以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.接合システムの構成>
まず、実施形態に係る接合システムの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図であり、図2は、同模式側面図である。また、図3は、第1基板および第2基板の模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、図1〜3を含む各図面では、説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略する場合がある。
図1に示す実施形態に係る接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する(図3参照)。
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。
なお、第1基板W1だけでなく、第2基板W2にも電子回路が形成される場合があり得る。また、上述した化合物半導体ウェハとしては、たとえばヒ化ガリウム、炭化シリコン、窒化ガリウムおよびリン化インジウムなどを含むウェハを用いることができる。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。
また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。例えば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1〜C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。なお、トランジション装置50,51の個数は2つに限定されない。
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70は、例えばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。また、記憶部は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置70の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
<2.接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について図4および図5を参照して説明する。図4は、接合装置41の構成を示す模式平面図である。図5は、接合装置41の構成を示す模式側面図である。
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成される。また、内壁103にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口104が形成される。
搬送領域T1には、トランジション110、ウェハ搬送機構111、反転機構130および位置調節機構120が、例えば搬入出口101側からこの順番で並べて配置される。
トランジション110は、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置する。トランジション110は、例えば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
ウェハ搬送機構111は、図4および図5に示すように、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。ウェハ搬送機構111は、搬送領域T1内、又は搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送することが可能である。
位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台121と、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有する。位置調節機構120は、基台121に保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部122を用いて上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きが調節される。
反転機構130は、上ウェハW1の表裏面を反転させる。具体的には、反転機構130は、上ウェハW1を保持する保持アーム131を有する。保持アーム131は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また保持アーム131には、上ウェハW1を保持する保持部材132が例えば4箇所に設けられている。
保持アーム131は、例えばモータなどを備えた駆動部133に支持される。保持アーム131は、かかる駆動部133によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、例えばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部133は、鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動することができる。
このように、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向及び水平方向に移動することができる。また、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120と後述する上チャック140との間を移動することができる。
処理領域T2には、上ウェハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック140と、下ウェハW2を載置して下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック141とが設けられる。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成される。
図5に示すように、上チャック140は、上チャック140の上方に設けられた上チャック保持部150に保持される。上チャック保持部150は、処理容器100の天井面に設けられる。上チャック140は、上チャック保持部150を介して処理容器100に固定される。
上チャック保持部150には、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部151が設けられている。上部撮像部151には、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられる。
下チャック141は、下チャック141の下方に設けられた第1の下チャック移動部160に支持される。第1の下チャック移動部160は、後述するように下チャック141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部160は、下チャック141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。第1の下チャック移動部160は、下チャック141を昇降させる第2昇降部の一例である。
第1の下チャック移動部160には、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部161が設けられている(図5参照)。下部撮像部161には、例えばCCDカメラが用いられる。
第1の下チャック移動部160は、第1の下チャック移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール162、162に取り付けられている。第1の下チャック移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
一対のレール162、162は、第2の下チャック移動部163に配設されている。第2の下チャック移動部163は、当該第2の下チャック移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。一対のレール164、164は、たとえば処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設される。
次に、接合装置41の上チャック140と下チャック141の詳細な構成について図6を参照して説明する。図6は、上チャック140および下チャック141の構成を示す模式側断面図である。
図6に示すように、上チャック140は、上ウェハW1と同径もしくは上ウェハW1より大きい径を有する本体部170を有する。
本体部170は、上チャック保持部150の支持部材180によって支持される。支持部材180は、平面視において少なくとも本体部170の上面を覆うように設けられ、且つ本体部170に対して例えばネジ止めによって固定されている。支持部材180は、たとえば、処理容器100の天井面に設けられた複数の支持柱181(図5参照)に支持される。
支持部材180および本体部170の中心部には、支持部材180および本体部170を鉛直方向に貫通する貫通孔178が形成される。貫通孔178の位置は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。そして、貫通孔178には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウェハW1の中心部と当接して当該上ウェハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔178を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
上記のように構成されたストライカー190は、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による上ウェハW1の押圧荷重を制御する。
本体部170の下面には、上ウェハW1の裏面(非接合面W1n)に接触する複数のピン171が設けられている。また、本体部170の下面には、上ウェハW1の裏面(非接合面W1n)の外周部を支持するリブ172が設けられている。リブ172は、複数のピン171の外側に環状に設けられている。
また、本体部170の下面には、リブ172の内側において別のリブ173が設けられている。リブ173は、リブ172と同心円状に環状に設けられている。そして、リブ172の内側の領域は、リブ173の内側の第1の吸引領域174aと、リブ173の外側の第2の吸引領域174bとに区画される。
第1の吸引領域174aには、複数の吸引管175aが設けられる。複数の吸引管175aには、圧力調整器176aを介して真空ポンプ177aが接続される。また、第2の吸引領域174bには、複数の吸引管175bが設けられる。複数の吸引管175bには、圧力調整器176bを介して真空ポンプ177bが接続される。
そして、上ウェハW1、本体部170及びリブ172に囲まれて形成された吸引領域174a、174bをそれぞれ吸引管175a、175bを介して真空引きし、吸引領域174a、174bを減圧する。このとき、吸引領域174a、174bの外部の雰囲気が大気圧であるため、上ウェハW1は減圧された分だけ大気圧によって吸引領域174a、174b側に押され、上チャック140に上ウェハW1が吸着保持される。上チャック140は、第1の吸引領域174aと第2の吸引領域174b毎に上ウェハW1を真空引き可能である。
かかる場合、リブ172が上ウェハW1の裏面(非接合面W1n)の外周部を支持するので、上ウェハW1はその外周部まで適切に真空引きされる。このため、上チャック140に上ウェハW1の全面が吸着保持され、当該上ウェハW1の平面度を小さくして、上ウェハW1を平坦にすることができる。
しかも、複数のピン171の高さが均一なので、上チャック140の下面の平面度をさらに小さくすることができる。このように上チャック140の下面を平坦にして(下面の平面度を小さくして)、上チャック140に保持された上ウェハW1の鉛直方向の歪みを抑制することができる。また、上ウェハW1の裏面(非接合面W1n)は複数のピン171に支持されるため、上チャック140による上ウェハW1の真空引きを解除する際、当該上ウェハW1が上チャック140から剥がれ易くなる。
つづいて、下チャック141の構成について説明する。下チャック141には、上チャック140と同様にピンチャック方式が採用されている。下チャック141は、下ウェハW2と同径もしくは下ウェハW2より大きい径を有する本体部250を有している。本体部250の上面には、下ウェハW2の裏面(非接合面W2n)に接触する複数のピン251が設けられている。また本体部250の上面には、下ウェハW2の裏面(非接合面W2n)の外周部を支持するリブ252が設けられている。リブ252は、複数のピン251の外側に環状に設けられている。
本体部250におけるリブ252よりも内側の領域には、複数の吸引管255が設けられる。複数の吸引管255は、圧力調整器256を介して真空ポンプ257に接続される。
そして、下ウェハW2、本体部250及びリブ252に囲まれて形成された吸引領域254を複数の吸引管255を介して真空引きすることによって減圧する。このとき、吸引領域254の外部の雰囲気が大気圧であるため、下ウェハW2は減圧された分だけ大気圧によって吸引領域254側に押され、下チャック141に下ウェハW2が水平に吸着保持される。
かかる場合、リブ252が下ウェハW2の裏面の外周部を支持するため、下ウェハW2はその外周部まで適切に真空引きされる。このため、下チャック141に下ウェハW2の全面が吸着保持され、当該下ウェハW2の平面度を小さくして、下ウェハW2を平坦にすることができる。また、下ウェハW2の裏面は複数のピン251に支持されているので下チャック141による下ウェハW2の真空引きを解除する際、当該下ウェハW2が下チャック141から剥がれ易くなる。
さらに、接合装置41は、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を下ウェハW2の面内方向に沿って変形させる変形部300を備える。
実施形態に係る接合装置41は、空気圧を用いて下チャック141を下ウェハW2の面内方向(すなわち水平方向)に沿って変形させることにより、下チャック141に吸着保持された下ウェハWを面内方向に沿って変形させる。
なお、下ウェハW2の外周部とは、たとえば、下ウェハW2の外縁端から20mmの範囲をいう。
ここで、変形部300の構成について図6および図7を参照して説明する。図7は、変形部300の構成を示す模式平面図である。
図6に示すように、変形部300は、空洞部310と、圧力調節部320と、接続管330とを備える。
空洞部310は、本体部250の内部に形成される。具体的には、図7に示すように、空洞部310は、下ウェハW2の周方向に沿った円環状の内部空間311を有し、本体部250の外周部においてリブ252と同心円状に配置される。
圧力調節部320は、接続管330を介して空洞部310に接続され、空洞部310内の圧力を調節する。具体的には、圧力調節部320は、空洞部310の内部に圧縮気体(ここでは、圧縮空気とする)を供給する給気部321と、空洞部310内を排気する排気部322とを備える。給気部321は、たとえばコンプレッサであり、排気部322は、たとえば真空ポンプである。
ここでは、給気部321と排気部322とが共通の接続管330に接続される場合の例を示すが、給気部321と排気部322とは、それぞれ異なる接続管を介して空洞部310に接続されてもよい。
次に、変形部300の動作例について図8Aおよび図8Bを参照して説明する。図8Aおよび図8Bは、図6に示すH部の模式拡大図である。
図8Aに示すように、空洞部310は、下ウェハW2の周方向に沿って見た場合(すなわち図8Aの紙面手前側から奥側に向かって見た場合)に、下チャック141の本体部250の厚み方向、すなわち、鉛直方向に長い形状を有する。具体的には、空洞部310は、長円形状、好ましくは楕円形状を有する。
変形部300は、給気部321を用いて空洞部310の内部空間311に圧縮空気を供給することにより、内部空間311を加圧する。これにより、空洞部310が拡張し、これに伴い、空洞部310を内包する下チャック141の本体部250が拡張する。このとき、本体部250の拡張に伴い、本体部250に設けられたリブ252やピン251が本体部250の径方向外方に向かって変位することで、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を伸張させることができる。
通常、物体を内部から加圧すると、その物体は真円に近付こうとする。このため、空洞部310を本体部250の厚み方向に長い形状とすることで、内部空間311を加圧した場合における空洞部310の変形量のうち本体部250の厚み方向と直交する径方向への変形量を、本体部250の厚み方向への変形量と比較して多くすることができる。
したがって、変形部300によれば、本体部250の厚み方向への変形量を抑えつつ、空洞部310を拡張させることができる。すなわち、下ウェハW2の平坦度を維持しつつ、下ウェハW2の外周部を伸張させることができる。
なお、空洞部310は長円形状であることが好ましい。長円形状とすることで、空洞部310に対してより均等に圧力がかかるようになり、本体部250の強度を維持しやすくなるためである。好ましくは、空洞部310は、本体部250の厚み方向に長い楕円形状である。
また、空洞部310は、リブ252の内周側に配置されている。これにより、空洞部310を拡張させた場合に、空洞部310の外周側に位置するリブ252およびピン251を本体部250の径方向外方に向かって変位させることができる。また、空洞部310を拡張させても、空洞部310の内周側に位置するピン251はほとんど変位しない。したがって、変形部300によれば、下ウェハW2の外周部のみを下ウェハW2の面内方向に沿って伸張させることが可能である。
一方、図8Bに示すように、変形部300は、排気部322を用いて空洞部310内を排気することにより、空洞部310の内部空間311を減圧する。内部空間311が減圧されることで、空洞部310が収縮し、空洞部310の収縮に伴って本体部250の外周部が収縮する。これにより、空洞部310の外周側に位置するリブ252やピン251が本体部250の径方向内方に向かって変位し、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部が下ウェハW2の面内方向に沿って収縮する。
このように、変形部300は、給気部321から供給される圧縮空気を用いて空洞部310を加圧して下チャック141の外周部を伸張させることで、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を伸張させることができる。また、変形部300は、排気部322を用いて空洞部310を減圧して下チャック141の外周部を収縮させることで、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を収縮させることができる。
<3.接合システムの具体的動作>
次に、接合システム1の具体的な動作について図9および図10A〜図10Gを参照して説明する。図9は、接合システム1が実行する処理の一部を示すフローチャートである。また、図10A〜図10Gは、接合処理の動作説明図である。なお、図9に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される(ステップS102)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、反転機構130の保持アーム131が回動して上チャック140の下方に移動する。そして、反転機構130から上チャック140に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で、上チャック140にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
上ウェハW1に上述したステップS101〜S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面W2jが洗浄される(ステップS107)。なお、ステップS107における下ウェハW2の接合面W2jの親水化および洗浄は、上述したステップS102と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
その後、下ウェハW2は、ウェハ搬送機構111によって下チャック141に搬送され、下チャック141に吸着保持される(ステップS109)。下ウェハW2は、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で、下チャック141にその非接合面W2nが吸着保持される。
つづいて、下ウェハW2は、変形部300によって外周部の歪みが補正される(ステップS110)。たとえば、変形部300は、給気部321から供給される圧縮空気を用いて空洞部310を加圧することにより、下チャック141の外周部を伸張させて、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を伸張させる(図10A参照)。あるいは、変形部300は、排気部322を用いて空洞部310を減圧することにより、下チャック141を収縮させて、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部を収縮させる。
なお、下ウェハW2の外周部を伸張させるか収縮させるかは、重合ウェハTの外周部に生じることとなる歪みの方向に応じて決定される。すなわち、重合ウェハTの外周部に収縮方向の歪みが生じるのであれば、ステップS110の処理において下ウェハW2の外周部を事前に伸張させておくことで、上記収縮方向の歪みを低減することができる。反対に、重合ウェハTの外周部に伸張方向の歪みが生じる場合には、ステップS110の処理において下ウェハW2の外周部を事前に収縮させておくことで、上記伸張方向の歪みを低減することができる。
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS111)。
図10Bに示すように、上ウェハW1の接合面W1jには予め定められた複数、たとえば3点の基準点A1〜A3が形成され、同様に下ウェハW2の接合面W2jには予め定められた複数、たとえば3点の基準点B1〜B3が形成される。これら基準点A1〜A3,B1〜B3としては、たとえば上ウェハW1および下ウェハW2上に形成された所定のパターンがそれぞれ用いられる。なお、基準点の数は任意に設定可能である。
まず、図10Bに示すように、上部撮像部151および下部撮像部161の水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部161が上部撮像部151の略下方に位置するように、第1の下チャック移動部160と第2の下チャック移動部163によって下チャック141を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部151と下部撮像部161とで共通のターゲットXを確認し、上部撮像部151と下部撮像部161の水平方向位置が一致するように、下部撮像部161の水平方向位置が微調節される。
次に、図10Cに示すように、第1の下チャック移動部160によって下チャック141を鉛直上方に移動させた後、上チャック140と下チャック141の水平方向位置の調節が行われる。
具体的には、第1の下チャック移動部160と第2の下チャック移動部163によって下チャック141を水平方向に移動させながら、上部撮像部151を用いて下ウェハW2の接合面W2jの基準点B1〜B3を順次撮像する。同時に、下チャック141を水平方向に移動させながら、下部撮像部161を用いて上ウェハW1の接合面W1jの基準点A1〜A3を順次撮像する。なお、図10Cは上部撮像部151によって下ウェハW2の基準点B1を撮像するとともに、下部撮像部161によって上ウェハW1の基準点A1を撮像する様子を示している。
撮像された画像データは、制御装置70に出力される。制御装置70では、上部撮像部151で撮像された画像データと下部撮像部161で撮像された画像データとに基づいて、上ウェハW1の基準点A1〜A3と下ウェハW2の基準点B1〜B3とがそれぞれ合致するように、第1の下チャック移動部160および第2の下チャック移動部163によって下チャック141の水平方向位置を調節させる。こうして上チャック140と下チャック141の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置が調節される。
次に、図10Dに示すように、第1の下チャック移動部160によって下チャック141を鉛直上方に移動させて、上チャック140と下チャック141の鉛直方向位置の調節が行われ、当該上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節が行われる(ステップS112)。このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔は所定の距離、たとえば80μm〜200μmになっている。
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2の接合処理が行われる(ステップS113)。なお、変形部300によって下ウェハW2の外周部が伸張または収縮された状態は、接合処理が終了するまで継続される。
先ず、図10Eに示すように、真空ポンプ177a(図6参照)を停止して、第1の吸引領域174aにおける上ウェハW1の吸着保持を解除した後、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押し下げて、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とを接触させて押圧する。
これにより、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する。具体的には、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S106において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S107において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
その後、図10Fに示すように、上ウェハW1と下ウェハW2との接合領域は、上ウェハW1および下ウェハW2の中心部から外周部へ拡大していく。
その後、図10Gに示すように、真空ポンプ177b(図6参照)の作動を停止して、第2の吸引領域174bにおける上ウェハW1の吸着保持を解除する。そうすると、上ウェハW1の外周部が下ウェハW2上に落下する。これにより、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される。
その後、重合ウェハTは、搬送装置61によってトランジション装置51に搬送された後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットC3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
上述してきたように、実施形態に係る接合装置41は、上チャック140(第1保持部の一例)と、下チャック141(第2保持部の一例)と、ストライカー190と、変形部300とを備える。上チャック140は、上ウェハW1(第1基板の一例)を上方から吸着保持する。下チャック141は、下ウェハW2を下方から吸着保持する。ストライカー190は、上ウェハW1の中心部を上方から押圧して下ウェハW2に接触させる。変形部300は、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部の少なくとも一部を下ウェハW2の面内方向に沿って変形させる。
したがって、実施形態に係る接合装置41によれば、重合ウェハTの外周部に生じる局所的な歪みを低減することができる。
<4.第1の変形例>
次に、接合装置41の変形例について説明する。まず、第1の変形例について図11を参照して説明する。図11は、第1の変形例に係る変形部の構成を示す模式平面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上述した実施形態では、変形部300が、円環状の内部空間311を有する空洞部310を備える場合の例について説明した。すなわち、上述した実施形態では、変形部300によって下ウェハW2の外周部を全周に亘って均一に伸張または収縮させる場合の例について説明した。しかし、変形部は、下ウェハW2の外周部の少なくとも一部を下ウェハW2の面内方向に沿って変形させるものであってもよい。
たとえば、図11に示すように、第1の変形例に係る変形部300Aが備える空洞部310Aは、下ウェハW2の周方向に沿って並べて配置される複数(ここでは3つ)の個別空間312を有する。各個別空間312は、下ウェハW2の周方向に沿って円弧状に形成される。
また、変形部300Aは、各個別空間312の圧力を個別に調節する圧力調節部320Aを備える。圧力調節部320Aは、複数の給気部321と複数の排気部322とを備え、各給気部321および各排気部322は、接続管330Aを介して個別空間312に接続される。
かかる構成とすることにより、たとえば、複数の個別空間312のうち何れか1つに給気部321からの圧縮空気を供給して、下ウェハW2の外周部の一部のみを下ウェハW2の面内方向に沿って伸張させることができる。また、複数の個別空間312のうちの1つに給気部321からの圧縮空気を供給しつつ、他の個別空間312を排気部322を用いて減圧することにより、下ウェハW2の外周部の一部を伸張させつつ、他の一部を収縮させることも可能である。
なお、ここでは、空洞部310Aが3つの個別空間312を有することとしたが、個別空間312の個数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
<5.第2の変形例>
次に、第2の変形例について図12A〜図12Cを参照して説明する。図12A〜図12Cは、第2の変形例に係る変形部の構成を示す模式側面図である。
上述した実施形態では、排気部322を用いて空洞部310を減圧することにより、空洞部310を収縮させて下ウェハW2の外周部を収縮させることとした。しかしながら、給気部321により空洞部310を変形させることと比較して、排気部322により空洞部310を変形させることは難しく、排気部322の性能によっては、空洞部310を変形させるのに十分な排気を行うことが困難な場合もある。
そこで、下ウェハW2の外周部を収縮させたい場合には、たとえば、図12Aに示すように、下チャック141に下ウェハW2を吸着保持させる前に、給気部321から空洞部310に圧縮空気を供給して空洞部310を拡張させた状態としておく。すなわち、下チャック141の本体部250を事前に伸張させた状態としておく。なお、この処理は、たとえば、図9に示すステップS108とステップS109の間に行われる。
その後、図12Bに示すように、伸張させた状態の下チャック141に下ウェハW2を吸着保持させた後、図12Cに示すように、給気部321からの圧縮空気の供給を停止する。これにより、下チャック141が元の状態に戻り、これに伴って下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部が収縮する。
このように、変形部300は、下チャック141に下ウェハW2を吸着保持させる前から下チャック141を伸張させておき、下チャック141に下ウェハW2を吸着保持させた後で、下チャック141を伸張させた状態を解除することで、排気部322を用いることなく下ウェハW2の外周部を収縮させることができる。この場合、排気部322は不要となる。
<6.第3の変形例>
次に、第3の変形例について図13Aおよび図13Bを参照して説明する。図13Aおよび図13Bは、第3の変形例に係る変形部の構成を示す模式側面図である。
図13Aに示すように、第3の変形例に係る変形部300Bは、リブ252の内周側に配置される第1の空洞部310B1と、リブ252の外周側に配置される第2の空洞部310B2とを備える。第1の空洞部310B1と第2の空洞部310B2とは、リブ252と同心円状に配置される。
また、変形部300Bは、第1の空洞部310B1内に圧縮空気を供給する第1の給気部321B1と、第2の空洞部310B2内に圧縮空気を供給する第2の給気部321B2とを備える。第1の給気部321B1は、第1の接続管330B1を介して第1の空洞部310B1に接続され、第2の給気部321B2は、第2の接続管330B2を介して第2の空洞部310B2に接続される。
かかる変形部300Bは、下ウェハW2の外周部を伸張させる場合には、第1の給気部321B1を用いて第1の空洞部310B1を加圧する。これにより、下チャック141が伸張し、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部が伸張する。
一方、下ウェハW2の外周部を収縮させる場合には、図13Bに示すように、第2の給気部321B2を用いて第2の空洞部310B2を加圧する。これにより、第2の空洞部310B2よりも内周側に配置されるリブ252や複数のピン251が本体部250の中心に向かって変位することによって、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部が収縮する。なお、リブ252の内周側に配置される第1の空洞部310B1が、本体部250の変形を吸収することで、第1の空洞部310B1よりも内周側における下ウェハW2の収縮が抑えられる。したがって、下ウェハW2の外周部のみを収縮させることができる。
このように、変形部300Bは、リブ252よりも外周側に第2の空洞部310B2を設け、かかる第2の空洞部310B2を加圧することにより、排気部322を用いることなく下ウェハW2の外周部を収縮させることができる。この場合も、排気部322は不要となる。
<7.第4の変形例>
次に、第4の変形例について図14を参照して説明する。図14は、第4の変形例に係る変形部の構成を示す模式側面図である。
図14に示すように、第4の変形例に係る変形部300Cは、加熱部350(温度調節部の一例)と、冷却部360とを備える。加熱部350は、たとえばセラミックヒータ等の抵抗加熱ヒータであり、下チャック141の本体部250の内部に設けられる。また、加熱部350は、たとえば下ウェハW2の周方向に沿った円環状を有しており、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の外周部の下方に配置される。
冷却部360は、本体部250の内部に形成された流路361と、流路361を冷却水供給源370と接続する供給管362とを備える。流路361は、下ウェハW2の周方向に沿った円環状を有し、加熱部350の内周側において加熱部350と隣接して配置される。冷却水供給源370から供給される冷却水(たとえば水)が供給管362を介して流路361に供給されることにより、本体部250は冷却される。
また、第4の変形例において複数のピン251は、下ウェハW2の外周部に接触する外周側ピン251C1と、外周側ピン251C1よりも内周側に配置される内周側ピン251C2とを有する。
外周側ピン251C1には、少なくとも頂部にDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングが施されている。これにより、外周側ピン251C1は、内周側ピン251C2と比較して摩擦係数が低くなっている。また、リブ252の上面にも、同様にDLCコーティングが施されており、リブ252も内周側ピン251C2と比較して摩擦係数が低くなっている。
変形部300Cは、上記のように構成されており、加熱部350を用いて下ウェハW2の外周部を加熱することにより、下ウェハW2の外周部を熱膨張させて下ウェハW2の面内方向に沿って伸張させる。加熱部350により発生した熱のうち、本体部250の内周側に伝搬する熱は、流路361を流れる冷却水によって吸収される。これにより、冷却部360よりも内周側への熱の伝搬が抑制されるため、下ウェハW2だけを伸張させることができる。
また、通常、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2を加熱しても、下ウェハW2は下チャック141に拘束された状態であるため変形しないかほとんど変形しない。これに対し、第4の変形例では、下ウェハW2の外周部に接触する外周側ピン251C1およびリブ252の上面がDLCコーティングによって低摩擦化されている。このため、下ウェハW2を吸着保持した状態でも、加熱により下ウェハW2の外周部を伸張させることができる。
なお、DLCコーティングは、耐摩擦性や耐食性に優れる他、摩擦時に相手材(下ウェハW2)の摩耗・損傷が生じにくく、また、摩擦時に相手材との化学反応が起こりにくいという点で、外周側ピン251C1およびリブ252を低摩擦化させる手段として効果的である。ただし、外周側ピン251C1およびリブ252を低摩擦化させる手段は、DLCコーティングに限定されない。たとえば、外周側ピン251C1を内周側ピン251C2よりも摩擦係数の少ない材料で形成することとしてもよい。
<8.第5の変形例>
次に、第5の変形例について図15を参照して説明する。図15は、第5の変形例に係る変形部の構成を示す模式側面図である。
上述した第4の変形例では、加熱部350が下チャック141の本体部250の内部に設けられる場合の例を示したが、加熱部は、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の上方に配置されてもよい。
たとえば、図15に示すように、第5の変形例に係る変形部300Dは、加熱部355(温度調節部の一例)と、冷却部360とを備える。
加熱部355は、たとえば、気体を供給するノズルであり、下ウェハW2の外周部の上方に配置されて、下ウェハW2の外周部に向けて温風を供給することによって下ウェハW2の外周部を加熱する。
このように、加熱部355は、必ずしも下チャック141の本体部250の内部に設けられることを要さず、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の上方に配置されてもよい。また、加熱部355は、必ずしも気体を供給するノズルであることを要さず、抵抗加熱ヒータやランプヒータなどであってもよい。
また、ここでは、下ウェハW2の外周部を加熱することによって下ウェハW2の外周部を伸張させる場合の例について説明したが、変形部300Dは、加熱部355に代えて、下ウェハW2の外周部を冷却する冷却部(温度調節部の一例)を備えていてもよい。冷却部としては、たとえば、下ウェハW2の外周部の上方に配置されて、下ウェハW2の外周部に向けて冷風を供給するノズルを用いることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。