、例えば高水位(62リットル)から開始されると(時刻T0)、タイマーの計時が開始される。洗濯槽10内の水位が第1の所定水位に到達すると(時刻T1)、それまでに要した時間(タイマー値t)がしきい値(1分15秒)と比較され、排水能力が判定される。タイマー値tがしきい値(1分15秒)未満であった場合には、排水能力が高いと判定されて、その時点(時刻T1)から、第1の残水脱水動作が実行される。
この第1の残水脱水動作は、上記第1の実施形態と同様に、洗濯槽10の回転数を、例えば1秒間に、25rpmずつ加速しながら、目標回転数である130rpmまで上げることにより行われ、130rpmでの回転を一定時間継続した後、洗濯機モータ16がオフされ、時刻T3で洗濯槽10が停止される。残水脱水の動作時間は全体で例えば2分間とされる。
これに対し、タイマー値tがしきい値以上であった場合には、排水能力が低いと判定され、そのまま排水を続け、洗濯槽10内の水位が第2の所定水位に到達した時点(時刻T2)から、第2の残水脱水動作が実行される。本実施形態では、第2の残水脱水動作は、洗濯槽10の回転数を、例えば1秒間に、20rpmずつ加速しながら、目標回転数である150rpmまで上げることにより行われる。また、洗濯槽10の回転数が目標回転数に達した直後に洗濯機モータ16がオフされ、時刻TTで洗濯槽10が停止される。残水脱水の動作時間は全体で例えば1.75分間とされる。
上記したような残水脱水動作の実行により、洗濯槽10が回転して、水槽4の内壁面と脱水槽10の外周面との間で、水流が生じ、洗濯槽10の外周面や水槽4の内面などが水流で洗われ、効果的な槽洗浄が行われる。本実施形態では、排水能力が低いと判定された場合には、排水能力が低いと判定された場合に比べて、残水脱水動作時の洗濯槽10の目標回転速度を高くすると共に、目標回転数に至る加速度をより小さくするようにした。更に、動作時間をやや短くするようにした。
ここで、残水脱水動作において、洗濯槽10の回転速度が高いほど、槽洗浄の効果がより高まる。回転速度が低くなると、槽洗浄の効果は落ちるが、外周側の持ち上がりを抑えることができ、溢水防止効果を高めることができる。洗濯槽10の回転速度が低くても、その分、動作実行時間を長くすれば、回転速度が高くて動作実行時間が短い場合と同等の洗浄効果が得られる。加速度を小さくして、ゆっくり立ち上げると、洗濯槽10の外周側での水位の盛り上がりを抑えて、溢水を防止することができる。加速度を大きくすると、短時間で目標回転数に至り、その分槽洗浄の効果を高める、或いは、動作実行時間を短く済ませることができる。
この第2の実施形態によれば、残水脱水動作により槽洗浄を効果的に行うことができながら、残水脱水動作時において水が溢れること防止することができるといった上記第1の実施形態と同様の作用・効果が得られる。そして、それに加えて、排水能力の判定に応じて、残水脱水動作を行う際の動作実行時間、洗濯槽10の回転速度、加速度、回転方法の少なくともいずれかを相違させることにより、排水能力が低い場合でも、溢水を防止しながら、所定の槽洗浄の効果を得ることができる。
(3)第3の実施形態、その他の実施形態
図10は、第3の実施形態を示すものであり、制御装置21が実行するすすぎ行程から残水脱水動作における制御の様子を示している。この第3の実施形態が、上記第1の実施形態と異なるところは、次の点にある。即ち、この第3の実施形態では、ためすすぎのすすぎ水位が、高水位よりも低い水位(例えば53リットル)でためすすぎ行程が行われていた場合に、ためすすぎ行程の最終段階(後半部)において、洗濯槽10(水槽4)内に、高水位(例えば62リットル)まで追加的な給水(補注水)を行うようになっている。これと共に、追加的な給水中に、衣類をほぐすほぐし動作が行われ、その後、排水行程に移行される。
具体的には、図10に示すように、洗濯槽10(水槽4)内に、布量に応じた所定のすすぎ水位(この場合例えば53リットル)に水が溜められた状態で、ためすすぎの行程が開始される(時刻T11)。ためすすぎの行程では、クラッチ機構17がパルセータ12側に切替えられている状態で、洗濯機モータ16により、パルセータ12が、比較的低速(例えば50rpm)で駆動される。
一定時間のためすすぎの行程が進行すると(時刻T2)、給水弁27が開放され、洗濯槽10(水槽4)内への補注水が行われる。この補注水の期間は、パルセータ12が、比較的低速(例えば50rpm)で、間欠的に正逆回転駆動され、これにより、洗濯槽10内の衣類のほぐし動作が行われる。そして、洗濯槽10の水位が高水位(62リットル)に到達すると、補注水が完了し、給水弁27が閉塞されると共に、パルセータ12が停止される(時刻T13)。
この後は、排水弁7が開放されて排水の行程が開始される。またこのときには、クラッチ機構17が洗濯槽10側に切替えられる。この排水の行程では、上記第1の実施形態と同様に、洗濯槽10内の水位が第1の所定水位に到達するまでに要する時間(タイマー値t)が計測されてしきい値(1分15秒)と比較され、排水能力が判定される。判定された排水能力に応じた水位から第1又は第2の残水脱水動作が開始される(時刻T14)。所定時間の残水脱水動作が終了すると、最終脱水の行程に移行する。
このような第3の実施形態においても、第1の実施形態等と同様に、残水脱水動作により槽洗浄を効果的に行うことができながら、残水脱水動作時において水が溢れること防止することができるといった効果が得られる。そして、それに加えて、ためすすぎ行程の最終段階で、補注水により洗濯槽10内の水位を本来よりも高くした状態で、衣類のほぐし動作を含んだすすぎが行われるようになる。
これにより、すすぎ行程において、洗濯槽10内の衣類が水に浮いて均等になるようにほぐされるので、洗濯槽10内に衣類が塊り状態で存在する状態が解消され、次の残水脱水動作時の洗濯槽10のアンバランス回転の発生を未然に防止することができる。これと共に、洗濯槽10の回転抵抗の減少に伴い、排水時におけるクラッチ機構17の洗濯槽10側への切替えがしやすくなるといった利点も得られる。
尚、上記した各実施形態では、排水能力の判定を、高、低の2段階で行うようにしたが、排水能力の判定を3段階以上で行って、残水脱水動作を開始する所定水位を3段階以上に設けても良い。この場合、残水脱水動作における洗濯槽10の目標回転数や動作実行時間などについても、3段階以上で変更するように構成することもできる。
このとき、排水路8が完全に詰まったような場合を考慮して、最低の水位から残水脱水動作を開始した場合でも、洗濯槽10内の水が溢水口4aから溢れないような、目標回転数(例えば100rpm)とその水位とを予め設定しておくことが望ましい。また、上記各実施形態では、排水能力を判定するための到達となる水位と、第1の残脱水動作を開始する水位とを同じ水位(第1の所定水位)としたが、第1の所定水位よりも少し上の所定水位までで、排水能力を判定するようにしても良い。
そして、上記各実施形態では、排水能力の判定をすすぎ行程後の排水時に行うようにしたが、洗い行程後の排水時に、同様に、洗濯槽内の水位が所定高さ減少する時間を計測することに基づいて、排水能力を判定し、その結果を用い、すすぎ行程後の残水脱水動作に用いるようにしても良い。さらには、前回(或いは更に過去)の洗濯運転時において判定した結果を記憶しておいて、その結果を今回の残水脱水動作に用いるようにしても良い。但しこの場合、例えば定期的に、排水能力の判定を行って、判定結果を更新していくことが望ましい。
水道水だけでなく、機能水を供給できる構成の洗濯機であれば、洗濯槽10内に機能水を供給した状態で、残水脱水動作やためすすぎ行程を行うようにしても良い。機能水を水道水と混合して使用しても良い。この場合、上記機能水としては、直径が例えば数十nm〜数百nmの多数のファインバブル(ウルトラファインバブル又はマイクロバブル)を含むファインバブル水、例えば銀イオンを含む抗菌水、温水等があり、いずれも、槽洗浄の効果をより高めることができる。
上記各実施形態では、残水脱水動作における洗濯槽10の目標回転数を固定的に設けるようにしたが、布量検知に基づき、布量が小さい(軽い)場合には、目標回転数を通常よりも高く(例えば180rpm)する等の変更も可能である。また、残水脱水動作時に、洗濯槽10のアンバランス回転を検知した場合には、目標回転数を通常よりも低下させる(例えば120rpm)といった制御を行うことも可能である。その他、上記各実施形態で説明した、時間や、回転数、加速度、水位等の具体的数値は、一例を示したものに過ぎず、適宜変更して実施し得る。更には、排水弁とクラッチ機構とを連動させる構成のものであっても良い等、洗濯機の各機構のハードウエア構成などについても、様々な変更が可能である。
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。