JP6791294B2 - 車両用ルーフ構造及びその設計方法 - Google Patents
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Description
ここでルーフの最大の要求性能は積雪強度性能である。積雪強度とは、屋外を走行あるいは駐停車している際にルーフに積雪し、その重みでルーフパネルが反転し永久変形を起こしてしまう(パネルが元に戻らない)のを防ぐために必要な強度のことである。そのため、積雪強度性能は、ルーフを構成する部品にのみ要求される、特別な性能である。なお、ここでの強度は、パネルの反転(バックリング)にかかわるため、剛性の一種と考えてよい。
また、特許文献2には、ルーフ積雪に対する補強方法として、ルーフパネルにルーフレールアウタを予め組み付けてルーフ部品を作製し、そのルーフ部品をキャブサイドのルーフレールインナに取り付けることが記載されている。
更に、レインフォースを増やすことで剛性向上を図ることも出来るが、逆に質量増大に繋がるためレインフォースの数は最小限にしたい。
これらの背反するニーズと性能要件によって、ルーフパネルの薄板化は難しいのが課題である。
また特許文献2に記載の技術は、剛性を確保しやすい狭い面積のルーフには有効であると思われるが、バンやミニバンなど広い面積のルーフでは車両長手方向の剛性が低下するため、その性能確保には効果が少ない。
また、張り剛性のような1点荷重負荷に対しては、その弱いポイントを補強する方法で対策は可能である。しかし、積雪はパネル面全体への分布荷重であるため、補強ポイントを絞り込むことは困難である。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また各図には、実施例における寸法を併記した。その単位は全て[mm]である。
ルーフパネル1は、図1に示すように、上面(表面)が上側に凸の曲率半径を有する面形状となっている。
複数のレインフォース2は、ルーフパネル1の裏面側に当該裏面の面に沿って並ぶように配置される。具体的には、本実施形態のレインフォース2は、図2に示すように、ルーフパネル1の長手方向に沿って複数配置されている。
そして、レインフォース2は、図4に示すように、左右の取付け面部2bに対し、長手方向に向けて所定間隔で配置されたマスチック接着剤3でルーフパネル1の裏面(下面)に取り付けられた構造となっている。
また、レインフォース2の長手方向端部は、不図示の車体フレームに固定されている。
以上のルーフパネル1及びレインフォース2は、上記構造に限定されず、公知の車両ルーフ用構造を採用しても構わない。
次に、求めたたわみ分布から、一番たわみやすい、つまり一番たわむ箇所である第1の箇所T1と、2番目にたわみやすい、つまり2番目にたわむ箇所である第2の箇所T2を特定する。
この第1の箇所T1及び第2の箇所T2の特定も、コンピュータによる自動演算で特定するようにしても良い。
本実施形態では、図5中、二つのたわみ最大部T1,T2の間に位置するレインフォース2に支持させるようにして、補強シート4を配置する(図5の符号Rの位置に配置)。特にレインフォース2の長手方向中央部側でたわみが大きいので、レインフォース2の長手方向中央部位置に補強シート4を配置させている。
ここで、補強シート4の大きさは限定されないが、平面視で一つのレインフォース2とだけと重なる大きさとする。ただし、補強シート4は軽量ではあるが、補強シート4自体の質量を考慮すると、車体軽量化の観点では当然面積が小さい方が好ましい。補強シート4は、矩形形状で300mm×600mmまでの大きさであれば、レインフォース2を増やすよりも質量増加を小さく抑えられる。
また、使用する補強シート4の枚数は1枚が一番効果的である。それは、たわみの大きい2つ部位の間に貼付することで、両側のたわみ成長を抑制し、積雪負荷におけるパネル反転のきっかけを除去できるからである。またこれによって、面全体のたわみ分布も均一化に近づく。
補強シート4の枚数を増やす場合に、例えば、たわみの小さい部位と大きい部位の間にも貼付けた場合、たわみの成長が偏ってしまい、新たな反転ポイントを発生させてしまう恐れがある。
図8に例示される補強シート4は、樹脂層4aと、樹脂層4aの表面(上面)に設けられた粘着層4bとを備える。図8に例示される補強シート4は、更に、樹脂層4aの変形を抑える目的で、拘束層4cを有する。拘束層4cは、樹脂層4aと粘着層4bとの間に設けても良い。この拘束層4cを有することが好ましいが、拘束層4cを有していなくても良い。
樹脂層4aを熱硬化型樹脂で構成する場合、樹脂層4aは、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂に発泡剤を含有して構成される。発泡剤を含有しなくても良いが、発泡剤を含有した場合、ルーフパネル1の表面を焼き付け塗装する際の加熱で発泡剤が発泡して層厚が増加することで、レインフォース2との隙間がより有効に無くすことが出来ると共に、焼き付け塗装後の空冷において樹脂を硬化させることが出来る。
拘束層4cは、例えばカーボンフィバーやガラス繊維、不織布、金属箔などで構成すればよい。
粘着層4bは、シールの粘着層と同様の機能を持ちルーフパネルと粘着させて施工し、塗装加熱後も剥離しない性能を持つものであれば、特に制限はされない。
なお、後述の実施例PP3のように、たわみが最大の2カ所の位置にそれぞれ、レインフォース2に支持させずに補強シート4を貼り付けても積雪強度が向上する。このように補強シート4を部分的に貼り付けても良い。
ここで、積雪強度は、ルーフパネル1のパネル全体に等分布荷重が付加された状態で、荷重上昇した際にパネルのバックリングが起こる荷重値で評価される。バックリング発生荷重が高い方が、性能は優位、つまり積雪が増えてもパネルが反転しにくいと評価される。
そして、本実施形態では、積雪荷重負荷時にパネルのたわみが大きい箇所を見出し、その最大部と2番目に大きい部位の中間の位置でかつレインフォース2と重なる範囲に補強シート4を配することで、質量増を抑えつつ、積雪強度を効果的に向上させることが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、ルーフパネル1とレインフォース2の間に対し、部分的に樹脂層4aを有する補強シート4を配置することで、ルーフ構造の質量および部品点数を増加することなく、積雪強度を向上できる。この結果、本実施形態によれば、ルーフパネル1のさらなる薄板化による軽量化を図ることも可能となる。
さらにルーフパネル1の裏面には、実部品を模して、ハット形状のレインフォース2を等間隔で5本配置した(図2参照)。図3及び図4に示すように、レインフォース2の断面形状はハット型で全長同じ断面形状である。
また、補強シート4は、図7に示すようにモデル化した。補強シート4はルーフパネル1とマスチック接着剤3との間に配置し、マスチック接着剤3側をシェル要素で、ルーフパネル1側をビーム要素で構成した。この例では、補強シート4が樹脂層のみから構成され、その樹脂層が熱硬化型樹脂からなることを補強シートの条件として設定した。
まず図6のモデルで積雪荷重を負荷すると、たわみの最大部位が分かる。すなわち、この例では、図5のように、中央部のレインフォース2の両側がたわみ最大部T1,T2となる。
「PP無し」は、補強シート4の無いモデルである。
「PP1」は、二つのたわみ最大部の間に位置する中央のレインフォース2に1枚の補強シート4を支持させて配置したモデルである。
「PP2」は、更に、「PP1」に対し、たわみ最大部以外にも2枚の補強シート4を配置したモデルである。
「PP3」は、レインフォース2の無い部位であって最大たわみ部に配置したモデルである。
評価は積雪負荷解析にて行った。負荷は、ルーフパネル1全面を対象に、車両高さ方向に平行に等分布荷重を下向きに負荷した。
そして、ルーフパネル1が反転した後の最大たわみ部における変位と負荷荷重の曲線にて評価した。積雪強度の優劣は、パネル変位が急激に増加する荷重(バックリング荷重)の高低で評価した。
図10にその結果を示す。
PP2とPP3は、ほぼ同程度の積雪強度性能となっているが、PP1の方が優れており、補強シート4の数は少ない方が好ましいことが分かる。なお、PP2の場合には、たわみが大きくない部分も補強シート4で補強してしまい、剛性の分布がその分、PP1に比べて若干悪くなっている。
ただし、いずれの場合も補強シート4を貼り付けることで、積雪強度が向上しているので、軽量化を考えると、少ない枚数で積雪強度性能を向上させることが好ましいことが分かる。すなわち、設ける補強シート4は2枚以下、好ましくは1枚で適切な配置位置を求めることが好ましい。
2 レインフォース
3 マスチック接着剤
4 補強シート
4a 樹脂層
4b 粘着層
4c 拘束層
T1,T2 たわみ最大部
Claims (6)
- ルーフパネルと、上記ルーフパネルを下側から支持する複数のレインフォースと、を備える車両用ルーフ構造であって、
上記複数のレインフォースはそれぞれ、マスチック接着剤で上記ルーフパネルの下面に取り付けられ、
上記ルーフパネルの下面に、樹脂層を有する補強シートを1枚又は2枚以上、部分的に配置して、当該補強シートを上記ルーフパネルの下面に接着し、
各補強シートは、それぞれ上記複数のレインフォースのうちの一つのレインフォースと上記ルーフパネルとの間に介在して、上記複数のレインフォースのうちの一つのレインフォースにのみ支持されていることを特徴とする車両用ルーフ構造。 - 上記樹脂層を構成する樹脂は、硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1に記載した車両用ルーフ構造。
- 上面視で、積雪荷重で上記ルーフパネルが一番たわみやすい第1の箇所と2番目にたわみやすい第2の箇所の両方に一番近いレインフォースとルーフパネルとの間にだけ上記補強シートを介在させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両用ルーフ構造。
- ルーフパネルと、上記ルーフパネルを下側から支持する複数のレインフォースと、上記ルーフパネルの下側に配置される補強シートとを、備え、
上記複数のレインフォースはそれぞれ、マスチック接着剤で上記ルーフパネルの下面に取り付けられ、
上記補強シートは樹脂層を有し、その補強シートを、上記ルーフパネルの下面に1枚又は2枚以上、部分的に配置して、当該補強シートを上記ルーフパネルの下面に接着し、各補強シートは、上記複数のレインフォースのうちの一つのレインフォースにのみ支持又はレインフォースに支持されないとする条件で、上記複数のレインフォースで支持された上記ルーフパネルに対し、上側から積雪荷重を負荷した際における、上記ルーフパネルのたわみ分布を求め、
上記たわみ分布に基づき、上記補強シートを設けることで上記積雪荷重によるたわみが小さく且つたわみの分布が均一化すると推定される位置を、上記補強シートを設ける箇所とすることを特徴とする車両用ルーフ構造の設計方法。 - 上記樹脂層を構成する樹脂は、硬化型樹脂であることを特徴とする請求項4に記載した車両用ルーフ構造の設計方法。
- 上記補強シートを一枚とし、その補強シートを、上記複数のレインフォースのうちの一つレインフォースにのみ支持させる条件で、補強シートを設ける箇所を決定することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した車両用ルーフ構造の設計方法。
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