JP6795010B2 - X線分析方法及びx線分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、X線分析方法及びX線分析装置に関する。
電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザでは、試料に照射した電子線により発生する特性X線スペクトルを測定し、試料に含有される元素やその組成を定量したり、試料の構成元素の分布を示す元素マッピングを作成することができるので、材料開発や品質評価の分野で広く活用されている。
ところで、上記の特性X線スペクトルにおいて、エネルギーが約2keV以下の軟X線領域には、酸素より軽い元素の情報やピーク形状やピーク位置のずれを生じさせる化学結合状態を反映した情報(ケミカルシフト)が存在する。しかし、軟X線は試料による吸収や散乱の影響により一般的に強度が低く、従来のシンチレーション検出器や半導体検出器では感度やエネルギー分解能が不十分であったため、ケミカルシフトの解析を行うことは困難であった。
最近、軟X線領域のX線を高感度、高分解能で測定できる軟X線分光器が開発され、特許文献1ではこの検出器を搭載した透過型電子顕微鏡が開示されている。軟X線分光器を電子顕微鏡と組み合わせた装置では、高エネルギー分解能の軟X線スペクトルを1次元あるいは2次元で試料の位置情報と共に記録することで、特性X線が近接していて従来の検出器では分離が困難であった元素について分析や強度分布や、注目元素の化学状態分布を可視化することが可能となった。
化学状態や強度分布の可視化を行うには、通常、非特許文献1に記載されているように、取得した軟X線スペクトルの注目エネルギー位置を含む適当なエネルギー範囲にROI(region of interest)を設定し、ROI毎に積算強度の1次元または2次元分布(ROIマップ)を求める。
しかしながら、注目元素のケミカルシフトがわずかしかない場合、ROIのエネルギー範囲を小さくすることで信号量が減少するため、ROIマップを得ることは困難であった。また、ケミカルシフトが十分に大きい場合でも、強いピークが重畳して存在する場合、強いピークの裾に弱いピークが埋没するため、ROIマップは実質的に強いピークの分布と同じになってしまうという問題があった。
一方、化学状態によるスペクトルの僅かな差を分離する方法として、一般的に主成分分析、独立成分分析、非負値行列因子分解等の多変量統計解析によって、特徴スペクトルを抽出する方法が用いられる。非特許文献2では、走査透過電子顕微鏡によって得た窒化ホウ素(BN)の電子線損失分光スペクトルにおいて、主成分分析を行うことにより、π結合とσ結合に関わるスペクトルピークのみをそれぞれ抽出した例が記載されている。
しかしながら、軟X線スペクトルに上記の多変量統計解析手法を適用した場合、ランダムなエネルギー位置にスパイク状のピーク(以下、単にスパイクピークと称する。)が立つ特徴スペクトルが多数抽出されてしまう。このスパイクピークは、測定試料中に存在する元素由来の特性X線ピークとは関連性がなく、物理的に意味のない特徴スペクトルである。
特開2002−329473号公報
笠田ら、まてりあ55(2016)576 R.F.Egerton、Electron Energy−Loss Spectroscopy in the Electron Microscope 3rd edition、 p265−269
以上のように、軟X線スペクトルの僅かな違いや強いピークに埋もれた微弱なピークを正確に分離抽出し、抽出された特徴スペクトルを用いて軟X線の強度分布や化学状態分布を得る手法は存在しない。
そこで本発明は、測定した軟X線強度スペクトルから試料の組成や化学状態に起因する特徴スペクトルを正確に抽出し、抽出した特徴スペクトルに基づいて試料の組成や化学状態の分布を可視化することが可能なX線分析方法、および、この方法を実施するためのX線分析装置を提供することを目的とする。
発明者らは、軟X線強度スペクトルデータに対し多変量統計解析を行った際に、上記のスパイクピークが発生する原因について鋭意検討した。その結果、上記のスパイクピークが軟X線検出器に使用される2次元検出器カメラに、位置や時間に関係なくランダムに混入するノイズ(スパイクノイズ)、すなわちX線由来以外のノイズに起因することを見出した。
軟X線強度スペクトルデータから上記のスパイクノイズを除去する必要があるが、ある閾値を設けてその値以上のデータをスパイクノイズと判定して除去しようとすると、本来残すべき特性X線ピークも除去されてしまう。そこで、信号データからノイズを低減・除去する際に通常用いられるメディアンフィルター処理を用いて、軟X線強度スペクトルから上記のスパイクノイズを除去することを試みた。メディアンフィルター処理とは、着目するデータ(エネルギー)EとEから±ΔEの範囲内にあるデータの強度値を強度の高い順に並べ、強度の中央値をEのデータ強度に置き換える非線形フィルターによるスムージング処理である。
メディアンフィルター処理を用いることにより、上記のスパイクピーク(以下、スパイクノイズとも称する。)は削除できた。しかし、メディアンフィルター処理後の軟X線強度スペクトルデータを多変量統計解析したところ、得られた特性X線ピークを含む特徴スペクトルの形状と強度分布は組織から推定される結果とは対応せず、不正確な特徴スペクトルであることがわかった。この原因として、発明者らは以下のように考えた。
メディアンフィルター処理は、スペクトルのノイズ成分を除去する一方で、正常な測定データに対してもスムージングがかかり系統的に偏った変化を与えてしまう。多変量統計解析では、データ間の信号強度は互いに独立であることを仮定しているが、メディアンフィルター処理では隣接するデータ間の信号強度を演算に用いるため干渉が生じ、多変量統計解析の前提条件を満たさなくなる。このデータ間の干渉が不正確な特徴スペクトル(アーティファクトともいう)をもたらす原因であると考えられる。
そこでさらに検討を重ねた結果、(1)スパイクノイズのみを除去したX線強度像からX線強度スペクトルのデータを得て多変量統計解析する、もしくは、(2)スパイクノイズのみを除去したX線強度スペクトルのデータを用いて多変量統計解析を行うことにより、正確な特徴スペクトルを抽出できることがわかった。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]試料に電子線を照射して発生したX線を分光分析するX線分析方法であって、
軟X線分光器で分光したX線を2次元検出器で測定し、X線強度像を取得するX線強度像取得工程と、
取得した前記X線強度像においてX線由来以外のノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズ除去工程後のX線強度像をX線強度スペクトルに変換するデータ変換工程と、
前記データ変換工程で得られたX線強度スペクトルを多変量統計解析する解析工程と、
前記解析工程で得られた解析結果を出力する出力工程と、
を有するX線分析方法。
[2]前記ノイズ除去工程は、X線強度像において同一X線エネルギーを有する画素の強度データに対して、フィルター処理を行う[1]に記載のX線分析方法。
[3]試料に電子線を照射して発生したX線を分光分析するX線分析方法であって、
軟X線分光器で分光したX線を2次元検出器で測定し、X線強度像を取得するX線強度像取得工程と、
取得した前記X線強度像をX線強度スペクトルに変換するデータ変換工程と、
前記データ変換工程で得られたX線強度スペクトルにおいてX線由来以外のノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズ除去工程後のX線強度スペクトルを多変量統計解析する解析工程と、
前記解析工程で得られた解析結果を出力する出力工程と、
を有するX線分析方法。
[4]前記ノイズ除去工程は、
測定領域全体のX線強度スペクトルの強度値および前記強度値の平均値と前記X線強度スペクトルの強度値の標準偏差とを求める工程と、
測定領域内における任意のX線強度スペクトルの強度値と前記X線強度スペクトルの強度値の平均値との差の二乗が、前記標準偏差に対して下記(1)式を満足するとき、前記任意のX線強度スペクトルの強度値がノイズであると判定するノイズ判定工程と、
ノイズと判定した強度値のみを、隣接する低エネルギー側の強度値、隣接する高エネルギー側の強度値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の平均値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の線形補間値、のいずれか1つで置き換える工程と、
を有する[3]に記載のX線分析方法。
{S(E)−S(Eav>k×S(Eσ (1)
ここで、
(E):i番目の測定点のX線強度スペクトルのエネルギーEの強度値
S(Eav:S(E)を測定領域全体で平均した強度値
S(Eσ:S(E)の測定領域全体における標準偏差
k:5〜50の定数
である。
[5]前記解析工程における多変量統計解析は、主成分分析、独立成分分析、非負値行列因子分解のいずれか1つ以上である[1]〜[4]のいずれか1つに記載のX線分析方法。
[6]試料の任意の位置に電子線を照射または走査する機能を有する電子顕微鏡部と、
電子線の照射または走査により試料から発生するX線を分光する軟X線分光器と、分光したX線をX線強度像として検出する2次元X線検出器とを有するX線検出部と、
前記X線強度像または、前記X線強度像をX線強度スペクトルに変換し、電子線照射位置の情報とともに前記X線強度像または前記X線強度スペクトルを記憶するスペクトル収集・記憶装置と、
前記X線強度像または前記X線強度スペクトルからノイズを除去し多変量統計解析を行うためのスペクトル解析装置と、
前記スペクトル解析装置で得られる解析結果を出力する表示装置と、
を備えるX線分析装置。
[7]前記電子顕微鏡部は、走査電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザ、透過電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡のいずれか1つである[6]に記載のX線分析装置。
本発明によれば、軟X線強度スペクトルに含まれる近接したピーク成分の分離や強度の大きく異なるピーク成分の分離が正確にでき、かつその成分の空間分布を知ることができる。したがって、このX線分析方法を適用することにより、あらゆる材料開発に極めて重要な知見をもたらすことができる。
図1は、本発明のX線分析装置の構成の一例を示す模式図である。 図2(a)は、EPMAに取り付けた軟X線測定装置で、試料に電子線を照射せずバックグラウンドのみを測定したときの2次元検出器のX線強度像であり、図2(b)は、図2(a)の白枠で囲った領域の拡大図である。 図3は、図2(a)のX線強度像の輝度をX線エネルギー分散方向と垂直な方向に積算したバックグランド強度スペクトルである。 図4(a)は、図2(a)のX線強度像に対し、エネルギー分散方向と垂直方向にのみメディアンフィルター処理を施した結果であり、図4(b)は、図4(a)の白枠で囲った領域の拡大図である。 図5は、図4のスパイクノイズ除去後のX線強度像を、エネルギー分散方向と垂直な方向に輝度を積算して得たバックグランド強度スペクトルである。 図6は、発明例1について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図7は、発明例1における、Cの重み係数マップである。 図8は、比較例1について、X線強度スペクトルから得たCのROIマップである。 図9は、比較例1について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図10は、比較例2について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図11は、発明例2について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図12は、発明例2について、多変量統計解析のうち非負値行列因子分解により得られた特徴スペクトルである。 図13は、発明例2について、試料の反射電子像と、多変量統計解析のうち非負値行列因子分解により得られた各成分の重み係数マップであり、図13(a)は試料の反射電子像であり、図13(b)は金属Alの重み係数マップ、図13(c)は酸化Alの重み係数マップ、図13(d)はZnの重み係数マップ、図13(e)はCの重み係数マップである。 図14は、比較例3について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図15は、比較例4について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた特徴スペクトルである。 図16は、比較例3について、X線強度スペクトルから得た各成分のROIマップであり、図16(a)は金属Al、図16(b)は酸化Al、図16(c)はZn、図16(d)はCのROIマップである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず本発明のX線分析装置について説明する。図1は、本発明のX線分析装置の構成の一例を示す模式図である。本発明のX線分析装置は、電子顕微鏡部AとX線検出部Bとスペクトル分析部Cとから構成される。なお、X線検出部Bとスペクトル分析部Cを総称して、X線測定装置ということもある。
電子顕微鏡部Aとしては、走査電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)などがあげられる。なお、図1は、電子顕微鏡部にSEMあるいはEPMAを用いた場合であり、TEMおよびSTEMの場合は対物レンズ、試料および試料ステージの位置関係は変わるものの、測定信号の流れは同様であり、配置は適宜変えられる。
電子顕微鏡部Aでは、電子源1から発生した電子線5を集束レンズ2及び対物レンズ4により細く絞り、試料ステージ7に固定した分析試料6に照射する。細く絞った電子線5は顕微鏡制御部8に接続された走査コイル3により測定試料6上の所望する位置に照射することができる。また、電子線5を固定し、顕微鏡制御部8に接続された試料ステージ7を動かすことにより所望する料位置に電子線5を照射することも可能である。さらに上記の走査コイル3または試料ステージ7をパルスモーター等により一定の間隔で連続的に走査することにより、電子線5を試料上で2次元的に連続して照射することもできる。すなわち、電子顕微鏡部Aにおいては、試料に電子線を照射すればよく、照射方法については特に限定されない。たとえば、試料上で電子線を1次元または2次元走査しながら試料に電子線を照射してもよく、あるいは電子線に対し試料を1次元または2次元走査しながら試料に電子線を照射してもよい。
電子線5の照射により試料から発生する特性X線9は、X線検出部Bの回折格子(軟X線分光器)10によりX線9−1のX線エネルギー、X線9−2のX線エネルギーといったように、X線エネルギー(「X線エネルギー」に統一するが、「X線波長」と読み替えてもよい。)ごとに分光し、2次元(X線)検出器11でX線強度像として計測される。
2次元(X線)検出器11で計測して得られたX線強度像は、スペクトル分析部Cのスペクトル収集・記憶装置12に送られ、さらに必要に応じて各エネルギー画素(チャンネル)ごとの強度を積算することによりX線強度スペクトルに変換し、顕微鏡制御部8から送られてくる電子線照射位置情報やその他必要な制御情報と統合し、スペクトル収集・記憶装置12に記憶させる。スペクトル収集・記憶装置12に記憶させたX線強度像またはX線強度スペクトルは、スペクトル解析装置13においてスパイクノイズを後述する方法で除去した後、多変量統計解析を行う。なお、測定点数が1000点を超えるような大きい場合、スペクトル収集・記憶装置12にて測定と並行してスパイクノイズ除去を行ってスパイクノイズのないX線強度像またはX線強度スペクトルとした後、スペクトル解析装置13において多変量統計解析を行ってもよい。
多変量統計解析により抽出された特徴スペクトル及びその重み成分のマップは、モノクロあるいはカラー表示で表示装置14に出力される。
顕微鏡制御部8、スペクトル収集・記録装置12およびスペクトル解析装置13は、それぞれが独立した装置であってもよいし、一部あるいは全てが統合された装置であってもよい。
次に、本発明のX線分析方法におけるノイズ除去工程ついて説明する。本発明では、スペクトル収集・記憶装置12またはスペクトル解析装置13において、X線検出部Bで検出したX線強度像のスパイクノイズを除去する。具体的には、次に示すいずれかの方法でスパイクノイズを除去する。
(I)X線強度スペクトルに変換する前のX線強度像においてスパイクノイズ(X線由来以外のノイズ)を除去する方法
図2(a)に一例として、EPMAに取り付けた軟X線測定装置で、試料に電子線を照射せず30秒バックグラウンドのみを測定したときの2次元検出器のX線強度像を示す。紙面横方向がX線のエネルギー分散方向で、約55〜210eVのエネルギー範囲に対応している。また、図2(a)における輝度が信号強度(特性X線強度)に対応し、輝度が高い箇所(紙面上で色の薄い箇所)は強度が大きいことを意味する。なお、検出器のチャンネル数は2048×2048で、X線強度像の画素数もこれに対応している。また、図2(a)のX線エネルギー分散方向と垂直な方向(紙面縦方向)については、8個の画素をビニングし、実質2048×256の画像としてバックグラウンドを測定した。
図2(a)のX線強度像の輝度をX線エネルギー分散方向と垂直な方向に積算すると、図3に示すように従来のX線分析装置で測定されるのと同様のバックグランド強度スペクトルが得られる。図3の鋭いピーク(スパイクピーク)は、図2(a)のところどころに存在する輝点や輝線に対応しており、2次元検出器のスパイクノイズに起因する。図2(a)の白枠で囲った領域の拡大図を図2(b)に示す。例えば、図3の1100チャンネル付近のスパイクピークは、図2(b)の中央部の強い輝線に対応しており、スパイクノイズはX線強度像で容易に識別することができる。このスパイクノイズは、ランダムに入ることが特徴であり、X線強度像のあるエネルギー位置に入った輝点や輝線が、そのエネルギー位置でエネルギー分散方向と垂直な2048画素すべてに存在することはない。
この特徴を利用して、本発明では、X線強度像において、同一X線エネルギーを有する画素(同一エネルギーチャンネル)の強度データに対してフィルター処理を行うことにより、スパイクノイズを除去する。すなわち、X線強度像のエネルギー分散方向と垂直な方向にのみフィルター処理を施すことにより、スパイクノイズを除去する。なお、フィルター処理としては、たとえばメディアンフィルター処理、Savitzky−Golayフィルタ処理が好適である。
図4(a)は、図2(a)に示したX線強度像に対し、エネルギー分散方向と垂直方向にのみ幅3チャンネルのウィンドウでメディアンフィルター処理を施した結果である。また、図4のスパイクノイズ除去後のX線強度像を、エネルギー分散方向と垂直な方向に輝度を積算して得たバックグランド強度スペクトルを図5に示す。
図4および図5には、図2および図3に見られたスパイクノイズは認められず、X線エネルギー分散方向と垂直な方向のメディアンフィルター処理により、スパイクノイズを除去できていることがわかる。また、図4(b)は図4(a)の白枠で囲った領域の拡大図であり、図2(b)と同じ領域である。図2(b)の中央部の強い輝線は図3の1100チャンネル付近のスパイクピークに対応しており、スパイクノイズが除去できていることがわかる。
なお、このノイズ除去工程では、X線エネルギー分散方向にはメディアンフィルターによるスムージング処理を一切施していないため、多変量統計解析の前提条件であるエネルギーチャンネル間の信号の独立性が保たれている。したがって、解析結果にアーティファクトは現れない。
(II)X線強度像をX線強度スペクトルに変換した後、X線強度スペクトルにおいてスパイクノイズ(X線由来以外のノイズ)を除去する方法
次に二つ目のスパイクノイズの除去方法としては、X線強度像をX線強度スペクトルに変換した後、このX線強度スペクトルに出現するスパイクノイズ(スパイクピーク)を除去する方法である。スパイクノイズを除去する方法は、線分析や面分析のように複数点のX線強度スペクトルが存在する場合、同一X線エネルギーの強度値に対してメディアンフィルターなどのフィルター処理を行うことができる。
これとは別に、次に述べるスパイクノイズ判定方法に基づき、スパイクノイズを除去することも可能である。一般にスパイクノイズは、真のX線強度データの統計変動から予想される強度のばらつきを大きく超える強度で混入する。この特徴に基づいて、本発明では、強度データのばらつきを示す標準偏差を求め、標準偏差からの各データ点の逸脱度合を調べることでスパイクノイズであるかどうかを判定し、スパイクノイズと判定された場合はこのデータを除去する。
具体的な手順を以下に説明する。X線強度スペクトルのエネルギー軸方向のデータ点数は、2次元検出器のエネルギー分散方向のチャンネル数nである。線分析や面分析における全分析点の数をmとすると、一回の測定ではn個のX線強度データ点からなるX線強度スペクトルが合計でm個得られる。i番目のX線強度スペクトルのエネルギーEの強度値をSi (Ej)として、iが1からmまでの合計m個の強度データSi (Ej)について、その平均値S(Ej)avと標準偏差S(Ej)σを求める。なお、平均値S(Ej)avと標準偏差S(Ej)σの定義は式で表すと以下のとおりである。
Si(Ej) (1≦i≦m, 1≦j≦n) に対し、
S(Ej)av={Σ(i=1, i=m)Si(Ej)}/m
S(Ej)σ 2={Σ(i=1, i=m){Si(Ej)-S(Ej)av}2}/m
次に、式(1)に示すように、測定領域内における任意のX線強度スペクトルのエネルギーEの強度値Si (Ej)と平均値S(Ej)avとの差の二乗が、標準偏差S(Ej)σの二乗の定数倍より大きいことを満足する場合、そのX線強度データ(X線強度スペクトル)はスパイクノイズであると判定する。
{Si (Ej) −S(Ej)av> k×S(Ej)σ (1)
ここで、
(E):i番目の測定点のX線強度スペクトルのエネルギーEの強度値
S(Eav:S(E)を測定領域全体で平均した強度値
S(Eσ:S(E)の測定領域全体における標準偏差
k:5〜50の定数
である。
ここで、kは定数で5〜50とするのが好ましい。定数kが5より小さいと正常値まで異常値と判定してしまう。一方、定数kが50より大きいと異常値を正常値と判定してしまう。定数kは6〜20とするのがより好ましい。上記した異常値の判定を、m個のX線強度スペクトルのn個のデータ点すべてについて行う。
式(1)によって、異常値(スパイクノイズ)であると判定したX線強度データ(X線強度スペクトル)は、異常点近傍の正常なX線強度データ(X線強度スペクトル)と置き換える。置き換える方法としては、ノイズと判定した強度値のみを、隣接する低エネルギー側の強度値、隣接する高エネルギー側の強度値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の平均値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の線形補間値、のいずれか1つで置き換えればよい。
例えば、i番目のX線強度スペクトルのエネルギーEjの強度値Si (Ej)が異常と判定されたとすると、この異常点の前後で正常値であると判定したSi (Ej-1)とSi (Ej+1)の平均値で置き換える。
X線強度スペクトルの端部Si (E1)やSi (En) が異常点と判定された場合は、このX線強度スペクトル内で異常点に一番近い正常点のエネルギーチャンネルの強度値に置き換えればよい。1つのX線強度スペクトル中で、異常点は連続してもたかだか数点であるため、異常点区間の前後の正常点の平均値あるいは線形補間値で置換することができる。例えば、Ej-j’+1〜Ejまでが異常点区間である場合、Ej-j’におけるX線強度値Si (Ej-j’)とEj+1におけるX線強度値Si (Ej+1)の平均値あるいは線形補間を行って置換する。この操作により、異常点区間ではデータ間の干渉を生じさせているが、異常点がランダムに分布し、また圧倒的多数のデータ点は正常点であるため、異常点のみを操作する限りは、多変量統計解析でアーティファクトとなることはない。
上記のいずれかのノイズ除去方法によりX線強度像またはX線強度スペクトルからスパイクノイズを除去した後、多変量統計解析処理を行い、特徴スペクトルを抽出する。軟X線領域には従来バックグラウンドとして扱われていた制動X線(連続X線)領域にも組成や結晶方位の情報が含まれる。そのため多変量統計解析は、特性X線ピーク強度のみでなく、連続X線領域も含めてスペクトル全体について行うことが望ましい。
多変量統計解析においては、抽出された特徴スペクトルにどの元素の特性X線ピークが含まれるか、その形状や複数のピーク間の大小関係が測定試料の構造を把握する重要な情報である。また、その特徴スペクトルに対応する構成成分の材料間の分布も重要な情報である。特徴スペクトルとその重み分布を表示することで、測定した試料に含まれる元素の種類や化学状態の分布をマッピング表示等で可視化することができる。
本発明において、多変量統計解析としては、例えば、主成分分析、独立成分分析、非負値行列因子分解のいずれか1つ以上であることが好ましい。本発明では、解析結果の解釈を容易にするために、複数種類の多変量統計解析を併用することが好ましい。すなわち、複数の手法毎に複数の結果を得て、それらの複数の結果を比較することで、一つの解析手法のみを用いる場合より結果解釈が容易になる。
フェライトと残留オーステナイト相を含む変態誘起塑性鋼板(TRIP鋼板)の表面を鏡面に研磨し、下記に示す条件で軟X線分光による分析を行った。
電子顕微鏡:日本電子製EPMA(JXA−8530F)
加速電圧:7kV
照射電流量:50nA
測定領域:8μm×6μm
測定間隔:0.1μm
電子線照射時間:4sec/点
軟X線分光器:日本電子製SS−94000SXES分光システム
回折格子:JS200N
2次元検出器カメラ:2048チャンネル(約55〜210eV)
本発明例(発明例1)では、得られた4800個の軟X線強度像を横軸が2048点のエネルギーチャンネルのX線強度スペクトルに変換した後、すべてのX線強度スペクトルデータに対してスパイクノイズを(II)の方法によって除去した。ここで異常点を判定する(1)式のkを10とし、除去した異常点を隣接する正常点の平均値で置換した。次いで、ノイズ除去処理を行ったX線強度スペクトルに対し、多変量統計解析処理を行った。多変量統計解析は、全データ平均値を原点とするセンタリング処理を行い、ポアソンノイズによる統計変動の影響を小さくするweighting処理(M. R. Keen and P. G. Kotula、 Surface and Interface Analysis、 36(2004)、 203.)を行い、主成分分析を行った。
比較例1として、ノイズ除去を行わなかったX線強度スペクトルを用いて多変量統計解析(主成分分析)を行った。また比較例2として、スパイクノイズ除去を目的にエネルギー分散方向に幅5チャンネルでメディアンフィルター処理を行ったX線強度スペクトルについても、同様に多変量統計解析(主成分分析)を行った。
図6に、発明例1について、多変量統計解析の主成分分析により得られた第1主成分〜第8主成分までの特徴スペクトルを示す。第1主成分〜第8主成分までのいずれの主成分にもスパイクノイズは現れず、アーティファクトピークも見られなかった。第3主成分以降に見られる40及び200チャンネル付近の鋭いピークは、いずれもFeの特性X線に対応する。第3主成分以降の重み係数のマップでは微細組織と対応付けられるような特徴的な強度分布は見られず、これら主成分はFeの特性X線強度の統計変動を反映した主成分であると解釈できた。よって本データで重要な主成分は第2主成分までであると判断した。
第1および第2主成分に現れる500チャンネル、1000チャンネルおよび1500チャンネル付近の3つのピークはCの特性X線に対応した。その重み係数マップを図7に示す。明るいコントラストの領域ほどCが高いことを示している。この試料のミクロ組織観察結果と対応付けた結果、このマップは複相組織鋼であるTRIP鋼板中の、C濃度の高い残留オーステナイト相(1μmより小さいオーステナイト相)が可視化されたものであることがわかった。
図8に、比較例1のノイズ除去を行わなかったX線強度スペクトルから得たCのROIマップを示す。発明例である図7の主成分重みマップと比べ、制動X線のバックグラウンドを含むためノイズが強く、明るい残留オーステナイト相と暗いフェライト相の境界が曖昧である。Cの特性X線近傍には妨害となる強い特性X線は存在しないためROIを広くとることができるが、信号強度が弱いため、広いROIでも明瞭な元素分布を得ることが困難であった。
次に、図9および10に比較例1および比較例2の特徴スペクトルを、それぞれ第1主成分から第8主成分まで示す。図9には、図6には見られなかった鋭いスパイクピークが随所に存在している。図10では図9のような鋭いスパイクピークは消失しており、Cの特性X線に由来する500チャンネル、1000チャンネルおよび1500チャンネル付近のピーク、Feの特性X線に由来する40及び200チャンネル付近のピークがそれぞれ確認できた。さらに第4主成分〜第8主成分には、1600〜2000チャンネルにかけて小さなピークが存在している。この測定試料は、これらのエネルギーチャンネルに対応する元素を含まないことから、アーティファクトであることがわかった。
以上より、本発明を用いることにより、1μmより小さいオーステナイト相の分布を詳細に可視化することができた。
Zn−Alめっき鋼板をアルコールで脱脂し、研磨せず下記に示す条件でめっき層表面の軟X線分光による分析を行った。
電子顕微鏡:日本電子製EPMA(JXA−8530F)
加速電圧:7kV
照射電流量:50nA
測定領域:12μm×9μm
測定間隔:0.3μm
電子線照射時間:6sec/点
軟X線分光器:日本電子製SS−94000SXES分光システム
回折格子:JS50N
2次元検出器カメラ:2048チャンネル(約50〜170eV)
本発明例(発明例2)では、得られた1200個の軟X線強度像を横軸が2048点のエネルギーチャンネルのX線強度スペクトルに変換した後、すべてのX線強度スペクトルデータに対してスパイクノイズを(II)の方法によって除去した。ここで異常点を判定する(1)式のkを10とし、除去した異常点を隣接する正常点の平均値で置換した。次いで、ノイズ除去処理を行ったX線強度スペクトルに対し、多変量統計解析処理を行った。多変量統計解析は、全データ平均値を原点とするセンタリング処理を行い、ポアソンノイズによる統計変動の影響を小さくするweighting処理を行い、主成分分析および非負値行列因子分解を行った。
比較例3として、ノイズ除去を行わなかったX線強度スペクトルを用いて多変量統計解析(主成分分析)を行った。また比較例4として、スパイクノイズ除去を目的にエネルギー分散方向に幅5チャンネルでメディアンフィルター処理を行ったX線強度スペクトルについても、同様に多変量統計解析(主成分分析)を行った。
図11に、発明例2について、多変量統計解析のうち主成分分析により得られた第1主成分〜第5主成分までの特徴スペクトルを示す。
第1主成分〜第5主成分までのいずれの主成分にもスパイクノイズは現れず、アーティファクトピークも見られなかった。第1主成分には1250チャンネル付近に鋭い立ち上がりをもつピークが見られ、金属Alの特性X線に由来するピークであると確認できた。第2主成分には50、370チャンネル付近に酸素Oに由来するピークが見られたほか、金属Alのピークが見られた。第3主成分には、50、370および670チャンネル付近の鋭いピーク、1100チャンネル付近のブロードなピーク、1380と1500チャンネル付近のブロードなピークが見られる。これらのうち、50、370および670チャンネル付近の鋭いピークはO、1100チャンネル付近のブロードなピークはZn、1380と1500チャンネル付近のブロードなピークは酸化Alに帰属できる。この結果から、第3主成分のAlは酸化物であることがわかる。第4主成分は表面汚れの炭素Cに由来するピークが300と800チャンネル付近に見られた。第5主成分はめっき由来の元素の成分が確認できず、ノイズが大きい。加えて、元データに対するデータの寄与率を表す分散が第5主成分以降は大きく変化しなかったことから、第5主成分以降はノイズであると解釈できた。よって本データで重要な成分は4つと考えられる。
図12に、発明例2について、多変量統計解析のうち非負値行列因子分解により得られた第1成分〜第4成分までの特徴スペクトルを示す。第1成分に金属Al、第2成分にOと酸化Al、第3成分にZn、第4成分にCが見られることから、Alは金属と酸化物として存在し、Znは金属として存在していることがわかった。図11の主成分分析ではO、Zn、Alのピークが第3主成分に同時に現れたため、ZnとAlが金属なのか酸化物なのか確定できなかったが、発明例2の非負値行列因子分解を行うことにより解釈が容易となった。このように解析結果の解釈を容易にするために、複数種類の多変量統計解析を併用することが好ましい。
図13は、発明例2について、試料の反射電子像と、多変量統計解析のうち非負値行列因子分解により得られた各成分の重み係数マップ(図13(b)〜(e))を示す。図13(a)は試料の反射電子像であり、図13(b)は金属Alの重み係数マップ、図13(c)は酸化Alの重み係数マップ、図13(d)はZnの重み係数マップ、図13(e)はCの重み係数マップである。金属Alと酸化Alが分かれて存在していることやZnが不均一に分布している様子が明瞭に示されている。
図14に、比較例3の第1〜第4主成分および第8主成分の特徴スペクトルを示す。図14の第1〜第3主成分は、図11とほぼ同等であるものの、特性X線由来のピーク以外に鋭いスパイクピークも認められる。第5〜第7主成分(図示していない)の特徴スペクトルには、スパイクピークしか現れなかった。第8主成分は、図11の第4主成分とほぼ同等、第9主成分以降もスパイクノイズであった。
図15に比較例4の第1〜第5主成分の特徴スペクトルを示す。スパイクノイズは除去されており、第1〜第4主成分までは発明例2の主成分分析の結果(図11)とほぼ同等の結果が得られた。しかし、図15の第5主成分には、図11の第5主成分の特徴スペクトルには存在しないZnの特性X線由来のピークが見られた。そこで第5主成分の重み係数マップを作成したが(図示しない)、意味のない分布が得られた。よって第5主成分のピークはメディアンフィルター処理を行ったために生じたアーティファクトであると考えられる。
図16に、比較例3のノイズ除去を行わなかったX線強度スペクトルから得た金属Al(図16(a))、酸化Al(図16(b))、Zn(図16(c))およびC(図16(d))のROIマップをそれぞれ示す。なお、金属Alは1230〜1479チャンネル、酸化Alは1230〜1479チャンネル、Znは859〜1258チャンネル、Cは242〜391チャンネルの信号強度を積算しROIマップを得た。
図16(a)の金属Alは図13(b)とほぼ同様の分布が得られたが、図16(b)の酸化Alは、ピーク強度が金属Alのピーク強度に比べ弱いため、金属Alピークの裾に埋没してしまい、金属Alと同一の分布となってしまった。図16(c)のZnと図16(d)のCについても、金属Alに比べてピーク強度が弱いため制動X線によるバックグラウンドノイズの影響が強く、図13(c)(d)のような明瞭な分布は得られなかった。
1 電子源
2 集束レンズ
3 走査コイル
4 対物レンズ
5 電子線
6 測定試料
7 試料ステージ
8 顕微鏡制御部
9 X線
9−1 X線
9−2 X線
10 回折格子
11 2次元(X線)検出器
12 スペクトル収集・記憶装置
13 スペクトル解析装置
14 表示装置
A 電子顕微鏡部
B X線検出部
C スペクトル分析部

Claims (7)

  1. 試料に電子線を照射して発生したX線を分光分析するX線分析方法であって、
    軟X線分光器で分光したX線を2次元検出器で測定し、X線強度像を取得するX線強度像取得工程と、
    取得した前記X線強度像においてX線由来以外のノイズを除去するノイズ除去工程と、
    ノイズ除去工程後のX線強度像をX線強度スペクトルに変換するデータ変換工程と、
    前記データ変換工程で得られたX線強度スペクトルを多変量統計解析する解析工程と、
    前記解析工程で得られた解析結果を出力する出力工程と、
    を有するX線分析方法。
  2. 前記ノイズ除去工程は、X線強度像において同一X線エネルギーを有する画素の強度データに対して、フィルター処理を行う請求項1に記載のX線分析方法。
  3. 試料に電子線を照射して発生したX線を分光分析するX線分析方法であって、
    軟X線分光器で分光したX線を2次元検出器で測定し、X線強度像を取得するX線強度像取得工程と、
    取得した前記X線強度像をX線強度スペクトルに変換するデータ変換工程と、
    前記データ変換工程で得られたX線強度スペクトルにおいてX線由来以外のノイズを除去するノイズ除去工程と、
    ノイズ除去工程後のX線強度スペクトルを多変量統計解析する解析工程と、
    前記解析工程で得られた解析結果を出力する出力工程と、
    を有するX線分析方法。
  4. 前記ノイズ除去工程は、
    測定領域全体のX線強度スペクトルの強度値および前記強度値の平均値と前記X線強度スペクトルの強度値の標準偏差とを求める工程と、
    測定領域内における任意のX線強度スペクトルの強度値と前記X線強度スペクトルの強度値の平均値との差の二乗が、前記標準偏差に対して下記(1)式を満足するとき、前記任意のX線強度スペクトルの強度値がノイズであると判定するノイズ判定工程と、
    ノイズと判定した強度値のみを、隣接する低エネルギー側の強度値、隣接する高エネルギー側の強度値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の平均値、隣接する低エネルギー側および隣接する高エネルギー側の強度値の線形補間値、のいずれか1つで置き換える工程と、
    を有する請求項3に記載のX線分析方法。
    {S(E)−S(Eav>k×S(Eσ (1)
    ここで、
    (E):i番目の測定点のX線強度スペクトルのエネルギーEの強度値
    S(Eav:S(E)を測定領域全体で平均した強度値
    S(Eσ:S(E)の測定領域全体における標準偏差
    k:5〜50の定数
    である。
  5. 前記解析工程における多変量統計解析は、主成分分析、独立成分分析、非負値行列因子分解のいずれか1つ以上である請求項1〜4のいずれか1つに記載のX線分析方法。
  6. 試料の任意の位置に電子線を照射または走査する機能を有する電子顕微鏡部と、
    電子線の照射または走査により試料から発生するX線を分光する軟X線分光器と、分光したX線をX線強度像として検出する2次元X線検出器とを有するX線検出部と、
    前記X線強度像または、前記X線強度像をX線強度スペクトルに変換し、電子線照射位置の情報とともに前記X線強度像または前記X線強度スペクトルを記憶するスペクトル収集・記憶装置と、
    前記X線強度像または前記X線強度スペクトルからノイズを除去し多変量統計解析を行うためのスペクトル解析装置と、
    前記スペクトル解析装置で得られる解析結果を出力する表示装置と、
    を備えるX線分析装置。
  7. 前記電子顕微鏡部は、走査電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザ、透過電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡のいずれか1つである請求項6に記載のX線分析装置。
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