JP6806809B2 - 気体分離膜 - Google Patents

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Description

本発明は、長期的に優れた実用性を示す気体分離膜に関する。本発明の気体分離膜は、特にオレフィンの分離に優れた性能を示す。
気体分離膜による気体の分離・濃縮は、蒸留法、高圧吸着法等と比べた場合にエネルギー効率に優れ、省エネルギーであり、且つ安全性の高い方法である。この分野における先駆的な実用例としては、例えば、気体分離膜による気体の分離濃縮、アンモニア製造プロセスにおける水素分離等が挙げられる。最近では、オレフィンガスとパラフィンガスとの分離等、炭化水素系ガスを対象にした気体分離膜に関する検討が盛んに行なわれている。
気体分離膜は、一般的には、多孔性支持体の表面上に気体分離活性層が形成された形態を有する(特許文献1及び2)。この形態は、膜にある程度の強度を付与しつつ、気体の透過量を多くすることに有効である。この場合の気体分離活性層とは、例えば、気体分離性高分子のみからなる層等である。
一般に、気体分離膜の性能は、透過速度及び分離係数を指標として表される。透過速度は、下記数式:
(気体分離性高分子の透過係数)/(分離層の厚み)
によって表される。また、分離係数は、分離しようとする2種の気体の透過速度の比で表され、気体分離性高分子の素材に依存する量である。気体分離膜として実用的な性能を得るためには、高いガス分離性能と高いガス透過性とを有し、それらの性能を、気体分離膜の使用期間中維持できることが必要となる。
炭化水素系ガスを分離するための気体分離用膜モジュールは、例えば、多孔性支持体、気体分離活性層、ハウジング、及び接着剤から構成される。この気体分離活性層には、任意的に金属種(例えば金属塩等)を含有させることもある(特許文献3及び4)。
気体分離用膜モジュールの実用性を高めるためには、該モジュールの構成部材を、それぞれ耐薬品性のあるものとする必要がある。耐薬品性の低い気体分離活性層を用いた場合、分離対象ガスが気体分離活性層の膨潤、劣化等を引き起こし、気体分離活性層に、欠陥、多孔性支持体との剥離等が発生し、長期安定性に不具合を生じるという問題を生じ得る。
国際公開第2015/141686号 米国特許出願公開第2015/0025293号 国際公開第2009/093666号 特開2005−246222号公報
気体分離用膜モジュールの多孔性支持体、気体分離活性層、ハウジング、及び接着剤としては、耐薬品性を有する種々の素材があり、これらを利用することができる。
気体分離用膜モジュールに用いられる気体分離活性層としては、これまでに気体分離性能、すなわち透過性能及び分離性能に優れた材料が多数報告されている。しかし、いずれも初期、又は短期的には優れた性能を示すが、長期的使用を考えた場合、実用に耐えない場合がある。
例えば、セルロース、キトサン等の多糖類は、その構造的特徴に由来する優れた気体分離性能及び入手の容易性から、気体分離活性層として頻繁に用いられている。しかし、多糖類は、容易に加水分解等により分解することが懸念され、安定した長期運転を実施するためには、潜在的な危険性があることが指摘されている。
したがって本発明の目的は、高いガス分離性能と高いガス透過性とを有し、かつ安定した長期運転を実施可能な気体分離膜活性層を具備する気体分離膜を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討を行った。その結果、製造した気体分離膜に具備される気体分離活性層の結晶化度及び結晶子サイズのうちの少なくとも一方、好ましくは双方を最適な範囲に調節することによって、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりに要約される。
[1] 多孔性支持体と前記多孔性支持体上に形成された気体分離活性層とを有する気体分離膜であって、
前記気体分離活性層が気体分離性重合体を含有し、前記気体分離性重合体が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾール骨格を有する基、インドール骨格を有する基、アミド基、及びスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の官能基を含む多糖であり、かつ、
前記気体分離性重合体が、以下の条件(A)及び(B)
(A)下記数式(1):
結晶化度(%)=〔Ic/(Ic+Ia)〕×100 (1)
{式中、Icは前記気体分離膜についてX線回折分析を行ったときの結晶質ピークの散乱強度の積分値の和であり、Iaは非晶質ハローの散乱強度の積分値の和である。}で示される前記気体分離性重合体の結晶化度が18%以上46%以下である、及び
(B)下記数式(2):
Figure 0006806809
{式中、Kはシェラー定数であり、λはX線波長であり、βはX線回折ピークの半値幅であり、bは入射ビームの広がりの半値幅であり、θはブラッグ角であり、ただし前記シェラー定数Kは0.9とする。}で示される前記気体分離性重合体のいずれかの面の結晶子サイズが3.3nm以上4.0nm以下である、
のうちの少なくとも1つを満足する、気体分離膜。
[2] 前記条件(A)における前記気体分離性重合体の結晶化度が、18%以上31%以下である、[1]に記載の気体分離膜。
[3] 前記条件(B)における前記気体分離性重合体の結晶化度が、3.3nm以上3.8nm以下である、[1]に記載の気体分離膜。
[4] 前記条件(A)及び前記条件(B)の双方を満足する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[5] 前記気体分離膜が、銀イオン又は銅イオンを含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[6] 前記官能基がアミノ基である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[7] 前記気体分離性重合体がキトサンである、[6]に記載の気体分離膜。
[8] 前記多孔性支持体の表面平均孔径が0.05μm以上0.5μm以下である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[9] 前記多孔性支持体がフッ素系樹脂を含有する、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[10] 前記フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデンである、[9]に記載の気体分離膜。
[11] 前記多孔性支持体が中空糸状である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[12] プロパン40質量%及びプロピレン60質量%から成る混合気体を用い、
膜面積2cm当たりの供給側気体流量を190cc/min、透過側気体流量を50cc/minとし、
加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定された
プロピレンガスの透過速度が10GPU以上3,000GPU以下であり、かつ、
プロピレン/プロパンの分離係数が50以上3,000以下である、
[1]〜[11]のいずれか一項に記載の気体分離膜。
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載の気体分離膜の製造方法であって、
以下の工程:
重合体を溶媒に溶解させて塗工液を製造する工程、
得られた塗工液を多孔性支持体表面に塗布する工程、
多孔性支持体の融点未満の温度で塗工表面を乾燥処理して気体分離活性層を形成する工程、及び、
40℃以上100℃以下の水に浸漬させる工程
を含む、気体分離膜の製造方法。
本発明によると、特にオレフィン等の炭化水素系ガスの分離において、長期的に優れた実用性を示す気体分離膜が提供される。
以下、本発明について、その好ましい形態(以下「本実施形態」)を中心に、詳細を説明する。本実施形態における気体分離膜は、より好ましい形態として多孔性支持体と前記多孔性支持体上に配置された多糖類層とを有する。
<気体分離膜>
[多孔性支持体]
本実施形態における気体分離膜の多孔性支持体は、膜の表裏を貫通する微細な孔を多数有する膜である。
多孔性支持体において、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した表面平均孔径は、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
多孔性支持体の素材は問わない。耐薬品性及び耐溶剤性の観点からは、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ素系樹脂等が好ましく、耐熱性の観点からは、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール等のホモポリマー又はコポリマー等が好ましく、これらのうちのいずれか単独又はこれらの混合物から形成されるものが好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
上記のうち、特にフッ素系樹脂は炭化水素雰囲気での耐久性が高く、多孔性支持体の加工性を観点からPVDFが最も好ましい。
多孔性支持体の形状は、例えば、中空糸状、平膜状、プリーツ状等であることができる。
形状が平膜状又はプリーツ状である多孔性支持体の膜厚は、十分に高い気体分離能と十分に高い気体透過性とを確保する観点から、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。
形状が中空糸状である多孔性支持体の場合、その外径は0.1mm以上20mm以下であることが好ましく;
その内径は0.1mm以上20mm以下であることが好ましい。
中空糸状の多孔性支持体の膜厚は、十分に高い気体分離能と十分に高い気体透過性とを確保する観点から、0.1mm以上20mm以下であることが好ましい。
[気体分離活性層]
気体分離活性層は、本実施形態の気体分離膜において、気体分離性能を高めるために、上記の多孔性支持体上に配置されるものである。気体分離活性層は、少なくとも気体分離性重合体を含有する。この気体分離性重合体は、アミノ基、ピリジル基、イミダゾール骨格を有する基、インドール骨格を有する基、アミド基、及びスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の官能基を含む多糖であり、かつ、
以下の条件(A)及び(B)
(A)下記数式(1):
結晶化度(%)=〔I/(I+I)〕×100 (1)
{数式(1)中、Iは前記気体分離膜についてX線回折分析を行ったときの結晶質ピークの散乱強度の積分値の和であり、Iは非晶質ハローの散乱強度の積分値の和である。}で示される結晶化度(%)が18%以上46%以下である、及び
(B)下記数式(2):
Figure 0006806809
{式中、Kはシェラー定数であり、λはX線波長であり、βはX線回折ピークの半値幅であり、bは入射ビームの広がりの半値幅であり、θはブラッグ角であり、ただし前記シェラー定数Kは0.9とする。}で示される気体分離性重合体のいずれかの面の結晶子サイズが3.3nm以上4.0nm以下である、
のうちの少なくとも1つを満足するものである。
数式(1)で示される結晶化度(%)が18%以上であると、結晶化度が十分に高いと考えられ、数式(2)で示される結晶子サイズが3.3nm以上であると、結晶サイズが十分に大きいと考えられる。これらのいずれの場合でも、気体分離性重合体の重合鎖同士の凝集力が高くなることによって、分離対象ガス、金属塩等による膨潤及び劣化が抑制される効果が発現すると推察される。また、気体分離性重合体の結晶部分には気体が通らない。そのため、数式(1)で示される結晶化度(%)を46%以下に低くし、又は数式(2)で示される結晶子サイズを4.0nm以下に制限することにより、気体の透過性能の低下を防ぐ効果が発現すると推察される。
数式(1)で示される結晶化度(%)は、18%以上46%以下であり、18%以上34%以下であることが好ましく、18%以上31%以下であることがより好ましく、20%以上30%以下であることが更に好ましい。数式(2)で示されるいずれかの面の結晶子サイズは、3.3nm以上4.0nm以下であり、3.3nm以上3.8nm以下であることが好ましく、3.4nm以上3.8nm以下であることがより好ましい。
結晶化度(%)及び結晶子サイズ(nm)は、それぞれ、2θ=5〜40°の範囲のXRDプロフィールを結晶ピークと非晶ピークとに分離し、ピーク形状はすべてガウス関数を仮定して、算出される。ピーク分離を行う散乱プロフィールを得るための具体的な手法を、以下に示す。
(多孔性支持体を有する気体分離膜を用いて測定する場合)
1)気体分離膜に金属塩が含有されている場合には、気体分離膜を蒸留水で洗浄する。洗浄は、洗浄後の蒸留水に金属塩が溶出しなくなるまで実施する。溶出の有無は、例えば高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光等で確認することができる。
2)多孔性支持体に配置された気体分離活性層から、繊維軸に対して垂直方向の断面を持つ切片を切り出す。
3)切り出した切片の中の気体分離活性層に、切片の断面の法線方向からビーム径1μmのX線を入射し、2次元検出器を用いて透過法XRD測定を行って、2次元XRDパターンとして散乱パターンを得る。このとき、X線ビーム内に気体分離活性層のみが含まれ、多孔性支持体が含まれないようにする。また、十分なS/N比が得られるような条件で測定を行うとともに、得られた散乱パターンに対しては空セル散乱補正を行う。X線ビーム内に多孔性支持体が含まれた場合は、得られた散乱パターンから、多孔性支持体由来の散乱を差し引き、気体分離活性層のみの散乱を得る。
4)2次元XRDパターンに無機化合物由来の回折が見られる場合は、その回折をマスクする等により除去したうえで円環平均することにより、気体分離活性層のみの散乱プロフィールを得る。
5)得られた散乱プロフィールから熱散漫散乱等に由来するバックグラウンドを直線と仮定して除去する。バックグラウンドは、2θ=5〜40°に存在する、結晶ピーク及び非晶ピークの足し合わせの散乱の、小角側の裾と広角側の裾とを結んだ接線として決定する。バックグラウンド除去後の散乱が負になる等の不合理が生じないようにする。
(気体分離活性層を単離して測定する場合)
1)気体分離膜を溶媒に浸漬させて、多孔性支持体を溶解させ、気体分離活性層のみを得る。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、N−メチルピロリドン、トルエン等の極性溶媒等が挙げられる。溶媒として、具体的には例えば、多孔性支持体がポリエーテルスルフォンの場合はクロロホルムを用いることが、PVDFの場合はN−メチルピロリドンを用いることが、それぞれ好ましい。
2)1)の操作により得られた気体分離活性層を試料として、上記(多孔性支持体を有する気体分離膜を用いて測定する場合)の3)〜5)と同様に操作する。
本実施形態における気体分離性重合体は、アミノ基、ピリジル基、イミダゾール骨格を有する基、インドール骨格を有する基、アミド基、及びスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の官能基を含む多糖である。これは、このような重合体の構造的特徴に由来する優れた気体分離性能及び入手の容易性を考慮したためである。
多糖とは、単糖がグリコシド結合によって結合して成る構造を有する重合体を意味し、オリゴ糖を包含する概念である。多糖の繰り返し単位数は、好ましくは100〜10,000個であり、より好ましくは300〜7,000個であり、更に好ましくは500〜4,000個である。
本実施形態における多糖として、好ましくは、キトサン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、セルロース、キチン、オリゴグルコサミン等、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの多糖は、単独であっても混合物であってもよい。中でも、気体分離性能に優れている点から、キトサンを用いることが好ましい。ここでのキトサンとは、繰返し単位が、β−1,4−N−グルコサミンのみであるか、又はβ−1,4−N−グルコサミンとβ−1,4−N−アセチルグルコサミンとから形成され、繰り返し単位におけるβ−1,4−N−グルコサミンの割合が70モル%以上のものである。この繰り返し単位におけるβ−1,4−N−グルコサミンの割合を、多糖の脱アセチル化率として参照する。
本実施形態における気体分離性重合体は、分子内の繰り返し単位に、少なくとも、アミノ基、ピリジル基、イミダゾール骨格を有する基、インドール骨格を有する基、アミド基、及びスルホンアミド基のうち少なくとも1種の官能基を含む気体分離性重合体から成る。気体分離活性層がこのような基を含む繰り返し単位を有することにより、気体分離活性層に任意的に含有される金属種(特に金属塩)を高度に分散して含有できると推測でき、得られる気体分離膜を、例えばオレフィンとパラフィンとの分離に好適に適用することができることとなる。中でも、アミノ基を含む気体分離性重合体が好ましい。これは、アミノ基が、気体分離活性層に任意的に含有される金属種(特に金属塩)との相互作用が比較的弱いため、該金属種と分離対象ガス(特にオレフィン)と間の相互作用の低下を抑制できると期待されるからである。
前記多糖の存否及び官能基の存否は、例えば、元素分析、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、固体核磁気共鳴分析(固体NMR)、X線光電子分光分析(XPS)、アルゴンガスクラスターイオン銃搭載X線光電子分光分析(GCIB―XPS)等によって確認することができる。
本実施形態の気体分離膜における気体分離活性層には、分離対象ガス(特にオレフィン)と親和性のある物質を含んでいても構わない。その場合、得られる気体分離膜を、例えばオレフィンとパラフィンとの分離に適用することができる。分離対象ガスと親和性のある物質は、多孔性支持体にも含まれていても構わない。
オレフィンと親和性のある物質として、例えば、金属塩が挙げられる。この金属塩としては、1価の銀イオン(Ag)及び1価の銅イオン(Cu)からなる群より選ばれる金属イオン、又はその錯イオンを含む金属塩が好ましい。より好ましくは、Ag若しくはCu又はその錯イオンと、F、Cl、Br、I、CN、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、及びPF からなる群より選ばれるアニオンとから構成される金属塩である。
気体分離活性層における金属塩の濃度は、10質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下が更に好ましい。これは、金属塩の濃度が低すぎると実用性の高い気体分離性能が得られないことと、金属塩の濃度が高すぎると気体分離用膜モジュールの製造コストが高くなる等の不都合があることから、これら双方のバランスを考慮したためである。
気体分離活性層は、多孔性支持体の両面にあってもよいし、片面上のみにあってもよい。
気体分離膜が中空糸状である場合には、気体分離活性層は、該中空糸の外側表面のみにあってもよいし、内側表面のみにあってもよいし、外側表面及び内側表面の双方の面上にあってもよい。
<気体分離膜の性能>
上記のような本実施形態の気体分離膜は、例えば、オレフィンとパラフィンとの分離に好適に用いることができる。具体的には、例えば、膜面積2cmの気体分離膜に対し、プロパン40質量%及びプロピレン60質量%から成る混合ガスを用い、膜面積2cm当たりの供給側ガス流量を190cc/min、透過側ガス流量を50cc/minとし、加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定されたプロピレンガスの透過速度を10GPU以上3,000GPU以下とし、プロピレン/プロパンの分離係数を50以上3,000以下とすることができる。プロピレン気体の透過速度は、好ましくは50GPU以上2,000GPU以下であり、より好ましくは100GPU以上2,000GPU以下である。プロピレン/プロパンの分離係数は、好ましくは100以上1,000以下であり、より好ましくは150以上1,000以下である。
これらの値は、プロピレン分圧1気圧以下、具体的には0.6気圧の条件で測定されるべきである。
<気体分離膜の製造方法>
次に、本実施形態の気体分離膜の製造方法について説明する。
本実施形態の気体分離膜は、少なくとも下記工程:
重合体を溶媒に溶解させて塗工液を製造する工程(塗工液製造工程)、
得られた塗工液を多孔性支持体表面に塗布する工程(塗布工程)、
多孔性支持体の融点未満の温度で塗工表面を乾燥処理して気体分離活性層を形成する工程(乾燥工程)、及び
40℃以上100℃以下の水に浸漬させる工程(浸漬工程)、
を含むことを特徴とする。
[塗工液製造工程]
本実施形態の塗工液は、所望の気体分離性重合体を水性溶媒に溶解又は分散することにより、製造することができる。
塗工液における、気体分離性重合体の濃度は、0.2質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。気体分離性重合体濃度が0.2質量%未満であると、実用性の高い気体分離膜を得られない場合がある。
塗工液には、溶媒の全量に対して80質量%以下の範囲で有機溶媒が含まれていても構わない。ここで使用される有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性溶媒;等が用いられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
塗工液には、界面活性剤が含まれていても構わない。界面活性剤は、気体分離性重合体と静電反発しないこと、酸性、中性、及び塩基性のいずれの水溶液にも均一に溶解すること、等の観点から、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステル、パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤等が挙げられる。その具体例としては、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステルとして、例えば、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、Tween60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)(以上、東京化成工業社製)、トリトン−X100、プルロニック−F68、プルロニック−F127等を;パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤として、例えば、フッ素系界面活性剤FC−4430、FC−4432(以上、3M社製)、S−241、S−242、S−243(以上、AGCセイミケミカル社製)、F−444、F−477(以上、DIC社製)等を;それぞれ挙げることができる。
塗工液における界面活性剤の濃度は、該塗工液の全量に対して、0.001質量%以上1質量%以下とすることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下とすることがより好ましい。これは、界面活性剤の濃度が高すぎると、該界面活性剤が塗工液へ溶解し難くなる等の問題を生じる場合があり;逆に、界面活性剤の濃度が低すぎると、得られる気体分離膜において、気体分離性能の低下等の問題を生じる場合があるためである。
[塗布工程]
塗布工程においては、多孔性支持体を、上記のような塗工液と接触させる。このときの接触方法としては、例えば、ディップ塗工法(浸漬法)、グラビア塗工法、ダイ塗工法、若しくは噴霧塗工法等による塗工、又はろ過により多孔性支持体上に堆積させる方法による塗工が好ましい。
多孔性支持体と接触させる際の塗工液の温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。接触温度が低すぎると、塗工液が多孔性支持体上に均一に塗工されない等の問題を生じる場合があり;逆に、接触温度が高すぎると、接触中に塗工液の溶媒(例えば水)が過度に揮発する等の問題を生じる場合がある。
接触を浸漬法による場合の接触時間(浸漬時間)は、15分以上5時間以下とすることが好ましく、30分以上3時間以下とすることがより好ましい。接触時間が短すぎると、多孔性支持体上への塗布が不十分になる等の問題を生じる場合があり;逆に、接触時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる場合がある。
[乾燥工程]
上記塗布工程の後、乾燥工程(溶媒除去工程)が行われる。この乾燥工程は、塗布工程後の多孔性支持体を、該多孔性支持体の融点未満の温度で加熱して塗布膜を乾燥処理することにより、多孔性支持体上に気体分離活性層を形成する工程である。
乾燥工程は、好ましくは40℃以上160℃以下、より好ましくは40℃以上120℃以下の環境下に、好ましくは5分以上5時間以下、より好ましくは10分以上3時間以下、例えば静置する方法により行うことができる。これは、乾燥温度が過度に低い場合若しくは乾燥時間が過度に短い場合又はこれらの双方である場合には、溶媒を十分に乾燥除去することができない等の問題を生じる場合があり;逆に、乾燥温度が過度に高い場合若しくは乾燥時間が過度に長い場合又はこれらの双方である場合には、製造コストの増加、製造効率の低下等の問題を生じる場合があるためである。
[浸漬工程]
上記塗布工程又は乾燥工程の後に、得られた気体分離膜を40℃以上100℃以下の水に浸漬させる。この工程は、気体分離膜を構成する気体分離性重合体の結晶化度を高くし、気体分離膜の耐薬品性を高める目的で実施される。この工程によって、気体分離性重合体の結晶化度が向上し、耐薬品性が高くなると推測される。
浸漬に用いられる水には、全量に対して80質量%以下の範囲で有機溶媒が含まれていても構わない。ここで使用される有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性溶媒;等が用いられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用しても構わない。
気体分離膜と接触させる水の温度は、40℃以上100℃以下であり、40℃以上80°以下であることが好ましく、40℃以上60℃以下であることがより好ましい。温度が低すぎると、結晶化度の上昇が起こらず、所望の耐薬品性を付与することができないため、長期的に安定した気体分離性能を維持することができない可能性がある。一方、温度が高すぎると、多孔性支持体と気体分離活性層の剥離等が起こり、気体分離膜に欠陥を生じる可能性がある。
気体分離膜を水に浸漬させるときの圧力は、0気圧以上10気圧以下とすることが好ましい。圧力が高すぎると、多孔性支持体と気体分離活性層の剥離等が起こり、気体分離膜に欠陥を生じる可能性がある。
気体分離膜を水に浸漬させる時間は、1分以上5時間以下とすることが好ましく、1分以上3時間以下とすることがより好ましい。接触時間が短すぎると、結晶化度の上昇が起こらず、所望の耐薬品性を付与することができないため、長期的に安定した気体分離性能を維持することができない可能性がある。逆に、接触時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる可能性がある。
[金属塩含浸工程]
気体分離性重合体層が金属塩を含有する気体分離膜は、上記のようにして得られた気体分離膜を、所望の金属塩を含有する金属塩水溶液と接触させる金属塩含浸工程を更に行うことにより、製造することができる。その後、任意的に乾燥工程を行ってもよい。
上記金属塩水溶液中の金属塩の濃度は、0.1M以上50M以下が好ましい。金属塩水溶液中の金属塩の濃度が0.1M以下であると、得られる気体分離膜をオレフィンとパラフィンとの分離に使用したときに実用性の高い分離性能を示さない場合がある。この濃度が50Mを超えると、原料コストの増加につながる等の不都合が生じる。
気体分離膜の、金属塩水溶液との接触処理は、浸漬法によることが好ましい。浸漬時の水溶液温度は、10℃以上90℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。この浸漬温度が低過ぎると、気体分離性重合体層への金属塩の含浸が十分に起こらない等の問題を生じる場合があり;逆に、浸漬温度が高過ぎると、浸漬中に金属塩水溶液の溶媒(水)が過度に揮発する等の問題を生じる場合がある。
以下に、本発明について、実施例等を用いて更に具体的に説明する。しかしながら本発明は、これらの実施例等に何ら限定されるものではない。
<気体分離性重合体のXRD測定>
[分析例1]
(1)気体分離性重合体フィルムの作製
酢酸2g及び蒸留水94gが入ったポリ瓶に、原料キトサンとして脱アセチル化率100%のキトサン4gを加え、終夜撹拌して溶解させた。溶解後、得られた水溶液を孔径5μmのフィルターで加圧ろ過して不溶の不純物を除去した。ろ過後の水溶液を24時間静置して脱泡した。脱泡後の水溶液をガラス板上に展開し、塗工厚を1,250μmに制御したドクターブレードを用いて塗工膜厚を調整した後、80℃において3時間加熱して乾燥工程を行って塗膜を形成した。その後、濃度0.8Mの水酸化ナトリウム溶液(溶媒は、エタノール:水=80:20(体積比)の混合溶媒である。)に24時間浸漬した後、蒸留水に24時間浸漬した。次いで、溶媒として水(HO)を用い、温度40℃、圧力1気圧の条件下で60分間の浸漬工程を行うことにより、気体分離性重合体のフィルムを得た。
(2)結晶化度及び結晶子サイズの評価
得られたフィルムについて、結晶化度及び結晶子サイズを、以下の方法により算出した。
フィルムを24時間大気下に置き、乾燥した。その後、以下の装置・条件を用いてXRD測定を行った。X線は、膜に対して垂直に入射した。
X線回折装置:株式会社リガク製、「NanoViewer」
X線波長λ:0.154nm
光学系:ポイントコリメーション(1st slit:0.4mmφ、2nd slit:0.2mmφ、およびguard slit:0.8mmφ)
検出器:イメージングプレート(IP)
試料−検出器間距離:75.3mm
試料周りの環境:真空
露光時間:12時間
XRD測定後、イメージングプレートから得られたX線回折パターンに対して検出器のバックグラウンド補正、空セル散乱補正を行い、円環平均によりXRDプロフィールを得た。続いて、XRDプロフィールの2θ=5°と2θ=40°とを結ぶ直線を引き、バックグラウンドとして除去した。
続いて、Wave Metrics社のソフトウェアIgor Pro 6.36のMulti−peak Fit機能を用い、結晶ピーク、非晶ピークともにガウス関数で近似し、XRDプロフィールをピーク分離した。
結晶化度は、以下のようにして算出した。
結晶ピークとして、4つのピークを考慮し、4つのピーク位置の初期値を2θ=11.0°、15.6°、20.7°、及び21.5°とし、半値全幅を、小角のピークから順に、2.3°、0.9°、1.2°、及び3.7°とした。非晶ピークとしては1つのピークを考慮し、ピーク位置を2θ=19.0°とし、ピークの半値全幅を14.5°とした。なお、結晶ピークに関しては、ピーク位置が2θ=21.5°の結晶ピークのピーク位置のみ固定し、その他の結晶ピークに対しては拘束条件を与えずにピーク分離を行った。また、非晶ピークはピーク位置、半値全幅ともに上記の値に固定してピーク分離を行った。ピーク分離の結果、ピーク位置が初期値と大きく異なるピークが存在する場合、又はピークの大きさが負の値になるピークが存在する場合には、そのピークを考慮せずに再度ピーク分離を実行した。
結晶化度は、ピーク分離の結果得られた、各ピークの面積を上記数式(1)に代入することにより、結晶化度を算出した。
結晶子サイズは、上記のピーク分離の結果得られた、2θ=10°〜12°に位置する結晶ピークの半値全幅、又は、2θ=15.4°に位置する結晶ピークの半値全幅を上記数式(2)に代入し、結晶子サイズを算出した。なお、シェラー定数として、K=0.9を用いた。
[分析例2〜7及び12]
原料キトサンの脱アセチル化率、並びに乾燥工程及び浸漬工程の条件を、それぞれ表1に記載のとおりに変更した他は、分析例1と同様にして気体分離性重合体のフィルムを作製し、その結晶化度及び結晶子サイズを評価した。
結果を表1に示す。
[分析例8]
分析例2と同様の方法によって得られた気体分離性重合体のフィルムを、7M硝酸銀水溶液に72時間浸漬して、フィルム中に銀原子を導入した。得られたフィルムを、蒸留水で銀水溶液が溶出しなくなるまで洗浄することにより、銀原子を含有する気体分離性重合体のフィルムを得た。
得られたフィルムについて、分析例1と同様の方法によって、結晶化度及び結晶子サイズを評価した。
結果を表1に示す。
[分析例9]
浸漬工程の条件を表1に記載のとおりに変更した他は、分析例8と同様にして、銀原子を含有する気体分離性重合体のフィルムを作製し、その結晶化度及び結晶子サイズを評価した。
結果を表1に示す。
[分析例10及び11]
乾燥工程の条件を表1に記載のとおりとし、浸漬工程を行わなかった他は、分析例1と同様にして気体分離性重合体のフィルムを作製し、その結晶化度及び結晶子サイズを評価した。
結果を表1に示す。
[分析例13]
(1)イソブチル修飾キトサンの合成
キトサン(数平均分子量約10万)4.00g、イソブチルアルデヒド0.358g、酢酸4.50g、及び水392gを混合し、25℃で24時間撹拌した。その後、1規定水酸化ナトリウム水溶液でpHを約10に調整し、生成した沈殿物を濾別した。得られた沈殿物を、蒸留水及びエタノールで洗浄し、終夜乾燥させることで、イソブチル修飾キトサンを3.10g得た。イソブチル修飾率は、プロトン核磁気共鳴分光分析(H−NMR)測定により算出した。H−NMR測定は、得られたイソブチル修飾キトサンを重水:重トリフルオロ酢酸の混合溶媒(10:1)に10mg/mLになるように溶解させ、重クロロホルムを標準物質として行った。イソブチル修飾率は4.2mol%であった。
H−NMRの測定は、以下の条件下で行った。
装置名:日本電子株式会社製、形式「JNM−GSX400G」(400MHz)
測定温度:25℃
積算回数:16回
(2)気体分離性重合体フィルムの作製、並びに結晶化度及び結晶子サイズの評価
原料キトサンとして上記方法で作製したイソブチル修飾キトサンを用い、浸漬工程を行わなかった他は、分析例1と同様にして気体分離性重合体のフィルムを作製し、その結晶化度及び結晶子サイズを評価した。
結果を表1に示す。
Figure 0006806809
<気体分離膜の性能試験>
[実施例1]
(1)気体分離膜の作製
多孔性支持体としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から成る内径0.7mm、外径1.2mm、及び長さ7.1cmの中空糸膜を用いた。
上記の中空糸膜状の多孔性支持体の外表面上に、以下のようにしてキトサンからなる気体分離活性層を形成した。
酢酸2g及び蒸留水94gが入ったポリ瓶に、原料キトサンとして脱アセチル化率100%のキトサン4gを加え、終夜撹拌して溶解させた。溶解後、得られた水溶液を孔径5μmのフィルターで加圧ろ過して不溶の不純物を除去した。ろ過後の水溶液を24時間静置して脱泡した。
その後、中空糸膜状の多孔性支持体を、上記の水溶液中に浸漬した後、100℃において3時間加熱して乾燥工程を行って、中空糸の外表面上に塗膜を形成した。その後、塗膜を有する中空糸を、濃度0.8Mの水酸化ナトリウム溶液(溶媒は、エタノール:水=80:20(体積比)の混合溶媒である。)に24時間浸漬した後、蒸留水に24時間浸漬した。更に、溶媒として水(HO)を用い、温度40℃、圧力1気圧の条件下で60分間の浸漬工程を行って、中空糸膜状の多孔性支持体の該表面上に気体分離性重合体からなる気体分離活性層を形成することにより、気体分離膜を得た。得られた気体分離膜における気体分離活性層の膜厚は0.5μmであった。
気体分離膜の性能評価には、得られた中空糸状の気体分離膜を10本束ねて使用した。
なお、実施例1における気体分離活性層の形成方法は、乾燥工程における乾燥温度が異なる他は、上記の分析例1における気体分離性重合体のフィルムの形成方法と略同一である。
(2)気体分離膜の性能評価
上記の気体分離膜を用いて、プロパン及びプロピレンの透過速度を測定した。測定は、供給ガスとしてプロパン及びプロピレンから成る混合ガス(プロパン:プロピレン=40:60(質量比))を中空糸膜外側に、透過ガスとしてヘリウムを中空糸膜内側に、それぞれ供給し、供給ガス流量を190cc/min、透過ガス流量を50cc/minとして、加湿雰囲気下等圧式により、測定温度30℃において行った。
プロパン及びプロピレンから成る混合ガスの供給を開始してから3時間後の透過ガスの組成から算出された結果を測定1日目の結果とし、供給を開始してから1か月後及び3か月後に得られた結果をそれぞれ測定1か月目、測定3か月目の結果とした。
分離ガスの分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。
結果を表2に示す。
[実施例2〜5、及び比較例3]
浸漬工程の条件を、それぞれ表1に記載のとおりに変更した他は、実施例1と同様にして気体分離膜を作製し、その性能を評価した。これらの実施例及び比較例で得られた気体分離膜における気体分離活性層の膜厚は、いずれも0.5μmであった。
結果を表2及び表3に示す。
[実施例6]
(1)気体分離膜の作製
多孔性支持体としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)製平膜を用い、その片面上に、分析例3と同様にして気体分離性重合体からなる気体分離活性層を形成することにより、気体分離膜を得た。得られた気体分離膜における気体分離活性層の膜厚は50μmであった。
(2)気体分離膜の性能評価
上記の気体分離膜を用いて、供給気体を気体分離活性層形成面側に、透過気体を気体分離活性層の形成面とは反対の面側に、それぞれ流通させた他は、実施例1と同様の方法によって測定を実施した。その結果を表2に示す。
[比較例1、2、及び4]
原料キトサンの種類、及び乾燥工程の条件を、それぞれ表3に記載のとおりとし、浸漬工程を行わなかった他は、実施例1と同様にして気体分離膜を作製し、その性能を評価した。これらの比較例で得られた気体分離膜における気体分離活性層の膜厚は、いずれも0.5μmであった。
結果を表3に示す。
表2及び表3には、それぞれの実施例及び比較例における気体分離活性層の形成方法と略同一の方法によって気体分離性重合体のフィルムを形成した分析例の番号を付記した。実施例1〜6及び比較例2〜4については、乾燥工程における乾燥温度が、対応する分析例と異なる。
Figure 0006806809
Figure 0006806809
以上の実施例から、多孔性支持体上に、結晶化度が18%以上46%以下に制御され、及び/又は結晶子サイズが3.3nm以上4.0nm以下に制御された気体分離性重合体からなる気体分離活性層が形成された気体分離膜を用いた場合、長期的に安定して優れた分離性能を有することが検証された。結晶化度が18%以上、及び/又は結晶子サイズが3.3nm以上であると、結晶化度が十分に高く、及び/又は結晶サイズが十分に大きいと考えられる。そのため、気体分離性重合体の重合鎖同士の凝集力が高くなることによって、分離対象ガス、金属塩等による膨潤及び劣化が抑制されて、好適な結果を示したと推察される。一方、結晶部分には気体が通らない。そのため、結晶化度を46%以下に低くし、及び/又は結晶子サイズを4.0nm以下に制限することにより、気体の透過性能の低下を防ぐ効果が発現して、好適な結果を示したと推察される。
本実施形態の気体分離用膜を用いると、長期的に優れた実用性を示すオレフィンガス等の分離方法が提供される。

Claims (12)

  1. 多孔性支持体と前記多孔性支持体上に形成された気体分離活性層とを有する気体分離膜であって、
    前記気体分離活性層が気体分離性重合体を含有し、前記気体分離性重合体が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾール骨格を有する基、インドール骨格を有する基、アミド基、及びスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の官能基を含む多糖であり、かつ、
    前記気体分離性重合体についてX線回折分析を行ったとき、以下の条件(A)及び(B)の双方を満足する、気体分離膜;
    (A)下記数式(1):
    結晶化度(%)=〔Ic/(Ic+Ia)〕×100 (1)
    {式中、Icは結晶ピークの散乱強度の積分値の和であり、Iaは非晶ピークの散乱強度の積分値の和である。}で示される前記気体分離性重合体の結晶化度が18%以上46%以下である、及び
    (B)下記数式(2):
    Figure 0006806809
    {式中、Kはシェラー定数であり、λはX線波長であり、βはX線回折ピークの半値全幅であり、bは入射ビームの広がりの半値全幅であり、θはブラッグ角であり、前記シェラー定数Kは0.9とする。}で示される前記気体分離性重合体のいずれかの面の結晶子サイズDが3.3nm以上4.0nm以下である、
    ただし、前記結晶化度は、ピーク分離によって得られた各ピークの面積に基づいて、上記数式(1)によって示され、
    前記結晶子サイズは、ピーク分離によって得られた、2θ=10°〜12°又は15.4°に位置する結晶ピークの半値全幅に基づいて、上記数式(2)によって示され、
    ここで、前記ピーク分離は、前記X線回折分析から得られたX線回折パターンから円環平均によって得られたXRDプロフィールにおいて、2θ=5°と2θ=40°とを結ぶ直線をベースラインとして、以下の基準にしたがって、ガウス関数近似により行われる:
    (1)結晶ピークとしては4つのピークを考慮し、該4つのピークの初期値を2θ=11.0°、15.6°、20.7°、及び21.5°とし、半値全幅を小角ピークから順に、2.3°、0.9°、1.2°、及び3.7°とすること、
    (2)非晶ピークとして、1つのピークを考慮し、ピーク位置を2θ=19.0°とし、半値全幅を14.5°とすること、
    (3)結晶ピークについては、ピーク位置が2θ=21.5°の結晶ピークのピーク位置を固定し、その他の結晶ピークには拘束条件を与えない条件で、ピーク分離を行うこと、並びに、
    (4)非晶ピークについては、前記ピーク位置及び前記半値全幅を固定した条件で、ピーク分離を行うこと。
  2. 前記条件(A)における前記気体分離性重合体の結晶化度が、18%以上31%以下である、請求項1に記載の気体分離膜。
  3. 前記条件(B)における前記気体分離性重合体の結晶子サイズが、3.3nm以上3.8nm以下である、請求項1に記載の気体分離膜。
  4. 前記気体分離膜が、1価の銀イオン又は1価の銅イオンを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  5. 前記官能基がアミノ基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  6. 前記気体分離性重合体がキトサンである、請求項5に記載の気体分離膜。
  7. 前記多孔性支持体の表面平均孔径が0.05μm以上0.5μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  8. 前記多孔性支持体がフッ素系樹脂を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  9. 前記フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデンである、請求項8に記載の気体分離膜。
  10. 前記多孔性支持体が中空糸状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  11. プロパン40質量%及びプロピレン60質量%から成る混合ガスを用い、
    膜面積2cm当たりの供給側気体流量を190cc/min、透過側気体流量を50cc/minとし、
    加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定された
    プロピレンガスの透過速度が10GPU以上3,000GPU以下であり、かつ、
    プロピレン/プロパンの分離係数が50以上3,000以下である、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の気体分離膜の製造方法であって、
    以下の工程:
    重合体を溶媒に溶解させて塗工液を製造する工程、
    得られた塗工液を多孔性支持体表面に塗布する工程、
    多孔性支持体の融点未満の温度で塗工表面を乾燥処理して気体分離活性層を形成する工程、及び、
    40℃以上100℃以下の水に浸漬させる工程
    を含む、気体分離膜の製造方法。
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