以下に添付図面を参照して、この発明にかかるカウンタ回路を備える電子時計の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(電子時計の外観)
図1は、この発明にかかる実施の形態の電子時計の外観の一例を示す説明図である。図1において、腕時計型の電子時計は、本体100と、本体100をたとえば腕に装着するためのバンド101とから構成される。本体100の外周には、りゅうず102および複数の操作ボタン103(103a、103b、103c)を備えている。
本体100の表示部分には、通常時刻を示す通常指針(時針104、分針105、秒針106)とを備える。通常指針は、時針104が時周期で回転、すなわち12時間で1回転(1周)する。分針105が分周期で回転、すなわち60分で1回転(1周)する。秒針106が秒周期で回転、すなわち60秒で1回転(1周)するこれらの指針(時針104、分針105、秒針106)によって通常時刻を表示する。
また、本体100の表示部分には、通常指針のほかに、クロノグラフ用の12時間積算計(12時間計)107、クロノグラフ用の60分積算計(60分計)108、クロノグラフ用の1/10秒および1/100秒計(1/10秒、1/100秒計)109、クロノグラフ用の1/1000秒計(1/1000秒計)110をそれぞれ備えている。秒針106は、通常時刻を表示するとともに、クロノグラフ用の1秒計としても機能する。
12時間計107は、12時間針111を備え、12時間針111が12時間で1周する。また、60分計108は、60分針112を備え、60分針112が60分で1周する。1/10秒、1/100秒計109は、1/10秒の桁を表示する短針113と1/100秒の桁を表示する長針114とから構成される。
1/10秒、1/100秒計109は、1/10秒の桁と1/100秒の桁を同時に表示する。短針113が、内側の目盛り(「.0」〜「.9」)を指し示し、スタートと同時に回転を開始し、0.1秒ごとに10分割された1目盛り分だけ回転し、1秒間で1回転(1周)するとともに、ストップによっていずれかの目盛りで停止することで、1/10秒の桁を表示する。また、長針114が、外側の目盛り(「.00」〜「.09」)を指し示し、スタートと同時に回転を開始し、0.1秒間で1回転(1周)するとともに、ストップによっていずれかの目盛りで停止することで、1/100秒の桁を表示する。
1/10秒、1/100秒計109の短針113および長針114は、電池の節約のため、スタートから所定時間(たとえば30秒)が経過すると自動的に停止するように構成してもよい。その場合は、短針113および長針114は、ストップが検知された場合に、計測された所定の目盛りまで時計回り(または反時計回り)により移動する。
1/1000秒計110は、10個の目盛りと数字(「.000」、「2(.002を示している)」、「4(.004を示している)」、「6(.006を示している)」、「8(.008を示している)」と、1/1000秒指針115と、から構成される。1/1000秒指針115が、目盛りの間を移動し、いずれかの目盛りにおいて停止することで、1/1000秒の桁を表示する。1/1000秒指針115は、通常、「.000」の位置で停止しており、スタートと同時には回動せず、ストップを検知した場合に計測された所定の目盛りまで反時計回りにより移動して停止する。
また、リスタートを検知した場合には、1/1000秒指針115はそのまま移動せず、再びストップを検知した場合、計測された所定の目盛りまで反時計回りまたは時計回りにより移動して停止する。1/1000秒指針115は、リスタート/ストップを繰り返す間、同様の動作を繰り返す。そして、リセットされると再び「.000」の位置まで、時計回りで移動して停止する。
通常時刻を表示中に、操作ボタン(モード変更ボタン)103cが押下されるなどの操作によって、クロノグラフモードに設定されると、秒針106が12時の位置に高速に移動するとともに、12時間計107の12時間針111が12時の位置(「12」の数字の位置)へ、60分計108の60分針112が12時の位置(「60」の数字の位置)へ、1/10秒、1/100秒計109の短針113が12時の位置(「.0」の位置)」へ、長針114が12時の位置(「.00」の位置)へ、高速で移動する。1/1000秒計110の1/1000秒指針115は、元々「.000」の位置にあるので、移動はしない。
クロノグラフモードに設定されている状態において、操作ボタン103aが押下されるなどの操作がおこなわれるとクロノグラフ機能を動作させ、操作ボタン103aが押下されるごとに、秒以下までの時間の計測のスタート(またはリスタート)とストップを繰り返す。秒針106、12時間針111、60分針112、短針113および長針114を時計機能と同一のモータの駆動力によって動作させ、これらの針を自由に動かして止めることにより、1/1000秒の桁までの計時結果を表示することが可能なクロノグラフ機能を実現することができる。
図1では、12時間計107の12時間針111が「5(時間)」を示し、60分計108の60分針112が「50(分)」を示し、秒針106が「38秒」を示している。また、1/10秒、1/100秒計109の短針113が1/10秒、1/100秒計109内側の数字の「.2」を示すとともに、長針114が1/10秒、1/100秒計109の外側の数字の「.01」を示しており、1/1000秒計110の1/1000秒指針115が「.004」を示している。このことから、計時結果は、「5時間50分38.214秒」であることがわかる。
クロノグラフモードでの計時にかかる、クロノグラフ用の12時間積算計(12時間計)107、60分積算計(60分計)108、1/10秒および1/100秒計(1/10秒、1/100秒計)109、1/1000秒計110、および、秒針106によって実現されるクロノグラフ用のカウント値(クロノカウント値)は、電子時計100が備えるカウンタ回路によってカウントされる。以下に実施の形態1のカウンタ回路について説明する。
<実施の形態1>
(実施の形態1のカウンタ回路の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態1のカウンタ回路の構成について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態1のカウンタ回路の構成を示す説明図である。
図2において、実施の形態1のカウンタ回路200は、メインカウンタ201と、クロノスイッチ202と、クロノカウンタ203と、緩急付与回路204と、を備えており、クロノグラフ機能を実現する。図2においては、発振回路から出力される基準信号の源発振周波数(源信)が、8kHz、すなわち、1/16000秒のH/Lカウンタを用いる例を示している。
メインカウンタ201は、複数段の第1分周器205を備えており、この発明にかかる第1カウンタ回路を実現する。複数段の第1分周器205は、直列に接続されており、それぞれ、入力される信号の周波数を1/nに分周して出力する。第1分周器205は、たとえば、フリップフロップなどの論理回路によって構成することができる。
この実施の形態1において、第1分周器205は、入力される信号の周波数を1/2(周期を2倍)に分周して出力する。メインカウンタ201は、発振回路から出力される基準信号を複数段の第1分周器205によって順次分周することにより、時刻系の報知に用いられる時刻用分周信号を生成する。メインカウンタ201は、時刻用分周信号に基づいて時刻カウント値をカウントする。
具体的に、1段目すなわち最前段の第1分周器205(以下、適宜「メインF1」という)には、発振回路から出力される周期が1/16000秒の基準信号が入力される。メインF1は、入力される周期が1/16000秒の信号の周期を1/8000秒に分周して出力する。2段目の第1分周器205(以下、適宜「メインF2」という)は、メインF1から出力される周期が1/8000秒の信号の周期を1/4000秒に分周して、3段目の第1分周器205(以下、適宜「メインF3」という)に出力する。
以下、同様に、メインF3は入力される信号の周期を1/2000秒に分周し、4段目の第1分周器205(以下、適宜「メインF4」という)は入力される信号の周期を1/1000秒に分周し、5段目の第1分周器205(以下、適宜「メインF5」という)は入力される信号の周期を1/500秒に分周する。6段目以降の第1分周器205(以下、適宜「メインF6」、「メインF7」、・・・という)も同様に、入力される信号の周期を2倍に分周する。
クロノスイッチ202は、クロノカウンタ203のON/OFF状態を切り替える。クロノスイッチ202は、たとえば、クロノグラフモードに設定されている状態において、操作ボタン103aが押下されるなどの操作がおこなわれるごとに、クロノカウンタ203のON/OFF状態を切り替える。また、クロノスイッチ202は、クロノグラフモードに設定されている状態において、操作ボタン103bが押下されるなどの操作がおこなわれた場合にクロノカウンタ203をリセット状態にする。
クロノカウンタ203は、クロノスイッチ202がON状態になるとカウント動作を開始し、クロノスイッチ202がOFF状態になるとカウント動作を停止する。また、クロノカウンタ203は、リセット信号が供給されると、カウント動作を停止するとともに、カウンタをリセットして計測時間を初期化する。また、クロノカウンタ203は、時計仕様の上限値(最大計測時間)に達するまで連続してカウント動作を続ける。クロノカウンタ203は、計測時間が最大計測時間に達した場合、計測実行状態から計測停止状態もしくはリセット状態になる。
クロノカウンタ203は、複数段の第2分周器206を備えており、この発明にかかる第2カウンタ回路を実現する。複数段の第2分周器206の分周比は、それぞれ、第1分周器205と等しい。複数段の第2分周器206は、直列に接続されており、それぞれ、入力される信号の周波数を1/2(周期を2倍)に分周して出力する。第2分周器206は、上記の第1分周器205と同様に、たとえば、フリップフロップなどの論理回路によって構成することができる。
クロノカウンタ203は、発振回路から出力される基準信号を複数段の第2分周器206によって順次分周することにより機能用分周信号を生成する。クロノカウンタ203は、生成した機能用分周信号に基づいて、クロノカウント値をカウントする。機能用分周信号は、メインカウンタ201が生成する時刻用分周信号よりも周期が短い。機能用分周信号は、複数段の第2分周器206(クロノF4、F5、F6、F7、F8、・・・)から出力される。
具体的に、1段目すなわち最前段の第2分周器206(以下、適宜「クロノF1」という)には、発振回路から出力される周期が1/16000秒の基準信号が入力される。クロノF1は、入力される周期1/16000秒の信号の周期を1/8000秒に分周して出力する。2段目の第2分周器206(以下、適宜「クロノF2」という)は、クロノF1から出力される周期が1/8000秒の信号の周期を1/4000秒に分周して、3段目の第2分周器206(以下、適宜「クロノF3」という)に出力する。
以下、同様に、クロノF3は入力される信号の周期を1/2000秒に分周し、4段目の第2分周器206(以下、適宜「クロノF4」という)は入力される信号の周期を1/1000秒に分周し、5段目の第2分周器206(以下、適宜「クロノF5」という)は入力される信号の周期を1/500秒に分周する。6段目以降の第2分周器206(以下、適宜「クロノF6」、「クロノF7」、・・・という)も同様に、入力される信号の周期を2倍に分周する。
図2においては、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203は、ともに、5段目の分周器F5までを示しているが、実際のカウンタ回路200においては、メインカウンタ201における第1分周器205およびクロノカウンタ203における第2分周器206は、いずれも、F6、F7、・・・と続く。メインカウンタ201における第1分周器205およびクロノカウンタ203における第2分周器206は、たとえば、15段(メインF15、クロノF15など)程度まで接続される。
緩急付与回路204は、DF調を実行するタイミングを示すDF調設定値を記憶するメモリを備えている。DF調は、メインカウンタ201における第1分周器205およびクロノカウンタ203における第2分周器206が生成する各分周信号のうち該当する分周信号を本来のタイミング以外に追加して変化させることにより、カウンタ全体の動きを前倒しさせる調整であって、DF調をおこなった場合、DF調をおこなった分周器の次段以降の分周器も連動して前倒しされる。
この実施の形態において、DF調には、カウンタ全体の動きを前倒しさせる調整の他、メインカウンタ201における第1分周器205およびクロノカウンタ203における第2分周器206が生成する各分周信号のうち該当する分周信号を出力する分周器にリセット信号を出力して出力信号をLにマスクし、本来の出力信号の変化をさせずに、カウンタ全体の動きを遅くする遅れDF調(間引き)も含む。遅れDF調をおこなった場合、遅れDF調をおこなった分周器の次段以降の分周器にはマスクした分の信号が消失して入力されないため全体が遅れる。
DF調設定値は、たとえば、各第1分周器205および各第2分周器206に対して論理緩急をおこなう周期やタイミング、緩急の頻度などによって定められる調整量、進みまたは遅れの調整方向などを指定する情報を含む。緩急付与回路204は、DF調設定値に基づいて、第1緩急信号出力回路207を介して、メインカウンタ201が備える複数段の第1分周器205のそれぞれに対応する緩急信号を出力する。
第1緩急信号出力回路207は、複数段の第1分周器205のそれぞれに対応して複数設けられており、緩急付与回路204から出力された緩急信号が、対応する第1分周器205に対して、たとえば「10秒ごと」などの所定の周期で入力されるよう、緩急信号の出力タイミングを調整する。これにより、各第1分周器205に対して10秒ごとにDF調をおこない、それぞれの第1分周器205が分周して出力する信号の周波数(分周周波数)を調整することができる。
各第1分周器205に対するDF調は、たとえば、メインカウンタ201が10秒をカウントする間の4.5秒のタイミングで10秒周期でおこなう。これにより、メインカウンタ201における各第1分周器205による分周周波数を調整することができる。なお、メインカウンタ201がカウントする10秒は、りゅうず102が2段引きの状態から押込まれる等により、メインカウンタ201がカウント動作を開始したタイミングが基準となる。
また、緩急付与回路204は、複数段の第2分周器206に含まれて機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206より前段に設けられた第2分周器206に対して、該第2分周器206が出力する信号のn倍(n=自然数)の周期の信号を出力する第1分周器205に出力する緩急信号を、n倍の頻度で出力する。
図2においては、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206はクロノF4、F5、F6、・・・であって、2段目以降の第2分周器206はクロノF5、F6、・・・である。また、図2においては、2段目以降の第2分周器206より前段に設けられた第2分周器206はクロノF1、F2、F3、F4である。
また、図2においては、第1分周器205および第2分周器206は分周比が等しく1/2であるため、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206であるクロノF5、F6、・・・より前段に設けられた第2分周器206がクロノF1、F2、F3、F4である場合、クロノF1、F2、F3、F4が出力する信号の1/2倍の周期の信号を出力する第1分周器205は、メインF2、F3、F4、F5である。
クロノグラフの表示(付加機能の動作)に用いられる複数段の第2分周器206における機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の分周器(クロノF5、F6、・・・)は、論理緩急をおこなう条件によって、クロノカウント値の桁飛びの原因となり得る。このため、換言すると、緩急付与回路204は、クロノカウント値の桁飛びの原因となり得る第2分周器206における機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206より前段に設けられた第2分周器206に対して緩急信号を出力する。緩急付与回路204は、該当する第2分周器206に対して、DF調設定値に基づき、第2緩急信号出力回路208を介して緩急信号を出力する。
実施の形態1の緩急付与回路204は、クロノグラフの表示(付加機能の動作)に用いられる複数段の第2分周器206(クロノF4、F5、F6、・・・)のうちの2段目以降の第2分周器206(クロノF5、F6、・・・)より前段に設けられた第2分周器206(クロノF1〜F4)に対して、それぞれ、クロノF1〜F4の2倍の周期の信号を出力する第1分周器205(メインF2〜F5)に出力する緩急信号を、メインF2〜F5へ出力する頻度の2倍の頻度で出力する。
これにより、クロノF1〜F4に対して、メインF2〜F5に出力する緩急信号に基づいて、メインF2〜F5に対してDF調をおこなう周期の2倍の周期でDF調をおこなうことができる。この実施の形態1において、クロノF1〜F4に対して、メインF2〜F5に対しておこなうDF調の10秒周期の2倍の頻度となる5秒周期でDF調をおこなう。
具体的には、クロノF4に対応する第2緩急信号出力回路208は、メインF5に対応する第1緩急信号出力回路207に対して出力される緩急信号が分岐して入力され、クロノF4に対して5秒ごとにDF調をおこなう。クロノF3に対応する第2緩急信号出力回路208は、メインF4に対応する第1緩急信号出力回路207に対して出力される緩急信号が分岐して入力され、クロノF3に対して5秒ごとにDF調をおこなう。
クロノF2に対応する第2緩急信号出力回路208は、メインF3に対応する第1緩急信号出力回路207に対して出力される緩急信号が分岐して入力され、クロノF2に対して5秒ごとにDF調をおこなう。クロノF1に対応する第2緩急信号出力回路208は、メインF2に対応する第1緩急信号出力回路207に対して出力される緩急信号が分岐して入力され、クロノF1に対して5秒ごとにDF調をおこなう。
これにより、第1分周器205におけるメインF5に対して1/500秒周期の出力信号が10秒ごとに調整される調整量と、第2分周器206におけるクロノF4に対して1/1000秒周期の出力信号が5秒ごとに調整される調整量とが等しくなる。第1分周器205におけるメインF2〜F4の出力信号の調整量と、第2分周器206におけるクロノF1〜F3の出力信号の調整量も同様に等しくなる。
すなわち、第1分周器205におけるメインF2〜F5の出力信号に対しておこなうDF調と同じ調整量の緩急を、クロノカウント値の桁飛びの原因とはならない第2分周器206におけるクロノF2〜F5を用いて付与することができる。
第2分周器206(クロノF1〜F4)に対して5秒ごとにDF調をおこなうことにより、メインカウンタ201における第1分周器205(メインF2〜F5)に対しておこなうDF調の2倍の周期でDF調をおこなって分周周波数を調整することができる。
また、緩急付与回路204は、出力する信号がn倍となる第1分周器205と第2分周器206とに対して、互いに異なるタイミングで緩急信号を出力する。具体的に、緩急付与回路204は、クロノF1〜F4に対して、それぞれ、メインF2〜F5に対する緩急信号の出力タイミングとは異なるタイミングで緩急信号を出力する。クロノF1〜F4に対して緩急信号を出力するタイミングは、たとえば、クロノカウンタ203が10秒をカウントする間の2.5秒および7.5秒のタイミングとする。
クロノF1〜F4に対するDF調を2.5秒および7.5秒のタイミングでおこなうことにより、メインカウンタ201における第1分周器205に対するDF調のタイミングとずらすことができる。これにより、クロノカウンタ203におけるカウント値の桁飛びを回避することができる。クロノカウンタ203にかかるDF調は、たとえば、クロノカウンタ203が10秒をカウントする間の4.5秒および9.5秒のタイミングで5秒周期でおこなってもよい。
クロノF1〜F4に対する緩急信号は、メインカウンタ201の出力信号のタイミングに基づいて付与することにより、メインカウンタ201の出力信号によって動作するマイコン(腕時計型の電子時計の動作を制御する制御部)が、容易にクロノグラフ用の各指針の駆動タイミング等を管理することができる。
クロノF1〜F4に対する緩急信号は、クロノカウンタ203のカウント値に基づいて出力することもできるが、その場合は、メインカウンタ201の出力信号によって動作するマイコンは、クロノF1〜F4に対する緩急信号の出力タイミングを把握できず、クロノF1〜F4に対する緩急信号の出力タイミングからずらして、クロノグラフ用の各指針の駆動を制御することが難しくなる。
(クロノカウンタ203のカウント方法)
つぎに、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント方法について説明する。図3は、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値を示す説明図である。
図3において、クロノF4〜クロノF7は、クロノグラフの1/1000秒の桁の値をあらわす信号を出力する。クロノF5〜F7は、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206に対応する。カウンタ回路200において、クロノF5にDF調をおこなわない場合、2進数にしたがったカウント値は、図3に示すように、クロノF4〜F7の波形に基づき、クロノF3が出力する分周周波数の周期に同期して、「0000」→「0001」→「0010」→「0011」→「0100」→・・・とカウントアップする。
これにより、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値は、クロノF3が出力する分周周波数の周期に同期して、「0」→「1」→「2」→「3」→「4」・・・・と、カウント値が飛ぶことなく1ずつカウントアップする。1/1000秒指針115は、ストップを検知した場合、ストップを検知した時点において計測されているカウント値に該当する目盛りまで回動して停止する。
(従来のカウンタ回路の構成)
ここで、従来のカウンタ回路の構成および当該カウンタ回路を用いた運針方法について説明する。図4は、従来のカウンタ回路の構成を示す説明図である。図4において、従来のカウンタ回路400は、複数段の第1分周器205を備えたメインカウンタ201と、複数段の第2分周器206を備えたクロノカウンタ203と、を備えている。各第1分周器205および各第2分周器206は、それぞれ、入力される信号の周波数を1/2に分周して出力する。
従来のカウンタ回路400は、DF調設定値を記憶するメモリを備えた緩急付与回路204から、同じ段数の第1分周器205および第2分周器206に対応して設けられた共通の緩急信号出力回路401を介して、緩急信号を出力する。従来のカウンタ回路400によれば、各段の第1分周器205および第2分周器206に対して共通の緩急信号出力回路401から緩急信号を出力しているため、各段の第1分周器205および第2分周器206に対して同じ周期(たとえば「10秒」)でDF調がおこなわれる。
従来のカウンタ回路400によってクロノカウンタ203による1/1000秒の桁をカウントする場合、1/1000秒の桁をカウントするクロノF4よりも分周周波数が低いクロノF5に対してDF調をおこなわない状態では、上記の図3と同様に、クロノF3が出力する分周周波数の周期に同期して、「0」→「1」→「2」→「3」→「4」・・・・と、カウント値が飛ぶことなく1ずつカウントアップする。
一方、従来のカウンタ回路400では、たとえば、クロノF5のように、クロノF4よりも分周周波数が低い第2分周器206に対してDF調をおこなうと、以下に示すように1/1000秒の桁のカウント値が飛んでしまうことがあった。以下に、従来のカウンタ回路400による問題点について説明する。
(従来のカウンタ回路400による問題点)
図5は、従来のカウンタ回路400においてDF調をおこなった場合の、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値を示す説明図である。図5においては、従来のカウンタ回路400におけるクロノF5に対してDF調をおこなった場合の、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値について示している。
図5において、クロノF5に対して、10秒周期でDF調をおこなった場合、クロノF5から出力される分周周波数がDF調をおこなったタイミングで変化する。具体的には、DF調をおこなうことにより、クロノF5の波形は、本来「H」レベルである位置において強制的に「L」レベルとされる。この場合、クロノF5から出力される分周周波数が、本来の位置とはタイミングがずれた位置において立ち下がるため、2進数のカウント値において、「1010」のつぎのカウント値であるカウント値「1011」が存在しなくなる。
1/1000秒の桁のカウント値「10」を示す2進数のカウント値「1010」のつぎのカウント値であるカウント値「1011」が存在しなくなると、2進数のカウント値「1011」が示す1/1000秒の桁のカウント値(10進数のカウント値)「11」を飛び越してカウントしてしまい(カウント値の飛びが発生し)、クロノカウンタ203における1/1000秒の桁のカウント値に「11」が存在しない状況が発生する。
このように、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206(たとえば、1/1000秒の桁のカウントにかかるクロノF4)よりも分周周波数が低い第2分周器206(たとえば、クロノF5)にDF調をおこなうことによって「11」のように存在しない値が生じる、すなわち、1/1000秒の桁のカウント値に追従して、1/1000秒指針115を駆動する場合には、カウント値の飛びが発生すると、アナログ時計においてクロノF3に同期してクロノF4の変化タイミングで1/1000秒指針115が運針する場合に運針回数が足りなくなってしまう。この結果、運針に際しての基準位置がずれて(クロノカウンタ203のカウント値に対し、1/1000秒指針115の位置がずれて)しまう。
なお、メインカウンタ201は、時刻系の表示に用いられ、1/1000秒のような短い周期の分周器205の出力信号に基づいて指針を駆動しないため、このようなカウント値の飛びが発生しない。
このようなカウント値の飛びが発生することによる不具合は、遅れDF調をおこなう場合にも同様に生じる。以下に、従来のカウンタ回路400において遅れDF調をおこなう場合のカウント値の飛びの発生について説明する。
図6は、従来のカウンタ回路400において遅れDF調をおこなった場合の、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値を示す説明図である。図6においては、従来のカウンタ回路400におけるクロノF5に対してDF調をおこなった場合の、クロノカウンタ203による1/1000秒の桁のカウント値について示している。
図6において、クロノF5に対して、5秒周期で遅れDF調をおこなった場合、クロノF5から出力される分周周波数が遅れDF調をおこなったタイミングで変化し、本来の信号に対して、マスクした分の信号が消失する。この場合、途中のビットが0に固定され、1/1000秒の桁のカウント値「4」および「5」を示す2進数のカウント値「0100」および「0101」が複数回生成されてしまい、1/1000秒の桁のカウント値に戻りが生じてしまう。
このようなカウント値の戻りが生じた場合、10進数のカウント値においては、「4」および「5」のように、同じカウント値が何度も繰り返して出現してしまうことになる。この「4」および「5」のような『繰り返す値』が生じると、アナログ時計においてF4の変化タイミング(クロノF4の出力信号が変化した直後のクロノF3の出力信号の立ち上がりタイミングに同期)で運針する場合には、運針回数だけが増えてしまう。この結果、運針に際しての基準位置がずれてしまう。
これに対し、この実施の形態のカウンタ回路は、メインF5に対して出力される緩急信号に基づいて、1/1000秒の桁をカウントするクロノF4に対してDF調をおこなう。上述したように、緩急付与回路204は、クロノF1〜F4に対して、それぞれ、メインカウンタ201における1段後段のメインF2〜F5に対して出力する緩急信号が、メインF2〜F5にDF調信号を入力する周期の2倍の周期で入力される。
(この発明にかかるクロノカウンタ203の動作と運針動作との関係)
つぎに、この発明にかかるクロノカウンタ203の動作と運針動作との関係について説明する。図7および図8は、この発明にかかるクロノカウンタ203の動作と運針動作との関係を示す説明図である。図7および図8においては、機能用分周信号のタイミングチャートと、クロノカウント値および運針状態との関係を示している。また、図7および図8においては、たとえばクロノF4の値が1/1000秒の桁に相当する場合のクロノF3〜F7の各分周波形の相関関係を示している。
この場合、クロノカウンタ203は、1/1000秒の桁のカウントを、クロノF4〜F7による分周信号に基づいておこなう。クロノカウンタ203は、2進数にしたがってカウントをおこない、カウンタアップするごとに1/1000秒の桁のクロノカウント値を1つずつカウントアップする。図7および図8においては、2進数にしたがってカウントされたカウント値と、当該2進数にしたがったカウント値を10進数にしたがって変換した、1/1000秒の桁のカウント値と、が示されている。
図7に示すように、クロノF5に対してDF調をおこなわず、クロノF4に対して、クロノF4より1段後段のメインF5に対するDF調の周期の2倍の周期でDF調をおこなうことにより、カウント値の最終的な値(図7においては「17」)はそのままで、2進数(F4〜F7)のカウンタ値の飛びを回避することができ、クロノカウンタ203におけるカウント値の抜けを防止することができる。
たとえば、2.5秒タイミングにおけるクロノF4〜F7が、2進数「0100」、カウント値「04」をカウントしている状態で、DF調によりクロノF4の出力信号が、「1」から「0」に変化しても、クロノF4の出力信号の変化は後段のクロノF5,F6,F7に伝わる。したがって、このDF調による動作は、クロノF4の出力信号が「1」から「0」に変化するタイミングが、クロノF3の出力信号に同期せずに早められたにすぎず、クロノF4〜F7によるカウント値は、1つずつカウントアップされる。
7.5秒タイミングにおけるDF調の動作も同様である。このように、1/1000秒のクロノグラフ情報を表示する場合に、1/1000秒に対応した周期の分周器にDF調をおこなうこととなるため、DF調の一度の調整量は、1/1000秒のカウント値を飛び越さない範囲となる。
これにより、アナログ時計においてクロノF3に同期してクロノF4の変化タイミングで運針する場合にも、運針回数の不足を回避することができる。また、これにより、運針回数の不足による運針に際しての基準位置のずれを防止できる。
このように、クロノF4に対して、クロノF4より1段後段のメインF5に対するDF調の周期の2倍の周期でDF調をおこなうことによるカウント値の飛びの発生防止および基準位置のずれ防止は、遅れDF調をおこなう場合にも同様に効果を生じる。以下に、実施の形態1のカウンタ回路において遅れDF調をおこなう場合について説明する。
図8に示すように、クロノF5に対して遅れDF調をおこなわず、クロノF4に対して、クロノF4の1段後段のメインF5に対する遅れDF調の周期の2倍の周期で遅れDF調をおこなうことにより、カウント値の最終的な値(図8においては「11」)はそのままで、2進数(F4〜F7)のカウンタ値の戻りを回避することができ、クロノカウンタ203におけるカウント値の抜けを防止することができる。
たとえば、2.5秒タイミングにおけるクロノF4〜F7が、2進数「0100」、カウント値「04」をカウントしている状態で、DF調によりクロノF4の出力信号が、「0」から「1」に変化せずに「0」に維持されたとする。この場合、クロノF4の出力信号が「0」に維持された状態は、後段のクロノF5,F6,F7に伝わる。したがって、DF調による動作は、クロノF4の出力信号の状態がそのまま後段のクロノF4〜F7に伝わることとなる。
これは、2進数「0100」、カウント値「04」の状態が遅延された状態にすぎない。7.5秒タイミングにおけるDF調の動作も同様である。この場合も、1/1000秒のクロノグラフ情報を表示する場合に、1/1000秒に対応した周期の分周器にDF調をおこなうこととなる。従って、DF調の一度の調整量は、1/1000秒のカウント値を飛び越さない範囲となる。
これにより、アナログ時計においてクロノF3に同期してクロノF4の変化タイミングで運針する場合にも、運針回数の不足を回避することができる。また、これにより、運針回数の不足による運針に際しての基準位置のずれを防止できる。
このように、実施の形態1のカウンタ回路は、時刻系のカウントをおこなうメインカウンタ201に対して出力する緩急信号をクロノカウンタ203に反映する際に、当該緩急信号の出力先を1段ずつ前段にシフトする。また、実施の形態1のカウンタ回路は、1段ずつ前段へのシフトを、メインカウンタ201において緩急信号を反映する頻度(10秒ごと)の2倍の頻度(5秒ごと)で反映させる。
これにより、クロノF4に対する1回のDF調によって反映される補正量が、クロノF5に対する1回のDF調によって反映される補正量の1/2(5秒分)になるため、クロノグラフ値の飛びを回避することができる。しかも、一度の補正量はクロノF5の1/2になるが、DF調の頻度は、クロノF5に対して2倍になるため、クロノF5に対してDF調で補正する場合と同じ補正量の補正ができる。
さらに、実施の形態1のカウンタ回路は、緩急信号を出力する緩急付与回路204を、メインカウンタ201とクロノカウンタ203とで共通化しやすい。すなわち、クロノカウンタ203に緩急信号を付与するタイミングを調整する程度で、これ以外の回路構成は、メインカウンタ201とクロノカウンタ203とで共通利用可能である。また、さらに、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203に対して、本来のDF調の利点である複数の分周器に対する一度の緩急付与を適用することができる。
なお、上述したように、メインカウンタ201に対して出力する緩急信号をクロノカウンタ203に反映する際に、当該緩急信号の出力先を1段ずつ前段にシフトした結果、最前段の第2分周器206に対するDF調は、それよりも前段の第2分周器206は存在せず、より、前段の第2分周器には付与することができない。
しかしながら、最前段の第2分周器206の出力信号は、クロノグラフの動作に用いるクロノF4,F5,F6,F7,・・・の出力信号と比較すると、周期が非常に短い。このため、所望の精度でクロノグラフが動作すれば、最前段の第2分周器206よりも前段の第2分周器に付与すべきDF調は、おこなわなくてもよい。
<実施の形態2>
つぎに、この発明にかかる実施の形態2のカウンタ回路について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
(実施の形態2のカウンタ回路の構成)
図9は、この発明にかかる実施の形態2のカウンタ回路の構成を示す説明図である。図9において、実施の形態2のカウンタ回路900は、緩急付与回路204が、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206よりも前段の第2分周器206に対して、当該第2分周器206とそれぞれ同じ周期の信号を出力する第1分周器205に出力する緩急信号を、当該各第1分周器205と同じ頻度で出力する。この構成および動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
実施の形態1との違いは、図9において、緩急付与回路204は、2段目以降の第2分周器206に該当するクロノF5よりも前段の第2分周器206であるクロノF1〜F4のうちのクロノF1に対して、クロノF1と同じ周期の信号を出力するメインF1に出力する緩急信号を、メインF1に入力する頻度と同じ頻度で出力することである。
クロノF1に対して、メインF1に出力する10秒周期の緩急信号を反映させるタイミングは、5秒周期の緩急信号を反映させるタイミングとずらしておく。具体的には、たとえば、メインF1に出力する10秒周期の緩急信号をクロノF1に対して出力するタイミングをメインカウンタ201が10秒をカウントする間の4.5秒のタイミングとし、メインF2へ出力する頻度の2倍の頻度で出力する5秒周期の緩急信号をクロノカウンタ203が10秒をカウントする間の2.5秒および7.5秒のタイミングとする。
これにより、実施の形態1のカウンタ回路200による効果に加えて、クロノカウンタ203の出力信号の精度を高くすることができる。
<実施の形態3>
つぎに、この発明にかかる実施の形態3のカウンタ回路について説明する。実施の形態3においては、上述した実施の形態1、2と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
(実施の形態3のカウンタ回路の構成)
図10は、この発明にかかる実施の形態3のカウンタ回路の構成を示す説明図である。図10において、実施の形態3のカウンタ回路1000は、緩急付与回路204が、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206のうちの2段目以降の第2分周器206よりも前段の各第2分周器206に対して、当該各第2分周器206とそれぞれ同じ周期の信号を出力する各第1分周器205に出力する緩急信号を、当該各第1分周器205と同じ頻度で出力する。
すなわち、図10においては、緩急付与回路204は、2段目以降の第2分周器206よりも前段の各第2分周器206であるクロノF1〜F4に対して、クロノF1〜F4とそれぞれ同じ周期の信号を出力するメインF1〜F4に出力する緩急信号を、メインF1〜F4に出力する頻度と同じ頻度で出力する。
図10において、第2緩急信号出力回路208は、クロノF4のみに対応して設けられている。メインF5に対して出力された緩急信号は、メインF5に対応する第1緩急信号出力回路207に入力される前に分岐され、クロノF4に対応して設けられた第2緩急信号出力回路208を介してクロノF4に入力される。クロノF4は、メインF4に対応する第1緩急信号出力回路207から10秒周期で出力される緩急信号と、クロノF4に対応して設けられた第2緩急信号出力回路208から5秒周期で出力される緩急信号と、に基づいてDF調をおこなう。この部分における緩急信号に関する構成と動作は、実施の形態1と同様である。
実施の形態1との違いは、クロノF1〜F4におけるDF調の動作である。クロノF1〜F4は、入力される緩急信号に基づいて、クロノカウンタ203が10秒をカウントする間の4.5秒のタイミングで、10秒周期でDF調をおこなう。前述の通り、クロノF4は、さらに、クロノカウンタ203が10秒をカウントする間の2.5秒および7.5秒のタイミングで、5秒周期でDF調をおこなう。
メインF5に対して10秒周期でおこなわれる1回のDF調と同じ調整量のDF調は、5秒周期で行われる2回のDF調によって、同じ調整量の調整がおこなわれる。メインカウンタ201では、さらに、メインF4に対して10秒周期でDF調がおこなわれる。これに対応するDF調として、クロノF4に対して10秒周期でメインF4と同様なDF調がおこなわれる。これにより、メインF4とメインF5とでおこなっていたDF調と同じ調整量のDF調を、クロノF4でおこなうことができる。
このように、クロノF4に対して、メインF5に出力する緩急信号を2倍の頻度で出力するとともに、メインF5に出力する緩急信号をクロノF4に対して10秒周期で出力される緩急信号の出力タイミングとは別のタイミングで出力することにより、クロノカウンタ203における1/1000秒の桁のカウント値の抜けを防止するとともに、カウンタ値の戻りを回避することができる。
これにより、図4に示した従来のカウンタ回路400から最小限の変更で実現することができ、カウンタ回路900の回路構成も、より、簡素化することができる。
<実施の形態4>
つぎに、この発明にかかる実施の形態4のカウンタ回路について説明する。実施の形態4においては、上述した実施の形態1〜3と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
(実施の形態4のカウンタ回路の構成)
図11は、この発明にかかる実施の形態4のカウンタ回路の構成を示す説明図である。図11において、実施の形態4のカウンタ回路1100は、メインカウンタ201と、クロノスイッチ202と、クロノカウンタ203と、緩急付与回路204と、温度補償回路1101と、を備えている。
緩急付与回路204によるメインカウンタ201およびクロノカウンタ203への緩急信号の出力に関して、構成および動作は、実施の形態1と同様である。実施の形態1との違いは、第1分周器205に対し、n倍の頻度で緩急信号が出力される第2分周器206クロノF1、F2、F3、・・・のうちの最前段の第2分周器206であるクロノF1に対して、温度補償回路1101が、温度補償用の緩急信号に加えて調整用の緩急信号を出力することである。
温度補償回路1101は、温度補償用のDF調を実行するタイミングを示す温度補償設定値を記憶するメモリを備えている。温度補償設定値は、DF調設定値と同様に、たとえば、各第1分周器205および各第2分周器206に対して論理緩急をおこなう周期やタイミング、緩急の頻度などによって定められる調整量、進みまたは遅れの調整方向などを指定する情報を含む。
電子時計は、使用環境における温度に応じて源信の周波数が変化する。この使用環境の温度に基づく周波数の変化を補償してカウンタ回路1100が動作するように、温度補償回路1101が設けられている。
温度補償回路1101は、サーミスタなどの温度計測手段による計測結果に基づいて、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203に対して、各カウンタ回路201、203が生成する各分周信号に緩急を付与する温度補償用の緩急信号を出力する。温度補償回路1101は、温度補償設定値に基づき、第3緩急信号出力回路1102を介して、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203に対して温度補償用の緩急信号を出力する。
第3緩急信号出力回路1102は、機能用分周信号を出力する複数段の第2分周器206であるクロノF4、F5、F6、・・・のうちの2段目以降の第2分周器206であるクロノF5、F6、・・・より前段に設けられた第2分周器206であるクロノF1〜F4のそれぞれに対応して複数設けられている。第3緩急信号出力回路1102は、温度補償回路1101から出力された温度補償用の緩急信号が、クロノF1〜F4のそれぞれに対して、たとえば「10秒ごと」などの所定の周期で入力されるよう、温度補償用の緩急信号の出力タイミングを調整する。
これにより、クロノF1〜F4に対して10秒ごとにDF調をおこない、クロノF1〜F4がそれぞれ分周して出力する信号の周波数(分周周波数)の調整、すなわち、温度補償をおこなうことができる。
また、温度補償回路1101は、第3緩急信号出力回路1102を介して、クロノF1〜F4のそれぞれに出力する温度補償用の緩急信号を、クロノF1〜F4のそれぞれと同じ段数のメインF1〜F4に対して、クロノF1〜F4と同じタイミングでそれぞれ出力する。温度補償回路1101は、メインF1〜F4のそれぞれに対して、たとえば「10秒ごと」など、クロノF1〜F4に対応する頻度と同じ頻度で温度補償用の緩急信号を出力する。
具体的には、温度補償回路1101は、たとえばクロノカウンタ203が10秒をカウントする間の9.5秒のタイミングで10秒周期で温度補償の緩急信号を出力する。これにより、クロノカウンタ203におけるDF調のタイミングとずらすことができ、かつ、メインF1〜F4に対して10秒ごとに温度補償用のDF調をおこない、メインF1〜F4が分周して出力する信号の周波数(分周周波数)の調整、すなわち、温度補償をおこなうことができる。
また、温度補償回路1101は、第1の分周期205に対して、n倍の頻度で緩急信号が出力される第2分周器206のうちの最前段の第2分周器206に対して、温度補償用の緩急信号に加えて調整用の緩急信号を出力する。図11に示したように、第1の分周期205に対して、n倍の頻度で緩急信号が出力される第2分周器206は、クロノF1、F2、F3、・・・であり、これらの第2分周器206のうちの最前段の第2分周器206はクロノF1である。
これにより、本来、『クロノF1』に10秒周期でおこなわれるべきDF調を、温度補償の調整量に足しこむことができる。温度補償のDF調は小さいので、温度補償の調整量に足しこむことにより繰上げが発生しても『クロノF4』より大きいDF調には干渉しない。
すなわち、緩急付与回路204がメインF2とメインF1とにおこなうDF調と同じ調整量の調整を、クロノF1に対して、緩急付与回路204と温度補償回路1101とでおこなうことができる。
また、温度補償回路1101は、対応する第1分周器205に対して、第1緩急信号出力回路207が緩急信号を出力する頻度と同じ頻度であって、かつ、第1緩急信号出力回路207が緩急信号を出力するタイミングとは異なるタイミングで、温度補償の緩急信号を出力する。具体的には、第3緩急信号出力回路1102は、たとえばメインカウンタ201が10秒をカウントする間の9.5秒のタイミングで10秒周期で温度補償の緩急信号を出力する。これにより、メインカウンタ201における各第1分周器205による分周動作の合間であって、DF調に干渉することなく温度補償をおこなうことができる。
この場合、緩急付与回路204は、クロノF1〜F4に対して、クロノカウンタ203が10秒をカウントする間の2.5秒および7.5秒のタイミングのように、メインカウンタ201に対するDF調のタイミング、および、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203に対する温度補償用のDF調のタイミングのそれぞれをずらしたタイミングでおこなう。
これにより、メインカウンタ201に対するDF調のタイミングや、メインカウンタ201およびクロノカウンタ203に対する温度補償用のDF調のタイミングが干渉することを回避し、この干渉によるカウント値の飛びを回避することができる。
(温度補償機能を備えた従来のカウンタ回路の構成)
ここで、温度補償機能を備えた従来のカウンタ回路の構成について説明する。図12は、温度補償機能を備えた従来のカウンタ回路の構成を示す説明図である。図12において、温度補償機能を備えた従来のカウンタ回路1200は、メインカウンタ201と、クロノカウンタ203と、温度補償回路1101と、を備えている。
緩急付与回路204は、メインF1〜F5およびクロノF1〜F5に対して、それぞれ、第1緩急信号出力回路207を介して、4.5秒のタイミングで10秒周期で緩急信号を出力する。緩急付与回路204は、それぞれ分周周波数が等しいメインF1〜F5およびクロノF1〜F5に対して緩急信号を出力する。温度補償回路1101は、メインF1〜F3およびクロノF1〜F3に対して、それぞれ、第3緩急信号出力回路1102を介して、9.5秒のタイミングで10秒周期で緩急信号を出力する。
このように温度補償をおこなうことにより、温度補償機能を備えた従来のカウンタ回路1200においてもカウント精度を高めることができるものの、クロノカウンタ203のカウント精度の向上にともなって、温度補償をおこなわない従来のカウント回路と同様の、カウント値の飛びや繰り返しに起因する運針の不具合が生じる。
これに対し、実施の形態4のカウンタ回路1100によれば、緩急付与回路204から第2の分周器206の1/n倍の周期の信号を出力する第1分周器205に出力する緩急信号をn倍の頻度で出力することによって溢れてしまう第2分周器206の最前段のクロノF1に対するDF調の効き量を、温度補償のDF量に加算することができる。
これにより、DF調をおこなう第2分周器206の桁を第1分周器205の段数よりも前段にシフトさせた場合にも、図12に示す従来のカウンタ回路1200に対して大きな回路変更を加えることなく、高いカウント精度を維持することができる。具体的には、たとえば、温度補償によるDF調は、元の最大値が小さい(5.72ppm)ため、溢れ分が加算されてもクロノグラフの値が飛ぶような幅になる懸念がない。
このように、緩急付与回路204からメインF1に対応する第1緩急信号出力回路207に対して出力される緩急信号を温度補償回路1101に入力する方法は、たとえば、マイコンを用いて温度補償を計算によりおこなう場合に、本来、クロノF1に10秒周期でおこなわれるべきDF調による緩急の調整量を、温度補償の調整量に容易に足しこむことができる。
すなわち、実施の形態1で示した構成に加えて、温度補償回路1101を用いることを前提とした時計の場合は、実施形態2よりも、クロノF1に緩急を付与する回路か簡素化でき、従来から用いられている温度補償回路1101の緩急量を調整するだけで、クロノカウンタの正確なDF調が実現できる。
上記実施の形態は、いずれも、クロノF4のほかに、クロノF1〜F3に対してDF調をおこなう例であるが、クロノグラフ機能で許容される精度が確保されるのであれば、クロノF1〜F3にDF調をおこなわなくてもよい。
また、上記実施の形態は、いずれも、緩急付与回路204が、メインF5に出力する緩急信号を2倍の頻度でクロノF4に出力する例であるが、本発明はこれに限るものではない。たとえば、緩急付与回路204が、メインF5に出力する緩急信号を、4倍の頻度でクロノF3に出力したり、8倍の頻度でクロノF2に出力してもよい。前者の場合は、クロノF3の出力信号の周期は、メインF5の出力信号の周期の1/4である。
したがって、クロノF3における一度のDF調の調整量は、メインF5における一度のDF調の調整量の1/4の量の関係にあるが、クロノF3におけるDF調の頻度を、メインF5に対して4倍に設定することにより、メインF3で調整されるDF調の調整量と同じ量のDF調の調整が、クロノF3でおこなうことができる。後者の場合も、クロノF2におけるDF調の頻度をメインF5に対して8倍に設定することにより、同様な調整をおこなうことができる。
上記実施の形態においては、入力される信号の周波数を1/2倍(周期を2倍)に分周して出力する第1分周器205および第2分周器206を用いた例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、4分の1などのように、周波数を整数分の1で分周する分周回路を用いてもよい。
(利用例)
つぎに、この発明にかかるカウンタ回路の別の利用例について説明する。上述した各実施の形態のカウンタ回路200、900、1000、1100は、クロノグラフに限らず、時計でタイミングを作って処理をする場面に転用することができる。具体的には、たとえば、図13に示すように、任意の信号波形をサンプリングして解析するような場合に、この発明にかかるカウンタ回路を用いることにより、時刻精度とサンプリング回数の確保とを両立することができる。
図13は、この発明にかかるカウンタ回路の別の利用例を示す説明図である。図13においては、任意の信号波形をサンプリングする利用例を示している。この場合、クロノグラフ値を出力する代わりに、サンプリングタイミングを出力するようにする他は、上述した各実施の形態のカウンタ回路とほぼ同じ構成のカウンタ回路によって実現することができる。
具体的には、たとえば、0.1秒間に10回のサンプリングをおこなって信号レベルのH/Lを判定するため、1/100秒周期の信号を出力する分周器と後段の分周器との出力信号でサンプリングのタイミング信号を出力する場合、後段の分周器に対してDF調をおこなうことによってサンプリングタイミングに飛びが発生する。これによってサンプリング回数が減ると、誤判定のおそれがある。このような不具合は、たとえば、「10回のサンプリング中5回以上のサンプリング値が閾値を超えればHレベルと判定する」などの条件式を用いて判定をおこなう場合に生じる。
これに対し、この発明にかかるカウンタ回路を用いて、サンプリングタイミングの出力に用いられる機能用分周信号を出力する複数段の分周器うちの2段目以降の分周器に、メインカウンタを構成する分周器に対して、n倍の頻度で1/nのDF調をおこなうことにより、より細かい桁に飛びが生じることを回避できる。この発明にかかるカウンタ回路によれば、サンプリングタイミングに桁飛びが生じることがないため、サンプリングの回数が不足することを回避できる。これにより、誤判定を回避することができ、時刻精度とサンプリング回数の確保とを両立することができる。
なお、この場合にも、DF調をおこなう周期は一定でなくてもよい。具体的には、上述した各実施の形態のカウンタ回路においては、5秒周期でDF調をおこなうようにしたが、たとえば、10秒をカウントするうちの1.5秒や2.5秒のタイミングにおいて集中的にDF調をおこなうようにしてもよい。
このように、この発明にかかる実施の形態のカウンタ回路によれば、時刻用分周信号よりも周期が短い機能用分周信号に基づいてカウントされるカウンタ値の飛びを回避することができる。
また、この発明にかかる実施の形態のカウンタ回路によれば、歩留まりを低下させることなく、時刻用分周信号よりも周期が短い機能用分周信号に基づいてカウントされるカウンタ値の飛びを回避することができる。しかも、時刻用分周信号を生成する第1カウンタ回路と機能用分周信号を生成する第2カウンタ回路とで緩急付与回路を共通化しやすい。
さらに、時刻用分周信号を生成する第1カウンタ回路や機能用分周信号を生成する第2カウンタ回路に対し、本来のDF調の利点である複数の分周器に対する一度の緩急付与を適用することができる。