JP6856610B2 - ヘテロ二量体免疫グロブリンの精製 - Google Patents

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Description

本発明は、全般的に、ヘテロ二量体免疫グロブリンの選択的精製の方法に関する。プロテインAまたはGに対する親和性を喪失させる特異的置換を、ヘテロ二量体免疫グロブリンの一方の重鎖に導入できる。本発明のさらなる態様では、プロテインAに対する親和性を喪失させる置換をヘテロ二量体免疫グロブリンの一方の重鎖に導入でき、プロテインGに対する親和性を喪失させる置換をヘテロ二量体免疫グロブリンの他方の重鎖に導入し、そのことによりプロテインAおよびプロテインG親和性クロマトグラフィーの組み合わせを用いてヘテロ二量体免疫グロブリンを容易に精製するための方法を提供する。
ヘテロ二量体免疫グロブリンを生成するための方法は当該技術において知られており、最も単純な方法の1つは、単一細胞中で2つの異なる免疫グロブリン鎖を発現させることに依拠する(WO95/33844、Lindhofer HおよびThierfelder S)。工学的操作なしで、この単純な方法は、対象のヘテロ二量体を超えるホモ二量体種の形成により制限される(Kuferら、(2004)Trends Biotechnol.、22(5):238〜244頁)。重鎖ヘテロ二量体形成を増加させる補完的技術を用いる場合(Merchant AMら、(1998)Nat.Biotechnol.、16(7):677〜681頁)、より多いヘテロ二量体生成が達成できるが、著しい量の望ましくないホモ二量体がまだ生成される(Jackman Jら、(2010)J Biol Chem.、285(27):20850〜9頁、Klein Cら、(2012)MAbs、4(6):653〜63頁)。
親和性試薬に対するヘテロ二量体の差次的親和性に基づいてホモ二量体からヘテロ二量体を容易に回収する技術が知られている。差次的親和性技術の最初の例は、2種の異なる動物由来の2つの異なる重鎖であって、そのうちの一方が親和性試薬プロテインAと結合しない重鎖の使用を含んだ(Lindhofer Hら、(1995)J Immunol.、155(1):219〜225頁)。同じ著者らは、2つの異なるヒト免疫グロブリンアイソタイプ(IGHG1およびIGHG3)を起源とする2つの異なる重鎖であって、そのうちの1つが親和性試薬プロテインAと結合しない重鎖の使用についても記載した(IGHG3;US6,551,592 Lindhofer Hらを参照されたい)。後者の技術の変形が、WO10/151792(Davis Sら)に記載され、これは、一方のヘテロ二量体重鎖における試薬プロテインAに対する親和性を排除するための、Jendebergら(Jendebergら、(1997)J.Immunol.Methods、201(1):25〜34頁)により記載された2つのアミノ酸置換H435R/Y436Fの使用を含んだ。
プロテインAに基づく現在の差次的精製技術の欠点は、重鎖中に存在し、そのことにより精製方法に干渉するさらなるプロテインA結合部位を創出する可能性があるVH3ドメインの寄与についてこの技術が対処していないことである。
上記の既知の差次的精製技術は、ヘテロ二量体からホモ二量体を分離することを可能にする勾配モードのクロマトグラフィーを好ましく用いる。捕捉−溶出モードを用いて対象のヘテロ二量体から重鎖の2つのホモ二量体を容易に分離するために、2つの異なる精製方法を逐次的に行う必要がある。
CaptureSelect(登録商標)IgG−CH1親和性試薬との結合を低減するためのヘテロ二量体抗体の一方のCH1ドメインの改変に基づく差次的精製技術の組み合わせが提案されている(PCTパンフレットWO13/136186 Fischer
Nら)。しかし、この技術の欠点は、少なくとも一方の重鎖が、両方のホモ二量体を除去するためにCH1領域を包含する必要があり、そのことによりこの技術の範囲が制限されることである。よって、抗原結合部位の改変を回避するように免疫グロブリンのFc領域に限定された領域と理想的に結合して、第2の親和性試薬との結合の差を創出し、かつ任意の抗原結合の土台に修正できる、差次的プロテインA精製技術を補完する技術に対する必要性が存在する。
細菌の表面のプロテインAおよびプロテインGと結合することが知られているガンマアイソタイプの自然に存在するヒト免疫グロブリン(IGHG1、IGHG2およびIGHG4;Jendebergら、(1997)、既出ならびにNezlin RおよびGhetie V、(2004)Advances in Immunology、Academic Press、第82巻:155〜215頁)では、各重鎖は、CH2−CH3ドメイン界面に2つの細菌の表面タンパク質それぞれに対する結合部位を保有する。重鎖においてプロテインAおよびプロテインGに対する結合部位はオーバーラップするので、プロテインG結合を低減させるまたは喪失させる特異的置換は、上記のプロテインAベースの方法と同様の方法で重鎖のヘテロ二量体を精製するために有用である。さらに、プロテインGに基づく差次的親和性方法は、ヘテロ二量体免疫グロブリンの精製の新しい方策を提供する。両方の差次的親和性方法を組み合わせることは、高い純度で、いずれの形の勾配溶出も行うことなく重鎖のヘテロ二量体を容易に調製するために有利である。このアプローチでは、重鎖のヘテロ二量体は、プロテインAと結合するがプロテインGとの結合が低減されているかまたは結合しない一方の重鎖を有し、他方の重鎖は、プロテインGと結合するが、プロテインAとの結合が低減されているかまたは結合しない。
プロテインAまたはG結合に関与するアミノ酸残基は、細菌の表面タンパク質との複合体中の免疫グロブリンの実験的に解明された結晶構造(プロテインデータバンク(PDB)データベース;www.pdb.org)から導き出すことができるが、プロテインA、プロテインGおよびFcRn受容体に対する結合部位は同じCH2−CH3ドメイン界面にてオーバーラップするので、プロテインAまたはプロテインGのいずれかに対する親和性に対する効果、さらにFcRn親和性に与えるその影響の点で、いずれの置換による結果も予測することは不可能である。
重鎖がホモ二量体である、自然に存在する免疫グロブリンとは対照的に、本発明のヘテロ二量体免疫グロブリンは、2つの異なる重鎖(重鎖のヘテロ二量体)を有し、それらに限定されないが、全長二重特異性抗体、一価FAB−Fc融合体および二重特異性scFv/FAB Fc融合体を含む。
本発明は、全般的に、プロテインG、プロテインAまたはプロテインGおよびプロテインAの両方との結合が低減または喪失した新規な免疫グロブリンおよびヘテロ二量体免疫グロブリンバリアントに関する。本発明は、ヘテロ二量体免疫グロブリンの選択的精製の方法も包含する。
第1の態様では、本発明は、
エピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含むポリペプチド
を含む免疫グロブリンまたはその断片であって、
免疫グロブリン定常領域が、
CH1領域、CH2領域およびCH3領域
からなる群から選択され、
免疫グロブリン定常領域が、免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含み、
免疫グロブリン定常領域がCH2および/またはCH3領域であるならば、前記低減が、未改変の免疫グロブリンまたはその断片の結合と比較して少なくとも30%である、
免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
免疫グロブリンまたはその断片は、免疫グロブリン定常領域を含み、これは、好ましくはヒトIGHG由来である。免疫グロブリン定常領域は、CH3領域またはCH2領域を含むことができ、好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、CH3およびCH2領域を含む。
免疫グロブリンまたはその断片は、免疫グロブリン定常領域中で、プロテインGとの結合を低減するために改変されてよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、251位、252位、253位、254位、255位、311位、380位、382位、385位、387位、426位、428位、433位、434位、435位、436位、437位および438位からなる群から選択される位置にてアミノ酸置換を含む。全ての位置は、EUナンバリングシステム(Edelman GMら、(1969)Proc Natl
Acad Sci USA、63(1):78〜85頁)に従って番号付けされている。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、251位、252位、253位、254位、311位、380位、382位、426位、428位、434位、435位、436位および438位からなる群から選択される位置にてアミノ酸置換を含む。より好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、252A、254M、380A、380M、382A、382L、426M、428G、428S、428T、428V、433D、434A、434G、434Sおよび438Aからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、250位にてアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、このアミノ酸置換は、250Qでない。免疫グロブリン定常領域は、428位にてアミノ酸置換を含んでよく、ここで、この置換は、428Lでない。
一実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、1つより多いアミノ酸置換、例えば252A/380A/382A/436A/438A、254M/380M/382L/426M/428Gおよび426M/428G/433D/434Aからなる群から選択される置換を含んでよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号20、配列番号21および配列番号22からなる群から選択されるヒトIGHG1のバリアントFc断片を含んでよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、428G、428S、428Tもしくは428Vから選択されるアミノ酸置換と、そのCH2領域および/もしくはCH3領域内の任意の位置にてさらなる置換とを含むか、または代わりに、免疫グロブリン定常領域は、434Aもしくは434Sから選択されるアミノ酸置換と、そのCH2領域および/もしくはCH3領域内の任意の位置にてさらなる置換とを含む。より好ましくは、アミノ酸置換は、428Gと434位でのさらなる置換とであってよいか、または代わりに、アミノ酸置換は、434Aもしくは434Sと428位でのさらなる置換とであってよい。さらにより好ましくは、アミノ酸置換は、428Gと434Aまたは434Sのいずれかとであってよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号24または配列番号25から選択されるヒトIGHG1のバリアントFc断片を含む。
免疫グロブリン定常領域のCH2および/またはCH3領域中の上記の改変の他に、本発明の免疫グロブリンまたはその断片は、免疫グロブリン定常領域のCH1領域も含んでよく、ここで、CH1領域は、プロテインGとの結合の低減または喪失をもたらすように改変されている。好ましくは、CH1領域は、ヒトIGHG由来である。
CH1領域がヒトIGHG由来である一実施形態では、CH1領域は、IGHA1またはIGHM由来のCH1領域で置き換えられてよい。代わりに、CH1領域のCH1ストランドGおよび一部のFGループは、IGHA1またはIGHM由来のCH1領域のCH1ストランドGおよび一部のFGループで置き換えられてよい。
代替の実施形態では、改変免疫グロブリン定常領域のCH1領域は、209位、210位、213位および214位からなる群から選択される位置にてアミノ酸置換を含んでよい。好ましくは、アミノ酸置換は、209位および213位にある。代わりに、改変免疫グロブリン定常領域は、209P/210S、213V/214Tおよび209G/210Nからなる置換の群から選択されるアミノ酸置換を含んでよい。より好ましくは、改変免疫グロブリン定常領域は、アミノ酸改変209Gまたは213Vを含んでよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号57、59または56のアミノ酸118〜222を含むバリアントヒトIGHG1 CH1領域を含んでよい。
上記の置換は、免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合を低減する効果を有する。結合の低減は、少なくとも最小限で10%であってよい。好ましくは、プロテインGとの結合は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低減される。プロテインGとの結合は、100%まで低減されてよく、これは、喪失に相当し、このことは、プロテインGと全く結合しないことを意味する。
上記の置換は、ヒトFcRnに対する免疫グロブリン定常領域の結合親和性を変化させる効果を有してよい。しかし、FcRnとの結合は、エフェクター機能のために必要であり、よって、FcRnとの結合の消失は、ADCCまたはCDCのようなエフェクター機能が望まれる場合は、望ましくない。
さらなる実施形態では、本発明は、エピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含むポリペプチドを含む免疫グロブリンまたはその断片であって、免疫グロブリン定常領域が、CH2領域およびCH3領域からなる群から選択され、免疫グロブリン定常領域が、免疫グロブリンまたはその断片と親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含み、
免疫グロブリン定常領域の改変が、ヒトFcRnに対する免疫グロブリン定常領域の結合親和性を変化させ、
免疫グロブリンまたはその断片が、未改変の免疫グロブリンまたはその断片と比較して、少なくとも80%のFcRnとの結合を保持する、
免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
代替の実施形態では、本発明は、
(a)第1エピトープと結合するエピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含む第1ポリペプチドと、
(b)第2エピトープと結合するエピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域(免疫グロブリン定常領域は、CH2領域およびCH3からなる群から選択される)とを含む第2ポリペプチドと
を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片であって、
第2ポリペプチドが、免疫グロブリン定常領域中に、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片と親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含み、
免疫グロブリン定常領域の改変が、ヒトFcRnに対する免疫グロブリン定常領域の結合親和性を変化させ、
改変第2ポリペプチドが、免疫グロブリン定常領域中に改変を有さない未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の結合と比較して、少なくとも80%のFcRnとの結合を保持する、
ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
親和性試薬は、免疫グロブリン定常領域中のヒトFcRnに対する結合部位とオーバーラップする、免疫グロブリンもしくはヘテロ2量体免疫グロブリンまたはその断片の免疫グロブリン定常領域中の結合部位と結合してよい。このオーバーラップは、部分的または完全であってよい。好ましくは、親和性試薬は、細菌の表面タンパク質である。より好ましくは、親和性試薬は、プロテインGである。
一実施形態では、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第2ポリペプチドの免疫グロブリンは、その免疫グロブリン定常領域中に、プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、ヒトIGHG由来である。このような改変は、本明細書に記載するように、CH3および/またはCH2領域中のアミノ酸置換であってよい。
第2の態様では、本発明は、VH3領域を少なくとも有するエピトープ結合領域を含むポリペプチドを含む免疫グロブリンまたはその断片であって、VH3領域が、免疫グロブリンまたはその断片とプロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む、免疫グロブリンまたはその断片を提供する。免疫グロブリンまたはその断片は、VH3領域を少なくとも有する1または複数のさらなるエピトープ結合領域を含んでよい。
免疫グロブリンまたはその断片は、VH3領域中で、プロテインAとの結合を低減するように改変されてよい。好ましくは、VH3領域は、65位にてアミノ酸置換ならびに/または57A、57E、65S、66Q、68V、81E、82aSおよび組み合わせ19G/57A/59Aからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。VH3領域中のアミノ酸の位置の全ての番号付けは、Kabatナンバリング(Dariavach Pら、(1987)Proc Natl Acad Sci USA、84(24):9074〜8頁およびFrangione Bら、(1985)Proc Natl Acad
Sci USA、82(10):3415〜9頁に記載されるように、Kabat EAら、(1991)Sequences of proteins of immunological interest.第5版、US Department of Health and Human Services、NIH publication第91号、3242頁)に従う。より好ましくは、VH3領域の改変は、65S、81Eおよび82aSからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。さらにより好ましくは、VH3領域の改変は、アミノ酸置換65Sを含む。最も好ましくは、VH3領域の改変は、アミノ酸置換82aSを含む。例えば、配列番号34は、置換G65Sを有する抗HER2 Fab重鎖のアミノ酸配列である。配列番号44は、置換G65Sと、自然に存在するヒトIGHG1アイソタイプ由来のヒンジ配列全体で置換されたヒンジ領域とを有するアイソタイプIGHG3の抗HER2 Fab−Fc重鎖のアミノ酸配列である。配列番号95は、置換82aSを有する抗HER3 VHのアミノ酸配列である。配列番号83は、VH配列中に置換82aSを有する抗HER3 scFvのアミノ酸配列である。
一実施形態では、免疫グロブリンまたはその断片は、VH3領域に加えて、免疫グロブリン定常領域をさらに含んでよい。免疫グロブリン定常領域は、CH2および/またはCH3領域を少なくとも含んでよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、ヒトIGHG由来である。ヒトIGHGは、IGHG1、IGHG2およびIGHG4から選択してよい。さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域がIGHG1、IGHG2またはIGHG4由来のCH3領域を含む場合、CH3領域は、ヒトIGHG3由来のCH3領域で置換される。具体的に、免疫グロブリン領域は、配列番号2を有するFc領域を含む。代替の実施形態では、免疫グロブリン定常領域がIGHG1、IGHG2またはIGHG4由来のCH3領域を含む場合、CH3領域は、435位(EU番号付け)にてアミノ
酸置換を含む。好ましくは、アミノ酸置換は、435Rである。さらに、CH3領域は、435位および436位にてアミノ酸置換を含んでよい。好ましくは、アミノ酸置換は、435Rおよび436Fである。
代替の実施形態では、本発明は、
(a)第1エピトープと結合するエピトープ結合領域を含む第1ポリペプチドと、
(b)第2エピトープと結合するVH3領域を少なくとも有するエピトープ結合領域を含む第2ポリペプチドと
を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片であって、
第2ポリペプチドのVH3領域が、ヘテロ二量体免疫グロブリンとプロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む、
ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第2ポリペプチドは、CH3領域を含む免疫グロブリン定常領域をさらに含んでよい。CH3領域は、本明細書に記載するように置き換えまたは改変されてよい。
代わりに、本発明は、
(a)プロテインAと結合し、第1エピトープと結合するエピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含む第1ポリペプチドと、
(b)プロテインAと結合しないかまたはプロテインAとの結合が低減され、第2エピトープと結合するVH3領域を少なくとも有するエピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含む第2ポリペプチドと
を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片であって、
第2ポリペプチドのVH3領域が、第2ポリペプチドとプロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む、
ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
第2ポリペプチドのVH3領域は、VH3領域を少なくとも有する1または複数のさらなるエピトープ結合領域を含んでよい。ヘテロ二量体免疫グロブリンまたは断片の第2ポリペプチドは、そのVH3領域中に、プロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含んでよい。このような改変は、上記のようなVH3領域中のアミノ酸置換であってよい。
第3の態様では、本発明は、
(a)第1エピトープと結合するエピトープ結合領域と、CH1および/またはCH2および/またはCH3領域を少なくとも含む免疫グロブリン定常領域とを含む第1ポリペプチドと、
(b)VH3を少なくとも含む第2エピトープと結合するエピトープ結合領域ならびに/またはCH2および/もしくはCH3領域を少なくとも含む免疫グロブリン定常領域を含む第2ポリペプチドと
を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片であって、
第1ポリペプチドが、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片と第1親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含み、
第2ポリペプチドが、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片と第2親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む、
ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を提供する。
第1親和性試薬は、プロテインGであり得、第2親和性試薬は、プロテインAであり得る。
好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、ヒトIGHG由来である。より好ましくは、第1ポリペプチドの免疫グロブリン定常領域は、ヒトIGHG由来であり、第2ポリペプチドは、IGHG1、IGHG2またはIGHG4から選択される。
第1親和性試薬がプロテインGである場合、第1ポリペプチドは、CH3領域またはCH2領域を含む免疫グロブリン定常領域を含んでよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、CH3およびCH2領域を含む。免疫グロブリン定常領域は、プロテインGとの結合を低減するように改変されてよい。好ましくは、改変免疫グロブリン定常領域は、251位、252位、253位、254位、255位、311位、380位、382位、385位、387位、426位、428位、433位、434位、435位、436位、437位および438位(EUナンバリングシステム)からなる群から選択される位置にてアミノ酸置換を含む。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、251位、252位、253位、254位、311位、380位、382位、426位、428位、434位、435位、436位および438位からなる群から選択される位置にてアミノ酸置換を含む。より好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、252A、254M、380A、380M、382A、382L、426M、428G、428S、428T、428V、433D、434A、434G、434Sおよび438Aからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、250位にてアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、このアミノ酸置換は、250Qでない。免疫グロブリン定常領域は、428位にてアミノ酸置換を含んでよく、ここで、この置換は、428Lでない。
一実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、1つより多いアミノ酸置換、例えば252A/380A/382A/436A/438A、254M/380M/382L/426M/428Gおよび426M/428G/433D/434Aからなる群から選択される置換を含んでよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号20、配列番号21および配列番号22からなる群から選択されるヒトIGHG1のバリアントFc断片を含んでよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、428G、428S、428Tもしくは428Vから選択されるアミノ酸置換と、そのCH2領域および/もしくはCH3領域中の任意の位置にてさらなる置換とを含むか、または代わりに、免疫グロブリン定常領域は、434Aもしくは434Sから選択されるアミノ酸置換と、そのCH2領域および/もしくはCH3領域内の任意の位置にてさらなる置換とを含む。より好ましくは、アミノ酸置換は、428Gと434位でのさらなる置換とであってよいか、または代わりに、アミノ酸置換は、434Aもしくは434Sと428位でのさらなる置換とであってよい。さらにより好ましくは、アミノ酸置換は、428Gと434Aまたは434Sのいずれかとであってよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号24または配列番号25から選択されるヒトIGHG1のバリアントFc断片を含む。
第1ポリペプチドの免疫グロブリン定常領域のCH2および/またはCH3領域中の上記の改変の他に、免疫グロブリン定常領域は、CH1領域も含んでよく、ここで、CH1領域は、プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させるように改変されている。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域のCH1領域は、IGHA1またはIGHM由来のCH1領域で置き換えられてよい。代わりに、CH1領域のCH1ストランドGおよび一部のFGループは、IGHA1またはIGHM由来のCH1領域のCH1ストランドGおよび一部のFGループで置き換えられている。
代替の実施形態では、改変免疫グロブリン定常領域のCH1領域は、209位、210位、213位および214位の群から選択される位置にてアミノ酸置換を含んでよい。好ましくは、アミノ酸置換は、209位および213位にある。代わりに、改変免疫グロブリン定常領域は、209P/210S、213V/214Tおよび209G/210Nか
らなる置換の群から選択されるアミノ酸置換を含んでよい。より好ましくは、改変免疫グロブリン定常領域は、アミノ酸改変209Gまたは213Vを含んでよい。具体的に、免疫グロブリン定常領域は、配列番号57、59または56のアミノ酸118〜222を含むバリアントヒトIGHG1 CH1領域を含んでよい。
第1ポリペプチドの免疫グロブリン定常領域に対する改変は、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第1ポリペプチドとプロテインGとの結合の100%までの低減をもたらしてよく、代わりに、第1ポリペプチドの免疫グロブリン定常領域に対する改変は、未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の結合と比較した場合に、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第1ポリペプチドとプロテインGとの結合の喪失をもたらしてよい。
第2親和性試薬がプロテインAである場合、第2ポリペプチドは、プロテインAとの結合を低減するように改変されたVH3領域を含んでよい。好ましくは、改変VH3領域は、65位にてアミノ酸置換ならびに/または57A、57E、65S、66Q、68V、81E、82aSおよび組み合わせ19G/57A/59Aからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む(Kabatナンバリング)。より好ましくは、VH3領域の改変は、65S、81Eおよび82aSからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。さらにより好ましくは、VH3領域の改変は、アミノ酸置換65Sを含む。最も好ましくは、VH3領域の改変は、アミノ酸置換82aSを含む。例えば、配列番号34は、置換G65Sを有する抗HER2 Fab重鎖のアミノ酸配列である。配列番号44は、置換G65Sと、自然に存在するヒトIGHG1アイソタイプ由来のヒンジ配列全体で置換されたヒンジ領域とを有するアイソタイプIGHG3の抗HER2 Fab−Fc重鎖のアミノ酸配列である。配列番号95は、置換82aSを有する抗HER3 VHのアミノ酸配列である。配列番号83は、VH配列中に置換82aSを有する抗HER3 scFvのアミノ酸配列である。
改変VH3領域に加えて、第2ポリペプチドは、プロテインAとの結合を低減するように改変された免疫グロブリン定常領域を含んでよい。免疫グロブリン定常領域は、少なくともCH2および/またはCH3領域を含んでよい。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、ヒトIGHG由来であり、より好ましくはIGHG1、IGHG2またはIGHG4由来である。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域がIGHG1、IGHG2またはIGHG4由来のCH3領域を含む場合、CH3領域は、ヒトIGHG3由来のCH3領域で置換されてよい。代替の実施形態では、免疫グロブリン定常領域がIGHG1、IGHG2またはIGHG4由来のCH3領域を含む場合、CH3領域は、435位(EU番号付け)にてアミノ酸置換を含む。好ましくは、アミノ酸置換は、435Rである。さらに、CH3領域は、435位および436位にてアミノ酸置換を含んでよい。好ましくは、アミノ酸置換は、435Rおよび436Fである。
第2ポリペプチドのVH3領域および免疫グロブリン定常領域に対する改変は、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第2ポリペプチドとプロテインAとの結合の100%までの低減をもたらしてよく、代わりに、第2ポリペプチドのVH3領域および免疫グロブリン定常領域に対する改変は、未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の結合と比較した場合に、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片の第2ポリペプチドとプロテインAとの結合の喪失
をもたらしてよい。
本発明の実施形態では、免疫グロブリン定常領域中の改変は、免疫グロブリンもしくはヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの断片のin vivo半減期の変化をもたらしてよい。好ましくは、改変は、未改変の免疫グロブリンもしくは未改変のヘテロ二量体
免疫グロブリンまたはそれらの未改変断片と比較して、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンのin vivo半減期の増加をもたらす。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域中の改変は、ヒトFcRnに対する免疫グロブリンもしくはヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの断片の親和性の変化をもたらしてよい。好ましくは、改変は、未改変の免疫グロブリンもしくは未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの未改変断片と比較して、FcRnに対する免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの親和性の増加をもたらす。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域中の改変は、免疫グロブリンもしくはヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの断片とFcRnとの結合の変化をもたらしてよい。好ましくは、改変は、10%の免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンとFcRnとの結合の保持をもたらす。より好ましくは、改変は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%または70%の免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンとFcRnとの結合の保持をもたらす。さらにより好ましくは、改変は、未改変の免疫グロブリンもしくは未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの未改変断片と比較して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%の免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンとFcRnとの結合の保持をもたらす。FcRnとの結合の保持は、実施例4に記載するような表面プラズモン共鳴を用いて測定できる。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域中の改変は、FcγR3aに対する免疫グロブリンもしくはヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの断片の特異性または親和性に影響を与えてよい。好ましくは、改変は、FcγR3aに対する免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの特異性または親和性にほとんどまたは全く影響を与えない。より好ましくは、改変は、未改変の免疫グロブリンもしくは未改変のヘテロ二量体免疫グロブリンまたはそれらの未改変断片と比較して、FcγR3aに対する免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの特異性または親和性にほとんどまたは全く影響を与えない。FcγR3aに対する結合特異性または親和性は、実施例4に記載するような表面プラズモン共鳴を用いて測定できる。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域および/またはVH3領域中の改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの免疫原性をもたらしてよく、ヒトにおいて抗薬物抗体応答を誘導できる。好ましくは、改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの低い免疫原性だけをもたらすかまたは全く免疫原性をもたらさず、よって低い免疫原性または免疫原性の危険性を示す。本発明で用いる改変の免疫原性は、実施例に5に記載する方法を用いて予測できる。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域および/またはVH3領域中の改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの熱安定性を変化させてよい。好ましくは、プロテインG結合を排除する改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの熱安定性に与える影響が低い。好ましくは、プロテインA結合を排除する改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの熱安定性に与える影響が低いかまたは全く影響を与えない。本発明に従って改変された免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの熱安定性は、実施例6に記載するように分析できる。
さらなる実施形態では、免疫グロブリン定常領域中の改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの血清半減期に影響を与えることがある。好ましくは、改変は、免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの血清半減期にほとんどまたは全く影響を与えない。より好ましくは、改変は、30%、25%、20%、15%、10%ま
たは5%未満の血清半減期の低減をもたらす。最も好ましくは、改変は、20%未満の血清半減期の低減をもたらす。免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンの薬物動態は、実施例7に記載するように測定できる。
本明細書に記載する本発明の免疫グロブリンまたはヘテロ二量体免疫グロブリンは、軽鎖も含んでよい。好ましくは、免疫グロブリンは、以前に決定された抗原結合能を有する重鎖および軽鎖を含み、すなわち、免疫グロブリンは、既知の抗原と結合する。より好ましくは、免疫グロブリンは、共通軽鎖、すなわち異なる重鎖と対形成できる軽鎖を含む。よって、ヘテロ二量体免疫グロブリン中で、例えば、2つの異なる重鎖が、共通軽鎖(同一可変および定常領域を有する軽鎖)と対形成してよい.共通軽鎖は、様々な方法を用いて同定できる。これらの方法は、例えば軽鎖可変配列またはscFv抗体断片を提示する抗体ディスプレイライブラリー、例えばファージディスプレイライブラリーから、最も頻繁に用いられる軽鎖可変領域を選択することを含んでよい。代わりに、ヘテロ二量体免疫グロブリンの両方の重鎖可変領域配列をライブラリー中でプローブとして用いて、両方の重鎖可変領域と結合する軽鎖を同定できる。
さらなる態様では、本発明は、ヘテロ二量体免疫グロブリンの選択的精製の方法を提供する。
第1の実施形態は、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を精製する方法であって、
(i)免疫グロブリンの混合物から、1つの改変重鎖を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を単離するステップであって、改変重鎖が、免疫グロブリン定常領域のCH1および/またはCH2および/またはCH3領域中に改変を含み、改変が、ヘテロ二量体免疫グロブリンとプロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させるステップと、(ii)免疫グロブリンの混合物をプロテインGに供するステップと、
(iii)ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片をプロテインGから溶出するステップと
を含む方法を提供する。
免疫グロブリン重鎖のヘテロ二量体の精製のための親和性クロマトグラフィーの方法であって、
(i)CH1および/またはCH2および/またはCH3領域中で重鎖の一方を改変して、プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させるステップと、
(ii)両方の重鎖を別々または同時に発現させるステップと、
(iii)同時発現させた重鎖または予め集合させた別々に発現させた重鎖をプロテインGに供するステップと、
(iv)重鎖のヘテロ二量体をプロテインGから溶出するステップと
を含む方法も提供される。
少なくとも1つのCH1領域と1つのCH2および/またはCH3領域とを含む免疫グロブリン重鎖のヘテロ二量体またはその断片の精製のための親和性クロマトグラフィーの方法であって、
(i)CH2および/またはCH3領域中で重鎖の一方を改変して、プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させるステップと、
(iia)ヘテロ二量体内に1つだけCH1領域が存在するならば、前記CH1領域が、プロテインGとの結合を保持する未改変の重鎖の一部であるか、または前記CH1領域が、プロテインGとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変されるか、あるいは(iib)ヘテロ二量体内に2つ以上のCH1領域が存在するならば、1つを除く全てのCH1領域が、プロテインGとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変され、
未改変のCH1領域が、プロテインGとの結合を保持する未改変の重鎖の一部であるか、または全てのCH1領域が、プロテインGとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変されるステップと、
(iii)重鎖を別々または同時に発現させるステップと、
(iv)同時発現させた重鎖または予め集合させた別々に発現させた重鎖をプロテインGに供するステップと、
(v)重鎖のヘテロ二量体またはその断片をプロテインGから溶出するステップと
を含む方法も提供される。
これらの方法に記載する改変重鎖は、本明細書に記載するような、プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を免疫グロブリン定常領域中に含むことができる。
第2の実施形態は、VH3領域を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を精製する方法であって、
(i)免疫グロブリンの混合物から、1つの改変重鎖を含むヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片を単離するステップであって、改変重鎖が、VH3領域中またはVH3領域および免疫グロブリン定常領域中に改変を含み、改変が、ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片とプロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させるステップと、
(ii)免疫グロブリンの混合物をプロテインAに供するステップと、
(iii)ヘテロ二量体免疫グロブリンまたはその断片をプロテインAから溶出するステップと
を含む方法を提供する。
少なくとも1つのVH3領域が存在する免疫グロブリン重鎖のヘテロ二量体またはその断片の精製のための親和性クロマトグラフィーの方法であって、
(i)重鎖の一方を改変して、プロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させるステップと、
(iia)ヘテロ二量体内に1つだけVH3領域が存在するならば、前記VH3領域が、プロテインAとの結合を保持する未改変の重鎖の一部であるか、または前記VH3領域が、プロテインAとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変されるか、あるいは(iib)ヘテロ二量体内に2つ以上のVH3領域が存在するならば、1つを除く全てのVH3領域が、プロテインAとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変され、未改変のVH3領域が、プロテインAとの結合を保持する未改変の重鎖の一部であるか、または全てのVH3領域が、プロテインAとの結合を低減させるもしくは喪失させるように改変されるステップと、
(iii)2つの重鎖を別々または同時に発現させるステップと、
(iv)同時発現させた重鎖または予め集合させた別々に発現させた重鎖をプロテインAに供するステップと、
(v)重鎖のヘテロ二量体またはその断片をプロテインAから溶出するステップと
を含む方法も提供される。
これらの方法に記載する改変VH3領域または改変VH3および免疫グロブリン定常領域は、本明細書に記載するような、プロテインAとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含むことができる。
第3の実施形態は、重鎖のヘテロ二量体の差次的精製の方法であって、
(i)重鎖の混合物から、第1親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む第1重鎖と、第2親和性試薬との結合を低減させるまたは喪失させる改変を含む第2重鎖とを有する重鎖のヘテロ二量体またはその断片を単離するステップと、
(ii)重鎖の混合物を、第1親和性試薬を含む第1カラムに供するステップと、
(iii)重鎖のヘテロ二量体を第1カラムから溶出するステップと、
(iv)第1カラムからの溶出物を、第2親和性試薬を含む第2カラムに供するステップと、
(v)重鎖のヘテロ二量体またはその断片を第2カラムから溶出するステップと
を含む方法を提供する。
この方法では、第1および第2親和性試薬は、細菌の表面タンパク質に由来する。第1親和性試薬がプロテインAである場合、第2親和性試薬は、プロテインGであるか、または第1親和性試薬がプロテインGである場合、第2親和性試薬は、プロテインAである。この方法に記載する改変重鎖は、本明細書に記載するような、プロテインAおよびプロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含むことができる。
ヘテロ二量体は、70%より大きい純度まで精製してよい。好ましくは、ヘテロ二量体は、80%または90%より大きい純度まで精製される。より好ましくは、ヘテロ二量体は、95%より大きい純度まで精製される。さらにより好ましくは、ヘテロ二量体は、98%より大きい純度まで精製される。
本発明のさらなる態様は、対象の免疫グロブリンまたはその断片を免疫グロブリンの混合物から単離する方法であって、
(i)対象の免疫グロブリンまたはその断片を免疫グロブリンの混合物から単離するステップであって、対象の免疫グロブリンまたはその断片が、プロテインAおよび/またはプロテインGに対する結合部位を全て喪失しているステップと、
(ii)第1ステップにおける免疫グロブリンの混合物をプロテインAまたはプロテインGに供するステップと、
(iii)ステップ(ii)からの未結合の対象の免疫グロブリンまたはその断片を回収するステップと、場合によって、
(iv)ステップ(iii)からの未結合の対象の免疫グロブリンまたはその断片をプロテインAまたはプロテインGに供するステップと、
(v)ステップ(iv)からの未結合の対象の免疫グロブリンまたはその断片を回収するステップと
を含み、
ステップ(ii)において、免疫グロブリンの混合物をプロテインAに供し、ステップ(iv)において、免疫グロブリンの混合物をプロテインGに供するか、または
ステップ(ii)において、免疫グロブリンの混合物をプロテインGに供し、ステップ(iv)において、免疫グロブリンの混合物をプロテインAに供する、
方法を提供する。
対象の免疫グロブリンまたはその断片中のプロテインAに対する結合部位は、VH3および免疫グロブリン定常領域中に位置する。プロテインGに対する結合部位は、免疫グロブリン定常領域中に位置する。
一実施形態では、対象の免疫グロブリンまたはその断片は、ホモ二量体免疫グロブリンであってよい。代替の実施形態では、対象の免疫グロブリンまたはその断片は、ヘテロ二量体免疫グロブリンであってよい。
好ましくは、対象の免疫グロブリンは、ヘテロ二量体免疫グロブリン、より好ましくは二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または腫瘍抗原、サイトカイン、血管増殖因子およびリンパ−血管形成性増殖因子の群から選択される抗原と結合する二重特異性全長抗体であり得る。好ましくは、抗原は、HER1、HER2、HER3、EGFR、CD3、CD19、CD20、EpCAM、IgEおよびVLA−2からなる群
から選択される。好ましくは、抗原は、HER2およびHER3、CD3およびEpCAM、CD3およびHER2、CD19およびIgEならびにCD20およびIgEである。
好ましい実施形態では、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、HER3エピトープ結合領域を含む二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンである。好ましくは、HER3エピトープ結合領域は、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2と、配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3とを含む。好ましくは、HER3エピトープ結合領域は、配列番号91のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1と、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2と、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3とを含む。より好ましくは、HER3エピトープ結合領域は、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2と、配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3と、配列番号91のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1と、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2と、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3とを含む。さらにより好ましくは、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンであり、HER3と結合し、ここで、HER3結合領域は、配列番号86の重鎖配列と配列番号85の軽鎖配列とを含む。同等により好ましくは、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンであり、HER3と結合し、ここで、HER3結合領域は、配列番号95の重鎖可変領域配列と配列番号82の軽鎖可変領域配列とを含む。
好ましい実施形態では、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、配列番号86のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号85のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、HER2およびHER3と結合する二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンである。より好ましくは、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンであり、HER2およびHER3と結合し、配列番号87の第1重鎖アミノ酸配列と、配列番号86の第2重鎖アミノ酸配列と、配列番号85の軽鎖アミノ酸配列とを有する。
本明細書に記載する対象の免疫グロブリンを単離する方法は、医療用途、特に診断において有用であり得る。血清中の対象の免疫グロブリンの量を決定するために対象の免疫グロブリンを患者血清から単離することは、単純なプロセスではない。一実施形態では、免疫グロブリンの混合物は、対象の免疫グロブリンまたはその断片を投与された患者または動物の血清を含むかまたは該血清に由来する。代替の実施形態では、免疫グロブリンの混合物は、患者または動物の血清であり、ここで、患者または動物は、対象の免疫グロブリンまたはその断片を投与されている。
プロテインAおよび/またはプロテインGに対する結合部位の排除は、対象の免疫グロブリンまたはその断片を、そのVH3および/または免疫グロブリン定常領域中で、本明細書に記載する改変に従って改変することにより達成してよい。
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載するヘテロ二量体免疫グロブリンの精製方法は、Fc領域、より具体的にはヘテロ二量体免疫グロブリンのCH3領域の相互作用を最適化するための当該技術において既知の技術と組み合わせることができる。
例えば、工学的に操作されたCH3ヘテロ二量体ドメイン対については、ヘテロ二量体Fc部分を作製するための「腔への***のあてはめ(protuberance−into−cavity)」アプローチについて記載するCarterらにより最初に報告された(米国特許第5,807,706号;「穴へのノブのあてはめ(knobs−into−holes)」;Merchant AMら、1988 Nat.Biotechnol.、16(7):677〜81頁)。この方法では、第1抗体分子の界面からの1また
は複数の小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えて、「***」を作製する。大きい側鎖と同一または同様のサイズの代償性の「腔」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えばアラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより第2抗体分子の界面に創出する。代替の設計が最近開発されたが、これは、WO07/110205(Davis JHおよびHuston JS)により記載されるように、分子のコア組成を改変することによる新しいCH3モジュール対の設計、またはWO07/147901(Kjaergaard Kら)もしくはWO09/089004(Kannan Gら)に記載されるように、モジュール間の補完的塩橋の設計を含む。好ましくは、本発明で用いるヘテロ二量体免疫グロブリンは、PCTパンフレットWO13/131555(Blein Sら)に記載されるように、工学的に操作された免疫グロブリン定常領域を含む。
プロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図1A:Fc IGHG1。 同上。図1B:Fc133。 同上。図1C:Fc113。 同上。図1D:Fc H435R/Y436F。 プロテインG捕捉−溶出モードクロマトグラフィー画分(プロテインG Sepharose(商標)4 Fast Flow樹脂)のSDS−PAGE分析。(1)Fc IGHG1。(2)Fc113。(3)Fc133。(4)Fc H435R/Y436F。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(G)プロテインGからの溶出。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図3A:Fc IGHG1。 同上。図3B:Fc E380Y。 同上。図3C:Fc E382R。 同上。図3D:Fc E382Y。 同上。図3E:Fc S426R。 同上。図3F:Fc S426Y。 同上。図3G:Fc S426W。 同上。図3H:Fc Q438R。 同上。図3I:Fc Q438Y。 同上。図3J:Fc E380A/E382A。 同上。図3K:Fc E380M/E382L。 同上。図3L:Fc E380Y/E382R。 同上。図3M:Fc M252A/E380A/E382A。 同上。図3N:Fc S254E/S426M/M428G。 同上。図3O:Fc S254M/E380M/E382L。 同上。図3P:Fc M252A/E380A/E383A/Y436A/Q438A。 同上。図3Q:Fc S254M/E380M/E382L/S426M/M428G。 同上。図3R:Fc S426M/M428G/H433D/N434A。 プロテインA捕捉−溶出モードクロマトグラフィー画分(MabSelect SuRe(商標)プロテインA樹脂)のSDS−PAGE分析。図4A:(1)Fc IGHG1、(2)Fc E380Y、(3)Fc E382R、(4)Fc E382Y、(5)Fc E380Y/E382R、(6)Fc Q438R、(7)Fc S426W、(8)Fc S426Rおよび(9)Fc S426Y。 同上。図4B:(10)Fc Q438Y、(11)Fc S254E/S426M/M428Gおよび(12)Fc E380M/E382L。 同上。図4C:(13)Fc S254M/E380M/E382L、(14)Fc E380A/E382A、(15)Fc M252A/E380A/E382A、(16)Fc S254M/E380M/E382L/S426M/M428G、(17)Fc M252A/E380A/E382A/Y436A/Q438Aおよび(18)Fc S426M/M428G/H433D/N434A。図4A〜C:(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(A)プロテインAからの溶出。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図5A:Fc IGHG1。 同上。図5B:Fc S426M/H433D。 同上。図5C:Fc M428L/N434S。 同上。図5D:Fc M428G/N434A。 同上。図5E:Fc M428L/N434A。 同上。図5F:M428G/N434S。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図6A:Fc IGHG1。 同上。図6B:Fc M428G/N434A。 同上。図6C:Fc M428G。 同上。図6D:Fc N434A。 プロテインA捕捉−溶出モードクロマトグラフィー画分(MabSelect SuRe(商標)プロテインA樹脂)のSDS−PAGE分析。(1)Fc IGHG1。(2)Fc M428G/N434A。(3)Fc S426M/M428G/ H433D/N434A。(4)Fc M248L/N434S。(5)Fc M428G/N434S。(6)Fc M248L/N434A。(7)Fc S426M/H433D。(8)Fc M248G。(9)Fc N434A。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(A)プロテインAからの溶出。 プロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図8A:抗HER2 FAB−Fc133(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。 同上。図8B:抗HER2 scFv−Fc133(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。 同上。図8C:抗HER2 FAB(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラムおよびHiTrap(商標)MabSelect(商標)プロテインAカラム)。 7つの既知のヒトVHフレームワークサブクラスのそれぞれについての代表的なアミノ酸配列。配列は、Kabatナンバリングに従って整列させた。プロテインAのドメインDと相互作用する位置を太字で示す。 プロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)MabSelect(商標)プロテインAカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図10A:抗HER2 FAB。 同上。図10B:抗HER2 FAB T57A。 同上。図10C:抗HER2 FAB T57E。 同上。図10D:抗HER2 FAB G65S。 同上。図10E:抗HER2 FAB R66Q。 同上。図10F:抗HER2 FAB T68V。 同上。図10G:抗HER2 FAB Q81E。 同上。図10H:抗HER2 FAB N82aS。 同上。図10I:抗HER2 FAB R19G/T57A/Y59A。 HER2抗原に対する選択された抗HER2 FABバリアントの平衡解離定数(KD)。 プロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図12A:抗HER2 scFv(G65S)−Fc133。 同上。図12B:抗HER2 scFv(N82aS)−Fc133。 同上。図12C:抗HER2 FAB(G65S)−Fc133。 同上。図12D:抗HER2 FAB(N82aS)−Fc133。 プロテインG 捕捉−溶出モードクロマトグラフィー画分(プロテインG Sepharose(商標)4 Fast Flow樹脂)のSDS−PAGE分析。(1)抗HER2 scFv(N82aS)−Fc133。(2)抗HER2 scFv(G65S)−Fc133。(3)抗HER2 scFv−Fc133。(4)抗HER2 FAB(G65S)−Fc133。(5)抗HER2 FAB(N82aS)−Fc133。(6)抗HER2 FAB−Fc133。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(G)プロテインGからの溶出。 抗HER3 FAB−Fc M428G/N434AのプロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。 ヒトIGHM、IGHA1およびIGHG1 CH1ドメインの配列。IMGT(登録商標)番号付けを用いる。プロテインGのドメインIIIとの結合に関与する残基を太字で示す。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図16A:抗HER3 FAB(IGHA1)−Fc M428G/N434A。 同上。図16B:抗HER3 FAB(IGHA1−A−FG/G)−Fc M428G/N434A。 同上。図16C:抗HER3 FAB(IGHA1−A)−Fc M428G/N434A。 同上。図16D:抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図17A:抗HER3 FAB(IGHM)−Fc M428G/N434A。 同上。図17B:抗HER3 FAB(IGHM−A−FG/G)−Fc M428G/N434A。 同上。図17C:抗HER3 FAB(IGHM−A)−Fc M428G/N434A。 同上。図17D:抗HER3 FAB(IGHM−FG/G)−Fc M428G/N434A。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図18A:抗HER3 FAB(T209P/K210S)−Fc M428G/N434A。 同上。図18B:抗HER3 FAB(K213V/K214T)−Fc M428G/N434A。 同上。図18C:抗HER3 FAB(T209P)−Fc M428G/N434A。 同上。図18D:抗HER3 FAB(K213V)−Fc M428G/N434A。 同上。図18E:抗HER3 FAB(T209G)−Fc M428G/N434A。 同上。図18F:抗HER3抗体バリアントについてのKD測定の決定。 プロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。図19A:抗HER3 FAB(T209G/K210N)−Fc M428G/N434A。 同上。図19B:抗HER3 FAB(D212E/K214N)−Fc M428G/N434A。 プロテインA捕捉−溶出モードクロマトグラフィー画分(MabSelect SuRe(商標)プロテインA樹脂)のSDS−PAGE分析。図20A:(1)抗HER3 FAB−Fc M428G/N434A、(2)抗HER3 FAB(IGHA1)−Fc M428G/N434A、(3)抗HER3 FAB(IGHM)−Fc M428G/N434A、(4)抗HER3 FAB(IGHA1−A−FG/G)−Fc M428G/N434A、(5)抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434Aおよび(6)抗HER3 FAB(IGHA1−A)−Fc M428G/N434A。 同上。図20B:(7)抗HER3 FAB(IGHM−A−FG/G)−Fc M428G/N434A、(8)抗HER3 FAB(IGHM−FG/G)−Fc M428G/N434A、(9)抗HER3 FAB(IGHM−A)−Fc M428G/N434A、(10)抗HER3 FAB(K213V/K214T)−Fc M428G/N434A、(11)抗HER3 FAB(T209G/K210N)−Fc M428G/N434A、(12)抗HER3 FAB(T209P/K210S)−Fc M428G/N434Aおよび(13)抗HER3 FAB(D212E/K214N)−Fc M428G/N434A。図20Aおよび図20B:(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(A)プロテインAからの溶出。 抗HER3 FAB−Fc 133×抗HER2 scFv−Fc IGHG1ヘテロ二量体のプロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。 図21Aに示すトレースからのクロマトグラフィー画分のSDS−PAGE分析。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(1)細胞培養上清。(2)通過画分。(3)ピーク1。(4)ピーク2。 抗HER3 FAB−Fc IGHG1×抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aヘテロ二量体のプロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。 図22Aに示すトレースからのクロマトグラフィー画分のSDS−PAGE分析。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(1)細胞培養上清。(2)通過画分。(3)ピーク1。(4)ピーク2。 抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A×抗HER2 scFv−Fc IGHG1ヘテロ二量体のプロテインG勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。 図23Aに示すトレースからのクロマトグラフィー画分のSDS−PAGE分析。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(1)細胞培養上清。(2)通過画分。(3)ピーク1。(4)ピーク2。 プロテインAおよびプロテインG捕捉−溶出モードクロマトグラフィーの組み合わせを用いる、抗HER3 FAB−Fc133×抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aヘテロ二量体の精製スキーム(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラムおよびHiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。 図24Aに示す精製スキームに従って行ったプロテインAおよびプロテインGステップのSDS−PAGE分析。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(FTA)プロテインA捕捉−溶出ステップからの通過画分。(A)プロテインA捕捉−溶出ステップからの溶出。(FTG)プロテインG捕捉−溶出ステップからの通過画分。(G)プロテインG捕捉−溶出ステップからの溶出。 プロテインAおよびG捕捉−溶出精製後の抗HER3 FAB−Fc133×抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aヘテロ二量体の相対的割合を評価する走査デンシトメトリー分析(4〜12% SDS Tris−グリシンポリアクリルアミドゲル)。 プロテインAおよびプロテインG捕捉−溶出モードクロマトグラフィーの組み合わせを用いる、抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A×抗HER2 scFv(G65S)−Fc133ヘテロ二量体の精製スキーム(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラムおよびHiTrap(商標)プロテインG HPカラム)。 図25Aに示す精製スキームに従って行ったプロテインAおよびプロテインGステップのSDS−PAGE分析。(MW)記載するとおりの分子量マーカー。(SN)細胞培養上清。(FTA)プロテインA捕捉−溶出ステップからの通過画分。(A)プロテインA捕捉−溶出ステップからの溶出。(FTG)プロテインG捕捉−溶出ステップからの通過画分。(A)プロテインG捕捉−溶出ステップからの溶出。 プロテインAおよびG捕捉−溶出精製後の抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A×抗HER2 scFv(G65S)−Fc133ヘテロ二量体の相対的割合を評価する走査デンシトメトリー分析(4〜12% SDS Tris−グリシンポリアクリルアミドゲル)。 ヒトFcRnに対する選択された抗hCD19FAB−Fcバリアントの平衡解離定数(KD)。 未改変の抗hCD19FAB−Fc IGHG1対照に対する相対的比率として表す、ヒトFcRnに対する選択された抗hCD19FAB−Fcバリアントの平衡解離定数(KD)。 ヒトFcRnに対する選択された抗hCD19FAB−Fcバリアント(記載するとおり)の表面プラズモン共鳴測定。データは、応答単位の数(RUと省略する;Y軸) 対 時間(X軸)として表す。図28A:抗hCD19 FAB−Fc IGHG1。 同上。図28B:抗hCD19 FAB−Fc M428G/N434A。 同上。図28C:抗hCD19 FAB−Fc133。 同上。図28D:抗hCD19 FAB−Fc H435R/Y436F。 上のプロットは、ヒトFcγR3aに対する抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aの表面プラズモン共鳴のある測定を示す。データは、応答単位の数(RUと省略する;Y軸) 対 時間(X軸)として表す。3回の独立した実験から算出した平均KD値を示す。下のプロットは、上のプロットに基づく、抗体濃度に対して算出されたReq値を示す(ここからKD値を決定する)。 上のプロットは、ヒトFcγR3aに対する抗hCD19 FAB−Fc IGHG1の表面プラズモン共鳴のある測定を示す。データは、応答単位の数(RUと省略する;Y軸) 対 時間(X軸)として表す。3回の独立した実験から算出した平均KD値を示す。下のプロットは、上のプロットに基づく、抗体濃度に対して算出されたReq値を示す(ここからKD値を決定する)。 置換M428GおよびN434Aならびに置換N82aSについてのEpibase(商標)免疫原性の結果を示す表。DRB1アロタイプ群との強いおよび中程度の結合のカウントを示す。治療用抗体の選択についての結果も示す。 置換T209G、T209PおよびK213VについてのEpibase(商標)免疫原性の結果を示す表。それぞれの位置について、全ての可能な置換についての全体的なDRB1スコアの差を示す。 同上。 示差走査熱量分析を用いるFc M428G/N434AおよびFc IGHG1の熱安定性測定。データは、過剰モル熱容量(Cp[kcal/mol/℃]と省略する;Y軸) 対 温度(℃;X軸)として表す。 示差走査熱量分析を用いる熱安定性測定。データは、過剰モル熱容量(Cp[kcal/mol/℃]と省略する;Y軸) 対 温度(℃;X軸)として表す。図33A:抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aおよび抗HER3 FAB(T209G)−Fc M428G/N434A。 同上。図33B:抗HER3 FAB(T209P)−Fc M428G/N434Aおよび抗HER3 FAB(K213V)−Fc M428G/N434A。 示差走査熱量分析を用いる熱安定性測定。データは、過剰モル熱容量(Cp[kcal/mol/℃]と省略する;Y軸) 対 温度(℃;X軸)として表す。図34A:抗hCD19 FAB−Fc IGHG1。 同上。図34B:抗hCD19 FAB−Fc133。 同上。図34C:抗hCD19 FAB−Fc113。 ホモ二量体抗HER2 FAB−Fc IGHG1またはヘテロ二量体抗HER2 FAB−Fc IGHG1×抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A免疫グロブリンの雌性Sprague−Dawleyラットへの静脈内投与(急速投与)後の片対数血漿濃度−時間プロファイル。結果は、4匹のラットの平均±SDとして表す。データは、平均血清濃度(平均濃度と省略する、μg/ml;Y軸) 対 時間(時間、X軸)として表す。 10mg/kgのホモ二量体抗HER2 FAB−Fc IGHG1またはヘテロ二量体抗HER2 FAB−Fc IGHG1×抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A免疫グロブリンのIV急速投与後の雌性Sprague−DawleyラットにおけるPKパラメータのまとめを示す表。(t1/2)は、免疫グロブリン排出半減期に相当する。 抗HER3 FAB(N82aS)−BTA IGHG3×抗HER2 scFv−BTB IGHG1ヘテロ二量体のプロテインA勾配モードクロマトグラフィートレース(HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム)。280nmでの吸光度 対 移動相の全容量のプロットを実線で示す。移動相のpHおよび移動相中に存在する溶離緩衝液(B)のパーセンテージのプロットを、それぞれ破線および点線−破線で示す。 Calu−3細胞増殖アッセイ。3nMのヘレグリンベータの存在下でCalu−3細胞を、1%血清含有成長培地の存在下の抗体の系列希釈で処理した。alamarBlue(登録商標)染色を用いて細胞増殖を3日後に測定した。結果は、片対数抗体濃度 対 蛍光単位(540nmでの励起、620nmでの発光)で表す。IgG1アイソタイプ対照は、細胞増殖の阻害の陰性対照として示す。図38A:BEAT HER2/HER3抗体および抗HER2と抗HER3抗体との等モル混合物。 同上。図38B:BEAT HER2/HER3抗体およびDL11f抗体(抗EGFRおよび抗HER3二重特異性抗体)。 同上。図38C:BEAT HER2/HER3抗体、抗HER2と抗HER3抗体との等モル混合物およびDL11f抗体。
本発明は、全般的に、プロテインA、プロテインGまたはプロテインAおよびプロテインGの両方との結合が低減または喪失した新規なヘテロ二量体免疫グロブリンバリアントに関する。本発明は、ヘテロ二量体免疫グロブリンの選択的精製の方法も包含する。
この明細書を理解する目的のために、以下の定義を用い、適切であればいつでも、単数形で用いる用語は複数形も包含し、その逆もまた真である。本明細書で用いる術語は、特定の実施形態について記載する目的のためだけであり、限定することを意図しない。
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体のことをいい、ここで、アミノ酸は、ペプチド結合により組み合わされて、脱水合成により一緒に連結されたアミノ酸の鎖を形成する。ポリペプチドおよびタンパク質は、化学合成または組換え発現により合成でき、最小限のアミノ酸の長さに限定されない。
本発明によると、タンパク質が単一ポリペプチド鎖から構成される限り、ポリペプチドの群は「タンパク質」を含む。ポリペプチドは、二量体、三量体およびより高いオリゴマー(すなわち1つより多いポリペプチド分子から構成される)のようなマルチマーをさらに形成してよい。このような二量体、三量体などを形成するポリペプチド分子は、同一または非同一であってよい。このようなマルチマーの、対応するより高い次元の構造は、よって、ホモまたはヘテロ二量体、ホモまたはヘテロ三量体などと命名される。ヘテロマルチマーの例は、その自然に存在する形では2つの同一軽鎖ポリペプチド鎖と2つの同一重鎖ポリペプチド鎖とから構成される抗体分子である。用語「ポリペプチド」および「タン
パク質」は、改変が例えば糖鎖付加、アセチル化、リン酸化などの翻訳後改変により行われる、自然に改変されたポリペプチド/タンパク質のこともいう。このような改変は、当該技術において公知である。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」は、天然の配列に対する欠失、付加および置換(保存的な性質であり得る)のような改変を含むタンパク質のこともいう。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発によるように計画的であってよいか、またはタンパク質を生成する宿主の変異もしくはPCR増幅による誤りのように偶発的であってよい。
用語「免疫グロブリン」は、本明細書で言及する場合、用語「抗体」と交換可能に用いることができる。免疫グロブリンは、全長抗体およびその任意の抗原結合断片または単鎖を含む。免疫グロブリンは、ホモ二量体またはヘテロ二量体であり得る。免疫グロブリン、具体的に、自然に存在する抗体は、4つのポリペプチド鎖で構成されるY字型単位の1または複数のコピーとして存在する糖タンパク質である。それぞれの「Y」字型は、それらの相対的分子量によりそのように命名される重(H)鎖の2つの同一コピーと、軽(L)鎖の2つの同一コピーとを含有する。それぞれの軽鎖は重鎖と対形成し、それぞれの重鎖は別の重鎖と対形成する。鎖間ジスルフィド共有結合および非共有相互作用が鎖を一緒に連結する。免疫グロブリン、具体的に、自然に存在する抗体は、抗原結合部位の2コピーである可変領域を含有する。タンパク質分解酵素であるパパインは、「Y」字型を3つの別々の分子、2つのいわゆる「Fab」または「FAB」断片(Fab=断片−抗原−結合)と、1つのいわゆる「Fc」断片または「Fc領域」(Fc=断片−結晶化可能)に分ける。Fab断片は、軽鎖全体と重鎖の一部とから構成される。重鎖は、1つの可変領域(VH)と3または4つの定常領域(抗体クラスまたはアイソタイプに依存して、CH1、CH2、CH3およびCH4)とから構成される。CH1領域とCH2領域との間の領域は、ヒンジ領域とよばれ、Y字型抗体分子の2つのFab腕の間の柔軟性を可能にし、一定の距離で分けられた2つの抗原決定基との結合を受け入れるために、腕が開閉することを可能にする。「ヒンジ領域」は、本明細書で言及する場合、6〜62アミノ酸の長さの配列領域であり、IgA、IgDおよびIgGにのみ存在し、2つの重鎖を橋かけするシステイン残基を包含する。IgA、IgDおよびIgGの重鎖はそれぞれ、4つの領域、すなわち1つの可変領域(VH)と3つの定常領域(CH1〜3)とを有する。IgEおよびIgMは、1つの可変領域と4つの定常領域(CH1〜4)とを重鎖上に有する。免疫グロブリンの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系経路の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子との結合を媒介することがある。各軽鎖は、通常、1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結する。各軽鎖は、1つの可変領域(VL)と1つの軽鎖定常領域とを含有する。軽鎖定常領域は、本明細書においてIGKCと称するカッパ軽鎖定常領域、または本明細書においてIGLCと称するラムダ軽鎖定常領域である。IGKCは、本明細書において、CκまたはCKと同等に用い、同じ意味を有する。IGLCは、本明細書において、CλまたはCLと同等に用い、同じ意味を有する。用語「IGLC領域」は、本明細書で用いる場合、全てのラムダ軽鎖定常領域、例えばIGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6およびIGLC7からなる群から選択される全てのラムダ軽鎖定常領域のことをいう。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とよばれる超可変性の領域(この中に、フレームワーク領域(FRまたはFW)をよばれるより保存的な領域が散在する)にさらに細分化できる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される3つのCDRおよび4つのFRで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用するエピトープ結合領域を含有する。
用語「全長抗体」は、本明細書で用いる場合、可変および定常領域を含む、抗体の自然な生物学的形を構成する構造を含む。例えば、ヒトおよびマウスを含むほとんどの哺乳動物では、IgGクラスの全長抗体は四量体であり、2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一
の対から構成される(各対は、1つの軽鎖と1つの重鎖とを有し、各軽鎖は、免疫グロブリン領域VLおよび軽鎖定常領域を含み、各重鎖は、抗体クラスまたはアイソタイプに依存して、免疫グロブリン領域VH、CH1(Cγ1)、CH2(Cγ2)、CH3(Cγ3)およびCH4(Cγ4)を含む)。いくつかの哺乳動物、例えばラクダおよびラマでは、IgG抗体は、2つの重鎖(各重鎖は、Fc領域と結合した可変領域を含む)だけから構成されることがある。
抗体は、定常領域により遺伝子的に決定される、アイソタイプともよばれるクラスに群分けされる。ヒト定常軽鎖は、カッパ(CK)およびラムダ(Cλ)軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)またはイプシロン(ε)として分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEの抗体のアイソタイプを規定する。よって、「アイソタイプ」は、本明細書で用いる場合、それらの定常領域の化学的および抗原的特徴により規定される免疫グロブリンのクラスおよび/またはサブクラスのいずれかを意味する。既知のヒト免疫グロブリンアイソタイプは、IGHG1(IgG1)、IGHG2(IgG2)、IGHG3(IgG3)、IGHG4(IgG4)、IGHA1(IgA1)、IGHA2(IgA2)、IGHM(IgM)、IGHD(IgD)およびIGHE(IgE)である。いわゆるヒト免疫グロブリン偽ガンマIGHGP遺伝子は、配列決定されたが、スイッチ領域の変化によりタンパク質をコードしないさらなるヒト免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子である(Bensmana Mら、(1988)Nucleic Acids Res、16(7):3108頁)。変化したスイッチ領域を有するにもかかわらず、ヒト免疫グロブリン偽ガンマIGHGP遺伝子は、全ての重鎖定常領域(CH1〜CH3)およびヒンジについてのオープンリーディングフレームを有する。その重鎖定常領域についての全てのオープンリーディングフレームは、予測される構造特徴を有する全てのヒト免疫グロブリン定常領域とよく合致するタンパク質領域をコードする。このさらなる偽ガンマアイソタイプは、本明細書において、IgGPまたはIGHGPという。ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域イプシロンP1およびP2偽遺伝子(IGHEP1およびIGHEP2)のような、その他の偽免疫グロブリン遺伝子が報告されている。IgGクラスは、治療目的のために最も一般的に用いられる。ヒトでは、このクラスは、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。マウスでは、このクラスは、サブクラスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2cおよびIgG3を含む。
用語「免疫グロブリン断片」は、本明細書で用いる場合、それらに限定されないが、(i)例えばCH1、CH2またはCH3領域を含む領域、(ii)Fab’およびFab’−SHを含む、VL、VH、CLまたはCK領域とCH1領域とから構成されるFab断片、(ii)VH領域とCH1領域とから構成されるFd断片、(iii)単一可変領域から構成されるdAb断片(Ward ESら、(1989)Nature、341(6242):544〜6頁)、(iv)2つのFab断片が連結された二価断片であるF(ab’)2断片、(v)VH領域とVL領域とが、2つの領域が結合して抗原結合部位
を形成することを可能にするペプチドリンカーで連結された単鎖Fv分子(scFv)(Bird REら、(1988)Science、242(4877):423〜6頁;Huston JSら、(1988)Proc Natl Acad Sci USA、85(16):5879〜83頁)、(vi)遺伝子融合により構築された多価または多重特異性断片である「ダイアボディ」または「トリアボディ」(Holliger Pら、(1993)Proc Natl Acad Sci USA、90(14):6444〜8頁;Tomlinson IおよびHolliger P、(2000)Methods Enzymol、326:461〜79頁)、(vii)Fc領域と融合したscFv、ダイアボディまたは領域抗体ならびに(viii)同じまたは異なる抗体と融合したscFvを含む。
用語「可変領域」は、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する領域またはドメインのことをいう。自然に存在する抗体では、抗原結合部位は、特異性を規定する2つの可変領域(一方は重鎖に位置し、本明細書において重鎖可変領域(VH)といい、他方は軽鎖に位置し、本明細書において軽鎖可変領域(VL)という)から構成される。ヒトでは、重鎖可変領域(VH)は、7つのサブグループVH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6およびVH7に分けることができる。いくつかの場合では、特異性は、ラクダ科で見出される重鎖抗体由来の単一ドメイン抗体におけることと同様に、2つの領域のうちの一方のみに排他的にあることがある。V領域は、通常、約110アミノ酸の長さであり、15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FRまたは「非CDR領域」)とよばれる比較的不変のアミノ酸配列のひと続きと、それらを分ける7〜17アミノ酸の長さの非常に変動性の「超可変領域」とよばれるより短い領域とから構成される。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、ほぼベータシート立体構造をとり、ループを形成する3つの超可変領域により接続される4つのFRを含む。各鎖中の超可変領域は、FRにより近接して一緒にされ、他の鎖由来の超可変領域と一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する(Kabat EAら、既出を参照されたい)。用語「超可変領域」は、本明細書で用いる場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基のことをいう。超可変領域は、通常「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列変動性を有し、かつ/または抗原認識に関与する。全ての可変領域について、番号付けは、Kabat(Kabat EAら、既出)に従う。
いくつかのCDR定義が用いられており、それらを本明細書において用いて包含する。Kabat定義は、配列変動性に基づき、最も一般的に用いられる(Kabat EAら、既出)。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置に言及する(ChothiaおよびLesk J.(1987)Mol.Biol.196:901〜917頁)。AbM定義は、Kabat定義とChothia定義との間の折衷であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより用いられる(Martin ACRら、(1989)PNAS USA 86:9268〜9272頁;Martin ACRら、(1991)Methods Enzymol.203:121〜153頁;Pedersen JTら、(1992)Immunomethods 1:126〜136頁;Sternberg M.J.E.(編)、Protein Structure Prediction.Oxford University Press、Oxford中のRees ARら、(1996)、141〜172頁)。接触定義は、最近導入され(MacCallum RMら、(1996)J.Mol.Biol.262:732〜745頁)、プロテインデータバンクにおいて入手可能な、入手可能な複合体構造の分析に基づく。IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system(登録商標))(http://www.imgt.org)によるCDRの定義は、全ての種の全ての免疫グロブリンおよびT細胞受容体V領域についてのIMGT番号付けに基づく(IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics
information system(登録商標));Lefranc MPら、(1999)Nucleic Acids Res.27(1):209〜12頁;Ruiz Mら、(2000)Nucleic Acids Res.28(1):219〜21頁;Lefranc MP(2001)Nucleic Acids Res.29(1):207〜9頁;Lefranc MP(2003)Nucleic Acids Res.31(1):307〜10頁;Lefranc MPら、(2005)Dev.Comp.Immunol.29(3):185〜203頁;Kaas Qら、(2007)Briefings in Functional Genomics&Proteomics、6(4):253〜64頁)。本発明において言及する全ての相補性決定領域(CDR)は、好ましくは、以下のように定義される(Kabat EAら、既出に従う番号付け):
LCDR1:24〜34
LCDR2:50〜56
LCDR3:89〜98
HCDR1:26〜35
HCDR2:50〜65
HCDR3:95〜102
可変ドメインの「非CDR領域」は、フレームワーク領域(FR)として知られる。VL領域の「非CDR領域」は、本明細書で用いる場合、アミノ酸配列1〜23(FR1)、35〜49(FR2)、57〜88(FR3)および99〜107(FR4)を含む。
VH領域の「非CDR領域」は、本明細書で用いる場合、アミノ酸配列1〜25(FR1)、36〜49(FR2)、66〜94(FR3)および103〜113(FR4)を含む。
本発明のCDRは、上記の定義に基づき、以下のような可変ドメイン残基:LCDR1:24〜36、LCDR2:46〜56、LCDR3:89〜97、HCDR1:26〜35、HCDR2:47〜65、HCDR3:93〜102を有する「拡張CDR」を含んでよい。これらの拡張CDRも、Kabatら、既出に従って番号付けされる。VL領域の「非拡張CDR領域」は、本明細書で用いる場合、アミノ酸配列1〜23(FR1)、37〜45(FR2)、57〜88(FR3)および98〜およそ107(FR4)を含む。VH領域の「非拡張CDR領域」は、本明細書で用いる場合、アミノ酸配列1〜25(FR1)、37〜46(FR2)、66〜92(FR3)および103〜およそ113(FR4)を含む。
用語「Fab」または「FAB」または「Fab領域」または「FAB領域」は、本明細書で用いる場合、VH、CH1、VLおよび軽鎖定常免疫グロブリン領域を含むポリペプチドを含む。Fabは、単離されたこの領域、または全長抗体もしくは抗体断片の関係におけるこの領域のことをいうことがある。
用語「Fc」または「Fc領域」は、本明細書で用いる場合、第1定常領域免疫グロブリン領域を除く抗体重鎖の定常領域を含むポリペプチドを含む。よって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリン領域、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリン領域と、これらの領域に対してN末端の柔軟性ヒンジのことをいう。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含むことがある。IgGについて、Fcは、免疫グロブリン領域Cガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)と、Cガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジとを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むと定義される(ここで、番号付けは、EUインデックスに従う)。Fcは、単離されたこの領域またはFcポリペプチド、例えば抗体の関係におけるこの領域のことをいうことがある。
用語「免疫グロブリン定常領域」は、本明細書で用いる場合、ヒトまたは動物種由来の免疫グロブリンまたは抗体重鎖定常領域のことをいい、全てのアイソタイプを包含する。好ましくは、免疫グロブリン定常領域は、ヒト起源のものであり、それらに限定されないが、IGHG1 CH1、IGHG2 CH1、IGHG3 CH1、IGHG4 CH1、IGHA1 CH1、IGHA2 CH1、IGHE CH1、IGHEP1 CH1、IGHM CH1、IGHD CH1、IGHGP CH1、IGHG1 CH2、IGHG2 CH2、IGHG3 CH2、IGHG4 CH2、IGHA1 CH2、IGHA2 CH2、IGHE CH2、IGHEP1 CH2、IGHM CH2、I
GHD CH2、IGHGP CH2、IGHG1 CH3、IGHG2 CH3、IGHG3 CH3、IGHG4 CH3、IGHA1 CH3、IGHA2 CH3、IGHE CH3、IGHEP1 CH3、IGHM CH3、IGHD CH3、IGHGP CH3、IGHE CH4およびIGHM CH4からなる群から選択される。好ましい「免疫グロブリン定常領域」は、ヒトIGHE CH2、IGHM CH2、IGHG1 CH3、IGHG2 CH3、IGHG3 CH3、IGHG4 CH3、IGHA1 CH3、IGHA2 CH3、IGHE CH3、IGHM CH3、IGHD CH3およびIGHGP CH3からなる群から選択される。より好ましい「免疫グロブリン定常領域」は、ヒトIGHG1 CH3、IGHG2 CH3、IGHG3 CH3、IGHG4 CH3、IGHA1 CH3、IGHA2 CH3、IGHE CH3、IGHM CH3、IGHD CH3およびIGHGP CH3からなる群から選択される。
用語「エピトープ結合領域」は、免疫グロブリン分子と1または複数のエピトープとの特異的結合を許容する最小限のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片を含む。自然に存在する抗体は、抗原結合(bindingまたはcombining)部位またはパラトープとしても知られる2つのエピトープ結合領域を有する。自然に存在する抗体中のエピトープ結合領域は、VHおよび/またはVLドメインのCDR領域内に限定され、ここで、アミノ酸媒介エピトープ結合がみられる。自然に存在する抗体に加えて、人工VHドメインもしくはVLドメインまたはそれらの断片およびそれらの組み合わせを工学的に操作して、エピトープ結合領域を得ることができる(Holt LJら、(2003)Trends Biotechnol、21(11):484〜490頁;Polonelli Lら、(2008)PLoS ONE、3(6):e2371)。非免疫グロブリンベースのエピトープ結合領域の例は、エピトープ結合領域(Binz HKら、(2005)Nat Biotechnol、23(10):1257〜1268頁)またはペプチド模倣物(Murali RおよびGreene MI(2012)Pharmaceuticals、5(2):209〜235頁)を工学的に操作するための「土台」として用いられる人工タンパク質ドメインで見出すことができる。好ましくは、用語「エピトープ結合領域」は、1または複数の重鎖可変ドメインと1または複数の相補的軽鎖可変ドメインとの組み合わせを含み、これらは一緒に、免疫グロブリン分子と1または複数のエピトープとの特異的結合を許容する結合部位を形成する。
本明細書で用いる場合、用語「エピトープ」は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて抗原または免疫原性活性を有するポリペプチドまたはタンパク質または非タンパク質分子の断片を含む。免疫原性活性を有するエピトープは、動物において抗体応答を誘発するポリペプチドまたはタンパク質の断片である。抗原活性を有するエピトープは、当業者に公知の任意の方法、例えばイムノアッセイにより決定されるように、抗体またはポリペプチドが特異的に結合するポリペプチドまたはタンパク質の断片である。抗原性エピトープは、免疫原性である必要はない。好ましくは、用語「エピトープ」は、本明細書で用いる場合、少なくとも約3から5、好ましくは約5から10または15で、約1,000以下のアミノ酸(またはそれらの間の任意の整数)のポリペプチド配列のことをいい、該配列は、この配列に応答して作製される抗体が結合する、それ自体またはより大きい配列の一部としての配列を規定する。断片の長さについて臨界的な上限はなく、ほぼ全長のタンパク質配列、または1もしくは複数のエピトープを含む融合タンパク質さえ含むことがある。主題の発明において用いるエピトープは、それが由来する親タンパク質の一部分と全く同じ配列を有するポリペプチドに限定されない。よって、用語「エピトープ」は、天然の配列と同一の配列と、欠失、付加および置換(通常、保存的な性質)のような天然の配列に対する改変とを包含する。タンパク質抗原のエピトープは、それらの構造およびエピトープ結合部位との相互作用に基づいて2つのカテゴリー、すなわち立体構造エピトープおよび直鎖状エピトープに分けられる(Goldsby Rら、(200
3)「Antigens(第3章)」Immunology(第5版)、New York:W.H.Freeman and Company.57〜75頁、ISBN0−7167−4947−5)。立体構造エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続な区画で構成される。これらのエピトープは、3D表面の特徴および抗原の形状または3次元構造に基づいてパラトープと相互作用する。ほとんどのエピトープは、立体構造エピトープである。対照的に、直鎖状エピトープは、それらの1次構造に基づいてパラトープと相互作用する。直鎖状エピトープは、抗原由来のアミノ酸の連続する配列で形成される。
用語「ヘテロ二量体免疫グロブリン」または「ヘテロ二量体断片」または「ヘテロ二量体」または「重鎖のヘテロ二量体」は、本明細書で用いる場合、第1および第2領域のような第1および第2ポリペプチドを少なくとも含む免疫グロブリン分子またはその一部を含み、ここで、第2ポリペプチドは、第1ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。好ましくは、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、2つのポリペプチド鎖を含み、ここで、第1鎖は、第2鎖と同一でない少なくとも1つの領域を有し、両方の鎖は、それらの非同一領域により集合、すなわち相互作用する。より好ましくは、ヘテロ二量体免疫グロブリンは、少なくとも2つの異なるリガンド、抗原または結合部位に対する結合特異性を有し、すなわち二重特異的である。ヘテロ二量体免疫グロブリンは、本明細書で用いる場合、それらに限定されないが、全長二重特異性抗体、二重特異性Fab、二重特異性F(ab’)2
、Fc領域と融合した二重特異性scFv、Fc領域と融合したダイアボディ、およびFc領域と融合したドメイン抗体を含む。
用語「ホモ二量体免疫グロブリン」または「ホモ二量体断片」または「ホモ二量体」または「重鎖のホモ二量体」は、本明細書で用いる場合、第1および第2領域のような第1および第2ポリペプチドを少なくとも含む免疫グロブリン分子またはその一部を含み、ここで、第2ポリペプチドは、第1ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有する。好ましくは、ホモ二量体免疫グロブリンは、2つのポリペプチド鎖を含み、ここで、第1鎖は、第2鎖と同一の少なくとも1つの領域を有し、両方の鎖は、それらの同一領域により集合、すなわち相互作用する。好ましくは、ホモ二量体免疫グロブリン断片は、少なくとも2つの領域を含み、ここで、第1領域は、第2領域と同一であり、両方の領域は、それらのタンパク質−タンパク質界面により集合、すなわち相互作用する。
本発明に含まれる全ての免疫グロブリン定常領域について、番号付けは、IMGT(登録商標)(IMGT(登録商標);既出)に従うことができる。
IGHG1、IGHG2、IGHG3およびIGHG4からなる群から選択される全てのヒトCH1、CH2、CH3免疫グロブリン重鎖定常領域について、番号付けは、「EUナンバリングシステム」(Edelman GMら、(1969)Proc Natl
Acad Sci USA、63(1):78〜85頁)に従うことができる。IGHG1のヒトCH1、ヒンジ、CH2およびCH3定常領域についての完全な対応は、IMGTデータベース(IMGT(登録商標);既出)で見出すことができる。
ヒトカッパ免疫グロブリン軽鎖定常領域(IGKC)について、番号付けは、「EUナンバリングシステム」(Edelman GMら、既出)に従うことができる。ヒトCK領域についての完全な対応は、IMGTデータベース(IMGT(登録商標));既出)で見出すことができる。
ヒトラムダ免疫グロブリン軽鎖定常領域(IGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6およびIGLC7)について、番号付けは、「Kabatナンバリングシステム」(Kabat EAら、既出)に従うことができる。ヒトIGLC領域についての完全な対応は、IMGTデータベース(IMGT(登録商標);既出)で見出すことができる。
ヒトIGHG1免疫グロブリン重鎖定常領域は、本明細書で言及する場合、以下の領域境界、CH1領域(EU番号付け:118〜215)、ヒンジγ1領域(EU番号付け:216〜230)、CH2領域(EU番号付け:231〜340)およびCH3領域(EU番号付け:341〜447)を有する。本明細書で言及するヒトCK領域は、残基108から214(EU番号付け)にわたる。本明細書で言及するヒトIGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6およびIGLC7領域は、残基108〜215(Kabatナンバリング)にわたる。
用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、本明細書で用いる場合、自然のアミノ酸および自然でないアミノ酸を含む。好ましくは、自然のアミノ酸が含まれる。
用語「改変」または「アミノ酸改変」は、本明細書において、ポリペプチド配列中のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含む。用語「置換」または「アミノ酸置換」または「アミノ酸残基置換」は、本明細書で用いる場合、アミノ酸配列中の第1アミノ酸残基を第2アミノ酸残基で置換することをいい、ここで、第1アミノ酸残基は、第2アミノ酸残基とは異なり、すなわち置換アミノ酸残基は、置換されたアミノ酸とは異なる。例えば、置換R94Kは、94位のアルギニンがリジンで置き換えられたバリアントポリペプチドのことをいう。例えば、94Kは、94位のリジンでの置換を示す。本明細書での目的のために、複数の置換を、典型的に、斜線またはコンマで分ける。例えば「R94K/L78V」または「R94K,L78V」は、置換R94KおよびL78Vを含む二重バリアントのことをいう。「アミノ酸挿入」または「挿入」により、本明細書で用いる場合、親のポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸の付加を意味する。例えば、挿入−94は、94位での挿入を示す。「アミノ酸欠失」または「欠失」により、本明細書で用いる場合、親のポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。例えば、R94−は、94位でのアルギニンの欠失を示す。
ある種の実施形態では、プロテインAとの結合における用語「減少する」、「低減する」または「低減」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインAとの結合の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%または99%、100%(喪失)までの全体的な減少のことをいう。ある種の実施形態では、これらの用語は、代わりに、10倍(すなわち1log)、100倍(2log)、1,000倍(または3log)、10,000倍(または4log)または100,000倍(または5log)の全体的な減少のことをいうことがある。
プロテインAとの結合についての用語「喪失する」、「排除する」、「喪失」または「排除」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインAとの結合の100%の全体的な減少、すなわち改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインAとの結合の完全な消失のことをいう。
同様に、プロテインGとの結合における用語「減少する」、「低減する」または「低減」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、
85%、90%、95%、97%または99%、100%(喪失)までの全体的な減少のことをいう。ある種の実施形態では、これらの用語は、代わりに、10倍(すなわち1log)、100倍(2log)、1,000倍(または3log)、10,000倍(または4log)または100,000倍(または5log)の全体的な減少のことをいうことがある。
プロテインGとの結合についての用語「喪失する」、「排除する」、「喪失」または「排除」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合の100%の全体的な減少、すなわち改変免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合の完全な消失のことをいう。
同様に、親和性試薬との結合における用語「減少する」、「低減する」または「低減」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG
Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片と親和性試薬との結合の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%または99%、100%(喪失)までの全体的な減少のことをいう。ある種の実施形態では、これらの用語は、代わりに、10倍(すなわち1log)、100倍(2log)、1,000倍(または3log)、10,000倍(または4log)または100,000倍(または5log)の全体的な減少のことをいうことがある。
親和性試薬との結合についての用語「喪失する」、「排除する」、「喪失」または「排除」は、親の、すなわち未改変の免疫グロブリンまたは野生型IgGまたは野生型ヒトIgG Fc領域を有するIgGと比較して、本明細書に記載するもののような当該技術において既知の標準的な方法により検出される改変免疫グロブリンまたはその断片と親和性試薬との結合の100%の全体的な減少、すなわち改変免疫グロブリンまたはその断片と親和性試薬との結合の完全な消失のことをいう。
「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある種の実施形態では、二重特異性抗体は、親の抗体と比べてVH領域中に1または複数のアミノ酸改変を有する二重特異性抗体である。ある種の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体であってよい。二重特異性抗体は、標的抗原を発現する細胞に対して細胞傷害性薬剤を局在化するために用いてもよい。これらの抗体は、標的抗原と結合する腕と、例えばサポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセートまたは放射活性同位体ハプテンのような細胞傷害性薬剤と結合する腕とを保有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製できる。二重特異性抗体を作製する方法は、当該技術において知られている。伝統的に、二重特異性抗体の組換え生成は、免疫グロブリン重鎖−軽鎖の2つの対の同時発現に基づき、ここで、2つの重鎖は異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello、(1983)Nature、305:537〜40頁)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な取り合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、異なる抗体分子の混合物をおそらく生成し、これらの抗体のうち1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、親和性クロマトグラフィーステップにより通常行われるが、面倒であり、生成物収率は低い。同様の手順がWO93/08829およびTrauneckerら、(1991)EMBO J、10:3655〜9頁に開示されている。異なるアプローチに従って、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変領域を、免疫グロブリン定常領域配列と融合させる。融合体は、例えば、ヒン
ジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域を有する。ある種の実施形態では、軽鎖結合のために必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)は、融合体のうちの少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と所望であれば免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に該ベクターを同時トランスフェクトする。このことにより、構築において用いる3つのポリペプチド鎖の比率が等しくない場合に最適な収率が得られる実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を柔軟に調節できる。しかし、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらすか、または比率が特に重要でない場合に、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方はアビジンと結合でき、他方はビオチンと結合できる。このような抗体は、例えば、免疫系の細胞を不要な細胞に標的化させること(US4,676,980)およびHIV感染の処置のため(WO91/00360、WO92/00373およびEP03089)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作製してよい。適切な架橋剤は、いくつかの架橋技術とともに、当該技術において公知である(US4,676,980を参照されたい)。2価を超える抗体も企図される。例えば、三重特異性抗体を調製できる(Tutt Aら(1991)J.Immunol.147:60〜9頁を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍抗原、サイトカイン、血管増殖因子およびリンパ−血管形成性増殖因子からなる群から選択される抗原と結合する二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または二重特異性全長抗体を提供する。好ましくは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または二重特異性抗体は、HER1、HER2、HER3、EGFR、CD3、CD19、CD20、EpCAM、IgEおよびVLA−2からなる群から選択される抗原と結合する。好ましくは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または二重特異性抗体は、HER2およびHER3と結合する。好ましくは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または二重特異性抗体は、CD3およびEpCAM、またはCD3およびHER2と結合する。好ましくは、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンもしくはその断片または二重特異性抗体は、CD19およびIgE、またはCD20およびIgEと結合する。
用語「細菌の表面タンパク質」は、自然に存在する免疫グロブリンもしくはそれらの断片および/または工学的に操作された可変ドメインもしくはFab断片もしくはFc領域のような人工免疫グロブリンもしくはそれらの断片と結合する、溶媒とアクセス可能な細菌の表面に繋留または埋め込まれたタンパク質を含む。別の態様では、細菌の表面タンパク質は、可溶性バリアントとして遊離され得る。さらに、本発明の目的のために、「細菌の表面タンパク質」は、天然配列に対して欠失、付加および置換(保存的な性質であり得る)のような改変を含み、自然に存在する免疫グロブリンもしくはそれらの断片および/または人工免疫グロブリンもしくはそれらの断片との結合を保持するタンパク質を含む。
免疫グロブリンと相互作用する既知の細菌の表面タンパク質の例は、グラム陽性細菌で見出され、ここで、これらのタンパク質は、細菌が独特の場所にてとどまるか、または免疫系を回避するための手段として働く。免疫グロブリンまたはそれらの断片と結合するいくつかの細菌の表面タンパク質は、抗体の分析、精製および調製、またはその他の診断および生物学的研究用途において用いられている。免疫グロブリンまたはそれらの断片と結合する細菌の表面タンパク質は、それらに限定されないが、以下の例を含む。
プロテインA:プロテインAは、Staphylococcus aureusのいく
つかの株により生成される細胞壁成分であり、単一ポリペプチド鎖から構成される。プロテインA遺伝子生成物は、病原体の細胞壁とタンデムな様式で結合する5つの相同反復から構成される。5つのドメインはおよそ58アミノ酸の長さであり、EDABCと表示され、それぞれ免疫グロブリン結合活性を示す(Tashiro MおよびMontelione GT(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.、5(4):471〜481頁)。5つの相同免疫グロブリン結合ドメインは、3らせんの束に折り畳まれる。各ドメインは、多くの哺乳動物種由来のタンパク質、最も顕著にはIgGと結合できる(Hober Sら、(2007)J.Chromatogr.B Analyt.Technol.Biomed.Life Sci.、848(1):40〜47頁)。プロテインAは、ほとんどの免疫グロブリンの重鎖とFc領域内で結合するが、ヒトVH3ファミリーの場合にFab領域内でも結合する(Jansson Bら、(1998)FEMS Immunol.Med.Microbiol.、20(1):69〜78頁)。プロテインAは、ヒト、マウス、ウサギおよびモルモットを含む様々な種由来のIgGと結合するが、ヒトIgG3と結合しない(Hober Sら、(2007)既出)。ヒトIgG3がプロテインAと結合できないことは、ヒトIgG3 Fc領域中のH435RおよびY436F置換により説明できる(EU番号付け、Jendebergら、(1997)J.Immunol.Methods、201(1):25〜34頁)。IgGの他に、プロテインAは、IgMおよびIgAとも相互作用する。
プロテインAが抗体とこのような高い親和性で結合する能力は、生物薬におけるその工業的規模での使用のための動機づけとなる。生物薬における抗体の生成のために用いるプロテインAは、通常、E.coliにおいて組換え生成され、天然プロテインAと本質的に同じように機能する(Liu HFら、(2010)MAbs、2(5):480〜499頁)。
最も一般的に、組換えプロテインAは、抗体の精製のための定常相クロマトグラフィー樹脂に結合させる。最適な結合は、pH8.2にて生じるが、結合は、中性または生理的条件(pH7.0〜7.6)でも良好である。溶出は、通常、酸性pH(グリシン−HCl、pH2.5〜3.0)に向かうpHシフトにより達成される。このことは、タンパク質構造に永続的に影響を与えることなく、ほとんどのタンパク質−タンパク質および抗体−抗原結合相互作用を効率的に解離する。それにもかかわらず、いくつかの抗体およびタンパク質は、低pHにより損傷を受け、1/10容量のアルカリ性緩衝液、例えば1M Tris−HCl、pH8.0を加えることにより回収後に直ちに中和して、低pH条件下にある期間を最小限にすることが最適である。
様々な市販のプロテインAクロマトグラフィー樹脂が存在する。これらの媒体間の主な違いは、支持マトリクスのタイプ、プロテインAリガンド修飾、孔サイズおよび粒子サイズである。これらの因子の違いは、圧縮率、化学的および物理的頑強性、拡散抵抗および吸着剤の結合能の違いを生じる(Hober Sら、(2007)、既出)。プロテインAクロマトグラフィー樹脂の例は、それらに限定されないが、実施例において用いるように、GE HealthcareのMabSelect SuRe(商標)プロテインA樹脂およびMabSelect(商標)プロテインA樹脂を含む。
プロテインG:プロテインGは、CおよびG群Streptococciから単離された細菌細胞壁タンパク質である。異なるStreptococciから単離された天然のプロテインGのDNA配列決定により、免疫グロブリン結合ドメインならびにアルブミンおよび細胞表面結合のための部位が同定された。株に依存して、免疫グロブリン結合領域およびアルブミン結合領域はともに、2〜3つの独立して折り畳まれた単位から構成される(Tashiro MおよびMontelione GT(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.、5(4):471〜481頁)。G148株由来のプ
ロテインGは、それぞれABD1、ABD2およびABD3ならびにC1、C2およびC3と表示される、3つのアルブミンおよび免疫グロブリン結合ドメインから構成される(Olsson Aら、(1987)Eur.J.Biochem.、168(2):319〜324頁)。C1、C2およびC3と表示される各免疫グロブリン結合ドメインは、およそ55残基であり、約15残基のリンカーにより分けられている。プロテインG免疫グロブリン結合ドメインの全ての実験的に解明された3D構造は、いずれのジスルフィドブリッジも、堅く結合した補欠分子族も有さない、非常に密に詰まった球状構造を示す(Sauer−Eriksson AEら、(1995)Structure、3(3):265〜278頁;Derrick JPおよびWigley DB(1992)Nature、359(6397):752〜754頁;Derrick JPおよびWigley DB(1994)J.Mol.Biol.、243(5):906〜918頁;Lian LYら、(1994)Nat.Struct.Biol.、1(6):355〜357頁)。構造は、アルファ−らせんにより接続された2つの逆平行ベータヘアピンで構成された4本鎖ベータシートを含む。
CおよびG群由来の連鎖球菌株は、プロテインAとは対照的に、IgG3を含むIgGの全てのヒトサブクラスとの結合を示す。プロテインGは、マウス、ウサギおよびヒツジを含むいくつかの動物IgGとも結合する(Bjorck LおよびKronvall G(1984)J.Immunol.、133(2):969〜974頁;Akerstrom Bら、(1985)J.Immunol.、135(4):2589〜2592頁;Akerstrom BおよびBjorck L(1986)J.Biol.Chem.、261(22):10240〜10247頁;Fahnestock SRら、(1986)J.Bacteriol.、167(3):870〜880頁)。よって、プロテインGは、プロテインAと比較して、異なる種のサブクラスに対する、より広い結合スペクトルを示す。
さらに、プロテインGは、IgGのFab部分と高い親和性で結合する。連鎖球菌プロテインGの結合ドメインの構造は、単独(NMRによる、Lian LYら、(1994)既出)およびIgG1 Fabとの複合体(x線結晶解析による、Derrick JPおよびWigley DB(1992)既出ならびにDerrick JPおよびWigley DB(1994)既出)の両方で決定されている。全ての実験的に解明された3D構造は、IgG重鎖のCH1ドメイン内での結合を示した。
プロテインAと同様に、E.coliで生成される組換えプロテインGは、抗体を精製するために日常的に用いられる。アルブミンおよび細胞表面結合ドメインは、非特異的結合を低減するために組換えプロテインGから取り除かれており、よって、粗試料からIgGを分離するために用いることができる。プロテインAと同様に、組換えプロテインGは、抗体の精製のための定常相クロマトグラフィー樹脂に結合させる。最適な結合は、pH5にて生じるが、結合は、pH7.0〜7.2においても良好である。プロテインAについてと同様に、溶出も、酸性pH(グリシン−HCl、pH2.5〜3.0)に向かうpHシフトにより達成される。プロテインGクロマトグラフィー樹脂の例は、それらに限定されないが、実施例において用いるように、GE HealthcareのプロテインG
Sepharose(商標)4 Fast Flow樹脂およびHiTrap(商標)プロテインG HPカラムを含む。
プロテインL:プロテインLは、細菌Peptostreptococcus magnusに元々由来するが、現在では組換え生成される、免疫グロブリン結合タンパク質である(Bjorck L(1988)J.Immunol.、140(4):1194〜1197頁;Kastern Wら、(1992)J.Biol.Chem.、267(18):12820〜12825頁)。プロテインLは、抗体の抗原結合部位に干渉する
ことなく、カッパ軽鎖相互作用により結合する独特の能力を有する(Nilson BHら、(1993)J.Immunol.Methods、164(1):33〜40頁)。このことにより、プロテインLは、他の抗体結合タンパク質よりも広い範囲の免疫グロブリンクラスおよびサブクラスと結合する能力を有する。プロテインLは、全てのクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgD)と結合する。プロテインLは、単鎖可変断片(scFv)およびFab断片とも結合する(Nilson BHら、(1993)既出;Bottomley SPら、(1995)Bioseparation、5(6):359〜367頁)。プロテインLは、カッパI、IIIおよびIVサブクラスのヒト可変ドメインならびにマウスカッパIサブクラスと結合する(Nilson BHら、(1992)既出)。プロテインLクロマトグラフィー樹脂の例は、それらに限定されないが、実施例において用いるように、GenescriptのプロテインL樹脂を含む。
M1タンパク質およびプロテインH:M1タンパク質およびプロテインHは、Streptococcus pyogenesのある種の株の表面に同時に存在する表面タンパク質である。プロテインHは、IgGのFc領域に対する親和性を有する(Akesson Pら、(1990)Mol.Immunol.、27(6):523〜531頁;Akesson Pら、(1994)Biochem.J.、300(Pt3):877〜886頁)。プロテインHは、ヒト、サルおよびウサギ由来のIgGのFc領域と結合する(Akesson Pら、(1990)、既出;Frick IMら、(1995)EMBO J.、14(8):1674〜1679頁)。Mタンパク質も、フィブリノゲンと結合することが知られており(Kantor FS(1965)J Exp Med、121:849〜859頁)、以前の研究により、API株由来のM1タンパク質がアルブミンおよびポリクローナルIgGに対する親和性を有することが示されている(Schmidt KHおよびWadstrom T(1990)Zentralbl.Bakteriol.、273(2):216〜228頁)。
細菌の表面タンパク質は、親和性試薬の例である。その他の例は、それらに限定されないが、人工的に作製されたタンパク質、例えば抗体およびそれらの断片、例えばGE Healthcare(Glattbrugg、Switzerland)のKappaSelectおよびLambdaFabSelect親和性樹脂またはInvitrogen AG(Basel、Switzerland)のCaptureSelect(商標)IgG−CH1を含む。
用語「ヒトFcRn」は、IgG受容体FcRn大サブユニットp51(IgG Fc断片受容体トランスポーターアルファ鎖またはFcRn膜貫通アルファ鎖ともよばれる;UniProtデータベース受託番号P55899)から構成されるヒトヘテロ二量体タンパク質を含み、ベータ2−ミクログロブリン(UniProtデータベース受託番号P61769)と非共有的に結合する。ヒトFcRnは、IgGについてのMHCクラスI関連受容体であり、その発現は、げっ歯類および全ての年齢のヒトにおける上皮細胞、内皮細胞、マクロファージおよび樹状細胞を含む多様な細胞型において同定されている(Roopenian DCおよびAkilesh S(2007)Nat.Rev.Immunol.、7(9):715〜725頁)。ヒトFcRnは、内皮細胞でのエンドサイトーシスの経路において出現することにより、成体でのIgGの再利用において役割を演じる(Tesar DBおよびBjorkman PJ(2010)Curr.Opin.Struct.Biol.、20(2):226〜233頁)。酸性のエンドソームにあるFcRn受容体は、内在化したIgGと結合し、それを細胞表面にて再生する。IgGは、FcRn受容体から、血液の塩基性pHにて放出され、そのことによりリソソーム分解を逃れる。この機構は、他のアイソタイプと比較してより長い血液中のIgGの半減期を説明する。FcRnは、免疫グロブリン分子と2:1複合体を形成し、すなわち、2
つのFcRn分子は、1つのFc領域と結合するか、またはFc領域由来の2つの重鎖はそれぞれ、1分子のFcRnと結合する(Roopenian DCおよびAkilesh S(2007)既出)。FcRnは、IgGのFc領域と、CH2ドメインとCH3ドメインとの間の接合部にて結合する。FcRnの機能にとって重要なことは、IgGのpH依存性結合である。pH6.0では、FcRnはIgGと結合するが、IgGとFcRnとの結合は、pH7.5にて検出不能である。FcRn/IgG相互作用の厳密なpH依存性は、6.0〜6.5のpH範囲にわたって脱プロトン化する、ヒスチジンのイミダゾール側鎖の関与を示唆する。CH2およびCH3ドメインの310位および435位での表面とアクセス可能なヒスチジン残基の変異は、IgGとFcRnとの結合を著しく低減させまたは喪失させた。ヒトFcRn、プロテインAおよびプロテインG結合部位は、ヒトIgGのFc領域中でオーバーラップする(Nezlin RおよびGhetie
V(2004)Advances in Immunology、Academic Press.第82巻:155〜215頁)。
用語「クロマトグラフィー」は、タンパク質液体クロマトグラフィーのことをいい、タンパク質の混合物を分析および精製するために頻繁に用いられる液体クロマトグラフィーの一形態である高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を含む。他の形態のクロマトグラフィーと同様に、混合物中の異なる成分が、2つの物質、多孔質の固体(定常相)の中を通過する移動流体(移動相)に対して異なる親和性を有するので、分離が可能である。FPLCでは、移動相は、水性溶液または「緩衝液」である。緩衝液の流速は、重力流の下で運転できるか、または一定の速度に通常保たれる容積型ポンプにより制御できる。一方、緩衝液の組成は、2つ以上の外部の貯水槽から異なる割合で流体を引き出すことにより変動できる。定常相は、ビーズ、通常、架橋アガロースで構成される樹脂であり、円柱形のガラスまたはプラスチックカラムに充填される。FPLC樹脂は、用途に応じて広い範囲のビーズサイズおよび表面リガンドで入手可能である。
最も一般的なFPLC方策であるイオン交換または親和性クロマトグラフィーでは、緩衝液A(ランニング緩衝液)中で対象のタンパク質が樹脂と結合するが、緩衝液B(溶出緩衝液)中で解離して溶液に戻るように樹脂が選択される。1または複数種の対象のタンパク質を含有する混合物を、100%緩衝液Aに溶解し、カラムにロードする。対象のタンパク質は樹脂と結合し、その他の成分は緩衝液中で運び出される。緩衝液の全流速は一定に保つ。しかし、緩衝液B(「溶出」緩衝液)の割合を、0%から100%まで徐々にまたは段階的な様式でプログラムされた濃度変化(「勾配」)に従って増加させることができる。このプロセス中のある時点で、結合したタンパク質のそれぞれは、解離して、排出液中に出現する。典型的な実験室FPLC検出システムは、1または2つの高精度ポンプ、制御ユニット、カラム、検出システムおよび分画回収器から構成される。システムを手動で運転することが可能であるが、これらの構成要素は、通常、パーソナルコンピュータまたはより古いユニットでは、マイクロコントローラと連結されている。これらの半自動化FLPCシステムを用いて運転する場合(例えばGE healthcareのAKTAシステムを用いる場合)、排出液は、通常、塩濃度(導電率により)およびタンパク質濃度(280nmの波長での紫外光の吸収により)を測定する2つの検出器を通過する。紫外線の吸収 対 用いた移動相の全容量を記録するプロットは、精製プロセスを視覚的に表示する。これらのプロットは、クロマトグラムまたはクロマトグラフィートレースとよばれる。各タンパク質が溶出されるにつれて、該タンパク質は、タンパク質濃度の「ピーク」として(かついわゆるクロマトグラムまたはクロマトグラフィートレース中の図形的な「ピーク」としても)排出液中に出現し、これをさらなる使用のために回収できる。
FPLCは、1982年にPharmacia(現在GE Healthcare)によりスウェーデンにおいて開発および販売され、HPLCまたは高性能液体クロマトグラ
フィーと対比するために高速高性能液体クロマトグラフィーと元々よばれた。FPLCは、一般的に、タンパク質に対してのみ用いられる。しかし、樹脂および緩衝液の広い選択肢があるために、FPLCは、より広い用途を有する。HPLCとは対照的に、用いる緩衝液圧力は比較的低く、典型的に5バール未満であるが、流速は比較的高く、典型的に1〜5ml/分である。FPLCは、カラム中のミリグラム量の混合物の全容量5ml以下での分析から、カラム中のキログラム量の精製タンパク質の何リットルもの容量での工業的生成まで容易にスケールアップできる。溶出タンパク質またはその混合物は、異なる分析技術、例えばSDS−PAGE、質量分析および当該技術において既知のその他の既知の分析技術によりさらに分析できる。
「親和性クロマトグラフィー」のプロセスは、定常相に架橋され、特異的分子または分子のクラスに対する結合親和性を有するリガンドとしての親和性試薬の使用を含む。リガンドは、生体分子、例えばタンパク質リガンドであり得るか、または合成分子であり得る。両方のタイプのリガンドは、良好な特異性を有する傾向にある。生成において最も一般的に用いられるタンパク質リガンドは、親和性試薬プロテインAである。親和性クロマトグラフィーでは、溶液(例えば対象のタンパク質を含有する粗細胞上清)をカラムにロードすると、標的タンパク質は、通常、吸着されるが、混入物(その他のタンパク質、脂質、炭水化物、DNA、色素など)はカラムを通過できる。吸着剤自体は、通常、クロマトグラフィーカラムに充填されるが、吸着段階は、バッチ結合モードで撹拌したスラリーとして吸着剤を用いることにより行うことができる。吸着の後の次の段階は、洗浄段階であり、ここでは、吸着剤を洗浄して残存混入物を除去する。結合したタンパク質は、次いで、半純粋または純粋な形で溶出される。溶出は、タンパク質が固定化リガンドともはや相互作用できず、遊離されるように緩衝液または塩組成を変化させることにより、通常、達成される。いくつかの場合では、対象のタンパク質は、親和性樹脂と結合しないことがあり、親和性クロマトグラフィーは、不要な混入物との結合に充てられ、よって、未結合の画分を回収して、対象のタンパク質を単離する。親和性クロマトグラフィーは、固定床または流動床で行うことができる。
用語「勾配モードクロマトグラフィー」は、「溶出」緩衝液(緩衝液B)の割合を0%から100%まで徐々にまたは段階的な様式で増加させるクロマトグラフィー法のことをいう。
用語「捕捉−溶出モードクロマトグラフィー」または「捕捉−溶出精製モード」または「捕捉−溶出精製」は、「溶出」緩衝液(緩衝液B)の割合を0%から100%まで徐々にまたは段階的な様式で増加させないが、捕捉の後に100%で直接用いて、場合によってランニング緩衝液(緩衝液A)を用いる洗浄ステップを行うクロマトグラフィー法のことをいう。
ヘテロ二量体免疫グロブリンの精製
二重特異性抗体の生成の最も一般的な方法の1つは、単一細胞中で2つの別個の抗体を発現させることである。このような方法は、別個の抗体の重鎖がホモおよびヘテロ二量体の両方を形成するので、複数の種を生じる。必要なのはヘテロ二量体だけであるので、これらを、ホモおよびヘテロ二量体の混合物から分離する必要がある。本発明は、通常のプロテインAおよびプロテインG親和性クロマトグラフィーを利用することにより、ホモおよびヘテロ二量体の混合物からヘテロ二量体免疫グロブリンを分離するための高度に効率的な方法を提供する。
第1ステップ(実施例1)として、プロテインAまたはプロテインG結合を喪失させる置換を設計し、両方の単量体が置換を有するホモ二量体免疫グロブリンFc断片において試験した。プロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる新しい置換を選択し、最
小限の数である2まで低減した。
第2ステップ(実施例2)では、ホモ二量体Fc断片中のプロテインAまたはGとの結合を低減させるまたは喪失させる置換を、FABまたはscFv断片に基づくホモ二量体免疫グロブリン中でアッセイした。このことにより、両方の技術についての重要なネックとなるところを同定できた。プロテインAとの結合を低減またはなくすための置換を有する重鎖内にVH3サブクラスの可変重鎖ドメインが存在することにより、プロテインAに基づくいずれの差次的親和性方法も妨げられることがわかった。一方、プロテインGとの結合を低減またはなくすための置換を有する重鎖内にガンマCH1定常ドメインが存在することにより、プロテインGに基づく新しい差次的親和性方法が妨げられる。これらの主な障害に対する解決法は、プロテインAに基づく差次的親和性方法についてプロテインAとVH3サブクラスとの結合を低減させるまたは喪失させるフレームワーク置換の形で、かつプロテインGに基づく新しい差次的親和性方法についてプロテインGとガンマCH1ドメインとの結合を低減させるまたは喪失させるCH1ベースの置換の形で見出された。
最後のステップ(実施例3)では、プロテインAおよびG差次的親和性方法をともに、それら自体でかつ上記の溶液との組み合わせで用いて、ヘテロ二量体免疫グロブリンを精製することに成功した。より重要なことには、プロテインAおよびG差次的親和性方法を組み合わせて、逐次的に用いた場合に、2つの逐次的な捕捉および直接溶出のクロマトグラフィーステップのみに依拠して、勾配溶出を必要とせずにヘテロ二量体免疫グロブリンの精製ができたことを示した。
ヒトFcRnとの結合は、免疫グロブリンを分解から保護し、免疫グロブリンの半減期を増加させるので、プロテインAまたはGとの結合を喪失させるFc領域中の変異がFcRnとの結合を破壊しないことが必須である。
表面プラズモン共鳴(SPR)測定(実施例4)から、本明細書に示すプロテインGに基づく新しい差次的親和性方法において用いる置換が、ヒトFcRn結合の>90%の保持を可能にしたが、プロテインAに基づく以前に記載された差次的親和性方法は、ヒトFcRn結合を約75%だけ保持したことが見出された。プロテインGに基づく新しい差次的親和性方法を作製することヒト治療用のヘテロ二量体免疫グロブリンを開発する場合に選択される技術。免疫グロブリンのFc領域中のプロテインG結合を排除する置換は、FcとヒトFcγR3aとの結合に影響を与えなかった。
実施例5から7は、ガンマ免疫グロブリンのFc領域およびCH1領域中のプロテインG結合を排除する置換の特徴を決定する。実施例8は、本発明に基づく治療用ヘテロ二量体免疫グロブリンの設計および機能的試験を示す。
実施例
方法:
一般的な方法
発現ベクターの構築
適当なcDNA鋳型を用いる標準的なオーバーラップPCR技術により、cDNAコード配列中に変異を導入した。PCR生成物をHindIIIおよびNotI DNA制限酵素で消化し、精製し、同じDNA制限酵素で予め消化した、CMVプロモーターおよびウシホルモンポリアデニル化を保有する改変pcDNA3.1プラスミド(Invitrogen AG、Basel、Switzerland)にライゲーションした。軽鎖を、同じ発現ベクターに独立してライゲーションした。全ての発現ベクターにおいて、分泌は、ネズミVJ2Cリーダーペプチドにより駆動された。
組換え抗体およびその断片の発現
一過性発現のために、等量の工学的に操作した各鎖のベクターを、懸濁馴化HEK−EBNA細胞(ATCC−CRL−10852)にポリエチレンイミン(PEI)を用いて同時トランスフェクトした。典型的に、1mlあたり0.8〜1.2百万細胞の密度の100mlの細胞懸濁物にDNA−PEI混合物をトランスフェクトする。工学的に操作した各鎖遺伝子をコードする組換え発現ベクターを宿主細胞に導入する場合、細胞を4〜5日間さらに培養して培養培地(0.1%プルロニック酸、4mMグルタミンおよび0.25μg/mlジェネテシンを補ったEX−CELL293、HEK293血清フリー培地(Sigma、Buchs、Switzerland))中に分泌させることにより、免疫グロブリン構築物を生成する。分泌された免疫グロブリンを含有する細胞フリー培養上清は、遠心分離の後にろ過することにより調製し、さらなる分析に用いた。
実施例1の方法:プロテインAまたはG結合が排除されたFc断片の精製および試験
捕捉−溶出モードクロマトグラフィー
上清を、0.1容量(V)の1M Tris−HCl pH8.0を用いて前処理した後に精製した。プロテインG Sepharose(商標)4 Fast Flow(プロテインA結合部位変異体)またはMabSelect SuRe(商標)樹脂(プロテインG結合部位変異体)(ともにGE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerlandから;それぞれカタログ番号17−0618−01および17−5438−01)を、前処理した上清にそれぞれ加えた。混合物を一晩4℃にてインキュベートした。インキュベーションの後に、結合したタンパク質を10CVのPBS pH7.4で洗浄し、4カラム容量(CV)の0.1MグリシンpH3.0で溶出し、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。上清、通過画分および溶出画分を、SDS−PAGE(NuPAGE ビス−トリス4〜12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel、Switzerland)により非還元条件下で分析した。
勾配モードクロマトグラフィー
生成の後に、ホモ二量体Fcバリアントを含有する細胞培養上清を、まず、プロテインG Sepharose(商標)4 Fast Flow(プロテインA結合部位変異体)またはMabSelect SuRe(商標)プロテインA樹脂(プロテインG結合部位変異体)(以下を参照されたい、ともにGE Healthcare Europe GmbHの樹脂;それぞれカタログ番号17−0618−01および17−5438−01)を用いる捕捉−溶出モードクロマトグラフィーで精製した。捕捉−溶出モードクロマトグラフィーから溶出された物質を、続いて、1ml HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム(プロテインA結合部位変異体)または1ml HiTrap(商標)プロテインG HPカラム(プロテインG結合部位変異体)にロードした。両方のカラムを、0.2Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH8.0で予め平衡化し、AKTApurifier(商標)クロマトグラフィーシステム(ともにGE
Healthcare Europe GmbHから;それぞれカタログ番号11−0034−93および17−0404−01)上で、1ml/分の流速にて操作した。溶出は、様々な量の2種の緩衝液(ランニング緩衝液(A):0.2Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH8.0および溶出緩衝液(B):0.04Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH3.0(実施例1.1)または0.02Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH2.6(実施例1.2)を組み合わせるpH直線勾配を用いて行った。直線勾配は、0%Bから100%Bまで5カラム容量(CV)で(実施例1.1)、または10CV(実施例1.2)で進めた。溶出画分を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。上清、通過画分および溶出画分を、SDS−PAGE(NuPAGE ビス−トリス4〜12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel、Switzerland)により非還元条件下で分析した。
実施例2の方法:プロテインAまたはG結合が排除されたホモ二量体免疫グロブリンの精製および試験
実施例2.1:プロテインA結合が排除されたホモ二量体免疫グロブリン
プロテインA結合が排除されたFAB断片の精製および試験。
生成の後に、細胞培養上清を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で前処理した。プロテインL樹脂(Genescript、Piscataway、USA)を前処理した上清に加え、一晩4℃にてインキュベートした。インキュベーションの後に、結合したタンパク質を10CVのPBS pH7.4で洗浄し、4CVの0.1MグリシンpH3.0で溶出し、最後に、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。プロテインA結合を評価するために、プロテインL精製FABを1ml HiTrap MabSelect(商標)カラム(GE Healthcare Europe
GmbH、Glattbrugg、Switzerland)にpH8.0(クエン酸/Na2HPO4緩衝液)にて注入した。溶出は、様々な量の2種の緩衝液(ランニング緩衝液(A):0.2Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH8.0および溶出緩衝液(B):0.04Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH3.0)を組み合わせるpH直線勾配を用いて行った。直線勾配は、0%Bから100%Bまで5CVで進めた。溶出画分を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。上清、通過画分および溶出画分を、SDS−PAGE(NuPAGE ビス−トリス4〜12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel、Switzerland)により非還元条件下で分析した。
プロテインA結合が排除されたFAB断片のSPR試験
IGHG1 Fc断片と融合したヒトHER2細胞外領域をコードするcDNAを、上記の重鎖および軽鎖発現ベクターと同様の発現ベクターにクローニングし、PEI法(PCTパンフレットWO12/131555を参照されたい)を用いてHEK293E細胞に一過的にトランスフェクトした。上清を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で前処理し、実施例1に記載したように抗原をプロテインA捕捉−溶出クロマトグラフィーにより精製した。SPR実験のために、モノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体センサチップを用いた。これは、Fcと融合した組換えHER2抗原を正しい向きで捕捉することを可能にした(ヒト抗体捕捉キット、カタログ番号BR−1008−39、GE Healthcare Europe GmbH)。測定は、BIAcore(商標)2000装置(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)で記録した。異なる希釈の抗HER2 FAB(50、25、12.5、6.25、3.13、1.57、0.78、0.39nM)をセンサチップ上に4分間、30μl/分にて注入した。各測定について、7分間の解離の後に、3M MgCl2溶液を1分間、30μl/分にて再生のために注入した。データ
(センサグラム:fc2−fc1)を、1:1ラングミュアを用いてフィットさせた。捕捉されたHER2−cの各測定の初めの実験的変動を埋め合わせるために、全てのフィッティングにおいてRmax値をローカルに設定した。測定は、1点につき2個の試料を用いて行い、参照のためにゼロ濃度試料を含めた。カイ2および残差の値をともに用いて、実験データと個別の結合モデルとの間のフィッティングの質を評価した。
FcおよびVH3ドメイン中でプロテインAが排除されたVH3ベースのホモ二量体免疫グロブリンの精製および試験。
勾配モードクロマトグラフィーおよび捕捉−溶出モードクロマトグラフィーは、実施例1について記載した手順に従って行った。
実施例2.2:プロテインG結合が排除されたホモ二量体免疫グロブリン
クロマトグラフィー
勾配モードクロマトグラフィーおよび捕捉−溶出モードクロマトグラフィーは、実施例1について記載した手順に従って行った。
プロテインG結合が排除されたFAB断片のSPR試験
アミノ酸配列SAHHHHHHHH(配列番号100)と融合したヒトHER3細胞外領域をコードするcDNA(UniProt受託番号:P21860(ERBB3_HUMAN)残基20〜632、配列番号73、本明細書においてHER3抗原という;UniProt Consortium(2013)Nucleic Acids Res.、41(データベース版):D43〜7;http://www.uniprot.org/)を、上記の重鎖および軽鎖発現ベクターと同様の発現ベクターにクローニングし、PEIを用いてHEK293E細胞に一過的にトランスフェクトした。生成の後に、細胞フリー上清を調製し、ろ過し、滅菌し、0.1容量の1M Tris−HCl pH8で前処理し、Ni2+−NTA親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare Europe GmbH、Cat.No:17−5318−02)で精製した。
SPR実験のために、抗体バリアントを、プロテインA結合CM5研究グレードセンサチップ(チップ:GE Healthcare Europe GmbH;Cat.No:BR−1000−14;プロテインA Sigma、Cat.No:P7837)上に捕捉し、分析物として組換えHER3抗原を用いた。測定は、以下のように行った:(捕捉)150RUの抗体、(流速)30μl/分HBS−P緩衝液、(再生)グリシンpH1.5、(注入)5分間、(解離)8分間、(注入したHER3抗原濃度)50、25、10、5、1および0.5nM、(データフィッティング)物質移動なしの1:1結合。捕捉された抗体の各測定の初めの実験的変動を埋め合わせるために、全てのフィッティングにおいてRmax値をローカルに設定した。測定は、1点につき3個の試料を用いて行い、参照のためにゼロ濃度試料を含めた。カイ2および残差の値をともに用いて、実験データと個別の結合モデルとの間のフィッティングの質を評価した。
実施例3の方法:プロテインAまたはG結合が排除されたヘテロ二量体免疫グロブリンの精製および試験
実施例3.1および3.2:プロテインAまたはGを用いるヘテロ二量体免疫グロブリンの1ステップ精製
生成の後に、細胞培養上清を、0.1Vの0.2M NaH2PO4を用いてpH6.0に調節し、1ml HiTrap(商標)MabSelect SuRe(商標)カラム(実施例3.1)または1ml HiTrap(商標)プロテインG HPカラム(実施例3.2)に1ml/分にてロードした。ロードした後に、結合したタンパク質を、0.125Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH6.0を用いて十分に洗浄した。溶出は、2種の緩衝液(ランニング緩衝液(A):0.125Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH6.0および溶出緩衝液(B):0.04Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH3.0)を組み合わせる2種の均一濃度勾配を用いて行った。ヘテロ二量体免疫グロブリンは、以下:実施例3.1において55%B、実施例3.2において示す第1および第2の場合において90%Bおよび80%Bのように変動する第1均一濃度勾配を70CVにわたって用いて溶出した。非排除ホモ二量体分子は、全ての実施例において20CVにわたって100%Bの第2均一濃度勾配で溶出した。溶出画分を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。上清、通過画分および溶出画分を、SDS−PAGE(NuPAGE ビス−トリス4〜12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel、Switzerland)により非還元条件下で分析した。
実施例3.3:プロテインAおよびプロテインGを用いるヘテロ二量体免疫グロブリンの逐次的精製。
生成の後に、細胞培養上清を、0.1Vの0.2M NaH2PO4を用いてpH6.0
に調節し、1ml HiTrap MabSelect SuRe(商標)カラムに1ml/分にてロードした。ロードした後に、結合したタンパク質を、0.125Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH6.0を用いて十分に洗浄した。プロテインG結合部位を有さないヘテロ二量体免疫グロブリンおよびホモ二量体免疫グロブリンを、10CVの0.04Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH3.0で溶出した。ヘテロおよびホモ二量体混合物を含有する画分をプールし、10Vの0.125Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH6.0でさらに希釈した。希釈混合物を、次いで、1ml HiTrapプロテインG HPカラム(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)にロードし、結合したタンパク質を、0.125Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH6.0を用いて十分に洗浄した。ヘテロ二量体免疫グロブリンを、10CVの0.04Mリン酸塩クエン酸塩緩衝液pH3.0で溶出した。溶出画分を、0.1Vの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。上清、通過画分および溶出画分を、SDS−PAGE(NuPAGE ビス−トリス4〜12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel、Switzerland)により非還元条件下で分析した。
実施例4の方法:ヒトFcRnおよびFcガンマ受容体3aについてのSPR実験
ヒトFcRnについてのSPR実験
簡単に述べると、組換えヒトFcRnをCHO−S細胞で発現させた。ヒトFcRnアルファ鎖およびベータ2ミクログロブリンタンパク質をコードするcDNA(それぞれUniProt受託番号:P55899(IgG受容体FcRn大サブユニットp51)残基24〜297およびP61769(ベータ−2−ミクログロブリン)残基21〜119)を、ピューロマイシン耐性遺伝子を含有する2つの別々の哺乳動物発現ベクターにクローニングした。CHO−S細胞を、以前に記載したPEI法を用いて安定的に同時トランスフェクトし、安定クローンを、7.5μg/mlのピューロマイシンの存在下での成長により選択した。成長培地は、PowerCHO2(Lonza Ltd、Basel、Switzerland)であった。精製の前で生成の後の上清を、0.2M NaH2
PO4、0.1M NaCl pH6.0で前処理して、pHを6.0に調節した。Fc
Rnを、ヒトIgG sepharose6 Fast flow(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)を用いて精製し、PBS pH7.4で溶出した。測定は、BIAcore(商標)2000装置(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)で記録した。各免疫グロブリンバリアントを、CM5センサチップ(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)上に、製造者により提供される標準的なプロトコールを用いてアミン結合により固定化して、およそ1500RUの応答に達した。FcRnは、エンドソーム中で免疫グロブリンのFc領域と酸性pHにて結合するが(pH6.0)、血液の塩基性pHで結合を示さず(pH7.4)、よって、全ての測定は、20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0−0.1M NaCl(ランニング緩衝液)を用いて行った。異なる希釈のヒトFcRn(6000、3000、1500、750、375、187.5、93.8、46.9nM)を3分間、10μl/分にて注入した。3分間の解離の後に、PBS pH7.4を1分間、30μl/分にて表面再生のために注入した。KD値を、定常状態親和性モデルを用いて決定した。平衡定数は、濃度の範囲にわたる定常状態応答 対 ヒトFcRnの濃度を1:1結合モデル(化学量論(n)=1)にフィッティングさせることにより決定した。測定は、1点につき3個の試料を用いて行い、参照のためにゼロ濃度試料を含めた。カイ2および残差の値をともに用いて、実験データと個別の結合モデルとの間のフィッティングの質を評価した。
ヒトFcガンマ受容体3aについてのSPR実験
ヒトFcガンマ受容体3a(FcγR3aと省略する、UniProt受託番号:P0
8637(FCG3A_HUMAN)残基17〜192)をクローニングし、上記のHER3抗原と同様に発現させた。精製を、0.1MグリシンpH3の溶出ステップを用いるIg−G Sepharoseクロマトグラフィー(GE Healthcare Europe GmbH、Cat.No:17−0969−01)で行った。FcγR3aを、ゲルろ過(SUPERDEX75 10/300GL、GE Healthcare Europe GmbH、Cat.No:17−5174−01)によりさらに精製して、痕跡量のIgG混入物を除去した。測定は、以下のように行った:(チップ)17000RUの抗体と結合したCM5チップ、(流速)10μl/分HBS−P、(再生)なし、(注入)8分間、(解離)10分間、(注入したFcγR3a濃度)2500、1250、625、312、156、78および39nM、(データフィッティング)定常状態親和性。
実施例5の方法:プロテインAおよびG排除置換の免疫原性予測
プロテインAおよびプロテインG排除変異の予測される免疫原性を、LonzaのEpibase platform(商標)(Lonza、Applied Protein
Services、Cambridge、UK)を用いて調べた。
実施例6の方法:プロテインAおよびG排除置換の熱安定性分析
免疫グロブリンの熱安定性を、熱量分析により比較した。測定は、VP−DSC示差走査マイクロ熱量計(MicroCal−GE Healthcare Europe GmbH)で行った。セル容量は0.128mlであり、昇温速度は1℃/分であり、過剰圧力は64p.s.i.に保った。全てのタンパク質断片は、PBS(pH7.4)中で1〜0.5mg/mlの濃度で用いた。各タンパク質のモル熱容量は、タンパク質を除いた同一緩衝液を含有する、1点につき2個の試料との比較により見積もった。部分モル熱容量および融解曲線は、標準的な手順を用いて分析した。サーモグラムは、ベースライン補正し、濃度を標準化した後に、ソフトウェアOrigin v7.0(MicroCal−GE Healthcare Europe GmbH)において非2状態モデルを用いてさらに分析した。
実施例7の方法:プロテインG排除置換の薬物動態分析
薬物動態分析は、雌性Sprague Dawleyラットで行った。各群は、4匹のラットを含んだ。ラットに10mg/kgの抗体を静脈内急速投与注射により与えた。血液試料を注射の0.25時間、1時間、4時間、6時間ならびに1、2、4、7、10、14、21、28、35および42日後に回収した。
抗体の血清レベルを、サンドイッチELISAにより決定した。2μg/mlの濃度にてHER2抗原で96ウェルELISAプレートを被覆し、一晩4℃にてインキュベートした。プレートをBSAでブロックした後に、血清試料、参照標準物質(11の系列希釈)および品質管理試料をプレートに加え、1時間室温にてインキュベートした。洗浄して未結合抗体を除去した後に、ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG_F(ab’)2断片特異的検出抗体(Jackson Immunoresearch、販売者
:MILAN ANALYTICA AG、Rheinfelden、Switzerland、Cat No:109−035−006)を加え、製造者の推奨に従って標準的な比色テトラメチルベンジジン基質(TMB、Pierce−Thermo Fisher Scientific−Perbio Science S.A.、Lausanne、Switzerland、Cat.No.:34021)により発色させた。450nmの吸光度の値をプレートリーダで記録し、血清試料中の抗体の濃度を、4パラメータ回帰モデルを用いて試料プレート中で作製した参照標準曲線を用いて算出した。薬物動態パラメータを、WinNonlin(商標)バージョン5.3(Pharsight Corporation、Mountain View、CA、USA)を用いてノンコン
パートメント解析により評価した。
実施例8の方法:プロテインA置換の機能解析
ファージディスプレイライブラリー構築およびスクリーニング
抗HER3抗体は、抗体ファージディスプレイライブラリーから単離できる。この目的のために、scFvファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした。ここで用いたライブラリーは、それぞれ可変重鎖および軽鎖のCDR−H3およびCDR−L3に制限される多様性を有する、合成起源のものからであった。ライブラリー構築は、以下に記載するいくらかの改変を加えたSilacci M.ら(2005、Proteomics、5(9):2340〜50頁)のプロトコールに従った。
ライブラリーのために用いた抗体の土台は、軽鎖可変生殖系列ドメインDPK22と一緒に集合させた重鎖可変生殖系列ドメインDP47に基づいた。G4Sペプチド反復(GGGGSGGGGSGGGAS;配列番号94)に基づくフレキシブルリンカーを、2つの可変ドメインを集合させるために用いた。5つのサブライブラリーをクローニングしたが、これらはそれぞれ、それぞれ8または9または10または11または12残基の長さのCDR−H3を有する可変重鎖ドメインに対応する以下の配列K(X)nFDY(Kabat残基94〜102)(ここで、Xは、無作為の自然に存在するアミノ酸であり、nは、5または6または7または8または9である)を有する、CDR−H3を有する1つの重鎖可変生殖系列ドメインDP47と、以下の配列CQQXGXXPXTF(配列番号96)またはCQQXXGXPXTF(配列番号97)またはCQQXXXXPXTF(配列番号98)(Kabat残基88〜98)(ここで、Xは、無作為の自然に存在するアミノ酸である)の1つを有する、CDR−L3を有する3つの異なる軽鎖可変生殖系列ドメインDPK22の集合から得られる可変軽鎖ドメインのプールとの集合から得られた。DP47−DPK22 scFv断片のそれぞれのサブライブラリーは、1×10e9から3.7×10e9の間の多様性を有し、一旦組み合わせると、5つのサブライブラリーは、1.05×10e10の全多様性に達した。
ヒトHER3を認識するScFv断片を、上記の合成ファージディスプレイライブラリーから、組換え由来ヒトHER3抗原についての一連の反復選択サイクルで単離した(上記の方法の項を参照されたい)。抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法は、既知である(Viti F.ら、(2000)Methods Enzymol.、326:480〜505頁)。簡単に述べると、プラスチックイムノチューブを予め被覆した固定化抗原(20μg/mlの濃度にてPBS中で一晩)を、ライブラリーとインキュベートした。チューブをPBS/0.1% Tween20で洗浄した。結合したファージをトリエチルアミンで溶出し、Silacci M.ら、既出に記載されるようにレスキューした。この選択プロセスを3回反復した。2回目および3回目の選択による1000を超えるクローンを発現させ、標的抗原に対してELISAにより分析した。陽性クローンをDNA配列決定に供し、ユニーククローンのいくつかを、ヒトHER3を発現する株化細胞と結合する能力についてさらに分析した。
単離scFv断片のほとんどがヒトHER3の第1および第2ドメインに特異的であったので、組換えファージのライブラリープールをヒトHER3細胞外領域の第1ドメインの組換え形に対して枯渇させるさらなる選択を行った(アミノ酸配列SAHHHHHHHH(配列番号100)と融合したヒトHER3ドメイン1は、HER3細胞外領域について記載したように発現させた、UniProt受託番号:P21860(ERBB3_HUMAN)残基20〜209、配列番号74)。この選択スキームにより、ヒトHER3の第4ドメインに特異的なscFv断片の単離が可能になった。まとめると、ここで報告する選択により、ヒトHER3に対するナノモル親和性を、広いエピトープカバー範囲とともに有するscFv断片が得られた。高い熱安定性を示すscFv断片を、未処理の細
菌上清由来の分泌scFv断片を熱負荷に供した後に抗原ELISAを行う「クック−アンド−バインド(cook−and−bind)ELISA」により単離した(Miller BRら、(2009)Methods Mol.Biol.、525:279〜89頁)。好ましいscFv断片を、これらの選択から単離した。異なる選択によるほとんどのscFv断片は、FACSにより、HER3陽性株化細胞と結合することが見出された。
ヒトHER3陽性株化細胞
HER3抗原を表面で発現するヒト細胞は、PCTパンフレットWO10/108127(Fuh Gら)に記載されている。Calu−3(ATCC−LGL standards、Teddington、UK;Cat.No:HTB−55)、BxPC3(ATCC−LGL standards;Cat.No:CRL−1687)およびMDA−MB−175−VII(ATCC−LGL standards;Cat.No:HTB−25)は、ヒトHER3陽性株化細胞の例である。ここでは、Calu−3株化細胞を主に用いて、ファージディスプレイにより単離されたscFv断片について確認した。
細胞培養条件
Calu−3細胞は、10%胎児ウシ血清(FCS)および1%Glutamax/ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen AG)を補ったRPMI培地で維持した。
細胞増殖アッセイ
Calu−3細胞を96ウェルプレート(10,000細胞/ウェル)に播種した。以下の日に、1%FCSを含有する培地で希釈した抗体または組み合わせ抗体または二重特異性抗体で細胞を処理した。最終濃度3nMのベータヘレグリン(R&D Systems、Abingdon、UK、Cat.No:396−HB)を、抗体とのインキュベーションの1時間後に加えた。alamarBlue(登録商標)(AbD Serotec、Dusseldorf、Germany、Cat.No:BUF102)を72時間後にウェルに加え、細胞を24時間までインキュベートした後に、540nmの励起波長および620nmの発光波長にてBiotek Synergy2プレートリーダ(BioTek Instruments GmbH、Luzern、Switzerland)で蛍光を読み取った。
ホモ二量体Fc断片中でプロテインAまたはGとの結合を低減または排除する変異。
プロテインAまたはプロテインGとの結合が低減またはなくなったFcバリアントを同定するために、工学的に操作したバリアントを設計し、スーパー抗原結合部位のコピーがともに変異されているホモ二量体として発現させた。このことにより、スーパー抗原に対する結合がほとんどまたは全く残っていない(差次的精製の概念はこのことに基づく)ホモ二量体免疫グロブリンを導く置換を選択できた。
1.1 プロテインAと結合しないかまたは結合が低減されたホモ二量体Fc断片
混合IGHG1−IGHG3フォーマットの使用をさらに調べるために、3つのIGHG1−IGHG3混合Fcバリアントを調製し、プロテインA結合についてアッセイした。
第1バリアントは、ヒンジ配列が自然に存在するヒトIGHG1アイソタイプ由来のヒンジ配列全体で置換された、自然に存在するヒトIGHG3アイソタイプを起源とする配列を有した(Fc133と省略する(名称中の数字は、ヒンジ/CH2/CH3の順序での各ドメインの免疫グロブリンガンマアイソタイプサブクラスに対応する);配列番号1
)。
第2Fcバリアントは、CH3ドメイン配列全体が自然に存在するヒトIGHG3 アイソタイプ由来のCH3ドメイン配列全体で置換された、自然に存在するヒトIGHG1アイソタイプを起源とする配列を有した(Fc113と省略する(名称中の数字は、ヒンジ/CH2/CH3の順序での各ドメインの免疫グロブリンガンマアイソタイプサブクラスに対応する);配列番号2)。
第3バリアントは、US20100331527に記載される置換H435RおよびY436Fが導入された、自然に存在するIGHG1アイソタイプを起源とする配列を有した(EU番号付け;Fc H435R/Y436Fと省略する;配列番号3)。
さらに、ヒトIGHG1 Fc断片(Fc IGHG1と省略する;配列番号4)を調製し、陽性対照として用いた。
ホモ二量体Fcバリアントおよび対照Fc断片を、プロテインA結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図1は、3つのバリアントおよびFc IGHG1対照断片のクロマトグラフィープロファイルを示す。
3つのバリアントはいずれもプロテインA結合を保持しなかったが、Fc IGHG1対照断片は強い結合を示した。ヒトIGHG3 CH3ドメインの自然に存在する配列を包含するホモ二量体Fcバリアントは、プロテインAとの結合が低減されたかまたは結合しないと結論付けた。
プロテインAおよびプロテインGに対する結合部位はCH2−CH3ドメイン界面でオーバーラップするので、上記のFcバリアントを、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う捕捉−溶出精製モードにおいて試験した。結果を図2に示す。3つのバリアントは全て、プロテインG結合を保持した。
1.2 プロテインGと結合しないかまたは結合が低減されたホモ二量体Fc断片
免疫グロブリン重鎖中の重要なプロテインG結合残基を同定するために、プロテインGのC2ドメインとの複合体中のヒトFc断片の構造を、合理的設計のための出発点として用いた(PDBコード:1FCC、www.pdb.org、Bernstein FCら、(1977)Eur J Biochem、80(2):319〜324頁およびBerman HMら、(2000)Nucleic Acids Res、28(1):235〜242頁;Sauer−Eriksson AEら、(1995)Structure、3(3):265〜278頁)。PISAサーバ(http://www.ebi.ac.uk/msd−srv/prot_int/pistart.html;Tina KGら、(2007)Nucleic Acids Res.、35(ウェブサーバ版):W473〜476)を用いる両方の分子間の界面の分析により、Fc断片中の18のプロテインG相互作用残基の部分集合が同定され、そのうちL251、M252、I253、S254、Q311、E380、E382、S426、M428、N434、H435、Y436およびQ438が主に貢献した(EU番号付け)。残基L251、I253、H310、H433、H435およびY436は、これらの残基がFcRn結合のために必須であることが当該技術において知られていることに基づいて(Roopenian DCおよびAkilesh S、(2007)Nat.Rev.Immunol.、7(9):715〜25頁)、元々の候補リストから省いた。物理化学的特性に加えて、置換の性質を、プロテインG結合および非結合免疫グロブリンヒトアイソタイプ間の配列比較に基づいて合理化した(ガンマアイソタイプ 対 IGHA1、IGHA2および
IGHM;Bjorck LおよびKronvall G(1984)J.Immunol.、133(2):969〜974頁)。
ヒトIGHG1のFc断片(配列番号4)の関係において、標準的PCRベースの突然変異誘発技術により変異を導入した。作製した置換は、それらに限定されないが、以下の変更を含んだ:E380Y(配列番号5)、E382R(配列番号6)、E382Y(配列番号7)、S426M(配列番号8)、S426R(配列番号9)、S426Y(配列番号10)、S426W(配列番号11)、Q438R(配列番号12)、Q438Y(配列番号13)ならびに組み合わせE380A/E382A(配列番号14)、E380M/E382L(配列番号15)、E380Y/E382R(配列番号16)、M252A/E380A/E382A(配列番号17)、S254E/S426M/M428G(配列番号18)およびS254M/E380M/E382L(配列番号19)。
ホモ二量体Fcバリアントおよび対照Fc断片を、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。
試験した単一置換またはそれらの組み合わせはいずれも、プロテインG HPカラムとの結合の完全な排除を導かなかった(図3)。S254位、E380位およびE382位での置換を組み合わせた変異体(図3M)を用いて結合の小さい低減が観察され、これらを、M252位、M428位、Y436位およびQ438位でのさらなる置換との4または5つの群によりさらに調べた。2つの新しい組み合わせを、次いで、調製した:M252A/E380A/E382A/Y436A/Q438A(配列番号20)およびS254M/E380M/E382L/S426M/M428G(配列番号21)。さらに、S426位およびM428位での以前に調べられた置換をH433位およびN434位での置換とさらに組み合わせた第3の組み合わせ:S426M/M428G/H433D/N434A(配列番号22)を調製した。
この新しいセットのホモ二量体Fcバリアントは、プロテインG結合についても、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。3つ全てのホモ二量体Fc組み合わせ変異体は、プロテインGカラムとの結合の完全な排除を示し、ローディングステップ中に溶出された。
プロテインAおよびプロテインGに対する結合部位はCH2−CH3ドメイン界面でオーバーラップするので、上記のFcバリアントを、プロテインA結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う捕捉−溶出精製モードにおいて試験した。結果を図4に示す。3つのバリアントは全て、プロテインAと結合し、よって、全てのバリアントがプロテインA結合を保持したことが示された。
ホモ二量体Fc断片中のプロテインG結合を排除する最小限の数の置換を同定するために、S426、M428、H433およびN434からなる4つのアミノ酸の位置の群を対で調べ、いくつかの場合においては異なるアミノ酸で置換した。以下の組み合わせを調製した:S426M/H433D(配列番号23)、M428G/N434A(配列番号24)、M428G/N434S(配列番号25)、M428L/N434A(配列番号26)およびM428L/N434S(配列番号27)。ホモ二量体Fcバリアントおよび対照Fc断片を、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図5から、M428GおよびN434A、またはM428GおよびN434S置換を有するホモ二量体Fc組み合わせ変異体だけが、プロテインGカラムとの結合の完全な排除を示し、ローディングステップ中に溶出されたことがわかる。ヒトIGHG1免疫グロブリンの血清半減期を延長することが当該技術において知られており、ここで示す置換の組み合わせM428L/N434S(Zale
vsky Jら、Nat Biotechnol、28(2):157〜159頁)は、プロテインG結合のいずれの低減も導かなかったことに触れておく価値がある(図5C)。
最後に、置換M428GおよびN434Aを、プロテインG結合の低減または排除に向かうそれらの個別の貢献の点で評価した。2つのホモ二量体Fcバリアント(一方のバリアントはM428G置換(配列番号28)を有し、他方のバリアントはN434A置換(配列番号29)を有する)を調製し、上記のようにアッセイした。驚くべきことに、M428G置換もN434A置換も、プロテインG結合の低減または排除を導かなかった(図6)。よって、これらの結果から、ホモ二量体Fc断片中でプロテインG結合の完全な排除を誘導するために、M428GおよびN434A置換の組み合わせが必要十分であると結論付けた。
プロテインAおよびプロテインGに対する結合部位はCH2−CH3ドメイン界面でオーバーラップするので、上記のFcバリアントを、プロテインA結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う捕捉−溶出精製モードにおいて試験した。結果を図7に示す。全てのバリアントがプロテインA結合を保持した。
プロテインAまたはGとの結合が低減されたかまたは結合しないホモ二量体Fc断片を有するホモ二量体免疫グロブリン中のプロテインAまたはGとの結合を低減または排除する変異
2.1 プロテインAとの結合が低減されたかまたは結合しないホモ二量体免疫グロブリン
ホモ二量体Fc断片中のプロテインA結合を排除する方法は、実施例1.1に示した。全長ホモ二量体免疫グロブリン中でのプロテインA排除法の使用を評価するために、混合IGHG1−IGHG3 Fcフォーマットに基づく抗HER2ホモ二量体免疫グロブリンを調製した。抗HER2ホモ二量体免疫グロブリンは、自然に存在する抗体と同様にフォーマットされ、上記のFc133断片と融合した抗HER2特異性を有するFAB断片(本明細書において抗HER2 FAB−Fc133と省略する;配列番号30の重鎖および配列番号31の軽鎖)から構成されていた。トランスフェクションの後に、抗HER2 FAB−Fc133ホモ二量体を、プロテインA結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図8Aに示すように、抗HER2 FAB−Fc133ホモ二量体は、市販のMabSelect SuRe(商標)プロテインAカラム(GE Healthcare Europe GmbH)とまだ結合した。Fc133バリアントはプロテインAと結合しないことが以前に示されているので、さらなる実験を行って、結合に対するFAB領域の貢献について調べた。
FAB定常ドメインの貢献を評価するために、上記の抗HER2ホモ二量体を、scFv単位が、15アミノ酸リンカーと融合した親の免疫グロブリン可変ドメインから構成される抗HER2 scFv−Fc分子として再フォーマットした(本明細書において抗HER2 scFv−Fc133と省略する;配列番号32の重鎖)。得られた抗HER2
scFv−Fc133ホモ二量体は、よって、親の抗HER2 FAB−Fc133ホモ二量体免疫グロブリンと同一であるが、CH1およびCK定常ドメインを欠いた。図8Bに示すように、scFv−Fc133ホモ二量体は、親の抗HER2ホモ二量体免疫グロブリンで観察されたことと同様に、プロテインA結合を示した。この知見により、抗HER2 FAB断片の可変ドメインが、ホモ二量体免疫グロブリンのFc部分中のプロテインA結合を排除する方法の有効性を妨げる原因であるという結論が導かれた。より重要なことには、ホモ二量体免疫グロブリンの可変ドメイン中のプロテインA結合は、プロテインA差次的精製技術に基づくヘテロ二量体免疫グロブリンの調製を妨げると結論付けた
プロテインAの5つ全てのドメインは、VH3可変ドメインサブクラス由来の可変重鎖ドメインと結合することが知られており(Jansson Bら、(1998)FEMS
Immunol.Med.Microbiol.、20(1):69〜78頁)、この特徴は、抗体分子全体のパパイン消化の後のVH3ベースのFAB断片の調製を妨げることが知られている(なぜなら、プロテインAがVH3ベースのFABおよびFc断片の両方と結合するからである)。ホモ二量体抗HER2免疫グロブリンまたはそのscFv−Fcバージョン中で見出される重鎖可変ドメインは、VH3−23サブクラスに属し、工学的に操作されたFc部分内にプロテインA結合部位を有さないにもかかわらず、これらのホモ二量体分子がなぜプロテインAと結合するかを説明した。
VH3ベースの免疫グロブリンまたはその断片は、生物工学産業にとって非常に重要である。VH3ベースの分子は、プロテインAと結合する能力がそれらの機能的プレスクリーニングを容易にするので、広く開発されており、よって、抗体発見のために用いられる多くの合成またはドナーベースのファージディスプレイライブラリーまたはトランスジェニック動物技術は、VH3ドメインサブクラスに基づく。さらに、VH3ベースの分子は、その他の既知の重鎖可変ドメインサブクラスよりも良好な発現および安定性のために、頻繁に選択される。VH3ベースのFAB断片と結合しない組換えバージョンのプロテインAが開発され、MabSelect SuRe(商標)の商品名の下でGE Healthcareにより市販されている。
MabSelect SuRe(商標)カラムを上で論じた2つのホモ二量体抗HER2免疫グロブリンのプロテインA結合の評価のためにここで用いたので、MabSelect SuRe(商標)カラムは、プロテインA差次的精製技術を用いる場合、少なくとも1つのVH3可変ドメインを有するヘテロ二量体免疫グロブリンの調製のために適切でないと結論付けた。なぜなら、Fc領域中にプロテインA結合を有さないホモ二量体種は、それらのVH3ドメインによりプロテインAとまだ結合するからである。
VH3ベースのホモ二量体免疫グロブリンまたはその断片を排除または低減する置換を調べるために、VH3ベースのFABバリアントをプロテインA結合についてアッセイする必要がある。MabSelect SuRe(商標)樹脂の種はVH3ドメインサブクラス結合を欠くことが知られているが、MabSelect(商標)として知られる別の市販のプロテインA樹脂は、VH3ドメインサブクラスと結合する(これもまたGE healthcareからである)ので、VH3ベースのFABバリアントをプロテインA結合について分析するために選択した。
MabSelect(商標)樹脂の使用は、VH3−23可変ドメインサブクラスのものであることが知られている以前に記載した親の抗HER2ホモ二量体免疫グロブリンに由来する組換え抗HER2 FAB断片(本明細書において抗HER2 FABと省略する;配列番号33の重鎖および配列番号31の軽鎖)を調製し、該断片を、MabSelect(商標)およびMabSelect SuRe(商標)カラムでアッセイすることにより確認した(VKサブクラスIに基づく軽鎖を有する、FAB断片は、まず、プロテインLクロマトグラフィーを用いて捕捉−溶出モードで精製した後に、プロテインA勾配クロマトグラフィーをMabSelect(商標)またはMabSelect SuRe(商標)カラムで行った、両方のカラムのプロトコールは、方法の項に記載したプロトコールに従った)。図8Cに示すように、VH3ベースの抗HER2 FABだけがMabSelect(商標)カラムと結合し、このことにより、単量体VH3ベースのFAB断片に少なくとも関する限り、そしてプロテインAとの結合がない工学的に操作されたFc領域を有するVH3ベースのホモ二量体免疫グロブリンについて以前に観察された結果と
さらに対照的に、MabSelect SuRe(商標)樹脂がVH3ベースのFAB断片との結合を欠くことが確認された。逆に、抗HER2 FABは、MabSelect(商標)カラムとの強い結合を示し、このことは、プロテインAと結合しないかまたは結合が低減されたVH3ベースのFABバリアントについてアッセイする可能性をもたらした。
VH3ベースのFAB断片中のプロテインA結合を排除するために、VH3ドメイン中の重要なプロテインA結合残基を、プロテインAのDドメインとの複合体中のヒトFAB断片の結晶構造(PDBコード:1DEE;www.pdb.org;Graille Mら、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(10):5399〜5404頁)から同定した。この分析は、合理的設計のための出発点として用い、ここでは、行った置換の性質が、ヒト起源のプロテインA結合VHサブクラスとプロテインA非結合VHサブクラスとの間の配列比較に基づいた。図9は、各ヒト重鎖可変ドメインサブクラスについての1つの代表的なフレームワークのアラインメントを示す。アミノ酸15位、17位、19位、57位、59位、64位、65位、66位、68位、70位、81位、82a位および82b位(Kabatナンバリング)を、1DEE構造中のプロテインAのDドメインとVH3ベースのFAB断片との間のタンパク質−タンパク質相互作用界面の一部として同定した。ヒトVHサブクラスのうち、VH3は、プロテインAと結合する唯一のサブクラスであり、その他のサブクラス中の等価なアミノ酸配列の位置の残基を、おそらく免疫原性を低減しながらプロテインA結合を排除または低減する観点で、置換の供給源として選択した。なぜならこれらの置換は、プロテインA非結合ヒトVHサブクラス中で見出される同じ等価なアミノ酸の位置でのある残基の、別の自然に存在する残基への置き換えを含んでいたからである。
上記の抗HER2 FAB断片配列中に、標準的なPCRベースの突然変異誘発技術により変異を導入し、以下の置換を作製した:G65S(配列番号34の重鎖および配列番号31の軽鎖)、R66Q(配列番号35の重鎖および配列番号31の軽鎖)、T68V(配列番号36の重鎖および配列番号31の軽鎖)、Q81E(配列番号37の重鎖および配列番号31の軽鎖)、N82aS(配列番号38の重鎖および配列番号31の軽鎖)および組み合わせR19G/T57A/Y59A(配列番号39の重鎖および配列番号31の軽鎖)。
さらに、T57A置換(配列番号40の重鎖および配列番号31の軽鎖)およびT57E置換(配列番号41の重鎖および配列番号31の軽鎖)を作製した。T57Aは、WO2010/075548においてプロテインA結合を排除することが以前に示され、T57Eは、電荷交換(正荷電アミノ酸から負荷電アミノ酸への変更)を工学的に作製するために設計した。VKサブファミリーIに基づく軽鎖を有するので、FAB変異体を、まず、プロテインLクロマトグラフィーを用いて捕捉−溶出モードで精製し、さらに、プロテインA結合について、方法の項に記載したように勾配モードの下で操作するMabSelect(商標)カラムを用いてアッセイした。図10は、T57A、T57E、G65S、Q81E、N82aSおよび組み合わせR19G/T57A/Y59Aだけが、MAbSelect(商標)樹脂との抗HER2 FAB結合を排除または低減したことを示す。置換G65S、Q81EおよびN82aSは、VH3ベースのFAB断片中のプロテインA結合を排除する場合に好ましい。なぜなら、これらの変異は、プロテインA非結合VHサブクラスで見出される配列等価残基について置換することにより、おそらく免疫原性を低減するからである。
抗体の親和性および特異性は、CDR領域に本質的に限定されるが、フレームワーク置換は、いくつかのヒト化抗体の場合に示されるように、抗体特性に影響を与えることがある。上記の置換がVH3由来抗体の特異性および/または親和性に影響を与えるかを評価
するために、好ましいFAB変異体のうち2つを、表面プラズモン共鳴(SPR)によりHER2抗原結合についてアッセイした。組換えHER2抗原を用いるSPR測定を、方法の項に記載したように行った。好ましい変異体はともに、元のFAB分子と比較して同一のHER2抗原との結合を示し(図11)、このことは、置換が特異性または親和性の点で影響を与えなかったことを証明した。よって、抗原結合を著しく失うことなくVH3由来抗体分子中のプロテインA結合を工学的に操作するために、これらの置換を広く用いることができることが期待される。
これらの好ましい置換のうちの2つを、以前に記載した抗HER2ホモ二量体免疫グロブリンおよび抗HER2 scFv−Fc分子に導入し、バリアントを、MabSelect SuRe(商標)樹脂との結合についてアッセイした。以下のバリアントを調製した:抗HER2 scFv(G65S)−Fc133(配列番号42の重鎖)、抗HER2 scFv(N82aS)−Fc133(配列番号43の重鎖)、抗HER2 FAB(G65S)−Fc133(配列番号44の重鎖および配列番号31の軽鎖)、および抗HER2 FAB(N82aS)−Fc133(配列番号45の重鎖および配列番号31の軽鎖)。
図12は、4つ全ての変異体についてのMabSelect SuRe(商標)クロマトグラフィーのプロファイルを示す。全てのバリアントは、ここで、MabSelect
SuRe(商標)カラムとの結合の低減または結合がほとんどないことを示し、以前に同定した置換を用いてプロテインA結合がうまく除去されたことを示した。より重要なことには、プロテインA差次的精製技術と組み合わせた場合に、プロテインAに対するVH3ベースのFABの親和性を排除または低減する置換は、少なくとも1つのVH3可変ドメインが存在するヘテロ二量体免疫グロブリンの調製を可能にすると結論付けた。
上記のバリアントは、方法の項に記載したプロトコールに従う捕捉−溶出精製モードでプロテインG結合について試験した。結果を図13に示す。全てのバリアントは、プロテインG結合を保持した。
2.2プロテインGとの結合が低減されたかまたは結合しないホモ二量体免疫グロブリン
ホモ二量体Fc断片中のプロテインG結合を排除する方法は、実施例1.2に示した。全長ホモ二量体免疫グロブリン中のプロテインG排除法の使用を評価するために、Fc M428G/N434A断片に基づく抗HER3ホモ二量体免疫グロブリンを調製した。抗HER3ホモ二量体免疫グロブリンは、自然に存在する抗体と同様にフォーマットされ、上記のFc M428G/N434A断片と融合した抗HER3特異性を有するFAB断片(本明細書において抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aと省略する、配列番号46の重鎖および配列番号47の軽鎖)から構成されていた。トランスフェクションの後に、抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aホモ二量体を、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図14に示すように、抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aホモ二量体は、市販のプロテインG HPカラム(GE Healthcare
Europe GmbH)とまだ結合した。Fc M428G/N434A断片はプロテインGと結合しないことが以前に示されているので、結合に対するFAB領域の貢献が疑われた。このような貢献は、ホモ二量体免疫グロブリンのFc部分中のプロテインG結合を排除する方法の有効性を妨げ、より重要なことには、この新しい差次的精製技術に基づくヘテロ二量体免疫グロブリンの調製を妨げる。
全てのヒト免疫グロブリンガンマアイソタイプ由来のFAB断片は、CH1ドメイン内でプロテインGと結合することが知られている(Nezlin RおよびGhetie V、(2004)Advances in Immunology、Academic
Press、Vol.82:155〜215頁)。ヒト免疫グロブリンアイソタイプのうち、IGHA1、IGHA2およびIGHMを起源とするCH1ドメインは、プロテインGと結合しないことが知られている(Bjorck LおよびKronvall G、既出)。ガンマアイソタイプ由来のCH1ドメインと、IGHA1またはIGHA2またはIGHM由来のCH1ドメインとの間のアミノ酸配列の違いは、ガンマアイソタイプ由来のCH1ドメイン中のプロテインG結合を低減または排除しながら、おそらく低い免疫原性を有する置換の合理的設計を可能にする。図15は、IGHG1由来のヒトCH1ドメインと、ヒトIGHA1およびヒトIGHM由来のCH1ドメイン配列とのIMGT配列アラインメントを示す(IMGT(登録商標)、既出)。IMGT(登録商標)番号付けは、免疫グロブリンスーパーファミリードメインの3D構造の比較解析に基づくので、これは、CH1ドメイン間の3D等価位置を規定する。よって、IGHG1のCH1ドメイン内のプロテインG結合を低減または排除する置換を、図15に示す配列アラインメントから選択した。どの3D位置を置換するかを選択するための別のインプットは、複合体中のマウスFAB断片およびプロテインGの第3ドメインの結晶構造の解析であった(PDBコード1IGC、www.pdb.org、既出;Derrick JPおよびWigley DB、(1994)J.Mol.Biol.、243:906〜918頁)。CH1ドメイン結晶構造内の2つのベータ鎖(ストランドA(EU番号付け122から136)およびストランドG(EU番号付け212から215)、図15)およびループ構造(FGループ(EU番号付け201から211)、図15)は、ほとんどのタンパク質−タンパク質相互作用を媒介するように見受けられ、工学的作業の焦点となった。
ヒトIGHA1またはIGHM由来置換の使用を評価するために、以下の変異体を、上記の抗HER3 FAB−Fc M428G/N434Aホモ二量体免疫グロブリンの背景で調製した:IGHG1由来のCH1ドメイン全体がIGHA1由来のCH1ドメイン全体で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHA1)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号48の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1由来のCH1ドメイン全体がIGHM由来のCH1ドメイン全体で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHM)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号49の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1 CH1ドメインストランドA、ストランドGおよび一部のFGループ配列が、IGHA1 CH1ドメインストランドA、ストランドGおよび一部のFGループ配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHA1−A−FG/G)−Fc M428G/N434Aと省略する、配列番号50の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1 CH1ドメインストランドA、ストランドGおよび一部のFGループ配列がIGHM CH1ドメインストランドA、ストランドGおよび一部のFGループ配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHM−A−FG/G)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号51の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1 CH1ドメインストランドA配列がIGHA1 CH1ドメインストランドA配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHA1−A)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号52の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列がIGHA1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号53の重鎖および配列番号47の軽鎖)、IGHG1 CH1ドメインストランドA配列がIGHM CH1ドメインストランドA配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IGHM−A)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号54の重鎖および配列番号47の軽鎖)、ならびにIGHG1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列がIGHM CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列で置き換えられたバリアント(本明細書において抗HER3 FAB(IG
HM−FG/G)−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号55の重鎖および配列番号47の軽鎖)。トランスフェクションの後に、抗HER3 FAB−Fcバリアントを、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図16および図17は、それぞれIGHA1およびIGHMベースのバリアントについてのプロテインG結合プロファイルを示す。これらの結果から、IGHG1由来のCH1ドメイン配列全体をIGHA1またはIGHMのいずれか由来のCH1ドメイン配列全体で置き換えることにより、ガンマFABベースのホモ二量体免疫グロブリン(ここで、Fc領域も、プロテインGと結合しないかまたは結合が低減している)中のプロテインG結合の完全な排除が可能になると結論付けた。さらに、単一鎖交換による排除が、IGHA1またはIGHM由来のストランドGをFGループの一部とともに用いた場合にのみ成功したが、ストランドAでの置き換えは、プロテインG結合にほとんどまたは全く影響を与えなかったことがわかった。
ガンマアイソタイプFAB断片中のプロテインG結合を排除する最小限の数の置換を同定するために、CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列の分析に由来するさらなる置換を調べた。以下の置換の対を試験した:T209P/K210S(FGループ)、K213V/K214T(ストランドG)、T209G/K210N(FGループ)およびD212E/K214N(ストランドG)(EU番号付け;IMGT115位、116位、118位、119位および120位にそれぞれ相当するEU209位、210位、212位、213位および214位)。最初の2つの組み合わせは、IGHA1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列に対するIGHG1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列の分析に由来し、置換の他の2対は、IGHM CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列に対するIGHG1 CH1ドメインストランドGおよび一部のFGループ配列の解析に由来した。バリアントは、上記のようにフォーマットされ、以下のように記載できる:配列番号56の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(T209G/K210N)−Fc M428G/N434A、配列番号57の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(T209P/K210S)−Fc M428G/N434A、配列番号58の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(D212E/K214N)−Fc M428G/N434A、ならびに配列番号59の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(K213V/K214T)−Fc M428G/N434A。
ホモ二量体免疫グロブリンバリアントを、次いで、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図18は、IGHA1由来置換についての勾配クロマトグラフィープロファイルを示し、T209P/K210SおよびK213V/K214T置換はともに、プロテインG結合を完全に排除できた。IGHMベースの置換の場合、T209G/K210N置換だけがプロテインG結合の完全な排除を導き、D212E/K214N置換は、プロテインG結合に影響を与えなかった(図19)。これらの結果から、置換T209P/K210S、K213V/K214TおよびT209G/K210N(EU番号付け)は、ガンマアイソタイプFABベースのホモ二量体免疫グロブリン(ここで、Fc領域も、プロテインGと結合しないかまたは結合が低減している)中のプロテインG結合を排除できると結論付けた。より重要なことには、ガンマアイソタイプFABとプロテインGとの結合を排除または低減する置換は、実施例1.2に記載するプロテインG差次的精製技術と組み合わせた場合に、少なくとも1つのCH1ドメインが存在するヘテロ二量体免疫グロブリンの調製を可能にする。
上記のバリアントを、プロテインA結合について、捕捉−溶出精製モードで試験した。結果を図20に示す。全てのバリアントは、プロテインA結合を保持した。
ガンマアイソタイプ由来のCH1ドメイン配列はアミノ酸209位および210位にて不変であるので、本明細書で示す209位および210位の置換は、全てのガンマアイソタイプCH1ドメイン中のCH1ドメインとプロテインGとの結合を排除できると期待される。2つの位置のうち、209位は、CH1−プロテインG相互作用において主な役割を演じると期待される。PDBsumオンラインツール(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/、Laskowski RAら、(1997)Trends Biochem.Sci.、22(12):488〜490頁)を用いる1IGC中の水素結合ネットワークの分析は、T209の側鎖とプロテインG由来のアミノ酸側鎖(残基T21、1IGCの配列に従う番号付け)との間の重要な水素結合相互作用を明らかにした。K210も、プロテインG由来のアミノ酸(E20、1IGCの配列に従う番号付け)との間に水素結合相互作用することが示されたが、この相互作用は主鎖原子のみに関与するので、アミノ酸置換により破壊されにくいと期待される。
K213位は、ガンマアイソタイプ間で保存されているが、IGHG1中のK214は、IGHG3およびIGHG4中のR214に相当する(これは、保存的アミノ酸変化である。なぜなら、正電荷がこの位置で維持されるからである)。IGHG2中で、214位はトレオニンであり、よって、非保存的変化である。K213V/K214T置換はプロテインGとIGHG1 CH1ドメインとの結合を排除したので(本明細書で示すとおり)、213位の置換は、全てのガンマアイソタイプ中のプロテインG結合を排除するために十分であると期待される。209位と同様に、K213の側鎖も、プロテインG由来のアミノ酸側鎖(残基T16、1IGCの配列に従う番号付け)との重要な水素結合相互作用を媒介するが、K210と同様に、K214は、プロテインG由来のアミノ酸(K15およびT16、1IGCの配列に従う番号付け)と、主鎖原子が関与する水素結合相互作用だけを行い、この相互作用は、よって、アミノ酸置換により破壊されにくいと期待される。
ガンマアイソタイプ由来のFAB断片内のプロテインG結合を排除する単一置換を同定するために、以下の単一置換を調べた:T209P、K213V(ともにIGHA1由来置換)およびT209G(IGHM由来置換)。
バリアントは、上記のようにフォーマットされ、以下のように記載できる:配列番号75の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(T209P)−Fc M428G/N434A、配列番号76の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(K213V)−Fc M428G/N434A、ならびに配列番号77の重鎖および配列番号47の軽鎖を有する抗HER3 FAB(T209G)−Fc M428G/N434A。
図18Cおよび18Dは、IGHA1由来置換についての勾配クロマトグラフィープロファイルを示し、T209PおよびK213V置換はともに、プロテインG結合を完全に排除できた。IGHMベースの置換の場合、T209Gは、プロテインG結合の完全な排除を導いた(図18E)。これらの結果から、置換T209P、K213VおよびT209G(EU番号付け)は、ホモ二量体免疫グロブリン(ここで、Fc領域も、プロテインGと結合しないかまたは結合が低減している)内のガンマアイソタイプ由来のFAB断片中のプロテインG結合を排除できると結論付けた。より重要なことには、実施例1.2に記載するプロテインG差次的精製技術と組み合わせた場合に、プロテインGとのFAB結合を排除または低減する置換は、少なくとも1つのCH1ドメインを有するヘテロ二量体免疫グロブリンの調製を可能にする。
上記の置換が得られた抗体中の抗原特異性および/または親和性に影響を与えるかを評
価するために、上記の3つ全てのCH1単一変異抗体を、HER3抗原結合についてSPRによりアッセイした。組換えHER3抗原についての測定は、方法の項において記載したように行った。3つ全ての変異体は、対照抗体と比較して同一の抗原結合を示し(図18F)、このことは、置換が特異性または親和性の点で影響を与えなかったことを証明した。よって、抗原結合を著しく失うことなくガンマアイソタイプ由来のFAB断片内のプロテインG結合を工学的に操作するために、これらの置換を広く用いることができることが期待される。
プロテインAおよび/またはGについての差次的精製を有するヘテロ二量体免疫グロブリンの精製。
ホモ二量体免疫グロブリン中のプロテインAまたはプロテインG結合を排除または低減する方法は、実施例1および2に示した。これらの方法は、それら自体または組み合わせでのヘテロ二量体免疫グロブリンの精製を可能にするために開発した。
それら自体で用いる場合、これらの方法はともに、一方の重鎖が他方の重鎖と比較した場合にプロテインAまたはGとの結合が低減されているかまたは結合しない重鎖のヘテロ二量体の分離を可能にするために、勾配モードクロマトグラフィーを必要とする。組み合わせで用いる場合、これらの方法は、2回の捕捉−溶出クロマトグラフィーステップ(順序は特に限定されないが、一方はプロテインAに対して、そして他方はプロテインGに対して)を連続して行うことにより重鎖のヘテロ二量体の調製のために簡便に用いることができる。両方の技術を包含するヘテロ二量体免疫グロブリンは、プロテインAと結合できるがプロテインGとの結合が低減されたかまたは結合しない1つの重鎖と、それと対になった、プロテインGと結合できるがプロテインAとの結合が低減されたかまたは結合しない別の重鎖とから構成される。対象のヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、そのホモ二量体種(プロテインAと結合しないかまたはプロテインGと結合しない2種の可能性のあるホモ二量体種)の両方に対して差次的精製特性を有する。
重要なことには、これら2つの方法の組み合わせだけが、捕捉−溶出モードでのヘテロ二量体免疫グロブリンの均質な調製を可能にする。なぜなら、各親和性ステップにて、2種のホモ二量体免疫グロブリン混入物の一方(なぜなら、これは親和性樹脂と結合しないからである)が、勾配モードクロマトグラフィーを使用することなく効率的に除去されるからである。このことは、特に興味深い。なぜなら、捕捉−溶出モードクロマトグラフィーは、工業的規模の調製にとって好ましいからである。よって、これら2つの技術と、プロテインAクロマトグラフィーとその後のプロテインGクロマトグラフィー(またはその逆)との逐次的使用との組み合わせにより、いずれの形の勾配クロマトグラフィーも行う必要なく捕捉−溶出モードで、最高の純度(95%を超える、より好ましくは98%を超える)のヘテロ二量体免疫グロブリンの調製が可能になる。
3.1 プロテインAについての差次的精製を有するヘテロ二量体免疫グロブリン
ヘテロ二量体免疫グロブリンの調製のためのプロテインA排除法の使用を評価するために、混合IGHG1−IGHG3 Fcフォーマットに基づく抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンを調製した。
重鎖のヘテロ二量体に基づくヘテロ二量体免疫グロブリンを作製する場合、自然に存在する重鎖は同一の分子量を有するので、SDS−PAGE分析によりホモ二量体からヘテロ二量体を同定することは不可能である。その結果、SDS−PAGEの移動度に差を持たせ、ヘテロ二量体形成の同定を容易にするために、一方の重鎖がFAB断片を保有し、他方の重鎖がscFv断片を保有するscFv−FABフォーマットを用いた。
抗HER3重鎖は、実施例2に記載したようにフォーマットされ、上記のFc133断片と融合した抗HER3特異性を有するFAB断片(本明細書において抗HER3 FAB−Fc133と省略する;配列番号60の重鎖および配列番号47の軽鎖)から構成されていた。重要なことには、抗HER3 FAB−Fc133重鎖中で見出される可変重鎖ドメインは、VHサブクラス2に属し、プロテインAと結合しない。抗HER2重鎖は、実施例2に記載したようにフォーマットされ、自然に存在するIGHG1アイソタイプ由来のFc部分を有する抗HER2 scFv−Fc重鎖(本明細書において抗HER2
scFv−Fc IGHG1と省略する;配列番号61の重鎖)から構成されていた。重要なことには、抗HER2 scFv−Fc重鎖中で見出される可変重鎖ドメインは、VHサブクラス3(VH3)に属し、プロテインAと結合する。
抗HER3 FAB−Fc133重鎖と抗HER2 scFv−Fc IGHG1重鎖との共有結合により得られる抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインAとの結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER3 FAB−Fc133重鎖は、そのFc領域中でプロテインA結合が排除され、その可変重鎖ドメイン中にプロテインA結合部位が存在しない)と、プロテインAに対する2つの結合部位を有する1つの重鎖(抗HER2 scFv−Fc IGHG1重鎖は、IGHG1 Fc領域中で見出される自然のプロテインA結合部位を有し、VH3ドメイン中に存在する第2プロテインA結合部位を有する)とを有すると期待された。この特定の重鎖組み合わせは、合計で2つのプロテインA結合部位を有する対象の抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンとともに、2つのホモ二量体免疫グロブリン種(一方はプロテインAに対する結合部位を有さず、第2の種は、合計で4つを有する)の生成をもたらす。ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインA結合部位の数が異なることにより、以下に示すように、3つ全ての分子を勾配クロマトグラフィーにより効率的に分離することが可能になる。
生成の後に、3つ全ての種を含有する細胞培養上清を、プロテインA結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図21に示すように、3つ全ての種は、プロテインA勾配クロマトグラフィーにより分離され、結合部位を有さない種はMabSelect SuRe(商標)プロテインAカラムと結合しなかったが、対象のヘテロ二量体免疫グロブリンは、最大数のプロテインA結合部位を有するホモ二量体種の前に溶出された。
この直前の実施例は、1つのVH3ドメインだけが存在する重鎖のヘテロ二量体を精製するためにプロテインA排除法を実行する場合、VH3ドメインがプロテインAと結合しかつFc領域において改変されていない重鎖の一部となるように工学的に操作されている場合にのみ、ヘテロ二量体精製が成功できることを示す。
各重鎖が1つのVH3ドメインを保有する重鎖のヘテロ二量体を扱う場合、実施例2.1に示す置換を用いて少なくとも1つのVH3ドメインまたは両方においてプロテインA結合を変異させることにより、この差次的精製技術の基礎であるプロテインA結合部位不均衡を保存できる。
3.2 プロテインGについての差次的精製を有するヘテロ二量体免疫グロブリン
ヘテロ二量体免疫グロブリンの調製のためのプロテインG排除法の使用を評価するために、ホモ二量体Fc断片中のプロテインG結合を排除する最小限の数の置換に基づく抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンを調製した。実施例3.1と同様に、scFv−FABフォーマットを用いて、SDS−PAGE移動度の差を作製し、ヘテロ二量体同定を容易にした。
抗HER2重鎖は、実施例2に記載したようにフォーマットされ、実施例2.1で用い
た抗HER2 scFvと上記のFc M428G/N434A断片とから構成されたscFv−Fc型の重鎖(本明細書において抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aと省略する;配列番号62の重鎖)に相当した。
抗HER3重鎖は、実施例2に記載したようにフォーマットされ、自然に存在するIGHG1 Fc断片と融合した抗HER3特異性を有するFAB断片(本明細書において抗HER3 FAB−Fc IGHG1と省略する;配列番号63の重鎖および配列番号47の軽鎖)から構成されていた。
抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖と抗HER3 FAB−Fc IGHG1重鎖との共有結合により得られる抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインGに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aは、そのFc部分中でプロテインG結合が排除され、scFvフォーマット中にさらなるプロテインG結合部位は存在せず、すなわちCH1ドメインは存在しない)と、プロテインGに対する2つの結合部位を有する1つの重鎖(抗HER3 FAB−Fc IGHG1重鎖は、IGHG 1Fc領域中で見出される自然のプロテインG結合部位を有し、そのCH1ドメイン中に存在する第2プロテインG結合部位を有する)とを有すると期待された。この特定の重鎖組み合わせは、合計で2つのプロテインG結合部位を有する対象の抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンとともに、2つのホモ二量体免疫グロブリン種(一方はプロテインGに対する結合部位を有さず、第2の種は、合計で4つを有する)の生成をもたらす。ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインG結合部位の数が異なることにより、3つ全ての分子を勾配クロマトグラフィーにより効率的に分離することが可能になる。生成の後に、3つ全ての種を含有する細胞培養上清を、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図22に示すように、3つ全ての種は分離され、結合部位を有さない種はプロテインG HPカラムと結合しなかったが、対象のヘテロ二量体免疫グロブリンは、最大数のプロテインG結合部位を有するホモ二量体種の前に溶出された。
上記の実験では、ヘテロ二量体免疫グロブリンの精製のためのプロテインG排除法の使用は、プロテインG結合を排除する置換を保有する重鎖がCH1ドメインを有さないフォーマットに限定される。なぜなら、FABフォーマットを用いることは、不要なホモ二量体種のプロテインG結合を本質的に回復するからである。FAB断片のCH1ドメイン中のプロテインG結合部位を排除することにより、Fc領域中のプロテインG結合を排除する置換を保有する重鎖内にFAB断片が存在するヘテロ二量体免疫グロブリンを調製できる。この例を以下に示す。
直前の実験と同様に、抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンを、scFv−FABフォーマットを用いて調製して、SDS−PAGE移動度の差を作製し、ヘテロ二量体同定を容易にした。
抗HER2重鎖は、実施例3.1に記載した抗HER2 scFv−Fc IGHG1重鎖(配列番号61の重鎖)であった。抗HER3重鎖は、実施例2.2に記載した抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖(配列番号53の重鎖および配列番号47の軽鎖)であった。
抗HER2 scFv−Fc IGHG1重鎖と抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖との共有結合により得られる抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインGに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N
434A重鎖は、そのFc領域およびCH1ドメインの両方においてプロテインG結合が排除されている)と、プロテインGに対する結合部位を1つだけ有する1つの重鎖(抗HER2 scFv−Fc IGHG1重鎖は、IGHG1Fc領域中で見出される自然のプロテインG結合部位を有し、scFvフォーマット中にさらなるプロテインG結合部位は存在せず、すなわちCH1ドメインは存在しない)とを有すると期待された。この特定の重鎖組み合わせは、1つだけのプロテインG結合部位を有する対象の抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンとともに、2つのホモ二量体免疫グロブリン種(一方はプロテインGに対する結合部位を有さず、第2の種は、合計で2つを有する)の生成をもたらす。ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインG結合部位の数が異なることにより、3つ全ての分子を勾配クロマトグラフィーにより効率的に分離することが可能になる。生成の後に、3つ全ての種を含有する細胞培養上清を、プロテインG結合について、方法の項に記載したプロトコールに従う勾配クロマトグラフィーによりアッセイした。図23に示すように、3つ全ての種は分離され、結合部位を有さない種はプロテインG HPカラムと結合しなかったが、対象のヘテロ二量体免疫グロブリンは、最大数のプロテインG結合部位を有するホモ二量体種の前に溶出された。
3.3 プロテインAおよびプロテインGについての差次的精製を有するヘテロ二量体免疫グロブリン
プロテインAまたはプロテインGでのヘテロ二量体免疫グロブリンの差次的精製の方法を、逐次的様式で組み合わせて、捕捉−溶出モードで、すなわちいずれの形の勾配クロマトグラフィーも行う必要なくヘテロ二量体免疫グロブリンを容易に精製できる。2つの例を以下に示す。
実施例3.1および3.2と同様に、抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンを、scFv−FABフォーマットを用いて調製して、SDS−PAGE移動度の差を作製し、ヘテロ二量体同定を容易にした。抗HER2重鎖は、実施例3.2に記載した抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖(配列番号62の重鎖)であった。抗HER3重鎖は、実施例3.1に記載した抗HER3 FAB−Fc133重鎖(配列番号60の重鎖および配列番号47の軽鎖)であった。
抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖と抗HER3 FAB−Fc133重鎖との共有結合により得られる抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインGに対する2つの結合部位を有するがプロテインAに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER3 FAB−Fc133重鎖は、そのFc領域中でプロテインA結合が排除され、その可変ドメインはVH2サブクラスに属するのでプロテインAと結合せず、さらに、2つのプロテインG結合部位(一方はそのFc部分中に、他方はそのCH1ドメイン中)が存在する)と、プロテインAに対する2つの結合部位を有するがプロテインGに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖は、そのFc領域中でプロテインG結合が排除され、scFvフォーマット中にさらなるプロテインG結合部位は存在せず、すなわちCH1ドメインは存在しない;2つのプロテインA結合部位(一方はそのFc部分中に、他方はそのVHドメイン中)も存在する(なぜなら後者はVH3サブクラスに属するからである)とを有すると期待された。他方、2種のホモ二量体免疫グロブリンの一方は、プロテインGに対する結合部位を有さず、プロテインAに対する4つの結合部位を有する(抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖のホモ二量体)が、他方のホモ二量体免疫グロブリン種は、プロテインAに対する結合部位を有さず、プロテインGに対する4つの結合部位を有する(抗HER3 FAB−Fc133重鎖のホモ二量体)。
ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインGおよびA結合部位の数が異なることにより、3つ全ての分子を、プロテインAでの捕捉−溶出クロマトグラフィーステップ
とその後のプロテインGでの第2捕捉−溶出クロマトグラフィーステップを用いて効率的に分離することが可能になる。
生成の後に、3つ全ての種を含有する細胞培養上清を、一連の2つの捕捉−溶出クロマトグラフィーステップ、すなわちまずプロテインAおよび次いでプロテインG(ともに方法の項に記載したプロトコールに従う)により精製した。図24に示すように、3つ全ての種は分離された。各精製ステップにて、捕捉−溶出モードで、ホモ二量体免疫グロブリン種のうち一方は、親和性樹脂と結合しないので、効率的に除去された。非還元SDS−ポリアクリルアミド(4〜12%)ゲルバンドの走査デンシトメトリー分析により、精製された調製物中でヘテロ二量体の割合を評価することが可能である。FluorChem
SPイメージングシステム(Witec AG、Littau、Switzerland)および製造者により提供されるプロトコールを用いて、対象のヘテロ二量体免疫グロブリンが、均質に>99%の純度で精製されたことがわかった(図24C)。
最終の実施例では、プロテインAおよびG差次的精製法の例を、VH3ドメイン中のプロテインA結合を排除する補完的方法およびCH1ドメイン中のプロテインG結合を排除する補完的方法と組み合わせた。
直前の実施例と同様に、抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンを、scFv−FABフォーマットを用いて調製して、SDS−PAGE移動度の差を作製し、ヘテロ二量体同定を容易にした。抗HER2重鎖は、実施例2.1に記載した抗HER2 scFv(G65S)−Fc133重鎖(配列番号42の重鎖)であった。抗HER3重鎖は、実施例2.2に記載した抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖(配列番号53の重鎖および配列番号47の軽鎖)であった。
抗HER2 scFv(G65S)−Fc133重鎖と抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖との共有結合により得られる抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインGに対する1つの結合部位を有するがプロテインAに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER2 scFv(G65S)−Fc133重鎖は、そのFc領域およびVH3ドメイン中でプロテインA結合が排除され、さらに、そのFc領域中に1つのプロテインG結合部位が存在するが、scFvフォーマット中にさらなるプロテインG結合部位は存在せず、すなわちCH1ドメインは存在しない)と、プロテインAに対する1つの結合部位を有するがプロテインGに対する結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖は、そのFc領域およびCH1ドメイン中でプロテインG結合が排除され、そのFc部分中に1つのプロテインA結合部位が存在し、その可変ドメインは、VH2サブクラスに属するのでプロテインAと結合しない)とを有すると期待された。他方、2種のホモ二量体免疫グロブリンの一方は、プロテインGに対する結合部位を有さず、プロテインAに対する2つの結合部位を有する(抗HER3 FAB(IGHA1−FG/G)−Fc M428G/N434A重鎖のホモ二量体)が、他方のホモ二量体免疫グロブリン種は、プロテインAに対する結合部位を有さず、プロテインGに対する2つの結合部位を有する(抗HER2 scFv(G65S)−Fc133重鎖のホモ二量体)。
ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインGおよびA結合部位の数が異なることにより、3つ全ての分子を、プロテインAでの捕捉−溶出クロマトグラフィーステップとその後のプロテインGでの第2捕捉−溶出クロマトグラフィーステップを用いて効率的に分離することが可能になる。
生成の後に、3つ全ての種を含有する細胞培養上清を、一連の2つの捕捉−溶出クロマ
トグラフィーステップ、すなわちまずプロテインAおよび次いでプロテインG(ともに方法の項に記載したプロトコールに従う)により精製した。図25に示すように、3つ全ての種は分離された。各精製ステップにて、捕捉−溶出モードで、ホモ二量体免疫グロブリン種のうち一方は、親和性樹脂と結合しないので、効率的に除去された。非還元SDS−ポリアクリルアミド(4〜12%)ゲルバンドの走査デンシトメトリー分析により、精製された調製物中でヘテロ二量体の割合を評価することが可能である。FluorChem
SPイメージングシステム(Witec AG、Littau、Switzerland)および製造者により提供されるプロトコールを用いて、対象のヘテロ二量体免疫グロブリンが、均質に>99%の純度で精製されたことがわかった(図25C)。
この直前の実施例は、VH3ドメイン中のプロテインA結合を排除する補完的方法と、CH1ドメイン中のプロテインG結合を排除する補完的方法とを用いて、ヘテロ二量体免疫グロブリン内のプロテインAおよびG部位の数を調整できることを示す。これらの補完的技術を用いて、よって、差次的精製を可能にする結合部位の数を最小限に減らして、そのことにより、より穏やかな溶出条件を用いることが可能になる。これは、ヘテロ二量体の全体的な回収の点で有利であると期待される特徴である。
プロテインAおよびG排除変異の表面プラズモン共鳴分析
4.1 ヒト新生児Fc受容体との結合
新生児Fc受容体との結合は、分解から免疫グロブリンを保護し、それらの半減期を増加させる。よって、プロテインAまたはGとの結合を排除または低減するFc領域中で作製した置換が新生児受容体との結合を破壊しないことが必須である。
本明細書で用いる置換がヒトFcRn結合に与える影響を評価するために、SPR実験をホモ二量体免疫グロブリンに対して行った。工学的に操作されたFc領域を保有する一方の工学的に操作された重鎖と、1つの未改変のFc領域を保有する他方の重鎖とを有する重鎖のヘテロ二量体は、SPR実験において用いることができない。なぜなら、未改変の重鎖由来の結合シグナルが、工学的に操作された重鎖に導入された可能性があるいずれの負の影響も埋め合わせる可能性があるからである。
ホモ二量体免疫グロブリンは、全て、PCTパンフレットWO10/095031に開示されるヒト化抗ヒトCD19抗体を起源とする同じ可変重鎖と可変軽鎖ドメインを用いてフォーマットした。
SPR測定を行う場合、二価分子、例えばホモ二量体免疫グロブリンをセンサチップ上に固定化することが最良である。二価分子を分析物として用いるならば、SPR測定は、親和性に加えてアビディティー成分を有する。ソフトウェア分析は、二価の結合化をモデル化し、親和性定数を抽出できるが、可能である場合はいつでも一価分析物を用いて作業することにより、いずれのアビディティーの偏りも回避することが常に好ましい。この目的に沿うために、各ホモ二量体免疫グロブリンを、CM5センサチップ上に直接結合させた。ベータ2−ミクログロブリンタンパク質と非共有的に結合したアルファ鎖から構成されるヒトFcRnの可溶型の細胞外領域を調製し、分析物として用いた。
ヒトFcRn生成およびSPR測定の実験手順の詳細は、方法の項で見出すことができる。
重要なことには、全てのバリアントは、pH6.0にて結合を示し、pH依存性放出を保持した。ヒトFcRnに対するこれらの親和性および相対的親和性をそれぞれ図26および27に示し、SPRセンサグラムの例を図28に示す。
図26は、プロテインAまたはプロテインG排除に基づく方法において用いた置換についてのKD値を示す。未改変のIGHG1対照免疫グロブリンは、約2000nMのKDを有したが、これは、天然ヒトIGHG1抗体とヒトFcRnとの結合について以前に報告されたKD値と一致する値である(1700〜2500nM、Zalevsky Jら、(2010)Nat.Biotechnol.、28(2):157〜159)。プロテインA排除法において用いた全てのIGHG1−IGHG3ベースの置換は、より上の範囲または天然ヒトIGHG1抗体とヒトFcRnとの結合について観察される値よりも高いKD値を有した(抗hCD19 FAB−Fc133、抗hCD19 FAB−Fc113および抗hCD19 FAB−Fc H435R/Y436F)。この観察は、未改変のIGHG1対照免疫グロブリンのものに対する相対的結合の点で種々のバリアントの結合を表した場合に、明白であった(図27)。最小限の置換の対H435R/Y436Fを含むプロテインA法で用いた置換は、天然ヒトIGHG1対照について観察された結合の73から77%だけを保持したが、プロテインG法において用いた最小限の置換の対は、93%の保持を達成した(M428G/N434A)。これらの測定から、プロテインGでの差次的精製の方法が、ヒトFcRn結合を維持しながらヘテロ二量体免疫グロブリンを精製するために最も効率的な方法であると結論付けることができる。驚くべきことに、置換N434Aは、M428G置換の負の影響を埋め合わせることがわかった(相対的比率がそれぞれ3.13および0.45)。
4.2 ヒトFcガンマ受容体3aとの結合
hFcγR3aに対する抗体親和性は、抗体のFc領域に限定される。Fc工学操作研究は、Fc置換がhFcγR3aと結合し、かつ抗体依存性細胞傷害(ADCC)のようなエフェクター機能を誘発する抗体の能力に大きい影響を与えることができることを示している(Strohl WRら(2009)Curr Opin Biotechnol.、20(6):685〜91頁)。
置換M428GおよびN434AがhFcγR3a親和性に影響を与えたかを評価するために、ホモ二量体抗HER3 FAB−Fc M428G/N434A抗体およびアイソタイプ対照抗体(ホモ二量体抗hCD19 FAB−Fc IGHG1抗体)を、hFcγR3a結合について、SPRによりアッセイした。組換えhFcγR3aについての測定を行い、結果を図29に示す。両方の抗体は、KD値が近く、このことは、置換が特異性または親和性の点で影響を与えなかったことを証明した。よって、hFcγR3a結合を著しく失うことなくガンマアイソタイプFc領域内のプロテインG結合を工学的に操作するために、置換M428GおよびN434Aを広く用いることができることが期待される。
プロテインAおよびG排除置換の免疫原性予測
多くの認可済みキメラ、ヒト化および完全ヒト抗体は、著しい抗薬物抗体応答をヒトにおいて誘導する。中和抗薬物抗体は、薬物−標的相互作用に干渉して、有効性の減少をもたらす。いくつかの場合では、抗薬物抗体は、免疫複合体の形成により毒性を導くことがある。コンピュータモデルおよびin vitro T細胞シミュレーション試験を開発して、CD4+ T細胞エピトープを予測した。
プロテインAおよびプロテインG排除変異の予測される免疫原性を、LonzaのEpibaseプラットフォーム(商標)(Lonza、Applied Protein Services、Cambridge、UK)を用いて調べた。免疫原性を予測するための構造的バイオインフォーマティクスアプローチであるEpibase(商標)v.3技術を用いて、標的アミノ酸配列中の可能性のあるT細胞エピトープを探索した。この技
術は、HLA受容体とのペプチドの実験的に得られる結合親和性とともに、HLA受容体の最新の3D構造の特徴を統合する。実際上、このin−silico法は、アミノ酸配列を10アミノ酸の長さのペプチド(10マー)に切断し、43のDRB1アロタイプ由来のHLAクラスII受容体とのその結合強度の量の見積を算出する。ヒト抗体生殖系列アミノ酸配列に相当する自己ペプチドは、分析から除外される。
IgG Fc領域中のプロテインG結合を排除する置換M428GおよびN434AならびにVH3ドメインサブクラス中のプロテインA結合を排除する置換N82aSについての免疫原性予測を調べた。
Fc IGHG1領域と融合した実施例2.1で言及した抗HER2 scFv断片のアミノ酸配列(配列番号61)を対照配列として用い、さらに改変して、Epibaseのためのさらに2つのインプット配列を設計した:置換M428GおよびN434Aを有する第2アミノ酸配列ならびに置換N82aSを有する第3アミノ酸配列。
置換M428GおよびN434Aを包含するように作製した16のin−silicoペプチドのうち、1つのペプチドだけが、DRB1*15およびDRB1*16についての強いエピトープであると見られ(LHAHYTQKSL(配列番号99))、その他のDRB1アロタイプは、この特定のペプチドと中程度の結合を示したかまたは全く結合を示さなかった。16のうち2つのペプチドが、いくつかのDRB1アロタイプに対する中程度の親和性を有すると予測された。
置換N82aSを包含するように作製したペプチドは、強いDRB1結合を示さなかった。さらに、強く結合すると予測された対照配列由来の1つのペプチドだけが、置換N82aSを導入した場合に中程度の親和性で結合した。これらの結果を図30にまとめ、参照抗体としてのLonzaから提供されるその他の治療用抗体と比較する。
IgG FAB領域中のプロテインG結合を排除する置換T209G、T209PおよびK213Vについての免疫原性予測を調べた。これらの置換はEpibaseを用いて直接試験せず、代わりに、無作為化分析を行って、それらの免疫原性能力を評価した。この分析では、Epibaseは、全ての可能性のある置換について相対的スコアを与える。スコアが高いほど、この置換について予測される結合がより強い。全体的なDRB1スコアは、重要なエピトープカウント、影響されるアロタイプの数、および影響されるアロタイプの頻度を考慮に入れる。ここで、置換は、CH1 IGHG1の関係において分析した(図31)。好ましい置換K213Vは、他の2つのアミノ酸置換と比較して非常に低い免疫原性能力を示した。209位の置換は、より高いスコアを与えたが、非常に低い免疫原性の危険性をまだ示した。
全体的に、本実施例で用いた全ての置換は、ヒト治療において現在用いられているヒトまたはヒト化抗体と比較して、低い免疫原性能力を示した。
プロテインAおよびG排除置換の熱安定性分析
ヒトIgGサブクラスについての融解プロファイルは、知られており(Garber EおよびDemarest SJ(2007)Biochem.Biophys.Res.Commun.、355(3):751〜7頁)、全てのプロファイルは、CH2、CH3およびFAB領域の独立したアンフォールディングに相当する3つのアンフォールディング推移を含むことが示されている。4つのヒトIgGサブクラスのうち、IGHG1は最も安定なCH3ドメイン(約85℃)を有する。その他のIgGサブクラス由来のCH3ドメインは、安定性がより低いが、生理的条件下で約70℃未満で融解するものは知
られていない。同様に、全てのサブクラスは、約70℃の融解温度を有するCH2ドメインを有することが知られている。
6.1 プロテインG排除置換の熱安定性分析
図32は、置換M428GおよびN434Aを有するヒトホモ二量体Fc領域(γ1ヒンジ領域とγ1 CH2ドメインとγ1 CH3ドメインとを包含する鎖の二量体)、ならびに非置換対照Fc領域の融解プロファイルを示す。61.6℃のTmを有する第1推移は、CH2ドメインの融解を表すが、79.1℃のTmを有する第2推移は、CH3ドメインの融解を表す。これらの2つの推移は、対照Fc領域について観察される2つの推移とよく対照する。これらの結果から、置換M428GおよびN434Aは、熱安定性の点で与える影響が小さいと結論付けた。なぜなら、CH2およびCH3ドメインは、それぞれ5.9℃および5.2℃の熱安定性を失ったからである。
置換M428GおよびN434Aの影響を、ホモ二量体免疫グロブリンの関係においても調べた。実施例2.2の置換M428GおよびN434Aを有する抗HER3ホモ二量体免疫グロブリンの融解プロファイルを、図33Aに示す。このプロファイルは、同じ置換を有するホモ二量体Fc領域について得られたプロファイルと比較して、82℃のTmを有するさらなる第3の推移を示す(図32)。このさらなる推移は、FAB領域の融解を表すが、その他の2つの推移は、上記のようにCH2およびCH3ドメインの融解を表す。65℃のTmを有する第1の推移は、CH2ドメインの融解を表し、79℃のTmを有する第2の推移は、CH3ドメインの融解を表す。この結果から、置換M428GおよびN434Aも、ホモ二量体免疫グロブリン内で熱安定性に与える影響が小さいと結論付けた。なぜなら、CH2およびCH3ドメインは、図34Aに示す抗hCD19抗体のような非置換の等価な免疫グロブリンの融解プロファイルと比較して、それぞれ6.1℃および4℃の熱安定性を失ったからである。
最後に、ガンマアイソタイプ由来のFAB断片内のプロテインG結合を排除する置換T209G、T209PおよびK213Vの影響も、ホモ二量体免疫グロブリンの関係において調べた。実施例2.2のFc置換M428GおよびN434Aと組み合わせて置換T209GまたはT209PまたはK213Vを有する抗HER3ホモ二量体免疫グロブリンの融解プロファイルを、図33Aおよび33Bに示す。これらのプロファイルは、FAB熱安定性が、置換T209GおよびK213V(それぞれ−3.6℃および−3.4℃)によってわずかに影響されただけであったが、置換T209Pは、最大の影響を有し、消失が10.8℃であったことを示す。置換T209GおよびK213Vは、よって、免疫グロブリンを置換してFAB領域内でプロテインG結合を排除する場合に好ましい。
6.2 プロテインAとの結合が低減されたかまたは結合しないホモ二量体免疫グロブリンの熱安定性分析
Fc領域中のプロテインA結合を低減または排除するガンマアイソタイプCH2およびCH3ドメインの異なる組み合わせの熱安定性を、ホモ二量体免疫グロブリンフォーマットの関係において調べた。実施例4で論じた抗hCD19ホモ二量体免疫グロブリンの融解プロファイルを図34に示す。これらのプロファイルは、2つの推移を示し、第1の推移は、CH2ドメインの融解を表し(約70℃)、第2の推移は、FAB領域の融解を表し、これは、CH3ドメインの融解について期待される推移(約82℃)とオーバーラップする。これらの結果から、ドメインの組み合わせFc113およびFc133(ここで、数字は、ヒンジ/CH2/CH3の順序での各ドメインの免疫グロブリンガンマアイソタイプサブクラスに対応する)ならびにそれらのIGHG1対照(図34A)は、ほぼ同一の融解プロファイルを有し(−0.8から−2.1℃の差)、よって、これらのドメインの組み合わせは、ホモ二量体免疫グロブリンフォーマット内で熱安定性の点でわずかな影響だけを有したと結論付けた。
プロテインG排除置換の薬物動態分析
ヘテロ二量体抗HER2/HER2抗体および関連するホモ二量体抗HER2対照抗体の薬物動態を調べた。
抗HER2/HER2ヘテロ二量体免疫グロブリンは、実施例3.2の抗HER2/HER3ヘテロ二量体免疫グロブリンについて記載したように構築および精製し、抗HER2 scFv−Fc M428G/N434A重鎖(配列番号62)と抗HER2 FAB−Fc IGHG1重鎖(配列番号78の重鎖および配列番号31の軽鎖)との共有結合により得られた。ヘテロ二量体免疫グロブリンは、よって、プロテインGとの結合部位を有さない1つの重鎖(抗HER2 scFv−Fc M428G/N434Aは、そのFc部分中でプロテインG結合が排除され、scFvフォーマット中にさらなるプロテインG結合部位は存在しない、すなわちCH1ドメインは存在しない)と、プロテインGに対する2つの結合部位を有する1つの重鎖(抗HER2 FAB−Fc IGHG1重鎖は、IGHG1 Fc領域中で見出される自然のプロテインG結合部位を有し、そのCH1ドメイン中に存在する第2プロテインG結合部位を有する)とを有すると期待された。重要なことには、この特定の重鎖組み合わせは、1つの特異性、すなわちHER2に対する特異性だけを有するヘテロ二量体免疫グロブリンの生成をもたらした。
ホモ二量体抗HER2対照抗体は、2コピーの抗HER2 FAB−Fc IGHG1重鎖(配列番号78の重鎖および配列番号31の軽鎖)の共有的集合から得られ、トラスツズマブとして知られる市販の抗HER2抗体と同一であった(rhuMAbHER2、huMAB4D5−8、商品名Herceptin(登録商標);米国特許第5,821,337号)。
HER2に対する特異性だけを有する一方の重鎖中のプロテインG結合が排除されたこのヘテロ二量体免疫グロブリンを設計して、薬物動態分析において、同じ特異性を有するホモ二量体免疫グロブリンと直接比較ができるようにした。同じ特異性を有することにより、ヘテロ二量体免疫グロブリンと関連するホモ二量体免疫グロブリン対照とは、同様のレベルの標的に関連する分解を有すると期待された。
薬物動態測定(図35)は、ヘテロおよびホモ二量体抗体について、近い血清半減期を示した。ヘテロ二量体免疫グロブリンは、およそ194±15時間(約8日)の血清半減期を有したのに比較して、対照ホモ二量体免疫グロブリンについて249±58時間(約10日)であった(図36)。
プロテインA置換の機能分析
HER3は、乳癌および卵巣癌を含む様々なヒトのがんの腫瘍発生に関与する(Hsieh ACおよびMoasser MM(2007)Br J Cancer、97:453〜457頁;Baselga JおよびSwain SM(2009)Nat Rev Cancer、9(7):463〜75頁)。いくつかの抗HER3抗体が記載され、いくつかは、ヒト臨床試験で調べられている(MM−121抗体(Merrimack
Pharmaceuticals Inc.、PCTパンフレットWO08/100624)およびU3−1287またはAMG−888(U3 PharmaAG/Daiichi Sankyo/Amgen、PCTパンフレットWO07/077028)。
HER3および別のがん抗原を標的にする二重特異性抗体は、従来のもの、すなわち「一重特異性」抗HER3抗体よりも大きい治療的影響を有する可能性がある。腫瘍学にお
けるある特に魅力的な標的の組み合わせは、2つのHERファミリーメンバーを同時に標的にすることである。増殖因子受容体のHERファミリーのうち、EGFRおよびHER3、またはHER2およびHER3を、二重特異性抗体を用いて同時に標的にすることについて、記載されている(Schaefer Gら(2011)Cancer Cell、20(4):472〜86頁;McDonagh CFら(2012)Mol Cancer Ther.、11(3):582〜93頁)。
HER3およびHER2抗原は、腫瘍学における2つの好ましい標的であるので、HER2およびHER3を同時に標的にする重鎖のヘテロ二量体を、本発明のプロテインA差次的精製技術を用いて生成することについて調べた。重鎖ヘテロ二量体形成を改善するために、HER2およびHER3を同時に標的にするヘテロ二量体免疫グロブリンもBEAT(登録商標)技術を使用した。
BEAT抗体は、「穴へのノブのあてはめ」法よりも優れたヘテロ二量体形成を示す生体模倣の独特の概念に基づく重鎖ヘテロ二量体である(PCTパンフレットWO12/131555 Blein Sら)。BEATプラットフォームは、二重特異性抗体を設計するための基礎単位として用いることができる新しいヘテロ二量体を創出するための、自然に存在するホモまたはヘテロ二量体免疫グロブリンドメイン対間の界面交換に基づく。この技術は、任意のタイプの抗原結合の土台に基づく二重特異性抗体の設計を可能にする。scFv−FABフォーマットをここで用いて、抗原結合部位に対する共通軽鎖を開発する必要なく二重特異性抗体を設計する。
実施例2および3に記載した抗HER3抗体由来の可変重鎖および軽鎖ドメインは、PCTパンフレットWO07/077028(Rothe Mら)において最初に報告された。この可変重鎖ドメインは、VH2サブクラスに属するのでプロテインAと結合しないので、VH3サブクラスに基づく別の抗HER3抗体を開発して、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンを開発する場合のVH3ドメイン中のプロテインA排除の有用性を証明した。
この目的のために、scFv−ファージディスプレイライブラリーを、方法の項に記載したようにスクリーニングした。ある好ましいscFv断片は、高い熱安定性を示し、親和性成熟のためにさらに選択した(配列番号79)。ファージディスプレイを用いて抗体を親和性成熟させる技術は、知られている(Benhar I(2007)Expert
Opin Biol Ther.、7(5):763〜79頁)。多様性は、scFv遺伝子配列内に、CDR−H1(Kabat残基:31および32)およびCDR−H2(Kabat残基:52、53、56および58)中の同時のNNK多様化により導入し、全てのその他のCDRは一定に保った。得られた親和性成熟ライブラリーは、2.5×10e7の多様性を有し、ビオチン化抗原およびストレプトアビジン捕捉を用いる3回の選択を行ったが、ここでは漸減量の抗原とともに非ビオチン化抗原との競合を用いた。1つの好ましい親和性成熟scFv断片(配列番号80、配列番号81のVHドメイン、配列番号82のVLドメイン)は、HER3に対してナノモル以下の親和性を有し(SPRにより測定、データは示さず)、二重特異性ヘテロ二量体免疫グロブリンにフォーマットするためにさらに選択した。
この親和性成熟scFv断片は、VH3サブクラスに基づいたので、置換N82aS(Kabatナンバリング、配列番号83)を用いてプロテインA結合をまず排除し、次いで、FAB断片にフォーマットした(本明細書において抗HER3 FAB(N82aS)と省略する)。配列番号84の重鎖および配列番号85の軽鎖を有する、得られた抗HER3 FAB(N82aS)断片を、次いで、実施例2.1に記載した抗HER2ホモ二量体免疫グロブリン由来の上記の抗HER2 scFv断片を有する二重特異性BEA
T抗体の設計に用いた。
BEAT抗体は重鎖ヘテロ二量体であるので、2つの異なる重鎖を区別する必要がある。これらは、本明細書において、BTA鎖およびBTB鎖という。BTAおよびBTB鎖は、本明細書で用いる場合、抗原結合部位と、ヒトIgG1ヒンジ領域と、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプを起源とするCH2ドメインと、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプを起源とする改変CH3ドメインとを包含する。BTAおよびBTB鎖は、適当であれば、プロテインAおよび/またはG結合を非対称的に排除できる。
BEAT抗体の抗HER3部分は、上記の抗HER3 FAB(N82aS)断片と、CH1γ1領域と、γ1ヒンジ領域と、γ3 CH2領域と、γ3ベースのBTA CH3ドメインとを包含した(配列番号85を有する同族軽鎖と集合した配列番号86の完全重鎖配列、本明細書において抗HER3 FAB(N82aS)−BTA IGHG3重鎖という)。γ3ベースのBTA CH3ドメインは、WO12/131555、既出に配列番号75(CH3−BTアルファIGHG3ドメイン)として記載されている。
ヘテロ2量体免疫グロブリンの抗ヒトHER2部分は、上記の抗HER2 scFv断片と、CH1γ1領域と、γ1ヒンジ領域と、γ1 CH2領域と、γ1ベースのBTB
CH3ドメインとを包含した(配列番号87の完全重鎖配列、本明細書において抗HER2 scFv−BTB IGHG1重鎖という)。γ1ベースのBTB CH3ドメインは、WO12/131555、既出に配列番号14(置換F405Aを有するCH3−BTベータドメイン)として記載されている。
これらの2つの重鎖(その同族軽鎖と集合したもの)の集合により得られるヘテロ二量体免疫グロブリンは、本明細書においてBEAT HER2/HER3という。
まとめると、本明細書に記載するBEAT HER2/HER3は、抗HER3 FAB(N82aS)−BTA IGHG3重鎖と抗HER2 scFv−BTB IGHG1重鎖との共有結合により得られ、よって、プロテインAに対する結合部位がない1つの重鎖(抗HER3 FAB(N82aS)−BTA IGHG3重鎖は、そのFc領域中でプロテインA結合が排除され、その可変重鎖ドメイン中に存在するプロテインA結合部位は、置換N82aSを用いて排除されている)と、プロテインAに対する2つの結合部位を有する1つの重鎖(抗HER2 scFv−BTB IGHG1重鎖は、IGHG1
Fc領域中で見出される自然のプロテインA結合部位を有し、そのVH3ドメイン中に存在する第2プロテインA結合部位を有した)とを有すると期待された。この特定の重鎖組み合わせは、合計で2つのプロテインA結合部位を有する対象のBEAT HER2/HER3とともに、2つのホモ二量体免疫グロブリン種(一方はプロテインAに対する結合部位を有さず、第2の種は、合計で4つを有する)の生成をもたらした。
ヘテロ二量体種とホモ二量体種との間でプロテインA結合部位の数が異なることにより、3つ全ての分子を図37に示すようにプロテインA勾配クロマトグラフィーにより効率的に分離することが可能になった(実施例3に記載したものと同じ方法)。
BEAT HER2/HER3が、肺癌株化細胞Calu−3のヘレグリン誘発増殖を阻害できるかを決定するために、増殖アッセイの阻害を、方法の項に記載したように行った。図38Aは、BEAT HER2/HER3が、用量依存的様式で、抗HER2および抗HER3対照抗体(それぞれトラスツズマブおよびWO07/077028、既出に記載される上記の抗HER3、データは示さず)またはそれらの組み合わせよりも大きい程度でヘレグリン誘発細胞増殖を阻害したことを証明する。さらに、BEAT HER2/HER3は、WO10/108127、既出に記載されるDL11f抗体、抗EGFR
および抗HER3二重特異性抗体よりも大きい程度でヘレグリン誘発細胞増殖を阻害した(図38BおよびC)。

Claims (1)

  1. 免疫グロブリンまたはその断片であって、
    エピトープ結合領域と免疫グロブリン定常領域とを含むポリペプチドを含
    免疫グロブリン定常領域が、免疫グロブリンまたはその断片とプロテインGとの結合を低減させるまたは喪失させる改変を含み、
    前記改変が、252A/380A/382A/436A/438A、254M/380M/382L/426M/428G、426M/428G/433D/434A、428G/434A、428G/434S(EUナンバリングシステム)からなる群から選択されるアミノ酸置換である、
    免疫グロブリンまたはその断片。
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