本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
〔離型シート〕
図1は、本実施形態に係る離型シートの概略構成を示す平面図(図1(A))、切断端面図(図1(B))及び部分拡大切断端面図(図1(C))であり、図2〜4は、本実施形態に係る離型シートの他の態様の概略構成を示す平面図であり、図5〜図9は、本実施形態に係る離型シートの第2凹凸構造の態様を概略的に示す切断端面図である。
図1(A)〜図1(C)に示すように、本実施形態に係る離型シート1は、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基材2と、基材2の第1面2A上に設けられ、基材2側に位置する第2面3B及びそれに対向する第1面3Aを含み、第1面3A側に第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5が形成されてなる離型層3とを有する。
基材2としては、離型層3の形成が可能である限りにおいて特に制限はなく、一般に樹脂皮革製造用の離型シートや工程紙に用いられる従来公知の材質の基材を用いることができる。具体的には、上記基材2として、クラフト紙、上質紙、キャストコート紙等の紙基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル基材;各種ナイロン等のポリアミド、ポリプロピレン等の樹脂フィルム;合成紙、金属箔、織布、不織布等が用いられ得る。これらのうちの単独、又は2種以上を積層して上記基材2として用いることができる。本実施形態に係る離型シート1を用いて樹脂皮革10(図11参照)を製造する際に、熱劣化を生じさせにくく、離型層3との密着性が高いという観点で、上記基材2として紙基材を用いるのが好ましい。また、本実施形態に係る離型シート1を用いて熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)を製造するのであれば、上記基材2として、耐熱性及び平滑性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル基材を用いるのが好ましい。
基材2の厚みは特に限定されるものではなく、基材2の材質等に応じて適宜設定され得るが、例えば50μm以上200μm以下程度に設定されるのが好ましい。
なお、基材2の第1面2Aには、離型層3との密着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、オゾン処理等の易接着性処理やプライマーコート等の表面処理等が施されていてもよい。
離型層3を構成する材料としては、第1面3Aに第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を形成することが可能であり、また本実施形態に係る離型シート1を用いて樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)を製造する際に、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’を容易に剥離可能な材料であれば、特に限定されるものではない。例えば、離型層3を構成する材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリビニルアルコール等の従来公知の樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート、シリコーン樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
離型層3は、上記熱可塑性樹脂を含むのが好ましく、特にポリプロピレンを含むのが好ましい。離型層3が熱可塑性樹脂、特にポリプロピレンを含むことで、離型層3の第1面3A側に第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を高精度に形成することができ、また本実施形態に係る離型シート1を用いて樹脂皮革10(図11参照)を製造する際に、樹脂皮革10を容易に剥離することができる。一方で、本実施形態に係る離型シート1を用いて熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)を製造するのであれば、離型層3は、耐熱性を有する熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等を含むのが好ましい。なお、離型層3は、透明(可視光の透過率が80%以上程度)であってもよく、半透明又は不透明であってもよい。また、離型層3は着色されていてもよい。
離型層3の厚みT3は、第1面3A側に第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を形成することができる程度の厚みであればよく、例えば、5μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上100μm以下に設定され得る。
なお、離型層3の第1面3A上に、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を塗布・乾燥させることで形成可能な剥離層(図示を省略する)が設けられていてもよい。剥離層が設けられていることで、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)を製造する際に、離型シート1の剥離性をより向上させ得る。なお、剥離層が設けられる場合、剥離層の厚みは、離型層3の第1面3A側に形成されている第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5の機能を損なわない程度の厚みであればよく、例えば、0.01μm以上0.5μm以下程度に設定され得る。
第1凹凸構造4は、離型層3の第1面3Aに略平行な天面41A及び天面41Aの周縁に連続する傾斜側面41Bを含む凸部41と、隣接する凸部41の間に位置する凹部42とを含む。図1に示す態様において、天面41A及び傾斜側面41Bを含む、頂点が略平坦な略四角錐台形状の凸部41が実質的に規則的に配列され、その周りに凹部42が位置するが、これに限定されるものではない。後述するように、本実施形態に係る離型シート1においては、天面41A及び凹部42に第2凹凸構造5が形成され、傾斜側面41Bには第2凹凸構造5が形成されない。この第2凹凸構造5の形成される凹凸形成領域5Aと、第2凹凸構造5の形成されない凹凸非形成領域5Bとの存在により、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)に柄(模様)が付与されることになる。そのため、凸部41の形状、配置等は、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’において求められる柄(模様)デザイン等に応じて適宜設定される。例えば、凸部41は、図2に示すように、頂点が略平坦な略円錐台形状であって、実質的に規則的に配列されてなるものであってもよいし、図3に示すように、所定の長さのライン形状であって、実質的に規則的に配列されてなるものであってもよいし、図4に示すように、屈曲したライン形状であって、実質的にランダムに配列されてなるものであってもよい。
離型層3の第1面3A側に形成されている第1凹凸構造4は、当該第1凹凸構造4に対応して樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)に転写される第1凹凸構造13が肉眼で視認され難い寸法を有していればよく、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’を製造する際に、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に転写されることで当該樹脂皮革10に艶消し感を付与可能な寸法であってもよい。第1凹凸構造4が、第1凹凸構造4に対応して樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に転写される第1凹凸構造13が肉眼で視認され難いような寸法を有することで、後述するように、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’において、第2凹凸構造5に対応して第2凹凸構造14,14’が転写され形成される凹凸形成領域14A,14A’と第2凹凸構造14,14’が形成されない凹凸非形成領域14B,14B’との見え方の違いによって観察者に認識される柄(模様)を際立たせることができる。また、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に艶消し感を付与可能な寸法の第1凹凸構造4が離型層3の第1面3A側に形成されていると、本実施形態に係る離型シート1を用いて製造される樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に艶消し感を付与することができる。さらに、第1凹凸構造4が、第1凹凸構造4に対応して樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に転写される第1凹凸構造13,13’が肉眼で視認され難いような寸法であり、かつ樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に艶消し感を付与可能な寸法を有すると、当該第1凹凸構造13,13’により樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’において落ち着いた艶消し感が奏され得る。
第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41は、10μm以上1500μm以下であるのが好ましく、15μm以上1200μm以下であるのがより好ましい。また、第1凹凸構造4の凸部41の高さT41は、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、3μm以上30μm以下であるのがより好ましい。すなわち、第1凹凸構造4の凸部41のアスペクト比(高さT41/寸法D41)は、0.001以上1以下であるのが好ましい。第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41及び高さT41が上記範囲内であることで、第1凹凸構造4が肉眼で視認され難くなる。なお、第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41及び高さT41は、例えば、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製,製品名:OLS−4000)を用いて、任意に選択した5箇所の凸部41を観察して測定された寸法及び高さの算術平均値として算出され得る。
特に、第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41が20μm以上1000μm以下であり、高さT41が2μm以上50μm以下であると、第1凹凸構造4の転写により樹脂皮革10に形成される第1凹凸構造13(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’に形成される第1凹凸構造13’(図12参照)が肉眼で視認され難くなり、落ち着いた艶消し感を樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に付与することができる。
なお、図1〜図4に示す態様において、第1凹凸構造4の凸部41の高さT41は、離型層3の第1面3Aを上方に位置させ、第2面3Bを下方に位置させるようにして側面から見たときに、凹部42上に形成されている第2凹凸構造5(凸部51)の最上部と、凸部41上に形成されている第2凹凸構造5(凸部51)の最上部との間の長さ(厚み方向の長さ)により定義される(図1(C)等参照)。
離型層3の第1面3A側からの平面視において、傾斜側面41Bの幅は5μm以上100μm以下であるのが好ましい。傾斜側面41Bの幅が5μm未満であると、光沢感が強くなり艶消し感が不十分になるおそれがあり、100μmを超えると、第1凹凸構造4が肉眼で視認されやすくなるため艶消し感が不十分になるおそれがある。
離型層3の第1面3A側からの平面視において、当該第1面3Aの面積に対する第1凹凸構造4の凸部41の面積の比率(凸部41の面積率)や配置は、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)に付与される柄(模様)デザイン等に応じて適宜設定され得るものであって、特に制限されるものではない。
離型層3の第1面3A側に形成されている第2凹凸構造5は、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)を製造する際に、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に転写されることで当該樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に多色の光沢感を付与可能な寸法D51,D52(図5〜9参照)であって、第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41よりも小さい寸法D51,D52を有する。樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に多色の光沢感を付与可能な寸法D51,D52の第2凹凸構造5が離型層3の第1面3A側に形成されていることで、本実施形態に係る離型シート1を用いて製造される樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に多色の光沢感を付与することができる。また、第2凹凸構造5の寸法D51,D52が第1凹凸構造4の凸部41の寸法D41よりも小さいことで、当然に、第2凹凸構造5が樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に転写されることで形成される第2凹凸構造14が肉眼で視認されることはなく、非常に良好な多色の光沢感を樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に付与することができる。なお、第2凹凸構造5の寸法D51,D52は、例えば、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製,製品名:OLS−4000)を用いて、任意に選択した5箇所の第2凹凸構造5を観察して測定された寸法の算術平均値として算出され得る。
本実施形態において、第2凹凸構造5は、第1凹凸構造4の全面に形成されておらず、離型層3の第1面3Aには、第2凹凸構造5が部分的に形成されていない領域が存在する。すなわち、離型層3は、第2凹凸構造5が形成されている凹凸形成領域5Aと、第2凹凸構造5が形成されていない凹凸非形成領域5Bとを有する。例えば、第2凹凸構造5は、第1凹凸構造4の凸部41の天面41A及び凹部42に形成され、当該天面41A及び凹部42上が凹凸形成領域5Aと定義され、傾斜側面41Bには形成されず、傾斜側面41B上が凹凸非形成領域5Bと定義される。このように、離型層3が凹凸形成領域5A及び凹凸非形成領域5Bを有することで、それに対応して樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)にも第2凹凸構造14,14’の形成される凹凸形成領域14A,14A’と第2凹凸構造14,14’の形成されてない凹凸非形成領域14B,14B’とを存在させることができるため、両領域における光学的な見え方の違いが生じる。その結果として、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に意匠性を付与することができ、観察者において柄(模様)として認識させることができる。
第2凹凸構造5の形成されない凹凸非形成領域5Bの寸法(平面視における寸法)は、特に限定されるものではなく、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’において要求される柄(模様)デザイン等に応じて適宜設定され得るものの、例えば、5μm以上100μm以下程度に設定され得る。
第2凹凸構造5の断面形状は、例えば、略三角波形状(図5参照)、略矩形波形状(図6参照)、略台形波形状(図7参照)、略正弦波形状(図8参照)、略鋸歯状波形状(図9参照)等であればよく、好ましくは略三角波形状(図5参照)である。また、第2凹凸構造5の平面視形状は、例えば、ラインアンドスペース形状、格子形状等であればよい。
第2凹凸構造5のピッチP5は、0.5μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であるのがより好ましい。第2凹凸構造5のピッチP5が0.5μm未満であると、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)に多色の光沢感が付与されなくなるおそれがあり、3.0μmを超えると、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に付与される多色の光沢感が弱くなるおそれがある。すなわち、第2凹凸構造5のピッチP5が上記数値範囲から外れると、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’における第2凹凸構造14,14’の形成される凹凸形成領域14A,14A’と第2凹凸構造14,14’の形成されない凹凸非形成領域14B,14B’との光学的な見え方に違いを生じさせ難くなり、観察者に柄(模様)を認識させ難くなるおそれがある。第2凹凸構造5が略矩形波形状(図6参照)であって、第2凹凸構造5を構成する凸部51及び凹部52の寸法D51,D52が同一である場合、当該第2凹凸構造5(凸部51及び凹部52)の寸法D51,D52は、0.25μm以上1.5μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上1.25μm以下であるのがより好ましい。なお、第2凹凸構造5のピッチP5は、隣接する凸部51及び凹部52の寸法D51,D52(平面視における短手方向の長さ)の合計長さにより定義される。なお、第2凹凸構造5のピッチP5は、例えば、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製,製品名:OLS−4000)を用いて、任意に選択した5箇所の第2凹凸構造5を観察して測定されたピッチの算術平均値として算出され得る。
なお、図5及び図7〜図9に示す態様において、離型層3の第1面3Aを上方に位置させ、第2面3Bを下方に位置させるようにして側面から見たときに、凹部52は、第2凹凸構造5の最上部と最下部との厚み方向中間点を通る仮想線分Vの下側に位置する窪み部分により定義され、凸部51は、仮想線分Vの上側に位置する部分により定義される。そして、図5及び図7〜図9における凸部51及び凹部52の寸法D51,D52は、凸部51及び凹部52を規定するための仮想線分Vの長さにより定義される。
第2凹凸構造5の高さT5(第2凹凸構造5の最上部と最下部との間の厚み方向の長さ)は、0.05μm以上であるのが好ましく、0.05μm以上3.0μm以下であるのがより好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であるのが特に好ましい。第2凹凸構造5の高さT5が0.05μm未満であると、樹脂皮革10(図11参照)や熱硬化性樹脂化粧板10’(図12参照)に多色の光沢感を付与することが困難となるおそれがある。第2凹凸構造5のアスペクト比は、0.03以上12以下であるのが好ましく、0.08以上5以下であるのがより好ましく、0.1以上3以下であるのが特に好ましい。第2凹凸構造5のアスペクト比が0.03未満であると、光の干渉を生じさせるのに不十分であって、樹脂皮革10や熱硬化性樹脂化粧板10’に多色の光沢感を付与することが困難となるおそれがあり、アスペクト比が12を超える離型シート1を製造するのは困難である。なお、第2凹凸構造5の高さT5は、例えば、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製,製品名:OLS−4000)を用いて、任意に選択した5箇所の第2凹凸構造5を観察して測定された高さの算術平均値として算出され得る。
〔離型シートの製造方法〕
上述した本実施形態に係る離型シート1は、基材2の第1面2A上に離型層3を構成する材料(樹脂材料)からなる膜を形成し、当該樹脂材料膜の表面(離型層3の第1面3A)に第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を形成することで製造され得る。
具体的には、第1凹凸構造4に対応する第1凹凸構造21が形成されてなり、かつ第2凹凸構造5に対応する第2凹凸構造22が第1凹凸構造21の凹部の底面及び傾斜側面、すなわち、第2凹凸構造5の凹凸形成領域5Aに対応する領域に形成されてなる転写版20(図10参照)を準備し、当該転写版20の第1凹凸構造21及び第2凹凸構造22を、基材2の第1面2A上に形成された樹脂材料膜に転写する。好適には、転写版20をロール本体に巻きつけた転写ロールを準備して、基材2の第1面2A上に樹脂材料膜が形成されてなる原反を搬送しながら、転写ロールを押し付けることで、離型層3の第1面3Aに第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5が形成される。このようにして、本実施形態に係る離型シート1が製造され得る。
別態様の製造方法としては、例えば、第1凹凸構造4に対応する第1凹凸構造21が形成されてなる第1転写版と、第2凹凸構造5に対応する第2凹凸構造22が形成されてなる第2転写版とを準備する。第2転写版における第2凹凸構造22は、第2凹凸構造5の凹凸形成領域5Aに対応する領域に形成されている。そして、第1転写版の第1凹凸構造21を、基材2の第1面2A上に形成された樹脂材料膜に転写した後、第2転写版の第2凹凸構造22を、第1凹凸構造21が転写された樹脂材料膜に転写する。このようにして、離型層3の第1面3Aに第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を形成し、離型シート1を製造してもよい。
第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を、それぞれ別個の転写版(第1転写版及び第2転写版)を用いて形成することで、各転写版(第1転写版、第2転写版)における凹凸構造(第1凹凸構造21、第2凹凸構造22)の寸法が略同一となるため、各転写版の作製が容易になる。
さらに別態様の製造方法としては、例えば、第1凹凸構造4に対応する第1凹凸構造21が形成されてなる第1転写版と、第2凹凸構造5に対応する第2凹凸構造22が形成されてなる転写フィルムとを準備する。第2凹凸構造22は、転写フィルムの全面に形成されており、転写フィルムは適度な屈曲性を有する。そして、第1転写版の第1凹凸構造21を、基材2の第1面2A上に形成された樹脂材料膜に転写した後、転写フィルムの第2凹凸構造22を、第1凹凸構造21が転写された樹脂材料膜に転写する。このようにして、離型層3の第1面3Aに第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を形成し、離型シート1を製造してもよい。
転写フィルムが適度な屈曲性を有することで、転写フィルムの全面に第2凹凸構造22が形成されていても、樹脂材料膜に形成されている第1凹凸構造4の凸部41の天面41A及び凹部42上には第2凹凸構造22が転写され、第2凹凸構造5が形成されるが、傾斜側面41Bには第2凹凸構造22が転写されず、第2凹凸構造5が形成されない。よって、転写フィルムを用いた転写処理時に当該転写フィルムの高精度な位置合わせを要せずにして第1凹凸構造4の凸部41の天面41A及び凹部42に第2凹凸構造5を精確に形成することができる。
〔樹脂皮革〕
続いて、本実施形態における樹脂製物品の一態様である樹脂皮革について説明する。図11は、本実施形態における樹脂皮革の概略構成を示す切断端面図である。なお、後述するように、本実施形態における樹脂皮革は、上記離型シート1を用いて製造される。図11においては、図1(A)〜(C)に示す離型シート1を用いて製造された樹脂皮革を例示して説明する。
図11に示すように、本実施形態における樹脂皮革10は、支持層11と、支持層11上に積層されてなる樹脂表皮層12とを備える。樹脂表皮層12の表面には、第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14が形成されている。
支持層11としては、例えば、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の再生又は半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン等の合成繊維等の繊維からなる織布、不織布、網布、紙、ポリエステルやポリオレフィン等の樹脂フィルム、金属板、ガラス板等、一般に、樹脂皮革(合成皮革、人工皮革)に用いられるものから、樹脂皮革の種類や用途に応じて適宜選択され得る。支持層11の厚みは、樹脂表皮層12を支持可能な厚みであれば特に限定されるものではない。
樹脂表皮層12を構成する樹脂材料としては、一般に樹脂皮革(合成皮革、人工皮革)の製造に用いられる樹脂材料、例えば、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。なお、樹脂表皮層12は、可塑剤、安定剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。樹脂表皮層12の厚みとしては、第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14を備えることができる厚みであればよく、樹脂皮革10の用途等に応じて適宜設定され得る。
本実施形態において、第1凹凸構造13は、底面が略平坦であり、平面視略四角形のすり鉢状であって、底面131A及び底面131Aの周縁に連続する傾斜側面131Bを有する凹部131が実質的に規則的に配列されてなり、その周りに凸部132が位置する構造を有する。
第1凹凸構造13は、本実施形態における樹脂皮革10において艶消し感が奏され得る寸法であって、肉眼で視認され難い寸法を有する。第1凹凸構造13が肉眼で視認され難いような寸法であることで、第1凹凸構造13により落ち着いた艶消し感が奏され得る。
第1凹凸構造13の凹部131の寸法D131は、10μm以上1500μm以下であるのが好ましく、15μm以上1200μm以下であるのがより好ましい。また、第1凹凸構造13の凹部131の深さT131は、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、3μm以上30μm以下であるのがより好ましい。すなわち、第1凹凸構造13の凹部131のアスペクト比(深さT131/寸法D131)は、0.001以上1以下であるのが好ましい。第1凹凸構造13の凹部131の寸法D131及び深さT131が上記範囲内であることで、第1凹凸構造13が肉眼で視認され難くなる。なお、第1凹凸構造13の凹部131の寸法D131及び深さT131は、例えば、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製,製品名:OLS−4000)を用いて、任意に選択した5箇所の凹部131を観察して測定された寸法及び深さの算術平均値として算出され得る。
特に、第1凹凸構造13の凸部131の寸法D131が20μm以上1000μm以下であり、高さT131が2μm以上50μm以下であると、第1凹凸構造13が肉眼で視認され難くなり、落ち着いた艶消し感が奏され得る。
なお、第1凹凸構造13の凹部131の深さT131は、樹脂表皮層12を上方に位置させ、支持層11を下方に位置させるようにした断面視において、凹部131上に形成されている第2凹凸構造14(凸部142)の最上部と、凸部132上に形成されている第2凹凸構造14(凸部142)の最上部との間の長さ(厚み方向の長さ)により定義される。
樹脂表皮層12の平面視において、傾斜側面131Bの幅は5μm以上100μm以下であるのが好ましい。傾斜側面131Bの幅が5μm未満であると、光沢感が強くなり艶消し感が不十分になるおそれがあり、100μmを超えると、第1凹凸構造13が肉眼で視認されやすくなるため艶消し感が不十分になるおそれがある。
樹脂表皮層12の平面視において、樹脂表皮層12の面積に対する第1凹凸構造13の凹部131の面積の比率(凹部131の面積率)や配置は、樹脂皮革10において要求される柄(模様)デザイン等に応じて適宜設定され得るものであって、特に制限されるものではない。
第2凹凸構造14は、樹脂皮革10において多色の光沢感が奏され得る寸法であって、第1凹凸構造13の凹部131の寸法D131よりも小さい寸法を有する。第2凹凸構造14の寸法が第1凹凸構造13の凹部131の寸法D131よりも小さいことで、当然に、第2凹凸構造14が肉眼で視認されることはなく、非常に良好な多色の光沢感が奏され得る。
本実施形態において、第2凹凸構造14は、第1凹凸構造13の全面に形成されるものではなく、部分的に形成されていない。すなわち、樹脂表皮層12は、第2凹凸構造14が形成されている凹凸形成領域14Aと、第2凹凸構造14が形成されていない凹凸非形成領域14Bとを有する。例えば、第2凹凸構造14は、第1凹凸構造13の凹部131の底面131A及び凸部132に形成され、当該底面131A及び凸部132上が凹凸形成領域14Aと定義され、傾斜側面131Bには形成されず、傾斜側面131B上が凹凸非形成領域14Bと定義される。このように、樹脂表皮層12が凹凸形成領域14A及び凹凸非形成領域14Bを有することで、両領域における光学的な見え方の違いが生じる。その結果として、樹脂皮革10に意匠性を付与することができ、観察者において柄(模様)として認識させることができる。
第2凹凸構造14の形成されない凹凸非形成領域14Bの寸法(平面視における寸法)は、特に限定されるものではなく、樹脂皮革10において要求される柄(模様)デザイン等に応じて適宜設定され得るものの、例えば、5μm以上100μm以下程度に設定され得る。
第2凹凸構造14の断面形状は、離型シート1の第2凹凸構造5をミラー反転した形状であり、例えば、略三角波形状(図5参照)、略矩形波形状(図6参照)、略台形波形状(図7参照)、略正弦波形状(図8参照)、略鋸歯状波形状(図9参照)等であり、好ましくは略三角波形状(図5参照)である。また、第2凹凸構造14の平面視形状は、例えば、ラインアンドスペース形状、格子形状等である。
第2凹凸構造14のピッチは、0.5μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であるのがより好ましい。第2凹凸構造14のピッチが0.5μm未満であると、樹脂皮革10において多色の光沢感が奏されなくなるおそれがあり、3.0μmを超えると、樹脂皮革10における多色の光沢感が弱くなるおそれがある。すなわち、第2凹凸構造14のピッチが上記数値範囲から外れると、樹脂皮革10の観察者に柄(模様)を認識させ難くなるおそれがある。第2凹凸構造14が略矩形波形状であって、第2凹凸構造14を構成する凹部141及び凸部142の寸法が同一である場合、当該第2凹凸構造14(凹部141及び凸部142)の寸法は、0.25μm以上1.5μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上1.25μm以下であるのがより好ましい。
なお、第2凹凸構造14のピッチは、隣接する凹部141及び凸部142の寸法(平面視における短手方向の長さ)の合計長さにより定義される。なお、第2凹凸構造14の凹部141及び凸部142は、離型シート1の第2凹凸構造5の凹部51及び凸部52と同様に、第2凹凸構造14の最上部と最下部との厚み方向中間点を通る仮想線分の下側に位置する窪み部分及び上側に位置する部分により定義され、凹部141及び凸部142の寸法もまた、仮想線分の長さにより定義される。
第2凹凸構造14の深さ(第2凹凸構造14の最上部と最下部との間の厚み方向の長さ)は、0.05μm以上であるのが好ましく、0.05μm以上3.0μm以下であるのがより好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であるのが特に好ましい。第2凹凸構造14の深さが0.05μm未満であると、多色の光沢感が奏され難くなるおそれがある。第2凹凸構造14のアスペクト比は、0.03以上12以下であるのが好ましく、0.08以上5以下であるのがより好ましく、0.1以上3以下であるのが特に好ましい。第2凹凸構造14のアスペクト比が0.03未満であると、光の干渉を生じさせるのに不十分であって、多色の光沢感が奏され難くなるおそれがあり、アスペクト比が12を超える樹脂皮革10を製造するのは困難である。
〔樹脂皮革の製造方法〕
上記樹脂皮革10の製造方法としては、例えば、本実施形態に係る離型シート1を用い、樹脂皮革10の樹脂表皮層12の表面に第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14を形成することのできる方法であればよく、離型シートを用いた従来公知の樹脂皮革(合成皮革、人工皮革)の製造方法を採用することができる。樹脂皮革の製造方法は、乾式法であってもよいし、湿式法であってもよい。
例えば、乾式法により樹脂皮革10を製造する場合、離型シート1の離型層3の第1面3Aに、従来公知の方法により樹脂表皮層形成用組成物を塗布し、乾燥して樹脂表皮層12を形成し、樹脂表皮層12上に接着層を介して支持層11を積層させて乾燥及び熟成した後、離型シート1を剥離することで樹脂皮革10が製造され得る。接着層としては、樹脂皮革(合成皮革、人工皮革)の製造に用いられる従来公知の接着層を用いることができる。
樹脂表皮層形成用組成物としては、所望とする樹脂表皮層12を形成可能なものであればよく、樹脂皮革10の種類に応じて適宜選択される。例えば、樹脂皮革10がポリウレタンレザーの場合、樹脂表皮層形成用組成物として、ポリウレタン及び任意の添加剤を含み、固形分が20〜50質量%程度のポリウレタンペースト等が用いられ得る。また、樹脂皮革がポリ塩化ビニルレザーの場合、樹脂表皮層形成用組成物として、ポリ塩化ビニル及び任意の添加剤を含むゾル等が用いられ得る。
上述のようにして製造される樹脂皮革10の用途としては、樹脂皮革(合成皮革、人工皮革)の一般的な用途が挙げられる。また、天然皮革の代用品として用いることもできる。例えば、衣料、鞄、靴、財布、スマートフォンカバー表皮材、インテリア資材、インスツルメントパネル材、カーシート表皮材、ステアリングホイール表皮材等の車両用内装材や自動二輪車のシート材等が挙げられる。
本実施形態における樹脂皮革10によれば、樹脂表皮層12の表面に形成された第2凹凸構造14により多色の光沢感が奏される。また、第2凹凸構造14の形成されている凹凸形成領域14Aと、第2凹凸構造14の形成されていない凹凸非形成領域14Bとを有することで、両領域14A,14Bの光学的な見え方の違いにより、観察者に柄(模様)を認識させることができる。さらに、第1凹凸構造13により落ち着いたマット調の質感(艶消し感)が奏され得る。したがって、凹凸形成領域14A及び凹凸非形成領域14Bの配置デザインにより、樹脂皮革10において多色の光沢感が奏されるとともに、意匠性にも優れたものとすることができる。また、所望によりマット調の質感が奏され得る。
〔熱硬化性樹脂化粧板〕
図12は、本実施形態における樹脂製物品の一態様である熱硬化性樹脂化粧板の概略構成を示す断面図である。
図12に示すように、本実施形態における熱硬化性樹脂化粧板10’は、支持層11’と、支持層11’上に積層されてなる熱硬化性樹脂層12’とを備える。熱硬化性樹脂層12’の表面には、凹部131’及び凸部132’を含む第1凹凸構造13’と凹部141’及び凸部141’を含む第2凹凸構造14’とが形成されている。熱硬化性樹脂化粧板10’としては、例えば、高圧メラミン樹脂化粧板、低圧メラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板、ポリエステル化粧板、グアナミン樹脂化粧板、フェノール樹脂化粧板等が挙げられ、高圧メラミン樹脂化粧板が好適である。高圧メラミン樹脂化粧板は、優れた鉛筆硬度、耐熱性、耐汚染性、耐薬品性等の特性を有するため、壁、天井、床等の建築物の内装材又は外装材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板;キッチン、家具、弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板;車両の内装材又は外装材等として好適に用いることができる。
支持層11’は、コア層11a’と、コア層11a’上に積層されてなる絵柄印刷層11b’とを有する。
コア層11a’は、熱硬化性樹脂化粧板10’に必要な厚さ、強度を付与するために設けられるものであり、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、グアナミン樹脂等の熱硬化性樹脂、好適にはフェノール樹脂、メラミン樹脂等を含浸率45質量%以上60質量%以下で含浸させた繊維質基材等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂の含浸率(質量%)は、「基材(繊維質基材)の質量」に対する「含浸した熱硬化性樹脂の質量(熱硬化性樹脂含浸後の基材の質量と含浸前の基材の質量との差分)」の百分率として算出され得る。
コア層11a’を構成する繊維質基材としては、例えばクラフト紙、不織布等が挙げられ、坪量150g/m2以上250g/m2以下程度のものが好適である。コア層11a’は、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維質基材が複数枚積層されてなるものであってもよく、当該繊維質基材の積層枚数は、熱硬化性樹脂化粧板10’に必要とされる厚さに応じて適宜設定され得る。
絵柄印刷層11b’としては、例えば、絵柄を印刷した多孔質基材等が挙げられる。多孔質基材としては、絵柄が印刷可能である限り、特に制限されるものではなく、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾル又はドライラミネートしたビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等の紙類等が挙げられる。
多孔質基材に絵柄を印刷する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の着色剤(顔料又は染料)を結着材樹脂とともに溶剤又は分散媒中に溶解又は分散させて得られるインキを用いた印刷法等が挙げられる。より具体的には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、多孔質基材の全面にベタ状の絵柄を印刷する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が採用され得る。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等が用いられたり、他の印刷法と組み合わせて用いられたりしてもよい。
印刷法に用いられるインキとしては、多孔質基材のVOCを低減する観点から、水性組成物を用いてもよい。多孔質基材に絵柄を印刷する際、前処理として多孔質基材にベタ印刷層を形成してもよい。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、1種を単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いられてもよい。
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂の他、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂、カゼイン樹脂等も併用され得る。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子等も使用され得る。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂等が変性したもの、天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用してもよい。結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、単独で又は2種以上を混合して使用され得る。
熱硬化性樹脂層12’としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンを含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸率30質量%以上200質量%以下、好適には50質量%以上150質量%以下で含浸させた多孔質基材等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。硬化剤としては、例えば、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等に含まれ得るイソシアネート、有機スルホン酸塩;エポキシ樹脂等に含まれ得る有機アミン等が挙げられる。重合開始剤(ラジカル開始剤)としては、例えば、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂に含まれ得るメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等が挙げられる。
多孔質基材としては、熱硬化性樹脂が含浸可能である限り、特に制限されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂の浸透性を有する繊維質基材等が挙げられる。かかる繊維質基材としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾル又はドライラミネートしたビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等の紙類;ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維質をシート状に形成した紙類似シート;ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維からなる不織布又は織布等が挙げられる。熱硬化性樹脂の含浸性の観点から、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙が好適であり、特にチタン紙が好適である。
多孔質基材は、着色されていてもよく、多孔質基材の製造段階(多孔質基材が紙類であればその抄造段階で着色剤(顔料、染料等)を配合することで、多孔質基材に着色することができる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料;フタロシアニンブルー等の有機顔料;各種染料等を使用することができる。着色剤は、少なくとも1種含まれていればよく、2種以上を含有せしめる場合において、着色剤の配合量は、所望とする色合い等に応じて適宜設定され得る。また、多孔質基材には、必要に応じて充填材、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
多孔質基材の坪量は、特に制限されるものではなく、例えば、40g/m2以上150g/m2以下であるのが好ましい。また、多孔質基材の厚さは、熱硬化性樹脂化粧板10’の用途、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、50μm以上170μm以下程度である。
なお、熱硬化性樹脂層12’の一方面(絵柄印刷層11b’に当接する面)に、密着性向上を目的とした表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理等が挙げられる。
熱硬化性樹脂層12’は、例えば、多孔質基材を熱硬化性樹脂に浸漬させる方法;キスコーター、コンマコーター等のコーターを用いて熱硬化性樹脂を多孔質基材に塗布する方法、スプレー装置、シャワー装置等により熱硬化性樹脂を多孔質基材に噴き付ける方法等により多孔質基材に熱硬化性樹脂を含浸させ、当該多孔質基材を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させることにより作製され得る。多孔質基材の加熱温度及び加熱時間は、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜設定され得る。例えば、熱硬化性樹脂としてイソシアネート硬化型不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン硬化型ポリウレタン樹脂を用いた場合、40℃以上60℃以下の温度で1日以上5日以下程度加熱すればよい。また、熱硬化性樹脂としてポリシロキサン樹脂を用いた場合、80℃以上150℃以下の温度で1分以上30分以下程度加熱すればよい。さらに、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を用いた場合、90℃以上160℃以下の温度で30秒以上30分以下加熱すればよい。必要に応じて、加圧し、かつ加熱して熱硬化性樹脂を硬化させてもよい。
熱硬化性樹脂層12’に形成されている第1凹凸構造13’及び第2凹凸構造14’は、上述した樹脂皮革10の樹脂表皮層12に形成されている第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14(図11参照)と略同様の構成を有するため、ここでの詳細な説明を省略するものとする。
〔熱硬化性樹脂化粧板の製造方法〕
図13は、本実施形態における熱硬化性樹脂化粧板の製造方法を断面図にて示す工程フロー図である。
図13(A)に示すように、熱硬化性樹脂層12’、絵柄印刷層11b’及びコア層11a’をこの順に積層するとともに、熱硬化性樹脂層12’上に離型シート1を積層してなる積層体を、2枚の金属板51,52の間に挟み、5.9MPa以上9.8MPa以下の圧力で加圧しながら、110℃以上160℃以下の温度で10分以上60分以下の時間、加熱する。
熱硬化性樹脂層12’の表面に第1凹凸構造13’及び第2凹凸構造14’を形成するために用いられる離型シート1としては、上述した樹脂皮革10(図11参照)を製造するために用いられるものと同様のものが使用可能であるが、好適には、耐熱性及び平滑性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル基材2と、耐熱性を有する熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等からなる離型層3とを含むものが用いられ得る。
次に、図13(B)に示すように、金属板51,52の間に挟まれ、加圧、加熱された積層体から、離型シート1を剥離する。これにより、離型シート1の離型層3に形成されている第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5が熱硬化性樹脂層12’に転写されてなる熱硬化性樹脂化粧板10’が製造され得る。
本実施形態における熱硬化性樹脂化粧板10’によれば、熱硬化性樹脂層12’の表面に形成された第2凹凸構造14’により多色の光沢感が奏される。また、第2凹凸構造14’の形成されている凹凸形成領域14A’と、第2凹凸構造14’の形成されていない凹凸非形成領域14B’とを有することで、両領域14A’,14B’の光学的な見え方の違いにより、観察者に柄(模様)を認識させることができる。さらに、第1凹凸構造13’により落ち着いたマット調の質感(艶消し感)が奏され得る。したがって、凹凸形成領域14A’及び凹凸非形成領域14B’の配置デザインにより、熱硬化性樹脂化粧板10’において多色の光沢感が奏されるとともに、意匠性にも優れたものとすることができる。また、所望によりマット調の質感が奏され得る。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態において、基材2を備える離型シート1を例に挙げて説明したが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、離型シート1は、離型層3のみを備え、基材2を備えていなくてもよい。
上記実施形態において、樹脂皮革10の樹脂表皮層12が単層により構成される例を挙げて説明したが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、樹脂皮革10は、支持層11上に順に積層された第1樹脂表皮層と第2樹脂表皮層との2層により構成される樹脂表皮層12を備えていてもよく、この場合において、第2樹脂表皮層の表面に第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14が形成されていればよい。また、熱硬化性樹脂化粧板10’においても同様に、熱硬化性樹脂層12’が複数の熱硬化性樹脂層により構成されていてもよい。
上記実施形態において、第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5を有する離型シート1を用いて樹脂皮革10及び熱硬化性樹脂化粧板10’を製造する方法を例に挙げて説明したが、このような態様に限定されるものではない。例えば、第1凹凸構造4を有するが、第2凹凸構造5を有しない離型シートを用いて樹脂表皮層又は熱硬化性樹脂層に第1凹凸構造13,13’を形成した後、第2凹凸構造5を有する転写フィルム又は転写版を用いて、第1凹凸構造13を有する樹脂表皮層又は熱硬化性樹脂層に第2凹凸構造5を転写して第2凹凸構造14,14’を形成してもよい。また、上述した離型シート1(図1参照)における凹凸形成領域5Aに相当する領域に第2凹凸構造5を有するが、第1凹凸構造4を有しない離型シートを用いて樹脂表皮層又は熱硬化性樹脂層に第2凹凸構造14,14’を形成した後、第1凹凸構造4を有する転写版を用いて、第2凹凸構造14,14’を有する樹脂表皮層又は熱硬化性樹脂層に第1凹凸構造4を転写して第1凹凸構造13,13’を形成してもよい。これにより、第1凹凸構造13,13’及び第2凹凸構造14,14’を有する樹脂皮革10又は熱硬化性樹脂化粧板10’を製造することができる。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)転写版の準備
銅めっきしたシリンダー(径:100mmφ,幅:300mm)の表面に、図1(A)に示す離型シート1の第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5をミラー反転してなる第1凹凸構造21及び第2凹凸構造22をレーザー彫刻により形成した後、表面をクロムめっき処理することで、図10に示す構成を有する転写版20を作製した。
(2)離型シートの製造
紙製の基材2(厚み:150μm)の第1面2A上に、ポリプロピレンを塗布して離型層3(厚み:50μm)を形成し、下記の条件で離型層3の第1面3Aに転写版20を加熱押圧して第1凹凸構造21及び第2凹凸構造22を転写し、基材2と、第1面3A上に第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5が形成されてなる離型層3とを備える離型シート1(原反幅:300mm)を製造した。
(転写条件)
・シリンダー温度:120℃
・押圧力:150kgf/cm
・搬送速度:5m/min
(3)樹脂皮革の製造
上記離型シート1の離型層3の第1面3A上に、樹脂表皮層形成用組成物として下記組成の合成皮革の表皮層様ポリウレタン組成物をバーコート法で塗布し、100〜120℃の範囲内で2分間、加熱乾燥させた。その後、塗布層上に接着剤を用いて基布(支持層)を貼り合わせ、乾燥、熟成後、離型シート1を剥離して樹脂皮革10を製造した。
(樹脂表皮層形成用組成物)
・ポリウレタン(レザミンNE−8811,大日精化工業社製) 100質量部
・着色剤(セイカセブンNET−5794ブラック,大日精化工業社製) 15質量部
・トルエン 25質量部
・イソプロピルアルコール 25質量部
〔実施例2〕
転写版20における第1凹凸構造21及び第2凹凸構造22を、図3に示す離型シート1の第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5をミラー反転してなる構造とした以外は、実施例1と同様にして転写版20を準備し、離型シート1及び樹脂皮革10を製造した。
〔実施例3〕
転写版20における第1凹凸構造21及び第2凹凸構造22を、図4に示す離型シート1の第1凹凸構造4及び第2凹凸構造5をミラー反転してなる構造とした以外は、実施例1と同様にして転写版20を準備し、離型シート1及び樹脂皮革10を製造した。
〔比較例1〕
第1凹凸構造21の全面に第2凹凸構造22を形成してなる転写版を準備した以外は、実施例1と同様にして離型シート及び樹脂皮革を製造した。
〔試験例1〕外観評価試験
実施例1〜3及び比較例1の樹脂皮革から100mm角のサンプルを切り出し、当該各サンプルを机の上に置き、照度400ルクス(明るいオフィス相当)環境下で各サンプルの外観について、被験者20名により柄(模様)を認識可能であるか否か及び多色の光沢感が認められるか否かの2つの観点から評価した。
実施例1〜3及び比較例1の各サンプルについて、被験者20名による「柄(模様)の認識」及び「多色の光沢感」に関する評価結果を下記表1に示す。なお、表1の「柄(模様)の認識」及び「多色の光沢感」の各項目において、被験者20名による「柄(模様)が認識される」、「多色の光沢感が認められる」との各評価結果が11名以上のサンプルは「○」、被験者20名による上記評価結果が1名以上10名以下のサンプルは「△」、被験者20名による上記評価結果が0名のサンプルは「×」と評価した。
表1に示すように、樹脂皮革10の樹脂表皮層12の表面に第1凹凸構造13及び第2凹凸構造14が形成されていることで、多色の光沢感が奏されることが確認された。また、第1凹凸構造13上における凹凸形成領域14Aに第2凹凸構造14が形成され、凹凸非形成領域14Bに第2凹凸構造14が形成されていないことで、当該凹凸形成領域14Aと凹凸非形成領域14Bとにおける光学的な見え方の違いにより、観察者に柄(模様)を認識させ得ることが確認された。一方、第1凹凸構造13の全面に第2凹凸構造14が形成されている比較例1においては、落ち着いたマット調の質感(艶消し感)及び多色の光沢感が奏されるものの、観察者に柄(模様)を認識させることができなかった。