上記課題を解決するためになされた第1の発明は、交差点に設置された矢印式の車両用信号機の信号表示を制御する信号制御装置であって、前記車両用信号機の信号表示を制御する信号制御部と、前記車両用信号機の信号表示に従う車両が左折したときに進入する前記交差点の横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定する横断者判定部とを備え、前記信号制御部は、前記車両用信号機が直進を可にする期間に、前記横断者判定部で前記横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、直進可を示す直進信号を表示し、前記横断区域を横断する歩行者が存在しないと判定された場合には、前記直進信号と左折可を示す左折信号を表示することを特徴とする。
この第1の発明に係る信号制御装置によれば、車両用信号機が直進を可にする期間に、車両用信号機の信号表示に従う車両が左折したときに進入する交差点の横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定し、横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、左折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域を横断する歩行者と左折車との接触事故を防止することが可能となる。また、横断区域を横断する歩行者が存在しないと判定された場合には、左折信号を表示するように信号表示を制御することができるので、左折待ちの車両が交差点の手前で渋滞するのを防止することも可能となる。
また、第2の発明では、上記第1の発明において、前記信号制御部は、前記左折信号および直進信号を表示するように信号表示を制御した後に、前記横断者判定部で前記横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、前記左折信号を通常の表示態様とは異なる表示態様で表示するように信号表示を制御することを特徴とする。
この第2の発明に係る信号制御装置によれば、車両用信号機が直進を可にする期間において、左折信号および直進信号を表示するように信号表示を制御した後に、横断区域を横断する歩行者が急に現れた場合でも、左折信号を点滅や信号色の変更等の通常の表示態様とは異なる表示態様で表示することにより、左折車の運転手に対して注意を喚起することができる。これにより、横断区域を横断する歩行者と左折車との接触事故を防止することが可能となる。
また、第3の発明では、上記第1または第2の発明において、前記信号制御部は、前記車両用信号機が右折を可にする期間に、前記横断者判定部で前記車両用信号機の信号表示に従う車両が右折したときに進入する前記交差点の横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、右折可を示す右折信号を表示しないように信号表示を制御することを特徴とする。
この第3の発明に係る信号制御装置によれば、車両用信号機が右折を可にする期間に、車両用信号機の信号表示に従う車両が右折したときに進入する交差点の横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定し、横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、右折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域を横断する歩行者と右折車との接触事故を防止することが可能となる。
また、第4の発明では、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記横断者判定部は、前記横断区域における左折車または右折車が通過する車両通過領域内に歩行者が存在するか否かを判定し、前記信号制御部は、前記横断者判定部で前記車両通過領域内に歩行者が存在すると判定された場合にのみ、前記左折信号または右折信号を表示しないように信号表示を制御することを特徴とする。
この第4の発明に係る信号制御装置によれば、前記横断区域における左折車または右折車が通過する車両通過領域内に歩行者が存在するか否かを判定し、車両通過領域内に歩行者が存在すると判定された場合にのみ、左折信号または右折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域を横断する歩行者と左折車または右折車との接触事故を防止するとともに、左折待ちまたは右折待ちの車両が交差点の手前で渋滞するのを防止することが可能となる。
また、第5の発明では、上記第1から第4のいずれかの発明において、歩行者が所持する歩行者端末装置または車両に搭載された車載端末装置との間で、歩車間通信のデータ通信フォーマットに基づく無線通信を行う無線通信部と、前記横断区域の位置情報を格納した情報格納部とをさらに備え、前記横断者判定部は、前記無線通信部が前記歩行者端末装置から前記歩行者端末装置の位置情報を受信したときに、前記歩行者端末装置の位置情報を前記横断区域の位置情報と照合することにより、前記横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定することを特徴とする。
この第5の発明に係る信号制御装置によれば、歩行者端末装置から受信した歩行者端末装置の位置情報に基づいて、横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定することが可能となる。
また、第6の発明では、上記第5の発明において、前記横断者判定部で前記横断区域を横断する歩行者が存在すると判定され、かつ前記無線通信部が前記歩行者端末装置から前記歩行者が予め設定されたアラーム対象者であることを示す情報を受信したときに、前記横断区域を前記アラーム対象者が横断することを示すアラーム情報を生成するアラーム情報生成部と、前記アラーム情報を前記車載端末装置に送信するように前記無線通信部を制御する通信制御部とをさらに備えたことを特徴とする。
この第6の発明に係る信号制御装置によれば、横断区域を横断する歩行者が高齢者や体の不自由な人などのアラーム対象者である場合に、そのことを車両の運転者に対して知らせることができる。これにより、高齢者や体の不自由な人などの交通事故の被害に遭いやすい人の安全をより確実に確保することが可能となる。
また、第7の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、前記交差点に配置され、前記横断区域またはその付近に存在する歩行者を検出する歩行者検出装置をさらに備え、前記横断者判定部は、前記歩行者検出装置での検出結果に基づいて、前記横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定することを特徴とする。
この第7の発明に係る信号制御装置によれば、歩行者検出装置での検出結果に基づいて、横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定することが可能となる。
また、第8の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明に係る信号制御装置と、歩行者が所持し、前記信号制御装置との間で無線通信を行う歩行者端末装置とを含む信号制御システムであって、前記歩行者端末装置が、前記信号制御装置との間で、歩車間通信のデータ通信フォーマットに基づく無線通信を行う無線通信部と、前記歩行者端末装置の位置情報を取得する測位部と、前記歩行者端末装置の位置情報を前記信号制御装置へ送信するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備えたことを特徴とする。
また、第9の発明は、上記第5または第6に記載の発明に係る信号制御装置と、歩行者が所持し、前記信号制御装置との間で無線通信を行う歩行者端末装置とを含む信号制御システムであって、前記歩行者端末装置が、前記信号制御装置または車両に搭載された車載端末装置との間で、歩車間通信のデータ通信フォーマットに基づく無線通信を行う無線通信部と、前記歩行者端末装置の位置情報を取得する測位部と、前記歩行者端末装置の位置情報を前記信号制御装置へ送信するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備えたことを特徴とする。
また、第10の発明は、上記第9の発明において、前記歩行者端末装置が、その歩行者端末装置を所持する歩行者が予め設定されたアラーム対象者であることを示す情報を格納する情報格納部をさらに備え、前記通信制御部は、前記歩行者が前記アラーム対象者であることを示す情報を前記信号制御装置に送信するように前記無線通信部を制御することを特徴とする。
また、第11の発明は、上記第9または第10の発明において、前記通信制御部は、前記無線通信部が前記車載端末装置から前記車両が前記交差点を左折することを示す左折情報を受信したときにのみ、前記位置情報を前記信号制御装置に送信するように前記無線通信部を制御することを特徴とする。
また、第12の発明は、上記第10または第11の発明において、車両に搭載され、前記信号制御装置または前記歩行者端末装置との間で無線通信を行う車載端末装置をさらに含み、前記車載端末装置が、前記信号制御装置または前記歩行者端末装置との間で、歩車間通信のデータ通信フォーマットに基づく無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信部が前記信号制御装置から前記横断区域を予め設定されたアラーム対象者が横断することを示すアラーム情報を受信したときに、前記アラーム情報を前記車両の運転手に対して報知する報知情報を生成する報知情報生成部と、前記報知情報を前記車両に搭載された報知装置に出力する出力部とを備えたことを特徴とする。
また、第13の発明は、上記第12の発明において、前記車載端末装置が、前記車両が前記交差点を左折するか否かを判定する左折判定部と、前記左折判定部で前記車両が前記交差点を左折すると判定されたときに、前記車両が前記交差点を左折することを示す左折情報を生成する左折情報生成部と、前記左折情報を前記歩行者端末装置に送信するように前記無線通信部を制御する通信制御部とをさらに備えたことを特徴とする。
また、第14の発明は、交差点に設置された矢印式の車両用信号機の信号表示を制御する信号制御方法であって、前記車両用信号機が直進を可にする期間に、前記車両用信号機の信号表示に従う車両が左折したときに進入する前記交差点の横断区域を横断する歩行者が存在するか否かを判定するステップと、前記横断区域を横断する歩行者が存在すると判定された場合には、直進可を示す直進信号を表示し、前記横断区域を横断する歩行者が存在しないと判定された場合には、前記直進信号と左折可を示す左折信号を表示するように信号表示を制御するステップとを有することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る信号制御システム1の全体構成図であり、図2は、この信号制御システム1を、2本の道路13、14が交差した交差点10に適用した例を示す図である。
図1および図2に示すように、信号制御システム1は、歩行者2が所持する歩行者端末装置3と、信号制御装置4とを備えている。図示しないが、信号制御システム1が、車載端末装置7(図15、図20参照)をさらに備えていてもよい。歩行者端末装置3は、スマートフォンや携帯電話などの携帯情報端末装置5と接続されている。なお、歩行者端末装置3は、携帯情報端末装置5に予め内蔵されたものとしてもよい。また、歩行者2は、シニアカー等の歩行補助車、自転車等の軽車両、車椅子などに乗車した人物であってもよい。
図2に示すように、交差点10は、片側2車線の道路13および道路14が交差することにより形成されている。本実施形態では、道路13における図示左側の図示上方向に直進する2車線を第1走行路13A、図示右側の図示下方向に直進する2車線を第2走行路13Bと称する。また、道路14における図示上側の図示右方向に直進する2車線を第3走行路14A、図示下側の図示左方向に直進する2車線を第4走行路14Bと称する。
交差点10における道路14を横断する部分には、第1走行路13A側には横断区域15Aが、第2走行路13B側には横断区域15Bがそれぞれ設けられている。また、交差点10における道路13を横断する部分には、第3走行路14A側には横断区域15Cが、第4走行路14B側には横断区域15Dがそれぞれ設けられている。横断区域15A〜15D(以降、総称するときは、符号15を用いる)は、横断歩道または横断歩道に相当する区域であり得る。また、横断区域15は、交差点10を横断する区域だけでなく、交差点10の付近の歩道や路肩などを含み得る。
交差点10には、道路13および道路14の各走行路を走行する車両6に対して信号を表示するための車両用信号機11A〜11D(以降、総称するときは、符号11を用いる)と、横断区域15を横断する歩行者2に対して信号を表示するための歩行者用信号機12A〜12D(以降、総称するときは、符号12を用いる)が設けられている。車両用信号機11A〜11Dは、第1走行路13A、第2走行路13B、第3走行路14A、第4走行路14Bにそれぞれ対応して設けられており、歩行者用信号機12A〜12Dは、横断区域15A〜15Dにそれぞれ対応して設けられている。なお、歩行者用信号機12は、実際には横断区域15の横断方向の両側に設けられているが、一方の側の歩行者用信号機12の図示は省略する。
車両用信号機11は、矢印式の信号機であり、赤色、黄色の本信号に加えて、左折可を示す矢印信号(以降、「左折信号」と称する)、直進可を示す矢印信号(以降、「直進信号」と称する)、右折可を示す矢印信号(以降、「右折信号」と称する)を表示可能に構成されている。左折信号、直進信号、右折信号の各信号は、赤色の本信号と同時に表示される。なお、本実施形態では、車両用信号機11が青色の本信号を表示することはない。本実施形態では、車両用信号機11は、赤色の本信号と左折信号および直進信号、黄色の本信号、赤色の本信号と右折信号、黄色の本信号、赤色の本信号、の順で信号表示を切り替えるものとする。なお、説明を簡素化するため、以下では、黄色の本信号の表示についての説明は省略する。
本実施形態では、車両用信号機11は、直進を可にする期間に、赤色の本信号と左折信号および直進信号を表示し、右折を可にする期間に、赤色の本信号と右折信号を表示するものとする。したがって、以下の説明では、「左折信号および直進信号を表示すべき期間」は、「直進を可にする期間」を指す。同様に、「右折信号を表示すべき期間」は、「右折を可にする期間」を指す。
歩行者用信号機12は、青信号と赤信号を表示可能に構成されている。本実施形態では、歩行者用信号機12は、車両用信号機11が赤色の本信号と左折信号および直進信号を表示すべき期間(すなわち、直進を可にする期間)において、その期間の前半に青信号を表示し、後半に赤信号を表示するものとする。それ以外のときは、歩行者用信号機12は赤信号を表示する。
車両用信号機11および歩行者用信号機12は、信号制御装置4と接続されており、信号制御装置4により信号表示が制御される。なお、図2では、信号制御装置4と、車両用信号機11B〜11Dおよび歩行者用信号機12B〜12Dとの接続の図示は省略している。車両用信号機11および歩行者用信号機12での信号表示の切り替えは、予め設定された時間間隔に基づいて行ってもよいし、図示しない交通管制センターからの指示に基づいて行ってもよい。交通管制センターからの指示に基づいて信号表示を切り替える場合は、信号制御装置4は、専用制御回線または通信ネットワークを介して交通管制センターに接続されているものとする。
次に、歩行者端末装置3の概略構成について説明する。図3は、歩行者端末装置3の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、歩行者端末装置3は、測位部31と、入出力部32と、無線通信部33と、制御部34とを備えている。
測位部31は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。なお、携帯情報端末装置5が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
入出力部32は、携帯情報端末装置5との間で情報の入出力を行う。携帯情報端末装置5との間の情報の入出力は、有線通信、またはBluetooth(登録商標)等の無線通信により行われる。
無線通信部33は、ITS無線通信、すなわち、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば、700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した無線通信により、信号制御装置4との間でメッセージの送受信を行う。メッセージの送信は、定期的に所定の間隔(例えば100msec)でブロードキャスト方式により行われる。
制御部34は、通信制御部35と、入出力制御部36とを備えている。この制御部34はプロセッサで構成されており、制御部34の各部は、図示しない情報格納部に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
通信制御部35は、無線通信部33でのメッセージの送受信を制御する。具体的には、測位部31から自装置の位置情報を取得し、その位置情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージを無線通信部33から送信させる。
入出力制御部36は、携帯情報端末装置5との間での情報の入出力を制御する。
次に、信号制御装置4の概略構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、信号制御装置4は、無線通信部41と、情報格納部42と、制御命令出力部43と、制御部44とを備えている。
無線通信部41は、歩行者端末装置3の無線通信部33(図3参照)と同様に、ITS無線通信により、歩行者端末装置3との間でメッセージの送受信を行う。
情報格納部42は、地図情報および制御部44で実行されるプログラムなどを格納している。地図情報には、横断区域15の位置情報が含まれている。
制御命令出力部43は、車両用信号機11および歩行者用信号機12に対して、信号表示を制御するための制御命令を出力する。
制御部44は、通信制御部45と、横断者判定部46と、信号制御部47とを備えている。この制御部44はプロセッサで構成されており、制御部44の各部は、情報格納部42に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
通信制御部45は、無線通信部41でのメッセージの送受信を制御する。
横断者判定部46は、無線通信部41が歩行者端末装置3からメッセージを受信したときに、そのメッセージから歩行者端末装置3の位置情報を抽出し、抽出した位置情報を情報格納部42に格納されている地図情報と照合することにより、横断区域15を横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。具体的には、歩行者2が横断区域15内に位置するとき、または歩行者2が横断区域15の付近に位置しかつ横断区域15に向かって移動しているときに、横断区域15を横断する歩行者2が存在すると判定する。
信号制御部47は、制御命令出力部43を介して制御命令を出力することにより、車両用信号機11および歩行者用信号機12での信号表示を制御する。具体的には、予め設定された時間間隔、または図示しない交通管制センターからの指示に基づいて、車両用信号機11および歩行者用信号機12での信号表示を切り替える。また、車両用信号機11が左折信号や直進信号などの矢印信号を表示すべき期間に、矢印信号の表示を制御する。矢印信号の表示の制御は、その車両用信号機11に対応する道路13(14)を走行する車両6が交差点10を左折または右折したときに進入する横断区域15についての、横断者判定部46での判定結果に基づいて行われる。
図4は、信号制御部47による車両用信号機11の信号制御の例を示す図である。図4は、車両用信号機11A、11Bが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが青信号を表示するときに、車両用信号機11Aの信号表示を制御する例を示している。なお、以降の説明では、第1走行路13Aを走行する車両6は車両6Aとし、第2走行路13Bを走行する車両6は車両6Bとする(ただし、総称するときは、符号6を用いる)。
図4(A)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しない場合には、信号制御部47は、左折信号および直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。一方、図4(B)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在する場合には、信号制御部47は、左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。なお、第1走行路13Aに対向する第2走行路13Bに対応する車両用信号機11Bも、車両用信号機11Aと同様に制御される。
また、信号制御部47は、交差点10の各車両用信号機11を個別に制御することができる。図5は、信号制御部47が、車両用信号機11A、11Bを個別に制御する例を示している。図5に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在する場合には、車両6Aに対して左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し、横断区域15Bを横断する歩行者2が存在しない場合には、車両6Bに対して左折信号および直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御する。このように、信号制御部47は、車両用信号機11A、11Bを個別に制御することができる。
次に、信号制御装置4の動作について、図6のフロー図を参照して説明する。ここでは、横断区域15Aに車両6Aが左折により進入する道路である第1走行路13Aに対応する車両用信号機11Aの信号表示を制御する場合について説明する。
まず、ステップST101では、車両用信号機11Aが左折信号および直進信号を表示すべき期間であるか否かを判定する。この判定は、予め設定された信号表示を切り替えるタイミング、または図示しない交通管制センターからの指示を参照して行うとよい。左折信号および直進信号を表示すべき期間であると判定された場合(ST101:Yes)は、ステップST102に進む。左折信号および直進信号を表示すべき期間ではないと判定された場合(ST101:No)は、ステップST106に進む。
ステップST102では、歩行者用信号機12Aの信号表示が青信号であるか否かを判定する。歩行者用信号機12Aの表示信号が青信号であると判定された場合(ST102:Yes)は、ステップST103に進む。歩行者用信号機12Aの表示信号が青信号ではないと判定された場合(ST102:No)は、ステップST105に進む。
ステップST103では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST103:Yes)は、ステップST104に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST103:No)は、ステップST105に進む。
ステップST104では、左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し(図4(B)参照)、その後、ステップST101に戻る。ステップST105では、左折信号と直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し(図4(A)参照)、その後、ステップST101に戻る。
ステップST106では、車両用信号機11Aが右折信号を表示すべき期間であるか否かを判定する。右折信号を表示すべき期間であると判定された場合(ST106:Yes)は、ステップST107に進む。右折信号を表示すべき期間ではないと判定された場合(ST106:No)は、ステップST108に進む。
ステップST107では、右折信号を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し、その後、ステップST101に戻る。ステップST108では、右折信号を表示せず赤色の本信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し、その後、ステップST101に戻る。
このようにして、第1実施形態に係る信号制御システム1によれば、車両用信号機11が左折信号および直進信号を表示すべき期間に、車両用信号機11の信号表示に従う車両6が交差点10を左折したときに進入する交差点10の横断区域15を横断する歩行者2が存在するか否かを判定し、横断区域15を横断する歩行者2が存在すると判定された場合には、左折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域15を横断する歩行者2と左折車6Aとの接触事故を防止することが可能となる。また、横断区域15を横断する歩行者2が存在しないと判定された場合には、左折信号を表示するように信号表示を制御することができるので、左折待ちの車両6が交差点10の手前で渋滞するのを防止することも可能となる。
なお、本実施形態では、左折信号および直進信号を表示すべき期間における信号表示を制御について説明したが、直進信号を表示すべき期間において、横断区域15を横断する歩行者2が存在しない場合に、左折信号を表示するように信号表示を制御してもよい。すなわち、車両用信号機11が直進を可にする期間(直進信号を表示すべき期間)において、横断区域15の横断者が存在しない場合に、左折を可にするように信号表示を制御してもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る信号制御システム1について説明する。なお、この第2実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態の場合と同様とする。
図7は、第2実施形態に係る信号制御システム1による車両用信号機11の制御の例を示す図である。図7は、車両用信号機11A、11Bが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが青信号を表示するときに、車両用信号機11Aの信号表示を制御する例を示している。
第1実施形態において説明したように、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しない場合は、信号制御装置4の信号制御部47は、左折信号および直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する(図7(A)参照)。しかし、左折信号および直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御した後に、横断区域15Aを横断する歩行者2が急に現れる場合がある。そこで、この第2実施形態に係る信号制御システム1では、このような場合に、図7(B)に示すように、車両用信号機11Aの左折信号を点滅させることにより、左折車6Aの運転手に対して注意を喚起する。左折信号を点滅させてから予め設定された時間が経過した後は、左折信号は消す。なお、点滅の代わりにまたは点滅に加えて、左折信号の色を、青色から赤色や黄色などの注意を喚起する色に変更するようにしてもよい。
次に、第2実施形態に係る信号制御システム1での信号制御装置4の動作について、図8のフロー図を参照して説明する。ここでは、車両用信号機11Aの信号表示を制御する場合について説明する。なお、図8のステップST101−ST108は、上述の第1実施形態のステップST101−ST108(図6参照)と同様であるので説明は省略する。
ステップST105(図7(A)の状態)に続くステップST201では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判断する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST201:Yes)は、ステップST202に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST201:No)は、ステップST101に戻る。
ステップST202では、左折信号を点滅させるように車両用信号機11Aの信号表示を制御する(図7(B)参照)。そして、左折信号を点滅させてから予め設定された時間が経過した後、ステップST203に進む。ステップST203では、左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し、その後、ステップST101に戻る。
このようにして、第2実施形態に係る信号制御システム1によれば、車両用信号機11が左折信号および直進信号を表示すべき期間において、左折信号および直進信号の両方を表示するように信号表示を制御した後に、横断区域15を横断する歩行者2が急に現れた場合でも、左折信号を点滅や信号色の変更等の通常の表示態様とは異なる表示態様で表示することにより、左折車6Aの運転手に対して注意を喚起することができる。これにより、横断区域15を横断する歩行者2と左折車6Aとの接触事故を防止することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る信号制御システム1について説明する。なお、この第3実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態の場合と同様とする。
図9および図10は、第3実施形態に係る信号制御システム1による車両用信号機11の信号制御の例を示す図である。図9は、車両用信号機11A、11Bが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示するときに、車両用信号機11Aの信号表示を制御する例を示している。図10は、車両用信号機11A、11Bが右折信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示するときに、車両用信号機11Bの信号表示を制御する例を示している。
例えば歩行者2が高齢者や体の不自由な人などである場合、歩行者用信号機12Aが青信号から赤信号に切り替わっても、横断区域15Aを渡り終わらないことがある。また、例えば歩行者2が幼児などである場合、歩行者用信号機12Aが赤信号を表示しているのにも関わらず、横断区域15Aを渡り始めることがある。すなわち、図9(A)に示すように、車両用信号機11Aが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12Aが赤信号を表示しているときに、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在する場合があり得る。このような場合には、左折車6Aと歩行者2との接触事故が生じる恐れがある。そこで、この第3実施形態に係る信号制御システム1では、このような場合に、図9(B)に示すように、左折信号を表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。
また、例えば歩行者2が高齢者や体の不自由な人などである場合、車両用信号機11Aが左折信号および直進信号を表示すべき期間(図9(A)参照)が終わり、車両用信号機11Aが右折信号を表示すべき期間になっても、横断区域15Aを渡り終わらない場合がある。また、歩行者2が幼児などである場合、歩行者用信号機12Aが赤信号を表示しているのにも関わらず、横断区域15Aを渡り始めることがある。すなわち、図10(A)に示すように、車両用信号機11Aが右折信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12Aが赤信号を表示しているときに、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在する場合があり得る。このような場合は、右折車6Bと歩行者2との接触事故が生じる恐れがある。そこで、この第3実施形態に係る信号制御システム1では、このような場合に、図10(B)に示すように、右折信号を表示せず赤色の本信号のみを表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御する。
次に、第3実施形態に係る信号制御システム1での信号制御装置4の動作について、図11のフロー図を参照して説明する。ここでは、車両用信号機11A、11Bの信号表示を制御する場合について説明する。なお、図11のステップST101−ST108は、上述の第1実施形態のステップST101−ST108(図6参照)と同様であるので説明は省略する。
ステップST102では、歩行者用信号機12Aの信号表示が青信号であるか否かを判定する。歩行者用信号機12の信号表示が青信号であると判定された場合(ST102:Yes)は、ステップST103へ進み、歩行者用信号機12の信号表示が青信号ではないと判定された場合(ST102:No)は、ステップST301に進む。
ステップST301では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST301:Yes)は、ステップST302に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST301:No)は、ステップST105に進む。上述したように、ステップST105では、左折信号と直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。
ステップST302では、左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御し(図9(B)参照)、その後、ステップST101へ戻る。
ステップST106では、車両用信号機11A、11Bが右折信号を表示すべき期間であるか否かを判定する。右折信号を表示すべき期間であると判定された場合(ST106:Yes)は、ステップST303に進む。右折信号を表示すべき期間ではないと判定された場合(ST106:No)は、ステップST108に進む。
ステップST303では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST303:Yes)は、ステップST108に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST303:No)は、ステップST107に進む。ステップST107では、右折信号を表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御する。ステップST108では、右折信号を表示せず赤色の本信号のみを表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御する(図10(B)参照)。
このようにして、第3実施形態に係る信号制御システム1によれば、車両用信号機11が右折信号を表示すべき期間に、車両用信号機11の信号表示に従う車両6が交差点10を右折したときに進入する交差点10の横断区域15を横断する歩行者2が存在するか否かを判定し、横断区域15を横断する歩行者2が存在すると判定された場合には、右折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域15を横断する歩行者2と右折車6Bとの接触事故を防止することが可能となる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る信号制御システム1について説明する。なお、この第4実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上述の第3実施形態の場合と同様とする。
図12および図13は、第4実施形態に係る信号制御システム1による車両用信号機11の信号制御の例を示す図である。図12は、車両用信号機11A、11Bが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示するときに、車両用信号機11Aの信号表示を制御する例を示している。図13は、車両用信号機11A、11Bが右折信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示しているときに、車両用信号機11Bの信号表示を制御する例を示している。
第3実施形態において説明したように、歩行者用信号機12Aが赤信号を表示しているときでも、横断区域15Aを横断する歩行者2が存在する場合は、車両用信号機11Aが左折信号をしないように(図9(B)参照)、または車両用信号機11Bが右折信号を表示しないように信号表示を制御する(図10(B)参照)。しかし、横断区域15Aを横断する歩行者2が、横断区域15Aにおける左折車6Aまたは右折車6Bが通過する領域、すなわち横断区域15Aにおける第4走行路14B側の領域(以降、「車両通過領域」と称する)16内に存在しない場合は、左折車6Aまたは右折車6Bが横断区域15Aに進入しても歩行者2と接触することはない。なお、図示しないが、車両通過領域16は、横断区域15A以外の各横断区域15B〜15Dにも設定されるものとする。
そこで、この第4実施形態に係る信号制御システム1では、車両用信号機11A、11Bが左折信号および直進信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示するときに、図12(A)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が車両通過領域16内に存在する場合は、左折信号は表示せず直進信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。一方、図12(B)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が車両通過領域16内に存在しない場合は、左折信号および直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する。
また、この第4実施形態に係る信号制御システム1では、車両用信号機11A、11Bが右折信号を表示すべき期間であり、かつ歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示するときに、図13(A)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が車両通過領域16内に存在する場合は、右折信号を表示しないように車両用信号機11Bの信号表示を制御する。一方、図13(B)に示すように、横断区域15Aを横断する歩行者2が車両通過領域16内に存在しない場合は、右折信号を表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御する。
なお、上述した図12および図13の例では、歩行者用信号機12A、12Bが赤信号を表示する場合について説明したが、歩行者用信号機12A、12Bが青信号を表示する場合も同様である。
横断区域15Aを横断する歩行者2が車両通過領域16内に存在するか否かは、情報格納部42(図3参照)に格納された地図情報に車両通過領域16の位置情報を含めておき、横断者判定部46で歩行者2の位置情報を地図情報と照合することにより判定するとよい。
次に、第4実施形態に係る信号制御システム1での信号制御装置4の動作について、図14のフロー図を参照して説明する。ここでは、車両用信号機11A、11Bの信号表示を制御する場合について説明する。なお、図14のステップST101−ST108およびステップST301−303は、上述の第1実施形態のステップST101−ST108(図6参照)および上述の第3実施形態のステップ301−303(図11参照)と同様であるので説明は省略する。
ステップST103では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST103:Yes)は、ステップST401に進む。横断区域15を横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST103:No)は、ステップST105に進む。
ステップST301では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST301:Yes)は、ステップST401に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST301:No)は、ステップST105に進む。
ステップST401では、歩行者2が車両通過領域16内に存在するか否かを判定する。車両通過領域16内に歩行者2が存在すると判定された場合(ST401:Yes)は、ステップST104に進む。歩行者2が車両通過領域16内に存在しないと判定された場合(ST401:No)は、ステップST105に進む。
ステップST104では、左折信号は表示せず直進印信号のみを表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する(図12(A)参照)。また、ステップST105では、左折信号と直進信号の両方を表示するように車両用信号機11Aの信号表示を制御する(図12(B)参照)。
ステップST303では、横断区域15Aを横断する歩行者2(横断者)が存在するか否かを判定する。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在すると判定された場合(ST303:Yes)は、ステップST402に進む。横断区域15Aを横断する歩行者2が存在しないと判定された場合(ST303:No)は、ステップST107に進む。
ステップST402では、歩行者2が車両通過領域16内に存在するか否かを判定する。歩行者2が車両通過領域16内に存在すると判定された場合(ST402:Yes)は、ステップST108に進む。歩行者2が車両通過領域16内に存在しないと判定された場合(ST401:No)は、ステップST107に進む。
ステップST107では、右折信号を表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御し(図13(B)参照)、その後、ステップST101に戻る。ステップST108では、右折信号を表示せず赤色の本信号のみを表示するように車両用信号機11Bの信号表示を制御し(図13(A)参照)、その後、ステップST101に戻る。
このようにして、第4実施形態に係る信号制御システム1によれば、車両用信号機11が左折信号または右折信号を表示すべき期間に、横断区域15の車両通過領域16内に歩行者が存在するか否かを判定し、車両通過領域16内に歩行者2が存在すると判定された場合にのみ、左折信号または右折信号を表示しないように信号表示を制御することができるので、横断区域15を横断する歩行者2と左折車6Aまたは右折車6Bとの接触事故を防止するとともに、左折待ちまたは右折待ちの車両6が交差点10の手前で渋滞するのを防止することが可能となる。
また、現時点における歩行者2が存在する領域または位置を示す情報に加えて、歩行者2の移動方向を示す情報も用いて、車両用信号機11の信号表示を制御することも可能である。例えば、現時点で歩行者2が車両通過領域16内に存在していなくても、歩行者2が車両通過領域16の方向に向かって移動している場合は、左折信号または右折信号を表示しないように信号表示を制御してもよい。また、現時点で歩行者2が車両通過領域16内に存在していても、歩行者2が車両通過領域16とは逆の方向に向かって移動している場合は、左折信号または右折信号を表示するように信号表示を制御してもよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る信号制御システム1について説明する。図15は、第5実施形態に係る信号制御システム1の全体構成図であり、図16は、第5実施形態に係る信号制御システム1におけるメッセージの送受信の例を示す図である。なお、この第5実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態の場合と同様とする。
図15に示すように、第5実施形態に係る信号制御システム1は、歩行者2が所持する歩行者端末装置3と、信号制御装置4と、車両6に搭載された車載端末装置7とを備えている。車載端末装置7は、車両6に搭載されたカーナビゲーション装置8と接続されている。なお、車載端末装置7は、カーナビゲーション装置8に内蔵されたものとしてもよい。車載端末装置7は、ITS無線通信(歩車間通信)により信号制御装置4との間でメッセージの送受信を行うことができる。
次に、歩行者端末装置3の概略構成について説明する。図17は、歩行者端末装置3の概略構成を示すブロック図である。図17に示す歩行者端末装置3は、歩行者端末装置3のユーザの属性情報を格納する情報格納部37をさらに備えている点が、図3に示した第1実施形態に係る歩行者端末装置3と異なる。他の点は第1実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
属性情報は、ユーザの年齢、性別、身体的状態などを示す情報である。属性情報の例としては、ユーザが高齢者であるという情報や、ユーザが体の不自由な人であるという情報が挙げられる。属性情報は、歩行者端末装置3のユーザID等に設定されている。
通信制御部35は、測位部31から自装置の位置情報を取得したときに、情報格納部37に格納されている属性情報を確認する。そして、属性情報が、高齢者や体の不自由な人などの予め設定された交通事故の被害に遭いやすい交通弱者(以降、「アラーム対象者」と称する)に設定されている場合は、情報格納部37から属性情報を取得し、その属性情報と位置情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージを無線通信部33から信号制御装置4へ送信させる(図16参照)。
次に、信号制御装置4の概略構成について、図15を参照して説明する。図15に示す信号制御装置4は、アラーム情報生成部48をさらに備えている点が、図1に示した第1実施形態に係る信号制御装置4と異なる。他の点は第1実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
アラーム情報生成部48は、横断者判定部46で横断区域15を横断する歩行者2が存在すると判定され、かつ歩行者端末装置3から受信したメッセージに含まれている属性情報がアラーム対象者である場合に、横断区域15をアラーム対象者が横断することを示すアラーム情報を生成する。なお、アラーム情報には、ユーザの属性情報(例えば、ユーザが高齢者であるという情報や、ユーザが体の不自由な人であるという情報)が含められる。
通信制御部45は、アラーム情報生成部48でアラーム情報が生成されたときに、そのアラーム情報を含むメッセージを生成し、そのメッセージを無線通信部41から車載端末装置7へ送信させる(図16参照)。
次に、車載端末装置7の概略構成について説明する。図18は、車載端末装置7の概略構成を示すブロック図である。図18に示すように、車載端末装置7は、無線通信部71と、入出力部72と、制御部73とを備えている。
無線通信部71は、歩行者端末装置3の無線通信部33(図3参照)と同様に、ITS無線通信により、信号制御装置4との間でメッセージの送受信を行う。
入出力部72は、カーナビゲーション装置8との間で情報の入出力を行う。
制御部73は、通信制御部74と、報知情報生成部75と、入出力制御部76とを備えている。この制御部73は、プロセッサで構成されており、制御部73の各部は、図示しない情報格納部に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
通信制御部74は、無線通信部71でのメッセージの送受信を制御する。
報知情報生成部75は、無線通信部71が信号制御装置4からアラーム情報を含むメッセージを受信したときに、そのアラーム情報を車両6の運転手に対して報知するための報知情報を生成する。報知情報は、音声や画面表示などであり得る。また、報知情報には、ユーザの属性情報(例えば、ユーザが高齢者であるという情報や、ユーザが体の不自由な人であるという情報)が含められる。
入出力制御部76は、カーナビゲーション装置8との間での情報の入出力を制御する。具体的には、報知情報生成部75で報知情報が生成されたとき、その報知情報をカーナビゲーション装置8に出力する。
次に、第5実施形態に係る信号制御システム1の動作の概要について説明する。図19は、歩行者端末装置3、信号制御装置4、車載端末装置7、およびカーナビゲーション装置8の動作の概要を示すシーケンス図である。カーナビゲーション装置8は、車両6の運転手に対して報知情報を出力するための報知装置の役割を果たす。
歩行者端末装置3は、歩行者2の属性情報がアラーム対象者である場合に、属性情報および位置情報を含むメッセージを無線通信部33から信号制御装置4へ送信する(ステップST501)。
信号制御装置4は、歩行者端末装置3からメッセージを受信したときに、まず、横断者判定部46で、横断区域15を横断する歩行者2が存在するか否かを判定する(ステップST502)。そして、横断区域15を横断する歩行者2が存在すると判定され、かつ歩行者端末装置3から受信したメッセージに含まれている属性情報がアラーム対象者である場合に、アラーム情報生成部48で、横断区域15をアラーム対象者が横断することを示すアラーム情報を生成する(ステップST503)。アラーム情報生成部48でアラーム情報が生成されたときは、通信制御部45はそのアラーム情報を含むメッセージを生成し、そのメッセージを無線通信部41から車載端末装置7へ送信させる(ステップST504)。
車載端末装置7は、信号制御装置4からアラーム情報を含むメッセージを受信したときに、報知情報生成部75で報知情報を生成する(ステップST505)。報知情報生成部75で生成された報知情報は、入出力制御部76からカーナビゲーション装置8に出力される(ステップST506)。
カーナビゲーション装置8は、車載端末装置7から報知情報が入力されたとき、その報知情報を出力する(ST507)。
このようにして、第5実施形態に係る信号制御システム1によれば、横断区域15を横断する歩行者2が高齢者や体の不自由な人などのアラーム対象者である場合に、そのことを車両6の運転者に対して知らせることができる。これにより、高齢者や体の不自由な人などの交通事故の被害に遭いやすい交通弱者の安全をより確実に確保することが可能となる。なお、アラーム対象者は、高齢者や体の不自由な人以外にも、怪我人、病人、妊婦、子供、子供連れの人、泥酔した人などであってもよい。また、過去に飛び出した前例が多い人(特に子供等)の場合、過去に飛び出した前例が多いことを示す情報も前記メッセージに追加して車両6に通知するようにしてもよい。また、車両6においては、過去に飛び出した前例が多い人を、高齢者や体の不自由な人の場合とは別の報知情報(例えばアラーム等)で運転者に対して通知するようにしてもよい。
また、本実施形態では、歩行者端末装置3は、ユーザがアラーム対象者である場合にのみ、属性情報を位置情報とともに送信するように構成したが、常時、属性情報を位置情報とともに送信し、信号制御装置4においてユーザがアラーム対象者であるか否かを判定するように構成してもよい。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る信号制御システム1について説明する。図20は、第6実施形態に係る信号制御システム1の全体構成図であり、図21は、第6実施形態に係る信号制御システム1におけるメッセージの送受信の例を示す図である。なお、この第6実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態の場合と同様とする。
図20に示すように、第6実施形態に係る信号制御システム1は、歩行者2が所持する歩行者端末装置3と、信号制御装置4と、車両6に搭載された車載端末装置7とを備えている。車載端末装置7は、車両6に搭載されたカーナビゲーション装置8と接続されている。なお、車載端末装置7は、カーナビゲーション装置8に内蔵されたものとしてもよい。車載端末装置7は、ITS無線通信(歩車間通信)により歩行者端末装置3との間でメッセージの送受信を行うことができる。
次に、車載端末装置7の概略構成について説明する。図22は、車載端末装置7の概略構成を示すブロック図である。図22に示すように、車載端末装置7は、無線通信部71と、入出力部72と、制御部73と、測位部91と、情報格納部92とを備えている。また、制御部73は、通信制御部74と、入出力制御部76と、左折判定部93と、左折情報生成部94とを備えている。測位部91、情報格納部92、左折判定部93、および左折情報生成部94以外は、図18に示した第5実施形態に係る車載端末装置7と同様であるので、同一の符号を付してその説明は省略する。なお、この第6実施形態に係る車載端末装置7は、報知情報生成部75を備えていない。
測位部91は、歩行者端末装置3の測位部31(図3参照)と同様に、GPS、QZSS、GLONASSなどの衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。なお、カーナビゲーション装置8が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
情報格納部92は、地図情報および制御部73で実行されるプログラムなどを格納している。地図情報には、交差点10の位置情報が含まれている。
左折判定部93は、測位部91で取得された位置情報を、情報格納部92に格納されている地図情報と照合することにより、自装置(車両6)が交差点10から所定の範囲内に位置するか否かを判定する。そして、自装置(車両6)が交差点10から所定範囲内に位置すると判定された場合は、車両6が交差点10を左折するか否かを判定する。車両6の左折の判定は、車両6に設置されたウインカー(方向指示器)や操舵角センサなどの各種機器またはセンサからの信号に基づいて行うとよい。
左折情報生成部94は、左折判定部93で車両6が左折すると判定された場合に、車両6が交差点10を左折することを示す左折情報を生成する。
通信制御部74は、左折情報生成部94で左折情報が生成されたときに、その左折情報を含むメッセージを生成し、そのメッセージを無線通信部71から歩行者端末装置3へ送信させる(図21参照)。
歩行者端末装置3および信号制御装置4は、図1および図3に示した第1実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明は略する。なお、歩行者端末装置3は、位置情報を定期的に送信するのではなく、車載端末装置7から左折信号を受信したときにのみ、位置情報を送信するように構成されている。
次に、第6実施形態に係る信号制御システム1の動作の概要について説明する。図23は、歩行者端末装置3、信号制御装置4、および車載端末装置7の動作の概要を示すシーケンス図である。
車載端末装置7は、まず、左折判定部93で、測位部91が取得した自装置(車両6)の位置情報を地図情報と照合し、車両6が交差点10から所定範囲内に位置するか否かを判定する(ステップST601)。そして、車両6が交差点10から所定範囲内に位置すると判定された場合に、左折判定部93で、車両6が交差点10を左折するか否かを判定する(ステップST602)。左折判定部93で車両6が交差点10を左折すると判定された場合は、左折情報生成部94で左折情報を生成する(ステップST603)。左折情報生成部94で左折情報が生成されたときは、通信制御部74はその左折情報を含むメッセージを生成し、そのメッセージを無線通信部41から歩行者端末装置3へ送信させる(ステップST604)。
歩行者端末装置3は、車載端末装置7から左折情報を受信すると、測位部31で自装置の位置情報を取得する(ステップST605)。そして、通信制御部35は、その位置情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージを無線通信部33から信号制御装置4へ送信させる(ステップST606)。
このようにして、第6実施形態に係る信号制御システム1によれば、歩行者端末装置3は、車載端末装置7から左折情報を受信したときにのみ、自装置の位置情報を信号制御装置4に送信することができる。これにより、歩行者端末装置3から位置情報を送信する頻度を減らすことができるので、歩行者端末装置3の電力消費を抑えることが可能となる。
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。なお、上記実施形態に示した本発明に係る信号制御装置、信号制御システム、および信号制御方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
例えば、上記の実施形態では、横断区域15を横断する歩行者2が存在するか否かの判定は、歩行者端末装置3の位置情報に基づいて行うように構成したが、図24に示すように、交差点10の路肩等に、横断区域15またはその付近に存在する歩行者2を検出可能な歩行者検出装置17を設置し、その歩行者検出装置17での検出結果に基づいて、横断区域15を横断する歩行者2が存在するか否かを判定するように構成してもよい。歩行者検出装置17は、例えばセンサやカメラなどを用いた装置であり得る。なお、図示しないが、歩行者検出装置17は、横断区域15A以外の各横断区域15B〜15Dにもそれぞれ対応して設けられるものとする。
また、上記の実施形態では、本発明に係る信号制御システム1を2本の道路が交差するに交差点10に適用する場合について説明したが、本発明に係る信号制御システム1は、3本以上の道路が交差する多叉路にも適用可能である。
また、車両用信号機によっては、直進と右折を可にする期間が存在することも考えられる。このような場合は、右折に関しても左折の場合と同様に本発明を適用可能である。例えば、直進と右折を可にする期間において、車両が右折で進入する横断区域の横断者が存在する場合は直進のみを可とし、横断者が存在しない場合は直進と右折の両方を可にするように信号表示を制御するとよい。
さらに、本発明は、信号機付近等にロボット等を配置するサービスとの併用も可能である。例えば、横断区域の横断者が存在する場合、上記のような信号表示の制御に加えて、ロボットが横断歩道付近等に立ち、左折車や右折車に停止を促すようにしてもよい。なお、ロボットをドローン等の無人小型飛行機等で代用することも可能である。このようなサービスは、特に、飲酒運転、居眠り運転、蛇行運転、スピード違反等を行っている車両に対して有効である。
また、本発明は、車両が自動運転を行う場合においても適用可能である。例えば、横断区域の横断者が存在する場合、左折または右折をする車両は、上記のような信号表示の制御に従って横断歩道等の横断区域の手前で自動的に停止するか、あるいは該当交差点を直進して別の交差点で左折または右折を行うようにすればよい。
また、本発明は、踏切事故対策にも適用可能である。例えば、踏み切りの遮断機が降りている時間帯において、踏切内に高齢者、病人、体の不自由な人等がいる場合、列車に対して停止信号を点灯することが可能である。あるいは、踏切に設置された通信機を介して列車に対してアラーム通知を行い、列車の運転手に対して停止を促す、または列車を自動的に停止させる等を行うようにすればよい。なお、踏切内に、歩行者以外にも、故障した車両、自動2輪、自転車、電動車椅子、シニアカー、農機等が存在する場合においても、本発明は同様に適用可能である。さらに、駅においてホームから線路に乗客が転落した場合等においても、踏み切りの場合と同様に本発明は適用可能である。具体的には、線路内に乗客が存在することを検出した場合に、列車に対して停止信号を点灯するか、あるいは、列車に対してアラーム通知を行い、列車の運転手に対して停止を促す、または列車を自動的に停止させる等を行うようにすればよい。