以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る二軸一体型モータDMの主要構成を示す断面図である。二軸一体型モータDMは、それぞれ回転可能に設けられて回転軸が同一である外側ロータOR及び内側ロータIRを有する。外側ロータORの出力軸及び内側ロータIRの出力軸は、回転軸方向の一端側に位置する。図1では、上側が二軸一体型モータDMの一端側である。また、図1では、回転軸方向から見た場合の外形が円状である二軸一体型モータDM(図2参照)を、回転軸Xに沿い、回転軸Xを通る平面で二分した場合の断面図を示している。
図2は、第1ロータヨーク20と第2ロータヨーク13とカバー91が取り付けられた状態のベース80との位置関係の一例を示す模式図である。図2では、出力軸側から見た場合の位置関係を示している。本実施形態では、第1ロータヨーク20の回転軸と第2ロータヨーク13の回転軸とが一致した回転軸Xである。第1ロータヨーク20と第2ロータヨーク13は、カバー91が固定されているベース80を挟んでそれぞれベース80の内周側と外周側で独立して回転可能に設けられている。
本実施形態では、外側ロータOR及び内側ロータIRはそれぞれ、円筒状のロータヨークと当該ロータヨークに設けられた磁石とを有する。具体的には、例えば図1に示すように、外側ロータORは、円筒状の第1ロータヨーク20と、第1ロータヨーク20の内周面に沿って環状に配置された複数の磁石25とを有する。また、内側ロータIRは、円筒状の第2ロータヨーク13と、第2ロータヨーク13の外周面に沿って環状に配置された複数の磁石15とを有する。
内側ロータIRは、回転軸方向の軸長が外側ロータORより長い。具体的には、第1ロータヨーク20が設けられている二軸一体型モータDMの外周側には、ベース80の一部分である延出部81が他端側で延出している。第1ロータヨーク20は、延出部81と非接触の状態で設けられている。一方、第2ロータヨーク13が設けられている二軸一体型モータDMの内周側には、二軸一体型モータDMが備える他の構成は配置されていない。係る内周側に設けられている第2ロータヨーク13は、回転軸方向の幅が二軸一体型モータDMの一端側から他端側までの幅とほぼ同等である。一方、第1ロータヨーク20は、延出部81が有する回転軸方向の幅に応じて、回転軸方向の幅が第2ロータヨーク13よりも小さくなっている。
電動機の出力トルクの大小には回転軸Xから推力発生位置(磁石とコイルの間)までの距離の大小が関わる。このため、外側ロータORは相対的に内側ロータIRよりもトルクが大きくなりやすい。本実施形態では、内側ロータIRに設けられた磁石15及び第2コア71の軸長を外側ロータORに設けられた磁石25及び第1コア75より長くすることで、外側ロータORの推力に比して内側ロータIRの推力をより大きくしている。これによって、本実施形態では外側ロータORの出力トルクと内側ロータIRの出力トルクとの差をより小さくしている。
第1ロータヨーク20の一端側に位置する外側ロータORの出力端部21には、それぞれねじ留め穴22が設けられている。第2ロータヨーク13の一端側に位置する内側ロータIRの出力端部11には、ねじ留め穴12が設けられている。係るねじ留め穴12,22が設けられた内側ロータIR及び外側ロータORのそれぞれに対して被駆動体をねじ留めすることで、被駆動体に回転駆動力が伝達される。
二軸一体型モータDMは、ベース80と、ベース80に取り付けられて一端側から順に並んだ、検知部30、軸受部60、ステータコア部70を備える。また、図1のような断面で見た場合、検知部30、軸受部60及びステータコア部70が同軸で配置されている。具体的には、ベース80に取り付けられている検知部30、軸受部60及びステータコア部70は、外側ロータORと内側ロータIRとの間の範囲内で回転軸方向に沿って並ぶよう配置されている。
検知部30は、第1検知部1及び第2検知部1Aを有する。第1検知部1は、外側ロータORの絶対位置を示す回転角度を検出する。具体的には、第1検知部1は、第1回転体100と、第1磁気検知部200とを有する。第1回転体100は、外側ロータORに固定されて外側ロータORとともに回転する。第1磁気検知部200は、第1回転体100と回転軸方向に対向する位置でベース80に固定されて第1回転体100の回転角度を検出する。
第2検知部1Aは、内側ロータIRの絶対位置を示す回転角度を検出する。具体的には、第2検知部1Aは、第2回転体101と、第2磁気検知部201とを有する。第2回転体101は、内側ロータIRに固定されて内側ロータIRとともに回転する。第2磁気検知部201は、第2回転体101と回転軸方向に対向する位置でベース80に固定されて第2回転体101の回転角度を検出する。
本実施形態の第1検知部1、第2検知部1Aはそれぞれ、バーニア型のアブソリュート型回転角度検出装置として機能し、外側ロータOR、内側ロータIRの絶対位置を示す回転角度を検出する。絶対位置を示す回転角度とは、予め定められた原点(例えば後述する図4のA点)に対する回転角度である。以下、絶対位置を示す回転角度を「絶対角度」と記載することがある。これによって、外側ロータOR及び内側ロータIRの絶対角度検出においてより高い分解能を得られる。従って、第1検知部1及び第2検知部1Aによる角度検出に基づいたモータ駆動制御における外側ロータOR及び内側ロータIRの絶対角度位置決め制御を行う場合に、より高い分解能での制御が可能となる。第1検知部1及び第2検知部1Aの詳細は、後述する。
本実施形態のベース80には、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201を固定するための基部31が設けられている。具体的には、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201は、共通の基板32の一面側に設けられ、それぞれ第1回転体100、第2回転体101と対向する。基板32の他面側が基部31に固定されることで、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201はベース80に固定されている。基部31は、例えば留め具33を用いてベース80に取り付けられている。
本実施形態の検知部30は、図1に示すように、第1検知部1と第2検知部1Aは、回転軸に直交する同一平面上に位置する。具体的には、第1回転体100と第2回転体101は、回転軸に直交する同一平面上に位置する。より具体的には、第1回転体100と第2回転体101は、回転軸Xに直交する同一平面に沿う。また、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201は、回転軸に直交する同一平面上に位置する。具体的には、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201は、回転軸Xに直交する基板32の一面側に設けられている。第1磁気検知部200と第2磁気検知部201は、径方向の位置が異なり、それぞれ磁力の検出を行う範囲が異なる。第1磁気検知部200は、第1回転体100の磁力を検出する。第2磁気検知部201は、第2回転体101の磁力を検出する。このため、回転軸に直交する同一平面上に、第1回転体100と第2回転体101及び第1磁気検知部200と第2磁気検知部201を並べた構成を取ることができる。
第1検知部1及び第2検知部1Aに対して一端側には、第1検知部1及び第2検知部1Aを被覆するカバー91が設けられている。カバー91は、例えば図2に示すように、外側ロータORの円筒と内側ロータIRの円筒との間に設けられる環状の形状を有する部材である。カバー91は、例えば図1に示すように、第2回転体101の座金101aと一体的に設けられている。カバー91は、後述する図25に示すように、第1回転体100の座金100aと一体的に設けられてもよい。
軸受部60は、第1軸受65及び第2軸受61を有する。第1軸受65は、外側ロータORと連動して回転する。第2軸受61は、内側ロータIRと連動して回転する。具体的には、軸受部60は、回転軸方向について検知部30とステータコア部70との間の位置に設けられている。第1軸受65は、例えばベース80に対して外周側かつ外側ロータORに対して内周側に設けられて、ベース80と外側ロータORとの間に介在する。第1軸受65がベース80との間に介在していることで、外側ロータORは回転可能に軸支されている。第2軸受61は、例えばベース80に対して内周側かつ内側ロータIRに対して外周側である位置に設けられて、ベース80と内側ロータIRとの間に介在する。第2軸受61がベース80との間に介在していることで、内側ロータIRは回転可能に軸支されている。
二軸一体型モータDMは、第1軸受65の一端側と第2軸受61の一端側が回転軸に直交する同一平面上に位置する。具体的には、例えば図1に示すように、第1軸受65が具備する2つの軸受66,67のうち相対的に一端側に位置する軸受66と、第2軸受61が具備する2つの軸受62,63のうち相対的に一端側に位置する軸受62との各々の一端側の端部同士は、回転軸Xに直交する同一平面に沿う。
本実施形態では、第1軸受65及び第2軸受61がそれぞれ2つの玉軸受である軸受66,67及び軸受62,63を具備する構成であるが、これは第1軸受65及び第2軸受61の具体的構成の一例であってこれに限られるものでない。第1軸受65及び第2軸受61は、それぞれ1つ以上の軸受を有していればよい。
ステータコア部70は、第1コア75と第2コア71を有する。第1コア75は、外側ロータORのステータコアである。第2コア71は、内側ロータIRのステータコアである。具体的には、第1コア75は、例えば軸受部60よりも他端側の位置でベース80の外周側に固定されている鉄心77と、鉄心77に巻回されているコイル76とを具備する。コイル76に対する電力供給に応じて外側ロータORが回転する。第2コア71は、例えば軸受部60よりも他端側の位置でベース80の内周側に固定されている鉄心73と、鉄心73に巻回されているコイル72とを具備する。コイル72に対する電力供給に応じて内側ロータIRが回転する。本実施形態のステータコア部70は、図1に示すように、回転軸Xの中心から径の外側に向かって、内側ロータIR、ステータコア部70、外側ロータORの順に配置されている。
ベース80は、例えば、内側ロータIRの径よりも大きく、外側ロータORの径よりも小さい径を有する円筒状の部材である。例えば図1に示すように、ベース80の側面(内周面、外周面)及び端面には、ベース80に固定される検知部30、軸受部60、ステータコア部70等の各部構成に応じた段差、突起、陥没部、穴等が設けられている。また、本実施形態では、延出部81の外周面が形成する環の径は、第1ロータヨーク20の径と同一である。また、本実施形態では、ベース80が有する延出部81の他端側には、二軸一体型モータDMの取り付け対象に対して二軸一体型モータDMを固定する際に用いられるねじ留め穴82が設けられている。また、本実施形態では、延出部81の内周側かつ内側ロータIRの外周側に位置する環状の板状部材95がベース80の他端側に固定されている。板状部材95は、例えばねじ96等の留め具を用いて固定されている。これらの具体的形態はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
図3は、実施形態1に係る第1回転体100及び第2回転体101の一例を示す図である。図4は、第1回転体100及び第2回転体101の各磁気トラックの一例を示す図である。図5は、実施形態1に係る第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201の配置例を示す図である。図6は、図5のIV−IV断面図である。
図3及び図4に示すように、実施形態1の第1回転体100は、N極とS極とからなる磁極対2A1が等間隔に並ぶ第1磁気トラック2Aと、磁極対2B1が等間隔に並ぶ第2磁気トラック2Bとが、第1回転体100の回転軸Xを軸心とする同心のリング状に径方向に並び設けられている。実施形態1の第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bは、例えば第1回転体100の軸方向の一方の端面を周方向に等間隔でN極及びS極に交互に着磁することで得られる。また、実施形態1の第2回転体101は、N極とS極とからなる磁極対2C1が等間隔に並ぶ第3磁気トラック2Cと、磁極対2D1が等間隔に並ぶ第4磁気トラック2Dとが、第2回転体101の回転軸Xを軸心とする同心のリング状に径方向に並び設けられている。実施形態1の第3磁気トラック2C及び第4磁気トラック2Dは、例えば第2回転体101の軸方向の一方の端面を周方向に等間隔でN極及びS極に交互に着磁することで得られる。本実施形態では、第1回転体100の内径は、第2回転体101の外形よりも大きい。第1回転体100の回転軸は、外側ロータORと同様、回転軸Xである。また、第2回転体100の回転軸は、内側ロータIRと同様、回転軸Xである。第1回転体100と第2回転体101とは非接触である。
第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bは、例えば図に網がけしてある部分がN極、網がけのない部分がS極といったように、周方向に異なる磁極が交互に等配されている。また、第3磁気トラック2C及び第4磁気トラック2Dは、例えば図に網がけしてある部分がN極、網がけのない部分がS極といったように、周方向に異なる磁極が交互に等配されている。
図4に示す例において、第1磁気トラック2Aは、32対の磁極対2A1を有している。また、第2磁気トラック2Bは、31対の磁極対2B1を有している。すなわち、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数をP(Pは自然数)としたとき、第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数はP−1となる。また、図4に示す例において、第3磁気トラック2Cは、32対の磁極対2C1を有している。また、第4磁気トラック2Dは、31対の磁極対2D1を有している。すなわち、本実施形態では、第3磁気トラック2Cの磁極対2C1の数は、第1磁気トラック2Aの数と同一(P)であり、第4磁気トラック2Dの磁極対2D1の数は、第2磁気トラック2Bの数と同一(P−1)である。
第1磁気トラック2Aは、第2磁気トラック2Bよりも内側ロータ側である。第3磁気トラック2Cは、第4磁気トラック2Dよりも外側ロータ側である。本実施形態では、図4に示すように、第1回転体100が有する複数の磁気トラック(第1磁気トラック2A、第2磁気トラック2B)のうち最も外側ロータに近い磁気トラック(第1磁気トラック2A)が有する磁極対数と、第2回転体101が有する複数の磁気トラック(第3磁気トラック2C、第4磁気トラック2D)のうち最も内側ロータに近い磁気トラック(第3磁気トラック2C)が有する磁極対数とが同一(P)である。
本実施形態では、第1磁気トラック2Aが第1回転体100のマスター極である。また、第2磁気トラック2Bが第1回転体100のバーニア極である。また、第3磁気トラック2Cが第2回転体101のマスター極である。また、第4磁気トラック2Dが第1回転体101のバーニア極である。なお、第1磁気トラック2Aと第2磁気トラック2Bの位置は入れ替わってもよい。また、第3磁気トラック2Cと第4磁気トラック2Dの位置は入れ替わってもよい。
第1回転体100及び第2回転体101は、必要な磁束密度に応じて、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石等から構成することが可能である。
本実施形態では、図1に示すように、第1回転体100、第2回転体101はそれぞれ、非磁性体である環状の座金100a,101aの一面側に設けられている。より具体的には、座金100a,101aは、例えば鉄材芯金である。本実施形態では、座金100aが第1ロータヨーク20に固定されることで第1回転体100が外側ロータORに固定されている。また、座金101aが第2ロータヨーク13に固定されることで第2回転体101が内側ロータIRに固定されている。
本実施形態では、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bが第1回転体100の軸方向の一方の端面に着磁されたアキシャル型の構成としている。また、本実施形態では、第3磁気トラック2C及び第4磁気トラック2Dが第2回転体101の軸方向の一方の端面に着磁されたアキシャル型の構成としている。このような構成とすることで、第1回転体100及び第2回転体101を軸方向に薄くすることができ、また、第1回転体100及び第2回転体101の中空穴を大きくしやすくなる。これにより、例えば、内輪回転型や外輪回転型の軸受に適用する、あるいは、中空穴に機器のケーブルを配線する構造に適用する等、実施形態1に係る第1回転体100、第2回転体101の適用範囲を拡大することができる。また、実施形態1に係る第1回転体100、第2回転体101を適用する機器(例えば、二軸一体型モータDM)の設計の自由度を高めることができる。
図5及び図6に示すように、実施形態1の第1磁気検知部200は、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bが設けられた第1回転体100とギャップを介してアキシャル方向に対向して設けられている。また、実施形態1の第2磁気検知部201は、第3磁気トラック2C及び第4磁気トラック2Dが設けられた第2回転体101とギャップを介してアキシャル方向に対向して設けられている。
本実施形態の第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201は、磁気センサモジュールである。第1磁気検知部200は、第1回転体100が有する複数の磁気トラックの磁界を個別に検知してsin信号及びcos信号を出力する複数の磁気センサ(例えば、第1磁気センサ3Aと第2磁気センサ3B)を有する。第1磁気センサ3Aは、第1磁気トラック2Aに対向し、第1磁気トラック2Aの磁界を検知する。第2磁気センサ3Bは、第2磁気トラック2Bに対向し、第2磁気トラック2Bの磁界を検知する。第2磁気検知部201は、第2回転体101が有する複数の磁気トラックの磁界を個別に検知してsin信号及びcos信号を出力する複数の磁気センサ(例えば、第3磁気センサ3Cと第4磁気センサ3D)を有する。第3磁気センサ3Cは、第3磁気トラック2Cに対向し、第3磁気トラック2Cの磁界を検知する。第4磁気センサ3Dは、第4磁気トラック2Dに対向し、第4磁気トラック2Dの磁界を検知する。
以下、第1回転体100と第1磁気検知部200を有する第1検知部1による外側ロータORの回転角度の検出について詳細に説明する。
図7は、第1検知部1の具体的構成例を示す図である。図7に示すように、第1検知部1は、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bを有する第1回転体100と、第1磁気検知部200と、通信部9と、記憶部10と、を備える。
第1磁気検知部200は、第1磁気センサ3Aと、第1補正演算部4Aと、第1位相検出部5Aと、第2磁気センサ3Bと、第2補正演算部4Bと、第2位相検出部5Bと、位相差検出部6と、角度算出部7と、角度情報生成部8と、を備える。
本実施形態において、第1磁気検知部200は、例えば、1つのICチップに集積化されている。これにより、第1検知部1を構成する部品点数の低減、第1磁気センサ3Aと第2磁気センサ3Bとの間の位置精度の向上、製造コストや組立コストの低減等を図ることができ、小型且つ安価な第1検知部1を実現可能である。なお、第1磁気検知部200は、例えば、通信部9及び記憶部10を含んでいても良い。これにより、第1検知部1の更なる小型化及び低コスト化を実現することができる。
図8は、実施形態1に係る磁気センサの配置例を示す図である。図8に示すように、第1磁気センサ3Aは、第1磁気トラック2Aの1つの磁極対2A1のピッチを1周期として、電気角で90°の位相差を有するように、磁極対2A1の並び方向に離して配置された2つの磁気センサ素子3A1,3A2を備える。また、第2磁気センサ3Bは、第2磁気トラック2Bの1つの磁極対2B1のピッチを1周期として、電気角で90°の位相差を有するように、磁極対2B1の並び方向に離して配置された2つの磁気センサ素子3B1,3B2を備える。
磁気センサ素子3A1,3A2及び磁気センサ素子3B1,3B2としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗効果(MR(Magneto Resistance effect))センサなどの磁気センサ素子を用いることができる。
第1磁気センサ3Aは、磁極対2A1内の位相に応じた第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1を出力する。
また、第2磁気センサ3Bは、磁極対2B1内の位相に応じた第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2を出力する。
図7に示すように、第1磁気センサ3Aから出力された第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1は、第1補正演算部4Aに入力される。また、第2磁気センサ3Bから出力された第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2は、第2補正演算部4Bに入力される。
第1補正演算部4Aは、入力された第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1に対し、後述する補正演算処理を行い、第1補正sin信号sinθo1及び第1補正cos信号cosθo1を出力する。また、第2補正演算部4Bは、第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2に対し、後述する補正演算処理を行い、第2補正sin信号sinθo2及び第2補正cos信号cosθo2を出力する。第1補正演算部4A及び第2補正演算部4Bによる補正演算処理については、詳細に後述する。
図9は、実施形態1に係る第1検知部1の各部波形例を示す図である。図9の(a)は、第1磁気トラック2Aの磁極パターンを示し、図9の(b)は、第2磁気トラック2Bの磁極パターンの一例を示している。図9の(c)は、第1位相検出部5Aの入力信号波形を示し、図9の(d)は、第2位相検出部5Bの入力信号波形を示している。図9の(e)は、第1位相検出部5Aにより出力される検出位相信号波形を示し、図9の(f)は、第2位相検出部5Bにより出力される検出位相信号波形を示している。図9の(g)は、位相差検出部6により出力される位相差信号波形を示している。
図9に示す例では、第1磁気トラック2Aの3つの磁極対2A1からなるa点からb点の区間に対し、第2磁気トラック2Bの2つの磁極対2B1が対応した例を示している。すなわち、a点とb点とで、第1磁気センサ3Aの検出信号の位相と第2磁気センサ3Bの検出信号の位相とが一致する。この場合、a点を基準としたb点までの任意位置における絶対角度を検出することができる。このように、第1磁気センサ3Aの検出信号の位相と第2磁気センサ3Bの検出信号の位相とが一致する2点間の絶対角度を検出することができる。
図4に示す例では、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数を32(P=32)、第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数を31(P−1=31)とし、A点において第1磁気トラック2Aの磁極位相と第2磁気トラック2Bの磁極位相とが一致している。すなわち、第1磁気検知部200は、第1磁気センサ3Aの検出信号の位相と第2磁気センサ3Bの検出信号の位相とが一致するA点を原点位置として、第1回転体100の全周における絶対角度を検出することができる。
なお、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数と第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数との関係は、図4に示す例に限るものではなく、例えば、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数をPとしたとき、第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数をP+1とした構成であっても良い。
第1位相検出部5Aは、図9の(c)に例示した入力信号に基づき、図9の(e)に例示した検出位相信号を出力する。具体的には、第1位相検出部5Aは、第1補正演算部4Aの出力である第1補正sin信号sinθo1及び第1補正cos信号cosθo1から磁極対2A1内の位相(θo1=arctan(sinθo1/cosθo1))を算出する。
第2位相検出部5Bは、図9の(d)に例示した入力信号に基づき、図9の(f)に例示した検出位相信号を出力する。具体的には、第2位相検出部5Bは、第2補正演算部4Bの出力である第2補正sin信号sinθo2及び第2補正cos信号cosθo2から磁極対2B1内の位相(θo2=arctan(sinθo2/cosθo2))を算出する。
位相差検出部6は、第1位相検出部5A及び第2位相検出部5Bから出力された各検出位相信号に基づき、図9の(g)に例示した位相差信号を出力する。
角度算出部7は、位相差検出部6で求められた位相差を、予め設定された計算パラメータに従い絶対角度へ換算する処理を行う。角度算出部7で用いられる計算パラメータは、記憶部10に記憶されている。
さらに、本実施形態では、角度算出部7の後段に角度情報生成部8が設けられている。
角度情報生成部8は、角度算出部7で算出された絶対角度を含む情報(以下、「絶対角度情報」とも言う)として、例えば、互いに90度位相の異なるA相信号及びB相信号と、原点位置を示すZ相信号とで構成されるABZ相信号を生成する。なお、A相信号及びB相信号としては、例えば、第1補正演算部4Aの出力である第1補正sin信号及び第1補正cos信号、第2補正演算部4Bの出力である第2補正sin信号及び第2補正cos信号のうちのいずれか1組の信号を用いれば良い。
通信部9は、角度情報生成部8が生成した絶対角度情報を所定の信号(例えば、ABZ相信号、パラレル信号、シリアルデータ、アナログ電圧、PWM変調信号等)に変換して外部制御装置に出力する。
このように、所定の信号に変換した絶対角度情報を出力する構成とすることで、外部制御装置との間の電気的な接続線の本数を減らすことができる。
なお、通信部9に対し、例えば、外部制御装置から絶対角度情報の出力要求信号が入力される態様であっても良い。この場合、第1検知部1は、絶対角度情報の出力要求信号に応じて動作し、通信部9から絶対角度情報を出力する構成としても良い。
記憶部10には、角度算出部7で用いられる計算パラメータの他に、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数(P)、第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数(P−1)、後述する第1補正演算部4Aで用いられる第1磁気センサ補正情報、後述する第2補正演算部4Bで用いられる第2磁気センサ補正情報、絶対角度基準位置等、第1検知部1の動作に必要な情報が記憶されている。記憶部10としては、例えば、不揮発性メモリが例示される。
本実施形態では、第1磁気センサ補正情報及び第2磁気センサ補正情報として、第1補正演算部4A及び第2補正演算部4Bにおいて用いられるパラメータや演算式が記憶部10に記憶されている。
第1補正演算部4Aにおいて用いられるパラメータや演算式には、第1磁気センサ3Aの検出信号である第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1の補正に用いる情報が含まれる。第1磁気センサ補正情報としては、第1磁気センサ3Aの検出信号が、予め想定した第1磁気センサ3Aの基準のsin信号の値又はcos信号の値に近づくようなパラメータや演算式が設定されているものとする。
また、第2補正演算部4Bにおいて用いられるパラメータや演算式には、第2磁気センサ3Bの検出信号である第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2の補正に用いる情報が含まれる。第2磁気センサ補正情報としては、第2磁気センサ3Bの検出信号が、予め想定した第2磁気センサ3Bの基準のsin信号の値又はcos信号の値に近づくようなパラメータや演算式が設定されているものとする。
なお、記憶部10に記憶された各種パラメータや情報は、例えば、外部制御装置から通信部9を介して更新可能な構成としても良い。これにより、第1検知部1の使用状況に応じた設定が可能となる。
<補正演算部の構成及び動作>
第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2B、第1磁気センサ3A及び第2磁気センサ3B、第1補正演算部4A及び第2補正演算部4Bは、それぞれ同様の構成及び動作であるので、以下の説明では、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bを「磁気トラック2」、第1磁気センサ3A及び第2磁気センサ3Bを「磁気センサ3」、第1補正演算部4A及び第2補正演算部4Bを「補正演算部4」、第1磁気センサ補正情報及び第2磁気センサ補正情報を「磁気センサ補正情報」とも言う。
図10は、実施形態1に係る補正演算部の機能ブロックの一例を示す図である。図10に示すように、補正演算部4は、正規化処理部41と、センサ位相補正部42と、を備える。
補正演算部4には、磁気センサ3から出力されたsin信号sinθi及びcos信号cosθiが入力される。また、補正演算部4は、記憶部10から正規化処理部41及びセンサ位相補正部42で適用される磁気センサ補正情報を取得する。
正規化処理部41は、磁気センサ3から出力されたsin信号sinθi及びcos信号cosθiを正規化して正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’をセンサ位相補正部42に出力する。
センサ位相補正部42は、正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’の位相を補正して補正sin信号sinθo及び補正cos信号cosθoを出力する。
次に、実施形態1に係る補正演算部4の各構成部について説明する。
まず、実施形態1に係る正規化処理部41について説明する。図11は、実施形態1に係る正規化処理部の制御ブロックの一例を示す図である。図12は、図11に示す正規化処理部における正規化動作の一例を示す図である。
図11に示す例において、正規化処理部41は、オフセット電圧補正部411を備えている。また、図12に示す例では、sin信号sinθi(cos信号cosθi)を破線で示し、正規化sin信号sinθ’(正規化cos信号cosθ’)を実線で示している。
図11及び図12に示す例では、磁気センサ3の検出信号にオフセット電圧が重畳している場合を想定している。
図11に示すオフセット電圧補正部411は、予め磁気センサ3の検出信号であるsin信号(cos信号)の平均値Vsinave(Vcosave)が磁気センサ補正情報として設定され、記憶部10に記憶されている。なお、平均値Vsinaveは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分のsin信号の平均値であっても良いし、任意の1周期分のsin信号の平均値であっても良い。また、平均値Vcosaveは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分のcos信号の平均値であっても良いし、任意の1周期分のcos信号の平均値であっても良い。これらのsin信号(cos信号)の平均値Vsinave(Vcosave)は、例えば、第1検知部1の出荷検査時に測定した値であっても良い。
図11に示す例において、オフセット電圧補正部411は、磁気センサ3の検出信号であるsin信号の平均値Vsinaveを用いて、sin信号sinθiのオフセット電圧を正規化する。具体的には、sin信号sinθiから、Vsinaveを減算、すなわち下記式(1)により正規化sin信号sinθ’を算出する。
図11に示すオフセット電圧補正部411は、上記式(1)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。オフセット電圧補正部411は、この上記式(1)を用いてsin信号sinθiのオフセット電圧を正規化することにより、図12に実線で示す正規化sin信号sinθ’を出力する。
また、図11に示す例において、オフセット電圧補正部411は、磁気センサ3の検出信号であるcos信号の平均値Vcosaveを用いて、cos信号cosθiのオフセット電圧を正規化する。具体的には、cos信号cosθiから、Vcosaveを減算、すなわち下記式(2)により正規化cos信号cosθ’を算出する。
図11に示すオフセット電圧補正部411は、上記式(2)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。オフセット電圧補正部411は、この上記式(2)を用いてcos信号cosθiのオフセット電圧を正規化することにより、図12に実線で示す正規化cos信号cosθ’を出力する。
図13は、実施形態1に係る正規化処理部の制御ブロックの図11とは異なる一例を示す図である。図14は、図13に示す正規化処理部における正規化動作の一例を示す図である。図13に示す例において、正規化処理部41は、振幅補正部412を備えている。また、図14に示す例では、sin信号sinθi(cos信号cosθi)を破線で示し、正規化sin信号sinθ’(正規化cos信号cosθ’)を実線で示している。
図13及び図14に示す例では、磁気センサ3の検出信号に出力振幅のバラツキがある場合を想定している。
図13に示す振幅補正部412は、予め磁気センサ3の検出信号であるsin信号(cos信号)の最大値Vsinmax(Vcosmax)と最小値Vsinmin(Vcosmin)とが磁気センサ補正情報として設定され、記憶部10に記憶されている。なお、sin信号の最大値Vsinmaxは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分の各周期におけるsin信号の最大値の平均値であっても良いし、任意の1周期のsin信号の最大値であっても良い。また、sin信号の最小値Vsinminは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分の各周期におけるsin信号の最小値の平均値であっても良いし、任意の1周期のsin信号の最小値であっても良い。また、cos信号の最大値Vcosmaxは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分の各周期におけるcos信号の最大値の平均値であっても良いし、任意の1周期のcos信号の最大値であっても良い。またcos信号の最小値Vcosminは、例えば、磁気トラック2の電気角で所定周期分の各周期におけるcos信号の最小値の平均値であっても良いし、任意の1周期のcos信号の最小値であっても良い。これらのsin信号(cos信号)の最大値Vsinmax(Vcosmax)及び最小値Vsinmin(Vcosmin)は、例えば、第1検知部1の出荷検査時に測定した値であっても良い。
図13に示す例において、振幅補正部412は、sin信号の最大値Vsinmax及び最小値Vsinminを用いて、sin信号sinθiの振幅を正規化する。具体的には、sin信号sinθiを、VsinmaxからVsinminを減算した値の絶対値を2で除した値で除算、すなわち下記式(3)により正規化sin信号sinθ’を算出する。
図13に示す振幅補正部412は、上記式(3)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅補正部412は、この上記式(3)を用いてsin信号sinθiの振幅を正規化することにより、図14に実線で示す振幅が正規化された正規化sin信号sinθ’を出力する。
また、図13に示す例において、振幅補正部412は、cos信号の最大値Vcosmax及び最小値Vcosminを用いて、cos信号cosθiの振幅を正規化する。具体的には、cos信号cosθiを、VcosmaxからVcosminを減算した値の絶対値を2で除した値で除算、すなわち下記式(4)により正規化cos信号cosθ’を算出する。
図13に示す振幅補正部412は、上記式(4)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅補正部412は、この上記式(4)を用いてcos信号cosθiの振幅を正規化することにより、図14に実線で示す振幅が正規化された正規化cos信号cosθ’を出力する。
なお、上述した例では、説明の都合上、正規化処理部41に含まれるオフセット電圧補正部411と振幅補正部412とを個別に説明したが、正規化処理部41は、オフセット電圧補正部411及び振幅補正部412の双方を具備した構成であるのが好ましい。図15は、実施形態1に係る正規化処理部がオフセット電圧補正部及び振幅補正部の双方を具備した制御ブロックの一例を示す図である。
図15に示す例において、オフセット電圧補正部411は、磁気センサ3の検出信号であるsin信号の平均値Vsinaveを用いて、sin信号sinθiのオフセット電圧を正規化する。具体的には、sin信号sinθiから、Vsinaveを減算、すなわち下記式(5)により正規化sin信号sinθ’’を算出する。
図15に示すオフセット電圧補正部411は、上記式(5)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。オフセット電圧補正部411は、この上記式(5)を用いてsin信号sinθiのオフセット電圧を正規化する。
また、図15に示す例において、オフセット電圧補正部411は、磁気センサ3の検出信号であるcos信号の平均値Vcosaveを用いて、cos信号cosθiのオフセット電圧を正規化する。具体的には、cos信号cosθiから、Vcosaveを減算、すなわち下記式(6)により正規化cos信号cosθ’’を算出する。
図15に示すオフセット電圧補正部411は、上記式(6)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。オフセット電圧補正部411は、この上記式(6)を用いてcos信号cosθiのオフセット電圧を正規化する。
図15に示す例において、振幅補正部412は、sin信号の最大値Vsinmax及び最小値Vsinminを用いて、正規化sin信号sinθ’’の振幅を正規化する。具体的には、正規化sin信号sinθ’’を、VsinmaxからVsinminを減算した値の絶対値を2で除した値で除算、すなわち下記式(7)により正規化sin信号sinθ’を算出する。
図15に示す振幅補正部412は、上記式(7)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅補正部412は、この上記式(7)を用いて正規化sin信号sinθ’’の振幅を正規化する。
また、図15に示す例において、振幅補正部412は、cos信号の最大値Vcosmax及び最小値Vcosminを用いて、正規化cos信号cosθ’’の振幅を正規化する。具体的には、正規化cos信号cosθ’’を、VcosmaxからVcosminを減算した値の絶対値を2で除した値で除算、すなわち下記式(8)により正規化cos信号cosθ’を算出する。
図15に示す振幅補正部412は、上記式(8)が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅補正部412は、この上記式(8)を用いて正規化cos信号cosθ’’の振幅を正規化する。
すなわち、図15に示す例では、オフセット電圧補正部411において、まず、sin信号sinθi及びcos信号cosθiのオフセット電圧を正規化した正規化sin信号sinθ’’及び正規化cos信号cosθ’’を算出し、振幅補正部412において、正規化sin信号sinθ’’及び正規化cos信号cosθ’’の振幅を正規化した正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’を算出する。これにより、sin信号sinθi及びcos信号cosθiのオフセット電圧と振幅との双方が正規化された正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’を得ることができる。
次に、実施形態1に係るセンサ位相補正部42について説明する。図16は、実施形態1に係るセンサ位相補正部における補正対象の一例を示す図である。
上述したように、第1磁気センサ3Aの磁気センサ素子3A1と磁気センサ素子3A2とは、第1磁気トラック2Aの1つの磁極対2A1のピッチを1周期として、電気角で90°の位相差を有するように、磁極対2A1の並び方向に離して配置され、第2磁気センサ3Bの磁気センサ素子3B1と磁気センサ素子3B2とは、第2磁気トラック2Bの1つの磁極対2B1のピッチを1周期として、電気角で90°の位相差を有するように、磁極対2B1の並び方向に離して配置される構成としているが、本実施形態では、磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相と磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相との間に誤差(以下、「センサ位相誤差」という)θicを含んでいる場合を想定している。このような想定としては、例えば、磁気トラック2に設けられた各磁極の間隔にバラツキがある場合や、第1回転体100の回転軸Xが偏心している場合等、磁気センサ3の磁気トラック2上の径方向位置が第1回転体100の1回転中に変動する場合が考えられる。
図16及び以下の図17、図18に示す例では、磁気センサ素子3A1(3B1)を基準として、磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相を補正する例を示している。
図17は、実施形態1に係るセンサ位相補正部の制御ブロックの一例を示す図である。図18は、図17に示すセンサ位相補正部における位相補正動作の一例を示す図である。図18に示す例では、正規化cos信号cosθ’を破線で示し、補正cos信号cosθoを実線で示している。
図17に示すセンサ位相補正部42は、予め磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相と磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相との間のセンサ位相誤差θicが第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として設定され、記憶部10に記憶されている。このセンサ位相誤差θicは、例えば、第1検知部1の出荷検査時に測定した値であっても良い。
図17に示す例において、センサ位相補正部42は、センサ位相誤差θicを用いて、正規化sin信号sinθ’を基準として正規化cos信号cosθ’の位相を補正する。一方、センサ位相補正部42では、基準となる正規化sin信号sinθ’については補正を行わない。すなわち、センサ位相補正部42における補正sin信号sinθoは、下記式(9)で表せる。
一方、補正cos信号cosθ
oは、下記式(10)により表される。
センサ位相補正部42は、上記式(10)により補正cos信号cosθoを算出する。以下、上記式(10)を「第1の位相補正演算式」ともいう。
図17に示すセンサ位相補正部42は、上記式(10)、すなわち第1の位相補正演算式が予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され設定されている。センサ位相補正部42は、この上記式(10)、すなわち第1の位相補正演算式を用いて正規化cos信号cosθ’の位相を補正することにより、図18に実線で示す補正cos信号cosθoを出力する。
図19は、実施形態1に係るセンサ位相補正部における補正対象の図16とは異なる一例を示す図である。
図19及び以下の図20、図21に示す例では、磁気センサ素子3A2(3B2)を基準として、磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相を補正する例を示している。
図20は、実施形態1に係るセンサ位相補正部の図17とは異なる制御ブロックの一例を示す図である。図21は、図20に示すセンサ位相補正部における位相補正動作の一例を示す図である。図21に示す例では、正規化sin信号sinθ’を破線で示し、補正sin信号sinθoを実線で示している。
図20に示すセンサ位相補正部42aは、予め磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相と磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相との間のセンサ位相誤差θicが第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として設定され、記憶部10に記憶されている。このセンサ位相誤差θicは、例えば、第1検知部1の出荷検査時に測定した値であっても良い。
図20に示す例において、センサ位相補正部42aは、センサ位相誤差θicを用いて、正規化cos信号cosθ’を基準として正規化sin信号sinθ’の位相を補正する。一方、センサ位相補正部42aでは、基準となる正規化cos信号cosθ’については補正を行わない。すなわち、センサ位相補正部42aにおける補正cos信号cosθoは、下記式(11)で表せる。
一方、補正sin信号sinθ
oは、下記式(12)により表される。
センサ位相補正部42aは、上記式(12)により補正sin信号sinθoを算出する。以下、上記式(12)を「第2の位相補正演算式」ともいう。
図20に示すセンサ位相補正部42aは、上記式(12)、すなわち第2の位相補正演算式が予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され設定されている。センサ位相補正部42aは、この上記式(12)、すなわち第2の位相補正演算式を用いて正規化sin信号sinθ’の位相を補正することにより、図21に実線で示す補正sin信号sinθoを出力する。
第1補正演算部4Aは、センサ位相補正部42又はセンサ位相補正部42aを有することで、第1磁気センサ3Aの出力位相を補正することができる。また、第2補正演算部4Bは、センサ位相補正部42又はセンサ位相補正部42aを有することで、第2磁気センサ3Bの出力位相を補正することができる。
以上、第1検知部1による外側ロータORの回転角度の検出の仕組みについて説明したが、第2検知部1Aによる内側ロータIRの回転角度の検出の仕組みについても同様である。具体的には、図7から図21を参照して説明した第1検知部1による外側ロータORの回転角度の検出の仕組みにおける第1回転体100、第1磁気トラック2A、第2磁気トラック2B、第1磁気検知部200、第1磁気センサ3A、第2磁気センサ3B、磁極対2A1、磁極対2B1を、第2回転体101、第3磁気トラック2C、第4磁気トラック2D、第2磁気検知部201、第3磁気センサ3C、第4磁気センサ3D、磁極対2C1、磁極対2D1と読み替えることで、第2検知部1Aによる内側ロータIRの回転角度の検出の仕組みが説明される。
なお、第1検知部1及び第2検知部1Aに関する調整作業として、例えば、芯出し及びギャップ調整がある。芯出しは、検出部が検出対象とする回転軸方向とロータの回転軸方向とを整合させる調整作業である。ギャップ調整は、0度として検出されるロータの回転角度と検出部からの出力との関係の調整作業である。本実施形態によれば、検知部30が軸受部60及びステータコア部70よりも一端側、すなわち、外側ロータOR及び内側ロータIRの出力軸側に位置しているので、第1検知部1及び第2検知部1Aの芯出しならびに外側ロータOR及び内側ロータIRがそれぞれ0度として検出される回転角度のギャップ調整を二軸一体型モータDMの出力軸で行うことができる。よって、出力軸側で行われる芯出し及びギャップ調整における検知部30へのアクセスに際して軸受部60及びステータコア部70の配設による物理的な遮蔽の影響を抑制することができることから、2つのロータの回転角度を検出する検知部30の検出精度確保をより簡便に行うことができる。また、検知部30とステータコア部70の間に軸受部60が位置するので、検知部30とステータコア部70とを離すことができ、検知部30に対するステータコア部70からの磁気的影響をより低減することができる。
また、内側ロータIRに設けられた磁石15及び第2コア71は、回転軸方向の軸長が外側ロータORに設けられた磁石25及び第1コア75より長い。従って、外側ロータORの出力トルクと内側ロータIRの出力トルクとの差をより小さくしやすくなる。
また、第1検知部1と第2検知部1Aが回転軸に直交する同一平面上に位置する。従って、二軸一体型モータDMの軸長をよりコンパクトにすることができる。また、第1検知部1と第2検知部1Aのうち一方が他方を回転軸方向について遮蔽することがないことから、2つのロータの回転角度を検出する検知部30の検出精度確保をより簡便に行うことができる。また、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201とで基板32を共有することができ、二軸一体型モータDMの軸長をよりコンパクトにすることができる。また、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201とで基板32を共有することで、また、第1磁気検知部200の配線と第2磁気検知部201の配線をよりまとめやすくなる。また、1枚の基板32を二軸一体型モータDMに設けることで第1磁気検知部200と第2磁気検知部201の両方を取り付けることができるので、より容易に二軸一体型モータDMを組み立てることができる。また、芯出し等の調整作業も容易になる。
また、第1軸受65の一端側の端部と第2軸受61の一端側の端部が回転軸に直交する同一平面上に位置する。従って、二軸一体型モータDMの軸長をよりコンパクトにすることができる。
また、回転軸Xから径方向の外側に向かって、内側ロータIR、ステータコア部70、外側ロータORの順に配置されている。従って、第1コア75及び第2コア71を外側ロータORと内側ロータIRとの間に集約して配置することができることから、二軸一体型モータDMの径をよりコンパクトにすることができる。
また、第1検知部1及び第2検知部1Aに対して一端側にカバー91が設けられている。従って、芯出し及びギャップ調整が完了した後にカバー91を設けることで検知部30を保護することができる。
また、万が一、第1磁気検知部200の物理的な位置の誤差、第1回転体100の偏心等によって検出値に誤差が含まれた場合であっても、実施形態1に係る第1検知部1は、N極とS極とからなる磁極対2A1が等間隔に並ぶ第1磁気トラック2Aと、磁極対2B1が等間隔に並ぶ第2磁気トラック2Bとが、回転軸Xを軸心とする同心のリング状に径方向に並び設けられ、第1磁気トラック2Aの磁極対2A1の数をP(Pは自然数)としたとき、第2磁気トラック2Bの磁極対2B1の数をP−1又はP+1とする第1回転体100と、第1磁気トラック2Aの磁界を検知して第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1を出力する第1磁気センサ3Aと、第2磁気トラック2Bの磁界を検知して第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2を出力する第2磁気センサ3Bと、第1磁気トラック2Aの回転角に応じて第1磁気センサ3Aが出力した第1sin信号sinθi1の値が、第1磁気センサ3Aの基準のsin信号の値に近づくようにし、又は第1磁気トラック2Aの回転角に応じて第1磁気センサ3Aが出力したcos信号cosθi1の値が、第1磁気センサ3Aの基準のcos信号の値に近づくように事前に設定された第1磁気センサ補正情報、及び、第2磁気トラック2Bの回転角に応じて第2磁気センサ3Bが出力した第2sin信号sinθi2の値が、第2磁気センサ3Bの基準のsin信号の値に近づくようにし、又は第2磁気トラック2Bの回転角に応じて第2磁気センサ3Bが出力したcos信号cosθi2の値が、第2磁気センサ3Bの基準のcos信号の値に近づくようにする事前に設定された第2磁気センサ補正情報を記憶する記憶部10と、第1磁気センサ補正情報に基づき第1sin信号sinθi1及び第1cos信号cosθi1を第1補正sin信号sinθo1及び第1補正cos信号cosθo1に補正する第1補正演算部4Aと、第2磁気センサ補正情報に基づき第2sin信号sinθi2及び第2cos信号cosθi2を第2補正sin信号sinθo2及び第2補正cos信号cosθo2に補正する第2補正演算部4Bと、第1補正sin信号sinθo1及び第1補正cos信号cosθo1の位相を算出する第1位相検出部5Aと、第2補正sin信号sinθo2及び第2補正cos信号cosθo2の位相を算出する第2位相検出部5Bと、第1磁気センサ3Aの検出位相と第2磁気センサ3Bの検出位相とに基づき、第1磁気センサ3Aと第2磁気センサ3Bとの位相差を算出する位相差検出部6と、この位相差を絶対角度に変換する角度算出部7と、を備える。これにより、第1検知部1は、第1位相検出部5A及び第2位相検出部5Bにおいて位相を算出する前のsin信号及びcos信号をリアルタイムに補正することができる。また、sin信号及びcos信号を予め設定された既知の磁気センサ補正情報に基づいて補正した補正sin信号及び補正cos信号を用いて位相が算出されるので、回転体の絶対角度の検出精度が向上する。したがって、本実施形態に係る第1検知部1は、第1回転体100の絶対角度を高い精度で検出することができる。第2検知部1Aによる第2回転体101の絶対角度の検出精度についても、同様である。このように、本実施形態によれば、外側ロータORと内側ロータIRの各々の回転角度を複数の磁気トラック(例えば、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2B並びに第3磁気トラック2C及び第4磁気トラック2D)から得られる信号に基づいて検出することができる。これにより、外側ロータOR、内側ロータIRの回転角度を検出する検出部の検出精度をより高めやすくなる。
また、補正演算部4(第1補正演算部4A、第2補正演算部4B)では、第1磁気センサ3A(第2磁気センサ3B)の検出信号であるsin信号の平均値Vsinave、及びcos信号の平均値Vcosaveが予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され、オフセット電圧補正部411は、sin信号の平均値Vsinaveを用いて、sin信号を補正し、cos信号の平均値Vcosaveを用いて、cos信号を補正する。これにより、sin信号及びcos信号のオフセット電圧を正規化することができる。
また、補正演算部4(第1補正演算部4A、第2補正演算部4B)では、第1磁気センサ3A(第2磁気センサ3B)の検出信号であるsin信号の最大値Vsinmax、sin信号の最小値Vsinmin、cos信号の最大値Vcosmax、及びcos信号の最小値Vcosminが予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され、振幅補正部412は、sin信号の最大値Vsinmaxと最小値Vsinminとを用いて、sin信号を補正し、cos信号の最大値Vcosmaxと最小値Vcosminとを用いて、cos信号を補正する。これにより、sin信号及びcos信号の振幅を正規化することができる。
また、補正演算部4(第1補正演算部4A、第2補正演算部4B)では、オフセット電圧補正部411及び振幅補正部412の双方を具備することで、sin信号及びcos信号のオフセット電圧と振幅との双方を正規化することができる。
また、補正演算部4(第1補正演算部4A、第2補正演算部4B)では、第1磁気センサ3A(第2磁気センサ3B)における磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相と磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相との間のセンサ位相誤差θic及び第1の位相補正演算式が予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され、センサ位相補正部42は、センサ位相誤差θic及び第1の位相補正演算式を用いて、cos信号を補正する。これにより、磁気センサ素子3A1(3B1)を基準として、磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相を補正することができる。あるいは、第1磁気センサ3A(第2磁気センサ3B)における磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相と磁気センサ素子3A2(3B2)の出力位相との間のセンサ位相誤差θic及び第2の位相補正演算式が予め第1磁気センサ補正情報(第2磁気センサ補正情報)として記憶部10に記憶され、センサ位相補正部42aは、センサ位相誤差θic及び第2の位相補正演算式を用いて、sin信号を補正する。これにより、磁気センサ素子3A2(3B2)を基準として、磁気センサ素子3A1(3B1)の出力位相を補正することができる。
これにより、第1検知部1、第2検知部1Aによる位置検出精度を向上させることができ、これに伴い、各種機器の回転制御性能の向上に貢献することができる。
なお、第1回転体100が有する第1磁気トラック2A、第2磁気トラック2Bを形成するための励磁は、第1回転体100が外側ロータORに固定される前であってもよいし、第1回転体100が外側ロータORに固定された後であってもよい。同様に、第2回転体101が有する第3磁気トラック2C、第4磁気トラック2Dを形成するための励磁は、第2回転体101が内側ロータIRに固定される前であってもよいし、第2回転体101が内側ロータIRに固定された後であってもよい。第1回転体100、第2回転体101に対する励磁をそれぞれ外側ロータOR、内側ロータIRへの固定後とすることで、芯出しを省略することができる。従って、検知部30を設けるための作業が芯出しを伴わないより簡便な作業で済むことに加え、より検出精度を高めやすくなる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2に係る第1検知部1、第2検知部1Aの構成は、以下に特筆する事項を除いて上述した実施形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。また、以下の説明では、第1磁気トラック2A及び第2磁気トラック2Bを「磁気トラック2」、第1磁気センサ3A及び第2磁気センサ3Bを「磁気センサ3」、第1補正演算部4A及び第2補正演算部4Bを「補正演算部4a」、第1磁気センサ補正情報及び第2磁気センサ補正情報を「磁気センサ補正情報」とも言う。
図22は、実施形態2に係る補正演算部の機能ブロックの一例を示す図である。図22に示すように、実施形態2に係る補正演算部4aは、実施形態1において説明した正規化処理部41と、振幅変動抑制部43と、を備える。
補正演算部4aには、磁気センサ3から出力されたsin信号sinθi及びcos信号cosθiが入力される。また、補正演算部4aは、記憶部10から正規化処理部41及び振幅変動抑制部43で適用される磁気センサ補正情報を取得する。
正規化処理部41は、磁気センサ3から出力されたsin信号sinθi及びcos信号cosθiを正規化して正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’を振幅変動抑制部43に出力する。
振幅変動抑制部43は、正規化sin信号sinθ’及び正規化cos信号cosθ’の振幅変動を補正して補正sin信号sinθo及び補正cos信号cosθoを出力する。
図23は、実施形態2に係る振幅変動抑制部の制御ブロックの一例を示す図である。正規化処理部41の制御ブロックについては、実施形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
本実施形態では、磁気センサ3の出力振幅が変動する場合を想定している。このような想定としては、例えば、第1回転体100の磁気トラック2が設けられたアキシャル面が平滑でない場合や、第1回転体100の回転軸Xが傾いている場合等、磁気センサ3と磁気トラック2との間の軸方向距離が第1回転体100の1回転中に変動する場合が考えられる。
図23に示す振幅変動抑制部43は、下記式(13)により補正sin信号sinθoを算出する。以下、下記式(13)を「第1の振幅変動補正演算式」ともいう。
図23に示す振幅変動抑制部43は、上記式(13)、すなわち第1の振幅変動補正演算式が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅変動抑制部43は、この上記式(13)、すなわち第1の振幅変動補正演算式を用いて、正規化sin信号sinθ’の周期的な振幅変動を抑制した補正sin信号sinθoを演算して出力する。
また、図23に示す振幅変動抑制部43は、下記式(14)により補正cos信号cosθoを算出する。以下、下記式(14)を「第2の振幅変動補正演算式」ともいう。
図23に示す振幅変動抑制部43は、上記式(14)、すなわち第2の振幅変動補正演算式が予め磁気センサ補正情報として記憶部10に記憶され設定されている。振幅変動抑制部43は、この上記式(14)、すなわち第2の振幅変動補正演算式を用いて、正規化cos信号cosθ’の周期的な振幅変動を抑制した補正cos信号cosθoを演算して出力する。
第1補正演算部4Aは、振幅変動抑制部43を有することで、第1磁気センサ3Aの出力振幅の変動を補正することができる。また、第2補正演算部4Bは、振幅変動抑制部43を有することで、第2磁気センサ3Bの出力振幅の変動を補正することができる。
以上説明したように、補正演算部4a(第1補正演算部4A、第2補正演算部4B)では、第1の振幅変動補正演算式及び第2の振幅変動補正演算式が予め第1センサ補正情報として記憶部10に記憶され、振幅変動抑制部43は、第1の振幅変動補正演算式及び第2の振幅変動補正演算式を用いて、sin信号及びcos信号を補正する。これにより、第1磁気センサ3A(第2磁気センサ3B)の出力振幅の変動を補正することができる。
これにより、第1検知部1、第2検知部1Aによる位置検出精度を向上させることができ、これに伴い、各種機器の回転制御性能の向上に貢献することができる。
また、実施形態2では、実施形態1と同様、第1回転体100が有する複数の磁気トラック(第1磁気トラック2A、第2磁気トラック2B)のうち最も外側ロータORに近い磁気トラック(第1磁気トラック2A)が有する磁極対数と、第2回転体101が有する複数の磁気トラック(第3磁気トラック2C、第4磁気トラック2D)のうち最も内側ロータIRに近い磁気トラック(第3磁気トラック2C)が有する磁極対数とが同一(P)である(図4参照)。このため、第1回転体100と第2回転体101との間で磁気の干渉が生じたとしても、互いの影響を全周で均一にすることができる。このため、磁気センサ素子3A1,3A2,3B1,3B2でそれぞれ検出する信号の振幅と磁気の干渉との関係が一様になり、磁気の干渉による振幅変動を周期的な振幅変動にすることができる。従って、実施形態2のように、sin^2+cos^2=1に基づいて導出された上記式(13),(14)を用いた振幅変動補正演算を行うことで、磁気の干渉による振幅変動を抑制することができる。従って、より高精度な角度検出を行いやすくなる。以上、特筆した点を除いて、実施形態2は、実施形態1と同様である。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3の説明では、上記の実施形態1,2と同様の構成については説明を省略する。図24は、本発明の実施形態3に係る二軸一体型モータDMAの主要構成を示す断面図である。図25は、実施形態3に係る第1回転体100と、第2回転体101Aと、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201が設けられた基板32Aとの位置関係の一例を示す図である。実施形態3に係る二軸一体型モータDMAは、実施形態1に係る二軸一体型モータDMと同様の軸受部60、ステータコア部70及びベース80を備える。また、実施形態3に係る二軸一体型モータDMAは、実施形態1の検出部30に相当する構成として、検出部30Aを備える。実施形態3では、実施形態1における第1検出部1及び第2検出部1Aの機能を、第1検出部1B及び第2検出部1Cが実現する。実施形態3に係る二軸一体型モータDMAの検出部30Aと、軸受部60と、ステータコア部70と、ベース80との位置関係は、実施形態1に係る二軸一体型モータDMの検出部30と、軸受部60と、ステータコア部70と、ベース80との位置関係と同様である。
以下、検出部30Aが有する構成について説明する。実施形態3に係る第2回転体101Aは、回転軸Xに直交する平面上における第1回転体100との位置関係が、実施形態1に係る第2回転体101と異なる。すなわち、実施形態3では、第1回転体100と第2回転体101Aはそれぞれ、回転軸に直交する異なる平面上に位置する。実施形態3では、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201は、第1回転体100と第2回転体101Aとの間に位置する基板32Aに設けられる。実施形態3では、例えば図24、図25に示すように、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201が基板32Aに設けられる。基板32Aの回転軸方向の位置は、第1回転体100の回転軸方向の位置と第2回転体101Aの回転軸方向の位置との間の位置である。具体的には、実施形態3の第1磁気検知部200は、第1回転体100と対向する基板32Aの一面側に設けられている。また、実施形態3の第2磁気検知部201は、第1回転体101と対向する基板32Aの他面側に設けられている。
なお、図24、図25で例示する実施形態3の第2回転体101Aは、実施形態1の第2回転体101に比して第3磁気トラック2Cと第4磁気トラック2Dの位置関係が逆であるが、各磁気トラックの位置は適宜変更可能であり、例えば実施形態1の第2回転体101と同様であってもよい。また、第1回転体100と第2回転体101Aとの位置関係は、逆でもよい。その場合、基板32Aに対する第1磁気検知部200と第2磁気検知部201との位置関係も逆になる。
実施形態3によれば、第2回転体101Aを第1回転体100の内側に収めなくてもよい。このため、二軸一体型モータを径方向によりコンパクトにしやすくなる。また、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201が、第1回転体100と第2回転体101Aとの間に位置する基板32Aに設けられる。このため、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201の位置を集約しやすくなり、コンパクトにしやすくなる。また、第1磁気検知部200と第2磁気検知部201とで基板32Aを共有することができ、第1磁気検知部200の配線と第2磁気検知部201の配線をよりまとめやすくなる。以上、特筆した点を除いて、実施形態3は、実施形態1と同様である。
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4について説明する。実施形態4の説明では、上記の実施形態1から3と同様の構成については説明を省略する。図26は、実施形態4に係る基板32A及び基板32Aの周辺の構成例を示す図である。実施形態4では、第1磁気シールド210と第2磁気シールド211が設けられる。第1磁気シールド210は、第1磁気検知部200に対して第1回転体100の反対側であって第2回転体101Aよりも第1磁気検知部200側に設けられる。第2磁気シールド211は、第2磁気検知部201に対して第2回転体101Aの反対側であって第1回転体100よりも第2磁気検知部201側に設けられる。具体的には、第1磁気シールド210は、例えば基板32Aを挟んで第1磁気検知部200の反対側(他面側)に設けられる。第2磁気シールド211は、例えば基板32Aを挟んで第2磁気検知部201の反対側(一面側)に設けられる。
第1磁気シールド210及び第2磁気シールド211は、例えば非磁性の鉄材芯金である。第1磁気シールド210は、第1回転体100からの磁力の影響が基板32Aの他面側で基板32Aと対向する第2回転体101Aに及ぶことを抑制する。第2磁気シールド211は、第2回転体101Aからの磁力の影響が基板32Aの一面側で基板32Aと対向する第1回転体101に及ぶことを抑制する。
実施形態4によれば、第1磁気シールド210及び第2磁気シールド211が設けられることで、第1回転体100と第2回転体101Aとの間の磁力の相互干渉を抑制することができる。このため、より高精度な角度検出を行いやすくなる。以上、特筆した点を除いて、実施形態4は、実施形態3と同様である。
本実施形態に係る二軸一体型モータは、小型部品の搬送装置、電子部品検査装置、半導体検査装置など、各種産業機械のアクチュエータとしての使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記の各実施形態では、第1回転体100及び第2回転体101,101Aが有する磁気トラックの数が2つである場合を例示しているが、各々の回転体が有する磁気トラックの数は、3以上であってもよい。その場合、第1磁気検知部200及び第2磁気検知部201が有する磁気センサの数は、各々の回転体が有する磁気トラックの数に対応する。