以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。また、後述の任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる又は並列に実行できる。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る給電機器1及び電子機器2の概略外観図である。但し、図1(a)は、給電機器1及び電子機器2が離間状態にあるときのそれらの外観図であり、図1(b)は、給電機器1及び電子機器2が基準配置状態にあるときのそれらの外観図である。離間状態及び基準配置状態の意義については後に詳説する。給電機器1及び電子機器2によって非接触給電システムが形成される。給電機器1は、商用交流電力を受けるための電源プラグ11と、樹脂材料にて形成された給電台12と、を備える。
図2に、給電機器1と電子機器2の概略内部構成図を示す。給電機器1は、電源プラグ11を介して入力された商用交流電圧から所定の電圧値を有する直流電圧を生成して出力するAC/DC変換部13と、AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する集積回路である送電側IC100(以下、IC100とも言う)と、IC100に接続された送電側共振回路TT(以下、共振回路TTとも言う)と、を備える。AC/DC変換部13、送電側IC100及び共振回路TTを、給電台12内に配置しておくことができる。AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する回路が、IC100以外にも、給電機器1に設けられうる。
電子機器2は、集積回路である受電側IC200(以下、IC200とも言う)と、IC200に接続された受電側共振回路RR(以下、共振回路RRとも言う)と、二次電池であるバッテリ21と、バッテリ21の出力電圧に基づき駆動する機能回路22と、を備える。詳細は後述するが、IC200はバッテリ21に対して充電電力を供給することができる。IC200は、バッテリ21の出力電圧にて駆動しても良いし、バッテリ21以外の電圧源からの電圧に基づき駆動しても良い。或いは、給電機器1から受信したNFC通信(詳細は後述)のための信号を整流することで得た直流電圧が、IC200の駆動電圧となっても良い。この場合、バッテリ21の残容量が無くなってもIC200は駆動可能となる。
電子機器2は、任意の電子機器であって良く、例えば、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、携帯情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、MP3プレイヤー、歩数計、又は、Bluetooth(登録商標)ヘッドセットである。機能回路22は、電子機器2が実現すべき任意の機能を実現する。従って例えば、電子機器2がスマートホンであれば、機能回路22は、相手側機器との間の通話を実現するための通話処理部、及び、ネットワーク網を介して他機器と情報を送受信するための通信処理部などを含む。或いは例えば、電子機器2がデジタルカメラであれば、機能回路22は、撮像素子を駆動する駆動回路、撮像素子の出力信号から画像データを生成する画像処理回路などを含む。機能回路22は、電子機器2の外部装置に設けられる回路であると考えても良い。
図3に示す如く、共振回路TTは、送電側コイルであるコイルTLと送電側コンデンサであるコンデンサTCとを有し、共振回路RRは、受電側コイルであるコイルRLと受電側コンデンサであるコンデンサRCとを有する。以下では、説明の具体化のため、特に記述無き限り、送電側コイルTL及び送電側コンデンサTCが互いに並列接続されることで共振回路TTが並列共振回路として形成され、且つ、受電側コイルRL及び受電側コンデンサRCが互いに並列接続されることで共振回路RRが並列共振回路として形成されているものとする。但し、送電側コイルTL及び送電側コンデンサTCが互いに直列接続されることで共振回路TTが直列共振回路として形成されていても良いし、受電側コイルRL及び受電側コンデンサRCが互いに直列接続されることで共振回路RRが直列共振回路として形成されていても良い。
図1(b)に示す如く、電子機器2を給電台12上の所定領域内に載置したとき、磁界共鳴方式にて(即ち、磁界共鳴を利用して)、機器1及び2間における通信、送電及び受電が可能となる。磁界共鳴は、磁界共振などとも呼ばれる。
機器1及び2間における通信は、NFC(Near field communication)による無線通信(以下、NFC通信と呼ぶ)であり、通信の搬送波の周波数は13.56MHz(メガヘルツ)である。以下では、13.56MHzを基準周波数と呼ぶ。機器1及び2間におけるNFC通信は、共振回路TT及びRRを利用した磁界共鳴方式で行われるため、共振回路TT及びRRの共振周波数は、共に、基準周波数に設定されている。但し、後述されるように、共振回路RRの共振周波数は、一時的に基準周波数から変更され得る。
機器1及び2間における送電及び受電は、給電機器1から電子機器2に対するNFCによる送電と、電子機器2におけるNFCによる受電である。この送電と受電をまとめてNFC電力伝送又は単に電力伝送と称する。磁界共鳴方式によりコイルTLからコイルRLに対して電力を伝達することで、電力伝送が非接触で実現される。
磁界共鳴を利用した電力伝送では、送電側コイルTLに交流電流を流すことで送電側コイルTLに基準周波数の交番磁界を発生させる。すると、この交番磁界が、基準周波数で共鳴(換言すれば共振)する共振回路RRに伝わって受電側コイルRLに交流電流が流れる。つまり、送電側コイルTLを含む共振回路TTから受電側コイルRLを含む共振回路RRへ電力が伝達される。尚、以下では、記述が省略されることがあるが、NFC通信又は電力伝送においてコイルTL又はコイルRLにより発生する磁界は、特に記述無き限り、基準周波数で振動する交番磁界である。
電子機器2が給電台12上の所定の送電領域内に載置され(給電機器1と電子機器2が所定位置関係にあり)、換言すれば電子機器2が給電台12上の所定範囲内に載置され、上述のNFC通信及び電力伝送が実現できる状態を、基準配置状態と呼ぶ(図1(b)参照)。磁気共鳴を利用した場合、相手側距離との距離が比較的大きくても通信及び電力伝送が可能であるが、電子機器2が給電台12から相当距離離れれば、NFC通信及び電力伝送は実現できなくなる。電子機器2が給電台12から十分に離れていて上述のNFC通信及び電力伝送を実現できない状態を、離間状態と呼ぶ(図1(a)参照)。尚、図1(a)に示す給電台12では、表面が平らになっているが、載置されるべき電子機器2の形状に合わせた窪み等が給電台12に形成されていても構わない。基準配置状態は、給電機器1及び電子機器2間における電力の送受電が可能な所定の送電領域(換言すれば、送電及び受電を行うための領域)に電子機器2が存在している状態に属し、且つ、離間状態は、該送電領域に電子機器2が存在していない状態に属すると解して良い。
図4に、IC100の内部ブロック図を含む、給電機器1の一部の構成図を示す。IC100には、符号110、120、130、140、150及び160によって参照される各部位が設けられる。図5に、IC200の内部ブロック図を含む、電子機器2の一部の構成図を示す。IC200には、符号210、220、230、240及び250によって参照される各部位が設けられる。また、IC200に対し、IC200の駆動電圧を出力するコンデンサ23を接続しておいても良い。コンデンサ23は、給電機器1から受信したNFC通信のための信号を整流することで得た直流電圧を出力可能である。
切り替え回路110は、制御回路160の制御の下、NFC通信回路120及びNFC送電回路130のどちらかを共振回路TTに接続させる。共振回路TTと回路120及び130との間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路110を構成することができる。本明細書にて述べる任意のスイッチは、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子を用いて形成されて良い。
切り替え回路210は、制御回路250の制御の下、共振回路RRをNFC通信回路220及びNFC受電回路230のどちらかに接続させる。共振回路RRと回路220及び230との間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路210を構成することができる。
共振回路TTが切り替え回路110を介してNFC通信回路120に接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210を介してNFC通信回路220に接続されている状態を、通信用接続状態と呼ぶ。通信用接続状態にてNFC通信が可能となる。通信用接続状態において、NFC通信回路120は、基準周波数の交流信号(交流電圧)を共振回路TTに供給することができる。機器1及び2間のNFC通信は半二重方式で実行される。
通信用接続状態において給電機器1が送信側であるとき、NFC通信回路120が共振回路TTに供給する交流信号に任意の情報信号を重畳させることで、当該情報信号が給電機器側アンテナコイルとしてのコイルTLから送信され且つ電子機器側アンテナコイルとしてのコイルRLにて受信される。コイルRLにて受信された情報信号はNFC通信回路220にて抽出される。通信用接続状態において電子機器2が送信側であるとき、NFC通信回路220は、任意の情報信号(応答信号)を共振回路RRのコイルRLから共振回路TTのコイルTLに送信できる。この送信は、周知の如く、ISO規格(例えばISO14443規格)に基づき、コイルTL(給電機器側アンテナコイル)から見たコイルRL(電子機器側アンテナコイル)のインピーダンスを変化させる負荷変調方式にて実現される。電子機器2から伝達された情報信号はNFC通信回路120にて抽出される。
共振回路TTが切り替え回路110を介してNFC送電回路130に接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210を介してNFC受電回路230に接続されている状態を、給電用接続状態と呼ぶ。
給電用接続状態において、NFC送電回路130は送電動作を行うことができ、NFC受電回路230は受電動作を行うことができる。送電動作と受電動作にて電力伝送が実現される。送電動作において、送電回路130は、共振回路TTに基準周波数の送電用交流信号(送電用交流電圧)を供給することで送電側コイルTLに基準周波数の送電用磁界(送電用交番磁界)を発生させ、これによって、共振回路TT(送電側コイルTL)から共振回路RRに対し磁界共鳴方式で電力を送電する。送電動作に基づき受電側コイルRLにて受電された電力は受電回路230に送られ、受電動作において、受電回路230は、受電した電力から任意の直流電力を生成して出力する。受電回路230の出力電力にてバッテリ21を充電することができる。
通信用接続状態にてNFC通信を行う場合も、コイルTL又はRLにて磁界が発生するが、NFC通信における磁界強度は、所定の範囲内に収まる。その範囲の下限値及び上限値は、NFCの規格で定められ、夫々、1.5A/m、7.5A/mである。これに対し、電力伝送(即ち送電動作)において送電側コイルTLにて発生する磁界の強度(送電用磁界の磁界強度)は、上記の上限値より大きく、例えば45〜60A/m程度である。機器1及び2を含む非接触給電システムにおいて、NFC通信及び電力伝送(NFC電力伝送)を交互に行うことができ、その時の磁界強度の様子を図6に示す。
負荷検出回路140は、送電側コイルTLの負荷の大きさ、即ち、送電回路130から送電側コイルTLに交流信号が供給されるときにおける送電側コイルTLにとっての負荷の大きさを検出する。図7に、給電用接続状態における送電回路130と負荷検出回路140と共振回路TTとの関係を示す。尚、図7では、切り替え回路110の図示が省略されている。
送電回路130は、基準周波数の正弦波信号を生成する信号生成器131と、信号生成器131にて生成された正弦波信号を増幅し、増幅した正弦波信号をライン134の電位を基準としてライン134及び135間に出力する増幅器(パワーアンプ)132と、コンデンサ133とを備える。一方、負荷検出回路140は、センス抵抗141、包絡線検波器142、増幅器143及びA/D変換器144を備える。信号生成器131が生成する正弦波信号の信号強度は一定値に固定されているが、増幅器132の増幅率は制御回路160により可変設定される。
コンデンサ133の一端はライン135に接続される。給電用接続状態において、コンデンサ133の他端はコンデンサTC及びコイルTLの各一端に共通接続され、且つ、コイルTLの他端はセンス抵抗141を介してライン134及びコンデンサTCの他端に共通接続される。
送電動作は、増幅器132からコンデンサ133を介し共振回路TTに交流信号(送電用交流電圧)を供給することで実現される。給電用接続状態において、増幅器132からの交流信号が共振回路TTに供給されると送電側コイルTLに基準周波数の交流電流が流れ、結果、センス抵抗141に交流の電圧降下が発生する。図8の実線波形は、センス抵抗141における電圧降下の電圧波形である。共振回路TTに関し、送電側コイルTLの発生磁界強度が一定の下、電子機器2を給電台12に近づけると、送電側コイルTLの発生磁界に基づく電流が受電側コイルRLに流れる一方で、受電側コイルRLに流れた電流に基づく逆起電力が送電側コイルTLに発生し、その逆起電力は送電側コイルTLに流れる電流を低減するように作用する。このため、図8に示す如く、基準配置状態におけるセンス抵抗141の電圧降下の振幅は、離間状態におけるそれよりも小さい。
包絡線検波器142は、センス抵抗141における電圧降下の信号の包絡線を検波することで、図8の電圧vに比例するアナログの電圧信号を出力する。増幅器143は、包絡線検波器142の出力信号を増幅して出力する。A/D変換器144は、増幅器143の出力電圧信号をデジタル信号に変換することでデジタルの電圧値VDを出力する。上述の説明から理解されるように、電圧値VDは、センス抵抗141に流れる電流の振幅(従って、送電側コイルTLに流れる電流の振幅)に比例する値を持つ(当該振幅の増大に伴って電圧値VDも増大する)。故に、負荷検出回路140は、送電側コイルTLに流れる電流の振幅を検出する電流振幅検出回路であるとも言え、その振幅検出値が電圧値VDであると考えることができる。尚、包絡線検波器142を増幅器143の後段に設けるようにしても良い。但し、図7に示す如く、包絡線検波器142を増幅器143の前段に設けた方が、高周波への応答性能がより低いものを増幅器143として採用可能となり有利である。
磁界を発生させる送電側コイルTLにとって、受電側コイルRLのような、送電側コイルTLと磁気結合するコイルは、負荷であると考えることができ、その負荷の大きさに依存して、負荷検出回路140の検出値である電圧値VDが変化する。このため、負荷検出回路140は電圧値VDの出力によって負荷の大きさを検出している、と考えることもできる。ここにおける負荷の大きさとは、送電の際における送電側コイルTLにとっての負荷の大きさとも言えるし、送電の際における給電装置1から見た電子機器2の負荷としての大きさとも言える。尚、センス抵抗141はIC100の内部に設けられても良いし、IC100の外部に設けられても良い。
メモリ150(図4参照)は、不揮発性メモリから成り、任意の情報を不揮発的に記憶する。制御回路160は、IC100内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路160が行う制御には、例えば、切り替え回路110の切り替え動作の制御、通信回路120及び送電回路130による通信動作及び送電動作の内容制御及び実行有無制御、負荷検出回路140の動作制御、メモリ150の記憶制御及び読み出し制御が含まれる。制御回路160は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。
電子機器2における共振状態変更回路240(図5参照)は、共振回路RRの共振周波数を基準周波数から他の所定周波数fMに変更する共振周波数変更回路、又は、共振回路RRにおける受電側コイルRLを短絡するコイル短絡回路である。
図9の共振周波数変更回路240Aは、共振状態変更回路240としての共振周波数変更回路の例である。共振周波数変更回路240Aは、コンデンサ241とスイッチ242の直列回路から成り、該直列回路の一端はコンデンサRC及びコイルRLの各一端に共通接続される一方、該直列回路の他端はコンデンサRC及びコイルRLの各他端に共通接続される。スイッチ242は、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ242がオフのとき、コンデンサ241はコンデンサRC及びコイルRLから切り離されるため、共振回路RRは、寄生インダクタンス及び寄生容量を無視すれば、コイルRL及びコンデンサRCのみで形成されて、共振回路RRの共振周波数は基準周波数と一致する。即ち、スイッチ242がオフのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、コンデンサRCそのものである。スイッチ242がオンのとき、コンデンサRCにコンデンサ241が並列接続されることになるため、共振回路RRはコイルRLとコンデンサRC及び241の合成容量とで形成され、結果、共振回路RRの共振周波数は基準周波数よりも低い周波数fMとなる。即ち、スイッチ242がオンのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、上記の合成容量である。ここでは、スイッチ242がオンのとき共振回路RRが送電側コイルTLの負荷として機能しない程度に(即ち、共振回路TT及びRR間で磁気共鳴が十分に発生しない程度に)、周波数fMが基準周波数から離れているものとする。例えば、スイッチ242のオンのときにおける共振回路RRの共振周波数(即ち周波数fM)は、数100kHz〜1MHzとされる。
共振回路RRの共振周波数を周波数fMに変更できる限り、変更回路240としての共振周波数変更回路は共振周波数変更回路240Aに限定されず、周波数fMは基準周波数より高くても良い。例えば、共振周波数変更回路はコイルRL及びコンデンサRCを接続する電流ループ上に直列に挿入されたスイッチのオン、オフによって、コイルRL及びコンデンサRC間の接続、非接続を切り替える回路であっても良い(非接続とされた場合、コイルRLと配線の寄生容量等とで共振回路RRの共振周波数(>>基準周波数)が定まる)。つまり、受電側共振回路RRが直列共振回路でありうることをも考慮すれば、以下のことが言える。受電側共振回路RRは受電側コイル(RL)と受電側容量の並列回路又は直列回路を有し、受電側容量が所定の基準容量と一致しているとき、受電側共振回路RRの共振周波数fOは基準周波数と一致する。共振周波数変更回路は、必要なタイミングにおいて、受電側容量を基準容量から増加又は減少させる。これにより、受電側共振回路RRにおいて、受電側コイル(RL)と、基準容量より大きい又は小さい受電側容量とで、並列回路又は直列回路が形成され、結果、受電側共振回路RRの共振周波数fOが基準周波数から変更される。
図10のコイル短絡回路240Bは、共振状態変更回路240としてのコイル短絡回路の例である。コイル短絡回路240Bは、共振回路RRにおけるコンデンサRCの一端及びコイルRLの一端が共通接続されるノードと、共振回路RRにおけるコンデンサRCの他端及びコイルRLの他端が共通接続されるノードとの間に接続(挿入)されたスイッチ243から成る。スイッチ243は、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ243がオンとなると共振回路RRにおけるコイルRLが短絡される(より詳細にはコイルRLの両端が短絡される)。受電側コイルRLが短絡された状態では受電側共振回路RRが存在しなくなる(受電側共振回路RRが存在しない状態と等価な状態となる)。従って、受電側コイルRLの短絡中では、送電側コイルTLにとっての負荷が十分に軽くなる(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となる)。受電側コイルRLを短絡できる限り、変更回路240としてのコイル短絡回路はコイル短絡回路240Bに限定されない。
以下では、受電側共振回路RRの共振周波数fOを基準周波数から所定周波数fMに変更する動作を、共振周波数変更動作と呼び、コイル短絡回路を用いて受電側コイルRLを短絡する動作を、コイル短絡動作と呼ぶ。また、記述の簡略化上、共振周波数変更動作又はコイル短絡動作をfO変更/短絡動作と称することがある。
制御回路250(図5参照)は、IC200内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路250が行う制御には、例えば、切り替え回路210の切り替え動作の制御、通信回路220及び受電回路230による通信動作及び受電動作の内容制御及び実行有無制御、変更回路240の動作制御が含まれる。制御回路250は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。例えば、制御回路250におけるタイマは、fO変更/短絡動作による共振周波数fOの所定周波数fMへの変更又は受電側コイルRLの短絡が維持される時間の計測(即ち後述の時間TMの計測;図19のステップS207参照)を行うことできる。
ところで、給電機器1の制御回路160は、給電台12上における異物の存否を判断し、異物が無い場合にのみ送電動作を行うよう送電回路130を制御できる。本実施形態における異物は、電子機器2及び電子機器2の構成要素(受電側コイルRLなど)と異なり、給電機器1に近づいたときに、送電側コイルTLの発生磁界に基づいて電流(異物内での電流)を発生させられる物体を含む。本実施形態において、異物の存在とは、送電側コイルTLの発生磁界に基づく、無視できない程度の電流が異物内で流れるような位置に異物が存在することを意味する、と解して良い。尚、送電側コイルTLの発生磁界に基づき異物内で流れることになった電流は、異物に対向、結合するコイル(TLやRL)に起電力(又は逆起電力)を発生させるため、そのコイルを含む回路の特性に無視できない影響を与えうる。
図11(a)に、異物の一種である異物3の概略外形図を示し、図11(b)に異物3の概略内部構成図を示す。異物3は、コイルJL及びコンデンサJCの並列回路から成る共振回路JJと、共振回路JJに接続された異物内回路300と、を備える。共振回路JJの共振周波数は基準周波数に設定されている。異物3は、電子機器2とは異なり、給電機器1に対応しない機器である。例えば、異物3は、NFC通信に応答しない13.56MHzのアンテナコイル(コイルJL)を持つ無線ICタグを有した物体(非接触ICカード等)である。また例えば、異物3は、NFC通信機能自体は有しているものの、その機能が無効とされている電子機器である。例えば、NFC通信機能を有するスマートホンではあるが、ソフトウェア設定で当該機能をオフにされているスマートホンは、異物3となりうる。また、NFC通信機能が有効となっているスマートホンでも、受電機能を持たないスマートホンも異物3に分類される。
このような異物3が給電台12上に配置されている状態において、仮に、給電機器1が送電動作を行うと、送電側コイルTLが発生した強磁界(例えば、12A/m以上の磁界強度を持つ磁界)にて異物3が破壊されることがある。例えば、送電動作時における強磁界は、給電台12上の異物3のコイルJLの端子電圧を100V〜200Vまで増大させることもあり、そのような高電圧に耐えられるように異物3が形成されていなければ、異物3が破壊される。
[pFOD処理(電力伝送前のpFOD処理)]
図12を参照し、異物の存否を検出するための異物検出処理を説明する。図12は、電力伝送前に給電機器1により実行される異物検出処理(以下、pFOD処理という)のフローチャートである。
pFOD処理の実行時には、送電回路130が共振回路TTに接続される。pFOD処理において、制御回路160は、まずステップS11にて送電側コイルTLによる磁界強度Hを所定のテスト強度に設定する。磁界強度Hは、送電側コイルTLの発生磁界強度であって、より詳しくは、送電側コイルTLが発生した基準周波数で振動する交番磁界の磁界強度を指す。磁界強度Hをテスト強度に設定するとは、所定のテスト用交流信号(テスト用交流電圧)が共振回路TTに供給されるように送電回路130を制御することで、テスト強度を有し且つ基準周波数で振動する交番磁界であるテスト磁界を送電側コイルTLに発生させることを指す。テスト磁界の磁界強度であるテスト強度は、電力伝送(即ち送電動作)における送電側コイルTLの発生磁界強度(即ち送電用磁界の磁界強度;例えば、45〜60A/m)よりも相当に小さく、通信用磁界強度の下限値“1.5A/m”から上限値“7.5A/m”までの範囲内に収まる。故に、テスト磁界によって異物3が破損等するおそれは無い又は少ない。制御回路160は、増幅器132(図7参照)の増幅率を制御することで磁界強度Hを可変設定することができる。テスト磁界を発生させる場合には所定のテスト用交流電圧が共振回路TTに供給及び印加されるように、且つ、送電用磁界を発生させる場合にはテスト用交流電圧よりも大きな振幅を有する所定の送電用交流電圧が共振回路TTに供給及び印加されるように、増幅器132の増幅率を制御すれば良い。
ステップS11に続くステップS12において、制御回路160は、負荷検出回路140を用い、テスト磁界を発生させているときの電圧値VDを電流振幅検出値VpFODとして取得する。電流振幅検出値VpFODは、テスト磁界を送電側コイルTLに発生させているときの、送電側コイルTLに流れる電流の振幅に応じた値を持つ。尚、pFOD処理が実行される期間中には、NFC通信を介した給電機器1からの指示に従い電子機器2においてfO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)が実行されている。故に、共振回路RR(受電側コイルRL)は実質的に送電側コイルTLの負荷として機能せず、電流振幅検出値VpFODの減少を全く又は殆どもたらさない。
ステップS12に続くステップS13において、制御回路160は、電流振幅検出値VpFODが所定のpFOD正常範囲内に収まるか否かを判断する。そして、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まる場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していないと判定する(ステップS14)。この判定を異物無判定と称する。一方、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲を逸脱する場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していると判定する(ステップS15)。この判定を異物有判定と称する。制御回路160は、異物無判定を成した場合、送電回路130による送電動作の実行が可能であると判断して送電動作の実行(共振回路TTを用いた送電)を許可し、異物有判定を成した場合、送電回路130による送電動作の実行が不可であると判断して送電動作の実行を禁止する。送電動作が実行可能と判断したとき、送電動作において、制御回路160は、所定の送電用磁界が送電側コイルTLにて発生されるよう送電回路130を制御することができる。
pFOD正常範囲は、所定の下限値VpREFL以上且つ所定の上限値VpREFH以下の範囲である(0<VpREFL<VpREFH)。故に、判定不等式“VpREFL≦VpFOD≦VpREFH”が満たされる場合には異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3が存在している場合、異物3の共振回路JJ(コイルJL)が送電側コイルTLの負荷として機能し、結果、給電台12上に異物3が存在しない場合と比べて、電流振幅検出値VpFODの減少がみられる。
また、異物として、異物3と異なる異物3a(不図示)も考えられる。異物3aは、例えば、アルミニウムを含んで形成された金属体(アルミニウム箔やアルミニウム板)や銅を含んで形成された金属体である。pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3aが存在している場合、給電台12上に異物3aが存在しない場合と比べて、電気的及び磁気的な作用により、電流振幅検出値VpFODの増大がみられる。
電力伝送の実行前において、給電台12上に異物3が存在している場合には電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回るように、且つ、給電台12上に異物3aが存在している場合には電流振幅検出値VpFODが上限値VpREFHを上回るように、且つ、給電台12上に異物(3又は3a)が存在していない場合には電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まるように、実験等を介して、下限値VpREFL及び上限値VpREFHが予め設定されてメモリ150に記憶されている。
尚、給電台12上に異物3aが存在する状態で送電用磁界を発生させると、異物3aにて電力が吸収され、異物3aが発熱するおそれがある。本実施形態では、電力伝送の搬送波周波数としての基準周波数が13.56MHzであることを想定しているため、そのような発熱のおそれは十分に少ないとも言える。故に、異物3aの存在を考慮することなく、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回った場合に限って異物有判定を行い、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFL以上であれば常に異物無判定を行うようにしてもよい(即ち上限値VpREFHを撤廃しても良い)。しかしながら、本実施形態に係る発明において基準周波数は13.56MHzに限定されず、基準周波数を例えば数100kHz程度にした場合には、異物3aの発熱のおそれが高くなるため、下限値VpREFLだけでなく上限値VpREFHをpFOD正常範囲に定める、上述の方法の採用が望ましい。
下限値VpREFLの決定方法について説明を加えておく。下限値VpREFLは初期設定処理にて決定される。図13は、初期設定処理の動作フローチャートである。初期設定処理は、以下の初期設定環境の下でIC100により実行される。初期設定環境では、送電側コイルTLに対する負荷が全く無く又は無視できる程度に小さく、送電側コイルTLの発生磁界により電流を生じさせられる物体(送電側コイルTLに磁気結合するコイルを含む)が、給電機器1の構成部品を除いて存在しない。図1(a)の離間状態は、初期設定環境を満たすと考えても良い。初期設定環境の確保を担保すべく、例えば、給電機器1の製造時又は出荷時などにおいて初期設定処理を行うようにしても良い。但し、初期設定環境を確保できるのであれば、任意のタイミングで初期設定処理を行うことができる。
初期設定処理の実行時には送電回路130が共振回路TTに接続される。そして、ステップS21にて送電側コイルTLによる磁界強度Hを所定のテスト強度に設定し、続くステップS22にて、その設定状態でA/D変換器144から取得される電圧値VDを電圧値VDOとして得る。その後のステップS23において、電圧値VDOに基づく下限値VpREFLをメモリ150に記憶させる。下限値VpREFLは、異物3の存在下においてのみpFOD処理にて異物有判定が成されるよう、電圧値VDOよりも低い値に設定される。例えば、“VpREFL=VDO−ΔV”、又は、“VpREFL=VDO×k”とすると良い。ΔVは、所定の正の微小値である(但し、ΔV=0とすることも可能)。kは、1未満の正の所定値を有する係数である。尚、初期設定環境下において磁界強度Hを所定のテスト強度に設定したときに得られるであろう電圧値VDを、設計段階で見積もることができる。この見積によって導出された値に基づき、初期設定処理を行うことなく、下限値VpREFLを決定してメモリ150に記憶させるようにしても良い。
図14(a)〜図14(d)を参照して、異物3の検出に関する第1〜第4ケースを考える。第1ケースでは、給電台12上に電子機器2のみが存在している。第2ケースでは、給電台12上に電子機器2及び異物3が存在している。第3ケースでは、給電台12上に異物3のみが存在している。第4ケースでは、給電台12上に電子機器2も異物3も存在していない。
上述したように、pFOD処理が実行される期間中には電子機器2においてfO変更/短絡動作が実行されているため、第1ケースでは、送電側コイルTLにとっての負荷が十分に軽くなり(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となり)、電流振幅検出値VpFODが十分に大きくなって異物無判定が成される。一方、第2ケースでは、共振回路RRの共振周波数が上記周波数fMへと変更されるものの又は受電側コイルRLが短絡されるものの、異物3は送電側コイルTLの負荷として存在し続けるため(異物3の共振回路JJの共振周波数は基準周波数のままであるため)、電流振幅検出値VpFODが十分に小さくなって異物有判定が成される。
第3及び第4ケースでは、NFC通信に応答する電子機器2が給電台12上に存在しないため、そもそも送電動作は不要であり、従ってpFOD処理自体が実行されない。給電機器1は、NFC通信により、電力伝送に対応可能な電子機器2が給電台12上に存在しているか否かを判断できる。尚、異物3が給電台12上に存在する状態は、異物3が給電台12に直接接触している状態に限定されない。例えば、図15に示す如く、給電台12上に電子機器2が直接接触する形で存在し且つ電子機器2の上に異物3が存在しているような状態も、異物有判定が成される限り、異物3が給電台12上に存在する状態に属する。
[電力伝送までの信号のやりとり:図16]
図16を参照して、電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりを説明する。以下では、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。
まず、給電機器1が送信側且つ電子機器2が受信側となり、給電機器1(IC100)が、NFC通信によって、問い合わせ信号510を給電台2上の機器(以下、給電対象機器とも言う)に送信する。給電対象機器は、電子機器2を含み、異物3を含みうる。問い合わせ信号510は、例えば、給電対象機器の固有識別情報を問い合わせる信号、給電対象機器がNFC通信を実行可能な状態にあるかを問い合わせる信号、及び、給電対象機器が電力を受け取れるか又は電力の送電を求めているかを問い合わせる信号を含む。
問い合わせ信号510を受信した電子機器2(IC200)は、問い合わせ信号510の問い合わせ内容に答える応答信号520を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、テスト用要求信号530をNFC通信によって給電対象機器に送信する。テスト用要求信号530を受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200)は、テスト用要求信号530に対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから、速やかに、fO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)を実行する。テスト用要求信号530は、例えば、fO変更/短絡動作の実行を要求、指示する信号であり、電子機器2の制御回路250は、テスト用要求信号530の受信を契機としてfO変更/短絡動作を共振状態変更回路240に実行させる。テスト用要求信号530の受信前においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。fO変更/短絡動作の実行の契機となるならばテスト用要求信号530はどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
応答信号540を受信した給電機器1(IC100)は、上述のpFOD処理を実行する。pFOD処理の実行期間中、電子機器2(IC200)は、fO変更/短絡動作の実行を継続する。具体的には、電子機器2(IC200)は、内蔵タイマを用いて、pFOD処理の実行期間の長さに応じた時間だけfO変更/短絡動作の実行を維持してからfO変更/短絡動作を停止する。
pFOD処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100)は、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100)は、送電回路130を共振回路TTに接続して送電動作を実行し、これにより電力伝送570が実現される。
図14(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、図14(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、pFOD処理において給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。1回分の電力伝送570は所定時間だけ行われるものであっても良く、問い合わせ信号510の送信から電力伝送570までの一連の処理を、繰り返し実行するようにしても良い。実際には、図17に示す如く、NFC通信とpFOD処理と電力伝送(NFC電力伝送)とを順番に且つ繰り返し実行することができる。つまり、非接触給電システムでは、NFC通信を行う動作とpFOD処理を行う動作と電力伝送(NFC電力伝送)を行う動作とを、時分割で順番に且つ繰り返し行うことができる。
[給電機器及び電子機器の動作フローチャート]
次に、給電機器1の動作の流れを説明する。図18は、給電機器1の動作フローチャートである。通信回路120及び送電回路130の動作は、制御回路160の制御の下で実行される。
給電機器1が起動すると、まずステップS101において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続する。続くステップS102において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信により問い合わせ信号510を給電対象機器に送信し、その後、ステップS103において、応答信号520の受信を待機する。通信回路120にて応答信号520が受信されると、制御回路160は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に送電対象があると判断して(ステップS104のY)ステップS105に進み、そうでない場合(ステップS104のN)、ステップS102に戻る。
ステップS105において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信によりテスト用要求信号530を給電対象機器に送信し、その後、ステップS106において、応答信号540の受信を待機する。通信回路120にて応答信号540が受信されると、ステップS107において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、続くステップS108にて上述のpFOD処理を行う。
pFOD処理の後、ステップS109にて、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続し、ステップS110に進む。ステップS108のpFOD処理にて、異物有判定が成されている場合にはステップS110からステップS102に戻るが、異物無判定が成されている場合にはステップS110からステップS111に進む。
ステップS111において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信により認証信号550を給電対象機器に送信し、その後、ステップS112において、応答信号560の受信を待機する。通信回路120にて応答信号560が受信されると、ステップS113において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、ステップS114に進む。
制御回路160は、ステップS114にて送電許可フラグにONを設定すると共に、送電動作及びmFOD処理を開始し、その後、ステップS115に進む。詳細は後述されるが、mFOD処理によって電力伝送中における異物の存否が検出され、異物が検出された場合に送電許可フラグがOFFとされる。制御回路160は、送電動作の開始時点からの経過時間を計測し、ステップS115において、その経過時間を所定の時間tA(例えば10分)と比較すると共に送電許可フラグの状態をチェックする。その経過時間が所定の時間tAに達すると、又は、mFOD処理によって送電許可フラグにOFFが設定されると、ステップS116に進む。ステップS116において、制御回路160は、送電許可フラグをONからOFFに切り替える又は送電許可フラグをOFFに維持すると共に、送電動作及びmFOD処理を停止させ、その後ステップS101に戻る。
次に、電子機器2の動作の流れを説明する。図19は、電子機器2の動作フローチャートであり、ステップS201から始まる処理は、図18に示す給電機器1の動作に連動して実行される。通信回路220及び受電回路230の動作は、制御回路250の制御の下で実行される。
電子機器2が起動すると、まずステップS201において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて通信回路220を共振回路RRに接続する。電子機器2の起動時においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。続くステップS202において、制御回路250は、通信回路220を用い、問い合わせ信号510の受信を待機する。通信回路220にて問い合わせ信号510が受信されると、ステップS203において、制御回路250は、問い合わせ信号510を解析して応答信号520を生成し、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号520を給電機器1に送信する。このとき、制御回路250は、バッテリ21の状態を確認し、バッテリ21が満充電状態でなく且つバッテリ21に異常が認められなければ、電力を受け取れる又は電力の送電を求める信号を応答信号520に含める。一方、バッテリ21が満充電状態あれば又はバッテリ21に異常が認められれば、電力を受け取れない旨の信号を応答信号520に含める。
その後のステップS204においてテスト用要求信号530が通信回路220にて受信されると、ステップS205に進む。ステップS205において、制御回路250は、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号540を給電機器1に送信し、続くステップS206にて共振状態変更回路240を用いてfO変更/短絡動作を実行する。即ち、共振周波数fOを基準周波数から周波数fMに変更する又は受電側コイルRLを短絡する。制御回路250は、fO変更/短絡動作の実行を開始してからの経過時間を計測し(ステップS207)、その経過時間が所定時間tMに達するとfO変更/短絡動作を停止する(ステップS208)。即ち、共振周波数fOを基準周波数に戻す又は受電側コイルRLの短絡を解消する。その後、ステップS209に進む。給電機器1にてpFOD処理が実行されている期間(即ちテスト磁界が発生されている期間)中、fO変更/短絡動作の実行が維持され、その期間が終了すると速やかにfO変更/短絡動作が停止されるように時間tMが予め設定されている。テスト用要求信号530の中で時間tMが指定されていても良い。
ステップS209において、制御回路250は、通信回路220を用い、認証信号550の受信を待機する。通信回路220にて認証信号550が受信されると、ステップS210において、制御回路250は、認証信号550に対する応答信号560を通信回路220を用いたNFC通信により給電機器1へ送信する。尚、異物が給電台12上に存在する場合には、認証信号550が給電機器1から送信されないので(図18のステップS110参照)、ステップS209にて認証信号550が一定時間受信されない場合にはステップS201に戻ると良い。
応答信号560の送信後、ステップS211において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて受電回路230を共振回路RRに接続し、続くステップS212にて受電回路230を用いた受電動作を開始させる。制御回路250は、受電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間と所定の時間tBとを比較する(ステップS213)。そして、その経過時間が時間tBに達すると(ステップS213のY)、ステップS214にて、制御回路250は、受電動作を停止させてステップS201に戻る。
受電動作の行われる期間が給電機器1にて送電動作が行われている期間と実質的に一致するように、時間tBは、予め定められている又は認証信号550の中で指定されている。受電動作の開始後、制御回路250は、バッテリ21への充電電流を監視し、充電電流値が所定値以下になった時点で送電動作が終了したと判断して、受電動作の停止及びステップS201への移行を行うようにしても良い。
[mFOD処理]
送電動作の開始後に異物が給電台12上に置かれることもある。mFOD処理は、電力伝送中の異物検出処理として機能し、mFOD処理により電力伝送中において異物の存否が継続監視される。
図20は、mFOD処理の動作フローチャートである。制御回路160は、送電動作を行っている期間において、図20のmFOD処理を繰り返し実行する。mFOD処理において、制御回路160は、まずステップS51にて最新の電圧値VDを電流振幅検出値VmFODとして取得する。電流振幅検出値VmFODは、送電用磁界を送電側コイルTLに発生させているときの、送電側コイルTLに流れる電流の振幅に応じた値を持つ。続くステップS52において、制御回路160は、電流振幅検出値VmFODが所定のmFOD正常範囲に属しているか否かを判断する。電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲に属している場合、異物無判定が成されて(ステップS53)ステップS51に戻りステップS51及びS52の処理が繰り返されるが、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱している場合、ステップS54にて異物有判定が成されて送電許可フラグにOFFが設定される。送電許可フラグは、制御回路160にて管理されるフラグであってON又はOFFに設定される。送電許可フラグがONのとき制御回路160は送電動作の実行を許可し、送電許可フラグがOFFのとき制御回路160は送電動作の実行を禁止する又は送電動作を停止する。
mFOD正常範囲は、所定の下限値VmREFL以上且つ所定の上限値VmREFH以下の範囲である(0<VmREFL<VmREFH)。故に、判定不等式“VmREFL≦VmFOD≦VmREFH”が満たされる場合には異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
図21(a)を参照し、例えば、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に非接触ICカードとして形成された異物3が挿入された場合を考える。この場合、電子機器2の受電側コイルRLと異物3のコイルJLが磁気的に結合して、異物3の共振回路JJの共振周波数と共に電子機器2の共振回路RRの共振周波数が基準周波数(13.56MHz)からずれる。そうすると、受電側コイルRLでの受電電力が低下して送電側コイルTLから見た送電の負荷が軽くなり、結果として、送電側コイルTLに流れる電流の振幅が大きくなる(この場合に“VmREFH<VmFOD”となるように上限値VmREFHを定めておけばよい)。
また例えば、図21(b)を参照し、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に、鉄板又はフェライトシートとしての異物3bが挿入されると、電気的及び磁気的な作用を通じて異物3b内に電流が流れ、結果として、送電側コイルTLに流れる電流の振幅が小さくなる(この場合に“VmFOD<VmREFL”となるように下限値VmREFLを定めておけばよい)。
このように、異物3及び3bを含む異物の存否により電流振幅検出値VmFODに変化が生じる。考えられる異物の種類及び配置状態を想定した実験等を介し、予め適切に決定された下限値VmREFL及び上限値VmREFHを、メモリ150に記憶させておくと良い。また、電力伝送中に、異物が存在することで電流振幅検出値VmFODがどの程度変化するのかを理論計算により推定し、その推定結果に基づき、実験を必要とすることなく、下限値VmREFL及び上限値VmREFHを定めてメモリ150に記憶させても良い。この際例えば、mFOD正常範囲の中心値を基準として電流振幅検出値VmFODを所定の変化率以上変化させるような物体を異物と定義するようにしても良い。
図7に示す増幅器143の増幅率は可変となっている。送電側コイルTLに流れる電流の振幅は、pFOD処理を行っているときよりも、送電動作及びmFOD処理を行っているときの方が随分と大きい。故に、制御回路160は、mFOD処理を行う際において増幅器143の増幅率をpFOD処理を行う際よりも小さく設定し、これによってA/D変換器144の入力信号範囲をpFOD処理及びmFOD処理間で同程度とする。
また例えば、包絡線検波器142とA/D変換器144との間に(より具体的には、包絡線検波器142と増幅器143との間に、又は、増幅器143とA/D変換器144との間に)高域低減回路(不図示)を挿入するようにしても良い。この場合、センス抵抗141の電圧降下信号に高域低減処理(換言すれば平均化処理又は低域通過フィルタリング)を施して得られる振幅情報が、A/D変換器144から電圧値VDとして得られるようになる。ここにおける高域低減処理は、センス抵抗141の電圧降下信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。高域低減処理により、ノイズや給電台12上の電子機器2の軽度な振動などによって送電禁止の制御が行われることが抑制される。
或いは例えば、包絡線検波器142及びA/D変換器144間に高域低減回路を設ける代わりに、A/D変換器144の出力信号による電圧値VDに対し演算による高域低減処理を施して高域低減処理後の電圧値VDを電流振幅検出値VmFODとして用いるようにしても良い(pFOD処理における電流振幅検出値VpFODに対しても同様であって良い)。演算による高域低減処理は、制御回路160にて実行される処理であって、A/D変換器144の出力信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。
尚、mFOD処理の役割は、異物の存否判定だけに限られない。即ち、mFOD処理は、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱するような、送電動作の継続に不適切なあらゆる状況下で、送電許可フラグをOFFとする役割を持つ。例えば、送電動作の開始後、電子機器2が給電台12上から取り去られたとき、送電側コイルTLから見た送電の負荷が軽くなって電流振幅検出値VmFODが上限値VmREFHを超えるため送電許可フラグがOFFとされる(図20のステップS54)。
このように、制御回路160は、送電動作によって電力の送電が行われているとき、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱しているか否かを監視することで送電の継続是非を制御する。これにより、送電動作の開始後に異物が給電台12上に置かれた場合など、送電動作の継続に不適切な状況下で、mFOD処理を通じて送電動作が停止されるため、送電動作の継続による異物の破損等を回避することができる。
<<本発明の第1考察>>
上述の第1実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る送電装置WA1は、受電装置に対し磁界共鳴方式で電力を送電可能な送電装置において、前記電力を送電するための送電側コイル(TL)を含む送電側共振回路(TT)と、前記送電側共振回路に交流電圧を供給可能な送電回路(130)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路(140)と、前記送電回路を制御することで前記電力の送電制御を行う制御回路(160)と、を備え、前記制御回路は、前記電力の送電が行われているとき、前記検出回路の振幅検出値(VmFOD)に基づいて前記送電の継続是非を制御することを特徴とする。
本発明の一側面に係る非接触給電システムWA2は、電力を送電するための送電側コイル(TL)を含む送電側共振回路(TT)を有する送電装置と、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)を有する受電装置と、を備え、磁界共鳴方式で前記電力の送受電が可能な非接触給電システムにおいて、前記送電装置は、前記送電側共振回路に交流電圧を供給可能な送電回路(130)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路(140)と、前記送電回路を制御することで前記電力の送電制御を行う制御回路(160)と、を備え、前記制御回路は、前記電力の送電が行われているとき、前記検出回路の振幅検出値(VmFOD)に基づいて前記送電の継続是非を制御することを特徴とする。
送電装置WA1及び非接触給電システムWA2によれば、送電動作の開始後において送電側コイルの発生磁界が及ぶ位置に異物が存在するようになった場合など、送電動作の継続に不適切な状況下で、送電動作を停止するといったことが可能となるため、例えば、送電の継続による異物の破損等を回避することができる。
具体的には例えば、送電装置WA1又は非接触給電システムWA2において、前記制御回路は、前記電力の送電が行われているとき、前記検出回路の振幅検出値が所定範囲(mFOD正常範囲)を逸脱しているか否かを監視することで、前記送電の継続是非を制御すると良い。
より具体的には例えば、送電装置WA1又は非接触給電システムWA2において、前記検出回路の振幅検出値の前記所定範囲からの逸脱が検出された際、前記送電を停止させると良い。
検出回路の振幅検出値が所定範囲から逸脱する状況は、送電側コイルの発生磁界が及ぶ位置に異物が存在するようになった場合など、送電動作の継続に不適切な状況に相当すると考えられる。このような状況下において送電を停止することで、例えば、送電の継続による異物の破損等を回避することが可能となる。
また例えば、送電装置WA1又は非接触給電システムWA2において、前記制御回路は、前記電力の送電が行われているとき、前記検出回路の振幅検出値が前記所定範囲を逸脱しているか否かを判断することで、前記受電装置と異なり且つ前記送電側コイルの発生磁界に基づく電流を発生させられる異物の存否を判断し、前記異物が存在すると判断した場合に前記送電を停止させると良い。
この際例えば、送電装置WA1又は非接触給電システムWA2において、前記制御回路は、前記電力の送電が行われているとき、前記検出回路の振幅検出値が前記所定範囲の上限値を超えているか否かを判断することで、前記異物としての、コイルを含んだ異物の存否を判断すると良い。
また例えば、送電装置WA1において、前記受電装置は、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)と、前記電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を前記受電の際の共振周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路(240)と、を備え、前記制御回路(160)は、当該送電装置からの通信による信号に従い前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態で、前記送電に先立ち所定のテスト磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御する第1処理部と、前記テスト磁界が発生されているときの前記検出回路の振幅検出値(VpFOD)に基づき前記送電の実行可否を判断する第2処理部(pFOD処理)と、前記送電を実行可能と判断した後に前記テスト磁界よりも大きな送電用磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御することで前記送電を実現する第3処理部と、を有し、前記検出回路(140)は、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を示す信号を増幅する処理を経て前記振幅を検出し、前記増幅における増幅率は、前記送電側コイルにて前記テスト磁界が発生せしめられているときよりも、前記送電側コイルにて前記送電用磁界が発生せしめられているときの方が小さいと良い。
また例えば、非接触給電システムWA2において、前記受電装置は、前記電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を前記受電の際の共振周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路(240)を備え、前記制御回路(160)は、前記送電装置からの通信による信号に従い前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態で、前記送電に先立ち所定のテスト磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御する第1処理部と、前記テスト磁界が発生されているときの前記検出回路の振幅検出値(VpFOD)に基づき前記送電の実行可否を判断する第2処理部(pFOD処理)と、前記送電を実行可能と判断した後に前記テスト磁界よりも大きな送電用磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御することで前記送電を実現する第3処理部と、を有し、前記検出回路(140)は、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を示す信号を増幅する処理を経て前記振幅を検出し、前記増幅における増幅率は、前記送電側コイルにて前記テスト磁界が発生せしめられているときよりも、前記送電側コイルにて前記送電用磁界が発生せしめられているときの方が小さいと良い。
第2処理部を設けることで、送電側コイルの発生磁界が及ぶ位置に異物が存在する場合など、送電の実行に不適切な状況下では、送電を行わないといったことが可能となるため、例えば、送電の実行(実行開始)による異物の破損等を回避することができる。また、上記のように増幅率を定めることで、増幅後の信号レベルを、テスト磁界の発生時と送電用磁界の発生時との間で同程度にするといったことが可能となり、これによって例えば、増幅後の信号を処理する回路の共用化が容易となる。
尚、上述の第1実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の第1実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の第1実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の第1実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2実施形態にも適用される。
図22に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。X軸及びY軸に平行な面、Y軸及びZ軸に平行な面、Z軸及びX軸に平行な面を、夫々、XY面、YZ面、ZX面と称することもある。X軸及びY軸は給電台12の載置面に平行であり、従ってZ軸は給電台12の載置面に直交している。給電台12の載置面は電子機器2が載置されるべき面であり、該載置面上に電子機器2及び異物が載置されうる。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態の各記述において、及び、それらで参照される各図において、特に記述無き限り、電子機器2は基準配置状態にて給電台12の載置面上に載置されているものとする。基準配置状態では、給電機器1及び電子機器2が電力の送受電を行うための所定位置関係にある。
図23(a)、(b)は、基準配置状態での給電機器1及び電子機器2における送電側コイルTL及び受電側コイルRLの概略的な斜視図、断面図である。図24(a)、(b)は、非接触ICカードに代表される異物3が給電台12の載置面上に置かれている状態での給電機器1及び異物3におけるコイルTL及びJLの概略的な斜視図、断面図である。図23(a)及び図24(a)では、図示の簡略化及び煩雑化防止のため、コイルTL、RL及びJLの巻線を二重円にて表現している(後述の図25(c)等においても同様)。コイルの図示を含む図面において、コイルを表す二重円から側方に伸びる線分はコイルの引き出し線を表している。図23(b)及び図24(b)の断面図における断面はYZ面に平行である。コイルTL、RL及びJLの夫々はループアンテナを形成している。基準配置状態において、コイルTL及びRLとしてのループアンテナのループ面(即ち、コイルTL及びRLの巻線が配置されている面)はXY面に平行であり、従ってコイルTL及びRLの中心軸はZ軸に平行である。コイルTLは、自身の中心軸周りに巻線(銅線など)が巻かれることで形成される(コイルRL及びJLについても同様)。また、異物3が給電台12の載置面上に置かれている状態おいて、コイルJLとしてのループアンテナのループ面(即ち、コイルJLの巻線が配置されている面)は、通常、コイルTLと同じくXY面に平行であり、従ってコイルJLの中心軸はZ軸に平行である。
コイルTL及びRL間の結合係数を高めるべく、XY面上においてコイルTL及びRLは互いに同じ形状を有している(但し、それらは互いに異なる形状を有し得る)。本明細書において、コイルの形状とは、コイルの大きさを含む概念である。任意のコイルに関し、コイルの大きさとは、コイルの中心軸に直交する方向においてコイルの外周が占有する面積を表すと考えて良い。コイルがループアンテナを形成している場合には、そのループアンテナのループ面(即ち、当該コイルの巻線が配置されている面)における、当該コイルの巻線に囲まれた部分の面積が当該コイルの大きさに相当する。
尚、図23(a)等ではコイルTL及びRLの外周形状(換言すれば外形形状)が円とされているが、コイルTL及びRLの夫々において、コイルの外周形状は円に限定されず、楕円又は多角形(長方形など)であっても良いし、直線と曲線がコイルの外周形状に混在していても良い。
以下、第2実施形態では、電子機器2に金属部(以下、受電側金属部MT2と称する:不図示)が設けられていることを想定する。後述の第3及び第4実施形態においても同様の想定を行う。受電側金属部MT2は、電子機器2の筐体の全部又は一部を構成していても良い。即ち例えば、受電側金属部MT2は、電子機器2の筐体としての箱状の金属製ケースであっても良い。或いは例えば、電子機器2の筐体が樹脂材料にて形成され且つ受電側金属部MT2が電子機器2の筐体内にて固定されていても良い。受電側金属部MT2は、主として例えば、電子機器2の構造的強度や質感を高めるために設けられる。
受電側金属部MT2を構成する金属はアルミニウムであるとする。受電側金属部MT2を構成する金属は、アルミニウムと他の金属との合金、即ちアルミニウム合金(例えばアルミニウムと銅の合金としてのジュラルミン)であっても良い。但し、受電側金属部MT2がアルミニウム又はアルミニウム合金にて構成される場合と同様の影響をコイルRL及びTLに与える限り、受電側金属部MT2を構成する金属はアルミニウム又はアルミニウム合金以外でも良い。
受電側金属部MT2は、どのような形状を有していても良いが、図25(a)に示すような、開口部271を有した金属板270を有しているものとする。基準配置状態において金属板270はXY面に平行である。開口部271は、金属板270に設けられたZ軸方向に貫通する穴であり、従って開口部271には金属が存在しない。XY面上において開口部271は閉領域を形成しており、開口部271と金属板270の外周との間には接点が無い。故に、XY面において開口部271の周りにはアルミニウムによる電路(電流ループ)が形成される。開口部271は、樹脂材料などの金属以外の材料にて封止されうる。樹脂材料は、例えば、ポリカーボネイト、ポリプロピレンである。
XY面上において金属板270の外形形状は長方形である。但し、XY面上において、金属板270の外形形状はこれに限定されず、曲線を含んでいても良いし、直線と曲線が金属板270の外形形状に混在していても良い。またここでは、XY面上における開口部271の形状が円(三次元で考えると円柱形状)であると考えるが、XY面上において、開口部271の形状は円に限定されず、楕円又は多角形(長方形など)であっても良いし、直線と曲線が開口部271の形状に混在していても良い。
受電側金属部MT2は、金属板270に加えて他の金属部分を含んでいても良い。即ち例えば、図26に示す如く、受電側金属部MT2が電子機器2の筐体としての箱状の金属製ケースCSMT2である場合には、金属板270は金属製ケースCSMT2の一面(底面)を形成する。
但し、以下の説明及び以下の説明で参照される図面(図25(a)〜図25(c)を含む)では、説明及び図示の簡略化のため、受電側金属部MT2に関して金属板270のみに注目する。図25(a)は、基準配置状態における金属板270の斜視図であり、図25(b)は、基準配置状態における給電機器1及び電子機器2の一部部品の透過図である。図25(c)は、Z軸方向から見た基準配置状態における金属板270及び受電側コイルRLの平面図である。開口部271は受電側コイルRLの配置位置の対向位置(受電側コイルRLの配置位置に対して対向する位置)に設けられており、基準配置状態では、開口部271がコイルTL及びRL間に位置して、コイルTL及びRLが開口部271を介して互いに対向し合うことになる。
そして、XY面において開口部271の大きさはコイルTL及びRLの大きさよりも大きく、Z軸方向に沿ってコイルRL、開口部271及びコイルTLを見たとき、互いに重なり合うコイルRL及びTLの外周は開口部271内に内包される。開口部271の形状、コイルRL及びTLの外周形状が全て円であると考えた場合、それらの円の中心はZ軸に平行な1つの直線上に位置し、図27に示す如く、開口部271の形状としての円の半径r1は、コイルRL及びTLの外周形状としての円の半径r2よりも大きいことになる。このため、コイルTL及びRLを用いた電力伝送を、若干の損失はあるものの良好に実現できる。例えば、半径r1を半径r2よりも5mm(ミリメートル)大きくすると、金属板270が無い場合から見た損失の割合は10〜20%程度となる。
アルミニウムにて形成された金属板270の影響について説明する。
図28(a)を参照し、基準配置状態では、送電側コイルTLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合する。送電側コイルTLに交流電流I1が流れると、それにより送電側コイルTLにて発生した磁界に基づき、電磁誘導によって交流電流I1と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I31が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる。送電側コイルTL及び金属板270間の結合係数をK13とおくと、交流電流I31は“I31=K13×I1”にて表される。一方、
図28(b)を参照し、電子機器2内においては、受電側コイルRLも開口部271を有する金属板270と磁気的に結合する。受電側コイルRLに交流電流I2が流れると、それにより受電側コイルRLにて発生した磁界に基づき、電磁誘導によって交流電流I2と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I32が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる。受電側コイルRL及び金属板270間の結合係数をK23とおくと、交流電流I32は“I32=K23×I2”にて表される。
図28(c)は、電流I1、I2、I31及びI32を複素平面上に示したものである。交流電流I2は、交流電流I1に基づき受電側コイルRLに流れる共振電流であり、“I2=jQK12×I1”にて表される。ここで、K12は基準配置状態におけるコイルTL及びRL間の結合係数であり、Qは受電側コイルRLのQであり、jは虚数である。電流I2は電流I1に対して位相が90度遅れることになる。
共振回路TTの共振周波数に関して考えると、電流I31が発生せしめられる金属板270の存在は、送電側コイルTLのインダクタンスを等価的に減少させるように(換言すれば共振回路TTを構成するインダクタンス成分を減少させるように)、結果、共振回路TTの共振周波数を増大させるように作用する。
共振回路RRの共振周波数に関して考えると、電流I32が発生せしめられる金属板270の存在は、受電側コイルRLのインダクタンスを等価的に減少させるように(換言すれば共振回路RRを構成するインダクタンス成分を減少させるように)、結果、共振回路RRの共振周波数を増大させるように作用する。
このため、金属板270の存在を無視して給電機器1及び電子機器2を設計すると、金属板270の存在によって共振回路TT及びRRの共振周波数が基準周波数からずれる(このようなずれを、以下、共振周波数シフト現象という)。共振周波数シフト現象は、磁気共鳴を利用した電力伝送の効率低下などの影響をもたらしうる。
また、送電側コイルTLにて交番磁界を発生させたとき、送電側コイルTLの発生磁界により金属板270に流れた電流に基づく電圧が送電側コイルTLに発生し、その電圧は送電側コイルTLに流れる電流の振幅を増大させるように作用する(この増大を、以下、電流振幅増加現象という)。結果、給電台12上に異物3が存在していなくても、pFOD処理又はmFOD処理において異物が存在すると誤認するおそれが生じる。つまり、金属板270が異物と誤認されるおそれがある(金属板270は電子機器2の構成部品であるので、当然、異物として認識されるべきではない)。この誤認を回避するために、pFOD正常範囲又はmFOD正常範囲における上限値を高めに設定しておくことも考えられるが、そのような設定は、真に検出されるべき異物の検知性能劣化に繋がる。また例えば、非接触ICカードに代表される異物3の検出に注目したとき、pFOD処理においては、異物3の存在による送電側コイルTLの電流振幅低下を観測することになるが、送電側コイルTLの電流振幅が金属板270の影響を受けて増加すると、その増加が、異物3の存在による電流振幅低下観測に対しノイズとして機能し、異物3の検出が行いにくくなる。
<<第3実施形態>>
そこで、本発明の第3実施形態では、第2実施形態の電子機器2に対し、金属板270の影響を打ち消すように作用する磁性体部MG2を追加する。本実施形態において、打ち消しとは、打ち消されるべき対象の完全なる打ち消しを理想とするが、部分的な打ち消しにもなりえる。第3実施形態は第1及び第2実施形態を基礎とする実施形態であり、第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1及び第2実施形態の記載が第3実施形態にも適用される(矛盾する事項に関しては第3実施形態の記載が優先される)。
磁性体部MG2は、高透磁率を示す任意の磁性材料から構成され、例えばフェライトにて構成される。詳細な構造例は後に述べられるが、磁性体部MG2は、基準配置状態において(即ち、給電機器1及び電子機器2が電力の送受電を行うための所定位置関係にあるときにおいて)、共振回路TT及びRRの共振周波数の少なくとも一方に影響を与える位置に設けられ、これよって共振回路TT及びRRの共振周波数が基準周波数に揃えられた状態での電力伝送が可能とされる。
以下、第3実施形態に属する実施例EX3_1〜EX3_5の中で、磁性体部MG2の詳細構造等を説明する。尚、矛盾無き限り、実施例EX3_1〜EX3_5の内、任意の実施例で記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる。
[実施例EX3_1]
実施例EX3_1を説明する。図29(a)〜(c)を参照する。実施例EX3_1では、磁性体部MG2として磁性体板(開口部内磁性体)281が設けられる。磁性体部MG2は、磁性体板281に加えて他の磁性体部を含みうるが、ここでは磁性体板281にのみ注目する。図29(b)に示す如く、磁性体板281は金属板270の開口部271内に配置及び固定される。図29(b)は磁性体板281が開口部271内に固定された状態での金属板270の斜視図であり、図29(a)は磁性体板281と金属板270の分解斜視図である。尚、図29(a)〜(c)では、図示の便宜上、磁性体板281をドット領域にて表現している。
磁性体板281は開口部271と実質的に同じ形状を有しており、磁性体板281を開口部271内に嵌め込んだ状態で、接着剤等を用いて磁性体板281を開口部271内で固定する。金属板270と磁性体板281を連結する樹脂シート(不図示)を用いて、開口部271内での磁性体板281の固定強度を増加させても良い。磁性体板281を開口部271内に嵌め込むという構成を採用しているため、磁性体板281は開口部271の形状(ここでは円柱形状)と同じ円柱形状を有しているが、開口部271の形状が変化すれば磁性体板281の形状も変化する。このように、磁性体板281によって開口部271が封止され、開口部271を通じた空気の流通は無い又は極めて少ない。図26に示す如く、受電側金属部MT2が電子機器2の筐体としての箱状の金属製ケースCSMT2である場合には、磁性体板281によって開口部271が封止されることで、金属製ケースCSMT2内の気密性が保たれ、またケースとしての強度も担保される。
図29(c)に、磁性体板281が開口部271に嵌め込まれた状態における金属板270及び磁性体板281の断面図(開口部271の中心を通る、YZ面に平行な断面による断面図)を、コイルTL及びRLと共に示す。基準配置状態において、送電側コイルTL、磁性体板281及び受電側コイルRLは、Z軸に沿って並ぶことになり、送電側コイルTL及び磁性体板281間の距離、受電側コイルRL及び磁性体板281間の距離を、夫々、d1、d2にて表す。
金属板270及び磁性体板281の夫々はXY面に平行な外側面と内側面を有することになるが、金属板270の外側面と磁性体板281の外側面は同一の平面上に位置すると共に(即ち面一とされ)、金属板270の内側面と磁性体板281の内側面は他の同一の平面上に位置する(即ち面一とされる)。金属板270及び磁性体板281において、外側面とは内側面よりも送電側コイルTLに近い面であり、従って内側面とは外側面よりも受電側コイルRLに近い面である。距離d1は、Z軸方向における、磁性体板281の外側面(又は中心)と送電側コイルTLの中心との間の距離であると考えて良く、同様に、距離d2は、Z軸方向における、磁性体板281の内側面(又は中心)と受電側コイルRLの中心との間の距離であると考えて良い。
送電側コイルTL、受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板281に流れる電流の関係を説明する。図30(a)〜(c)にはそれらの関係が模式的に示されている。
図30(a)を参照し、基準配置状態では、送電側コイルTLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合すると共に磁性体板281とも磁気的に結合する。送電側コイルTLに交流電流I1が流れると、それにより送電側コイルTLにて発生した磁界に基づき、交流電流I1と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I31が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる一方で交流電流I1と同方向の(即ち交流電流I1と同じ位相を有する)交流電流I41が磁性体板281に流れる。
電流I41と電流I31は互いに逆方向の電流であるため、共振回路TTに対し、磁性体板281は、開口部271を有する金属板270とは逆の作用を与える。つまり、電流I41が発生せしめられる磁性体板281の存在は、開口部271を有する金属板270とは逆に、送電側コイルTLのインダクタンスを等価的に増大させるように(換言すれば共振回路TTを構成するインダクタンス成分を増大させるように)、結果、共振回路TTの共振周波数を減少させるように作用し、また、送電側コイルTLに流れる電流の振幅を減少させるように作用する。
このように、共振回路TTに対して磁性体板281は金属板270とは逆の作用を与えるため、金属板270が存在することによる共振回路TTへの影響を磁性体板281により打ち消す(減ずる)ことができる。共振回路TTに対する電流I31の作用と電流I41の作用とが互いに丁度打ち消し合う距離d1REFは、開口部271の形状、送電側コイルTLの形状などに依存して一意に定まり、ここでは、“d1=d1REF”とされる。
図30(b)を参照し、電子機器2内においては、受電側コイルRLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合すると共に磁性体板281とも磁気的に結合する。受電側コイルRLに交流電流I2が流れると、それにより受電側コイルRLにて発生した磁界に基づき、交流電流I2と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I32が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる一方で交流電流I2と同方向の(即ち交流電流I2と同じ位相を有する)交流電流I42が磁性体板281に流れる。
電流I42と電流I32は互いに逆方向の電流であるため、共振回路RRに対し、磁性体板281は、開口部271を有する金属板270とは逆の作用を与える。つまり、電流I42が発生せしめられる磁性体板281の存在は、開口部271を有する金属板270とは逆に、受電側コイルRLのインダクタンスを等価的に増大させるように(換言すれば共振回路RRを構成するインダクタンス成分を増大させるように)、結果、共振回路RRの共振周波数を減少させるように作用し、また、受電側コイルRLに流れる電流の振幅を減少させるように作用する。
このように、共振回路RRに対して磁性体板281は金属板270とは逆の作用を与えるため、金属板270が存在することによる共振回路RRへの影響を磁性体板281により打ち消す(減ずる)ことができる。共振回路RRに対する電流I32の作用と電流I42の作用とが互いに丁度打ち消し合う距離d2REFは、開口部271の形状、受電側コイルRLの形状などに依存して一意に定まり、ここでは、“d2=d2REF”とされる。
上述したように送電側コイルTLと受電側コイルRLの形状が互いに同じであることを想定した場合、“d1REF=d2REF”となり、故に“d=d1=d2”とする。即ち、図30(c)に示す如く、磁性体板281を基準としてコイルTLとコイルRLを互いに鏡像の位置に配置する。そうすると、基準配置状態において、コイルTLにとってもコイルRLにとっても、あたかも金属板270及び磁性体板281が存在しないかのような状態となる。基準配置状態において“d1=d1REF=d2=d2REF”となるように、電子機器2において受電側コイルRL及び金属板270が図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成されている。
送電側コイルTLのインダクタンスをL1にて表し且つ送電側コンデンサTCの静電容量をC1で表すと、L1及びC1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1は、1/(2π(L1C1)1/2)となる(即ち、2πと(L1C1)の平方根との積の逆数となる)。受電側コイルRLのインダクタンスをL2にて表し且つ受電側コンデンサRCの静電容量をC2で表すと、L2及びC2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2は、1/(2π(L2C2)1/2)となる(即ち、2πと(L2C2)の平方根との積の逆数となる)。実施例EX3_1では、第1実施形態と同様、共振回路TTの共振周波数f1も共振回路RRの共振周波数f2(第1実施形態では記号fOにて表現)も、所定の基準周波数(13.56MHz)に設定しておく。
共振回路RRの共振周波数は、アルミニウム及び/又はフェライトの影響を考慮すると周波数f2から変化しうるが、受電側コイルRLから見て距離dの位置に金属板270及び磁性体板281が配置した場合には基準周波数から変化しない。この状態で、金属板270に対し距離dの位置に送電側コイルTLが置かれても共振回路TTの共振周波数は基準周波数から変化しない。つまり、共振回路TT及びRR間の電力伝送にとって、金属板270及び磁性体板281は若干の損失を発生させることを除いて無いに等しい。
実施例EX3_1の構成によれば、金属板270の存在によって生じる共振回路RRの共振周波数の変化が磁性体板281にて打ち消される(減少せしめられる)と共に、基準配置状態において金属板270の存在によって生じる共振回路TTの共振周波数の変化が磁性体板281にて打ち消される(減少せしめられる)ため、上記共振周波数シフト現象に基づく影響が解消される。また、金属板270の存在によって生じる送電側コイルTLの電流振幅増加が磁性体板281の作用により打ち消される(減少せしめられる)ため、上記電流振幅増加現象に基づく影響も解消される。
コイルTL及びRL間の磁気結合の度合いを高めるべくコイルTL及びRLの形状を同じにした場合、距離d1(=d1REF)と距離d2(=d2REF)を同じ距離dとしておくことで、上記打ち消しの効果が最適化される。
但し、コイルTL及びRLの形状が互いに異なる場合には、距離d1(=d1REF)と距離d2(=d2REF)は互いに異なることになる。また、打ち消し効果が落ちはするが、距離d1が距離d1REFから多少ずれることが有りえて良いし、距離d2が距離d2REFから多少ずれることが有りえて良い(結果、“d1≠d2”であることが有りえて良い)。
また、電子機器2の機械的強度又は気密性等を担保する観点から必要となる開口部271の封止を磁性体板281にて実現するようにすることで、別途に樹脂材料等を用いて開口部271の封止処理を行う必要がなくなり、電子機器2の構成及び製造が簡素化、容易化される。
但し、磁性体板281に、Z軸方向に沿って貫通する穴部を有したリング状の形状を持たせることも可能である。但し、この場合には、その穴部に対して樹脂材料等を用いた封止処理が必要となるため、磁性体板281に穴部を設けないことが好ましい。
また、磁性体板281が金属板270に対し外側面でも内側面でも面一で配置されるため、金属板270及び磁性体板281の受電側コイルRLへの影響と金属板270及び磁性体板281の送電側コイルTLへの影響とを容易且つ確実に等しくすることができ、また、金属板270を用いて電子機器2の筐体を構成する場合には、電子機器2のユーザに違和感を与えうる開口部271での段差が生じない。
但し、特に例えば金属板270が電子機器2の筐体を構成しない場合にあっては(金属板270が電子機器2の最外周に位置しない場合には)、金属板270の外側面において磁性体板281が面一で配置されることは必須ではなく、また、金属板270の内側面においても磁性体板281が面一で配置されることは必須ではない。
[実施例EX3_2]
実施例EX3_2を説明する。上述したように、開口部271を有する金属板270は、共振回路TT及びRRの共振周波数を高める方向に変化させる。この変化を打ち消して共振回路TT、RRの共振周波数を基準周波数に保つためには、夫々、送電側コイルTL、受電側コイルRLの近傍に磁性体板を設ければ良い。金属板270の存在による共振周波数の基準周波数からの変化を打ち消して該共振周波数を基準周波数に保つことを、ここでは「中立化」と呼ぶ。実施例EX3_2では、受電側コイルRLの近傍に磁性体板を設けることで、共振回路RRに対してのみ中立化を図る。
図31(a)及び(b)を参照する。実施例EX3_2では、磁性体部MG2として磁性体板282が設けられる。尚、本実施例に限らず、本明細書において磁性体板は厚みの薄い磁性体シートと称されるものであっても良い。磁性体部MG2は、磁性体板282に加えて他の磁性体部を含みうるが、ここでは磁性体板282にのみ注目する。磁性体板282は、金属板270の存在による共振回路RRの共振周波数の基準周波数からの変化を打ち消して該共振周波数を基準周波数に保つように作用する。故に、受電側コイルRLのインダクタンスL2及び受電側コンデンサRCの静電容量C2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2を基準周波数に設定しておいて良い。
図31(a)は、基準配置状態における磁性体板282、受電側コイルRL、金属板270及び送電側コイルTLの斜視図である。図31(b)には、金属板270及び磁性体板282の断面図(開口部271の中心を通る、YZ面に平行な断面による断面図)が、コイルTL及びRLと共に示されている。尚、図31(a)及び(b)では、磁性体板282をドット領域にて表現している。実際には、開口部271は樹脂材料等にて封止されるが、その封止の様子は図31(a)及び(b)に示されていない。
磁性体板282は、XY面上において円の外形形状を有する磁性体である。但し、XY面上における磁性体板282の外形形状は任意に変更可能であり、例えば、楕円、多角形でも良い。また、磁性体板282にZ軸方向に貫通する穴部が設けられていても良い。電子機器2において、受電側コイルRLが磁性体板282と金属板270との間に位置するように(換言すれば、受電側コイルRLが配置される平面が磁性体板282が配置される平面と金属板270が配置される平面との間に位置するように)、受電側コイルRL、磁性体板282及び金属板270が図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されている。
送電側コイルTL、受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板282に流れる電流の関係を説明する。図32(a)及び(b)にはそれらの関係が模式的に示されている。
図32(a)を参照し、電子機器2内においては、受電側コイルRLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合すると共に磁性体板282とも磁気的に結合する。送電側コイルTLに交流電流I1が流れたことによる送電側コイルTLでの発生磁界に基づき受電側コイルRLに交流電流I2が流れる。そうすると、交流電流I2の流れにより受電側コイルRLに発生した磁界に基づき、交流電流I2と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I32が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる一方で交流電流I2と同方向の(即ち交流電流I2と同じ位相を有する)交流電流I42が磁性体板282に流れる。
図32(b)は、電流I1、I2、I32及びI42を複素平面上に示したものである。電流I1、I2及びI32の関係は既に述べた通りである(図28(c)参照)。受電側コイルRL及び磁性体板282間の結合係数をK24とおくと、交流電流I42は“I42=K24×I2”にて表される。
電流I42と電流I32は互いに逆方向の電流であるため、共振回路RRに対し、磁性体板282は、開口部271を有する金属板270とは逆の作用を与える。つまり、電流I42が発生せしめられる磁性体板282の存在は、開口部271を有する金属板270とは逆に、受電側コイルRLのインダクタンスを等価的に増大させるように(換言すれば共振回路RRを構成するインダクタンス成分を増大させるように)、結果、共振回路RRの共振周波数を減少させるように作用し、また、受電側コイルRLに流れる電流の振幅を減少させるように作用する。
このように、共振回路RRに対して磁性体板282は金属板270とは逆の作用を与えるため、金属板270が存在することによる共振回路RRへの影響を磁性体板282により打ち消す(減ずる)ことができる。共振回路RRに対する電流I32の作用と電流I42の作用とが互いに丁度打ち消し合うように、即ち共振回路RRに対して中立化が実現されるように、開口部271の形状、受電側コイルRLの形状などに応じて、磁性体板282の形状及び配置位置などを定める。
共振回路RRに対する中立化は送電側コイルTLの位置を無視して行われ、送電側コイルTLは磁性体板282よりも相対的に近い位置にある金属板270の影響を強く受ける。これを考慮し、基準配置状態で金属板270の影響を受けて(又は金属板270及び磁性体板282の影響を受けて)共振回路TTの共振周波数が増加した結果、共振回路TTの共振周波数が基準周波数となるように、離間状態において送電側コイルTLのインダクタンスL1及び送電側コンデンサTCの静電容量C1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1を基準周波数よりも低い所定周波数(例えば13MHz)に設定しておく。これにより、電力伝送は、共振回路TT及びRRの各共振周波数が基準周波数に設定された状態で行われることになり、上記共振周波数シフト現象に基づく影響が解消される。但し、金属板270の存在による送電側コイルTLの電流振幅増加は打ち消されないため、上記電流振幅増加現象に基づく影響を解消する観点からいえば、実施例EX3_1の方が好ましい。
磁性体板282を集積回路などに対する磁界遮断用途に流用して良い。図33に示す如く、電子機器2には、受電側IC200等の集積回路を含む電子回路ELが実装された基板SUBが設けられている。電子回路ELは受電側コイルRLから見て磁性体板282の反対側に配置される。即ち、磁性体板282は集積回路を含む電子回路ELと受電側コイルRLとの間に挿入される。より具体的には例えば、集積回路を含む電子回路ELを基板SUBの部品面に実装し、基板SUBの部品面と反対側の面に磁性体板(磁性体シート)282を貼り付ける。これにより、電子回路ELの動作にとって不要なコイルRL又はTLの発生磁界が磁性体板282にて吸収され、電子回路ELの誤動作等の抑制に寄与する。電子回路ELの誤動作等の抑制のために、電子回路EL及び受電側コイルRL間に磁性体板(磁性体シート)を挿入することが元々必要であるならば、その磁性体板(磁性体シート)を共振回路RRについての中立化に流用しているとも言える。
実施例EX3_2にて上述した内容が実現されるように、電子機器2において受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板282が図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に、給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成される。
[実施例EX3_3]
実施例EX3_3を説明する。実施例EX3_3では、基準配置状態において金属板270と送電側コイルTLとの間に磁性体板が挿入されるようにすることで、共振回路TTに対し中立化を図る。
図34(a)及び(b)を参照する。実施例EX3_3及び後述の実施例EX3_4においては、XY面上における開口部271の形状が長方形であるものとする。開口部271の形状を長方形とする場合、コイルTL及びRLの外周形状も長方形にしても良い。実施例EX3_3では、磁性体部MG2として磁性体板283(上述したように磁性体シートでも良い)が設けられる。磁性体部MG2は、磁性体板283に加えて他の磁性体部を含みうるが、ここでは磁性体板283にのみ注目する。磁性体板283は、基準配置状態において、金属板270の存在による共振回路TTの共振周波数の基準周波数からの変化を打ち消して該共振周波数を基準周波数に保つように作用する。故に、送電側コイルTLのインダクタンスL1及び送電側コンデンサTCの静電容量C1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1を基準周波数に設定しておいて良い。
図34(a)は、Z軸方向に沿って受電側コイルRLの反対側から金属板270を見たときの、金属板270及び磁性体板283の平面図である。尚、図34(a)にはコイルRLも示されている。図34(a)では、図示の簡略化及び煩雑化防止のため、コイルRLの巻線を二重長方形にて表現しており、該二重長方形から側方に伸びる線分はコイルの引き出し線を表している(後述の図36等においても同様)。図34(b)には、金属板270及び磁性体板283の断面図(開口部271の中心を通る、YZ面に平行な断面による断面図)が、コイルTL及びRLと共に示されている。尚、図34(a)及び(b)では、磁性体板283をドット領域にて表現している。実際には、開口部271は樹脂材料等にて封止されるが、その封止の様子は図34(a)及び(b)に示されていない。
磁性体板283は、開口部271の周りにおいて金属板270の一部を覆うように、金属板270の外側面に貼り付けられたロの字状の磁性体板である。既に述べたように、金属板270において、外側面とは内側面よりも送電側コイルTLに近い面であり、従って内側面とは外側面よりも受電側コイルRLに近い面である。金属板270と同様、磁性体板283も開口部を有し、XY面上において磁性体板283の開口部の内側に金属板270の開口部271が存在する。尚、ここで示す磁性体板283の外形形状は例示に過ぎず、例えば磁性体板283の外形形状は曲線を含んでいても良い(円又は楕円などでもよい)。また、磁性体板283に開口部が存在していなくても良い。
上述の位置関係から明らかなように、金属板270は受電側コイルRLと磁性体板283との間に配置され(換言すれば、金属板270が配置される平面は受電側コイルRLが配置される平面と磁性体板283が配置される平面との間に配置され)、基準配置状態では磁性体板283が金属板270と送電側コイルTLとの間に配置されることになる(換言すれば、基準配置状態では磁性体板283が配置される平面は金属板270が配置される平面と送電側コイルTLが配置される平面との間に配置されることになる)。
送電側コイルTL、金属板270及び磁性体板283に流れる電流の関係を説明する。図35にはそれらの関係が模式的に示されている。基準配置状態では、送電側コイルTLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合すると共に磁性体板283とも磁気的に結合する。送電側コイルTLに交流電流I1が流れると、それにより送電側コイルTLにて発生した磁界に基づき、交流電流I1と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I31が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる一方で交流電流I1と同方向の(即ち交流電流I1と同じ位相を有する)交流電流I41が磁性体板283に流れる。
電流I41と電流I31は互いに逆方向の電流であるため、共振回路TTに対し、磁性体板283は、開口部271を有する金属板270とは逆の作用を与える。つまり、電流I41が発生せしめられる磁性体板283の存在は、開口部271を有する金属板270とは逆に、送電側コイルTLのインダクタンスを等価的に増大させるように(換言すれば共振回路TTを構成するインダクタンス成分を増大させるように)、結果、共振回路TTの共振周波数を減少させるように作用し、また、送電側コイルTLに流れる電流の振幅を減少させるように作用する。
このように、共振回路TTに対して磁性体板283は金属板270とは逆の作用を与えるため、金属板270が存在することによる共振回路TTへの影響を磁性体板283により打ち消す(減ずる)ことができる。共振回路TTに対する電流I31の作用と電流I41の作用とが互いに丁度打ち消し合うように、即ち共振回路TTに対して中立化が実現されるように、開口部271の形状、送電側コイルTLの形状などに応じて、磁性体板283の形状及び配置位置などを定める。
仮に金属板270の外側面の全体を磁性体板283で覆うと、送電側コイルTLに対する金属板270の影響が殆ど無くなる一方で、磁性体板283の影響が不必要に強くなりすぎる。故に、金属板270の一部を磁性体板283で覆うようにしている。この際、共振回路TTに対する金属板270の作用が磁性体板283の作用によってちょうど打ち消されるように、金属板270の外側面において磁性体板283にて覆われている部分の面積と磁性体板283にて覆われていない部分の面積との比を決定すると共に、磁性体板283の形状及び磁性体板283の貼り付け位置を決定すると良い。例えば、金属板270がアルミニウムにて形成され且つ磁性体板283がフェライトにて形成される場合、フェライトによる送電側コイルTLのインダクタンス増大特性はアルミニウムによる送電側コイルTLのインダクタンス減少特性よりも大きいこと考慮しつつ、適宜実験等を介して上記面積比を決定すると良い。
実施例EX3_3の構成によれば、金属板270の存在による送電側コイルTLの電流振幅増加を磁性体板283により打ち消す(減じる)ことができるため、上記電流振幅増加現象に基づく影響が解消される。
一方、受電側コイルRLは磁性体板283よりも相対的に近い位置にある金属板270の影響を強く受ける。図34(a)及び(b)に示すように磁性体板283を金属板270の外側面に設けた場合、受電側コイルRLに対する磁性体板283の影響は無視できる程度に小さい。これを考慮し、金属板270の影響を受けて(又は金属板270及び磁性体板283の影響を受けて)共振回路RRの共振周波数が増加した結果、共振回路RRの共振周波数が基準周波数となるように、受電側コイルRLのインダクタンスL2及び受電側コンデンサTCの静電容量C2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2を基準周波数よりも低い所定周波数(例えば13MHz)に設定しておく。これにより、電力伝送は、共振回路TT及びRRの各共振周波数が基準周波数に設定された状態で行われることになり、上記共振周波数シフト現象に基づく影響も解消される。
尚、ここでは、磁性体板283が金属板270の外側面に接している、即ち、磁性体板283と金属板270の外側面との距離がゼロであることを想定しているが、該距離が正の所定値を持つように(磁性体板283を受電側コイルRLから離れる方向に)磁性体板283の配置位置をシフトすることも可能である。
図36は、Z軸方向に沿って受電側コイルRLの反対側から金属板270を見たときの、金属板270及び磁性体板283の平面図であって、磁性体板283の他の構成例を示す図である。図36にはコイルRLも示されている。図36の例では、磁性体板283が互いに分離した磁性体板283a、283b及び283cから構成される。磁性体板283a、283b及び283cの夫々は、開口部271を中心に金属板270の外側面に貼り付けられたロの字状の磁性体板である。XY面において、磁性体板283a、283b及び283cの大きさは互いに異なり、磁性体板283aの大きさが最も大きく且つ磁性体板283cの大きさが最も小さい。より詳細には、XY面において、磁性体板283a〜283cの夫々は開口部を有する長方形状の磁性体板であり、磁性体板283aの開口部の内側に磁性体板283bが配置されると共に磁性体板283bの開口部の内側に磁性体板283cが配置され、且つ、磁性体板283cの開口部は金属板270の開口部271と一致する(又は、図36に示すものと異なるが、磁性体板283cの開口部の内側に金属板270の開口部271が位置する)。
図34(a)及び(b)並びに図36に示した磁性体板283の形状は例示に過ぎず、様々に変更可能である。例えば、上述したようなロの字状の切れ目の無い磁性体板を金属板270上に貼り付けるのではなく、複数の短冊状(即ち長方形状)の磁性体板を、該複数の短冊状の磁性体板が全体として金属板270上でロの字状に配列されるように、金属板270の外側面に貼り付けるようにしても良い。
実施例EX3_3にて上述した内容が実現されるように、電子機器2において受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板283が図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に、給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成される。
[実施例EX3_4]
実施例EX3_4を説明する。実施例EX3_4では、受電側コイルRLと金属板270との間に磁性体板が挿入されるようにすることで、共振回路RRに対し中立化を図る。
図37(a)及び(b)を参照する。実施例EX3_4では、磁性体部MG2として磁性体板284(上述したように磁性体シートでも良い)が設けられる。磁性体部MG2は、磁性体板284に加えて他の磁性体部を含みうるが、ここでは磁性体板284にのみ注目する。磁性体板284は、電子機器2内で、金属板270の存在による共振回路RRの共振周波数の基準周波数からの変化を打ち消して該共振周波数を基準周波数に保つように作用する。故に、受電側コイルRLのインダクタンスL2及び受電側コンデンサRCの静電容量C2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2を基準周波数に設定しておいて良い。
図37(a)は、Z軸方向に沿って受電側コイルRLの存在する側から金属板270を見たときの、金属板270及び磁性体板284の平面図である。図37(a)にはコイルRLも示されている。図37(b)には、金属板270及び磁性体板284の断面図(開口部271の中心を通る、YZ面に平行な断面による断面図)が、コイルTL及びRLと共に示されている。尚、図37(a)及び(b)では、磁性体板284をドット領域にて表現している。実際には、開口部271は樹脂材料等にて封止されるが、その封止の様子は図37(a)及び(b)に示されていない。
磁性体板284は、開口部271の周りにおいて金属板270の一部を覆うように、金属板270の内側面に貼り付けられたロの字状の磁性体板である。既に述べたように、金属板270において、内側面とは外側面よりも受電側コイルRLに近い面である。金属板270と同様、磁性体板284も開口部を有し、XY面上において磁性体板284の開口部の内側に金属板270の開口部271が存在する。尚、ここで示す磁性体板284の外形形状は例示に過ぎず、例えば磁性体板284の外形形状は曲線を含んでいても良い(円又は楕円などでもよい)。また、磁性体板284に開口部が存在していなくても良い。
上述の位置関係から明らかなように、磁性体板284は受電側コイルRLと金属板270との間に配置される(換言すれば、磁性体板284が配置される平面は受電側コイルRLが配置される平面と金属板270が配置される平面との間に配置される)ことになる。
受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板284に流れる電流の関係を説明する。図38にはそれらの関係が模式的に示されている。電子機器2内においては、受電側コイルRLが開口部271を有する金属板270と磁気的に結合すると共に磁性体板284とも磁気的に結合する。そうすると、受電側コイルRLに交流電流I2が流れたことで受電側コイルRLに発生した磁界に基づき、交流電流I2と逆方向の(即ち180度位相のずれた)交流電流I32が金属板270内の開口部271周りの電路に流れる一方で交流電流I2と同方向の(即ち交流電流I2と同じ位相を有する)交流電流I42が磁性体板284に流れる。
電流I42と電流I32は互いに逆方向の電流であるため、共振回路RRに対し、磁性体板284は、開口部271を有する金属板270とは逆の作用を与える。つまり、電流I42が発生せしめられる磁性体板284の存在は、開口部271を有する金属板270とは逆に、受電側コイルRLのインダクタンスを等価的に増大させるように(換言すれば共振回路RRを構成するインダクタンス成分を増大させるように)、結果、共振回路RRの共振周波数を減少させるように作用し、また、受電側コイルRLに流れる電流の振幅を減少させるように作用する。
このように、共振回路RRに対して磁性体板284は金属板270とは逆の作用を与えるため、金属板270が存在することによる共振回路RRへの影響を磁性体板284により打ち消す(減ずる)ことができる。共振回路RRに対する電流I32の作用と電流I42の作用とが互いに丁度打ち消し合うように、即ち共振回路RRに対して中立化が実現されるように、開口部271の形状、受電側コイルRLの形状などに応じて、磁性体板284の形状及び配置位置などを定める。
仮に金属板270の内側面の全体を磁性体板284で覆うと、受電側コイルRLに対する金属板270の影響が殆ど無くなる一方で、磁性体板284の影響が不必要に強くなりすぎる。故に、金属板270の一部を磁性体板284で覆うようにしている。この際、共振回路RRに対する金属板270の作用が磁性体板284の作用によってちょうど打ち消されるように、金属板270の内側面において磁性体板284にて覆われている部分の面積と磁性体板284にて覆われていない部分の面積との比を決定すると共に、磁性体板284の形状及び磁性体板284の貼り付け位置を決定すると良い。例えば、金属板270がアルミニウムにて形成され且つ磁性体板284がフェライトにて形成される場合、フェライトによる受電側コイルRLのインダクタンス増大特性はアルミニウムによる受電側コイルRLのインダクタンス減少特性よりも大きいこと考慮しつつ、適宜実験等を介して上記面積比を決定すると良い。
一方、送電側コイルTLは磁性体板284よりも相対的に近い位置にある金属板270の影響を強く受ける。図37(a)及び(b)に示すように磁性体板284を金属板270の内側面に設けた場合、送電側コイルTLに対する磁性体板284の影響は無視できる程度に小さい。これを考慮し、基準配置状態で金属板270の影響を受けて(又は金属板270及び磁性体板284の影響を受けて)共振回路TTの共振周波数が増加した結果、共振回路TTの共振周波数が基準周波数となるように、離間状態において送電側コイルTLのインダクタンスL1及び送電側コンデンサTCの静電容量C1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1を基準周波数よりも低い所定周波数(例えば13MHz)に設定しておく。これにより、電力伝送は、共振回路TT及びRRの各共振周波数が基準周波数に設定された状態で行われることになり、上記共振周波数シフト現象に基づく影響が解消される。但し、金属板270の存在による送電側コイルTLの電流振幅増加は打ち消されないため、上記電流振幅増加現象に基づく影響を解消する観点からいえば、実施例EX3_1又はEX3_3の方が好ましい。
尚、ここでは、磁性体板284が金属板270の内側面に接している、即ち、磁性体板284と金属板270の内側面との距離がゼロであることを想定しているが、該距離が正の所定値を持つように(磁性体板284が受電側コイルRLに近づく方向に)磁性体板284の配置位置をシフトすることも可能である。また、実施例EX3_3において、図34(a)に示す磁性体板283を図36のそれに変形できるのと同様に、磁性体板284を互いに分離した複数の磁性体板にて構成するようにしても良い。
ここで示した磁性体板284の形状は例示に過ぎず、様々に変更可能である。例えば、上述したようなロの字状の切れ目の無い磁性体板を金属板270上に貼り付けるのではなく、複数の短冊状(即ち長方形状)の磁性体板を、該複数の短冊状の磁性体板が全体として金属板270上でロの字状に配列されるように、金属板270の内側面に貼り付けるようにしても良い。
実施例EX3_4にて上述した内容が実現されるように、電子機器2において受電側コイルRL、金属板270及び磁性体板284が図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に、給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成される。
[実施例EX3_5]
実施例EX3_5を説明する。実施例EX3_5では、第3実施形態の非接触給電システムにおける初期設定環境(図13)について説明する。
実施例EX3_2及びEX3_4では、基準配置状態において金属板270の影響を受けて共振回路TTの共振周波数が基準周波数となり、金属板270の影響を受けない離間状態では共振回路TTの共振周波数が基準周波数よりも低い。故に、実施例EX3_2及びEX3_4では、第1実施形態で述べた初期設定環境を以下の変形初期設定環境に置き換えると良い(その置き換えを、実施例EX3_1及びEX3_3にも適用するようにしても構わない)。変形初期設定環境では、基準配置状態にて電子機器2が給電台12上に載置され、且つ、電子機器2にてfo変更/短絡動作が継続実行される。
<<本発明の第2考察>>
上述の各実施形態(特に第3実施形態)にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る受電装置WB1は、電力を送電するための送電側コイル(TL)を含む送電側共振回路(TT)を有する送電装置から磁界共鳴方式で前記電力を受電可能な受電装置において、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)と、前記受電側コイルの配置位置の対向位置に開口部(271)を設けた金属板(270)を有する金属部(MT2)と、を備え、前記送電装置及び当該受電装置が前記電力の送受電を行うための所定位置関係にあるとき、前記開口部は前記送電側コイルと前記受電側コイルとの間に位置し、前記受電側共振回路の共振周波数及び前記送電側共振回路の共振周波数の少なくとも一方に影響を与える位置に磁性体部を設けたことを特徴とする。
金属板を有する金属部は、機械的強度や質感向上などの観点から受電装置に設けられうる。この際、開口部を有する金属板はコイルとの磁気結合を通じて各共振回路の共振周波数に変化をもたらすように作用するが、磁性体部を設けることで該変化を打ち消すことが可能となり、磁界共鳴方式による所望の送受電が可能となる。
本発明の一側面に係る非接触給電システムWB2は、受電装置WB1と、電力を送電するための送電側コイルを含む送電側共振回路を有する送電装置と、を備え、磁界共鳴方式で前記電力の送受電が可能であることを特徴とする。
具体的には例えば、非接触給電システムWB2において、前記送電装置は、前記送電側共振回路に交流電圧を供給可能な送電回路と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路と、前記検出回路の振幅検出値に基づき前記送電回路を制御することで前記電力の送電制御を行う制御回路と、を備えていると良い。
そして例えば、受電装置WB1に関し、前記受電装置は、前記送電装置からの電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を前記受電の際の共振周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路を備え、前記制御回路は、前記送電装置からの通信による信号に従い前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態で、前記送電に先立ち所定のテスト磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御する第1処理部と、前記テスト磁界が発生されているときの前記検出回路による振幅検出値に基づき前記送電の実行可否を判断する第2処理部と、前記送電を実行可能と判断した後に前記テスト磁界よりも大きな送電用磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御することで前記送電を実現する第3処理部と、を有し、前記送電側コイルの発生磁界に基づき前記金属板と前記磁性体部には互いに逆方向の電流が流れると良い。
開口部を有する金属板には送電側コイルの発生磁界に基づく電流が流れ、金属板に流れた電流は送電側コイルに電圧を発生させて送電側コイルの電流振幅に変化をもたらす。一方、磁性体部にも送電側コイルの発生磁界に基づく電流が流れるが、磁性体部の電流の方向(位相)は金属板のそれと逆である。故に、金属板の存在による送電側コイルの電流振幅変化を磁性体部によって打ち消すことが可能となり、結果、送電側コイルの電流振幅を利用した送電の実行可否判断の正確性を担保することが可能となる。
尚、上述の各実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の各実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の各実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の各実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。本発明の第4実施形態では、第2実施形態の金属板270に対しスリット部を追加形成することで共振周波数シフト現象及び電流振幅増加現象の発生を抑制し、それらの現象に基づく影響を解消又は軽減する。スリット部は、開口部271から金属板270の外周に向けて形成される。第4実施形態は第1及び第2実施形態を基礎とする実施形態であり、第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1及び第2実施形態の記載が第4実施形態にも適用される(矛盾する事項に関しては第4実施形態の記載が優先される)。
以下、第4実施形態に属する実施例EX4_1〜EX4_3の中で、スリット部の詳細構造等を説明する。尚、矛盾無き限り、実施例EX4_1〜EX4_3の内、任意の実施例で記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる。
[実施例EX4_1]
実施例EX4_1を説明する。実施例EX4_1において、金属板270に設けられるスリット部は、開口部271から金属板270の外周まで至る切断スリットを含む。
図39(a)及び(b)を参照し、実施例EX4_1においては、金属板270として2枚の金属板270A及び270Bが設けられる。金属板270A、270Bにおける開口部271を、夫々、記号271A、271Bにて参照する。また、実施例EX4_1に係る電子機器2には、樹脂材料又はゴムなどの絶縁体にて構成された絶縁板280が設けられており、図39(b)に示す如く、金属板270A及び270Bは絶縁板280を挟んで互いの絶縁状態を維持しつつ結合される。
図39(a)は、金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bの分解斜視図である。図39(b)は、金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bが結合されている状態での金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bの斜視図である。
基準配置状態において金属板270A及び270Bの夫々はXY面に平行である。開口部271A、271Bは、夫々、金属板270A、270Bに設けられたZ軸方向に貫通する穴であり、従って開口部271A及び271Bには金属が存在しない。
金属板270A及び金属板270B間の絶縁状態を実現できる限り、絶縁板280の形状は任意であるが、ここでは、XY面上における絶縁板280の外形形状は金属板270A及び金属板270Bの外形形状と同じであるとする。絶縁板280には、開口部271A及び271Bの夫々と同じ形状及び大きさを有した開口部280Hが設けられており、開口部271A、280H及び271Bの外周形状をXY面に投影した際、それらの外周形状は互いに重なり合う。ここでは、開口部271A及び271Bの外周形状として円を想定しているため、開口部280Hの外周形状も円となっているが、第2実施形態で述べたように、それらの外周形状は円に限定されない。尚、絶縁板280に開口部280Hが設けられていなくても良い。
金属板270Aには、開口部271Aの外周の所定位置から金属板270Aの外周まで至る切断スリット272Aが設けられている。切断スリット272Aは、金属板270Aに設けられた、Z軸方向に貫通し且つ所定幅を有した線状の穴である。切断スリット272Aにより開口部271A及び金属板270Aの外周間が完全に切断されているため、開口部271A周りに電路(電流ループ)は形成されない。
金属板270Bには、開口部271Bの外周の所定位置から金属板270Bの外周まで至る切断スリット272Bが設けられている。切断スリット272Bは、金属板270Bに設けられた、Z軸方向に貫通し且つ所定幅を有した線状の穴である。切断スリット272Bにより開口部271B及び金属板270Bの外周間が完全に切断されているため、開口部271B周りに電路(電流ループ)は形成されない。
図40は、X軸方向から見た金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bの分解平面図である。図41は、金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bが結合されている状態での金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bの断面図である。図41にはコイルTL及びRLも示されている。図41の断面図における断面は、開口部271A、280H、271Bの中心を通る、YZ面に平行な断面である。尚、実際には、開口部271A、280H及び271B並びに切断スリット272A及び272Bは樹脂材料等にて封止されるが、その封止の様子は、図39(a)及び(b)、図40並びに図41に示されていない。
開口部271A、280H及び271Bの夫々は受電側コイルRLの配置位置の対向位置(受電側コイルRLの配置位置に対して対向する位置)に設けられており、基準配置状態では、開口部271A、280H及び271BがコイルTL及びRL間に位置して、コイルTL及びRLが開口部271A、280H及び271Bを介して互いに対向し合うことになる。XY面において開口部271A、271Bの夫々の大きさはコイルTL及びRLの夫々の大きさよりも大きく、開口部271の大きさに関して第2実施形態で述べた事項が開口部271A及び271Bの夫々に対しても適用される。このため、コイルTL及びRLを用いた電力伝送を、若干の損失はあるものの良好に実現できる。
上述の如く、開口部271Aと金属板270Aの外周との間を完全に切断する切断スリット272Bを金属板270Aに設けると、コイルTL及びRLの発生磁界に基づく電流が金属板270Aに誘起されない。金属板270Bについても同様である。従って、共振周波数シフト現象及び電流振幅増加現象が発生せず、結果、それらの現象に基づく影響も現れなくなる。
共振周波数シフト現象及び電流振幅増加現象を発生させないことのみに着目すれば、電子機器2において、金属板270として金属板270Aのみを設けるという方策も取り得て良い(この場合、絶縁板280は不要である)。但し、金属板270Aに切断スリット272Aが設けられることに起因して金属板270Aの構造的強度が低くなるため、特に例えば金属板を用いて電子機器2の筐体を構成する場合には、金属板270として金属板270Aのみを設けるという方策は好ましくないこともある。
そこで、実施例EX4_1に係る電子機器2では、開口部及び切断スリットを設けた金属板を、複数、互いに絶縁された状態で積層している(ここでは、積層される金属板の枚数が2であることを例示しているが、該枚数を3以上にすることも可能である)。この際、複数の金属板に平行な平面(即ちXY面に平行な平面)内において、複数の金属板における複数の切断スリットを互いに異なる位置に形成する。
金属板270A及び270Bに注目した場合、金属板270A及び270Bに平行な平面(即ちXY面に平行な平面)内において、切断スリット272A及び272Bは互いに異なる位置に形成されている。換言すれば、金属板270A及び270Bに平行な平面へ切断スリット272A及び272Bを投影したとき、それらの投影像は互いに異なる位置に形成される。このように切断スリット272A及び272Bの形成位置を工夫することで、金属板270A及び270B間で構造的強度が比較的弱い部分を補完し合うことができ、全体として必要な構造的強度を得ることが可能となる。
図39(a)に示す例では、金属板270Aにおいて、切断スリット272Aは、開口部271Aの外周上の所定位置から所定の第1の向きに伸びる切断スリットである一方、金属板270Bにおいて、切断スリット272Bは、開口部271Bの外周上の所定位置から所定の第2の向きに伸びる切断スリットである。第1及び第2の向きは、XY面に平行な向きであって、且つ、互いに逆の向きである。尚、第1及び第2の向きは、互いに直交する向き等であっても良い。
送電側コイルTLのインダクタンスをL1にて表し且つ送電側コンデンサTCの静電容量をC1で表すと、L1及びC1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1は、1/(2π(L1C1)1/2)となる(即ち、2πと(L1C1)の平方根との積の逆数となる)。受電側コイルRLのインダクタンスをL2にて表し且つ受電側コンデンサRCの静電容量をC2で表すと、L2及びC2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2は、1/(2π(L2C2)1/2)となる(即ち、2πと(L2C2)の平方根との積の逆数となる)。実施例EX4_1では、共振周波数シフト現象が発生しないため、第1実施形態と同様、共振回路TTの共振周波数f1も共振回路RRの共振周波数f2(第1実施形態では記号fOにて表現)も、所定の基準周波数(13.56MHz)に設定しておけば良い。
実施例EX4_1にて上述した内容が実現されるように、電子機器2において受電側コイルRL、金属板270A、絶縁板280及び金属板270Bが図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に、給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成される。
[実施例EX4_2]
実施例EX4_2を説明する。実施例EX4_2に係る金属板270を金属板270Cと称する。
図42は、金属板270Cの平面図である。金属板270Cは、第2実施形態で述べた金属板270にスリット群を追加形成した構成を有する。スリット群は、開口部271から金属板270Cの外周に向けて互いに異なる位置に形成された複数のスリット272Cから成る。スリット272Cの個数は2以上であれば幾つでも良いが、共振周波数シフト現象及び電流振幅増加現象の抑制度合いを向上させる観点から言えば、或る程度の個数が有った方が好ましく(例えば4以上とされ)、また、開口部271周りに形成される電路の長さを効果的に長くするために複数のスリット272Cを放射状に形成すると良い。尚、実際には、開口部271及び各スリット272Cは樹脂材料等にて封止されるが、その封止の様子は図42に示されていない。
図42におけるスリット群の具体的構成例を説明する。上述したように、XY面上における開口部271の外周形状は円である。その円の円周を6分割する6つの点を第1〜第6の点と呼ぶ。開口部271の中心から第iの点に向かう向きに沿って、第iの点から金属板270Cの外周に向け所定長さの第iの線分を描くとする(iは整数)。第iの線分の位置に所定幅を有した第iのスリット272Cが設けられる。つまり、図42の例では、開口部271から金属板270Cの外周に向けて第1〜第6のスリット272Cが放射状に形成され、第1〜第6のスリット272Cによってスリット群が構成される。
各スリット272Cは、金属板270Cに設けられたZ軸方向に貫通する穴であり、従って各スリット272Cの部分には金属が存在しない。但し、各スリット272Cと金属板270Cの外周との間には接点が無い。つまり、開口部271から伸びる各スリット272Cは金属板270Cの外周に至る手前で終了しており、結果、各スリット272Cと金属板270Cの外周との間には金属板270Cを構成する金属が残存する。
このため、実施例EX4_1の切断スリットを設ける場合と比べて金属板単体での構造的強度は高くなるが、一方で、図43に示す如く、開口部271及びスリット群の周りには金属板270Cを構成する金属による電路(電流ループ)が構成される。すると、第2実施形態の構成と同様に、送電側コイルTLに交流電流I1が流れると開口部271周りの電路に交流電流I31が流れると共に、受電側コイルRLに交流電流I2が流れると開口部271周りの電路に交流電流I32が流れる(図28(a)及び(b)参照)。
しかし、スリット群が無い場合と比べ、開口部271周りの電路の径は大きくなっているため、送電側コイルTL及び金属板270間の結合係数K13並びに受電側コイルRL及び金属板270間の結合係数K23は小さくなる(図28(c)参照)。結果、共振周波数シフト現象及び電流振幅増加現象が部分的に抑制されて、それらの現象に基づく影響が軽減される。
尚、図28(c)に示した関係からも理解できるように、受電側コイルRLのQを増加させるにつれて電流I2が相対的に電流I32よりも大きくなってゆき(究極的には電流I32を無視できるようになり)、電流I32による影響が低減してゆくため、受電側コイルRLのQがなるだけ大きくなるように共振回路RRを構成しておくことが好ましい。例えば、受電側コイルRLにおいて、巻線の巻数を少なくしたり、巻線を太くしたりすることで、受電側コイルRLのQを増大させることができる。
実施例EX4_2では、抑制されているとはいえ或る程度の共振周波数シフト現象が発生するため、以下のように共振周波数を定めておくと良い。
基準配置状態で金属板270の影響を受けて共振回路TTの共振周波数が増加した結果、共振回路TTの共振周波数が基準周波数となるように、離間状態において送電側コイルTLのインダクタンスL1及び送電側コンデンサTCの静電容量C1のみで定まる共振回路TTの共振周波数f1を基準周波数よりも低い所定周波数(例えば13MHz)に設定しておく。同様に、金属板270の影響を受けて共振回路RRの共振周波数が増加した結果、共振回路RRの共振周波数が基準周波数となるように、受電側コイルRLのインダクタンスL2及び受電側コンデンサTCの静電容量C2のみで定まる共振回路RRの共振周波数f2を基準周波数よりも低い所定周波数(例えば13MHz)に設定しておく。
これにより、電力伝送は、共振回路TT及びRRの各共振周波数が基準周波数に設定された状態で行われることになり、上記共振周波数シフト現象に基づく影響が完全に解消される。但し、金属板270の存在による送電側コイルTLの電流振幅増加は完全に打ち消されないため、上記電流振幅増加現象に基づく影響を解消する観点からいえば、実施例EX4_1の方が好ましい。
実施例EX4_2にて上述した内容が実現されるように、電子機器2において受電側コイルRL及び金属板270Cが図示されない機構部品及び基板等を用いて電子機器2内に固定されていると共に、給電機器1において送電側コイルTLが図示されない機構部品及び基板等を用いて給電機器1内に固定され、且つ、給電機器1及び電子機器2の各筐体が形成される。
[実施例EX4_3]
実施例EX4_3を説明する。実施例EX4_3では、第4実施形態の非接触給電システムにおける初期設定環境(図13)について説明する。
実施例EX4_2では、基準配置状態において金属板270の影響を受けて共振回路TTの共振周波数が基準周波数となり、金属板270の影響を受けない離間状態では共振回路TTの共振周波数が基準周波数よりも低い。故に、実施例EX4_2では、第1実施形態で述べた初期設定環境を以下の変形初期設定環境に置き換えると良い(その置き換えを、実施例EX4_1にも適用するようにしても構わない)。変形初期設定環境では、基準配置状態にて電子機器2が給電台12上に載置され、且つ、電子機器2にてfo変更/短絡動作が継続実行される。
<<本発明の第3考察>>
上述の各実施形態(特に第4実施形態)にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る受電装置WC1は、電力を送電するための送電側コイル(TL)を含む送電側共振回路(TT)を有する送電装置から磁界共鳴方式で前記電力を受電可能な受電装置において、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)と、前記受電側コイルの配置位置の対向位置に開口部(271)を設けた金属板を有する金属部(MT2)と、を備え、前記送電装置及び当該受電装置が前記電力の送受電を行うための所定位置関係にあるとき、前記開口部は前記送電側コイルと前記受電側コイルとの間に位置し、前記金属板において、前記開口部から前記金属板の外周に向けてスリット部を形成したことを特徴とする。
金属板を有する金属部は、機械的強度や質感向上などの観点から受電装置に設けられうる。この際、開口部を有する金属板はコイルとの磁気結合を通じて各共振回路の共振周波数に変化をもたらすように作用するが、スリット部を設けることで該変化を抑制することが可能となり、磁界共鳴方式による所望の送受電が可能となる。
本発明の一側面に係る非接触給電システムWC2は、受電装置WC1と、電力を送電するための送電側コイルを含む送電側共振回路を有する送電装置と、を備え、磁界共鳴方式で前記電力の送受電が可能であることを特徴とする。
具体的には例えば、非接触給電システムWC2において、前記送電装置は、前記送電側共振回路に交流電圧を供給可能な送電回路と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路と、前記検出回路の振幅検出値に基づき前記送電回路を制御することで前記電力の送電制御を行う制御回路と、を備えていると良い。
そして例えば、受電装置WC1に関し、前記受電装置は、前記送電装置からの電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を前記受電の際の共振周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路と、を備え、前記制御回路は、前記送電装置からの通信による信号に従い前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態で、前記送電に先立ち所定のテスト磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御する第1処理部と、前記テスト磁界が発生されているときの前記検出回路による振幅検出値に基づき前記送電の実行可否を判断する第2処理部と、前記送電を実行可能と判断した後に前記テスト磁界よりも大きな送電用磁界が前記送電側コイルで発生されるよう前記送電回路を制御することで前記送電を実現する第3処理部と、を有していると良い。
開口部を有する金属板に送電側コイルの発生磁界に基づく電流が流れたとすれば、金属板に流れた電流は送電側コイルに電圧を発生させて送電側コイルの電流振幅に変化をもたらす。スリット部を設けることで送電側コイルの発生磁界に基づく金属板での電流が無くなる又は低減されるため、送電側コイルの電流振幅を利用した送電の実行可否判断の正確性を担保することが可能となる。
尚、上述の各実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の各実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の各実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の各実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1〜注釈3を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
[注釈1]
上述の実施形態では、各種の信号の周波数や共振周波数を、基準周波数としての13.56MHzに設定することを述べたが、13.56MHzは設定の目標値であって、実際の機器における、それらの周波数には誤差が含まれる。
[注釈2]
本発明をNFCの規格に沿って具現化したものを実施形態中に示したため、基準周波数が13.56MHzであると述べたが、基準周波数は13.56MHz以外でも構わない。これに関連するが、本発明が適用される給電機器及び電子機器間の通信及び電力伝送は、NFC以外の規格に沿った通信及び電力伝送であっても良い。
本発明に係る非接触給電システムの基準周波数が13.56MHz以外の周波数(例えば、6.78MHz)に設定されていて且つ非接触ICカードとして形成された異物3における共振回路JJの共振周波数が13.56MHzである場合にも、異物3が給電台12に置かれた際には、pFOD処理又はmFOD処理にて電圧値VDに相応量の変化がみられるため、そのような場合にも、上述の方法により異物3の検出が可能である。
[注釈3]
本発明に係る受電装置又は送電装置である対象装置を、集積回路等のハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。対象装置にて実現される機能の全部又は一部である任意の特定の機能をプログラムとして記述して、該プログラムを対象装置に搭載可能なフラッシュメモリに保存しておいても良い。そして、該プログラムをプログラム実行装置(例えば、対象装置に搭載可能なマイクロコンピュータ)上で実行することによって、その特定の機能を実現するようにしてもよい。上記プログラムは任意の記録媒体に記憶及び固定されうる。上記プログラムを記憶及び固定する記録媒体は対象装置と異なる機器(サーバ機器等)に搭載又は接続されても良い。