JP6831993B2 - アルファ化デンプン粉の製造方法 - Google Patents

アルファ化デンプン粉の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルファ化デンプン粉の製造方法に関し、特に大量生産における技術の改良に関する。
穀物に含まれるデンプンをアルファ化(非晶質化)することで、アルファ化前に対して異なる特性が発現することが一般に知られている。例えば、予めアルファ化された米粉は、長期保存が可能である一方で、蒸煮を必要とせずに水や湯を加えるだけで美味しく食することができることが知られている。また、PLA(ポリ乳酸樹脂)などの生分解性樹脂への添加剤としてデンプンを用いる場合には、水やグリセリンなどの可塑剤を同時に添加して高温で処理することにより、デンプンをアルファ化することでPLA等と複合化できることが知られている。
従来のアルファ化デンプンは、原料穀粒を水中に懸濁・加熱(すなわち炊飯)により糊化させた後に除水することによって製造されることが通常であった。しかしながら、炊飯後に除水してアルファ化する方法では、水や湯を加えるだけで食料とできる程度までアルファされたデンプン粉を製造することは可能であったが、完全に近い程度までアルファ化されたデンプン粉の製造は不可能であった。その理由は、炊飯により一旦ほぼ完全にアルファ化したデンプンの一部が、乾燥(除水)の過程で生じる「老化」により再び結晶化するためである。
また、アルファ化米粉を利用する場合、種々の添加剤として増粘剤を配合して製品化している技術が提案されている(特許文献1)。
本発明者らは、臼式粉砕機に原料穀物を投入し、原料穀物を80℃以上、特に100〜200℃の温度に加熱しながらせん断条件下に粉砕することで、高度にアルファ化したアルファ化デンプン粉を、水を加えずに容易に製造する技術を開発した(特許文献2、3)。特許文献2に記載の技術によれば、炊飯後に除水してアルファ化する方法と同程度にアルファ化できる。さらに特許文献3に記載の技術によれば、相対的に移動する2部材間のギャップ、加熱温度、原料穀物の含水量などの条件によって、アルファ化デンプンの示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmaxとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αが80以上となるような同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hを持つ、非常に高い程度までアルファ化されたデンプン粉を得ることができる。このデンプン粉は、食品分野への用途だけでなく、これとは全く異なる分野、例えばPLAなどの生分解性樹脂への添加剤としても、きわめて高い有用性を持ち得る。
特許第4190180号公報 特許第4767128号公報 特許第5503885号公報
特許文献2、3においては、アルファ化を達成する技術に主眼を置いていたが、この技術においては量産化が新たな課題となっている。量産化の条件においては、食品分野や生分解性樹脂への添加剤などに好適なアルファ化デンプン粉を得るために結晶化度を制御することができる知見は得られていなかった。
例えば、特許文献1のように増粘剤を配合する技術も知られているが、米粉パンはアルファ化米粉と結晶性米粉をブレンドすることで粘度を調整し、100%米粉パンを製パンすることが可能となる。しかし、米の結晶性を制御し、粉砕するだけでパンなどの生地の物性を制御することができ、上記のようなブレンドをしなくても米粉パンなどの食品を製造できる技術は確立されていない。結晶性を制御することで、従来技術のように結晶・非晶化穀物粉をブレンドせずに製パンを可能とする技術が求められており、アルファ化度を自在に制御可能なアルファ化デンプン粉の量産化が望まれている。さらには従来から穀物を家畜用の飼料として用いる場合には事前に穀物をアルファ化することができれば、家畜の出荷時期を調整する目的で家畜の成長速度をコントロールできる家畜用飼料が開発できることを意味する。これには穀物のアルファ化の程度(アルファ化度)を自在にコントロールする技術が必要であるが、従来の一般的な手法でアルファ化度をコントロールすることは困難である。
また、上記のように、特許文献2、3の技術によって工業的な大量生産を行うことを想定した場合の条件では、結晶化度の高いアルファ化デンプン粉においてもアルファ化と関連する明確な知見や指針はなかった。例えば、粉砕後の穀物を加熱せん断粉砕機から吐出量1kg/時間以上、さらには10kg/時間以上で吐出するようなアルファ化デンプン粉を大量生産する条件では、特許文献2で得られるような高度にアルファ化したアルファ化デンプン粉等を得るための具体的条件やその条件と大量生産との因果関係は明確ではなかった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、原料穀物を加熱せん断粉砕機に投入して粉砕しアルファ化デンプン粉を製造するに際して、粉砕した穀物の吐出量が多い量産条件において、食品分野や生分解性樹脂への添加剤などに好適なアルファ化デンプン粉を得るために、結晶化度の高い領域から低い領域までの広範囲で結晶化度を制御することができるアルファ化デンプン粉の製造方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のアルファ化デンプン粉の製造方法は、原料穀物を加熱せん断粉砕機に投入して粉砕し、粉砕後の穀物を加熱せん断粉砕機から吐出量1kg/時間以上で吐出するアルファ化デンプン粉の製造方法であって、次式:
Q値=[加熱せん断粉砕機における原料穀物の滞留時間(sec)]×[最大せん断速度(1/sec)]
で表されるQ値が500以上の条件で原料穀物を粉砕することを特徴としている。
本発明によれば、原料穀物を加熱せん断粉砕機に投入して粉砕しアルファ化デンプン粉を製造するに際して、粉砕した穀物の吐出量が多い量産条件において、食品分野や生分解性樹脂への添加剤などに好適なアルファ化デンプン粉を得るために、結晶化度の高い領域から低い領域までの広範囲で結晶化度を制御することができる。
本発明の方法を実施するための装置構成の一例を示す概略図(上が上面図、下が側面図)である。 図1の装置の要部断面図である。 参考例1において製粉処理して得られた米粉と、未粉砕米粒の広角X線回折グラフである。 参考例2において吐出量1kg/時間以下で粉砕して得られた米粉の広角X線回折グラフである。 Q値と結晶化度の関係を示すグラフである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、原料穀物を加熱せん断粉砕機に投入して粉砕し、粉砕後の穀物を加熱せん断粉砕機から吐出量1kg/時間以上で吐出するアルファ化デンプン粉の製造方法である。加熱せん断粉砕機からの穀物の吐出量は、1kg/時間以上、3kg/時間以上、5kg/時間以上、または10kg/時間以上である。
本発明者らは、上記の課題に鑑みて実験と研究を重ねた結果、粉砕機の相対的に移動する2部材(臼式粉砕機や2軸混練粉砕機など)間のギャップが最も小さい箇所のせん断速度を最大せん断速度とし、それと滞留時間(吐出量と対応)との積をQ値と定義したところ、驚くべきことに、結晶化度(アルファ化度と対応)との相対関係が図5のように明確な関係となることを見出し、本発明を完成するに至った。
結晶化度がQ値で制御できることは、種々の用途でアルファ化米粉と結晶性米粉を併用する点において、Q値でわずかな結晶性を低減させることも非常に重要となる。例えば米粉パンなどはアルファ化米粉と結晶性米粉をブレンドすることで100%米粉パンを製パンすることが可能となることが知られている。しかし本発明によれば、Q値で米の結晶性を制御できることから、粉砕するだけでパンなどの生地の物性を制御することができ、上記のようなブレンドをしなくてもこれまで製造が困難であったグルテンフリー食品等を容易に製造できる。
小型臼から中型臼を使用した結果、Q値=最大せん断速度×滞留時間(吐出量)が一義的に結晶化度を左右する重要な因子であることを見出した。結晶化度を低下させるには、Q値を増大させることが必須である。生産量(吐出量)を増加させると滞留時間が短くなるので、結晶化度がある一定以下の値を保持しつつ生産量を上げるには、最大せん断速度を増加させることが必要になる。
せん断速度は、周速度/ギャップで計算できるので、臼の大型化による周速度増加、あるいはギャップの減少が重要になる。
この関係は、臼式粉砕形状に限定されるものではなく、2軸混練粉砕機など他の粉砕製造方法にも対応することが容易に類推される。すなわち、加熱せん断粉砕機としては、図1および図2に示すような臼式粉砕機の他、本発明の方法を実施することができるものであれば他のいかなる装置を使用してもよい。なお、本発明において「せん断条件下に粉砕する」とは、単に圧縮して粉砕するというものではなく、物体内部にある面に沿って両側部分を互いにずれさせるような作用をもって粉砕することをいう。例えば、原料穀物にせん断力を与えて粉砕するための装置としては、臼式粉砕機の他、相対的に回転する2つのローラの間の微小ギャップに原料穀物を通過させる間にせん断粉砕する装置構成や、小径の円筒形または円柱形部材と大径の円筒形部材とを同心に配置させて相対回転させ、小径部材の外側と大径部材の内側との間の微小ギャップに原料穀物を通過させる間にせん断粉砕する装置構成などを採用することが可能である。
本発明の方法では、上記Q値が500以上の条件で原料穀物を粉砕する。Q値が500以上の条件であれば、加熱せん断粉砕機による粉砕後における穀物の結晶化度が、例えば15程度まで下げられたアルファ化デンプン粉を得ることができ、結晶性米粉や増粘多糖類などを混ぜなくてもグルテンフリー食品の加工と製品化が可能となる。また、水や湯を加えるだけで食料とできる程度までアルファされたデンプン粉をはじめとして、特許文献2に記載されたような、非常に高い程度までアルファ化されたデンプン粉も得ることができ、アルファ化の程度を結晶化度の低い範囲で様々にコントロールしたアルファ化デンプン粉を得ることができる。
結晶化度の低いアルファ化デンプン粉を得る点を考慮すると、上記Q値が3500以上の条件で原料穀物を粉砕することが好ましく、上記Q値が9000以上の条件で原料穀物を粉砕することが特に好ましい。このような条件であれば、結晶化度がより低いアルファ化デンプン粉を得ることができ、加熱せん断粉砕機による粉砕後における穀物の結晶化度が、例えば6%未満のアルファ化デンプン粉を得ることもできる。
加熱せん断粉砕機からの穀物の吐出量が1kg/時間以上のような条件では、上記Q値が300000以下の条件で原料穀物を粉砕することが好ましく、100000以下の条件で原料穀物を粉砕することがより好ましい。穀物の吐出量がこのように多い条件でせん断速度を大きくすると、詰まりが生じやすくなる。
加熱せん断粉砕機として臼式粉砕機を用いてアルファ化デンプン粉を製造する際には、上臼と下臼のギャップを適宜に調整する。ギャップは、原料とされる穀粒や処理後に得るべき所望の穀粉の大きさなどを考慮し、特に限定されないが、例えば0.5〜0.01mm、特に0.1〜0.01mm程度の範囲内で任意に調整される。次に、臼を所定の温度とした後、臼を所定の回転数(穀物のせん断速度に対応)で回転させる。そして臼式粉砕機に原料穀物を投入し、原料穀物を所定の温度においてせん断条件下に粉砕する。アルファ化の程度を結晶化度の低い範囲で様々に制御したアルファ化デンプン粉を得ることができる点、つまり微小な結晶化度制御もQ値で制御できる点などを考慮すると、粉砕時の温度は、特に限定されないが、例えば常温以上とするか、あるいは40℃以上、好ましくは80℃以上に加熱しながらせん断条件下に粉砕する。粉砕時の温度上限は、特に限定されないが、200℃以下が好ましい。原料穀物の含水率は、特に限定されないが、10%以上が好ましい。
本発明において、アルファ化デンプン粉は、デンプンが主成分である穀物類、たとえば米、小麦、大豆、小豆、そば、芋類、豆類、とうもろこし類などのすべてを対象としており、本発明により簡便かつ短時間でこれらをアルファ化製粉することができる。
高度にアルファ化されたデンプン粉は、従来の食品分野への用途だけでなく、様々な分野への用途が期待される。例えば、PLAなどのプラスチックに対しても良好な分散性や相容性を発揮するので、水やグリセリンなどの可塑剤を使用する必要を無くすだけでなく、機械的物性を向上させる効果も得られることから、プラスチック添加剤としても有用である。さらにはバイオエタノール生産時における前処理技術としても有効な方法であり、従来のように原料澱粉の糊化(アルファ化)工程を経ずに高い酵素反応性を付与でき、バイオエタノール生産における糊化(アルファ化)工程を省力できることから生産工程の簡略化も期待できる。
さらに、本発明によれば粉砕条件を任意に選択することで、様々なアルファ化度のアルファ化デンプン粉を製造することができるため、冷水に対する膨潤性の異なる穀物類を製造することができる。すなわち、様々な生地粘度を有する穀物粉を任意に作成可能である。このことは、たとえば米粉100%パンなど従来は生地に粘りが乏しく製パンが実際上不可能であると考えられてきたものや、100%蕎麦における「つなぎ」などについても、本発明により得られるアルファ化デンプン粉を粘度調整剤として応用することが可能となる。
さらに、本発明によれば簡単かつ瞬時にデンプンをアルファ化することができることから、煮るという前工程が必要とされていたすべての加工処理についてその必要をなくすこともでき、きわめて広い応用範囲を有する。たとえば、工業材料としての用途として、生分解性樹脂の原料である乳酸を合成する際のデンプンの糖化、プラスチック/デンプンのコンポジット材料、バイオエタノール生産工程などにおいて、本発明の方法によって得られるアルファ化デンプン粉を用いれば、該前工程が不要となり、従来技術が必要としていた炊飯などのアルファ化工程を省略することができるため、コスト面や工程面においてメリットが大きい。その他、酒造過程における発酵、味噌製造時の麹発酵などの際に、従来はデンプンが主原料である穀物類、たとえばとうもろこし、米、小麦粉などを煮る(炊飯)という前工程を必ず要していたが、本発明によって得られるアルファ化デンプンを用いれば、該前工程が不要となり、同様にコスト面や工程面において多大な優位性がある。
このように、本発明の方法によって得られるアルファ化デンプン粉は、食品としての応用はもちろんのこと、工業材料としての応用性も幅広く期待できるものであって、本発明は幅広い産業分野において著しく高い利用可能性を有する。
図1は本発明の方法を実施するための装置構成の一例を示す概略図である。この装置10は、固定設置される上臼11と、この上臼11との間に所定のギャップ13を介して回転可能に設けられる下臼12とを有する。上臼11は中心に米粒などの原料穀物を投入する原料投入口14を有してリング状に形成されている。投入口14は、上臼11の底面においてギャップ13に通じている。下臼12は上臼11と略同一外径を有する円盤形状に形成されている。
下臼12はモータ15により所定速度で回転駆動される。上臼11と下臼12との間のギャップ13はギャップ調整部16の範囲内で調整可能であり、原料とされる穀粒や処理後に得るべき所望の穀粉の大きさなどに応じて、特に限定されないが、例えば0.5〜0.01mm、特に0.1〜0.01mm程度の範囲内で任意に調整される。
上臼11にはヒータ17が設けられる。ヒータ17は上臼11と略同一の外径寸法を有すると共に原料投入口14と略同径の開口を有するリング状に形成されている。ヒータ17は、ヒータコード18を介して温度コントローラ19に接続されており、温度コントローラ19により設定された温度に加熱されることにより、上臼11を全面加熱する。コンピュータ22は、温度コントローラ19による設定温度(データケーブル23から入力)と、熱電対(図示せず)による測定温度(データケーブル21から入力)とを比較して、温度制御ケーブル24を介してヒータ制御信号を温度コントローラ19に与える。
また、コンピュータ22はモータ制御ケーブル25を介してモータ制御信号をモータ15に与えて、モータ15による下臼12の回転数を制御する。下臼11の回転数は、ギャップ13に投入された穀粒が固定の上臼11と回転する下臼12との間で受けるせん断速度が目的の値となるように設定される。
上臼11/下臼12の下方にはこれらの外径より十分に大きな内径を有する受け皿26が設けられる。受け皿26の底面には穀粉落下口27が開口しており、この装置10による処理後の穀粉(米粉など)を受け皿26から落下させ、さらに穀粉落下シュート28を経て所定の容器(図示せず)などに収容させるようにしている。
装置10の要部断面図である図2に示されるように、上臼11は、原料投入口14に臨む内面11aから底面11bに至る原料通路11cが断面視においてテーパー状、平面視においては螺旋状に形成されている。原料投入口14の下端部には、テーパー状通路11cによって拡大化された収容部20が形成されているので、原料投入口14に投入された原料穀物はギャップ13に入り込んで剪断粉砕される直前にこの収容部20に入り込み、ヒータ17により加熱された上臼11の内面11aからの伝熱ないし放熱によって加熱される。前述の熱電対は、上臼11の側面から中心に向けて形成した穴に挿入され、上臼11と下臼12の間のギャップ13で剪断粉砕されているときの処理温度を近似的に示している。上臼11および下臼12の各ギャップ13に臨む面には、原料穀物に対する剪断力を増大させるために円周方向と交わる方向に延長する多数条の凹溝が形成されている。
次いで、この装置10を用いて行うアルファ化製粉処理について説明する。まず、ギャップ調整部16を介して上臼11と下臼12との間のギャップ13を、原料穀粒や処理後の穀粉の大きさなどに応じて調整する。また、温度コントローラ19によりヒータ17を所定温度(たとえば80〜140℃の範囲内で、10℃刻みで設定可能)に加熱し、その熱伝導によって上臼11を加熱する。また、コンピュータ22によって制御された回転数でモータ15が駆動され、前記所定の剪断速度を与えるように下臼12を回転させる。
以上で装置10の準備が完了するので、原料穀粒を投入口14に投入して処理を開始する。ヒータ17は既に所定温度に加熱されており、これによって上臼11も加熱されているので、穀粒はヒータ17および投入口14を通過し、さらにテーパー状通路11cないし収容部29を通過する間に該ヒータ温度に対応した温度に加熱され、その直後に、下臼12との間のギャップ13に送り込まれ、固定の上臼11と回転する下臼12との間で剪断力を受けて粉砕される。剪断粉砕によって得られた穀粉(米粉)はギャップ13の側方から放出されて受け皿26に収容され、落下口27および落下シュート28を経て所定の容器(図示せず)に回収される。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、せん断速度、滞留時間、Q値、粉砕した米粉の結晶化度は、次の方法で測定した。
(1)最大せん断速度
モータ15の回転数、上下臼11、12の円周から周速度を求め、ギャップ13の値より、次の関係から粉砕した最大せん断速度を定義した。
周速度[mm/s]=(回転数[rpm]×円周[mm])/60
最大せん断速度[1/sec]=周速度[mm/s]/ギャップ[mm])
(2)滞留時間
粉砕時における吐出量の値より、次の関係から滞留時間を定義した。
滞留時間[sec]=1/吐出量
(3)Q値
以下の式からQ値を求めた。
Q値=[加熱せん断粉砕機における原料穀物の滞留時間(sec)]×[最大せん断速度(1/sec)]
(4)結晶化度
広角X線回折の測定結果よりピークを結晶反射と非晶散乱に分離した。得られた非晶散乱によるピークの積分値をS、結晶反射によるピークの積分値をSとする。次の関係から粉砕した米粉の結晶化度を求めた。
結晶化度(%)=(S/(S+S))×100
上記広角X線回折の実験仕様は、次の通りである。
・測定機器 Rigaku社製RINT−RAPID
・測定条件
スキャンスピード 4°/min
測定角度 5〜35°
管電圧 40kV
管電流 30mA
<参考例1>
生米を乳鉢で粗粉砕し広角X線回折を行った。
<参考例2>
一般の貯蔵米として標準的である14.4%の水分含有量の米粒を原料として、図1および図2に示される構成の装置10を用いて実際に製粉処理を行った。使用した装置10において、上臼11、下臼12およびヒータ17はいずれも外径寸法が90mm(半径45mm)であり、その中心に口径10mmの投入口14を有する。上臼11のテーパー状原料通路11cは内面11aから5mmの範囲に亘って形成されている(図2)。臼間のギャップ13は0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は240rpmとし、米粒の投入量を120g/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<参考例3>
参考例2と同じ構成の装置10を用いたが、この例では下臼12の外形寸法を60mm(半径30mm)に変え、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は100rpmとし、米粒の投入量を120g/hで実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<参考例4>
参考例2と同じ構成の装置10を用いて、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は240rpmとし、米粒の投入量を200g/hで実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<参考例5>
参考例2と同じ構成の装置10を用いたが、この例では下臼12の外形寸法を60mm(半径30mm)に変え、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は240rpmとし、米粒の投入量を200g/hで実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例1>
参考例2と同じ構成の装置10を用いたが、この実施例では、上臼11、下臼12およびヒータ17はいずれも外径寸法が250mm(半径125mm)で形成されている。臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は50rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例2>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は100rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例3>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は50rpmとし、米粒の投入量を11.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例4>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、モータ15の回転数は100rpmとし、米粒の投入量を11.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例5>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.04mm(40μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例6>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.07mm(70μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を4kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例7>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.1mm(100μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例8>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.3mm(300μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例9>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.5mm(500μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<実施例10>
実施例1と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を0.7mm(700μm)に固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120℃で製粉処理を行った。
<比較例1>
実施例5と同じ構成の装置を用いて、臼間のギャップ13を1mm(1000・香jに固定して、モータ15の回転数は45rpmとし、米粒の投入量を6.5kg/hで、実際の製粉処理を行った。また粉砕温度は120で製粉処理を行った。
<比較例2>
Q値がゼロつまり未粉砕米粒の結晶化度を表4に示す。
以上のように、投入量、臼直径、回転数、せん断速度、吐出量、滞留時間などを変更し、各Q値における結晶化度を測定した。その結果を表1〜表4に示す。またこれらの結果をQ値と結晶化度のグラフとして図5に示した。
表1〜表4より、粉砕後の米粉を臼式粉砕機から吐出量1kg/時間以上で吐出するような条件では、最大せん断速度と滞留時間の積をQ値と定義したところ、結晶化度との相対関係が図5のように明確な関係となることを見出した。つまり、Q値が一義的に結晶化度を左右する重要な因子であることを見出し、結晶化度を低下させるには、Q値を増大することが必須であること、生産量(吐出量)を増加させると滞留時間が短くなるので、結晶化度がある一定以下の値を保持しつつ生産量を上げるには、最大せん断速度を増加させることが必要になることが明らかになった。
10 加熱せん断粉砕機
11 上臼
11a 内面
11b 底面
11c テーパー状原料通路
12 下臼
13 ギャップ
14 原料投入口
15 モータ
16 ギャップ調整部
17 ヒータ
18 ヒータコード
19 温度コントローラ
20 収容部
21 データケーブル
22 コンピュータ
23 データケーブル
24 温度制御ケーブル
25 モータ制御ケーブル
26 受け皿
27 穀粉落下口
28 穀粉落下シュート

Claims (7)

  1. 原料穀物を加熱せん断粉砕機に投入して粉砕し、粉砕後の穀物を加熱せん断粉砕機から吐出量1kg/時間以上で吐出するアルファ化デンプン粉の製造方法であって、次式:
    Q値=[加熱せん断粉砕機における原料穀物の滞留時間(sec)]×[最大せん断速度(1/sec)]
    で表されるQ値が500以上の条件で原料穀物を粉砕し、
    前記Q値を制御することで前記アルファ化デンプン粉の結晶化度を制御する、アルファ化デンプン粉の製造方法。
  2. 加熱せん断粉砕機が臼式粉砕機である請求項1に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
  3. Q値が9000以上の条件で原料穀物を粉砕する請求項1または2に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
  4. 加熱せん断粉砕機からの穀物の吐出量が10kg/時間以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
  5. 原料穀物を80℃以上の温度に加熱して粉砕する請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
  6. 原料穀物の含水率が10%以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
  7. 加熱せん断粉砕機による粉砕後における穀物の結晶化度が6%未満である請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
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