JP6884729B2 - 接合材、及び接合材の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1は、銀粒子を分散媒に分散させたペーストを用いて複数の部材を接合する接合方法を開示している。銀粒子を分散媒に分散させたペーストは耐熱性に優れる。ところが、銀粒子を分散媒に分散させたペーストにあっては、イオンマイグレーションの発生等の問題があった。
このような状況下で、銅粒子を含むシート状の接合材が提案されている(特許文献3〜5)。銅粒子を含むシート状の接合材は、接合の際に扱いやすい。
しかし、工業施設においては、還元性ガスの使用は排気ガスの処理工程の複雑化の原因となり、還元性ガスを処理する設備が必要とされる。
[1] 銅を主成分とし、平均粒子径が300nm以下である銅微粒子を含む板状又はシート状の接合材であって、前記銅微粒子を還元する還元剤をさらに含む、接合材。
[2] 前記還元剤が、ポリオール溶媒及び有機酸のいずれか一方又は両方を含む、[1]の接合材。
[3] 前記還元剤が、水酸化ホウ素ナトリウム及びヒドラジンのいずれか一方又は両方をさらに含む、[2]の接合材。
[4] 前記還元剤の含有量が、前記銅微粒子100質量%に対し1.52質量%以上11.1質量%未満である、[1]〜[3]のいずれかの接合材。
[5] 前記銅微粒子の比表面積に対する質量酸素濃度の割合が、0.1〜1.2質量%・g/m2である、[1]〜[4]のいずれかの接合材。
[6] 前記銅微粒子の比表面積に対する質量炭素濃度の割合が、0.008〜0.3質量%・g/m2である、[1]〜[5]のいずれかの接合材。
[7] 厚さが100〜1000μmである、[1]〜[6]のいずれかの接合材。
[8] 銅を主成分とし、平均粒子径が300nm以下である銅微粒子を含む板状又はシート状の接合材の製造方法であって、
前記銅微粒子を還元する還元剤と前記銅微粒子とを混合し、
前記銅微粒子と前記還元剤とを含む混合物を加圧して、板状又はシート状に成形する、接合材の製造方法。
[9] 前記混合物を加圧する際の圧力が、10MPa以上である、[8]の接合材の製造方法。
銅粒子の「平均粒子径」は、銅粒子が球形である場合、球の直径を意味し、銅粒子が楕円球形である場合、長径方向の長さを意味する。平均粒子径はSEM(走査型電子顕微鏡)により測定される値である。
銅粒子の「質量酸素濃度」とは、酸素窒素分析装置(例えば、LECO社製「TC600」)により測定される値である。
銅粒子の「質量炭素濃度」とは、炭素硫黄分析装置(例えば、堀場製作所社製「EMIA−920V」)により測定される値である。
「せん断強度」は、市販のボンドテスター装置(例えば、デイジ社製「4000Plus」)により測定される値である。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本発明の接合材は、銅微粒子を含み、銅微粒子を還元する還元剤をさらに含む。接合材は、本発明の効果を損なわない範囲で、銅微粒子及び還元剤以外に分散剤等の任意成分をさらに含んでもよい。
従来の銅微粒子は、表面が酸化されることで、亜酸化銅からなる被膜が不可避的に形成されるため、分散性が低下するおそれがある。また、従来の銅微粒子は、表面に製造工程において付着した炭素が存在する場合があるため、接合力が低下するおそれがある。
これに対して、本発明においては、銅微粒子が表面に炭酸銅を含む被膜を有する場合、銅微粒子の焼結温度を、従来に比べて低く抑えることが可能となる。よって、銅微粒子が前期被膜中に炭酸銅を含む場合、銅微粒子の焼結温度を低く抑えながら接合力を高めることができる。
分散媒として機能できる化合物は、常温で液体の化合物が好ましく、150度以上の高温下で気化する液体の化合物がさらに好ましい。これにより、接合の際に還元剤が気化し、後述の接合体に還元剤が残存しにくくなる。その結果、ボイド、クラックが発生しにくくなり、接合力がさらに優れる。
ポリオール溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
還元剤の含有量が銅微粒子100質量%に対し、1.52質量%以上であると、窒素雰囲気下で接合した際の接合力がさらに優れ、還元雰囲気下で接合した際の接合力より高い接合力が得られる。
還元剤の含有量が銅微粒子100質量%に対し、11.1質量%未満であると、ボイド、クラックが発生しにくく、接合力がさらに優れ、接合材を板状又はシート状に成形しやすくなる。
以上説明した接合材にあっては、還元剤を含むため、銅微粒子の高い表面活性が維持されやすくなる。よって、部材の接合を不活性雰囲気下で行う場合でも優れた接合力を発揮できる。
本発明の接合材の製造方法は、銅微粒子を含む板状又はシート状の接合材の製造方法である。
まず、本発明の接合材の製造方法では、銅微粒子を還元する還元剤と銅微粒子とを混合する。銅微粒子の詳細及び好ましい態様は、「<接合材>」の項で上述した内容と同様である。還元剤の詳細及び好ましい態様は、「<接合材>」の項で上述した内容と同様である。
銅微粒子と還元剤とを混合する方法は特に限定されない。例えば、自公転式ミキサー、乳鉢、ミル攪拌、スターラー攪拌等を用いる方法が例示される。
加圧する際の雰囲気は特に限定されず、不活性雰囲気下でも還元性雰囲気でもよい。ただし、利便性の点から大気中等の不活性雰囲気下で加圧することが好ましい。
前記混合物を加圧する際の成形時間は特に限定されない。成形時間としては、例えば、1〜10分とすることができる。
以上説明した接合材の製造方法にあっては、銅微粒子を還元する還元剤と銅微粒子とを混合し、混合物を加圧して、板状又はシート状に成形するため、銅微粒子の高い表面活性を維持したまま接合材を製造できる。よって、本発明の接合材の製造方法によれば、部材の接合を不活性雰囲気下で行う場合でも優れた接合力を発揮する接合材を製造できる。
本発明の接合材又は本発明の接合材の製造方法で得られる接合材は、例えば、接合体の製造の用途に適用できる。接合体としては、例えば、上述の接合材の加圧物と後述の第1の部材と第2の部材とを備えるものが例示される。接合体は、第1の部材と第2の部材との間に接合材の加圧物を有する。接合体は、第1の部材及び第2の部材の間に設けられた接合材の加圧物によって第1の部材と第2の部材とが接合された接合物である。
接合層の厚さが50μm以上であると、接合層が応力を緩和する効果が得られやすくなり、接合体の機械的強度がよくなる。
接合層の厚さが800μm以下であると、第1の部材と第2の部材との間の接合力がさらに優れ、接合体の機械的強度がよくなる。
接合体の製造方法としては、例えば、接合材を第1の部材と第2の部材との間に配置し、次いで、接合体の製造方法では、接合材を加圧して、第1の部材と第2の部材とを接合する方法が例示される。
不活性雰囲気下における接合の圧力は、例えば、1〜80MPaとすることができる。
不活性雰囲気下における接合の温度は、例えば、150℃以上とすることができる。
不活性雰囲気下における接合の時間は、例えば、1分以上とすることができる。
銅円柱:無酸素銅円柱C1020(直径6mm、長さ5mm)。
銅板:無酸素銅板C1020(18mm四方、厚さ4mm)。
不活性雰囲気:100体積%の窒素ガス。
還元性雰囲気:3体積%の水素ガスと97体積%の窒素ガスとを含む混合ガス。
銅微粒子の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により測定した。
銅粒子の「質量酸素濃度」は、酸素窒素分析装置(LECO社製「TC600」)により測定した。
銅粒子の「質量炭素濃度」は、炭素硫黄分析装置(堀場製作所社製「EMIA−920V」)により測定した。
接合体のせん断強度は、ボンドテスター(デイジ社製「4000Plus」)を用いて測定した。
(接合材の製造)
図1に示す冶具1を用いて、シート状の接合材を製造した。
具体的には、まず、特許第4304221号公報に記載された製造方法によって得られる銅微粒子を原料として準備した。得られた銅微粒子の平均粒子径を算出した結果、110nmであった。また、得られた銅微粒子の質量酸素濃度の割合は、0.25質量%・g/m2であり、質量炭素濃度の割合は、0.03質量%・g/m2であった。
銅微粒子100質量%に対して還元剤としてエチレングリコールを6質量%添加し、自公転式ミキサーで攪拌して混合粒子を得た。
次に、図1に示すように、中心に直径6mmの穴が開いた、炭化タングステン製の長さ50mmの円筒状の冶具1の中心穴に、混合粒子2を添加した。次いで、冶具1の中心穴の両端から、直径6mmの炭化タングステン製の円柱を中心穴に対して垂直に差込み、加圧してシート状に成形した。加圧成形は、常温大気中、圧力17.5MPaの条件下で5分間行った。これにより、直径6mm、厚さ250μm、緻密度52%のシート状の接合材が得られた。シート状の接合材のエチレングリコールの含有量は、5.7質量%であった。
図2に示すように、銅円柱3と銅板4とを得られたシート状の接合材Sを用いて接合した。
まず、不活性雰囲気下、1MPaでシート状の接合材Sを300℃で5分間、加圧して銅円柱3と銅板4とを接合し、接合体X1を製造した。
次に、接合圧力を5MPa,10MPa,20MPa,40MPaの各圧力にそれぞれ変更した以外は、接合体X1と同条件下で、接合体X2〜X5を製造した。接合体X1〜X5のせん断強度の測定結果を表1に示す。
上述した検証試験1において、接合雰囲気を還元性雰囲気に変更した以外は、接合体X1と同条件で、接合体X6を製造した。そして、圧力を5MPa,10MPa,20MPa,40MPaの各圧力にそれぞれ変更した以外は、接合体X6と同様にして接合体X7〜X10を製造した。接合体X6〜X10のせん断強度の測定結果を表2に示す。
表3に示すように、上述した検証試験1において、銅微粒子100質量%に対するエチレングリコールの含有量を1.1質量%、1.52質量%、3.1質量%、11.1質量%に変更し、接合圧力を40MPaに変更して接合材を製造した以外は、接合体X1と同条件で、接合体X11〜X14を製造した。接合体X11〜14のせん断強度の測定結果を表3に示す。
なお検証試験3では、接合体X11〜14の製造とは別に、エチレングリコールの含有量を15.2質量%に変更した条件で、接合材の製造を試みた。しかし、エチレングリコールの含有量が15.2質量%であると、混合粒子を加圧しても、金型に粒子が付着し、シート状の接合材を製造できなかった。
上述した検証試験3において、接合雰囲気を還元性雰囲気に変更した以外は、接合体X11〜14と同条件で、接合体X15〜X18を製造した。接合体X15〜X18のせん断強度の測定結果を表4に示す。
Claims (8)
- 銅を主成分とし、平均粒子径が300nm以下である銅微粒子を含む板状又はシート状の接合材であって、
前記接合材が、前記銅微粒子を還元する還元剤をさらに含み、
前記還元剤が、エチレングリコールを少なくとも含み、
エチレングリコールの含有量が、前記銅微粒子100質量%に対し1.52質量%以上11.1質量%未満である、接合材。 - 前記還元剤が、ポリオール溶媒及び有機酸をさらに含む、請求項1に記載の接合材。
- 前記還元剤が、水酸化ホウ素ナトリウム及びヒドラジンのいずれか一方又は両方をさらに含む、請求項2に記載の接合材。
- 前記銅微粒子の比表面積に対する質量酸素濃度の割合が、0.1〜1.2質量%・g/m2である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合材。
- 前記銅微粒子の比表面積に対する質量炭素濃度の割合が、0.008〜0.3質量%・g/m2である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合材。
- 厚さが100〜1000μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合材。
- 銅を主成分とし、平均粒子径が300nm以下である銅微粒子を含む板状又はシート状の接合材の製造方法であって、
前記銅微粒子を還元する還元剤と前記銅微粒子とを混合し、
前記銅微粒子と前記還元剤とを含む混合物を加圧して、板状又はシート状に成形する、接合材の製造方法であり、
前記還元剤が、エチレングリコールを少なくとも含み、
エチレングリコールの含有量を、前記銅微粒子100質量%に対し1.52質量%以上11.1質量%未満とする、製造方法。 - 前記混合物を加圧する際の圧力が、10MPa以上である、請求項7に記載の接合材の製造方法。
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